癌の予後診断及び病理学的病期分類のための試薬及び方法。
本発明は、個体由来の組織又は腫瘍細胞を含む試料を用いて腫瘍の進行を評価するための試薬及び方法を提供する。本発明は同様に、化学療法に対する応答性を評価するための試薬及び方法をも提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体における結腸直腸癌の進行を評価するための試薬及び方法に関する。より詳しくは、本発明は、療法を個体に合わせてより正確に調整する目的で癌の進行又は病理学的病期分類を判定又は診断するための前記試薬及び方法を提供する。本発明は同様に、EGFR、PTEN、pHER1、pAKT、pERK、pMEK及びKi67を含むEGFR経路のバイオマーカーのいずれか1つ又は有益な組合せの、発現及び活性化を定量化するために生体試料を測定および分析するための免疫学的試薬及び方法にも関する。
〔関連出願の相互参照〕
【0002】
本出願は、本明細書に参照により援用されている2006年2月16日付けの米国仮特許出願第60/774,563号明細書についての優先権を請求するものである。
【背景技術】
【0003】
癌療法の主要目的は、正常な細胞に不利な影響を及ぼすことなく、悪性細胞を選択的に死滅させるか又はその無制御成長を阻害することにある。従来の化学療法薬は、好ましくは正常な細胞に対してよりも悪性細胞に対しより大きな親和性を有するか、又は少なくともその高い細胞成長速度及び代謝活性に基づいて悪性細胞に選好的に影響を及ぼす、細胞毒性の高い作用物質である。しかしながら、これらの作用物質は、「特効薬」でないことがわかってきており、しばしば癌細胞と同様に正常な細胞に危害を加える。逆説的ではあるが、一部の癌は、正常な細胞が発生させることのない前記化学療法薬に対する耐性を発生させる。悪性細胞を標的とし、正常な細胞を標的としないことができる、標的療法と呼ばれる癌治療療法が癌化学療法の新たな潮流となっている。このような新しいアプローチは、比較的副作用の少ない融通性及び応答性のある治療を必要とする慢性的身体条件であり続けている固形腫瘍癌の治療に特に関連性をもつものであり、その発達を調査する必要がある。
【0004】
一般に、標的癌療法は、発癌現象に特異的であり、従って非癌細胞を容赦する分子又は細胞内経路と干渉することにより、癌細胞の成長及びまん延を遮断しようとしている。これらの作用物質は、癌性又は前癌状態の細胞の成長停止、末端分化及び細胞死を生成するのに使用されるが、正常な細胞の発達を中断することもできる従来の化学療法又は化学予防薬とは対照的に作用する。しかしながら、一部には正常な細胞及び癌細胞の両方に発現される受容体及びリガンドの多様性、及びその結果としての受容体シグナリングからの帰結が可変的であることに起因して、標的療法用の堅固な診断候補バイオマーカーは開発が困難であった。
【0005】
腫瘍形成を理解し治療するための重要な標的として、複数のシグナリング経路が浮上してきている。これらには、成長因子シグナル翻訳経路が含まれる。成長因子経路は、細胞内及び環境信号に応答して、細胞の成長及び代謝を調節する。これらのシグナリング経路は、往々にして癌の中で改変されるか又は異常調節され、その結果、無制御成長の表現型及び周囲の組織への浸潤がもたらされる。
【0006】
細胞成長の主要な決定因子であり、癌の診断及び治療における活発な研究の標的であるのは、上皮細胞成長因子(EGF)及びその受容体(EGFR)である。EGFは、シグナル伝達カスケードを開始させるべくタンパク質−受容体チロシンキナーゼ(RTK)を活性化し、結果として細胞の成長、増殖及び分化の変化をもたらす成長因子である。EGF及びras/raf、mek及びerkを含むその下流側の標的(図1に例示)は、異なる癌の発病機序及び進行に関与するものとして知られている。この経路及びそのシグナル分子は治療的介入のための魅力的な標的を提供し、かかるアプローチが開発中である(Stadler、2005年、Cancer、第104号:2323〜33頁;Normannoら、2006年、Gene、第366号:2〜16頁)。
【0007】
EGF及びその受容体を標的とする作用物質としては、ベバシツマブ、PTK787、SU011248及びBAY43−9006が含まれる。BAY43−9006はまた、raf、mek及びerkを含むEGF経路内の下流側の標的を阻害することも示されている(Stadler、2005年、Cancer、前掲書)。この受容体系はまた、肺、胸部、前立腺、結腸、卵巣、頭部及び頸部を含む多くのヒト固形腫瘍の発生及び進行に関与している。HER1/EGFRは、4つの受容体{EGFR(HER1又はErbB1とも呼ばれる)、ErbB2(HER2/neu)、ErbB3(HER3)及びErbB4(HER4)}のファミリーのメンバーである。受容体は、細胞原形質膜内に常在し、外部リガンド結合ドメイン、膜内外ドメイン及び内部チロシンキナーゼドメインから成る。リガンドの結合は、受容体の2量体化及び内部受容体ドメインの自己リン酸化をひき起こす。こうして、細胞分裂及びその他の数多くの細胞成長局面に影響を及ぼす細胞反応カスケードが開始される。EGF受容体の活性の増強は、それがリガント濃度の増大、受容体数又は受容体突然変異のいずれによりひき起こされたものであるにせよ、細胞増殖の増大を導き得る。現在では、HER1/EGFR系がさまざまな固形腫瘍の確立及び進行を媒介し得ることを示す有意な証拠が存在する。
【0008】
研究により癌の制御及び治療におけるEGF経路の役割が調べられてきたが、腫瘍の進行及び転移中のこの経路の変化についてはほとんどわかっていない。EGFR経路における下流側エフェクターの微妙な改変が、とりわけ腫瘍タイプ、病期及び個々の組成に基づいて治療的介入のための特有かつ可動性の標的を提供し得る。かかる変動は、悪性腫瘍の診断及び治療に対し有意な影響を及ぼし得る。
【0009】
大規模試験からの結果に基づいて、従来の癌治療の治療計画が開発されてきており、これらの治療計画は、多様な患者及び腫瘍についての予測結果に依存している。個々の患者、腫瘍及び病理学的病期分類(図2に示されている)に合わせて療法を調整する能力は、より少ない副作用でより効果の大きい悪性腫瘍治療を提供し得る。さらに、癌治療の進行を監視しそれに応じて療法を調整できれば、広範な患者群からのデータを用いて以前に開発された治療計画に対する応答における個々の差異に対しより迅速に反応することが可能になると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当該技術分野においては、癌の病期を迅速に診断しEGFR経路を対象とした治療の効果を監視するために癌治療の前及び途中のさまざまな細胞内シグナル分子の変化のスクリーニング及び迅速な検出を可能にする、診断バイオマーカーを開発する必要性が存在している。同様に、EGFR経路を対象とした阻害物質の改良された同定方法の必要性も存在している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、癌を患う個体における腫瘍の進行を評価するための試薬及び方法を提供しており、特に、前記方法は腫瘍の病期を立証し、抗癌療法の効能を評価するために使用される。本発明は同様に、患者個別化された抗癌治療及び治療に対する応答を提供するための方法であって、本発明の方法を用いて立証された腫瘍のタイプ及び病期に基づいて個々の患者に対し特定の治療が投与され、該治療が、前記治療に対する患者の個々の応答に基づいて維持又は変更される方法を提供する。
【0012】
第1の態様において、本発明は、個体における腫瘍の進行、特に結腸直腸癌の進行を評価するための試薬、特に免疫学的試薬および方法を提供する。この態様では、患者由来の組織又は腫瘍細胞含有試料が分析されて、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出する。特定の実施形態においては、前記生物学的マーカーは、EGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67を含むEGF代謝経路のメンバーであるが、これらに限定されない。これらの実施形態においては、腫瘍の進行が評価され、ここで、1つ以上の、特に複数のこれらの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンは、前記腫瘍の立証された進行病期をもつ組織又は細胞試料由来の1つ以上の、特に複数のこれらの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンと実質的に類似している。
【0013】
他の実施形態においては、本発明は、個体における腫瘍の進行、特に結腸直腸癌の進行を評価するための試薬、特に免疫学的試薬および方法を提供する。この態様では、患者由来の組織又は腫瘍細胞含有試料が分析されて、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出する。特定の実施形態においては、前記生物学的マーカーは、EGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67を含むEGF代謝経路のメンバーであるが、これらに限定されない。これらの実施形態においては、腫瘍の進行が評価され、ここで、1つ以上の、特に複数のこれらの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンは、正常な細胞を含むものの腫瘍細胞を含まない非腫瘍組織又は細胞試料由来の1つ以上の、特に複数のこれらの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンと異なっている。
【0014】
本発明の試薬及び方法の好ましい用途は、結腸直腸癌腫の臨床病期を評価することを目的としたものであり、ここで前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを含む生物学的マーカーにはEGFR、PTEN、pMEK、Ki67及びpHER1が含まれる。同様に、本発明のこれらの態様には、EGFRをコードするゲノムDNAの遺伝子増幅を測定するさらなる工程が含まれる。一部の実施形態においては、これらの検定は、ゲノムEGFRコーティングDNA内の安定な(balanced)二染色体性を検出する。
【0015】
これらの態様においては、組織試料は、好ましくは、小腺腫(small adenoma)又は腺腫様ポリープである。特にこれらの実施形態においては、本発明は、非腫瘍組織又は細胞試料内の該生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方レベルと比較して、EGFRの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が増大、PTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が増大し、pMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が減少している、発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを提供する。
【0016】
その他の実施形態においては、腫瘍は腺癌である。特に、これらの実施形態においては、本発明は、小腺腫組織又は細胞試料内の該生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方レベルと比べて、PTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が減少し、及びpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が増大している、発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを提供する。これらの実施形態は、その範囲内に、FGFRをコードするゲノムDNAの遺伝子増幅を測定するさらなる工程を有することができる。一部の実施形態においては、これらの検定は、ゲノムEGFRをコードするDNA内の安定な二染色体性及び安定な三染色体性を検出する。
【0017】
さらなる実施形態においては、患者からの組織試料は、悪性試料であり、本発明は、小腺腫の組織又は細胞試料内の該生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のレベルに比べて、PTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が減少し、及びpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が増大している、発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを提供する。これらの実施形態は、その範囲内に、EGFRをコードするゲノムDNAの遺伝子増幅を測定するさらなる工程を有することができる。一部の実施形態においては、これらの検定は、ゲノムEGFRをコードするDNA内の安定な二染色体性及び安定な多染色体性を検出する。
【0018】
好ましい実施形態においては、本発明の方法において検出されたパターンを含む生物学的マーカーのこれらの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンは、免疫組織化学又はインサイチュハイブリダイゼーションにより検出される。好ましい実施形態において、前記方法は、有利には標識された特異的結合試薬、好ましくは免疫学的試薬を用いた染色後、組織切片のコンピューター援用画像解析を用いて実施される検定を含む。
【0019】
本発明の方法の実践においては、特定の複数の化学療法薬の1つ又はその組合せに対する応答性をもつ、腫瘍特に結腸直腸癌腫瘍を有する個体を同定するための方法が提供される。これらの実施形態においては、本発明の方法は、1つ又は複数の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために使用される。一部の実施形態においては、該腫瘍は結腸直腸癌であり、生物学的マーカーにはEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK、又はKi67が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法の有利な実施形態においては、発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンは、複数の化学療法薬の1つ又はその組合せに対する応答性をもつものとして、腫瘍を同定する。特定の実施形態においては、本発明の方法は、化学療法薬に対する応答性をもつ腫瘍試料を同定するために有用であるが、EGFR抗体又はキナーゼ阻害物質、又はEGFR抗体およびキナーゼ阻害物質の両方を含むものに限定されない。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法の実践用キットを提供する。有用な実施形態において、前記キットは、ヒト腫瘍試料内の腫瘍の進行又は化学療法薬の応答性又はその両方に関して情報を提供する生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するための少なくとも2つの試薬、好ましくは特異的結合剤、より好ましくは免疫学的試薬を含む。一部の実施形態においては、少なくとも2つの試薬は、EGFR、pEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67を含む、これらに限定されない生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するために有用である。一部の実施形態において、該少なくとも2つの生物学的マーカーはPTEN及びpMEKである。一部の実施形態においては、前記キットは、好ましくはEGFR、pEGFR、PTEN、pMEK、pERK、又はKi67を含む、これらに限定されない少なくとも3つの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するための試薬を含む。一部の実施形態において、少なくとも3つの生物学的マーカーはEGFR、PTEN及びpMEKである。他の実施形態において、キットは、EGFR、pEGFR、PTEN、pMEK、pERK、又はKi67の発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するための試薬を含む。本発明のキットの一部の実施形態は同様に、EGFRをコードするゲノムDNAの遺伝子増幅を検出するための試薬をも含んでいる。本発明の前記キットの各実施形態は有利にはさらに、本発明の方法の実践においてキットを使用するための使用説明書を含む。
【0021】
本発明の特定の好ましい実施形態は、一部の好ましい実施形態についての以下のさらに詳細な説明及び特許請求の範囲から明白になるであろう。
【0022】
特許又は出願ファイルはカラーで作成された少なくとも1つの図面を含んでいる。カラー図面を伴う本特許又は特許出願公報のコピーは、必要な手数料の支払いを伴って要請に基づいて特許庁により提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、癌患者を含む個体における結腸直腸癌の進行を評価するための方法を提供する。さらに、本発明は、結腸直腸癌の進行を評価するため予測的なバイオマーカーを提供している。さらに、本発明は、化学療法薬に対する応答性をもつ結腸直腸癌腫瘍を同定するための方法を提供している。その上本発明は、結腸直腸癌の進行を評価するためのキットを提供する。
【0024】
化学療法薬物治療が外科手術の補助および術後に着手される従来の抗癌方法とは対照的に、新補助(又は一次)化学療法は、一部の癌患者に初期治療として薬物を投与することから成る。かかるアプローチの1つの利点は、3cm超の原発性腫瘍については、該化学療法の腫瘍収縮効果によって、大部分の患者について(例えば乳癌患者における根治的乳房切除術とは対照的に)保存外科的処置をこのアプローチの後に又は同時に使用することを可能にするという点にある。もう1つの利点は、数多くの癌について、全患者の約3分の2において部分的及び/又は完全な応答が達成されるという点にある。最後に、2〜3サイクルの化学療法治療後に大部分の患者が応答性を有することから、化学療法治療に対し応答性をもたない腫瘍を有する患者を同定するために、使用した化学療法治療計画の生体内での効能を監視することが可能である。非応答性腫瘍の適時の同定により、臨床医は不必要な治療副作用に対する癌患者の曝露を制限し、代替的治療を始めることができる。残念なことに、組織学的検査を含む当該技術分野で存在する方法は、このような適時の、および正確な同定の最適な応用には不充分である。本発明は、有効な転帰(すなわち腫瘍の削減又は除去)の確率が増大している癌患者に対して行うことのできる、より情報に基づく有効な治療計画を開発するための方法を提供する。
【0025】
疾病の初期診断及びその後の疾病経過(治療の前後及び最中)の監視の両方である癌診断は、従来、患者から取出した細胞又は組織試料の組織学的検査を通して確認される。臨床病理学者には、かかる試料が良性であるか又は悪性であるかを正確に判定し、悪性とみなされた腫瘍試料の攻撃性を分類できる能力が必要である。なぜなら、これらの判定が患者の治療の適切な行程を選択する基礎となることが多いからである。同様にして、病理学者は、特に結果的又は間接的な治療によって、最も特定的には化学療法薬又は生物学的作用物質による治療によって、癌がどの程度成長したか又は寛解に入ったかを検出できなければならない。
【0026】
組織学的検査は従来、試料の形態学的特徴を光学顕微鏡下で容易に観察できるようにする組織染色手順を伴う。病理学者は、染色された試料を検査した後、一般的には、腫瘍試料が悪性か否かの定性的判定を下す。しかしながら、腫瘍の攻撃性は往々にして、試料の形態により反映されることもあればされないこともあるタンパク質の発現又は抑制及びタンパク質のリン酸化といったような腫瘍内部の細胞の生化学の結果であることから、試料の組織学的検査のみを通して腫瘍の攻撃性を確認することはむずかしい。従って、腫瘍試料内の細胞の生化学を評価できることが重要である。さらに、腫瘍関連遺伝子又はタンパク質、又はより具体的には腫瘍関連シグナル経路の細胞構成要素の遺伝子発現及びタンパク質のリン酸化の両方を観察し、定量化できることが望ましい。
【0027】
癌療法は、単にその組織学又は疾病の部位に基づくのではなく、むしろ腫瘍の分子プロファイリングを基礎とすることができる。腫瘍試料内の標的療法の生物学的効果を解明し、これらの効果を臨床的応答と相関させることは、腫瘍内の作動的な優勢的成長及び存続経路を同定し、その結果起こりうる応答のパターンを立証し、および反対に耐性を克服するための戦略設計の論理的根拠を提供するのを助ける。例えば、成長因子受容体の診断標的化に成功すれば、腫瘍の成長又は存続が標的受容体又は受容体ファミリーによって駆動されているか、療法が標的としていないその他の受容体により駆動されているか、そして下流側シグナルがもう1つの発癌経路の関与を示唆しているか否かが判定されるはずである。さらに、2つ以上のシグナル経路が関与している場合、これらのシグナル経路のメンバーを診断標的として用いて、2重阻害剤療法が有効となるか又は有効であるかを判定することができる。
【0028】
化学療法が有効であるためには、投薬療法が腫瘍細胞を破壊しかつ正常な体細胞、特に腫瘍に隣接する又はその近位に存在する正常な細胞には危害を加えてはならない。これは、とりわけ、癌細胞内では圧倒的に発生するが正常な細胞内では発生しない細胞活性に影響を及ぼす投薬療法を用いることで達成可能である。
【0029】
当該技術分野において既知の自動(コンピューター援用)画像解析システムが、腫瘍試料の視覚的検査を増強させることができる。代表的な実施形態においては、細胞又は組織試料は、特定の生物学的マーカーを特異的に標識する試薬に曝露され、拡大された細胞の画像は、テレビカメラなどのカメラ又は電解結合素子(CCD)から画像を受信するコンピューターによって処理される。かかるシステムは、例えば、試料中のEGFR、ptyr、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67又は任意の付加的な診断用バイオマーカーを検出しその発現及び活性化レベルを測定するために使用可能である。かくして、本発明の方法は、より正確な癌診断、および組織学的に同定された癌細胞内の遺伝子発現のより優れた特徴づけであって、最も特定的には、腫瘍マーカー遺伝子又は(例えば異なる悪性度を有する)特定の癌型及び亜型内で発現させられるものとして知られている遺伝子の発現に関する特徴づけを提供する。この情報により、一定の腫瘍型又は亜型についての臨床的効能をもつ薬物を、このように同定された細胞をもつ患者に対し投与できることから、施行される治療についてのより情報に基づくおよび有効な治療計画が可能になる。
【0030】
従来の抗癌療法のもう1つの欠点は、個々のヒト患者における特定の癌を治療する上での特異的な化学療法薬の効能が予測不可能であるという点にある。この予測不能性を考慮すると、当該技術分野では療法を開始するまでは、個々の患者における1つ以上の選択された作用物質が抗腫瘍薬として活性であるか否かを判定すること、又は治療の正確な予後診断又は経過を告げることができない。特定の個体にとってどの治療計画が最も効果が高くなるかを評価する技術を現状では一切持っていない臨床医は、特定の臨床癌に対して治療治療計画の選択をせまられる可能性があることから、このことは特に重要である。本発明の方法の利点は、該方法が、個々の患者における提案された治療薬(又は作用物質の組合せ)の予想される効能をより良く評価できる、という点にある。請求されている方法は、それらが化学療法治療計画の効能を評価する上で時間効果性及びコスト効果性の両方を有し、かつ癌患者にとって外傷性傷害が最小であるという点で有利である。
【0031】
ポリペプチドの発現及びリン酸化のパターンが、本発明の方法を用いて検出および定量化される。より特定的には、腫瘍関連シグナル経路の細胞構成要素であるポリペプチドの発現及びリン酸化のパターンが、本発明の方法を用いて検出および定量化される。例えば、ポリペプチドの発現及びリン酸化のパターンは、抗体を含むがこれに限定されない、ポリペプチドに特異的な生物検出試薬を用いて検出可能である。代替的には、生物検出試薬は核酸プローブであり得る。
【0032】
本明細書で開示されている発明の方法で使用される核酸プローブは、試料に対するそのハイブリダイゼーションを検出できる1つ以上の核酸フラグメントの集合として定義される。該プローブは、標的又は試料に対するその結合を検出できるような形で標識されていてもいなくてもよい。プローブは、ゲノムの1つ以上の特定の(予め選択された)部分、例えば1つ以上のクローン、1つの単離された全染色体又は染色体フラグメント又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物由来の、核酸供給源から産生される。核酸プローブは同様に、アレイの中といったように固体表面(例えばニトロセルロース、ガラス、石英、ヒューズドシリカスライド)上で固定化された単離された核酸でもあり得る。該プローブは、例えば国際公開第96/17958号パンフレット中で記述されている通りの核酸アレイのメンバーであってよい。高密度アレイを産生させる能力をもつ技術をこの目的で使用することもできる(例えばFodor、1991年、Science、第X号:767〜773頁;Johnston、1998年、Curr.Biol.第8号:R171〜R174頁;Schummer、1997年、Biotechniques、第23号:1087〜1092頁;Kern、1997年、Biotechniques、第23号:120〜124頁;米国特許第5,143,854号明細書を参照のこと)。当業者であれば、特定のプローブの正確な配列を或る程度まで修飾して、「実質的に同一」ではあるもののそれらが由来したプローブと同じ標的又は試料に特異的に結合する(すなわちこれに特異的にハイブリッド形成する)能力を保持するプローブを産生させることができる、ということを認識するだろう。「核酸」という用語は、1本鎖又は2本鎖形態のいずれのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドも意味する。該用語は、例えばオリゴヌクレオチドなどの、基準核酸として所望の目的で類似の又は改善された結合特性をもつ天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含している。該用語は同様に、天然に発生するヌクレオチドと類似の方法で、所望の目的のために改善された速度で代謝される核酸をも内含する。該用語は同様に、合成主鎖を伴う核酸様構造をも包含する。当業者であれば、例えば結腸癌腫細胞のスクリーニングに向けられた米国特許第6,326,148号明細書を参照することにより、試料内の癌細胞のスクリーニングのために核酸プローブをどのように使用するかを認識するものと思われる。
【0033】
癌に関連するポリペプチドは、直接検出されるか又は適切な2次抗体(例えばマウス一次抗体を使用する場合にはウサギ抗マウスIgG)及び/又は3次アビジン(又はストレプトアビジン(Strepavidin))ビオチン錯体(「ABC」)を用いて検出される、EGFR、PTEN、pAKT、pMEK、p、pERK、又はKi67を含む、これらに限定されないバイオマーカーに対抗する適切な一次抗体を用いた画像解析により定量化可能である。
【0034】
本明細書で例示されているような本発明の方法の実践において有用である試薬の例としては、免疫学的試薬が含まれる。「免疫学的試薬」というのは、特にポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体を含む抗体を意味する。本発明の抗体は、化学的合成又は組換え発現技術を含めた抗体合成のための当該技術分野において既知のあらゆる方法によって、又は好ましくは従来の免疫学的方法によって産生可能である。本明細書で使用する「抗体」という用語には、天然に発生する抗体と非天然発生の抗体の両方が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「抗体」という用語は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEといったようなあらゆる免疫学的結合剤を広く意味するように意図されている。一般に、生理学的状況で最も一般的な抗体でありかつ実験室環境内で最も容易に作られることから、IgG及び/又はIgMが好まれる。より具体的には、「抗体」という用語は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、及び例えばFab、Fab’、及びF(ab’)2フラグメントなどの抗原結合フラグメントが含まれる。さらに、「抗体」という用語には、遺伝子操作された抗体及びそのフラグメントを含めたキメラ抗体及び完全合成抗体が含まれる。ポリクローナル及びモノクローナル抗体を「精製すること」が可能であり、これは、該ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体にその他の抗体が全く含まれていないことを意味している。
【0035】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を調製するための方法は、当該技術分野において周知である(例えば本明細書に参照により援用されているSambrookら、1989年、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.;及びHurrell(編)、MONOCLONAL HYBRIDOMA ANTIBODIES:TECHNIQUES AND APPLICATIONS、CRC Press、Inc.、Boca Raton、Fla.を参照のこと)。当業者にとって明白であるように、ポリクローナル抗体は、馬、牛、山羊、羊、犬、鶏、ウサギ、マウス及びラットといったさまざまな温血動物から産生され得る。抗原性エピトープの免疫原性は、(完全及び不完全)フロイントといったアジュバント、水酸化アルミニウムといった無機ゲル、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールなどの表面活性物質及び例えばBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルバムなどの潜在的に有用なヒトアジュバントの使用を通して増大させることができる。このようなアジュバントは、当該技術分野においても周知である。アジュバント及び免疫検定のさまざまな局面に関する情報は、例えばTijssen(1987年、PRACTICE AND THEORY OF ENZYME IMMUNOASSAYS、第3版、Elsevier:New York)の中で開示されている。ポリクローナル抗血清を調製するための方法を網羅するその他の有用な参考文献としては、MICROBIOLOGY(1969年、Hoeber Medical Division、Harper and Row);Landsteiner(1962年、SPECIFICITY OF SEROLOGICAL REACTIONS、Dover Publications:New York)、及びWilliamsら、(1967年、METHODS IN IMMUNOLOGY AND IMMUNOCHEMISTRY、第1巻、Academic Press: New York)がある。
【0036】
ポリクローナル抗体の産生において用いられる免疫原組成物の量は、免疫原の性質ならびに免疫化のために用いられる動物に応じて変動する。免疫原の投与にはさまざまな経路(皮下、筋肉、皮内、静脈内及び腹腔内)を用いることができる。ポリクローナル抗体の産生は、免疫化後のさまざまな時点で免疫化動物の血液をサンプリングすることにより監視され得る。第2のブースタ注射も与えることができる。ブースタ投与及び力価測定の工程は、適切な力価が達成されるまで反復される。所望の免疫原性レベルが得られた時点で、免疫化動物を出血させ、血清を単離し貯蔵することができる。
【0037】
標準的方法を用いて免疫化された動物から産生された血清は直接使用でき、あるいは、固定化したプロテインAとなどのIgG特異的吸着剤での吸着クロマトグラフィー又は血漿交換法といったような標準的方法を用いて、血清からIgG画分を分離することができる。
【0038】
既知の方法に従った所望のフラグメントの分割及び収集により、対応する抗体からF(ab’)2及びFabフラグメントなどの抗体フラグメントを産生させることができる(例えばAndrewら、1992年、「Fragmentation of Immunoglobulins」in CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY、Unit2.8、Greene Publishing Assoc.and John Wiley&Sonsを参照のこと)。
【0039】
代替的には、本明細書に参照により援用されている米国特許第4,196,265号明細書の中で例証されている周知の技術などに従って、本発明の抗原ペプチドに対するモノクローナル抗体を調製できる。本発明の抗原ペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知の技術によって産生される。通常、この工程には、所望の抗体を産生するB−リンパ球と不死化細胞系の融合を含む。不死化用細胞系は通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシ及びヒト由来の骨髄腫細胞である。マウス及びラットなどのげっ歯類が好ましい動物であるが、ウサギ又はヒツジ細胞の使用も可能である。マウスが好ましく、最も日常的に使用され、および一般的により高い割合で安定した融合を提供することから、BALB/Cマウスが最も好まれる。
【0040】
抗原の注射を受けた哺乳動物から抗体産生リンパ球を得る技術は周知である。一般に、ヒト由来の細胞が利用される場合には末梢血リンパ球(PBL)が用いられ、または非ヒト哺乳動物供給源からの脾臓又はリンパ節細胞が使用される。宿主動物には、精製された抗原の反復投薬量が注射され、動物は、不死化細胞系との融合のために採取される前に所望の抗体産生細胞を生成することが可能となる。不死化された細胞系は、便宜上及び利用上の問題から、ラット又はマウスの骨髄腫細胞系であることが最も多い。融合のための技術も同じく当該技術分野において周知であり、一般的にポリエチレングリコールなどの融剤と細胞の混合を含む。
【0041】
一般に、抗体を産生する潜在性をもつ以下の免疫化体細胞、特にB−リンパ球(β−細胞)が、mAb生成プロトコルでの使用に選択される。これらの細胞は、生検された脾臓、へんとう腺又はリンパ節又は末梢血試料から得ることができる。脾細胞及び末梢血細胞が好ましく、前者はそれが分裂中の形質芽球期にある抗体産生細胞の豊かな供給源であることを理由として、又後者は末梢血が容易に入手可能であることを理由として好まれる。多くの場合、一団の動物が免疫化されていることになり、最高の抗体力価をもつ動物の脾臓は除去され、脾臓リンパ球は注射器で脾臓を均質化することによって得られる。一般的には、免疫化されたマウス由来の脾臓は約5000万個から2億個のリンパ球を含む。
【0042】
ハイブリドーマ産生融合手順において使用するのに適した骨髄腫細胞系は、好ましくは抗体を産生せず、高い融合効率、およびその後所望の融合された細胞(ハイブリドーマ)のみの成長を支援する、一定の選択培地の中で成長能力を無くさせる酵素欠乏を有する。当業者にとっては既知であるように、数多くの骨髄腫のうちのいずれか1つを使用することができる。American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110−2209、USA、から入手可能なマウス骨髄腫系を、ハイブリダイゼーションにおいて使用可能である。例えば免疫動物がマウスである場合、P3−X63/Ag8、X63−Ag8.653、NS1/1.Ag4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG1.7およびS194/5XX0Bulを使用することができる。ラットについては、R210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983F及び4B210を使用でき、U―266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2及びUC729−6は全て、ヒトの細胞融合に関連して有用である。1つの好ましいマウス骨髄腫細胞は、細胞系所蔵番号GM3573を要求することによりNIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから容易に入手可能であるNS−1骨髄腫細胞系(P3−NS−1−Ag4−1とも呼ばれる)である。使用可能なもう1つのマウス骨髄腫細胞系は8−アザグアニン耐性マウスのマウス骨髄腫SP2/0非生産細胞系である。
【0043】
抗体を産生する脾臓又はリンパ節細胞及び骨髄腫細胞のハイブリッドを生成する方法は、通常、細胞膜の融合を促進する作用物質(化学的及び電気的)の存在下で、2:1の比で(ただし、比率はそれぞれ約20:1〜約1:1まで変動し得る)、骨髄腫細胞と体細胞を混合する工程を含んでいる。Sendaiウイルスを用いる融合方法(Kohlerら、1975年、Nature、第256号:495頁;Kohlerら、1976年、Eur.J.Immunol.第6号:511頁;Kohlerら、1976年、Eur.J.Immunol.第6号:292頁)及びポリエチレングリコール(PEG)(37%(v/v)のPEG)を用いるGefterら(1977年、Somatic Cell Genet第3号:231〜236頁)による融合方法が記述されてきた。電気的に誘発される融合方法の使用も適切である(Goding、1986年)。
【0044】
融合手順は、通常約1×10−6〜1×10−8の低い頻度で生存可能なハイブリッドを産生させる。しかしながら、生存可能な融合ハイブリッドは、選択培地中での培養により親の未融合細胞(特に通常は無限に分裂し続けることになる未融合骨髄細胞)から分化されることから、それが問題となることはない。選択培地は一般に、組織培養培地内でヌクレオチドの新規合成を遮断する作用物質を含むものである。一般的に好ましい作用物質はアミノプテリン、メトトレキサート、及びアザセリンである。アミノプテリン及びメトトレキサートは、プリン及びピリミジンの両方の新規合成を遮断し、一方アザセリンはプリン合成のみを遮断する。アミノプテリン又はメトトレキサートが使用される場合、培地にはヌクレオチド(HAT培地)の供給源としてヒポキサンチン及びチミジンが補足される。アザセリンが使用される場合、培地にはヒポキサンチンが補充される。好ましい選択培地はHATである。骨髄腫細胞は、例えばヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)などのサルベージ経路の主要酵素が不完全であり、存続できない。β細胞はこの経路を操作できるが、培養中で制限された寿命しかもたず、一般に約2週間で死滅する。従って選択培地内で生存できる唯一の細胞は骨髄腫及びβ細胞から形成されたハイブリッドである。
【0045】
これらの条件下で融合産物を培養することで、特定のハイブリドーマが選択されるハイブリドーマ集団が提供される。一般的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレート内での単一クローン希釈により細胞を培養しその後所望の反応性について(約2〜3週間後に)個々のクローン上清内でテストすることによって実施される。所望の抗体を分泌するハイブリドーマが、ウェスタンブロット法、ELISA(酵素免疫吸着法)、RIA(放射免疫測定)などの標準的免疫検定を用いて選択される。標準的タンパク質精製技術(例えばTijssen、1985年、前掲書)を用いて培地から抗体が回収される。検定は、放射免疫検定、酵素免疫検定、細胞毒性検定、プラーク検定、ドット免疫結合検定などのように、鋭敏、簡易かつ高速でなくてはならない。
【0046】
選択されたハイブリドーマは次に段階希釈され、個々の抗体産生細胞系内にクローニングされ、このクローンを次に無限に繁殖させてmAbsを得ることができる。細胞系は少なくとも2つのやり方でmAb産生のために運用可能である。ハイブリドーマの試料を、原初の融合のための体細胞及び骨髄腫細胞を提供するために使用された種類の組織適合動物の体内に(往々にして腹腔内に)注射することができる。注射を受けた動物は、融合された細胞ハイブリッドにより産生された特定のモノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発生させる。次に該動物の血清又は腹水などの体液を抜いて、高濃度のmAbsを提供することができる。mAbsが天然に培地内に分泌され高濃度で容易に得ることができる場合、個々の細胞系を試験管内で培養することもできると思われる。いずれの手段で産生されたmAbsも、望ましい場合にはろ過、遠心分離及びHPLC又は親和性クロマトグラフィーなどのさまざまなクロマトグラフィー法を用いてさらに精製可能である。
【0047】
Kohlerら、(1980年、HYBRIDOMA TECHNIQUES、Cold Spring Harbor Laboratory、New York);Tijssen(1985年、前掲書);Campbell(1984年、MONOCLONAL ANTIBODY TECHNOLOGY、Elsevier:Amsterdam);Hurrell(1982年、前掲書)を含む数多くの参考文献が、上述の技術を応用する上での指針を提供するべく入手可能である。モノクローナル抗体は同様に、周知のファージライブラリシステムを用いて産生させることもできる。例えば、Huseら、(1989年、Science第246号:1275頁);Wardら、(1989年、Nature第341号:544頁)を参照のこと。
【0048】
F(ab’)2及びFabフラグメントなどの抗体フラグメントを、既知の方法(例えばAndrewら、1992年、「Fragmentation of Immunoglobulins」、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY中、Unit2.8、Greene Publishing Assoc.and John Wiley&Sons)を参照)に従った所望のフラグメントの分割及び収集によって、対応する抗体から産生させることができる。
【0049】
ポリクローナル抗体であれモノクローナル抗体であれ、かくして産生された抗体と、例えば周知の方法により固体支持体に結合された固定化形態で使用することができる。
【0050】
免疫測定法及び免疫特異的結合検定の基礎として、標準的方法により標識された又は未標識の抗体を使用することもできる。使用可能な免疫学的検定としては、いくつかの例を挙げると、ウェスタンブロット法、放射免疫検定法、ELISA(酵素免疫吸着法)、「サンドイッチ」免疫測定法、免疫沈降検定、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、凝集検定、補体結合検定、免疫放射定量測定法、螢光免疫測定法、プロテインA免疫測定法が含まれるが、これらに限定されない。かかる検定は定法であり、当該技術分野においては周知である(例えばAusubelら編、1994年、前掲書参照)。
【0051】
特に、本発明の抗体は、免疫組織化学(IHC)による研究用に調製された新鮮凍結及び/又はホルマリン固定、パラフィン包埋組織ブロックの両方と併用することもできる。
【0052】
検出は、検出可能な物質に対し抗体をカップリングすることで容易になる。検出可能な物質の例としては、さまざまな酵素、補欠分子団、螢光性材料、発光性材料、生物発光材料、放射性材料、さまざまなポジトロン放出断層撮影法を用いるポジトロン放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンが含まれる。検出可能な物質は、当該技術分野において既知の技術を用いて、抗体(又はそのフラグメント)に直接か又は(例えば当該技術分野において既知のリンカーなどの)中間体を通して間接的にカップリング又は接合化可能である。例えば、本発明に従って診断法として用いるために抗体に接合体され得る金属イオンについては、米国特許第4,741,900号明細書を参照のこと。使用される特定の標識は、免疫測定法のタイプによって左右されることになる。使用可能な標識の例としては、例えば3H、14C、32P、125I、131I、111In又は99Tcなどの放射性標識、例えばフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル及びウンベリフェロンなどの螢光性標識;例えばルシフェラーゼ及び2,3−ジヒドロフタラジンジオンなどの化学発光体(chemiluminescer)、及び例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リゾチーム、グルコース−6−ホスファートデヒドロゲナーゼ及びアセチルコリンステラーゼなどの酵素が含まれるが、これらに限定されない。抗体は、既知の方法でかかる標識でタグ付けされ得る。例えば、アルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、イミダート、スクシニミド、ビスジアゾ化ベンザジンなどといったカップリング剤を、螢光性、化学発光性又は酵素標識で抗体にタグ付けするのに使用することができる。関与する一般的方法は当該技術分野において周知であり、例えばIMMUNOASSAY:A PRACTICAL GUIDE(1987年、Chan(編)、Academic Press、Inc.Orlando、FL)の中で記述されている。
【0053】
さらに、予測されるポリペプチドの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを、非腫瘍組織又は細胞試料と比較することが可能である。非腫瘍組織又は細胞試料は、同じ個体由来の非腫瘍組織又は細胞試料から得ることができ、または代替的に、異なる個体由来の非腫瘍組織又は細胞試料から得ることができる。あるポリペプチドについて検出されたパターンは、非腫瘍組織又は細胞試料と比べて検出されたポリペプチドが少ない場合には、哺乳動物の腫瘍、組織又は細胞試料内で減少したものとする。あるポリペプチドについて検出されたパターンは、非腫瘍組織又は細胞試料に比べて検出されたポリペプチドが多い場合、哺乳動物の腫瘍、組織又は細胞試料内で「増大した」ものとする。あるポリペプチドについて検出されたパターンは、非腫瘍組織又は細胞試料に比べて検出されたポリペプチドが同じか又はほぼ同じである場合、哺乳動物の腫瘍、組織又は細胞試料において「正常」であるものとする。
【0054】
本発明の方法を実施するにあたっては、解剖病理学研究室の組織検査技師などにより染色手順を実施することができる。代替的には、該染色手順は、Ventana Medical SystemsのBenchmark(登録商標)自動染色装置シリーズなどの自動化されたシステムを用いて実施可能である。いずれの場合でも、本発明の方法に従って使用するための染色手順は、当該技術分野において周知の標準的な技術及びプロトコルに従って実施される。
【0055】
「細胞又は組織試料」というのは、塗沫標本、唾液、生検材料、分泌物、脳脊髄液、胆汁、血液、リンパ液、尿及び糞便などの身体試料から単離された細胞、最も好ましくは腫瘍細胞、又は、胸、肺、腸、皮膚、頸部、前立腺及び胃などの器官から取出された組織を含む生体試料を意味するが、これらに限定されない。例えば、組織試料は機能的に関係する細胞又は隣接する細胞の一領域を含み得る。
【0056】
標的タンパク質の量は、染色された抗原の平均光学密度を測定することによって定量化され得る。付随して、染色された総組織面積の割合又は百分率は、例えば第2の画像内の(抗体閾値レベルなどの)制御レベルより上の染色された面積として容易に計算することができる。バイオマーカーを含む核の視覚化の後、治療後の患者由来の組織内のかかる細胞の百分率又は量は、未治療の組織内のかかる細胞の百分率又は量と比較される。本発明に関しては、ポリペプチドの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンの「判定」というのは、直接的検査を通して、又は例えば契約診断サービスなどから間接的に、かかるポリペプチドについての発現レベル情報を得ることを単に意味するものとして広義に理解される。
【0057】
代替的には、標的タンパク質の量は、螢光方法を用いて判定可能である。例えば、免疫組織化学、フローサイトメトリ及び平板に基づく検定を含め、増大する利用分野リストの中で量子ドット(Qdot)がますます有用になってきており、従ってこれを本発明と併用してもよい。Qdotナノ結晶は、感度及び定量のためのきわめて輝度の高いシグナル並びに画像化及び解析のための高い光安定性を含む、特有の光学特性を有する。単一の励起源が必要とされ、接合体の範囲が増大しているために、これらは細胞ベースの広範囲の利用分野において有用なものとなっている。Qdotバイオ接合体は、利用可能な最も輝度の高い従来の染料に匹敵する量子収量をその特徴とする。さらに、これらの量子ドットベースのフルオロフォアは、従来の染料の10〜1000倍の光を吸収する。基礎を成すQdot量子ドットからの発光は少なく対称的で、これは他の色との重複が最小限におさえられることを意味し、その結果、はるかに多くの色が同時に使用されるにも関わらず、隣接する検出流路内への滲み出しは最小限におさえられ、クロストークは減衰されることになる。標準的な螢光顕微鏡がQdotバイオ接合体の検出のための安価な手段である。Qdot接合体は事実上光安定性があることから、問題の領域を見つけ試料上に適切に焦点を合わせるために顕微鏡で充分に時間を取ることができる。Qdot接合体は、輝度の高い光安定性ある発光が必要とされる場合にいつでも有用であり、1つの励起源/フィルタしか利用できない場合及び色間のクロストークを最小限にする必要のある多色利用分野において特に有用である。例えば、量子ドットは、ストレプトアビジンをIgGの接合体として、細胞表面マーカー及び核抗原を標識するため、ならびに細胞微小管及びアクチンを染色するために使用されてきた(Wuら、2003年、Nature Biotech.第21号、41〜46頁)。
【0058】
例えば、QDOT螢光IHCは、検出基板がストレプトアビジン接合体QdotsVentana Medical Systems、Inc.、Tucson、AZ)(「Ventana」)である場合、二次抗体を用いて実施可能である。画像解析は、最初にスペクトル画像化カメラ(Cambridge Research Instruments、Woburn、MA)上で画像キューブを捕捉することで実施することができる。励起はUV(水銀)光源で行うことができる。画像キューブは次に、Ventana Research Imaging Application上で解析できる。簡単に言うと、画像キューブを前記アプリケーション内で検索し、605nm及び655nmで発光すると予想されるQdotsの画像強度に基づいてデータを抽出し報告することができる。
【0059】
一例を挙げると、マルチスペクトル画像化システムNuanceTM(Cambridge Research&Instrumentation、Woburn、MA)で螢光を測定することができる。もう1つの例としては、スペクトル画像化システムSpectr ViewTM(Applied Spectral Imaging、Vista、CA)を用いて螢光を測定することができる。マルチスペクトル画像化は、画像の各画素における分光情報が収集され、結果としてのデータが分光画像処理ソフトウェアで解析される技術である。例えば、Nuanceシステムは、電子的かつ連続的に選択可能でありかつその後かかるデータを扱かうように設計された解析プログラムと共に利用される一連の画像を異なる波長で撮影することができる。Nuanceシステムは、染料のスペクトルがきわめて重複している場合でさえ、又はこれらのスペクトルが同時局在化されているか又は試料内の同じ箇所に発生している場合でも、スペクトル曲線が異なることを条件として、多数の染料からの定量的情報を得ることができる。数多くの生体材料が自己螢光発生するか又は、より高エネルギーの光により励起された時点でより低エネルギーの光を発出する。このシグナルはより低いコントラストの画像及びデータを結果としてもたらし得る。マルチスペクトル画像化能力のない高感度カメラは、螢光シグナルと同調した自己螢光シグナルを増大させるだけである。マルチスペクトル画像化は、組織から自己螢光発生を混合解除又は分離することによって、達成可能な信号対雑音比を増大させることができる。
【0060】
抗体検出方法に関連して、「検出試薬」というのは、一次又は二次抗体の両方を含めた抗体の検出のために使用可能な試薬を意味する。例えば、検出試薬は、螢光検出試薬、Qdots、色原体検出試薬又は重合体ベースの検出系であり得る。しかしながら、本発明の方法及びキットはこれらの検出試薬に限定されず、又一次又は二次抗体スキームにも限定されない(例えば3次抗体等も本発明の方法により考慮されている)。
【0061】
本発明は、発現されたタンパク質バイオマーカーを間接的に検出する手段として、核酸プローブを使用することもできる。例えば、EGFRバイオマーカーのためのプローブは、プローブ設計技術の当業者にとっては周知である標準的なプローブ設計方法を用いて構築可能である。一例を挙げると、本明細書に参照により援用されている米国特許出願公開第2005/0137389A1号明細書「Methods and compositions for chromosome−specific staining」は、染色体全体を標識するように設計された配列の不均質混合物を含む無反復プローブ組成物を設計する方法について記述している。
【0062】
遺伝子特異的プローブを、以下の公開手順のいずれかに従って設計することができる。この目的を達成するために、目的の部位以外の場所でのハイブリダイゼーションを最小限におさえるために、純粋又は均質なプローブを産生させることが重要である(Henderson、1982年、International Review of Cytology、第76号:1〜46頁)。Manuelidisら、(1984年、Chromosoma、第91号:28〜38頁)は、反復DNA配列ファミリーのメンバーに対応する染色体上の多数の遺伝子座を検出するための単一の種類のDNAプローブの構築を開示している。
【0063】
Wallaceら、(1981年、Nucleic Acids Research、第9号:879〜94頁)は、構造遺伝子に対応する単一の遺伝子座を検出するための混合型塩基配列をもつ合成オリゴヌクレオチドプローブの構築を開示している。塩基配列の混合は、構造遺伝子が対応するタンパク質内のアミノ酸の選択された配列をコードしうる全てのヌクレオチド配列を考慮することにより決定された。
【0064】
Olsenら、(1980年、Biochemistry、第19号:2419〜28頁)は、最初に、ユニーク配列DNA画分を単離できるように、全ゲノムヒトDNAのそれ自体に対するハイブリダイゼーション;第2に相同性マウス/ヒト配列が除去されるように、単離されたユニーク配列ヒトDNA画分のマウスDNAに対するハイブリダイゼーション;および最後に、ユニーク配列X染色体DNAの画分が単離されるように、そのヒト染色体のみがX染色体であるヒト/マウスハイブリッドの全ゲノムDNAに対する、マウスと相同でないユニーク配列ヒトDNAのハイブリダイゼーション、という連続的ハイブリダイゼーションによる、標識されたユニーク配列ヒトX染色体DNAの単離方法を開示している。
【0065】
遺伝子検出プロトコルにおいて本発明の方法内で、標識された核酸プローブを使用することが可能である。例えば、EGFR遺伝子などの遺伝子の遺伝子状態を判定するために、螢光インサイチュハイブリダイゼーション(「FISH」)遺伝子検出方法を使用することができる。例えばEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定するために、FISH遺伝子検出を用いることができる。したがってゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置の測定を可能にするFISH遺伝子検出は、例えば遺伝子が安定な二染色体性、安定な三染色体性又は安定な多染色体性であるかといった、該遺伝子の状態の検出を可能にすることができる。
【0066】
本発明は、銀インサイチュハイブリダイゼーションを含む方法をも使用し得る。この技術では、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素が、銀イオンから金属銀への還元の触媒として作用し、プローブに対しハイブリッド形成された標的の部位に金属粒子が被着する(Hoffら、2002年、Am J Clin.Pathol.第117号:916〜21頁;図20参照)。例えば、ゲノムDNAの増幅、欠失及び再配置を測定するために、銀インサイチュハイブリダイゼーションを使用することができる。
【0067】
患者から採取した癌組織切片が、EGF経路のメンバー又はその任意の陽性治療応答が予測される組合せの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化について、免疫組織化学により本発明の方法に従って分析される。本発明の方法においては、「発現」の変化は、バイオマーカーが検出される細胞の数の変化を意味し、または代替的には、陽性細胞の数は同じであり得るものの強度(又はレベル)が変化しうる。発現という用語は、分子活性化レベルのレベル変化を表わす代用語としても使用可能である。
【0068】
これらの測定は、例えば組織マイクロアレイを使用することにより達成可能である。均一の染色及び評定条件下で多数の組織試料を高速スクリーニングするための、充分に立証された方法である本発明の方法においては、組織マイクロアレイを使用することが有利である。(Hoosら、2001年、Am J Pathol.第158号:1245〜51頁)。染色されたアレイの評定は、標準的0から3+のスケールを用いて手動で達成でき、または観察された染色を正確に定量化する自動化されたシステムによって達成可能である。この分析結果は、治療後の患者の転帰を最も良く予測するバイオマーカーを同定する。少数のリガンドのセット、受容体、シグナリングタンパク質又はそれらの予測される組合せの発現、リン酸化又は両方に基づいて、0〜100パーセントの範囲の患者の「応答確率」を予測することができる。癌患者からの付加的な試料を、組織マイクロアレイ結果の代替として又はその追加として、分析することができる。例えば、患者の応答が受容体発現及び/又は下流側シグナリングの特定のパターンと相関関係をもつ場合、乳癌患者からの試料の分析が、組織アレイからの結論を確認し得る。
【0069】
本発明は、一部には本発明の方法を実施するためのキットを提供する。例えば、該方法は、EGF経路内のポリペプチドの発現、リン酸化又は両方を検出できる少なくとも2つの試薬好ましくは抗体を含む、個体の体内の結腸直腸癌を評価するためのキットを提供する。例えば、該キットは、EGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK、又はKi67に結合する少なくとも2つ、3つ又は4つの試薬を含むことができる。さらにキットは、付加的な抗体を含んだ、以上で同定された試薬以外の付加的構成要素を含むことができるが、これらに限定されない。かかるキットは例えば、臨床医又は医師が特定の患者のための適切な療法を選択するための補助として使用することができる。
【0070】
以下の例は、本発明の特定の実施形態及びそのさまざまな用途を示している。これらの例は説明を目的として示されているにすぎず、本発明を限定するものとして解釈すべきものではない。
【実施例】
【0071】
実施例1
結腸直腸腫瘍の進行におけるEGF経路内の下流側分子の免疫組織化学染色
癌腫の病理学的病期分類と相関関係をもつバイオマーカープロファイルを結腸直腸癌について同定できるか否かを判定するために、個々の症例からの組織試料及び市販の組織アレイを用いて、結腸直腸癌内のEGFRの発現にリンクされるバイオマーカーの発現レベルを検討した。バイオマーカーは免疫組織化学(「IHC」)を用いて評価された。
【0072】
免疫組織化学によるHER1/EGFR発現の検出のために、Ventana Medical Systemsのマウス抗体クローン3C6を使用した。3C6クローンは、受容体の細胞外ドメインと反応する。調査されたその他のバイオマーカーは、pHER1、PTEN、pAKT、pMEK、Ki67及びpERKであった。pTYRも、活性化の代用として評価された。全ての試薬を以下および表1に記されている通りに、かつ規定の添付文章に従って使用した。
【0073】
自動化されたIHCプロトコルにおいてタンパク質マーカーを検出するためのプローブ及び抗体の性能を、FFPE単一スライド切片内及び多重組織アレイにおいて評価した(表2参照)。全てのIHC分析は、VentanaのBench Mark(登録商標)XT及び/又はDiscovery(登録商標)XT染色プラットホーム上で実施された。
【0074】
【表1】
【0075】
単一スライド切片については、細胞を採取し、10%の中性緩衝ホルマリン(「NBF」)中で固定し、次にパラフィン包埋(「FFPE」)した。FFPE細胞を1500rpmで10分間遠心分離した。上清を取出し、Shandon Cytoblock(登録商標) Cell Block Preparation System(「Shandon Cytoblock」)(Thermo Electron Corporation、Waltham、MA)の試薬1を3滴加えた。3000rpmで2分間細胞を遠心分離した。試薬2が細胞ペレット縣濁の下を流れることができるようにするため管の側面を下へとShandon Cytoblock試薬2を3滴滴下させた。試料を10分間インキュベートし、その後、70%のエタノール5mlを加えた(ペレットはエタノールの上面まで浮動した)。最終的に、3000rpmで2分間試料を回転させ、その後生検カセットに移し、パラフィン包埋用に処理した。
【0076】
IHC及びインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)に対する切片の適切性を確認するため、ヘマトキシリン及びエオシン(「H&E」)染色を精査した(図3)。H&E染色には、キシレン、100%のエタノール及び95%のエタノール中での脱パラフィン工程、その後の水中浸漬工程などの工程を含んでいた。3分間ヘマトキシリン中にスライドを浸漬し、水中で洗い流し、1分間青色染色試薬中に浸漬し、水中で洗い流し、エオシン中に浸し、最終的にカバースリップを加えた。
【0077】
免疫検定には、抗原脱マスキング工程、及び関連する一次及び二次抗体でのインキュベーションに後続する検出工程を含んでいた。負の対照として、Bench Mark XT(登録商標)又はDiscovery XT(登録商標)Diluent(Ventana)のいずれかを、関連するスライドと共にインキュベートした。DABMapTM、OmniMapTM(Discovery XT(登録商標))、又はiViewTMDAB(BenchMark XT(登録商標))検出キットを用いて、メーカーの取扱説明書に従って、一次抗体を検出した。簡単に述べると、iVIEWTMDAB検出キットは、パラフィン包埋した又は凍結させた組織切片内で抗原に結合した特異的マウスIgG、IgM及びウサギIgG抗体を検出した。該特異的抗体は、ビオチン接合体二次抗体により位置特定された。この工程の後には、二次抗体上に存在するビオチンを結合させたストレプトアビジン−酵素接合体の添加が続いた。その後該錯体を、沈殿発色酵素製品を用いて視覚化した。
【0078】
各インキュベーション工程の終りでは、自動スライド染色装置が切片を洗浄して未結合材料を除去し、スライドからの水性試薬の蒸発を最小限におさえる液体カバースリップを適用した。結果は光学顕微鏡を用いて解釈され、特定の抗原と結びつけられていてもいなくてもよい病態生理学的プロセスの示差的診断を補助した。
【0079】
具体的例として、pMEKの検出は以下の方法で達成された。すなわち、病理学者により、組織については腫瘍の存在を又細胞系及び組織については細胞生存能力を確認するべく、H&Eが精査された。一次抗体pMEKは、Cell Signaling Technology、Inc.(「CST」)(Danvers、MA)から得られた。
【0080】
pMEKIHC検定のために、100℃で60分間CC1条件緩衝液を用いてVentana Benchmark(登録商標)シリーズの計器上で細胞条件づけを行った。ここでCC1は高pHの細胞培養条件溶液、すなわちpH8のトリス/ホウ酸塩/EDTA緩衝液(Ventana)である。スライドを、室温で1時間、一次pMEK抗体(表1)の原液濃度の1/40希釈物と共にインキュベートした。原液抗体濃度は、抗体の市販濃度を意味する。この情報は一部のメーカーからは入手できず、適切な希釈は実験的に決定される。負の対照としては、メーカー(Vector Laboratories、Burlingame、CA)の取扱説明書に従って使用されるVentana抗体希釈剤を、同じ条件下で、関係するスライドと共にインキュベートした。Vectorビオチニル化抗ウサギIgGで置き換えた汎用二次抗体を除いて、Ventana iView DAB検出キットをメーカーの取扱説明書に従って使用し、37℃で32分適用して、pMEK抗体を検出した。pMEKの酵素検出/局在化は、ストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ接合体(Ventana)とその後に続く、メーカーの取扱説明書及び使用されたキットに従ったジアミノベンチジン(「DAB」)及び硫酸銅の存在下での過酸化水素との反応を用いて達成された(表1参照)。接合体と全ての発色試薬は、Vectorビオチニル化二次ウサギ抗体を除いて、同様にiView検出キットの構成要素であり、メーカーが推奨する時点で適用された。
【0081】
結腸直腸進行組織マイクロアレイ(TMA;CHTN2003CRProg)は、Cooperative Human Tissne Network(CHTN)から得た。該アレイの詳細は図4中に示され、表2中に要約されている。簡単に言うと、このホルマリン固定及びパラフィン包埋された(「FFPE」)結腸直腸癌進行アレイは、ドナーから試料を収集することによって作製された。このTMAは、示差的遺伝子発現における強い傾向を検出し得る少数の症例を表している。未染色組織学的切片は厚みが4ミクロンであり、荷電ガラススライド上に提供された。CHTN2003CRCProgTMAは、最高20の非腫瘍性結腸粘膜症例、14の腺腫性ポリープ症例、14の原発性結腸直腸腺癌、7の局所リンパ節転移、腺癌症例及び7の遠隔部位転移腺癌症例を含んでいる。各症例は、0.6mmのコアを伴って3回試料採取される。
【0082】
【表2】
【0083】
手作業での評点が、専門委員会認定病理学者により行なわれた。染色強度、反応性細胞の百分率及び細胞局在化が記録された。IHCの病理学者評価については、染色強度の評点は、0(陰性)から3+(最大陽性)までであった。
【0084】
光学画像化には、数値的評点に換算された染色強度(平均光学密度つまりavg.ODで表わされたもの)に基づいた画像定量化を伴うデジタルアプリケーションが用いられた。高解像度の画像が各試料について捕捉され、OD値は、陽性染色細胞についての色範囲の特定的分類子に基づいていた。解析用画像は、40倍対物レンズを用いて捕捉された。一部のケースでは、組合せ評点=(陽性%)×(光学密度評点)という式に従って、陽性細胞の百分率及び染色強度の両方を取込む「組合せ評点」又は乗法的指数が導出された。
【0085】
活性化代用尺度としてptyr活性を用いた組織化学組織評価の結果は、癌及び非癌症例由来の正常な結腸粘膜と比べて、新生組織形成及び炎症性非腫瘍性組織内の発現の増加を示した(図5)。TMA内のEGFR経路分子由来の発現レベルの組織化学評価の結果は、図6−9に示されている。個々の症例におけるEGFR経路分子由来の発現レベルの組織化学評価の結果は、図10に示されている。両方の実験からの結果は、逐次的病期分類カテゴリを通して結腸直腸癌が進行するにつれて、pMEK、Ki67、及びpHER1タンパク質レベルは増大し、EGFR、PTEN及びpAKTタンパク質レベルは減少することを示している(図11)。これらの発見事実は、早期小腺腫におけるEGFR(タンパク質)、PTENの高いレベル及びpMEKの低いレベルそして悪性表現型を含む進行性疾患におけるPTENの低いレベル及びpMEKの高いレベルを含めた、結腸直腸腫瘍の進行の診断及び追跡において有用であり得るバイオマーカープロファイルを同定している。
【0086】
実施例2
インサイチュハイブリダイゼーションを用いたEGFR遺伝子コピー数と結腸直腸癌腫瘍病期分類の相関性
EGFRについての螢光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を、個々の症例からの単一スライド切片及び多重組織アレイについて実施し、結腸直腸癌の進行における遺伝子の状態を評価した。
【0087】
2色FISHを用いて、細胞1個あたりのEGFR遺伝子コピー数を、ホルマリン固定されパラフィン包埋された(FFPE)単一スライド切片内及び多重組織アレイ内で評価した(図12)。単一スライド切片及び多重組織アレイの詳細は、実施例1で概略的に説明されている。
【0088】
EGFR遺伝子のインサイチュハイブリダイゼーション検出は、Ventana(Spectrum Orangeラベル付き)、Invitrogen(SPOTLightTM−EGFR、DIGラベル付き)、又はVysis(Spectrum Orange EGFR及びSpectrum Green CEP7ラベル付きプローブ)からのいずれかのプローブを用いて行なわれた。Ventana及びZymedからのEGFRプローブをVentana Discovery(登録商標)XT上の完全自動化プロトコルを用いて検出した。Vysisプローブの検出は、半自動化されており、プローブハイブリダイゼーションはメーカー(Vysis、Downers Grove、IL)の説明通りオフラインで行なわれた。FISHプロトコルは、メーカーの添付文書(Vysis、カタログ番号32−191053)に従って実施された。FISH評価は、Hirschら、JCO、第21号:3798〜3807頁中の記述通りに行われた。図12は、安定な二染色体性、安定な三染色体性、安定な多染色体性及び遺伝子増幅を標示する代表的な顕微鏡写真を示す。
【0089】
細胞1個あたりの遺伝子コピー平均数は、病理学精査によりEGFR及びCEP7について決定された。個々の症例及びTMAにおけるEGFRFISH検定の結果は、EGFR遺伝子状態が、表3に示されているように小腺腫から腺癌まで、安定な二染色体性(正常)から安定な三染色体性/多染色体性(異常)へと進化すること(表13)を実証している。高いEGFR遺伝子コピーレベル(三染色体+)をもつ試料は全て、IHCにより検定されるように高いタンパク質レベルをもつ無集団(3+、>50%)を有していた(実施例1)。実施例1及び2の発見事実は同様に、早期癌病期における遺伝子増幅(正常)をタンパク質発現(高)のレベル不一致をも示唆している。
【0090】
【表3】
【0091】
実施例3
腫瘍内部のEGFR経路分子の発現レベルの不均質性
EGFR経路分子の発現レベルは、単一の腫瘍内のこれらの分子の発現レベルの考えられる不均質性を評価するべく、結腸直腸癌の事例研究において評価された。
【0092】
直腸出血及び腹部疝痛を呈する41才の男性が3cmの直腸塊の診断を受けた。放射線治療後の遠隔結腸切除は、病期T3の高分化型直腸腺癌を明らかにした。実施例1で記述した通りに、腫瘍のさまざまな領域から単一のスライド切片を調製した。実施例1で記述した通り、EGFR、HER−2、pAKT、Ki67、Survivin及びVEGFについての発現レベルを判定するためにIHCを実施した。室温で2時間インキュベートすることにより、Novusからの抗体(NB500−201)を用いてSurvivanを検出した。室温で1時間内含することにより、Santa Cruzからの抗体(SC−7269)を用いてVEGFを検出した。
【0093】
図14−19は、同じ腫瘍内で、腫瘍バイオマーカーの発現レベルが著しく変動し得ることを示している。これらの結果は、特定の腫瘍の個々の発現形跡に合わせて調整された個別組合せ療法から患者が恩恵を享受し得るということを実証している。
【0094】
以上の開示は本発明のいくつかの特定的実施形態を強調していることそしてそれと等価のすべての修正又は変形形態が、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神及び範囲の中に入るものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】EGFR経路の概略図である。
【図2】結腸直腸癌(colorectal colon)の進行の概略図である。
【図3】CHTN結腸直腸癌進行についての代表的なヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色の顕微鏡写真である。図3Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫の代表的H&E染色である。図3Bは、最大寸法で2cm超の腺腫の代表的H&E染色である。図3Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料の代表的H&E染色である。図3Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料の代表的H&E染色である。図3Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌の代表的H&E染色である。図3Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌の代表的H&E染色である。
【図4】Cooperative Human Tissue Network (CHTN)から得た結腸直腸進行組織マイクロアレイ(TMA:CHTN2003CRCProg)に対するマップを表わす。
【図5】組織化学的組織評価の結果を表わす;IHCにより検定された通りの結腸直腸組織試料内のptyr発現が、平均陽性百分率単位で表わされている。
【図6】結腸直腸癌の進行についての代表的EGFR発現レベルの顕微鏡写真である。図6Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫のEGFR染色の代表的画像である(C10)。試料は、100%の陽性百分率の細胞質/膜染色で3+の評点を有する。図6Bは、最大寸法で2cm超の腺腫のEGFR染色の代表的画像である(F5);試料は、100%の陽性百分率の細胞質/膜染色で3+の評点を有する。図6Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料のEGFG染色の代表的画像である(E4);試料は、100%の陽性百分率の細胞質/膜染色で3+の評点を有する。図6Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料のEGFR染色の代表的画像である(H10);試料は、90%の陽性百分率の細胞質/膜染色で3+の評点を有する。図6Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌のEGFR染色の代表的画像である(J20);試料は、85%の陽性百分率の細胞質/膜染色で2+の評点を有する。図6Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌のEGFR染色の代表的画像である(B13);試料は、1%の陽性百分率の膜染色で1+の評点を有する。
【図7】結腸直腸癌の進行についての代表的PTEN発現レベルの顕微鏡写真である。図7Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫のPTEN染色の代表的画像である(C4)。試料は、80%の陽性百分率の細胞質染色で3+の評点を有する。図7Bは、最大寸法で2cm超の腺腫のPTEN染色の代表的画像である(F3);試料は、75%の陽性百分率の細胞質染色で1+の評点を有する。図7Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料のPTEN染色の代表的画像である(E2);試料は、80%の陽性百分率の細胞質染色で2+の評点を有する。図7Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料のPTEN染色の代表的画像である(H4);試料は、40%の陽性百分率の細胞質染色で1+の評点を有する。図7Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌のPTEN染色の代表的画像である(J18);試料は、陰性であった。図7Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌のPTEN染色の代表的画像である(B7);試料は、陰性であった。
【図8】結腸直腸癌の進行についての代表的pMEK発現レベルの顕微鏡写真である。図8Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫のpMEK染色の代表的画像である(C4)。試料は、10%の陽性百分率の細胞質/膜染色で1+の評点を有する。図8Bは、最大寸法で2cm超の腺腫のpMEK染色の代表的画像である(F3);試料は、70%の陽性百分率の細胞質染色で1+の評点を有する。図8Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料のpMEK染色の代表的画像である(E2);試料は、80%の陽性百分率の細胞質染色で1+、および10%の陽性百分率の核染色で1+の評点を有する。図8Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料のpMEK染色の代表的画像である(H4);試料は、100%の陽性百分率の細胞質染色で2+の、および5%の陽性百分率の核染色で2+の評点を有する。図8Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌のpMEK染色の代表的画像である(J18);試料は、100%の陽性百分率の細胞質染色で3+の評点を有する。図8Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌のpMEK染色の代表的画像である(B7);試料は、100%の陽性百分率の細胞質染色で2+の、および15%の陽性百分率の核染色で3+の評点を有する。
【図9】結腸直腸癌の進行についての代表的Ki67発現レベルの顕微鏡写真である。図9Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫のKi67染色の代表的画像である(C4)。試料は、10%の陽性百分率の核染色で2+の評点を有する。図9Bは、最大寸法で2cm超の腺腫のKi67染色の代表的画像である(F3);試料は、25%の陽性百分率の核染色で2+の評点を有する。図9Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料のKi67染色の代表的画像である(E2);試料は、85%の陽性百分率の核染色で2+の評点を有する。図9Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料のKi67染色の代表的画像である(H4);試料は、40%の陽性百分率の核染色で2+の、および15%の陽性百分率の核染色で3+の評点を有する。図9Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌のKi67染色の代表的画像である(J10);試料は、45%の陽性百分率の核染色で3+の評点を有する。図9Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌のKi67染色の代表的画像である(B7);試料は、70%の陽性百分率の細胞質染色で2+の評点を有する。
【図10】単一の個体の症例(男性、71才)からの結腸直腸癌の進行のバイオマーカー発現レベルの代表的な顕微鏡写真である。図10Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫;最大寸法で2cm超の腺腫、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍;及びリンパ節転移である結腸直腸腺癌の代表的な免疫組織化学的(IHC)画像である。EGFR、pHER1、PTEN、pAKT、pMEK、及びKi67に対する反応性をもつ抗体が使用された。図10Bは、コンピューター援用画像解析の結果(A)、及び病理学評点(B)の両方を用いて、グラフ形態で結果を示している。
【図11】画像解析を用いて判定されるような結腸直腸癌の進行中のEGFR発現経路内のバイオマーカー評価の要約を表わしている。該結果は、平均評点の変化%として示されている。
【図12】上皮成長因子受容体(EGFR、赤色);染色体7(CEP7、緑色)についてのプローブを用いた2色螢光インサイチュハイブリダイゼーション検定の顕微鏡写真である。図12Aは、安定な二染色体性を示し、図12Bは安定な三染色体性を示し、図12Cは安定な多染色体性を示し、図12Dは遺伝子増幅を示す。
【図13】結腸直腸癌の進行におけるEGFR FISH遺伝子検出の顕微鏡写真である。図13Aは、安定な二染色体性である最大寸法が2cm未満の腺腫の代表的EGFR FISH遺伝子検出である。図13Bは、安定な二染色体性である、最大寸法で2cm超の腺腫の代表的なEGFR FISH遺伝子検出である。図13Cは、安定な二染色体性である、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料の代表的なEGFR FISH遺伝子検出である。図13Dは、安定な多染色体性である原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料の代表的EGFR FISH遺伝子検出である。図13Eは、安定な多三染色体である、リンパ節転移である結腸直腸腺癌の代表的なEGFR FISH遺伝子検出である。図13Fは、遺伝子増幅二染色体性を示す遠隔部位転移である結腸直腸腺癌の代表的EGFR FISH遺伝子検出である。
【図14】結腸直腸癌におけるEGFR発現レベルの顕微鏡写真である。図14Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図14Bは、2つの領域についてのEGFR組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図15】結腸直腸癌におけるHER2発現レベルの顕微鏡写真である。図15Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図15Bは、2つの領域についてのHER2組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図16】結腸直腸癌におけるpAKT発現レベルの顕微鏡写真である。図16Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図16Bは、2つの領域についてのpAKT組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図17】結腸直腸癌におけるKi67発現レベルの顕微鏡写真である。図17Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図17Bは、2つの領域についてのKi67組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図18】結腸直腸癌におけるSurvivin発現レベルの顕微鏡写真である。図18Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図18Bは、2つの領域についてのSurvivin組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図19】結腸直腸癌におけるVEGF発現レベルの顕微鏡写真である。図19Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図19Bは、2つの領域についてのVEGF組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図20】銀インサイチュハイブリダイゼーションの概略図を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、個体における結腸直腸癌の進行を評価するための試薬及び方法に関する。より詳しくは、本発明は、療法を個体に合わせてより正確に調整する目的で癌の進行又は病理学的病期分類を判定又は診断するための前記試薬及び方法を提供する。本発明は同様に、EGFR、PTEN、pHER1、pAKT、pERK、pMEK及びKi67を含むEGFR経路のバイオマーカーのいずれか1つ又は有益な組合せの、発現及び活性化を定量化するために生体試料を測定および分析するための免疫学的試薬及び方法にも関する。
〔関連出願の相互参照〕
【0002】
本出願は、本明細書に参照により援用されている2006年2月16日付けの米国仮特許出願第60/774,563号明細書についての優先権を請求するものである。
【背景技術】
【0003】
癌療法の主要目的は、正常な細胞に不利な影響を及ぼすことなく、悪性細胞を選択的に死滅させるか又はその無制御成長を阻害することにある。従来の化学療法薬は、好ましくは正常な細胞に対してよりも悪性細胞に対しより大きな親和性を有するか、又は少なくともその高い細胞成長速度及び代謝活性に基づいて悪性細胞に選好的に影響を及ぼす、細胞毒性の高い作用物質である。しかしながら、これらの作用物質は、「特効薬」でないことがわかってきており、しばしば癌細胞と同様に正常な細胞に危害を加える。逆説的ではあるが、一部の癌は、正常な細胞が発生させることのない前記化学療法薬に対する耐性を発生させる。悪性細胞を標的とし、正常な細胞を標的としないことができる、標的療法と呼ばれる癌治療療法が癌化学療法の新たな潮流となっている。このような新しいアプローチは、比較的副作用の少ない融通性及び応答性のある治療を必要とする慢性的身体条件であり続けている固形腫瘍癌の治療に特に関連性をもつものであり、その発達を調査する必要がある。
【0004】
一般に、標的癌療法は、発癌現象に特異的であり、従って非癌細胞を容赦する分子又は細胞内経路と干渉することにより、癌細胞の成長及びまん延を遮断しようとしている。これらの作用物質は、癌性又は前癌状態の細胞の成長停止、末端分化及び細胞死を生成するのに使用されるが、正常な細胞の発達を中断することもできる従来の化学療法又は化学予防薬とは対照的に作用する。しかしながら、一部には正常な細胞及び癌細胞の両方に発現される受容体及びリガンドの多様性、及びその結果としての受容体シグナリングからの帰結が可変的であることに起因して、標的療法用の堅固な診断候補バイオマーカーは開発が困難であった。
【0005】
腫瘍形成を理解し治療するための重要な標的として、複数のシグナリング経路が浮上してきている。これらには、成長因子シグナル翻訳経路が含まれる。成長因子経路は、細胞内及び環境信号に応答して、細胞の成長及び代謝を調節する。これらのシグナリング経路は、往々にして癌の中で改変されるか又は異常調節され、その結果、無制御成長の表現型及び周囲の組織への浸潤がもたらされる。
【0006】
細胞成長の主要な決定因子であり、癌の診断及び治療における活発な研究の標的であるのは、上皮細胞成長因子(EGF)及びその受容体(EGFR)である。EGFは、シグナル伝達カスケードを開始させるべくタンパク質−受容体チロシンキナーゼ(RTK)を活性化し、結果として細胞の成長、増殖及び分化の変化をもたらす成長因子である。EGF及びras/raf、mek及びerkを含むその下流側の標的(図1に例示)は、異なる癌の発病機序及び進行に関与するものとして知られている。この経路及びそのシグナル分子は治療的介入のための魅力的な標的を提供し、かかるアプローチが開発中である(Stadler、2005年、Cancer、第104号:2323〜33頁;Normannoら、2006年、Gene、第366号:2〜16頁)。
【0007】
EGF及びその受容体を標的とする作用物質としては、ベバシツマブ、PTK787、SU011248及びBAY43−9006が含まれる。BAY43−9006はまた、raf、mek及びerkを含むEGF経路内の下流側の標的を阻害することも示されている(Stadler、2005年、Cancer、前掲書)。この受容体系はまた、肺、胸部、前立腺、結腸、卵巣、頭部及び頸部を含む多くのヒト固形腫瘍の発生及び進行に関与している。HER1/EGFRは、4つの受容体{EGFR(HER1又はErbB1とも呼ばれる)、ErbB2(HER2/neu)、ErbB3(HER3)及びErbB4(HER4)}のファミリーのメンバーである。受容体は、細胞原形質膜内に常在し、外部リガンド結合ドメイン、膜内外ドメイン及び内部チロシンキナーゼドメインから成る。リガンドの結合は、受容体の2量体化及び内部受容体ドメインの自己リン酸化をひき起こす。こうして、細胞分裂及びその他の数多くの細胞成長局面に影響を及ぼす細胞反応カスケードが開始される。EGF受容体の活性の増強は、それがリガント濃度の増大、受容体数又は受容体突然変異のいずれによりひき起こされたものであるにせよ、細胞増殖の増大を導き得る。現在では、HER1/EGFR系がさまざまな固形腫瘍の確立及び進行を媒介し得ることを示す有意な証拠が存在する。
【0008】
研究により癌の制御及び治療におけるEGF経路の役割が調べられてきたが、腫瘍の進行及び転移中のこの経路の変化についてはほとんどわかっていない。EGFR経路における下流側エフェクターの微妙な改変が、とりわけ腫瘍タイプ、病期及び個々の組成に基づいて治療的介入のための特有かつ可動性の標的を提供し得る。かかる変動は、悪性腫瘍の診断及び治療に対し有意な影響を及ぼし得る。
【0009】
大規模試験からの結果に基づいて、従来の癌治療の治療計画が開発されてきており、これらの治療計画は、多様な患者及び腫瘍についての予測結果に依存している。個々の患者、腫瘍及び病理学的病期分類(図2に示されている)に合わせて療法を調整する能力は、より少ない副作用でより効果の大きい悪性腫瘍治療を提供し得る。さらに、癌治療の進行を監視しそれに応じて療法を調整できれば、広範な患者群からのデータを用いて以前に開発された治療計画に対する応答における個々の差異に対しより迅速に反応することが可能になると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当該技術分野においては、癌の病期を迅速に診断しEGFR経路を対象とした治療の効果を監視するために癌治療の前及び途中のさまざまな細胞内シグナル分子の変化のスクリーニング及び迅速な検出を可能にする、診断バイオマーカーを開発する必要性が存在している。同様に、EGFR経路を対象とした阻害物質の改良された同定方法の必要性も存在している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、癌を患う個体における腫瘍の進行を評価するための試薬及び方法を提供しており、特に、前記方法は腫瘍の病期を立証し、抗癌療法の効能を評価するために使用される。本発明は同様に、患者個別化された抗癌治療及び治療に対する応答を提供するための方法であって、本発明の方法を用いて立証された腫瘍のタイプ及び病期に基づいて個々の患者に対し特定の治療が投与され、該治療が、前記治療に対する患者の個々の応答に基づいて維持又は変更される方法を提供する。
【0012】
第1の態様において、本発明は、個体における腫瘍の進行、特に結腸直腸癌の進行を評価するための試薬、特に免疫学的試薬および方法を提供する。この態様では、患者由来の組織又は腫瘍細胞含有試料が分析されて、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出する。特定の実施形態においては、前記生物学的マーカーは、EGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67を含むEGF代謝経路のメンバーであるが、これらに限定されない。これらの実施形態においては、腫瘍の進行が評価され、ここで、1つ以上の、特に複数のこれらの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンは、前記腫瘍の立証された進行病期をもつ組織又は細胞試料由来の1つ以上の、特に複数のこれらの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンと実質的に類似している。
【0013】
他の実施形態においては、本発明は、個体における腫瘍の進行、特に結腸直腸癌の進行を評価するための試薬、特に免疫学的試薬および方法を提供する。この態様では、患者由来の組織又は腫瘍細胞含有試料が分析されて、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出する。特定の実施形態においては、前記生物学的マーカーは、EGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67を含むEGF代謝経路のメンバーであるが、これらに限定されない。これらの実施形態においては、腫瘍の進行が評価され、ここで、1つ以上の、特に複数のこれらの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンは、正常な細胞を含むものの腫瘍細胞を含まない非腫瘍組織又は細胞試料由来の1つ以上の、特に複数のこれらの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンと異なっている。
【0014】
本発明の試薬及び方法の好ましい用途は、結腸直腸癌腫の臨床病期を評価することを目的としたものであり、ここで前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを含む生物学的マーカーにはEGFR、PTEN、pMEK、Ki67及びpHER1が含まれる。同様に、本発明のこれらの態様には、EGFRをコードするゲノムDNAの遺伝子増幅を測定するさらなる工程が含まれる。一部の実施形態においては、これらの検定は、ゲノムEGFRコーティングDNA内の安定な(balanced)二染色体性を検出する。
【0015】
これらの態様においては、組織試料は、好ましくは、小腺腫(small adenoma)又は腺腫様ポリープである。特にこれらの実施形態においては、本発明は、非腫瘍組織又は細胞試料内の該生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方レベルと比較して、EGFRの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が増大、PTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が増大し、pMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が減少している、発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを提供する。
【0016】
その他の実施形態においては、腫瘍は腺癌である。特に、これらの実施形態においては、本発明は、小腺腫組織又は細胞試料内の該生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方レベルと比べて、PTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が減少し、及びpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が増大している、発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを提供する。これらの実施形態は、その範囲内に、FGFRをコードするゲノムDNAの遺伝子増幅を測定するさらなる工程を有することができる。一部の実施形態においては、これらの検定は、ゲノムEGFRをコードするDNA内の安定な二染色体性及び安定な三染色体性を検出する。
【0017】
さらなる実施形態においては、患者からの組織試料は、悪性試料であり、本発明は、小腺腫の組織又は細胞試料内の該生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のレベルに比べて、PTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が減少し、及びpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が増大している、発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを提供する。これらの実施形態は、その範囲内に、EGFRをコードするゲノムDNAの遺伝子増幅を測定するさらなる工程を有することができる。一部の実施形態においては、これらの検定は、ゲノムEGFRをコードするDNA内の安定な二染色体性及び安定な多染色体性を検出する。
【0018】
好ましい実施形態においては、本発明の方法において検出されたパターンを含む生物学的マーカーのこれらの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンは、免疫組織化学又はインサイチュハイブリダイゼーションにより検出される。好ましい実施形態において、前記方法は、有利には標識された特異的結合試薬、好ましくは免疫学的試薬を用いた染色後、組織切片のコンピューター援用画像解析を用いて実施される検定を含む。
【0019】
本発明の方法の実践においては、特定の複数の化学療法薬の1つ又はその組合せに対する応答性をもつ、腫瘍特に結腸直腸癌腫瘍を有する個体を同定するための方法が提供される。これらの実施形態においては、本発明の方法は、1つ又は複数の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために使用される。一部の実施形態においては、該腫瘍は結腸直腸癌であり、生物学的マーカーにはEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK、又はKi67が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法の有利な実施形態においては、発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンは、複数の化学療法薬の1つ又はその組合せに対する応答性をもつものとして、腫瘍を同定する。特定の実施形態においては、本発明の方法は、化学療法薬に対する応答性をもつ腫瘍試料を同定するために有用であるが、EGFR抗体又はキナーゼ阻害物質、又はEGFR抗体およびキナーゼ阻害物質の両方を含むものに限定されない。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法の実践用キットを提供する。有用な実施形態において、前記キットは、ヒト腫瘍試料内の腫瘍の進行又は化学療法薬の応答性又はその両方に関して情報を提供する生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するための少なくとも2つの試薬、好ましくは特異的結合剤、より好ましくは免疫学的試薬を含む。一部の実施形態においては、少なくとも2つの試薬は、EGFR、pEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67を含む、これらに限定されない生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するために有用である。一部の実施形態において、該少なくとも2つの生物学的マーカーはPTEN及びpMEKである。一部の実施形態においては、前記キットは、好ましくはEGFR、pEGFR、PTEN、pMEK、pERK、又はKi67を含む、これらに限定されない少なくとも3つの生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するための試薬を含む。一部の実施形態において、少なくとも3つの生物学的マーカーはEGFR、PTEN及びpMEKである。他の実施形態において、キットは、EGFR、pEGFR、PTEN、pMEK、pERK、又はKi67の発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するための試薬を含む。本発明のキットの一部の実施形態は同様に、EGFRをコードするゲノムDNAの遺伝子増幅を検出するための試薬をも含んでいる。本発明の前記キットの各実施形態は有利にはさらに、本発明の方法の実践においてキットを使用するための使用説明書を含む。
【0021】
本発明の特定の好ましい実施形態は、一部の好ましい実施形態についての以下のさらに詳細な説明及び特許請求の範囲から明白になるであろう。
【0022】
特許又は出願ファイルはカラーで作成された少なくとも1つの図面を含んでいる。カラー図面を伴う本特許又は特許出願公報のコピーは、必要な手数料の支払いを伴って要請に基づいて特許庁により提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、癌患者を含む個体における結腸直腸癌の進行を評価するための方法を提供する。さらに、本発明は、結腸直腸癌の進行を評価するため予測的なバイオマーカーを提供している。さらに、本発明は、化学療法薬に対する応答性をもつ結腸直腸癌腫瘍を同定するための方法を提供している。その上本発明は、結腸直腸癌の進行を評価するためのキットを提供する。
【0024】
化学療法薬物治療が外科手術の補助および術後に着手される従来の抗癌方法とは対照的に、新補助(又は一次)化学療法は、一部の癌患者に初期治療として薬物を投与することから成る。かかるアプローチの1つの利点は、3cm超の原発性腫瘍については、該化学療法の腫瘍収縮効果によって、大部分の患者について(例えば乳癌患者における根治的乳房切除術とは対照的に)保存外科的処置をこのアプローチの後に又は同時に使用することを可能にするという点にある。もう1つの利点は、数多くの癌について、全患者の約3分の2において部分的及び/又は完全な応答が達成されるという点にある。最後に、2〜3サイクルの化学療法治療後に大部分の患者が応答性を有することから、化学療法治療に対し応答性をもたない腫瘍を有する患者を同定するために、使用した化学療法治療計画の生体内での効能を監視することが可能である。非応答性腫瘍の適時の同定により、臨床医は不必要な治療副作用に対する癌患者の曝露を制限し、代替的治療を始めることができる。残念なことに、組織学的検査を含む当該技術分野で存在する方法は、このような適時の、および正確な同定の最適な応用には不充分である。本発明は、有効な転帰(すなわち腫瘍の削減又は除去)の確率が増大している癌患者に対して行うことのできる、より情報に基づく有効な治療計画を開発するための方法を提供する。
【0025】
疾病の初期診断及びその後の疾病経過(治療の前後及び最中)の監視の両方である癌診断は、従来、患者から取出した細胞又は組織試料の組織学的検査を通して確認される。臨床病理学者には、かかる試料が良性であるか又は悪性であるかを正確に判定し、悪性とみなされた腫瘍試料の攻撃性を分類できる能力が必要である。なぜなら、これらの判定が患者の治療の適切な行程を選択する基礎となることが多いからである。同様にして、病理学者は、特に結果的又は間接的な治療によって、最も特定的には化学療法薬又は生物学的作用物質による治療によって、癌がどの程度成長したか又は寛解に入ったかを検出できなければならない。
【0026】
組織学的検査は従来、試料の形態学的特徴を光学顕微鏡下で容易に観察できるようにする組織染色手順を伴う。病理学者は、染色された試料を検査した後、一般的には、腫瘍試料が悪性か否かの定性的判定を下す。しかしながら、腫瘍の攻撃性は往々にして、試料の形態により反映されることもあればされないこともあるタンパク質の発現又は抑制及びタンパク質のリン酸化といったような腫瘍内部の細胞の生化学の結果であることから、試料の組織学的検査のみを通して腫瘍の攻撃性を確認することはむずかしい。従って、腫瘍試料内の細胞の生化学を評価できることが重要である。さらに、腫瘍関連遺伝子又はタンパク質、又はより具体的には腫瘍関連シグナル経路の細胞構成要素の遺伝子発現及びタンパク質のリン酸化の両方を観察し、定量化できることが望ましい。
【0027】
癌療法は、単にその組織学又は疾病の部位に基づくのではなく、むしろ腫瘍の分子プロファイリングを基礎とすることができる。腫瘍試料内の標的療法の生物学的効果を解明し、これらの効果を臨床的応答と相関させることは、腫瘍内の作動的な優勢的成長及び存続経路を同定し、その結果起こりうる応答のパターンを立証し、および反対に耐性を克服するための戦略設計の論理的根拠を提供するのを助ける。例えば、成長因子受容体の診断標的化に成功すれば、腫瘍の成長又は存続が標的受容体又は受容体ファミリーによって駆動されているか、療法が標的としていないその他の受容体により駆動されているか、そして下流側シグナルがもう1つの発癌経路の関与を示唆しているか否かが判定されるはずである。さらに、2つ以上のシグナル経路が関与している場合、これらのシグナル経路のメンバーを診断標的として用いて、2重阻害剤療法が有効となるか又は有効であるかを判定することができる。
【0028】
化学療法が有効であるためには、投薬療法が腫瘍細胞を破壊しかつ正常な体細胞、特に腫瘍に隣接する又はその近位に存在する正常な細胞には危害を加えてはならない。これは、とりわけ、癌細胞内では圧倒的に発生するが正常な細胞内では発生しない細胞活性に影響を及ぼす投薬療法を用いることで達成可能である。
【0029】
当該技術分野において既知の自動(コンピューター援用)画像解析システムが、腫瘍試料の視覚的検査を増強させることができる。代表的な実施形態においては、細胞又は組織試料は、特定の生物学的マーカーを特異的に標識する試薬に曝露され、拡大された細胞の画像は、テレビカメラなどのカメラ又は電解結合素子(CCD)から画像を受信するコンピューターによって処理される。かかるシステムは、例えば、試料中のEGFR、ptyr、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67又は任意の付加的な診断用バイオマーカーを検出しその発現及び活性化レベルを測定するために使用可能である。かくして、本発明の方法は、より正確な癌診断、および組織学的に同定された癌細胞内の遺伝子発現のより優れた特徴づけであって、最も特定的には、腫瘍マーカー遺伝子又は(例えば異なる悪性度を有する)特定の癌型及び亜型内で発現させられるものとして知られている遺伝子の発現に関する特徴づけを提供する。この情報により、一定の腫瘍型又は亜型についての臨床的効能をもつ薬物を、このように同定された細胞をもつ患者に対し投与できることから、施行される治療についてのより情報に基づくおよび有効な治療計画が可能になる。
【0030】
従来の抗癌療法のもう1つの欠点は、個々のヒト患者における特定の癌を治療する上での特異的な化学療法薬の効能が予測不可能であるという点にある。この予測不能性を考慮すると、当該技術分野では療法を開始するまでは、個々の患者における1つ以上の選択された作用物質が抗腫瘍薬として活性であるか否かを判定すること、又は治療の正確な予後診断又は経過を告げることができない。特定の個体にとってどの治療計画が最も効果が高くなるかを評価する技術を現状では一切持っていない臨床医は、特定の臨床癌に対して治療治療計画の選択をせまられる可能性があることから、このことは特に重要である。本発明の方法の利点は、該方法が、個々の患者における提案された治療薬(又は作用物質の組合せ)の予想される効能をより良く評価できる、という点にある。請求されている方法は、それらが化学療法治療計画の効能を評価する上で時間効果性及びコスト効果性の両方を有し、かつ癌患者にとって外傷性傷害が最小であるという点で有利である。
【0031】
ポリペプチドの発現及びリン酸化のパターンが、本発明の方法を用いて検出および定量化される。より特定的には、腫瘍関連シグナル経路の細胞構成要素であるポリペプチドの発現及びリン酸化のパターンが、本発明の方法を用いて検出および定量化される。例えば、ポリペプチドの発現及びリン酸化のパターンは、抗体を含むがこれに限定されない、ポリペプチドに特異的な生物検出試薬を用いて検出可能である。代替的には、生物検出試薬は核酸プローブであり得る。
【0032】
本明細書で開示されている発明の方法で使用される核酸プローブは、試料に対するそのハイブリダイゼーションを検出できる1つ以上の核酸フラグメントの集合として定義される。該プローブは、標的又は試料に対するその結合を検出できるような形で標識されていてもいなくてもよい。プローブは、ゲノムの1つ以上の特定の(予め選択された)部分、例えば1つ以上のクローン、1つの単離された全染色体又は染色体フラグメント又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物由来の、核酸供給源から産生される。核酸プローブは同様に、アレイの中といったように固体表面(例えばニトロセルロース、ガラス、石英、ヒューズドシリカスライド)上で固定化された単離された核酸でもあり得る。該プローブは、例えば国際公開第96/17958号パンフレット中で記述されている通りの核酸アレイのメンバーであってよい。高密度アレイを産生させる能力をもつ技術をこの目的で使用することもできる(例えばFodor、1991年、Science、第X号:767〜773頁;Johnston、1998年、Curr.Biol.第8号:R171〜R174頁;Schummer、1997年、Biotechniques、第23号:1087〜1092頁;Kern、1997年、Biotechniques、第23号:120〜124頁;米国特許第5,143,854号明細書を参照のこと)。当業者であれば、特定のプローブの正確な配列を或る程度まで修飾して、「実質的に同一」ではあるもののそれらが由来したプローブと同じ標的又は試料に特異的に結合する(すなわちこれに特異的にハイブリッド形成する)能力を保持するプローブを産生させることができる、ということを認識するだろう。「核酸」という用語は、1本鎖又は2本鎖形態のいずれのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドも意味する。該用語は、例えばオリゴヌクレオチドなどの、基準核酸として所望の目的で類似の又は改善された結合特性をもつ天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含している。該用語は同様に、天然に発生するヌクレオチドと類似の方法で、所望の目的のために改善された速度で代謝される核酸をも内含する。該用語は同様に、合成主鎖を伴う核酸様構造をも包含する。当業者であれば、例えば結腸癌腫細胞のスクリーニングに向けられた米国特許第6,326,148号明細書を参照することにより、試料内の癌細胞のスクリーニングのために核酸プローブをどのように使用するかを認識するものと思われる。
【0033】
癌に関連するポリペプチドは、直接検出されるか又は適切な2次抗体(例えばマウス一次抗体を使用する場合にはウサギ抗マウスIgG)及び/又は3次アビジン(又はストレプトアビジン(Strepavidin))ビオチン錯体(「ABC」)を用いて検出される、EGFR、PTEN、pAKT、pMEK、p、pERK、又はKi67を含む、これらに限定されないバイオマーカーに対抗する適切な一次抗体を用いた画像解析により定量化可能である。
【0034】
本明細書で例示されているような本発明の方法の実践において有用である試薬の例としては、免疫学的試薬が含まれる。「免疫学的試薬」というのは、特にポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体を含む抗体を意味する。本発明の抗体は、化学的合成又は組換え発現技術を含めた抗体合成のための当該技術分野において既知のあらゆる方法によって、又は好ましくは従来の免疫学的方法によって産生可能である。本明細書で使用する「抗体」という用語には、天然に発生する抗体と非天然発生の抗体の両方が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「抗体」という用語は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEといったようなあらゆる免疫学的結合剤を広く意味するように意図されている。一般に、生理学的状況で最も一般的な抗体でありかつ実験室環境内で最も容易に作られることから、IgG及び/又はIgMが好まれる。より具体的には、「抗体」という用語は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体、及び例えばFab、Fab’、及びF(ab’)2フラグメントなどの抗原結合フラグメントが含まれる。さらに、「抗体」という用語には、遺伝子操作された抗体及びそのフラグメントを含めたキメラ抗体及び完全合成抗体が含まれる。ポリクローナル及びモノクローナル抗体を「精製すること」が可能であり、これは、該ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体にその他の抗体が全く含まれていないことを意味している。
【0035】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を調製するための方法は、当該技術分野において周知である(例えば本明細書に参照により援用されているSambrookら、1989年、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.;及びHurrell(編)、MONOCLONAL HYBRIDOMA ANTIBODIES:TECHNIQUES AND APPLICATIONS、CRC Press、Inc.、Boca Raton、Fla.を参照のこと)。当業者にとって明白であるように、ポリクローナル抗体は、馬、牛、山羊、羊、犬、鶏、ウサギ、マウス及びラットといったさまざまな温血動物から産生され得る。抗原性エピトープの免疫原性は、(完全及び不完全)フロイントといったアジュバント、水酸化アルミニウムといった無機ゲル、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールなどの表面活性物質及び例えばBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルバムなどの潜在的に有用なヒトアジュバントの使用を通して増大させることができる。このようなアジュバントは、当該技術分野においても周知である。アジュバント及び免疫検定のさまざまな局面に関する情報は、例えばTijssen(1987年、PRACTICE AND THEORY OF ENZYME IMMUNOASSAYS、第3版、Elsevier:New York)の中で開示されている。ポリクローナル抗血清を調製するための方法を網羅するその他の有用な参考文献としては、MICROBIOLOGY(1969年、Hoeber Medical Division、Harper and Row);Landsteiner(1962年、SPECIFICITY OF SEROLOGICAL REACTIONS、Dover Publications:New York)、及びWilliamsら、(1967年、METHODS IN IMMUNOLOGY AND IMMUNOCHEMISTRY、第1巻、Academic Press: New York)がある。
【0036】
ポリクローナル抗体の産生において用いられる免疫原組成物の量は、免疫原の性質ならびに免疫化のために用いられる動物に応じて変動する。免疫原の投与にはさまざまな経路(皮下、筋肉、皮内、静脈内及び腹腔内)を用いることができる。ポリクローナル抗体の産生は、免疫化後のさまざまな時点で免疫化動物の血液をサンプリングすることにより監視され得る。第2のブースタ注射も与えることができる。ブースタ投与及び力価測定の工程は、適切な力価が達成されるまで反復される。所望の免疫原性レベルが得られた時点で、免疫化動物を出血させ、血清を単離し貯蔵することができる。
【0037】
標準的方法を用いて免疫化された動物から産生された血清は直接使用でき、あるいは、固定化したプロテインAとなどのIgG特異的吸着剤での吸着クロマトグラフィー又は血漿交換法といったような標準的方法を用いて、血清からIgG画分を分離することができる。
【0038】
既知の方法に従った所望のフラグメントの分割及び収集により、対応する抗体からF(ab’)2及びFabフラグメントなどの抗体フラグメントを産生させることができる(例えばAndrewら、1992年、「Fragmentation of Immunoglobulins」in CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY、Unit2.8、Greene Publishing Assoc.and John Wiley&Sonsを参照のこと)。
【0039】
代替的には、本明細書に参照により援用されている米国特許第4,196,265号明細書の中で例証されている周知の技術などに従って、本発明の抗原ペプチドに対するモノクローナル抗体を調製できる。本発明の抗原ペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知の技術によって産生される。通常、この工程には、所望の抗体を産生するB−リンパ球と不死化細胞系の融合を含む。不死化用細胞系は通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシ及びヒト由来の骨髄腫細胞である。マウス及びラットなどのげっ歯類が好ましい動物であるが、ウサギ又はヒツジ細胞の使用も可能である。マウスが好ましく、最も日常的に使用され、および一般的により高い割合で安定した融合を提供することから、BALB/Cマウスが最も好まれる。
【0040】
抗原の注射を受けた哺乳動物から抗体産生リンパ球を得る技術は周知である。一般に、ヒト由来の細胞が利用される場合には末梢血リンパ球(PBL)が用いられ、または非ヒト哺乳動物供給源からの脾臓又はリンパ節細胞が使用される。宿主動物には、精製された抗原の反復投薬量が注射され、動物は、不死化細胞系との融合のために採取される前に所望の抗体産生細胞を生成することが可能となる。不死化された細胞系は、便宜上及び利用上の問題から、ラット又はマウスの骨髄腫細胞系であることが最も多い。融合のための技術も同じく当該技術分野において周知であり、一般的にポリエチレングリコールなどの融剤と細胞の混合を含む。
【0041】
一般に、抗体を産生する潜在性をもつ以下の免疫化体細胞、特にB−リンパ球(β−細胞)が、mAb生成プロトコルでの使用に選択される。これらの細胞は、生検された脾臓、へんとう腺又はリンパ節又は末梢血試料から得ることができる。脾細胞及び末梢血細胞が好ましく、前者はそれが分裂中の形質芽球期にある抗体産生細胞の豊かな供給源であることを理由として、又後者は末梢血が容易に入手可能であることを理由として好まれる。多くの場合、一団の動物が免疫化されていることになり、最高の抗体力価をもつ動物の脾臓は除去され、脾臓リンパ球は注射器で脾臓を均質化することによって得られる。一般的には、免疫化されたマウス由来の脾臓は約5000万個から2億個のリンパ球を含む。
【0042】
ハイブリドーマ産生融合手順において使用するのに適した骨髄腫細胞系は、好ましくは抗体を産生せず、高い融合効率、およびその後所望の融合された細胞(ハイブリドーマ)のみの成長を支援する、一定の選択培地の中で成長能力を無くさせる酵素欠乏を有する。当業者にとっては既知であるように、数多くの骨髄腫のうちのいずれか1つを使用することができる。American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110−2209、USA、から入手可能なマウス骨髄腫系を、ハイブリダイゼーションにおいて使用可能である。例えば免疫動物がマウスである場合、P3−X63/Ag8、X63−Ag8.653、NS1/1.Ag4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG1.7およびS194/5XX0Bulを使用することができる。ラットについては、R210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983F及び4B210を使用でき、U―266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2及びUC729−6は全て、ヒトの細胞融合に関連して有用である。1つの好ましいマウス骨髄腫細胞は、細胞系所蔵番号GM3573を要求することによりNIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから容易に入手可能であるNS−1骨髄腫細胞系(P3−NS−1−Ag4−1とも呼ばれる)である。使用可能なもう1つのマウス骨髄腫細胞系は8−アザグアニン耐性マウスのマウス骨髄腫SP2/0非生産細胞系である。
【0043】
抗体を産生する脾臓又はリンパ節細胞及び骨髄腫細胞のハイブリッドを生成する方法は、通常、細胞膜の融合を促進する作用物質(化学的及び電気的)の存在下で、2:1の比で(ただし、比率はそれぞれ約20:1〜約1:1まで変動し得る)、骨髄腫細胞と体細胞を混合する工程を含んでいる。Sendaiウイルスを用いる融合方法(Kohlerら、1975年、Nature、第256号:495頁;Kohlerら、1976年、Eur.J.Immunol.第6号:511頁;Kohlerら、1976年、Eur.J.Immunol.第6号:292頁)及びポリエチレングリコール(PEG)(37%(v/v)のPEG)を用いるGefterら(1977年、Somatic Cell Genet第3号:231〜236頁)による融合方法が記述されてきた。電気的に誘発される融合方法の使用も適切である(Goding、1986年)。
【0044】
融合手順は、通常約1×10−6〜1×10−8の低い頻度で生存可能なハイブリッドを産生させる。しかしながら、生存可能な融合ハイブリッドは、選択培地中での培養により親の未融合細胞(特に通常は無限に分裂し続けることになる未融合骨髄細胞)から分化されることから、それが問題となることはない。選択培地は一般に、組織培養培地内でヌクレオチドの新規合成を遮断する作用物質を含むものである。一般的に好ましい作用物質はアミノプテリン、メトトレキサート、及びアザセリンである。アミノプテリン及びメトトレキサートは、プリン及びピリミジンの両方の新規合成を遮断し、一方アザセリンはプリン合成のみを遮断する。アミノプテリン又はメトトレキサートが使用される場合、培地にはヌクレオチド(HAT培地)の供給源としてヒポキサンチン及びチミジンが補足される。アザセリンが使用される場合、培地にはヒポキサンチンが補充される。好ましい選択培地はHATである。骨髄腫細胞は、例えばヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)などのサルベージ経路の主要酵素が不完全であり、存続できない。β細胞はこの経路を操作できるが、培養中で制限された寿命しかもたず、一般に約2週間で死滅する。従って選択培地内で生存できる唯一の細胞は骨髄腫及びβ細胞から形成されたハイブリッドである。
【0045】
これらの条件下で融合産物を培養することで、特定のハイブリドーマが選択されるハイブリドーマ集団が提供される。一般的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレート内での単一クローン希釈により細胞を培養しその後所望の反応性について(約2〜3週間後に)個々のクローン上清内でテストすることによって実施される。所望の抗体を分泌するハイブリドーマが、ウェスタンブロット法、ELISA(酵素免疫吸着法)、RIA(放射免疫測定)などの標準的免疫検定を用いて選択される。標準的タンパク質精製技術(例えばTijssen、1985年、前掲書)を用いて培地から抗体が回収される。検定は、放射免疫検定、酵素免疫検定、細胞毒性検定、プラーク検定、ドット免疫結合検定などのように、鋭敏、簡易かつ高速でなくてはならない。
【0046】
選択されたハイブリドーマは次に段階希釈され、個々の抗体産生細胞系内にクローニングされ、このクローンを次に無限に繁殖させてmAbsを得ることができる。細胞系は少なくとも2つのやり方でmAb産生のために運用可能である。ハイブリドーマの試料を、原初の融合のための体細胞及び骨髄腫細胞を提供するために使用された種類の組織適合動物の体内に(往々にして腹腔内に)注射することができる。注射を受けた動物は、融合された細胞ハイブリッドにより産生された特定のモノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発生させる。次に該動物の血清又は腹水などの体液を抜いて、高濃度のmAbsを提供することができる。mAbsが天然に培地内に分泌され高濃度で容易に得ることができる場合、個々の細胞系を試験管内で培養することもできると思われる。いずれの手段で産生されたmAbsも、望ましい場合にはろ過、遠心分離及びHPLC又は親和性クロマトグラフィーなどのさまざまなクロマトグラフィー法を用いてさらに精製可能である。
【0047】
Kohlerら、(1980年、HYBRIDOMA TECHNIQUES、Cold Spring Harbor Laboratory、New York);Tijssen(1985年、前掲書);Campbell(1984年、MONOCLONAL ANTIBODY TECHNOLOGY、Elsevier:Amsterdam);Hurrell(1982年、前掲書)を含む数多くの参考文献が、上述の技術を応用する上での指針を提供するべく入手可能である。モノクローナル抗体は同様に、周知のファージライブラリシステムを用いて産生させることもできる。例えば、Huseら、(1989年、Science第246号:1275頁);Wardら、(1989年、Nature第341号:544頁)を参照のこと。
【0048】
F(ab’)2及びFabフラグメントなどの抗体フラグメントを、既知の方法(例えばAndrewら、1992年、「Fragmentation of Immunoglobulins」、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY中、Unit2.8、Greene Publishing Assoc.and John Wiley&Sons)を参照)に従った所望のフラグメントの分割及び収集によって、対応する抗体から産生させることができる。
【0049】
ポリクローナル抗体であれモノクローナル抗体であれ、かくして産生された抗体と、例えば周知の方法により固体支持体に結合された固定化形態で使用することができる。
【0050】
免疫測定法及び免疫特異的結合検定の基礎として、標準的方法により標識された又は未標識の抗体を使用することもできる。使用可能な免疫学的検定としては、いくつかの例を挙げると、ウェスタンブロット法、放射免疫検定法、ELISA(酵素免疫吸着法)、「サンドイッチ」免疫測定法、免疫沈降検定、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法、凝集検定、補体結合検定、免疫放射定量測定法、螢光免疫測定法、プロテインA免疫測定法が含まれるが、これらに限定されない。かかる検定は定法であり、当該技術分野においては周知である(例えばAusubelら編、1994年、前掲書参照)。
【0051】
特に、本発明の抗体は、免疫組織化学(IHC)による研究用に調製された新鮮凍結及び/又はホルマリン固定、パラフィン包埋組織ブロックの両方と併用することもできる。
【0052】
検出は、検出可能な物質に対し抗体をカップリングすることで容易になる。検出可能な物質の例としては、さまざまな酵素、補欠分子団、螢光性材料、発光性材料、生物発光材料、放射性材料、さまざまなポジトロン放出断層撮影法を用いるポジトロン放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンが含まれる。検出可能な物質は、当該技術分野において既知の技術を用いて、抗体(又はそのフラグメント)に直接か又は(例えば当該技術分野において既知のリンカーなどの)中間体を通して間接的にカップリング又は接合化可能である。例えば、本発明に従って診断法として用いるために抗体に接合体され得る金属イオンについては、米国特許第4,741,900号明細書を参照のこと。使用される特定の標識は、免疫測定法のタイプによって左右されることになる。使用可能な標識の例としては、例えば3H、14C、32P、125I、131I、111In又は99Tcなどの放射性標識、例えばフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル及びウンベリフェロンなどの螢光性標識;例えばルシフェラーゼ及び2,3−ジヒドロフタラジンジオンなどの化学発光体(chemiluminescer)、及び例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リゾチーム、グルコース−6−ホスファートデヒドロゲナーゼ及びアセチルコリンステラーゼなどの酵素が含まれるが、これらに限定されない。抗体は、既知の方法でかかる標識でタグ付けされ得る。例えば、アルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、イミダート、スクシニミド、ビスジアゾ化ベンザジンなどといったカップリング剤を、螢光性、化学発光性又は酵素標識で抗体にタグ付けするのに使用することができる。関与する一般的方法は当該技術分野において周知であり、例えばIMMUNOASSAY:A PRACTICAL GUIDE(1987年、Chan(編)、Academic Press、Inc.Orlando、FL)の中で記述されている。
【0053】
さらに、予測されるポリペプチドの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを、非腫瘍組織又は細胞試料と比較することが可能である。非腫瘍組織又は細胞試料は、同じ個体由来の非腫瘍組織又は細胞試料から得ることができ、または代替的に、異なる個体由来の非腫瘍組織又は細胞試料から得ることができる。あるポリペプチドについて検出されたパターンは、非腫瘍組織又は細胞試料と比べて検出されたポリペプチドが少ない場合には、哺乳動物の腫瘍、組織又は細胞試料内で減少したものとする。あるポリペプチドについて検出されたパターンは、非腫瘍組織又は細胞試料に比べて検出されたポリペプチドが多い場合、哺乳動物の腫瘍、組織又は細胞試料内で「増大した」ものとする。あるポリペプチドについて検出されたパターンは、非腫瘍組織又は細胞試料に比べて検出されたポリペプチドが同じか又はほぼ同じである場合、哺乳動物の腫瘍、組織又は細胞試料において「正常」であるものとする。
【0054】
本発明の方法を実施するにあたっては、解剖病理学研究室の組織検査技師などにより染色手順を実施することができる。代替的には、該染色手順は、Ventana Medical SystemsのBenchmark(登録商標)自動染色装置シリーズなどの自動化されたシステムを用いて実施可能である。いずれの場合でも、本発明の方法に従って使用するための染色手順は、当該技術分野において周知の標準的な技術及びプロトコルに従って実施される。
【0055】
「細胞又は組織試料」というのは、塗沫標本、唾液、生検材料、分泌物、脳脊髄液、胆汁、血液、リンパ液、尿及び糞便などの身体試料から単離された細胞、最も好ましくは腫瘍細胞、又は、胸、肺、腸、皮膚、頸部、前立腺及び胃などの器官から取出された組織を含む生体試料を意味するが、これらに限定されない。例えば、組織試料は機能的に関係する細胞又は隣接する細胞の一領域を含み得る。
【0056】
標的タンパク質の量は、染色された抗原の平均光学密度を測定することによって定量化され得る。付随して、染色された総組織面積の割合又は百分率は、例えば第2の画像内の(抗体閾値レベルなどの)制御レベルより上の染色された面積として容易に計算することができる。バイオマーカーを含む核の視覚化の後、治療後の患者由来の組織内のかかる細胞の百分率又は量は、未治療の組織内のかかる細胞の百分率又は量と比較される。本発明に関しては、ポリペプチドの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンの「判定」というのは、直接的検査を通して、又は例えば契約診断サービスなどから間接的に、かかるポリペプチドについての発現レベル情報を得ることを単に意味するものとして広義に理解される。
【0057】
代替的には、標的タンパク質の量は、螢光方法を用いて判定可能である。例えば、免疫組織化学、フローサイトメトリ及び平板に基づく検定を含め、増大する利用分野リストの中で量子ドット(Qdot)がますます有用になってきており、従ってこれを本発明と併用してもよい。Qdotナノ結晶は、感度及び定量のためのきわめて輝度の高いシグナル並びに画像化及び解析のための高い光安定性を含む、特有の光学特性を有する。単一の励起源が必要とされ、接合体の範囲が増大しているために、これらは細胞ベースの広範囲の利用分野において有用なものとなっている。Qdotバイオ接合体は、利用可能な最も輝度の高い従来の染料に匹敵する量子収量をその特徴とする。さらに、これらの量子ドットベースのフルオロフォアは、従来の染料の10〜1000倍の光を吸収する。基礎を成すQdot量子ドットからの発光は少なく対称的で、これは他の色との重複が最小限におさえられることを意味し、その結果、はるかに多くの色が同時に使用されるにも関わらず、隣接する検出流路内への滲み出しは最小限におさえられ、クロストークは減衰されることになる。標準的な螢光顕微鏡がQdotバイオ接合体の検出のための安価な手段である。Qdot接合体は事実上光安定性があることから、問題の領域を見つけ試料上に適切に焦点を合わせるために顕微鏡で充分に時間を取ることができる。Qdot接合体は、輝度の高い光安定性ある発光が必要とされる場合にいつでも有用であり、1つの励起源/フィルタしか利用できない場合及び色間のクロストークを最小限にする必要のある多色利用分野において特に有用である。例えば、量子ドットは、ストレプトアビジンをIgGの接合体として、細胞表面マーカー及び核抗原を標識するため、ならびに細胞微小管及びアクチンを染色するために使用されてきた(Wuら、2003年、Nature Biotech.第21号、41〜46頁)。
【0058】
例えば、QDOT螢光IHCは、検出基板がストレプトアビジン接合体QdotsVentana Medical Systems、Inc.、Tucson、AZ)(「Ventana」)である場合、二次抗体を用いて実施可能である。画像解析は、最初にスペクトル画像化カメラ(Cambridge Research Instruments、Woburn、MA)上で画像キューブを捕捉することで実施することができる。励起はUV(水銀)光源で行うことができる。画像キューブは次に、Ventana Research Imaging Application上で解析できる。簡単に言うと、画像キューブを前記アプリケーション内で検索し、605nm及び655nmで発光すると予想されるQdotsの画像強度に基づいてデータを抽出し報告することができる。
【0059】
一例を挙げると、マルチスペクトル画像化システムNuanceTM(Cambridge Research&Instrumentation、Woburn、MA)で螢光を測定することができる。もう1つの例としては、スペクトル画像化システムSpectr ViewTM(Applied Spectral Imaging、Vista、CA)を用いて螢光を測定することができる。マルチスペクトル画像化は、画像の各画素における分光情報が収集され、結果としてのデータが分光画像処理ソフトウェアで解析される技術である。例えば、Nuanceシステムは、電子的かつ連続的に選択可能でありかつその後かかるデータを扱かうように設計された解析プログラムと共に利用される一連の画像を異なる波長で撮影することができる。Nuanceシステムは、染料のスペクトルがきわめて重複している場合でさえ、又はこれらのスペクトルが同時局在化されているか又は試料内の同じ箇所に発生している場合でも、スペクトル曲線が異なることを条件として、多数の染料からの定量的情報を得ることができる。数多くの生体材料が自己螢光発生するか又は、より高エネルギーの光により励起された時点でより低エネルギーの光を発出する。このシグナルはより低いコントラストの画像及びデータを結果としてもたらし得る。マルチスペクトル画像化能力のない高感度カメラは、螢光シグナルと同調した自己螢光シグナルを増大させるだけである。マルチスペクトル画像化は、組織から自己螢光発生を混合解除又は分離することによって、達成可能な信号対雑音比を増大させることができる。
【0060】
抗体検出方法に関連して、「検出試薬」というのは、一次又は二次抗体の両方を含めた抗体の検出のために使用可能な試薬を意味する。例えば、検出試薬は、螢光検出試薬、Qdots、色原体検出試薬又は重合体ベースの検出系であり得る。しかしながら、本発明の方法及びキットはこれらの検出試薬に限定されず、又一次又は二次抗体スキームにも限定されない(例えば3次抗体等も本発明の方法により考慮されている)。
【0061】
本発明は、発現されたタンパク質バイオマーカーを間接的に検出する手段として、核酸プローブを使用することもできる。例えば、EGFRバイオマーカーのためのプローブは、プローブ設計技術の当業者にとっては周知である標準的なプローブ設計方法を用いて構築可能である。一例を挙げると、本明細書に参照により援用されている米国特許出願公開第2005/0137389A1号明細書「Methods and compositions for chromosome−specific staining」は、染色体全体を標識するように設計された配列の不均質混合物を含む無反復プローブ組成物を設計する方法について記述している。
【0062】
遺伝子特異的プローブを、以下の公開手順のいずれかに従って設計することができる。この目的を達成するために、目的の部位以外の場所でのハイブリダイゼーションを最小限におさえるために、純粋又は均質なプローブを産生させることが重要である(Henderson、1982年、International Review of Cytology、第76号:1〜46頁)。Manuelidisら、(1984年、Chromosoma、第91号:28〜38頁)は、反復DNA配列ファミリーのメンバーに対応する染色体上の多数の遺伝子座を検出するための単一の種類のDNAプローブの構築を開示している。
【0063】
Wallaceら、(1981年、Nucleic Acids Research、第9号:879〜94頁)は、構造遺伝子に対応する単一の遺伝子座を検出するための混合型塩基配列をもつ合成オリゴヌクレオチドプローブの構築を開示している。塩基配列の混合は、構造遺伝子が対応するタンパク質内のアミノ酸の選択された配列をコードしうる全てのヌクレオチド配列を考慮することにより決定された。
【0064】
Olsenら、(1980年、Biochemistry、第19号:2419〜28頁)は、最初に、ユニーク配列DNA画分を単離できるように、全ゲノムヒトDNAのそれ自体に対するハイブリダイゼーション;第2に相同性マウス/ヒト配列が除去されるように、単離されたユニーク配列ヒトDNA画分のマウスDNAに対するハイブリダイゼーション;および最後に、ユニーク配列X染色体DNAの画分が単離されるように、そのヒト染色体のみがX染色体であるヒト/マウスハイブリッドの全ゲノムDNAに対する、マウスと相同でないユニーク配列ヒトDNAのハイブリダイゼーション、という連続的ハイブリダイゼーションによる、標識されたユニーク配列ヒトX染色体DNAの単離方法を開示している。
【0065】
遺伝子検出プロトコルにおいて本発明の方法内で、標識された核酸プローブを使用することが可能である。例えば、EGFR遺伝子などの遺伝子の遺伝子状態を判定するために、螢光インサイチュハイブリダイゼーション(「FISH」)遺伝子検出方法を使用することができる。例えばEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定するために、FISH遺伝子検出を用いることができる。したがってゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置の測定を可能にするFISH遺伝子検出は、例えば遺伝子が安定な二染色体性、安定な三染色体性又は安定な多染色体性であるかといった、該遺伝子の状態の検出を可能にすることができる。
【0066】
本発明は、銀インサイチュハイブリダイゼーションを含む方法をも使用し得る。この技術では、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素が、銀イオンから金属銀への還元の触媒として作用し、プローブに対しハイブリッド形成された標的の部位に金属粒子が被着する(Hoffら、2002年、Am J Clin.Pathol.第117号:916〜21頁;図20参照)。例えば、ゲノムDNAの増幅、欠失及び再配置を測定するために、銀インサイチュハイブリダイゼーションを使用することができる。
【0067】
患者から採取した癌組織切片が、EGF経路のメンバー又はその任意の陽性治療応答が予測される組合せの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化について、免疫組織化学により本発明の方法に従って分析される。本発明の方法においては、「発現」の変化は、バイオマーカーが検出される細胞の数の変化を意味し、または代替的には、陽性細胞の数は同じであり得るものの強度(又はレベル)が変化しうる。発現という用語は、分子活性化レベルのレベル変化を表わす代用語としても使用可能である。
【0068】
これらの測定は、例えば組織マイクロアレイを使用することにより達成可能である。均一の染色及び評定条件下で多数の組織試料を高速スクリーニングするための、充分に立証された方法である本発明の方法においては、組織マイクロアレイを使用することが有利である。(Hoosら、2001年、Am J Pathol.第158号:1245〜51頁)。染色されたアレイの評定は、標準的0から3+のスケールを用いて手動で達成でき、または観察された染色を正確に定量化する自動化されたシステムによって達成可能である。この分析結果は、治療後の患者の転帰を最も良く予測するバイオマーカーを同定する。少数のリガンドのセット、受容体、シグナリングタンパク質又はそれらの予測される組合せの発現、リン酸化又は両方に基づいて、0〜100パーセントの範囲の患者の「応答確率」を予測することができる。癌患者からの付加的な試料を、組織マイクロアレイ結果の代替として又はその追加として、分析することができる。例えば、患者の応答が受容体発現及び/又は下流側シグナリングの特定のパターンと相関関係をもつ場合、乳癌患者からの試料の分析が、組織アレイからの結論を確認し得る。
【0069】
本発明は、一部には本発明の方法を実施するためのキットを提供する。例えば、該方法は、EGF経路内のポリペプチドの発現、リン酸化又は両方を検出できる少なくとも2つの試薬好ましくは抗体を含む、個体の体内の結腸直腸癌を評価するためのキットを提供する。例えば、該キットは、EGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK、又はKi67に結合する少なくとも2つ、3つ又は4つの試薬を含むことができる。さらにキットは、付加的な抗体を含んだ、以上で同定された試薬以外の付加的構成要素を含むことができるが、これらに限定されない。かかるキットは例えば、臨床医又は医師が特定の患者のための適切な療法を選択するための補助として使用することができる。
【0070】
以下の例は、本発明の特定の実施形態及びそのさまざまな用途を示している。これらの例は説明を目的として示されているにすぎず、本発明を限定するものとして解釈すべきものではない。
【実施例】
【0071】
実施例1
結腸直腸腫瘍の進行におけるEGF経路内の下流側分子の免疫組織化学染色
癌腫の病理学的病期分類と相関関係をもつバイオマーカープロファイルを結腸直腸癌について同定できるか否かを判定するために、個々の症例からの組織試料及び市販の組織アレイを用いて、結腸直腸癌内のEGFRの発現にリンクされるバイオマーカーの発現レベルを検討した。バイオマーカーは免疫組織化学(「IHC」)を用いて評価された。
【0072】
免疫組織化学によるHER1/EGFR発現の検出のために、Ventana Medical Systemsのマウス抗体クローン3C6を使用した。3C6クローンは、受容体の細胞外ドメインと反応する。調査されたその他のバイオマーカーは、pHER1、PTEN、pAKT、pMEK、Ki67及びpERKであった。pTYRも、活性化の代用として評価された。全ての試薬を以下および表1に記されている通りに、かつ規定の添付文章に従って使用した。
【0073】
自動化されたIHCプロトコルにおいてタンパク質マーカーを検出するためのプローブ及び抗体の性能を、FFPE単一スライド切片内及び多重組織アレイにおいて評価した(表2参照)。全てのIHC分析は、VentanaのBench Mark(登録商標)XT及び/又はDiscovery(登録商標)XT染色プラットホーム上で実施された。
【0074】
【表1】
【0075】
単一スライド切片については、細胞を採取し、10%の中性緩衝ホルマリン(「NBF」)中で固定し、次にパラフィン包埋(「FFPE」)した。FFPE細胞を1500rpmで10分間遠心分離した。上清を取出し、Shandon Cytoblock(登録商標) Cell Block Preparation System(「Shandon Cytoblock」)(Thermo Electron Corporation、Waltham、MA)の試薬1を3滴加えた。3000rpmで2分間細胞を遠心分離した。試薬2が細胞ペレット縣濁の下を流れることができるようにするため管の側面を下へとShandon Cytoblock試薬2を3滴滴下させた。試料を10分間インキュベートし、その後、70%のエタノール5mlを加えた(ペレットはエタノールの上面まで浮動した)。最終的に、3000rpmで2分間試料を回転させ、その後生検カセットに移し、パラフィン包埋用に処理した。
【0076】
IHC及びインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)に対する切片の適切性を確認するため、ヘマトキシリン及びエオシン(「H&E」)染色を精査した(図3)。H&E染色には、キシレン、100%のエタノール及び95%のエタノール中での脱パラフィン工程、その後の水中浸漬工程などの工程を含んでいた。3分間ヘマトキシリン中にスライドを浸漬し、水中で洗い流し、1分間青色染色試薬中に浸漬し、水中で洗い流し、エオシン中に浸し、最終的にカバースリップを加えた。
【0077】
免疫検定には、抗原脱マスキング工程、及び関連する一次及び二次抗体でのインキュベーションに後続する検出工程を含んでいた。負の対照として、Bench Mark XT(登録商標)又はDiscovery XT(登録商標)Diluent(Ventana)のいずれかを、関連するスライドと共にインキュベートした。DABMapTM、OmniMapTM(Discovery XT(登録商標))、又はiViewTMDAB(BenchMark XT(登録商標))検出キットを用いて、メーカーの取扱説明書に従って、一次抗体を検出した。簡単に述べると、iVIEWTMDAB検出キットは、パラフィン包埋した又は凍結させた組織切片内で抗原に結合した特異的マウスIgG、IgM及びウサギIgG抗体を検出した。該特異的抗体は、ビオチン接合体二次抗体により位置特定された。この工程の後には、二次抗体上に存在するビオチンを結合させたストレプトアビジン−酵素接合体の添加が続いた。その後該錯体を、沈殿発色酵素製品を用いて視覚化した。
【0078】
各インキュベーション工程の終りでは、自動スライド染色装置が切片を洗浄して未結合材料を除去し、スライドからの水性試薬の蒸発を最小限におさえる液体カバースリップを適用した。結果は光学顕微鏡を用いて解釈され、特定の抗原と結びつけられていてもいなくてもよい病態生理学的プロセスの示差的診断を補助した。
【0079】
具体的例として、pMEKの検出は以下の方法で達成された。すなわち、病理学者により、組織については腫瘍の存在を又細胞系及び組織については細胞生存能力を確認するべく、H&Eが精査された。一次抗体pMEKは、Cell Signaling Technology、Inc.(「CST」)(Danvers、MA)から得られた。
【0080】
pMEKIHC検定のために、100℃で60分間CC1条件緩衝液を用いてVentana Benchmark(登録商標)シリーズの計器上で細胞条件づけを行った。ここでCC1は高pHの細胞培養条件溶液、すなわちpH8のトリス/ホウ酸塩/EDTA緩衝液(Ventana)である。スライドを、室温で1時間、一次pMEK抗体(表1)の原液濃度の1/40希釈物と共にインキュベートした。原液抗体濃度は、抗体の市販濃度を意味する。この情報は一部のメーカーからは入手できず、適切な希釈は実験的に決定される。負の対照としては、メーカー(Vector Laboratories、Burlingame、CA)の取扱説明書に従って使用されるVentana抗体希釈剤を、同じ条件下で、関係するスライドと共にインキュベートした。Vectorビオチニル化抗ウサギIgGで置き換えた汎用二次抗体を除いて、Ventana iView DAB検出キットをメーカーの取扱説明書に従って使用し、37℃で32分適用して、pMEK抗体を検出した。pMEKの酵素検出/局在化は、ストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ接合体(Ventana)とその後に続く、メーカーの取扱説明書及び使用されたキットに従ったジアミノベンチジン(「DAB」)及び硫酸銅の存在下での過酸化水素との反応を用いて達成された(表1参照)。接合体と全ての発色試薬は、Vectorビオチニル化二次ウサギ抗体を除いて、同様にiView検出キットの構成要素であり、メーカーが推奨する時点で適用された。
【0081】
結腸直腸進行組織マイクロアレイ(TMA;CHTN2003CRProg)は、Cooperative Human Tissne Network(CHTN)から得た。該アレイの詳細は図4中に示され、表2中に要約されている。簡単に言うと、このホルマリン固定及びパラフィン包埋された(「FFPE」)結腸直腸癌進行アレイは、ドナーから試料を収集することによって作製された。このTMAは、示差的遺伝子発現における強い傾向を検出し得る少数の症例を表している。未染色組織学的切片は厚みが4ミクロンであり、荷電ガラススライド上に提供された。CHTN2003CRCProgTMAは、最高20の非腫瘍性結腸粘膜症例、14の腺腫性ポリープ症例、14の原発性結腸直腸腺癌、7の局所リンパ節転移、腺癌症例及び7の遠隔部位転移腺癌症例を含んでいる。各症例は、0.6mmのコアを伴って3回試料採取される。
【0082】
【表2】
【0083】
手作業での評点が、専門委員会認定病理学者により行なわれた。染色強度、反応性細胞の百分率及び細胞局在化が記録された。IHCの病理学者評価については、染色強度の評点は、0(陰性)から3+(最大陽性)までであった。
【0084】
光学画像化には、数値的評点に換算された染色強度(平均光学密度つまりavg.ODで表わされたもの)に基づいた画像定量化を伴うデジタルアプリケーションが用いられた。高解像度の画像が各試料について捕捉され、OD値は、陽性染色細胞についての色範囲の特定的分類子に基づいていた。解析用画像は、40倍対物レンズを用いて捕捉された。一部のケースでは、組合せ評点=(陽性%)×(光学密度評点)という式に従って、陽性細胞の百分率及び染色強度の両方を取込む「組合せ評点」又は乗法的指数が導出された。
【0085】
活性化代用尺度としてptyr活性を用いた組織化学組織評価の結果は、癌及び非癌症例由来の正常な結腸粘膜と比べて、新生組織形成及び炎症性非腫瘍性組織内の発現の増加を示した(図5)。TMA内のEGFR経路分子由来の発現レベルの組織化学評価の結果は、図6−9に示されている。個々の症例におけるEGFR経路分子由来の発現レベルの組織化学評価の結果は、図10に示されている。両方の実験からの結果は、逐次的病期分類カテゴリを通して結腸直腸癌が進行するにつれて、pMEK、Ki67、及びpHER1タンパク質レベルは増大し、EGFR、PTEN及びpAKTタンパク質レベルは減少することを示している(図11)。これらの発見事実は、早期小腺腫におけるEGFR(タンパク質)、PTENの高いレベル及びpMEKの低いレベルそして悪性表現型を含む進行性疾患におけるPTENの低いレベル及びpMEKの高いレベルを含めた、結腸直腸腫瘍の進行の診断及び追跡において有用であり得るバイオマーカープロファイルを同定している。
【0086】
実施例2
インサイチュハイブリダイゼーションを用いたEGFR遺伝子コピー数と結腸直腸癌腫瘍病期分類の相関性
EGFRについての螢光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を、個々の症例からの単一スライド切片及び多重組織アレイについて実施し、結腸直腸癌の進行における遺伝子の状態を評価した。
【0087】
2色FISHを用いて、細胞1個あたりのEGFR遺伝子コピー数を、ホルマリン固定されパラフィン包埋された(FFPE)単一スライド切片内及び多重組織アレイ内で評価した(図12)。単一スライド切片及び多重組織アレイの詳細は、実施例1で概略的に説明されている。
【0088】
EGFR遺伝子のインサイチュハイブリダイゼーション検出は、Ventana(Spectrum Orangeラベル付き)、Invitrogen(SPOTLightTM−EGFR、DIGラベル付き)、又はVysis(Spectrum Orange EGFR及びSpectrum Green CEP7ラベル付きプローブ)からのいずれかのプローブを用いて行なわれた。Ventana及びZymedからのEGFRプローブをVentana Discovery(登録商標)XT上の完全自動化プロトコルを用いて検出した。Vysisプローブの検出は、半自動化されており、プローブハイブリダイゼーションはメーカー(Vysis、Downers Grove、IL)の説明通りオフラインで行なわれた。FISHプロトコルは、メーカーの添付文書(Vysis、カタログ番号32−191053)に従って実施された。FISH評価は、Hirschら、JCO、第21号:3798〜3807頁中の記述通りに行われた。図12は、安定な二染色体性、安定な三染色体性、安定な多染色体性及び遺伝子増幅を標示する代表的な顕微鏡写真を示す。
【0089】
細胞1個あたりの遺伝子コピー平均数は、病理学精査によりEGFR及びCEP7について決定された。個々の症例及びTMAにおけるEGFRFISH検定の結果は、EGFR遺伝子状態が、表3に示されているように小腺腫から腺癌まで、安定な二染色体性(正常)から安定な三染色体性/多染色体性(異常)へと進化すること(表13)を実証している。高いEGFR遺伝子コピーレベル(三染色体+)をもつ試料は全て、IHCにより検定されるように高いタンパク質レベルをもつ無集団(3+、>50%)を有していた(実施例1)。実施例1及び2の発見事実は同様に、早期癌病期における遺伝子増幅(正常)をタンパク質発現(高)のレベル不一致をも示唆している。
【0090】
【表3】
【0091】
実施例3
腫瘍内部のEGFR経路分子の発現レベルの不均質性
EGFR経路分子の発現レベルは、単一の腫瘍内のこれらの分子の発現レベルの考えられる不均質性を評価するべく、結腸直腸癌の事例研究において評価された。
【0092】
直腸出血及び腹部疝痛を呈する41才の男性が3cmの直腸塊の診断を受けた。放射線治療後の遠隔結腸切除は、病期T3の高分化型直腸腺癌を明らかにした。実施例1で記述した通りに、腫瘍のさまざまな領域から単一のスライド切片を調製した。実施例1で記述した通り、EGFR、HER−2、pAKT、Ki67、Survivin及びVEGFについての発現レベルを判定するためにIHCを実施した。室温で2時間インキュベートすることにより、Novusからの抗体(NB500−201)を用いてSurvivanを検出した。室温で1時間内含することにより、Santa Cruzからの抗体(SC−7269)を用いてVEGFを検出した。
【0093】
図14−19は、同じ腫瘍内で、腫瘍バイオマーカーの発現レベルが著しく変動し得ることを示している。これらの結果は、特定の腫瘍の個々の発現形跡に合わせて調整された個別組合せ療法から患者が恩恵を享受し得るということを実証している。
【0094】
以上の開示は本発明のいくつかの特定的実施形態を強調していることそしてそれと等価のすべての修正又は変形形態が、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神及び範囲の中に入るものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】EGFR経路の概略図である。
【図2】結腸直腸癌(colorectal colon)の進行の概略図である。
【図3】CHTN結腸直腸癌進行についての代表的なヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色の顕微鏡写真である。図3Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫の代表的H&E染色である。図3Bは、最大寸法で2cm超の腺腫の代表的H&E染色である。図3Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料の代表的H&E染色である。図3Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料の代表的H&E染色である。図3Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌の代表的H&E染色である。図3Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌の代表的H&E染色である。
【図4】Cooperative Human Tissue Network (CHTN)から得た結腸直腸進行組織マイクロアレイ(TMA:CHTN2003CRCProg)に対するマップを表わす。
【図5】組織化学的組織評価の結果を表わす;IHCにより検定された通りの結腸直腸組織試料内のptyr発現が、平均陽性百分率単位で表わされている。
【図6】結腸直腸癌の進行についての代表的EGFR発現レベルの顕微鏡写真である。図6Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫のEGFR染色の代表的画像である(C10)。試料は、100%の陽性百分率の細胞質/膜染色で3+の評点を有する。図6Bは、最大寸法で2cm超の腺腫のEGFR染色の代表的画像である(F5);試料は、100%の陽性百分率の細胞質/膜染色で3+の評点を有する。図6Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料のEGFG染色の代表的画像である(E4);試料は、100%の陽性百分率の細胞質/膜染色で3+の評点を有する。図6Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料のEGFR染色の代表的画像である(H10);試料は、90%の陽性百分率の細胞質/膜染色で3+の評点を有する。図6Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌のEGFR染色の代表的画像である(J20);試料は、85%の陽性百分率の細胞質/膜染色で2+の評点を有する。図6Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌のEGFR染色の代表的画像である(B13);試料は、1%の陽性百分率の膜染色で1+の評点を有する。
【図7】結腸直腸癌の進行についての代表的PTEN発現レベルの顕微鏡写真である。図7Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫のPTEN染色の代表的画像である(C4)。試料は、80%の陽性百分率の細胞質染色で3+の評点を有する。図7Bは、最大寸法で2cm超の腺腫のPTEN染色の代表的画像である(F3);試料は、75%の陽性百分率の細胞質染色で1+の評点を有する。図7Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料のPTEN染色の代表的画像である(E2);試料は、80%の陽性百分率の細胞質染色で2+の評点を有する。図7Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料のPTEN染色の代表的画像である(H4);試料は、40%の陽性百分率の細胞質染色で1+の評点を有する。図7Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌のPTEN染色の代表的画像である(J18);試料は、陰性であった。図7Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌のPTEN染色の代表的画像である(B7);試料は、陰性であった。
【図8】結腸直腸癌の進行についての代表的pMEK発現レベルの顕微鏡写真である。図8Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫のpMEK染色の代表的画像である(C4)。試料は、10%の陽性百分率の細胞質/膜染色で1+の評点を有する。図8Bは、最大寸法で2cm超の腺腫のpMEK染色の代表的画像である(F3);試料は、70%の陽性百分率の細胞質染色で1+の評点を有する。図8Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料のpMEK染色の代表的画像である(E2);試料は、80%の陽性百分率の細胞質染色で1+、および10%の陽性百分率の核染色で1+の評点を有する。図8Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料のpMEK染色の代表的画像である(H4);試料は、100%の陽性百分率の細胞質染色で2+の、および5%の陽性百分率の核染色で2+の評点を有する。図8Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌のpMEK染色の代表的画像である(J18);試料は、100%の陽性百分率の細胞質染色で3+の評点を有する。図8Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌のpMEK染色の代表的画像である(B7);試料は、100%の陽性百分率の細胞質染色で2+の、および15%の陽性百分率の核染色で3+の評点を有する。
【図9】結腸直腸癌の進行についての代表的Ki67発現レベルの顕微鏡写真である。図9Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫のKi67染色の代表的画像である(C4)。試料は、10%の陽性百分率の核染色で2+の評点を有する。図9Bは、最大寸法で2cm超の腺腫のKi67染色の代表的画像である(F3);試料は、25%の陽性百分率の核染色で2+の評点を有する。図9Cは、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料のKi67染色の代表的画像である(E2);試料は、85%の陽性百分率の核染色で2+の評点を有する。図9Dは、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料のKi67染色の代表的画像である(H4);試料は、40%の陽性百分率の核染色で2+の、および15%の陽性百分率の核染色で3+の評点を有する。図9Eは、リンパ節転移である結腸直腸腺癌のKi67染色の代表的画像である(J10);試料は、45%の陽性百分率の核染色で3+の評点を有する。図9Fは、遠隔部位転移である結腸直腸腺癌のKi67染色の代表的画像である(B7);試料は、70%の陽性百分率の細胞質染色で2+の評点を有する。
【図10】単一の個体の症例(男性、71才)からの結腸直腸癌の進行のバイオマーカー発現レベルの代表的な顕微鏡写真である。図10Aは、最大寸法で2cm未満の腺腫;最大寸法で2cm超の腺腫、原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍;及びリンパ節転移である結腸直腸腺癌の代表的な免疫組織化学的(IHC)画像である。EGFR、pHER1、PTEN、pAKT、pMEK、及びKi67に対する反応性をもつ抗体が使用された。図10Bは、コンピューター援用画像解析の結果(A)、及び病理学評点(B)の両方を用いて、グラフ形態で結果を示している。
【図11】画像解析を用いて判定されるような結腸直腸癌の進行中のEGFR発現経路内のバイオマーカー評価の要約を表わしている。該結果は、平均評点の変化%として示されている。
【図12】上皮成長因子受容体(EGFR、赤色);染色体7(CEP7、緑色)についてのプローブを用いた2色螢光インサイチュハイブリダイゼーション検定の顕微鏡写真である。図12Aは、安定な二染色体性を示し、図12Bは安定な三染色体性を示し、図12Cは安定な多染色体性を示し、図12Dは遺伝子増幅を示す。
【図13】結腸直腸癌の進行におけるEGFR FISH遺伝子検出の顕微鏡写真である。図13Aは、安定な二染色体性である最大寸法が2cm未満の腺腫の代表的EGFR FISH遺伝子検出である。図13Bは、安定な二染色体性である、最大寸法で2cm超の腺腫の代表的なEGFR FISH遺伝子検出である。図13Cは、安定な二染色体性である、原発性侵襲性病理学的病期T1又はT2の腫瘍試料の代表的なEGFR FISH遺伝子検出である。図13Dは、安定な多染色体性である原発性侵襲性病理学的病期T3又はT4の腫瘍試料の代表的EGFR FISH遺伝子検出である。図13Eは、安定な多三染色体である、リンパ節転移である結腸直腸腺癌の代表的なEGFR FISH遺伝子検出である。図13Fは、遺伝子増幅二染色体性を示す遠隔部位転移である結腸直腸腺癌の代表的EGFR FISH遺伝子検出である。
【図14】結腸直腸癌におけるEGFR発現レベルの顕微鏡写真である。図14Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図14Bは、2つの領域についてのEGFR組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図15】結腸直腸癌におけるHER2発現レベルの顕微鏡写真である。図15Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図15Bは、2つの領域についてのHER2組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図16】結腸直腸癌におけるpAKT発現レベルの顕微鏡写真である。図16Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図16Bは、2つの領域についてのpAKT組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図17】結腸直腸癌におけるKi67発現レベルの顕微鏡写真である。図17Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図17Bは、2つの領域についてのKi67組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図18】結腸直腸癌におけるSurvivin発現レベルの顕微鏡写真である。図18Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図18Bは、2つの領域についてのSurvivin組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図19】結腸直腸癌におけるVEGF発現レベルの顕微鏡写真である。図19Aは、20×の走査パスでの2つの領域(領域1及び領域2)を示し、図19Bは、2つの領域についてのVEGF組合せ評点(ARIOL)の結果を示す。
【図20】銀インサイチュハイブリダイゼーションの概略図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体内での結腸直腸癌の進行を評価するための方法であって、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために前記個体から得た組織又は細胞試料を検定する工程を含み、前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK、又はKi67であり、前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、結腸直腸進行の診断にとって特徴的である組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンと実質的に類似している方法。
【請求項2】
個体内での結腸直腸癌の進行を評価するための方法であって、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために前記個体から得た組織又は細胞試料を検定する工程を含み、前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK、又はKi67であり、前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、第2の組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンと異なっている方法。
【請求項3】
前記第2の組織又は細胞試料が非結腸直腸癌組織又は細胞試料である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の組織又は細胞試料が進行初期段階の結腸直腸組織又は細胞試料である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
進行初期段階の前記結腸直腸組織又は細胞試料が前記個体から得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記個体から得られた組織又は細胞試料が、2つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために検定され、前記2つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、結腸直腸における進行の既知の診断にとって特徴的である組織又は細胞試料由来の前記2つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンに実質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pMEK、Ki67及びpHER1である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
標識された核酸ベースのプロープを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配列を測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
小腺腫期での個体内の結腸直腸癌の進行を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が2つの試料中において実質的に類似している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記個体から得た前記組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、非腫瘍組織又は細胞試料内で発現、リン酸化又は発現およびリン酸化されるものよりも高いEGFRの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方、それよりも高いPTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方、それよりも低いpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記個体から得た前記組織又は細胞試料内の前記増幅、欠失又は再配置の度合が安定な二染色体性である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、小腺腫に特徴的な組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンに実質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
腺癌期での個体内の結腸直腸癌の進行を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記個体から得た前記組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、小腺腫組織又は細胞試料内で発現、リン酸化又は発現かつリン酸化されるものよりも低いPTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方、又はそれよりも大きいpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記個体から得た前記組織又は細胞試料内の前記増幅、欠失又は再配置の度合が安定な二染色体性及び安定な三染色体性である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、腺癌に特徴的な組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンに実質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
悪性腺癌期での個体内の結腸直腸癌の進行を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記個体から得た前記組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、小腺腫組織又は細胞試料内で発現、リン酸化又は発現かつリン酸化されるものよりも低いPTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方、又はそれよりも大きいpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が含まれ、かつ標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記個体から得た前記組織又は細胞試料の遺伝子形態が安定な二染色体性及び安定な多染色体性である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記個体から得た前記組織又は細胞試料の前記増幅の度合が安定な二染色体性及び安定な多染色体性である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、悪性腺癌に特徴的な組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンに実質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記検定する工程が、標識された特異的結合試薬を用いた染色後の組織切片のコンピューター援用画像解析を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
化学療法薬に対する応答性をもつ結腸直腸癌腫瘍を同定する方法において、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するべく前記結腸直腸癌腫瘍から得た組織又は細胞試料を検定する工程を含む方法であって、前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67であり、前記生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方によって、哺乳動物の腫瘍が化学療法薬で治療可能であるものとして同定される方法。
【請求項29】
前記化学療法薬がEGFR抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記化学療法薬がキナーゼ阻害物質である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記化学療法薬がEGFR抗体及びキナーゼ阻害物質の両方である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
2つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために、前記個体から得た組織又は細胞試料を検定することから成る、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するための少なくとも2つの試薬を含み、前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67である、個体内の結腸直腸癌の進行を評価するためのキット。
【請求項34】
前記1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するための少なくとも3つの試薬を含む、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記生物学的マーカーがEGFR、pHER1、PTEN、pMEK、pERK又はKi67である、請求項33に記載のキット。
【請求項36】
前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN又はpMEKである、請求項33に記載のキット。
【請求項37】
前記生物学的マーカーがPTEN及びpMEKである、請求項33に記載のキット。
【請求項38】
EGFR遺伝子増幅、欠失又は再配置の検出のための試薬をさらに含む、請求項33に記載のキット。
【請求項39】
前記生物学的マーカーがEGFR、pHER1、PTEN、pMEK、pERK、又はKi67である、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN又はpMEKである請求項38に記載のキット。
【請求項41】
前記生物学的マーカーがPTEN及びpMEKである、請求項38に記載のキット。
【請求項1】
個体内での結腸直腸癌の進行を評価するための方法であって、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために前記個体から得た組織又は細胞試料を検定する工程を含み、前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK、又はKi67であり、前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、結腸直腸進行の診断にとって特徴的である組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンと実質的に類似している方法。
【請求項2】
個体内での結腸直腸癌の進行を評価するための方法であって、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために前記個体から得た組織又は細胞試料を検定する工程を含み、前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK、又はKi67であり、前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、第2の組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンと異なっている方法。
【請求項3】
前記第2の組織又は細胞試料が非結腸直腸癌組織又は細胞試料である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の組織又は細胞試料が進行初期段階の結腸直腸組織又は細胞試料である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
進行初期段階の前記結腸直腸組織又は細胞試料が前記個体から得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記個体から得られた組織又は細胞試料が、2つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために検定され、前記2つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、結腸直腸における進行の既知の診断にとって特徴的である組織又は細胞試料由来の前記2つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンに実質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pMEK、Ki67及びpHER1である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
標識された核酸ベースのプロープを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配列を測定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
小腺腫期での個体内の結腸直腸癌の進行を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が2つの試料中において実質的に類似している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記個体から得た前記組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、非腫瘍組織又は細胞試料内で発現、リン酸化又は発現およびリン酸化されるものよりも高いEGFRの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方、それよりも高いPTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方、それよりも低いpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記個体から得た前記組織又は細胞試料内の前記増幅、欠失又は再配置の度合が安定な二染色体性である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、小腺腫に特徴的な組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンに実質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
腺癌期での個体内の結腸直腸癌の進行を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記個体から得た前記組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、小腺腫組織又は細胞試料内で発現、リン酸化又は発現かつリン酸化されるものよりも低いPTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方、又はそれよりも大きいpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記個体から得た前記組織又は細胞試料内の前記増幅、欠失又は再配置の度合が安定な二染色体性及び安定な三染色体性である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、腺癌に特徴的な組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンに実質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
悪性腺癌期での個体内の結腸直腸癌の進行を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記個体から得た前記組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、小腺腫組織又は細胞試料内で発現、リン酸化又は発現かつリン酸化されるものよりも低いPTENの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方、又はそれよりも大きいpMEKの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方が含まれ、かつ標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記個体から得た前記組織又は細胞試料の遺伝子形態が安定な二染色体性及び安定な多染色体性である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記個体から得た前記組織又は細胞試料の前記増幅の度合が安定な二染色体性及び安定な多染色体性である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンが、悪性腺癌に特徴的な組織又は細胞試料由来の前記1つ以上の生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンに実質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
標識された核酸ベースのプローブを用いてEGFRをコードするゲノムDNAの増幅、欠失又は再配置を測定する前記工程をさらに含み、前記増幅、欠失又は再配置の度合が前記2つの試料において実質的に類似している、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記検定する工程が、標識された特異的結合試薬を用いた染色後の組織切片のコンピューター援用画像解析を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
化学療法薬に対する応答性をもつ結腸直腸癌腫瘍を同定する方法において、1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するべく前記結腸直腸癌腫瘍から得た組織又は細胞試料を検定する工程を含む方法であって、前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67であり、前記生物学的マーカーの前記発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方によって、哺乳動物の腫瘍が化学療法薬で治療可能であるものとして同定される方法。
【請求項29】
前記化学療法薬がEGFR抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記化学療法薬がキナーゼ阻害物質である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記化学療法薬がEGFR抗体及びキナーゼ阻害物質の両方である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
2つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方のパターンを検出するために、前記個体から得た組織又は細胞試料を検定することから成る、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するための少なくとも2つの試薬を含み、前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN、pAKT、pMEK、pHER1、pERK又はKi67である、個体内の結腸直腸癌の進行を評価するためのキット。
【請求項34】
前記1つ以上の生物学的マーカーの発現、リン酸化又は発現およびリン酸化の両方を検出するための少なくとも3つの試薬を含む、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記生物学的マーカーがEGFR、pHER1、PTEN、pMEK、pERK又はKi67である、請求項33に記載のキット。
【請求項36】
前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN又はpMEKである、請求項33に記載のキット。
【請求項37】
前記生物学的マーカーがPTEN及びpMEKである、請求項33に記載のキット。
【請求項38】
EGFR遺伝子増幅、欠失又は再配置の検出のための試薬をさらに含む、請求項33に記載のキット。
【請求項39】
前記生物学的マーカーがEGFR、pHER1、PTEN、pMEK、pERK、又はKi67である、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記生物学的マーカーがEGFR、PTEN又はpMEKである請求項38に記載のキット。
【請求項41】
前記生物学的マーカーがPTEN及びpMEKである、請求項38に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B−1】
【図10B−2】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B−1】
【図10B−2】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−527740(P2009−527740A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555532(P2008−555532)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/062362
【国際公開番号】WO2007/095644
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/062362
【国際公開番号】WO2007/095644
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】
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