説明

疼痛緩和用組成物とその利用

【課 題】チタンの生理活性材料としての特色を生かした疼痛緩和用組成物、それを含む疼痛緩和部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 クエン酸(塩)を含む水中に金属チタンの微粒子が分散した微分散水で処理した素材を用いたチタン含浸テープは、ニューロンに影響を及ぼす痛みの記憶に関するシステムへの干渉機能に対して影響を及ぼす生理学的機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属チタンの微分散水により調製した疼痛緩和用組成物、該組成物で繊維素材又は樹脂素材を処理して得られた疼痛緩和部材及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の健康志向や清潔志向の社会風潮を反映して、健康を増進し、あるいは清潔性を高めるための商品が注目を集め、特に、食品や衣料や日用品等の分野において、このような商品への需要や要望が増大している。とりわけ、衣料(繊維製品)においては常に身に着けるものであるから、健康増進や病気予防或いは清潔性向上への利用が効果的であって、それらへの社会的な要望が強くなっている。
かかる状況において、従来から、健康衣料製品の研究が活発に行われ、数多くの製品が開発されており、例えば、遠赤外線や磁気の発生する繊維素材あるいは炭素繊維等を利用した病気治療用の衣料が実用化され、トルマリンによる疲労回復を目指した繊維製品、無機化合物やキトサン等を利用した清潔志向の抗菌性繊維製品等が注目されている。
【0003】
金属チタンは、鉄、銅、アルミニウム等に比べて比較的新しく見つけだされた金属材料であり、その軽くて高温でも強さを発揮できる物性を利用して、工業的にはジェットエンジン等の航空機宇宙産業、原子力発電又は火力発電における熱交換器の管や管板等のエネルギ−関連分野、さらには眼鏡フレーム、ゴルフクラブヘッド等の日用品分野で多用されており、利用分野はますます拡大する方向にある。
【0004】
金属チタンの、日用品、健康医療又は化粧品への活用は比較的多く知られており、例えばチタン薄膜を表面に有する理容鋏(特開昭62−268584号公報)、金属チタン熔融物による遠赤外線利用(特開昭61−59147号公報、特開平1−155803号公報、特開平3−112849号公報)、寝具(特開平8−322695号公報)、調理用具(特開平9−140593号公報)、アイマスク(特開平10−71168号公報)、健康維持用具(特開平11−285541号公報、特開平11−285543号公報)、健康バンド(実用登録第3045835号)、健康スリッパ(実用登録第3061466号)等がある。
【0005】
金属チタンの微粒子を分散した水分散液自体については、高圧水中で酸素と水素の混合ガスを燃焼させ、その燃焼ガスで金属チタンを溶融させることを特徴とするチタンの溶解した高機能水の製造方法(特許文献1)が知られている。
その応用製品として、高圧水中で酸素と水素を燃焼させた燃焼ガスにより金属チタンを燃焼させて得られたチタン溶融物を含有せしめた水溶液に繊維質素材を浸漬処理することによって得られた衣料材料(特許文献2)、同様の製造方法で作成したチタン分散液を用いた化粧水(特許文献3)も公知である。
一方、処理液として元素チタンを含む分散液でなく、酸化チタンを含む分散液も公知であり、例えば染色剤と酸化チタン水溶液の混合液を含浸させてチタン光触媒活性機能を付与した糸、布地、不織布(特許文献4)、セリシン−酸化チタン微分散水溶液を含浸させてUV吸収、消臭、抗菌等の機能を付与した繊維母材(特許文献5)に開示されている。
【0006】
さらにチタン成分の医療関連分野での利用は、酸化チタン水溶液を含浸させた繊維製品等を各種疾患等を治療するための治療布として消炎鎮痛薬、止血薬、やけどの治療、切り傷・擦傷、皮膚炎等の改善薬として利用すること(特許文献6)、チタン系素材の微粒子と粘着剤とを混練したスティック体から得られる薄片体を貼付して打撲、捻挫、肩こり、筋肉痛等の治癒に用いること(特許文献7)にあるように、からだ表面に貼付する治療具として用いられているが、その作用機構は明らかではない。
【0007】
人間のからだは、無数の細胞から成り立ち、各ブロックに分かれて呼吸、循環、消化、代謝等の働きを分担しているが、これらの組織を制御しているのが神経系であり、神経系は構造の上から、脳・脊髄・末梢神経に分けられる。この内、脳と脊髄を中枢神経(系)といい、末梢神経から送られてくる情報を受け、それに応じて指令を送るコントロールシステムの役割を果たしている。末梢神経は、からだのすみずみにまで広げられている通信網で、中枢神経へ情報を送るとともに中枢神経から送られてくる指令を伝達する。神経系は、その働きの面から体性神経(系)と自律神経(系)の二つのグループにわけられ、前者の体性神経は見たり聞いたり触れたりした行動に関するものを脳に伝えて認知させる受信機能と、この情報に反応してからだを動かす指令を伝える発信機能を果たしている。特に受信機能を担当している神経系を知覚系、発信機能を担当している神経を運動系と言われている。
ところで、従来、知覚神経におよぼす影響を調整する、あるいは知覚神経で感じる痛みや疼痛を当該部の周辺に存在せしめることによって緩和する、いわゆる疼痛緩和部材やそれに用いる疼痛緩和組成物は存在していなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2001−314871号公報
【特許文献2】特開2002−20969号公報
【特許文献3】特許第3715301号
【特許文献4】特開2002−180385号公報
【特許文献5】特開2006−342477号公報
【特許文献6】特開2001−106633号公報
【特許文献7】特許第2935974号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のようにチタンの生理活性材料、医療品等の分野への応用は、いくつかの製品が開発されて非常に発展が期待されているが、生理機構への作用機序や作用効果については未だ解明されていないことが多い。
本発明では、このチタンの無限とも言える有用性の一つとしてチタンを含む微分散水からなる組成物の医療分野への活用を目指し、特に神経系統に及ぼす影響、特に疼痛の緩和作用を発揮する組成物、それを使用した製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の基本的な構成は以下の通りである。
(1)水中に金属チタンの微粒子が分散した、有機酸(塩)含有の微分散水を主成分とする疼痛緩和用組成物。
(2)上記有機酸(塩)が、クエン酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、L−ソルビン酸(塩)から選ばれた少なくとも一成分を含有してなることを特徴とする(1)記載の疼痛緩和用組成物。
(3)上記有機酸(塩)濃度が、0.01%〜1%であることを特徴とする(1)又は(2)記載の疼痛緩和用組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の微分散水によって素材を処理したことを特徴とする疼痛緩和用部材。
(5)素材が、不織布もしくは編織布又は多孔性の樹脂である(4)記載の疼痛緩和用部材。
(6)上記(5)の部材を使用したパンティストッキング、靴下、手袋、下着類、シャツ類、寝装具、健康運動衣、マフラー、タオル、サポーター又はリストバンド、建材、壁装材、ネックレス、テープ(テーピング用テープ含む)、ばんそうこう、包帯、ガーゼ、眼帯、生理用品、シップ、被服類等から選ばれた製品であることを特徴とする疼痛緩和用製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明における、クエン酸(塩)を含む水中に金属チタンの微粒子が分散した微分散水で含浸処理した基材は、神経細胞の中でもとりわけセンシティブなニューロンに痛みの記憶に関するシステムへの干渉機能に対して影響を及ぼす生理学的機構、特に疼痛に対する優れた緩和作用を備えている。また、本発明のチタン微分散水で処理した基材は、ニューロンに何ら中毒性の影響を及ぼさないという優れた効果を発揮する。
【0012】
本発明における金属チタンの微粒子の微分散水は、先に出願人の出願した金属チタンの微粒子の分散水の製造方法をさらに発展させ、得られた安定性の高いチタン分散液の安定性を更に向上させたものである。
金属チタンの微粒子が分散した微分散水は、酸素と水素を耐圧容器内における高圧水中で燃焼させた燃焼ガスにより生じた高温により金属チタンを燃焼させて容易に得られることは、既に本出願人の出願明細書に記載のとおりである(特許第3715301号、特許第3686819号)。
【0013】
本発明で得られる高機能性のチタン微分散水で含浸処理した基材は、神経細胞の中でもとりわけセンシティブなニューロンに痛みの記憶に関するシステムへの干渉機能に対して影響を及ぼす生理学的機構、特に疼痛に対する優れた緩和作用を備え、ニューロンに何ら中毒性の影響を及ぼさない効果を有する。
また、本発明で得られる高機能性のチタン微分散水は、何故に上述するような優れた生理活性の効能を有するかのメカニズムは不明であるが、本発明者らはこれら機能の科学的解明をするべく、現在鋭意研究中である。
【0014】
本発明におけるチタン微分散水は、例えば特許第3715301号の方法で製造する。この製造方法によれば、金属チタンの溶融には、通常の金属溶解のための汎用手段を使用することなく、酸素と水素の燃焼熱によって溶融したチタンを、高圧水中に分散させ、超微粒子状態で含む分散水の製造は以下の製造装置によって製造する。
基本的には、水素と酸素を燃焼させ、その雰囲気中に純粋な金属チタン棒を挿入し、加熱することによってチタン溶融物を、高圧水に衝突させ、超微細粒子チタンとして水中に分散状態で含ませる。
この製造方法では、製品に対して優れた生理活性能を付与するため、燃焼させる水素と酸素の量、反応圧力や金属チタンの供給量の制御が必要である。
すなわち、本発明のチタン微分散水を高圧水中で製造する方法を図面によって説明する。
図4は、本発明のチタン微分散水製造のフローチャート、図5は、本発明のチタン微分散水よりなる化粧水の製造装置を示す。
図5における本発明のチタン微分散水製造装置1は、チタン溶融物が高圧水中に分散した水の製造のための耐圧容器2、電気分解・原料ガス発生装置3及びチタン微分散水のろ過装置(図示せず)より構成されている。
耐圧容器2の構造は、高圧水収容タンク5、酸素と水素の混合ガス噴射ノズル14、燃焼室6、及び金属チタン棒10を備えた、超微粒子チタンが分散したチタン微分散水を製造する装置である。付設するものとして、原料の水素と酸素を供給するための水の電気分解装置3及び生成されたチタン微分散水のろ過システムより構成されている。
また、耐圧容器2は、金属製の、好ましくはスチール製の高圧水収容タンク5からなっており、この高圧水収容タンク5において、電気分解装置3で発生した水素供給路16と酸素供給路17から供給された水素と酸素の混合ガスを、噴射ノズル14から燃焼室6に高圧で吹き出すようにしている。燃焼室6内部に金属チタン棒10が供給シリンダー13から溶解量に応じて漸次送出されるようになっている。水素と酸素の混合ガスは、点火装置11により点火され、金属チタンの溶融物が高圧水9中に放出される。溶融チタンは高圧水中において超微粒子状態となり、これらを含む高圧水9は、高圧水収容タンクの底部の取出し口8より外部に取り出し、適宜のろ過装置で順次ろ過される。
このうち、原料ガス発生装置3として水素及び酸素の各高圧ボンベを用いて直接的に高圧水収容タンク5内に供給することも可能であるが、本発明におけるように水の電気分解により供給される酸素と水素は全く純粋なガスであり、酸素・水素の混合比が、1:2の理論値の燃料ガスを効率良く供給することにより、チタン以外の成分が微分散中に含まれない。
チタン微分散水製造の原料としての原料ガス発生装置3において、水20の電気分解によって水素及び酸素を発生させる一例であり、18及び18’は、それぞれ陰極板、陽極板を示す。
【0015】
本装置では、電気分解により発生した水素供給路16と酸素供給路17から供給された水素と酸素を、ポンプを介してノズル14より燃焼室6に噴射して、混合ガスを完全に燃焼し、完全な超高温の燃焼水蒸気ガス状態とする。この燃焼ガス中に純粋な金属チタン棒10を挿入して、加熱、溶融させる。金属チタン棒は、溶融量に応じて一定量ずつシリンダー13内より挿入される。溶融に際しては、水素と酸素の混合比が厳格に2対1になるように制御する必要である。また、圧力調節弁7を設けて高圧水収容タンク内の圧力を調整する必要がある。
燃焼室6内で高温に加熱、溶融された溶融チタン12は、燃焼室6から高圧水9中に放出され、高圧水と衝突して超微粒子を生成する。このときチタンの一部は結晶構造をとるものと考えられる。
【0016】
このような状態の超微粒子チタンが水中に生じた結果、疎水性の非常に強いチタンの超微粒子となって安定した状態で水中に分散し、このような状態では凝集剤を使用しても沈澱することはない。
この装置の操作は、高圧水収容タンク5内に高圧の水素、酸素をポンプを介してノズル14より噴射し、点火装置11によって点火して超高温の燃焼水蒸気ガス状態とし、その燃焼ガス中に純粋な金属チタン棒10を順次挿入して溶解させる。
なお、この装置においては、水と超微粒子チタン以外の物質を発生しないようにするため、水中で水素と酸素を燃焼させることを必須としているのであり、このとき不純物を含むことなく、純粋に水中で水素と酸素を燃焼させるために、高圧下で燃焼させることが必要である。また、金属チタン棒を挿入する位置を、混合ガスが完全に燃焼し、完全な超高温の水蒸気ガスになる領域としなければならない。
【0017】
上記装置を使用して本発明のチタン微分散水を得るときには、電解質としての有機酸(塩)の水中への添加効果が大きい。
すなわち、例えばクエン酸を入れてチタン微分散水を製造した後、2μ、1μ及び0.8μのフィルターで順次ろ過後、ICP発光分析法でチタンの定量分析を測定した結果、チタン濃度が約70mg/lであったのに対し、クエン酸を添加することなく、同条件で製造した結果、チタン濃度が約0.4mg/lであった。
このことは、クエン酸を添加することなく、製造したチタン微分散液は凝集が起こりフィルターにチタン微粒子が捕捉されたため、チタン濃度の低下という結果になったものと推測される。
このことによりクエン酸等を入れて製造することにより凝集・沈殿の緩和につながり安定性の向上になることがわかった。
【0018】
製造時に考えられる有機酸(塩)としては、クエン酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、L−ソルビン酸(塩)等があり、金属チタン微分散水に含まれるチタン含有量が多くなるとともにチタンの分散水中での安定性が向上するが、特に好ましくはクエン酸又はその塩で、上記チタン微分散水の製造時のpH2〜4,好ましくは2.2〜2.7で、クエン酸の添加濃度は0.01〜0.2重量%,好ましくは0.1〜1重量%である。また、水溶性高分子としてポリビニルピロリドンを添加すると、微分散水中でのチタンが安定することもわかった。
【0019】
本発明では、上述するような製造方法で製造されたチタンの微分散水を疼痛緩和用組成物として使用するものであるが、使用態様としてはチタン分散液を基材に含浸させるためには、微量のNa,Ca,Mg等のミネラル成分により金属チタンの凝集・沈殿の生ずる問題があり、含浸工程には専門的な知識と、加工をするための精製水等の純水設備がある専門的な工場でのみ加工が可能であったが、製造時に水中にクエン酸(塩)等を添加して製造したチタン微分散水を使用することにより水中に分散するチタンの含有量が向上し、しかも安定的に含まれることがわかり、上述するような特別の設備等を備えることなく、一般的な工場での製造が可能になった。
【0020】
上述した金属チタンの微粒子が分散した微分散水によって処理、例えば含浸処理する対象基材としては、金属チタンが含浸しやすく保持しやすい基材であることが必要で、合成又は天然の不織布もしくは編織布又は多孔性の樹脂素材が適当である。
また、水中に金属チタンの微粒子が分散した、微分散水で処理した上記基材を用いた製品形態としては、パンティストッキング、靴下、手袋、下着類、シャツ類、寝装具、健康運動衣、建材、壁装材、ネックレス、テープ(テーピング用テープ含む)、ばんそうこう、包帯、ガーゼ、眼帯、生理用品、シップ、被服類等、マフラー、タオル、サポーター又はリストバンドから選ばれた製品が挙げられる。
【実施例】
【0021】
上記特許第3715310号の製造装置を使用して、精製水99.84%、クエン酸0.1%、チタン0.06%(チタン濃度が600mg/l)のチタン微分散水を調製し、これに、適宜、水で希釈して以下の7mg/l、100mg/l及び600mg/lの三種類の水分散液を調製した。
得られた水分散液に対して、平織基材(綿33%、ポリエステル 61%、ポリウレタン6%)を含浸させて〔表1〕の試料を作成した。
試料 No.1 から順次チタン含有濃度を増大させた4種の試料を作製した。
【0022】
〔表1〕

試料 No. 基材 チタン濃度※
1 平織布(黒色染色) 0
2 平織布(黒色染色) 7 mg/l
3 平織布(黒色染色) 100 mg/l
4 平織布(黒色染色) 600 mg/l
※チタン濃度は、水1lに対する元素チタン含有量mgである。
【0023】
<実験の目的>
上記試料を用いて、本発明が生理学的に疼痛を緩和する構造を有するかを確認するために以下の測定を行った。
【0024】
<実験手法>
脳神経学の分野では脳内で痛覚神経を司る海馬細胞の電気的変化を測定することで、疼痛の生理学的反応を確認することが出来ると知られている。また、同様の実験を行う際には、人体のそれを用いることは試料の確保が困難であるため、マウスの海馬細胞を実験動物として用いた。脳神経学の分野ではマウスの細胞を用いた場合においても、その構造上、人体のそれに対して一定の再現性があることが認知されている。
そこで、マウスの海馬細胞をスライスし、生態活動を行う環境を再現するため、温度調整した人工脳脊髄液に浸した。海馬細胞には電極を取り付け、痛覚神経を刺激する環境を再現し、その際に非接触の状態で、下記の各試料を海馬細胞の間近に配置して、以下の測定を行った。これらは上記製造方法により作成された本発明品をチタンの濃度別に〔表1〕に示す試料1〜4として用意することとした。
【0025】
すなわち、脳神経学においては、海馬細胞の疼痛反応を測定する客観的かつ再現性のある指標として、下記に挙げる3項目が認知されており、これらについてチタン濃度が無いもの、すなわち0mg/lから上述の製造方法により濃度600mg/lとしたものまでに対して、有意差が起こりうるかを観察した。これらは海馬細胞に電気刺激を行った際に発生する電気の状態を記録することにより測定することができるので、本発明の上記試料1〜4について、海馬細胞近辺に海馬細胞の間近に配置し、海馬細胞に電気刺激を行った際に発生する電気の状態を記録することとした。
【0026】
LTP長期増強(シナプス可塑性);
LTP(long-term potentiation)とは、シナプス前ニューロンの軸索に、高頻度連続刺激を与えることにより、それまでよりも大きな興奮性シナプス後電位(EPSP)が得られ、長時間にわたってシナプス伝達の効率が上昇する現象をいう。ここで正常時との割合が早期に低くなるほど、神経細胞が速やかに正常な状態に回復する性質を有しているということが言える。
【0027】
静止膜電位;
細胞内外を移動しているイオンの流出入は細胞が生きている限り止まることはないが、電荷の移動はある条件において見かけ上動かなくなり、この条件をもたらす膜電位を静止膜電位(Resting Membrane Potential)という。静止膜電位がより低い電圧で観察されるほど、安静時の神経細胞の安定性が優れていると認知されている。
【0028】
活動電位周波数;
海馬細胞のシナプスに対し交流電流を印加すると、特定の周波数でシナプスが発火する。この時の周波数を活動電位周波数といい、この周波数が低い位置であるほど、神経が信号に対して早く敏感に反応しており、伝達効率が優れていると言える。
【0029】
<実験の結果>
実験の結果をa〜cの項目についての測定結果を図1〜図3に示す。
ここでは試料をATT(チタン微分散水含浸テープ)とし、各濃度における電気反応の結果をグラフに示している。
aLTP長期増強効果については、図1に示すところであるが、0mg/lの試料(コントロール)に対して、濃度7mg/l及び100mg/lのチタン微分散水含浸の試料は傾き割合が全体を通じて比較的低く、時間経過に対して早期に低下していることが見て取れる。この傾向は600mg/lの試料においては、より顕著に現れている。
また、b静止膜電位については、図2にあるように、0mg/lの試料に対して、濃度100mg/lの試料は比較的低い電圧で静止膜電位の観察がなされている。この傾向は600mg/lの試料においては、より顕著に現れている。
さらに、c活動電位周波数は、図3について表されているが、0mg/lの試料(コントロール)に対して、濃度100mg/lの試料は比較的低い周波数となっている。この傾向は600mg/lの試料においては、より顕著に現れている。
【0030】
〔実験の総括〕
上記実験結果から、各チタン濃度の試料に対して下記のようなことが確認できた。
チタン濃度7mg/l及び100mg/lのチタン含浸テープは、チタンが全く含有されていない0mg/lに対して、優れた回復力を有し(早期に低下し安定するLTP)、安静時により高い安定性(低い静止膜電位)を有している上に、信号を受け取る感度及び伝達効率は向上している(低い活動電位周波数)といった傾向が観察される。
より濃度の高い600mg/lの試料では、この傾向が更に顕著に見られる。
以上から、本発明の疼痛緩和組成物における効果は、チタン濃度の7mg/l、100mg/l及び600mg/lを含浸したチタン含浸テープの近傍においては、神経細胞の安定性及び伝達効率が向上し、結果的に疼痛緩和作用のあることがわかった。
さらに、本発明における試料を用いたチタン含浸テープは、体内の最も敏感な細胞類であるニューロンに何ら中毒性影響を及ぼすことなく、ニューロンに影響を及ぼす痛覚記憶系統への干渉機能に働きかける生理学的な構造を備えていることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】経過時間に対する興奮性シナプス後電位の傾き規模をプロットし、長期増強(LTP)を観察した図
【図2】各試料に対して静止電位膜の電圧をプロットした図
【図3】各試料に対して活動電位が発火する周波数をプロットした図
【図4】本発明のチタン微分散水の製造フロー
【図5】本発明のチタン微分散水の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に金属チタンの微粒子が分散した、有機酸(塩)含有の微分散水を主成分とする疼痛緩和用組成物。
【請求項2】
上記有機酸(塩)が、クエン酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、L−ソルビン酸(塩)から選ばれた少なくとも一成分を含有してなることを特徴とする請求項1記載の疼痛緩和用組成物。
【請求項3】
上記有機酸(塩)濃度が、0.01%〜1%であることを特徴とする請求項1又は2記載の疼痛緩和用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の微分散水によって素材を処理したことを特徴とする疼痛緩和用部材。
【請求項5】
素材が、不織布もしくは編織布又は多孔性の樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の疼痛緩和用部材。
【請求項6】
請求項5の部材を使用したパンティストッキング、靴下、手袋、下着類、シャツ類、寝装具、健康運動衣、マフラー、タオル、サポーター又はリストバンド、建材、壁装材、ネックレス、テープ(テーピング用テープ含む)、ばんそうこう、包帯、ガーゼ、眼帯、生理用品、シップ、被服類等から選ばれた製品であることを特徴とする疼痛緩和用製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−108001(P2009−108001A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284221(P2007−284221)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(593022906)ファイルド株式会社 (10)
【Fターム(参考)】