説明

癌および高度の過形成の自動検出方法

生体的サンプルにおける癌および関連する過形成を検出する自動的方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年10月25日に出願された米国仮出願第60/862,974号の優先権の利益を主張する。本明細書において引用される該出典および全ての付加的文献ならびにそれらの言及文献は、付加的もしくは代替的な詳細、特徴および/または技術的背景の教示に対して適切である場合、言及したことにより本明細書中に援用される。
本発明は、概略的に、個人における癌、および、形成異常、特に高度の形成異常を検出する自動的方法に関する。ひとつの見地においては、一種類以上の癌の治療における治療プロトコルの有効性を監視する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
サンプルの顕微鏡的分析を支援する多くの方法が知られている。たとえば限定的なものとしてで無く、一定の染料は一定の細胞構造または小細胞構造に対する親和力を有することは知られている。故に斯かる染料は、斯かる構造の更なる明示を助力することにより分析を支援すべく使用され得る。斯かる構造に対する染料の結合は、種々の顕微鏡検出技術を用いて識別かつ分析され得る。
【0003】
細胞および組織の蛍光顕微鏡検査法は、当業界において公知である。顕微鏡において複数の蛍光細胞を画像化すると共に、これらの細胞において生ずる空間分布および時間的変化に関する情報を抽出する方法が開発された。これらの方法の幾つか、および、それらの用途は、非特許文献1に記述されている。これらの方法は、細胞中における蛍光レポータ分子の分布、量および生化学的環境の空間的および時間的に高い分解能での画像化測定に対して数個の試料を調製すべく設計かつ最適化されてきた。(習用の反射顕微鏡は散乱された照明光を用いて画像を形成するが、)蛍光信号の検出は、放出された蛍光を用いて画像を形成する落射蛍光顕微鏡によるものとされ得る。落射蛍光顕微鏡の励起光は、サンプル中の蛍光タグを励起して該蛍光タグに蛍光を放出させるべく用いられる。落射蛍光顕微鏡の利点は、問題となる生物学的構造に対して蛍光分子が選好的に付着することで、問題となる斯かる生物学的構造の識別が許容される如く、サンプルが調製され得ることである。
【0004】
生体的サンプルの顕微鏡分析を行う自動的方法は、診断手順を増進すると共に、顕微鏡に基づく診断設備におけるサンプルのスループットを最適化する。同一の譲受人により所有されると共に以下において更に十分に記述される種々の米国特許出願(特許文献4〜11)は、自動化された顕微鏡分析に対する装置および方法の種々の見地および実施例を開示している。これらの例としては、一体化されたロボット式顕微鏡システム、動的で自動化された顕微鏡操作およびスライド走査システム、自動顕微鏡システムにおいて使用される種々の交換可能な対物レンズ、フィルタおよび同様の要素、自動顕微鏡システムにおいて使用される自動顕微鏡載物台、自動顕微鏡システムにおいて使用される自動顕微鏡スライド・カセットおよびスライド操作システム、自動顕微鏡システムにおいて使用される自動顕微鏡スライド積荷および降荷機構、コンピュータに常駐するプログラムを採用する自動的方法であって生体的サンプルからの蛍光信号の顕微鏡的検出を推進して自動顕微鏡システムを推進すべく使用可能であるという自動的方法、画像処理のためにFISH検定を行う上で顕微鏡を推進すべくコンピュータ常駐プログラムを用いる顕微鏡の自動操作が挙げられる。
【0005】
略語“FISH”(蛍光in situハイブリダイゼーション)とは、紫外もしくは可視の光源などの光源により照射されたときに特性的な光または色を放出する蛍光タグもしくは標識を使用してして染色体構造を検出するという技術を指している。FISHは、高度の配列類似性を示す染色体の部分のみに対して結合する蛍光プローブを用いる。斯かるプローブは、特定の染色体および特定の染色体領域に指向され得る。上記プローブは(ゲノムにおける類似配列に対してではなく)該プローブの目標物に対して特異的にハイブリッド形成するに十分に長寸であるべきであるが、ハイブリッド形成プロセスを阻害するほどに大寸とされるべきではなく、かつ、それは蛍光団により直接的にタグ付けされるべきである。このことは、たとえば、タグ付けされたヌクレオチドを用いるニック・トランスレーションおよびPCRなどの種々の様式で行われ得る。(プローブ標識化効率、プローブの種類、および、蛍光染料などの多くの要因に依存する)顕微鏡の検出スレッショルドを超えるべく信号増幅が必要であれば、ビオチンもしくはジゴキシゲニンの如きハプテンにより標識化されたプローブが使用されると共に、ハプテン分子に対しては、蛍光タグ付けされた特定の抗体もしくはストレプトアビジンが結合されることで、蛍光が増幅される。上記FISH技術は、染色体の異常性および遺伝子マッピングを特定すべく使用され得る。
【0006】
癌細胞における遺伝子過剰発現に対して一般的に考察される機構は、概略的に遺伝子増幅と称される。これは、先祖細胞の染色体内における遺伝子が複数の複製物へと複製されるプロセスである。該プロセスは、上記遺伝子を含む染色体の領域の不定期な複製を伴い、上記染色体内への複製済みセグメントの再結合が追随する(非特許文献2)。結果として、上記遺伝子の50個以上の複製物が生成され得る。複製された上記領域は一定の場合、“単位複製配列(amplicon)”と称される。上記遺伝子の発現のレベル(すなわち、生成される伝令RNAの量)は、形質転換細胞において、作成される遺伝子の複製物の個数と同じ割合で漸増する(非特許文献2)。
【0007】
他の発癌遺伝子、特に神経芽細胞腫に対して記述された発癌遺伝子による研究は、原癌遺伝子の遺伝子複製は癌の悪性形態に伴う事象であり且つ臨床的結果の予測事項として作用し得ることを示唆している(非特許文献3および非特許文献2)。乳癌において、erbB2遺伝子の複製は、疾患の再発生および生存期間の減少の両方に相関することが報告されている(非特許文献4)。erbB2は、シクロフォスファミド、ドクソルビチンおよびフルオロウラシルによる補助的化学療法に対して敏感な腫瘍の特定を助力するという一定の証拠がある(非特許文献5)。
【0008】
乳癌においては、遺伝子複製を蒙り得る遺伝子の一部のみが特定されている。第1に、癌細胞においては、二重微小(DM)染色体、および、均一染色領域(HSR)の如き染色体異常が豊富である。HSRは、核型分析において中間密度のギームザ染色により、交互的な暗色および明色バンドの通常パターンではなく当該染色体領域の長さの全体に亙り現れるという染色体領域である。それらは、複数の遺伝子反復に対応する。HSRは乳癌において特に豊富であり、検査された腫瘍の60〜65%において出現する(非特許文献6および非特許文献7)。斯かる領域が、erbB2およびmycを含む人間の既知の16種の発癌遺伝子の内の任意の発癌遺伝子に対するプローブによるin situハイブリダイゼーションによりチェックされたとき、腫瘍の一部分のみがHSR領域に対する何らかのハイブリッド形成を示す。更に、各核型におけるHSRの一部分のみが関連している。
【0009】
第2に、比較ゲノム・ハイブリダイゼーション(CGH)によれば、腫瘍においては、HSRの外側における染色体領域においてさえもコピー数の増加の存在が明らかとされた。CGHは、2種類の異なる蛍光色素を用いて、正常細胞からの及び癌細胞からのDNA断片により染色体塗沫全体が同時に染色されるという新たな方法である。画像は蛍光比率に対してコンピュータ処理されることで、癌細胞における増幅または欠失を受けた染色体領域が明らかとされる(非特許文献8)。この方法は最近、15種の乳癌細胞系統に対して適用された(非特許文献9)。DNA配列のコピー数の増大は、23対の染色体の全てにおいて検出された。
【0010】
非特許文献10によれば、中国のリンツォウ(リンシァン)からの食道扁平上皮細胞癌腫サンプルにおいて環状AMP応答配列結合タンパク質(CBP)、核転写活性化補助因子タンパク質の内部縦列重複が見出された。非特許文献10は、CBP遺伝子の内部縦列重複は人間の扁平上皮細胞癌腫において頻繁な遺伝子的事象であることを示している。
【0011】
人間の表皮成長因子受容体2(HER−2)/neu(c−erb−2)遺伝子は、染色体17qに局在化されると共に、表皮成長因子受容体(EGFR)もしくはHER系統群の構成要素である膜貫通チロシンキナーゼ受容タンパク質をコード化する(非特許文献11)。HER−2遺伝子は、人間の乳癌の一部分、おそらくは25%において増幅される。
【0012】
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は一般的に、発癌遺伝子に見られる一塩基多型または突然変異の如き配列変化などの染色体異常の検出に対して用いられる。
【0013】
癌、および、高度の形成異常の如き形成異常をスクリーニングする多数の方法およびキットは開示されている。
【0014】
たとえば、アボット・モレキュラ社(Abbott Molecular)により製造されたProVysion多色プローブ・セットは、染色体8、8p22に配置されたリポ蛋白質リパーゼ(LPL)、および、8q24領域に配置されたC−MYC遺伝子を検出かつ定量すべく設計される。8q24および8p21−22(LPL)の獲得および異型接合の喪失は、異常サンプルにおいて観測された2種類の遺伝子変化である。上記ProVysion多色プローブ・セットは、3つの別体的な蛍光団標識を備えた3種のプローブから成る。上記多色プローブ・セットの設計態様は、単一細胞内における3種類のゲノム・マーカ、すなわち、SpectrumAquaにより標識化されたCEP(登録商標)8プローブ、SpectrumOrangeにより標識化されたLSI LPL、および、SpectrumGreenにより標識化されたLSI C−MYCの同時的分析を許容すると称されている。CEP8アルファ・サテライトDNAプローブは、染色体8のセントロメア領域(8p11.1〜q11.1)に対してハイブリッド形成すると共に、染色体8のコピー数を特定する機構を提供する。上記LSI LPLは、8p22においてLPL遺伝子に対してハイブリッド形成すると共に、サイズは約170kbである。上記LSI C−MYCプローブ(約750kbのプローブ)は、8q24に配置されたC−MYC遺伝子に対してハイブリッド形成する。上記製造者は、ProVysion多色プローブ・セットによりハイブリッド形成された正常細胞において期待パターンは2つの橙、2つの緑および2つの淡緑青(2O2G2A)の信号パターンであるが、異常細胞においては上記3種のプローブ信号の複製物の組み合わせが観測されると主張している。その試験キットには、任意のプローブの2つより多いまたは2つより少ないコピー数は、夫々、染色体または遺伝子の獲得または喪失を示す、と表示されている。CEP8コピー数に対するLSI LPLの2つより少ないコピー、または、LSI C−MYCプローブの複数のコピーは夫々、染色体8コピー数に対するLPL領域の喪失およびC−MYC領域の獲得を表す。
【0015】
特許文献1および特許文献2は、頸部細胞における高度の形成異常および癌腫の検出に対してプローブおよびプローブ・セットを用いる方法を主張している。該方法は、生体的サンプルに対して一種類以上の染色体用プローブをハイブリッド形成させる段階と、上記染色体用プローブのハイブリッド形成パターンを検出し、被検者が高度の形成異常または癌腫を有するか否かを決定する段階とを伴う。上記方法は、約60以下のベクタ値を例証する一群の一種類以上のプローブの使用を包含し、その場合にベクタ値は、ベクタ=[(100−特異性)+(100−感受性)1/2で算出される。上記染色体用プローブは、8q24、3q36、Xp22の如き特定の領域に対するプローブ、および、たとえばHPV−16、HPV−18、HPV−30、HPV−45、HPV−51およびHPV−58の各々に対する全コード配列と実質的に相補的なCEP15すなわちプローブから成り得る。スクリーニングされた生体的サンプルは、p16もしくはサイクリンEの如き細胞周期タンパク質、または、タンパク質Ki67もしくはPCNAの如き細胞増殖マーカの存在に対して事前スクリーニングされ得る。
【0016】
特許文献3もまた、癌、特に肺癌の検出に対するプローブ・セット、および、プローブおよびプローブ・セットを用いる方法を開示している。領域特異的プローブおよび染色体計数プローブは組み合わせて使用されると共に、そのハイブリッド形成パターンは、被検者が肺癌を有するか否かを決定すべく用いられる。染色体組成が特定され、たとえば、肺癌を決定するためのプローブ・セットは、5p15領域特異的プローブ、8q24領域特異的プローブ、染色体6計数プローブ、および、7p12領域特異的プローブを備え得る。
【0017】
従来、診断的なFISH光ドットカウントは熟練した顕微鏡使用者により手動的に実施されてきた。ドットおよびその色を正しく特定することに加え、染色体状態を正しく識別すべく、他のサイズおよび形状の特性が分類されねばならない。その解析は、上記現象により課される時間的制約により更に困難とされる。故に顕微鏡使用者は、検査を実施すべく訓練されねばならない。最適条件下でさえも、上記プロセスは単調で冗長であり、人的エラーが生じ易いことが判明している。
【0018】
自動顕微鏡検査法の適用は、上記手動的手法の欠点の多くを克服する可能性がある。自動式顕微鏡は、人的操作により導入される不可避の主観的要因なしで、全て適時な様式で、サンプルにおける蛍光ドットを確実に識別し、それらの色を正確に決定し、それらを形状およびサイズに基づいて分類し、且つ、目標状態の有無を決定するに必要な要約分析を実施し得る。
【0019】
癌を検出するキットは典型的に、肯定的もしくは否定的な答え、すなわち対象者が特定の癌を有するか否かという答えのみを提供すべく設計されることを銘記すべきである。斯かる検査は、化学療法の如き介入療法の必要性を表し得るが、該検査は、対象者を最も適切な介入療法の方向に向かわせる様には設計されていない。寧ろ、癌患者は多くの場合に複数の療法に委ねられると共に、療法の有効性は、療法の開始後の複数の時点における癌の状態のスナップショットにより決定される。斯かるスナップショットはたとえば、身体のMRIもしくはCAT走査を伴うことで、腫瘍の増大もしくは収縮を決定し得る。斯かるスナップショット方法は相当の経済的負担、ならびに、それ自体のリスク(たとえば被曝)を伴い得ることから、疾患状態を解決する迅速な介在の必要性のために望まれるよりも相当に長い時的間隔にて行われることがある。而して、以下に示される如く本発明者等は、自動顕微鏡検査法は、対象者が特定の癌/過形成に苦しんでいるか否かを決定するためだけでなく、癌/高度の過形成の治療に対する種々の介入療法手法の有効性の決定のための監視ツールとしても好適に使用され得ることも理解した。一実施例において、療法有効性の監視は、(血管系およびリンパ系を含む)体循環における癌/過形成細胞の監視により行われ、癌/過形成に関連する異常細胞の個数の減少は療法成功の表現と解釈され、且つ、斯かる細胞の減少の度合いは、ひとつの療法に対する別の療法の有効性の判断基準として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許公開公報第2004/028107号
【特許文献2】米国特許公開公報第2005/0026190号
【特許文献3】米国特許公開公報第2006/0063194号
【特許文献4】2007年8月2日出願の米国特許出願第11/833203号
【特許文献5】2007年8月3日出願の米国特許出願第11/833594号
【特許文献6】2007年8月2日出願の米国特許出願第11/833154号
【特許文献7】2007年8月2日出願の米国特許出願第11/833183号
【特許文献8】2007年8月3日出願の米国特許出願第11/833517号
【特許文献9】2007年8月3日出願の米国特許出願第11/833428号
【特許文献10】2007年8月3日出願の米国特許出願第11/833849号
【特許文献11】2007年8月2日出願の米国特許出願第11/833204号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】アメリカン・サイエンティスト(American Scientist)80(1992)、第322〜335頁にけるテイラー等(Tailor, et al.)による論文
【非特許文献2】アリタルク・ケー等(Alitalc K. et al.)、(1986)、Adv. Cancer Res. 47:235〜281)
【非特許文献3】シュワブ・エム等(Schwab M. et al.)(1990)、遺伝子染色体癌1(Genes Chromosomes Cancer 1):181〜193
【非特許文献4】スラモン・ディー・ジェー等(Slamon D. J.et al.)(1987)、サイエンス(Science)235:178〜182
【非特許文献5】マス等(Muss et al.)、N Engl J Med. 1994 330(18):1260〜6
【非特許文献6】デュトリロー・ビー等(Dutrillaux B. et al.)(1990)、Cancer Genet Cytogenet 49:203〜217
【非特許文献7】ツァフラニ・ビー等(Zafrani B. et al.)(1992)、Hum Pathol 23:542〜547
【非特許文献8】カリオニーミ・エー等(Kalioniemi A. et al.)(1992)、サイエンス258:818〜821
【非特許文献9】カリオニーミ・エー等(Kalioniemi A. et al.)(1994)、Proc Natl. Acad. Sci. USA 91:2156〜2160
【非特許文献10】ソウ、シー・ケー等(So、C−K、et al.)(臨床的ガン研究(Clinical Cancer Research)10:19〜27、2004)
【非特許文献11】ロス・ジェーエス等(Ross JS. et al.、The Oncologist、Vol.8、No.4、307〜325、2003年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
当業界においては依然として、蛍光標識化されたプローブなどの検出可能に標識化されたプローブにより処理された癌組織サンプルに起因する自動的な画像生成および画像の分析に対する要望が在る。更に、依然として、斯かる標識化されたサンプルに対する好都合で迅速であり、手動操作を行う必要のない自動蛍光顕微鏡検査法に対する要望が在る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本明細書においては、種々の実施例が開示される。
【0024】
一実施例における、被検者における病状であって被検者の細胞における異常染色体成分により特性記述されるという病状の存在および/または程度をスクリーニングする自動的方法であって、
a)上記被検者からの細胞核を含む生体的サンプルを、異常性を特性記述する少なくともひとつの染色体配列に対する一種類以上の区別可能に標識化されたプローブのハイブリッド形成を促進する条件下で、上記少なくともひとつの配列に指向された上記一種類以上のプローブに対して接触させる段階と、
b)上記染色体配列に対してハイブリッド形成された上記一種類以上の区別可能な標識の表現物を自動的に獲得する段階と、
c)上記表現物において上記一種類以上の標識の結合の分布および強度を自動的に分析し、異常染色体成分の存在および/または程度を決定する段階と、
d)段階c)の分析の結果を自動的に報告する段階とを備え、
上記段階b)〜d)は人間による介在なしで実施される、方法。
【0025】
上記スクリーニング方法の種々の更なる実施例において、自動顕微鏡システムは、表現物を自動的に獲得する段階、結合を自動的に分析する段階、および、結果を自動的に報告する段階の内のひとつの段階、および、通常は全ての段階を実施する。この方法において、上記表現物を獲得して自動的画像分析を実施すると、病状に特徴的な核酸の特性が識別される。目標限定される種々の染色体異常性としては、一塩基多型(SNP)、変異配列、または、複製された遺伝子、または、その一部が挙げられる。プローブに対する染色体目標としては、セントロメア、または、人間の染色体3もしくは人間の染色体7の目標配列、および、TERC遺伝子の全てまたは一部が挙げられる。付加的実施例においては、上記表現段階および分析段階が基準プローブもしくは染色剤に対して関係付けられる如く、異常でないと知られた染色体領域に指向された種々の基準プローブ、または、基準染色剤が使用され得る。
【0026】
付加的実施例における、被検者における癌、高度の過形成または高度の形成異常に関連する異常性をスクリーニングする自動的方法であって、
a)上記被検者からの核を含む生体的サンプルを獲得する段階と、
b)上記サンプル中の上記核を、目標限定された染色体領域に対するプローブのハイブリッド形成を促進する条件下で、異常性に関連する染色体配列に指向された第1の検出可能標識を担持する第1プローブと接触させる段階と、
c)ハイブリッド形成条件下で上記サンプルを、異常でないと知られた染色体領域に対して指向されて検出可能に標識化された基準プローブ、および、基準染色剤の少なくとも一方と接触させる段階と、
d)上記染色体配列に対して結合された標識を自動的に画像化し、且つ、使用されるならば上記染色剤を画像化する段階と、
e)ハイブリッド形成された標識、および、使用されるならば染色剤の分布および強度に対する画像を自動的に分析する段階と、
f)段階e)の分析の結果を自動的に報告する段階とを備え、
上記段階d)〜f)は人間による介在なしで実施されることで、上記被検者における異常性の評価を提供する、方法。
【0027】
このスクリーニング方法の実施例において、核は上記サンプルから分離され、且つ、該核は、上記接触段階に先立ち、析出されて核の層を形成する。更なる実施例において、自動顕微鏡システムは、自動画像化、自動分析、および、結果の自動報告の各段階の内の少なくともひとつの段階、および、通常は全ての段階を実施する。上記単一層の核調製は、たとえばパラフィンに埋設された腫瘍組織サンプルからの薄寸区画の適切な処理によるなど、当業界で公知である多数の方法により実現され得る。この方法においては、被検者から獲得されるサンプルに対する多様な起源が想起される。このスクリーニング方法の付加的実施例において、画像を自動的に提供する段階、画像を獲得すべく該画像が生ずる領域を当該顕微鏡が自動的に最適化する段階、および、サンプルの領域における2つ以上の平面から画像を獲得して該画像の自動分析を実施する段階などの該方法の種々の段階にては、自動顕微鏡が用いられる。種々の実施例において、上記異常性は、癌、高度の過形成、または、高度の形成異常であり得る。上記プローブにより目標限定される種々の異常性としては、一塩基多型、変異配列、または、複製された遺伝子もしくはその一部が挙げられる。付加的に、一定の実施例において上記プローブは、染色体3のセントロメア、染色体7のセントロメア、または、TERC遺伝子もしくはその一部を含む配列を目標限定する。
【0028】
更なる別実施例においては、患者における癌または高度の過形成の治療における療法の経過の時間に亙る有効性を監視する自動的方法が開示される。この方法は、
(a)癌または高度の過形成に関連する細胞が見出される流体的生体サンプルを患者から獲得する段階と、
(b)上記癌もしくは高度の過形成に関連するひとつ以上の染色体領域、または、その増幅物が上記癌もしくは高度の過形成に関連するひとつ以上の染色体領域に対して高度の配列類似性を有する一種類以上の検出可能に標識化された染色体用プローブにより、上記流体的生体サンプルもしくはその一部を処理する段階であって、上記処理は、上記サンプルにおける染色体に対する上記プローブのハイブリッド形成を可能とするに十分な条件下で実施されるという段階と、
(c)上記処理された流体的生体サンプルを自動的に走査し、且つ、上記サンプル中の何らかの染色体に対してハイブリッド形成された一種類以上の染色体用プローブに結合した上記一種類以上の標識を検出する段階と、
(d)上記染色体用プローブに対してハイブリッド形成した上記染色体に関係付けられた細胞の個数を自動的に検出する段階と、
(e)治療処置経過における異なる時点にて段階(c)および(d)において提供された標識および細胞個数の結果のハイブリッド形成パターンを自動的に比較することにより、癌もしくは高度の過形成の治療における療法の有効性を評価する段階とを含む。
【0029】
一実施例において、監視は1日以上の時的間隔にて実施される。有効性を監視するこの方法の種々の実施例において、上記流体的生体サンプルは、血液、リンパ液、尿、浸出流体、上皮掻き取り物、潅注流体、吸引流体および唾液の内の一種類以上を含む。有効性を監視するこの方法の更なる実施例において、自動顕微鏡システムは、該自動顕微鏡システムを使用する自動走査および自動検出の少なくとも一方を実施すると共に、サンプルを走査する領域を自動的に最適化し、更に、上記サンプルの領域における2つ以上の平面を走査する。種々の実施例において、上記自動顕微鏡システムは人間による介在なしで動作する。更なる付加的実施例において、プローブは、一塩基多型(SNP)、変異配列、複製もしくは増幅された遺伝子もしくはその一部、染色体3のセントロメア、染色体7のセントロメア、および、TERC遺伝子を含む配列もしくはその一部、の内の少なくともひとつを目標限定する。
【0030】
更なる別実施例においては、染色体異常性に対する自動的で高スループットの特性記述のための方法が開示される。この方法は、
a)生体的サンプルを自身上に備える少なくともひとつの顕微鏡スライドを配備する段階であって、上記サンプルは染色体異常性を隠していると推測され、且つ、上記サンプルは上記異常性の検出に対して特異的である検出可能に標識化された少なくとも一種類のプローブに対してハイブリッド形成されているという段階と、
b)上記少なくともひとつのサンプル担持スライドを、自動顕微鏡の載物台上における該スライドの自動的で可逆的な載置のための手段へと設置する段階と、
c)上記載置手段により自動的かつ可逆的に、サンプル担持スライドを上記顕微鏡載物台上に可逆的に載置する段階と、
d)上記顕微鏡により自動的に上記標本の少なくともひとつの画像を獲得する段階であって、上記画像は染色体に対してハイブリッド形成された標識化プローブの表現物を含むという段階と、
e)上記異常性を特性記述するために、上記顕微鏡により自動的に上記画像を分析する段階と、
f)段階(e)の分析の結果を自動的に報告する段階と、
g)段階(c)〜(f)を自動的に反復する段階とを含む。
【0031】
種々の実施例において上記自動顕微鏡は、人間による介在なしで動作する。この高スループット方法の付加的実施例において、上記自動顕微鏡は、上記画像が生ずる領域を最適化することにより該画像を獲得し、且つ、核の領域における2つ以上の平面から画像を獲得する。上記生体的サンプルは、種々の組織および生体的流体の内の任意のものに由来し得る。更に、上記異常性は、癌、高度の過形成、または、高度の形成異常であり得る。上記高スループット方法において使用される上記プローブにより目標限定される種々の異常性としては、一塩基多型(SNP)、変異配列、複製もしくは増幅された遺伝子もしくはその一部、染色体3のセントロメア、染色体7のセントロメア、および、TERC遺伝子を含む配列もしくはその一部、の内の少なくともひとつが挙げられる。
【0032】
更なる実施例は、
(a)生体的サンプルに対し、染色体物質のひとつ以上の部分に対する高度の配列類似性を有する一種類以上の染色体用プローブを、(もしあるなら)上記サンプルにおける染色体に対して上記プローブのハイブリッド形成を可能とするに十分な条件下で、ハイブリッド形成させる段階であって、上記プローブは検出器により検出可能な一種類以上のタグによりタグ付けされていることを特徴とするという段階と、
(b)上記生体的サンプルを自動走査すると共に、該サンプルにおける任意の染色体に対してハイブリッド形成された一種類以上の染色体用プローブに関係付けられた一種類以上のタグを検出器により検出する段階と、
(c)もしあるなら、上記サンプル中の染色体であって、ハイブリッド形成されたプローブによりタグ付けされた染色体と、該染色体に関係付けられた特定のプローブとを自動的に報告する段階と、
を順番に含む方法を開示する。
【0033】
本明細書に開示された上記方法の種々の実施例において、上記セントロメア・プローブは、当該領域の複製もしくは当該領域の存在が特定の癌状態に関係付けられるという領域を含むことが知られた染色体に対して指向され得る。たとえば、上記セントロメア・プローブは染色体3および/または染色体7に対して指向され得る。可能的には単一複製配列に対する上記領域特異的プローブは、染色体3のq腕上の領域の如き癌に関係付けられた領域に対して同様にハイブリッド形成し得る。上記プローブ自体は好適には、サンプル中の染色体に対する該プローブのハイブリッド形成を可能とするに十分な条件下で、特定の癌/過形成に対して関係付けられた領域に関係付けられた染色体物質、または、その増幅物が特定の癌/過形成に対して関係付けられるという染色体物質のひとつ以上の部分に対して高度の配列類似性を有し得る。上記プローブはたとえば、染色体領域3q26におけるTERC遺伝子を含む4個の重複BACクローンから成る整列群であり得る。プローブ混合物に対しては、付加的なセントロメアもしくは領域特異的プローブが付加され得る。核の染色は、対比染色により得る。核の染色剤は、たとえばDAPIとされ得る。上記サンプルを自動的に走査する際に、該サンプルは、ひとつの領域から別の領域へと自動的に移動する自動顕微鏡上へと装填され得る。該顕微鏡は、所定数の信号チャネルの監視を許容すべくプログラムされ、または、別様に作用的に構成され得る。たとえば、自動顕微鏡は、(たとえば、染色体3、3q上の領域に対する信号、および、他のセントロメアもしくは領域特異的信号を計数するための)DAPIおよび他の蛍光チャネルを走査し得る。走査された核は、上記自動顕微鏡により自動的に記録され得、且つ/又は、細胞遺伝学者および/または病理学者、または、他の保健医療提供者に対して提供され得る。呈示は、(たとえば、2に等しくない3qのカウント値が最初に呈示されるなどして)異常カウント値を備えるものが最初に呈示されるべくソートされた様式などの多くの様式とされ得る。(たとえば、染色体3および/または染色体7に対するセントロメア・プローブ、および、染色体領域3q26におけるTERC遺伝子もしくはその一部を含む4個の重複BACクローンから成る整列群から成る染色体3のq腕上の単一複製配列に対する領域特異的プローブ、DAPI核対比染色を使用し、次に染色体3、3q上の領域に対する信号を計数し、且つ、2に等しくない3q関連信号の異常カウント値を見出すことにより、)子宮頚癌の如き種々の癌が検出され得る。
【0034】
斯かる実施例における自動走査は、たとえば自動顕微鏡により実施され得、生体的標本は、顕微鏡載物台上へと手動的もしくは自動的に装填されるスライド上に載置され、且つ、スライドは自動的に走査される。斯かるシステムにおいて採用され得る自動顕微鏡は、本出願人の他の複数の特許出願に記述された如きである(以下を参照)。走査はまた、生体的サンプルが載置される他の基板上/内で行われ得る。走査は、ひとつの平面内において、または、たとえば2つ、3つまたはそれ以上の平面の如きひとつより多い平面内において生体的サンプルを走査する段階を備える。複数の平面内で走査することにより、サンプル中の細胞の総数に関して希であり得る異常細胞の検出が相当に改善され得る。上記プローブは、蛍光信号が検出器により感知されるというFISHプローブを利用し得る。上記プローブは別の入力信号ありでもしくは無しで信号を生成し得、たとえば、該プローブは、(適切な波長の光、または、他の電磁放射線の如き)起動信号により衝当されたときに放射性となりもしくは蛍光を発し得る。上記各プローブは、種々の複製関連癌に指向され得ると共に、異なる信号を生成すべく異なる蛍光タグを備え得る。蛍光タグを検出するたとえば蛍光検出器などの検出器は、タグにより生成されるべき単一もしくは複数の信号に従い選択され得、その検出器は、蛍光タグにより生成された特定の蛍光信号の検出を許容すべく作用的に構成される。報告は、特定の染色体に関係付けられた特定のタグの単純な報告を含み得、且つ/又は、(染色体の特定のハイブリッド形成パターンに関係付けられた癌の種類を表す)自動診断を備え得る。正常な標本と比較したベクタ値は、約60未満、または、約40未満、または、約30未満、または、約20未満、または、約10未満、または、約0.500未満の如き、特定のスレッショルド値未満となるべく選択され得る。有用なシステムは、複数の信号チャネルにおける同時的な、または、相互に(たとえば1分未満の)比較的に短い時的間隔での自動的な走査および検出を含み得る。上記システムは、リアルタイムで、同時的または並列的(もしくはその混合)で複数の信号の各々を処理することで、一種類以上の特定の癌/過形成を表す染色体領域および/または局限的複製の迅速な検出を許容すべく作用的に構成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書中で用いられる如く、“タグ”および“標識”とは、特定の検出方法および手法によりプローブに対して接合されて該プローブを検出可能とする部分(moiety)に対して同義的に関連している。
【0036】
本明細書中で用いられる如く、“プローブ”とは概略的に、細胞目標物に対して結合するように、且つ、目標物として意図されない細胞の部分もしくは構造に対してはそれほど結合しないように特に設計された物質に対して関連している。幾つかの実施例においてプローブは核酸、ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドとされ得、その配列は、細胞染色体もしくは他の核酸における目標配列に対して十分に相補的とされて、それの構造に対して適切な条件下でハイブリッド形成する。種々の付加的実施例においてプローブは、細胞構造を特異的に目標限定する特異性決定結合部位を担持する抗体もしくはその一部とされ得る。
【0037】
本明細書中で用いられる如く、“表現物”とは概略的に、生体的サンプルを検査すべく特定の検出方法を用いて得られた結果を特性記述する情報の任意の視覚的、グラフィック的、数値的、または類似の集合体に対して関連している。非限定的な例として、表現物としては、生体的サンプルの少なくとも一部分を含む顕微鏡視野の画像、たとえばコンピュータ駆動式手段により更に改変されて視野内の特定構造に対して色値を付与することで情報を伝達する画像、サンプルの画像から導出された特定構造を特性記述するグラフィック的表現物、および、画像から導出された特定構造を特性記述する複数の値もしくは複数の記述的エントリの表が挙げられる。
【0038】
本明細書中で用いられる如く“目標物”、“目標限定された”、“目標限定する”、および、類似の語句もしくは表現は概略的に、プローブが特異的に指向される細胞構造に対して関連している。目標物とは、プローブと該目標物とから構成される特異的結合対の要素である任意の構造もしくは構成要素である。上記プローブおよび目標物は、相互に対して結合するためには大きな特異性および結合性を有すると共に、認識すべきことが意図されないプローブもしくは目標物に対しては低い特異性および低い結合性を有する。核酸を含み又は少なくとも特定配列の塩基を含むプローブに対し、目標物は、細胞の染色体もしくは核酸の構成要素に見出される相補的配列である。抗体、または、抗体の特異的結合断片であるプローブに対し、目標物は細胞に見出される抗原もしくはハプテン構造であり得る。この枠組みにおいて、プローブは“目標限定を行う”部分であり、且つ、目標構造は上記プローブにより“目標限定される”。
【0039】
本明細書においては、信号の自動的検出を採用して癌および過形成、特に高度の過形成を検出および監視するシステムおよび方法が提供される。
【0040】
代表的実施例において、生体的サンプルは、検出可能タグを有する一種類以上の染色体用プローブにより調べられる。上記染色体用プローブは、癌または高度の過形成の如き過形成に関連する要素を表す染色体物質のひとつ以上の部分に対する高度の配列類似性を有すべく選択および/または構成され得る。上記プローブは、染色体上の領域であって、癌/過形成を表すという、または、その増幅が癌/過形成に関連付けられるという領域に対して該プローブが関連付けられる如く選択され得る。たとえば、染色体上の特定領域の複数の複製は癌/過形成を表し得る。上記プローブ上のタグは好適には、直接的に、または、(たとえばタグの一部分に対する別の検出可能分子の結合により)間接的に検出可能である。ひとつの場合において、上記タグはFISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)の如き蛍光である。タグ付きプローブと、染色体物質上の関心領域との間のハイブリッド形成を促進すべく、ハイブリッド形成は、ハイブリッド形成に対して十分な条件下で行われるべきである。斯かる実施例においてサンプルは、各タグを検出し得る検出器を用いて自動的に走査される。自動走査は、人的介在を必要とせずに複数の領域に亙りサンプルを探索すべく作用的に構成された自動顕微鏡によるものとされ得る。上記タグを特定の染色体に関連付ける機能によれば、ハイブリッド形成変化特性が癌または高度の過形成の如き過形成を表すか否かが決定され得る。斯かる関連付けによれば、癌/過形成が其処に在り得るか否かが決定され得る。選択的に、斯かる実施例のシステムは、サンプル中の染色体であって、ハイブリッド形成されたプローブによりタグ付けされたという染色体と、染色体に対して関連付けられた特定のプローブとを自動的に報告する、たとえばソフトウェア、ハードウェア、または、ソフトウェア/ハードウェア組み合わせなどの手段を含み得る。ハイブリッド形成に基づく自動診断もまた、上記自動顕微鏡システムの一部として提供され得る。
【0041】
別の代表的実施例においては、癌または高度の過形成の如き過形成を治療する療法の有効性を監視する方法およびシステムが提供される。上記監視は、患者が治療されるときの療法の方式の効果を追跡すべく経時的に行われ得る。斯かる実施例においては、血液、リンパ、および、浸出流体、潅注流体または吸引流体の如き容易に入手可能な流体サンプルが、癌および/または過形成を治療する療法下における患者から採取される。その様に獲得された任意のサンプルは該サンプル内に、癌もしくは高度の過形成の検出可能な染色体異常特性を隠していると推測される細胞などの有核細胞を有する。上記サンプルは次に、染色体物質における特定の領域もしくは位置にハイブリッド形成する染色体用プローブであって、たとえば流体サンプルから成る異常サンプルに関連付けられた増幅を検出するという染色体用プローブにより処理される。選択的に、特定の癌/過形成に対して2つ以上が関連するという異なる領域に対して指向された複数のプローブが使用され得る。斯かる組み合わせを使用すると、癌/過形成の検出の効率が改善され得る。斯かる複数のプローブは好適には、異なる蛍光タグの如き異なるタグによりタグ付けされる。各タグは、人的介在なしでサンプルの個別領域を反復的に観察すべく作用的に構成された自動顕微鏡の如き自動走査デバイスに関連付けられた検出器により読取可能とされるべく選択される。サンプル中の染色体に対してハイブリッド形成される一種類以上の染色体用プローブに対して関連付けられたタグを検出することにより、癌/過形成を表すハイブリッド形成パターンが決定され得る。上記染色体用プローブによりハイブリッド形成された染色体に関連付けられた細胞の個数の自動検出により、改善が行われ得る。すなわち、異常染色体補体を表す流体内の細胞の個数が、早期において見られた細胞の個数より多いか少ないかを判断することにより、使用されている療法が、治療されつつある癌/過形成の治療に効果的であるか否かが判断され得る。故に、特定の癌に関する特定の所定の療法の効率は、経時的に生体的サンプル中に検出される細胞の個数の変化に基づく。たとえば、治療後に以前より少ない細胞が見られるならば、その療法は効くことが決定され得る。斯かる巡回的な異常細胞に見られる減少の程度によれば、異なる療法の比較も為され得る。
【0042】
癌または過形成を治療する療法の有効性を監視すべく提供された方法およびシステムの変更例において、患者は医療施設または病院施設に対する訪問から独立してサンプルを提供し得る。たとえば患者に対しては、本明細書に記述された方法による次続的な分析のために血液のサンプルを獲得するキット、システム、または、類似の機器が提供され得る。斯かる非限定的な例においては、一滴もしくは数滴の如き小体積のサンプル血液が取得され、選択的に処理されて凝固が阻止され、選択的にスライド上に配設され、または別様に、次続的分析に適した状態に維持される。斯かるサンプルを蓄積する予定としては、毎日のサンプリング、または、一日置きのサンプリング、または、1週間に2回、または、1週間毎、または、2週間毎、または、毎月、または、更に長い時的間隔が挙げられる。各サンプルは、乾燥されたチャンバ内に保存され得ると共に、輸送もしくは移送および次続的分析を待つ間に、冷蔵もしくは凍結され得る。
【0043】
同様に、染色体3qの増幅に関連する高度の過形成の如き癌/過形成の検出に対して使用され得る代表的実施例、システム/方法も記述される。実施例の方法においては、中間期FISHハイブリッド形成に対して核の単一層調製が行われる。たとえば、核の層は、パラフィンに埋設された腫瘍組織サンプルからの薄寸区画の適切な処理に続いて獲得されることで、核塗沫標本が提供され得る。該核塗沫標本は次に、染色体3もしくは染色体7に対するセントロメア・プローブを用いて染色される。次続的に、予め、または、同時的に、上記核塗沫標本は、問題となる癌/過形成を表す染色体3のq腕上の単一コピー配列のための領域特異的プローブによっても染色される。たとえば上記プローブは、染色体箇所3q26もしくはその一部におけるTERC遺伝子を含む4個の重複BACクローンから成る整列群とされ得る。プローブ混合物に対しては、他のセントロメア・プローブもしくは領域特異的プローブが添加され得る。ひとつの好適な見地において、各プローブは異なる蛍光色素により標識化されて、明確な信号の更に容易な検出が許容される。選択的に上記塗沫標本は、DAPIの如き核染色剤により対比染色され得る。染色された塗沫標本は次に、自動顕微鏡の如き自動走査デバイスに対して適用され、且つ、DAPIおよび必要とされるだけの個数の蛍光チャネルにおいて自動的に走査されることで、染色体3、3q上の領域に対する信号、および、他の一切のセントロメアもしくは領域に特異的な信号が計数される。走査された核は、細胞遺伝学者または病理学者の如き保健医療専門家による吟味のために、彼らに対して呈示され得る。保健医療専門家に対する呈示は、たとえば、最初に示された3q関連信号の(たとえば2に等しくない)異常カウント値により核をソートした様式とされ得る。代替的もしくは協働的に、上記システムは、走査された核を(たとえば)事前プログラムされたアルゴリズムに基づいて分析し且つ自動診断表示を保健医療提供者に対して提供すべく、(たとえばプログラムにより)作用的に構成され得る。斯かる試験は、子宮頚癌などの多くの癌の検出に対して使用され得る。
【0044】
生体的サンプルの顕微鏡分析を実施する自動的な装置および方法は、診断手順を増進すると共に、顕微鏡式診断設備におけるサンプルのスループットを最適化する。同一の譲受人により所有された特許文献4には、ロボット式顕微鏡システムが記述されている。その開示の中では、第2表面に沿い変位可能な統合型顕微鏡システムが提供される。該統合型顕微鏡システムは、遮光囲繞体内に収容された自動ロボット式の顕微鏡システムを含んでいる。このシステムにおいて、上記自動ロボット式の顕微鏡システムは、(i)載物台を有する顕微鏡、(ii)上記載物台上に位置決め可能である少なくともひとつの標本スライド、(iii)上記スライドを照射する光源、(iv)上記標本の画像を捕捉する画像捕捉デバイス、および、(v)上記標本スライド、上記光源および上記画像捕捉デバイスと通信してそれらの位置決めを制御する電気的、電子的および/またはコンピュータ駆動式の手段を含んでいる。更に、このシステムにおいては上記遮光囲繞体は該囲繞体の内部である少なくともひとつの棚部を含み、上記自動ロボット式の顕微鏡システムは棚部上に位置され、且つ、画像もしくは顕微鏡視野の表現物を表示し得る視認モニタであって上記囲繞体の表面に配設されて該囲繞体の外部の箇所から視認可能であるという視認モニタが視認もしくは分析される。
【0045】
同一の譲受人により所有された特許文献5には、動的で自動化された顕微鏡操作およびスライド走査システムが記述されている。開示された実施例は、顕微鏡スライド載物台と、少なくともひとつの照射エネルギ源と、少なくともひとつの電子的画像化デバイスと、少なくともひとつの交換可能な構成要素回転台と、同期コントローラとを取入れた動的走査顕微鏡を用いて、顕微鏡スライド上に取付けられた標本を動的に走査する自動顕微鏡および方法を含んでいる。代表的な自動顕微鏡は、検証を実施するために必要な時間を相当に減少し、システムに到達する振動を減少し、且つ、診断結果を提供する機能を有する。画像化プロセスの間、上記載物台および色フィルタ・ホィールは、従前の手法の如く静止的ではなく、定常的動作である。運動する各サブシステム上のリアルタイム位置センサは、載物台に取付けられたスライド、および、上記色フィルタ・ホィールの夫々の即時的位置を正確に遠隔測定する。上記色フィルタ・ホィールは十分な速度で回転することで、、各画像化箇所および焦点面においてフィルタ波長の各々における画像の捕捉を許容する。
【0046】
同一の譲受人により所有された特許文献6には、自動顕微鏡システムにおいて使用される交換可能な対物レンズ、フィルタ、および、同様の要素が記述される。該特許文献6は概略的に、遠隔操作されまたはロボット的に制御される顕微鏡に関し、特に、対物レンズアセンブリ、フィルタおよび/または他の光学的構成要素の自動交換のための機械化に関している。光路における光学的構成要素を交換する装置が開示され、該装置は、回転可能なモータシャフトを有する制御モータと、該制御モータを支持する支持構造と、当該平坦基部上の中心点に関して概略的に対称的である周縁部により画成された平坦基部であって、基部中心点から同一距離にて等角度で載置された複数の光学的構成要素を収容する複数の取付け器具を含むという平坦基部と、上記平坦基部の中心点の回りで該平坦基部を概略的に対称的に回転させることで、選択された特定の光学的構成要素を光ビーム内に位置決めするという機構とを含んでいる。
【0047】
同一の譲受人により所有された特許文献7には、自動顕微鏡システムにおいて使用される自動顕微鏡載物台が記述されている。該特許文献7は概略的に、顕微鏡の光軸に沿い調節可能に移動可能である顕微鏡載物台に関している。たとえば、顕微鏡の光軸に方向に沿い調節可能である顕微鏡スライド取付け部材が開示され、該取付け部材は、ベースプレートと、上記光軸の方向に沿う当該顕微鏡載物台アセンブリの変位を許容すべく作用的に構成された上記ベースプレート上に移動可能に取付けられた顕微鏡載物台アセンブリと、上記顕微鏡載物台アセンブリに対して固定された顕微鏡スライド保持手段とを含む。
【0048】
同一の譲受人により所有された特許文献8には、自動顕微鏡システムにおいて使用される自動顕微鏡スライドカセットおよびスライド操作システムが開示されている。該特許文献8は、各スライドを離間した平行な設定で保持すべく構成された複数のスロットを画成するカセット内に収容されたスライドを取り出し且つ交換する機構を開示している。
【0049】
同一の譲受人により所有された特許文献9には、自動顕微鏡システムにおいて使用される自動顕微鏡スライド装填および降荷機構が記述される。好適実施例は顕微鏡スライド操作デバイスを開示し、該デバイスは:基部構造と;貫通空隙を画成するスリーブであって、該スリーブは第1端部および第2端部を有し、上記第2端部は上記基部に対して締着され、該スリーブは上記基部に対して直角に配向されるというスリーブと;上記スリーブ貫通空隙における当該長手シャフトの軸心方向かつ長手方向の移動を許容する様式にて上記スリーブ貫通空隙内に部分的に位置されると共に仮想的長手軸心に関して対称的な長手シャフトであって、該長手シャフトはシャフト第1端部およびシャフト第2端部を有し、上記シャフト第2端部は上記スリーブ貫通空隙内に位置され、且つ、上記シャフト第1端部は上記スリーブ第1端部を越えて突出すると共に、該シャフト第1端部は上記スリーブ仮想的長手軸心に対する平面内における平行軌道構造を含むという長手シャフトと;上記スリーブ第1端部にて上記平行軌道構造間に摺動可能に位置されたプレートであって、該プレートは第1プレート端部および第2プレート端部を有し、該第1プレート端部および第2プレート端部の一方は、顕微鏡スライドの幅に対応する各分岐部間の空隙領域を画成する二分岐構成を有し、上記分岐部は、その縁部に沿い顕微鏡スライドの把持を許容すべく作用的に構成された把持構造を有するというプレートと;を含んでいる。
【0050】
同一の譲受人により所有された特許文献10には、生体的サンプルからの蛍光信号の顕微鏡的検出を推進すべくコンピュータ常駐プログラムを採用すると共に自動顕微鏡システムの推進に使用可能な自動的方法が開示されている。其処に開示された、複数のサンプルの高スループット分析に適した顕微鏡分析の代表的方法は、スライド載物台と、少なくともひとつの対物レンズと、画像捕捉手段と、プロトコルに従い顕微鏡を操作するプログラム可能手段と、分析結果を提供するプログラム可能手段とを備える自動顕微鏡を配備する段階と;サンプルと、当該顕微鏡スライド上の照会可能データとを含む顕微鏡スライドを配備する段階と;上記データを照会する段階と;上記スライドを上記スライド載物台上に位置決めする段階と;上記照会可能データにコード化された分析プロトコルに従い、上記顕微鏡により上記サンプルを分析させる段階と;上記顕微鏡により、上記サンプルを表す分析結果を提供する段階と;を含んでいる。同一の譲受人により所有された特許文献11には、画像処理のためにFISH検定を行う際に顕微鏡を駆動するコンピュータ常駐プログラムを用いる顕微鏡の自動操作法が記述されている。自動的な蛍光in situハイブリダイゼーション方法を実施すべく採用され得る種々の画像処理機能を実施する実施例が開示される。各実施例としては、デジタル電子機器のダイナミック・レンジを超える強度範囲に亙りサンプルの全ての領域を容認可能に画像化する自動露光方法;サンプル内の目標を位置決定する、蛍光in situハイブリダイゼーション関心物体を計数する方法;計数された関心物体を分類して特性記述するための方法である核識別方法;識別された関心物体の形状を限定する方法である、核のセグメント化方法;が挙げられる。上記方法の各実施例は、細胞核を特性記述すべく、もしくは、染色体を計数する上で有用である。
【0051】
先行する各段落において記述された自動顕微鏡システムは、コンピュータに常駐してコンピュータにより実施される命令の制御下で動作する。故に上記システムは、人的介在なしで、サンプルの自動的な検出および分析を許容する。上記自動スライド・カセットおよび自動スライド装填および降荷機構は、複数のサンプルの無人的な高スループットの分析を許容する。
【0052】
本明細書に開示される方法は、発癌現象の間における体細胞遺伝子複製もしくは遺伝子増幅を受けている遺伝子を隠していると推測される細胞の組織標本の検出および分析の自動化に関している。上記方法は、コンピュータ推進式の画像蓄積、および、獲得された画像のコンピュータ推進式分析、ならびに、当該方法を人的介在から相当程度まで解放するという自動手順において種々のフォーマットでの斯かる分析の結果報告を付与する。非限定的な例として、報告は、スライド上の視野の表現物の図表、表、画像などの形態で呈示され得る。報告はファイルもしくはレコードなどのデジタル形態であることから、吟味のために局所的もしくは遠隔的な箇所へと好都合に広められる。本明細書で参照される構成要素およびソフトウェアを含むシステムの如き自動蛍光顕微鏡検査法を使用することから、組織サンプルの迅速で好適かつ正確なスクリーニングが行われる。これらの方法、および、それらを実施する上で採用される自動顕微鏡システムは特に、複数の組織サンプルの高スループット分析において使用されるに良く適している。
【0053】
組織サンプルは、非限定的な例として、上皮表面からの掻き取り物、上皮組織の手術的切除物、種々の生体組織、および、手術的に切除された組織および器官などの、疑わしい組織または器官からの標本をもたらす医療的もしくは外科的な処置に由来し得る。非限定的な実施例において、斯かるサンプルは支持材料内に固定かつ埋設されると共に、その組織薄片は、ミクロトームまたは類似器具において調製される。上記組織薄片は、顕微鏡スライド上に取付けられる。付加的に、分析のためのサンプルは、生体組織、血液、リンパ液、尿、浸出流体、生体的流体、潅注流体、吸引流体、唾液および組織から由来し得る。
【0054】
種々の実施例において、スライドに取付けられた組織薄片は次に、適切な光学フィルタにより分離可能な特定発光色を有する蛍光プローブにより染色体もしくは核酸を染色する包括的蛍光染料により処理される。包括的染料の非限定的な例は、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)である。DAPIによる染色は、FISHプローブからの画像の更なる捕捉のために、コンピュータ推進式の画像捕捉プロセスに対し、核のもしくは染色体の箇所を特定する手段を付与する。
【0055】
上記組織標本は、目標限定されるべく追求される発癌遺伝子に対して特異的である遺伝子配列、または、遺伝子配列のセグメントもしくは一部分を特異的に目標限定すべくヌクレオチド配列が構成されて蛍光的に標識化されたFISHプローブに対してハイブリッド形成される。上記プローブにおいて使用される種々の蛍光標識は、適切なフィルタおよび関連光学的構成要素の使用により光学的に分離可能である。上記ヌクレオチド配列の特異性によれば、目標配列を有する標本における全てのまたは殆どの染色体が実際に上記プローブにハイブリッド形成される一方、目標でない配列はハイブリッド形成されないままとされることが確実とされる。ハイブリッド形成は、目標配列を十分に加熱して変性させることで、上記プローブと相補的な単一鎖DNAを露出させることで進展される。上記プロセスは次に、露出された単一鎖に対して上記プローブを徐冷することで、上記配列を蛍光標識により標識化することで継続される。本発明の分野における当業者であれば、必要なハイブリッド形成を達成するための溶液のイオン強度、緩衝液組成、温度などの特定条件を知り得よう。徐冷に続き、過剰なプローブは洗浄除去される。
【0056】
ハイブリッド形成された標本を担持するスライドは、自動顕微鏡システムの構成要素であるスライド装填カセット内へと挿入される。上記システムは動作すべく設定され、その時点で上記スライドは、上記カセットから顕微鏡の載物台へと搬送されてその上に載置される。多くの実施例において各スライドは、自動顕微鏡により照会可能なコードであって、標本識別情報、および、問題となる標本と共に使用される任意の包括的染色体用染料およびFISHプローブ上の種々の蛍光標識のIDの如き情報を含み得るコードを担持し得る。斯かる情報は、画像蓄積プロセスを通して使用される適切な光学フィルタおよび関連光学素子の選択において自動顕微鏡を指導する。
【0057】
自動顕微鏡の如き自動走査デバイスは、ひとつの平面内で、または、たとえば2つ、3つもしくはそれより多い平面内で生体的サンプルを走査すべく構成され得る。複数の平面内で走査することにより、サンプル中の細胞の総数に関して希であり得る異常細胞の検出が相当に改善され得る。
【0058】
実施例において上記プローブはFISHプローブを利用し得、その場合に蛍光信号は検出器により検出される。上記プローブは別の入力信号ありでもしくは無しで信号を生成し得、たとえば、該プローブは、(適切な波長の光、または、他の電磁放射線の如き)起動信号により励起されたときに放射性となりもしくは蛍光を発し得ることが理解されるべきである。上記各プローブは、複製関連の癌/過形成領域、特に、癌/過形成に関連する領域に指向され得る。各プローブに対しては、異なる信号を生成するために、異なる領域に対する異なる蛍光タグが関連付けられる。
【0059】
蛍光タグを検出するたとえば蛍光検出器などの検出器は、タグにより生成されるべき単一もしくは複数の信号に従い選択され得、その検出器は、蛍光タグにより生成された特定の蛍光信号の検出を許容すべく作用的に構成される。
【0060】
自動的分析は、顕微鏡の低倍率の使用を指示し、少なくとも包括的染料および可能的にはプローブ標識を使用して、高倍率で画像化するための標本内の領域を特定することで開始し得る。コンピュータ・ソフトウェアが低倍率にて該当する領域を特定したとき、該ソフトウェアは、プローブに使用されたひとつもしくは別の蛍光標識に由来する発光に基づき高倍率にて特定される領域の適切な画像分析のために、対物レンズおよび/またはフィルタ、および、他の一切の光学的構成要素を交換することを自動顕微鏡に対して指示し得る。上記コンピュータ・ソフトウェアは次に、非限定的な例として、FISH標識化スポットの強度および個数などの画像における特定構造を使用して、単一核内で生ずる斯かるスポットを計数し得る。斯かる計数によれば、分析されつつある標本における組織の細胞における遺伝子増幅の程度の結果的表示が提供され得る。
【0061】
報告は、特定の染色体に関係付けられた特定のタグの単純な報告を含み得、且つ/又は、(染色体の特定のハイブリッド形成パターンに関係付けられた癌の種類を表す)自動診断を備え得る。一定の実施例において上記自動顕微鏡システムは、動作の間に獲得された種々の画像、視野および表現物中に得られた所見を詳述する報告を自動的に生成する。斯かる報告は、自動顕微鏡に関係付けられたメモリ・デバイス内に既に存在する履歴情報または患者情報を参照し得る。
【0062】
有用なシステムは、複数の信号チャネルにおける同時的な、または、相互に(たとえば1分未満の)比較的に短い時的間隔での自動的な走査および検出を含み得る。上記システムは、リアルタイムで、同時的または並列的(もしくはその混合)で複数の信号の各々を処理することで、一種類以上の特定の癌を表す染色体領域および/または局限的複製の迅速な検出を許容すべく作用的に構成され得る。
【0063】
正常な標本と比較したベクタ値は、約60未満、または、約40未満、または、約30未満、または、約20未満、または、約10未満、または、約3未満、または、約1未満、または、約0.500未満の如き、特定のスレッショルド値未満となるべく選択され得る。
【0064】
分析手順の非限定的な例において、上記自動的方法は以下の如き段階を包含し得る:
1.パラフィンに埋設された組織からの薄寸区画をスライド上に重ねることにより、顕微鏡標本が載置される。
2.上記組織区画は、目標限定された染色体箇所または配列に対する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)プローブを用いて染色される。
3.FISHプローブ処理に続き、上記スライドは、100もしくは200もしくは300もしくは400ドット/インチ以上に設定され得る解像度にてデスクトップ・スキャナを用いて走査されると共に、走査された画像は、注目のために病理学者によりマークされた領域を特定すべく処理される。この領域に関してデジタル化された情報は、Ikoniscope(登録商標)顕微鏡システム(コネチカット州、ニューヘーブン、イコニシス社(Ikonisys, Inc.))の如き自動蛍光顕微鏡へと受け渡される。
4.上記スライドは、自動顕微鏡に装填される。
5.2Xもしくは4Xもしくは5Xもしくは10Xの倍率の如き低倍率、または、同様の低倍率を用い、核を含むスライドの領域を機器が検出するというDAPIチャネルを用いる分析のために、自動走査が開始される。典型的に、走査は段階(3)にてマークされた領域内で行われる。
6.次に、10Xもしくは15Xもしくは20Xもしくは40Xの如き高倍率、または更に大きな倍率を用いて、上記顕微鏡システムは、先の段階で特定された領域を走査する。走査は、核の検出に対するDAPIチャネルにおいて実施され、次に、走査は、たとえば橙色の放射線を放出する標識を備えたFISHプローブからの橙色信号を計数するための橙色チャネルの如き、上記プローブにおいて使用される蛍光標識により放出される範囲における波長の光に指向されたチャネルにおいて、且つ、緑色放射線を放出する標識を備えたFISHプローブからの信号を計数するための緑色チャネルにおいて、実施される。これらにより、更なる特性記述のために、核の如き該当する特定構造が提供される。
7.問題となる特定構造の位置は、100X倍率の如き最高倍率における次続的な走査および信号カウントの確認のために記録される。
8.上記自動顕微鏡は、20Xおよび100X走査の間に収集された画像の全てを吟味のために病理学者に呈示すると共に、もし病理学者が高倍率の別のスライド領域の吟味を要求するならば、次続的なスライドの再走査に対する可能性も提供する。
【0065】
好適実施例に関する陳述
本発明は好適実施例に関して記述されたが、当業者であれば、本発明に対しては添付の各請求項により定義された本発明の精神または有効範囲から逸脱せずに種々の変更および/または改変が為され得ることを容易に理解し得よう。付加的もしくは代替的な詳細、特徴および/または技術的背景の教示に対して適切な場合、本明細書において引用された全ての文献は言及したことにより本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者における病状であって被検者の細胞における異常染色体成分により特性記述されるという病状の存在および/または程度をスクリーニングする自動的方法であって、
a)上記被検者からの細胞核を含む生体的サンプルを、異常性を特性記述する少なくともひとつの染色体配列に対する一種類以上の区別可能に標識化されたプローブのハイブリッド形成を促進する条件下で、上記少なくともひとつの配列に指向された上記一種類以上のプローブに対して接触させる段階と、
b)上記染色体配列に対してハイブリッド形成された上記一種類以上の区別可能な標識の表現物を自動的に獲得する段階と、
c)上記表現物において上記一種類以上の標識の結合の分布および強度を自動的に分析し、異常染色体成分の存在および/または程度を決定する段階と、
d)段階c)の分析の結果を自動的に報告する段階とを備え、
上記段階b)〜d)は人間による介在なしで実施される、方法。
【請求項2】
前記段階b)〜d)を自動顕微鏡システムが実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プローブは、一塩基多型(SNP)、変異配列、複製もしくは増幅された遺伝子もしくはその一部、染色体3のセントロメア、染色体7のセントロメア、および、TERC遺伝子を含む配列もしくはその一部、の内の少なくともひとつを目標限定する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ハイブリッド形成条件下にて前記サンプルを、異常でないと知られた染色体領域に指向されたタグ付き基準プローブと接触させ、または、上記サンプルを基準染色剤と接触させる段階と、
前記表現段階および分析段階を上記基準プローブもしくは染色剤に対して関係付ける段階とを更に備えて成る、請求項1記載の方法。
【請求項5】
被検者における癌、高度の過形成または高度の形成異常に関連する異常性をスクリーニングする自動的方法であって、
a)上記被検者からの核を含む生体的サンプルを獲得する段階と、
b)上記サンプル中の上記核を、目標限定された染色体領域に対するプローブのハイブリッド形成を促進する条件下で、異常性に関連する染色体配列に指向された第1の検出可能標識を担持する第1プローブと接触させる段階と、
c)ハイブリッド形成条件下で上記サンプルを、異常でないと知られた染色体領域に対して指向されて検出可能に標識化された基準プローブ、および、基準染色剤の少なくとも一方と接触させる段階と、
d)上記染色体配列に対して結合された標識を自動的に画像化し、且つ、使用されるならば上記染色剤を画像化する段階と、
e)ハイブリッド形成された標識、および、使用されるならば染色剤の分布および強度に対する画像を自動的に分析する段階と、
f)段階e)の分析の結果を自動的に報告する段階とを備え、
上記段階d)〜f)は人間による介在なしで実施されることで、上記被検者における異常性の評価を提供する、方法。
【請求項6】
段階d)〜f)を自動顕微鏡が実施する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記接触段階に先立ち、前記核は前記サンプルから分離かつ析出されて層を形成する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルは、生体組織、手術切除標本、血液、リンパ液、尿、浸出流体、生体的流体、上皮掻き取り物、潅注流体、吸引流体、唾液および組織の内の一種類以上を含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
標識は蛍光標識である、請求項5記載の方法。
【請求項10】
プローブは、一塩基多型(SNP)、変異配列、複製もしくは増幅された遺伝子もしくはその一部、染色体3のセントロメア、染色体7のセントロメア、および、TERC遺伝子を含む配列もしくはその一部、の内の少なくともひとつを目標限定する、請求項5記載の方法。
【請求項11】
患者における癌または高度の過形成の治療における療法の経過の時間に亙る有効性を監視する自動的方法であって、
(a)癌または高度の過形成に関連する細胞が見出される流体的生体サンプルを患者から獲得する段階と、
(b)上記癌もしくは高度の過形成に関連するひとつ以上の染色体領域、または、その増幅物が上記癌もしくは高度の過形成に関連するひとつ以上の染色体領域に対して高度の配列類似性を有する一種類以上の検出可能に標識化された染色体用プローブにより、上記流体的生体サンプルもしくはその一部を、上記サンプルにおける染色体に対する上記プローブのハイブリッド形成を可能とするに十分な条件下で処理する段階と、
(c)上記処理された流体的生体サンプルを自動的に走査し、且つ、上記サンプル中の何らかの染色体に結合した上記一種類以上の標識を検出する段階と、
(d)上記染色体用プローブに対してハイブリッド形成した上記染色体に関係付けられた細胞の個数を自動的に検出する段階と、
(e)治療処置経過における異なる時点にて段階(c)および(d)において提供された標識および細胞個数の結果のハイブリッド形成パターンを自動的に比較することにより、癌もしくは高度の過形成の治療における療法の有効性を評価する段階とを備えて成る、方法。
【請求項12】
監視は1日以上の時的間隔にて実施される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記流体的生体サンプルは、血液、リンパ液、尿、浸出流体、上皮掻き取り物、潅注流体、吸引流体および唾液の内の一種類以上を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記段階(c)〜(e)を人間の介在なしで自動顕微鏡システムが実施する、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記自動顕微鏡システムは前記サンプルを走査する領域を自動的に最適化する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記自動顕微鏡は前記サンプルの領域における2つ以上の平面を走査する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
プローブは、一塩基多型(SNP)、変異配列、複製もしくは増幅された遺伝子もしくはその一部、染色体3のセントロメア、染色体7のセントロメア、および、TERC遺伝子を含む配列もしくはその一部、の内の少なくともひとつを目標限定する、請求項11記載の方法。
【請求項18】
患者は別の人間からの助力なしでサンプルを獲得する、請求項11記載の方法。
【請求項19】
染色体異常性に対する自動的で高スループットの特性記述のための方法であって、
a)生体的サンプルを自身上に備える少なくともひとつの顕微鏡スライドを配備する段階であって、上記サンプルは染色体異常性を隠していると推測され、且つ、上記サンプルは上記異常性の検出に対して特異的である検出可能に標識化された少なくとも一種類のプローブに対してハイブリッド形成されているという段階と、
b)上記少なくともひとつのサンプル担持スライドを、自動顕微鏡の載物台上における該スライドの自動的で可逆的な載置のための手段へと設置する段階と、
c)上記載置手段により自動的かつ可逆的に、サンプル担持スライドを上記顕微鏡載物台上に可逆的に載置する段階と、
d)上記顕微鏡により自動的に上記標本の少なくともひとつの画像を獲得する段階であって、上記画像は染色体に対してハイブリッド形成された標識化プローブの表現物を含むという段階と、
e)上記異常性を特性記述するために、上記顕微鏡により自動的に上記画像を分析する段階と、
f)段階(e)の分析の結果を自動的に報告する段階と、
g)段階(c)〜(f)を自動的に反復する段階とを備えて成る、方法。
【請求項20】
前記自動顕微鏡は人間による介在なしで動作する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記画像の獲得により、該画像が生ずる領域は自動的に最適化される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記自動顕微鏡は核の領域における2つ以上の平面から画像を獲得する、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記サンプルは、生体組織、手術切除標本、血液、リンパ液、尿、浸出流体、生体的流体、上皮掻き取り物、潅注流体、吸引流体、唾液および組織の内の一種類以上を含む、請求項19記載の方法。
【請求項24】
プローブは、一塩基多型(SNP)、変異配列、複製もしくは増幅された遺伝子もしくはその一部、染色体3のセントロメア、染色体7のセントロメア、および、TERC遺伝子を含む配列もしくはその一部、の内の少なくともひとつを目標限定する、請求項19記載の方法。

【公表番号】特表2010−508028(P2010−508028A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534860(P2009−534860)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/082540
【国際公開番号】WO2008/070333
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(504133615)イコニシス インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】