説明

癌の検出および診断のための抗cMet抗体およびその使用

本発明は、患者における増殖性疾患の予後および/または診断の分野に関する。より詳しくは、本発明は、ヒトcMet受容体と特異的に結合することができる抗体、ならびにこの抗体をコードするアミノ酸配列および核酸配列に関する。本発明は同様に、cMetの発現に関連する病的過増殖性腫瘍形成性障害を検出および診断するための該抗体の使用、および対応する方法を含んでなる。特定の実施形態では、障害は、正常またはcMetの過剰発現と関係する他の任意の病態に比べて高いcMetポリペプチド発現に関連する腫瘍形成性障害である。本発明は最後に、ある種の癌の予後または診断のための、少なくともこのような抗体を含んでなる生成物および/または組成物またはキットを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、患者における増殖性疾患の予後および/または診断の分野に関する。より詳しくは、本発明は、ヒトcMet受容体と特異的に結合することができる新規な抗体、ならびにこの抗体をコードするアミノ酸配列および核酸配列に関する。本発明は同様に、cMetの発現に関連する病的過増殖性腫瘍形成性障害を検出および診断するための該抗体の使用、および対応する方法を含んでなる。特定の実施形態では、障害は、正常またはcMetの過剰発現と関係する他の任意の病態に比べて高いcMetポリペプチド発現に関連する腫瘍形成性障害である。本発明は最後に、ある種の癌の予後または診断のための、少なくともこのような抗体を含んでなる生成物および/または組成物またはキットを含んでなる。
【0002】
トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イマチニブおよびゲフィチニブ阻害剤などの受容体チロシンキナーゼ(RTK)標的薬は、選択された癌の処置のためにこのタンパク質種を標的化することの重要性を示している。
【0003】
cMetはRTKサブファミリーの基本型メンバーであり、これにはまたRONおよびSEAも含まれる。cMet RTKファミリーは他のRTKファミリーとは構造的に異なり、分散因子(SF)としても知られる肝細胞増殖因子(HGF)に対する、唯一知られている高親和性受容体である[D.P. Bottaro et al., Science 1991, 251: 802-804; L. Naldini et al., Eur. Mol. Biol. Org. J. 1991, 10:2867-2878]。cMetおよびHGFは種々の組織で広く発現し、それらの発現は通常それぞれ上皮起源および間葉起源の細胞に限定されている[M. F. Di Renzo et al., Oncogene 1991, 6:1997-2003; E. Sonnenberg et al., J. Cell. Biol. 1993, 123:223-235]。それらは双方とも正常な哺乳類の発生に必要であり、細胞の遊走、形態形成分化および三次元管構造の組織化、ならびに成長および脈管形成に特に重要であることが示されている[F. Baldt et al., Nature 1995, 376:768-771; C. Schmidt et al., Nature. 1995:373:699-702; Tsarfaty et al., Science 1994, 263:98-101]。cMetおよびHGFの制御された調節が哺乳類の発生、組織の維持および修復に重要であることが示されている[Nagayama T, Nagayama M, Kohara S, Kamiguchi H, Shibuya M, Katoh Y, Itoh J, Shinohara Y., Brain Res. 2004, 5;999(2): 155-66; Tahara Y, Ido A, Yamamoto S, Miyata Y, Uto H, Hori T, Hayashi K, Tsubouchi H., J Pharmacol Exp Ther. 2003, 307(1): 146-51]とともに、それらの調節不全が癌の進行に関連づけられている。
【0004】
cMetの不適切な活性化により引き起こされる異常なシグナル伝達はヒトの癌に最も頻繁に見られる変化の1つであり、腫瘍形成および転移に重要な役割を果たしている[Birchmeier et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2003, 4:915-925; L. Trusolino and Comoglio P. M., Nat Rev. Cancer. 2002, 2(4):289-300]。
【0005】
不適切なcMetの活性化は、cMetの過剰発現を含むリガンド依存的および非依存的機構、および/またはパラ分泌または自己分泌の活性化、または機能的突然変異における増分により起こり得る[J.G. Christensen, Burrows J. and Salgia R., Cancer Latters. 2005, 226:1-26]。しかしながら、ATPおよびチロシン含有ペプチド基質に対するキナーゼの結合親和性および結合速度を調節するには、リガンドの存在下または不在下でのcMet受容体のオリゴマー化が必要である[Hays JL, Watowich SJ, Biochemistry, 2004 Aug 17, 43:10570-8]。活性化されたcMetは、細胞質ドメインに位置するそのマルチドッキング部位(multidocking site)にシグナル伝達エフェクターを動員し、その結果、Ras−MAPK、PI3K、SrcおよびStat3を含むいくつかの重要なシグナル伝達経路が活性化される[Gao CF, Vande Woude GF, Cell Res. 2005, 15(1):49-51; Furge KA, Zhang YW, Vande Woude GF, Oncogene. 2000, 19(49):5582-9]。これらの経路は腫瘍細胞の増殖、浸潤および脈管形成に、また、アポトーシスの回避に不可欠である[Furge KA, Zhang YW, Vande Woude GF, Oncogene, 2000, 19(49):5582-9; Gu H, Neel BG, Trends Cell Biol. 2003 Mar, 13(3): 122-30; Fan S, Ma YX, Wang JA, Yuan RQ, Meng Q, Cao Y, Laterra JJ, Goldberg ID, Rosen EM, Oncogene. 2000 Apr 27, 19(18):2212-23]。さらに、他のRTKに比べてcMetシグナル伝達のユニークな一面は、その報告されている、焦点接着複合体(focal adhesion complexes)およびα6β4インテグリン[Trusolino L, Bertotti A, Comoglio PM, Cell. 2001, 107:643-54]、CD44v6[Van der Voort R, Taher TE, Wielenga VJ, Spaargaren M, Prevo R, Smit L, David G, Hartmann G, Gherardi E, Pals ST, J Biol Chem. 1999, 274(10):6499-506]、プレキシンB1またはセマフォリン[Giordano S, Corso S, Conrotto P, Artigiani S, Gilestro G, Barberis D, Tamagnone L, Comoglio PM, Nat Cell Biol. 2002, 4(9):720-4; Conrotto P, Valdembri D, Corso S, Serini G, Tamagnone L, Comoglio PM, Bussolino F, Giordano S, Blood. 2005, 105(11):4321-9; Conrotto P, Corso S, Gamberini S, Comoglio PM, Giordano S, Oncogene. 2004, 23:5131-7]などの非キナーゼ結合相手との相互作用であり、これらがこの受容体による細胞機能の調節の複雑性にさらに加わる。最後に、最近のデータは、cMetが腫瘍のゲフィチニブまたはエルロチニブ耐性に関与している可能性があることを示し、EGFRとcMetの双方を標的とする化合物の組合せが極めて重要となり得ることを示唆している[Engelman JA at al., Science, 2007, 316:1039-43]。
【0006】
ここ数年で、癌細胞系統においてcMetのシグナル伝達を減弱するために多くの異なる戦略が開発されてきた。これらの戦略は、i)cMetまたはHGF/SFに対する抗体の中和[Cao B, Su Y, Oskarsson M, Zhao P, Kort EJ, Fisher RJ, Wang LM, Vande Woude GF, Proc Natl Acad Sci U S A. 2001, 98(13):7443-8; Martens T, Schmidt NO, Eckerich C, Fillbrandt R, Merchant M, Schwall R, Westphal M, Lamszus K, Clin Cancer Res. 2006, 12(20):6144-52]またはcMetへのリガンドの結合を防ぐためのHGF/SFアンタゴニストNK4の使用[Kuba K, Matsumoto K, Date K, Shimura H, Tanaka M, Nakamura T, Cancer Res., 2000, 60:6737-43]、ii)キナーゼ活性を遮断するcMetに対する小ATP結合部位阻害剤[Christensen JG, Schreck R, Burrows J, Kuruganti P, Chan E, Le P, Chen J, Wang X, Ruslim L, Blake R, Lipson KE, Ramphal J, Do S, Cui JJ, Cherrington JM, Mendel DB, Cancer Res. 2003, 63:7345-55]、iii)マルチドッキング部位への接近を妨げる、操作されたSH2ドメインポリペプチドおよび受容体またはリガンドの発現を低下させるRNAiまたはリボザイムを含む。これらのアプローチのほとんどは、腫瘍阻害をもたらすcMetの選択的阻害を示し、cMetが癌における治療的介入に重要となり得ることを示す。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、腫瘍形成性障害、特に、cMetの発現を特徴とするもの、または異常なcMet発現によって媒介されるものを検出および/またはモニタリングするための診断または予後バイオマーカーとして使用することができる少なくとも1つの試薬を提供することを目的とする。
【0008】
診断または予後ツールとして使用することができる価値ある抗体を開発する試みはこれまでに報告されていない。本明細書には、この基準を満たす新規な抗体が記載される。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明および実施例から明らかになる。
【0010】
第一の態様において、本発明の対象は、cMet受容体(cMet)、好ましくは、ヒトcMetと高い親和性で結合し、よって、cMet発現によって媒介される病的過増殖性腫瘍形成性障害を診断する方法において有用である、単離された抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体である。
【0011】
「機能的フラグメントおよび/または誘導体」とは、本明細書の以降で詳細に定義する。
【0012】
ここで、本発明は天然型の抗体に関連するものではなく、すなわち、それらはそれらの天然環境になく、天然源から精製により単離または取得することができた、あるいはまた遺伝子組換えによって、もしくは化学合成によって取得することができたものであり、従って、さらに記載されているように、非天然アミノ酸を含み得るものと理解されるべきである。
【0013】
より詳しくは、本発明の別の態様によれば、cMetと特異的に結合することができる単離された抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つに向けられ、該抗体は、配列番号1〜12もしくは29〜39のアミノ酸配列を含んでなるCDR、またはその配列が最適なアライメントの後に配列1〜12もしくは29〜39と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1つのCDRから選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含んでなることを特徴とする。
【0014】
抗体の「機能的フラグメント」とは、特に、Fv、scFv(scは、単鎖を表す)、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv−Fcフラグメントもしくはダイアボディー、または半減期が延長されているフラグメントなどの抗体フラグメントを意味する。このような機能的フラグメントは、本明細書の以降で詳細に記載する。
【0015】
抗体の「誘導化合物」または「誘導体」とは、特に、ペプチドスキャフォールドからなる結合タンパク質と、その被認識能を維持するために元の抗体の少なくとも1つのCDRから構成される結合タンパク質を意味する。このような誘導化合物は当業者によく知られており、本明細書の以降でより詳しく記載する。
【0016】
より好ましくは、本発明は、遺伝子組換または化学合成によって得られた、本発明による抗体、それらの誘導化合物またはそれらの機能的フラグメントを含んでなる。
【0017】
好ましい実施形態によれば、本発明による抗体またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、モノクローナル抗体からなることを特徴とする。
【0018】
「モノクローナル抗体」とは、ほぼ均質な抗体集団から得られる抗体を意味するものと理解される。より詳しくは、集団の個々の抗体は、最小の割合で見られる自然に起こるわずかな潜在的突然変異以外は同じである。言い換えれば、モノクローナル抗体は、単一細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた真核生物宿主細胞、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた原核生物宿主細胞など)の増殖から得られ、一般に、1つの単一のクラスおよびサブクラスの重鎖と単一のタイプの軽鎖を特徴とする均質な抗体からなる。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原に向けられる。さらに、一般に種々の決定基またはエピトープに対する種々の抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原の単一のエピトープに向けられる。
【0019】
ここで、本発明は天然型の抗体に関するものではなく、すなわち、それらはそれらの天然環境から採取されたものではなく、天然源から精製により単離または取得することができた、あるいは遺伝子組換えまたは化学合成によって取得することができたものであり、従って、以下に記載されるように、非天然アミノ酸を含み得るものと理解される。
【0020】
本発明の第一および好ましい実施形態では、抗体のCDRはIMGTナンバリング体系に従って定義される。
【0021】
IMGT独自ナンバリングは、抗原受容体、鎖型または種が何であれ、可変ドメインを比較するために定義された[Lefranc M. -P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999) / Lefranc, M.-P., Pommie, C, Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol, 27, 55-77 (2003)]。このIMGT独自ナンバリングでは、保存されているアミノ酸は常に同じ位置であり、例えば、システイン23(1st−CYS)、トリプトファン41(CONSERVED−TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd−CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J−PHEまたはJ−TRP)などである。IMGT独自ナンバリングは、フレームワーク領域(FR1−IMGT:1〜26番、FR2−IMGT:39〜55番、FR3−IMGT:66〜104番およびFR4−IMGT:118〜128番)および相補性決定領域:CDR1−IMGT:27〜38番、CDR2−IMGT:56〜65番およびCDR3−IMGT:105〜117番の標準境界決定を提供する。ギャップは非占有位置に相当するので、CDR−IMGT長(括弧の中に示され、ドットで区切られる、例えば[8.8.13])は極めて重要な情報となる。IMGT独自ナンバリングは、IMGT Colliers de Perles[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002) / Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]と呼ばれる2Dグラフで、また、IMGT/3Dstructure−DB[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]における3D構造で用いられる。
【0022】
3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDRがある。本明細書においてCDRとは、場合によって、抗体と、その抗体が認識する抗原またはエピトープとの親和性によって結合を担うアミノ酸残基の大部分を含むこれらの領域の1つ、またはいくつか、さらには全部を示すために用いられる。
【0023】
より詳しくは、第一の態様によれば、本発明は、i)IMGTナンバリング体系に従って定義される、次のCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3の少なくとも1つを含んでなる重鎖(ここで、CDR−H1は配列番号55の配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号56の配列を含んでなり、かつ、CDR−H3は配列番号57の配列を含んでなる);および/またはii)IMGTナンバリング体系に従って定義される、次のCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3の少なくとも1つを含んでなる軽鎖(ここで、CDR−L1は配列番号58の配列を含んでなり、CDR−L2は配列番号59の配列を含んでなり、かつ、CDR−L3は配列番号60の配列を含んでなる)を含んでなる、c−Metタンパク質と特異的に結合することができる単離された抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体に関する。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明は、i)少なくとも次の3つのCDR、すなわち、IMGTナンバリング体系に従って定義されるCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号55の配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号56の配列を含んでなり、かつ、CDR−H3は配列番号57の配列を含んでなる)を含んでなる重鎖;および/またはii)少なくとも次の3つのCDR、すなわち、IMGTナンバリング体系に従って定義されるCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号58の配列を含んでなり、CDR−L2は配列番号59の配列を含んでなり、かつ、CDR−L3は配列番号60の配列を含んでなる)を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする、c−Metタンパク質と特異的に結合することができる単離された抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体に関する。
【0025】
明瞭にするために、本発明の配列番号55〜60のコンセンサス配列を下表1にまとめる。
【表1】

ここで、
:SまたはT X:IまたはF X:Aまたは− X:FまたはW
:YまたはP X:DまたはS X:−またはN X:TまたはR
:NまたはT X10:TまたはA X11:DまたはR X12:RまたはV
13:TまたはG X14:FまたはY X15:AまたはL X16:−またはM
17:−またはD X18:Qまたは− X19:RまたはS X20:IまたはS
21:YまたはV X22:NまたはS X23:YまたはD X24:AまたはT
25:SまたはW X26:WまたはN X27:LまたはP
「−」は、「不在」を意味する(この位置でのアミノ酸残基の欠失)
【0026】
特定の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号7の配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号2の配列を含んでなり、かつ、CDR−H3は配列番号8の配列を含んでなる)を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0027】
特定の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号4の配列を含んでなり、CDR−L2は配列番号5の配列を含んでなり、かつ、CDR−L3は配列番号6の配列を含んでなる)を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0028】
特定の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号29の配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号30の配列を含んでなり、かつ、CDR−H3は配列番号31の配列を含んでなる)を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0029】
特定の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号32の配列を含んでなり、CDR−L2は配列番号33の配列を含んでなり、かつ、CDR−L3は配列番号34の配列を含んでなる)を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0030】
言い換えれば、本発明は、また、
a)IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号7の配列を有するCDR−H1、配列番号2の配列を有するCDR−H2、および配列番号8の配列を有するCDR−H3を含んでなる重鎖、および
b)IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号29の配列を有するCDR−H1、配列番号30の配列を有するCDR−H2、および配列番号31の配列を有するCDR−H3を含んでなる重鎖
からなる群から選択される重鎖を含んでなることを特徴とする抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体ということもできる。
【0031】
本発明は、また、
a)IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号4の配列を有するCDR−L1、配列番号5の配列を有するCDR−L2、および配列番号6の配列を有するCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
b)IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号32の配列を有するCDR−L1、配列番号33の配列を有するCDR−L2、および配列番号34の配列を有するCDR−L3を含んでなる軽鎖
からなる群から選択される軽鎖を含んでなることを特徴とする抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体ということもできる。
【0032】
もう1つの実施形態では、相補性決定領域またはCDRとは、Kabat ら (Kabat et al., Sequences of proteins of immunological interest, 5th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, NIH, 1991,および後続版)によって定義される免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域を意味する。3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDRがある。本明細書において「CDR」とは、場合によって、抗体が認識する抗原またはエピトープに対するその抗体の結合親和性を担うアミノ酸残基の大部分を含むこれらの領域の1以上、またはさらには全部を示すために用いられる。
【0033】
別の特定の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、Kabatによって定義される次の3つのCDR、それぞれCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号9の配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号10の配列を含んでなり、かつ、CDR−H3は配列番号3の配列を含んでなる)を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0034】
別の特定の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、Kabatによって定義される次の3つのCDR、それぞれCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号11の配列を含んでなり、CDR−L2は配列番号12の配列を含んでなり、かつ、CDR−L3は配列番号6の配列を含んでなる)を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0035】
別の特定の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、Kabatナンバリング体系によって定義される次の3つのCDR、それぞれCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号35の配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号36の配列を含んでなり、かつ、CDR−H3は配列番号37の配列を含んでなる)を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0036】
別の特定の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、Kabatナンバリング体系によって定義される次の3つのCDR、それぞれCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号38の配列を含んでなり、CDR−L2は配列番号39の配列を含んでなり、かつ、CDR−L3は配列番号34の配列を含んでなる)を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0037】
本発明による抗体のCDRを定義する別法は、IMGTとKabatに従って各CDRの共通残基を決定することからなることができる。
別の実施形態によれば、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、配列番号1、2もしくは3の配列の3つのCDRのうち少なくとも1つ、または最適なアライメントの後に配列番号1、2もしくは3の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0038】
より詳しくは、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、配列番号4、5もしくは6の配列の3つのCDRのうち少なくとも1つ、または最適なアライメントの後に配列番号4、5もしくは6と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0039】
好ましい様式では、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、次の3つのCDR、それぞれCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、
CDR−H1は、配列番号1、7、9、29もしくは35の配列、または最適なアライメントの後に配列番号1、7、9、29もしくは35の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなり、
CDR−H2は、配列番号2、10、30もしくは36の配列、または最適なアライメントの後に配列番号2、10、30もしくは36の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなり、かつ、
CDR−H3は、配列番号3、8、31もしくは37の配列、または最適なアライメントの後に配列番号3、8、31もしくは37の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる)
を含んでなる重鎖を含んでなることを特徴とする。
【0040】
さらにより好ましくは、本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、次の3つのCDR、それぞれCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、
CDR−L1は、配列番号4、11、32もしくは38の配列、または最適なアライメントの後に配列番号4、11、32もしくは38の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなり、
CDR−L2は、配列番号5、12、33もしくは39の配列、または最適なアライメントの後に配列番号5、12、33もしくは39の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなり、かつ、
CDR−L3は、配列番号6もしくは34の配列、または最適なアライメントの後に配列番号6もしくは34の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる)
を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0041】
さらに別の実施形態では、本発明は、
a)
IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号7の配列を有するCDR−H1、配列番号2の配列を有するCDR−H2、および配列番号8の配列を有するCDR−H3を含んでなる重鎖と、
IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号4の配列を有するCDR−L1、配列番号5の配列を有するCDR−L2、および配列番号6の配列を有するCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなる抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体;および
b)
IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号29の配列を有するCDR−H1、配列番号30の配列を有するCDR−H2、および配列番号31の配列を有するCDR−H3を含んでなる重鎖と
IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号32の配列を有するCDR−L1、配列番号33の配列を有するCDR−L2および配列番号34の配列を有するCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなる抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体
からなる群から選択されることを特徴とする抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体として記載することができる。
【0042】
本明細書において、「ポリペプチド配列」、「ペプチド」および「抗体化合物またはそれらの配列と結合したタンパク質」という用語は互換的である。
ここで、本発明は天然型の抗体に関するものではなく、すなわち、それらはそれらの天然環境から採取されたものではなく、天然源から精製により単離または取得することができた、あるいは遺伝子組換えまたは化学合成によって取得することができたものであり、従って、以下に記載されるように、非天然アミノ酸を含み得るものと理解される。
【0043】
さらに明瞭にするために、以下の記載では、より詳しくは、表3aおよび4aでは、224D10と呼ばれる抗体のCDRは、IMGTナンバリング、kabatナンバリングおよび共通ナンバリングによって定義されると理解されるべきである。
【0044】
共通ナンバリングは、IMGTナンバリング体系とKabatナンバリング体系によって定義されるCDRに共通である、各CDRの残基部分を再編成する。
【0045】
IMGTナンバリング体系は、定義されるようなIMGT体系に従ってCDRを定義し、kabatナンバリング体系は、上記に定義されるkabat体系に従ってCDRを定義する。
【0046】
より詳しくは、CDR−H1は、共通ナンバリング体系では配列番号1(TSAYF)、IMGTナンバリング体系では配列番号7(GYSITSAYF)、そしてkabatナンバリング体系では配列番号9(TSAYFWS)からなる。
【0047】
CDR−H2は、共通ナンバリング体系およびIMGTナンバリング体系では配列番号2(INYDGTN)、そしてkabatナンバリング体系では配列番号10(FINYDGTNNYNPSLKN)からなる。
CDR−H3は、共通ナンバリング体系およびkabatナンバリング体系では配列番号3(DRTFAY)からなるが、IMGTナンバリング体系では配列番号8(TRDRTFAY)からなる。
軽鎖について、CDR−L1は、共通ナンバリング体系およびIMGTナンバリング体系では配列番号4(QRIYNY)、そしてkabatナンバリング体系では配列番号11(RASQRIYNYLH)からなる。
CDR−L2については、共通ナンバリング体系およびIMGTナンバリング体系では配列番号5(YAS)、そしてkabatナンバリング体系では配列番号12(YASQSIS)からなる。
最後に、CDR−L3は、3つのナンバリング体系のそれぞれで配列番号6(QQSNSWPLT)からなる。
【0048】
当業者ならば、抗体221C9についても同じことを容易に行うことができる。
これとともに、さらに明瞭にするために、以下の記載では、より詳しくは、表3bおよび4bでは、221C9と呼ばれる抗体のCDRは、IMGTナンバリングおよびkabatナンバリングによって定義されると理解されるべきである。
【0049】
本発明の意味において、2つの核酸またはアミノ酸配列間の「同一性パーセンテージ」は、最適なアライメントの後に得られる、比較する2つの配列間で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは単に統計的なものであり、2つの配列間の違いはそれらの全長にわたってランダムに分布している。2つの核酸またはアミノ酸配列の比較は、それらを最適にアラインした後にこれらの配列を比較することにより慣行するが、この比較はセグメントによるか、または「アライメントウィンドウ」を用いて行うことができる。比較のための配列の最適アライメントは、手作業の他、Smith and Waterman (1981) [Ad. App. Math. 2:482]のローカルホモロジーアルゴリズムの手段によるか、Neddleman and Wunsch (1970) [J. Mol. Biol. 48: 443]のローカルホモロジーアルゴリズムの手段によるか、Pearson and Lipman (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444]の類似性検索法の手段によるか、これらのアルゴリズムを用いるコンピューターソフトウエア(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、またはBLAST NRもしくはBLAST P比較ソフトウエア)の手段によって行うことができる。
【0050】
2つの核酸またはアミノ酸配列間の同一性パーセンテージは、最適な方法でアラインしたこれら2つの配列を比較することにより決定され、比較される核酸またはアミノ酸配列は、これらの2配列間の最適なアライメントのために、参照配列に対して付加または欠失を含み得る。同一性パーセンテージは、2配列間でアミノ酸またはヌクレオチド残基が同一である位置の数を求め、この同一の位置の数をアライメントウィンドウの位置の総数で割り、得られた結果に100を掛け、これらの2配列間の同一性パーセンテージを得ることにより算出される。
【0051】
例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlのサイトで入手できるBLASTプログラム「BLAST 2 sequences」(Tatusova et al., "Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences", FEMS Microbiol., 1999, Lett. 174:247-250)を、デフォルトパラメーター(特に、パラメーター「オープンギャップペナルティー」:5、「エクステンションギャップペナルティー」:2;選択されるマトリックスは、例えば、このプログラムにより提案されているマトリックス「BLOSUM 62」である)とともに使用することができ、比較する2配列間の同一性パーセンテージはこのプログラムにより直接算出される。
【0052】
参照アミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を示すアミノ酸配列の好ましい例としては、参照配列、ある種の改変、特に、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加もしくは置換、末端切断または延長が挙げられる。1以上の連続的または非連続的アミノ酸の置換の場合、被置換アミノ酸が「等価な」アミノ酸に置き換えられる置換が好ましい。ここで「等価なアミノ酸」とは、対応する抗体の生物活性を改変せずに構造アミノ酸の1つで置換され得る任意のアミノ酸を示すものとし、これらの具体例は以下に定義される。
【0053】
等価なアミノ酸は、それらに代わるアミノ酸との構造的相同性か、または実施可能な種々の抗体間の生物活性の比較試験の結果のいずれかによって決定することができる。
【0054】
限定されない例として、下表2に対応する改変抗体の生物活性の著しい改変を生じさせることなく実施可能な置換の可能性をまとめる。もちろん、同じ条件で逆の置換も可能である。
【表2】

【0055】
当業者には、当技術分野の現状において、これら6つのCDR間の最大変動(長さおよび組成)は、3つの重鎖CDRに、より詳しくは、この重鎖のCDR−H3に見られることが知られている。
【0056】
特定の実施形態では、本発明は、ネズミ抗体、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
【0057】
本発明の別の実施形態は、CDRの「共通」定義に基づいて、次の3つのCDR:
配列番号1の配列、または最適なアライメントの後に配列番号1の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H1;
配列番号2の配列、または最適なアライメントの後に配列番号2の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H2;および
配列番号3の配列、または最適なアライメントの後に配列番号3の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる重鎖と、次の3つのCDR:
配列番号4の配列、または最適なアライメントの後に配列番号4の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L1;
配列番号5の配列、または最適なアライメントの後に配列番号5の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L2;および
配列番号6の配列、または最適なアライメントの後に配列番号6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L3
を含んでなる軽鎖とを含んでなる抗体224D10、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つを開示する。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態は、IMGTナンバリング体系に基づいて、次の3つのCDR:
配列番号7の配列、または最適なアライメントの後に配列番号7の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H1;
配列番号2の配列、または最適なアライメントの後に配列番号2の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H2;および
配列番号8の配列、または最適なアライメントの後に配列番号8の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる軽鎖と、次の3つのCDR:
配列番号4の配列、または最適なアライメントの後に配列番号4の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L1;
配列番号5の配列、または最適なアライメントの後に配列番号5の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L2;および
配列番号6の配列、または最適なアライメントの後に配列番号6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L3
を含んでなる軽鎖とを含んでなる抗体224D10、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つを開示する。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態は、Kabatナンバリング体系に基づいて、次の3つのCDR:
配列番号9の配列、または最適なアライメントの後に配列番号9の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H1;
配列番号10の配列、または最適なアライメントの後に配列番号10の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H2;および
配列番号3の配列、または最適なアライメントの後に配列番号3の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H3を含んでなる重鎖と、次の3つのCDR:
配列番号11の配列、または最適なアライメントの後に配列番号11の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L1;
配列番号12の配列、または最適なアライメントの後に配列番号12の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L2;および
配列番号6の配列、または最適なアライメントの後に配列番号6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L3
を含んでなる軽鎖とを含んでなる抗体224D10、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つを開示する。
【0060】
本発明による抗体224D10、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、「共通」ナンバリング体系に従って、
配列番号1の配列のCDR−H1、配列番号2の配列のCDR−H2、および配列番号3の配列のCDR−H3を含んでなる重鎖と、
配列番号4の配列のCDR−L1、配列番号5の配列のCDR−L2、および配列番号6の配列のCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなることを特徴とする。
【0061】
別の実施形態では、本発明による抗体224D10、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、IMGTナンバリング体系に従って、
配列番号7の配列のCDR−H1、配列番号2の配列のCDR−H2、および配列番号8の配列のCDR−H3を含んでなる重鎖と、
配列番号4の配列のCDR−L1、配列番号5の配列のCDR−L2、および配列番号6の配列のCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなることを特徴とする。
【0062】
別の実施形態では、本発明による抗体224D10、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、Kabatナンバリング体系に従って、
配列番号9の配列のCDR−H1、配列番号10の配列のCDR−H2、および配列番号3の配列のCDR−H3を含んでなる重鎖と、
配列番号11の配列のCDR−L1、配列番号12の配列のCDR−L2、および配列番号6の配列のCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなることを特徴とする。
【0063】
さらに別の実施形態によれば、本発明の抗体224D10、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列、または最適なアライメントの後に配列番号13の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる重鎖可変ドメイン配列を含んでなること;および/または配列番号14のアミノ酸配列、または最適なアライメントの後に配列番号14の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖可変ドメイン配列を含んでなることを特徴とする。
【0064】
より詳しくは、本発明の抗体、その誘導化合物またはその機能的フラグメントは、
a)最適なアライメントの後に配列番号13の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖配列可変ドメイン、および/または最適なアライメントの後に配列番号14の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン配列を含んでなり;かつ
b)該抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体が、
c−Metタンパク質と特異的に結合することができ、好ましくは、
リガンドHGFの、c−Metタンパク質への結合を遮断しない
ことを特徴とする。
【0065】
本発明の別の実施形態では、次の3つのCDR:
配列番号29の配列、または最適なアライメントの後に配列番号29の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H1;
配列番号30の配列、または最適なアライメントの後に配列番号30の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H2;および
配列番号31の配列、または最適なアライメントの後に配列番号31の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる重鎖と、次の3つのCDR:
配列番号32の配列、または最適なアライメントの後に配列番号32の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L1;
配列番号33の配列、または最適なアライメントの後に配列番号33の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L2;およ
配列番号34の配列、または最適なアライメントの後に配列番号34の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L3
を含んでなる軽鎖とを含んでなる抗体221C9、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つを開示する。
【0066】
本発明のさらに別の実施形態は、次の3つのCDR:
配列番号35の配列、または最適なアライメントの後に配列番号35の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H1;
配列番号36の配列、または最適なアライメントの後に配列番号36の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H2;および
配列番号37の配列、または最適なアライメントの後に配列番号37の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる軽鎖と、次の3つのCDR:
配列番号38の配列、または最適なアライメントの後に配列番号38の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L1;
配列番号39の配列、または最適なアライメントの後に配列番号39の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のDR−L2;および
配列番号34の配列、または最適なアライメントの後に配列番号34の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L3
を含んでなる軽鎖とを含んでなる抗体221C9、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つを開示する。
【0067】
言い換えれば、本発明による単離された抗体221C9、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、IMGTナンバリング体系に従って、
配列番号29の配列のCDR−H1、配列番号30の配列のCDR−H2、および配列番号31の配列のCDR−H3を含んでなる重鎖と
配列番号32の配列のCDR−L1、配列番号33の配列のCDR−L2、および配列番号34の配列のCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなることを特徴とする。
【0068】
別の実施形態では、本発明による単離された抗体221C9、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、Kabatナンバリング体系に従って、
配列番号35の配列のCDR−H1、配列番号36の配列のCDR−H2、および配列番号37の配列のCDR−H3を含んでなる重鎖と、
配列番号38の配列のCDR−L1、配列番号39の配列のCDR−L2、および配列番号34の配列のCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなることを特徴とする。
【0069】
さらに別の実施形態によれば、本発明の抗体221C9、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号40のアミノ酸配列、または最適なアライメントの後に配列番号40の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる重鎖可変ドメイン配列を含んでなることを特徴とし、かつ/または配列番号41のアミノ酸配列、または最適なアライメントの後に配列番号41の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる軽鎖可変ドメイン配列を含んでなることを特徴とする。
【0070】
より詳しくは、本発明の抗体、その誘導化合物またはその機能的フラグメントは、
a)最適なアライメントの後に配列番号40の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変ドメイン配列、および/または最適なアライメントの後に配列番号41の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン配列を含んでなり、かつ、
b)該抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体が、
c−Metタンパク質と特異的に結合することができ、好ましくは、
リガンドHGFの、c−Metタンパク質への結合を遮断しない
ことを特徴とする。
【0071】
言い換えれば、本発明はまた、
a)配列番号13のアミノ酸配列を含んでなる配列の重鎖可変ドメインと、配列番号14のアミノ酸配列を含んでなる配列の軽鎖可変ドメインとを含んでなる抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体、および
b)配列番号40のアミノ酸配列を含んでなる配列の重鎖可変ドメインと、配列番号41のアミノ酸配列を含んでなる配列の軽鎖可変ドメインとを含んでなる抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体
からなる群から選択されることを特徴とする抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体として記載することができる。
【0072】
上記に見られるように、本発明はまた、本発明に記載される抗体に由来する化合物に関する。
【0073】
より詳しくは、本発明の抗体、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、該誘導化合物が、最初の抗体のパラトープ認識特性の全部または一部を保存するために少なくとも1つのCDRがグラフトされたペプチドスキャフォールド(scaffold)を含んでなる結合タンパク質からなることを特徴とする。
【0074】
本発明に記載される6つのCDR配列のうち1以上の配列を、種々の免疫グロブリンタンパク質スキャフォールド上に提供することができる。この場合、このタンパク質配列は、グラフトされたCDRの折りたたみに好適なペプチド主鎖の再生産を可能とし、これにより、それらのパラトープ抗原認識特性を保持できるようになる。
【0075】
一般に、当業者であれば、元の抗体に由来する少なくとも1つのCDRをグラフトするためのタンパク質スキャフォールドのタイプをどのように決定するかが分かる。より詳しくは、選択されるこのようなスキャフォールドが次のような基準の最大数を満たすべきであることが知られている(Skerra A., J. Mol. Recogn., 2000, 13, 167-187)。
・良好な系統発生的保存
・周知の三次元構造(例えば、結晶学またはNMR分光法または当業者に公知の他の任意の技術による)
・小型
・翻訳後修飾がほとんど無いか、全く無いこと
・生産、発現および精製が容易であること
【0076】
このようなタンパク質スキャフォールドの起源は、限定されるものではないが、フィブロネクチン、好ましくは、フィブロネクチンIII型ドメイン10、リポカリン、アンチカリン(Skerra A., J. Biotechnol, 2001, 74(4):257-75)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のタンパク質AのドメインBに由来するタンパク質Z、チオレドキシンAまたは「アンキリンリピート」(Kohl et al., PNAS, 2003, vol. 100, No. 4, 1700-1705)、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」および「テトラトリコペプチドリピート」などのリピートモチーフを有するタンパク質から選択される構造であり得る。
【0077】
例えば、サソリ、昆虫、植物または軟体動物などの毒素のような毒素および神経NOシンターゼ(PIN)のタンパク質阻害剤に由来するスキャフォールドに由来するも挙げておくべきであろう。
【0078】
このようなハイブリッド構築の例として、限定されるものではないが、抗CD4抗体、すなわち、13B8.2のCDR−H1(重鎖)の、PINのループの1つへの挿入が挙げられ、このようにして得られた新たな結合タンパク質は、元の抗体と同じ結合特性を保存している(Bes et al, Biochem. Biophys. Res. Commun., 2006, 343(1), 334-344)。また、抗リゾチームVHH抗体のCDR−H3(重鎖)の、ネオカルジノスタチンのループの1つへのグラフトも、単に例として挙げられる(Nicaise et al., Protein Science, 2004, 13(7):1882-1891)。
【0079】
最後に、上述のように、このようなタンパク質スキャフォールドは元の抗体に由来する1〜6のCDRを含んでなることができる。好ましくは、限定されるものではないが、当業者ならば重鎖から少なくとも1つのCDRを選択することができる(重鎖は主として抗体の特異性を担うことが知られている)。1以上の適切なCDRの選択は当業者には自明であり、そして、当業者ならば好適な既知の技術を選択することができる(Bes et al., FEBS letters 508, 2001, 67-74)。
【0080】
よって、本発明は、ペプチドスキャフォールドが、a)系統発生的によく保存されており、b)堅牢な構造であり、c)周知の3D分子構成を有し、d)小型であり、かつ/またはe)安定性を変化させることなく、欠失および/または挿入によって改変可能な領域を含んでなるタンパク質の中から選択されることを特徴とする、抗体またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメンに関する。
【0081】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗体、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、該ペプチドスキャフォールドが、i)フィブロネクチン、有利にはフィブロネクチン3型ドメイン10、リポカリン、アンチカリン、黄色ブドウ球菌のタンパク質AのドメインBに由来するタンパク質Z、チオレドキシンAまたは「アンキリンリピート」(Kohl et al., PNAS, 2003, vol. 100, No. 4, 1700-1705) 、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」および「テトラトリコペプチドリピート」などのリピートモチーフを有するタンパク質に由来するスキャフォールド、またはiii)神経NOシンターゼ(PIN)のタンパク質阻害剤の中から選択されることを特徴とする。
【0082】
本発明の別の態様は、上記の抗体の機能的フラグメントに関する。
より詳しくは、本発明は、該機能的フラグメントがFv、Fab、(Fab’)、Fab’、scFv、scFv−Fcフラグメントおよびダイアボディー、ペグ化フラグメントなどの半減期が延長されているいずれかのフラグメントの中から選択されることを特徴とする抗体またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを対象とする。
【0083】
本発明による抗体のこのような機能的フラグメントは、例えば、特に、Fv、scFv(scは、単鎖を表す)、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv−Fcフラグメントもしくはダイアボディー、またはポリエチレングリコール(ペグ化)(ペグ化フラグメントは、Fv−PEG、scFv−PEG、Fab−PEG、F(ab’)−PEGおよびFab’−PEGと呼ばれる)などのポリアルキレングリコールの付加などの化学修飾により、またはリポソーム、ミクロスフェアもしくはPLGAへの組み込みによりその半減期が延長されているいずれかのフラグメントからなり、該フラグメントは、特に、それが由来している抗体の活性を部分的にでも、一般的な様式で発揮し得るという点で、本発明の特徴的なCDRを少なくとも1つ有する。
【0084】
好ましくは、該機能的フラグメントは、それらが由来している抗体の可変重鎖または軽鎖の部分的配列を含んでなるか、またはそれを含み、該部分的配列は、それが由来している抗体と同じ結合特異性と、十分な親和性、好ましくは、それが由来している抗体の親和性の少なくとも1/100、より好ましくは少なくとも1/10に相当する親和性を保持するに十分なものである。
【0085】
このような機能的フラグメントは、それが由来している抗体の配列の少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは、6、7、8、10、15、25、50または100個の連続するアミノ酸を含む。
【0086】
好ましくは、これらの機能的フラグメントは、Fv、scFv、Fab、F(ab’)、F(ab’)、scFv−Fc型またはダイアボディーのフラグメントであり、一般に、それが由来している抗体と同じ結合特異性を有する。本発明によれば、本発明のフラグメントは、上記の抗体から、ペプシンまたはパパインを含む酵素消化および/または化学的還元によるジスルフィド橋の切断によるなどの方法によって得ることができる。これらの抗体フラグメントはまた、これもまた当業者に公知の遺伝子組換え技術によって、あるいは例えば、Applied Biosystems社などによって販売されているものなどの自動ペプチド合成装置の手段によるペプチド合成によって得ることもできる。
【0087】
より明瞭となるように、下表3aに本発明の抗体224D10に相当する種々のアミノ酸配列をまとめる。
表3a(ここで、Muはネズミを表す)
【表3】

【0088】
より明瞭とするために、下表3bに本発明の抗体221C9に相当する種々のアミノ酸配列をまとめる。
表3b(ここで、Muはネズミを表す)
【表4】

【0089】
別の態様によれば、本発明は、本発明によるモノクローナル抗体を分泌することができるネズミハイブリドーマ、特に、2008年3月12日にI−3949番としてCNCM, Institut Pasteur, Paris, Franceに寄託されたネズミ起源のハイブリドーマに関する。該ハイブリドーマは、Balb/C免疫マウス脾細胞と骨髄腫Sp 2/O−Ag 14系統細胞の融合によって得られた。
【0090】
該抗体が2008年3月12日にI−3949番としてCNCMに寄託されたハイブリドーマによって分泌されることを特徴とする、本明細書で224D10と呼ばれるモノクローナル抗体、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、明らかに本発明の一部をなす。
【0091】
別の態様によれば、本発明は、本発明によるモノクローナル抗体を分泌することができるネズミハイブリドーマ、特に、2010年1月14日にI−4273番としてCNCM, Institut Pasteur, Paris, Franceに寄託されたネズミ起源のハイブリドーマに関する。該ハイブリドーマは、Balb/C免疫マウス脾細胞と骨髄腫Sp 2/O−Ag系統細胞の融合によって得られた。
【0092】
該抗体が2010年1月15日にI−4273番としてCNCMに寄託されたハイブリドーマによって分泌されることを特徴とする、本明細書で221C9と呼ばれるモノクローナル抗体、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、明らかに本発明の一部をなす。
【0093】
本発明の新規な態様は、次の核酸:
a)本発明による抗体またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントをコードする核酸、DNAまたはRNA;
b)配列番号15〜26および42〜52の配列、または最適なアライメントの後に配列番号15〜26および42〜52の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含んでなるDNA配列を含んでなる核酸;
c)配列番号27、28、53および/または54の配列、または最適なアライメントの後に配列番号27、28、53および/または54の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなるDNA配列を含んでなる核酸;
d)a)、b)またはc)に定義される核酸の対応するRNA核酸;
e)a)、b)およびc)に定義される核酸の相補的核酸;および
f)高ストリンジェント条件下で、配列番号15〜28および42〜54の配列、または最適なアライメントの後に配列番号15〜28および42〜54の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列、またはその相補的配列のCDRの少なくとも1つとハイブリダイズすることができる少なくとも18のヌクレオチドの核酸
から選択されることを特徴とする、単離された核酸に関する。
【0094】
下表4aに本発明の抗体224D10に関する種々のヌクレオチド配列をまとめる。
表4a
【表5】

【0095】
下表4bに本発明の抗体221C9に関する種々のヌクレオチド配列をまとめる。
表4b
【表6】

【0096】
「核酸」、「核酸配列(nucleic sequence)」、「核酸配列(nucleic acid sequence)」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」は、本明細書において互換的に用いられ、改変または非改変型の、核酸のフラグメントまたは領域を定義し、非天然ヌクレオチドを含有する、または含有しない、二本鎖DNA、一本鎖DNAまたはこれらのDNAの転写産物のいずれかである、ヌクレオチドの正確な配列を意味する。
【0097】
ここでまた、本発明はそれらの天然の染色体環境、すなわち自然状態のヌクレオチド配列に関するものではないと理解される。本発明の配列は単離および/または精製されたものであり、すなわち、それらは、少なくとも部分的に改変されたそれらの環境から、例えばコピーによって直接的または間接的にサンプリングされたものである。ここでまた、例えば宿主細胞の手段による遺伝子組換えによって得られた、または化学合成によって得られた単離された核酸を記載しておくべきであろう。
【0098】
「最適なアライメントの後に好ましい配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性パーセンテージを示す核酸配列」とは、参照核酸配列に対して、特に、欠失、末端切断、延長、キメラ融合および/または置換、特に規則的なものなどの特定の改変を示す核酸配列を意味する。好ましくは、これらは参照配列と同じアミノ酸配列をコードする配列(これは遺伝コードの縮重に関連する)、または好ましくは高ストリンジェント条件下、特に以下に定義される条件下で、参照配列と特異的にハイブリダイズし得る遺伝コードまたは相補的配列である。
【0099】
高ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションとは、温度およびイオン強度に関する条件が、2つの相補的DNAフラグメント間でハイブリダイゼーションを維持させるように選択されることを意味する。単に例であるが、上記のポリヌクレオチドフラグメントを定義するためのハイブリダイゼーション工程の高ストリンジェント条件は以下のものが有利である。
【0100】
DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションは、(1)5×SSC(1×SSCは0.15M NaCl+0.015Mクエン酸ナトリウム溶液に相当する)、50%ホルムアミド、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10×デンハート液、5%デキストラン硫酸および1%サケ精子DNAを含有するリン酸バッファー(20mM、pH7.5)中、42℃で3時間のプレハイブリダイゼーション;(2)プローブ長に応じた温度(すなわち、プローブ>100ヌクレオチド長の場合は42℃)で20時間の本ハイブリダイゼーションの後、2×SSC+2%SDS中、20℃、20分の洗浄2回、0.1×SSC+0.1%SDS中、20℃、20分の洗浄1回、という二段階で行う。最後の洗浄は、プローブ>100ヌクレオチド長の場合は60℃で30分間、0.1×SSC+0.1%SDS中で行う。定義されたサイズのポリヌクレオチドに関する上記の高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、当業者ならば、Sambrook et al. (Molecular cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory; 3rd edition, 2001)に記載の手順に従って、より長いまたは短いオリゴヌクレオチドに適合させることができる。
【0101】
本発明はまた、本発明に記載される核酸を含んでなるベクターに関する。
【0102】
本発明は、特に、このようなヌクレオチド配列を含むクローニングおよび/または発現ベクターを対象とする。
【0103】
本発明のベクターは好ましくは、所定の宿主細胞でのヌクレオチド配列の発現および/または分泌を可能とする要素を含む。従って、ベクターはプロモーター、翻訳開始シグナルおよび終結シグナル、ならびに好適な転写調節領域を含むこととなる。ベクターは宿主細胞で安定に維持される必要があり、所望により、翻訳されたタンパク質の分泌を指定する特定のシグナルを有することができる。これらの種々の要素は、当業者により、用いる宿主細胞に従って選択および至適化される。この趣意で、これらのヌクレオチド配列は選択された宿主内の自己複製ベクターに挿入することができ、または選択された宿主の組込型ベクターであり得る。
【0104】
このようなベクターは当業者により一般に用いられる方法によって作製され、得られたクローンは、リポフェクション、エレクトロポレーション、熱ショックまたは化学的方法などの標準的な方法によって好適な宿主に導入することができる。
【0105】
これらのベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルス起源のベクターである。それらは、本発明のヌクレオチド配列のクローニングまたは発現のために宿主細胞を形質転換するのに用いられる。
【0106】
本発明はまた、本発明に記載されるベクターにより形質転換された、または本発明に記載されるベクターを含んでなる宿主細胞を含んでなる。
【0107】
宿主細胞は原核生物系または真核生物系、例えば、細菌細胞、あるいはまた酵母細胞もしくは動物細胞、特に、哺乳類細胞から選択することができる。また、昆虫細胞または植物細胞を用いることもできる。
【0108】
本発明はまた、本発明に従って形質転換された細胞を含む、ヒト以外の動物に関する。
本発明の別の態様は、本発明による抗体またはその機能的フラグメントの1つの生産方法であって、
a)本発明による宿主細胞を培地中、好適な培養条件で培養する工程;および
b)このようにして生産された該抗体またはその機能的フラグメントの1つを培養培地または該培養細胞から回収する工程
を含んでなることを特徴とする方法に関する。
【0109】
本発明に従って形質転換された細胞は、本発明による組換えポリペプチドの製造方法で用いられる。本発明によるベクターおよび/またはベクターによって形質転換された細胞を用いることを特徴とする、本発明によるポリペプチドの組換え型での製造方法も本発明に含まれる。好ましくは、本発明によるベクターによって形質転換された細胞は、該ポリペプチドの発現および該組換えペプチドの回収を可能とする条件下で培養される。
【0110】
既に述べたように、宿主細胞は原核生物系または真核生物系から選択することができる。特に、このような原核生物系または真核生物系で分泌を促進する本発明のヌクレオチド配列を同定することができる。従って、このような配列を有する本発明によるベクターは、分泌を意図した組換えタンパク質の生産のために有利に使用することができる。実際、目的のこれらの組換えタンパク質の精製は、それらが宿主細胞の内部よりもむしろ細胞培養の上清中に存在するという事実により容易となる。
【0111】
また、本発明によるポリペプチドは化学合成によって製造することもできる。このような製造方法もまた本発明の課題である。当業者ならば、固相技術[特にSteward et al, 1984, Solid phase peptide synthesis, Pierce Chem. Company, Rockford, 111, 2nd ed.参照]、または部分的固相技術、または溶液中でのフラグメントの縮合もしくは慣例の合成によるなどの、化学合成法を知っている。化学合成によって得られ、対応する非天然アミノ酸を含み得るポリペプチドもまた本発明に含まれる。本発明の方法によって得ることができる抗体またはそれらの誘導化合物もしくは機能的フラグメントもまた本発明に含まれる。
【0112】
本発明の抗体のバイオマーカーとしての使用もまた開示される。これらの方法は、限定されるものではないが、前立腺癌、骨肉腫、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、膠芽腫、結腸、癌、胃癌、腎臓癌またはcMetの発現に関連する他の任意の癌によって例示される、cMetの発現に関連する種々の過増殖性腫瘍形成性障害(hyperproliferative oncogenic disorder)を検出または診断するために使用され得る。当業者によって認識されるように、特定の障害に関連する抗体発現のレベルは、既存の症状の性質および/または重篤度によって異なる。
【0113】
本発明の抗体の、当業者に公知の慣行法(例えば、局所、非経口、筋肉内など)での投与は、サンプル中の異形成細胞を検出する、また、医師がcMetの発現に関連するか、またはcMetの発現により媒介される過増殖性障害の処置を受けている患者の治療計画をモニタリングできる極めて有用な方法を提供する。
【0114】
別の実施形態では、本発明は、標識され、かつ、in vivoでcMetと結合する上記モノクローナル抗体またはそのフラグメントと薬学上許容される担体とを含んでなる、cMetの発現に関連する腫瘍形成性障害のin vivo画像法のための医薬組成物に関する。
【0115】
本発明の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体は、cMetの発現に関連する種々の病態の検出、診断および病期分類を含む種々の医療目的または研究目的に使用が見出せる。
【0116】
病期決定は潜在的予後の価値を持ち、最適な療法を計画するための基準を提供する。Simpson et al., J. Clin. Oncology 18:2059 (2000)。一般に、例えば乳癌の病理学的病期分類は、より精度の高い予後が得られるので、臨床学的病期分類よりも好ましい。しかしながら、臨床学的病期分類は、病理学的評価用の組織を得るために侵襲的手法に依存しないことから、病理学的病期分類と同等の精度があったとすれば望ましい。
【0117】
本発明の抗体は、好適な標識または他の適当な検出可能な生体分子または化学物質と併用すると、in vitroおよびin vivo診断および予後適用に特に有用である。
【0118】
イムノアッセイに使用するための標識は当業者に一般に公知であり、酵素、放射性同位元素、ならびに蛍光、発光および発色物質(金コロイドまたはラテックスビーズなどの有色粒子を含む)が挙げられる。好適なイムノアッセイとしては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が挙げられる。以下に示されるものなど、種々の標識およびその標識を本発明の抗体とコンジュゲートする方法が当業者に周知である。
【0119】
本明細書において「cMetの発現に関連する腫瘍形成性障害」とは、障害に罹患している被験体における高レベルまたは異常に低いレベルのcMetの存在(異常)が、その障害の病因を担っているかもしくはその障害の増悪に寄与する因子であることが示されているか、あるいはそうであることが疑われる疾患および他の障害を含むものとする。あるいは、このような障害は、例えば、細胞表面のcMetレベルの増加またはその障害に罹患している被験体の罹患細胞または組織におけるチロシン自己リン酸化cMetの増加を証拠とすることができる。cMetレベルの増加は、例えば本発明の抗体224D10を用いて検出することができる。さらに、それは比較的自律的増殖を示す細胞を意味し、そのため、それらは細胞増殖の制御の著しい欠損を特徴とする異常な増殖表現型を呈する。あるいは、これらの細胞は正常なレベルのcMetを発現しながら異常な増殖を示す場合もある。
【0120】
特定の実施形態では、cMetに関して「発現の増加」とは、対照に比べて統計的に有意な発現増加(RNA発現またはタンパク質発現によって測定される)を示すタンパク質または遺伝子発現レベルを意味する。
より詳しくは、cMetの発現に関連する腫瘍形成性障害をin vitroにおいて診断するため、またはcMetの発現に関連する腫瘍形成性障害、例えば、cMetの発現に関連する癌の発症の予後をin vivoにおいて決定するための、記載されているような本発明による抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の使用が意図される。
【0121】
本発明に従ってもう1つの広義の態様は、被験体において、病的な過増殖性腫瘍形成性障害またはcMetの発現に関連する病態に対する感受性を診断する方法であって、サンプル中のcMet保持細胞の有無を決定すること、および該cMet保持細胞の有無に基づいて病態または病態に対する感受性を診断することを含んでなる方法に関する。本発明の抗体の診断上の使用は、原発腫瘍、癌転移を含んでなる。抗体は、検出可能、かつ/または定量可能なシグナルを得るために免疫複合体または標識抗体の形態で存在することができる。
【0122】
より詳しくは、本発明による好ましい1つの課題は、被験体においてcMet発現腫瘍の存在および/または場所をin vitroにおいて検出するプロセスであり、該プロセスは、被験体からのサンプルを本発明による抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体と接触させる工程、および(b)該抗体とサンプルとの結合を検出する工程を含んでなる。この課題の別の態様は、臨床試験中の、より詳しくは、c−Met受容体のダウンレギュレーションおよびまたは分解が供試化合物の作用機序の成分の1つである場合の、c−Met標的療法に対する応答としてのc−Met発現の追跡である。
【0123】
当業者には自明であるように、本発明の抗体の結合の検出は種々のアッセイによって明らかにすることができる。これらのアッセイを実施するいずれの手段も本発明に適合可能であるが、例として、FACS、ELISAまたはIHCを挙げることができる。
【0124】
本明細書において「サンプル」とは、新生細胞を含む、または含むことが疑われる結腸、胃、直腸、乳房、卵巣、前立腺、腎臓、肺、血液、脳またはその他の器官または組織由来の細胞などの新生細胞を含む、または含む可能性のある、任意の体液、細胞、組織、器官またはそれらの一部を意味するものとする。この用語は、個体に存在するサンプルならびに個体から取得された、もしくは個体に由来するサンプルを含む。例えば、サンプルは、生検によって得られた標本の組織学的切片、または組織培養下に置かれた、もしくは組織培養に適合された細胞であり得る。サンプルはさらに、細胞下画分もしくは抽出物、または未精製もしくは実質的に純粋な核酸分子またはタンパク質調製物であってもよい。
【0125】
臨床サンプルは、被験体から取得され、例えば、cMet発現レベルを測定または検出する診断試験またはモニタリング試験などの、本発明の手法において有用な多様なサンプル種を包含するものとする。この定義には、外科的摘出によって取得された固形組織サンプル、病理標本、保管サンプルまたは生検標本、組織培養またはそれに由来する細胞およびそれらの後代、ならびにこれらの供給源のいずれかから調製された切片または塗抹標本が包含される。限定されない例として、乳房組織、リンパ節、結腸、膵臓、前立腺などから取得されたサンプルがある。この定義にはまた、生体起源の液体サンプルも包含され、その中に懸濁されている細胞もしくは細胞断片、または液体培地とその溶質のいずれかを表し得る。
【0126】
本発明による別の態様は、被験体からのcMet発現腫瘍におけるcMetの発現レベルをin vitroで検出する方法に関し、該方法は、(a’)被験体からのサンプルと本発明による抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を接触させる工程、および(b’)該サンプルにおいてcMetと結合する抗体のレベルを定量する工程を含んでなる。
【0127】
当業者に自明であるように、cMetと結合する抗体のレベルは、種々のアッセイによるなど、いくつかの方法で定量することができる。これらのアッセイを実施するいずれの手段も本発明に適合可能であるが、好ましい方法は、ELISA技術に従う免疫酵素法、免疫蛍光、免疫組織化学または放射イムノアッセイ(RIA)技術または等価の方法を活用する。
【0128】
好ましくは、生体サンプルはヒト起源の血清、全血、細胞、組織サンプルまたは生検などの体液により形成される。サンプルとしては、例えば、cMetの発現に関連する病的な過増殖性腫瘍形成性障害の存在を好都合にアッセイすることができる生検組織が挙げられる。
【0129】
試験サンプル中に存在するcMetの量の測定がなされれば、それらの結果を、サンプルと同様の方法で、発現に関連する過増殖性腫瘍形成性障害を持たない、または呈さない個体から得られた対照サンプルの結果と比較することができる。試験サンプルにおけるcMetレベルが有意に高ければ、それが由来している被験体が該障害を有しているか、または発症する高い見込みがあると結論付けることができる。
【0130】
本発明は、より詳しくは、cMet発現腫瘍をin vitroにおいて診断するか、または被験体におけるcMet発現腫瘍の発症(developing)に関して予後をin vitroにおいて判定する方法に関し、該方法は、(i)上記のようにcMetの発現レベルを判定する工程、および(ii)工程(i)の発現レベルを、正常組織またはcMetを発現しない組織のcMetの参照発現レベルと比較する工程を含んでなる。
【0131】
本適用に用いられる疾患を「診断する」とは、例えば、cMetの発現に関連するか、またはcMetの発現によって媒介される病的な過増殖性腫瘍形成性障害の存在を診断または検出すること、その疾病の進行をモニタリングすること、およびcMetの発現に関連する障害の指標となる細胞またはサンプルを同定または検出することを含むものとする。
【0132】
本適用に用いられる「予後」とは、疾患から回復する見込み、または疾患のあり得る発症もしくは転機の予測を意味する。例えば、被験体由来のサンプルの、本発明の抗体による染色が陽性であれば、その被験体の「予後」は、サンプルのcMet染色が陰性であった場合よりも良好である。以降に詳細に示すように、サンプルに適当な尺度でcMet発現レベルのスコアを付けることができる。
【0133】
しかしながら、本発明の別の態様はまた、それらの作用機序の1つとしてのc−Metの分解を誘導する治療用化合物に対するc−Met発現のモニタリングに関する。この場合、細胞膜上でのc−Met発現の追跡は、臨床試験および「個別化」療法の際の処置の有効性を評価する重要なツールとなり得る。
【0134】
cMetの発現レベルは有利には、「参照レベル」または「参照発現レベル」とも呼ばれる対照細胞またはサンプルでのレベルに対して比較または測定する。「参照レベル」、「参照発現レベル」、「対照レベル」および「対照」は本明細書では互換的に用いられる。広く言えば、「対照レベル」とは、一般に無病または癌を持たない比較可能な対照細胞で測定された独立した基準レベルを意味する。それは同じ個体からのもの、あるいは正常な、または罹患サンプルもしくは試験サンプルが得られた、その疾患が存在しない別の個体からのものである。本発明の範囲内で「参照レベル」とは、患者の癌細胞含有サンプル中のcMet発現の試験レベルを評価するために用いるcMet発現の「対照レベル」を意味する。例えば、患者の生体サンプル中のcMetレベルが参照cMetレベルよりも高い場合、それらの細胞はcMetの高レベルの発現または過剰発現を示すとみなされる。この参照レベルは複数の方法によって決定することができる。従って、発現レベルはcMet保持細胞、あるいはまたcMetを発現する細胞の数に依存しないcMetの発現レベルを定義し得る。よって、各患者の参照レベルは、cMetの参照比で置き換えることができ、この参照比は、本明細書に記載の参照レベルを決定するための方法のいずれによって決定してもよい。
【0135】
例えば、対照はある所定の値であってもよく、この値は種々の形態をとり得る。それは中央値または平均値などの単一のカットオフ値であってもよい。「参照レベル」はどの患者にも個々に等しく適用可能な単一の数値であってもよいし、あるいは参照レベル患者の特定の部分集団によって異なってもよい。よって、例えば、同じ癌に対しても高齢者は若い人とは異なる参照レベルを持つ場合があり、同じ癌に対しても女性は男性と異なる参照レベルを持つ場合がある。あるいは、「参照レベル」は、被験新生細胞の組織と同じ組織からの非腫瘍形成性癌細胞におけるcMetの発現レベルを測定することによって決定することもできる。同様に、「参照レベル」は、同じ患者内の非腫瘍細胞におけるcMetレベルに対する患者の新生細胞におけるcMetのある特定の比であってもよい。「参照レベル」はまた、腫瘍細胞をシミュレートするために操作可能であるか、または参照レベルを正確に決定する発現レベルが得られる他のいずれかの様式で操作可能なin vitro培養細胞のcMetレベルであってもよい。他方、「参照レベル」は、高いcMetレベルを有さない群と高いcMetレベルを有する群などの比較群に基づいて設定することもできる。比較群の別の例は、特定の疾患、症状または徴候を有する群とその疾患を有さない群である。所定の値は、例えば、被験集団が、低リスク群、中リスク群および高リスク群などの群に、または最低の4分位(quandrant)または5分位が最低リスクまたは最高量のcMetを有する個体であり、最高の4分位または5分位が最高リスクまたは最低量のcMetを有する個体となるように4分位もしくは5分位に、等分割(または不等分割)されるように配分することができる。
【0136】
参照レベルはまた、同じ癌を有する患者集団におけるcMetのレベルの比較によって決定することができる。これは例えば、患者の全コホートを、第一の軸がcMetレベルを表し、第二の軸が、腫瘍細胞があるレベルのcMetを発現するそのコホートの患者数を表すグラフに表すヒストグラム解析によって行うことができる。2以上の別の患者群は、同じまたは同等のcMetレベルを有するコホートのサブセット集団の特定によって決定することができる。そして、参照レベルの決定は、これらの別集団を最もよく識別するレベルに基づいて行うことができる。参照レベルはまた、2以上のマーカーのレベルを表してもよく、その1つがcMetである。2以上のマーカーは例えば、各マーカーのレベルの値の比によって表すことができる。
【0137】
同様に、見掛け上健康な集団も、cMetの発現に関連する症状を有することが分かっている集団が持つものとは異なる「正常範囲」を持っている。従って、選択される所定の値は、ある個体が属すカテゴリーを考慮に入れることができる。適当な範囲およびカテゴリーは、当業者ならば、慣例の実験法だけを用いて選択することができる。「上昇」、「増加」とは、選択された対照に対して高いことを意味する。一般に、対照は、適当な年齢層の見掛け上健康な正常個体に基づく。
【0138】
また、本発明による対照は、所定の値の他、試験材料と並行して試験された材料のサンプルであってもよいと理解される。例としては、同じ被験体から同時に得られた組織または細胞、例えば、単一の生検の一部または被験体からの単一細胞サンプルの一部が挙げられる。
【0139】
cMetにより媒介される疾患を有する患者の臨床診断またはモニタリングでは、cMet発現細胞の検出または正常な被験体または非癌組織からの対応する生体サンプルにおけるレベルと比較した場合のcMetレベルの増加は、一般に、cMetにより媒介される障害を有する、または呈することが疑われる患者の指標となる。
【0140】
上記に従えば、本発明は、癌に対する感受性を予測する方法であって、組織サンプルにおいてcMetの発現レベルを検出することを含み、その存在が癌に対する感受性を示し、このcMet発現の程度が感受性の程度に相関する方法を提供する。よって、特定の実施形態では、例えば、前立腺組織、骨肉腫組織、肺組織、膵臓組織、結腸組織、乳房組織、膠芽種組織、卵巣組織または細胞がcMetを発現する疑いのある他のいずれかの組織におけるcMetの発現が検討され、サンプルにおけるcMetの存在は、癌感受性または組織特異的腫瘍の出現もしくは存在の指標となる。
【0141】
腫瘍の侵襲性を評価する方法もまた提供される。一実施形態において、個体における悪性腫瘍の進行を経時的に観察する方法は、腫瘍のサンプルにおいて細胞により発現されるcMetのレベルを決定すること、このようにして決定されたレベルを、同じ個体から異なる時点で採取した同等の組織サンプルにおいて発現されたcMetのレベルと比較することを含み、腫瘍サンプルにおける経時的なcMet発現の程度は、癌の進行に関する情報を与える。
【0142】
さらに別の実施形態では、本適用は、被験体に対して適当な治療プロトコールを決定する方法を提供する。特に、本発明の抗体は、特に被験体がcMetとの結合に関して本発明の抗体と競合しないcMet抗体で処置される状況において、個体において悪性腫瘍の改善の経過をモニタリングするの極めて有用となる。本発明によるcMetの有無またはレベルの変化は、被験体がcMetに関連する再発性または進行性または持続的癌を有する可能性があることを示唆し得る。よって、cMetを発現する細胞の数の増加または種々の組織もしくは細胞に存在するcMetの濃度の変化を測定することにより、cMetに関連する悪性腫瘍の改善を目的とした特定の治療計画が有効であるかどうかを決定することができる。
【0143】
本発明のもう1つの課題は、cMetの発現に関連する腫瘍形成性障害を画像化(イメージング)するin vivoにおける方法である。例えば、このような方法は腫瘍形成性障害の徴候を呈する患者に使用することができる。患者が例えばcMetの高い発現レベルを持っていれば、その患者は癌性障害に罹患している可能性がある。同様に、この方法は、cMetにより媒介される癌を有すると事前に診断されている患者において進行および/または処置に対する応答をモニタリングするのに有用であり得る。上記の目的によれば、本発明は、好ましくは標識された、特に放射性標識された本発明による抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を含んでなるin vivo造影試薬、および医療画像におけるその使用を提供する。よって、本発明に一般法は、画像上有効な量の、標識された上記のモノクローナル抗体などの造影試薬と薬学上有効な担体を患者に投与すること、次いで、それがサンプル中に存在するcMetと結合した後にその試薬を検出することによって機能する。特定の実施形態では、本方法は、ターゲティング部分と活性部分を含んでなる、画像上有効な量の造影剤を投与することによって機能する。造影剤は、ヒトなどの哺乳類における診断使用に有効な量で投与し、その後、この造影剤の局在および蓄積を検出する。造影剤の局在および蓄積は、放射性核種(radionucleide)画像法、ラジオシンチグラフィー、核磁気共鳴画像法、コンピューター断層撮影法、陽電子放射型断層撮影法、コンピューター体軸断層撮影法、X線または磁気共鳴画像法、蛍光検出および化学発光検出によって検出することができる。
【0144】
標的抗腫瘍療法の開発に関して、免疫組織学的技術による診断は、in situにおいて、受容体発現レベルに関する情報を与え、従って、処置に必要とされる受容体の発現レベルに従って、処置に感受性のある患者を選択することができる。
【0145】
モノクローナル抗体を用いた免疫療法では、受容体標的発現レベルに依存する処置に対する応答はトラスツズマブによる処置と同様であり、現在、乳癌におけるHer2過剰発現の決定は、ヒト化抗Her2モノクローナル抗体トラスツズマブの登場で、臨床上大きな重要性を持つ。トラスツズマブはHer2を過剰発現する癌腫細胞を特異的に標的とすることによって働くので、Her2の過剰発現を証明することは、トラスツズマブによる処置の必要条件である。Her2の正確な試験は、コストがかかり、潜在的に有毒なトラスツズマブ処置が非過剰発現腫瘍を有する患者には施されないようにすること、およびトラスツズマブから利益を受け得る総ての患者が適当な処置を受けられるようにすることをねらいとする。
【0146】
Her2を過剰発現したという患者選択におけるトラスツズマブによる教示は、モノクローナル抗体による療法を用いた場合に受容体の発現レベルを決定し、同時に、治療用モノクローナル抗体よりも、患者選択のために使用可能なモノクローナル抗体を開発するという利益を示した。
【0147】
結果として、本発明は、被験体の腫瘍のcMet状態をin vitroで判定する方法に関し、該方法は、(1)上記のようにcMetの発現レベルを判定する工程、(2)該腫瘍のcMet発現レベルのスコアを付ける工程、および(3)該スコアを対照サンプルから得られたものと比較する工程を含んでなる。
【0148】
本発明の意味の範囲内で「cMet状態」は、免疫組織化学(IHC)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、比色定量in situハイブリダイゼーション(CISH)、遺伝子チップまたは当業者に公知の他の方法などの任意の方法によって測定されるcMet遺伝子の発現レベルの決定に基づいた、cMet陽性[cMet(+)]種またはcMet陰性[cMet(−)]種としての腫瘍の分類に関する。
好ましい実施形態では、診断用の抗体は、組織サンプルがホルマリン固定され、パラフィン包埋された際に標的化された受容体と結合できなければならない。
【0149】
より詳しくは、cMet発現レベルは免疫組織化学(IHC)によって測定される。
一例として、サンプルはcMet発現レベルに関して、抗体染色レベルが0〜3のスケールでスコアを付けることができ、この場合、0は陰性であり、1〜3は強度が増す4つの判定量段階での陽性染色を表す。各陽性スコアはスコア0(陰性)と比べて再発および致死的疾患のリスクの有意な軽減と関連づけられるので、スコア1〜3は陽性と記録されるが、これらの陽性スコア間の強度の増加はさらなるリスク軽減をもたらし得る。cMetの予後値を評価するためには、従来の任意のハザード分析法が使用可能である。代表的な分析法としては、打ち切り例の存在下で、生存または時間事象データをモデル化するためのセミパラメトリック法であるコックス回帰分析(Hosmer and Lemeshow, 1999; Cox, 1972)が挙げられる。生命表またはカプラン−マイヤーなどの他の生存分析とは対照的に、コックスではモデルに予測因子変数(共変量)を含める。従来の方法、例えば、コックスを用いれば、原発腫瘍におけるcMet発現状態と、疾患の再発(無病生存時間または転移までの時間)、またはその疾患から死亡するまでの時間(全生存時間)のいずれかの発生までの時間との相関に関する仮説を検証することができる。コックス回帰分析はまた、コックス比例ハザード分析としても知られる。この方法は、患者の生存時間に対する腫瘍マーカーの予後値を検定するために標準的なものである。多変量様式で用いる場合、いくつかの共変量の効果が並行して検定されるので、独立した予後値を有する個々の共変量、すなわち、最も有用なマーカーが特定できる。腫瘍の陽性または陰性「cMet状態」[cMet(+)またはcMet(−)とも記載される]はそれぞれスコア0またはスコア1〜3を表す。
【0150】
例えば乳癌などの癌の診断またはモニタリングの際に、サンプルに「スコアを付ける」ことができる。その最も簡単な形では、スコア付けは、免疫組織化学によるサンプルの視覚的検査によって判断された陰性または陽性分類であり得る。より定量的なスコア付けは、染色強度とサンプリングされた染色(「陽性」)細胞の割合という2つのパラメーターを判断することを含む。これらの2つのパラメーターに基づき、陽性染色のレベルの増大を表す数字を割り当てることができる。Allred et al. (Allred, Harvey et al. 1998)は、これを達成する1つの方法を記載しており、その方法は、両パラメーターに0(陰性)〜3のスケールでスコアを付けること、および全スコアに対して個々のパラメーターのスコアをまとめることを含んだ。これにより、0、2、3、4、5、6、7または8の、とり得るスコアを含むスケールが得られる(Allredのスケールではスコア1はとり得ないことを注記しておく)。いくらか簡単なスコア法では、核染色の強度と染色された核を呈する細胞の割合を合わせた0〜3のスケールに組み込む。どちらのスコア法を、細胞核における活性化Stat5の染色の強度および割合のスコア付けに適用してもよい。本明細書で用いる腫瘍の陽性または陰性「cMet状態」とは、簡略化されたスケールでそれぞれスコア0または1〜3に相当するcMetの発現レベルを表す。
【0151】
一般に、本発明による試験またはアッセイの結果は、種々の形式のいずれかで表すことができる。これらの結果は定性的様式で表すことができる。例えば、試験レポートは、特定のポリペプチドが検出されたかどうかだけで示してもよく、おそらくこれには検出限界が付記される。結果は半定量的様式で表すこともできる。例えば、種々の範囲を定義することができ、それらの範囲を、ある程度の量的情報を提供するスコア(例えば、1〜3)を割り当てればよい。このようなスコアは、例えば、cMetが検出される細胞の数、シグナルの強度(cMetまたはcMet保持細胞の発現レベルを示し得る)などの種々の因子を表し得る。結果は、例えば、ポリペプチド(cMet)が検出される細胞のパーセンテージ、タンパク質濃度などとして、定量的様式で表すこともできる。当業者には認識されるように、試験によって得られる出力のタイプは、その試験の技術的限界およびそのポリペプチドの検出に関連する生物学的有意性によって異なる。例えば、ある種のポリペプチドの場合、純粋に質的な出力(例えば、そのポリペプチドがある特定の検出レベルで検出されるかどうか)が有意な情報を提供する。他の場合では、より量的な出力(例えば、被験サンプル中のポリペプチドの発現レベルと正常レベルの比)が必要である。
【0152】
より好ましい実施形態では、cMet発現レベルのスコア付けは、反応生成物の強度および陽性細胞のパーセンテージの評価に基づき、0〜3の階級とする。より明瞭とするために、以下の表5にこれらのパラメーターをまとめる。浸潤性腫瘍の完全な周辺の膜反応性のみを考慮し、これはしばしば「亀甲金網(chicken wire)」の外観に似ている。現行の指針の下では、cMet IHCに関してボーダーラインとしてスコア付けされたサンプル(スコア2以上)はcMet(+)とみなされ、さらなる評価を必要とする。限定されるものではないが、対照が期待通りではなく、人為性がほとんどのサンプルに伴い、サンプルが正常な乳(内部対照)に強い膜陽性を有し、過剰な抗原賦活を示唆する場合には、そのIHC分析は棄却され、繰り返しを行うか、またはFISHもしくは他の任意の方法による確認が行われる。
【0153】
表5
【表7】

【0154】
本発明によるプロセスのより好ましい実施形態では、該スコア付けは、染色強度と陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当なスケールの使用を含んでなる。
好ましい実施形態では、本発明によるプロセスは、スケール0〜3の適当なスケールを表し、腫瘍細胞の膜反応性が無い場合は0、10%を超える腫瘍細胞に強い完全な反応性が見られる場合には3のスコアが付けられる。
【0155】
より詳しくは、上記のように、適当なスケールは0〜3のスケールであり、腫瘍細胞の膜反応性が無い場合は0;10%を超える腫瘍細胞にわずかな認知可能な膜反応性が見られる場合には1;10%を超える腫瘍細胞に弱い〜中程度の完全な膜反応性が見られる場合には2;および10%を超える腫瘍細胞に強い完全な反応性が見られる場合には3のスコアが付けられる。
【0156】
本発明の特定の態様では、腫瘍はスコア2のcMet(+)である。
本発明の特定の態様では、腫瘍はスコア3のcMet(+)である。
本発明のもう1つの特定の態様では、腫瘍はスコア2または3のcMet(+)である。
【0157】
本発明によれば、また、腫瘍形成性障害が抗cMet抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体による処置に感受性があるかどうかを判定する方法も記載され、該方法は、(a)上記のように被験体の腫瘍のcMet状態をin vitroにおいて判定する工程、および(b)その状態がcMet(+)であれば、その腫瘍形成性障害は抗cMet抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体による処置に感受性があると判定する工程を含んでなる。
【0158】
本発明のもう1つの態様では、このような診断または予後プロセスに有用なキットが意図され、該キットは本発明の抗体を含んでなる。
【0159】
便宜上、所定量の試薬とその診断アッセイの実施に関する説明書を組み合わせたパッケージ、例えば、キットも本発明の範囲内にある。キットは、ELISAまたはウエスタンブロットにおける、cMetのin vitro検出および定量のための抗体を含む。本発明の抗体は、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットにおける、cMetのin vitro検出および定量のためのキットに提供することができる。抗体が酵素で標識される場合、キットはその酵素が必要とする基質および補因子(例えば、検出可能な発色団または蛍光団を提供する基質前駆体)を含む。さらに、安定剤、バッファー(例えば、ブロッキングバッファーまたは溶解バッファー)などのような他の添加物を含んでもよい。このようなキットは、バイアル、チューブなどの1以上の容器(このような容器は本発明の個々の要素を保持する)を収容するために仕切られた収納容器を含んでもよい。例えば、1つの容器は、不溶性または部分的可溶性の担体に結合された第一の抗体を含んでもよい。第二の容器は、可溶性の、検出可能なように標識された第二の抗体を凍結乾燥形態または溶液として含んでもよい。この収納容器はまた、検出可能なように標識された第三の抗体を凍結乾燥形態または溶液として保持する第三の容器を含んでもよい。この性質のキットは、本発明のサンドイッチアッセイで使用可能である。標識または添付文書には、組成物の説明ならびに意図されるin vitroまたは診断使用に関する説明を示すことができる。
【0160】
様々な試薬の相対量は、アッセイの感受性を実質的に至適化する試薬の溶液濃度とするように広く変更可能である。特に、これらの試薬は、溶解した際に適当な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む、通常凍結乾燥された乾燥粉末として提供してもよい。
【0161】
本発明のさらなる態様では、本明細書に詳細に示されるモノクローナル抗体またはその結合フラグメントが検出可能な部分で標識されて提供され、従って、それらも例えばキットにおいて、上述の抗原を有する細胞を診断または同定するためにパッケージングされ、用いられる。このような標識の限定されない例としては、フルオレセインイソチオシアネートなどの蛍光団;発色団、放射性核種または酵素が挙げられる。このような標識された抗体または結合フラグメントは、例えば、抗原の組織学的局在、ELISA、細胞選別、ならびにcMet、およびこの抗原を保持する細胞を検出または定量するための他の免疫学的技術のために使用可能である。
【0162】
また、アポトーシスアッセイの陽性対照として、また、細胞からのcMetの精製または免疫沈降のために有用なキットも提供される。cMetの単離および精製の場合、キットは、ビーズ(例えば、セファロースビーズ)に結合された本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含み得る。例えば、ELISAまたはウエスタンブロットなどにおける、cMetのin vitro検出および定量のための抗体を含むキットが提供可能である。製品としては、キットは容器と、容器上の、または容器に添付されたラベルまたは添付文書を含む。この容器は、本発明の少なくとも1つの抗cMet抗体またはその結合フラグメントを含んでなる組成物を保持する。例えば、希釈剤およびバッファー、対照抗体を含むさらなる容器が含まれてもよい。ラベルまたは添付文書には、組成物の説明ならびに意図されるin vitroまたは診断使用に関する説明を示すことができる。
【0163】
より詳しくは、本発明は、当業者に公知の任意の方法によって腫瘍のcMet状態を判定するためのキットに関する。好ましい実施形態では、例に記載されているように、本発明はIHCによって腫瘍のcMet状態を判定するためのキットに関する。
【0164】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも、上記のような抗c−Met抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体(該抗体は好ましくは標識される)を含んでなるキットからなる。
例えば、上述の標識の使用など、当業者により、任意の標識法を使用することができると理解される。
【0165】
好ましい実施形態では、被験体においてc−Met発現腫瘍の存在および/または場所をin vitro検出するのに有用な本発明によるキットは、該抗c−Met抗体とc−Metの間の結合程度を検出するのに有用な試薬をさらに含んでなる。
【0166】
別の好ましい実施形態では、c−Met発現腫瘍におけるc−Metの発現レベルのin vitro決定に有用な本発明のキットは、該標識抗体とc−Metの間の結合レベルを定量するのに有用な試薬をさらに含んでなる。
【0167】
さらに別の実施形態では、腫瘍のc−Met状態のin vitro判定に有用な本発明によるキットは、
i)該標識抗体とc−Metの間の結合程度を検出するのに有用な試薬と、
ii)c−Met発現レベルのスコア付けに有用な陽性対照サンプルおよび陰性対照サンプル
をさらに含んでなる。
【0168】
腫瘍のc−Met状態のin vitro判定のための該キットは、ネズミ抗体に特異的なポリクローナル抗体をさらに含むことができ、好ましくは、該ネズミ抗体に特異的なポリクローナル抗体は標識される。
【0169】
本発明の他の特徴および利点は、実施例および図面による一連の記載において明らかとなる。図面の凡例を以下に示す。
【実施例】
【0170】
実施例1:診断目的で使用することができる、cMetに対する抗体の作製および選択
−免疫誘導工程
抗cMet抗体を作製するため、8週齢のBALB/cマウスを、その原形質膜上にcMetを発現するCHOトランスフェクト細胞系統で皮下に3〜5回(20×10細胞/用量/マウス)免疫するか、または初回免疫誘導用の完全フロインドアジュバントと追加免疫誘導用の不完全フロインドアジュバントを混合した、cMet細胞外ドメイン融合タンパク質(10〜15μg/用量/マウス)(R&D Systems、カタログ番号358MT)またはこの組換えタンパク質のフラグメントで2〜3回免疫した。マウスにCHO−cMeT細胞と組換えタンパク質の双方を施す混合プロトコールも実施した。細胞融合の3日前に、マウスに組換えタンパク質またはフラグメントでi.p.またはi.v.に追加免疫を行った。次いで、マウスの脾臓を摘出し、SP2/0−Agl4骨髄腫細胞(ATCC)と融合し、HAT選択を行った。一般に、とりわけ、ネズミ起源の、モノクローナル抗体またはそれらの機能的フラグメントの調製については、特に、手引書"Antibodies" (Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor NY, pp. 726, 1988)に記載されている技術またはKohler and Milsteinによって記載されたハイブリドーマ調製技術(Nature, 256:495-497,1975)を参照することができる。
−224D10についてのスクリーニング工程
【0171】
得られたハイブリドーマを、最初に、ELISAによりcMet組換えタンパク質に対してスクリーニングした。要するに、組換えヒトcMet−Fcタンパク質(R&D systems)をImmulon II 96ウェルプレートへ4℃で一晩コーティングし、0.5%ゼラチン溶液での1時間のブロッキング工程後に、用量範囲のm224G10抗体を37℃でさらに1時間加えた。次いで、プレートを洗浄し、ヤギ抗マウス(Jackson)特異的IgG HRPを37℃で1時間加えた。TMB基質溶液を使用して反応の発色を行った。次いで、生産された抗体が腫瘍細胞上の天然受容体も認識し得ることを確認するために、FACS分析により、中〜高レベルのcMetを発現する、A459細胞系統およびNCI−H441細胞系統に対して、第2のスクリーニングを行った。そのために、2×10細胞を、濃度範囲の非結合の224D10 Mabまたは9G4(IgG1アイソタイプ対照Mab)のいずれかとともに4℃で20分間インキュベートした。1%BSAおよび0.01%NaNを添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した後、細胞を二次抗体であるヤギ抗マウスAlexa 488(希釈溶液1/500)とともに4℃で20分間インキュベートした。1%BSAおよび0.1%NaNを添加したPBSでさらに3回洗浄した後、FACS(Facscalibur, Becton-Dickinson)により細胞を分析した。少なくとも5000個の細胞を評価し、蛍光強度の平均値を計算した。
【0172】
これらの2つの試験における陽性反応体を増幅し、クローニングし、ハイブリドーマセットを回収し、精製し、放射性標識HGFとの競合不在についてスクリーニングした。実際に、診断用抗体は、通常、患者の選択に必要であり、治療用抗体を用いて治療する患者の標的受容体の挙動に従うバイオマーカーとしても必要である。この後者の点に関して、考慮する主要な基準は、診断用抗体は、治療用抗体によって認識されるエピトープとは異なるエピトープと結合しなければならないということである。増殖因子受容体に対する治療用中和抗体の目標の1つは、リガンド結合を阻害することである。その点に関して、診断用抗体の選択中、リガンド結合を妨げないものを選択してもよい。その特性を検証するために、放射性標識HGFとの抗体の競合アッセイを計画した。要するに、プロテインA FlashPlate 96ウェルマイクロプレート(Perkin Elmer)を、PBS中0.5%ゼラチン溶液でブロッキングした(室温で2時間)後、組換えcMet−Fcタンパク質(R&D)により4℃で一晩コーティングした。空いて残っているプロテインA部位を、無関連のhIgGにより室温で2時間さらに飽和させた。各工程後にはプレートをPBSで洗浄した。競合アッセイでは、固定化されたcMetに対する200pMの[125I]−HGF(比活性約2,000Ci/mmol)の結合を、PBS pH7.4中0.1pM〜1μMの範囲の、種々の濃度の、試験する抗cMetモノクローナル抗体またはHGF(R&D Systems)の存在下で測定した。HGFを置き換える能力で知られている抗体(224G11、11E1および5D5)を実験の陽性対照として含めた。5D5 Mabは、Genentechにより作製されている、ATCCでハイブリドーマとして入手可能な抗体である。9G4として記載されているネズミIgG1を、アイソタイプ対照として使用した。次いで、プレートを室温で6時間インキュベートし、Packard Top Countマイクロプレートシンチレーションカウンターで計数した。非特異的結合は、1μMのHGFの存在下で測定した。
【0173】
最後に、cMetを発現する腫瘍異種移植片のパラフィン包埋切片での最後のcMet認識試験のために、上記の3つの基準を満たしたMab[i)ELISA試験においてcMetを認識すること、ii)天然cMetへ結合することおよびiii)放射性標識リガンドと競合しないこと]を選択した。その評価のために、U87−MG異種移植片の腫瘍切片を脱パラフィン処理し、再水和し、熱処理によるエピトープの賦活化のために、98℃で予熱した沸騰浴のTarget Retrieval Buffer 1X(Dako S1699)に98℃で30分間、その後、Target Retrieval Bufferにさらに30分間入れた。Tris緩衝生理食塩水−0.05%tween 20(TBS−T)(Dako S3006)で3回洗浄した後、ペルオキシダーゼブロッキング試薬(Dako K4007)を5分間使用して内因性ペルオキシダーゼ活性をブロッキングした。切片をTBS−Tで洗浄し、ブロッキング試薬(UltraV block−TA−125UB−LabVision)とともに5分間インキュベートした後、cMetマウスモノクローナルを試験抗体(5μg/ml)に加えた。マウスIgG1/κ(5μg/ml、X0931、Dako)を陰性対照として使用した。次いで、切片を4℃で一晩インキュベートし、TBS−Tで洗浄し、biotinylated link universal(LSAB+、Dako K0679)とともに室温で15分間インキュベートした。TBS−Tで洗浄した後、切片を、Streptavidin−peroxydase complex universal(LSAB+、Dako K0679)とともにさらに15分間インキュベートした。褐色の反応産物の発色のためにジアミノベンジジンを使用した。
【0174】
一連の融合の後、ネズミ224D10(m224D10)抗体がcMet陽性腫瘍診断の候補と確認された。図1に例示されるように、m224D10は、ELISAアッセイ(図1A)でも、cMetを発現することが分かっているA549細胞系統およびNCI−H441細胞系統の表面でも(図1B)cMetを認識することができる。
【0175】
次いで、m224D10を放射性標識HGF置換試験により検証した。図2では、全特異的[125I]−HGF結合の割合を、片対数グラフにリガンド濃度の関数としてプロットし、放射性リガンドの結合を50%阻害するのに要する種々の阻害剤の濃度(IC50)を、得られたS字形競合曲線のグラフを用いて求めた。予想通り、非放射性標識HGFは、固定化されたcMetに対する[125I]−HGFの結合に完全に置き換わることができたが、一方、対照抗体9G4はHGF遮断活性を示さなかった。陽性対照として使用した、抗cMet Mab 224G11、11E1および5D5は、固定化されたcMetに対する[125I]−HGFの結合を阻害することができ、IC50値はそれぞれ、3.6nM、42nMおよび4.4nMであった。Mab
【0176】
m224D10は、[125I]−HGFに置き換わることができず、免疫組織化学(IHC)研究用に選択した。
図3Bに示される結果により、m224G10が、cMet標的療法に対して特に感受性が高いことが分かっているU87−MG異種移植腫瘍上のcMetを認識し得ることが立証された。予想通り、IgG1アイソタイプ対照では染色が観察されなかった(図3A)。これらの結果に基づき、224D10 Mabを利用して腫瘍上のcMetにスコアをつけることができるかどうかを判断するために、実験を計画した。
−221C9についてのスクリーニング工程
【0177】
得られたハイブリドーマを、最初に、ELISAにより二量体または単量体のcMet組換えタンパク質に対してスクリーニングした。要するに、組換えヒトcMet(二量体または単量体の)タンパク質をImmulon II 96ウェルプレートへ4℃で一晩コーティングし、0.5%ゼラチン溶液での1時間のブロッキング工程後に、単一ハイブリドーマ上清を37℃でさらに1時間加えた。次いで、プレートを洗浄し、ヤギ抗マウス(Jackson)特異的IgG HRPを37℃で1時間加えた。TMB基質溶液を使用して反応の発色を行った。次いで、生産された抗体が腫瘍細胞上の天然受容体も認識し得ることを確認するために、FACS分析により、中〜高レベルのcMetを発現するA549細胞系統に対して、第2のスクリーニングを行った。そのために、2×10細胞を、10μg/mlのm221C9またはm10D9(IgG1アイソタイプ対照Mab)とともに4℃で20分間インキュベートした。1%BSAおよび0.01%NaNを添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した後、細胞を二次抗体であるヤギ抗マウスAlexa 488(希釈溶液1/500)とともに4℃で20分間インキュベートした。1%BSAおよび0.1%NaNを添加したPBSでさらに3回洗浄した後、FACS(Facscalibur, Becton-Dickinson)により細胞を分析した。少なくとも5000個の細胞を評価し、蛍光強度の平均値を計算した。
【0178】
これらの2つの試験での陽性ハイブリドーマを増幅し、クローニングし、アイソタイプを決定し、増殖させた。次いで、新たなハイブリドーマ上清(new hybrido supernatants)を集め、それらのIgG含量を決定した。5種のヒト腫瘍性細胞系統(A549、BXPC3、MCF7、U87MGおよびHepG2)のパネルで相補的サイトメトリー分析を行った。これらの細胞系統は総て、ATCCより提供を受けた。得られたデータは、図4に示し、MFI値は下に表6において示している。
【0179】
表6
【表8】

【0180】
精製221C9抗体を用いて相補的実験を行った。単量体cMetタンパク質および二量体cMetタンパク質の双方において一次抗体滴定を行った。
滴定曲線は図5に示している。どちらのcMet受容体形態に対しても同様の親和性が観察された。これらのELISAを行うために、ヒト二量体cMetタンパク質(R&D sytems、カタログ番号358MT)を、PBS中0.25μg/mlの濃度で、4℃で一晩コーティングする。プレート(Costar #3690)を0.5%ゼラチン溶液により37℃で2時間飽和させた後、ハイブリドーマ上清を37℃で1時間インキュベートする。一度、PBSで洗い流し、抗マウスHRP−抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号115−035−164)をELISAバッファー(PBS中、0.1%ゼラチン/0.05%Tween 20)での1/5000希釈溶液で各ウェルに加え、これらのプレートを37℃で1時間インキュベートする。PBSで3回洗浄した後、50μlのTMB基質(Uptima)を加えることによりペルオキシダーゼ(peroxydase)の活性を明らかにする。この反応を室温で5分間生じさせる。50μl/ウェルの1M HSO溶液を加えることにより反応を停止させ、プレートリーダーにより450nmで読み取る。単量体cMetに対しても同様のプロトコールを実施し、その場合には、タンパク質を5μg/mlでコーティングした。
【0181】
最後に、221C9 Mabは上記の2つの基準、(i)ELISA試験においてcMetを認識すること、(ii)ヒト腫瘍性細胞系統の表面において発現される天然cMetへ結合することを満たした。
【0182】
実施例2:m224D10 Mabおよびm221C9 Mabを用いたcMet発現についての組織の評価
上記のプロトコールを用いて、可変レベルのcMetを発現しているパラフィン包埋ヒト腫瘍組織セットを、m224D10 Mabおよびm221C9 Mabそれぞれで染色した。
m224D10 Mabについては図6に、m221C9 Mabについては図7に示される結果により、2つの腫瘍タイプでは、m224D10およびm221C9の双方とも、可変レベルのcMetを有するヒト腫瘍を識別することができることが立証された。これらの抗体を使用して、腫瘍を以下のように評価することができる:
【0183】
0または陰性:膜染色が観察されなかった陰性腫瘍または観察された膜染色細胞が10%未満であった陰性腫瘍、
:10%を超える腫瘍細胞でわずかに観察される染色、
:10%を超える腫瘍細胞で観察される中程度の完全な膜染色、
:10%を超える腫瘍細胞で強い完全な染色。
【0184】
実施例3:224D10競合実験
すでに上に述べたように、診断用Mabは、標的受容体のダウンレギュレーションを誘導する治療用抗体に対する「応答マーカー」としても使用することができる。その点に関して、処置した患者において、血液または生検材料の採取を行い、cMet状態について解析することができる。そのために、使用する診断用抗体は、治療用抗体によってターゲッティングされるエピトープとは異なるエピトープを認識しなければならない。治療用抗体は通常、HGFに置き換わることができるため、リガンド置換について競合しない診断用抗体の選択は、総ての治療用Mabに対する応答マーカーとして有用であり得る。
この実施例では、224D10を応答マーカーとして使用し得ることを立証するために、224D10と多くの治療用Mabとの競合実験を実施した。
【0185】
治療用抗cMet Mab 11E1、227H1、224G11および5D5 Mab(ATCCでハイブリドーマとして入手可能な、ネズミ型(the murin form)one−armed 5D5である)をbiacore実験により研究した。要するに、CM5センサーチップを、フローセル1および2上で、アミンカップリングキットを使用して供給業者の使用説明書に従って抗ポリヒスチジンMabを共有結合することによって活性化する。ランニングバッファーはHBS−EPバッファーである。実験は、25℃、流速30μl/分で実施する。HGF−R/Fcキメラタンパク質は、ランニングバッファー中10μg/mlの濃度で使用し、フローセル2に1分間注入した。一般に、およそ190RUのcMet−Fcが捕捉された。フローセル1は、Mabの非特異的結合の評価のための参照として用いた。一次Mab(20μg/ml)を両フローセルに2分間注入する。次いで、二次抗体(20μg/ml)を両フローセルに注入した。特異なFc2−Fc1共鳴信号が記録される。各サイクルの終了時に、グリシンpH1.5再生バッファーを両フローセルに30分間注入してcMetタンパク質およびMabタンパク質を廃棄することによりセンサーチップを再生した。
【0186】
第1の実験は、一次抗体として11E1を、二次抗体として224D10を用いて実施される(図8参照)。この実験では、11E1および224D10がcMet−Fc分子の表面で2つの遠位エピトープ領域に結合することが示される。第2の実験は、一次抗体として224G11を、二次抗体として224D10を用いて実施される(図9参照)。この実験では、224G11および224D10もまた2つの遠位領域に結合することが示される。第3の実験は、一次抗体として5D5を、二次抗体として224D10を用いて実施される(図10参照)。この場合もまた、この実験で、5D5および224D10が2つの遠位領域に結合することが示される。結論として、224D10は、11E1、224G11および5D5の結合部位のcMet分子の遠位領域に結合する。同様のBiacoreプロトコールを用いて得られた予備データで、Pfizerの13.3.2抗cMet抗体が11E1と同じエピトープマッピング群に属すことが示されたため(図ll)、224D10と13.3.2は、この組合せで検証されたことがなかったとしても、同じcMet分子上に同時に結合することができると我々は推測することができる。
【0187】
224G11と同じエピトープ群に属す227H1についても同様に(図11)、227H1抗体と224D10抗体はcMetに同時に結合することができると見込まれる。最後に、5D5と同じエピトープマッピング群に属す223C4(図11)は、224D10と同時にcMetに結合することができると見込まれる。
【0188】
実施例4:221C9抗体の存在下で実施されるHGF競合実験
診断用Mabをさらに特性評価するために、HGF競合アッセイを実施した。
試験するMabの存在下または不在下でcMetタンパク質を含んでなる第1の反応混合物を、独立した飽和(PBS 1X中0.5%ゼラチン)プレートで調製する。ネズミ抗体(参照および研究するMab)の連続1:2希釈(12カラムで40μg/mlから出発)を行う。次いで、0.8μg/mlのrh cMet−Fcタンパク質を加える(RDSystems、参照358−MT/CF)。但し、陰性対照系統はELISA希釈液(PBS 1X中、0.1%ゼラチン、0.05%Tween 20)しか含まない。ホモジナイゼーション後、競合サンプルを、PBS中0.3μg/ml rhHGF溶液(RDSystems、参照294−HGN/CF)が入ったHGFコーティングプレート上に添加する。インキュベーションと数回の洗浄の後に、ヤギ抗ヒトIgG−HRP(Jackson、参照109−035−098)を使用して、結合しているcMetタンパク質を検出する。一度、結合させたら、TMB基質をプレートに加える。HSO酸性溶液を加えることにより反応を停止させ、得られた光学濃度を、マイクロプレートリーダーを使用して450nmで読み取る。
【0189】
この実験は、cMet−Fc組換えタンパク質の存在下または不在下で221C9を用いて実施される(図12参照)。この実験では、221C9がその固定化リガンド受容体上でのcMet結合に関して競合し得ることが示される。しかしながら、20μg/mlの221C9の存在下ではcMetの部分的な結合しか観察されない。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1A】m224D10 MabによるcMetの認識、ELISA(図A)およびFACS(図B)。
【図1B】m224D10 MabによるcMetの認識、ELISA(図A)およびFACS(図B)。
【図2】[125I]−HGF結合阻害実験。全特異的[125I]−HGF結合(単位:%)を、片対数グラフにリガンド濃度の関数としてプロットした。特異的結合値は、三連で実施した実験の平均である。
【図3A】アイソタイプ対照(図3A)およびm224D10 Mab(図3B)で染色したU87−MG異種移植腫瘍のパラフィン包埋切片のIHC分析。
【図3B】アイソタイプ対照(図3A)およびm224D10 Mab(図3B)で染色したU87−MG異種移植腫瘍のパラフィン包埋切片のIHC分析。
【図4】m221C9 MabによるcMetの認識、FACS。
【図5A】固定化された二量体(A)および単量体(B)のcMetタンパク質に対する221C9 Mabの滴定曲線。
【図5B】固定化された二量体(A)および単量体(B)のcMetタンパク質に対する221C9 Mabの滴定曲線。
【図6】種々のレベルのcMetを発現する乳房(A)および胃(B)腫瘍組織のパラフィン包埋切片の、m224D10でのIHC染色。
【図7】種々のレベルのcMetを発現する乳房(A)および胃(B)腫瘍組織のパラフィン包埋切片の、m221C9でのIHC染色。
【図8】抗tag−His抗体により活性化されたCM5センサーチップのフローセル2上に捕捉されたcMet−Fcの201.7 RUにおけるMab 11E1および224D10の連続的注入のセンサーグラム。
【図9】抗tag−His抗体により活性化されたCM5センサーチップのフローセル2上に捕捉されたcMet−Fcの203.4 RUにおけるMab 224G11および224D10の連続的注入のセンサーグラム。
【図10】抗tag−His抗体により活性化されたCM5センサーチップのフローセル2上に捕捉されたcMet−Fcの203.6 RUにおけるMab 5D5および224D10の連続的注入のセンサーグラム。
【図11】7種の抗cMet抗体のエピトープマッピングスキーム。矢印は、この研究のために実施した3つの実験を示している。灰色の四角は、224D10と用いて試験していない抗体を示している。
【図12】m221C9 MabとのHGF競合アッセイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも次の3つのCDR、すなわち、IMGTナンバリング体系に従って定義されるCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号55の配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号56の配列を含んでなり、かつ、CDR−H3は配列番号57の配列を含んでなる)を含んでなる重鎖;および/またはii)少なくとも次の3つのCDR、すなわち、IMGTナンバリング体系に従って定義されるCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号58の配列を含んでなり、CDR−L2は配列番号59の配列を含んでなり、かつ、CDR−L3は配列番号60の配列を含んでなる)を含んでなる軽鎖を含んでなる、c−Metタンパク質と特異的に結合することができる単離された抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体。
【請求項2】
a)IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号7の配列を有するCDR−H1、配列番号2の配列を有するCDR−H2、および配列番号8の配列を有するCDR−H3を含んでなる重鎖、および
b)IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号29の配列を有するCDR−H1、配列番号30の配列を有するCDR−H2、および配列番号31の配列を有するCDR−H3を含んでなる重鎖
からなる群から選択される重鎖を含んでなる、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体。
【請求項3】
a)IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号4の配列を有するCDR−L1、配列番号5の配列を有するCDR−L2、および配列番号6の配列を有するCDR−L3を含んでなる軽鎖、および
b)IMGTナンバリング体系に従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号32の配列を有するCDR−L1、配列番号33の配列を有するCDR−L2、および配列番号34の配列を有するCDR−L3を含んでなる軽鎖
からなる群から選択される軽鎖を含んでなる、請求項1に記載の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体。
【請求項4】
a)
IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号7の配列を有するCDR−H1、配列番号2の配列を有するCDR−H2、および配列番号8の配列を有するCDR−H3を含んでなる重鎖と、
IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号4の配列を有するCDR−L1、配列番号5の配列を有するCDR−L2、および配列番号6の配列を有するCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなる抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体;および
b)
IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号29の配列を有するCDR−H1、配列番号30の配列を有するCDR−H2、および配列番号31の配列を有するCDR−H3を含んでなる重鎖と
IMGTに従って定義される次の3つのCDR、それぞれ配列番号32の配列を有するCDR−L1、配列番号33の配列を有するCDR−L2、および配列番号34の配列を有するCDR−L3を含んでなる軽鎖と
を含んでなる抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体。
【請求項5】
a)配列番号13のアミノ酸配列を含んでなる配列の重鎖可変ドメインと配列番号14のアミノ酸配列を含んでなる配列の軽鎖可変ドメインとを含んでなる、抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体;および
b)配列番号40のアミノ酸配列を含んでなる配列の重鎖可変ドメインと配列番号41のアミノ酸配列を含んでなる配列の軽鎖可変ドメインとを含んでなる、抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体
からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体。
【請求項6】
ネズミ抗体としての、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体。
【請求項7】
リガンドHGFの、c−Metタンパク質への結合を遮断しない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体。
【請求項8】
2008年3月12日にI−3949番としてCNCM, Institut Pasteur, Paris, Franceに寄託されたハイブリドーマおよび2010年1月14日にI−4273番としてCNCM, Institut Pasteur, Paris, Franceに寄託されたハイブリドーマから選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体を分泌することができるネズミハイブリドーマ。
【請求項9】
次の核酸:
a)請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸、DNAまたはRNA;
b)配列番号15〜26または42〜52の配列からなる群から選択される配列を含んでなるDNA配列を含んでなる核酸;
c)配列番号27、28、53または54の配列を含んでなるDNA配列を含んでなる核酸;
d)a)、b)またはc)に定義される核酸の対応するRNA核酸;
e)a)、b)およびc)に定義される核酸の相補的核酸;および
f)高ストリンジェント条件下で、配列番号15〜28または42〜54の配列、またはその相補的配列のCDRの少なくとも1つとハイブリダイズすることができる少なくとも18のヌクレオチドの核酸
から選択される、単離された核酸。
【請求項10】
cMetの発現に関連する腫瘍形成性障害をin vitroにおいて診断するため、またはcMetの発現に関連する腫瘍形成性障害の発症の予後をin vivoにおいて判定するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の使用。
【請求項11】
被験体においてcMet発現腫瘍の存在および/または場所をin vitroにおいて検出する方法であって、(a)被験体からのサンプルを請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体と接触させる工程、および(b)該抗体とサンプルとの結合を検出する工程を含んでなる、方法。
【請求項12】
被験体からのcMet発現腫瘍におけるcMetの発現レベルをin vitroで検出する方法であって、(a’)被験体からのサンプルと請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を接触させる工程、および(b’)該サンプルにおいてcMetと結合する抗体のレベルを定量する工程を含んでなる、方法。
【請求項13】
c−Met発現レベルが、免疫組織化学(IHC)によって測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
cMet発現腫瘍をin vitroにおいて診断する、または被験体におけるcMet発現腫瘍の発症に関して予後をin vitroにおいて判定する方法であって、(i)請求項12に従ってcMetの発現レベルを判定する工程、および(ii)工程(i)の発現レベルを、正常組織のcMetの参照発現レベルと比較する工程を含んでなる、方法。
【請求項15】
被験体の腫瘍のc−Met状態をin vitroで判定する方法であって、(1)請求項12に従ってc−Metの発現レベルを判定する工程、(2)該腫瘍のc−Met発現レベルのスコアを付ける工程、および(3)該スコアを対照サンプルから得られたものと比較する工程を含んでなる、方法。
【請求項16】
前記スコア付けが、染色強度および陽性細胞のパーセンテージである2つのパラメーターに基づく適当なスケールの使用を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記適当なスケールが、0〜3のスケールであり、腫瘍細胞に膜反応性がない場合は0、および10%を超える腫瘍細胞に強い完全な反応性が見られる場合は3のスコアが付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記適当なスケールが、0〜3のスケールであり、腫瘍細胞に膜反応性がない場合は0;10%を超える腫瘍細胞にわずかな認知可能な膜反応性が見られる場合には1;10%を超える腫瘍細胞に弱い〜中程度の完全な膜反応性が見られる場合には2;および10%を超える腫瘍細胞に強い完全な反応性が見られる場合には3のスコアが付けられる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
腫瘍が、スコア2または3のc−Met(+)である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
腫瘍形成性障害が、抗c−Met抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体による処置に感受性があるかどうかを判定する方法であって、(a)請求項19に従って被験体の腫瘍のc−Met状態をin vitroにおいて判定する工程、および(b)その状態がc−Met(+)であれば、その腫瘍形成性障害は抗cMet抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体による処置に感受性があると判定する工程を含んでなる、方法。
【請求項21】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗c−Met抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を少なくとも含んでなり、該抗体が好ましくは標識されている、キット。
【請求項22】
該抗c−Met抗体とc−Metの間の結合程度を検出するのに有用な試薬をさらに含んでなる、被験体においてc−Met発現腫瘍の存在および/または場所をin vitroで検出するための請求項21に記載のキット。
【請求項23】
該抗c−Met抗体とc−Metの間の結合レベルを定量するのに有用な試薬をさらに含んでなる、c−Met発現腫瘍におけるc−Metの発現レベルをin vitroで判定するための請求項21に記載のキット。
【請求項24】
i)該抗c−Met抗体とc−Metの間の結合程度を検出するのに有用な試薬と、
ii)c−Met発現レベルのスコア付けに有用な陽性対照サンプルおよび陰性対照サンプル
をさらに含んでなる、腫瘍のc−Met状態をin vitroで判定するための請求項21または22に記載のキット。
【請求項25】
ネズミ抗体に特異的なポリクローナル抗体をさらに含んでなり、該ネズミ抗体に特異的なポリクローナル抗体が好ましくは標識されている、腫瘍のc−Met状態をin vitroで判定するための請求項24に記載のキット。

【図1A】
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【図2】
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【図5A】
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【図5B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図1B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−502213(P2013−502213A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525183(P2012−525183)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062271
【国際公開番号】WO2011/020925
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】