説明

癌の治療のためのCDCP1に対する抗体

本発明は、癌の治療のためのCUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合するヒトCDCP1に特異的に結合する抗体に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療のための、CUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合するヒトCDCP1に対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトCDCP1((CUBドメイン含有タンパク質1、B345、CD318、SIMA135、TRASK;配列番号:1及び変異R525Q(つまり、配列番号:1のアミノ酸位置525におけるアルギニン(R)のグルタミン(Q)との置換)及び/又は変異G709D(つまり、配列番号:1のアミノ酸位置709におけるグリセリン(G)のアスパラギン酸(D)との置換)を含む変異体)は3つの細胞外CUBドメインを含む膜貫通タンパク質である。このタンパク質は乳癌、結腸癌及び肺癌において過剰発現することが見出されている。その発現レベルは癌細胞の転移能と相関している。それは癌細胞株においてチロシンリン酸化されることが示されている。(国際公開第2002/004508号; Scherl-Mostageer, M.等, Oncogene 20 (2001) 4402-8; Hooper, J., D.等, Oncogene 22 (2003) 1783-94; Perry, S., E.等 FEBS Lett. 581 (2007) 1137-42;Brown, T., A.等 J. Biol. Chem. 279 (2004) 14772-14783;Ota, T.等, Nat. Genet. 36 (2004) 40-45)。区別されるアイソフォームをコードする選択的スプライシング転写変異体が報告されている。
【0003】
国際公開第2002/004508号は腫瘍関連抗原B345としてCDCP1に言及している。国際公開第2004/074481号は転移性腫瘍細胞に発現された糖タンパク質抗原SIMA135としてのCDCP1に関している。国際公開第2005/042102号は卵巣癌に関与するタンパク質としてのCDCP1に関している。国際公開第2007/005502号はCDCP1を標的とする疾患の治療方法及び組成物に関している。
【0004】
米国特許出願公開第2004/0053343号(及びConze, T.等, Ann. N. Y. Acad. Sci. 996 (2003) 222-6及びBuehring, H.J.等, Stem Cells 22 (2004) 334-43)は同定のため及び/又はある種の幹細胞集団のためのCDCP1抗体に関する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、癌の治療のためのCUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体である。
【0006】
本発明は、癌の治療のためのCUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とし、
a)重鎖可変ドメインが配列番号:7であり、軽鎖可変ドメインが配列番号:8であり、
b)重鎖可変ドメインが配列番号:15であり、軽鎖可変ドメインが配列番号:16であり、又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号:23であり、軽鎖可変ドメインが配列番号:24であり、又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号:31であり、軽鎖可変ドメインが配列番号:32である
ことを更に特徴とする抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0007】
本発明は、癌の治療のためのCUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とし、
a)重鎖可変ドメインが配列番号:9のCDRH1領域、配列番号:10のCDRH2領域、及び配列番号:11のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:12のCDRL1領域、配列番号:13のCDRL2領域、及び配列番号:14のCDRL3領域を含み、又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号:17のCDRH1領域、配列番号:18のCDRH2領域、及び配列番号:19のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:20のCDRL1領域、配列番号:21のCDRL2領域、及び配列番号:22のCDRL3領域を含み、又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号:25のCDRH1領域、配列番号:26のCDRH2領域、及び配列番号:27のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:28のCDRL1領域、配列番号:29のCDRL2領域、及び配列番号:30のCDRL3領域を含む
ことを更に特徴とする抗体を更に含む。
【0008】
本発明は、上記抗体がヒトIgG1サブクラスのものであることを特徴とする本発明に係る抗体を更に含む。
【0009】
本発明の他の態様は、癌の治療のための、CUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体を含有する薬学的組成物である。
【0010】
本発明の他の態様は、癌の治療のための医薬の調製における、CUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体の使用である。
【0011】
本発明の他の態様は、癌に罹患している患者を、治療を必要とする該患者にCUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体を投与することによって治療する方法である。
【0012】
本発明は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号:15であり、軽鎖可変ドメインが配列番号:16であり、又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号:23であり、軽鎖可変ドメインが配列番号:24であり、又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号:31であり、軽鎖可変ドメインが配列番号:32である
ことを特徴とする本発明に係る抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0013】
本発明は、
a)重鎖可変ドメインが配列番号:9のCDRH1領域、配列番号:10のCDRH2領域、及び配列番号:11のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:12のCDRL1領域、配列番号:13のCDRL2領域、及び配列番号:14のCDRL3領域を含み、又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号:17のCDRH1領域、配列番号:18のCDRH2領域、及び配列番号:19のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:20のCDRL1領域、配列番号:21のCDRL2領域、及び配列番号:22のCDRL3領域を含み、又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号:25のCDRH1領域、配列番号:26のCDRH2領域、及び配列番号:27のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:28のCDRL1領域、配列番号:29のCDRL2領域、及び配列番号:30のCDRL3領域を含む
ことを特徴とする本発明に係る抗体を更に含む。
【0014】
好ましくは、上記抗体は、上記抗体がヒトIgG1サブクラスのものであることを特徴とする。本発明は上記抗体を含有する薬学的組成物を更に含む。本発明は、癌の治療のための医薬の調製のための上記抗体を更に含む。本発明は、癌に罹患している患者を、治療を必要とする上記患者に上記抗体を投与することによって治療する方法を更に含む。
【0015】
本発明は本発明に係る抗体をコードする核酸を提供する。本発明は、原核生物又は真核生物宿主細胞中に上記核酸を発現可能な本発明に係る核酸を含む発現ベクター、及び本発明に係る抗体の組換え生産のためにかかるベクターを含む宿主細胞を更に提供する。
【0016】
本発明は本発明に係るベクターを含む原核生物又は真核生物宿主細胞を更に含む。
【0017】
本発明は、原核生物又は真核生物宿主細胞中に本発明に係る核酸を発現させ、上記細胞又は細胞培養上清から上記抗体を回収することを特徴とする、本発明に係る組換え抗体の製造方法を更に含む。本発明はかかる組換え方法によって得られる抗体を更に含む。
【0018】
驚いたことに、CUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とするCDCP1に特異的に結合する抗体が、例えばCUB1(寄託番号DSM ACC2569)のようなCDCP1の他のエピトープに結合するCDCP1抗体と比較して癌の治療に特に有用であることが今見出された。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
CUB4抗体は、配列番号:7の重鎖可変ドメイン(VH)と配列番号:8の軽鎖可変ドメイン(VL)を有するDE10242146(EP1396501、US7541030)からの寄託番号DSM ACC2551で寄託された抗体を意味する。上記CUB4抗体はヒトCDCP1に特異的に結合する。(番号DSM ACC2551(DSMZ)の寄託はEberhard-Karls-University Tuebingen, Univcrsitaetsklinikum Tuebingen, Geissweg 3 72076 Tuebingenによってなされた。)
【0020】
本発明は、癌の治療のためのCUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体を含む。
【0021】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:7で、軽鎖可変ドメインが配列番号:8であることを特徴とする本発明に係る抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0022】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:15で、軽鎖可変ドメインが配列番号:16であることを特徴とする本発明に係る抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0023】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:23で、軽鎖可変ドメインが配列番号:24であることを特徴とする本発明に係る抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0024】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:31で、軽鎖可変ドメインが配列番号:32であることを特徴とする本発明に係る抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0025】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:9のCDRH1領域、配列番号:10のCDRH2領域、及び配列番号:11のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:12のCDRL1領域、配列番号:13のCDRL2領域、及び配列番号:14のCDRL3領域を含むことを特徴とする本発明に係る抗体を更に含み、又は
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:17のCDRH1領域、配列番号:18のCDRH2領域、及び配列番号:19のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:20のCDRL1領域、配列番号:21のCDRL2領域、及び配列番号:22のCDRL3領域を含むことを特徴とする本発明に係る抗体を更に含み、又は
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:25のCDRH1領域、配列番号:26のCDRH2領域、及び配列番号:27のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:28のCDRL1領域、配列番号:29のCDRL2領域、及び配列番号:30のCDRL3領域を含むことを特徴とする本発明に係る抗体を更に含む。
【0026】
「抗体」なる用語は、限定されないが、全抗体、抗体断片を含む様々な形態の抗体構造を包含する。本発明に係る抗体は、好ましくは、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は本発明に係る特徴的性質が保持される限り更に遺伝子操作された抗体である。「抗体断片」は、完全長抗体の一部、好ましくはその可変ドメイン、又は少なくともその抗原結合部位を含む。抗体断片の例は、ダイアボディ、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。scFv抗体は、例えばHuston, J.S., Methods in Enzymol. 203 (1991) 46-88に記載されている。加えて、抗体断片は、機能的抗原結合部位に対して、Vドメインの、すなわちVドメインと共にアセンブルし得、又はCDCP1に結合するVドメインの、すなわちVドメインと共にアセンブルし得、それによって本発明に係る抗体の性質をもたらす特性を有する一本鎖ポリペプチドを含む。ここで使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」なる用語は単一のアミノ酸組成の抗体分子の調製物を意味する。「ヒト化抗体」又は「抗体のヒト化型」なる用語は、フレームワーク及び/又は「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのものと比較して異なった種の免疫グロブリンのCDR(例えばCDR3)を含むように改変された抗体を意味する。好ましい実施態様では、マウスCDR(例えばCDR3)がヒト抗体のフレームワーク領域中にグラフトされて、「ヒト化抗体」が調製される(例えばRiechmann, L.等, Nature 332 (1988) 323-327;及びNeuberger, M. S.等, Nature 314 (1985) 268-270を参照)。
【0027】
ここで使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、単一のアミノ酸組成の抗体分子の調製物を意味する。
【0028】
「キメラ抗体」なる用語は、通常は組換えDNA技術によって調製される、マウス由来の可変領域、すなわち結合領域と、異なる供給源又は種由来の定常領域の少なくとも一部を含むモノクローナル抗体を意味する。マウス可変領域及びヒト定常領域を含むキメラ抗体が特に好ましい。そのようなマウス/ヒトキメラ抗体は、マウス免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントと、ヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む発現された免疫グロブリン遺伝子の産物である。本発明によって包含される「キメラ抗体」の他の形態は、クラス又はサブクラスが元の抗体のものから改変され又は変化されたものである。そのような「キメラ」抗体はまた「クラススイッチ抗体」と称される。キメラ抗体を生産するための方法は、今は当該技術分野においてよく知られている一般的な組換えDNA及び遺伝子トランスフェクション技術を含む(例えば、Morrison, S.L.等, Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;米国特許第5202238号及び第5204244号を参照のこと)。
【0029】
ヒトCDCP1((CUBドメイン含有タンパク質1、B345、CD318、SIMA135、TRASK;配列番号:1及び変異R525Q(つまり、配列番号:1のアミノ酸位置525におけるアルギニン(R)のグルタミン(Q)での置換)及び/又は変異G709D(つまり、配列番号:1のアミノ酸位置709におけるグリセリン(G)のアスパラギン酸(D)での置換)を含む変異体)は3つの細胞外CUBドメインを含む膜貫通タンパク質である。このタンパク質は乳癌、結腸癌及び肺癌において過剰発現することが見出されている。その発現レベルは癌細胞の転移能と相関している。それは癌細胞株においてチロシンリン酸化されることが示されている。(国際公開第2002/004508号; Scherl-Mostageer, M.等, Oncogene 20 (2001) 4402-8; Hooper, J., D.等, Oncogene 22 (2003) 1783-94; Perry, S., E.等 FEBS Lett. 581 (2007) 1137-42; Brown, T., A.等 J. Biol. Chem. 279 (2004) 14772-14783; Ota, T.等, Nat. Genet. 36 (2004) 40-45)。区別されるアイソフォームをコードする選択的スプライシング転写変異体が報告されている。
【0030】
「Kabat番号付け」又は「Kabatによる番号付け」又は「EUインデックス」なる用語は、別の記載がない限り、Kabat等(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))におけるEUインデックスを使用する、例えばIgG抗体中における、残基の番号付けとして定義される。
【0031】
ここで使用される場合、「ヒトCDCP1に特異的に結合する」とは、ヒトCDCP1抗原に特異的に結合する抗体を意味する。結合親和性は、1.0×10−8mol/l以下のKD値、好ましくは1.0×10−9mol/l以下のKD値のものである。結合親和性は、標準的な結合アッセイ、例えば表面プラズモン共鳴技術(Biacore(登録商標))を用いて決定される。よって、ここで使用される「ヒトCDCP1に特異的に結合する抗体」は、1.0×10−8mol/l以下のKD(例えば1.0×10−8mol/l−1.0×10−13mol/l、好ましくは1.0×10−9mol/l−1.0×10−12mol/lのKD)の結合親和性をもってヒトCDCP1抗原に結合する抗体を意味する。
【0032】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:15で、軽鎖可変ドメインが配列番号:16であることを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0033】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:23で、軽鎖可変ドメインが配列番号:24であることを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0034】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:31で、軽鎖可変ドメインが配列番号:32であることを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体、又はそのヒト化型を更に含む。
【0035】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:9のCDRH1領域、配列番号:10のCDRH2領域、及び配列番号:11のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:12のCDRL1領域、配列番号:13のCDRL2領域、及び配列番号:14のCDRL3領域を含むことを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体を更に含む。
【0036】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:17のCDRH1領域、配列番号:18のCDRH2領域、及び配列番号:19のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:20のCDRL1領域、配列番号:21のCDRL2領域、及び配列番号:22のCDRL3領域を含むことを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体を更に含む。
【0037】
本発明は、
重鎖可変ドメインが配列番号:25のCDRH1領域、配列番号:26のCDRH2領域、及び配列番号:27のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:28のCDRL1領域、配列番号:29のCDRL2領域、及び配列番号:30のCDRL3領域を含むことを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体を更に含む。
【0038】
「エピトープ」なる用語は、抗体への特異的結合が可能であるヒトCDCP1のタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面グルーピングからなり、通常はエピトープは特異的な三次元構造特性、並びに特異的な電荷特性を有する。コンフォメーション及び非コンフォメーションエピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下で失われることで識別される。
【0039】
ここで使用される「CUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合する」なる用語は、抗体CUB4(寄託番号DSM ACC2551)が結合するCDCP1上の同じエピトープに結合する本発明の抗CDCP1抗体を意味する。本発明の抗CDCP1抗体のエピトープ結合特性は当該技術分野で知られた技術を使用して決定されうる。CDCP1抗体はCDCP1に対する試験抗体の結合を阻害する抗体CUB4(寄託番号DSM ACC2551)の能力を決定するためにインビトロ競合結合阻害アッセイにおいて表面プラズモン共鳴(SPR)によって25℃で測定される(図2を参照)。CUB4と同じエピトープに結合する抗体の結合が阻害され、試験抗体の添加後に結合シグナルは検出されない。(例えば試験抗体の注入時(=0秒)から100秒後に、結合シグナルは注入時におけるシグナルほど高くない;シグナルはRU(相対単位)で測定される)(例えばCDCP1−004、CDCP1−012、CDCP1−015,図3aを参照)。CUB4とは異なったエピトープに対する結合する抗体の結合は阻害されず、結合シグナルは試験抗体の添加後に検出される(例えば注入時(=0秒)から100秒後に、結合シグナルは注入時におけるシグナルより高い;シグナルはRU(相対単位)で測定される)。これは、例えば実施例2に記載するように、BIAcoreアッセイ(Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden)によって調べることができる。
【0040】
ここで使用される「可変ドメイン」(軽鎖の可変ドメイン(VL)、重鎖の可変ドメイン(VH))は、抗体を抗原に結合させることに直接関与する軽鎖及び重鎖の対のそれぞれを示す。可変軽鎖及び重鎖のドメインは、同じ一般構造を有し、各ドメインは、配列が広く保存され、3個の「高頻度可変領域」(又は相補性決定領域、CDR)によって連結される、4個のフレームワーク(FR)領域を含む。フレームワーク領域は、βシートコンフォメーションを採り、CDRは、βシート構造を連結するループを形成しうる。各鎖のCDRは、フレームワーク領域によって三次元構造に保持され、もう一方の鎖由来のCDRと共に抗原結合部位を形成する。抗体の重鎖及び軽鎖CDR3領域は、本発明に係る抗体の結合特異性/親和性に特に重要な役割を果たし、よって本発明の更なる目的を提供する。
【0041】
ここで使用される場合の「抗体の抗原結合部分」なる用語は、抗原結合が起因する抗体のアミノ酸残基を意味する。抗体の抗原結合部分は、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基を含む。本発明の抗体の「抗原結合部分」なる用語は、抗原に対する結合部位の親和性に様々な度合いで寄与する6つの相補性決定領域(CDR)を含みうる。3つの重鎖可変ドメインCDRs(CDRH1、CDRH2及びCDRH3)及び3つの軽鎖可変ドメインCDRs(CDRL1、CDRL2及びCDRL3)が存在する。CDR及びフレームワーク領域(FRs)の度合いは、その領域が配列間の可変性に従って定義されているアミノ酸配列の編集されたデータベースとの比較によって決められる。
【0042】
「フレームワーク」又は「FR」領域は、ここで定義された高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。従って、抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインは、N末端からC末端までドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。CDR及びFR領域は、Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)の標準的な定義に従って決定され、及び/又は「高頻度可変ループ」からの残基である。
【0043】
「核酸」又は「核酸分子」なる用語は、ここで使用される場合、DNA分子及びRNA分子を含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖でありうるが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0044】
この出願内で使用される「アミノ酸」なる用語は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシα−アミノ酸の群を意味する。
【0045】
本発明に係る抗体は、定常領域がヒト由来のものであり、好ましくはヒトIgG1サブクラスのものであることを特徴とする。定常領域は、抗体の重鎖及び軽鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、N末端からC末端方向に、抗体定常重鎖ドメイン1(CH1)、抗体ヒンジ領域(HR)、抗体重鎖定常ドメイン2(CH2)、及び抗体重鎖定常ドメイン3(CH3)、及び場合によってはサブクラスIgEの抗体の場合、抗体重鎖定常ドメイン4(CH4)を含む。軽鎖定常領域は抗体軽鎖定常ドメイン(CL)を含む。抗体軽鎖定常ドメイン(CL)はκ(カッパ)又はλ(ラムダ)でありうる。そのような定常鎖は従来からよく知られており、例えばKabat, E.A.によって記載されている (例えばJohnson, G.及びWu, T., T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218を参照のこと)。例えば、IgG1サブクラスの有用なヒト重鎖定常領域は、配列番号:3のアミノ酸配列を含む。例えば、有用なヒト軽鎖定常領域は、配列番号:4のκ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含み;他の有用なヒト軽鎖定常領域は配列番号:5のλ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0046】
抗体の「Fc部分」は、抗原への抗体の結合に直接的には関与していないが、様々なエフェクター機能を示す。「抗体のFc部分」は当業者にはよく知られた用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて定義される。その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、抗体又は免疫グロブリンはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMというクラスに分類され、これらの幾つかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、IgA1、及びIgA2に更に分類されうる。重鎖定常領域によれば、異なるクラスの免疫グロブリンは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0047】
抗体のFc部分は、補体活性化、C1q結合及びFcレセプター結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞媒介細胞傷害性)及びCDC(補体依存性細胞傷害性)に直接的に関与する。補体活性化(CDC)は、殆どのIgG抗体サブクラスのFc部分への補体因子C1qの結合によって開始される。補体系に対する抗体の影響はある種の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc部分において定義された結合部位によって引き起こされる。このような結合部位は従来から知られており、例えばBoakle, R.J.等, Nature 282 (1979) 742-743;Lukas, T.J.等, J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560;Brunhouse, R.及びCebra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917;Burton, D.R.等, Nature 288 (1980) 338-344; Thommesen, J.E.等, Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004;Idusogie, E.E.等, J. Immunol.164 (2000) 4178-4184;Hezareh, M.等, J. Virology 75 (2001) 12161-12168;Morgan, A.等, Immunology 86 (1995) 319-324; EP0307434によって記載されている。このような結合部位は、例えばL234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331及びP329(Kabat, E.A.のEUインデックスによる番号付け、以下を参照)である。サブクラスIgG1、IgG2及びIgG3の抗体は、通常、補体活性化及びC1q及びC3結合を示す一方、IgG4は補体系を活性化せず、C1q及びC3に結合しない。
【0048】
本発明に係る抗体は、ヒト起源由来のFc部分、好ましくはヒト定常領域の全ての他の部分を含む。ここで使用される場合、「ヒト起源由来のFc部分」なる用語は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のヒト抗体のFc部分、好ましくは、ヒトIgG1サブクラスのFc部分、ヒトIgG1サブクラス由来の変異Fc部分(好ましくはL234A+L235Aの変異を持つもの)、ヒトIgG4サブクラス由来のFc部分又はヒトIgG4サブクラス由来の変異Fc部分(好ましくはS228Pの変異を持つもの)を示す。最も好ましいものは、ヒトIgGサブクラス(例えば配列番号:3を参照)、変異L234A及びL235Aを有するヒトIgGサブクラス、ヒトIgGサブクラス(例えば配列番号:6を参照)、又は変異S228Pを有するヒトIgG4サブクラスのヒト重鎖定常領域である。
【0049】
「抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)」なる用語は、エフェクター細胞の存在下での本発明に係る抗体によるヒト標的細胞の溶解を意味する。ADCCは、好ましくは、新鮮に単離されたPBMCのようなエフェクター細胞又は単球もしくはナチュラルキラー(NK)細胞又は永久に増殖するNK細胞株のようなバフィコート由来の精製エフェクター細胞の存在下でCDCP1発現細胞調製物を本発明に係る抗体で処理することによって測定される。
【0050】
「補体依存性細胞傷害性(CDC)」なる用語は、殆どのIgG抗体サブクラスのFc部分への補体因子C1qの結合により開始されるプロセスを意味する。抗体へのC1qの結合は、いわゆる結合部位における定まったタンパク質間相互作用によって引き起こされる。このようなFc部分結合部位は従来から知られている(上記を参照)。このようなFc部分結合部位は、例えばアミノ酸L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、及びP329(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって特徴付けられる。サブクラスIgG1、IgG2,及びIgG3の抗体は、C1q及びC3結合を含む補体活性化を通常示す一方、IgG4は補体系を活性化させず、C1q及び/又はC3に結合しない。
【0051】
モノクローナル抗体の細胞媒介性エフェクター機能は、例えば、Umana, P. 等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180、及び米国特許第6602684号に記載されているように、それらのオリゴ糖成分を操作することにより亢進せしめることができる。IgG1型抗体は、最も一般的に使用される治療用抗体であり、各CH2ドメインのAsn297に保存されたN結合型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合する2つの二分複合オリゴ糖は、CH2ドメイン間に埋め込まれ、ポリペプチド骨格との広範な接触を形成し、それらの存在は、抗体が抗体依存性細胞傷害性(ADCC)等のエフェクター機能を媒介する上で必須である(Lifely, M.R.等, Glycobiology 5 (1995) 813-822;Jefferis, R. 等, Immunol. Rev. 163 (1998) 59-76;Wright, A.及び Morrison, S.L., Trends Biotechnol. 15 (1997) 26-32)。Umana, P. 等(Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180及び国際公開第99/54342号は、二分オリゴ糖の形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(「GnTIII」)のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における過剰発現が、抗体のインビトロADCC活性を有意に増大させることを示している。Asn297糖鎖の組成の改変又はその消失は、FcγR及びC1qに対する結合にも影響を与える(Umana, P. 等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180;Davies, J. 等, Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294;Mimura, Y. 等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 45539-45547;Radaev, S. 等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 16478-16483;Shields, R.L. 等, J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604;Shields, R.L. 等, J. Biol. Chem. 277 (2002) 26733-26740;Simmons, L.C. 等, J. Immunol. Methods 263 (2002) 133-147)。
【0052】
モノクローナル抗体の細胞媒介性エフェクター機能を亢進せしめる方法は、例えば国際公開第2005/044859号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2007/031875号、Umana, P.等, Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180、国際公開第99/154342号、国際公開第2005/018572号、国際公開第2006/116260号、国際公開第2006/114700号、国際公開第2004/065540号、国際公開第2005/011735号、国際公開第2005/027966号、国際公開第1997/028267号、米国特許出願公開第2006/0134709号、米国特許出願公開第2005/0054048号、米国特許出願公開第2005/0152894号、国際公開第2003/035835号及び国際公開第2000/061739号又は例えばNiwa, R.等, J. Immunol. Methods 306 (2005) 151-160;Shinkawa, T.等, J. Biol. Chem. 278 (2003) 3466-3473;国際公開第03/055993号及び米国特許出願公開第2005/0249722号に報告されている。
【0053】
よって、本発明の一実施態様では、本発明に係る抗体は、(もしそれがIgG1又はIgG3サブクラスのFc部分を含むならば)Asn297での糖鎖で(Kabatによる番号付け)上記糖鎖内のフコースの量が65%以下であるようにグリコシル化されている。他の実施態様では、上記糖鎖内のフコースの量は5%〜65%、好ましくは20%〜40%である。別の実施態様では、フコースの量はAsn297におけるFc領域のオリゴ糖の0%である。本発明において「Asn297」は、Fc領域のおよそ297位に位置するアミノ酸アスパラギンを意味する。抗体の軽微な配列変異に基づいて、Asn297は、幾つかのアミノ酸(通常は、±3アミノ酸以下)を隔てて297位の上流又は下流に、つまり、294位と300位の間に位置する場合がある。一実施態様では、本発明に係るグリコシル化抗体において、IgGサブクラスは、ヒトIgG1サブクラス、又はIgG3サブクラスのものである。更なる実施態様では、上記糖類内において、N−グリコリルノイラミン酸(NGNA)量は1%以下、及び/又はN末端α−1,3−ガラクトースの量は1%以下である。糖鎖は、好ましくはCHO細胞で組換的に発現される抗体のAsn297に結合したN結合型グリカンの特徴を示す。
【0054】
「CHO細胞で組換的に発現される抗体のAsn297に結合したN結合型グリカンの特徴を示す」という用語は、本発明に係る抗体のAsn297における糖鎖が、フコース残基を除き、例えば国際公開第2006/103100号に報告されたもののように、未修飾CHO細胞に発現された同じ抗体のものとオース残基を除いて同じ構造及び糖残基を有していることを示している。
【0055】
この出願中に使用される「NGNA」なる用語は、糖残基N−グリコリルノイラミン酸を意味する。
【0056】
コアがフコシル化された二分岐複合オリゴ糖グリコシル化が2個までのGal残基で終端するので、ヒトIgG1又はIgG3のグリコシル化はAsn297で生じる。IgG1又はIgG3サブクラスのヒト重鎖定常領域は、上掲のKabat, E.A.等、及び Bruggemann, M. 等, J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361;Love, T.W.等, Methods Enzymol. 178 (1989) 515-527に詳細に報告されている。これらの構造は、末端Gal残基の量に依存して、G0、G1(α−1,6−又はα−1,3−)、又はG2グリカン残基と命名される(Raju, T.S., Bioprocess Int. 1 (2003) 44-53)。抗体Fc部分のCHO型のグリコシル化は、例えばRoutier, F.H., Glycoconjugate J. 14 (1997) 201-207に記載されている。非糖修飾CHO宿主細胞に組換的に発現される抗体は、通常、Asn297において、少なくとも85%の量でフコシル化されている。抗体の修飾オリゴ糖はハイブリッド又は複合でありうる。好ましくは、二分岐の還元/非フコシル化オリゴ糖はハイブリッドである。他の実施態様では、二分岐の還元/非フコシル化オリゴ糖は複合である。
【0057】
本発明によれば、「フコースの量」とは、MALDI-TOF質量分析法によって測定され、平均値として算出されるAsn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に関連した、Asn297での糖鎖内の前記糖の量を意味する(例えば国際公開第2008/077546号を参照)。フコースの相対量は、MALDI-TOFによる、N−グリコシダーゼFで処理したサンプル中で同定された全ての糖鎖構造(例えば、複合、ハイブリッド及び高マンノース構造それぞれ)に対するフコース含有構造の割合である。
【0058】
本発明に係る抗体は好ましくは組換え手段によって生産される。このような方法は従来から広く知られており、原核及び真核細胞におけるタンパク質の発現と続く抗体ポリペプチドの単離及び通常は薬物学的に許容可能な純度までの精製を含む。タンパク質の発現のためには、軽鎖及び重鎖をコードする核酸又はその断片が標準的な方法によって発現ベクター中に挿入される。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母、又は大腸菌細胞等の適切な原核又は真核宿主細胞において実施され、抗体は細胞(上清又は溶解後の細胞)から回収される。
【0059】
抗体の組換え生産は従来からよく知られており、例えば、Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S.等, Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-161; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880という概説論文に記載されている。
【0060】
抗体は、全細胞中に、細胞可溶化物中に、又は部分的に精製され又は実質的な純粋な形態で存在しうる。精製は、アルカリ/SDS処理、CsCl分染法、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動法、及び当該技術分野でよく知られた他のものを含む標準的な技術によって、他の細胞性成分又は他の汚染物質、例えば他の細胞性核酸又はタンパク質を除去するために実施される(Ausubel, F.等.(編), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照)。
【0061】
NS0細胞における発現は、例えばBarnes, L.M.等, Cytotechnology 32 (2000) 109-123; Barnes, L.M.等, Biotech. Bioeng. 73 (2001) 261-270によって記載されている。一過性発現は、例えばDurocher, Y.等, Nucl. Acids. Res. 30 (2002) E9によって記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 3833-3837; Carter, P.等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289;及びNorderhaug, L.等, J. Immunol. Methods 204 (1997) 77-87によって記載されている。好ましい一過性発現系(HEK293)は、Schlaeger, E.J.,及びChristensen, K., Cytotechnology 30 (1999) 71-83及びSchlaeger, E.J., J. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199によって記載されている。
【0062】
原核生物に適した制御配列には、例えば、プロモーター、場合によってはオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が含まれる。真核生物細胞は、プロモーター、エンハンサー及びポリアデニル化シグナルを使用することが知られている。
【0063】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係で配されている場合、「作用可能に連結」されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作用可能に連結されており;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作用可能に連結されており;又は、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されている場合、コード配列に作用可能に連結されている。一般に、「作用可能に連結される」とは、連結されるDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合は、近接し、かつ読み枠にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは近接していなくてもよい。連結は、簡便な制限部位におけるライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、一般的な手法に従って使用される。
【0064】
モノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等、一般的な免疫グロブリン精製手順により、培養培地から適切に分離される。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、一般的な手順を使用し、容易に単離し配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNA及びRNAの供給源となりうる。ひとたび単離されると、DNAは発現ベクター内に挿入され得、これがついで宿主細胞、例えばそうでないと免疫グロブリンタンパク質を生産しないHEK293細胞、CHO細胞、又は骨髄腫細胞に形質移入され、宿主細胞において組換えモノクローナル抗体の合成が達成される。
【0065】
ここで使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養」という表現は相互に交換可能に用いられ、全てのそのような標記は子孫を含む。従って、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語句は、初代対象細胞及び何度培養が継代されたかに関わらず初代のものから誘導された培養を含む。また、全ての子孫が、意図的な変異あるいは意図しない変異の影響で、DNA含有物において正確に同一であるわけではないことも理解される。元々の形質転換細胞についてスクリーニングしたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫が含まれる。区別される標記が意図される場合は、文脈から明らかであろう。
【0066】
ここで使用される「形質転換」なる用語は、宿主細胞中へのベクター/核酸のトランスファープロセスを意味する。恐るべき細胞壁障壁のない細胞が宿主細胞として使用される場合、形質移入は、例えばGraham, F., L.,及びvan der Eb, Virology 52 (1973) 456-467により記載されるようなリン酸カルシウム沈殿法により実施される。しかしながら、核注入又はプロトプラスト融合等による細胞中へのDNAの導入のための他の方法がまた使用されうる。原核生物細胞又は実質的な細胞壁構成を含む細胞が使用される場合、例えば一つの形質移入法は、Cohen, S.N.等, PNAS 69 (1972) 2110-2114により記載される塩化カルシウムを使用するカルシウム処理である。
【0067】
ここで使用される場合、「発現」とは、核酸がmRNAに転写されるプロセス、及び/又は転写されたmRNA(また、転写物とも称される)がその後ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に翻訳されるプロセスを意味する。転写物及びコードされたポリペプチドは、集合的には、遺伝子産物と称される。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、真核生物細胞における発現は、mRNAのスプライシングを含みうる。
【0068】
「ベクター」とは、挿入される核酸分子を、宿主細胞中及び/又は宿主細胞間にトランスファーする核酸分子、特に自己複製する核酸分子である。該用語は、DNA又はRNAの細胞中への挿入(例えば、染色体組込み)のために主に機能するベクター、DNA又はRNAの複製のために主に機能するベクターの複製、及びDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳のために機能する発現ベクターを含む。一を越える記載された機能を提供するベクターもまた含まれる。
【0069】
「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞中に導入されると、転写され、ポリペプチドに翻訳され得るポリヌクレオチドである。「発現系」とは、所望される発現産物を生じせしめるように機能しうる発現ベクターから構成される適切な宿主細胞を通常意味する。
【0070】
本発明の一態様は、本発明に係る抗体を含有する薬学的組成物である。本発明の他の態様は、薬学的組成物の製造のための本発明に係る抗体の使用である。本発明の更なる態様は、本発明に係る抗体を含有する薬学的組成物の製造方法である。他の態様では、本発明は、薬学的担体と共に処方されて本発明に係る抗原結合タンパク質を含む組成物、例えば薬学的組成物を提供する。
【0071】
CUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する上記抗体は、例えばCUB1抗体(DE10242146(EP1396501、US7541030)からの寄託番号DSM ACC2569で寄託された抗体)のような他の抗CDCP1抗体と比較して癌の治療に対して特に有用であることが分かった。
【0072】
従って、本発明の一態様は、癌の治療のための上記薬学的組成物である。
本発明の他の態様は、癌の治療のための医薬の製造のための本発明に係るヒト化抗体の使用である。
【0073】
本発明の他の態様は、癌に罹患している患者を、かかる治療を必要とする上記患者に本発明に係るヒト化抗体を投与することにより治療する方法である。
【0074】
ここで使用される場合、「薬学的な担体」は、生理学的に適合性のある任意の全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延化剤等を含む。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は上皮投与(例えば注射又は注入による)に適している。
【0075】
本発明の組成物は当該技術分野において知られている様々な方法によって投与することができる。当業者に理解されるように、投与の経路及び/又は態様は所望される結果に応じて変わる。ある投与経路によって本発明の化合物を投与するためには、その不活性化を防止するための材料で化合物を被覆し、又はそれと共に化合物を同時投与することが必要である場合がある。例えば、化合物はリポソーム又は希釈剤等の適切な担体で被験者に投与されうる。薬物学的に許容可能な希釈剤は、生理食塩水及び緩衝水溶液を含む。薬物学的な担体は、滅菌水溶液又は分散体、及び滅菌注射用溶液又は分散体の即時調製のための滅菌パウダーを含む。薬物学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は当該技術分野で知られている。
【0076】
ここで使用される「非経口投与」及び「非経口的に投与される」なる語句は、通常は注射による、経腸と局所投与以外の投与態様を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外、胸骨内への注射及び注入を含む。
【0077】
ここで使用される「癌」なる用語は、例えば、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞細胞肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部もしくは頚部の癌、皮膚もしくは眼内メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌(stomach cancer、gastric cancer)、結腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜の癌腫、子宮頚部の癌腫、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓もしくは尿道の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞癌、胆道癌、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹膠腫、多形膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄腹腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ性白血病、例えば上記癌の何れかの難治性型、又は上記癌の一又は複数の組み合わせでありうる。好ましくは、そのような癌は、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌又は前立腺癌であり、より好ましくは肺癌である。好ましくは、そのような癌は、CDCP1発現又は過剰発現によって、より好ましくはCDCP1過剰発現によって更に特徴付けられる。
【0078】
これらの組成物は、アジュバント、例えば保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤をまた含みうる。上記の滅菌手順と、様々な抗菌剤や抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の添加の双方によって、微生物の存在を確実に防止できる。また、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等を組成物中に含めることが望ましい場合がある。加えて、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有せしめることにより、注射可能な薬学的形態の長期吸収がもたらされうる。
【0079】
選択される投与経路にかかわらず、適切な水和形態で使用されてもよい本発明の化合物、及び/又は本発明の薬学的組成物は、当業者に知られた一般的な方法により、薬学的に許容可能な投薬形態に製剤化される。
【0080】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性とならないで、特定の患者、組成物、投与態様に対して、所望の治療応答を達成するのに効果的な活性成分量が得られるように変化させうる。選択される投薬量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物、投与経路、投与時間、用いられる特定化合物の排出率、治療期間、他の薬剤、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康及び先の医療歴、及び医学分野でよく知られた類似の要因を含む様々な薬物動態学的因子に依存するであろう。
【0081】
組成物は、無菌で、組成物がシリンジにより送達可能な程度に流動的でなければならない。水に加えて、担体は、好ましくは等張緩衝生理食塩水である。
【0082】
適切な流動性が、例えば、レシチンのようなコーティングを使用することによって、分散体の場合は要求される粒子サイズを維持することにより、また界面活性剤を使用することにより維持されうる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマニトール又はソルビトール、及び塩化ナトリウムを含めることが好ましい。
【0083】
次の実施例、配列表及び図面は本発明の理解を助けるために提供されるもので、発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の精神を逸脱しないで記載された手順に変更をなすことができることが理解される。
【0084】
配列表の説明
配列番号:1 ヒトCDCP1
配列番号:2 ヒトCDCP1の細胞外ドメイン(ECD)含有断片:
配列番号:3 ヒト由来のIgG1定常重鎖領域
配列番号:4 ヒト由来のκ定常軽鎖領域
配列番号:5 ヒト由来のλ定常軽鎖領域
配列番号:6 ヒト由来のIgG4定常重鎖領域
配列番号:7 重鎖可変ドメインVH,CUB4(寄託番号DSM ACC2551)
配列番号:8 軽鎖可変ドメインVL,CUB4(寄託番号DSM ACC2551)
配列番号:9 重鎖CDRH1,Mab CDCP1−004
配列番号:10 重鎖CDRH2,Mab CDCP1−004
配列番号:11 重鎖CDRH3,Mab CDCP1−004
配列番号:12 軽鎖CDRL1,Mab CDCP1−004
配列番号:13 軽鎖CDRL2,Mab CDCP1−004
配列番号:14 軽鎖CDRL3,Mab CDCP1−004
配列番号:15 重鎖可変ドメインVH,Mab CDCP1−004
配列番号:16 軽鎖可変ドメインVL,Mab CDCP1−004
配列番号:17 重鎖CDRH1,Mab CDCP1−012
配列番号:18 重鎖CDRH2,Mab CDCP1−012
配列番号:19 重鎖CDRH3,Mab CDCP1−012
配列番号:20 軽鎖CDRL1,Mab CDCP1−012
配列番号:21 軽鎖CDRL2,Mab CDCP1−012
配列番号:22 軽鎖CDRL3,Mab CDCP1−012
配列番号:23 重鎖可変ドメインVH,Mab CDCP1−012
配列番号:24 軽鎖可変ドメインVL,Mab CDCP1−012
配列番号:25 重鎖CDRH1,Mab CDCP1−015
配列番号:26 重鎖CDRH2,Mab CDCP1−015
配列番号:27 重鎖CDRH3,Mab CDCP1−015
配列番号:28 軽鎖CDRL1,Mab CDCP1−01510
配列番号:29 軽鎖CDRL2,Mab CDCP1−015
配列番号:30 軽鎖CDRL3,Mab CDCP1−015
配列番号:31 重鎖可変ドメインVH,Mab CDCP1−015
配列番号:32 軽鎖可変ドメインVL,Mab CDCP1−015
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】抗CDCP1抗体CUB4及びCUB1のヒト肺癌H322M異種移植片におけるインビボ腫瘍増殖阻害。
【図2】固定されたCUB4抗体、CDCP1の細胞外ドメイン(ECD)、及び更なる抗CDCP1試験抗体(例えばCUB1及びCUB3)での表面プラズモン共鳴(SPR−)技術(BIAcore(登録商標))の概略アッセイフォーマット。
【図3a】固定されたCUB4抗体、CDCP1の細胞外ドメイン(ECD)、及び抗CDCP1抗体CUB1及びCUB3のBiacoreセンサグラム(x軸=時間;y軸=相対単位での応答(RU))。図3a:CUB4抗体と同じCDCP1上のエピトープへのCDCP1−004、CDCP1−012及びCDCP1−015抗体の結合が示される。
【図3b】固定されたCUB4抗体、CDCP1の細胞外ドメイン(ECD)、及び抗CDCP1抗体CUB1及びCUB3のBiacoreセンサグラム(x軸=時間;y軸=相対単位での応答(RU))。図3b:CUB4抗体とは別のCDCP1上のエピトープへのCUB1及びCUB3抗体の結合が示される。
【図4】ヒトCDCP1細胞外ドメイン(CDCP1−ECD)及びヒトCDCP1−ECDのサブドメインに対する本発明に係るCDCP1抗体の結合。
【図5a】HCT116細胞におけるCDCP1リン酸化の刺激。
【図5b】HCT116細胞におけるCDCP1リン酸化の刺激。
【図6a】MDAMB−231細胞におけるCDCP1内部移行及びリン酸化の刺激。
【図6b】MDAMB−231細胞におけるCDCP1内部移行及びリン酸化の刺激。
【図6c】MDAMB−231細胞におけるCDCP1内部移行及びリン酸化の刺激。
【実施例】
【0086】
実施例1
CUB1抗体と比較した抗CDCP1抗体CUB4のインビボ腫瘍増殖阻害
研究名:CDCP1_PZ_H322M_002
本インビボ研究は、例えばCUB1のような他のエピトープに結合する抗体と抗CDCP1特異的抗体CUB4の効能を比較するために実施した。
H322M非小細胞肺癌細胞は元々はNCIコレクションから取得し、増殖後、Roche細胞バンク,Penzbergに寄託した。腫瘍細胞株は5%CO2の水飽和雰囲気下37℃で、10%の仔ウシ血清及び2mMのL−グルタミンを補充したRPMI1640培地中で常套的に培養した。継代4を細胞移植に使用した。
ヒト非小細胞肺癌細胞株H322Mをマウスの右側腹部中にマトリゲルと共に皮下的に接種した(5×10細胞)。
動物処置は細胞移植から17日後のランダム化の日に開始した。抗体は、10mg/kgの示された投薬量で実験終了の62日目に腹腔内でq7dで投与した。また対応するビヒクルを同じ日に投与した。投与体積は10ml/kgであった。
群:
処置群1:ビヒクル
処置群2:マウスCUB4 10mg/kg腹腔内;
処置群3:マウスCUB1 10mg/kg腹腔内;
【0087】
TGI(%での腫瘍増殖阻害)
次の表は、それぞれ平均及び中央値に基づいて各群及び時点に対して、100−平均(T_処置[x日]−T_処置[ベースライン])/平均(T_参照[x日]−T_参照[ベースライン])*100として計算される腫瘍増殖阻害の値を示している。TGI計算のための参照は「ビヒクル」群が選択された。結果をまた図1に示す。

【0088】
CUB4抗体(寄託番号DSM ACC2551)は、驚いたことに、CUB1抗体(DE10242146(EP1396501、US7541030)からの寄託番号DSM ACC2569で寄託された抗体)よりも明らかに高い腫瘍増殖阻害を示している。
同様に、本発明に係る抗CDCP1抗体CDCP1_004、CDCP1_012及びCDCP1_015のインビボ腫瘍増殖阻害を決定することができる。
【0089】
実施例2
エピトープ結合アッセイ(Biacore)
異なった試験抗CDCP1抗体のエピトープ領域を決定するために、CUB4(寄託番号DSM ACC2551)を、アミンカップリング化学を使用してCM5バイオセンサーチップの表面に固定した。フローセルを、0.1MのN−ヒドロキシスクシンイミド及び0.4Mの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの1:1混合物を用いて5μl/分の流量で活性化させた。抗CDCP1抗体CUB4(寄託番号DSM ACC2551)を、12分、10−30μg/mlで酢酸ナトリウムpH4.5−5.0で注入し、これがおよそ15000RUの表面密度を生じた。表面を、1Mのエタノールアミン/HCl(pH8.5)を注入してブロックした。ヒトCDCP1(配列番号:2)(分析物1)及び抗CDCP1抗体(分析物2)の可溶型ECDをPBST+0.8MのNaClで希釈し、30μl/分の流量で注入した。接触時間(結合相)は250nM−500nMの濃度でのヒトCDCP1のECDに対して150−200秒、100nMの濃度で抗CDCP1抗体に対して300秒であった。ついで、チップ表面をPBST+0.8MのNaClで3分間洗浄した(解離相)。全ての相互作用は正確に25℃(標準温度)で実施した。10mMのグリセリンの再生溶液(pH2.0)を60−150秒間注入して、各結合サイクル後の非共有結合タンパク質を除去した。秒当たり一シグナルの検出速度でシグナルを検出した。
【0090】
抗CDCP1抗体がヒトCDCP1のCUB4と同じ又は異なったエピトープに結合するかどうかを決定するために、ヒトCDCP1のECDを注入し、固定抗体に結合させた。結合の直ぐ後に、未知のエピトープを持つ抗体を注入した。注入後に結合シグナルの増加を示さない試験抗CDCP1−抗体(つまり、例えば試験抗体の注入時間(=0秒)の100秒後に、結合シグナルは注入時のシグナル程は高くなく;シグナルはRU(相対単位)で測定される)は、CUB4と同じエピトープに結合している。結合シグナルの増加を示す試験抗CDCP1−抗体は、CUB4とは異なったエピトープに結合している(例えば注入時間(=0秒)の100秒後に、結合シグナルは注入時のシグナルより高く;シグナルはRU(相対単位)で測定される)。
【0091】
3通りの定量の結果を図3a及び3bに示す。抗体CUB3、CUB1(図3bを参照)はCUB4とは異なったエピトープに結合することが見出される一方、抗CDCP1抗体CDCP1−004、CDCP1−012及びCDCP1−015はCUB4と同じエピトープに結合するものとして同定された(表2及び図3aを参照,全て3通りの実験)。抗体CUB3及びCUB1はそれぞれCUB4とは別のエピトープに結合することが見出され、互いに異なっている(CUB1≠CUB3)。(表2及び図3bを参照,全て3通りの実験)。CUB4及び希釈バッファーを負のコントロールとして用いたコントロール実験は結合シグナルの増加を示さなかった。
【0092】
CUB1は、アミン結合Mab CUB3からなる予め形成された複合体ではサンドウィッチ複合体形成もその逆も示さなかった(データは示さず)。
CDCP1−004、CDCP1−012及びCDCP1−015は、Mab CUB1又はMab CUB3それぞれとアンチジーンからなる双方の予め形成された複合体ではサンドウィッチ複合体形成を示した(データは示さず)。

【0093】
別のBiacore実験では、固定されたhCDCP1−ECDに対する抗CDCP1抗体の結合定数及び親和性を次のようにして定量した:

:結合速度定数,k解離速度定数,K解離平衡定数(結合親和性),t1/2:複合体の半減期。
【0094】
実施例3
アンチジーン特異的ELISA
それぞれストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)(配列番号:2)に融合させた可溶型CDCP1細胞外ドメイン(CDCP1−ECD)(配列番号:2)、並びにCDCP1細胞外ドメインのアミノ酸1−216及びCDCP1細胞外ドメインの1−361を包含するShort1(huCDCP1_SH1_ECD aa1−216)_SBP)及びShort5(hu_CDCP1_SH5_ECD(aa1−361)_SBP)をストレプトアビジンプレートに捕捉させた。SBP−CDCP1−ECD、SBP−CDCP1 Short1及びSBP−CDCP1−Short5に対する抗体の最適な結合を定めるために、96ウェルのポリスチレンプレート(Roche,ストレプトアビジン被覆,ID-No.1989685)を純粋な又は1:4希釈された(10%の仔ウシ血清Pan Biotech ID-No 3302-P251116を含有するダルベッコ改変イーグル培地PAN Biotechに溶解した)HEK293上清で被覆した。標準的なコーティングに対しては、未希釈のSBP−CDCP1−Short1及びSBP−CDCP1−ECD上清とは対照的にSBP−CDCP1−Short5含有HEK293上清を希釈し(1:4)、2−8℃で一晩インキュベートした(60μl)。マイクロタイタープレートの集中的な洗浄が、残りの未結合のSBP−CDCP1−ECD、SBP−CDCP1−Short1及びSBP−CDCP1−Short5を除去するために必要である。
【0095】
250μl/ウェルでELISAのブロッキング試薬(Roche11112589)を使用して1時間のブロッキング工程を実施することによって被覆ウェルをブロックした。
【0096】
1:500希釈(1%のBSA画分V,SigmaA3059を含む0μlのPBSに希釈した0.1μg抗体)を使用して、抗CDCP1抗体CUB4(寄託番号DSM ACC2551)及びCDCP1_004、CDCP1_012及びCDCP1_015を試験した。各試料に対してウェル当たり50μlを室温で60分インキュベートした。PBS−T(PBS中0.05%のTween20,Fluka#08057)を使用する集中的な洗浄後に、50μlのHRPに結合したヤギ抗マウスIgG抗体(BioRad#1706516,希釈1:1000)を加え、室温で1時間インキュベートした。集中的な洗浄後に、抗体の結合を50μlのBMブルーPOD基質(Roche11484281001)で検出した。370nm/492nmでの吸光度を、標準的な光度計を使用して測定した。
【0097】
抗体CDCP1−004、CDCP1−012、CDCP1−015及びCUB4の結合領域は、CDCP1の細胞外ドメイン中のaa1及び216内に位置している。その結果、全てのこれらの抗体は、CDCP1の完全なECD及びaa1−361を含むコンストラクト(short5)をまた認識する(図4参照)。
【0098】
実施例4
MDAMB−231又はHCT116細胞におけるCDCP1内部移行及びリン酸化の刺激
6ウェル当たり7×10のMDAMB−231細胞をDMEM+L−グルタミン、+ピルビン酸塩(Gibco, 41966)、10%のFCS(PAN Biotech ID-No3302-P251116)、1%のMEM非必須アミノ酸(PAA, P0832100)中で一晩培養した。MDA−MB−231細胞を10μg/の異なった抗体:マウスCUB4(寄託番号DSM ACC2551)及び抗体CDCP1_004、CDCP1_012及びCDCP1_015で10分及び5時間処理した。HCT116細胞を20μg/の異なった抗体:マウスCUB4(寄託番号DSM ACC2551)、マウスCUB1及びマウスCUB3で10分及び5時間処理した。新鮮に調製した、1mMのエタノール中のPMSF、10μg/mlのアプロチニン、0.4mMのバナジン酸塩を含む氷冷RIPA溶解バッファー(Thermo Scientific, #89901)で細胞を可溶化した。氷上で15分後、細胞可溶化物を13000rpmで20分間遠心分離した。可溶化物を標準的なプロトコルによってSDS−PAGEで分離し、ウェスタンブロット法によってニトロセルロースに移した。ウェスタンブロットは抗CDCP1抗体(細胞シグナル伝達#4115)、抗ホスホCDCP1抗体又はHCT116の場合はPY4G10によって検出した。
【0099】
未処理HCT116細胞中に存在するCDCP1のリン酸化レベルは、10分又は5時間の時点では変わらない。CUB4は、CUB1と比較して10分の細胞のインキュベーション後にCDCP1の強いリン酸化を媒介する。CDCP1のリン酸化及び発現低下(データは示さず)の阻害は、CUB1と比較してCUB4によって更により明白になる。CUB3インキュベーションはCDCP1リン酸化の弱い刺激を生じ、タンパク質の発現低下を媒介することができない(データは示さず)。結果を図5a及びbに示す。
【0100】
未処理のMDA−MB231細胞中に存在するCDCP1の発現レベルは10分又は5時間の時点では変わらない。CUB4インキュベーション並びにCDCP1−004、CDCP1−012及びCDCP1−0015抗体を伴った5時間の細胞のインキュベーションは少なくともCDCP1タンパク質の部分的な分解を生じる。CDCP1のリン酸化は未処理細胞では検出が難しい。CUB4又は抗体CDCP1−004、CDCP1−012及びCDCP1−0015での10分間の細胞の処理はチロシン734でのCDCP1リン酸化の増加を生じる。これらの抗体での5時間の処理後、CDCP1発現低下の結果、CDCP1中のチロシン734のリン酸化はかろうじて検出される。結果を図6aからcに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療のためのCUB4(寄託番号DSM ACC2551)と同じエピトープに結合することを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体。
【請求項2】
a)重鎖可変ドメインが配列番号:7で、軽鎖可変ドメインが配列番号:8であり、
b)重鎖可変ドメインが配列番号:15で、軽鎖可変ドメインが配列番号:16であり、又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号:23で、軽鎖可変ドメインが配列番号:24であり、又は
d)重鎖可変ドメインが配列番号:31で、軽鎖可変ドメインが配列番号:32である
ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はそのヒト化型。
【請求項3】
a)重鎖可変ドメインが配列番号:9のCDRH1領域、配列番号:10のCDRH2領域、及び配列番号:11のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:12のCDRL1領域、配列番号:13のCDRL2領域、及び配列番号:14のCDRL3領域を含み、又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号:17のCDRH1領域、配列番号:18のCDRH2領域、及び配列番号:19のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:20のCDRL1領域、配列番号:21のCDRL2領域、及び配列番号:22のCDRL3領域を含み、又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号:25のCDRH1領域、配列番号:26のCDRH2領域、及び配列番号:27のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:28のCDRL1領域、配列番号:29のCDRL2領域、及び配列番号:30のCDRL3領域を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
上記抗体がヒトIgG1サブクラスのものであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の抗体。
【請求項5】
癌の治療のための、請求項1から4の何れか一項に記載の抗体を含有する薬学的組成物。
【請求項6】
癌の治療のための医薬の調製のための、請求項1から4の何れか一項に記載の抗体の使用。
【請求項7】
癌に罹患している患者を、治療を必要とする該患者に請求項1から4の何れか一項に記載の抗体を投与することによって治療する方法。
【請求項8】
a)重鎖可変ドメインが配列番号:15で、軽鎖可変ドメインが配列番号:16であり、又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号:23で、軽鎖可変ドメインが配列番号:24であり、又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号:31で、軽鎖可変ドメインが配列番号:32である
ことを特徴とするヒトCDCP1に特異的に結合する抗体、又はそのヒト化型。
【請求項9】
a)重鎖可変ドメインが配列番号:9のCDRH1領域、配列番号:10のCDRH2領域、及び配列番号:11のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:12のCDRL1領域、配列番号:13のCDRL2領域、及び配列番号:14のCDRL3領域を含み、又は
b)重鎖可変ドメインが配列番号:17のCDRH1領域、配列番号:18のCDRH2領域、及び配列番号:19のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:20のCDRL1領域、配列番号:21のCDRL2領域、及び配列番号:22のCDRL3領域を含み、又は
c)重鎖可変ドメインが配列番号:25のCDRH1領域、配列番号:26のCDRH2領域、及び配列番号:27のCDRH3領域を含み、軽鎖可変ドメインが配列番号:28のCDRL1領域、配列番号:29のCDRL2領域、及び配列番号:30のCDRL3領域を含む
ことを特徴とする請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
上記抗体がヒトIgG1サブクラスのものであることを特徴とする請求項8又は9に記載の抗体。
【請求項11】
請求項8から10に記載の抗体を含有する薬学的組成物。
【請求項12】
癌の治療のための医薬の調製のための請求項8から10の何れか一項に記載の抗体の使用。
【請求項13】
癌に罹患している患者を、治療を必要とする上記患者に請求項8から10の何れか一項に記載の抗体を投与することによって治療する方法。
【請求項14】
請求項8から10に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項15】
原核生物又は真核生物宿主細胞中に核酸を発現可能な、請求項14に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載のベクターを含む原核生物又は真核生物宿主細胞。
【請求項17】
原核生物又は真核生物宿主細胞中に請求項14に記載の核酸を発現させ、上記細胞又は細胞培養上清から上記抗体を回収することを特徴とする、請求項8から10に記載の組換え抗体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【公表番号】特表2013−502905(P2013−502905A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525933(P2012−525933)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005245
【国際公開番号】WO2011/023390
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(306021192)エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】