説明

瘻孔造設術用拡張器

【解決課題】 手術時間の短縮ができ且つ処理具の部品点数を削減できる瘻孔長測定器を提供すること。
【解決手段】 胴体部に目盛を有することを特徴とする瘻孔造設術用拡張器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃瘻の造設術に用いられる瘻孔造設術用拡張器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、栄養又は薬液等を経口的に摂取できない患者に対して、患者の腹部に経皮的内視鏡下胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrost
omy、以下、PEGと略す。)により胃瘻を造設し、該胃瘻から栄養又は薬液等を投与
する経腸栄養管理が頻繁に行われるようになってきた。
【0003】
該PEGは、腹壁及び胃壁に瘻孔を開け、該瘻孔に、体内留置部材、チューブ部材及び体外留置部材からなるカテーテルを挿入し、該カテーテルを腹部に留置することにより、胃瘻を造設する手術方法であり、胃内に内視鏡を挿入しながら、(1)腹壁と胃壁とを固定する工程、(2)腹壁及び胃壁に穿刺針を刺し、貫通孔を形成する工程、(3)貫通孔にガイドワイヤを挿入する工程、(4)ガイドワイヤに沿って、瘻孔造設術用拡張器を貫通孔に挿入し、貫通孔の径を拡張して瘻孔を形成する工程、(5)瘻孔長を測定する工程、(6)ガイドワイヤに沿って、カテーテルを瘻孔に挿入する工程、(7)ガイドワイヤを抜去する工程からなる。なお、本発明において、貫通孔とは、瘻孔造設術用拡張器で、拡張される前又は拡張中の孔を指し、一方、瘻孔とは、瘻孔造設術用拡張器で拡張された後の孔を指す。
【0004】
該(5)瘻孔長を測定する工程は、造設された瘻孔の長さに合ったカテーテルを選択するために、瘻孔長、すなわち、腹壁及び胃壁の厚みの合計を測定する工程である。該PEGにおいて、胃壁と腹壁とが密着するような適切な長さのチューブ部材を有するカテーテルを選択する必要がある。チューブ部材の長さが、胃壁および腹壁の厚さよりも短いカテーテルを装着した場合、カテーテルに付属された栄養剤通路が胃内へ挿通されていないため、その後に実施される栄養剤、薬剤が胃内へ正確に注入されず、腹膜炎を引き起こす場合がある。一方、チューブ部材の長さが、胃壁および腹壁の厚さよりも長いカテーテルを装着した場合、体外に出ているチューブ部材に、割りガーゼ等を挟み込んで、カテーテルを固定することができるが、極めて長いカテーテルを装着してしまった場合には、体外に突出する部分が多くなり、患者の生活に支障を与えてしまう場合がある。従って、瘻孔長を予め測定し、チューブ部材の長さが適切なカテーテルを選択する必要がある。
【0005】
従来より用いられていた瘻孔長測定器を、図4及び図5を用いて示す。図4は、自由状態の従来の瘻孔長測定器を示し、図5は、瘻孔長の測定時の従来の瘻孔長測定器を示す。図4中、瘻孔長測定器30は、目盛31が印字されているアウターチューブ32、該アウターチューブ内を自由に摺動するインナーシャフト33、一端が該アウターチューブ32の体外側末端34と、他端が該インナーシャフト33の体外側末端35と接合しており、自由状態では屈曲した形状を有するアーム部材36、及び一端のみが該インナーシャフト33の体内側末端37と接合しており、自由状態では該インナーシャフト33に沿って閉じている突出部38からなる。
【0006】
従来、瘻孔長の測定は、以下のようにして行われていた。先ず、瘻孔造設術用拡張器で貫通孔を拡張して形成された瘻孔に、該瘻孔長測定器30を、該突出部38が閉じた状態で挿入する。次いで、図5に示すように、該アーム部材36に外力39を加えて、該アーム部材36を、略直線形状に変形させる。この時、該インナーシャフト33が、該アウターチューブ32内を体外側に向かって移動することにより、該突出部38が開く。次いで、該突出部38が開かれた状態で、該瘻孔長測定器30を体外側に引張り、該突出部38を胃壁の内側40に接触させ、該目盛31で、瘻孔長を測定する。つまり、従来の瘻孔長測定器30は、該突出部38を胃内壁に接触させることにより、目盛の基点(ゼロ点)を、胃壁の内側に合わせ、瘻孔長の測定を行う器具である。
【0007】
例えば、特許文献1の米国特許第6,764,453号公報に開示されている瘻孔長測定器、及び特許文献2の米国5,356,382号公報に開示されている瘻孔長測定器のいずれも、上述したように、自由状態では閉じている突出部を、胃内に挿入後、胃内で開き、開いた突出部と胃壁の内側を接触させることにより、目盛の基点を胃壁の内側に合わせるものである。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,764,453号公報
【特許文献2】米国特許第5,356,382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記の瘻孔長測定器は、複数の部品で構成されるため、成形、組立の工程が煩雑であり、高価なものであった。そして、瘻孔造設術用拡張器で貫通孔を拡張して瘻孔を形成させた後、該瘻孔造設術用拡張器を引き抜き、別の器具である瘻孔長測定器を挿入して、該(5)瘻孔長を測定する工程を行う必要があるため、手術時間が長くなること及び処置具の部品点数が多くなるという問題があった。
【0010】
従って、本発明の課題は、手術時間の短縮ができ且つ処理具の部品点数を削減できる瘻孔長測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、瘻孔造設術用拡張器の胴体部に目盛を付することにより、該瘻孔造設術用拡張器が、瘻孔長測定器を兼ねることができるので、手術時間の短縮及び処理具の部品点数の削減が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、胴体部に目盛を有する瘻孔造設術用拡張器を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の瘻孔造設術用拡張器によれば、瘻孔造設術の手術時間の短縮且つ処理具の部品点数の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態例の瘻孔造設術用拡張器の模式図を示す。
【図2】大径部材先端部5の先端12(小径部材先端部9の先端16)の端面拡大図である。
【図3】瘻孔長測定工程を説明する模式図である。
【図4】自由状態の従来の瘻孔長測定器を示す。
【図5】瘻孔長の測定時の従来の瘻孔長測定器を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態例の瘻孔造設術用拡張器を、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態例の瘻孔造設術用拡張器の模式図を示し、図1中(I−1)は、挿通前の小径部材及び大径部材を示す模式図であり、図1中(I−2)は、大径部材に小径部材が挿通された状態の瘻孔造設術用拡張器を示す模式図であり、図1中(I−3)は、(I−2)の模式的な断面図である。図1中、瘻孔造設術用拡張器1は、大径部材3及び小径部材7から構成されている。図1中(I−1)に示すように、該大径部材3は、円筒形状の大径部材胴体部4、先端に向かって径が小さくなっている大径部材先端部5及び該大径部材胴体部4の末端に付設されている大径部材側コネクタ6からなり、該大径部材胴体部4には、目盛2が付されている。また、該小径部材7は、円筒形状の小径部材胴体部8、先端に向かって径が小さくなっている小径部材先端部9、及び該小径部材胴体部8の末端に付設されている小径部材側コネクタ10からなる。そして、図1中(I−2)に示すように、該大径部材3の内部に該小径部材7が挿通され、該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10により、該大径部材3に該小径部材7が固定されて、該瘻孔造設術用拡張器1となる。
【0016】
該大径部材3は、中空であり、内部に該小径部材7を挿通できる構造である。
【0017】
該大径部材胴体部4の外径は、造設される瘻孔の内径と同じ大きさなので、留置するカテーテルのチューブ部材の外径により、適宜選択される。つまり、該大径部材胴体部4の外径は、該チューブ部材の外径と略同一か、又は該チューブ部材の外径より0.5〜3.0mm大きく、好ましくは1.0〜2.0mm大きい。そして、患者への負担を軽減するために、該大径部材胴体部4の外径は、カテーテルのチューブ部材の外径より若干大きいことが好ましく、該カテーテルのチューブ部材の外径は、通常、6〜12mm、好ましくは7〜9mmなので、該大径部材胴体部4の外径は、通常、7〜13mm、好ましくは8〜10mmである。
【0018】
該大径部材胴体部4の内径は、該小径部材7が挿通され得る大きさであれば、特に制限されないが、好ましくは4〜10mm、特に好ましくは5〜7mmである。
【0019】
該大径部材先端部5は、先端に向かって外径が小さくなっている円錐形状である。該大径部材先端部5の先端の内径及び外径について、図2を参照して説明する。図2は、該大径部材先端部5の先端12の端面拡大図である。図2(II−1)中、該大径部材先端部5の先端12の内径13は、該小径部材胴体部8の外径と略同一であり、該小径部材胴体部8の大きさにより、適宜選択される。また、該大径部材先端部5の先端12の外径14は、該大径部材先端部5の先端12の内径13の値に近い程、該瘻孔造設術用拡張器で貫通孔を拡張させる際に、該先端12での抵抗が少なくなる点で好ましく、図2(II−2)に示すように、該大径部材先端部5の先端12の内径13と同じであることが最も好ましい。
【0020】
該大径部材3の全長15は、少なくとも、術者が手で握る部分、腹壁の厚み及び胃壁の厚みの合計の長さ以上の長さであり、好ましくは50〜300mm、特に好ましくは180〜230mmである。
【0021】
該目盛2は、該大径部材胴体部4に付されている。つまり、該目盛2の付される部分は、該大径部材3の該大径部材先端部5を除く部分である。該目盛2の基点11、すなわち、ゼロ点11は、該大径部材胴体部4の任意の位置であり、該目盛2は、該基点11から、該大径部材3の末端に向かって付されている。該目盛2としては、特に制限されないが、該基点11から末端に向かって一定の間隔で付される横棒及び数字であることが好ましい。該目盛2の目盛間隔は、特に制限されないが、5mm間隔であることが望ましく、また、特に強調したい箇所に数値が付されていることが望ましい。また、存在するカテーテルの長さに対応する位置にのみに目盛が付されていてもよい。該基点11は、瘻孔長の測定時に、胃内で、内視鏡により確認されなければならないので、内視鏡下で確認し易いこと、すなわち、目盛の基点を示す横棒が、他の横棒より太いか、又は0の数字が他の数字より大きいことが好ましい。また、該目盛2は、目盛が見易くなるように、該目盛2と該目盛2以外の大径部材3との区別が明確になるようなインクの色又は印字方法で印字された目盛であることが、好ましく、シリコーンインクで印字された目盛であることが、十分な剥離強度が得られ且つ該目盛2と該目盛2以外の大径部材3との区別が明確になる点で、特に好ましい。また、胃内に該瘻孔造設術用拡張器1が挿入された時に、該目盛2がどの方向に向いていても、内視鏡下で該基点11を確認し易いように、該基点11の横棒が、該大径部材胴体部4の全周に亘って付されていることが好ましい。該目盛2の範囲は、特に制限されないが、通常、瘻孔の長さが5〜50mmであるため、実用的には0〜100mmの範囲で目盛が付されていればよい。
【0022】
該目盛2を該大径部材胴体部4に付す方法としては、特に制限されず、例えば、ホットスタンプ(熱転写)により印字する方法、シリコーンインクにより印字する方法、UV硬化型インクにより印字する方法、COレーザーマーカー、LDレーザーマーカー、YAGレーザーマーカー等のレーザーマーカーにより印字する方法等が挙げられるが、該大径部材胴体部4への印字が可能であれば、特に制限されない。これらのうち、シリコーンインクにより印字する方法が、インクの硬化時間が短いので、製造時間を短縮できる点、及び膜厚印刷が可能なので、他の印字方法に比べ、該目盛2が視覚的に見易く、該目盛2と該目盛2以外の大径部材3との区別が明確になる点で、好ましい。また、これらのうち、レーザーマーカーにより印字する方法が、短時間で印字でき且つインク等を必要としない点で好ましく、YAGレーザーマーカーにより印字する方法が、該目盛2が鮮明になる点で特に好ましい。また、UV硬化型インクにより印字する方法は、樹脂に印字する方法として一般的に広く用いられているため、既存の設備を使用でき、新たな設備投資が必要でないので、安価に印字ができる点で好ましい。また、フッ素樹脂は、自己潤滑性、耐化学薬品性、優れた機械特性を有しているので、該大径部材3の該大径部材胴体部4及び大径部材先端部5並びに該小径部材7の該小径部材胴体部8及び該小径部材先端部9の材質としては、該フッ素樹脂がしばしば使用される。しかし、該フッ素樹脂には、印字が困難な場合があり、その場合には、該フッ素樹脂に印字するための工夫が必要である。例えば、シリコーンインク又はUV硬化型インクにより印字をする場合、該大径部材胴体部4の材質が、該フッ素樹脂であると、インクがはじかれたり、あるいは、十分な剥離強度が得られないことがあるので、この場合は、予めプラズマ処理等の表面処理を行なえばよい。なお、該大径部材胴体部4の材質が、ポリビニリデンジフルオライド樹脂(PVDF樹脂)である場合は、表面処理等を予め施さなくても、UV硬化型インクによる印字が可能である。また、シリコーンインクにより印字する方法では、スクリーン印刷で印字することが、UV硬化型インクにより印字する方法では、回転印刷で印字することが、円形の部材に対して、一度の作業で全周に亘って印字が可能である点で好ましい。
【0023】
該小径部材7は、中空であり、内部にガイドワイヤを挿通することができる構造である。
【0024】
該小径部材胴体部8の外径は、特に制限されないが、該小径部材7は、通常、1.0〜1.3mmの内径及び1.4〜1.7mmの外径を有する穿刺針を、腹壁及び胃壁に貫通させて形成させた貫通孔の拡張を、最初に行う部材なので、該穿刺針の外径に比べ大きくし過ぎることは、患者への負担が大きくなる。そのため、該小径部材胴体部8の外径は、好ましくは2〜8mm、特に好ましくは2.5〜4.5mmである。
【0025】
該小径部材胴体部8の内径は、該小径部材7の内部にガイドワイヤが挿通され得る大きさであれば、特に制限されないが、好ましくは1.3〜6mm、特に好ましくは1.4〜1.8mmである。
【0026】
該小径部材先端部9は、先端に向かって外径が小さくなっている円錐形状である。該小径部材先端部9の先端16の内径17は、ガイドワイヤに沿って、該小径部材7(又は該瘻孔造設術用拡張器1)が摺動可能な大きさであれば、特に制限されず、ガイドワイヤの外径により、適宜選択される。そして、該小径部材先端部9の先端16とガイドワイヤとの間のクリアランス、すなわち、該先端16の外径17とガイドワイヤの外径の差は、0〜0.2mm、好ましくは0.02〜0.09mmである。通常、該ガイドワイヤとしては、外径が0.89mmの0.035”ガイドワイヤが用いられるため、該0.035”ガイドワイヤを用いる場合は、該小径部材先端部9の先端16の内径17は、好ましくは0.9〜1.1mm、特に好ましくは0.92〜0.98mmである。また、該小径部材先端部9の先端16の外径18は、該小径部材先端部9の先端16の内径17の値に近い程、該瘻孔造設術用拡張器で貫通孔を拡張させる際に、該先端16での抵抗が少なくなる点で好ましく、該小径部材先端部9の先端16の内径17と同じであることが最も好ましい。なお、該小径部材先端部9の先端16の内径及び外径は、図2に示す該大径部材先端部5の先端12と同様なので、図2を参照する。
【0027】
該大径部材3の該大径部材胴体部4及び大径部材先端部5並びに該小径部材7の該小径部材胴体部8及び該小径部材先端部9の材質は、特に制限されないが、生体適合性に優れており、拡張時に潰れたり、座屈したりすることがなく、且つ滑り易い材質であることが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE樹脂)、ポリビニリデンジフルオライド樹脂(PVDF樹脂)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(FEP樹脂)等のフッ素樹脂が好ましい。また、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂等は、該PTFE樹脂や該フッ素樹脂に比べ、強度が低い樹脂ではあるが、該大径部材3の該大径部材胴体部4及び大径部材先端部5並びに該小径部材7の該小径部材胴体部8及び該小径部材先端部9の厚みを選択することにより、使用されることが可能となる。なお、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂が滑り難い場合には、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂は、表面に親水性処理が施されることにより、使用されることが可能となる。また、該目盛2が、UV硬化型インクで印字された目盛である場合、該目盛2が印字される該大径部材胴体部4の材質が、ポリビニリデンジフルオライド樹脂であることが、予め表面処理を行わなくても印字できる点で好ましい。また、該大径部材3及び該小径部材7は、金属化合物を含有することができ、レーザーマーカーで印字する場合に、印字が鮮明になる点で、金属化合物を1〜20質量含有することが好ましく、金属化合物を3〜10質量%含有することが特に好ましい。また、該金属化合物としては、酸化ビスマスが好ましい。また、該金属化合物の種類を選択することにより、該目盛2の色を変化させることができるので、該金属化合物の種類を適宜選択することにより、該目盛2と該目盛2以外の大径部材3との区別を明確にすることができる。なお、該大径部材胴体部4と該大径部材先端部5は、一体成形されたものであっても、あるいは、円筒形状の部品と円錐形状の部品を接着させたものであってもよく、同様に、該小径部材胴体部8と該小径部材先端部9は、一体成形されたものであっても、あるいは、円筒形状の部品と円錐形状の部品を接着させたものであってもよい。
【0028】
該大径部材3の末端には、該大径部材側コネクタ6が、該小径部材7の末端には、該小径部材側コネクタ10が付設されている。該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10は、該貫通孔の拡張を行う際に、該小径部材側コネクタ10を該大径部材側コネクタ6に嵌合させることにより、該大径部材の内部に挿通された該小径部材7を、該大径部材3に固定するための部材である。該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10の付設は任意であるが、該貫通孔の拡張を行う際に、該大径部材3及び該小径部材7が一体となるので、穿刺針の外径から該小径部材胴体部8の外径までの大きさへの貫通孔の拡張と、該小径部材胴体部8の外径から該大径部材胴体部4の外径までの大きさへの貫通孔の拡張とを、連続して行えるので、手術時間が短縮できる点で、該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10が付設されていることが好ましい。また、その場合、該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10には、ロック機構が付いていることが特に好ましい。
【0029】
また、症例の違い、あるいは、術者の好みにより、先ず、穿刺針で形成された直後の貫通孔に、該小径部材7のみを挿入し、該穿刺針の外径から該小径部材胴体部8の外径までの大きさへの貫通孔の拡張を行い、次いで、該小径部材7の位置を固定して、該大径部材3を該貫通孔へ挿入し、該小径部材胴体部8の外径から該大径部材胴体部4の外径までの大きさへの拡張を行うことができ、この場合は、該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10は必要ない。
【0030】
また、該大径部材3及び該小径部材7は、あらかじめ接着されているものであってもよい。
【0031】
該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10は、圧入固定や接着固定等により付設されるため、加工性が良く且つ硬化剤等が接触してもクラックが発生しない程度の耐薬品性が必要である。該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10の材質としては、特に制限されないが、硬質塩化ビニル樹脂等の硬質プラスチックが好ましい。
【0032】
該小径部材7を該大径部材3に挿通させ、該大径部材側コネクタ6及び該小径部材側コネクタ10で、該小径部材7を該大径部材3に固定した状態では、該小径部材7の一部が、該大径部材先端部5の先端12から突出している。該大径部材先端部5の先端12から突出している該小径部材7の長さ19は、特に制限されないが、好ましくは5〜200mm、特に好ましくは10〜60mmである。該長さ19が、上記範囲未満だと、ガイドワイヤーに誘導されて湾曲するだけの柔軟性が乏しくなり易く、胃壁を突き刺してしまう可能性がある。なお、柔軟な材質を選択することによって、該長さ19が、上記範囲未満であっても、胃壁を損傷することを防ぐことができ、このような柔軟な材質としては、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、フルオロエチレン−フルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。また、該長さ19が上記範囲を超えると、作業性が悪くなり易い。
【0033】
図1中の該瘻孔造設術用拡張器1は、該大径部材3及び該小径部材7、すなわち、胴体部の外径が異なる2つの部材により構成されるので、該瘻孔造設術用拡張器1を用いる場合は、2段階で該貫通孔の拡張が行われるが、胴体部の外径が異なる部材の数は、特に制限はない。
【0034】
例えば、胴体部の外径が、該大径部材3の胴体部の外径と該小径部材7の胴体部の外径との間の大きさとなる中径部材を用意し、該大径部材3に該中径部材を挿通し、該中径部材に該該小径部材7を部材を挿通して、瘻孔造設術用拡張器を構成することができ、該瘻孔造設術用拡張器によれば、3段階で該貫通孔の拡張が行われる。この場合、該瘻孔造設術用拡張器は、大径部材、中径部材及び小径部材からなる瘻孔造設術用拡張器であって、該大径部材は、目盛が付されている円筒形状の大径部材胴体部、先端に向かって径が小さくなっている大径部材先端部及び該大径部材胴体部の末端に付設されている大径部材側コネクタからなり、該中径部材は、円筒形状の中径部材胴体部、先端に向かって径が小さくなっている中径部材先端部、及び該中径部材胴体部の末端に付設されている中径部材側コネクタからなり、該小径部材は、円筒形状の小径部材胴体部、先端に向かって径が小さくなっている小径部材先端部、及び該小径部材胴体部の末端に付設されている小径部材側コネクタからなる。
【0035】
なお、部材の数が複数の場合、目盛が付される部材は、どの部材であってもよいが、該目盛が、胴体部の外径が最も大きい部材の胴体部に付されていることが、手術における作業性が高くなる点及びカテーテルを留置する直前に瘻孔長の測定を行うので、カテーテルを留置する際の状態に最も近い状態で瘻孔長の測定が行える点で好ましい。
【0036】
また、例えば、該大径部材3の該大径部材先端部4の先端12の内径を、該ガイドワイヤの外径と同一又は若干大きくすることにより、1つの部材で瘻孔造設術用拡張器を構成することもでき、該瘻孔造設術用拡張器によれば、1段階で該貫通孔の拡張が行われる。この場合、該瘻孔造設術用拡張器は、目盛が付されている円筒形状の胴体部及び先端に向かって径が小さくなっている先端部からなる。
【0037】
すなわち、本発明の瘻孔造設術用拡張器は、胴体部に目盛を有する瘻孔造設術用拡張器である。
【0038】
次に、本発明の瘻孔造設術用拡張器を用いる経皮的内視鏡胃瘻造設術(PEG)について説明する。本発明の経皮的内視鏡胃瘻造設術は、胃内に内視鏡を挿入しながら、(1)腹壁と胃壁とを固定する工程(以下、第1工程とも記載する。)、(2)腹壁及び胃壁に穿刺針を刺し、貫通孔を形成する工程(以下、第2工程とも記載する。)、(3)貫通孔にガイドワイヤを挿入する工程(以下、第3工程とも記載する。)、(4)ガイドワイヤに沿って、拡張器を貫通孔に挿入し、貫通孔の径を拡張して瘻孔を形成する工程(以下、拡張工程とも記載する。)、(5)瘻孔長を測定する工程(以下、瘻孔長測定工程とも記載する。)、(6)ガイドワイヤに沿って、カテーテルを瘻孔に挿入する工程(以下、第6工程とも記載する。)、(7)ガイドワイヤを抜去(以下、第7工程とも記載する。)する工程からなる。
【0039】
該第1工程では、患者の胃内に内視鏡を挿入し送気を十分行い、腹壁と胃壁とを密着させる。次に、内視鏡からの透過光により胃の位置を確認し、腹部皮膚を消毒、局所麻酔を行う。続いて、その部位において、腹壁と胃壁の相対位置のずれを防止するため、胃壁腹壁固定を行う。この胃壁腹壁固定の近傍に、メスで小切開を加えておく。この部位が、カテーテルの挿入予定部位となる。また、更に、メスで小切開した部位では、金属鉗子を用いて筋層剥離することもできる。金属鉗子を用いて筋層剥離することにより、後の工程で、瘻孔造設術用拡張器及びカテーテルを挿入し易くなる。
【0040】
該第2工程では、小切開部位に中空針又はシース付き針等を腹壁、胃壁の順に貫通させ、貫通孔を形成させる。
【0041】
該第3工程では、該貫通孔に、中空針又はシースの内腔を経て、ガイドワイヤを胃内まで挿入する。挿入終了後、ガイドワイヤを残したまま、中空針又はシース付き針を患者から抜去しておく。以降の操作中にガイドワイヤが意に反して引き抜かれることが無いように、ガイドワイヤのうち、十分に長い長さが胃内に挿入される。また、体外に出ているガイドワイヤを鉗子やテープ等で、体表又はドレープに固定することによって、ガイドワイヤが意に反して引き抜かれることを防ぐこともできる。
【0042】
該拡張工程では、本発明の瘻孔造設術用拡張器を用いて、該貫通孔を拡張する。該拡張工程の形態例として、図1に示す該瘻孔造設術用拡張器1を用いる場合について説明する。先ず、該大径部材3に該小径部材7を挿通し、該大径部材3と該小径部材7をコネクタで固定する。次いで、該ガイドワイヤを、該瘻孔造設術用拡張器1の該小径部材7に、該小径部材7の先端側から挿通する。次いで、該ガイドワイヤに沿って、該瘻孔造設術用拡張器1を、該貫通孔に挿入し、該貫通孔の拡張を行う。
【0043】
該瘻孔長測定工程について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の瘻孔造設術用拡張器を用いる瘻孔長測定工程を説明する模式図であり、該瘻孔造設術用拡張器の挿入方向に対して平行な面で切ったときの図である。図3中(III−1)は、該拡張工程が終わった直後の様子を示す模式図であり、図3中(III−2)は、瘻孔長測定時の様子を示す模式図である。なお、説明の都合上、該瘻孔造設術用拡張器については、断面図ではなく、側面図で示した。
【0044】
該瘻孔造設術用拡張器20を貫通孔28に挿入して、該拡張工程を行った直後は、該腹壁及び胃壁23は、該瘻孔造設術用拡張器20の胴体部の任意の部分に存在する。この時、基点(ゼロ点)22の位置と胃壁の内側25の位置は合っていない(III−1)。そこで、胃内26に挿入された内視鏡21で観察しながら、該瘻孔造設術用拡張器20を更に押し込んで又は引き抜いて、該基点22の位置と該胃壁の内側25の位置を合わせる(ゼロ点調節)(III−2)。そして、体外側27から目盛24を目視し、瘻孔長を測定する。このようにして、該瘻孔長測定工程を行う。そして、瘻孔長の測定後、該瘻孔造設術用拡張器を抜去する。なお、本発明において、胃壁の内側とは、胃内部側の胃壁の表面を指す。
【0045】
該第6工程では、該ガイドワイヤに沿って、造設された瘻孔に、カテーテルを挿入して、該造設された瘻孔に、該カテーテルを留置する。
【0046】
該第7工程では、該ガイドワイヤを体外側に引張り、胃内から抜去する。
【0047】
なお、該第1工程、該第2工程、該第3工程、該第6工程及び該第7工程は、特に制限されず、従来の経皮的内視鏡胃瘻造設術で行われている方法と同様の方法で各工程を行うことができる。また、該拡張工程は、瘻孔造設術用拡張器として、本発明の瘻孔造設術用拡張器を用いる以外は、従来の経皮的内視鏡胃瘻造設術で行われている方法と同様の方法で、該拡張工程を行うことができる。
【0048】
すなわち、本発明の経皮的内視鏡胃瘻造設術は、本発明の瘻孔造設術用拡張器を用いて、貫通孔の拡張を行う拡張工程、及び胃内に挿入されている内視鏡で観察しながら、本発明の瘻孔造設術用拡張器に付されている基点と胃壁の内側を合わせ、次いで、体外の目盛を目視して瘻孔長を測定する瘻孔長測定工程を有する経皮的内視鏡胃瘻造設術である。
【0049】
このように、本発明の瘻孔造設術用拡張器によれば、経皮的内視鏡胃瘻造設術において、前段の拡張工程で用いた瘻孔造設術用拡張器を抜去せず、そのまま用い、且つ既に胃内に挿入されている内視鏡で、該瘻孔造設術用拡張器の基点と胃壁の内側を合わせるという簡便な操作で、瘻孔長の測定を行うことができるので、手術時間の短縮ができる。また、本発明の瘻孔造設術用拡張器によれば、瘻孔長測定用の専用器具を用いることなく、瘻孔長の測定を行えるので、処理具の部品点数を削減できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、患者の負担、術者のストレスが少なく且つコストが低い瘻孔長測定器(瘻孔造設術用拡張器兼瘻孔長測定器)を提供できる。
【符号の説明】
【0051】
1、20 瘻孔造設術用拡張器
2、24 目盛
3 大径部材
4 大径部材胴体部
5 大径部材先端部
6 大径部材側コネクタ
7 小径部材
8 小径部材胴体部
9 小径部材先端部
10 小径部材側コネクタ
11、22 基点(ゼロ点)
12 大径部材先端部の先端
13 大径部材先端部の先端の内径
14 大径部材先端部の先端の外径
15 大径部材の全長
16 小径部材先端部の先端
17 小径部材先端部の先端の内径
18 小径部材先端部の先端の外径
19 突出している小径部材の長さ
21 内視鏡
23 腹壁及び胃壁
25 胃壁の内側
26 胃内
27 体外側
28 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部に目盛を有することを特徴とする瘻孔造設術用拡張器。
【請求項2】
前記目盛が、レーザーマーカーで印字された目盛であることを特徴とする請求項1記載の瘻孔造設術用拡張器。
【請求項3】
前記目盛が、UV硬化型インクで印字された目盛であることを特徴とする請求項1記載の瘻孔造設術用拡張器。
【請求項4】
前記目盛が、シリコーンインクで印字された目盛であることを特徴とする請求項1記載の瘻孔造設術用拡張器。
【請求項5】
前記瘻孔造設術用拡張器の材質が、ポリビニリデンジフルオライドであることを特徴とする請求項3又は4いずれか1項記載の瘻孔造設術用拡張器。
【請求項6】
前記瘻孔造設術用拡張器の材質が、プラズマ処理されたポリビニリデンジフルオライドであることを特徴とする請求項3又は4いずれか1項記載の瘻孔造設術用拡張器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−45738(P2011−45738A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239398(P2010−239398)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【分割の表示】特願2006−90242(P2006−90242)の分割
【原出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(598111216)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】