説明

疾患の治療に使用される化合物

本発明は、好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患の治療及び/又は予防に使用するための、一般式(III)の化合物に関する。


式中、
は、CH、NH、O、S又は単結合であり、
、R、R、R及びRは、互いに独立に、H、OH、F、Cl、Br、I又はC〜Cアルキル基であり、
は、H、OH、NH、NH−NH又はCHである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は好酸球ペルオキシダーゼに関連する炎症性疾患の治療用の化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシダーゼ類のヒト酵素は、非特異免疫防御の一部をなす。これらは病原性微生物に対する防御時に高濃度で放出されて、生体分子の種々の酸化反応を触媒し、これらの反応によって、細菌やウイルス等の侵入者が不活性化される。しかし、これらのタンパク質の過剰生産によって自己組織の酸化損傷が生じ、結果として炎症を起こす場合も多い。
【0003】
従って、これらの酵素は多数の疾患と関連し、我々の生活において重要な役割を果たしている。これらの疾患は「自己酵素誘導」(auto-enzyme induced)疾患と呼ばれ、特に自己体内タンパク質MPO(ミエロペルオキシダーゼ)及びEPO(好酸球ペルオキシダーゼ;EC番号:1.11.1.7)は、多数の炎症性疾患の病因と関連している(表1参照)。更に、乳に含まれるラクトペルオキシダーゼ(LPO)は、抗菌及び抗酸化作用を有する。
【0004】
【表1】

【0005】
従って、これらの酵素類の中でも最も顕著且つ最も攻撃的な代表例である、MPO及びEPOに対する特異的阻害剤を開発すれば、炎症性疾患に対する新たな医薬及び療法の基礎とすることができ、有用であるといえる。
【0006】
EPOは多数の疾患、特に気管支喘息の慢性経過の主因であると考えられる。耐容性に優れた阻害剤が開発されて初めて、慢性気管支喘息の真の治癒法が提供されると言える。同様のことは、EPOが主因として関与する、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、嚢胞性線維症等の炎症過程にも当てはまる。これらの疾患は重篤で、西洋社会でも急速に増加している疾患であるが、多くの場合は慢性経過を示し、現時点では治療しても殆ど効果が得られることはない。
【0007】
自己体内タンパク質である好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)は、(例えば病原性物質又は寄生体の侵入、即ち感染により)好酸球(白血球)が刺激されるとすぐに放出される。同時に、膜結合NADHPオキシダーゼ複合体におけるファゴソームへの酸素取り込みが増加し(「呼吸バースト」(respiratory burst))、これにより反応性酸素種(中でもスーパーオキシド)が多数放出される。その後、これらは不均化されて(dismutated)過酸化水素(H)となり、好酸球ペルオキシダーゼによって水に還元される(Mitra, SN. et al. Redox Report 5 (2000) 215-224)。
【0008】
このEPO/H系によって、一方では、酵素の生理学的役割(病原体に対する防御)が発揮され、他方では、非特異的及び特異的な細胞損傷が生じることになる。
【0009】
非特異的な組織損傷には、細胞/細胞壁の破壊が含まれる。EPOは極めて強い正電荷を有し(pI>11)、細胞の脂質膜を透過できるからである。従って、感染の標的部位への途上で、EPOは細胞や組織を破壊し、炎症を引き起こす。
【0010】
更に、好酸球は、気管支喘息等のアレルゲン調節性疾患の病因にも関与している。気管支喘息は、気管支の粘膜の炎症又は感受性亢進であり、気道の狭窄を引き起こす。この臨床像は、サイトカイン(例えばインターロイキン5(IL5)等)による特定の防御細胞(いわゆるマスト細胞)の刺激に基づく。喘息の場合、マスト細胞及び好酸球性顆粒球は、気管支領域内に誘引される。これらの細胞が放出する物質(中でもヒスタミン)は、特に気道の筋肉に接触し、肺における粘液の産生を刺激する。この反応は多くの場合極めて迅速に、トリガー物質及び/又はストレスとの接触後15〜30分以内に生じる。その後(2〜4時間以内に)炎症性細胞(好酸球性顆粒球)が気管支の壁に遊走し、そこで慢性型(炎症)となる。これらの細胞が刺激されると、細胞毒性タンパク質を放出することにより、喘息の病理学的性質の多く(肺上皮の変性、上皮形態の破壊、微小血管透過性の上昇、浮腫)を亢進する。しかし、慢性炎症の発症時に、組織の「リモデリング」(再生)に関与する分子も同様に放出される。これにより、破壊された組織が再生され、「非弾性」結合組織の蓄積が防止される。
【0011】
特異的な細胞損傷を引き起こすのは、酵素反応系EPO/Hによって生成される、種々のEPOの攻撃的酸化物及び拡散性フリーラジカルである。酵素中間体(化合物I)の異常な酸化還元電位によって、EPOは多様な小分子を酸化し得る。生理的に関連するこれらの酵素基質としては、亜硝酸イオン(NO)、臭素イオン(Br)、並びに偽ハロゲン化チオシアン酸イオン(SCN)が挙げられる。これに続いて、高反応性の物質、即ち二酸化窒素ラジカル(NO・)、次亜臭素酸ラジカル(−OBr)、並びにチオシアン酸ラジカル(−OSCN)又はシアン酸ラジカル(−OCN)が夫々形成される。更に留意すべきは、EPO/H系の生物学的影響は高い基質特異性を示す、という点である。即ち、SCNの生理的血清濃度は、Br又はNOよりも実質的に高い(即ち、栄養的に好ましい影響を受け易い)。即ち、例えば酸化物−OSCNは転写因子NF−・Bを、NOよりも実質的に強く活性化し、惹いてはMAPキナーゼ系においてより強い炎症促進効果を有する(Wang, J. et al. Arch Biochem Biophys 445 (2006) 256-260)。ここで、これらの高活性反応生成物は、一方では受動免疫防御を構成し、体内に侵入した大型の寄生体を攻撃することにより、EPOの生理学的機能に寄与する。
【0012】
他方では、これらの物質は、非酵素反応において大型の生体分子(例えば脂質、タンパク質、DNA、RNA等)を攻撃することにより、その構造及び/又は官能基を改変する。臭素又はニトロ基は、特にヒドロキシ及びアミノ基に組み込まれる(ブロモ−及びニトロチロシン、ブロモヒドリン、ブロモアルデヒド、ブロモヌクレオチド、過酸化脂質)。即ち、例えば喘息患者の痰には、3−ブロモチロシン(バイオマーカー)が検出される場合がある(Aldridge, CJ. et al. Free Radical Biology & Medicine 33 (2002) 6, 847-856)。
【0013】
別の例として、慢性感染/炎症とガンの病因との間に有意な適合が検出される場合があり、その原因はDNAの酸化損傷によるものと考えられる(例えばビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)と膀胱ガン、或いはタイ肝吸虫(Opisthorcis vicerrini)と胆管癌)(Mitra、SN。et al。Redox Report 5 (2000) 215-224)。
【0014】
更に、EPOは、血管作用性(即ち血管拡張性)物質である一酸化窒素(NO)の生化学に関与する。一酸化窒素(NO)は、血管新生、血圧調節、(新生児等の)気管支拡張等の生理現象において、実質的な役割を果たしている。推測されるところによれば、EPO化合物I及び化合物IIによって酸化されたNOは、NOとして放出され、スーパーオキシドと反応してペルオキシ亜硝酸イオン(ONOO)を生じる。続いて、この高い反応性を有する化合物(酸化ストレスのマーカー)が、脂質及びタンパク質を攻撃することにより、ニトロチロシン及び過酸化脂質が形成される。他方では、NOを捕捉することにより、この重要な調節性二原子シグナル分子はもはや利用不能となり、惹いては重要な生物学的機能(例えば伝達物質としての機能)が部分的又は完全に阻害されることになる(Abu-Soud, HM. et al. Biochem 40 (2001) 11866-11875)。
【0015】
斯かる症状の発生によって、反応生成物(例えば臭素化脂質及びタンパク質等)における好酸球ペルオキシダーゼ又はその「フィンガープリント」の、夫々血漿又は組織濃度が、疾患の程度と相関を有することが立証される。好酸球及び好酸球ペルオキシダーゼは、喘息患者の血液、痰、気管支組織及び気管支肺胞洗浄液に見出され、今日では喘息の直接且つ定量可能なマーカーとして、並びに炎症及び喘息治療に対する患者の応答のの間接的な指標として用いられている。
【0016】
国際公開第2008/121670号には、ピリミジニルヒドラジド及びその気管支喘息治療における使用が記載されている。
【0017】
国際公開第00/073280号には、カテキン置換ヒドラゾン及びその気管支喘息治療における使用が記載されている。
【0018】
国際公開第2009/145360号は、夫々フェニル又はチオフェン誘導体に関し、これらは同様に気管支喘息治療に使用される。
【0019】
国際公開第2004/080377号は、細胞内のカリウムチャンネルの調節に適したフェニルヒドラジドを開示する。これによって特に気管支喘息等の疾患が治療される。
【0020】
米国出願公開第2003/0225102号及び国際公開第2002/006224号には、複素環置換基で置換されたヒドラジドが記載されている。これらの化合物は気管支喘息の治療に使用される。
【0021】
国際公開第2007/026215号、国際公開第2005/123688号、独逸特許第10 2006 005 179号、米国特許第5,571,846号、欧州特許第0323590号、国際公開第01/032156号、国際公開第2005/085185号及び米国特許第4,082,846号には、ヒドラジン構造を有し、多数の異なる疾患の治療に適した化合物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的の1つは、好酸球ペルオキシダーゼの活性を顕著又は完全に阻害することが可能な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
驚くべきことに、ヒドラジド等の特定の化合物が、好酸球ペルオキシダーゼの活性を阻害し得ることが見出された。従って、本発明は、好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患の治療及び/又は予防に使用するための、一般式(III)
【化1】

の化合物に関する。ここで、
は、CH、NH、O、S又は単結合であり、
、R、R、R及びRは、互いに独立に、H、OH、F、Cl、Br、I又はC〜Cアルキル基であり、
は、H、OH、NH、NH−NH又はCHである。
【0024】
本発明の更なる側面は、好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患の治療及び/又は予防のための、一般式(I):
【化2】

のヒドラジドに関する。ここで、本発明によれば、Rは、ピリジン、インドール、ピラゾール又はピリミジン等の複素環化合物(複素環残基)、或いは、ナフトール、ベンゼン又はフェニルアミノエタン等の芳香族化合物(芳香族残基)である。
【0025】
本発明に係る化合物の阻害活性の点では、電子受容体として機能する自由末端アミノ基が望ましい。
【0026】
しかし、更に本化合物の立体及び/又は電気化学特性も、これらの化合物のEPOとの結合及び/又は酵素反応に寄与する。ファーマコフォアモデルによれば、本発明に係る物質は、種々のモチーフ(例えば水素結合供与体、水素結合受容体、芳香環/領域、疎水性領域)を有するであろうことが示されている。ここから導かれる例示構造を、結合長さ及びドメインと共に示す。(II):
【化3】

【0027】
本発明に係る化合物、中でもとりわけ好ましいフェニルアミノエタンヒドラジド(PAEH)、及びその誘導体は、このモデルに対応する。ここでベンゼン環と酸ヒドラジド基との間の距離は2.65オングストロームである。(IIIa):
【化4】

【0028】
置換基Rは、CH、NH、O、S又は単結合であり、置換基R、R、R、R及びRは、互いに独立に、H、F、Cl、Br、I又はC〜Cアルキル基であり、Rは、H、OH、NH、NH−NH又はCHである。
【0029】
攻撃的な細胞損傷物質の産生に中心的な役割を果たすのは、最初に議論したように、好酸球ペルオキシダーゼ、EPOである。本発明に係る物質を用いることで、EPOが関与するこれらの過程、特に炎症過程を阻害することができ、惹いては好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患を治療することが可能となる。
【0030】
本発明に係る化合物は、好酸球ペルオキシダーゼ(白血球内に存在)及び相同なラクトペルオキシダーゼ(母乳及び唾液内に存在)に選択性を有する。しかし、これらの化合物は、ミエロペルオキシダーゼ、特にヒトミエロペルオキシダーゼを、同程度に阻害する能力は有さない。このため、これらの化合物は、EPOに対する選択的な薬剤として、標的化して用いることができる。
【0031】
本発明に係る物質によれば、その強力な阻害効果ゆえに、極めて低い用量での治療用途の開発が可能となる。具体的には、約0.001〜10μMの局所又は全身濃度で十分である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る化合物は、当業者に十分知られており、既知の方法によって製造される(例えばFinger, GC. et al. J Am Chem Soc 81(1959)94-101参照)。N−アリールグリシンの大部分は、そのエステルやヒドラジド、或いは他の誘導体と同様に、結核菌阻害能力を生物学的に検証するべく作製される。p−アルキルアニリン及びp−シクロヘキシルアニリンは、対応するp置換アセトフェノンのオキシムのベックマン(Beckmann)転位によって作製される。p−アルコキシアニリンは、p−ベンザルアミノフェノールの水性エタノール中におけるハロゲン化アルキル及びNaOHを用いたアルキル化、及びその後のHClを用いたアルジミンの加水分解によって作製される(Tien, NB. et al. Org Chem 23(1958)186-8)。
【0033】
「好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患」という用語は、個人のEPOの活性亢進に起因すると考えられる病気や状態を指す(例えばDavies, MJ. et al. Antioxidants & Redox Signaling 10(2008)1199-1234; Wang, J. et al. Arch Biochem Biophys 445(2006)256-260; Mitra, SN. et al. Redox Report 5(2000)215-224参照)。これは当初議論されたところであり、斯かる疾患は勿論、当業者に公知である。同様に、EPO活性と、EPO活性の結果である疾患との関係も、当業者に十分に知られている。例えば、気管支喘息に罹患している患者の痰では、GC‐MS法(ガスクロマトグラフ質量分析法)を使用することで、EPO酸化生成物である-OBrによるタンパク質の改変によって形成された3−ブロモチロシン(バイオマーカー)が検出される場合がある(Aldridge, CJ. et al. Free Radical Biology & Medicine 33(2002)847-856)。
【0034】
それぞれEPOの反応生成物である次亜チオシアン酸ラジカル(-OSCN)又はNO2・は、転写因子NF−κBを活性化するため、MAPキナーゼ系において炎症促進効果を有する。トランスジェニックマウス(EPOノックアウト)によれば、潰瘍性大腸炎によって生じた損傷は大幅に少ないことが示された。このことは更に、クローン病や嚢胞性繊維症等の他の慢性炎症にも当てはまる(Wang, J. et al. Arch Biochem Biophys 445(2006)256-260)。
【0035】
腫瘍疾患もEPO活性亢進の結果である可能性がある。なぜならその結果、感染後の反応性酸素種(例えばブロモヌクレオチド、一重項酸素等)により引き起こされるDNAの酸化損傷が生じるからである(例えば、ビルハルツ住血吸虫と膀胱ガン、又はタイ肝吸虫と胆管ガン(cholangiocarcinoma))(Hitra, SN. et al. Redox Report 5(2000)215-224)。「好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患」の別名は、体内のEPO活性亢進に基づく疾患である。ここで、活性亢進とは、疾患に全く罹患していない平均的な個人に現れるEPO活性亢進の結果を指す。
【0036】
EPO又はその反応酸化物(それぞれ-OBr又はNO2・)の遊走により、それぞれ脂質二重層並びに膜タンパク質や細胞壁が改変され(ブロモ−及びニトロチロシン、過酸化脂質)、分解され、最終的には破壊される(Wang, J. et al. Arch Biochem Biophys 445(2006)256-260)。これにより、結果として組織損傷、ひいては壊死が生じる。
【0037】
選択的阻害剤を使用することで、EPOの組織損傷効果は防止されるが、しかし同時に、好酸球性顆粒球の組織形成機能は維持される。即ち、この新たな医薬群を用いることにより、例えばこれまでのところ非可逆的且つ慢性的であった気管支喘息の経過を停止し(EPO阻害剤)、更には治癒法さえ提供することができる。
【0038】
本発明に係る化合物には、とりわけ、医薬的に許容し得る酸付加塩が含まれる。本発明において、斯かる塩は、このように理解すべきである。医薬的に許容し得る酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸及びマレイン酸の塩から選択される。中でも、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸及び酢酸の塩が特に好ましい。
【0039】
7が遊離アミノ基、好ましくはヒドラジド基であることが、有用であると見出された。それぞれ一般式(I)又は(IIIa)、及び(IV)の斯かる化合物のアミノ基が、EPO阻害剤としての効果の面で有用である。すなわち、本発明に係る化合物は、作用部位に遊離アミノ基を有するべきである。但し、本発明に係る化合物の耐容性を高めるべく、必要に応じて当該アミノ基に、作用部位で除去される保護基を付与してもよい(プロドラッグの概念)。勿論、一般式(III)の化合物のR7は、H、OH又はCH3残基であってもよい。斯かる化合物も、高い効率で好酸球ペルオキシダーゼを阻害することが可能である。
【0040】
本発明の特に好ましい実施形態によると、R1はNHであって、ヒドラジドが一般式(IV)を有する。
【化5】

【0041】
本発明の好ましい実施形態によると、C1〜C5アルキル基は、CH3及びCH2CH3からなる群から選択される。
【0042】
本発明の更なる好ましい実施形態によると、R1はCH2、NH、O又はSであり、特に好ましくはNH又はOであり、R2はF又はHであり、R3はCl、Br又はHであり、R4はCl、F、CH3又はHであり、R5及びR6はHであり、そしてR7はOH又はNH−NH2である。
【0043】
本発明の特に好ましい実施形態によると、本発明に係る化合物(III)は、次の置換基を有する(表A参照)。
【化6】

【0044】
表A:
【表2−1】

【0045】
【表2−2】

【0046】
【表2−3】

【0047】
【表2−4】

【0048】
【表2−5】

【0049】
【表2−6】

【0050】
【表2−7】

【0051】
【表2−8】

【0052】
【表2−9】

【0053】
【表2−10】

【0054】
本発明の好ましい実施形態によると、化合物は、2−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、4−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、2,4−ジ−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、4−クロロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、3−ブロモ−4−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、4−メチル−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、フェニルアミノ−エタン−ヒドラジド、2−[(4−クロロフェニル)スルファニル]アセトヒドラジド、2−(4−フルオロフェノキシ)アセトヒドラジド、2−(2−ブロモフェノキシ)アセトヒドラジド、N−(2−フルオロフェニル)グリシン、2−[(4−クロロフェニル)アミノ]酢酸、及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパノヒドラジドからなる群から選択される。
【0055】
本発明に係る化合物によれば、特に、過剰なEPO活性にその原因が見出される炎症性疾患を治療することができる。好酸球性顆粒球及びEPOは、非特異免疫防御の構成要素である。特に炎症過程の場合、これらの白血球の蓄積が、更に慢性炎症を引き起こす可能性もある。炎症性疾患は、気管支喘息、多発性硬化症、嚢胞性繊維症、潰瘍性大腸炎、クローン病、鼻炎、子宮内膜症、副鼻腔炎、好酸球性食道炎、シュルマン症候群(好酸球性筋膜炎)、心内膜炎、チャーグ・ストラウス症候群、皮膚疾患、好ましくは妊娠性疱疹又は好酸球性皮膚病、ハンド・シュラー・クリスチャン病(ASCD)、心臓血管疾患、好ましくは心内膜炎及び血管壁の炎症過程による高血圧からなる群から選択されるのが好ましい。
【0056】
それぞれ好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)によって生じ、或いはEPOがその経過に関与する、代表的な疾患に関する総説:
【表3】

【0057】
(1) Davies MJ, et al. Antioxidants & Redox Signaling. 10, 2008:1199-1234.
(2) Wozel G. Hautarzt 58, 2007:347-359.
(3) Blumenthal RD. et al., Exp. Rev. Mol. Med. 3, 2001:1-12.
(4) Mitra SN, et al. Redox Rep. 5, 2000:215-224.
(5) Wang J, et al. Arch Biochem Biophys 445, 2006:256-260.
(6) Forbes E, et al. J Immunology 172, 2004:5664-5675.
(7) Heinecke JW. J Clin Invest. 105, 2000:1331-1332.
(8) Corry DB, et al. Immunol Res. 33, 2005:35-52.
(9) Bernardes JF, et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 131, 2004:69-703.
(10) Bachert C, et al. Acta Otorhinolaryngol Belg. 51, 1997:209-217.
(11) Straumann A, et al. Schweiz Med Forum 8, 2008:724-728.
(12) Akanay-Diesel S, et al. Der Hautarzt 60, 2009:278-281.
(13) Slungaard A, et al. J Exp Med. 173, 1991:117-126.
(14) Eustace JA, et al. J Am Soc Nephrol 10, 1999:2048-2055.
(15) Janeway's Immunobiology, ISBN 0-8153-4123-7, Garland Science, Taylor & Francis Group, 2008, 7th Edition: 566-583.
(16) Nielsen LP, et al. Allergy 64, 2009:733-337.
【0058】
種々の炎症臓器及び組織、並びにそこから得られた分泌物に、EPO及び/又はその反応生成物(例えばニトロ化、臭素化脂質、タンパク質、DNA)が検出され得る。これは一方では、食作用の範囲内のEPOによる受動免疫応答を立証するものであるが、他方では、これは総体として、EPO及びその反応生成物の組織破壊効果を示している。例えば、喘息患者の痰では、放射免疫学的にEPOが検出されるとともに、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC‐MS法)により3−ブロモチロシンが検出される場合がある(Aldridge et al. Free Radical Biology & Medicine 33(2002)847-856)。
【0059】
動物モデル(ラット)によれば、臭素の存在下において、EPOが心内膜炎の原因であることが実証された(Slungaard, A. et al. J Exp Med. 173(1991)117-26)。心内膜炎は心臓内膜の炎症である。心臓内膜は、心臓腔及び心臓に近い動脈と静脈の一部の内側を覆うとともに、心臓小葉様弁膜の構造を形成している。原則として、どの個人も心内膜炎で倒れる可能性があり、これを治療しない場合、疾患の経過は多くの場合、致死的である。心内膜炎の治療には抗生物質が使用できる。
【0060】
更に、潰瘍性大腸炎は、EPOによって生じる疾患である。Wangらは、無EPOマウス(EPOノックアウトマウス系統)が、野生型と比べて潰瘍性大腸炎に罹患し難いことを示した。やはり腸領域の慢性炎症性疾患であるクローン病は、非特異免疫防御及びEPOに関連する(Wang, J. et al. Arch Biochem Biophys 445(2006)256-260)。
【0061】
鼻炎(鼻粘膜の炎症)等のアレルギー疾患でも、EPOが決定的に関与している(Hrdlickova, B. et al. Int Arch Allergy Immunol. 150(2009)184-91)。
【0062】
更に、EPOは、妊娠期間中に激しい自己免疫疾患が現れる妊娠性疱疹等の皮膚病(皮膚疾患)の発生に関与する。好酸球性皮膚疾患は更に、他の哺乳動物(イヌ、ネコ)に起こる場合も多い(Scheman, AJ. et al. Arch Dermatol. 125(1989)1079-83)。
【0063】
ホジキンリンパ腫(同義:ホジキン病又はリンパ肉芽腫症、略称HD)は、リンパ系の悪性腫瘍である。EPOに対する放射性標識モノクローナル抗体を用い、腫瘍部位を直接調べたところ、EPOがアポトーシスに関与することが示された(Samoszuk, MK. et al. J Nucl Med. 34(1993)1246-53)。
【0064】
ハンド・シュラー・クリスチャン病(HSCD)は、多くの場合、2〜5歳の子供、若者、及び中年成人に発症する。この形態は、ランゲルハンス細胞組織球増加症の約15〜40%を占める。発症者の約30%に、肝臓、脾臓、肺、皮膚及びリンパ節を侵す全身的な蔓延が見られる。骨病変、眼球突出症及び尿崩症を伴う古典的なハンド・シュラー・クリスチャン病は、ごく希にしか起こらない。多器官の全身的な蔓延の場合、予後不良が見られ、積極的な化学療法と、おそらくは幹細胞移植が必要となる。さもなければ、この疾患は、必要に応じて化学療法を用いることで、自然に収まる場合がある。研究によれば、EPOの大規模な放出が測定された。結局はEPOこそが、この疾患の罹患中に生じる大規模な組織損傷の原因である(Zabucchi, G. et al. J Pathol. 163(1991)225-31)。
【0065】
本発明に係る化合物は、様々な様式で投与できる。疾患によって、化合物を全身的に又は局所的に投与できる。そのため、本発明に係る化合物、特にフェニルアミノエタン−ヒドラジド(PAEH)又はその誘導体夫々は、静脈内、腔内、経口、腹腔内、吸入及び局所投与形態で供されるのが好ましい。
【0066】
投与タイプにより、本発明に係る化合物、特にフェニルアミノエタン−ヒドラジド又はその誘導体夫々は、注入、錠剤、カプセル、クリーム、ゲル、エマルジョン又はパッチの形態で存在するのが好ましい。
【0067】
投与形態に応じて、本発明に係る医薬組成物は、本発明に係る化合物の他に、例えば崩壊剤や安定化剤、担体及び希釈剤等の賦形剤を含む。
【0068】
一般的な賦形剤、担体及び希釈剤の例は、ゼラチン、天然糖(ショ糖又はラクトース、レシチン、ペクチン等)、デンプン(例えばコーンスターチ)並びにデンプン誘導体、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸、チロース、タルク、リコポジウム、ケイ酸(例えばコロイド)、フルクトース、トラガント、塩化ナトリウム、ステアラート、12〜22個のC原子を持つ脂肪酸のマグネシウム塩及びカルシウム塩、特に飽和のもの(例えばステアラート)、200〜20,000、好ましくは200〜5,000、特に200〜1,000の平均分了量を有するポリエチレングリコール、又はそれらの混合物、並びに/あるいはビニルピロリドンの重合物及び/又はビニルピロリドンとビニル酢酸の複合重合物である。脂肪族飽和又は不飽和脂肪酸(C原子2〜22個、特にC原子10〜18個)と一価脂肪族アルコール(C原子1〜20個)又はグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ペンタアクリトリトール、ソルビトール、マンニトール等のエーテル化されてもよい多価アルコールとのエステル(必要であれば、エーテル化されることもできる)、安息香酸ベンジル、ジオキソラン、グリセロホルマール、テトラヒドロフルフリルアルコール、C1〜C12アルコールとのポリグリコールエーテル、ジメチルアセトアミド、ラクトアミド、乳酸塩、エチルカルボネート、シリコーン(特に中位粘性ポリジメチルシロキサン)、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、アラビアゴム、アルギン酸、ステアリン酸塩、脂肪及び類似効果を有する物質が使用できる。例えば注入形態等のような溶液に関して、種々の緩衝系を使用できる。
【0069】
本発明の更なる側面は、本明細書中に記載したような化合物を含む、好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物に関する。
【0070】
本発明に係る医薬組成物は、注入、錠剤、カプセル、クリーム、ゲル、エマルジョン又はパッチの形態で存在するのが好ましい。
【0071】
本発明のより更なる側面は、好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患の治療及び/又は予防用の医薬の製造のための本発明に係る化合物の使用に関する。
【0072】
本発明の更なる側面は、本発明に係る化合物を一種類又は数種類投与することによって、好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患を治療及び/又は予防するための方法に関する。
【0073】
以下の実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に制限されることはない。
【実施例】
【0074】
実施例1:
本発明に係る物質がEPOをどの程度阻害することができるか試験するために、当該物質の阻害能力を調べた。ここでは、比較可能なパラメーターとして、IC50値を測定した。ここで、IC50とは、酵素(ここではEPO)を50%阻害するのに必要な阻害剤の濃度である。この濃度は、UV/Vis分光光度測定により、290nmで、定常状態で、モノクロロジメドン(MCD)アッセイを用いて測定した。
【0075】
阻害効果の測定
IC50値の測定
好酸球ペルオキシダーゼは、数々の多様な酵素中間体を生成し、多数の酸化還元反応を触媒することができる。EPOの生理学的役割は、臭素又はチオシアン酸を、それぞれ次亜臭素酸又はチオシアン酸ラジカルに酸化することである(別名ハロゲン化サイクル)。阻害すべきはまさしくこの反応である。しかし、フェノール系物質の存在下では、その酵素は更に、いわゆるペルオキシダーゼサイクルも受ける。
本発明に係る物質の阻害すべき特性を測定するために、臭素化活性を調べる方法を使用した。
【0076】
臭素化活性
生理学的な臭化物酸化阻害の程度を、モノクロロジメドンを用いて、光学測定により測定した。阻害剤によるハロゲン化率(290nmの曲線の初期勾配)を、ブラインド値(阻害剤なし)と関連付け、そこから不活性化率(%単位)を決定した。これを阻害剤濃度(X軸)に対して図表化(Y軸)し、得られた曲線の双曲線適合から、各阻害剤のIC50値を決定した。
【0077】
100mMのリン酸緩衝液、pH7.0
100μMのモノクロロジメドン
100mMの臭素
20nMのEPO
100μMのHOOH
0.001〜500μMの阻害剤
【0078】
フェニルアミノエタン−ヒドラジド
種々の物質群の実験において、その構造がEPO(及び相同のLPO)の触媒中心に推定上一致し、活性の阻害も生じたことから、フェニルアミノエタン−ヒドラジド(III)、特にそれらの誘導体とそのハロゲン化誘導体の物質群が、EPOの非常に優れた選択的阻害剤であることが判明した。各誘導体、とりわけハロゲン化誘導体の例については、以下のように言う必要がある。幾つかの例に基づくならば、表2は、MPOではなく、EPO(及び相同のLPO)に対するフェニルアミノエタン−ヒドラジドの選択性を示すものである。
表2:阻害活性を有し得るフェニルアミノエタン−ヒドラジド誘導体の例
(IC50:酵素活性が50%阻害される濃度)
【表4−1】

【表4−2】

【0079】
化合物(3)2−フルオロフェニル−NH−エタンヒドラジドは、EPOに対して0.009μMのIC50値を有するが、MPOに対しては夫々1.900μM又は8.800μMという、実質的により高いIC50値を有する。すなわち、この物質は、EPOに対しては極めて優れた阻害剤となるが、ヒト・ペルオキシダーゼと同じ酵素ファミリーのMPOに対しては優れた阻害剤ではない。
【0080】
更に、ハロゲン化フェニルアミノエタン−ヒドラジド誘導体が、非ハロゲン化体よりも更に強い阻害効果を有することが、表2から読み取れる。
【0081】
化合物(6)のフェニルアミノエタン−ヒドラジドは、2.290μMのIC50値を示している。この能力は、優れた耐容性と共に、既に阻害剤として治療への適用につながる可能性がある。しかし、実施例番号(3)2−フルオロフェニル−NH−エタンヒドラジドは、0.009μMのIC50値を有する200倍超の能力を示している。これにより、極めて低い治療濃度が可能であり、また、これにより、望ましくない副作用の可能性も最小限になる。
【0082】
実施例2:
更なる試験群では、一般式(I)の物質がEPOの活性をどの程度阻害できるか調べた。例として、一般式(I)中のRxがピリジン残基を表すイソニアジド(ピリジン−4−カルボヒドラジド)を使用した。実施例1と同様に試験を実施した。
【化7】

【0083】
イソニアジドは6.04μMのIC50値を有すると決定された。
本発明に係る物質のEPO阻害特性における一般式(I)のヒドラジド残基の遊離アミノ基の影響を調べるために、イソニアジドの誘導体、すなわち、N’−イソプロピルイソニコチノヒドラジド(イソプロニアジド)を調べた。ここで、驚くべきことに、イソプロニアジドが500μM超のIC50値を有することが見出された。
【0084】
これは、EPO活性の強力な阻害に関して、他の特性(II)にも増して、一般式(I)による物質の遊離アミノ基が、何れの場合でも決定的であることを立証するものである。この点は、構造的に関連する物質の例であるイソニアジド及びイソプロニアジドに基づいて、見事に実証することができた。遊離アミノ基の誘導体化が、阻害濃度の低下をもたらした。
【0085】
実施例3:
実施例1の記載と同じプロトコールに従って実施した追加の試験群では、本発明に係る更なる化合物の好酸球ペルオキシダーゼ阻害能力を調べた。斯かる試験の結果及び使用した化合物については、以下の表から読み取ることができる。
【表5】

【0086】
実施例4:
本発明に係る化合物の薬理効果を示すには、動物モデルを使用できる。動物モデルを使用することで、薬理学的活性物質が各々の効果をどの程度有するのか、実験を通して立証することが可能である。
【0087】
1.気管支喘息
気管支喘息の発症及び進行には、幾つかの因子が関与する(1):アレルゲン、情動ストレス、身体運動、冷気、及びこれらの因子全ての組み合わせ。病態生理学的応答は極めて複雑であるが、我々の標的であるEPOへの「赤い糸」が存在する。Tヘルパー2(Th2)細胞がインターロイキン、特にIL−5の放出をもたらし、それがエオタキシンの放出を引き起こす。これにより、肺の作用部位への好酸球性顆粒球の遊走が生じる。アレルギーによるIgE濃度及び好酸球のIgE受容体の増加が、脱顆粒と、EPOの60%を伴うタンパク質放出をもたらす。EPOはハロゲン及びチオシアン酸の酸化を触媒し、高反応性の酸化物を形成させる。斯かる酸化物は、寄生体や微生物に対する防御のために放出されるが、(喘息や他の慢性疾患の場合は)組織破壊効果も有している。
【0088】
従って、斯かる機構が生じると共に、ヒトの経過に近いか否かを検証する必要があり、そのための「慢性モデル」が求められる。その後、このモデルを用いて、EPO阻害剤の効果を試験することができる。
【0089】
効果の検定のために、夫々の動物モデルを使用した。しかし、特に喘息及びEPOとの関連において、動物モデルは複雑である。
【0090】
アプローチ:
18〜21gの体重を有するBalb/cマウスを1週間の順化期間、飼育した。
オボアルブミンと喘息の誘発(気道のアレルギー性炎症)とは無関係であることが知られているので、刺激はイエダニ又は植物花粉を用いておこなう。7週間にわたり、アレルゲンを毎日、経鼻的に与える。この刺激は、AHR(急性気道反応亢進)を伴った喘息症状及び気道の好酸球性炎症を直接引き起こす(Johnson et al. 2004, Am J Respir Grit Care Med 169:378-385; Johnson et al. 2008, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 295:L780-L788)。
【0091】
ELISAを使用して、炎症パラメーターである好酸球性顆粒球及びEPOを、BALE(気管支肺胞上皮液)上清中で最後に計測する。EPOが活性である場合、これらの個体を治療群と対照群とに割り付ける。治療群には本発明による化合物(毎日1〜10mg/kg)を与え、対照群にはプラシーボを与える。アレルギー並びに気道及び肺の慢性炎症の発症パラメーターとして、特に、増悪(重篤な発作)の回数とAHRの程度を使用する。第3群は従来の様式で(特に)デキサメタゾンを用いて治療することができる。
【0092】
2.鼻炎と副鼻腔炎
副鼻腔及び篩骨部の疾患に対する本発明による化合物の効果を、気管支喘息と同じ動物モデルを用いて測定できる。
【0093】
3.子宮内膜症
子宮内膜症向けの薬物候補の有効性試験のための動物モデルは、十分に確立されているので、実施するのが容易である。ラット(Neto JN, Coelho TM, Aguiar GC, Carvalho LR, de Araujo AG, Girao MJ, Schor E. Experimental endometriosis reduction in rats treated with Uncaria tomentosa (cat's claw) extract. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2010 Oct 26.)及びマウス(Lu Y, et al. Hum Reprod. 25(2010):1014-25)が一般的な試験動物である。そこでは、ヒトの子宮内膜症組織の断片を試験動物に移植する。3〜4週間の適応期間後に、本発明に係る化合物を、「単純に」試験し、そして夫々プラシーボ群又は従来の療法で治療した群と比較することができる。
【0094】
4.心内膜炎
心臓内膜の感染症であり、ラットモデルでよくシミュレートされている(Singh KV, et al. PLoS Pathog. 2010 Jan 8;6(1):e1000716)。
【0095】
5.慢性炎症性腸疾患(炎症性腸疾患、例えば:クローン病及び潰瘍性大腸炎)
ここでは結腸細胞をマウスから採取し、更なる検査に供する(Weigmann B, et al. Nat Protoc 2(2007):2307-11.)。そこでは、ペルオキシダーゼ活性を、酵素的なMCD(モノクロロジメドン)アッセイを使用することで、又は電気泳動分離後にゲル内での能動的染色として試験できる。
【0096】
6.嚢胞性繊維症
マウスを用いて容易に実施できる試験。嚢胞性繊維症は感染とも関連するので、試験動物を感染させ、そして疾患惹起後に治療する(薬物候補−プラシーボ−従来品)(Wang Y, et al. Respir Res. 2010 Nov 30;11:166; Guilbault C, et al. Lab Anim. 2005 Jul;39(3):336-52)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患の治療及び/又は予防に使用するための、一般式(III)
【化1】

(式中、
は、CH、NH、O、S又は単結合であり、
、R、R、R及びRは、互いに独立に、H、OH、F、Cl、Br、I又はC〜Cアルキル基であり、
は、H、OH、NH、NH−NH又はCHである。)
の化合物。
【請求項2】
がNHであり、RがNH−NHであり、前記化合物が、一般式(IV)
【化2】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記C〜Cアルキル基が、CH及びCHCHからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
がCH、NH、O又はSであり、RがF又はHであり、RがCl、Br又はHであり、RがCl、F、CH又はHであり、R及びRがHであり、RがOH又はNH−NHである、請求項1〜3の何れか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、2−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、4−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、2,4−ジ−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、4−クロロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、3−ブロモ−4−フルオロ−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、4−メチル−フェニルアミノエタン−ヒドラジド、フェニルアミノエタン−ヒドラジド、2−[(4−クロロフェニル)スルファニル]アセトヒドラジド、2−(4−フルオロフェノキシ)アセトヒドラジド、2−(2−ブロモフェノキシ)アセトヒドラジド、N−(2−フルオロフェニル)グリシン、2−[(4−クロロフェニル)アミノ]酢酸、及び3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパノヒドラジドからなる群より選択される、請求項1〜4の何れか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記炎症性疾患が、気管支喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、潰瘍性大腸炎、クローン病、鼻炎、子宮内膜症、副鼻腔炎、好酸球性食道炎、シャルマン症候群(好酸球性筋膜炎)、心内膜炎、チャーグ・ストラウス症候群、皮膚病、好ましくは妊娠性疱疹又は好酸球性皮膚病、ハンド・シュラー・クリシチャン疾患(ASCD)、心臓血管疾患、好ましくは心内膜炎、及び血管壁の炎症過程による高血圧からなる群より選択される、請求項1〜5の何れか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が静脈内、腔内、経口、腹腔内、吸入及び局所投与形態で供される、請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が注入、錠剤、カプセル、クリーム、ゲル、エマルジョン又はパッチの形態で存在する、請求項1〜7の何れか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、体重1kg当たり0.01〜2,000mg、好ましくは体重1kg当たり0.1〜1,000mg、より一層好ましくは体重1kg当たり0.1〜500mgの量で投与される、請求項1〜8の何れか一項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜5の何れか一項に記載の化合物を少なくとも一種含む、好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患の治療のための医薬組成物。
【請求項11】
前記炎症性疾患が、気管支喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、潰瘍性大腸炎、クローン病、鼻炎、子宮内膜症、副鼻腔炎、好酸球性食道炎、シャルマン症候群(好酸球性筋膜炎)、心内膜炎、チャーグ・ストラウス症候群、皮膚病、好ましくは妊娠性疱疹又は好酸球性皮膚病、ハンド・シュラー・クリシチャン疾患(ASCD)、心臓血管疾患、好ましくは心内膜炎、及び血管壁の炎症過程による高血圧からなる群より選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記化合物が静脈内、腔内、経口、腹腔内、吸入及び局所投与形態で供される、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記化合物が注入、錠剤、カプセル、クリーム、ゲル、エマルジョン又はパッチの形態で存在する、請求項10〜12の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
好酸球ペルオキシダーゼに関連する疾患、特に炎症性疾患の治療及び/又は予防用の医薬の製造のための、請求項1〜5の何れか一項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
好酸球ペルオキシダーゼの阻害のための、請求項1〜5の何れか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2013−518061(P2013−518061A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550265(P2012−550265)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/AT2011/000050
【国際公開番号】WO2011/091461
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512198947)イノキシア ライフサイエンシズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】