説明

癌のターゲッティングおよび検出のための高親和性抗前立腺幹細胞抗原(PSCA)抗体

本発明は、癌抗原PSCAと結合する、新規高親和性抗体およびその断片を提供する。本発明の抗体は、癌診断、予後、治療、可視化などに使用し得る。本発明はまた、PSCAを発現する種々の癌を検出、可視化および治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当なし
【0002】
連邦支援の研究または開発下でなされた発明の権利に関する陳述
本発明は、NIH/NCIによって与えられた助成金番号CA092131の政府支援を受けて創出された。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
コンパクトディスクで提出された、「配列表」、表またはコンピュータプログラム表付属物についての言及
該当なし
【背景技術】
【0004】
正常ヒト前立腺および膀胱において発現される、前立腺幹細胞抗原(PSCA)細胞表面糖タンパク質は、前立腺癌では過剰発現される(原発腫瘍の40%およびリンパ節および骨髄転移の60〜100%)。また、膀胱および膵臓癌腫の移行型癌腫においても高度に発現される。PSCAに特異的な抗PSCAマウスモノクローナル抗体である1G8は、インビボで抗腫瘍ターゲッティング活性を実証した(Gu Z, et al. Cancer Res. 2005; 65: 9495)。この抗体は、ヒトフレームワークにグラフトすることによってヒト化され(トラスツズマブ)、2B3と名づけられた(Olafsen T, et al. J. Immunotherapy 2007; 30: 396)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、PSCAを発現する腫瘍を標的とし、画像化するための適当な薬力学的特性を有する薬剤の必要性に対処する。感度および特異性を有する、癌を画像化するのに有効な薬剤は、当技術分野では非常に必要とされており、特に初期段階の腫瘍または初期に転移するものは、従来の手段では画像化できない。PSCAは、ほとんどの前立腺、膀胱および膵臓腫瘍によって高度に発現されており、これらの癌の検出、診断、予後および治療において重要な標的である。本発明は、腫瘍画像化およびターゲッティングにとって最適な特徴を有する革新的な構築物を記載する。それらはまた、遺伝子療法、放射能療法の腫瘍ターゲッティングのために使用してもよく、また、それ自体による治療的有用性を有する場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、前立腺およびその他の癌において、高親和性で新規細胞表面マーカーを認識する改変抗体を記載する。これらの遺伝的に改変された抗体断片は、ターゲッティングおよび検出のためのインビボ使用に明確に適合している。
【0007】
本発明は、PSCAを発現する腫瘍を標的とし、画像化するための適当な薬力学的特性を有する薬剤の必要性に対処する。感度および特異性を有する、癌を画像化するのに有効な薬剤は、当技術分野では非常に必要とされており、特に初期段階の腫瘍または初期に転移するものは、従来の手段では画像化できない。PSCAは、ほとんどの前立腺、膀胱および膵臓腫瘍によって高度に発現されており、見込みのある標的である。本発明は、腫瘍画像化にとって最適な特徴を有する革新的な分子を記載する。それはまた、遺伝子療法、放射能の腫瘍ターゲッティングにとっても有用であり得、またはそれ自体による治療的有用性を有し得る。
【0008】
複数の実施形態がある。例えば、scFvs、ダイアボディー(diabody)、トリアボディー(triabody)、ミニボディー(minibody)およびscFv−Fcなど、種々の改変抗体形式がある。一般に、上記薬剤は、少なくとも、一価結合ではなく、二価を示すべきである。薬剤の全体的な大きさ、形およびドメイン組成は、最終適用に適するよう変えてよい。ヒトにおいて最適ターゲッティングを示す改変断片は、マウスにおいて最適である形式とはわずかに異なり得る。1つの目標はヒト適用であるので、本発明は、抗体可変領域のヒト化セットならびにヒトヒンジおよび定常領域を組み込む。さらなる実施形態は、完全(fully)ヒト可変領域を含む。これらのタンパク質は、微生物細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞培養物およびトランスジェニック動物をはじめ、種々の系において発現させることができる。
【0009】
画像化を目的として、γまたはSPECTカメラまたはPETスキャナーでの検出のために種々の放射性核種を改変抗体と結合してもよい。治療用に、腫瘍へのPSCA標的化デリバリーを行うために、薬物、毒素、サイトカイン、酵素またはその他の治療部分を結合することができる。改変PSCA特異的抗体を、検出(インビトロまたはインビボ)用のナノセンサーまたはデリバリー(インビボ)用のナノ粒子と結合してもよい。また、腫瘍の標的遺伝子療法のために、PSCA抗体断片をウイルスベクターに組み込むこともできる。
【0010】
本発明は、早期診断または転移性疾患の診断において癌を画像化するための満たされていない必要性に対処する。特に、検出およびステージ分類のために前立腺癌を画像化するためのより良好な薬剤の臨床的必要性がある。PSCA抗体断片画像化は、骨転移を画像化することおよび治療に対する応答を評価することにとって極めて有用となる;現在利用可能な良好な画像化アプローチはない。膵臓癌の検出は、緊急に必要であり、ハイリスク患者では造影剤が有用であろう。本発明は、前立腺癌、膀胱癌および膵臓癌患者におけるPSCAのインビボターゲッティングおよび検出に適合させた高親和性の、高度に特異的な改変抗体を記載する。
【0011】
したがって、第1の態様において、本発明は、PSCAを過剰発現する癌の処置および検出において使用できる、高親和性PSCA抗原結合タンパク質構築物を提供する。いくつかの実施形態では、これらの構築物は、以下にさらに記載されるような、ミニボディー、ダイアボディー、トリアボディー、ScFvまたはScFv−Fcである。一実施形態では、本発明は、選択される構築物が、抗PSCA抗体のVドメインおよびVドメインと、それぞれ実質的に同一であるVおよびVドメインを有する、ミニボディー、ダイアボディーおよびscFv−Fcからなる群から選択される、哺乳類PSCAタンパク質(例えば、ヒト、マウス)への指向性を有する抗原結合タンパク質構築物を提供する。例えば、上記構築物は、抗PSCA抗体のVおよびV鎖可変ドメインが、抗体のヒンジ領域の一部、アミノ酸リンカーおよび免疫グロブリン分子のC3ドメインと融合しているミニボディーであり得る。その他の実施形態では、構築物は、ダイアボディーである。
【0012】
構築物が、ミニボディーまたはダイアボディーまたはscFV−Fcである実施形態では、抗PSCA抗体は、ヒト化抗体であり得、C3ドメインは、ヒト免疫グロブリン分子に由来する。好ましい実施形態では、抗PSCA抗体は、2B3または1G8である。さらにその他の実施形態では、構築物は、本明細書においてA11、A2またはC5と表されるscFv断片と実質的に同一であるVおよびVドメインを有するミニボディーである。なおさらなる実施形態では、構築物は、ヒト免疫グロブリン分子に由来するC3ドメインを有する。例えば、構築物は、ヒトIgGヒンジ領域およびヒトC3ドメインであるヒンジ領域およびC3ドメインを有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗PSCA抗体は、1G8(ATCC番号HB−12612)、2A2(ATCC番号HB−1203)、2H9(ATCC番号HB−12614)、3C5(ATCC番号HB−12616)、3E6(ATCC番号HB12618)、3G3(ATCC番号HB−12615)または4A10(ATCC番号HB−12617)と表されるモノクローナル抗体である。
【0014】
本発明の構築物はまた、治療薬または検出可能なマーカーと連結させてもよい。いくつかの実施形態では、上記治療薬は、細胞傷害性薬剤である。例えば、上記薬剤は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウム(ethiduim)ブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシン(anthracin)ジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア(diphteria)毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリン(arbrin)A鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α−サルシン、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、クリシン(curicin)、クロチン(crotin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、サパオナリアオフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、マイタンシノイド類またはグルココルチコイドリシンであり得る。その他の実施形態では、治療薬は、放射性同位元素である。放射性同位元素は、例えば、212Bi、131I、111In、90Yおよび186Reからなる群から選択され得る。その他の実施形態では、構築物は、プロドラッグをその活性型に変換できる抗癌薬プロドラッグ活性化酵素と連結している。
【0015】
上記の別の好ましい実施形態では、抗PSCA抗体によって標的とされるPSCAは、ヒトPSCAである。
【0016】
別の態様では、本発明は、選択される構築物が、2B3または本明細書においてA11、A2もしくはC5と表されるscFv変異体のVおよびVドメインと実質的に同一であるVおよびVドメインを有する、ミニボディー、ダイアボディー、scFvおよびscFv−Fcからなる群から選択される抗原結合タンパク質構築物を提供する。その他の実施形態では、本発明の結合構築物は、変異体抗体A11、A2またはC5中に見られる1つまたは複数の突然変異を含み得る。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、選択される構築物が、抗PSCA抗体のCDR領域を含む、ミニボディー、ダイアボディー、scFvおよびscFv−Fcからなる群から選択される抗原結合タンパク質構築物を提供する。特定の実施形態では、抗PSCA抗体は、2B3と表される抗体と同等以上の親和性でPSCAと結合する。その他の実施形態では、抗PSCA抗体は、親和性成熟(affinity matured)抗体であり得、親和性成熟抗体は、PSCAに対して、親抗体がなすよりも高い親和性を含む。
【0018】
別の態様では、本発明の抗PSCA構築物は、検出可能マーカーで標識される。マーカーは、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素であり得る。限定するものではないが、124I、86Y、18F、94Tcなどをはじめ、多数の放射性核種を画像化標識として使用してよい。当業者ならば、本発明における使用に特によく適している、その他の放射性核種を承知しているであろう。
【0019】
上記のいずれかのさらなるその他の実施形態では、本発明は、本発明の構築物の医薬組成物を提供する。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、癌細胞(例えば、前立腺、膀胱、膵臓癌細胞)を、癌細胞の増殖を阻害するのに有効な量の本発明の構築物と接触させる工程を含む、癌(例えば、前立腺、膵臓または膀胱癌)を有する被験体を治療する方法または前立腺幹細胞抗原(PSCA)タンパク質を発現する前立腺癌細胞の増殖を阻害する方法を提供する。上記方法は、癌細胞を死滅させ得る。いくつかの実施形態では、構築物は、アミノ酸位置22のロイシンで始まり、アミノ酸位置99のアラニンで終了する以下に示されるPSCAタンパク質を認識し、結合する。さらなる実施形態では、上記方法は、化学療法薬、放射線療法を施す工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、被験体はまた、ホルモンアブレーション療法またはホルモンアンタゴニスト療法で処置される。
【0021】
上記処置は、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内または皮内によって、患者または被験体に施され得る。いくつかの実施形態では、上記接触させる工程は、構築物を、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌またはその転移癌に直接投与することを含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、癌細胞を、検出可能マーカーを保有する構築物と接触させることによって、被験体において癌性細胞を検出する方法を提供する。上記方法は、癌のリスクの高い患者のスクリーニングにおいて、または治療に対する応答をモニターする(monitory)ために、または癌(例えば、前立腺、膀胱または膵臓癌)の予後を示すために使用してもよい。上記方法は、癌の転移の検出において特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】抗PSCAミニボディーの概略図である。ミニボディーをコードする遺伝子は、V−リンカー−V−ヒンジ−C3の順に組み立てられ、ヒンジおよびC3ドメインは、ヒトIgG1由来である。上記タンパク質は、80kDaの二量体に自己組織化する。
【図2−1】2B3 ScFv変異体タンパク質配列の比較を示す図である。V配列およびリンカーの一部が上部枠中にあり、リンカーの残りおよびV配列は下部の枠中にある。また、CDRも示されており、野生型配列に下線が引かれている。突然変異は、異なる陰影で強調されている。親のScFv P−2B3配列(配列番号4)ならびに変異体C5(配列番号5)、A2(配列番号6)およびA11(配列番号7)ScFv配列が示されている。
【図2−2】同上
【図3−1】親の2B3ミニボディー(配列番号9)のDNA配列(配列番号8)および翻訳されたタンパク質配列を示す図である。また、以下のタンパク質セグメントの出発点も示されている:シグナルペプチド(哺乳類分泌の)、軽鎖可変領域(V)、15個のアミノ酸のドメイン間ペプチドリンカー、重鎖可変領域(V)、ヒトIgG1ヒンジ配列および10個のアミノ酸伸長およびヒトIgG1CHjドメインとそれに続く2つの停止コドン。
【図3−2】同上
【図3−3】同上
【図4】非還元条件での、4つのミニボディー、すなわち、親(p)、A11、A2およびC5のSDS−PAGE分析を示す図である。矢印は、ミニボディーの予測分子量を示す。
【図5】予測される分子サイズにおける均一ピークを示す、A11ミニボディーのサイズ排除HPLCを示す図である。
【図6a】親和性ランキングを示す図である。(A)競合ELISA結合実験によるランキング:プレートをCEAでコーティングし、ビオチン化された完全な(intact)抗CEAキメラ抗体をプローブとして使用した。
【図6b】親和性ランキングを示す図である。(B)フローサイトメトリーによるランキング:各ミニボディーの5pg/mlをPSCA発現細胞とともにインキュベートした。次いで、細胞を、PEコンジュゲートした抗ヒトFcを用いて染色した。
【図7】LAPC−9AD(PSCA陽性ヒト前立腺癌)異種移植片(xenograft)を保有するヌードマウスの同時記録マイクロPET/マイクロCTスキャンを示す図である。マウスにI−124放射標識A11ミニボディー変異体を注射し、連続スキャンした。A、B、C;矢状断面;D、E、F;冠状断面。A、D;白色の長方形としてROI(関心領域)を示す、同時記録マイクロPETおよびマイクロCT。B、E;マイクロPET像およびROI。C、F;マイクロPET像のみ。
【図8】2B3ミニボディー変異体の生体内分布およびマイクロPET画像化ランキングを示す図である。生体内分布の単位は、y−カウンターにおける、注射時間の21または25時間後の、秤量した組織1gあたりの%ID値である。マイクロPET画像化値は、図6に示され、材料および方法に記載されるように、4つのROIの平均値について取得した。
【図9】PSCAデータおよび特性のまとめを示す図である。
【図10】本発明の種々の構築物を示す図である。
【図11−1】2B3変異体を製造するスキームを示す図である。
【図11−2】同上
【図12】種々の構築物のマイクロPET画像化および生体内分布データを示す図である。
【図13】A11および親2B3のマイクロPET画像化および生体内分布結果を示す図である。
【図14】親2B3および変異体A11抗PSCAミニボディーを使用した、膵臓癌Capan−1異種移植マウスのマイクロPET画像化および体内分布データを示す図である。
【図15】親2B3および変異体A11抗PSCAミニボディーを使用した、膵臓癌MIA PaCa−2異種移植マウスのマイクロPET画像化および体内分布データを示す図である。
【図16a−1】親2B3および変異体A2抗PSCAミニボディーのアミノ酸配列を示す図である。
【図16a−2】変異体A11抗PSCAミニボディーのアミノ酸配列を示す図である。
【図16b】変異体C5抗PSCAミニボディーのアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
造影剤および治療薬としての完全抗体の開発は、インビボで腫瘍標的に放射性核種を効果的にデリバリーするその能力にもかかわらず、長いクリアランス動態によって妨げられてきた。ここで、本発明者らはまた、ヌードマウスモデルにおける循環からの迅速なクリアランスと併せて、迅速で、高レベルの腫瘍取り込みを示す遺伝的に改変された抗体断片によって、インビボで腫瘍を容易に検出することが可能になることを報告する。
【0025】
2B3抗体は、ヒトフレームワークにグラフトすることによってヒト化され(トラスツズマブ)、命名された(Olafsen T, et al. J. Immunotherapy 2007; 30: 396;この文献の全文を、説明、生物活性および抗体の作製に関して、参照により本明細書に組み込む)。2B3の抗体断片は、PET画像化適用のために作製された。これらの抗体断片のうち1種、2B3ミニボディーは、マウスモデルにおいてPSCA発現腫瘍に対して迅速かつ特異的な局在性を示した。しかし、ヒト化は、PSCAに対する完全抗体の親和性を、2.6nMのKdから16.7nMに低減させた。さらに、完全抗体の、抗体断片への再編成も、結合効率に影響を及ぼし得る。ScFvの定量的腫瘍滞留性は親和性とともに高まるが、10−9 Mに近い閾値までであるということが示されている(Adams GP, et al. Cancer Res. 2001; 61: 4750)。腫瘍ターゲッティングおよび画像化特性への、ミニボディー親和性の影響に関する刊行されたデータはない。ここで、本発明者らは、3種の高親和性抗PSCA ScFvの作製と、それに続く、3種の高親和性抗PSCAミニボディーの作製および特性決定とを記載する。本発明者らは、良好な腫瘍ターゲッティング/画像化適性を有するミニボディー断片を作製した。本発明の構築物に関するいくつかの実施形態では、構築物は、2B3抗体の対応するドメインと同一ではないVまたはVドメインを含むという条件がある。
【0026】
一実施形態では、本発明は、VおよびVドメインが、2B3において見られるものと実質的に同一である、抗体、ミニボディー、ダイアボディー、scFv、scFv−Fcなどからなる群から選択される抗原結合構築物を提供する。第2の実施形態では、抗原結合構築物は、本明細書においてA11、A2またはC5と表される抗体変異体において見られる1つまたは複数の突然変異を含み得る。第3の実施形態では、結合構築物は、配列番号4のアミノ酸に対応する残基に、T5、S10、V15、S91、S123、S131、N179、T182、I194、A203、G213、Q228およびそれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも1つの突然変異を含む。特定の実施形態では、上記少なくとも1つの突然変異は、T5I、S10I、V15M、S91G、Δ123、S131Y、N179Y、T182S、I194M、A203V、E213K、Q228Rおよびそれらの組合せを含む群から選択される、配列番号4中の突然変異に対応する突然変異を含む。その他の実施形態では、本発明の結合構築物は、変異体A11、A2またはC5中に見られるものに対応する突然変異を含む。
【0027】
特定の実施形態では、本発明は、VおよびVドメインが、配列番号10中に見られるものと実質的に同一であるミニボディーを提供する。一実施形態では、本発明のミニボディーは、配列番号10のアミノ酸配列を含む。その他の実施形態では、ミニボディーは、配列番号10と実質的に同一であるアミノ酸配列を含み、前記ミニボディーは、配列番号10のミニボディーよりも高い親和性でPSCAと結合する。さらにその他の実施形態では、ミニボディーは、配列番号10のアミノ酸に対応する残基に、T5、S10、V15、S91、S123、S131、N179、T182、I194、A203、G213、Q228およびそれらの組合せを含む群から選択される、1つまたは複数の突然変異を含み得る。さらに別の実施形態では、上記構築物は、配列番号11、12および13から選択される配列を含み得る。
【0028】
一実施形態では、本発明は、選択される構築物が、抗PSCA抗体のCDR領域を含む、ミニボディー、ダイアボディー、scFvおよびscFv−Fcからなる群から選択される抗原結合タンパク質構築物を提供する。一実施形態では、上記結合タンパク質構築物は、抗PSCA抗体に由来するCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2またはCDR−H3から選択される少なくとも1つのCDR領域を含む。さらにその他の実施形態では、タンパク質結合構築物は、3種の軽鎖CDR領域のすべてまたは3種の重鎖CDR領域のすべてを含み得る。一実施形態では、本発明のタンパク質結合構築物は、抗PSCA抗体のCDR領域のすべてを含み得る。特定の実施形態では、抗PSCA抗体は、2B3と表される抗体と同等以上の親和性でPSCAと結合する。その他の実施形態では、抗PSCA抗体は、親和性成熟抗体であり得、上記親和性成熟抗体は、PSCAに対して、親抗体がなすよりも高い親和性を含む。特定の実施形態では、親の抗PSCA抗体は、1G8(ATCC番号HB−12612)、2A2(ATCC番号HB−1203)、2H9(ATCC番号HB−12614)、3C5(ATCC番号HB−12616)、3E6(ATCC番号HB12618)、3G3(ATCC番号HB−12615)、4A10(ATCC番号HB−12617)および2B3からなる群から選択され得る。その他の実施形態では、CDRは、配列番号10、11、12および13中に見られるものから選択され得る。
【0029】
「ミニボディー」とは、ヒンジ領域および免疫グロブリン分子のCH3ドメインと融合している、天然抗体の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)鎖ドメインから構成される改変抗体構築物である(図1を参照のこと)。したがって、ミニボディーは、抗原結合領域と、二価分子への組み立てを可能にするCH3ドメインと、ジスルフィド結合による二量化に適応するための抗体ヒンジとを保持し、かつ単一タンパク質鎖中にコードされる、完全(whole)抗体の小型版である。対照的に、天然抗体は、4つの鎖、すなわち、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成される。ミニボディーの大きさ、結合価および親和性は、インビボターゲッティングに特に適している。細菌または哺乳類細胞における発現は、ミニボディーが単一アミノ酸鎖として産生され得るので単純化されている(米国特許第5,837,821号明細書を参照のこと)。この開示の全文を、特に、ミニボディー、その構造、その作製方法およびその適した医薬製剤に関して、本明細書に参照により組み込む。
【0030】
「ダイアボディー」は、第1のポリペプチド鎖上の軽鎖可変ドメイン(VL)および、それに連結されている重鎖(VH)可変ドメイン(VH−VL)(第1のポリペプチド鎖上のその2つのドメイン間で対形成するには短すぎるペプチドリンカーによって接続されている)を含む第1のポリペプチド鎖と、第2のポリペプチド鎖上の重鎖可変ドメインVHおよび、それに連結されている軽鎖可変ドメイン(VL)(VL−VH)(第2のポリペプチド鎖上のその2つのドメイン間で対形成するには短すぎるペプチドリンカーによって接続されている)を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。その短い結合が、第1および第2のポリペプチド鎖の相補的なドメイン間の鎖の対形成を推し進め、2つの機能的抗原結合部位を有する二量体分子の組み立てを促進する。
【0031】
二重特異性ダイアボディーを構築するためには、異なる抗体(例えば、抗体Aおよび抗体B)のV−ドメインを融合して、2種の鎖(例えば、VHA−VLB、VHB−VLA)を作製する。各鎖は、抗原との結合において不活性であるが、もう一方の鎖との対形成時に抗体AおよびBの機能的抗原結合部位を再形成する。
【0032】
前立腺、膀胱および膵臓の癌におけるPSCAおよびその発現は、その全文が参照により組み込まれる米国特許第6,756,036号明細書に開示されている。ヒトPSCA翻訳アミノ酸配列は以下のとおりである:
MKAVLLALLMAGLALQPGTALLCYSCKAQVSNEDCLQV
ENCTQLGEQCWTARIRAVGLLTVISKGCSLNCVDDS
QDYYVGKKNITCCDTDLCNASGAHALQPAAAILALLPAL
GLLLWGPGQL
(配列番号1)
【0033】
2種以上の核酸またはポリペプチド配列の関連で、用語「実質的に同一である」とは、以下に記載されるデフォルトパラメータを用いてBLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手作業でのアラインメントおよび目視検査によって測定されるような、比較ウィンドウもしくは指定された領域にわたる最大一致を求めて比較およびアラインされた場合に、参照される配列もしくは部分にわたって、同一であるか、または特定のパーセンテージの同一であるアミノ酸残基もしくはヌクレオチド(すなわち、約80%の同一性、好ましくは、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性)を有する2種以上の配列または部分配列を指す(例えば、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などをを参照のこと)。この定義はまた、欠失および/または付加を有する配列ならびに置換を有するものを含む。配列同一性は、2種の参照されるドメイン間で少なくとも85%、90%、95%、97%であることが好ましい。いくつかの実施形態では、配列の相違は、参照される配列またはドメインについて1、2、3または4または5〜12個のアミノ酸だけである。以下に記載されるように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明することができる。同一性は、少なくとも約15個のアミノ酸またはヌクレオチドの長さである領域にわたって存在することが好ましく、15〜50個のアミノ酸またはヌクレオチドの長さである領域にわたって存在することがより好ましい。その他の実施形態では、同一性は、少なくとも約50、100、150、200個以上のアミノ酸である領域にわたって存在し得る。
【0034】
配列比較のためには、通常、1つの配列が、それに対して試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合には、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用してもよく、代替パラメータを指定してもよいことが好ましい。次いで、プログラムパラメータに基づいて、配列比較アルゴリズムによって、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0035】
本明細書において使用する場合、「比較ウィンドウ」とは、特定の範囲の残基にわたって選択される任意の数の隣接する位置のセグメント(例えば、20〜50個、通常、約50〜約200個、より通常は、約100〜約150個)を参照することを含み、ここで、ある配列は、同数の隣接する位置の参照配列と、最適にアラインされた後に比較され得る。比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin遺伝子ソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group、575 Science Dr., Madison, WIの、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)によって、または手作業でのアラインメントおよび目視検査によって(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照のこと)実施できる。
【0036】
配列同一性および配列類似性パーセントを決定するために適しているアルゴリズムの好ましい例として、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムがあり、これらは、それぞれ、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、本明細書に記載されるパラメータを用いて使用され、本発明の核酸およびタンパク質の配列同一性パーセントを決定する。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインした場合に、マッチするか、何らかの正の値の閾値スコアTを満たす、クエリー配列中の長さWの短いワードを同定することによってハイスコアリング配列対(high scoring sequence pair)(HSP)を同定すること含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と呼ばれる(Altschul et al.,前掲)。これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するための種として作用する。累積アラインメントスコアが増大され得る限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向に伸長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチする残基の対に対するリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチする残基に対するペナルティースコア;常に<0)を使用して算出する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを算出する。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、その最大に達成された値から量Xだけ低下する;累積スコアが、1個または複数の負にスコアリングする残基アラインメントの蓄積のためにゼロ以下になる;または、いずれかの配列の末端に達する時点で停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対して)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に対しては、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長3および期待値(E)10およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915 (1989)を参照のこと)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。
【0037】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において同義的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、1個または複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。
【0038】
アミノ酸は、本明細書において、そのよく知られている三文字記号によって、またはIUPAC−IUBバイオケミカル命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨される一文字記号のいずれかによって呼ばれ得る。同様に、ヌクレオチドも、その一般に受け入れられた一文字コードによって呼ばれ得る。
【0039】
アミノ酸配列については、当業者ならば、コードされる配列中の単一のアミノ酸または小さなパーセンテージのアミノ酸を変更、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加は、その改変により、あるアミノ酸が化学的に同様のアミノ酸によって置換される「保存的に改変された変異体」であることを認識するであろう。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野で周知である。このような保存的に改変された変異体は、本発明の多型変異体、種間相同体および対立遺伝子に加えて存在し、かつこれらを除外しない。
【0040】
以下の8群は、各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0041】
「標識」または「検出可能な部分」または「検出可能なマーカー」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的またはその他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識として、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいてよく用いられる)、ビオチン、ジゴキシゲニンまたはハプテンおよび例えば、ペプチドに放射標識を組み込むことによって検出可能にされ得る、またはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用されるタンパク質が挙げられる。
【0042】
「抗体」とは、抗原と特異的に結合し、それを認識する免疫グロブリン遺伝子またはその断片に由来するフレームワーク領域を含むポリペプチドを意味する。認識される免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類され、これらは、次いで、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ規定する。一般に、抗体の抗原−結合領域は、結合の特異性および親和性において最も重要であろう。
【0043】
1つの例示的免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対からなり、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する、約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。用語可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)とは、これらの軽鎖および重鎖をそれぞれ意味する。
【0044】
抗体は、例えば、完全免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼを用いる消化によって生じたいくつかの十分に特性決定された断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンは、抗体をヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で消化し、ジスルフィド結合によってV−C1と接続している軽鎖であるFabの二量体、F(ab)’を生成する。F(ab)’は、穏やかな条件下で還元されて、ヒンジ領域中のジスルフィド結合を分解し、それによって、F(ab)’二量体がFab’単量体に変換し得る。Fab’単量体は、本質的には、ヒンジ領域の一部を含むFabである(Fundamental Immunology、Paul編、第3版、1993を参照のこと)。完全抗体の消化の観点から種々の抗体断片が定義されているが、当業者には当然のことながら、そのような断片は、化学的に、または組換えDNA法を使用することによってデノボ合成してもよい。したがって、用語「抗体」とはまた、本明細書において、全抗体の改変によって生じた抗体断片、または組換えDNA法を使用してデノボ合成されたもの(例えば、単鎖Fv)またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定されたもの(例えば、McCafferty et al., Nature 348: 552-554 (1990)を参照のこと)のいずれかを含む。
【0045】
本発明の適した抗体または構築物の調製のために、また、本発明に従う使用のために、例えば、組換え、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、当技術分野で公知の多数の技術を使用してよい(特に、ミニボディーおよびダイアボディー設計に関して、その全文が、各々、参照により組み込まれる、米国特許出願公開第20070196274号および同20050163782号明細書を参照のこと)(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256: 495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983); Cole et al., pp. 77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985); Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988);およびGoding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (第2版、1986)を参照のこと)。注目する抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を、細胞からクローニングしてもよく、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子を、ハイブリドーマからクローニングし、組換えモノクローナル抗体を製造するために使用してもよい。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーはまた、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製してもよい。重鎖および軽鎖遺伝子産物の無作為組合せによって、異なる抗原特異性を有する抗体の大きなプールが生じる(例えば、Kuby, Immunology (第3版、1997)を参照のこと)。単鎖抗体または組換え抗体の製造のための技術(米国特許第4,946,778号、同4,816,567号明細書)を適応させて、本発明のポリペプチドに対する抗体を製造してもよい。また、ヒト化またはヒト抗体を発現するために、トランスジェニックマウスまたはその他の哺乳類などのその他の生物を使用してもよい(例えば、米国特許第5,545,807号;同5,545,806号;同5,569,825号;同5,625,126号;同5,633,425号;同5,661,016号明細書、Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994); Morrison, Nature 368: 812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996);およびLonberg & Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)を参照のこと)。あるいは、ファージディスプレイ技術を使用して、選択された抗原と特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定してもよい(例えば、McCafferty et al., Nature 348: 552-554 (1990); Marks et al., Biotechnology 10: 779-783 (1992)を参照のこと)。抗体はまた、二重特異性にすることができる、すなわち、2種の異なる抗原を認識できる(例えば、国際公開第93/08829号パンフレット、Traunecker et al., EMBO J. 10: 3655-3659 (1991);およびSuresh et al., Methods in Enzymology 121: 210 (1986)を参照のこと)。抗体はまた、ヘテロコンジュゲート、例えば、2種の共有結合によって結合している抗体または免疫毒素であってもよい(例えば、米国特許第4,676,980号明細書、国際公開第91/00360号;同第92/200373号パンフレット;および欧州特許第03089号明細書を参照のこと)。
【0046】
本発明の抗体は、修飾されている、すなわち、抗体への任意の種類の分子の共有結合によって修飾されている誘導体を含む。例えば、抗体誘導体として、限定するものではないが、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞性リガンドまたはその他のタンパク質との結合などによって改変されている抗体が挙げられる。多数の化学修飾はいずれも、公知の技術、例えば、それだけには限らないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などによって実施してよい。さらに、誘導体は1個以上の非天然アミノ酸を含み得る。
【0047】
非ヒト抗体をヒト化または霊長類化(primatizing)する方法は、当技術分野で周知である。通常、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入された、1個または複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、インポート残基と呼ばれることが多く、これは、通常、インポート可変ドメインから取り込まれる。ヒト化は、本質的に、Winterおよび共同研究者の方法に従って(例えば、Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332: 323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239: 1534-1536(1988)およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992)を参照のこと)、げっ歯類CDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列と置換することによって実施してよい。したがって、このようなヒト化抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号明細書)、これでは、実質的に、完全ヒト可変ドメイン未満のものが、非ヒト種に由来する対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は、通常、いくつかのCDR残基およびおそらくはいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体中の類似部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。
【0048】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは変更されたクラス、エフェクター機能および/もしくは種の定常領域、またはキメラ抗体に新規特性を付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬剤などと結合されるよう、定常領域またはその一部が変更、置換または交換されている、あるいは(b)可変領域またはその一部が、異なるもしくは変更された抗原特異性を有する可変領域で、変更、置換または交換されている抗体分子である。本発明の、および本発明に従って使用するために好ましい抗体として、ヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体が挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態では、抗体は、「エフェクター」部分とコンジュゲートされている。エフェクター部分は、放射性標識または蛍光標識などの標識部分を含めた任意の数の分子であり得、または治療用部分であり得る。一態様では、抗体は、タンパク質の活性を調節する。このようなエフェクター部分として、それだけには限らないが、抗腫瘍薬、毒素、放射性薬剤、サイトカイン、二次抗体または酵素が挙げられる。さらに、本発明は、本発明の抗体が、プロドラッグを細胞傷害性薬剤に変換する酵素と連結している実施形態を提供する。
【0050】
エフェクター部分を、PSCA陽性細胞、特に、PCSAタンパク質を過剰発現する細胞にターゲッティングするために、免疫複合体を使用してもよい。このような相違は、試験サンプルおよび対照サンプルを用いて、ほぼ同様にロードされるゲルのバンドを見ると容易に理解できる。細胞傷害性薬剤の例として、それだけには限らないが、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウム(ethiduim)ブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア(diphteria)毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリンおよびグルココルチコイドおよびその他の化学療法薬、ならびに放射性同位元素が挙げられる。適した検出可能なマーカーとして、それだけには限らないが、放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、単独で、またはエフェクター部分とコンジュゲートしている場合に、癌(例えば、前立腺、膵臓または膀胱癌)を処置するために全身に使用される抗原結合タンパク質構築物を提供する。リシンなどの毒性物質とコンジュゲートしているPSCAをターゲッティングする構築物ならびにコンジュゲートしていない抗体は、PSCAを保有する癌細胞を天然にターゲッティングする有用な治療薬であり得る。このような構築物は、侵襲性を妨げるのに有用であり得る。
【0052】
さらに、本発明の抗原結合性タンパク質構築物を使用して、癌を処置できる。このような状況では、構築物を治療活性を有する第2のタンパク質または毒性分子の少なくとも1種の機能的に活性な部分と結合する。第2のタンパク質として、それだけには限らないが、酵素、リンホカイン、オンコスタチンまたは毒素を挙げることができる。適した毒素として、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウム(ethiduim)ブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア(diphteria)毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、リシン、アブリン、グルココルチコイドおよび放射性同位元素が挙げられる。
【0053】
治療薬を本発明の構築物とコンジュゲートする技術は、周知である(例えば、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Reisfeldら(編)中の、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);「Controlled Drug Delivery」(第2版)、Robinsonら(編)中の、Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);「Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications」、Pincheraら(編)中の、Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、pp. 475-506 (1985);およびThorpe et al., 「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」, Immunol. Rev., 62: 119-58 (1982)を参照のこと)。
【0054】
本発明のタンパク質またはペプチドまたは構築物を言及する際の、抗体と「特異的に(または選択的に)結合する」または「特異的に(または選択的に)免疫反応性の」なる語句は、多くはタンパク質およびその他の生物学的物質の不均一な集団中のタンパク質の存在を決定するような結合反応を意味する。したがって、指定されたイムノアッセイ条件下で、指定された抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的には、バックグラウンドの10〜100倍を超えて特定のタンパク質と結合する。このような条件下での抗体との特異的結合には、構築物が、特定のタンパク質に対するその特異性について選択される必要がある。種々のイムノアッセイ形式を使用して、PSCAと特異的に免疫反応する構築物を選択することができる。例えば、タンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために、固相ELISAイムノアッセイがルーチン的に使用されている(例えば、特異的免疫反応性を調べるために使用できるイムノアッセイ形式および条件の説明については、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1998)を参照のこと)。
【0055】
本明細書において、「治療上有効な用量または量」とは、投与する目的の効果を生じる用量を意味する。正確な用量および処方は、治療の目的に応じて変わり、公知の技術を使用して当業者によって確定可能である(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Gennaro, Editor (2003)およびPickar, Dosage Calculations (1999)を参照のこと)。
【0056】
用語「医薬上許容される塩」または「医薬上許容される担体」とは、本明細書に記載される化合物上に見られる特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸または塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含むものとする。本発明の化合物が、比較的酸性の官能基を含む場合は、ニートなまたは適した不活性溶媒中のいずれかで、このような化合物の中間の形態(neutral form)を、十分な量の所望の塩基と接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。医薬上許容される塩基付加塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノまたはマグネシウム塩または同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合には、ニートなまたは適した不活性溶媒中のいずれかで、このような化合物の中間の形態を、十分な量の所望の酸と接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。医薬上許容される酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric)、ヨウ化水素酸または亜リン酸などのような無機酸からの塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的非毒性の有機酸からの塩が挙げられる。また、アルギン酸(arginate)などといったアミノ酸の塩およびグルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)などのような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al., Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977)を参照のこと)。本発明の特定の具体的な化合物は、化合物が塩基または酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする塩基性および酸性官能基の両方を含有する。当業者に公知のその他の医薬上許容される担体が、本発明に適している。
【0057】
中間の形態の化合物は、塩を塩基または酸と接触させることと、従来法で親化合物を単離することとによって再生され得る。化合物の親の形態は、特定の物理的特性、例えば、極性溶媒における可溶性において、種々の塩の形態とは異なるが、その他の点では、塩は、本発明の目的上、化合物の親の形態と同等である。
【0058】
上記方法は、PSCAを過剰発現する癌、例えば、前立腺、膵臓および膀胱癌の診断、予後および処置において特に適用される。特定の実施形態では、方法は、ホルモン不応性癌または治療抵抗性癌に適用される。特定の実施形態では、方法は転移性癌に適用される。
【0059】
処置は、通常、有効用量で、静脈注射(IV)などの許容される投与経路による構築物およびその免疫複合体の反復投与を含む。投与量は、当業者によって一般に理解されている種々の因子、例えば、制限するものではないが、癌の種類および癌の重篤度、グレードまたはステージ、使用される薬剤の結合親和性および半減期、所望の定常状態抗体濃度レベル、処置の頻度および本発明の処置法と組み合わせて使用される化学療法薬の影響に応じて変わる。通常の1日用量は、約0.1〜100mg/kgの範囲であり得る。1週間あたり10〜500mgの範囲の構築物またはその免疫複合体の用量が有効であり得、耐用性良好であるが、さらに高い1週間用量も適当かつ/または耐用性良好であり得る。適当な用量の規定における主要な決定要因は、特定の関連で治療上有効であるのに必要な特定の薬剤の量である。腫瘍阻害または退縮を達成するために反復投与が必要である場合もある。初期負荷用量は、より高いものであってもよい。初期負荷用量は、注入として投与してよい。定期的維持量は、初期用量が耐用性良好であるならば、同様に投与してよい。
【0060】
構築物の直接投与もまた可能であり、特定の関連では利点を有し得る。例えば、膀胱癌腫の治療には、薬剤を、膀胱中に直接注射してもよい。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、本発明の抗体およびその断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。一実施形態では、本発明は、本発明の抗体またはその断片をコードする発現ベクターを提供する。別の実施形態では、本発明は、遺伝子療法において、またはインビボ投与において使用するための本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0062】
「核酸」とは、一本鎖または二本鎖いずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーならびにそれらの相補体を指す。この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様に代謝される、合成である、天然に生じる、天然に生じない、既知ヌクレオチド類似体または修飾された基本骨格残基または結合を含有する核酸を包含する。このような類似体の例として、制限するものではないが、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
【0063】
特に断りのない限り、特定の核酸配列も、その保存的に改変された変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補配列、ならびに明示的に示される配列を暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を作製することによって達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acids Res. 19: 5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260: 2605-2608 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8: 91-98 (1994))。用語「核酸」は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと同義的に使用される。
【0064】
投与方法および製剤方法
構築物は、静脈内投与などの公知の方法を踏まえて、例えば、ボーラスとして、または一定時間にわたる持続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所または吸入経路によって被験体に投与される。静脈内または皮下投与が好ましい。投与は、局所であっても、全身であってもよい。
【0065】
投与のための組成物は、医薬上許容される担体、好ましくは、水性担体に溶解した本明細書に記載される薬剤を含むことが多い。種々の水性担体、例えば、緩衝生理食塩水などを使用してよい。これらの溶液は、無菌であり、通常、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の、周知の滅菌技術によって滅菌してよい。組成物は、生理学的条件に近づけるために、必要に応じて、例えば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム塩などの医薬上許容される補助物質を含有し得る。これらの製剤中の活性薬剤の濃度は、広く変化し得、選択される特定の投与様式および患者の要求に従って、液量、粘度、体重などに主に基づいて選択される。
【0066】
したがって、静脈内投与用の通常の医薬組成物は、薬剤に従って変わる。非経口的に投与可能な組成物の実際の調製方法は、当業者に公知であるか、明らかであり、「Remington's Pharmaceutical Science」、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa. (1980)などの刊行物に、より詳細に記載されている。
【0067】
本医薬組成物は、投与方法に応じて種々の単位投与形で投与してよい。例えば、経口投与に適した単位投与形として、それだけには限らないが、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤およびロゼンジ剤が挙げられる。構築物は、経口投与される場合には、消化から保護されるべきであると認識される。これは、通常、分子を組成物と複合体形成し、それらを酸性および酵素的加水分解に対して耐性にすることによって、または分子を適切に耐性の担体、例えば、リポソームまたは保護バリアにパッケージングすることのいずれかによって達成される。薬剤を消化から保護する手段は、当技術分野で周知である。
【0068】
医薬製剤、特に、本発明とともに使用するための構築物および免疫複合体および阻害剤は、所望の純度を有する構築物を、所望の医薬上許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製できる。そのような製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液であり得る。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される投与量および濃度で、レシピエントに対して非毒性である。許容される担体、賦形剤または安定剤は、酢酸、リン酸、クエン酸およびその他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、保存料低分子量ポリペプチド;血清アルブミンもしくはゼラチンなどのタンパク質またはポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;およびアミノ酸、単糖類、二糖類およびその他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート化剤;ならびにイオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート);塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤であり得る。構築物は、0.5〜200mg/mlの間または10〜50mg/mlの間の濃度で製剤してよい。
【0069】
上記製剤はまた、さらなる活性化合物、例えば、化学療法薬、細胞傷害性薬剤、サイトカイン、増殖阻害剤および抗ホルモン剤を提供し得る。有効成分はまた、持続放出製剤(例えば、固体疎水性ポリマー(例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド)の半透性マトリックスとして調製してもよい。抗体およびイムノコンジュゲートはまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に、例えば、コロイド薬物デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)において、またはマクロエマルションにおいて、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル中に、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に封入してもよい。
【0070】
上記組成物は、治療的処置または予防的処置のために投与してもよい。治療的適用では、組成物を、疾患(例えば、癌)を患っている患者に、「治療上有効な用量」で投与する。この用途のために有効な量は、疾患の重篤度および患者の健康の全身状態に応じて変わる。患者に必要とされ、耐容される投与量および頻度に応じて、単回または複数回投与の組成物を投与してもよい。本発明の目的上、「患者」または「被験体」とは、ヒトおよびその他の動物、特に、哺乳類の両方を含む。したがって、方法は、ヒトの処置および獣医適用の両方に適用できる。好ましい実施形態では、患者は哺乳類、好ましくは、霊長類であり、最も好ましい実施形態では、患者はヒトである。その他の公知の癌治療を、本発明の方法と組み合わせて使用してもよい。例えば、本発明に従って使用するための組成物を使用して、細胞をターゲッティングするか、または5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、シスプラチン、メトトレキサートなどといったその他の癌治療薬に対して感作させてもよい。
【0071】
その他の実施形態では、本発明の方法は、その他の癌治療(例えば、前立腺全摘除術)、放射線療法(外部ビームまたは近接照射療法)、ホルモン治療(例えば、精巣摘出術、テストステロン産生を抑制するためのLHRH−類似体治療、抗アンドロゲン療法)または化学療法と一緒に実施してよい。前立腺全摘除術は、前立腺全体およびいくらかの周囲組織の除去を含む。この治療は、癌が組織を越えて広がっていないと考えられる場合によく使用される。放射線療法は、まだ前立腺に限定されているか、隣接する組織に広がっている前立腺癌を治療するためによく使用される。疾患がより進行性である場合には、腫瘍の大きさを減少させるために放射線を使用する場合もある。ホルモン療法は、前立腺癌が前立腺を越えて広がった、または再発した患者に使用されることが多い。ホルモン療法の目的は、男性ホルモン、アンドロゲンのレベルを低下させ、それによって、前立腺癌を収縮させるか、より低速で増殖させる。黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストは、テストステロンの産生を減少させる。これらの薬剤は、毎月、またはそれより長い間隔で注射してもよい。2種のこのような類似体として、ロイプロリドおよびゴセレリンがある。抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ビカルタミドおよびニルタミド)も使用してよい。全アンドロゲン遮断とは、精巣摘出術またはLHRH類似体と組み合わせた抗アンドロゲンの使用を意味し、s組合せが呼ばれる。化学療法は、前立腺癌が前立腺の外側に広がっており、ホルモン療法が失敗している患者にとっての選択肢である。癌細胞のすべてを破壊することは期待されないが、腫瘍増殖を低速にし、疼痛を低減し得る。ホルモン療法を用いる処置後に回復または継続して増殖し、広がった前立腺癌を治療するのに使用されるいくつかの化学療法薬として、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エストラムスチン、エトポシド、ミトキサントロン、ビンブラスチンおよびパクリタキセルが挙げられる。癌細胞が化学療法に対して耐性になる可能性を低減するために、2種以上の薬剤を一緒に投与することも多い。小さい細胞癌腫は、ホルモン療法よりも化学療法に応じる可能性がより高い、稀な種類の前立腺癌である。
【0072】
併用投与は、別個の製剤または単一の医薬製剤を使用する同時投与、および両(またはすべての)活性薬剤がその生物活性を同時に発揮する期間があることが好ましい、いずれかの順序での逐次投与を意図する。
【0073】
選択した化合物を単独またはその他の適した成分と組み合わせて、吸入によって投与されるようエアゾール製剤に製造してもよい(すなわち、それらを「霧状にし」てもよい)。エアゾール製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などといった加圧された許容される噴霧剤中に入れてもよい。
【0074】
非経口投与、例えば、関節内(関節中)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内および皮下経路による投与などに適した製剤として、抗酸化剤、バッファー、静菌薬、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、を含み得る水性および非水性の等張性滅菌注射溶液、ならびに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存料、を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。本発明の実施では、組成物を、例えば、静脈内注入によって、経口的に、局所的に、腹腔内に、膀胱内にまたはくも膜下腔内に投与してよい。非経口投与、経口投与および静脈内投与は、好ましい投与方法である。化合物の製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数回用量密閉容器中にて提供してもよい。
【0075】
注射溶液および懸濁液は、先に記載した種類の滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製できる。また、エキソビボ治療のために核酸によって形質導入された細胞を、上記のように静脈内に、または非経口的に投与してもよい。
【0076】
医薬品は、単位投与形であることが好ましい。このような形態では、製剤は、適当な量の活性成分を含有する単位用量に細分割される。単位投与形は、パッケージされた製剤、個別量の製剤を含有するパッケージ、例えば、バイアルまたはアンプル中のパッケージングされた錠剤、カプセル剤および散剤であり得る。また、単位投与形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤またはロゼンジ剤自体であり得、または、パッケージングされた形態の適当な数のこれらのいずれかであり得る。組成物は、必要に応じて、その他の適合する治療薬も含み得る。
【0077】
好ましい医薬品は、1種または複数の本発明の構築物を、所望により、持続放出製剤中で、1種または複数の化学療法薬または免疫療法薬と組み合わせてデリバリーする。構築物は、その他の細胞傷害性癌治療、例えば、化学療法、放射線療法、免疫療法およびホルモン療法に対する腫瘍細胞の感受性を増大させる感作剤として治療的に投与してもよい。
【0078】
癌の処置のための治療的使用では、本発明の製薬法において使用される構築物は、1日、約0.001mg/kg〜約1000mg/kgの初期投与量で投与される。約0.01mg/kg〜約500mg/kgまたは約0.1mg/kg〜約200mg/kgまたは約1mg/kg〜約100mg/kgまたは約10mg/kg〜約50mg/kgの1日用量範囲を使用してよい。しかし、投与量は、患者の必要条件、治療されている状態の重篤度および使用されている化合物に応じて変わり得る。例えば、投与量は、特定の患者において診断された癌の種類およびステージを考慮して経験的に決定することができる。本発明との関連で、患者に投与される用量は、患者において長い時間をかけて、有益な治療反応を達成するのに十分でなくてはならない。特定の状況にとっての適切な投与量の決定は、医師の技術の範囲内にある。通常、処置は、化合物の最適用量より少ない、より少量の投与量を用いて開始される。したがって、投与量を、状況下で最適な効果が達せられるまで少しずつ増やして増大する。便宜上、総1日投与量を、必要に応じて、分割し、1日の間に部分で投与してもよい。
【0079】
本発明に従って使用するための医薬品は、通常、ヒトおよび非ヒト哺乳類を含めた哺乳類にデリバリーされる。本方法を使用して処置される非ヒト哺乳類として、家畜化動物(すなわち、イヌ、ネコ、マウス、げっ歯類およびウサギ目)および農業用動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ)が挙げられる。
【0080】
腫瘍画像化法
特定の実施形態では、本発明は、本発明の抗体の投与によって、インビボで癌細胞または腫瘍を画像化する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、インビボで癌細胞を画像化する方法を提供し、この方法は、哺乳類に標識された抗PSCA抗体を投与することおよびインビボで抗体を画像化することを含む。本発明の方法を使用して、哺乳類、例えば、限定するものではないが、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ブタ、ヒトなどにおいて癌細胞を画像化することができる。
【0081】
インビボ画像化法は、当技術分野で周知であり、限定するものではないが、磁気共鳴画像法(MRI)、核磁気共鳴(NMR)(R. Weissleder, 1999, Radiology 212: 609-14)、コンピュータ断層撮影(CAT)スキャン、冷却電荷結合素子(CCD)カメラ光学画像化(Honigman, et al., 2001 Mol. Ther. 4: 239-249)、生物発光光学画像化(P R Contag, et al., 1998 Nat. Med. 4: 245-247)、ポジトロン放出断層撮影(PET)(M E Phelps, 1991 Neurochemical Research 16: 929-994; J G Tjuvajev, et al., 1998 Cancer Res 58: 4333-4341)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(J G. Tjuvajev, et al., 1996 Cancer Res. 45: 4087-4095)、マイクロPET(McVeigh, 2006, Circ. Res. 98: 879-86に概説される)などが挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、特許請求される本発明を、制限するのではなく例示するために提示する。
【0083】
[実施例1]
本実施例は、突然変異体scFv酵母ディスプレイライブラリーの構築およびPSCA結合親和性が改善されたScFv突然変異体の選択を記載する。
【0084】
ライブラリーの構築において使用されるオリゴヌクレオチドおよびベクターとして、以下が挙げられる;ギャップ5’:5'-TTAAGCTTCTGCAGGCTAGTG-3'(配列番号2);ギャップ3’:5'-GAGACCGAGGAGAGGGTTAGG-3'(配列番号3);pYD2内側NcoI−Not1制限部位(Razai A, et al. J Mol Biol. 2005; 35 1: 1 58)。
【0085】
まず、2B3 ScFv遺伝子を、NcoI−Not1制限部位を使用して酵母ディスプレイベクターpYD2(Razai A, et al. J Mol. Biol. 2005; 351: 158)にクローニングした。正しい配列を有する細菌クローンを増幅し、QIAprep Spin Miniprepを用いてDNAを抽出した。以下のとおりにエラープローンPCRを使用して2B3 Scfv遺伝子にランダム突然変異を導入した:2B3 ScFv遺伝子を、100mM MnCl2の存在下でTaqを用いる20サイクルのPCRに供し、ランダム突然変異を作製した。PCR産物をアガロースゲルに流し、QIAquickゲル抽出を使用して精製した。精製したPCR産物を、プルーフリーディングDNAポリメラーゼを使用して35サイクルの間再度増幅させた。ギャップ5’およびギャップ3’プライマーを用いて両PCRを実施した。増幅した2B3 Fv遺伝子を、再度アガロースゲルに流し、QIAquickゲル抽出を使用して精製した。突然変異したscFv遺伝子およびNcoI−Not1消化したpYD2を使用して、ギャップ修復によってLiAc処理EBY100細胞を形質転換した。得られた遺伝子レパートリーを、ギャップ修復を使用してpYD2にクローニングして5.9×l0 個の形質転換体のライブラリーを作製した。形質転換混合物をSD−CAAで培養し、継代培養した。ライブラリーの大きさは、形質転換混合物の段階希釈をSD−CAAプレートにプレーティングすることによって決定した。
【0086】
選択のために、SG−CAA培地およびゼオシンにおいて、20℃で24時間培養することによって、scFvディスプレイを誘導した。第1ラウンドの選択のために、2000万個の酵母(ライブラリーサイズの30倍を超える)を洗浄し、FACSバッファー(リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)、0.5%ウシ血清アルブミン)に再懸濁し、これに200nMのPSCAヒトγ1融合タンパク質を加え、室温で1時間インキュベートした。ラウンド2、3および4のソーティングために使用したPSCAヒトγ1の濃度は、それぞれ、5nM、2nMおよび1nMであった。細胞を、二次抗体とともに4℃で30分間インキュベートし、FACSバッファーで1回洗浄し、200〜500μlのFACSバッファーに再懸濁し、FACSAriaでソートした。通常、1%のPSCA結合集団にゲートをかけて収集した。収集した細胞をSD−CAA培地で増殖させ、SG−CAAにおいて誘導した後、次のソーティングのラウンドに使用した。4回目のラウンドから20個の酵母クローンをフローサイトメトリーによって分析した。強力な染色を示すこれらのクローンのうち8個を選択し(A2、A4、A8、A9、A11、A12、B5およびC5)、そのDNAを配列決定した。A2、A4、A8、A9、A12、B5タンパク質配列を10の突然変異に関して同定した。A11が6つの突然変異を有し、C5は4つの突然変異を有していた。親の2B3 ScFvと、A2、A11およびC5のタンパク質配列比較が、図2に示されている。
【0087】
[実施例2]
この実施例は、突然変異体2B3 scFvのミニボディーへの再編成を記載する。
【0088】
親2B3ミニボディーpEE12構築物(図2)を基本骨格として使用して、野生型ScFv挿入断片が、3種の2B3 ScFv親和性変異体の各々で置換されている3種の2B3ミニボディー親和性変異体を作製した。図1に親2B3ミニボディー構築物が示されている。手短には、VおよびV領域を、15残基長のGly−SerリッチリンカーとV−V方向にて融合させた。このScFvを、上流にてシグナルペプチドと、および下流にて10残基のGlySerペプチドリンカーを含むヒトIgG1ヒンジを介してヒトIgG1C3ドメインと隣接させる。最終産物を、発現のPEE12ベクターにクローニングした(Lonza Biologics、Slough、UK)。このベクターは、hCMVプロモーターおよび選択のためのグルタミンシンセターゼ遺伝子を含む(Bebbington et al., Biotechnology (N Y). 1992; 10: 169)。親2B3ミニボディーpEE12構築物をバックボーンとして使用して、3種の2B3ミニボディー親和性変異体を作製した。親pEE12 DNAをXbaIおよびXhoI制限部位で消化し、3種の2B3 ScFv親和性変異体の各々で置換された親2B3 ScFv挿入断片を除去した。伸長PCRによって、pEE12へのサブクローニングのためにXbaI−XhoI制限部位を2B3 ScFv親和性変異体の末端に加えた。
【0089】
[実施例3]
この実施例では、抗PSCAミニボディーの発現、選択および精製を記載する。
【0090】
合計2×10個のNS0マウス骨髄腫細胞を、記載されるように(Yazaki PJ, et al. J Immunol Methods. 2001; 253: 195)、10μgの直線化(SalIで切断した)ベクターDNAを用い、エレクトロポレーションによってトランスフェクトし、グルタミン欠乏培地で選択した。クローンをELISAによって発現についてスクリーニングし、それによって、所望のタンパク質をヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)によって獲得し、アルカリホスファターゼ(AP)コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)によって検出した(両方とも、Jackson ImmunoResearch Labs、West Grove、PA製)。最大に産生するクローンを増殖させ、最終培養に移した。
【0091】
可溶性ミニボディーを、分取Poros50Aカラム(Applied Biosystems、Foster City、CA)を備え、インラインUVモニターを備えたThermal Separations Products HPLCを使用して、タンパク質Lクロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、SDS−PAGEで分析した(図3)。4種のミニボディーが同様の結果を示した。すべてのミニボディーが、非還元条件下で約95kDaの分子量種として移動し、すべて良好な純度を示した。さらに、A11ミニボディーは、較正されたサイズ排除カラムで実施した場合に、予想されるとおり29.5分で溶出した(図4)。上清を10×50mmカラムにロードし、0.1MグリシンpH2.5を使用して溶出し、2M Tris−HC1 pH8を用いてpHを直ちに中性にした。次いで、精製されたタンパク質を、分子多孔質メンブレンチューブ(mwco:30,000)を使用してPBSに対して透析し、Vivascience Vivaspin20(mwco:30,000)を用いて濃縮した。最終タンパク質濃度は、親のマウス抗体を標準として使用し、280nmでのUV吸光度を測定することによって求めた。
【0092】
この実施例は、抗PSCAミニボディーの生化学的特性決定を記載する。
[実施例4]
【0093】
大きさおよび組成:精製したタンパク質を、非還元条件下でSDS−PAGEによって分析した(図3)。天然の構造的大きさを、サイズ排除カラム(Superdex75)(Pharmacia)によって決定した。
【0094】
競合ELISAおよびフローサイトメトリーによって4種のミニボディーの順位を決定した(図5)。競合ELISAによって測定される相対的親和性は、3種の親和性変異体のすべてが、親よりも高い親和性を有し、親と比較して、A2、A11およびC5それぞれについて、4.4×、3.0×および1.9×改善されたことを示した。フローサイトメトリーデータもまた、細胞表面に発現されたPSCAをターゲッティングした場合に、同じ順序での4種のミニボディーの順位付けをもたらした。結論として、4種のミニボディーの親和性順位は以下のとおりであった:A2>A11>C5>親。
【0095】
競合ELISA:ミニボディーのPSCA相対的結合親和性を、マイクロタイタープレートウェルを精製PSCA−Fcでコーティングした競合ELISAによって決定した(Olafsen T, et al. J. Immunotheray 2007: 30: 396)。
【0096】
フローサイトメトリー:細胞PSCA結合活性を評価するために実施した。PSCAを用いて安定にトランスフェクトされたEBV形質転換B細胞リンパ腫細胞株を使用した。手短には、細胞5×10'個を、2μg/mlの濃度のミニボディー100μlとともに氷上で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、1:100希釈したヤギ抗hFc PEコンジュゲート抗体を用いて染色した。
【0097】
放射性ヨウ素化:先に記載されたように、精製したミニボディーを、Advanced Nuclide Technologies、Indianapolis、INによって提供された陽電子放出同位元素l24I(0.02M NaOH中ヨウ化ナトリウム;放射性核種純度>99%)を用いて放射性ヨウ素化した(Kenanova, Olafsen et al., Cancer Res. 65: 622, 2005)。免疫反応は、放射性ヨウ素化したミニボディーを、過剰量のSKW−PSCA細胞とともに室温で1時間インキュベートし、細胞を遠心分離し、対照と比較して上清中に存在する放射能をカウントすることによってアッセイした。
【0098】
[実施例5]
この実施例は、抗PSCAミニボディーのマイクロPET画像化および生体内分布研究を記載する。
【0099】
すべての動物研究は、カリフォルニア大学、ロサンジェルス校の学長の(Chancellor's)動物研究委員会(Animal Research Committee)によって承認されたプロトコール下で実施した。異種移植片は、7〜8週齢の雄のヌードマウス(Charles River Laboratories、Wilmington、MA)において肩の領域に2×10個のLAPCP AD細胞を皮下注射接種することによって確立した。14日後、腫瘍質量が100〜300mgの範囲である時点で、100μCiの同位元素l24I(30〜50μgのタンパク質)を各動物の尾静脈中に注射した。マウスをP4マイクロPETスキャナー(Concorde Microsystems, Inc.、Knoxville、TN)を使用して画像化した。画像化を可能にするために、2%イソフルランを使用してマウスを麻酔し、マイクロPETスキャナーの長軸に沿って腹臥位におき、画像化した。獲得時間は、10分とし(1ベッド位置)、フィルタ補正逆投影再構築アルゴリズムを使用して画像を再構築した。画像がディスプレイされ、目的の領域(ROI)が図6に示すように描かれ、AMIDE(Loening and Gambhir, Molecular Imaging 2: 13 1, 2003)によって定量化された。スキャニング後、腫瘍、肝臓、脾臓、腎臓、肺および血液を摘出し、秤量し、ウェルカウンター(Cobra II AutoGamma、Packard、IL)でカウントした。バックグラウンド、クロスオーバーおよび減衰補正を実施した。結果は、組織1グラム当たりの注射した用量のパーセンテージとして算出した(% ID/g)。
【0100】
腫瘍ターゲッティングおよびマイクロPET画像化効率を評価するために、124I標識ミニボディーを、右肩にLAPC−9AD腫瘍を保持するヌードマウスに注射した。21時間および/または25時間に全身マイクロ(mico)PETおよびCTスキャンを実施し、その後、動物を屠殺し、γカウンターを使用して種々の組織における活性を定量化した。マイクロPET画像化を定量化するために、腫瘍において4種の3次元ROIを描き、腫瘍周辺の軟組織中の4種のその他のROIが図6に提示されている。ROI位置および大きさは、CT画像情報を基にした。体内分布および画像化定量化の両方とも、バックグラウンドに対する腫瘍シグナルの比として表される。A11ミニボディーは、3種の親和性変異体を比較した実験において最良の体内分布および画像化データを示した(図7A)。したがって、3種の親和性変異体ミニボディーの、親和性順位(図5)およびインビボ腫瘍ターゲッティング/画像化順位(図7A)は異なっており、このことは、本発明者らのモデルでは、インビボ腫瘍ターゲッティング/画像化有効性は、単に、トレーサーの、その標的に対する固有の親和性に依存するものではないということを示唆する。PSCAに対して最良の親和性を有するA2は、最良のインビボ腫瘍ターゲッティング/画像化結果を示さなかった。この不一致についての1つの可能性ある説明は、A2は、V CDR2中にアスパラギンのチロシンへの置換を有し、この新しいチロシンのヨウ素化が、PSCAとの結合に影響を及ぼし得るということである。第2の実験では、A11ミニボディーを、そのインビボ腫瘍ターゲッティング/画像化効率について親のミニボディーと比較した。A11は、腫瘍ターゲッティングにおける20%の増大(n=3)およびマイクロPET腫瘍画像化における141%の増大(n=2)を示した(図7B)。
【0101】
[実施例6]
この実施例は、抗PSCAミニボディーを使用した種々の膵臓癌腫瘍の画像化を記載する。
【0102】
親和性成熟抗PSCAミニボディーのターゲッティングおよび画像化能力を評価するために、124I標識したミニボディー(親の2B3および変異体A11)を、低レベルの標的PSCA抗原を発現する腫瘍を保持する胸腺欠損ヌードマウスに注射した。手短には、ヒトCapan−1(図14)またはヒトMIA PaCa−2(図15)膵臓腫瘍(pancreactic tumors)のいずれかを保持する異種移植マウスに、200または300μgいずれかの標識された抗PSCAミニボディーを注射した。先と同様に全身マイクロ(mico)PETおよびCTスキャンを実施し、組織放射能を測定した。同様に、実施例5におけるとおりに、マイクロPET画像化の定量化ならびにROI位置および大きさを決定した。
【0103】
図14および15において見ることができるように、変異体A11抗PSCAマイクロボディーは、親の2B3ミニボディーと比較して、筋肉に対する腫瘍の特異性の比についての改善を一貫して示した。インビボ特異性のほぼ2倍の増大は、これらの変異体ミニボディーが、既存の抗PSCA抗体よりも、治療的ターゲッティングおよび腫瘍画像化における使用に、より良好に適合することを示唆する。特に、Capan−1およびHPAF−11における腫瘍取り込み(示されていないデータ)は、およそ2%であり、MIA PaCa−2腫瘍では1%未満であり、このことは特異的取り込みを示唆するものである。
【0104】
関連技術:
1)Sundaresan, G., Yazaki, P. J., Shively, J. E., Finn, R. D., Larson, S. M., Raubitschek, A. A., Williams, L. E., Chatziioannou, A. F., Gambhir, S. S., and Wu, A. M. (2003) Iodine-1 24 labeled engineered anti-CEA minibodies and diabodies allow highcontrast, antigen-specific small-animal PET imaging of xenografts in athymic mice. J, Nucl. Med., 44: 1962-1969。
【0105】
2)Olafsen, T., Gu, Z., Sherman, M. A., Leyton, J. V., Witkosky, M. E., Shively, J. E., Raubitschek, A. A., Morrison, S. L., Wu, A. M. and Reiter, R. E. (2007) Targeting, imaging, and therapy using a humanized anti-prostate stem cell antigen (PSCA) antibody. J. lmmunotherapy 30: 396-405。
【0106】
3)Leyton, J. V., Olafsen, T., Sherman, M. A., Reiter, R. E., and Wu, A. M. Anti-prostate stem cell antigen (PSCA) antibody fragments for PET imaging of prostate cancer (abstract). Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 21 : 391, 2006。
【0107】
本明細書に記載される実施例および実施形態は単に例示を目的とすること、およびそれらを踏まえた種々の改変または変法が当業者に示唆されるであろうこと、そしてそれらも本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることを理解されたい。本明細書に引用される、すべての刊行物、特許および特許出願は、これにより、本開示内容と対応する範囲について、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミニボディー、ダイアボディー、scFvおよびscFv−Fcからなる群から選択される抗原結合タンパク質構築物であって、選択された構築物が、本明細書においてA11、A2またはC5と表される、ミニボディーまたはscFvのVおよびVドメインと実質的に同一であるVおよびVドメインを有する構築物。
【請求項2】
ミニボディー、ダイアボディーおよびscFv−Fcからなる群から選択される抗原結合タンパク質構築物であって、選択された構築物が、それぞれ、抗PSCA抗体のVドメインおよびVドメインと実質的に同一であるVおよびVドメインを有する構築物。
【請求項3】
前記抗PSCA抗体が、親和性成熟抗体である、請求項2に記載の抗原結合タンパク質構築物。
【請求項4】
抗PSCA抗体のVおよびV鎖可変ドメインが、抗体のヒンジ領域、アミノ酸リンカーおよび免疫グロブリン分子のC3ドメインと融合しているミニボディーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項5】
ダイアボディーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項6】
抗PSCA抗体がヒト化抗体であり、C3ドメインがヒト免疫グロブリン分子に由来する、請求項1から5のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項7】
ヒンジ領域が、ヒトIgGヒンジ領域である、請求項6に記載の構築物。
【請求項8】
抗PSCA抗体が2B3である、請求項2から7のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項9】
抗原結合タンパク質が、配列番号10と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むミニボディーであり、前記ミニボディーが、抗体2B3の親和性と同等以上の親和性でPSCAと結合する、請求項2に記載の構築物。
【請求項10】
前記ミニボディーが、抗体2B3の親和性を超える親和性でPSCAと結合する、請求項9に記載の構築物。
【請求項11】
配列番号10、11、12および13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載のミニボディー。
【請求項12】
抗PSCA抗体が、1G8(ATCC番号HB−12612)、2A2(ATCC番号HB−1203)、2H9(ATCC番号HB−12614)、3C5(ATCC番号HB−12616)、3E6(ATCC番号HB12618)、3G3(ATCC番号HB−12615)または4A10(ATCC番号HB−12617)と表されるモノクローナル抗体である、請求項2または3に記載の構築物。
【請求項13】
ミニボディー、ダイアボディーおよびscFv−Fcからなる群から選択される抗原結合タンパク質構築物であって、選択される構築物が、抗PSCA抗体のCDR領域を含む構築物。
【請求項14】
前記抗PSCA抗体が、抗体2B3の親和性と同等以上の親和性でPSCAと結合する、請求項13に記載の構築物。
【請求項15】
前記抗PSCA抗体が、2B3、A2、A11またはC5と表されるものから選択される、請求項14に記載の構築物。
【請求項16】
前記構築物がミニボディーである、請求項13から15のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項17】
治療薬とコンジュゲートしている、請求項1から16のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項18】
治療薬が、細胞傷害性薬剤である、請求項17に記載の構築物。
【請求項19】
細胞傷害性薬剤が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニン、ミトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリケアマイシン、サパオナリアオフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド類およびグルココルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項18に記載の構築物。
【請求項20】
治療薬が放射性同位元素である、請求項18に記載の構築物。
【請求項21】
放射性同位元素が、212Bi、131I、111In、90Yおよび186Reからなる群から選択される、請求項20に記載の構築物。
【請求項22】
プロドラッグをその活性型に変換できる抗癌薬プロドラッグ活性化酵素と連結している、請求項1から16のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項23】
PSCAが、ヒトPSCAである、請求項2に記載の構築物。
【請求項24】
検出可能マーカーで標識されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項25】
マーカーが、放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素である、請求項24に記載の構築物。
【請求項26】
マーカーが124Iである、請求項25に記載の構築物。
【請求項27】
請求項1から25のいずれか一項に記載の抗PSCA抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項28】
前立腺幹細胞抗原(PSCA)タンパク質を発現する前立腺癌細胞の増殖を阻害する方法であって、前記癌細胞を、前記癌細胞の増殖を阻害するのに有効な量の、請求項1から23のいずれか一項に記載の構築物と接触させる工程を含む方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によって、前立腺癌細胞を死滅させる方法。
【請求項30】
前記構築物が、配列番号2に示す、アミノ酸位置22のロイシンで始まり、アミノ酸位置99のアラニンで終了するPSCAタンパク質を認識し、結合する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞に、化学療法薬を投与する工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞に、放射線療法を施す工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
請求項28から32のいずれか一項に記載の方法によって、前立腺、膀胱または膵臓癌を患っている患者を処置する方法。
【請求項34】
患者に、ホルモンアブレーション療法またはホルモンアンタゴニスト療法を施す工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記接触させる工程が、患者に前記構築物を、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、腫瘍内に、または皮内に投与することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記接触させる工程が、構築物を、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌またはその転移癌に直接投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
被験体において癌性細胞を検出する方法であって、請求項24から26のいずれか一項に記載の構築物を接触させる工程を含む方法。
【請求項38】
請求項2から1のいずれか一項に記載の構築物と、医薬上許容される賦形剤、担体または安定剤とを含む医薬組成物。
【請求項39】
凍結乾燥製剤または水溶液である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
被験体における前立腺、膀胱または膵臓癌の処置または検出において使用するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項41】
インビボで癌細胞を画像化する方法であって、
(a)癌を有すると疑われる哺乳類に、請求項24から26のいずれか一項に記載の抗体を投与する工程と、
(b)磁気共鳴画像法(MRI)、核磁気共鳴(NMR)、コンピュータ断層撮影(CAT)スキャン、冷却電荷結合素子(CCD)カメラ光学画像化、生物発光光学画像化、ポジトロン放出断層撮影(PET)、単一光子放射コンピュータ断層撮影法およびマイクロPETからなる群から選択される方法を用いて前記抗体を検出し、それによって、インビボで癌細胞を画像化する工程と
を含む方法。
【請求項42】
前記哺乳類が、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ブタまたはヒトである、請求項41に記載の方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a−1】
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【図16a−2】
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【図16b】
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【公表番号】特表2010−538080(P2010−538080A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524150(P2010−524150)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/075291
【国際公開番号】WO2009/032949
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】