説明

疲れ目改善のためのエステティック施術の選択法

【課題】エステティック施術に於いて、疲れ目改善の効果を高める手段を提供する。
【解決手段】エステティックの施術の選択において、疲れ目改善のための施術を行うか否かの判断を、近点位置を測定し、該近点位置の数値が小さい時は疲れ目改善のための施術は選択せず、大きい場合は疲れ目改善のための施術を選択する。前記近点位置の閾値は15cmであり、前記疲れ目改善のための施術は、目の周囲のツボ押しであり、前記目の周囲のツボは、睛明(せいめい)、陽白(ようはく)、四白(しはく)、上関(じょうかん)及び瞳子(どうしりょう)から選択される1種乃至は2種以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステティック施術の選択法に関し、更に詳細には、疲れ目改善のためのエステティック施術の選択法に関する。但し、医療用途は除く。
【背景技術】
【0002】
現代社会は車の運転やVDT(Visual Display Terminal)作業、パソコンやテレビなど目を使い続ける時代である。加えて、睡眠時間が極端に短くなり、起きている時間が長くなるなどライフスタイル自体も目に対して負担を強いるものになっている。環境の面では、大気汚染に由来するオゾンホールの拡大が、紫外線の地上到達量を激増させ、紫外線による目の損傷も増えていると言える。斯くの如くに、現代社会は、目にとって負担の極めて多い環境と言え、それに伴い、疲れ目や眼精疲労などの目のトラブルに悩む人が急増している。この為、疲れ目等の目のトラブル症状改善に有効な医薬品、食品などQOL(Quality Of Life)の向上が期待される商品が望まれている。この中で、紫外線によって生じる眼精疲労については、紫外線により角膜上皮細胞が障害を受けることがその一因であることが特定され、この様な細胞障害を抑制する手段が見いだされている(例えば、特許文献1を参照)が、目の過度の酷使によって生じる眼精疲労については、その原因が毛様体筋の過緊張であること、及び、該過緊張はエンドセリン変換酵素を阻害することにより緩和することが報じられている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)。しかしながら、この様な対応では十分な毛様体筋の緊張緩和は為されていないのが現状であった。一般的には、疲れ目と眼精疲労とは区別されて認識されたり、使用されたりはしていないが、専門の眼科の定義では、この二者は明確に区別されている。すなわち、疲れ目は生理的な疲労であり、眼精疲労は病的な疲労の範疇に入る。言い換えれば、疲れ目は休息によって回復し、眼精疲労は休息によってもその症状が改善しないものと言うことができる(非特許文献1)。
【0003】
観点を変えて、医療行為に分類されない、ツボを刺激して体の調子を整える方法は既に知られている。(例えば、特許文献5を参照)又、ツボ押しなどの生体刺激を利用して疲れ目に対応しようとする技術も知られている。(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8を参照)しかしながら、これらの効果は今ひとつ明確ではない。この様な施術に於いて、疲れ目改善の効果を高める手段の開発が望まれていたと言える。
【0004】
一方、エステティックの施術の選択において、疲れ目改善のための施術を行うか否かの判断を、近点位置を測定し、該近点位置の数値が小さい時は疲れ目改善のための施術は選択せず、大きい場合は疲れ目改善のための施術を選択し、施術の効果をことは全く為されていない。又、近点位置により、疲れ目改善のためのエステティック施術を行うべき人と行わざるべき人を鑑別するような技術も知られていないし、この様な鑑別も行われていない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−60279号公報
【特許文献2】特開平09−143099号公報
【特許文献3】特開平09−59173号公報
【特許文献4】特開平07−133225号公報
【特許文献5】特開2003−180794号公報
【特許文献6】再表99/027991
【特許文献7】特開2005−227466号公報
【特許文献8】特開2005−052599号公報
【非特許文献1】渥美一成 「調節・眼精疲労」、第5−6頁、講談社、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、エステティック施術に於いて、施術に於いて、疲れ目改善の効果を高める手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、医療行為を除く、エステティック施術に於いて、施術に於いて、疲れ目改善の効果を高める手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、エステティックの施術の選択において、疲れ目改善のための施術を行うか否かの判断を、近点位置を測定し、該近点位置の数値が小さい時は疲れ目改善のための施術は選択せず、大きい場合は疲れ目改善のための施術を選択することにより、エステティック施術効果の現れる人だけにエステティック施術を行うことが出来るようになり、この効果を高めることが出来ることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)エステティックの施術の選択において、疲れ目改善のための施術を行うか否かの判断を、近点位置を測定し、該近点位置の数値が小さい時は疲れ目改善のための施術は選択せず、大きい場合は疲れ目改善のための施術を選択することを特徴とする、エステティック施術の選択法。
(2)近点位置の閾値が15cmであることを特徴とする、(1)に記載のエステティック施術の選択法。
(3)前記疲れ目改善のための施術は、目の周囲のツボ押しであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のエステティック施術の選択法。
(4)前記目の周囲のツボは、睛明(せいめい)、陽白(ようはく)、四白(しはく)、上関(じょうかん)及び瞳子?(どうしりょう)から選択される1種乃至は2種以上であることを特徴とする、(3)に記載のエステティック施術の選択法。
(5)更に、エステティック施術として、首の後ろのツボ押しを加えて選択することを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載のエステティック施術の選択法。
(6)前記首の後ろのツボは、天柱(てんちゅう)及び/又は風池(ふうち)であることを特徴とする、(5)に記載のエステティック施術の選択法。
(7)以下の工程に従って施術を選択することを特徴とする、(1)〜(6)何れか1項に記載のエステティック施術の選択法。
(工程1)被施術希望者の近点位置を計測する。
(工程2)前記近点位置が20cm以上である場合には、睛明(せいめい)、陽白(ようはく)、四白(しはく)、上関(じょうかん)、瞳子?(どうしりょう)、天柱(てんちゅう)及び風池(ふうち)のツボ押しを疲れ目改善の為の施術として選択する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エステティック施術に於いて、施術に於いて、疲れ目改善の効果を高める手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のエステティック施術の選択法は、疲れ目改善のための施術を行うか否かの判断を、近点位置を測定し、該近点位置の数値が小さい時は疲れ目改善のための施術は選択せず、大きい場合は疲れ目改善のための施術を選択することを特徴とする。ここで、近点位置とは、何処まで接近して明視できるかを表す数値で、かかる近点位置は距離として表すことも出来るし、その逆数のレンズのパワーを表す「ディオプター」の単位で表すことも出来る。ディオプターは明視できる最近距離(m)の逆数として算出できる。本発明では、近点位置は距離(cm)で扱う。かかる近点位置は、眼科などで使用されている常法に従って計測できる。即ち、例えば、近点計(株式会社ワック製の「D'ACOMO」、株式会社ニデック製の「VDT近点計 VNP-200」、浜松ホトニクス株式会社製のTriIris」など)で容易に計測できる。この様な近点位置の計測を行うと、近点位置の長い群(距離の数値が大きい)と近点位置が短い群(距離の数値が小さい)が存在し、長い群に対してエステティック施術を行えば、疲れ目を改善し、前記近点位置を更に長くくする効果を奏するが、短い群にエステティック施術を行っても、前記近点位置の延長効果は現れない。即ち、施術前に近点位置を計測し、施術が効果を奏するか、否かを鑑別することにより、効果を奏しない無駄な施術の実施を避けることが出来る。この様な鑑別の閾値となる値は距離の近点位置については、15cm(6.2ディオプター)が好ましく、より好ましくは18cmが例示できる。
【0010】
近点位置の長い人には、疲れ目を改善し、近点距離を短縮するためのエステティック施術が行われるが、この様な施術としてはツボ押し(経穴刺激)が好適に例示できる。刺激すべきツボとしては、目の周囲に存するツボである、睛明(せいめい)、陽白(ようはく)、四白(しはく)、上関(じょうかん)及び瞳子?(どうしりょう)から選択される1種乃至は2種以上が特に好ましく例示でき、これらの目の周囲のツボに加えて、首の後ろの天柱(てんちゅう)及び/又は風池(ふうち)が好適に例示できる。特に好ましい形態としては、これらの全てのツボをまんべんなく刺激することが例示できる。これらのツボの存在位置は図1、図2に示す。
【0011】
これらのツボは近接しているので、正確に位置を知るには次に示す手順に従うことが好ましい。これらのツボは前記の如くに近接しているのみならず、他の効果のためのツボとも近接しているため、刺激位置の正確性が問われるが、下記の手順に従って探せば正確に探査することが出来、正確な経穴刺激を行うことも出来る。
・睛明(せいめい)…目頭と鼻の付け根の間にあるくぼみを探す。少し押して刺激を与え、痛みを被施術者が少し感じたらその部分がこのツボであると見なすことが出来る。上眼の部分から神経が出ているので、その部分をゆっくり約30秒(10秒間/回を3回)押す。押し方は、鼻の骨の際、内眼窩を少し内側に押すのが好ましい。
・陽白(ようはく)…瞳の真ん中の真上、眉毛の上の骨の上に存在する。該当する箇所を少し押してみて、押さえると痛い所をこのツボと見なす。押し方は、骨の上をゆっくり30秒(10秒間/回を3回)押す感じが好ましい。
・四白(しはく)…瞳の真ん中の真下の骨の上に存在する。瞳の真ん中の真下の部分で骨の存在を確認しつつ、少し押して刺激を与え、重さのある痛みを感じやすい部位をこのツボと推定する。押すとずんっとした重みが来る。ここをゆっくり30秒間(10秒間/回を3回)押すことが好ましい。
・瞳子?(どうしりょう)…目尻から親指の幅一本分横にあるくぼみ。目の際。軽く抑える程度。
・上関(じょうかん)…目尻とほお骨の間のくぼみ。ここをゆっくり30秒間(10秒間/回を3回)押すことが好ましい。
・天柱(てんちゅう)…首の後ろ、髪の生え際にある2本の太い筋肉の外側上端に存在する。筋肉を手指で確認しながら、窪みを感じる部分があればそこを押してみて、重い痛みを感じたら、そこがこのツボであると推測する。ここをゆっくり30秒間(10秒間/回を3回)押すことが好ましい。
・風池(ふうち)…首の後ろの大きな筋肉の外側に存在する。頭のすぐ下を手指で押しながら探し、くぼんでいると感じるところがあれば、少し押してみて痛みを感じれば、そこをこのツボであると推測する。ここをゆっくり30秒間(10秒間/回を3回)押すことが好ましい。
【0012】
この様な施術を行うことにより、近点位置が15cm以上の人に於いては、疲れ目が改善し、施術後には近点位置が延長され、これによって、施術前に比して、周囲のものの見え方が変化し、施術の効果を視覚として実感でき、これにより、同時に行うエステティック施術の施術効果を更に向上せしめる作用も有する。
【0013】
前記の如くに、本発明で選択される疲れ目改善のための施術は、同時に他のエステティック施術とともに行うことが出来る。この様な他の施術としては、肩こりなどを除去するための背面への施術、顔のくすみやくまを改善するためのデコルテへの施術、美顔やリラクゼーションのための顔部への施術などが好ましく例示でき、効果を如実にするためには、これらの他の施術に先んじて行うか、最後に施術の締めとして行うことが好ましい。
【0014】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0015】
本発明のエステティック施術の選択法の効果を確かめるためにエステティック施術試験を行った。即ち、疲れ目を意識しているボランティア10名を集め、鎮静のために25℃の恒温室にて10分間座ってもらい、近点位置を「TriIris」(浜松ホトニクス製)で計測し、しかる後に、天柱(てんちゅう)及び風池(ふうち)を前述のように探査して、10秒の指先による圧迫を各ツボ3回実施し、その後に目の周囲に存するツボである、睛明(せいめい)、陽白(ようはく)、四白(しはく)、上関(じょうかん)及び瞳子?(どうしりょう)を同様に刺激した。施術後10分に再度近点位置を計測した。近点位置は5回計測し、その平均値を用いた。コントロールとしては、前記の実験とは別の日に、経穴刺激を加えずに同様の2回の近点距離の計測を行ったものを用いた。結果を図3〜6に示す。これより疲れ目自覚者には、近点位置15cmを境に大きく2つの群に分けられることがわかる。即ち、コントロールでの近点位置が長いAグループとコントロールでの近点位置が短いBグループであり、Bグループでは施術の効果があまり確認できないことがわかる。又、Aグループではエステティック施術の実感を強く感じたのに対し、Bグループに於いてはその様な実感形成は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、エステティック施術の選択に於いて、無駄のない施術を選択することに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】目の周囲のツボ(経穴)の位置を示す図である。
【図2】首の後ろのツボ(経穴)の位置を示す図である。
【図3】施術時の近点位置を示す図である。
【図4】コントロール時の近点位置を示す図である。
【図5】有効群の施術による近点位置の変化を示す図である。
【図6】無効群の施術による近点位置の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステティックの施術の選択において、疲れ目改善のための施術を行うか否かの判断を、近点位置を測定し、該近点位置の数値が小さい時は疲れ目改善のための施術は選択せず、大きい場合は疲れ目改善のための施術を選択することを特徴とする、エステティック施術の選択法。
【請求項2】
近点位置の閾値が15cmであることを特徴とする、請求項1に記載のエステティック施術の選択法。
【請求項3】
前記疲れ目改善のための施術は、目の周囲のツボ押しであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエステティック施術の選択法。
【請求項4】
前記目の周囲のツボは、睛明(せいめい)、陽白(ようはく)、四白(しはく)、上関(じょうかん)及び瞳子?(どうしりょう)から選択される1種乃至は2種以上であることを特徴とする、請求項3に記載のエステティック施術の選択法。
【請求項5】
更に、エステティック施術として、首の後ろのツボ押しを加えて選択することを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載のエステティック施術の選択法。
【請求項6】
前記首の後ろのツボは、天柱(てんちゅう)及び/又は風池(ふうち)であることを特徴とする、請求項5に記載のエステティック施術の選択法。
【請求項7】
以下の工程に従って施術を選択することを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載のエステティック施術の選択法。
(工程1)被施術希望者の近点位置を計測する。
(工程2)前記近点位置が15cm以上である場合には、睛明(せいめい)、陽白(ようはく)、四白(しはく)、上関(じょうかん)、瞳子?(どうしりょう)、天柱(てんちゅう)及び風池(ふうち)のツボ押しを疲れ目改善の為の施術として選択する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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