説明

病原体抵抗性の植物

本発明は、ブレミア抵抗性の新規ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物、および前記植物の種子に関する本発明はまた、そのような植物およびその種子を作製する方法に関する。本発明はさらに、マーカー利用による育種における、ならびにブレミア抵抗性形質を同定するための、マーカーおよびその方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレミア抵抗性の新規植物、および上記植物の種子に関する。本発明はまた、そのような植物を作製する方法およびその種子を生成するための方法に関する。本発明はさらに、マーカー利用による育種における、ならびにブレミア抵抗性形質を同定するための、マーカーおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
べと病は、レタスべと病菌(Bremia lactucae)という菌によって引き起こされる真菌性の病害である。それは世界中で起こっており、栽培レタス(ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa))の収穫量および品質にとって大きな問題となっている。この真菌は、レタス植物のいずれの成長段階においても感染する可能性があり、その後、葉表面上の退緑黄斑として、べと病の最初の症状が現れる。24〜48時間以内に、胞子形成の表れとして、葉の下部表面に白色・綿毛状の真菌の成長が現れる。感染の間、葉が完全に茶色になるまで病変部の斑紋が徐々に大きくなり、さらに黄化が進む。典型的な胞子形成は、レタスの苗がブレミアによるべと病にかかりやすい時に生じる。植物が抵抗性形質についてホモ接合である場合、胞子形成は観察されない。半優勢の抵抗性遺伝子がヘテロ接合である場合もまた、胞子形成は観察されないが、理想的なべと病ブレミアの培養条件下では子葉の黄化または褐色化が頻繁に起こり得る。
【0003】
レタスべと病菌(Bremia lactucae)は、比較的原始的な真菌の種類である卵菌群に属する。この群の他のメンバーは、例えば、フハイカビ属および疫病菌である。異なる生理学上の種(「生理種」)を含有するレタスべと病菌(B.lactucae)は、非常に可変的な病原体として知られ、宿主特異的である。新しい生理種は、レタスべと病菌(B.lactucae)の繁殖に先行して、胞子形成の間に非病原性遺伝子の突然変異により比較的頻繁に生じる。
【0004】
栽培レタスが属するレタス属内には、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に抵抗性の異なる種が存在する。抵抗性は、一般に、Dm−抵抗性遺伝子(べと病のDmストランド)として知られる質的遺伝子に基づく。抵抗性のメカニズムは、レタス植物の抵抗性をもたらす、Dm−抵抗性遺伝子の産物と病原体特異的な非病原性遺伝子との間の特異的相互作用(HR反応)に基づく遺伝子対遺伝子のメカニズムとして知られている。抵抗性遺伝子が完全に優勢である場合、ブレミア胞子形成は観察されない。しかしながら、抵抗性が半優勢である場合、多くの場合胞子形成は観察されないが、子葉の黄化/褐色化が観察される。
【0005】
毒性遺伝子における頻繁な突然変異の発生が原因とされる病原体の高い多様性に起因して、様々なDm 抵抗性遺伝子により媒介される品種特異的な抵抗性は、通常、ブレミア病原体の新たに発生した品種または生理種により急速に破壊される。
【0006】
ブレミア菌、特にレタスべと病菌(Bremia lactucae)によるレタス植物の寄生によりもたらされる、栽培レタス(ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa))の収穫量および品質の低下のため、植物、例えばラクツカ等のレタス植物をレタスべと病菌(Bremia lactucae)寄生から保護するための便利で経済的な持続的戦略の必要性が満たされていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、レタスべと病菌(Bremia lactucae)の寄生に抵抗性であり、よって、この病原体によって引き起こされるダメージから保護されるラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を提供することにより、この必要性に対応する。ブレミア抵抗性レタス植物の提供は、殺虫剤の使用に代わる環境に優しい代替手段であり、生物学的制御オプションの効率を増加させ、統合された害虫管理プログラムの成功に寄与することができる。
【0008】
従って、本発明の根本にある技術的問題は、ブレミア抵抗性ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物の提供であり、この植物は、本出願の出願日の時点で知られている品種、特に、IBEB(International Bremia Evaluation Board)によるSEXTETコードに従い性質決定および分類された、ブレミア種または分離株BI1からBI24に関して、この病原体に対する改善された抵抗性、特に全般的な非品種特異的抵抗性を示す。
【0009】
技術的問題は、特許請求の範囲において特徴付けられる実施形態の提供により解決される。さらに、ここで、驚くべきことに、本発明の範囲内において、植物における望ましくない形態変化に関与する遺伝子と、野生型の原材料に存在するようなレタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に関与する遺伝子との間の連鎖は、本発明によるラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物においては破壊され、したがって存在しないことが判明した。
【0010】
最初の実施形態において、本発明は、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性のレタス(ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa))植物に関し、ブレミア抵抗性遺伝子座、特に質的ブレミア抵抗性遺伝子座、特に広域スペクトルレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座は、遺伝的決定基と連鎖しており、野生のラクツカ植物のゲノムから、特にラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)のゲノムから得ることができる。本発明の特定の実施形態において、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性は、全般的な非品種特異的な抵抗性である。
【0011】
本発明のさらなる特定の実施形態において、例えば、成長の抑制(「矮化」)等の農学的に望ましくない形質の発現をコードまたは制御する連結遺伝子の同時発現を伴うことなく、抵抗性形質がラクツカ・サティバ(L sativa)植物に発現される。
【0012】
一実施形態において、本発明は、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座がホモ接合状態である、前述の実施形態のいずれかによる植物を企図する。
【0013】
本発明の別の実施形態において、前記レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座が連鎖群8に位置する、前述の実施形態のいずれかによる植物が提供される。
【0014】
さらなる実施形態において、本発明はまた、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の存在が、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4,配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8、配列番号9;および配列番号10からなる群から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーにより、または、
a. 配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b. 配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c. 配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d. 配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e. 配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対により表される少なくとも1つのDNAマーカーにより、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより特徴付けられる、前述の実施形態のいずれかによる植物を企図する。
【0015】
別の実施形態において、本発明はまた、ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)におけるレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座が、少なくとも1つの標識座に遺伝的に連鎖し、これがブレミア抵抗性形質と共に同時分離し、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4、配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8、配列番号9;および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つのPCRオリゴヌクレオチドプライマーにより、または、
a. 配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b. 配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c. 配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d. 配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e. 配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において同定され得る、前述の実施形態のいずれかによるラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物に関連する。
【0016】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの標識座に遺伝的に連鎖し、ブレミア抵抗性形質と共に同時分離し、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4、配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8、配列番号9;および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つのPCRオリゴヌクレオチドプライマーにより、または、
a. 配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b. 配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c. 配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d. 配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e. 配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより同定され得る、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与するラクツカ・サティバ(L.sativa)ゲノムの質的形質座位における少なくとも1つの対立遺伝子を有する、前述の実施形態によるラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物が提供される。
【0017】
一実施形態において、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与するラクツカ・サティバ(L.sativa)ゲノムの質的形質座位における前記対立遺伝子は、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1の遺伝的背景を有する植物から、具体的にはラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1 3:1の質的形質座位における遺伝的背景もしくはアーキテクチャを有する植物から、特にその代表的種子が寄託番号NCIMB41625としてNCIMBに寄託されるラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1から、または前記質的形質座位を有するその子孫もしくは祖先から得ることができる。
【0018】
本明細書に記載のような別の実施形態において、寄託番号NCIMB41625として寄託されるラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1に存在する対応する対立遺伝子に相補的であり、ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)ゲノム内の少なくとも1つの標識座に遺伝的に連鎖し、これがブレミア抵抗性形質と共に同時分離し、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4、配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8、配列番号9;および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つのPCRオリゴヌクレオチドプライマー、または、
a. 配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b. 配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c. 配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d. 配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e. 配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより同定され得る、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与するラクツカ・サティバ(L.sativa)ゲノムの質的形質座位における少なくとも1つの対立遺伝子またはその一部を有する、前述の実施形態のいずれかによるラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物が提供される。
【0019】
また、本発明には、プライマー、特にプライマー対、特に、配列番号1〜11に見られるヌクレオチド配列に少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を示す順方向および逆方向プライマーから構成されるプライマー対、ならびにブレミア抵抗性遺伝子座を同定または性質決定するためのその使用が含まれる。
【0020】
本発明の一実施形態において、オリゴヌクレオチドプライマー、特にプライマー対、特に、中程度、特に中程度から高度、特に高度なストリンジェンシー条件下で、配列番号1〜11に見られる順方向および逆方向プライマー配列のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を示す順方向および逆方向プライマーを構成するプライマー対、ならびにブレミア抵抗性遺伝子座を同定または性質決定するためのその使用が含まれる。
【0021】
本発明の一実施形態において、配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、ならびに配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2が、それぞれ、ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離するSSR断片を増幅する、前述の実施形態のいずれか1つの植物、特に、
プライマー対1が247bpのSSR断片を増幅し、
プライマー対2が、465bpのSSR断片を増幅する植物が提供される。
【0022】
本発明の一実施形態において、配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3が、SNP、特にSSR配列における位置272でのCとAのヌクレオチド交換により表されるSNPを含む、プライマー対1により増幅されるSSR配列内のDNA断片を増幅し、このSNPがブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離する、前述の実施形態のいずれか1つの植物が提供される。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離する前記SNPは、配列番号11のDNAプローブで同定され得る。
【0024】
本発明の一実施形態において、配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5が、それぞれ、SNP、特に、SSR配列における位置430でのGとAのヌクレオチド交換により表されるSNP、および/またはSSR配列における位置305でのTとGのヌクレオチド交換により表されるSNPを含む、プライマー対2により増幅されるSSR配列内のDNA断片を増幅し、このSNP(複数を含む)がブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離する、前述の実施形態のいずれか1つの植物が提供される。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離する前記SNPは、それぞれ、配列番号13のDNAプローブおよび配列番号15のDNAプローブで同定され得る。
【0026】
さらなる実施形態において、本発明はまた、前記植物が近交系、二ゲノム性半数体または雑種である、前述の実施形態のいずれかによる植物に関連する。
別の実施形態において、前記植物が雄性不稔性である前述の実施形態のいずれかによる植物もまた企図される。
【0027】
本発明の一態様において、本発明による、本明細書において上述されたようなラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物は、ブレミア抵抗性形質についてヘテロ接合である。
【0028】
本発明の一態様において、本発明による、本明細書において上述されたようなラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物は、ブレミア抵抗性形質についてホモ接合である。
【0029】
本発明の特定の実施形態は、ブレミアの寄生に抵抗することができる、本発明による、本明細書において上述されたようなラクツカ・サティバ(L.sativa)植物に関し、この植物は、バターヘッド、チャイニーズレタス、クリスプヘッド(アイスバーグ形態)、ルーズリーフ、ロメイン、およびサマークリスプから選択される品種群の植物である。
【0030】
さらなる実施形態において、本発明は、葉、茎、根、花もしくは花部、果実、花粉、卵細胞、接合体、種子、挿し木、細胞もしくは組織培養物、または、特に植物として栽培された場合に本発明による抵抗性表現型を示す、植物の他の任意の部分もしくは産物を含むが、これらに限定されない、前述の実施形態のいずれかによる植物から得られる植物材料に関する。
【0031】
本明細書に記載のような別の実施形態において、特に植物として栽培された場合にまだ本発明による抵抗性表現型を示す、植物種子、植物器官、例えば根、茎、葉、花芽もしくは胚芽等、胚珠、花粉小胞子、植物細胞、植物組織、植物細胞培養物、例えばプロトプラスト、細胞培養細胞、植物組織中の細胞、花粉、花粉管、胚珠、胚嚢、接合体および様々な発達段階の胚芽等を含むがこれらに限定されない、前述の実施形態のいずれかによる植物の植物部位が提供される。
【0032】
本発明のさらなる実施形態において、前述の実施形態のいずれかによるホモ接合植物の種子もまた提供される。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与する遺伝的決定基を有する、前述の実施形態のいずれかに請求されるようなラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物の種子、特に雑種種子をさらに企図する。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、NCIMB Ltd.において寄託番号NCIMB41625として寄託されている、前述の実施形態のいずれかによる種子に関する。
【0035】
さらなる実施形態において、本発明により、前記遺伝的決定基が連鎖群8に位置する抵抗性遺伝子である、前述の実施形態のいずれかによる種子が提供される。
【0036】
本発明はまた、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与する遺伝的決定基、特に連鎖群8に位置するブレミア抵抗性遺伝子を有する種子を生成するための、前述の実施形態のいずれか1つのラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)の使用を企図する。
【0037】
別の実施形態において、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)におけるレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の検出のためのキットであって、少なくとも1つのPCRオリゴヌクレオチドプライマー、特に配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4、配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8、配列番号9;および配列番号10からなる群から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマー、または、
a. 配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより現されるプライマー対1、
b. 配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c. 配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d. 配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、および
e. 配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した、またレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座に連鎖したDNAマーカーを増幅することができる、染色体8上の他の任意のマーカーを備えるキットが、本明細書で提供される。
【0038】
別の実施形態において、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14および配列番号15からなる群から選択されるプローブ分子をさらに含有するキットが提供される。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態において、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座に連鎖し、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4、配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8、配列番号9;および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーにより、または、
a. 配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより現されるプライマー対1、
b. 配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c. 配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d. 配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、および
e. 配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した、またレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座に連鎖したDNAマーカーを増幅することができる、染色体8上の他の任意のマーカーにより増幅され得る、DNAマーカーが提供される。
【0040】
さらなる実施形態において、本発明はまた、レタスブレミア抵抗性遺伝子座、特にラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)におけるLs1ブレミア抵抗性遺伝子座の診断的選択のための、これらのDNAマーカーのいくつかまたは全ての使用に関する。
【0041】
別の実施形態において、本発明は、植物において、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の存在を同定するため、および/またはラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)におけるレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の遺伝子移入を監視するための、これらのDNAマーカーのいくつかまたは全ての使用をさらに企図する。
【0042】
一実施形態において、本発明は、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4、配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8、配列番号9;および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマー、または、
a. 配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b. 配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c. 配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d. 配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e. 配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
以下から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーが関与するPCR反応において得ることができる、ポリヌクレオチド(増幅産物)であって、その増幅産物は、同一のプライマーまたはプライマー対を用いたPCR反応において、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1(NCIMB41625)から得ることができる増幅産物に対応するが、ただし、それぞれの標識座は、前記ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物中にまだ存在する、および/またはその対立遺伝子としてみなすことができる、ポリヌクレオチド(増幅産物)に関する。
【0043】
また、本明細書において、前記増幅産物の配列と少なくとも90%、特に少なくとも95%、特に少なくとも96%、特に少なくとも97%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、および/または上記PCR反応において得ることができる前記増幅産物のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を示すポリヌクレオチドが企図される。
【0044】
本発明による、本明細書において上述された増幅産物は、次いで、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の同定に使用され得る新たなプライマーおよび/またはプローブの生成または発現に使用することができる。
【0045】
したがって、本発明は、一実施形態において、当技術分野において知られた方法により、本発明による、本明細書において上述された増幅産物から発現された、派生マーカー、特に派生プライマーまたはプローブに関し、その派生マーカーは、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)におけるブレミア抵抗性遺伝子座、特にLs1ブレミア抵抗性遺伝子座に遺伝的に連鎖している。
【0046】
これらの派生マーカーは、次いで、ブレミア抵抗性植物の同定に使用することができ、本明細書において具体的に開示されるマーカーは、抵抗性に関連して再結合され、したがって抵抗性植物ゲノムにもはや存在しない。
【0047】
さらなる実施形態において、本発明内において、前記対立遺伝子を欠失したラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物に、ブレミアに対する抵抗性に寄与する質的形質座位においてレタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性と関連した少なくとも1つの対立遺伝子を導入するための方法であって、a)前述の請求項のいずれか一項に記載の第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得るステップと、b)前記第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させるステップであって、前記第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物は、前記対立遺伝子を欠失している、ステップと、c)レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性の増加を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、d)任意選択的に、前記植物を単離するステップと、e)任意選択的に、前記植物を前記第1または第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と戻し交配するステップと、を含む方法が提供される。
【0048】
さらなる実施形態において、本発明はまた、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得る方法であって、a)ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)植物を、レタスべと病菌(Bremia lactucae)の寄生を被りやすいラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させることにより、F1−雑種を得るステップと、b)前記F1−雑種を、前記ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と戻し交配するステップと、c)レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、d)任意選択的に、前記植物を栽培するステップと、を含む方法に関する。
【0049】
別の実施形態において、前述の実施形態のいずれかによる種子を得るために方法であって、a)前述の請求項のいずれか一項に記載の第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得るステップと、b)前記第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させるステップであって、前記第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物は、前記対立遺伝子を欠失している、ステップと、c)レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、d)前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配からの子孫種子を回収するステップと、を含む方法が本明細書において企図される。
【0050】
本発明の特定の実施形態において、上記交配のうちの1つから得られる植物は、ステップc)において、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4、配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8、配列番号9;および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマー、または、
a. 配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b. 配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c. 配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d. 配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、および
e. 配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体染色体8上の他の任意のマーカーを用いたPCR反応を適用することにより同定される。
【0051】
本発明の特定の実施形態において、方法ステップc)は、配列番号11、配列番号13および配列番号15からなる群から選択されるプローブ分子を使用して、(a)プライマー対1および/もしくはプライマー対2を用いたPCR反応において得られた増幅産物の断片サイズ、ならびに/または(b)プライマー対3、プライマー対4およびプライマー対5を用いたPCR反応において得られた単位複製配列におけるSNPを決定することにより、さらに補足される。
【0052】
さらなる実施形態において、本発明はまた、ステップc)において、上記交配のいずれかから得られる植物が、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する増加した抵抗性を示す植物に基づく表現型選択を適用することにより、またはPCRに基づく選択と表現型選択との組み合わせにより同定される、前述の実施形態のいずれかによる方法に関する。
【0053】
さらなる実施形態において、a)前述の実施形態のいずれか1つによる、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に抵抗性のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得るステップと、b)高い病害(レタスべと病菌(Bremia lactucae)圧力を有する領域において前記植物を栽培するステップとを含む、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物をレタスべと病菌(Bremia lactucae)の寄生から保護する方法が本明細書において提供される。
【0054】
本発明の別の実施形態において、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に抵抗性のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を栽培するための、前述の実施形態のいずれか1つによる種子の使用が企図される。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
本出願の範囲内で使用される技術的用語および表現には、本明細書の以降において別段の指定がない限り、概して、植物の育種および栽培に関連する分野におけるそれらの用語および表現に一般的に適用される意味が与えられる。
【0056】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈において異なる定義が明示されない限り、単数形は複数形の呼称を含む。したがって、例えば、「植物」という言及は、1つまたは複数の植物を含み、「細胞」という言及は、細胞、組織等の混合を含む。
【0057】
栽培「ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)」植物とは、本発明の範囲内において、もはや自然の状態になく、人間の手によって、人間の使用および/または消費のために開発された植物を指すものと理解される。
【0058】
「対立遺伝子」は、本発明の範囲内において同一の、または異なる形態の遺伝子もしくは任意の種類の同定可能な遺伝要素と関連した様々な遺伝単位の代替型または異型を指すものと理解され、これらは、相同染色体における同じ遺伝子座に位置するために、遺伝的形質において代替的である。そのような代替型または異型は、一塩基変異多型、挿入、反転、転座または欠失の結果であってもよく、あるいは、例えば、化学的もしくは構造的改質、転写調節、または翻訳後改質/調節により引き起こされる遺伝子調節の結果であってもよい。2倍体細胞または生物において、所与の遺伝子または遺伝要素の2つの対立遺伝子は、典型的には、相同染色体の対上の対応する遺伝子座を占有する。
【0059】
質的形質座位と関連する対立遺伝子は、同一の、または単一の遺伝子もしくは複数の遺伝子もしくはそれらの産物、またはさらに、遺伝子座により現される表現型に寄与する遺伝的要素を破壊するかもしくはそれにより制御されるものを含む、様々な遺伝単位の代替型または異型を含んでもよい。
【0060】
本明細書で使用される場合、「マーカー対立遺伝子」という用語は、表現型形質の変動性に寄与する染色体上の対立遺伝子を含有する遺伝子座を特定するためのマーカーとして使用される場合、本明細書の上記において定義されるような遺伝単位の代替型または異型を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「育種」という用語およびその文法的変化形は、子孫の個体を生成する任意のプロセスを指す。育種は、有性もしくは無性であってもよく、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。例示的な制限されない育種の種類は、交配、自殖、倍加半数体派生的生成、およびこれらの組み合わせを含む。
【0062】
本明細書で使用される場合、「確立された育種集団」という語句は、育種計画、例えば商業的育種計画において、親により生成され、および/または親として使用される潜在的育種パートナーの集合を指す。確立された育種集団のメンバーは、典型的には、遺伝子的および/または表現型の面で十分に性質決定されている。例えば、関心のあるいくつかの表現型形質が、例えば異なる環境条件下、複数の場所、および/または異なる時間において評価されていてもよい。代替的に、または追加的に、表現型形質の発現に関連した1つ以上の遺伝子座が同定されていてもよく、育種集団のメンバーの1つ以上が、1つ以上の遺伝子座に関して、および1つ以上の遺伝子座に関連した1つ以上の遺伝子マーカーに関して、遺伝子型を特定されていてもよい。
【0063】
本明細書で使用される場合、「2倍体個体」という語句は、2組の染色体を有する個体を指し、典型的には、1つはその2つの親のそれぞれからのものである。しかしながら、いくつかの実施形態において、2倍体個体は、例えば植物が自殖により植物の次の世代を生成する場合に、同じ単一の生物から、その「母親」および「父親」の染色体の組を受け継ぐことができる。
【0064】
「ホモ接合性」とは、本発明の範囲内において、相同染色体上の1つ以上の対応遺伝子座における同様の対立遺伝子を指すものと理解される。
【0065】
「ヘテロ接合性」とは、本発明の範囲内において、相同染色体上の1つ以上の対応遺伝子座における異なる対立遺伝子を指すものと理解される。
【0066】
「戻し交配」とは、本発明の範囲内において、雑種の子孫が繰り返し元の親の一方と交配されるプロセスを指すものと理解される。後の戻し交配において、異なる反復親が使用されてもよい。
【0067】
「遺伝子座」とは、本発明の範囲内において、遺伝子または形質に寄与する任意の他の遺伝要素もしくは因子を含む染色体上の領域を指すものと理解される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「標識座」とは、個体のゲノムに存在し、関心のある1つ以上の遺伝子座と関連したヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を有する、遺伝子または形質に寄与する任意の他の遺伝要素もしくは因子を含み得る染色体上の領域を指す。「遺伝子座」はまた、プローブとして使用される核酸の配列等のゲノム配列と相補的なポリヌクレオチド配列を含む染色体上の領域を指す。
【0069】
「遺伝子連鎖」とは、本発明の範囲内において、遺伝子座間の組み換え率(センチモルガン、cM)により測定される、同じ染色体上の近接した遺伝子の位置に起因した遺伝的形質における特徴の関連性を指すものと理解される。
【0070】
本発明の目的において、「同時分離」という用語は、形質に関する対立遺伝子およびマーカー(複数を含む)に関する対立遺伝子(複数を含む)が、同じ染色体上で物理的に互いに近接し(物理的近接性によるその間の組み換えの低下)、同じ染色体上での近接性の結果としてその対立遺伝子の選択的な関連性をもたらすことから、一緒に伝達する傾向を有することを指す。「同時分離」はまた、その少なくとも1つが遺伝的であり、偶然により容易に説明できない単一の植物内の2つ以上の形質の存在を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「質的形質座位における遺伝的構造」という用語は、関心のある表現型形質に統計的に相関し、関心のある表現型形質の根本的な遺伝的基盤を示すゲノム領域を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、本開示の主題に関連する「有性交配」および「有性生殖」という語句は、配偶子が融合して(例えば、植物において受粉により種子を生成する等の受精により)子孫を生成することを指す。「有性交配」または「他家受精」は、いくつかの実施形態において、他者による一個体の受精(例えば、植物における他花受粉)である。「自殖」という用語は、いくつかの実施形態において、自家受精または自家受粉による種子の生成、すなわち花粉および胚珠が同じ植物からのものであることを指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「遺伝子マーカー」という語句は、関心のある1つ以上の遺伝子座と関連した、個体のゲノムの特徴(例えば、個体のゲノムに存在するヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列)を指す。いくつかの実施形態において、遺伝子マーカーは、文脈に依存して、関心のある集団において多形であるか、または多形ににより占有される遺伝子座である。遺伝子マーカーは、例えば、他の多くの例のうち、一塩基変異多型(SNP)、インデル(すなわち挿入/欠失)、単純配列反復(SSR)、制限酵素断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、回増幅多型配列(CAPS)マーカー、多様性アレイ技術(DArT)マーカー、および増幅断片長多型(AFLP)を含む。遺伝子マーカーは、例えば、表現型形質の変動性に寄与する染色体上の対立遺伝子を含有する遺伝子座を特定するために使用することができる。「遺伝子マーカー」という語句はまた、プローブとして使用される核酸配列等のゲノム配列と相補的なポリヌクレオチド配列を示し得る。
【0074】
遺伝子マーカーは、関連する遺伝子座内または遺伝子座外にある(すなわち、それぞれ遺伝子内または遺伝子外の)染色体上の位置に物理的に位置し得る。換言すれば、遺伝子マーカーは、典型的には、関心のある遺伝子座に対応する、遺伝子または機能的変異の染色体上、例えば遺伝子外の制御要素内の位置が同定されておらず、また遺伝子マーカーと関心のある遺伝子座との間にゼロ以外の組み換え率が存在する場合に使用されるが、本開示の主題はまた、物理的に遺伝子座の境界内(例えば、これに限定されないが、遺伝子のイントロンまたはエクソン内の多形等の遺伝子に対応するゲノム配列内)にある遺伝子マーカーを使用することができる。本開示の主題のいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子マーカーは、1個から10個のマーカーを含み、いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子マーカーは、10個を超える遺伝子マーカーを含む。
【0075】
本明細書で使用される場合、「遺伝子型」という用語は、細胞または生物の遺伝子構成を指す。個体の「1組の遺伝子マーカーに対する遺伝子型」は、個体のハプロタイプに存在する1つ以上の遺伝子標識座に対する特定の対立遺伝子を含む。当技術分野において知られているように、遺伝子型は、遺伝子座が関連しているかもしくは無関係であるか、および/または連鎖しているかもしくは連鎖していないかに関わらず、単一の遺伝子座または複数の遺伝子座に関連することができる。いくつかの実施形態において、個体の遺伝子型は、遺伝子の1つ以上が関心のある表現型の発現に関与するという点で関連する1つ以上の遺伝子に関連する。したがって、いくつかの実施形態において、遺伝子型は、量的または質的形質座位の1つ以上の遺伝子座における個体内に存在する1つ以上の対立遺伝子の概略を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子型は、ハプロタイプ(本明細書の以降に定義される)に関して表現される。
【0076】
本明細書で使用される場合、「遺伝資源」という用語は、集団または他の個体群(例えば種)の総合的な遺伝子型を指す。「遺伝資源」という用語はまた、植物材料、例えば様々な対立遺伝子のレポジトリとして機能する植物群を示し得る。「適合化遺伝資源」という語句は、例えば所与の環境的または地理的領域に対して、遺伝子的優位性が証明された植物材料を指し、「非適合化遺伝資源」、「原遺伝資源」、および「外来遺伝資源」という語句は、例えば所与の環境的または地理的領域に対して、遺伝子的値が未知である、または証明されていない植物材料を指し、したがって、「非適合化遺伝資源」という語句は、いくつかの実施形態において、確立された育種集団の一部ではなく、また確立された育種集団のメンバーに対する既知の関係を有さない植物材料を指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「雑種」、「雑種植物」、および「雑種の子孫」という用語は、遺伝的に異なる親から生成された個体(例えば、遺伝的にヘテロ接合性またはほぼヘテロ接合性の個体)を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「単一交配F1雑種」という語句は、2つの近交系の間での交配から生成されたF1雑種を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「近交系」という語句は、遺伝的にホモ接合性またはほぼホモ接合性の集団を指す。近交系は、例えば、兄弟/姉妹育種もしくは自殖のいくつかの周期を通して、または二ゲノム性生成において得られる。いくつかの実施形態において、近交系は、まさに関心となる1つ以上の表現型形質のために育種される。「近交系」、「近交系個体」、または「近交系子孫」は、近交系から抽出された個体である。
【0080】
本明細書で使用される場合、「二ゲノム性半数体系統」という用語は、別の培養物に由来する安定な近交系を指す。特定の培地および環境で栽培されたいくつかの花粉粒(半数体)は、染色体を含有する胚を発達し得る。これらの胚は、次いで「倍化」され、2n個の染色体を含有する。これらの胚の子孫は、「二ゲノム性半数体」と呼ばれ、本質的にはそれ以上分離しない(安定である)。
【0081】
本明細書で使用される場合、「連鎖」という用語およびその文法的変化形は、同じ染色体上の異なる遺伝子座における対立遺伝子が、それらの伝達が独立している場合において、いくつかの実施形態においてはそれらの物理的近接性の結果として、偶然により期待される以上により頻繁に共に分離する傾向を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「核酸」という語句は、ヌクレオチドの重合体(例えば、典型的なDNA、cDNAまたはRNA重合体)、改質オリゴヌクレオチド(例えば、生物学的RNAまたはDNAにおいて典型的ではない塩基を含むオリゴヌクレオチド、例えば2’−O−メチル化オリゴヌクレオチド)等を含む、ヌクレオチドのストリングに対応し得るモノマー単位の任意の物理的ストリングを指す。いくつかの実施形態において、核酸は、一本鎖、二本鎖、複数鎖、またはこれらの組み合わせであってもよい。別段に指定されない限り、本開示の主題の特定の核酸配列は、任意選択で、明示的に示される任意の配列に加えて、相補的配列を含むか、またはコードしている。
【0083】
本明細書で使用される場合、「表現型形質」という語句は、ゲノム、プロテオームおよび/またはメタボロームと環境との相互作用から生じる、個体の外見または他の検出可能な特性を指す。
【0084】
本明細書で使用される場合、「抵抗性」という語句は、同様の環境条件および病原体の圧力下における感受性を有する植物と比較した場合に、特定の病原体の成長および発達、ならびに/またはそれらが引き起こすダメージを制限する植物の能力を指す。抵抗性植物は、病原体の圧力、例えばレタスべと病菌(Bremia lactucae)病原体の圧力等の菌類病原体の圧力下でいくらかの病害の症状またはダメージを示し得る。
【0085】
本明細書で使用される場合、「感受性」という語句は、植物が、特定の病原体、例えばレタスべと病菌(Bremia lactucae)等の菌類病原体の成長および発達を適切に制限することができないことを指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「ブレミア抵抗性」または「ブレミア種に対する抵抗性」または「ブレミア抵抗性植物」という語句は、IBEB(International Bremia Evaluation Board)によるSEXTETコードに従い性質決定および分類された、レタスべと病菌(Bremia lactucae)という菌、分離株BI:1からBI:24によるコロニー化に抵抗する植物の能力を指す。
【0087】
抵抗性植物は、以下の実施例1.5に定められる試験条件下で、壊死を示さないか、またはほとんど示さず、胞子形成がないか、または非常に僅かである。
【0088】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2つ以上を指す。したがって、「複数の個体」は、少なくとも2つの個体を指す。いくつかの実施形態において、複数という用語は、全体の半分超を指す。例えば、いくつかの実施形態において、「集団の複数」は、その集団の半分超のメンバーを指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「子孫」という用語は、特定の交配の子孫(複数を含む)を指す。典型的には、子孫は、2つの個体の育種から生じるが、いくつかの種(特にいくつかの植物および雌雄同体の動物)は自殖し得る(すなわち、同じ植物が、雄性および雌性配偶子の両方のドナーとして働く)。子孫(複数を含む)は、例えば、F1、F2、または任意の次世代である。
【0090】
本明細書で使用される場合、「質的形質」という語句は、主要な表現型効果を示す1つまたはいくつかの遺伝子により制御される表現型形質を指す。このために、質的形質は、典型的には単純に遺伝する。植物における例には、花の色、果実の色、およびいくつかの既知の病害抵抗性、例えば斑点細菌病抵抗性等が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
「マーカーによる選択」とは、本発明の範囲内において、例えば、植物由来の1つ以上の核酸を検出する遺伝子マーカーの使用を指し、核酸は、所望の形質に関連し、選択的育種計画において所望の(または望ましくない)形質に対する遺伝子を保持する植物が同定される。
【0092】
「マイクロサテライトまたはSSR(単純配列反復)マーカー」とは、本発明の範囲内において、植物のゲノム全体にわたる遺伝子座において見られ、高度に多型性である可能性を有する、DNA塩基の短い配列の多くの繰り返しからなる遺伝子マーカーの一種を指すものと理解される。
【0093】
「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)」は、本発明の範囲内において、ゲノムの特定領域のDNAまたはサブセット(複数を含む)を比較的大量に生成する方法であり、これによりそれらの領域に基づく様々な分析が可能となるものと理解される。
【0094】
「PCRプライマー」は、本発明の範囲内において、DNAの特定領域のPCR増幅において使用される一本鎖DNAの比較的短い断片を指すものと理解される。
【0095】
「表現型は、本発明の範囲内において、遺伝的に制御される形質の区別できる特性(複数を含む)を指すものと理解される。
【0096】
本明細書で使用される場合、「表現型形質」という語句は、ゲノム、プロテオームおよび/またはメタボロームと環境との相互作用から生じる、個体の外見または他の検出可能な特性を指す。
【0097】
「多型」は、本発明の範囲内において、2つ以上の異なる形態の遺伝子、遺伝子マーカー、または遺伝した形質、あるいは、例えば選択的スプライシング、DNAメチル化等により得られる遺伝子産物の集団の存在を指すものと理解される。
【0098】
「選択的育種」は、本発明の範囲内において、親として所望の形質を有する、または示す植物を使用する育種計画を指すものと理解される。
【0099】
「試験用」植物は、本発明の範囲内において、試験される植物における形質を遺伝的に性質決定するために使用される、ラクツカ属の植物を指すものと理解される。典型的には、試験される植物は、「試験用」植物と交配され、交配の子孫における形質の分離比が採点される。
【0100】
本明細書で使用される「プローブ」は、特定の標的分子または細胞構造を認識しそれに結合することができ、それにより標的分子または構造の検出を可能にする原子または分子の一群を指す。特に、「プローブ」は、分子ハイブリダイゼーションにより相補的配列の存在を検出し、それを定量化するために使用することができる、標識化されたDNAまたはRNAを指す。
【0101】
「ハイブリダイズ」という用語は、本明細書において使用される場合、従来のハイブリダイゼーション条件、好ましくは5×SSPE、1%SDS、1×デンハート液が溶液として使用され、および/またはハイブリダイゼーション温度が35°C〜70°C、好ましくは65°Cであるハイブリダイゼーション条件を指す。ハイブリダイゼーション後、好ましくは最初に2×SSC、1%SDSを用いて、続いて0.2×SSCを用いて、35℃〜75℃、具体的には45℃〜65℃であるが、特に59℃で、洗浄が行われる(SSPE、SSCおよびデンハート液の定義に関して、Sambrookらの引用文を参照されたい)。上記Sambrookらの文献に記載された例に関しては、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が特に好ましい。特に好ましいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、ハイブリダイゼーションおよび洗浄が、上で示されたように65℃で行われる場合に存在する。非ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、例えば45℃で行われるハイブリダイゼーションおよび洗浄はより好ましくなく、35℃ではさらにより好ましくない。
【0102】
「配列相同性」または「配列同一性」は、本明細書において交換可能に使用される。2つ以上の核酸またはタンパク質配列に関する「同一な」またはパーセント「同一性」という用語は、同じであるか、あるいは最大の一致について比較および整列した時に、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または目視検査により測定された場合、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定のパーセンテージを有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。互いに比較される2つの配列の長さが異なる場合、配列同一性は、好ましくは、より長い配列のヌクレオチド残基と同一であるより短い配列のヌクレオチド残基のパーセンテージに関する。配列同一性は、従来的に、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive Madison,WI 53711)等のコンピュータプログラムを使用して決定され得る。Bestfitは、2つの配列間の最も高い配列同一性を有する断片を発見するために、Smith および Waterman,Advances in Applied Mathematics 2(1981),482−489の遺伝子座相同性アルゴリズムを利用する。特定の配列が、例えば本発明の参照配列と95%の同一性を有するか否かを決定するためにBestfitまたは別の配列アラインメントプログラムを使用する場合、パラメータは、好ましくは、同一性のパーセンテージが参照配列の全長にわたり計算されるように、また参照配列におけるヌクレオチドの全数の5%までの相同性ギャップが許容されるように調節される。Bestfitを使用する場合、いわゆる任意選択的パラメータは、好ましくはそれらの設定(「初期」)値のままである。所与の配列と、本発明の上記配列との間の比較において見られる逸脱は、例えば、付加、欠失、置換、挿入または組み換えにより引き起こされ得る。そのような配列比較はまた、好ましくは、プログラム「fasta20u66」(William R.Pearsonおよびthe University of Virginiaによるバージョン2.0u66、1998年9月;W.R.Pearson(1990),Methods in Enzymology 183,63−98、添付の例およびhttp://workbench.sdsc.edu/もまた参照されたい)を用いて実行されてもよい。この目的のために、「初期」パラメータ設定が使用されてもよい。
【0103】
2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の示唆は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするということである。「特異的にハイブリダイズする」という語句は、複雑な混合物(例えば細胞全体の)DNAまたはRNAにおいて特定のヌクレオチド配列が存在する場合、ストリンジェントな条件下でその配列にのみ分子が結合、二重鎖形成またはハイブリダイズすることを指す。「実質的に結合する」は、プローブ核酸と標的核酸との間の相補的ハイブリダイゼーションを指し、標的核酸配列の所望の検出を達成するために、ハイブリダイゼーション媒体のストリンジェンシーを低下させることによって適合させることができる小規模のミスマッチを含む。
サザンおよびノーザンハイブリダイゼーション等の核酸ハイブリダイゼーション実験に関する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存的であり、異なる環境パラメータ下で異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの広範囲にわたる指針は、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2 "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays" Elsevier,New Yorkに見られる。一般に、極めてストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、規定イオン強度およびpHにおいて、特定の配列に対して熱融解温度よりも約5℃低くなるように選択される。典型的には、「ストリンジェントな条件」下で、プローブはその標的部分配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない。
【0104】
熱融解温度は、(規定イオン強度およびpHにおいて)標的配列の50%が完全に一致するプローブにハイブリダイズする温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブのTmと等しくなるように選択される。サザンまたはノーザンブロットにおけるフィルタ上に100個を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションのための、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、ヘパリン1mgを含む50%ホルムアミド中42℃であり、ハイブリダイゼーションが一晩かけて行われる。極めてストリンジェントな洗浄条件の例は、0.15M NaCl中、72℃で約15分である。ストリンジェントな洗浄条件の例は、0.2倍のSSC洗浄、65℃で15分である(Sambrookの上記文献、SSCバッファの説明を参照されたい)。多くの場合、高ストリンジェンシー洗浄の前に、バックグラウンドプローブシグナルを除去するための低ストリンジェンシー洗浄が先行する。例えば100個を超えるヌクレオチドの二重鎖に対する中程度ストリンジェンシー洗浄の例は、1倍のSSC、45℃で15分である。例えば100個を超えるヌクレオチドの二重鎖に対する低ストリンジェンシー洗浄の例は、4〜6倍のSSC、40℃で15分である。短いプローブ(例えば約10〜50個のヌクレオチド)の場合、ストリンジェント条件は、典型的には、約1.0M未満のNaイオンの塩濃度、典型的には約0.01〜1.0MのNaイオン(または他の塩)濃度で、pH7.0〜8.3であり、また温度は、典型的には、少なくとも約30℃である。ストリンジェント条件はまた、ホルムアミド等の不安定化剤の添加により達成され得る。一般に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて無関係のプローブに対して観察されるものの2倍の(またはそれより高い)信号対雑音比は、特異的ハイブリダイゼーションの検出を示す。ストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコード化するタンパク質が実質的に同一である場合、なお実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが遺伝子コードにより許容される最大のコドンの縮退を使用して形成される場合に生じる。
【0105】
「植物」は、任意の成長段階における任意の植物、特に種子植物である。
【0106】
「植物細胞」は、プロトプラストおよび細胞壁を含む、植物の構造的および生理的単位である。植物細胞は、単離された単一の細胞または培養された細胞の形態であってもよく、または、例えば植物組織、植物器官もしくは植物全体等のより高度に組織化された単位の一部であってもよい。
【0107】
「植物細胞培養」は、例えば、プロトプラスト、細胞培養細胞、植物組織中の細胞、花粉、花粉管、胚株、胚嚢、接合体、および様々な成長段階における胚芽等の植物単位の培養を意味する。
【0108】
「植物材料」または「植物から得られる植物材料」は、葉、茎、根、花もしくは花部、果実、花粉、卵細胞、接合体、種子、挿し木、細胞もしくは組織培養物、または植物の任意の他の部分もしくは産物を指す。
【0109】
「植物器官」は、明確で視覚的に構造化された、植物の分化した部分、例えば根、茎、葉、花芽または胚芽である。
【0110】
「植物組織」は、本明細書において使用される場合、構造的および機能的単位まで組織化された植物細胞の一群を意味する。植物中または培養物中の任意の植物組織が含まれる。この用語は、植物全体、植物器官、植物の種子、組織培養物、ならびに、構造的および/または機能的単位まで組織化された植物細胞の任意の群を含むが、これらに限定されない。上に列挙された、またはこの定義により包含される任意の特定種類の植物組織と併せた、または併せないこの用語の使用は、任意の他の種類の植物組織を除外するように意図されない。
【0111】
「品種」または「複数の品種」という用語は、分類学的に種の下位である、および下位品種の下位であり、遺伝体質の潜在因子の所定のプロファイルにより明確となる亜種等の分類学上の下位群を含む、任意の近交群を指す。
【0112】
本発明は、レタスべと病菌(Bremia lactucae)の寄生に抵抗性であり、したがって、この病原体により引き起こされるダメージから保護される新規ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物に関する。本発明はまた、そのような植物を作製および使用する方法に関する。
【0113】
本発明による植物は、2つ以上の親の遺伝子型を交配させることによって得ることができ、そのうちの少なくとも1つは、1つ以上の対立遺伝子、特に、ブレミア抵抗性に寄与する対応する質的形質座位に1つ以上の対立遺伝子を有することができ、対立遺伝子(複数を含む)は、本発明による、本明細書において上述されたような植物を得るために、他方の親の遺伝子型において不足しているか、または他方の遺伝子型を補完する。2つ以上の質的形質座位が抵抗性形質の発現に寄与し、2つの元の親の遺伝子型が対立遺伝子の組の全体を提供しない場合、他の源が育種集団に含まれてもよい。他の親の遺伝子型は、例えば、結球部のサイズおよび重量の増大、より高い種子収穫率、改良されたまたは深緑色の外観の色、乾燥および熱に対する耐性、ならびに農学的品質の改良等の、市場で要求される作物の品質を含む望ましい形質に寄与し得る。
【0114】
例えば、アイスバーグレタスでは、所望の形質は、キャベツに似た硬くて身の詰まった結球部を含む。アイスバーグレタスは、一般的にまろやかな風味であり、歯ごたえのある食感を提供し、白色または乳黄色の内側を示す。バタビアレタスは、アイスバーグレタスに近いが、より小さくより低密度の結球部を特徴とする。バターヘッドレタスに関しては、さらにより柔らかく、油っこくてバターのような食感を有するより小さい結球部を特徴とする。最後に、ロメインレタスは、歯ごたえのあるまっすぐ伸びた葉を有し、玉状の結球部と深緑色の外側の葉を形成する。
【0115】
作物の品質以外に、例えば、良好な植物構造、高生産性、およびこれらに限定されないが、レタスモザイクウイルス(LMV)、ヒゲナガアブラムシ、ネアブラムシ、ビート西部萎黄ウイルス(BMYV)、カブモザイクウイルス(TMV)等の病害に対する基本的な抵抗性等の農学的に重要な特性が、さらに所望される形質である。
【0116】
本発明の特定の実施形態において、現在まで知られている全てのブレミア種に対する完全な抵抗性を与える、野生レタスラクツカ・サリグナ(L.saligna)寄託IVT1306(=CGN05315)で、べと病抵抗性遺伝子が同定されている。これは、栽培ラクツカ・サティバ(L.sativa)において胚救済により遺伝子移入された。広範囲のF2およびF3集団ブレミア苗病試験では、抵抗性が主要な(半)優性遺伝子によりもたらされることが示された。このラクツカ・サリグナ(L.saligna)由来の抵抗性(「Ls1」)は、R17、R18、R36、R38、Dm3、Lv1またはCrapaudine等の他のブレミア抵抗性と組み合わされてもよい。
【0117】
「Ls1」マーカーの作製のために、2つのBC4F2集団(n=70)が作製されており、1系統あたり70種の植物の抽出されたF3ファミリーが、Bl20、Bl21、Bl24およびBl25等の様々なブレミア株を使用して、ブレミア抵抗性に関して試験されている。BSA。RおよびS親およびF3系統の間で特定の多型を示す3つのSSRマーカー候補を同定することができた。
【0118】
親の遺伝子型は、子孫の種子を生成するために、互いに交配されてもよい。親の遺伝子型は、制御されていない受粉または開放受粉による田畑から選択されたヘテロ接合植物の自殖により、および循環選抜法を用いることにより作製された近交系であってもよい。優れた植物は、自殖され、継続的世代において選択される。後続の世代において、ヘテロ接合性条件は、自家受粉および選択の結果としてホモ接合系へと移行する。近交の継続的世代により、植物はさらにホモ接合性となり、子孫の植物において一定となる。典型的には、植物および種子の特性が一定であり、継続的な自家受粉下において一定を維持する近交系を得るために、5〜7またはそれ以上の世代(F1からF2;F3からF4;F4からF5)の自殖および系統選択を行うことができる。
【0119】
近交の間、ヘテロ接合座位における多くの望ましくない対立遺伝子が、より好ましい対立遺伝子に置き換わり、好ましくない、または望ましくない対立遺伝子は、子孫から排除される。さらに、マーカーによる選抜を通して、より好ましくない対立遺伝子が同定され、続いてより好ましい対立遺伝子に置き換わることで、好ましい対立遺伝子の数が最大化され得る。
【0120】
一態様において、本発明による植物は、先祖植物、特に野生先祖植物由来のブレミア抵抗性形質を、栽培レタス植物、特にラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物、より具体的には栽培ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物に遺伝子移入することにより得ることができる。
【0121】
本発明の1つの特定の実施形態において、ブレミア抵抗性形質を得ることができる野生の先祖は、野生のラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)、特に野生のラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)IVT1306(=CGN05315)であり、または、前記質的形質座位を有するその子孫もしくは先祖から得ることができる。本発明による抵抗性形質は、この形質を発現する植物に、レタスべと病菌(Bremia lactucase)という菌の寄生に対する抵抗性を与えるが、代替例において、その代表的種子が寄託番号NCIMB41625としてNCIMBに寄託されているラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1から、または、ブレミア抵抗性形質を有する系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1の子孫もしくは先祖から得ることができる。
【0122】
したがって、本発明の特定の実施形態において、抵抗性形質(複数を含む)に寄与する親の遺伝子型は、寄託されているラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1の本発明に関連した特性、すなわちブレミア抵抗性に関連した質的形質座位において実質的に同じゲノム構造を有する近交系であり、その種子の試料は、2009年6月11日に、寄託番号NCIMB41625としてNCIMBに寄託されている。
【0123】
近交系の実用性、および雑種の子孫に遺伝的に寄与する可能性を決定するために、別の近交系と試験交配が行われ、得られた子孫が表現型の面で評価される。
【0124】
本発明の別の特定の実施形態において、抵抗性形質(複数を含む)に寄与する親の遺伝子型は、寄託ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1の本発明に関連した特性、すなわち、ブレミア抵抗性に関連した質的形質座位において実質的に同じゲノム構造を有する雑種であり、その種子の試料は、2009年6月11日に、寄託番号NCIMB41625としてNCIMBに寄託されている。
【0125】
ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1は、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)近交系による抵抗性形質のドナーとして、野生のラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)、寄託IVT1306(=CGN05315)の交配から得られた。この交配のブレミア抵抗性子孫は、さらに、異なる遺伝的背景を有する近交系と交配され、最終的にラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1が得られた。
【0126】
したがって、ブレミア菌属の菌の寄生に対し、より具体的にはレタスべと病菌(Bremia lactucae)の寄生に対し極めて抵抗性のレタス植物を得るために、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1またはブレミア抵抗性形質を含む任意の他の植物系統が、前記抵抗性形質を任意の所与の遺伝的背景に遺伝子移入するための原材料として使用されてもよく、市場で要求される作物の品質等の1つ以上の望ましい形質をさらに含んでもよい。作物の品質以外に、例えば、良好な植物構造、高生産性、およびレタスモザイクウイルス(LMV)、ヒゲナガアブラムシ、ネアブラムシ、ビート西部萎黄ウイルス(BMYV)、カブモザイクウイルス(TMV)等の関連する病原体に対する基本的な抵抗性等の農学的に重要な特性が、さらに所望される形質である。
【0127】
本発明の説明に基づき、その試料が寄託番号NCIMB41625としてNCIMB Ltd.に寄託されているラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1、または本明細書に記載のブレミアに対する抵抗性に関連する連鎖群8上の質的形質座位を含むその子孫もしくは先祖を所有する当業者は、本発明のブレミア抵抗性形質を、当技術分野において周知の育種技術を使用して、他の様々な種類のレタス植物に容易に移すことができる。本発明の形質は、例えば、バターヘッド、チャイニーズレタス、クリスプヘッド(アイスバーグ形態)、ルーズリーフ、ロメイン、サマークリスプといった品種グのレタス植物移すことができる。したがって、一実施形態において、本発明の植物は、ブレミアの寄生に抵抗することができるラクツカ・サティバ(L.sativa)植物であり、この植物は、バターヘッド、チャイニーズレタス、クリスプヘッド(アイスバーグ形態)、ルーズリーフ、ロメイン、およびサマークリスプからなる群から選択される品種群の植物である。本発明の一実施形態において、レタス植物は、(雑種)種子または商業的レタス生産のために栽培される。
【0128】
したがって、別の実施形態において、本発明は、本発明によるブレミア抵抗性形質を、前記形質を欠失しているレタス植物に移す方法であって、a)前記形質を有する植物を得るステップと;b)この植物を、前記形質を欠失している植物と交配させるステップと;c)ステップb)の交配の植物を得るステップと;d)本発明によるブレミアの寄生に抵抗することができる、ステップc)の植物を選択するステップとを含む方法を開示する。一実施形態において、方法は、e)ステップd)から得られる植物を、レタス植物と戻し交配するステップと、f)本発明によるブレミアの寄生に抵抗することができるレタス植物を選択するステップとをさらに含む。一実施形態において、発明は、本発明によるブレミアの寄生に抵抗することができる近交レタス植物を得るステップをさらに含み、一実施形態において、方法は、前記近交レタス植物を別のレタス植物と交配して、本発明によるブレミアの寄生に抵抗することができる雑種のレタス植物を生成するステップをさらに含む。一実施形態において、レタス植物は、本明細書に記載のような菌類の有無を決定することにより選択することができる。一実施形態において、前記形質を有するステップa)の植物は、その代表的種子が寄託番号NCIMB41625としてNCIMBに寄託されているラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1、または前記植物の子孫もしくは先祖である。
【0129】
本発明のある特定の実施形態において、上記交配の1つから得られる子孫の植物におけるブレミアに対する抵抗性の有無を決定し、ブレミアに対し抵抗性であるさらなる育種用の子孫の植物を選択するために、本明細書の以下の実施例Xに記載のもの等の標準化された抵抗性アッセイが使用される。
【0130】
代替例において、本明細書に記載のように、ブレミア抵抗性遺伝子座、および/または隣接標識座もしくはそれに遺伝的に連鎖した標識座を含む個体を同定するために、マーカー利用による育種が使用されてもよい。
【0131】
マーカーによる選抜は、多くの場合、視覚的に決定され得る表現型特性に大きく基づいている、また、商業的雑種生産において利用される植物の好適性に関連する主要な性能指数、例えば植物の活力、節間長、分岐、昆虫または菌に対する抵抗性、例えばブレミア寄生に対する抵抗性、ウイルス抵抗性等に関連するスクリーニング法と組み合わせて、近交の発達の早期段階においてすでに使用され得る。選抜はまた、関心のある形質と連鎖していてもいなくてもよい分子マーカーに基づいてもよい。
【0132】
特に、マーカーによる選抜は、本明細書において上述された本発明に関連した遺伝子座の全てが、ホモ接合性の好ましい遺伝子型を有する個体を同定するために、表現型選択と組み合わせて、またはそれに先立って適用されてもよい。
【0133】
制限酵素断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、増幅制限断片長多型(AFLP)、単一配列反復(SSR)および一塩基多型SNPを含むがこれらに限定されない、マーカーによる選抜において使用されてもよいいくつかの分子マーカーがある。
【0134】
RFLPは、染色体DNAを特定の短い制限部位で切断する制限酵素の使用を含み、多型は、その部位間または制限部位における変異間の複製または欠失から生じる。
【0135】
RAPDは、匿名のDNA断片の系統特異的アレイを作製するために、任意の配列の単一プライマーを用いた低ストリンジェンシーのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を利用する。この方法は、微量のDNA試料しか必要とせず、多数の多型遺伝子座を分析する。
【0136】
AFLPは、特定の断片を増幅するために、PCRおよびプライマー中の選択的ヌクレオチドを使用する前に、制限酵素(複数を含む)による細胞DNAの分解を必要とする。この方法により、得られる断片を可視化する電気泳動技術を使用して、プライマーの組み合わせごとに100個までの多型遺伝子座を測定することができ、各試験において微量のDNA試料しか必要とされない。
【0137】
SSR分析は、真核生物のゲノム全体に渡って広く分散されたDNAマイクロサテライト(短い反復)配列に基づくが、これは単純配列反復における変異を検出するために選択的に増幅される。SSR分析には微量のDNA試料しか必要とされない。SNPは、点変異を効率的に取り出すPCR伸長アッセイを使用する。この手順は、試料当たり微量のDNAしか必要としない。上記方法のうちの1つまたは2つが、典型的なマーカーによる選抜の育種計画において使用されてもよい。
【0138】
植物ゲノムの多型領域にまたがるヌクレオチド断片の増幅を達成する最も好ましい方法は、その二重鎖形態における多型を定義する近位の配列にハイブリダイズすることができる順方向プライマーおよび逆方向プライマーを含むプライマー対を使用したポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)(Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263 273(1986))を使用する。
【0139】
代替的な方法、例えば特定の標的を指数関数的に増幅するために2対のオリゴヌクレオチドプローブを使用する“Ligase Chain Reaction”「リガーゼ連鎖反応」(「LCR」)(Barany,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:189 193(1991))が、断片を増幅するために使用されてもよい。オリゴヌクレオチドの各対の配列は、その対が標的の同一鎖の隣接配列にハイブリダイズすることができるように選択される。そのようなハイブリダイゼーションは、鋳型依存的リガーゼの基質を形成する。PCRと同様、得られる産物はこのように後のサイクルにおける鋳型として機能し、所望の配列の指数関数的な増幅が得られる。
【0140】
LCRは、多型部位の同じ鎖の近位および遠位の配列を有するオリゴヌクレオチドを用いて行うことができる。一実施形態において、いずれかのオリゴヌクレオチドは、多型の実際の多型部位を含むように設計される。そのような実施形態において、反応条件は、標的分子が、オリゴヌクレオチドに存在する多型部位に対して相補的である特定のオリゴヌクレオチドを含むか、または欠失している場合にのみ、オリゴヌクレオチドが互いに連結されるように選択される。あるいは、オリゴヌクレオチドは、それらが多型部位を含まないように選択されてもよい(Segev,PCT出願WO90/01069を参照されたい)。
【0141】
代替的に使用され得るさらなる方法は、”Oligonucelotide Ligation Assay“「オリゴヌクレオチド連結アッセイ」(「OLA」)(Landegren et al.,Science 241:1077 1080(1988))である。OLAプロトコルは、標的の一本鎖の隣接配列にハイブリダイズすることができるように設計されている2つのオリゴヌクレオチドを使用する。OLAは、LCRと同様に、点変異の検出に特に好適である。しかしながら、LCRとは異なり、OLAは、指数関数的ではなく「直線的」な標的配列の増幅をもたらす。
【0142】
代替的に使用され得るさらに別の方法は、一塩基多型(SNP)部位を含む標的DNAへの、対立遺伝子特異的な重複オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより形成される3次元複合体を開裂させる構造特異的なフラップエンドヌクレアーゼ(FEN)を使用する、「インベーダーアッセイ」である。標的分子内のSNP対立遺伝子と相補的なオリゴヌクレオチドのアニーリングは、クリーバーゼである熱安定性FENによるオリゴヌクレオチドの開裂を誘引する。開裂は、いくつかの異なる手法により検出され得る。最も一般的には、開裂産物は、蛍光シグナルを放出する蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)カセットにおける第2の開裂反応を誘引する。あるいは、開裂は、蛍光偏光(FP)プローブの使用により、または質量分析により直接的に検出され得る。侵襲的開裂反応は、極めて特異的であり、失敗率が低く、ゼプトモル量の標的DNAを検出することができる。このアッセイは、従来的に1回の反応につき1つの試料中の1つのSNPを調べるために使用されるが、これを多重および高スループットSNP遺伝子型決定に適合可能な効率的で正確なアッセイにするために、新規のチップまたはビーズによる手法が試験されている。
【0143】
Nickersonらは、PCRおよびOLAの特性を組み合わせた核酸検出アッセイについて説明している(Nickerson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)87:8923 8927(1990))。この方法では、PCRを使用して標的DNAの指数関数的な増幅が達成され、次いでこれがOLAを使用して検出される。
【0144】
また、結果として生じる「ジ−オリゴヌクレオチド」の配列を有する核酸の存在下での、2つ(またはそれ以上の)オリゴヌクレオチドの連結に基づき、それによりジ−オリゴヌクレオチドを増幅するスキームが知られており(Wu et al.,Genomics 4:560 569(1989))、本発明の目的に容易に適合させることができる。
【0145】
一実施形態において、分子マーカーは、PCRにより増幅されたDNA断片、例えば、SSRマーカーまたはRAPDマーカーである。一実施形態において、増幅されたDNA断片の有無は、形質自体またはその形質の特定の対立遺伝子の有無を示す。一実施形態において、増幅されたDNA断片の長さの相違は、形質の特定の対立遺伝子の存在を示し、よって、形質の異なる対立遺伝子間での区別を可能にする。
【0146】
本発明の特定の実施形態において、親植物および/またはその先祖における、ならびに前記親植物の交配から得られる子孫の植物における、本発明に関連した対立遺伝子を同定するために、単純配列反復(SSR)マーカーが使用される。単純配列反復は、短い繰り返しDNA配列であり、全ての真核生物のゲノム中に存在し、数個から100個超の所与のヌクレオチドモチーフの繰り返しからなる。ゲノム中の特定の位置に存在する繰り返しの数は、多くの場合植物間で異なるため、SSRは、特定の対立遺伝子の有無を決定するために分析され得る。
【0147】
本発明の別の実施形において、親植物および/またはその先祖における、ならびに前記親植物の交配から得られる子孫の植物における、本発明に関連した対立遺伝子を同定するために、SNPマーカーが使用される。
【0148】
本発明において、配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1ならびに配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2の群から選択される順方向プライマーおよび逆方向プライマーからなる、PCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を有する、マーカーまたは2つ以上のマーカーの組を使用することができ、これらのプライマーは、同一のプライマー対(複数を含む)によるPCR反応において、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1から得ることができる対応するPCR増幅産物の分子量またはヌクレオチド配列と本質的に同一であるか、またはそれに対する対立遺伝子としてみなすことができる分子量またはヌクレオチド配列を示す、PCR反応における増幅産物をもたらす。
【0149】
第1のステップにおいて、既知の技術を使用してDNAまたはRNAを抽出することにより、葉組織等の好適な植物材料から、DNAまたはcDNA試料が得られる。本明細書の上記において開示される本発明に関連した質的形質座位内、またはそれに連鎖した領域内のSSRを含む領域に隣接するプライマーは、次いで、当業者に周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いてDNA試料を増幅するために使用される。
【0150】
基本的に、PCR増幅方法は、増幅されるDNA断片に隣接する2つの短いオリゴヌクレオチドプライマー配列、または前記DNA断片と連結されるアダプター配列を含むプライマーまたはプライマー対の使用を含む。加熱およびDNAの変性の反復サイクルの後、プライマーをそれらの相補的配列に低い温度でアニールし、DNAポリメラーゼを用いてアニールされたプライマーの伸長を行う。プライマーは、DNA標的配列の反対側の鎖にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションは、相補的DNA鎖のアニーリングを指し、ここで相補的とは、一本鎖のヌクレオチドが反対側の鎖のヌクレオチドと結合して二重鎖構造を形成することができるようなヌクレオチド配列を指す。プライマーは、ポリメラーゼによるDNA合成が、プライマー間のヌクレオチド配列にわたり双方向に進行するように配向している。この手順は、1サイクルでそのDNA断片の量を効果的に2倍にする。PCR産物はプライマーと相補的であり、それに結合することができるため、それぞれの後続サイクルは、その前のサイクルにおいて合成されたDNAの量を2倍にする。この手順の結果は、約2<n>である特定の標的断片の指数関数的な増幅であり、ここでnはサイクル数である。
【0151】
PCR増幅を通じて、プライマーが隣接するDNA断片の何百万ものコピーが作製される。反復配列の数の違い、または異なる対立遺伝子における隣接プライマー間に位置する前記反復に隣接する領域における挿入もしくは欠失の数の違いは、増幅されたDNA断片の長さの変化に反映する。これらの変化は、例えばゲル上で増幅されたDNA断片を電気泳動で分離することにより、またはキャピラリシーケンサーを使用することにより検出することができる。ゲルまたはプロファイルを分析することにより、その植物がホモ接合状態もしくはヘテロ接合状態にある所望の対立遺伝子を含むか否か、または所望のもしくは望ましくない対立遺伝子が植物ゲノムに存在しないか否かを決定することができる。
【0152】
代替例において、所望の対立遺伝子の有無は、二本鎖DNA染色または蛍光レポータープローブ法を用いたリアルタイムPCRにより決定され得る。
【0153】
マーカー分析は、植物成長の早期において、非常に若い植物の葉組織または種子から抽出されたDNA試料を使用して行うことができる。これにより、望ましい遺伝子構造を有する植物を、育種サイクルの早期において同定することができ、また所望の本発明に関連した対立遺伝子を含まない植物を受粉前に排除することができ、それにより育種集団の規模を低減し、表現型検査の必要性を低減することができる。
【0154】
さらに、分子マーカーを使用することにより、ブレミア抵抗性質的遺伝子座における所望の本発明に関連した対立遺伝子の2つのコピーを有するホモ接合性植物および1つのみのコピーを有するヘテロ接合性植物、ならびに好ましい対立遺伝子(複数を含む)のいずれのコピーも含まない植物の区別を行うことができる。
【0155】
したがって、このように、代替的マーカーは、当業者に知られた方法により作製することができ、質的形質座位、または本発明による、本明細書の上記において開示された遺伝子座の対立遺伝子または対立遺伝子の組を有する植物を同定および選択するために使用され得る。
【0156】
例えば、配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、ならびに配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2の群から選択される、順方向プライマーおよび逆方向プライマーからなるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を使用したPCR増幅において得られた増幅産物のヌクレオチド配列は、当業者により、および新規に決定されたPCR増幅産物のヌクレオチド配列に基づいて設計された新規プライマーまたはプライマー対により得ることができる。さらに、本発明による、本明細書の上記において開示されたマーカーは、レタスまたは他の種、特にキク科(Asteraceae)の種の遺伝子マップ上に位置付けることができ、また同じまたはホモログまたはオルソログ領域(複数を含む)における既知のマーカーマッピングが、新規マーカーを作製するための出発点として使用され得る。
【0157】
したがって、本発明において具体的に開示されたマーカーはまた、ブレミア抵抗性質的遺伝子座に関連した新規または追加的マーカーの同定および/または作製において使用することができ、一方これはマーカー利用による育種、および/またはブレミア抵抗性遺伝子座に隣接する組み換え体の調査、および/または精細マッピング、および/またはブレミア抵抗性質的遺伝子座のクローニングに使用することができる。
【0158】
関心のある領域において連鎖不均衡にある、および/またはその領域に連鎖している、および/またはその領域に位置するマーカー、ならびに質的形質の元となる、実際に原因となる変異を示すマーカーを同定および/または作製するために使用され得る、当業者に知られた利用可能ないくつかの方法または手法が存在する。完全に網羅するわけではないが、当業者に知られたいくつかの手法は、以下を含む:
−関心のある領域の他の配列を同定するためのハイブリダイゼーション手法における、開示された配列/マーカーの使用:本明細書において開示されたプライマー配列を使用して決定され得る、本明細書において開示されたプライマー配列および/またはマーカー/遺伝子配列(またはその一部)は、遺伝子核酸試料および/またはRNAもしくはcDNA試料、または試料のプールから(例えばBACライブラリ等の遺伝子源のスクリーニングまたはgDNAもしくはcDNAライブラリスクリーニングから)、マーカーと隣接している、および/またはブレミア抵抗性遺伝子座に連結している、および/またはその遺伝子座に関連している、および/またはその遺伝子座に特異的な核酸配列/遺伝子を単離する際の(ハイブリダイゼーション)プローブとして使用され得る。
−関心のある領域における他の配列を同定するためのPCR手法における、開示された配列/マーカーの使用:本明細書において開示されたプライマー配列、および/または開示されたプライマー配列を使用することによって決定され得るマーカー/(候補)遺伝子配列(またはその一部)は、ゲノム核酸試料由来の、および/またはRNAもしくはcDNA試料由来の、または特定の植物組織から、および/または植物の特定の処理の後に、およびトウガラシもしくは主に十分な相同性を有する任意の他の生物から単離されるか、または単離されない試料のプール由来のブレミア抵抗性遺伝子座の領域に隣接する、および/または連鎖した、および/または関連した、および/またはそれに特異的な核酸配列/遺伝子を増幅するために、(PCR)増幅プライマーとして使用され得る。
−関心のある領域における他の配列を同定するためのPCR手法における、開示された配列/マーカーの使用:前記マーカー配列のための内部プライマーが、ブレミア抵抗性遺伝子座の領域内にある、および/またはその形質と遺伝的に連鎖した、および/またはそれに関連した追加の隣接配列/遺伝子をさらに決定するために設計および使用され得る前に、1つ以上のマーカーのヌクレオチド配列/遺伝子が決定され得る。
−同じ領域(複数を含む)におけるマーカーを同定するためのマッピングおよび/または比較マッピング手法における、開示された配列/マーカーの使用(他のマップにおけるブレミア抵抗性遺伝子座の位置決め):本明細書において開示された位置情報および/またはマーカー情報に基づき、任意の種類のマーカーが、遺伝子マッピング手法により、最終的には(既に必要である場合は)(高密度)遺伝子マップ(複数を含む)および/または統合遺伝子もしくはコンセンサスマップ(複数を含む)上の、(遺伝子マッピング、またはマップ上の共通マーカーに基づく外挿による)開示されたマーカーの位置決めにより同定され得る。開示されたマーカーおよび/またはブレミア抵抗性遺伝子座の領域の近傍に遺伝的に連鎖した、および/または位置した既知のマーカーおよび/または新規のマーカーが同定および/または獲得され、最終的にブレミア抵抗性遺伝子座の(精細)マッピングおよび/またはクローニングおよび/またはMAS育種用途に使用され得る。
−追加の配列/マーカー/(候補)遺伝子を同定するための「イン−シリコ」手法における開示された配列/マーカーの使用:本明細書において開示されたプライマー配列を使用して、または連鎖したマーカーに基づいて決定され得る、本明細書において開示されたプライマー配列、および/またはマーカー/(候補)遺伝子配列(あるいはその一部)は、本明細書に記載の形質と遺伝的に連鎖した、および/またはそれに関連した、および/またはブレミア抵抗性遺伝子座の領域に位置した、(追加の)隣接および/またはホモログ配列/遺伝子、および/または対立遺伝子の多様性、(両方の遺伝子および/またはcDNA配列もしくはタンパク質、ならびにトウガラシおよび/または任意の他の生物に由来する両方)のための配列またはタンパク質データベース(例えばBLAST)を調べるために、「イン−シリコ」法において使用され得る。
−物理的マッピング手法における、開示された配列/マーカーの使用(物理的マップまたはゲノム配列上のブレミア抵抗性遺伝子座の位置決め):本明細書において開示されたプライマー配列を使用して、あるいは本明細書において開示されたマーカーと遺伝的に連鎖した、および/またはブレミア抵抗性遺伝子座の領域に位置する他のマーカーを使用して決定され得る、本明細書において開示されたプライマー配列、および/またはマーカー/遺伝子配列(またはその一部)は、物理的マップ、ならびに/または、ブレミア抵抗性遺伝子座の(精細マッピング)および/もしくはクローニングおよび/もしくはMAS育種用途に適用可能な(候補)配列/マーカー/遺伝子を同定するために十分な相同性を有する任意の生物の主に(全)ゲノム配列に基づいて、位置決めされ得る。
−他の(物理的)マップまたはゲノム上にブレミア抵抗性遺伝子座を位置付けるための、開示された配列/マーカーの使用(種に関して、レタスの他に、他のキク科の種がモデル種として使用され得る):本明細書において開示されたプライマー配列を使用して決定され得る、本明細書において開示されたプライマー配列、および/またはマーカー/遺伝子配列(またはその一部)は、ブレミア抵抗性遺伝子座の領域中に遺伝的に連鎖している、および/または位置している、ならびにブレミア抵抗性遺伝子座の(精細マッピング)および/またはクローニング、および/またはMAS育種用途に適用可能であるホモログ領域、ならびにホモログおよび/またはオルソログ配列/(候補)遺伝子を同定するために、比較ゲノムもしくはシンテニーマッピング手法において使用され得る。
−関心のある領域におけマーカーの同定を遺伝的手法により行うことができる好適な個体を選択するための、開示された配列/マーカーの使用:本明細書において開示されたプライマー配列および/またはマーカーは、例えば遺伝的関連手法、および/またはバルク分離解析(BSA、Michelmore et al.,PNAS,88,9828−9832,1991)において、関心のある特定の領域、および/または記載された形質と関連のある、もしくは遺伝的に連鎖した領域におけるマーカー/遺伝子を同定するために使用され得る、異なる/対照的な対立遺伝子を有する個体を選択するために使用され得る。
−(位置的)候補遺伝子を探索するための、開示された情報の使用:開示された情報は、記載された形質と関連付けられた、および/または遺伝的に連鎖し得る位置的および/または機能的候補遺伝子を同定するために使用され得る。
【0159】
遺伝子型決定、マッピングまたは関連マッピングのために、DNAは、例えば葉組織等の好適な植物材料から抽出される。特に、複数の植物の多数の葉が収集される。DNA試料は、全レタスゲノムに及ぶ複数のSSR、SNPまたは任意の他の好適なマーカー型を使用して、遺伝子型決定される。
【0160】
遺伝子型および表現型データの共同解析を、当業者に知られた標準的なソフトウェアを使用して行うことができる。植物導入および遺伝資源は、染色体8に位置することが知られている前記ブレミア抵抗性遺伝子座または任意の他のマーカーに連鎖した標識座におけるマーカー(複数を含む)のヌクレオチド配列(複数を含む)、ならびに対立遺伝子(複数を含む)の分子量に基づき、本明細書に開示された、または当業者に知られた技術の1つ以上を使用して、本明細書において開示された対応するブレミア抵抗性遺伝子座における対立遺伝子に関してスクリーニングすることができる。
【0161】
本明細書において開示された、マーカー、連鎖マーカーまたはブレミア抵抗性遺伝子座の核酸配列は、当業者に知られた方法により決定され得る。例えば、前記ブレミア抵抗性遺伝子座またはその抵抗性を付与する部分を含む核酸配列は、前記植物のゲノムを断片化し、前記ブレミア抵抗性遺伝子座を示す1つ以上のマーカーを宿すそれらの断片を選択することにより、ブレミア抵抗性ドナー植物から単離され得る。続いて、または代替的に、前記植物から得られるゲノム核酸試料またはゲノム断片由来の前記抵抗性遺伝子座を含む核酸配列(複数を含む)を増幅するために、前記抵抗性遺伝子座を示すマーカー配列(またはその一部)は、(PCR)増幅プライマーとして使用され得る。ブレミア抵抗性遺伝子座、および/またはそれに含まれる任意の追加的マーカーのヌクレオチド配列は、標準的なシーケンシング法により得られてもよい。
【0162】
したがって、本発明はまた、本発明のブレミア抵抗性遺伝子座を含む核酸(好ましくはDNAであるが、DNAに限定されない)配列、またはその抵抗性を付与する部分に関する。したがって、開示されたマーカーは、ブレミア抵抗性に連鎖しているか、またはそれをコードする、レタスまたは他の野菜作物、特にキク科作物由来の1つ以上のマーカーまたは遺伝子の同定および単離に使用され得る。
【0163】
本発明のブレミア抵抗性遺伝子座に連鎖した追加的マーカーのヌクレオチド配列はまた、例えば、ブレミア抵抗性遺伝子座と関連した1つ以上のヌクレオチド配列を決定し、後に前記マーカー配列の外側の配列をさらに決定するために使用され得る前記マーカー配列のプライマーを設計することにより、決定され得る。例えば、本明細書において開示されたSSRマーカー、あるいはブレミア抵抗性遺伝子座の領域中で予測された、および/または前記領域に連鎖した任意の他のマーカーのヌクレオチド配列は、当技術分野において知られた方法により前記マーカーのPCR増幅産物を配列決定することによって、あるいは、例えば、限定されないが、BACスクリーニングにより連鎖したヌクレオチド配列を同定するために、PCRにおけるマーカー配列を使用することによって、またはハイブリダイゼーションプローブとして使用することによって得ることができる。
【0164】
以下の限定されない実施例を参照することにより、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0165】
実施例
実施例1:材料および方法
1.1 材料
−Ls1ブレミア抵抗性遺伝子に関して分離する2つの分離F2および対応するF3集団が、BSAを用いたマーカー作製用に作製された(集団3043=S系統[Winnie]*R系統[LSA−1306−158xK175/13xAng−2−45)1:3−2]および集団3045=S系統[Kristo]*R系統[(Kris/B28−1−19xB06/SAT−79−6)−1−1:2])。
−SSR−BSAによって同定され、レタス標準物質ラクツカ・サティバ(L.sativa)xラクツカ・セリオラ(L.serriola)のRILマップの連鎖群8でLs1ブレミア抵抗性遺伝子にマッピングされた、SSR候補マーカーNL0918、NL0920およびNL0222の配列。
−2つのESTクローンLE0178およびLK1463の配列をUC Davis ESTコレクションから得たが、これらの2つのESTはLs1遺伝子および連鎖群8の3つの連鎖SSRマーカーと同じ領域に位置する。
【0166】
1.2 アッセイの開発
全ての植物DNAを酢酸カリウム+プロテイナーゼKのプロトコルに従って単離した。
対立遺伝子の配列決定のために、連鎖SSRおよびESTの5’末端および3’末端で最大3つの異なるPCRプライマーの組み合わせを設計した。抵抗性系および感受性系のパネルからの系統を用いて、これらの5つの潜在的マーカーのPCR断片およびDNA配列を得た。
【0167】
Taqman EPRアッセイの開発は、配列パネルの発見された対立遺伝子特異的なSNPに基づくものであった。EPRアッセイの開発は、異なるPCR混合物の検査、DNA濃度、およびアニーリング温度を含む標準ガイドラインに従って行った。プローブは、FAM−およびVIC MGB Taqmanプローブ(Eurogentec)であった。
【0168】
1.3 アッセイプロトコル
1.3.1 PCRプロトコル
1.標準的なDNA抽出用の酢酸カリウム+プロテイナーゼKのプロトコルを用いてDNAゲノムを単離する。最終的に、150μlのDNAを得た。
2.鋳型DNAを1/30に希釈する。
3.それぞれの希釈DNAサンプル4μlを個々のウェルにピペットで入れる。
4.蓋をして、プレートを遠心分離にかけ、氷上に置く。
5.マスターミックスを作製する。以下は、反応ごとである。
【0169】
1.3.2 Taqman EPRアッセイ
MGB蛍光標識プローブは、ABIから購入することができる。以下の反応ミックスを使用してPCR増幅を行う。
【0170】
【表1】

【0171】
【表2】

6.6μlのマスターミックスを各DNAサンプル(鋳型DNAを除く全て)に加える。
7.短時間の遠心分離で沈降させる。
8.PCR機にプレートを装填する。
9.以下のABI GENEAMP PCR9700 384プレートフォーマットに対するPCRプログラム:
【表3】

を行い、ABI7900上でSNPの結果を測定する。
10.ABI7900でプレートを測定する。
【0172】
1.4 検証パネル
以下を用いて検証を行った:
(i)29個の遺伝子型(固定抵抗系13個、感受性系15個および分離系1個)からなる特定の検証パネル
(ii)96個の感受性遺伝子型(栽培品種)
【0173】
1.5 病害試験
試験は、人工気候室内で高湿度で行う。日照時間は16時間であり、日中の温度は18℃、RHは約85%である。夜間の温度は15℃、RHは約100%である。試験の植菌前、ブレミア病原体の胞子を、感受性種に対し増殖させる。ブレミア分離株に対する感受性種の選択は、正式な判別宿主セットから、および内部セットから行う。ブレミア抵抗性に関する病害試験は、様々なブレミア株またはBl20、Bl21、Bl24およびBl25等の分離株を使用して行った。
【0174】
【表4】

【0175】
実施例2: cv.(LSA−1306/SATxSAT)−37−1−3:1−の概略的育種過程
【表5】

【0176】
育種系統(LSA−1306/SATXSAT)−37−1−3:1は、1996年、LSA−1306=IVT1306とラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物の交配の結果として開始した。目標は、農業形質と、ドナーとしてのIVT1306に由来するべと病抵抗性とを組み合わせた育種系統を獲得し、全ての主要な種類(ロメイン、アイスバーグ、バタビア、オークリーフおよびバターヘッドレタス)に育種を拡大することであった。
【0177】
1998年に系統選択を開始する前、全てのブレミア正式品種に対し抵抗性を与える、IVT1306(=CGN05315:イスラエル原産の野生ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)。提供機関:Instituut voor de Veredeling van Tuinbouwgewassen,Wageningen,Netherlands。)由来のブレミア抵抗性因子を導入するために、IBEBにより公開されている期日まで第1の戻し交配サイクルを行った。
【0178】
BC1F2の種子を1999に植え、苗にブレミアを植菌し、抵抗性植物を無分別で増殖させてF3に移行した。
【0179】
BC1F3の種子を、2000年にBC1F2植物選択により個々に収集した。各F3を植え付け、再びブレミアを植菌した。抵抗性に対しホモ接合性のF3系統のみを継続した。これらのホモ接合性F3に対する選択は、開放耕地において示される最善の農業学的値について行った。
【0180】
BC1F4における選択は、2001年、ホモ接合抵抗性F3における最善の農業形質に従い、開放耕地で行った。
【0181】
所望の農業形質およびブレミア抵抗性を組み合わせた最も均一なBC1F5が、2002年に選択された。
【0182】
使用した育種方法は、単一植物選択および集団選択の慣例を使用した系統選択であった。
【0183】
実施例3: マーカー候補の同定
400の多型増幅可能SSRを使用して、標準的なSSR−BSAを行ったが、個々の抵抗性および感受性BSAバルクは、2つのマーカー作製集団3043および3045から得られた4つのプール個体系統を含む8つのF3系統から成っていた。2つのSSR(NL0918およびNL0920)を同定したが、これらはLs1抵抗性遺伝子に連鎖している。連鎖は、個々のF3バルクメンバー植物を試験することにより確認した。
【0184】
対応する「母親」F2集団3043および3045の遺伝子型決定は、固定された(RおよびS)F2植物との完璧な連鎖(0cM)を示し、ヘテロ接合F2植物と最高80%の連鎖を示した(そのうち、得られたF3系統は、抵抗性に関して分離した)。ヘテロ接合性植物におけるより低い相関は、バックグラウンドの他のDm抵抗性遺伝子が適正なブレミア表現型検査に干渉するため、分離F3集団におけるより信頼性の低いブレミア病試験により一部説明され得る。Bl20、Bl21、Bl24およびBl25等の4つの異なる特定ブレミア品種を使用したブレミアF3再試験により、1〜2cMの近い連鎖が確認される。
【0185】
RR、SSおよびHRは、抵抗性遺伝子型(それぞれホモ接合抵抗性、ホモ接合感受性およびヘテロ接合抵抗性)を説明しており、一方R、SおよびIは、病害試験の所見(それぞれ抵抗性、感受性および中間的抵抗性)を説明している。
【0186】
特定の検証パネルをABI7330ポリアクリルアミド蛍光シーケンサーでこれら3つのSSRで試験することにより、全ての系統に対して固有の対立遺伝子が示された(表2を参照されたい)。これらの「R対立遺伝子」は、異なる固有対立遺伝子を示す試験された感受性系統においては存在しない。これらの検証データ(96感受性系統で拡張された)は、これらの3つのSSRマーカーが、RおよびS対立遺伝子特異性を示し、レタス遺伝資源に全般的に適用可能な共優性Taqmanマーカーの作製を潜在的に可能とすることを明確に示している。
【0187】
2つのSSR(NL0918およびNL0920)の互いに近い連鎖は、ラクツカ・サティバ(L.sativa)cv.サリナス*ラクツカ・セリオラ(L.serriola)UC23US一般参照集団由来のRIL系統によるマッピングにより、連鎖群8において2cM以内であることが確認された。これは、Ls1ブレミア抵抗性遺伝子を連鎖群8に位置付ける。
【0188】
2つのSSR候補マーカーおよび2つの連鎖ESTの配列を、共優性Taqmanマーカー作製のためのアッセイ開発に使用した。
【0189】
【表6】

【0190】
【表7】

【0191】
実施例4: アッセイ開発
特定検証パネルからの4つのR系統および4つのS系統を使用して、SSR対立遺伝子の配列決定を行い、観察されたSNPパターンに基づき対立遺伝子のハプロタイプ分析を行った。
【0192】
SSR NL0920:
R系統は、1つのハプロタイプ(A)を示し、一方S系統は、2つのハプロタイプを示し、SNP305#および430に基づき2つのTaqmanアッセイが開発された。
【0193】
SSR NL0918:
R系統は、1つのハプロタイプ(A)を示し、同様にS系統は(B)を示し、SNP#217および272に基づき2つのTaqmanアッセイが開発された。SNP217では特異的な増幅が得ることができなかったが、SNP272に基づくTaqmanマーカーは、特定の検証パネルとの完璧な相関を示した。
【0194】
実施例5: 検証およびロバスト性試験
作製されたSSR NL0918およびNL0920の両方の2つの共優性Taqmanマーカーを、表現型分析された育種系統との相関について検証した。
【0195】
SSR NL0918:
SSR NL0918では、SNP#217系Taqmanマーカーは、特定および広域の検証パネルの両方において相関を示さなかった。しかしながら、SNP#272系Taqmanマーカーは、全ての系統の表現型との完全な相関を示す。
【0196】
NL0918のTaqmanプロトコルの試験は、ホモ接合抵抗性、ヘテロ接合およびホモ接合感受性の3つの観察された遺伝子型の特徴的な分離および分類を示した(データは示されていない)。
【0197】
SSR NL0920:
SSR NL0920では、SNP#305および430系Taqmanマーカーの両方が、全ての系統の表現型との完全な相関を示す。
Taqmanプロトコルの試験は、SNP#430が、ホモ接合抵抗性、ヘテロ接合およびホモ接合感受性の3つの観察された遺伝子型の特徴的な分離および分類を示すことを示した。
【0198】
・ 2つのSSR−BSA誘導共優性Taqman PCRマーカーは、レタスLs1ブレミア抵抗性遺伝子座の診断的選択用に開発された。
・ マーカーは、両方のマーカーにおける特定のSNP変異に基づき、感受性Ls1対立遺伝子を抵抗性LS1対立遺伝子から区別する。
・ マーカーは、系統(Ls1抵抗性および感受性系統)の表現型との完璧な相関を示す。
【0199】
実施例6: レタスブレミアLS−1抵抗性共優性エンドポイントリーディング(EPR)
SNP−A、SNP−BおよびSNP−Cの3つのSNPを、バルク断片分析により、抵抗性遺伝子座と共に分離するものとして同定した。バルクは、抵抗性源と、ブレミア抵抗性が知られていない系統であるCobham Greenとの間の交配のF1植物から個々のF2植物を自殖することにより得られたF3ファミリーに対して試験した、Bl20、Bl21、Bl24およびBl25等の複数のブレミア分離株でのスクリーニングの結果により選択した。SNP−Aと抵抗性遺伝子座との間および/またはSNP−Bと抵抗性遺伝子座との間の近い連鎖(せいぜい0.6cMであるが、5cM以下)が、分離して抵抗性を示す3つの独立したF3集団において決定された。
【0200】
以下の表は、SSRおよびSNPマーカーのプライマーおよびプローブを示す。
【表8】

【0201】
実施例7:系統の作製
ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)由来の抵抗性は、小植物、厚い亀裂の入った葉、暗すぎる色合いの葉等のいくつかの望ましくない形質に関連する。ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)をラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)と交配することにより、遺伝子がラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)(通常のレタス)に移入する。ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)との戻し交配および続く田畑における選択により、これらの望ましくない遺伝子と抵抗性遺伝子との間の連鎖が破壊される。
【0202】
ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)との交配および戻し交配は、源から標的ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)への形質の遺伝子移入を示す。
【0203】
全てラクツカ・サリグナ(L.saligna)由来のLs1の抵抗性対立遺伝子の移入を示す、様々なラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)の種類が開発されている。
【0204】
寄託:
ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1の以下の種子試料が、2009年6月11日、NCIMB,Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen AB21 9YA,Scotland,UKに、Syngenta Participations AGの名のもとで、ブダペスト条約の規定に従い寄託された。
【表9】

【0205】
発明の実施形態
1.レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物であって、ブレミア抵抗性遺伝子座は、遺伝的決定基と連鎖しており、野生のラクツカ植物のゲノムから、特にラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)のゲノムから得ることができる、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物。
【0206】
2.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性は、全般的な非品種特異的抵抗性である、実施形態1に記載の植物。
【0207】
3.ブレミア抵抗性遺伝子座に連鎖した遺伝的決定基は、質的ブレミア抵抗性遺伝子座である、実施形態1または2に記載の植物。
【0208】
4.ブレミア抵抗性遺伝子座は、広範囲のレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座である、上記実施形態のいずれかに記載の植物。
【0209】
5.レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座は、ホモ接合状態で存在する、上記実施形態のいずれかに記載の植物。
【0210】
6.前記レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座は、連鎖群8に位置する、上記実施形態のいずれかに記載の植物。
【0211】
7.レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座は、少なくとも1つの標識座に遺伝的に連鎖し、これがブレミア抵抗性形質と共に同時分離し、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA断片の増幅により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において同定され得る、上記実施形態のいずれかに記載の植物。
【0212】
8.レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座は、ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)におけるそれぞれの抵抗性遺伝子座に対応し、この遺伝子座は、少なくとも1つの標識座に遺伝的に連鎖し、これがブレミア抵抗性形質と共に同時分離し、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA談断片の増幅により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応においてラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)ゲノムにおいて同定され得る、上記実施形態のいずれかに記載の植物。
【0213】
9.少なくとも1つの標識座に遺伝的に連鎖し、ブレミア抵抗性形質と共に同時分離し、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA断片の増幅により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応においてラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)ゲノムにおいて同定され得る、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与するラクツカ・サティバ(L.sativa)ゲノムの質的形質座位における少なくとも1つの対立遺伝子を有する、上記実施形態のいずれかに記載の植物。
【0214】
10.その代表的種子が寄託番号NCIMB41625としてNCIMBに寄託されているラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1に存在する対応する対立遺伝子に相補的であり、ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)ゲノム内の少なくとも1つの標識座に遺伝的に連鎖し、これがブレミア抵抗性形質と共に同時分離し、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA断片の増幅により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応においてラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)ゲノムにおいて同定され得る、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与するラクツカ・サティバ(L.sativa)ゲノムの質的形質座位における少なくとも1つの対立遺伝子またはその一部を有する、上記実施形態のいずれかに記載のラクツカ・サティバ(L.sativa)植物。
【0215】
11.プライマー対1およびプライマー対2は、それぞれ、ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離するSSR断片を増幅する、実施形態7から10のいずれか1つに記載の植物。
【0216】
12.プライマー対1は、247bpのSSR断片を増幅する、実施形態11に記載の植物。
【0217】
13.プライマー対2は、465bpのSSR断片を増幅する、実施形態11に記載の植物。
【0218】
14.プライマー対3は、ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離するSNPを含む、実施形態12のSSR配列内のDNA断片を増幅する、実施形態11に記載の植物。
【0219】
15.プライマー対4およびプライマー対5は、それぞれ、ブレミア抵抗性遺伝子座と共に分離するSNPを含む、実施形態13のSSR配列内のDNA断片を増幅する、実施形態11に記載の植物。
【0220】
16.前記SNPは、プライマー対3により増幅されるSSR断片内に存在し、SSR配列における位置272でのCとAのヌクレオチド交換により表される、実施形態14に記載の植物。
【0221】
17.前記SNPは、プライマー対4により増幅されるSSR断片内に存在し、SSR配列における位置430でのGとAのヌクレオチド交換により表される、実施形態15に記載の植物。
【0222】
18.前記SNPは、プライマー対5により増幅されるSSR断片内に存在し、SSR配列における位置305でのTとGのヌクレオチド交換により表される、実施形態15に記載の植物。
【0223】
19.ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離する前記SNPは、配列番号11のDNAプローブで同定され得る、実施形態16に記載の植物。
【0224】
20.ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離する前記SNPは、配列番号13のDNAプローブで同定され得る、実施形態17に記載の植物。
【0225】
21.ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離する前記SNPは、配列番号15のDNAプローブで同定され得る、実施形態18に記載の植物。
【0226】
22.前記植物は、近交系、二ゲノム性半数体または雑種である、上記実施形態のいずれかに記載の植物。
【0227】
23.前記植物は、雄性不稔性である、上記実施形態のいずれかに記載の植物。
【0228】
24.葉、茎、根、花もしくは花部、果実、花粉、卵細胞、接合体、種子、挿し木、細胞もしくは組織培養物、または、特に植物として栽培された場合に本発明による抵抗性表現型を示す、植物の他の任意の部分もしくは産物を含むが、これらに限定されない、上記実施形態のいずれかに記載の植物から得られる植物材料。
【0229】
25.特に植物として栽培された場合にまだ本発明による抵抗性表現型を示す、植物種子、植物器官、例えば根、茎、葉、花芽もしくは胚芽等、胚珠、花粉小胞子、植物細胞、植物組織、植物細胞培養物、例えばプロトプラスト、細胞培養細胞、植物組織中の細胞、花粉、花粉管、胚珠、胚嚢、接合体および様々な発達段階の胚芽等を含むがこれらに限定されない、上記実施形態のいずれかに記載の植物の植物部位。
【0230】
26.上記実施形態のいずれかに記載のホモ接合植物の種子。
【0231】
27.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与する遺伝的決定基を有する、上記実施形態のいずれかに記載のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物の種子。
【0232】
28.前記種子は、雑種種子である、実施形態27に記載の種子。
【0233】
29.前記抵抗性遺伝子は、連鎖群8に位置する、上記実施形態のいずれかに記載の種子。
【0234】
30.NCIMB Ltd.において寄託番号NCIMB41625として寄託されている、上記実施形態のいずれかに記載の種子。
【0235】
31.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与する遺伝的決定基を有する種子を生成するための、実施形態1から23のいずれか1つに記載のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物の使用。
【0236】
32.ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)におけるレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の検出のためのキットであって、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座に連鎖したDNAマーカーを増幅することができる、1つのPCRオリゴヌクレオチドプライマーまたはPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を備える、キット。
【0237】
33.前記DNAマーカーは、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより現されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、および
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した、染色体8上の他の任意のマーカーを用いて、PCR反応において増幅され得る、実施形態32に記載のキット。
【0238】
34.レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座に連鎖し、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより現されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、および
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いて、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において増幅され得る、DNAマーカー。
【0239】
35.ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)におけるレタスLs1ブレミア抵抗性遺伝子座の診断的選択のための、実施形態34に記載のDNAマーカーのいずれか1つの使用。
【0240】
36.植物において、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の存在を同定するため、および/またはラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)におけるレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の遺伝子移入を監視するための、実施形態34に記載のDNAマーカーのいずれか1つの使用。
【0241】
37.
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA断片の増幅により、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において得ることができるポリヌクレオチドであって、
その増幅産物は、同一のプライマーまたはプライマー対を用いたPCR反応において、その代表的種子が寄託番号NCIMB41625としてNCIMBに寄託されるラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1から得ることができる増幅産物に対応するが、ただし、それぞれの標識座は、前記ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物中にまだ存在する、および/またはその対立遺伝子とみなすことができる、ポリヌクレオチド。
【0242】
38.実施形態37のポリヌクレオチドの配列と少なくとも90%、特に少なくとも95%、特に少なくとも96%、特に少なくとも97%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド。
【0243】
39.実施形態37のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を示す、ポリヌクレオチド。
【0244】
40.前記対立遺伝子を欠失したラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物に、ブレミアに対する抵抗性に寄与する質的形質座位においてレタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性と関連した少なくとも1つの対立遺伝子を導入するための方法であって、
a.上記実施形態のいずれか1つに記載の第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得るステップと、
b.前記第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させるステップであって、前記第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物は、前記対立遺伝子を欠失している、ステップと、
c.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性の増加を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、
d.任意選択的に、前記植物を単離するステップと、
e.任意選択的に、前記植物を前記第1または第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と戻し交配するステップと、を含む方法。
【0245】
41.レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得る方法であって、
a.ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)植物を、レタスべと病菌(Bremia lactucae)の寄生を被りやすいラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させることにより、F1−雑種を得るステップと、
b.前記F1−雑種を、前記ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と戻し交配するステップと、
c.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、
d.任意選択的に、前記植物を栽培するステップと、を含む方法。
【0246】
42.上記実施形態のいずれかに記載の種子を得るための方法であって、
a.上記実施形態のいずれか1つに記載の第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得るステップと、
b.前記第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させるステップであって、前記第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物は、前記対立遺伝子を欠失している、ステップと、
c.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、
d.前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配からの子孫種子を回収するステップと、を含む方法。
【0247】
43.ステップc)において、交配から得られ、ブレミア抵抗性遺伝子座を有する植物は、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、および
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA断片の増幅により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において同定される、実施形態40から42のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
44.プライマー対1およびプライマー対2の増幅産物に対して、それぞれ断片サイズが決定される、実施形態43に記載の方法。
【0249】
45.ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離するSNPが決定され、前記方法は、配列番号11、配列番号13および配列番号15からなる群から選択されるプローブ分子を使用する追加的ステップを含む、実施形態43に記載の方法。
【0250】
46.ステップc)において、交配から得られる植物は、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する増加した抵抗性を示す植物に基づく表現型選択を適用することにより同定される、実施形態40から42のいずれか1つに記載の方法。
【0251】
47.ステップc)において、交配から得られる植物は、実施形態43のいずれか1つによるPCR反応と、実施形態46による表現型選択とを使用する組み合わせたステップを適用することにより同定される、実施形態40から42のいずれか1つに記載の方法。
【0252】
48.
a.実施形態1から23のいずれか1つに記載の、レタスべと病菌(Bremia lactucae)に抵抗性のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得るステップと、
b.高い病害(レタスべと病菌(Bremia lactucae))圧力を有する領域において前記植物を栽培するステップとを含む、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物をレタスべと病菌(Bremia lactucae)の寄生から保護する方法。
【0253】
49.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に抵抗性のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を栽培するための、実施形態26から30のいずれか1つに記載の種子の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物であって、ブレミア抵抗性遺伝子座は、遺伝的決定基と連鎖しており、野生のラクツカ植物のゲノムから、特にラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)のゲノムから得ることができる、ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物。
【請求項2】
前記レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座は、連鎖群8に位置する、請求項2に記載の植物。
【請求項3】
前記レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座は、少なくとも1つの標識座に遺伝的に連鎖し、これがブレミア抵抗性形質と共に同時分離し、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA断片の増幅により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において同定され得る、請求項1または2に記載の植物。
【請求項4】
プライマー対1およびプライマー対2は、それぞれ、ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離するSSR断片を増幅し、
a.プライマー対1は、247bpのSSR断片を増幅し、および/または
b.プライマー対2は、465bpのSSR断片を増幅し、および/または
c.プライマー対3は、ブレミア抵抗性遺伝子座と共に同時分離するSNP、特にSSR配列における位置272でのCとAのヌクレオチド交換により表されるSNPを含む247bpSSR断片内のDNA断片を増幅し、および/または
d.プライマー対4およびプライマー対5は、465bpSSR断片内のDNA断片を増幅する、特に、それぞれ前記SSR断片内の位置430でのGとAのヌクレオチド交換、および位置305でのTとGのヌクレオチド交換により表されるSNPを増幅する、請求項3に記載の植物。
【請求項5】
a.請求項1から4のいずれかに記載のホモ接合植物、または
b.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与する遺伝的決定基を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物、または
c.交配植物、または
d.NCIMB41625の遺伝的背景を有する植物
の種子であって、前記ブレミア抵抗性遺伝子は、連鎖群8に位置する、種子。
【請求項6】
レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性に寄与する遺伝的決定基を有する種子を生成するための、請求項1から4のいずれか一項に記載のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物の使用。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物におけるレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の検出のためのキットであって、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座に連鎖したDNAマーカーを増幅することができる、1つのPCRオリゴヌクレオチドプライマーまたはPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を備える、キット。
【請求項8】
レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座に連鎖し、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより現されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、および
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーにより、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において増幅され得る、DNAマーカー。
【請求項9】
植物において、レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の存在を同定するため、および/またはラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)におけるレタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性遺伝子座の遺伝子移入を監視するための、請求項8に記載のDNAマーカーの使用。
【請求項10】
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマーおよび配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、ならびに
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA断片の増幅により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において得ることができるポリヌクレオチドであって、
その増幅産物は、同一のプライマーまたはプライマー対を用いたPCR反応において、その代表的種子が寄託番号NCIMB41625としてNCIMBに寄託されるラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)系統LSA−(1306/SATxSAT)−37−1−3:1から得ることができる増幅産物に対応するが、ただし、それぞれの標識座は、前記ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物中にまだ存在する、および/またはその対立遺伝子とみなすことができる、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記対立遺伝子を欠失したラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物に、ブレミアに対する抵抗性に寄与する質的形質座位においてレタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性と関連した少なくとも1つの対立遺伝子を導入するための方法であって、
a.請求項1から4のいずれか一項に記載の第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得るステップと、
b.前記第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させるステップであって、前記第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物は、前記対立遺伝子を欠失している、ステップと、
c.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性の増加を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、
d.任意選択的に、前記植物を単離するステップと、
e.任意選択的に、前記植物を前記第1または第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と戻し交配するステップと、を含む方法。
【請求項12】
レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得る方法であって、
a.ラクツカ・サリグナ(Lactuca saligna)植物を、レタスべと病菌(Bremia lactucae)の寄生を被りやすいラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させることにより、F1−雑種を得るステップと、
b.前記F1−雑種を、前記ラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と戻し交配するステップと、
c.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、
d.任意選択的に、前記植物を栽培するステップと、を含む方法。
【請求項13】
前記請求項のいずれか一項に記載の種子を得るための方法であって、
a.請求項1から4のいずれか一項に記載の第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を得るステップと、
b.前記第1のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物と交配させるステップであって、前記第2のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物は、前記対立遺伝子を欠失している、ステップと、
c.レタスべと病菌(Bremia lactucae)に対する抵抗性を示し、前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配から得られる植物を同定するステップと、
d.前記ブレミア抵抗性と共に同時分離する少なくとも1つのマーカー対立遺伝子を有する、前記交配からの子孫種子を回収するステップと、を含む方法。
【請求項14】
ステップc)において、前記交配から得られ、ブレミア抵抗性遺伝子座を有する植物は、
a.配列番号1の順方向プライマーおよび配列番号2の逆方向プライマーにより表されるプライマー対1、
b.配列番号3の順方向プライマーおよび配列番号4の逆方向プライマーにより表されるプライマー対2、
c.配列番号5の順方向プライマーおよび配列番号6の逆方向プライマーにより表されるプライマー対3、
d.配列番号7の順方向プライマー および配列番号8の逆方向プライマーにより表されるプライマー対4、および
e.配列番号9の順方向プライマーおよび配列番号10の逆方向プライマーにより表されるプライマー対5、
から選択されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーの対を用いたDNA断片の増幅により、または、ブレミア抵抗性形質と統計的に相関し、したがって遺伝的に連鎖した染色体染色体8上の他の任意のマーカーにより、PCR反応において同定される、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
レタスべと病菌(Bremia lactucae)抵抗性のラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)植物を栽培するための、請求項5に記載の種子の使用。

【公表番号】特表2012−531920(P2012−531920A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518895(P2012−518895)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059268
【国際公開番号】WO2011/003783
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】