病理組織検査標本作成用の包埋トレイ
【課題】トレイを安定的に載置でき、パラフィンで机上が汚されることなく衛生的に作業を行うことができ、且つ、貴重な検体を有効に活用でき検査の信頼性を向上させる病理組織検査標本作成用の包埋トレイを提供する。
【解決手段】 底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設されたカセット支承部5と、前記カセット支承部5の周縁部付近から下方に突設された脚部6とからなることを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ1である。
【解決手段】 底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設されたカセット支承部5と、前記カセット支承部5の周縁部付近から下方に突設された脚部6とからなることを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関し、更に詳しくは、包埋トレイのパラフィン収容部の底面積が小さい場合でも安定で、作業性が良く且つ取り扱いやすい病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の病理組織検査標本作成用の包埋トレイとしては、図24,図25に示したようなものが多用されている。この包埋トレイTはパラフィン収容部T1と、その周縁に水平状に設けられたカセットを載置するためのカセット支承部T2と、その周縁に段差をつけて高く水平状に設けられた額縁部T3となり、更に、長手方向の額縁部T3の略中央部に横設された把持部T4とから構成されている。
【0003】
また、近年では、方形の容器からなるパラフィン収容部とその周縁に設けられたパラフィンブロック付着体の載置部とからなり、前記載置部が少なくとも2個設けられており、サイズの異なる2種類以上のカセット等に対応できる病理組織検査標本作成用トレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記病理組織検査標本作成用トレイを使用して顕微鏡標本を作製するには、図26〜図28に示すように、まず、カセット本体C1内に採取した検体Sを収容して蓋C2を取り付けておく。次いで、カセット本体C1の底部や蓋C2に穿設された透孔C3からホルマリンを流入させて検体Sを固定処理し、次いでアルコールにより検体Sの水分を除去し、キシレンにより後述する液状パラフィンとの親和性を付与する。
【0005】
次に、図29に示すとおり、検体SをトレイTに移して該トレイTのカセット支承部T2にカセット本体C1の底部を載せ、上方からパラフィンPを注入する。次いで、パラフィンPを冷却固化させた後、トレイTを取り除くことにより、図30に示したように、検体Sを包埋したパラフィンPがカセット本体C1の底部に付着してなるパラフィンブロックBを得る。その後、ミクロトームでパラフィンに包埋された検体Sをスライスして薄片を得て、これに染色等の所定の処理を施すことにより顕微鏡標本を得るのである。
【0006】
しかしながら、この種のトレイはパラフィンブロックから取り外しやすいように、パラフィン収容部の側壁がテーパ状にされ底面が小さくなっているため、例えば、机上に載置する際も不安定になっている。また、この種のトレイは、パラフィンブロックから更に外し易くするために底面と側壁の間がアール処理されることがあるが、この場合、机上での安定性が更に悪くなる。これに加え、パラフィンブロックをミクロトームに固定する際に固定用の爪をカセットの裏面に掛合させるが、パラフィンがこの掛合の邪魔にならないようパラフィン収容部をカセットの裏面より若干小さく形成することがあり、この場合も机上での安定性が悪化する。
このため、例えば、パラフィンブロックの作成中にトレイに手などが当たったりすると、その拍子にこのトレイ及び載置したカセットが転倒して、パラフィンで机上が汚されてしまうばかりか、貴重な検体が汚染されたり台無しになり検査の信頼性が大きく損なわれてしまう。
【0007】
一方、この種のトレイを使用した場合、検体の大きさに関わらず出来上がるパラフィンブロックの大きさは概ね一定である。これは、既存のミクロトームにセットしてスライスできるようにするためである。従って、大きなトレイに小さな検体を入れた場合には検体と比較して大きすぎるパラフィンブロックが形成されてしまい、無駄なパラフィンを使用し材料費が高価になるばかりでなく、これをスライスして薄片を得る場合でも余分なパラフィン部分をスライスすることになり、非効率的である。
このような不都合を回避するために、パラフィン収容部の大きさが異なる数種のトレイを用意し、検体の大きさにあわせて適切なトレイを選択して使用する。しかしながら、使用する道具の数を減らして道具の管理等を容易にする観点からカセットの大きさは一定の方が好ましく、このためトレイのカセット支承部はこのカセットを載置できる大きさとされ、その結果、パラフィン収容部が小さなトレイは上部が大きく下部が小さい逆三角形状となってしまい、非常に不安定になる(図25)。
【特許文献1】特開2006−300745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、かかる実情に鑑み、上記問題点を解消するべく鋭意研究の結果、カセット支承部の周縁部付近から脚部を突設することにより、トレイを安定的に机上等に載置でき、トレイが転倒してパラフィンで机上が汚されるといったトラブルもなく効率的且つ衛生的に作業を行うことができるばかりでなく、貴重な検体を損なうことなく有効に活用でき検査の信頼性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1は、底部とその周りに立設された側壁とからなるパラフィン収容部と、該パラフィン収容部の外側に水平に横設されたカセット支承部と、前記カセット支承部の周縁部付近から下方に突設された脚部とからなることを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0010】
本発明の請求項2は、パラフィン収容部の底部の面積はカセットの底面積の5分の3以下であることを特徴とする請求項1記載の病理組織検査標本用の包埋トレイを内容とする。
【0011】
本発明の請求項3は、パラフィン収容部の底部は一辺15mm以下の正方形状又は直径15mm以下の円形状であることを特徴とする請求項2記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0012】
本発明の請求項4は、パラフィン収容部の高さが脚部の高さと略同じか僅かに大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0013】
本発明の請求項5は、カセット支承部とパラフィン収容部の間にパラフィンをカセット底面に付着させるためのパラフィン副収容部が介設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0014】
本発明の請求項6は、カセット支承部の周縁部から額縁部が横設され、該額縁部はカセット支承部と段差をつけて高く設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0015】
本発明の請求項7は、把持部が、カセット支承部又は額縁部の周縁部から横設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0016】
本発明の請求項8は、パラフィン収容部の形状が左右非対称であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0017】
本発明の請求項9は、脚部はカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の病理検査標本作成用の包埋トレイは、脚部がカセット支承部の周縁部付近から下方に突設されているので、机上に安定的に載置でき、例えば、パラフィンブロック作成中に手がトレイに当たったとしてもこのトレイ及びカセットが転倒したりせず、従って机上を汚したり貴重な検体を損傷したり台無しにして検査の信頼性を損なう恐れもない。
【0019】
さらに、パラフィン収容部の底部の面積がカセットの底面積の5分の3以下程度である不安定なトレイに特に好適であり、上記の効果に加え、検体を包埋するためのパラフィンが少なく材料費が安価で済み、またこれをスライスする手間も軽減される。この効果はパラフィン収容部の底部が一辺が15mm以下程度の正方形状又は直径が15mm以下程度の円形状であるときに特に顕著であり、トレイの安定性並びにパラフィン量及び手間の低減を両立させることができる。
【0020】
パラフィン収容部の高さが脚部の高さと略同じか僅かに大きいと、包埋トレイはパラフィン収容部及び脚部の両方の3箇所で支えられることになり、より安定的に包埋トレイを定置できるため、トレイの不安定性に因るトラブルが一層防止でき、より作業性が高められるとともに、衛生的で、信頼性の高い検査が可能となる。また、包埋トレイを冷却プレート上に置いてパラフィン収容部のパラフィンを冷却固化させる場合には、パラフィン収容部が冷却プレートに接するため、冷却効率が良好である。
【0021】
カセット支承部とパラフィン収容部の間にパラフィン副収容部を介設すると、パラフィンはパラフィン収容部とパラフィン副収容部の両方に収容されて固化するため、固化したパラフィンとカセット底面は広い範囲で固着し、このためカセットとパラフィンの間の接着力が増し、パラフィンブロックをスライスする最中にパラフィンがカセット底面から外れるといったトラブルが一層効果的に防止される。
【0022】
カセット支承部の周縁部に額縁部を、カセット支承部と段差をつけて高く横設すると、カセットの下部を額縁部内に嵌入させることによりカセットの横滑りを防止できるため、カセットを包埋トレイ上に安定的に載置できる。
【0023】
また、把持部をカセット支承部又は額縁部の周縁部から横設すれば、包埋トレイの運搬の際にこの把持部を持つことができ、またパラフィンブロックから包埋トレイを取り外す際にもこの把持部に指を掛けることができ、包埋トレイを扱いやすくなるので、作業性は大巾に向上する。
【0024】
さらに、パラフィン収容部の形状を左右非対称とすれば、顕微鏡標本を作製したとき、パラフィンの形状で標本の左右が判別できるため、標本の取り違え等の危険性が減少し、検査の信頼性が向上する。
【0025】
さらにまた、脚部をカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設すれば、使用や収納、運搬の際にも脚部が邪魔にならず、多数の包埋トレイを積み重ねても嵩高くならないので、積み重ね性、収納性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の病理検査標本作成用の包埋トレイ(以下、単に包埋トレイと記す)は、底部とその周りに立設された側壁とからなるパラフィン収容部と、該パラフィン収容部の外側に水平に横設されたカセット支承部と、前記カセット支承部の周縁部付近から下方に突設された脚部とからなることを特徴とする。
【0027】
本発明の包埋トレイは液状(溶融)パラフィンに耐える耐熱性素材から作成され、かかる素材としては、ステンレス等の金属、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール等の樹脂等が挙げられる。
【0028】
パラフィン収容部は、底部とその周りに立設された側壁とからなるが、パラフィンブロックから包埋トレイを外しやすくするため、側壁が底部から開口部に向かって末広がりのテーパ状とするのが好ましい。また、パラフィンブロックの角が包埋トレイの側壁に当たると包埋トレイから外しにくくなるので、これを防ぐため底面と側壁の間をアール処理するとより好ましい。
【0029】
パラフィン収容部の大きさは特に限定されず、包埋する検体の大きさに合わせて適宜定めればよい。好ましくは、パラフィン収容部の開口部をカセットの底面よりもやや小さくすると、カセットの底面にパラフィンが付着していない部分が生じ、パラフィンブロックをミクロトームに固定する際にはこの部分に固定用の爪を掛合させることができるため、作業性が改善される。また、パラフィン収容部は小さければ小さいほど必要なパラフィン量が減少し、パラフィンブロックをスライスする手間も省けるため、検体が収容でき、ミクロトームでスライスできる範囲で小さく形成するほうが好ましい。具体的には、パラフィン収容部の底部の面積がカセットの底面積の約5分の3以下程度が好ましく、更に、一辺15mm以下の正方形状又は直径15mm以下程度が更に好ましい。
【0030】
パラフィン収容部の高さは検体のサイズ(高さ)に合わせて適宜定めればよく、特に限定されないが、包埋トレイを冷却プレート上に置いてパラフィン収納部のパラフィンを冷却固化する際の冷却効率の観点から、パラフィン収容部の高さが後述する脚部の高さと略同じかパラフィン収容部の高さが僅かに大きいのが好ましい。特に、パラフィン収容部の高さが脚部の高さと略同じである場合は、包埋トレイを机上に定置したときパラフィン収容部の底部と脚部の下端部はともに机上に接地するため、包埋トレイは脚部とパラフィン収容部の両方の3箇所で支えられ、安定性が増すばかりか、接地面積が大きくなるため横滑りも抑えられる。なお、脚部とパラフィン収容部の高さは厳密に同一である必要はなく、包埋トレイの平衡を保てる程度であればよい。
【0031】
パラフィン収容部の形状は、左右非対称とすることにより、ミクロトームでスライスされた薄片の左右が明確に区別されるので、作業性が高められ、また左右誤認により検体を取り違えるといったトラブルが防止されるので、検査の信頼性が向上する。
左右非対称とする方法は特に限定されないが、例えば、角部のアール半径を変える(大きくする)方法や、角部を三角形状に切り欠いた形状とする方法、側壁を波形にするなどの方法が採用できる。
【0032】
本発明において、パラフィン収容部の外側にはカセット支承部が水平に横設される。カセット支承部の形状、大きさはカセットを載置できる限り特に限定されないが、例えば、パラフィン収容部の開口部全周から横設して全体的にカセットの底面形状と同形にしてもよいし、パラフィン収容部の両脇に二枚の板状部材を設け、その間にカセットを掛け渡して載置するようにしてもよい。
【0033】
パラフィン収容部とカセット支承部の間にはパラフィン副収容部を介設することもできる。該副収容部が設けられた包埋トレイにパラフィンを注入すると、パラフィンはパラフィン収容部と該副収容部の両方に収容されて固化するため、固化したパラフィンは広い範囲でカセット底面に固着して接着力が増大し、薄片作成中などにカセットからパラフィンが外れる事故を防止できる。このパラフィン副収容部はパラフィン収容部を小さくし、カセット底面と固化したパラフィンの接着面積が狭く、即ち、カセットとパラフィンの接着力が小さい包埋トレイに設けると特に好ましい。
なお、ここでいう介設とはパラフィン収容部とパラフィン副収容部がカセット支承部により分断されていない状態を指す。即ち、実質的にパラフィン収容部とパラフィン副収容部が連続して設けられれば足り、パラフィン収容部の全周又は一部のいずれで副収容部と連続していてもよい。
【0034】
カセット支承部の周縁部には額縁部を横設してもよい。この額縁部をカセット支承部と段差をつけて高く設けることにより、カセット支承部との間に段差を生じさせ、この段差によりカセット支承部に載置されたカセットの横滑りを防止することができる。
【0035】
カセット支承部の周縁部(額縁部が設けられている場合は額縁部の周縁部)に把持部を横設してもよい。これにより、この把持部をもって持ち運んだり、パラフィンブロックから包埋トレイを外す際にこの把持部に指を掛けることができるので、包埋トレイは扱いやすくなるとともに作業性が高められる。
【0036】
本発明の包埋トレイでは、これを安定的に載置するための脚部がカセット支承部の下方に突設される。脚部の形状は、カセット支承部が水平になるよう包埋トレイを定置できる限り、特に限定されない。この脚部は包埋トレイをより安定的に定置するためカセット支承部の周縁部付近に設けられるが、ここでいうカセット支承部の周縁部付近とは、額縁部を設ける場合にはこの額縁部を含み、包埋トレイが不安定にならない範囲であれば周縁部より内側であってもよい。製造工程を考慮すると、カセット支承部又は額縁部の端部に連続する板状部材を設け、所定位置から下向きに折り曲げて脚部を形成すると、容易に作成できるためより好ましい。
【0037】
また、脚部はカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設すれば、使用の際には脚部が邪魔にならないので、限られた机上にコンパクトに積み重ね、上の方から順番にトレイを取って作業に供することができる。また、収納や運搬の際にも脚部が邪魔にならないので、限られたスペースに大量の包埋トレイを収納、運搬することができる。即ち、脚部が真下方向に突設されている包埋トレイを積み重ねた場合、上側の包埋トレイの脚部の下端は下側の包埋トレイの周縁部に当接されるため、上側の包埋トレイと下側の包埋トレイの間に無駄なスペースが形成され、極めて嵩高くなってしまうが、脚部がカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設された包埋トレイを積み重ねた場合、上側の包埋トレイの脚部は下側の包埋トレイの脚部の上に積層状に配置されるため、上側の包埋トレイと下側の包埋トレイの間には無駄なスペースが殆ど形成されず、多数の包埋トレイを積み重ねても嵩高くならないので、積み重ね性、収納性が向上する。
【0038】
本発明の包埋トレイでパラフィンブロックを作成するカセットはカセット本体の底面に透孔を有するカセットであれば特に限定はなく、代表的なカセットとして、側面にミクロトームのアダプターを係止するためのアダプター係止部C4を備えたカセット(図21,図26)、斜面状の記録部C5を備えたカセット(図22,図27)及びカセット本体の深さが大きく、アダプター係止部C6を備えたカセット(図23, 図28)が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を図面に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されないことは云うまでもない。
【0040】
実施例1
本実施例の包埋トレイ1は、図1〜図3に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設されたカセット支承部5と、該カセット支承部5とパラフィン収容部2の間に介設されたパラフィン副収容部2aと、カセット支承部5の周縁部から横設された額縁部7と、前記額縁部7の周縁部から下方に突設された脚部6とからなる。
脚部6は額縁部7の短辺側の縁部から延設された板状部材を下向きに折り曲げてなり、その下端角部がアール処理されている。脚部6の高さはパラフィン収容部2の高さと略同じである。
額縁部7はカセット支承部5と段差をつけて高く設けられているため、カセット支承部5にカセットCを載置すると、このカセットCは額縁部7の内部に嵌り込むため、カセットCがカセット支承部5の上で横滑りすることもなく、安定的に載置される。
額縁部7の長片側の縁部には把持部8が横設され、ここを把持して持ち運ぶことができ、更に、パラフィンブロックBから包埋トレイ1を外す際にはこの把持部に指を掛けることもできるため、包埋トレイ1は扱いやすくなっている。
また、パラフィン収容部2の底部3の高さと脚部6の下端の高さは同じであるので、この包埋トレイ1を定置した際にはこの底部3と脚部6はともに接地するため、安定性が特に優れており、横滑りもしにくい。
【0041】
図4は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図4におけるカセットCは図23及び図28に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。
【0042】
本実施例において、包埋トレイ1は平均厚さ0.5mmのステンレス板をプレス加工及び折り曲げ加工して形成されている。パラフィン収容部2の大きさは、開口部が20mm×20mm、底部が12mm×12mm、開口部から底部3までの高さが13mm、底部3から額縁部7までの高さが15mmである。パラフィン副収容部2aの外周の大きさは24mm×28mm、深さが1mmである。カセット支承部5の大きさは載置するカセットの底面と同じ28mm×40mmであり、額縁部7との高低差が1mmである。額縁部7の外周の大きさは32mm×52mmである。脚部6は幅32mm、高さ15mmである。把持部8は上辺22mm、下辺23mm、高さ3mmの台形の角部がアール処理された形状である。本実施例の包埋トレイ1は図24に示す最も一般的な包埋トレイTと比較してパラフィン収容部2が深く、且つ、断面積が小さいため、例えば兎の眼球などのような球形や立方形に近い検体Sを包埋するために好適に使用できる。
【0043】
以下に、実施例1の包埋トレイ1の使用方法を図5乃至図8に基づいて説明する。まず、図5に示すように、パラフィンPをパラフィン収容部2及びパラフィン副収容部2aに注入する。この際には表面張力を利用してパラフィンPが盛り上がるように静かに注入する。次に、図6に示すように、パラフィンPの上にカセットCを載置する。これにより、パラフィンPがカセットCの底面に穿設された透孔C3を通してカセットC内に滲出する。次に、図7に示すように、カセットC内にパラフィンPを注ぎ足し、カセットCの底面全体をパラフィンPで浸漬し、その後室温で放冷する。最後に、図8に示すように、固化したパラフィンPから包埋トレイ1を取り外し、パラフィンブロックBが完成する。
この方法によりパラフィンブロックBを作成すると、パラフィンブロックBの内部に空気が混入しないため気泡が検査の邪魔になることがなく、パラフィンPとカセットCが強固に接着されると共に、額縁部7の上にパラフィンPが盛り上がらないためパラフィンブロックBをミクロトーム上にセットする際に邪魔にならない。
【0044】
実施例2
本実施例の包埋トレイ1は、図9〜図11に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設された左右一対のカセット支承部5と、該カセット支承部5とパラフィン収容部2の間に介設されたパラフィン副収容部2aと、カセット支承部5の周縁部から横設された額縁部7と、前記額縁部7の周縁部から下方に突設された脚部6とからなる。
脚部6は額縁部7の短辺側の縁部から延設された板状部材を下向きに折り曲げてなり、その下端辺中央部が矩形状に切り欠かれ、残部の帯状部で接地するようになっている。
なお、額縁部7とカセット支承部5の段差によりカセットCが安定的に載置される点、及び、パラフィン収容部2の底部3の高さと脚部6の下端の高さが同じである点については、実施例1と同様である。
【0045】
図12は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図12におけるカセットCは図21及び図26に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1を左右2箇所のカセット支承部5の上に掛け渡すように載置して使用する。
【0046】
本実施例において、包埋トレイ1は平均厚さ0.5mmのステンレス板をプレス加工及び折り曲げ加工して形成されている。パラフィン収容部2の大きさは、開口部が18mm×18mm、底部が8mm×8mm、開口部から底部3までの高さが5mm、底部3から額縁部7までの高さが7mmである。パラフィン副収容部2aの大きさは27mm×27mm、深さが1mmである。カセット支承部5,5の大きさはそれぞれ27mm×7mmで、27mmの間隔が空けられており、額縁部7との高低差が1mmである。額縁部7の外周の大きさは32mm×47mmである。脚部6は幅32mm、高さ7mmである。本実施例の包埋トレイ1は図24に示す最も一般的な包埋トレイTと比較してパラフィン収容部2が浅く、且つ、断面積が小さいため、小さな検体Sに対し使用できる。
【0047】
実施例3
本実施例の包埋トレイ1は、図13〜図15に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設されたカセット支承部5と、カセット支承部5の周縁部から横設された額縁部7と、前記額縁部7の周縁部から下方に突設された脚部6とからなる。
パラフィン収容部2は角部の一つ(図14における左下の角部)が斜めに切り欠かれた形状であり、左右非対称であるため、顕微鏡標本を作製したとき、パラフィンの形状で標本の左右が判別できる。
脚部6は額縁部7の短辺側の縁部から延設された板状部材を下向きに折り曲げてなり、その下端辺中央部が半円状に切り欠かれ、残部の帯状部で接地するようになっている。
なお、額縁部7とカセット支承部5の段差によりカセットCが安定的に載置される点、及び、額縁部7の長片側の縁部に横設された把持部8により包埋トレイ1が扱いやすくなっている点、及びパラフィン収容部2の底部3の高さと脚部6の下端の高さが同じである点については、実施例1,2と同様である。
【0048】
図16は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図16におけるカセットCは図22及び図27に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。
【0049】
本実施例において、包埋トレイ1は平均厚さ0.5mmのステンレス板をプレス加工及び折り曲げ加工して形成されている。パラフィン収容部2の大きさは、開口部が29mm×25mmの略矩形から9mm×9mmの略直角三角形を切り欠いた形状、底部が20mm×16mmの略矩形から5mm×5mm略直角三角形を切り欠いた形状、開口部から底部3までの高さが9mm、底部3から額縁部7までの高さが10mmである。カセット支承部5の外周の大きさは40mm×28mmで、額縁部7との高低差が1mmである。額縁部7の外周の大きさは32mm×52mmである。脚部6は幅32mm、高さ10mmである。把持部8は上辺22mm、下辺23mm、高さ3mmの台形の角部がアール処理された形状である。本実施例の包埋トレイ1は図24に示す最も一般的な包埋トレイTと比較してパラフィン収容部2が浅く断面積も小さいが、実施例2のものよりも大きいため、サイズ(巾)の大きい検体Sを包埋でき、また小さな検体Sを2個以上同時に包埋できる。
【0050】
実施例4
本実施例の包埋トレイ1は、図17、図18に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設されたカセット支承部5と、該カセット支承部5とパラフィン収容部2の間に介設されたパラフィン副収容部2aと、カセット支承部5の周縁部から横設された額縁部7と、前記額縁部7の周縁部外縁から外側斜め下方に突設された脚部6とからなる。
脚部6は額縁部7の短辺側の縁部から延設された板状部材を下向きに折り曲げてなるが、その折り曲げ角度は実施例1〜3のような直角ではなく、約60度である。なお、脚部の下端角部はアール処理されている。
額縁部7はカセット支承部5と段差をつけて高く設けられているため、カセット支承部5にカセットCを載置すると、このカセットCは額縁部7の内部に嵌り込むため、カセットCがカセット支承部5の上で横滑りすることもなく、安定的に載置される。
額縁部7の長片側の縁部には把持部8が横設され、ここを把持して持ち運ぶことができ、更に、パラフィンブロックBから包埋トレイ1を外す際にはこの把持部に指を掛けることもできるため、包埋トレイ1は扱いやすくなっている。
また、パラフィン収容部2の底部3の高さと脚部6の下端の高さは同じであるので、この包埋トレイ1を定置した際にはこの底部3と脚部6はともに接地するため、安定性が特に優れており、横滑りもしにくい。
【0051】
図19は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図19におけるカセットCは図23及び図28に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。
【0052】
本実施例において、包埋トレイ1は平均厚さ0.5mmのステンレス板をプレス加工及び折り曲げ加工して形成されている。パラフィン収容部2の大きさは、開口部が20mm×20mm、底部が12mm×12mm、開口部から底部3までの高さが13mm、底部3から額縁部7までの高さが15mmである。パラフィン副収容部2aの外周の大きさは24mm×28mm、深さが1mmである。カセット支承部5の大きさは載置するカセットの底面と同じ28mm×40mmであり、額縁部7との高低差が1mmである。額縁部7の外周の大きさは32mm×52mmである。脚部6は幅32mm×17.3mmの板状部分を下向き約60度に折り曲げて、高さ15mmにしている。把持部8は上辺22mm、下辺23mm、高さ3mmの台形の角部がアール処理された形状である。
【0053】
実施例4の包埋トレイ1は脚部6が外側斜め下方に突設されているため、使用や収納、運搬の際などにもこの脚部が邪魔にならず、図20に示すように積層状に積み重ねることが出来る。この場合、積み重ねられた包埋トレイ1の間には無駄なスペースが形成されないので、多数の包埋トレイ1を効率よく収納することが出来る。
尚、図20ではパラフィン収容部2を下方に向けて積み重ねた例を示し、このように積み重ねると該収容部2に埃が溜まらず好都合であるが、勿論、上下を逆にして積み重ねてもよいことは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
叙上のとおり、本発明の病理組織検査標本作成用の包埋トレイは、カセット支承部の周縁部付近から脚部が突設されており、トレイを机上等に安定的に載置でき、従って、転倒して机上等を汚染したり、貴重な検体を損傷したり台無しにすることもないため、病理組織検査標本を作成する作業性や検査の信頼性が大幅に高められ、その有用性は頗る大である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の包埋トレイの実施例1を示す正面図である。
【図2】実施例1の平面図である。
【図3】実施例1の側面図である。
【図4】実施例1(図2)のA−A断面図である。
【図5】実施例1の包埋トレイを使用方法の説明図である。
【図6】実施例1の包埋トレイを使用方法の説明図である。
【図7】実施例1の包埋トレイを使用方法の説明図である。
【図8】実施例1の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図9】本発明の包埋トレイの実施例2を示す正面図である。
【図10】実施例2の平面図である。
【図11】実施例2の側面図である。
【図12】実施例2(図10)のB−B断面図である。
【図13】本発明の包埋トレイの実施例3を示す正面図である。
【図14】実施例3の平面図である。
【図15】実施例3の側面図である。
【図16】実施例3(図14)のC−C断面図である。
【図17】本発明の包埋トレイの実施例4を示す正面図である。
【図18】実施例4の平面図である。
【図19】実施例4(図18)のD−D断面図である。
【図20】実施例4の包埋トレイを積み重ねた状態を示す断面図である。
【図21】本発明の包埋トレイと共に使用するカセットの例を示す斜視図である。
【図22】カセットの他の例を示す斜視図である。
【図23】カセットの更に他の例を示す斜視図である。
【図24】従来の包埋トレイの例を示す斜視図である。
【図25】従来の包埋トレイの他の例を示す斜視図である。
【図26】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図27】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図28】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図29】従来の顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
【図30】従来の顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 包埋トレイ
2 パラフィン収容部
2a パラフィン副収容部
3 底部
4 側壁
5 カセット支承部
6 脚部
7 額縁部
8 把持部
C カセット
C1 本体
C2 蓋
C3 透孔
C4、C6 アダプター係止部
C5 記録部
P パラフィン
S 検体
T 従来のトレイ
T1 パラフィン収容部
T2 カセット支承部
T3 額縁部
T4 把持部
B パラフィンブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関し、更に詳しくは、包埋トレイのパラフィン収容部の底面積が小さい場合でも安定で、作業性が良く且つ取り扱いやすい病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の病理組織検査標本作成用の包埋トレイとしては、図24,図25に示したようなものが多用されている。この包埋トレイTはパラフィン収容部T1と、その周縁に水平状に設けられたカセットを載置するためのカセット支承部T2と、その周縁に段差をつけて高く水平状に設けられた額縁部T3となり、更に、長手方向の額縁部T3の略中央部に横設された把持部T4とから構成されている。
【0003】
また、近年では、方形の容器からなるパラフィン収容部とその周縁に設けられたパラフィンブロック付着体の載置部とからなり、前記載置部が少なくとも2個設けられており、サイズの異なる2種類以上のカセット等に対応できる病理組織検査標本作成用トレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記病理組織検査標本作成用トレイを使用して顕微鏡標本を作製するには、図26〜図28に示すように、まず、カセット本体C1内に採取した検体Sを収容して蓋C2を取り付けておく。次いで、カセット本体C1の底部や蓋C2に穿設された透孔C3からホルマリンを流入させて検体Sを固定処理し、次いでアルコールにより検体Sの水分を除去し、キシレンにより後述する液状パラフィンとの親和性を付与する。
【0005】
次に、図29に示すとおり、検体SをトレイTに移して該トレイTのカセット支承部T2にカセット本体C1の底部を載せ、上方からパラフィンPを注入する。次いで、パラフィンPを冷却固化させた後、トレイTを取り除くことにより、図30に示したように、検体Sを包埋したパラフィンPがカセット本体C1の底部に付着してなるパラフィンブロックBを得る。その後、ミクロトームでパラフィンに包埋された検体Sをスライスして薄片を得て、これに染色等の所定の処理を施すことにより顕微鏡標本を得るのである。
【0006】
しかしながら、この種のトレイはパラフィンブロックから取り外しやすいように、パラフィン収容部の側壁がテーパ状にされ底面が小さくなっているため、例えば、机上に載置する際も不安定になっている。また、この種のトレイは、パラフィンブロックから更に外し易くするために底面と側壁の間がアール処理されることがあるが、この場合、机上での安定性が更に悪くなる。これに加え、パラフィンブロックをミクロトームに固定する際に固定用の爪をカセットの裏面に掛合させるが、パラフィンがこの掛合の邪魔にならないようパラフィン収容部をカセットの裏面より若干小さく形成することがあり、この場合も机上での安定性が悪化する。
このため、例えば、パラフィンブロックの作成中にトレイに手などが当たったりすると、その拍子にこのトレイ及び載置したカセットが転倒して、パラフィンで机上が汚されてしまうばかりか、貴重な検体が汚染されたり台無しになり検査の信頼性が大きく損なわれてしまう。
【0007】
一方、この種のトレイを使用した場合、検体の大きさに関わらず出来上がるパラフィンブロックの大きさは概ね一定である。これは、既存のミクロトームにセットしてスライスできるようにするためである。従って、大きなトレイに小さな検体を入れた場合には検体と比較して大きすぎるパラフィンブロックが形成されてしまい、無駄なパラフィンを使用し材料費が高価になるばかりでなく、これをスライスして薄片を得る場合でも余分なパラフィン部分をスライスすることになり、非効率的である。
このような不都合を回避するために、パラフィン収容部の大きさが異なる数種のトレイを用意し、検体の大きさにあわせて適切なトレイを選択して使用する。しかしながら、使用する道具の数を減らして道具の管理等を容易にする観点からカセットの大きさは一定の方が好ましく、このためトレイのカセット支承部はこのカセットを載置できる大きさとされ、その結果、パラフィン収容部が小さなトレイは上部が大きく下部が小さい逆三角形状となってしまい、非常に不安定になる(図25)。
【特許文献1】特開2006−300745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、かかる実情に鑑み、上記問題点を解消するべく鋭意研究の結果、カセット支承部の周縁部付近から脚部を突設することにより、トレイを安定的に机上等に載置でき、トレイが転倒してパラフィンで机上が汚されるといったトラブルもなく効率的且つ衛生的に作業を行うことができるばかりでなく、貴重な検体を損なうことなく有効に活用でき検査の信頼性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1は、底部とその周りに立設された側壁とからなるパラフィン収容部と、該パラフィン収容部の外側に水平に横設されたカセット支承部と、前記カセット支承部の周縁部付近から下方に突設された脚部とからなることを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0010】
本発明の請求項2は、パラフィン収容部の底部の面積はカセットの底面積の5分の3以下であることを特徴とする請求項1記載の病理組織検査標本用の包埋トレイを内容とする。
【0011】
本発明の請求項3は、パラフィン収容部の底部は一辺15mm以下の正方形状又は直径15mm以下の円形状であることを特徴とする請求項2記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0012】
本発明の請求項4は、パラフィン収容部の高さが脚部の高さと略同じか僅かに大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0013】
本発明の請求項5は、カセット支承部とパラフィン収容部の間にパラフィンをカセット底面に付着させるためのパラフィン副収容部が介設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0014】
本発明の請求項6は、カセット支承部の周縁部から額縁部が横設され、該額縁部はカセット支承部と段差をつけて高く設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0015】
本発明の請求項7は、把持部が、カセット支承部又は額縁部の周縁部から横設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0016】
本発明の請求項8は、パラフィン収容部の形状が左右非対称であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0017】
本発明の請求項9は、脚部はカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の病理検査標本作成用の包埋トレイは、脚部がカセット支承部の周縁部付近から下方に突設されているので、机上に安定的に載置でき、例えば、パラフィンブロック作成中に手がトレイに当たったとしてもこのトレイ及びカセットが転倒したりせず、従って机上を汚したり貴重な検体を損傷したり台無しにして検査の信頼性を損なう恐れもない。
【0019】
さらに、パラフィン収容部の底部の面積がカセットの底面積の5分の3以下程度である不安定なトレイに特に好適であり、上記の効果に加え、検体を包埋するためのパラフィンが少なく材料費が安価で済み、またこれをスライスする手間も軽減される。この効果はパラフィン収容部の底部が一辺が15mm以下程度の正方形状又は直径が15mm以下程度の円形状であるときに特に顕著であり、トレイの安定性並びにパラフィン量及び手間の低減を両立させることができる。
【0020】
パラフィン収容部の高さが脚部の高さと略同じか僅かに大きいと、包埋トレイはパラフィン収容部及び脚部の両方の3箇所で支えられることになり、より安定的に包埋トレイを定置できるため、トレイの不安定性に因るトラブルが一層防止でき、より作業性が高められるとともに、衛生的で、信頼性の高い検査が可能となる。また、包埋トレイを冷却プレート上に置いてパラフィン収容部のパラフィンを冷却固化させる場合には、パラフィン収容部が冷却プレートに接するため、冷却効率が良好である。
【0021】
カセット支承部とパラフィン収容部の間にパラフィン副収容部を介設すると、パラフィンはパラフィン収容部とパラフィン副収容部の両方に収容されて固化するため、固化したパラフィンとカセット底面は広い範囲で固着し、このためカセットとパラフィンの間の接着力が増し、パラフィンブロックをスライスする最中にパラフィンがカセット底面から外れるといったトラブルが一層効果的に防止される。
【0022】
カセット支承部の周縁部に額縁部を、カセット支承部と段差をつけて高く横設すると、カセットの下部を額縁部内に嵌入させることによりカセットの横滑りを防止できるため、カセットを包埋トレイ上に安定的に載置できる。
【0023】
また、把持部をカセット支承部又は額縁部の周縁部から横設すれば、包埋トレイの運搬の際にこの把持部を持つことができ、またパラフィンブロックから包埋トレイを取り外す際にもこの把持部に指を掛けることができ、包埋トレイを扱いやすくなるので、作業性は大巾に向上する。
【0024】
さらに、パラフィン収容部の形状を左右非対称とすれば、顕微鏡標本を作製したとき、パラフィンの形状で標本の左右が判別できるため、標本の取り違え等の危険性が減少し、検査の信頼性が向上する。
【0025】
さらにまた、脚部をカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設すれば、使用や収納、運搬の際にも脚部が邪魔にならず、多数の包埋トレイを積み重ねても嵩高くならないので、積み重ね性、収納性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の病理検査標本作成用の包埋トレイ(以下、単に包埋トレイと記す)は、底部とその周りに立設された側壁とからなるパラフィン収容部と、該パラフィン収容部の外側に水平に横設されたカセット支承部と、前記カセット支承部の周縁部付近から下方に突設された脚部とからなることを特徴とする。
【0027】
本発明の包埋トレイは液状(溶融)パラフィンに耐える耐熱性素材から作成され、かかる素材としては、ステンレス等の金属、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール等の樹脂等が挙げられる。
【0028】
パラフィン収容部は、底部とその周りに立設された側壁とからなるが、パラフィンブロックから包埋トレイを外しやすくするため、側壁が底部から開口部に向かって末広がりのテーパ状とするのが好ましい。また、パラフィンブロックの角が包埋トレイの側壁に当たると包埋トレイから外しにくくなるので、これを防ぐため底面と側壁の間をアール処理するとより好ましい。
【0029】
パラフィン収容部の大きさは特に限定されず、包埋する検体の大きさに合わせて適宜定めればよい。好ましくは、パラフィン収容部の開口部をカセットの底面よりもやや小さくすると、カセットの底面にパラフィンが付着していない部分が生じ、パラフィンブロックをミクロトームに固定する際にはこの部分に固定用の爪を掛合させることができるため、作業性が改善される。また、パラフィン収容部は小さければ小さいほど必要なパラフィン量が減少し、パラフィンブロックをスライスする手間も省けるため、検体が収容でき、ミクロトームでスライスできる範囲で小さく形成するほうが好ましい。具体的には、パラフィン収容部の底部の面積がカセットの底面積の約5分の3以下程度が好ましく、更に、一辺15mm以下の正方形状又は直径15mm以下程度が更に好ましい。
【0030】
パラフィン収容部の高さは検体のサイズ(高さ)に合わせて適宜定めればよく、特に限定されないが、包埋トレイを冷却プレート上に置いてパラフィン収納部のパラフィンを冷却固化する際の冷却効率の観点から、パラフィン収容部の高さが後述する脚部の高さと略同じかパラフィン収容部の高さが僅かに大きいのが好ましい。特に、パラフィン収容部の高さが脚部の高さと略同じである場合は、包埋トレイを机上に定置したときパラフィン収容部の底部と脚部の下端部はともに机上に接地するため、包埋トレイは脚部とパラフィン収容部の両方の3箇所で支えられ、安定性が増すばかりか、接地面積が大きくなるため横滑りも抑えられる。なお、脚部とパラフィン収容部の高さは厳密に同一である必要はなく、包埋トレイの平衡を保てる程度であればよい。
【0031】
パラフィン収容部の形状は、左右非対称とすることにより、ミクロトームでスライスされた薄片の左右が明確に区別されるので、作業性が高められ、また左右誤認により検体を取り違えるといったトラブルが防止されるので、検査の信頼性が向上する。
左右非対称とする方法は特に限定されないが、例えば、角部のアール半径を変える(大きくする)方法や、角部を三角形状に切り欠いた形状とする方法、側壁を波形にするなどの方法が採用できる。
【0032】
本発明において、パラフィン収容部の外側にはカセット支承部が水平に横設される。カセット支承部の形状、大きさはカセットを載置できる限り特に限定されないが、例えば、パラフィン収容部の開口部全周から横設して全体的にカセットの底面形状と同形にしてもよいし、パラフィン収容部の両脇に二枚の板状部材を設け、その間にカセットを掛け渡して載置するようにしてもよい。
【0033】
パラフィン収容部とカセット支承部の間にはパラフィン副収容部を介設することもできる。該副収容部が設けられた包埋トレイにパラフィンを注入すると、パラフィンはパラフィン収容部と該副収容部の両方に収容されて固化するため、固化したパラフィンは広い範囲でカセット底面に固着して接着力が増大し、薄片作成中などにカセットからパラフィンが外れる事故を防止できる。このパラフィン副収容部はパラフィン収容部を小さくし、カセット底面と固化したパラフィンの接着面積が狭く、即ち、カセットとパラフィンの接着力が小さい包埋トレイに設けると特に好ましい。
なお、ここでいう介設とはパラフィン収容部とパラフィン副収容部がカセット支承部により分断されていない状態を指す。即ち、実質的にパラフィン収容部とパラフィン副収容部が連続して設けられれば足り、パラフィン収容部の全周又は一部のいずれで副収容部と連続していてもよい。
【0034】
カセット支承部の周縁部には額縁部を横設してもよい。この額縁部をカセット支承部と段差をつけて高く設けることにより、カセット支承部との間に段差を生じさせ、この段差によりカセット支承部に載置されたカセットの横滑りを防止することができる。
【0035】
カセット支承部の周縁部(額縁部が設けられている場合は額縁部の周縁部)に把持部を横設してもよい。これにより、この把持部をもって持ち運んだり、パラフィンブロックから包埋トレイを外す際にこの把持部に指を掛けることができるので、包埋トレイは扱いやすくなるとともに作業性が高められる。
【0036】
本発明の包埋トレイでは、これを安定的に載置するための脚部がカセット支承部の下方に突設される。脚部の形状は、カセット支承部が水平になるよう包埋トレイを定置できる限り、特に限定されない。この脚部は包埋トレイをより安定的に定置するためカセット支承部の周縁部付近に設けられるが、ここでいうカセット支承部の周縁部付近とは、額縁部を設ける場合にはこの額縁部を含み、包埋トレイが不安定にならない範囲であれば周縁部より内側であってもよい。製造工程を考慮すると、カセット支承部又は額縁部の端部に連続する板状部材を設け、所定位置から下向きに折り曲げて脚部を形成すると、容易に作成できるためより好ましい。
【0037】
また、脚部はカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設すれば、使用の際には脚部が邪魔にならないので、限られた机上にコンパクトに積み重ね、上の方から順番にトレイを取って作業に供することができる。また、収納や運搬の際にも脚部が邪魔にならないので、限られたスペースに大量の包埋トレイを収納、運搬することができる。即ち、脚部が真下方向に突設されている包埋トレイを積み重ねた場合、上側の包埋トレイの脚部の下端は下側の包埋トレイの周縁部に当接されるため、上側の包埋トレイと下側の包埋トレイの間に無駄なスペースが形成され、極めて嵩高くなってしまうが、脚部がカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設された包埋トレイを積み重ねた場合、上側の包埋トレイの脚部は下側の包埋トレイの脚部の上に積層状に配置されるため、上側の包埋トレイと下側の包埋トレイの間には無駄なスペースが殆ど形成されず、多数の包埋トレイを積み重ねても嵩高くならないので、積み重ね性、収納性が向上する。
【0038】
本発明の包埋トレイでパラフィンブロックを作成するカセットはカセット本体の底面に透孔を有するカセットであれば特に限定はなく、代表的なカセットとして、側面にミクロトームのアダプターを係止するためのアダプター係止部C4を備えたカセット(図21,図26)、斜面状の記録部C5を備えたカセット(図22,図27)及びカセット本体の深さが大きく、アダプター係止部C6を備えたカセット(図23, 図28)が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を図面に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されないことは云うまでもない。
【0040】
実施例1
本実施例の包埋トレイ1は、図1〜図3に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設されたカセット支承部5と、該カセット支承部5とパラフィン収容部2の間に介設されたパラフィン副収容部2aと、カセット支承部5の周縁部から横設された額縁部7と、前記額縁部7の周縁部から下方に突設された脚部6とからなる。
脚部6は額縁部7の短辺側の縁部から延設された板状部材を下向きに折り曲げてなり、その下端角部がアール処理されている。脚部6の高さはパラフィン収容部2の高さと略同じである。
額縁部7はカセット支承部5と段差をつけて高く設けられているため、カセット支承部5にカセットCを載置すると、このカセットCは額縁部7の内部に嵌り込むため、カセットCがカセット支承部5の上で横滑りすることもなく、安定的に載置される。
額縁部7の長片側の縁部には把持部8が横設され、ここを把持して持ち運ぶことができ、更に、パラフィンブロックBから包埋トレイ1を外す際にはこの把持部に指を掛けることもできるため、包埋トレイ1は扱いやすくなっている。
また、パラフィン収容部2の底部3の高さと脚部6の下端の高さは同じであるので、この包埋トレイ1を定置した際にはこの底部3と脚部6はともに接地するため、安定性が特に優れており、横滑りもしにくい。
【0041】
図4は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図4におけるカセットCは図23及び図28に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。
【0042】
本実施例において、包埋トレイ1は平均厚さ0.5mmのステンレス板をプレス加工及び折り曲げ加工して形成されている。パラフィン収容部2の大きさは、開口部が20mm×20mm、底部が12mm×12mm、開口部から底部3までの高さが13mm、底部3から額縁部7までの高さが15mmである。パラフィン副収容部2aの外周の大きさは24mm×28mm、深さが1mmである。カセット支承部5の大きさは載置するカセットの底面と同じ28mm×40mmであり、額縁部7との高低差が1mmである。額縁部7の外周の大きさは32mm×52mmである。脚部6は幅32mm、高さ15mmである。把持部8は上辺22mm、下辺23mm、高さ3mmの台形の角部がアール処理された形状である。本実施例の包埋トレイ1は図24に示す最も一般的な包埋トレイTと比較してパラフィン収容部2が深く、且つ、断面積が小さいため、例えば兎の眼球などのような球形や立方形に近い検体Sを包埋するために好適に使用できる。
【0043】
以下に、実施例1の包埋トレイ1の使用方法を図5乃至図8に基づいて説明する。まず、図5に示すように、パラフィンPをパラフィン収容部2及びパラフィン副収容部2aに注入する。この際には表面張力を利用してパラフィンPが盛り上がるように静かに注入する。次に、図6に示すように、パラフィンPの上にカセットCを載置する。これにより、パラフィンPがカセットCの底面に穿設された透孔C3を通してカセットC内に滲出する。次に、図7に示すように、カセットC内にパラフィンPを注ぎ足し、カセットCの底面全体をパラフィンPで浸漬し、その後室温で放冷する。最後に、図8に示すように、固化したパラフィンPから包埋トレイ1を取り外し、パラフィンブロックBが完成する。
この方法によりパラフィンブロックBを作成すると、パラフィンブロックBの内部に空気が混入しないため気泡が検査の邪魔になることがなく、パラフィンPとカセットCが強固に接着されると共に、額縁部7の上にパラフィンPが盛り上がらないためパラフィンブロックBをミクロトーム上にセットする際に邪魔にならない。
【0044】
実施例2
本実施例の包埋トレイ1は、図9〜図11に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設された左右一対のカセット支承部5と、該カセット支承部5とパラフィン収容部2の間に介設されたパラフィン副収容部2aと、カセット支承部5の周縁部から横設された額縁部7と、前記額縁部7の周縁部から下方に突設された脚部6とからなる。
脚部6は額縁部7の短辺側の縁部から延設された板状部材を下向きに折り曲げてなり、その下端辺中央部が矩形状に切り欠かれ、残部の帯状部で接地するようになっている。
なお、額縁部7とカセット支承部5の段差によりカセットCが安定的に載置される点、及び、パラフィン収容部2の底部3の高さと脚部6の下端の高さが同じである点については、実施例1と同様である。
【0045】
図12は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図12におけるカセットCは図21及び図26に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1を左右2箇所のカセット支承部5の上に掛け渡すように載置して使用する。
【0046】
本実施例において、包埋トレイ1は平均厚さ0.5mmのステンレス板をプレス加工及び折り曲げ加工して形成されている。パラフィン収容部2の大きさは、開口部が18mm×18mm、底部が8mm×8mm、開口部から底部3までの高さが5mm、底部3から額縁部7までの高さが7mmである。パラフィン副収容部2aの大きさは27mm×27mm、深さが1mmである。カセット支承部5,5の大きさはそれぞれ27mm×7mmで、27mmの間隔が空けられており、額縁部7との高低差が1mmである。額縁部7の外周の大きさは32mm×47mmである。脚部6は幅32mm、高さ7mmである。本実施例の包埋トレイ1は図24に示す最も一般的な包埋トレイTと比較してパラフィン収容部2が浅く、且つ、断面積が小さいため、小さな検体Sに対し使用できる。
【0047】
実施例3
本実施例の包埋トレイ1は、図13〜図15に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設されたカセット支承部5と、カセット支承部5の周縁部から横設された額縁部7と、前記額縁部7の周縁部から下方に突設された脚部6とからなる。
パラフィン収容部2は角部の一つ(図14における左下の角部)が斜めに切り欠かれた形状であり、左右非対称であるため、顕微鏡標本を作製したとき、パラフィンの形状で標本の左右が判別できる。
脚部6は額縁部7の短辺側の縁部から延設された板状部材を下向きに折り曲げてなり、その下端辺中央部が半円状に切り欠かれ、残部の帯状部で接地するようになっている。
なお、額縁部7とカセット支承部5の段差によりカセットCが安定的に載置される点、及び、額縁部7の長片側の縁部に横設された把持部8により包埋トレイ1が扱いやすくなっている点、及びパラフィン収容部2の底部3の高さと脚部6の下端の高さが同じである点については、実施例1,2と同様である。
【0048】
図16は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図16におけるカセットCは図22及び図27に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。
【0049】
本実施例において、包埋トレイ1は平均厚さ0.5mmのステンレス板をプレス加工及び折り曲げ加工して形成されている。パラフィン収容部2の大きさは、開口部が29mm×25mmの略矩形から9mm×9mmの略直角三角形を切り欠いた形状、底部が20mm×16mmの略矩形から5mm×5mm略直角三角形を切り欠いた形状、開口部から底部3までの高さが9mm、底部3から額縁部7までの高さが10mmである。カセット支承部5の外周の大きさは40mm×28mmで、額縁部7との高低差が1mmである。額縁部7の外周の大きさは32mm×52mmである。脚部6は幅32mm、高さ10mmである。把持部8は上辺22mm、下辺23mm、高さ3mmの台形の角部がアール処理された形状である。本実施例の包埋トレイ1は図24に示す最も一般的な包埋トレイTと比較してパラフィン収容部2が浅く断面積も小さいが、実施例2のものよりも大きいため、サイズ(巾)の大きい検体Sを包埋でき、また小さな検体Sを2個以上同時に包埋できる。
【0050】
実施例4
本実施例の包埋トレイ1は、図17、図18に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該パラフィン収容部2の外側に水平に横設されたカセット支承部5と、該カセット支承部5とパラフィン収容部2の間に介設されたパラフィン副収容部2aと、カセット支承部5の周縁部から横設された額縁部7と、前記額縁部7の周縁部外縁から外側斜め下方に突設された脚部6とからなる。
脚部6は額縁部7の短辺側の縁部から延設された板状部材を下向きに折り曲げてなるが、その折り曲げ角度は実施例1〜3のような直角ではなく、約60度である。なお、脚部の下端角部はアール処理されている。
額縁部7はカセット支承部5と段差をつけて高く設けられているため、カセット支承部5にカセットCを載置すると、このカセットCは額縁部7の内部に嵌り込むため、カセットCがカセット支承部5の上で横滑りすることもなく、安定的に載置される。
額縁部7の長片側の縁部には把持部8が横設され、ここを把持して持ち運ぶことができ、更に、パラフィンブロックBから包埋トレイ1を外す際にはこの把持部に指を掛けることもできるため、包埋トレイ1は扱いやすくなっている。
また、パラフィン収容部2の底部3の高さと脚部6の下端の高さは同じであるので、この包埋トレイ1を定置した際にはこの底部3と脚部6はともに接地するため、安定性が特に優れており、横滑りもしにくい。
【0051】
図19は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図19におけるカセットCは図23及び図28に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。
【0052】
本実施例において、包埋トレイ1は平均厚さ0.5mmのステンレス板をプレス加工及び折り曲げ加工して形成されている。パラフィン収容部2の大きさは、開口部が20mm×20mm、底部が12mm×12mm、開口部から底部3までの高さが13mm、底部3から額縁部7までの高さが15mmである。パラフィン副収容部2aの外周の大きさは24mm×28mm、深さが1mmである。カセット支承部5の大きさは載置するカセットの底面と同じ28mm×40mmであり、額縁部7との高低差が1mmである。額縁部7の外周の大きさは32mm×52mmである。脚部6は幅32mm×17.3mmの板状部分を下向き約60度に折り曲げて、高さ15mmにしている。把持部8は上辺22mm、下辺23mm、高さ3mmの台形の角部がアール処理された形状である。
【0053】
実施例4の包埋トレイ1は脚部6が外側斜め下方に突設されているため、使用や収納、運搬の際などにもこの脚部が邪魔にならず、図20に示すように積層状に積み重ねることが出来る。この場合、積み重ねられた包埋トレイ1の間には無駄なスペースが形成されないので、多数の包埋トレイ1を効率よく収納することが出来る。
尚、図20ではパラフィン収容部2を下方に向けて積み重ねた例を示し、このように積み重ねると該収容部2に埃が溜まらず好都合であるが、勿論、上下を逆にして積み重ねてもよいことは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
叙上のとおり、本発明の病理組織検査標本作成用の包埋トレイは、カセット支承部の周縁部付近から脚部が突設されており、トレイを机上等に安定的に載置でき、従って、転倒して机上等を汚染したり、貴重な検体を損傷したり台無しにすることもないため、病理組織検査標本を作成する作業性や検査の信頼性が大幅に高められ、その有用性は頗る大である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の包埋トレイの実施例1を示す正面図である。
【図2】実施例1の平面図である。
【図3】実施例1の側面図である。
【図4】実施例1(図2)のA−A断面図である。
【図5】実施例1の包埋トレイを使用方法の説明図である。
【図6】実施例1の包埋トレイを使用方法の説明図である。
【図7】実施例1の包埋トレイを使用方法の説明図である。
【図8】実施例1の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図9】本発明の包埋トレイの実施例2を示す正面図である。
【図10】実施例2の平面図である。
【図11】実施例2の側面図である。
【図12】実施例2(図10)のB−B断面図である。
【図13】本発明の包埋トレイの実施例3を示す正面図である。
【図14】実施例3の平面図である。
【図15】実施例3の側面図である。
【図16】実施例3(図14)のC−C断面図である。
【図17】本発明の包埋トレイの実施例4を示す正面図である。
【図18】実施例4の平面図である。
【図19】実施例4(図18)のD−D断面図である。
【図20】実施例4の包埋トレイを積み重ねた状態を示す断面図である。
【図21】本発明の包埋トレイと共に使用するカセットの例を示す斜視図である。
【図22】カセットの他の例を示す斜視図である。
【図23】カセットの更に他の例を示す斜視図である。
【図24】従来の包埋トレイの例を示す斜視図である。
【図25】従来の包埋トレイの他の例を示す斜視図である。
【図26】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図27】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図28】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図29】従来の顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
【図30】従来の顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 包埋トレイ
2 パラフィン収容部
2a パラフィン副収容部
3 底部
4 側壁
5 カセット支承部
6 脚部
7 額縁部
8 把持部
C カセット
C1 本体
C2 蓋
C3 透孔
C4、C6 アダプター係止部
C5 記録部
P パラフィン
S 検体
T 従来のトレイ
T1 パラフィン収容部
T2 カセット支承部
T3 額縁部
T4 把持部
B パラフィンブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部とその周りに立設された側壁とからなるパラフィン収容部と、該パラフィン収容部の外側に水平に横設されたカセット支承部と、前記カセット支承部の周縁部付近から下方に突設された脚部とからなることを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項2】
パラフィン収容部の底部の面積はカセットの底面積の5分の3以下であることを特徴とする請求項1記載の病理組織検査標本用の包埋トレイ。
【請求項3】
パラフィン収容部の底部は一辺15mm以下の正方形状又は直径15mm以下の円形状であることを特徴とする請求項2記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項4】
パラフィン収容部の高さが脚部の高さと略同じか僅かに大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項5】
カセット支承部とパラフィン収容部の間にパラフィンをカセット底面に付着させるためのパラフィン副収容部が介設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項6】
カセット支承部の周縁部から額縁部が横設され、該額縁部はカセット支承部と段差をつけて高く設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項7】
把持部が、カセット支承部又は額縁部の周縁部から横設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項8】
パラフィン収容部の形状が左右非対称であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項9】
脚部はカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項1】
底部とその周りに立設された側壁とからなるパラフィン収容部と、該パラフィン収容部の外側に水平に横設されたカセット支承部と、前記カセット支承部の周縁部付近から下方に突設された脚部とからなることを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項2】
パラフィン収容部の底部の面積はカセットの底面積の5分の3以下であることを特徴とする請求項1記載の病理組織検査標本用の包埋トレイ。
【請求項3】
パラフィン収容部の底部は一辺15mm以下の正方形状又は直径15mm以下の円形状であることを特徴とする請求項2記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項4】
パラフィン収容部の高さが脚部の高さと略同じか僅かに大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項5】
カセット支承部とパラフィン収容部の間にパラフィンをカセット底面に付着させるためのパラフィン副収容部が介設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項6】
カセット支承部の周縁部から額縁部が横設され、該額縁部はカセット支承部と段差をつけて高く設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項7】
把持部が、カセット支承部又は額縁部の周縁部から横設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項8】
パラフィン収容部の形状が左右非対称であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項9】
脚部はカセット支承部の周縁部外縁から外側斜め下方に突設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2008−216235(P2008−216235A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195533(P2007−195533)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
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