説明

疼痛処置に使用可能なアミノホスフィン酸誘導体

本発明は、下記の一般式(I):R−NH−CH(R)−P(=O)(OR)−CH−C(R)(R)−CONH−CH(R)−COOR(I)またはその薬学上許容される塩、異性体もしくは任意の割合の異性体混合物、特に鏡像異性体混合物、特にラセミ混合物に関し、式中、Rは−C(=O)−O−C(R)(R)−OC(=O)−R10基を表し;Rは置換されていてもよい炭化水素に基づく鎖、アリールもしくはヘテロアリール基または複素環で置換されているメチレン基を表し;Rは水素原子または−C(R12)(R13)−OC(=O)−R14基を表し;RおよびRは一緒に、それらを担持する炭素とともに、飽和炭化水素に基づく環または置換されていてもよいピペリジン環を形成するか、あるいはRが水素原子を表し、Rが置換されていてもよいフェニルもしくはベンジル、複素芳香環、または複素環で置換されているメチレン基を表し;Rは置換されていてもよい炭化水素に基づく鎖、または置換されていてもよいフェニルもしくはベンジルを表し;かつ、Rは水素原子またはベンジル、アルキル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、−CHMe−COOR18、−CHR19−OC(=O)R20および−CHR19−OC(=O)OR20基を表す。本発明はまた、特に、疼痛、より有利には神経因性および神経炎症性疼痛の処置のための医薬品としてのこれらの化合物の使用、それらの合成方法ならびにそれらを含有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、アミノホスフィン酸化合物、その製造方法および過度の痛覚により引き起こされる神経因性痛、神経炎症性痛、術後痛または鋭痛などの疼痛の処置におけるその使用に関する。
【0002】
侵害受容流入の知覚、伝達および調節は、複数の神経伝達物質、特にエンケファリンに依存する。
【0003】
エンケファリン(Met−エンケファリンおよびLeu−エンケファリン)は、哺乳類の脳で初めて検出されたペンタペプチドである(Hugues Nature 1975, 258, 577)。エンケファリンは本質的に、機能と部位の異なる(Waksman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 1986, 83, 152)2つの受容体種μおよびδ受容体と結合する(Lord et al. Nature 1977, 267, 495)。
【0004】
エンケファリンの抗侵害受容特性は外因性エンケファリンの脳室内投与の後に実証された(Belluzi Nature 1976, 260, 625)。しかしながら、この応答は、これらのペプチドが酵素活性によって極めて急速に代謝されるために非常に一時的なものである。酵素分解耐性となるように改変された合成エンケファリン類似体はモルヒネと同等の抗侵害受容特性を示したが、モルヒネと同じ有害な副作用も示した。
【0005】
さらに、エンケファリン(Tyr−Gly−Gly−Phe−MetおよびTyr−Gly−Gly−Phe−Leu)は、これらのペプチドのGly−Phe結合を切断するネプリライシン(EP3.4.24.11、NEP)(Malfroy et al. Nature 1978, 276, 523)およびTyr−Gly結合を切断するアミノペプチダーゼN(EC3.4.11.2、APN)(Waksman et al. Eur. J. Pharmacol. 1985, 117, 233; Roques et al. Pharmacological Reviews 1993, 45, 87-146)の2つの亜鉛メタロペプチダーゼにより生理学的に不活性化されることが知られている。
【0006】
内因性エンケファリンをその酵素分解から完全に保護することによるこれら2つの酵素活性の阻害(Bourgoin et al. J. Pharm. Exp. Ther. 1986, 238, 360)は、これらのニューロペプチドの薬理活性、特に、鎮痛活性および抗鬱活性を示す(Roques Trends Pharmacol. Sci. 2000, 21, 475; Jutkiewicz CNS Drugs Reviews 2007, 13, 192-206)。
【0007】
細菌の研究では、エンケファリン、NEPおよびAPN不活性化酵素ならびにオピオイド受容体からなるエンケファリン作動系は、侵害受容器(nocioceptors)に、すなわち、疼痛流入を伝達する知覚神経の最末端に存在することが実証された(M.J. Millan Prog. in Neurobiology, 57, 1999, 1-164)。この経路では、
i)プレプロエンケファリン遺伝子は脊髄神経の背中腺で発現され、侵害受容器の末梢に輸送され(Antunes-Bras J et al. Neuroscience 2001, 103, 1073-1083)、
ii)エンケファリンは損傷組織に誘引された免疫細胞で多量に発現され(Przewlocki R et al. Neuroscience, 1992, 48(2), 491-500)、これらの細胞から傷害部位に放出され(Rittner HL et al. FASEB J. 2006, 20, 2627-2629)、
iii)オピオイド受容体は末梢端に存在し(Hassan AHS et al. Neuroscience 1993, 55, 185-195)、
iv)最後に、2つのNEPおよびAPNペプチダーゼは活性炎症により動員される白血球で増強される(Salzet M et al. Trends in Neuroscience 2000, 23, 550-555)。
【0008】
先行技術に記載されている両酵素活性の混成阻害剤は、2つの主要なファミリーに分類することができるプロドラッグである。
【0009】
第一のファミリーは、ジスルフィド橋を介して強力なNEP阻害剤と強力なAPN阻害剤を結びつけているアミノ酸誘導体からなる(FR2651229、J. Med. Chem. 1992, 35, 2473)。これらの分子は優れた静脈内(iv)抗侵害受容活性を示す。より溶解度の高い分子の新たな生成は、満足のいく経口活性を有する化合物の獲得を可能にする(FR2892413、FR2892414およびFR08/53092)。
【0010】
第二のファミリーは、APNおよびNEPを一緒に阻害する化合物を含んでなる。それらはヒドロキシム酸官能化合物(FR2518088およびFR2605004)またはアミノホスフィン酸化合物(FR2755135およびFR2777780)のいずれかである。
【0011】
これらの文献に記載されているヒドロキシム酸化合物は、優れたin vitroおよび脳室内投与後のin vivo活性を示す。これは特に以下の刊行物(Eur. J. Pharmacol. 1984, 102, 525-528; Eur. J. Pharmacol. 1989, 165, 199-207; Eur. J. Pharmacol. 1991, 192, 253-262)で実証されている。関節炎ラットモデルにおけるiv投与後にも有意な活性が見られた(Brain Research 1989, 497, 94-101)。
【0012】
出願FR2755135およびFR2777780に記載されているアミノホスフィン酸化合物は、末端の窒素原子に遊離アミン官能基かイミン官能基のいずれかを有する。しかしながら、発明者らによれば、生理学的条件下で、このようなイミン官能基を有する化合物は2つのペプチダーゼNEPおよびAPNの活性を阻害しないことが認められた。本発明者らは、活性を確保するためにはプロドラッグが遊離アミン官能基を再生することが重要であり、これは生理学的条件下、イミンの存在下では可能でないということを発見した。
【0013】
出願FR2755135に記載されている化合物では、ホスフィン酸官能基は遊離のままであるか、またはアルキルまたはベンジルである保護基により保護される。しかしながら、ホスフィン酸官能基が保護されていない場合には活性は低下することが記載されている(Hecker S. J. and Erion M. D. J. Med. Chem. 2008, 51, 2328-2345)。
【0014】
出願FR2777780に記載されている化合物では、ホスフィン酸官能基は、
−CH(X)−O−C(O)−Y基(ここで、X,Y=アルキルまたはフェニルか、
式−CH−CH−S−CO−W(ここで、W=アルキルまたはフェニル)を有するS−アシルチオエチル(SATE)エステル基
のいずれかである保護基により保護されている。
【0015】
しかしながら、このSATE基は、ヒト身体におけるチオエステルの加水分解により生じる環状生成物(エチレンスルフィド)の毒性のためにヒト療法には使用できない(Hecker S. J. and Erion M. D. J. Med. Chem. 2008, 51, 2328-2345)。
【0016】
さらに、本発明者らは、ホスフィン酸官能基を保護する−CH(X)−O−C(O)−Y基および遊離アミン官能基が一緒に存在することで不活性な転位生成物の形成(加水分解に適さないアミド−N−C(O)−Yの形成;実施例13参照)が起こることを初めて見出した。
【0017】
しかしながら、出願FR2777780に記載されているアミノホスフィン酸誘導体の場合、長時間作用を有する満足のいく抗侵害受容活性が、動物痛覚モデルにおいて、検討分子をオイル、エタノールおよび水の混合物で溶解させた際のivまたはip(腹腔内)投与後に示された(J. Med. Chem. 2000, 43, 1398-1408; J. Med. Chem. 2001, 44, 3523-3530; Pain 2003, 104, 139-148)。しかしながら、これらの分子に、ヒトにおける投与に好適な溶質に十分溶解するものは無く、経口投与後に有意な抗侵害受容活性が検出されたものも無かった。
【発明の開示】
【0018】
よって、本発明の目的の1つは、エンケファリン分解を担う両酵素活性(ネプリライシンおよびアミノペプチダーゼN)を長時間作用で(すなわち、少なくとも2時間)一緒に阻害することができ、従って、経口投与の後またはヒトへの投与に適合した溶質の溶液とした後に該ペプチドの薬理学的特性を有意に増幅することができる、安定な新規アミノホスフィン酸化合物を提供することである。
【0019】
この目的で、アミノホスフィン酸阻害剤の第一級アミン官能基は生理学上許容される一時的保護基で置換され、カルボン酸官能基はエステル化されてもよく、ホスフィン酸官能基は遊離のままであるか、または生理学上許容される一時的保護基で置換された。これらの保護により、極めて満足のいくバイオアベイラビリティを有する非常に安定な分子が得られる。
【0020】
本発明のさらなる目的は、その主要な欠点(耐性、身体的および心的依存、呼吸抑制、便秘、悪心、嘔吐、鎮静など)を持たずに、モルヒネ物質の特性、特に、種々のタイプの疼痛(急性、炎症性、神経因性など)に対する強い鎮痛作用、末梢効果(下痢止め、鎮咳など)とともに挙動に対する有益な効果(疼痛の感情成分の軽減)を有する新規な化合物を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、本発明の化合物と、高用量で有害な副作用を示すことなくその抗侵害受容特性が知られている化合物の間の関連を提供することである。これらの関連はより具体的には、ガバペンチンまたはプレガルビンなどのギャバ誘導体とともに、モルヒネおよびその誘導体、THC(テトラヒドロカンナビノール)およびその誘導体に関する。実際、本願で請求した化合物の1つと上述の鎮痛薬(モルヒネ、THC、ガバペンチン)の1つの活性に満たない用量を組み合わせることにより得られる抗侵害受容反応の高い増強が見られた。
【0022】
同様に、本発明の化合物は有利には、神経因性疼痛の処置の範囲内で、ボツリヌス菌毒素の1つの局所注射と組み合わせることができる(Ranoux D. et al, 2008, Anal. Neurol., 64, 274-283)。本発明の化合物はまた、プリン受容体アンタゴニスト、特に、P2X3受容体(その選択的アンタゴニストの1つが化合物A−317491である)と組み合わせることもできる(Wu et al., 2004, Eur. J. Pharm., 504, 45-53)。
【0023】
よって、本発明はより具体的には、下記一般式(I):
−NH−CH(R)−P(=O)(OR)−CH−C(R)(R)−CONH−CH(R)−COOR(I)
[式中、
−Rは、基−C(=O)−O−C(R)(R)−OC(=O)R10を表し、ここで、
−−RおよびRは互いに独立に、水素原子またはアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基を表し;あるいは
−−(RおよびR)は一緒に、それらを担持する炭素とともに、5つまたは6つの結合を有する飽和炭化水素環を形成し;
−−R10は、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基を表し;
−Rは、
−−1〜6個の炭素原子を含んでなり、
−−−基OR11、SR11もしくはSOR11(ここで、R11は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);
−−−アミノ基;または
−−−フッ素などの1または複数のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル
で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖;
−−フッ素などの1または複数のハロゲン原子で置換されていてもよい、アリールまたはヘテロアリール基、有利にはフェニル;
−−N−オキシド型またはS−オキシド型で酸化されていてもよい硫黄および窒素から選択される1または複数のヘテロ原子を含んでなる、5つまたは6つの結合を有する飽和または芳香族複素環で置換されたメチレン基
を表し;
−Rは、水素原子または式−C(R12)(R13)−OC(=O)−R14を有する基を表し、ここで、
−−R12およびR13は互いに独立に、水素原子またはアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基を表し;あるいは
(R12およびR13)は一緒に、それらを担持する炭素とともに、5つまたは6つの結合を有する飽和炭化水素環を形成し;
−−R14は、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基を表し;
−Rは水素原子を表し、Rは、
−−フェニル核において
−−−フッ素もしくは臭素などの1〜5個のハロゲン原子;
−−−基OR15もしくはSR15(ここで、R15は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);
−−−アミノ基;
−−−CF基;
−−−フェニル基;または
−−−5つまたは6つの結合を有する複素芳香環;
で置換されていてもよいフェニルまたはベンジル;
−−酸素、窒素、硫黄(窒素原子はN−オキシド型で酸化されていてもよい)から選択される1または2個のヘテロ原子を含んでなる5つまたは6つの結合を有する複素芳香環;
−−N−オキシド型またはS−オキシド型で酸化されていてもよい硫黄および窒素から選択される1または複数のヘテロ原子を含んでなる、5つまたは6つの結合を有する飽和もしくは芳香族複素環で置換されたメチレン基
を表し;
およびRは一緒に、それらを担持する炭素とともに、
−5つまたは6つの結合を有する飽和炭化水素環、または
−ピペリジン環(4位において窒素が飽和され、
−−SO−Ph基;
−−CF基;
−−C〜Cアルキル基;
−−C〜Cアシル基;
−−1または複数のハロゲン原子、C〜Cアルキル基もしくはC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいフェニルもしくはベンジル;または
−−C〜Cアルキル基もしくはC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、ピリジンもしくはピリミジンなどの芳香族複素環
で置換されていてもよい)を形成し;
−Rは、
−−1〜6個の炭素原子を含んでなり、
−−−基OR16、SR16、SOR16(式中、R16は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);
−−−COO−BnもしくはCOOH基;
−−−SOH基;または
−−−アミノ基
で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖;
−−フッ素もしくは臭素などの1または複数のハロゲン原子、または基:
−−−CF
−−−OR17(ここで、R17は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);または
−−−ベンジル
で置換されていてもよいフェニル;または
−−フェニル核において
−−−フッ素もしくは臭素などの1または複数のハロゲン原子;
−−−CF基;
−−−基OR17(ここで、R17は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);または
−−−フェニル基
で置換されていてもよいベンジルを表し;
−Rは、
水素原子、ベンジル、C〜Cアルキル、−CHR18−COOR19、−CHR18−OC(=O)R19および−CHR18−OC(=O)OR19(ここで、R18およびR19は互いに独立に、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基を表す)からなる群から選択される基を表す]
に従う化合物またはその薬学上許容される塩に関する。
【0024】
本発明において「薬学上許容される」とは、一般に、生物学的にまたはその他の点でも、安全で無毒かつ望ましくないものではなく、かつ、獣医学およびヒト医薬使用に許容される医薬組成物の製造において使用可能なものを意味する。
【0025】
本発明において化合物の「薬学上許容される塩」とは、本明細書で定義されているように薬学上許容され、かつ、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。本発明の範囲内で、それらは無機または有機塩基を伴って得られる塩からなる。従って、形成される塩は、
【0026】
酸プロトンを、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、Na、KまたはLi)、アルカリ土類金属(例えば、Ca2+またはMg2+)またはアルミニウムイオンで置換するか、または
該プロトンを有機または無機塩基とともに配位させるか
のいずれかからなる。
【0027】
許容される有機塩基としては、アンモニア、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トロメタミンおよび類似のものが挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム(ポタッシュ(potash))、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム(ソーダ)が挙げられる。
【0028】
有利には、本発明による化合物の薬学上許容される塩は、水酸化リチウム、ソーダ、ポタッシュ、アンモニア、式NR(ここで、R、RおよびRは互いに独立に、トリエチルアミンなどの以下に定義されるアルキル基、またはリシンもしくはアルギニンおよびその誘導体などの塩基性アミノ酸を表す)の第三級アミンといった薬学上許容される無機または有機塩基を伴って得られる塩である。
【0029】
「不飽和」とは、本発明によれば、炭化水素鎖が1または複数の不飽和を含んでなることを意味する。「不飽和」とは、本発明によれば、二重結合または三重結合を意味する。
【0030】
「ハロゲン原子」とは、本発明によれば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。有利には、それはフッ素、収差または塩素原子からなる。より有利には、それはフッ素または臭素原子、好ましくはフッ素からなる。
【0031】
「アミノ」基とは、本発明によれば、式−NR’R’’を有する基を意味し、ここで、R’およびR’’は互いに独立に水素原子または1から6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含んでなる飽和もしくは不飽和、直鎖、分枝もしくは環状炭化水素基を表し、R’およびR’’は同時に水素原子を表すことはできず、R’およびR’’は一緒に、それらを担持する窒素原子とともに、2つの基R’およびR’’を担持する窒素以外のヘテロ原子を含まず、5つまたは6つの結合を有する飽和されていてもよい複素環を形成する。特に、アミノ基は、−NHMe、−NHEt、−NHPr、−NHiPr、−NHBu、−NHiBu、−NHtBu、ピペリジニルまたはピロリジニル基であり得る。
【0032】
「アリール」基とは、本発明によれば、特に断りのない限り、好ましくは5〜10個の炭素原子を含んでなり、かつ、フェニルまたはナフチル基などの1または複数の結合環を含んでなる芳香族化合物を意味する。有利には、それはフェニルからなる。
【0033】
「ヘテロアリール」とは、本発明によれば、1または複数の炭素原子が、例えば硫黄、窒素または酸素原子(窒素原子はN−オキシド型で酸化されていてもよい)などの1または複数の、有利には1〜4個の、より有利には1〜2個のヘテロ原子で置換されている、上記で定義されたアリール基を意味する。ヘテロアリール基の例は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリルまたはインジル基である。
【0034】
「5つまたは6つの結合を有する複素芳香環」とは、本発明によれば、単に5つまたは6つの結合を有する単環を含んでなる上記で定義されたヘテロアリール基を意味する。それは特にチエニル、ピロリル、ピリジニル、ピリミジル、ピロゾロリル、イミダゾリルまたはテトラゾリル基からなる。
【0035】
「複素環」とは、本発明によれば、1または複数の炭素原子が、例えば硫黄、窒素または酸素原子(硫黄および窒素原子はN−オキシド型およびS−オキシド型で酸化されていてもよい)などの1または複数の、有利には1〜4個の、より有利には1〜2個のヘテロ原子で置換されている、有利には5つまたは6つの結合を有する炭化水素環を意味する。特に断りのない限り、この環は飽和または芳香族であり得る。
【0036】
ヘテロ原子が窒素および硫黄から選択される場合、複素環は以下の群:ピペリジニル、ピロリジニル、ピロリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピペラジニル、チアジオゾリル、テトラヒドロチエニルまたはチアゾリルの1つであり得る。
【0037】
「アルキル」とは、本発明によれば、特に断りのない限り、1〜6個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和炭化水素鎖を意味する。それは特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル基からなる。
【0038】
「ヘテロアルキル」とは、本発明によれば、1〜5個の炭素原子または硫黄、窒素もしくは酸素原子などの1もしくは2個のヘテロ原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和炭化水素鎖を意味する。
【0039】
「C〜Cアシル」とは、本発明によれば、CO基を介して分子と結合された、1〜4個の炭素原子を含んでなる上記で定義されたアルキル基を意味する。それは特に、アセチル、ホルミルまたはプロピオニル基からなり得る。
【0040】
「シクロアルキル」とは、本発明によれば、3〜7個の、有利には5〜7個の炭素原子を含んでなる飽和炭化水素環、特に、シクロヘキシル、シクロペンチルまたはシクロヘプチル基を意味する。
【0041】
「シクロヘテロアルキル」とは、本発明によれば、1または複数の炭素原子が、例えば硫黄、窒素または酸素原子(硫黄および窒素原子はN−オキシド型およびS−オキシド型で酸化されていてもよい)などの1または複数の、有利には1〜4個の、より有利には1〜2個のヘテロ原子で置換されている、上記で定義されたシクロアルキル基を意味する。それは特に、ピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロテニル(tetrahydrothenyl)、モルホリニルまたはピペラジニル基からなり得る。
【0042】
「アルコキシ」とは、本発明によれば、酸素原子を介して分子と結合された、上記で定義されたアルキル基を意味する。それは特に、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシまたはtert−ブトキシ基からなり得る。
【0043】
「アリールアルキル」とは、本発明によれば、上記で定義されたアルキル基を介して分子と結合された上記で定義されたアリール基を意味する。それは特に、ベンジル(Bn)基からなる。
【0044】
「ヘテロアリールアルキル」とは、本発明によれば、上記で定義されたアルキル基を介して分子と結合された、定義されたヘテロアリール基を意味する。それは特に、テニルメチル(thenylmethyl)またはフリルメチル基からなる。
【0045】
有利には、基Rは、−C(=O)−O−C(R)(R)−OC(=O)−R10基を表し、ここで、
およびRは互いに独立に、水素原子またはアルキル基を表し;かつ
10はアルキル基を表す。
【0046】
特に、基Rは、基−(C=O)O−CHMe−OC(=O)CHMeを表す。
【0047】
また有利には、基Rは、
1または複数のハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、または
1〜6個の炭素原子を含んでなり、基OR11、SR11もしくはSOR11(R11は上記で定義された通り)またはフッ素原子などの1または複数のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルで置換されていてもよい直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和、好ましくは飽和、炭化水素鎖
を表す。
【0048】
好ましくは、基Rは、アルキル、アリールまたはアリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基、特に、メチル、フェニルまたは−CHCHPh基を表す。
【0049】
好ましい実施形態でもある第一の実施形態によれば、基Rは水素原子を表す。
【0050】
実際、本発明者らは驚くべきことに、ホスフィン酸官能基が保護されてないければ活性が低下することを具体的に示している先行技術の教示(Hecker S.J. and Erion M.D.J. Med. Chem. 2008, 51, 2328-2345)に反して、本発明による化合物は、ホスフィン酸官能基が遊離のままであっても満足のいく活性を有することを見出した。
【0051】
第二の実施形態によれば、基Rは、式−C(R12)(R13)OC(=O)−R14(ここで、R12、R13およびR14は上記で定義された通りである)を有する基を表す。特に、基R12およびR13は互いに独立に水素原子またはアルキル基を表し、R14はアルキル基を表す。それは有利にはR12=R、R13=RおよびR14=R10であり得る。
【0052】
よって、基Rは有利には水素原子または−CHMe−OC(=O)CHMe基を表し、好ましくは、水素原子を表す。
【0053】
本発明の1つの有利な別の実施形態によれば、Rは水素原子を表し、Rはフッ素もしくは臭素などの1〜5個のハロゲン原子で置換されていてもよいベンジル基、フェニルまたは5つもしくは6つの結合を有する複素芳香環を表す。特に、Rは水素原子を表し、Rは、パラ位において、臭素原子などのハロゲン原子で、またはフェニルで置換されたベンジル基を表す。
【0054】
本発明の1つの有利な別の実施形態によれば、RおよびRは一緒に、それらを担持する炭素とともに、その窒素が4位において置換され、かつ、これらの基に関して上記で定義されたように、置換されていてもよい(特に、置換基は−SO−Ph基、C〜Cアシル基、フェニル基であり得る)シクロヘキサンまたはピペリジン環を形成する。
【0055】
好ましくは、基Rは、1〜6個の炭素原子を含んでなり、SOHまたはCOOR16基で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝の飽和または不飽和、好ましくは飽和、炭化水素鎖を表す。有利には、それはメチル基などのアルキル基からなる。
【0056】
また有利には、基Rは、水素原子、またはエチルなどのアルキル基、またはベンジルもしくは−CH(CH)−O−C(=O)−O−Et基を表す。好ましくは、これは水素原子またはベンジル基からなる。
【0057】
本発明の1つの有利な別の実施形態によれば、これらの基は以下の意味を有する:
は基−C(=O)−O−C(R)(R)−OC(=O)R10を表し、ここで、Rは水素原子を表し、RおよびR10はアルキル基を表し;
はアルキル、フェニルまたは−CHCHPh基を表し;
は水素原子を表し;
は水素原子を表し、Rは、パラ位においてハロゲン原子(臭素)で、またはフェニルで置換されているベンジル基を表すか;あるいはRおよびRは一緒に、それらを担持する炭素とともに、シクロヘキサンまたはピペリジン環(窒素が4位において置換され、かつ、−SO−Ph基、C〜Cアシル基またはフェニル基で置換されていてもよい)を形成し;
はアルキル基を表し;
は水素原子またはアルキル基(エチルなど)またはベンジルもしくは−CH(CH)−O−C(=O)−O−Et基を表す。
【0058】
1つの特定の実施形態によれば、該実施形態による化合物は下記の化合物:
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ベンジルエステル、
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸、
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸エチルエステル、
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸エトキシカルボニルオキシ酸エステル、
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{(1−イソブチリルオキシ−エトキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸、
2−(2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ベンジルエステル、
2−(2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸、
2−[2−ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−フェニル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−3−(4−チオフェン−3−イル−フェニル)−プロピオニルアミノ]−プロピオン酸、
2−[2−ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−フェニル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−3−(4−チオフェン−3−イル−フェニル)−プロピオニルアミノ]−3−ヒドロキシプロピオン酸、
2−(3−ビフェニル−4−イル−2−{ヒドロキシ[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−チオフェン−3−イル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸、
2−{3−ビフェニル−4−イル−2−[ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−メトキシカルボニルアミノ−エチル)−ホスフィノイルメチル]−プロピオニルアミノ}−プロピオン酸、
2−ジメチル−プロピオン酸の1−(1−{[3−ビフェニル−4−イル−2−(1−カルボキシ−エチルカルバモイル)−プロピル]−ヒドロキシ−ホスフィノイル}−エチルカルバモイルオキシ)−エチル酸、
2−[(1−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−シクロペンタンカルボニル)−アミノ]−プロピオン酸、
2−[(1−アセチル−4−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−ピペリジン−4−カルボノイル)−アミノ]−プロピオン酸、
2−[(4−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−1−フェニル−ピペリジン−4−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸、
2−[(1−ベンゼンスルホニル−4−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−ピペリジン−4−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸
から選択される。
【0059】
本発明による式(I)を有する化合物は3つの不斉中心、すなわち、両酵素の活性部位と相互作用する個々のR、RおよびR基を担持する炭素を持つ可能性がある。有利には、これら3つの不斉中心が分離され、本発明による化合物の特性を至適化する絶対立体配置を有する、すなわち、
基Rを担持する炭素原子はR型立体配置を有し(鏡像体過剰率>90%);
適用可能であれば、基Rを担持する炭素原子はS型立体配置を有し(ee>90%);
基Rを担持する炭素原子はS型立体配置を有する(ee>90%)。
適用可能であれば、ホスフィン酸立体配置は遊離のままである(一方の鏡像異性体、他方の鏡像異性体またはラセミ混合物を有する可能性がある)。
【0060】
以下、本発明者らは、3つの不斉炭素原子の立体配置が分離され、分子の特性を至適化する個々の絶対立体配置を有する(ee>90%)、本発明による化合物の合成を記載する。所望であれば、当業者には、所望の立体配置を得るために、記載の方法をどのように適合すればよいかが分かる。
【0061】
=H、R=HおよびR≠Hである式(Ia)を有する化合物は、下記のスキーム:
【化1】

に従い、化合物VIとα−アミノエステルを縮合させることにより得られる。
【0062】
この反応は、特にジイソプロピルエチルアミン(DIEA)などの第三級アミンの存在下で、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)または2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)などのカップリング剤の作用を介して行われる。有利には、ジメチルホルムアミド(DMF)がこの工程の溶媒として用いられる。
【0063】
=H、R=HおよびR=Hである化合物は、水素雰囲気中、特にパラジウム/炭素などの触媒の存在下で、当業者に公知の技術を用いてR=Bnである式(Ia)を有する化合物を水素化分解することにより製造することができる。
【0064】
アミノホスフィン酸化合物(VI)は、化合物(II)および(III):
【化2】

から得られる。
【0065】
Zはベンジルオキシカルボニル基を表す。
【0066】
【化3】

【0067】
第一の工程は、ビストリメチルシリルアセトアミドの存在下で化合物(II)と(III)を縮合させて化合物(IV)を得ることからなる。この反応は有利には、溶媒を用いずに70〜120℃の間の温度で行う。
【0068】
化合物(IV)はおよそ65:35の割合のジアステレオ異性体(2R,4S)/(2R,4R)混合物の形で得られる。その後、酢酸エチル、ジエチルエーテル、イソプロパノール、アセトニトリルまたはその混合物などの有機溶媒、好ましくは酢酸エチル中で沈殿させた後、場合により再結晶の手段によってさらなる精製を行うことにより、主要立体異性体(2R,4S)を立体異性体(2R,4R)から分離する。
【0069】
そして、得られた化合物(IV)を、C末端位は鹸化(NaOH)により、N末端位はHBr/CHCOHを作用させることにより順次脱保護して化合物(V)を得る。その後、化合物(V)をAlexander et al., 1988, J. Med. Chem., 31,318の通りに製造したアシルオキシアルキル(p−NO−フェニル)カーボネートと、またはSun et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2001, 11, 1875の通りに製造したアシルオキシアルキルスクシニルカーボネートと、ジオキサン中、NaHCOの存在下で縮合させる。
【0070】
あるいは、化合物(Ia)は、上記のカップリング条件(DMF中、DIEAの存在下、EDCIまたはTBTU)下で、(IV)のベンジルエステルのアルカリ加水分解によって得られた中間体(XI)(Z−NH−CH(R)P(O)OH−CHCH(R)COOH)上へ(VII)を縮合することにより合成することもできる。化合物(XII)はこのようにして得られ、その後、Z基を脱保護すると化合物(XIII)が得られる。これにより、(V)から(VI)への変換に関して上記した方法を用い、(Ia)が得られる。
【化4】

【0071】
(R)型立体配置を有する光学的に純粋な化合物(II)は、Baylis et al. J. Chem. Soc. Perkin Trans I(1984), 2845に記載されている合成プロトコールおよび分離法に従い、アルデヒド(VIII)から製造される。
【化5】

【0072】
Zはベンジルオキシカルボニル基を表す。
【0073】
アクリレート(III)のベンジルエステルは、対応するアクリル酸(X)から、80℃にて、アセトニトリル中、KCOの存在下で、臭化ベンジルの作用を介して製造される。酸(X)は、以下の工程:マロン酸ジエチル上へのアルデヒド(IX)の縮合(工程1)、二重結合の還元とエステル官能基の鹸化(工程2:1)NaBH、2)OH、3)H)およびマンニッヒ(Mannich)反応(工程3)を含んでなる、当業者に周知の慣例のプロトコールにより得られる。
【化6】

【0074】
≠HおよびR=Hである式(Ib)を有する化合物は、中間体(VI)をその類似体(VIbis)に置き換え、化合物s(Ia)に関して記載したものと同じカップリングによって得られる。
【0075】
これは、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)の存在下、保護されたアミノホスフィン酸(IIbis)とメシラートまたはトリフラート(XIV)の形の活性化アルコールを縮合させることにより得られる(McKittrick et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. (1996), 1629)。
【化7】

【0076】
Zはベンジルオキシカルボニル基を表す。
【0077】
化合物(XIV)は式CH(R)(R)−COHを有する対応するカルボン酸から得られる。t−ブチルエステル型でエステル化してCH(R)(R)−COtBu(XV)を生成した後、リチウムジイソプロピルアミド(iPrNLi)の存在下、パラホルムアルデヒドで処理すると、アルコールエステルHOCH−C(R)(R)−COOtBuが得られる。その後、アルコール官能基をメシラートまたはトリフラートの形で活性化して化合物(XIV)を得る。
【化8】

【0078】
カルボン酸tブチルと化合物(VIbis)のホスフィン酸メチルエステルを、塩化メチレン中TFAで脱保護すると、化合物(XIbis)が得られる。合成の終了は上記のように行う。
【0079】
≠HおよびR≠Hである式(Ic)を有する化合物は、R=Hである対応する化合物(Ia)および(Ib)から製造される。ホスフィン酸官能基のアルキル化は、ハラゲノ(halageno)(アシルオキシ)アルキル(ハロゲンは塩素または臭素である)の作用により得られる。このアルキル化は、トルエンまたはクロロホルムなどの溶媒、好ましくはトルエン中、硫酸テトラブチルアンモニウム、DIEA、NaIの存在下で行われる。カルボン酸官能基(R=H)の任意の脱保護は上記のように、ベンジルエステル(R=CHPh)の水素化分解により得られる。
【0080】
より一般には、本発明は、下記の工程:
下式(A):
−NH−CH(R)−P(=O)(OH)−CH−C(R)(R)−COOH(A)
を有する化合物と下式(B):
N−CH(R)−COOR(B)
の間のペプチドカップリングによる、R=Hであり、R、R、R、R、RおよびRが上記で定義された通りであるが、Rは水素原子を表さない化合物(I)の生成;
所望による、ホスフィン酸官能基のR≠H基による置換;
所望による、−COOR官能基の加水分解工程(鹸化または水素化分解);
上記工程のいずれかで得られた化合物(I)の反応媒体の分離
に従う、上記で定義された式(I)を有する化合物の製造方法に関する。
【0081】
この方法の後に、当業者に周知の任意のさらなる置換および/または保護/脱保護反応を行ってもよい。反応媒体分離工程は、抽出、溶媒の蒸発または沈殿および濾過などの当業者に周知の方法を用いて行うことができる。次に必要であれば、得られた化合物を、化合物が結晶性の場合には再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの当業者に周知の技術を用いて精製することができる。
【0082】
本発明はまた、特に、疼痛、特に、(1)神経因性もしくは神経炎症性疼痛、または2)鋭痛(特に急性疼痛)の処置を目的とした医薬品としてのその使用のための上記で定義された式(I)を有する化合物に関する。
【0083】
「神経因性もしくは神経炎症性疼痛」とは、排他的ではないがより具体的には、I型またはII型真性糖尿病、ウイルスまたはレトロウイルス感染、癌化学療法、放射線療法、外科手術(切断患者の幻覚および乳房切除の後遺症を含む)、アルコール依存症、顔面神経痛、外傷(腕神経叢症候群、神経根障害または脊髄根痛(radiculagia)、例えば、坐骨神経痛、下腿痛もしくは胸郭出口症候群など)、繊維筋痛症、レストレスレッグ症候群(restless leg syndrome)、特に関節炎もしくは関節症の急性期により引き起こされる炎症性関節痛、特に関節症により引き起こされる変形性関節痛または腰痛により引き起こされる疼痛を意味する。
【0084】
この神経因性および神経炎症性疼痛は、i)Plantar試験またはホットプレートなどの、推定動物モデルに対する好適な試験を用いて評価される「痛覚過敏(hyperalgia)」と呼ばれる過度な痛覚;ii)本来侵害受容刺激が関係しない領域からの有痛感覚からなる異痛(その軽減は特にVon Frey試験を用いて測定される)を特徴とする。
【0085】
鋭痛は、急性疼痛として解釈されるメッセージを脳に伝達する受容体、チャネルまたはその他の標的の刺激により引き起こされる。「鋭痛」とは、特に、術後痛、癌罹患者の疼痛、神経系に過度な有痛流入を誘導する末梢組織傷害により引き起こされる疼痛を意味する。これは特に、急性疼痛(術後、外傷性、感染性、変性性症状)または慢性疼痛(様々な進行性持続性障害の状態)のいずれかを生じる火傷、外傷、術後の影響および多数の疾患に当てはまる。
【0086】
本発明はまた、疼痛、特に(1)神経因性もしくは神経炎症性疼痛、または(2)鋭痛の処置を目的とした医薬品の製造のための本発明による化合物の使用に関する。本発明はまた、疼痛、特に(1)神経因性もしくは神経炎症性疼痛、または(2)鋭痛を処置するための方法であって、本発明による少なくとも1つの有効量の化合物を、それを必要とするの患者に投与することを含んでなる方法に関する。
【0087】
本発明はまた、上記で定義された式(I)を有する少なくとも1つの化合物と少なくとも1つの薬学上許容されるビヒクルを含んでなる医薬組成物に関する。本発明による化合物は、経口、舌下、非経口、皮下、肺、鼻腔、筋肉内、静脈内、くも膜下腔内、関節内または経皮的経路によって投与することができる。有効成分は慣例の製薬媒体と混合した単位投与形で動物またはヒトに投与することができる。この組成物は、少なくとも1つのさらなる有効物質、特に、モルヒネおよびその誘導体、テトラヒドロカンナビノールおよびその誘導体、ギャバ誘導体(ガバペンチンもしくはプレガバリン)、ボツリヌス菌毒素(ボツリヌス菌毒素A)またはプリン受容体アンタゴニスト(P2X3受容体)からなる群から選択される鎮痛剤を、同じ処方物中に、または異なる形で組み合わせて含んでなり得る。
【0088】
本発明はまた、
(i)上記で定義された式(I)を有する少なくとも1つの化合物と、
(ii)モルヒネおよびその誘導体、テトラヒドロカンナビノールおよびその誘導体、ギャバ誘導体(ガバペンチンもしくはプレガバリン)、ボツリヌス菌毒素(ボツリヌス菌毒素A)およびプリン受容体アンタゴニスト(P2X3受容体)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる有効物質
とを、同時、個別または交互使用のための組合せ製品として含んでなる医薬組成物に関する。
【0089】
これらの組成物および式(I)を有する化合物は医薬品として使用可能である。
【0090】
本発明の1つの有利な別の実施形態によれば、これらの化合物は神経因性または神経炎症性疼痛の処置を意図したものであり、経口投与される。
【0091】
よって、該医薬組成物は好ましくは経口投与向けに処方される。好適な単位投与形としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤および経口懸濁液用の溶液が含まれ、主要有効成分が好適な製薬ビヒクルと混合される。処方物は持続的または遅延型の活性を有する、また、所定量の有効物質を連続的に放出するようなものであってもよい。
【0092】
本発明者らは、経口投与されたこれらの化合物が血液脳関門(BBB)を通過せず、従って、脳に入らないことを確認した。これらの条件下で、本発明による化合物による不活性化によって保護されたこれらのエンケファリンにより生じやすい、わずかであったとしても、脳内オピオイド(エンケファリン)の望ましくない副作用(F. Noble and B.P. Roques, Exp. Op. Ther. Targets, 2007, 11, 145-159)を完全に除外する。
【0093】
この組成物は少なくとも1つのさらなる有効物質を含んでなってもよい。特に、この医薬組成物はガバペンチンもしくはプレガバリンなどのギャバ誘導体、またはP2X3プリン受容体アンタゴニスト、およびボツリヌス菌毒素Aなどのボツリヌス菌毒素からなる群から選択される鎮痛剤を含んでなってもよい。例えば、経口投与向けに処方された式(I)を有する化合物は局所注射されるボツリヌス菌毒素と併用してもよい。
【0094】
本発明の第二の有利な別の実施形態によれば、該化合物は侵害受容性疼痛の処置を意図したものであり、例えば舌下などの経口経路、非経口、皮下、肺、鼻腔、筋肉内、静脈内、くも膜下腔内、関節内または経皮経路、特に静脈内経路により投与される。有効成分は慣例の製薬媒体と混合した単位投与形で動物またはヒトに投与することができる。よって、該医薬組成物は静脈内投与向けに処方される。
【0095】
モルヒネもしくはその誘導体、テトラヒドロカンナビノールもしくはその誘導体、またはP2X3プリン受容体アンタゴニストなどのさらなる鎮痛剤を併用してもよい(同時、個別または交互使用のための組合せ製品として)。
【0096】
考えられる別の実施形態によれば、本発明による化合物は1日当たり0.01mg〜1000mgの間の用量で使用することができ、1日1回単回用量で投与されるか、または1日に複数回の用量で、例えば1日2回等用量で投与される。投与する1日用量は有利には0.01mg〜100mgの間、またはより有利には0.1mg〜10mgの間である。
【実施例】
【0097】
本発明を例示するために以下の例を用いるが、これに限定されるものではない。下記の略号を用いた。
TLC 薄層クロマトグラフィー
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
DMSO ジメチルスルホキシド
eq. 当量
ESI エレクトロスプレーイオン化
min 分
NMR 核磁気共鳴
TFA トリフルオロ酢酸
【0098】
実施例1:(R)(1−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)ホスフィン酸
工程1:(1−((ジフェニルメチル)アミノ−エチル)ホスフィン酸
600mlの水および132ml(1.0モル)のホスフィン酸(水中50%)中、200g(0.91モル)の塩酸ジフェニルメチルアミン(diphenylamethylamine)の混合物を攪拌しながら還流下で沸騰させる。350mlの水中、56ml(1.0モル)のアセトアルデヒド溶液を30分で滴下する。
【0099】
反応をHPLCにより追跡する。2時間後、反応を周囲温度に戻す。得られた白色沈殿を濾過し、水(2×300ml)およびアセトン(2×300ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、225g(90%)。
【0100】
工程2:(1−アミノエチル)−ホスフィン酸
225gの工程1から得られた化合物と2lの6N HClの混合物を還流下で5時間沸騰させる。冷却後、反応媒体を半分濃縮し、3×1.5lのエチルエーテルで抽出する。溶液を蒸発乾固させ、油性残渣(130g)を1.3lのエタノールで処理する。この溶液を0℃まで冷却し、450mlの酸化プロピレンを加える。白色固体が沈殿する。この沈殿を脱水し、エタノール(2×100ml)、エチルエーテル(2×100ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、65g(73%)。
【0101】
(1H) NMR DMSO d6 δ (ppm): 1.26 (3H d,d); 3.32 (1H m); 6.98 (1H d); 8.23 (3H s).
【0102】
工程3:(R)(1−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル−ホスフィン酸
300mlの水中、65g(0.59モル)の工程2から得られた化合物を溶解させ、水酸化ナトリウムを加えることによりpHを93.5に調整する。攪拌下で85mlのクロロギ酸ベンジルを加える。0℃にて1時間後、この混合物を周囲温度に戻し、氷(11)と濃HCl(300ml)の混合物に注ぐ。生じた白色沈殿を脱水し、水(2×100ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、131g(91%)。
【0103】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 30/70, Kromasil C18カラム), Rt=4.6分。
【0104】
ラセミホスフィン酸の分離は、酢酸エチル/イソプロパノール混合物=3.5:1中、Baylis et al.(J. Chem. Soc. Perkin Trans I 1984, 2845)に記載されているように、得られた塩を(R)(+)α−メチルベンジルアミンで再結晶させることにより行う。白色固体、48g(86%)。
【0105】
(1H) NMR DMSO d6 δ (ppm): 1.19 (d.3H); 3.66(m,1H); 5.03 (s.2H); 6.78 (d, 1H); 7.35 (s, 5H); 7.62 (d,1H)
【0106】
実施例2:2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸ベンジルエステル
工程1:2−ビフェニル−4−イルメチル−マロン酸
用いるプロトコールは、Organic Synthesis Coll. Vol. 3 p. 337に記載されているものである。48.4gのマロン酸ジエチルと50gのジフェニル−4−カルボキシアルデヒドを用いると、88.2gのジエチル2−ビフェニル−4−イルメチレン−マロン酸エステルが得られる。
【0107】
この化合物(88g)をエタノール(500ml)中の溶液とし、水素化ホウ素ナトリウム(10.3g)の作用により二重結合を還元する。1時間後、還元が完了し、この反応混合物をエタノール(500ml)で希釈し、0℃にて、1.36lの1N NaOHを加える。
【0108】
エタノールを蒸発させ、水相を酸性化した後、2−ビフェニル−4−イルメチル−マロン酸が白色固体の形態で得られる。64.8g(88%)。
【0109】
HPLC(CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 70:30, Kromasil Cl8カラム), Rt=3.5分。
【0110】
工程2:2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸
工程1(60g)で得られた二酸を300mlのTHFに溶解させ、23.5ml(2当量)のジエチルアミンと19.5ml(4当量)のホルムアルデヒドを加える。この反応媒体を還流下で攪拌しながら20時間沸騰させる。冷却後、THFを蒸発させ、残渣を酢酸エチル(500ml)で処理し、100mlの6N HClで酸性化する。有機相を回収し、2×350mlの水、1×300mlの飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させる。白色粉末が得られる。51g(97%)。
【0111】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 70/30, Kromasil C18カラム), Rt = 6.2分。
【0112】
工程3;2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸ベンジルエステル
2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸(30g)を300mlのアセトニトリルに懸濁させる。21gのKCO、次いで16.5gの臭化ベンジルを加え、15時間80℃まで加熱する。この反応媒体を蒸発させ、残渣を酢酸エチルで処理する。有機相をNaCO溶液、水および飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させる。濾過した後、有機相を蒸発乾固させる。油性生成物、40g(96%)。
【0113】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 80:20, Kromasil C18カラム), Rt =12.7 分.
NMR DMSO d6 δ (ppm):3.6 (2H s); 5.1 (2H S); 5.5 (1H d); 6.2 (1H d); 7.1-7.5 14H m).
【0114】
実施例3:2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ベンジルエステル
【化9】

【0115】
工程1:3−[(2−ベンジルオキシカルボニル−3−ビフェニル−4−イルプロピル)−ヒドロキシ−ホスフィノイル]−酪酸ベンジルエステル
実施例1から得られたアミノホスフィン酸合成素子(9.6g)と実施例2工程3から得られた2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸ベンジルエステル(14.3g)を21mlのビス−トリスメチルシリルアセトアミド(BSA)に加え、この反応混合物を70℃で5時間攪拌する。冷却後、この混合物を酢酸エチルで希釈する。数滴の水を沈殿が生じるまで加える。この懸濁固体を周囲温度で1時間攪拌し、脱水し、酢酸エチルで洗浄し、真空乾燥させる。11.6g(79%)の(R)(S)型立体配置のジアステレオ異性体が得られる。
【0116】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 55:45, Kromasil C18カラム) Rt= 17.8分.
1H NMR (DMSO) d6 δ (ppm) 1.26 (3H dd); 1.81-2.16 (2H m); 2.78-3.12 (3H m); 3.78 (1H qt); 4.94-5.08 (2x2H 2q); 7.12-7.68 (19H arom.) +NH (m).
【0117】
工程2:臭化水素酸1−[(3−ビフェニル−4−イル−2−カルボキシ−プロピル)ヒドロキシ−ホスフィノイル]−エチルアンモニウム
工程1から得られた化合物(10.6g)をTHF(100ml)に懸濁させ、50mlの水中、7.4gの水酸化ナトリウム溶液を0℃で攪拌しながら加える。この混合物を周囲温度で一晩攪拌する。THFを蒸発させ、水相を1N HClでpH1まで酸性化し、酢酸エチルで抽出する。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。白色固体、7.4g(83%)。
【0118】
得られた酸(6g)を60mlの臭化水素酸(CHCOH中45%)中の溶液とし、この溶液を周囲温度で1時間攪拌する。
【0119】
次に、この反応混合物を蒸発乾固させ、真空乾燥させて橙色のガム状生成物を得る。6.9g(99%)。
【0120】
工程3:2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシエトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル(phospinoyl)}−プロピオン酸
工程2から得られた化合物(6.23g)をアセトニトリル(70ml)に懸濁させる。70mlの水中、9.8g(8当量)のNaHCO溶液および4.76g(1.1当量)のイソ酪酸1−[2−(4−ニトロ−フェニル)−アセトキシ]−エチルエステルを順次加える。この混合物を周囲温度で一晩攪拌する。
【0121】
アセトニトリルを蒸発させた後、水相を酢酸エチルで抽出する。有機相を10%クエン酸、飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。未処理の生成物を、溶出剤として9:1CHCl/MeOH混合物、次いで7:3を用いてシリカゲルクロマトグラフィーに付す。白色固体、4.42g(60%)。
【0122】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 50:50, Kromasil C18カラム), Rt=3.7分.
NMR (DMSO d6) δ ppm: 0.95-1.45 (12H m); 1.63-2.15 (2H m); 2.45 (1H m); 2.81-3.03 (3H m); 3.68 (1H m); 6.63 (1H m); 7.20-7.82 (1OH m).
【0123】
工程4:2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスホノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ベンジルエステル
工程3から得られた化合物(500mg)をジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)中の溶液とし、945mg(3当量)のTBTU、1mlのDIEA(6当量)および257mg(1.2当量)のアラニンベンジルエステル塩酸塩を順次加える。この混合物を周囲温度で15分間攪拌し、DMFを蒸発させる。残渣を酢酸エチルで処理し、10%クエン酸溶液、水、10%NaHCO溶液、飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、NaSOで乾燥させる。濾過した後、溶液を真空蒸発させる。白色固体、1g(95%)。
【0124】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 50:50, Kromasil C18カラム) Rt= 8.2 分.
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm): 0.98-1.42 (15H m); 1.48-1.82 (2H m); 2.45 (1H m); 2.69-3.05 (3H m); 3.68 (1H m); 4.33 (1H m); 5.06 (2H s); 6.62 (1H m); 7.21-7.67 (15H m); 8.45 (1H t).
【0125】
実施例4:2−(2−ビフェニル−4−イルメチル(ylmetyl)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ(ethyoxycarbonylamino))−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸
【化10】

【0126】
実施例3から得られた250mgの化合物を10mlのMeOHに溶解させ、125mgの10%Pd/Cを加える。この混合物を水素雰囲気中、標準的な温度および圧力で水素化分解する。1時間後、20mlのCHClを加え、全体をセライトで濾過する。これを蒸発乾固させ、真空乾燥させる。白色固体184mg(89%)。
【0127】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 60:40, Kromasil C18カラム) Rt= 4.l分.
ESI(+) [M+H]+質量=577.
(1H) NMR DMSO d6, δ (ppm): 1-1.5 (15 H m); 1.5-2.0 (2H m); 2.5 (1H, m); 3.0 (3H m); 3.7 (1H m); 4.2 (1H m); 6.2 (1H m); 7.3-7.7 (9H+1H m); 8.4 (1H dd).
【0128】
実施例5:2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ(isobutyrloxy)−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ナトリウム塩
実施例4から得られた87mgの化合物を1mlの水と1mlのアセトニトリルの混合物に溶解させる。12.6mgのNaHCOを加える。得られた溶液を凍結乾燥させ、87mgの予測化合物を得る。
【0129】
実施例6:2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸エチルエステル
【化11】

【0130】
実施例3から得られた化合物(500mg)を実施例3工程4の条件下でアラニンエチルエステル塩酸塩(152mg)とカップリングさせる。得られた粗生成物を、7:3:0.2 CHCl/MeOH/AcOH混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーに付す。白色固体、530mg(88%)。
【0131】
ESI(+) [M+H]+質量=605
1H NMR (DMSO d6) δ (ppm): 1.0-1.5 (18H m); 1.6-1.9 (2H m); 2.5 (1H m); 2.7-3.0 (3H m); 3.7 (1H m); 4.0 (2H q); 4.2 (1H qt); 6.6 (1H m); 7.2-7.7 (9H+1H m); 8.4 (1H dd).
【0132】
実施例7:1−エトキシカルボニルオキシエチルエステルトリフルオロ酢酸アラニン
工程1:N−terブチルオキシカルボニル(terbutyloxycaronyl)−1−アラニン1−エトキシカルボニルオキシエチルエステル
不活性雰囲気中、トリエチルアミン(6.4g、1.2当量)の存在下、N−boc−1−アラニン(boc=tert−ブチルオキシカルボニル)(10g)を100mlの酢酸エチル中の溶液とし、この混合を周囲温度で15分間攪拌する。次に、NaI(1.9g、0.2当量)を加え、炭酸1−クロロエチルエチル(9.38g、1.1当量)を加える。この混合物を還流下で15時間沸騰させる。反応が完了したところで、この混合物を10%NaHCO水溶液(2回)、HOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄する。やや黄色い油状物。12.9g(80%)。
【0133】
TLC(シクロヘキサン/EtOAc: 6:4) Rf=0.73。
【0134】
工程2:1−エトキシカルボニルオキシエチルエステルトリフルオロ酢酸L−アラニン
工程1から得られた化合物(12.9g)を25mlのCHClに溶解させ、0℃にて25mlのトリフルオロ酢酸を加える。この混合物を周囲温度で3時間攪拌する。反応が完了したところで、反応混合物を蒸発乾固させる。残渣をシクロヘキサンで3回処理し、この混合物を再蒸発させて余分なTFAを除去する。やや褐色の油状物、13.4g(99%)。
【0135】
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm):1.2 (3H t); 1.35 (3H dd); 1.45 (3H d); 4.1 (2H q); 6.7 (1H m); 8.3 (3H s).
【0136】
実施例8:2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸1−エトキシカルボニルオキシエチルエステル
【化12】

【0137】
実施例3から得られた化合物(500mg)を、実施例3工程の条件下で実施例7から得られた化合物(500mg、1.2当量)とカップリングさせる。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/MeOH/AcOH: 7:3:0.2)に付す。
【0138】
白色固体、330mg(55%)。
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 70:30, Kromasil C18カラム) Rt=5.4 分.
ESI(+) [M+H]+質量=693
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm) : 1.0-1.4 21Hm); 1.5-2.0 (2H m); 2.5 (1Hm); 2.7-3.0 (3H m); 3.65 (1H m), 4.15 (2H q); 4.25 (2H m); 6.6 (2H m); 7.2-7.7 (9H+1H m); 8.5 (1H dd).
【0139】
実施例9:2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{(1−イソブチリルオキシ−エトキシ)−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸
【化13】

【0140】
工程1:イソ酪酸1−{1−[[2−(1−ベンジルオキシカルボニル−エチルカルバモイル)−3−ビフェニル−4−イル−プロピル]−(1−イソブチリルオキシ−エトキシ)−ホスフィノイル]−エチルカルバモイルオキシ}−エチルエステル
実施例3から得られた最終化合物(350mg)をトルエン中の溶液とする。不活性雰囲気中、90mgの硫酸テトラブチルアンモニウム、(nBu)SO(0.5当量)、NaI(80mg、1当量)、イソ酪酸1−クロロエチルエステル(160mg、4当量)および0.9mlのDIEAを加える。この混合物を3時間120℃まで加熱する。この反応混合物を周囲温度に戻し、50mlの酢酸エチルで希釈し、得られた溶液を水、10%NaHCO水溶液、飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させる。濾過した後、溶媒を蒸発させ、残渣(400mg)を、溶出剤として90:10 CHCl/MeOH混合物を用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。黄色油状物、200mg。
【0141】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 80/20, Kromasil C18カラム) Rt=8.8 分.
Masse ESI(+) [M+H]+質量=781.
【0142】
工程2:2−(2−ビフェニルk−4−イルメチル−3−{(イソブチリルオキシ−エトキシ)−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸
工程1から得られた化合物(200mg)をMeOH(10ml)に溶解させる。40mgの10%を加え、この混合物を水素雰囲気中、標準的な温度および圧力で1時間水素化分化する。この混合物をCHClで希釈し、セライトで濾過する。溶媒を蒸発乾固させ、残渣を凍結乾燥させる。白色固体、106mg(60%)。
【0143】
ESI (+) [M+H]+質量 = 691.
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm) :l.0-l.5 (24H m); 1.5-1.7 (2H m); 2.5 (2H m); 2.7-3.0 (3H m); 3.9 (1H m); 4.2 (1H m); 6.4 (1H m); 6.65 (1H m); 7.2-7.7 (9H+1H m); 8.3 (1H m).
【0144】
実施例10:2−(4−ブロモ−ベンジル)−アクリル酸ベンジルエステル
工程1:2−(4−ブロモ−ベンジル)−アクリル酸
この化合物は、2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸(実施例2)の合成に関して記載されたプロトコールに従い、ビフェニル−4−イル−アセトアルデヒドを4−ブロモベンズアルデヒドに置き換えて合成される。白色固体。
【0145】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 70/30, Kromasil C18カラム) Rt= 4.9 分.
【0146】
工程2:2−(4−ブロモ−フェニル−4−イルメチル−アクリル)酸ベンジルエステル
エステル化は、実施例2工程3に記載されたプロトコールに従って行われる。無色の油状物。
【0147】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/ H2O (0.1% TFA) 70:30, Kromasil C18カラム) Rt= 22.0 分.
NMR (CDC13) δ (ppm): 3.6 (2Hs); 5.2 (2H s); 5.6 (1H d); 6.4 (1H d); 7.1 (2H d);
7.4 (7H m).
【0148】
実施例11:2−(2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ベンジルエステル
【化14】

【0149】
この化合物は、2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸ベンジルエステルの合成に関して記載されたプロトコールに従い、2−(4−ブロモ−ベンジル)−アクリル酸ベンジルエステルを用いて合成される。
【0150】
工程1:3−[(1−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイル]−2−(4−ブロモ−ベンジル)−プロピオン酸ベンジルエステル
実施例1から得られたR型立体配置化合物(5.15g)と実施例10から得られた化合物(7.21g)をBSA(18ml)中の溶液とし、この混合物を75℃で30時間加熱する。この反応混合物を周囲温度に戻し、酢酸エチルで希釈する。有機相を水で洗浄し、蒸発乾固させる。1R,2Sおよび1R/2R型の2つのジアステレオ異性体の、相対比率65:35の混合物に相当する白色固体生成物が得られる。アセトニトリルからの再結晶により、1R,2S異性体が鏡像体過剰率ee>97%で得られる。白色固体、3.35g(42%)。
【0151】
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.2 (3H dd); 1.7-2.2 (2H m); 2.7-3.1 (3H m); 3.8 (1H p); 4.95 (2H dd); 5.05 (2H s); 7.0-7.4 14H m); 7.55 (1H m).
【0152】
工程2:3−((1−アミノエチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイル)−2−(4−ブロモ−ベンジル)−プロピオン酸
工程1から得られた3.3gの化合物を用い、実施例3工程2に記載されたプロトコールに従って、予測化合物2.5g(98%)を白色固体の形で得る。
【0153】
工程3:2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオン酸
工程2から得られた2.5gの化合物を用い、実施例3工程3に記載されたプロトコールに従って、予測化合物を得る。白色固体、2.6g。
【0154】
(M+H)+質量=508-510
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.0-1.5 (12 Hm); 1.7 (2H m); 2.5 (1H m); 2.9 (3H m); 3.8 (1H)m; 6.6 (1H m); 7.1 (2H d); 7.4 (2H d); 7.75 (1H m).
【0155】
工程4:2−(2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ベンジルエステル
工程3から得られた1gの化合物と388mgのアラニンベンジルエステルを用い、実施例3工程4のプロトコールに従って、予測化合物を得る。白色固体。
【0156】
(M+H)+質量=669-671
NMR(DMSOd6) δ (ppm): 1.0-1.3 (6H d); 1.25 (6H m); 1.45 (3H d); 1.6-1.9 (2H m) ; 2.5 (1H m); 2.7-3.0 (3H m); 3.7 (1H m); 4.3 (1H m); 5.0 2H dd)); 6.6 (1H m); 7.10 (2H d); 7.3 (4H s, +2H d); 7.5 (1H m), 8.4 (1H dd).
【0157】
実施例12:2−(2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸
【化15】

【0158】
工程1:3−((1−ベンゾイルカルボニルアミノ−エチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイル)−2−(4−ブロモ−ベンジル)−プロピオン酸
実施例11工程1から得られた化合物(1.2g)をTHF(10ml)に溶解させ、5mlの水中0.7gのNaOHの溶液を加える。この混合物を周囲温度で3時間攪拌する。THFを蒸発させ、水相を1N HCl溶液でpH=1まで酸性化し、酢酸エチルで抽出する。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。白色固体、0.9g(90%)。
【0159】
工程2:2−(3−((1−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイル)−2−(4−ブロモ−ベンジル)−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸t−ブチルエステル
工程1から得られた化合物(0.9g)を窒素中、10mlのDMFに溶解させ、t−ブチルアラニナート塩酸塩(450mg)、2.5mlのDIEA(6当量)および1.98gのTBTU(3当量)を順次加える。この混合物を周囲温度で15分間攪拌し、実施例3の工程4のように反応物を処理する。1.10gの予測生成物(97%)が得られる。
【0160】
工程3:2−(3−((1−アミノ−エチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイル)−2−(4−ブロモ−ベンジル)−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸
工程2で得られた化合物を50:50 CHCl/TFA混合物(40ml)に溶解させ、この混合物を周囲温度で1時間攪拌する。残渣を蒸発乾固させ、水で処理し、凍結乾燥させる。1.0gの予測化合物が得られる。
【0161】
この化合物をHBR/AcOH混合物(10ml)に溶解させ、この溶液を周囲温度で1時間攪拌する。次に、この混合物を減圧下で蒸発させる。残渣を水で処理し、凍結乾燥させる。930mgの予測生成物が得られる。
【0162】
工程4:2−(2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸
上記の化合物を15mlのCHClに溶解させる。0.76gの炭酸イソブチルオキシエチルスクシンイミジルと1.87mlのDIEAを加え、この混合物を周囲温度で1時間攪拌する。次に、この混合物をHOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。粗生成物をHPLCにより精製する。
【0163】
HPLC (ACE C18カラム, 40:60 CH3CN(0, 1% TFA) /H2O (O.1%TFA) ) Rt=8.66 分.
ESI: (M+H)+= 578-580
NMR (DMSO d6) δ (ppm): 1.0 (6H d); 1.1 (3H m); 1.2 (3H d); 1.35 (3H d); 1.6-1.9 (2H m); 2.5 (1H m); 2.7-2.9 (3H m); 3.7 (1H m); 4.1 (1H m); 6.6 (1H m); 7.1 (2H d); 7.4 (2H,d); 7.6 (1H dd); 8.2 (1H dd).
【0164】
実施例13:(R)−ベンジルオキシカルボニルアミノ((R)-benzyloxycarbonylamin))(チオフェン−3−イル)メチル−ホスフィン酸
【化16】

【0165】
工程1:(ベンズヒドリルアミノ)(チオフェン−3−イル)メチル−ホスフィン酸
60mlの無水エタノール中、20.0g(80ミリモル)のオルトリン酸ジフェニルメチルアミンの混合物を還流下で攪拌しながら沸騰させる。19mlのエタノール中、160.0ミリモルの3−チオフェンカルボキシアルデヒドの溶液を30分で滴下する。
【0166】
反応をHPLCにより追跡する。2.5時間後、反応を周囲温度に戻す。この混合物にEtO/アセトン混合物(60ml)を加える。得られた白色沈殿を濾過し、水(2×50ml)およびアセトン(2×50ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、15.4g(56%)。
【0167】
工程2:アミノ(チオフェン−3−イル)メチルホスフィン酸
工程1から得られた15gの化合物と122mlの6N HClの混合物を還流下で2時間沸騰させる。冷却後、反応媒体を半分濃縮し、3×1.5lのエチルエーテルで抽出する。溶液を蒸発乾固させ、油性残渣を120mlのエタノールで処理する。溶液を0℃まで冷却し、30mlの酸化プロピレンを加える。白色固体が沈殿する。この沈殿を脱水し、エタノール(2×20ml)、エチルエーテル(2×10ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、7.32g(95.1%)。
【0168】
(1H) NMR DMSO d6, δ (ppm): 4.92 (1H dd); 6.77 (1H, d); 7.10-7.50 (3H, m); 8.23 (3H m).
【0169】
工程3:(ベンジルオキシカルボニルアミノ)(チオフェン−3−イル)メチル−ホスフィン酸
工程2から得られた化合物を25mlのジアキサン(diaxane)に懸濁させる。水酸化ナトリウム(23ml)を加えることにより、pHを9.5に調整する。6.46mlのクロロギ酸ベンジルを攪拌しながら加える。0℃で3時間後、この混合物を周囲温度に戻し、氷(1L)と濃HCl(30ml)の混合物に注ぐ。生じた白色沈殿を脱水し、水(2×20ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、7.09g(47%)。
【0170】
HPLC (CH3CN (0.1% TFA)/H2O (0.1% TFA) 70:30, Kromasil C18カラム), Rt: 12.19分.
【0171】
ラセミホスフィン酸の分離は、酢酸エチル/イソプロパノール混合物=3.5:1中、Baylis et al.(J. Chem. Soc. Perkin Trans I 1984, 2845)に記載されているように、得られた塩を(R)(+)α−メチルベンジルアミンで再結晶させることにより行う。白色固体、1.42g(27%)。
【0172】
(1H) NMR DMSO d6 δ (ppm): 4.92 (1H dd); 5.05 (2H, s); 6.77 (1H, d); 7.10-7.50 (8H, m); 8.20 (1H, d).
【0173】
実施例14:(R)−(ベンゾイルカルボニルアミノ)(フェニル)メチル−ホスフィン酸
【化17】

【0174】
工程1:(ベンズヒドリルアミノ)(フェニル)メチルホスフィン酸
75mlの無水エタノール中、24.95g(100ミリモル)のオルトリン酸ジフェニルメチルアミンの混合物を還流下で攪拌しながら沸騰させる。24mlのエタノール中、200ミリモルのベンズアルデヒドの溶液を30分で滴下する。反応をHPLCにより追跡する。2.5時間後、反応を周囲温度に戻す。この混合物にEtO/アセトン混合物(75ml)を加える。得られた白色沈殿を濾過し、水(2×60ml)およびアセトン(2×60ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、20.2g(60.1%)。
【0175】
工程2:アミノ(フェニル)メチルホスフィン酸
工程1から得られた20gの化合物と160mlの6N HClの混合物を還流下で2時間沸騰させる。
【0176】
冷却後、反応媒体を半分濃縮し、3×1.5lのエチルエーテルで抽出する。溶液を蒸発乾固させ、油性残渣を160mlのエタノールで処理する。溶液を0℃まで冷却し、40mlの酸化プロピレンを加える。白色固体が沈殿する。この沈殿を脱水し、エタノール(2×20ml)、エチルエーテル(2×10ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、7.25g(95.3%)。
【0177】
(1H) NMR DMSO d6 δ (ppm): 4.92 (1H dd); 6.77 (1H, d); 7.10-7.50 (5H, m); 8.23 (3H, m).
【0178】
工程3:(ベンジルオキシカルボニルアミノ)(フェニル)メチル−ホスフィン酸
工程2から得られた化合物を25mlのジアキサン(diaxane)に懸濁させる。水酸化ナトリウム(23ml)を加えることにより、pHを9.5に調整する。6.46mlのクロロギ酸ベンジルを攪拌しながら加える。0℃で3時間後、この混合物を周囲温度に戻し、氷(1L)と濃HCl(30ml)の混合物に注ぐ。生じた白色沈殿を脱水し、水(2×20ml)で洗浄し、乾燥させる。白色固体、11.44g(88.5%)。
【0179】
HPLC (CH3CN (0.1% TFA)/H2O (0.1% TFA) 40:60, Kromasil C18カラム), Rt: 3.90分。
【0180】
ラセミホスフィン酸の分離は、酢酸エチル/イソプロパノール混合物=3.5:1中、Baylis et al.(J. Chem. Soc. Perkin Trans I 1984, 2845)に記載されているように、得られた塩を(R)(+)α−メチルベンジルアミンで再結晶させることにより行う。白色固体、3.9g(34.0%)。
【0181】
(1H) NMR DMSO d6 δ (ppm) : 4.92 (1H dd); 5.0 (2H, s); 6.77 (1H, d); 7.10-7.50 (10H, m); 8.31 (1H, d).
【0182】
実施例15:2−(4−チオフェン−3−イル−ベンジル)−アクリル酸メチルエステル
この化合物は、2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸(実施例2)の合成に関して記載されたプロトコールに従い、ビフェニル−4−イル−アセトアルデヒドを4−ブロモベンズアルデヒドに置き換えて合成される。白色固体(48.0%)。
【0183】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 70:30, Kromasil C18カラム) Rt= 11.28 min.
【0184】
実施例16:2−[2−{ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−フェニル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−3−(4−チオフェン−3−イル−フェニル)−プロピオニルアミノ]−プロピオン酸
【化18】

【0185】
この化合物は、実施例3に記載されたプロトコールに従い、2−ビフェニル−4−イルメチル−アクリル酸ベンジルエステルを2−(4−チオフェン−3−イル−ベンジル)−アクリル酸メチルエステル(実施例15)に置き換えて合成される。
【0186】
工程1:3−[(1−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイル]−2−(4−チオフェン−3−イル−ベンジル)−プロピオン酸エチルエステル
実施例14から得られたR型立体配置の化合物(15.42g;1.2当量)と実施例15から得られた化合物(13.82g;1.0当量)をBSA(50ml)中の溶液とし、この混合物を15時間75℃で加熱する。この反応混合物を周囲温度に戻し、酢酸エチルで希釈する。有機相を水で洗浄し、蒸発乾固させる。1R,2Sと1R,2Rの2つのジアステレオ異性体の、相対比率65:35の混合物に相当する白色固体生成物が得られる。白色固体、17.26g(68%)。
【0187】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 70:30, Kromasil C18カラム) Rt= 6.51 min.
NMR (DMSOd6) δ (ppm) 1.50 (3H, t), 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3.12; (2H, m), 3.68 (3H, s); 3.78 (1H, qt); 4.50 (2H, q); 4.90 (1H, m); 5.20 (2H, s); 7.12-8.15 (17 芳香族+NH , m).
【0188】
工程2:(R)−アミノ(フェニル)メチル−3−エトキシ−3−オキソ−2−(4−チオフェン−3−イル)ベンジル)プロピル)ホスフィン酸エチルエステルヒドロブロミド
工程1から得られた17.86gの化合物をAcOH中48%のHBr180mlに溶解させる。この混合物を周囲温度で1時間攪拌し、この混合物を減圧下で蒸発させて粗生成物を油状物の形で得る(100%)。
【0189】
NMR (DMSOd6) δ (ppm) 1.50 (3H, t); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3.12, (2H, m); 3.68 (3H, s); 3.78 (1H, qt); 4.50 (2H, q); 4.90 (1H, m); 5.20 (2H, s); 7.12-8.0 (12 H, m); 8.15 (3H, m).
【0190】
工程3:(R)−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)(フェニル)メチル((S)−3−エトキシ−3−オキソ−2−(4−(チオフェン−3−イル)ベンジル)プロピル)ホスフィン酸エチルエステル
工程2から得られた化合物(30.9mmol)を300mlのDMFに溶解させる。この溶液に、50mlのDMF中、EtN(35ml、250mmol、8当量)およびBocO(6.75g、1当量)を加える。この混合物を周囲温度で一晩攪拌する。DMFを減圧下で蒸発させ、この混合物をEtoAcで処理する。有機相を10%クエン酸溶液、10%NaHCO溶液、飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、15.16gの生成物(90.2%)を得る。
【0191】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 70:30, Kromasil C18カラム) Rt= 5.42分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm) 1.50 (3H, t); 1.45 (9H, s); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3.12, (2H, m); 3.78 (1H, qt); 4.50 (2H, q); 4.90 (1H, m); 7.12-8.0 (12H 芳香族 + NH, m).
【0192】
工程4:3−(((R)−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)(フェニル)メチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)−2−(4−(チオフェン−3−イル)ベンジル)プロパン酸
工程3から得られた化合物(15.16g;27.88mmol)を280mlのアセトンに溶解させ、1N NaOH(278.8ml、10当量)を滴下する。この混合物を周囲温度で一晩攪拌し、アセトンを減圧下で蒸発させる。この混合物をEtoAcで処理する。水相を抽出し、1N HClで酸性化する。次に、水相をEtoAcで抽出する。その後、有機相をHO、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させ、13.73gの油状物(95%)を得る。
【0193】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 50:50, Kromasil C18カラム) Rt= 11.40分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm) 1.45 (9H, s); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3.12, (2H, m); 3.78 (1H, qt); 4.90 (1H, m); 7.12-8.0 (12H 芳香族 + NH, m).
【0194】
工程5:(R)−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)(フェニル)(メチル((S)−3−((S)−1−メトキシ−1−オキソプロパン−2−イルアミノ)−3−オキソ−2−(4−(チオフェン−3−イル)ベンジル)プロピル)ホスフィン酸メチルエステル
工程4から得られた150mgの化合物と52mgのアラニンメチルエステルを用い、実施例3工程4のプロトコールに従って、予測化合物が得られる。
【0195】
予測されるジアステレオ異性体が、溶出系として50:50 CHCN(0.1%TFA)/HO(0.1%TFA)を用いるKromasil C18カラムでの半分取HPLCにより得られる。白色固体:50mg(30.0%)。
【0196】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 70:30, Kromasil C18カラム) Rt= 6.0分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.10-1.50 (12H, m); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3.12, (3H, m); 3.48 (3H, s); 3.78 (1H, qt); 4.25 (1H, d); 4.90 (1H, m); 7.12-7.81 (12 H + NH, m); 8.5 (1H, d).
【0197】
工程6:(R)−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)(フェニル)メチル((S)−3−((S)−1−メトキシ−1−オキシプロパン−2−イルアミノ)−3−オキソ−2−(4−(チオフェン−3−イル)ベンジル)プロピル)ホスフィン酸
工程5から得られた50mgの化合物を2mlのアセトン中の溶液とする。800μlの1N NaOH(10当量)を加え、この混合物を周囲温度で2.5時間攪拌し、アセトンを減圧下で蒸発させる。この混合物をEtoAcで処理する。水相を抽出し、1N HClで酸性化する。その後、水相をEtoAcで抽出する。次に、有機相をHO、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させ、48mg(98%)を得る。
【0198】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 50:50, Kromasil C18カラム) Rt= 7.91分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm) : 1.10-1.50 (12H, m); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3.12, (3H, m); 3.78 (1H, qt); 4.25 (1H, d); 4.90 (1H, m); 7.12-7.81 (12 H + NH, m); 8.5 (1H, d).
【0199】
工程7:(2S)−2−((2S)−3−(((R)−アミノ(フェニル)メチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)−2−(4−(チオフェン−3−イル)ベンジル)プロパンアミド)プロパン酸トリフルオロアセテート
工程6から得られた48mgの化合物を4mlのDCM中の溶液とする。60μlのトリフルオロ酢酸を加え、この混合物を0℃で45分間攪拌する。この混合物を減圧下で蒸発させ、49mg(100%)を得る。
【0200】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 50:50, Kromasil C18カラム) Rt= 2.60分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.20 (3H, d); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3.12, (3H, m); 3.78 1H (qt.); 4.25 (1H, d); 4.90 (1H, m); 7.12-7.81 (12H, m); 8.4 (1H, d); 8.7 (3H, m).
【0201】
工程8:2−[2−{ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニル−アミノ)−フェニル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−3−(4−チオフェン−3−イル−フェニル)−プロピオニルアミノ]−プロピオン酸
上記の化合物を1mlのCHCNと340μlの2N NaHCOに溶解させ、34mgの炭酸イソブチルオキシエチルスクシンイミド(1.2当量)を加え、この混合物を60℃で1時間攪拌する。この混合物を酢酸エチルで処理し、HOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。未処理の生成物をHPLCで精製する。
【0202】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 38:62, Atlantis T3カラム) Rt=10.52分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.0-1.3 (6H d); 1.20 (3H, d); 1.25 (3H, d); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3.12, (3H, m); 3.78 1H (qt.); 4.25 (1H, d); 4.90 (1H, m); 6.64 (1H m); 7.12-7.81 (13H, m); 8.28 (1H, d).
【0203】
実施例17:2−[2−{ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−フェニル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−3−(4−チオフェン−3−イル−フェニル)−プロピオニルアミノ]−3−ヒドロキシプロピオン酸
【化19】

【0204】
この化合物は、実施例16に記載されたプロトコールに従い、アラニンメチルエステルをセリンメチルエステル(O−tBu)に置き換えて合成される。
【0205】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 38:62, Atlantis T3カラム) Rt= 10.02分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm) : 1.0-1.3 (6H, d); 1.20 (3H, d); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78- 3.12, (3H, m); 3.40-3.60 (2H, m); 3.78 (1H, qt); 4.25 (1H, d); 4.90 (1H, m); 6.64 (1H m); 7.12-7.81 (13H, m); 8.28 (1H, d).
【0206】
実施例18:2−(3−ビフェニル−4−イル−2−{ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−チオフェン−3−イル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸
【化20】

【0207】
工程1:3−(((R)−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)(チオフェン−3−イル)メチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)−2−(ビフェニル−4−イルメチル)プロパン酸
実施例13から得られたR型立体配置の化合物(660mg;1.0当量)と実施例2から得られた化合物(642mg;1.2当量)をBSA(5ml)中の溶液とし、この混合物を15時間75℃で加熱する。この反応混合物を周囲温度に戻し、酢酸エチルで希釈する。有機相を水で洗浄し、蒸発乾固させる。1R,2Sと1R,2Rの2つのジアステレオ異性体の、相対比率65:35の混合物に相当する白色固体生成物が得られる。白色固体、1.4g(100%)。
【0208】
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.60-2.00 (2H, m); 2.78-3.12, (2H, m); 3.78 (1H, qt); 4.90 (1H, m); 5.20 (2H, s); 7.12-8.15 (17H 芳香族+NH , m).
【0209】
工程2:(R)−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)(チオフェン−3−イル)メチル(2−(ビフェニル−4−イルメチル)−3−((S)−1−メトキシ−1−オキソプロパン−2−イルアミノ)−3−オキソプロピル)ホスフィン酸
工程1から得られた2.12mmolの化合物と2.75mmolのアラニンメチルエステルを用い、実施例3工程4のプロトコールに従って予測化合物を得る。白色固体:1.40g(90.0%)。
【0210】
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.25-1.40 (3H, m); 1.60-2.00 (2H, m); 2.78-3.12, (2H, m); 3.40 (3H, s); 3.78 (1H, qt); 4.25 (1H, m); 4.90 (1H, m); 5.20 (2H, s); 7.12-8.15 (17H 芳香族 +NH , m).
【0211】
工程3:2−{2−[(ベンジルオキシカルボニルアミノ−チオフェン−3−イル−メチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイルメチル]−3−ビフェニル−4−イル−プロピオニルアミノ}−プロピオン酸
工程2から得られた100mgの化合物を4mlのアセトン中の溶液とする。1.6mlの1N NaOH(10当量)を加え、この混合物を周囲温度で2.5時間攪拌し、アセトンを減圧下で蒸発させる。この混合物をEtoAcで処理する。水相を抽出し、1N HClで酸性化する。次に、水相をEtoAcで抽出する。その後、有機相をHO、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させ、98mg(98%)を得る。
【0212】
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.25-1.40 (3H, m); 1.60-2.00 (2H, m); 2.78-3.12, (2H, m); 3.78 (1H, qt); 4.25 (1H, m); 4.90 (1H, m); 5.20 (2H, s); 7.12-8.15 (17 H 芳香族 +NH , m).
【0213】
工程4:(2S)−2−((2S)−3−(((R)−アミノ(チオフェン−3−イル)メチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)−2−(ビフェニル−4−イルメチル)プロパンアミド)プロパン酸トリフルオロアセテート
工程3から得られた化合物を、酢酸中48%HBr溶液4ml中の溶液とする。この混合物を周囲温度で2時間攪拌する。この混合物を減圧下で蒸発させ、残渣を、溶出系として50:50 CHCN(0.1%TFA)/HO(0.1%TFA)を用いるKromasil C18カラムでの半分取HPLCにより精製する。白色固体:28mg(57.1%)。
【0214】
NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.25-1.40 (3H, m); 1.60-2.00 (2H, m); 2.78-3.12, (2H, m); 3.78 (1H, qt); 4.25 (1H, m); 4.90 (1H, m); 7.12-8.15 (12 H, m); 8.50 (3H, m).
【0215】
工程5:2−(3−ビフェニル−4−イル−2−{ヒドロキシ−{(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−チオフェン−3−イル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸
上記の化合物を1mlのCHCNと195μlの2N NaHCOに溶解させ、20mgの炭酸イソブチルオキシエチルスクシンイミド(1.2当量)を加える。この混合物を60℃で1時間攪拌する。この混合物を酢酸エチルで処理し、HOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。粗生成物をHPLCで精製する。
【0216】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 38:62, Atlantis T3カラム) Rt= 10.42分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm) : 1.0-1.3 (6H d); 1.20 (3H, d); 1.25 (3H, d); 1.80-2.20 (2H, m); 2.80-3.20, (3H, m); 3.75 1H (qt.); 4.25 (1H, d); 4.90 (1H, m); 6.65 (1H m), 7.10-7.80 (13H, m); 8.28 (1H, d).
【0217】
実施例19:2−{3−ビフェニル−4−イル−2−[ヒドロキシ−(1−イソブチリルオキシメトキシカルボニルアミノ−エチル)−ホスフィノイルメチル]−プロピオニルアミン}−プロピオン酸
【化21】

【0218】
工程1:2−[(1−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイルメチル]−3−ビフェニル−4−イル−プロピオン酸
実施例3の工程1から得られた化合物(1.2g)をTHF(10ml)に溶解させ、5mlの水中0.7gのNaOHの溶液を加える。この混合物を周囲温度で3時間攪拌する。THFを蒸発させ、水相を1N HClでpH1まで酸性化し、酢酸エチルで抽出する。有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。白色固体、0.9g(90%)。
【0219】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 38:62, ACE C18カラム) Rt= 17.16分.
1H NMR (DMSOd6): δ (ppm) 1.26 (3H, dd); 1.81-2.16 (2H, m); 2.78-3, 12(3H, m); 3.78 (1H, qt); 5.20 (2H, q); 7.12-7.68 (14H 芳香族 +NH (m). )
【0220】
工程2:2−{2−[(1−ベンジルオキシカルボニルアミノ−エチル)−ヒドロキシ−ホスフィノイルメチル]−3−ビフェニル−4−イル−プロピオニルアミノ}−プロピオン酸t−ブチルエステル
窒素中、工程1から得られた化合物(0.9g)を10mlのDMFに溶解させ、t−ブチルアラニナート塩酸塩(450mg)、2.5mlのDIEA(6当量)および1.98gのTBTU(3当量)を順次加える。この混合物を周囲温度で15分間攪拌し、この反応物を実施例3の工程4のように処理する。1.10gの予測生成物(97%)が得られる。
【0221】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 50:50, ACE C18カラム) Rt= 11.93分.
1H NMR (DMSOd6): δ (ppm) 1.15-1.35 (6H, m); 1.42 (9H, s);l.81-2.16 (2H, m); 2.78-3, 12(3H, m); 3.78 (1H, qt); 4.22 (1H, q); 5.20 (2H, q); 7.12-7.68 (14H 芳香族 +NH (m).
【0222】
工程3:2(2S)−2−((2S)−3−(((R)−1−アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)−2−(ビフェニル−4−イルメチル)プロパンアミド)プロパン酸
工程2で得られた化合物をHBr/AcOH混合物(10ml)に溶解させ、溶液を周囲温度で1時間攪拌する。次に、この混合物を減圧下で蒸発させる。残渣を水で処理し、凍結乾燥させる。930mgの予測化合物が得られる(100%)。
【0223】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 50:50, ACE C18カラム) Rt= 11.93分.
1H NMR (DMSOd6): δ (ppm) 1.15-1.35 (6H, m), 1.42 (9H, s),l.81-2.16 (2H, m), 2.78-3, 12(3H, m), 3.78 (1H, qt), 4.22 (1H, q), 5.20 (2H , q), 7.12-7.68 (14H 芳香族 +NH (m).
【0224】
工程4:2−{3−ビフェニル−4−イル−2−[ヒドロキシ−(1−イソブチリルオキシ−メトキシカルボニルアミノ−エチル)−ホスフィノイルメチル]−プロピオニルアミノ}−プロピオン酸
工程3から得られた300mgの化合物を2mlのCHCNと2mlの2N NaHCOに溶解させ、186mgの炭酸イソブチルオキシエチルスクシンイミド(1.2当量)を加える。この混合物を60℃で1時間攪拌する。この混合物を酢酸エチルで処理し、HOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。粗生成物をHPLCにより精製し、170mgの目的生成物を得る(50.5%)。
【0225】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 38:62, Atlantis T3カラム) Rt= 8.15分. NMR(DMSOd6) δ (ppm) : 1.0-1.3 (6H, d); 1.25 (3H, dd); 1.45 (3H, d); 1.6-1.9 (2H, m); 2.5 (1H, m); 2.7-3.0 (3H, m); 3.7 (1H, m); 4.3 (1H, m); 5.65 (2H, s); 7.10-7.80 (9H, m); 8.4 (1H dd).
【0226】
実施例20:2−ジメチル−プロピオン酸1−(1−{[3−ビフェニル−4−イル−4−イル−2−(1−カルボキシ−エチルカルバモイル)−プロピル]−ヒドロキシ−ホスフィノイル}−エチルカルバモイルオキシ)−エチル酸
【化22】

【0227】
実施例19工程3から得られた394mgの化合物を2mlのCHCNと2mlの2N NaHCOに溶解させ、272mgの炭酸イソブチルオキシエチルスクシンイミド(1.2当量)を加え、この混合物を60℃で1時間攪拌する。この混合物を酢酸エチルで処理し、HOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。粗生成物をHPLCにより精製し、330mgの目的生成物(71.6%)を得る。
【0228】
HPLC (CH3CN (0.1 % TFA)/H2O (0.1% TFA) 38:62, Atlantis T3カラム) Rt= 16.93および 18.41分.
NMR (DMSOd6) δ (ppm) : 1.20 (9H, d); 1.25 (3H, dd); 1.45 (3H, d); 1.6-1.9 (2H, m); 2.5 (1H, m); 2.7-3.0 (3H m); 3.7 (1H, m); 4.3 (1H, m); 6.6 (1H m); 7.10-7.80
(9H, m); 8.4 (1H dd).
【0229】
実施例21:2−[(1−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−シクロペンタンカルボニル)−アミノ]−プロピオン酸
【化23】

【0230】
工程1:シクロペンタン酸t−ブチルエステル
シクロペンタン酸(15g、0.131mol)、tBuOH(2.1ml)およびHSO(750μl)を厚壁フラスコに入れる。次に、−78℃で、およそ150mlの濃イソブチレンを加える。このフラスコを密閉し、周囲温度に戻し、周囲温度で4晩攪拌する。
【0231】
余分なイソブチレンを蒸発させた後、この混合物をEtOで処理し、10%NaHCOで洗浄する。有機相をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、12.03gの予測生成物(収率:80.6%)を得る。
【0232】
NMR (CDCl3) δ (ppm): 1.40 (9H, d); 1.45-1.90 (8H, m); 2.55 (1H, m).
【0233】
工程2:1−(ヒドロキシメチル)シクロペンタンカルボン酸t−ブチルエステル
THF(190ml)中、iPRNH(7.91ml、56.11mmol)の0℃の溶液に、ヘキサン中nBuLi(2.5M、23.3ml、58.17mmol、1.04当量)を加える。30分後、この混合物を−78℃まで冷却し、窒素中30分で、25mlのTHF中、工程1から得られた化合物(9.54g、56.11mmol)の溶液を加える。この混合物を−78℃で1時間攪拌し、パラホルムアルデヒド(5当量、8.37g)を加え、この混合物を−78℃で1時間、そして周囲温度で12時間攪拌する。
【0234】
190mlの飽和NHCl溶液を加え、この混合物をEtoAc(2×200ml)で抽出する。有機相を1N HCl、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、目的生成物(収率:60%)を得る。
【0235】
NMR (CDCl3) δ (ppm): 1.40 (9H, d); 1.45-1.90 (8H, m); 3.50 (2H, s).
HPLC Atlantis T3 4.6 x 100mm, 3μm、 勾配:30分で、CH3CN (0.1% TFA)/H2O (0.1% TFA)10〜90% CH3CN Rt: 12.43分.
【0236】
工程3:(1R)−1−(メトキシヒドロホスホリル)エチルカルバミン酸ベンジル
窒素下、実施例3工程2から得られた化合物(6g、24.67mmol)をMeOH/トルエン混合物に溶解させる。トリメチルシリルジアゾメタン溶液を、色が変わらなくなるまで(ガス発生の終了に相当する)滴下する。この混合物を周囲温度で1時間攪拌し、トルエンを減圧下で蒸発させる。この混合物をEtoAcで抽出する。有機相を10%NaHCO、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、5.75gの目的生成物(収率90.7%)を得る。
【0237】
NMR (DMSO d6) δ ppm: 1.20-1.35 (3H, m); 3.60 (2H, m); 3.70-4.10 (1H, m); 5.05 (2H, d); 6.90 (1H, m); 7.20-7.50 (5H, m); 7.75 (1H, m).
HPLC Atlantis T3 4.6 x 100mm、3μm, 30分でCH3CN (0.1% TFA)/H2O (0.1% TFA)30〜CH3CN Rt: 4.30および 4.48分.
【0238】
工程4:1−((トリフルオロメチルスルホニルオキシ)メチル)シクロペンタン酸tert−ブチルエステル
6.80ml(84.2mmol)のピリジンと50mlのジクロロメタンの混合物を窒素中、−78℃まで冷却する。無水トリフリック(triflic anhydride)溶液、7mlのCHCl中、6.80g(24.14mmol)を、臭素バイアルを用いて加える。10分後、14mlのCHCl中、工程2から得られた3.4gの化合物(17mmol)の溶液を滴下する。この混合物を−78℃で30分間攪拌し、周囲温度に戻す。300mlのヘキサンを加える。有機相を1N NaOH、HO、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、5.67gの目的生成物(収率:100%)を得、そのまま次の工程に用いる。
【0239】
NMR (CDCl3) δ (ppm): 1.40 (9H, d); 1.45-1.90 (8H, m); 4.65 (2H, s).
【0240】
工程5:1((((R)−1−ベンジルオキシカルボニルアミノ)エチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)シクロペンタンカルボン
iPrNH(2.19ml、15.64mmol)中、ATHF(17ml)の溶液を0℃まで冷却し、ヘキサン中2.5MのnBuLi 6.23ml(15.64mmol、1.04当量)を加える。15分後、この混合物を−78℃まで冷却し、窒素下で、温度を−60℃未満に保ちながら、28mlのTHF中、工程3から得られた化合物(3.64g、14.16mmol)の溶液を加える。この混合物を−78℃で10分間攪拌し、15mlのTHF中、工程4から得られた化合物(17mmol)を加え、この混合物を−78℃で15分間、そして周囲温度で4時間攪拌する。
この混合物をEtoAcで希釈する。有機相を1N HCl、10%NaHCO、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮する。
【0241】
得られた粗生成物を10mlのCHCl中の溶液とし、3.2mlのTFAを加える。この混合物を0℃で2時間攪拌する。蒸発乾固させた後、予測生成物を、ACE C18カラム、CHCN(0.1%TFA)/HO(0.1%TFA)40:60での半分取HPLCにより精製し、120mgの純粋な生成物(収率:29.4%)を得る。
【0242】
NMR (DMSO d6) δ (ppm): 1.20-1.35 (3H, m); 1.50-2.20 (10H, m); 3.75 (1H, q); 5.05 (2H, d); 5.05 (2H, d); 7.20-7.60 (6H, m).
HPLC ACE C18 4.6x250mm, 5μm, CH3CN (0.1% TFA)/H2O (0.1% TFA) 40:60, Rt :5.57分.
【0243】
工程6:(R)−1−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エチル((1−(S)−1−tert−ブトキシ−1−オキシプロパン−2−イルカルバモイル)シクロペンチル)メチル)ホスフィン酸
工程5から得られた化合物(0.118g、0.319mmol)を窒素下で2mlのDMFに溶解させ、t−ブチルアラニナート塩酸塩(70mg)、279μlのDIEA(5当量)および308gのTBTU(3当量)を順次加える。この混合物を周囲温度で15分間攪拌し、この反応物を実施例3の工程4のように処理する。111mgの予測生成物が得られる(70.3%)。
【0244】
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.15-1.35 (6H, m); 1.42 (9H, s); 1.40- 2.20 (1OH, m); 3.85 (1H, q); 4.15 (1H, q); 5.05 (2H , s); 7.1-7.45 (5H, m); 7.90 (1H, d).
【0245】
工程7:(2S)−2−(1−((((R)−1−アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリルメチル)シクロペンタンカルボキサミド)プロパン酸トリフルオロアセテート
工程6で得られた化合物をHBr/AcOH混合物(2ml)に溶解させ、この溶液を周囲温度で1時間攪拌する。次に、この混合物を減圧下で蒸発させる。生成物を、30分で、CHCN(0.1%TFA)/HO(0.1%TFA)混合物の0〜60%CHCN勾配を用いて、ACE C18カラムでの半分取HPLCにより精製し、57.2mgの予測生成物(収率:61.9%)を得る。
【0246】
HPCL ACE C18 勾配:30分で、CHCN(0.1%TFA/HO(0.1%TFA)混合物の0〜60%CHCN Rt:9.97分。
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.15-1.35 (6H, m); 1.50-2.20 (10H, m); 3.40 (1H, q); 4.25 (1H, q); 7.85 (1H, d); 8.10 (3H, m).
【0247】
工程8:2−[−(1−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−シクロペンタンカルボニル)−アミノ]−プロピオン酸
工程7から得られた55mgの化合物を1mlのCHCNと366μlの2N NaHCOに溶解させる。35mgの炭酸イソブチルオキシスクシンイミド(1.2当量)を加える。この混合物を60℃1時間攪拌する。この混合物を酢酸エチルで処理し、HOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。未処理の生成物をHPLCにより精製し、45mgの目的生成物(71.4%)を得る。
【0248】
HPLC ACE C18 CH3CN (0.1%)/ H2O (0.1% TFA) 70:30 Rt: 4.53分.
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.10-2.20 (19H, m); 3.40 (1H, q); 3.7 (1H, m); 4.25 (1H, q); 6.20 (m, 1H); 7.85 (1H, d); 8.4 (1H, dd).
【0249】
実施例22:2−[(1−アセチル−4−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル−メチル}−ピペリジン−4−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸
【化24】

【0250】
工程1:1−アセチル−ピペリジン−4−カルボン酸t−ブチルエステル
1−アセチルピペリジン−4−カルボン酸(2.97g)を25mlのTHF/トルエン混合物に懸濁させ、窒素流下で85℃まで加熱する。N,Nジメチルホルムアミドジt−ブチルアセタール(25ml、6当量)を滴下し、30分間加熱を維持する。この混合物を蒸発乾固させ、残渣を酢酸エチルで処理する。有機相を水、飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。黄色油状物 p=3.45g(収率88%)。
【0251】
15分で、CHCN(0.1%TFA/HO(0.1%TFA)のHPCL Atlantis T310〜90勾配 Rt:10.3分。
ESI (+) (M+H)+=228
NMR (DMSO d6) δ (ppm): 1.20-1.80 (13H, m), 2.10 (3H, s), 2.40 (1H, m), 2.60- 3.20 (4H, m), 3.60-4.30 (4H, m).
【0252】
工程2:1−アセチル−4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−4−カルボン酸t−ブチルエステル
THF(16ml)中、iPRNH(2.10ml、14.89mmol)の0℃の溶液に、ヘキサン中nBuLi(2.5M)(6.8ml、16.92mmol、2.5当量)を加える。30分後、この混合物を−78℃まで冷却し、9mlのTHF中、工程1から得られた化合物(1.54g、6.77mmol)の溶液を窒素下、30分で加える。この混合物を−78℃で1時間攪拌し、パラホルムアルデヒド(5当量、1.01g)を加え、この反応混合物を攪拌しながら周囲温度に戻す。ATで30分後、この混合物を飽和NHCl(120ml)とEtoAc(60ml)溶液とで分液する。水相をEtoAc(2×40ml)で抽出する。有機相を1N HCl、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、黄色油状物 P=1.20gを得る。
【0253】
粗生成物を、30×100mm Atlantisカラム、CHCN(0.1%TFA)/HO(0.1%TFA)15:85溶出剤での半分取HPLCにより精製する。収率:27%。
【0254】
HPLC Atlantis T3 10分間20%CHCN(0.01% TFA)/HO(0.01% TFA)、その後、15分で20〜90勾配。Rt=8.85分。
ESI (+) (M+H)+=258.2
NMR (DMSO d6) δ (ppm): 1.20-1.80 (13H, m), 2.10 (3H, s), 2.60-3.20 (4H, m), 3.40 (2H, s), 3.60-4.30 (4H, m).
【0255】
工程3:1−アセチル−4−トリフルオロメタンスルホニルオキシメチルピペリジン−4−カルボン酸tert−ブチルエステル
2.0ml(250mmol)のピリジンと20mlのジクロロメタンの混合物を、窒素下、−78℃で冷却する。無水トリフリック(triflic anhydride)(2.10ml、12.5mmol)を滴下する。10分後、15mlのCHCl中、工程2から得られた1.29gの化合物(5.0mmol)の溶液を滴下する。この混合物を−78℃で2時間攪拌する。有機相を1N HCl、HO、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、1.68gの予測生成物(収率:86%)を得、そのまま次の工程に用いる。
【0256】
HPLC Atlantis T3(4.6100mm、3μm) 10分間CHCN(0.1%TFA/HO(0.1%TFA)20%、その後、15分で20〜90%勾配 Rt=22.7分。
ESI (+) (M+H)+=390.2
NMR (CDCl3) δ (ppm): 1.40-1.60 (HH, m), 1.90-2.30 (5H, m), 2.90 (2H, m), 3.40- 3.80 (2H,m), 4.30-4.60 (2H, m).
【0257】
工程4:1−アセチル−4−((((R)−1−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)ピペリジン−4−カルボン酸
THF(5ml)中、iPrNH(0.61ml、4.31mmol)の溶液を0℃まで冷却し、ヘキサン中1.5MのnBuLi 3.1ml(4.67mmol、3.0当量)を加える。15分後、この混合物を−78℃まで冷却し、8mlのTHF中、工程3から得られた化合物(925mg、3.59mmol)の溶液を、窒素下で、温度を60℃未満に保つように加える。この混合物を−78℃で10分間攪拌し、10mlのTHF中、工程4から得られた化合物(4.31mmol)を加え、この混合物を−78℃で10分間、そして周囲温度で5時間攪拌する。
【0258】
この混合物をEtoAcで希釈する。有機相を1N HCl、10%NaHCO、飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮する。
【0259】
得られた粗生成物を31mlのCHCl中の溶液とし、12mlのTFAを加える。この混合物を周囲温度で2時間攪拌する。蒸発乾固させた後、予測生成物を、Atlantis T3カラム、CHCN(0.1%TFA)/HO(0.1%TFA)15:85にて半分取HPLCにより精製し、367mgの純粋な生成物を得る(収率:23%)。
【0260】
NMR (DMSO d6) δ (ppm): 1.17 (3H, m), 1.40-1.95 (9H, m), 3.00 (1H, m), 3.23 (1H, m), 3.55-3.81 (2H, m), 5.03 (dd, 2H), 7.33 (5H, m), 7.46 (1H, d)
HPLC Atlantis T3 4.6xl00mm, 3μm, CH3CN (0.1% TFA)/H2O (0.1% TFA) 20:80, Rt: 7.67分.
【0261】
工程5:(2S)−2−(1−アセチル−4−((((R)−1−アミノエチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)メチル)ピペリジン−4−カルボキサミド)プロパン酸トリフルオロアセテート
工程4から得られた化合物(0.175g、0.41mmol)を窒素下で2mlのDMFに溶解させ、t−ブチルアラニナート塩酸塩(89mg、1.2当量)、360μlのDIEA(5当量)および395mgのTBTU(3当量)を順次加える。この混合物を周囲温度で15分間攪拌し、この反応混合物を蒸発乾固させる。得られた粗残渣をHBr/AcOH混合物(4ml)に溶解させた後、この溶液を周囲温度で1時間攪拌する。その後、この混合物を減圧下で蒸発させる。生成物を、30分で、CHCN(0.1%TFA)/HO(0.1%TFA)混合物の0〜30%勾配のCHCNを用い、Atlantis T3カラムでの半分取HPLCにより精製し、80.8mgの予測生成物(収率:40.9%)を得る。
【0262】
30分で、CHCNの0〜30%勾配を用いるHPLC Atlantis T3
【0263】
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.15-1.35 (9H, m), 1.50-2.20 (10H, m), 3.23 (1H, m), 3.40 (1H, q), 4.25 (1H, q), 7.85 (1H, d), 8.10 (3H, m).
【0264】
工程6:2−[(1−アセチル−4−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−ピペリジン−4−カルボニル)−アミノ]−プロピオン酸
工程5から得られた80mg(0.166mmol)の化合物を2mlのCHCNと560μlの2N NaHCOに溶解させる。52mgの炭酸イソブチルオキシスクシンイミド(1.2当量)を加え、この混合物を60℃で1時間攪拌する。この混合物を酢酸エチルで処理し、HOおよび飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発乾固させる。粗生成物をHPLCで精製し、70mgの予測生成物(81.4%)を得る。
HPLC ACE C18 CH3CN (0.1%)/ H2O (0.1% TFA) 50:50 Rt : 5.37分.
1H NMR (DMSOd6) δ (ppm): 1.10-2.20 (29H, m), 3.20 (1H, m), 3.40 (1H, q), 3.7 (1H, m), 4.25 (1H, q), 6.20 (m, 1H), 7.85 (1H, d), 8.10 (3H, m).
【0265】
記載の分子の概要
この一覧は網羅的なものではない。
【化25】

【0266】
【表1】

【0267】
実施例23:ホスフィン酸官能基がアシルオキシアルキル基で保護され、アミン官能基が遊離しているホスフィン酸誘導体の安定性に関する試験
エンケファリンをその異化作用から完全に保護するのに必要とされるネプリライシン(NEP)およびアミノペプチダーゼN(APN)の阻害は、本発明における同じ分子による、両亜鉛メタロペプチダーゼの活性部位の認識を必要とする。このことは、先行技術において、特に特許出願FR2755135に記載されているホスフィン酸誘導体で得られたものである。しかしながら、非経口経路のバイオアベイラビリティのために、ホスフィン酸官能基をアシルアルキル基で一時的に保護し(プロドラッグ)、場合によっては先行技術に記載されている阻害剤のカルボキシル官能基も保護する必要がある。
【0268】
さらに、APNの認識およびその阻害には必ず遊離アミン官能基の存在が必要であることを述べておくことが不可欠である。
【0269】
しかしながら、先行技術に記載されているプロドラッグの溶液中での研究は、ホスフィン酸基のアシルオキシアルキル残基の保護は、この基の一部をアミン官能基に転位させ、APN親和性に必要な遊離アミンの代わりにアミド官能基を有する分子をもたらすことを示している。
【0270】
このため、生じる化合物は加水分解に適さず、この酵素に関して全く不活性となる。従って、これらの化合物は、ヒトの臨床実践で用いる製剤としては、その不安定性のために使用に適さない。
【0271】
先行技術のよる化合物の溶液中での研究は次のようにして行われた。
【0272】
先行技術による化合物を、非経口投与に用いられる種々の混合物中の溶液とし、次に、この溶液をHPLC(Kromasil C18 4.5250mmカラム、50%CHCN(0.1%TFA)/50%HO(0.1%TFA))に付し、溶液の組成を決定する。いずれの場合にも、遊離ホスホン酸(活性化合物)と転位生成物の両生成物の形成が、以下の図に示されるように経時的に見られる。
【0273】
【化26】

【0274】
このように、エタノール/クレモフォール/HO混合物(1:1:8)中の先行技術の化合物の溶液では、ビヒクル中の最初の生成物含量は以下の表1に示されているように経時的に低くなる。
【0275】
【表2】

【0276】
実施例25:薬理学的結果
本発明による分子を、ヒトにおける応答を最も良く推定できる動物モデルでその鎮痛作用に関して研究した。好ましい試験は、ラットおよびマウスにおける神経炎症性(NI)および神経因性(NP)疼痛を標的とするものである。
【0277】
本発明による分子は、マウスでの以下の試験で活性があることが分かった。
i)足にホルマリンを投与することによる疼痛の誘発と、侵害受容器に対する末梢作用を反映すると考えられる第一相における鎮痛応答の研究、および
ii)坐骨神経の部分的、同側圧迫による痛覚過敏および異痛の誘発(Seltzerモデル)(Bennett G.J. and Xie Y.K., Pain (1998) 33, 87-107)。
【0278】
これらの試験で用いた技術は、M.J. Millan. The induction of pain: an integrative review, in Progress in Neurobiology (1999), 52, 1-164などの総説に詳細に記載され、列挙されている。
【0279】
オピオイドとガバペンチンの間の関連および相乗作用は、特に、参照文献:Menendez et al, (2008), Eur. J. Pharmacol, 596, 50-55で報告されている。
【0280】
よって、下記の試験を行った。
【0281】
A/ホルマリン試験(第I相)
これらの分子を、比較試験では1時点(90分)で、その作用期間を観測するためには90分と150分の2時点で試験した。
【0282】
試験の説明:
動物(OF1雄マウス)をチャールズ・リバー・ブリーディングセンター(フランス)から入手し、実験の開始時には体重25.35gであった。生成物の投与には各マウスの体重を考慮する。
【0283】
この試験は、S. HUNSKAAR et al., Formalin test in mice, a useful technique for evaluating mild analgesics, J. Neurosci. Methods (1995), 14, 69-75により記載されているプロトコールに基づく。
【0284】
試験の初期(ホルマリン注射後5〜10分)は、検討下にある神経因性疼痛を反映すると考えられる。
【0285】
マウス(n=8)を個々に透明な容器(50×25cm)に入れ、20分間この環境に順化させる。この期間の後、生理食塩水(HO、0.9%NaCl)中のホルマリン(5%HCHO)溶液20μlを動物の右足の足底面に皮下注射する。マイクロシリンジにつないだ26シリンジを用いる。その後、各マウスをすぐに試験容器に戻し、疼痛(侵害受容)応答を5分間測定する(初期相)。足をなめた回数のみを数える。
ビヒクル単独(エタノール、水中0.5%メチルセルロース)
ビヒクルと本発明による化合物(50mg/kg)
とともにホルマリンを注射した後、種々の時点で(一般に20分、90分および150分)動物に強制的に給餌した後に鎮痛活性を試験する。
【0286】
生成物の鎮痛作用は、ビヒクルだけを受容した動物が足をなめる回数に比べて、注射された足がなめられる回数の減少により評価する。マウスごとに秒で表した足をなめる総時間(不連続)を4分間計測する。その後、n匹の累積値を供試マウスの数nで割る。
【0287】
結果を実施例3、4および8から得られた3つの化合物に関して図1に示す。
【0288】
これら3つの化合物は、ビヒクル(対照)に比べて足をなめる回数の極めて有意な減少を特徴とする有力な鎮痛作用(40〜60%)を示し、これらの効果は試験期間で比較的一定である。このように、本発明による化合物の鎮痛活性は150分まで見られ、本発明による化合物の長期作用を示唆する。
【0289】
この鎮痛作用は、用いた濃度(2mg/kg)では血液脳関門を通過できないアンタゴニスト、メチル−ナロキソニウムを予め投与することにより遮断され(Milne R.J. et al., Neurosci. Lett. (1990), 114, 25-32)、このことは、これらの分子の活動が注射部位から放出されたエンケファリンを増す末梢領域(侵害受容器)で起こることを示している。これらの結果は明白に、本発明による化合物が血液脳関門を通過しないことを示す。
【0290】
B/実施例8から得られた化合物と先行技術による参照分子の鎮痛作用の比較試験
本試験に用いた先行技術による参照分子は以下の構造を有する。
【化27】

【0291】
ホルマリンを注射して90分後のその作用を経時的に比較するため、実施例8から得られた化合物(50mg/kg;図2A)および先行技術による参照分子(100mg/kg;図2B)を用いて上記の試験Aを繰り返した。
【0292】
そして、参照分子には100mg/kg用量(経口)の90分で活性は無かったが、他方、実施例8から得られた化合物は、2倍低い50mg/kg用量(経口)で90分において極めて有意な鎮痛活性を生じる(図2参照)。
【0293】
よって、本発明は、作用期間中、経口経路で鎮痛特性を有する分子の開発を特徴とする。
【0294】
C/マウスにおける経口投与後の実施例3から得られた化合物の抗異痛および抗痛覚過敏作用
この試験は、A.B. Malmberg and A.I. Basbaum, Partial Sciatic injury in the mouse as a model of neuropathic pain: behavioural and neuroanatomical correlates. Pain, (1998) 76, 215-222に詳細に記載されている。
【0295】
これを、同側坐骨神経の部分的結紮により、体重18〜20gのOF1雄マウス(Charles River、n=39)で行った。これらの動物を手術後3〜26日の期間試験する。
【0296】
痛覚過敏は、K. Hargreaves et al., A new sensitive method for measuring thermal nociception in cutaneous hyperalgesia, Psain (1988), 32, 77-88に記載されている方法に従い、熱源として「Plantar試験」装置(Bioseb、フランス)を用いて測定した。侵害受容刺激の強度は、自動カットオフ時間20秒で8〜10秒較正する。熱により誘発される足の払いのけの平均値を、同側(神経損傷)および対側(健全な神経)の足で測定した。
【0297】
機械的異痛を、S.R. Chaplan et al., Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw, J. Neurosci. Meth. (1994), 53, 55-63に記載されているように測定する。同側(傷害)および対側(対照)の足を上記のように試験し、機械的抗異痛作用は、大きさを増すとともに圧力を増す微細線維を用いるVon Frey法(Malmerg A.B. and Basbaum A.I., 1998, Pain, 76, 215-222)を用いて測定する。
【0298】
抗痛覚過敏作用:
図3に示す、得られた結果は、50mg/kgで経口投与した場合、実施例3から得られた化合物は、45〜120分の期間(90分に最大作用を有する)、坐骨神経の部分結紮により誘発された熱性の痛覚過敏に、極めて有意な軽減(65〜100%)を生じることを示す。
【0299】
抗異痛作用:
機械的異痛に対する実施例3から得られた化合物の作用を、Von Frey試験を用いて測定する。図4に示す、得られた結果は、60分に、最大応答(非処置対照)の75%に相当するピークを有する、有意な長時間(45〜120分)抗異痛作用を示す。
【0300】
D/ガバペンチンと組み合わせることによる実施例4から得られた化合物の抗異痛作用の増強
実施例4から得られた化合物とガバペンチンの組合せの作用(両生成物とも経口投与)を、Von Frey試験を用いて測定する。図5に示し、60分後に得られた結果は、実施例から得られた化合物またはガバペンチンを単独で用いた場合(同じ用量で不活性であることが分かっている)に比べて、組合せの極めて高い増強(>300%)を示す。注射をしていない対側の足に対しての作用は無い。
【図面の簡単な説明】
【0301】
総ての図面において、統計分析(p、スチューデントの検定)は継ぎのように示す。
対照に対してp<0.1
★★対照に対してp<0.01
★★★対照に対してp<0.001
【図1】ビヒクル(白四角)または本発明による化合物(黒四角)の経口投与後の、時間(分)の関数としての、ホルマリン受容マウスによる足をなめる総時間(5分の試験時間中の秒数で表す)を表す。なお、グラフ(A)、(B)および(C)はそれぞれ実施例8、3および4から得られた化合物に相当する。
【図2】経口投与90分後の、時間(分)の関数としての、ホルマリン受容マウスによる足をなめる総時間(5分の試験時間中の秒数で表す)を表す:(A)ビヒクル(白四角)もしくは本発明による化合物8(50mg/kg)(黒四角)または(B)ビヒクル(白四角)もしくは参照分子(100mg/kg)(黒四角)。
【図3】熱痛覚過敏(hyperalgia)を評価するための、マウス坐骨神経の部分的な同側結紮により誘発される神経因性疼痛モデルで得られた応答を表す(Plantar試験)。外科術14日後での、ビヒクル(白四角)または実施例3から得られた化合物(50mg/kg)(黒四角)の経口投与後における足の払いのけを時間(分)の関数として測定する(秒)。グラフ(A)は同側の足で見られた応答を表し、グラフ(B)は対側の足で得られた応答を表す。(90時点での対側の足の平均値:ビヒクル(7.85)、化合物3=9.4秒)。
【図4】外科術14日後での、ビヒクル(白四角)または実施例3から得られた化合物(50mg/kg)(黒四角)の経口投与後における、堅さを増した微細線維を用いる、マウス足のある圧力(g)でのVon Frey試験(異痛評価)で得られた応答を時間(分)の関数として表す。グラフ(A)は同側の足で見られた応答を表し、グラフ(B)は対側の足で得られた応答を表す。
【図5】図4の凡例に記載されているようなVon Frey試験において60分時点で得られた応答を表す。実施例4から得られた化合物を10mg/kgの用量で単独経口投与し(斜線)、ガバペンチンも30mg/kgの用量で経口投与する(ドット)。これら2つの化合物を上記の要領で組み合わせて経口投与する(黒)。対照(白)はビヒクルの経口投与に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)を有する化合物またはその薬学上許容される塩:
−NH−CH(R)−P(=O)(OR)−CH−C(R)(R)−CONH−CH(R)−COOR(I)
[式中、
−Rは、基−C(=O)−O−C(R)(R)−OC(=O)R10を表し、ここで、
−−RおよびRは互いに独立に、水素原子またはアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基を表し;あるいは
−−(RおよびR)は一緒に、それらを担持する炭素とともに、5つまたは6つの結合を有する飽和炭化水素環を形成し;
−−R10は、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基を表し;
−Rは、
−−1〜6個の炭素原子を含んでなり、
−−−基OR11、SR11もしくはSOR11(ここで、R11は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);
−−−アミノ基;または
−−−フッ素などの1または複数のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル
で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖;
−−フッ素などの1または複数のハロゲン原子で置換されていてもよい、アリールまたはヘテロアリール基、有利にはフェニル;
−−N−オキシド型またはS−オキシド型で酸化されていてもよい硫黄および窒素から選択される1または複数のヘテロ原子を含んでなる、5つまたは6つの結合を有する飽和または芳香族複素環で置換されたメチレン基
を表し;
−Rは、水素原子または式−C(R12)(R13)−OC(=O)−R14を有する基を表し、ここで、
−−R12およびR13は互いに独立に、水素原子またはアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル基を表し;あるいは
(R12およびR13)は一緒に、それらを担持する炭素とともに、5つまたは6つの結合を有する飽和炭化水素環を形成し;
−−R14は、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基を表し;
−Rは水素原子を表し、Rは、
−−フェニル核において、
−−−フッ素もしくは臭素などの1〜5個のハロゲン原子;
−−−基OR15もしくはSR15(ここで、R15は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);
−−−アミノ基;
−−−CF基;
−−−フェニル基;または
−−−5つまたは6つの結合を有する複素芳香環;
で置換されていてもよいフェニルまたはベンジル;
−−酸素、窒素および硫黄(窒素原子はN−オキシド型で酸化されていてもよい)から選択される1または2個のヘテロ原子を含んでなる、5つまたは6つの結合を有する複素芳香環;
−−N−オキシド型またはS−オキシド型で酸化されていてもよい硫黄および窒素から選択される1または複数のヘテロ原子を含んでなる、5つまたは6つの結合を有する飽和もしくは芳香族複素環で置換されたメチレン基
を表し;
あるいは、RおよびRは一緒に、それらを担持する炭素とともに、
−5つまたは6つの結合を有する飽和炭化水素環、または
−ピペリジン環(4位において窒素が飽和され、
−−SO−Ph基;
−−CF基;
−−C〜Cアルキル基;
−−C〜Cアシル基;
−−1または複数のハロゲン原子、C〜Cアルキル基もしくはC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいフェニルもしくはベンジル;または
−−C〜Cアルキル基もしくはC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、ピリジンもしくはピリミジンなどの芳香族複素環
で置換されていてもよい)を形成し:
−Rは、
−−1〜6個の炭素原子を含んでなり、
−−−基OR16、SR16、SOR16(式中、R16は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);
−−−COO−BnもしくはCOOH基;
−−−SOH基;または
−−−アミノ基
で置換されていてもよい直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖;
−−フッ素もしくは臭素などの1または複数のハロゲン原子、または基:
−−−CF
−−−OR17(ここで、R17は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);または
−−−ベンジル
で置換されていてもよいフェニル;または
−−フェニル核において、
−−−フッ素もしくは臭素などの1または複数のハロゲン原子;
−−−CF基;
−−−基OR17(ここで、R17は水素原子、ベンジル基または1〜4個の炭素原子を含んでなる直鎖もしくは分枝の飽和もしくは不飽和炭化水素鎖を表す);または
−−−フェニル基
で置換されていてもよいベンジルを表し;
−Rは、水素原子、ベンジル、C〜Cアルキル、−CHR18−COOR19、−CHR18−OC(=O)R19および−CHR18−OC(=O)OR19(ここで、R18およびR19は互いに独立に、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基を表す)からなる群から選択される基を表す]。
【請求項2】
が基−(C=O)O−CHMe−OC(=O)CHMeを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がアルキル、アリールまたはアリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基を表す、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が水素原子または−CHMe−OC(=O)CHMe基を表し、好ましくは、水素原子を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
がメチル基などのアルキル基を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が水素原子、またはエチルなどのアルキル基、またはベンジルもしくは−CH(CH)−O−C(=O)−O−Et基を表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
下記の化合物:
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ベンジルエステル、
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸、
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸エチルエステル、
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸エトキシカルボニルオキシ酸エステル、
2−(2−ビフェニル−4−イルメチル−3−{(1−イソブチリルオキシ−エトキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸、
2−(2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸ベンジルエステル、
2−(2−(4−ブロモ−ベンジル)−3−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸、
2−[2−ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−フェニル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−3−(4−チオフェン−3−イル−フェニル)−プロピオニルアミノ]−プロピオン酸、
2−[2−ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−フェニル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−3−(4−チオフェン−3−イル−フェニル)−プロピオニルアミノ]−3−ヒドロキシプロピオン酸、
2−(3−ビフェニル−4−イル−2−{ヒドロキシ[(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−チオフェン−3−イル−メチル]−ホスフィノイルメチル}−プロピオニルアミノ)−プロピオン酸、
2−{3−ビフェニル−4−イル−2−[ヒドロキシ−[(1−イソブチリルオキシ−メトキシカルボニルアミノ−エチル)−ホスフィノイルメチル]−プロピオニルアミノ}−プロピオン酸、
2−ジメチル−プロピオン酸の1−(1−{[3−ビフェニル−4−イル−2−(1−カルボキシ−エチルカルバモイル)−プロピル]−ヒドロキシ−ホスフィノイル}−エチルカルバモイルオキシ)−エチル酸、
2−[(1−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−シクロペンタンカルボニル)−アミノ]−プロピオン酸、
2−[(1−アセチル−4−{ヒドロキシ−[1−(1−イソブチリルオキシ−エトキシカルボニルアミノ)−エチル]−ホスフィノイルメチル}−ピペリジン−4−カルボノイル)−アミノ]−プロピオン酸
から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
医薬品としての使用のための、特に、鋭痛または神経因性もしくは神経炎症性疼痛などの疼痛の処置のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の式(I)を有する少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
前記ビヒクルが経口投与に適したものである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのさらなる有効物質、特に、モルヒネおよびその誘導体、テトラヒドロカンナビノールおよびその誘導体、ギャバ誘導体(ガバペンチンまたはプレガバリンなど)、P2X3プリン受容体アンタゴニストまたはボツリヌス菌毒素(ボツリヌス菌毒素A)からなる群から選択される鎮痛剤をさらに含んでなる、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
(i)請求項1〜7のいずれか一項に記載の式(I)を有する少なくとも1つの化合物と、
(ii)少なくとも1つのさらなる有効物質、特に、モルヒネおよびその誘導体、テトラヒドロカンナビノールおよびその誘導体、ギャバ誘導体(ガバペンチンまたはプレガバリンなど)、P2X3プリン受容体アンタゴニストまたはボツリヌス菌毒素(ボツリヌス菌毒素A)からなる群から選択される鎮痛剤と
を、同時、個別または交互使用のための組合せ製品として含んでなる、医薬組成物。
【請求項13】
I型またはII型真性糖尿病、ウイルスまたはレトロウイルス感染、癌化学療法、放射線療法、外科手術(切断患者の幻覚および乳房切除の後遺症を含む)、アルコール依存症、顔面神経痛、外傷(腕神経叢症候群、神経根障害または脊髄根痛(radiculagia)、例えば、坐骨神経痛、下腿痛もしくは胸郭出口症候群など)、繊維筋痛症、レストレスレッグ症候群(restless leg syndrome)、特に関節炎もしくは関節症の急性期により引き起こされる炎症性関節痛、特に関節症により引き起こされる変形性関節痛または腰痛により引き起こされる神経因性または炎症性疼痛の処置を目的とした医薬品として用いるための、請求項9〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ビヒクルが、舌下、非経口、皮下、肺、鼻腔、筋肉内、静脈内、くも膜下腔内、関節内または経皮的経路による投与に適したものである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
少なくとも1つのさらなる有効物質、特に、モルヒネおよびその誘導体、テトラヒドロカンナビノールおよびその誘導体、ならびにその混合物からなる群から選択される鎮痛剤を含んでなる、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
鋭痛の処置を目的とした医薬品として用いるための、請求項14または15に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−528692(P2011−528692A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519156(P2011−519156)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059394
【国際公開番号】WO2010/010106
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(508125896)
【氏名又は名称原語表記】PHARMALEADS
【Fターム(参考)】