説明

癌の治療

【課題】ある量以下の血清C反応性タンパク質(CRP)濃度を有する対象に、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)拮抗剤を投与することによって、黒色腫などの癌を治療する方法の提供。
【解決手段】対象における血清CRP濃度のレベルを決定し、その後、CRP濃度が特定の量以下である場合にCTLA4拮抗剤を投与することによって、黒色腫などの癌を治療する方法。該CTLA4拮抗剤としては、抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分であることが好ましい。該抗体としては、トレメリムマブまたはイピリムマブであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2009年10月12日出願の米国仮出願第61/250,711号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ある所定のレベル以下の血清C反応性タンパク質(CRP)濃度を有する対象にCTLA4拮抗剤を投与することによって、黒色腫などの癌を治療する方法に関する。本発明は、対象における血清CRP濃度のレベルを決定し、その後、CRP濃度がある所定のレベル以下である場合にCTLA4拮抗剤を投与することによって、癌を治療する方法にさらに関する。本発明は、とりわけ、癌治療に対する対象の応答の予測因子としての血清CRP濃度の使用にさらに関する。
【背景技術】
【0003】
癌治療に対する一手法は、腫瘍自体を標的とする代わりに、かつ/またはそれに加えて、免疫系を標的とすることである(「免疫療法」)。1つの癌の免疫療法の手法では、活性T細胞上に発現される細胞表面受容体である、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4、CD152)を標的とする。CTLA4と、その天然リガンドであるB7.1(CD80)およびB7.2(CD86)との結合により、陰性の調節シグナルがT細胞に送達され、この陰性シグナルを遮断することで、動物モデルにおいて増強したT細胞の免疫機能および抗腫瘍活性がもたらされる(ThompsonおよびAllison Immunity 7:445〜450(1997)、McCoyおよびLeGros Immunol.&Cell Biol. 77:1〜10(1999))。いくつかの研究により、抗体を用いたCTLA4遮断がT細胞媒介性の腫瘍の死滅を顕著に増強し、抗腫瘍免疫を誘発することができることが実証されている(Leach他、Science 271:1734〜1736(1996)、Kwon他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:8099〜8103(1997)、Kwon他、Natl.Acad.Sci.USA 96:15074〜15079(1999))。
【0004】
転移癌の治療の目標は、生存を延長することである。黒色腫を有する患者において生存を改善させる、または黒色腫患者の大きな割合において腫瘍応答を誘発させることが示されている、認可されたまたは実験的な薬剤は存在しない。一部の例では、CTLA4遮断剤は、黒色腫を有する患者の約7〜15%において客観的腫瘍応答を誘発することが示されているが、重篤な副作用を引き起こし得る。免疫療法レジメンの延命効果の予測的バイオマーカーの関連は確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願第61/250,711号
【特許文献2】米国特許第6,682,736号
【特許文献3】米国特許第6,984,720号
【特許文献4】米国特許第5,770,429号
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0120948号
【特許文献6】米国特許第5,703,057号
【特許文献7】米国特許第4,816,567号
【特許文献8】欧州特許EP 216 846
【特許文献9】欧州特許EP 256 055
【特許文献10】欧州特許EP 323 997
【特許文献11】欧州特許出願89303964
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/0207336号
【特許文献13】米国特許出願公開第2003/0157108号
【特許文献14】国際特許公開WO 01/81405
【特許文献15】国際特許公開WO 00/24893
【特許文献16】国際特許公開WO 03/031464
【特許文献17】国際特許公開WO 98/58964
【特許文献18】国際特許公開WO 99/22764
【特許文献19】米国特許出願公開第2004/0063911号
【特許文献20】米国特許出願公開第2004/0132640号
【特許文献21】米国特許出願公開第2004/0142856号
【特許文献22】米国特許出願公開第2004/0072290号
【特許文献23】米国特許第6,602,684号
【特許文献24】米国特許出願公開第2003/0207346号
【特許文献25】米国特許第4,640,835号
【特許文献26】米国特許第4,496,689号
【特許文献27】米国特許第4,301,144号
【特許文献28】米国特許第4,670,417号
【特許文献29】米国特許第4,791,192号
【特許文献30】米国特許第4,179,337号
【特許文献31】米国特許第4,816,397号
【特許文献32】米国特許第5,916,771号
【特許文献33】国際特許公開WO 00/37504
【特許文献34】国際特許公開WO 01/14424
【特許文献35】国際特許公開WO 93/00431
【特許文献36】国際特許公開WO 00/32231
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(ThompsonおよびAllison Immunity 7:445〜450(1997)
【非特許文献2】McCoyおよびLeGros Immunol.&Cell Biol. 77:1〜10(1999)
【非特許文献3】(Leach他、Science 271:1734〜1736(1996)
【非特許文献4】Kwon他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:8099〜8103(1997)
【非特許文献5】Kwon他、Natl.Acad.Sci.USA 96:15074〜15079(1999)
【非特許文献6】SambrookおよびRussell、Molecular Cloning,A Laboratory Approach、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(2001)
【非特許文献7】Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(2002)
【非特許文献8】HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1990)
【非特許文献9】Immunology−A Synthesis(第2版、E.S.GolubおよびD.R.Gren編、Sinauer Associates、Sunderland、Mass(1991)
【非特許文献10】Kabat,E.A.他(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健社会福祉省、NIH出版番号91−3242
【非特許文献11】ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol. 196:901〜917(1987)
【非特許文献12】Fundamental Immunology、第7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989)
【非特許文献13】(Ward他、Nature 341:544〜546(1989)
【非特許文献14】Pearson、Methods Enzymol. 183:63〜98(1990)
【非特許文献15】Pearson、Methods Mol.Biol. 132:185〜219(2000)
【非特許文献16】Altschul他、J.Mol.Biol. 215:403〜410(1990)
【非特許文献17】Altschul他、Nucelic Acids Res. 25:3389〜3402(1997)
【非特許文献18】ACTEMRA(登録商標)(トシリズマブ)の添付文書、セクション12.2
【非特許文献19】Clarke,S.J.他、J.Clin.Oncol. 27:15s(2009)(補遺、アブストラクト3025
【非特許文献20】Pepys他、J.Clin.Invest. 111(12):1805〜1812(2003)
【非特許文献21】Deichmann他、British Journal of Cancer 91:699〜702(2004)
【非特許文献22】Findeisen他、J.Clin.Oncol. 13:2199〜2208(2009)
【非特許文献23】Blay他、Cancer Res 52:3317〜3322(1992)
【非特許文献24】Moses他、Oncology Reports 21:1091〜1095(2009)
【非特許文献25】Falconer他、Cancer 75:2077〜2082(1995)
【非特許文献26】Gough他、Clin Exp Immunol 105: 529〜536(1996)
【非特許文献27】Erlandsen他、Scand.J.Clin.Lab Invest. 60:37〜43(2000)
【非特許文献28】Lonberg他、Nature 368:856〜859(1994)
【非特許文献29】Tomizuka他、Proc Natl Acad Sci USA 97:722(2000)
【非特許文献30】Kuroiwa他、Nature Biotechnol 18:1086(2000)
【非特許文献31】WinterおよびHarris、Immunol.Today 14:43〜46(1993)
【非特許文献32】Wright他、Crit.Reviews in Immunol. 12:125〜168(1992)
【非特許文献33】MageおよびLamoyi、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、ページ79〜97、Marcel Dekker,Inc.、New York、NY(1987)
【非特許文献34】Barnes他、Biotech&Bioengineering 73:261〜270(2001)
【非特許文献35】Thotakura他、Meth.Enzymol. 138:350(1987)
【非特許文献36】Hakimuddin他、Arch.Biochem.Biophys. 259:52(1987)
【非特許文献37】Remington’s Pharmaceutical Sciences、第27および28章、ページ484〜528(第18版、Alfonso R.Gennaro編、Easton、Pa:Mack Pub.Co.、1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書で開示する本発明は、急性期反応物質(CRPなど)の血清濃度が、CTLA4拮抗剤で治療した患者の生存の予測的マーカーであるという知見に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の一態様は、少なくとも1つの急性期反応物質の濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の1.5倍以下である前記急性期反応物質の血清濃度を有する対象に、CTLA4拮抗剤を投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。一実施形態では、少なくとも1つの急性期反応物質はCRPである。さらなる実施形態では、少なくとも1つの急性期反応物質はIL−6である。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、a)対象における少なくとも1つの急性期反応物質の血清濃度を決定することと、b)前記対象における急性期反応物質の濃度が、急性期反応物質の濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の1〜2倍である量以下である場合に、CTLA4拮抗剤を対象に投与することとを含む、癌を治療する方法を提供する。一実施形態では、そのような量は、急性期反応物質の濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1.0倍である。一実施形態では、少なくとも1つの急性期反応物質はCRPである。さらなる実施形態では、少なくとも1つの急性期反応物質はIL−6である。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、a)患者における少なくとも1つの急性期反応物質の血清濃度を測定することと、b)前記血清濃度を、前記少なくとも1つの急性期反応物質の濃度の測定に使用するアッセイの正常上限と比較することとを含み、患者における急性期反応物質の血清濃度が、急性期反応物質の濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の1〜2倍である量以下である、癌患者に対する免疫療法治療の利益を予測する方法を提供する。一実施形態では、そのような量は、急性期反応物質の濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1.0倍である。一実施形態では、少なくとも1つの急性期反応物質はCRPである。さらなる実施形態では、少なくとも1つの急性期反応物質はIL−6である。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、a)患者における少なくとも1つの急性期反応物質の血清濃度を測定することと、b)前記血清濃度を、前記急性期反応物質の濃度の測定に使用するアッセイの正常上限と比較することとを含み、正常上限の2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1.0倍以下の患者における血清濃度が、正常上限の2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1.0倍を超える血清濃度を有する癌患者と比較して、免疫療法治療から利益を受ける可能性が高いことを示す、癌患者に対する免疫療法治療の利益を予測する方法を提供する。一実施形態では、少なくとも1つの急性期反応物質はCRPである。さらなる実施形態では、少なくとも1つの急性期反応物質はIL−6である。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、前記癌が黒色腫である、本明細書に記載の方法のいずれかを提供する。さらなる態様では、前記黒色腫は、0期の黒色腫(表皮内黒色腫)、I/II期の黒色腫(侵襲性黒色腫)、II期の黒色腫(高リスク黒色腫)、III期の黒色腫(局所的転移)、およびIV期の黒色腫(遠隔転移)から選択される。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、免疫療法治療が、癌患者にCTLA4拮抗剤を投与することを含む、本明細書に記載の方法のいずれかを提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、前記CTLA4拮抗剤が抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分である、本明細書に記載の方法のいずれかを提供する。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号1〜6、9〜14、17〜22、および25〜30から選択される少なくとも1つのCDRのアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号7、15、23、または31に記載のV鎖のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号8、16、24、または32に記載のV鎖のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号23に記載のV鎖のアミノ酸配列および配列番号24に記載のV鎖のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号31に記載のV鎖のアミノ酸配列および配列番号32に記載のV鎖のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗体は、トレメリムマブまたはその抗原結合部分である。さらなる態様では、前記抗体は、イピリムマブまたはその抗原結合部分である。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、正常上限の2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1.0倍以下の血清CRP濃度を有する癌患者における免疫療法からの利益が、正常上限の2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1.0倍を超える血清CRP濃度を有する癌患者と比較した全生存の改善である、本明細書に記載の方法のいずれかを提供する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、CTLA4拮抗剤を含む治療に対する癌患者の応答の予測因子としてのCRP血清濃度の使用を提供する。一態様では、前記CTLA4拮抗剤は、抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分である。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号1〜6、9〜14、17〜22、および25〜30から選択される少なくとも1つのCDRのアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号7、15、23、または31に記載のV鎖のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号8、16、24、または32に記載のV鎖のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号23に記載のV鎖のアミノ酸配列および配列番号24に記載のV鎖のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、配列番号31に記載のV鎖のアミノ酸配列および配列番号32に記載のV鎖のアミノ酸配列を含む。さらなる態様では、前記抗体は、トレメリムマブまたはその抗原結合部分である。さらなる態様では、前記抗体は、イピリムマブまたはその抗原結合部分である。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、前記CTLA4拮抗剤を、IL−6拮抗剤(すなわち、IL−6の遮断をもたらす薬剤)と組み合わせて投与する、本明細書に記載の方法のいずれかを提供する。一部の実施形態では、前記IL−6拮抗剤は、CTLA4拮抗剤の前に投与する。一部の実施形態では、IL−6拮抗剤を投与し、その後、血清CRP濃度が、血清CRP濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の1〜2倍である量未満であると決定された場合に、CTLA4拮抗剤を投与する。一実施形態では、そのような量は、血清CRP濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、または1.0倍である。一実施形態では、前記IL−6拮抗剤は、抗IL−6抗体またはその抗原結合部分である。別の実施形態では、前記IL−6拮抗剤は、抗IL−6受容体抗体またはその抗原結合部分である。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、CTLA4拮抗剤を投与する前の7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、または1日以内にCRPレベルを測定し、正常上限と比較する、本明細書に記載の方法および使用のいずれかを提供する。本発明は、潜在的なCTLA4拮抗剤治療の前の4週間以内、3週間以内、2週間以内、または1週間以内にベースラインCRPレベルを決定し、正常上限と比較する、本明細書に記載の方法および使用のいずれかをさらに提供する。そのようなベースラインの決定は、潜在的なCTLA4拮抗剤治療の前に、ベースラインの決定中の異なる時点に、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個またはそれより多くのCRPレベルのサンプルを得ることによって測定することができる。一態様では、ベースラインCRPレベルが決定された後、CTLA4拮抗剤を投与する前の7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、または1日以内に、CRPレベルを測定し、正常上限と比較する。
【0019】
前述の概要、および以下の本発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読んだ場合により良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】治療アームAおよびBのどちらにおいてもCRPレベルがULNの1.5倍以下である、試験A3671009からの全生存のカプランマイヤープロットを示す図である。
【図2】治療アームAおよびBのどちらにおいてもCRPレベルがULNの1.5倍を超える、試験A3671009からの全生存のカプランマイヤープロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、一般に、CTLA4の遮断を用いた治療から利益を受けることができる患者の生物学的マーカーの同定に関する。より詳細には、本発明は、血清C反応性タンパク質(CRP)のデータを、CTLA4の遮断を用いた治療について患者を選択する際に使用できるという発見に関する。この発見は、腫瘍に対する有効な免疫応答の誘発には実際に腫瘍中の炎症が必要であると一般に想定する、癌の免疫療法の分野の伝統的な考えに反するため、驚くべきことである。
【0022】
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義が詳細な説明の全体にわたって記載されている。
【0023】
本明細書中で別段に定義しない限りは、本開示に関連して使用する科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有する。さらに、文脈によって別段に必要とされない限りは、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれる。本明細書に記載する分析化学、合成有機化学、ならびに医学および医薬化学に関連して使用する学名、ならびにその実験手順および技術は、当技術分野で周知かつ一般的に使用されているものである。標準の技術を化学合成、化学分析、医薬品の調製、配合、および送達、ならびに患者の治療に使用する。
【0024】
本開示の方法および技術は、別段に指定しない限りは、一般に、当技術分野で周知の方法、ならびに本明細書全体にわたって引用され論じられる、様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載の方法に従って行う。そのような参考文献には、たとえば、SambrookおよびRussell、Molecular Cloning,A Laboratory Approach、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(2001)、Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(2002)、ならびにHarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1990)が含まれる。酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般的に達成される、または本明細書に記載されるように、製造者の仕様書に従って行う。
【0025】
本明細書中で使用する以下の用語のそれぞれは、本セクションにおいてそれと関連づけられる意味を有する。
【0026】
本明細書中で使用する冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」とは、冠詞の文法上の目的語のうちの1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)をいう。例として、「1つの要素(an element)」とは、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0027】
本明細書中で使用する用語「正常上限」または「ULN」とは、特定の特性の測定に使用する特定のアッセイ方法によって決定され、それに関連している参照値である。たとえば、対象中の特定の物質のレベルの測定に使用する所与の診断的アッセイ方法を考える。このアッセイを用いて「正常」である健康な対象の群における物質レベルを測定する場合、試験結果は、典型的にはガウス分布をもたらし、ほとんどの結果が平均(average)(または「平均(mean)」)の周囲に位置し、平均結果から離れた結果を有する対象数は減少する。典型的な健康な人の代表的な集団では、約3分の2が平均の1標準偏差以内の結果を有し、結果の95.5%が2標準偏差以内にある。したがって、健康な個体の2.25%が、平均より2標準偏差上の試験結果を有する。同様に、結果の2.25%が平均より2標準偏差下である。ほとんどの実験試験について正常上限を選択する際、これは、一般に、平均より2標準偏差上のレベルに設定される。したがって、血清CRP濃度のULNを参照すると、そのようなULNは、血清CRP濃度の測定に使用するアッセイ方法(たとえば、アッセイを行う実験室によって決定されるもの)によって設定される濃度値となる。したがって、そのようなULN値はアッセイ間で変動し得るが、選択されたアッセイ方法に基づいて容易に入手可能なものである。
【0028】
本明細書中で使用する用語「血清CRP濃度」とは、血清を採取してアッセイプロトコルに従ってアッセイを実施することによって、任意の適切なアッセイによって測定する、対象の血清中のCRPの濃度をいう。一部の例では、そのような濃度はベースライン濃度となり、CRPアッセイの結果は、CTLA4拮抗剤の最初の用量の前の14日以内に対象から採取した血清に対して行う。たとえば、一実施形態では、血清CRP濃度は、治療の1日前、治療の2日前、治療の3日前、治療の4日前、治療の5日前、治療の6日前、または治療の7日前に決定する。
【0029】
当業者には理解されるように、本明細書中で使用する用語「急性期反応物質」とは、急性期タンパク質の血漿濃度の変化に応答して肝臓によって産生される物質をいう。急性期タンパク質とは、血漿濃度が、炎症に応答して増加(陽性急性期タンパク質)または減少(陰性急性期タンパク質)する、タンパク質のクラスである。この応答は、急性期反応と呼ばれる(急性期応答としても知られる)。傷害に応答して、局所炎症細胞(好中球顆粒球およびマクロファージ)は、いくつかのサイトカイン、最も注目すべきはIL−1、IL−6、およびIL−8、ならびにTNF−αなどのインターロイキンを血流内に分泌する。肝臓は、多数の急性期反応物質(たとえばCRP)を産生することによって応答する。
【0030】
言及した場合以外は用語「患者」および「対象」とは互換性があるように使用し、ヒト患者および非ヒト霊長類、ならびにウサギ、ラット、マウスなどの獣医学的対象および他の動物などの哺乳動物をいう。
【0031】
本明細書中で使用する用語「治療する」、「治療すること」、または「治療」とは、患者が経験する疾患の症状(すなわち、腫瘍の増殖および/もしくは転移、または免疫細胞の数および/もしくは活性によって媒介される他の効果など)の頻度を減少させることを意味する。この用語には、症状、合併症、もしくは疾患(たとえば黒色腫)の生化学的兆候の発症の予防もしくは遅延、ならびに/または症状の軽減、疾患、状態、もしくは障害のさらなる発生の停止および/もしくは阻害、ならびに/または疾患を患っている対象の生存の延長のために、本明細書で開示した化合物または薬剤を投与することが含まれる。治療は、予防的(疾患の発症を予防もしくは遅延させるため、または臨床の徴候もしくはその亜臨床的症状を予防するため)、または疾患の徴候後の症状の治療的抑制もしくは軽減であり得る。
【0032】
本明細書中で使用する用語「CTLA4拮抗剤」とは、CTLA4受容体とその天然リガンドB7.1およびB7.2との特異的相互作用に干渉することができる任意の薬剤をいう。拮抗剤は、CTLA4とそのリガンドとの結合の競合的阻害剤または非競合的阻害剤として作用することができる。そのような薬剤には、抗体(その抗原結合部分が含まれる)、ペプチド、および非ペプチド有機小分子、ならびにCTLA4受容体の発現を減少させる物質(アンチセンスまたは干渉RNA分子など)が含まれることができる。CTLA4とそのリガンドB7.1および/またはB7.2との結合に干渉することができる抗CTLA4抗体(またはその抗原結合部分)は、CTLA4拮抗剤の一例である。他の拮抗剤は本明細書に記載されており、かつ/または当業者に容易に明らかであろう。
【0033】
本明細書中で使用する20種の従来のアミノ酸およびその略記は、従来の用法に従う。Immunology−A Synthesis(第2版、E.S.GolubおよびD.R.Gren編、Sinauer Associates、Sunderland、Mass(1991))を参照されたい。
【0034】
本明細書中で言及する用語「抗体」には、全抗体および任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)またはその単鎖が含まれる。「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合部分をいう。それぞれの重鎖は、1つの重鎖可変領域(本明細書中でVと略記する)および1つの重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわち、CH1、CH2およびCH3からなる。それぞれの軽鎖は、1つの軽鎖可変領域(本明細書中でVと略記する)および1つの軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、すなわちCからなる。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域がその中に分散した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へとさらに細分類することができる。CDR領域は、どちらも当業者に周知のカバットまたはコチアの番号付け系を用いて決定することができる。たとえば、Kabat,E.A.他(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健社会福祉省、NIH出版番号91−3242、ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol. 196:901〜917(1987)を参照されたい。それぞれのVおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で配置された、3個のCDRおよび4個のFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本開示の全体にわたって、重鎖の3個のCDRをH−CDR1、H−CDR2、およびH−CDR3と呼ぶ。同様に、軽鎖の3個のCDRをL−CDR1、L−CDR2、およびL−CDR3と呼ぶ。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(たとえばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1の構成要素(Clq)を含めた宿主の組織または因子との結合を媒介し得る。軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって結合されており、重鎖には約10個以上のアミノ酸の「D」領域がさらに含まれる。一般に、Fundamental Immunology、第7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989))を参照されたい。
【0035】
本明細書では、「ヒト」抗体、またはその抗原結合部分とは、キメラではなく(たとえば、「ヒト化」したものではなく)、かつ(全体的にまたは部分的に)非ヒト種に由来しないものであると定義する。ヒト抗体または抗原結合部分は、ヒトに由来していてもよく、または合成ヒト抗体であってもよい。本明細書では、「合成ヒト抗体」とは、全体的にまたは部分的に、既知のヒト抗体配列の分析に基づいた合成配列からin silicoで誘導した配列を有する抗体として定義する。ヒト抗体配列またはその断片のin silico設計は、たとえば、ヒト抗体または抗体断片の配列のデータベースを分析し、それから得られたデータを利用してポリペプチド配列を考案することによって達成することができる。ヒト抗体または抗原結合部分の別の例は、ヒト起源の抗体配列のライブラリ(すなわち、そのようなライブラリは、ヒト天然源から採った抗体に基づく)から単離した核酸によってコードされているものである。
【0036】
本明細書では、「ヒト化抗体」、またはその抗原結合部分とは、(i)その抗体がヒト生殖系列配列に基づく非ヒト源(たとえば、異種の免疫系を保有するトランスジェニックマウス)に由来するもの、または(ii)可変ドメインが非ヒト起源に由来し、定常ドメインがヒト起源に由来するキメラ、または(iii)可変ドメインのCDRが非ヒト起源に由来する一方で、可変ドメインの1つもしくは複数のフレームワークがヒト起源であり、(存在する場合は)定常ドメインがヒト起源のものである、CDR移植したものであると定義する。CDRを非ヒト起源から移植する場合、目的の標的に対する結合親和性を改善させるために、続いて前記CDRを変更することができる。
【0037】
本明細書中で使用する用語、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)とは、抗原(たとえばCTLA4)と特異的に結合する能力を保持している、抗体の1つまたは複数の断片をいう。完全長抗体の断片によって抗体の抗原結合機能を行うことができることが示されている。抗体の用語「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2個のFab断片を含む二価断片、(iii)VおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFv断片、(v)1つのVドメインからなるdAb断片(Ward他、Nature 341:544〜546(1989))、ならびに(vi)単離した相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVおよびVは別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、組換え方法を用いて、VおよびV領域が対合して一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる)として作製されることを可能にする合成リンカーによって、結合することができる。また、そのような単鎖抗体も、用語抗体の「抗原結合部分」内に包含されることを意図する。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来技術を含めた任意の適切な技術を用いて得られる場合があり、断片は、インタクトな抗体と同じ様式で、有用性についてスクリーニングし得る。
【0038】
また、本明細書中で使用する「免疫グロブリン」(Ig)とは、IgG、IgM、IgE、IgA、もしくはIgDのクラスもしくはアイソタイプ(または任意のそのサブクラス)に属するタンパク質として定義され、すべての慣習的に知られている抗体およびその抗原結合部分が含まれる。
【0039】
本明細書中で使用するポリペプチド配列間の「配列同一性」とは、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。ポリペプチドのアミノ酸配列同一性は、Bestfit、FASTA、またはBLASTなどの既知のコンピュータプログラムを用いて慣習的に決定することができる(たとえば、Pearson、Methods Enzymol. 183:63〜98(1990)、Pearson、Methods Mol.Biol. 132:185〜219(2000)、Altschul他、J.Mol.Biol. 215:403〜410(1990)、Altschul他、Nucelic Acids Res. 25:3389〜3402(1997)を参照)。特定の配列が、たとえば参照アミノ酸配列と95%同一であるかどうかを決定するために、Bestfitまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用する場合は、同一性のパーセンテージが参照アミノ酸配列の完全長にわたって計算され、参照配列中のアミノ酸残基の合計数の5%までの相同性のギャップが許容されるように、パラメータを設定する。ポリペプチド間の同一性のパーセンテージを決定するこの前述の方法は、本明細書で開示するすべてのタンパク質、断片、またはその変異体に適用可能である。
【0040】
本明細書中で使用する「アイソタイプ」または「クラス」とは、重鎖定常領域の遺伝子によってコードされている抗体クラス(たとえば、IgMまたはIgG)をいう。抗体の定常ドメインは抗原との結合に関与していないが、様々なエフェクター機能を示す。重鎖定常領域のアミノ酸配列に応じて、所与のヒト抗体または免疫グロブリンは、5つの主要な免疫グロブリンクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのうちの1つに割り当てることができる。様々な免疫グロブリンクラスの構造および三次元立体配置は周知である。様々なヒト免疫グロブリンクラスのうち、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、およびIgMのみが、補体を活性化することが知られている。ヒトIgG1およびIgG3はヒトにおいてADCCを媒介することが知られている。
【0041】
本明細書中で使用する「サブクラス」とは、重鎖定常領域の遺伝子のアイソタイプ内のさらなる特定、たとえば、IgGアイソタイプ内のIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブクラスをいう。
【0042】
本明細書中で使用する用語「干渉する」とは、受容体とそのリガンドとの特異的相互作用に対する拮抗剤の作用に関して使用した場合は、相互作用の親和性が、薬剤が存在しない場合に起こる結合のレベル未満に減少することを意味する。当業者には、受容体とそのリガンドとの会合とは、任意の特定の時点で、受容体およびリガンドの特定の割合が会合しているように、そのような分子の集団間で起こる動的な関係であることを認識されよう。したがって、受容体とそのリガンドとの特異的相互作用に干渉する薬剤は、所与の時点で起こっているそのような相互作用の相対数を減少させ、一部の例では、すべてのそのような会合を完全に阻害することができる。
【0043】
PTX1、MGC88244、またはMGC149895としても知られるC反応性タンパク質(CRP)とは、ペントラキシンタンパク質ファミリーのメンバーであり、炎症、感染症、組織損傷および悪性疾患のほとんどの形態に応答して肝臓中で合成される。CRPとは、身体内で起こる炎症プロセス中にそのレベルが劇的に上昇するため、急性期反応物質のクラスのメンバーである。その産生は、主に、主にマクロファージおよび脂肪細胞によって産生されるIL−6によって制御される。したがって、IL−6の遮断は、CRPのレベルの減少をもたらすことが予測される。たとえば、IL−6受容体阻害剤トシリズマブを用いた治療は、CRPレベルを減少させることが見られた(ACTEMRA(登録商標)(トシリズマブ)の添付文書、セクション12.2を参照)。同様の知見が、ヒト化抗IL−6抗体であるALD518で観察された(Clarke,S.J.他、J.Clin.Oncol. 27:15s(2009)(補遺、アブストラクト3025)を参照)。したがって、本発明の一態様では、IL−6拮抗剤(たとえば、IL−6またはIL−6受容体阻害剤などのIL−6の遮断をもたらす薬剤)を、CRPレベルを減少させる手段として最初に投与することができ、続いて、本発明によるCTLA4拮抗剤を投与することができる。そのようなIL−6拮抗剤の例には、トシリズマブなどの抗IL−6受容体抗体およびALD518などの抗IL−6抗体が含まれる。本発明の範囲内で使用することができる他のIL−6拮抗剤は、当業者に容易に認識されるであろう。また、CRPも、外来および損傷細胞との補体結合を支援すると考えられており、また、CRPの受容体を発現するマクロファージによる貪食を増強する(Pepys他、J.Clin.Invest. 111(12):1805〜1812(2003))。
【0044】
急性期刺激の後、CRP値は、急性期刺激前のレベルと比較して10,000倍まで増加し得る。血漿CRPは、肝細胞によって、主にサイトカインIL−6による転写制御の下で産生されるが、局所CRP合成および場合によっては分泌の他の部位が示唆されている。De novo肝臓合成は単一の刺激後に非常に迅速に開始され、血清濃度は約6時間までに5mg/Lを超えるまで上昇し、約48時間にピークとなる(Pepys他、J.Clin.Invest. 111(12): 1805〜1812(2003))。
【0045】
癌患者において、IL−6は、白血球などの宿主細胞、または癌細胞によって産生され得ることが以前に示されている。また、乏しい生存の予後因子としての上昇した血清CRPの役割が、黒色腫を有する患者(Deichmann他、British Journal of Cancer 91:699〜702(2004)、Findeisen他、J.Clin.Oncol. 13:2199〜2208(2009))および他の種類の腫瘍を有する患者(Blay他、Cancer Res 52:3317〜3322(1992)、Moses他、Oncology Reports 21:1091〜1095(2009)、Falconer他、Cancer 75:2077〜2082(1995)、Gough他、Clin Exp Immunol 105: 529〜536(1996))で確立されている。しかし、これまで血清CRPは一度も、特定の治療から延命効果を予測することが示されていない。
【0046】
対象におけるCRPなどの急性期反応物質の血清濃度は、ELISA、免疫比濁法、迅速免疫拡散、および視覚凝集が含まれる当技術分野で周知の様々な分析アッセイ方法を用いて決定することができる。たとえば、知られているアッセイには、Erlandsen他、Scand.J.Clin.Lab Invest. 60:37〜43(2000)に記載のものが含まれる。それぞれにアッセイは、具体的なアッセイ方法に関連する「正常上限」(ULN)値を有することが典型的である。そのようなULNは、典型的には、十分なサンプルサイズの正常で健康な対象から、血清CRP濃度を測定するために特定のアッセイ方法を用いて決定する。その後、ULNは、典型的には、依然として正常範囲内にあるとみなされる(たとえば、平均から2標準偏差以内)、最も高い測定されたCRP血清濃度であると決定される。そのようなULN値は、血清CRP濃度を測定するために用いた特定のアッセイ方法に応じて変動するため、それぞれの具体的なアッセイは、そのアッセイ方法に関連する独自のULN値を有する。したがって、本明細書に記載の方法は、血清CRP濃度を測定するための任意の可能な方法を用いて実施することが意図されるため、本明細書で開示する本発明の一部として参照するULNは、血清CRP濃度の測定に使用するいずれかのアッセイ方法に関連するULNである。
【0047】
本明細書中に示すように、CRP血清濃度を用いて、癌患者が化学療法と比較して免疫療法治療から利益を受ける可能性が高いかどうかを予測することができる。実施例中に詳述するように、本発明は、以前に治療していない切除不能なIV期の黒色腫を有する患者を、そのCRPの血清濃度について検査した試験を用いて、本明細書中で実証された。低いレベルのCRP血清濃度を有していた患者は、化学療法で治療した場合よりも、免疫療法で治療した場合に、より良好な結果を示した。高いレベルのCRP血清濃度を有していた患者は、化学療法で治療した場合よりも、免疫療法で治療した場合に、より良好な結果を示さなかった。全体応答率は、免疫療法治療で治療した患者のベースラインCRP血清濃度によって影響されると考えられる。さらに、低いCRP血清濃度を有するすべての患者について、免疫療法を受けている患者は、化学療法を受けている患者よりも高い応答率を有していた。
【0048】
したがって、本発明の一態様は、免疫療法治療の第1の投与を受ける前または同じ日に患者のCRPの血清濃度を測定するステップと、前記CRP血清濃度を正常上限と比較するステップとを含む、癌患者に対する免疫療法治療の利益を予測する方法を提供する。患者のCRPの血清濃度が特定の閾値レベル以下(たとえば、ULNに対して)である場合、患者は、化学療法治療と比較して免疫療法治療から利益を受けると予想される。また、患者のCRPの血清濃度が特定の閾値レベル以下である場合、CRP血清濃度の閾値レベルを超えるCRPの血清濃度を有する癌患者の全体応答率と比較して、免疫療法治療に対する全体応答率の改善が予想される。
【0049】
特に、本明細書に記載の方法を用いて、患者が、より低いCRPの血清濃度を有する患者と比較して、免疫療法治療に関連する生存の改善を有する、または免疫療法治療に対する応答の可能性の増加を有するかどうかを予測することができる。また、本明細書中に示すように、本発明の方法は、黒色腫を有する患者にとって特に興味深いものでもある。
【0050】
抗CTLA4抗体
実施例中に示すように、本発明の方法は、トレメリムマブなどの抗CTLA4モノクローナル抗体を用いた免疫療法治療において使用することができる。本発明において使用することができる、トレメリムマブ、およびイピリムマブなどの他の抗体、ならびにそれらを生成する方法は、米国特許第6,682,736号および米国特許第6,984,720号に記載されている。そのような抗体には、それだけには限定されないが、これらの参考文献中に指定されている抗体、たとえば、抗体3.1.1、4.1.1、4.8.1、4.10.2、4.13.1、4.14.3、6.1.1、11.2.1(トレメリムマブ、またはチシリムマブとしても知られている)、11.6.1、11.7.1、12.3.1.1、および12.9.1.1、ならびにイピリムマブ(10D1またはMDX−010としても知られている)が含まれる。
【0051】
そのような抗体のアミノおよび核酸配列は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,682,736号および米国特許第6,984,720号に記載されている。手短に述べると、本発明において使用することができる抗体には、それだけには限定されないが、抗体3.1.1、4.1.1、4.8.1、4.10.2、4.13.1、4.14.3、6.1.1、11.2.1(トレメリムマブ)、11.6.1、11.7.1、12.3.1.1、12.9.1.1、および10D1(イピリムマブ)などの抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を有する抗体が含まれる。また、本発明には、上記引用した特許文献に記載のように、これらの抗体の重鎖および軽鎖のCDRのアミノ酸配列を有する抗体、またはその抗原結合部分、ならびにCDR領域中に変化を有するものの使用も企図される。また、本発明には、これらの抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を有する抗体の使用も企図される。別の実施形態では、抗体は、米国特許第6,682,736号および米国特許第6,984,720号に記載のように、3.1.1、4.1.1、4.8.1、4.10.2、4.13.1、4.14.3、6.1.1、11.2.1(トレメリムマブ)、11.6.1、11.7.1、12.3.1.1、12.9.1.1、および10D1(イピリムマブ)から選択される抗体の重鎖および軽鎖の、完全長、可変領域、またはCDRのアミノ酸配列を有する抗体から選択される。
【0052】
別の実施形態では、Vのアミノ酸配列は、配列番号7、15、23、または31に記載のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、Vは、配列番号8、16、24、または32に記載のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、VおよびVは、それぞれ配列番号7(V4.1.1)および配列番号8(V4.1.1)に記載のアミノ酸配列、それぞれ配列番号15(V4.13.1)および配列番号16(V4.13.1)に記載のアミノ酸配列、それぞれ配列番号23(V11.2.1)および配列番号24(V11.2.1)に記載のアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号31(V10D1)および配列番号32(V10D1)に記載のアミノ酸配列を含む。
【0053】
さらに、抗体は、V3〜30もしくは3〜33の遺伝子、またはその中の保存的置換もしくは体細胞突然変異に由来するヒトCDRのアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列を含むことができる。また、抗体は、その軽鎖中にA27またはO12の遺伝子に由来するCDR領域、すなわち、5未満、または10個未満のそのような突然変異を含むこともできる。また、抗体は、5未満、または10個未満のアミノ酸が異なるものを含めた、これらの遺伝子からのフレームワーク領域を含むこともできる。また、元の生殖系列配列を反映するように突然変異させた、本明細書に記載のフレームワーク領域を有する抗体も含まれる。
【0054】
本発明の他の実施形態では、抗体は、CTLA4とB7.1、B7.2、または両方との間の結合を阻害する。たとえば、抗体は、約100nM以下、たとえば約10nM以下、たとえば約5nM以下、たとえば約2nM以下、さらに、たとえば約1nM以下のIC50で、B7.1との結合を阻害することができる。同様に、抗体は、約100nM以下、たとえば10nM以下、さらに、たとえば約5nM以下、さらに、たとえば約2nM以下、または、さらに、たとえば約1nM以下のIC50で、B7.2との結合を阻害することができる。
【0055】
さらに、別の実施形態では、抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分は、約10−8以上の親和性、たとえば約10−9以上の親和性、たとえば約10−10以上の親和性、さらに、たとえば約10−11以上の親和性の、CTLA4に対する結合親和性を有する。
【0056】
抗CTLA4抗体または抗原結合部分は、抗体4.1.1、11.2.1、4.13.1および10D1から選択される抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を有する抗体との結合について競合することができる。
【0057】
別の実施形態では、抗体は、抗体4.1.1、4.13.1、11.2.1または10D1の、重鎖および軽鎖の配列、可変重鎖および可変軽鎖の配列、ならびに/または重鎖および軽鎖のCDR配列を有する抗体と交差競合することができる。たとえば、抗体は、4.1.1、4.13.1、11.2.1、および10D1から選択される抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列、可変配列ならびに/またはCDR配列を有する抗体が結合するエピトープと結合することができる。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、4.1.1、4.13.1、11.2.1、および10D1から選択される抗体のH−CDR1、H−CDR2、およびH−CDR3、ならびにL−CDR1、L−CDR2、およびL−CDR3、または、無極性残基を他の無極性残基によって置き換えること、極性荷電残基を他の極性非荷電残基によって置き換えること、極性荷電残基を他の極性荷電残基によって置き換えること、および構造的に類似の残基の置換からなる群から選択される保存的変化、極性荷電残基で極性非荷電残基を置換することおよび無極性残基で極性残基を置換することからなる群から選択される非保存的置換、付加ならびに欠失からなる群から選択される、前記CDR配列からの変化を有する配列を含む、抗CTLA4抗体、またはその抗原結合部分を用いて実施する。
【0059】
本発明のさらなる実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、フレームワークまたはCDR領域中に生殖系列配列から10、7、5、または3個未満のアミノ酸変化を含有する。別の実施形態では、抗体は、フレームワーク領域中に5個未満のアミノ酸変化およびCDR領域中に10個未満の変化を含有する。一実施形態では、抗体は、フレームワーク領域中に3個未満のアミノ酸変化およびCDR領域中に7個未満の変化を含有する。一実施形態では、フレームワーク領域中の変化は保存的であり、CDR領域中の変化は体細胞突然変異である。
【0060】
別の実施形態では、抗体は、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3の配列にわたって、4.1.1、4.13.1、11.2.1、および10D1から選択される抗体のCDR配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一実施形態では、抗体は、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3の領域にわたって、抗体4.1.1、4.13.1、11.2.1、または10D1の対応する配列と100%の配列同一性を共有する。
【0061】
さらに別の実施形態では、抗体は、重鎖および軽鎖の可変領域配列にわたって、抗体4.1.1、4.13.1、11.2.1、または10D1の対応する可変領域配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%、配列同一性を有する。一実施形態では、抗体は、重鎖および軽鎖の可変領域配列にわたって、抗体4.1.1、4.13.1、11.2.1、または10D1の対応する配列と100%の配列同一性を共有する。
【0062】
様々な抗CTLA4抗体および抗原結合部分を本明細書中で記載したが、当業者は、本明細書中に提供した開示に基づいて、本発明には多種の抗CTLA4抗体および抗原結合部分が包含され、明確に開示したものに限定されないことを理解するであろう。より具体的には、ヒト抗体について記載したが、本発明はいかなる様式でもヒト抗体に限定されず、むしろ、本発明には、起源の種にかかわらず有用な抗体が包含され、とりわけ、キメラのヒト化および/または霊長類化抗体が含まれる。また、本明細書中で例示した抗体は、トランスジェニック哺乳動物、たとえば、ヒト免疫レパートリーを含むマウスを用いて得たが、当業者は、本明細書中に提供した開示に基づいて、本発明がこの方法または任意の他の特定の方法によって生成した抗体に限定されないことを理解するであろう。そうではなく、本発明には、それだけには限定されないが、当技術分野で知られている方法(たとえばファージディスプレイライブラリのスクリーニングなど)、または抗CTLA4抗体を生成するために将来開発される方法を含めた、任意の方法によって生成された、抗CTLA4抗体または抗原結合部分が含まれる。本明細書ならびにたとえば米国特許第6,682,736号および米国特許第6,984,720号中に提供した広範囲の開示に基づいて、当業者は、本発明の範囲内で使用することができるCTLA4拮抗剤を容易に生成および同定できるであろう。
【0063】
本発明には、米国6,682,736に開示のXenoMouse(商標)(Abgenix,Inc.、Fremont、CA)、または、再編成されていないヒト重鎖(μおよびγ)ならびにκ軽鎖の免疫グロブリン配列をコードしているヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ座位を、内在性のμおよびκ鎖座位を失活させる標的化突然変異と一緒に含有する「HuMAb−Mouse(商標)」(Medarex、Princeton、NJ)(Lonberg他、Nature 368:856〜859(1994)、および米国特許第5,770,429号)などの、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を用いて生成したヒト抗体が包含される。
【0064】
しかし、本発明は、それだけには限定されないが、たとえば、Tomizuka他、Proc Natl Acad Sci USA 97:722(2000)、Kuroiwa他、Nature Biotechnol 18:1086(2000)、Mikayama他の米国特許出願公開第2004/0120948号に記載の、Kirin TC Mouse(商標)(キリンビール株式会社、日本、東京)、ならびにHuMAb−Mouse(商標)(Medarex、Princeton、NJ)およびXenoMouse(商標)(Abgenix,Inc.、Fremont、CA)、上記などの、任意のトランスジェニック哺乳動物を用いて生成したヒト抗CTLA4抗体または抗原結合部分の使用も企図する。したがって、本発明には、任意のトランスジェニックまたは他の非ヒト動物を用いて生成した抗CTLA4抗体または抗原結合部分の使用が包含される。
【0065】
さらに、本発明には、当技術分野で知られている任意の方法または目的の抗原と特異的に結合する抗体もしくは抗原結合部分を生成するために将来開発される方法に従って生成した、CTLA4に特異的なヒトまたは任意の他の抗体を生成する、任意の方法の使用が包含される。
【0066】
ヒト抗体は、それだけには限定されないが、ファージディスプレイ抗体ライブラリの使用が含まれる方法によって開発することができる。これらの技術を用いて、CTLA4を発現する細胞、CTLA4自体、CTLA4の形態、そのエピトープまたはペプチド、およびそれに対する発現ライブラリ(たとえば米国特許第5,703,057号を参照)に対する抗体を作製することができ、その後、上述の活性についてそれらをスクリーニングすることができる。
【0067】
別の実施形態では、本発明の方法において用いる抗体または抗原結合部分は、完全にヒトではなく、「ヒト化」したものである。特に、ネズミ抗体または他の種由来の抗体を、当技術分野で周知の技術を用いて「ヒト化」または「霊長類化」することができる。たとえば、WinterおよびHarris、Immunol.Today 14:43〜46(1993)、Wright他、Crit.Reviews in Immunol. 12:125〜168(1992)、ならびに米国特許第4,816,567号、ならびにMageおよびLamoyi、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、ページ79〜97、Marcel Dekker,Inc.、New York、NY(1987)を参照されたい。
【0068】
本明細書中に提供した開示に基づいて理解されるように、本発明で使用するための抗体または抗原結合部分は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物、およびそれから誘導したハイブリドーマから得ることができるが、ハイブリドーマ以外の細胞系中で発現させることもできる。
【0069】
発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は当技術分野で周知であり、それだけには限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO(NS0とも呼ばれる)、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、およびヒト肝細胞癌細胞(たとえばHep G2)を含めた、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系が含まれる。細菌、酵母、昆虫、および植物細胞を含めた、非哺乳動物の原核および真核細胞も用いることができる。
【0070】
それだけには限定されないが、たとえば、SambrookおよびRussell、Molecular Cloning,A Laboratory Approach、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(2001)、ならびにAusubel他、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(2002)に記載のものなどの、当技術分野で周知の様々な発現系を使用することができる。これらの発現系には、数多くのもののうち、とりわけジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)に基づいた系が含まれる。グルタミン合成酵素の発現系は、全体的または部分的に欧州特許EP 216 846、欧州特許EP 256 055、および欧州特許EP 323 997および欧州特許出願89303964に関連して論じられている。一実施形態では、使用する抗体は、NS0細胞中、グルタミン合成酵素系を用いて作製する(GS−NS0)。別の実施形態では、抗体は、CHO細胞中、DHFR系を用いて作製する。どちらの系も当技術分野で周知であり、とりわけ、Barnes他、Biotech&Bioengineering 73:261〜270(2001)、およびその中で引用される参考文献に記載されている。
【0071】
グリコシル化を排除するための、抗体のCH2ドメインの部位特異的突然変異誘発が、非ヒトのグリコシル化から生じる免疫原性、薬物動態学、および/またはエフェクター機能のいずれかの変化を防止するために、好ましい場合がある。さらに、抗体は、酵素反応(たとえば、Thotakura他、Meth.Enzymol. 138:350(1987)を参照)および/または化学的方法(たとえば、Hakimuddin他、Arch.Biochem.Biophys. 259:52(1987)を参照)によって脱グリコシル化することができる。
【0072】
さらに、本発明には、変更されたグリコシル化パターンを含む抗CTLA4抗体の使用が包含される。当業者は、本明細書中に提供した開示に基づいて、抗CTLA4抗体を、天然に存在する抗体と比較して、追加の、より少ない、または異なるグリコシル化部位を含むように修飾できることを理解するであろう。そのような修飾は、たとえば、米国特許出願公開第2003/0207336号および米国特許出願公開第2003/0157108号、ならびに国際特許公開WO 01/81405および国際特許公開WO 00/24893に記載されている。
【0073】
さらに、本発明は、抗体上に存在する糖型にかかわらず(存在する場合)、抗CTLA4抗体を使用することを含む。さらに、糖タンパク質上に存在する糖型を大幅に再モデリングする方法は当技術分野で周知であり、たとえば、国際特許公開WO 03/031464、国際特許公開WO 98/58964、および国際特許公開WO 99/22764、ならびに米国特許出願公開第2004/0063911号、米国特許出願公開第2004/0132640号、米国特許出願公開第2004/0142856号、米国特許出願公開第2004/0072290号、および米国特許第6,602,684号に記載のものが含まれる。
【0074】
さらに、本発明には、それだけには限定されないが、ポリペプチドを、様々な非タンパク質ポリマーのうちの1つ、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンと、たとえば、米国特許出願公開第2003/0207346号および米国特許出願公開第2004/0132640号、ならびに米国特許第4,640,835号、米国特許第4,496,689号、米国特許第4,301,144号、米国特許第4,670,417号、米国特許第4,791,192号、米国特許第4,179,337号に記載の様式で連結させることを含めた、任意の当技術分野で知られている共有結合および非共有結合の修飾を有する抗CTLA4抗体の使用が包含される。
【0075】
さらに、本発明には、抗CTLA4抗体、もしくはその抗原結合部分、たとえばヒト血清アルブミンポリペプチドを含むキメラタンパク質、またはその断片の使用が包含される。キメラタンパク質を、たとえばキメラタンパク質をコードしているキメラ核酸のクローニングを用いた組換え方法によって、または2つのペプチド部分の化学結合によって生成したかにかかわらず、当業者は、そのようなキメラタンパク質は当技術分野で周知であり、本発明の抗体に、それだけには限定されないが、安定性および血清半減期の増加などの望ましい生物学的特性を与えることができ、したがってそのような分子が本明細書中に含まれることを理解するであろう。
【0076】
本発明において使用するために作製した抗体は、最初に特定の所望のアイソタイプを保有する必要はない。そうではなく、作製されたままの抗体は任意のアイソタイプを保有することができ、その後、従来技術を用いてアイソタイプを転換することができる。これらには、直接組換え技術(たとえば米国特許第4,816,397号を参照)、および細胞−細胞融合技術(たとえば米国特許第5,916,771号を参照)が含まれる。
【0077】
本発明の抗体のエフェクター機能は、アイソタイプ転換によって、様々な治療的使用のためのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgMに変化させ得る。さらに、細胞死滅のための補体依存性は、たとえば、二重特異性、免疫毒素、または放射標識を使用することで回避することができる。
【0078】
また、本発明には、数多くのもののうち、とりわけ、国際特許公開WO 00/37504(2000年6月29日に公開)、国際特許公開WO 01/14424(2001年3月1日に公開)、国際特許公開WO 93/00431(1993年1月7日に公開)、および国際特許公開WO 00/32231(2000年6月8日に公開)に開示の抗体も包含される。
【0079】
抗体4.1.1、4.13.1および11.2.1はIgG2抗体であり、10D1(イピリムマブ)はIgG1抗体であり、また、そのような抗体の可変領域の配列は、本明細書中(表3を参照)、ならびに本明細書中に引用かつ組み込まれている特許出願および特許文献中に提供されているが、本明細書の別の箇所により完全に論じられているように、これらの抗体の完全長配列、ならびに配列番号1〜32に記載の配列を含み、任意の定常領域をさらに含む任意の抗体の使用は、アイソタイプにかかわらず、本明細書中に包含されることを理解されたい。
【0080】
したがって、当業者は、本明細書中の教示が提供された後、本明細書に記載の方法および使用には、広範な多量の抗CTLA4抗体および/またはその抗原結合部分の使用が含まれることを容易に理解するであろう。
【0081】
さらに、当業者は、本明細書中に提供した開示に基づいて、本発明は単一の拮抗剤のみの投与に限定されず、むしろ、本発明には、少なくとも1つのCTLA4拮抗剤、たとえば、4.1.1、4.13.1、11.2.1、およびイピリムマブなどの抗CTLA−4抗体を、少なくとも1つの他の治療剤と組み合わせて投与することが包含されることを理解するであろう。したがって、CTLA4拮抗剤の任意の組合せを少なくとも1つの治療剤と合わせることができ、本発明には、任意のそのような組合せおよびその順列が包含される。
【0082】
治療方法
治療方法は、治療を必要としている対象に、治療上有効な量、または「有効量」の抗体、または抗原結合部分を、本開示によって企図されるように投与することを含む。本明細書中で使用する「治療上有効な」または「有効な」量とは、疾患症状の重篤度の減少、疾患症状のない期間の頻度および持続期間の増加、生存の延長、ならびに/または疾患の罹患が原因の機能障害もしくは能力障害の予防を、単一用量としてまたは単独でもしくは他の薬剤と組み合わせた複数用量のレジメンに従って、もたらすために十分な量の、抗体またはその一部分の量をいう。当業者は、対象の大きさ、対象の症状の重篤度、および選択した具体的な組成物または投与経路などの要因に基づいて、そのような量を決定することができる。対象は、ヒトまたは非ヒト動物(たとえば、ウサギ、ラット、マウス、サルまたは他の低次の霊長類)であり得る。
【0083】
本開示の抗体または抗原結合部分を既知の医薬品と同時投与してもよく、一部の例では、抗体自体を修飾してもよい。たとえば、有効性を潜在的にさらに増加させるために、抗体を免疫毒素または放射性同位体とコンジュゲートさせることができる。追加の治療剤との同時投与に関して、そのような薬剤には、細胞毒性剤、放射毒性剤または免疫抑制剤が含まれることができる。抗体は、薬剤に連結させることができ(免疫複合体として)、または薬剤とは別々に投与することができる。後者の場合(別々の投与)、抗体は、薬剤の前、後、もしくはそれと同時に投与することができるか、または他の既知の治療、たとえば抗癌治療、たとえば放射線と同時投与することができる。そのような治療剤には、とりわけ、それ自体では、患者に対して毒性または準毒性であるレベルでのみ有効な、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、およびシクロホスファミドヒドロキシウレアなどの抗新生物剤が含まれる。シスプラチンは、100mgの用量として4週間ごとに1回静脈内投与することができ、アドリアマイシンは、60〜75mgの用量として21日ごとに1回静脈内投与する。本開示の抗CTLA4抗体、またはその抗原結合部分と化学療法剤とのの同時投与により、異なる機構によって作動する2つの抗癌剤がもたらされ、これにより、ヒト腫瘍細胞に対する細胞毒性効果が得られる。そのような同時投与により、抗体に対してそれらを非反応性にさせる、薬物耐性の発生または腫瘍細胞の抗原性の変化による問題が解決される場合がある。
【0084】
本明細書で開示した抗体および抗原結合部分は、様々な状況において治療的または診断的ツールとして使用することができる。免疫系の機能においてCTLA4が果たす役割を考慮すると、本開示の抗体または抗原結合部分を用いた治療に特に適した障害および状態には、異常細胞成長、たとえば、中皮腫、胆管道(肝管および胆管)のもの、原発性もしくは続発性のCNS腫瘍、原発性もしくは続発性の脳腫瘍、肺癌(NSCLCおよびSCLC)、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部もしくは頸部の癌、皮膚もしくは眼内の黒色腫、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、胃腸管系(胃、結腸直腸、および十二指腸)、乳癌、子宮癌、輸卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰部癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、精巣癌、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性のリンパ腫、膀胱癌、腎臓もしくは輸尿管の癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質癌、胆嚢癌、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、または前述の癌のうちの1つもしくは複数の組合せが含まれる。
【0085】
前述の障害のいずれかを治療するため、本開示に従って使用するための医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容できる担体または賦形剤を用いた従来の様式で配合し得る。本開示の抗体または抗原結合部分は、治療する障害の種類に応じて変化する場合がある任意の適切な手段によって投与することができる。可能性のある投与経路には、非経口(たとえば、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下)、肺内および鼻腔内、ならびに、局所的免疫抑制治療のために所望する場合は病巣内投与が含まれる。さらに、本開示の抗体は、たとえば減少する用量の抗体を用いた、パルスインフュージョンによって投与し得る。一実施形態では、投薬は、部分的には投与が短期のものであるか慢性的なものであるかに応じて、静脈内注射または皮下注射などの注射によって与える。投与する量は、臨床症状、個体の重量、および/または他の薬物を投与するかどうかなどの様々な要因に依存する。当業者は、投与経路が治療する障害または状態に応じて変化することを理解するであろう。
【0086】
治療上有効な量の本開示による抗体または抗原結合部分の決定は、具体的な患者の特徴、投与経路、および治療する障害の性質に大きく依存する。一般的な指針は、たとえば、医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization)の出版物およびRemington’s Pharmaceutical Sciences、第27および28章、ページ484〜528(第18版、Alfonso R.Gennaro編、Easton、Pa:Mack Pub.Co.、1990)中に見つけることができる。より詳細には、治療上有効な量の決定は、医薬品の毒性および有効性などの要因に依存する。毒性は、当技術分野で周知の方法および前述の参考文献中に見つかる方法を用いて決定し得る。有効性は、同じ指針を以下の実施例に記載する方法と併せて利用して、決定し得る。
【0087】
抗体または抗原結合部分の投与では、投与量は、宿主体重1kgあたり約0.0001〜100mg、より通常には0.01〜20mgの範囲であり得る。たとえば、投与量は、0.3mg/体重1kg、1mg/体重1kg、3mg/体重1kg、5mg/体重1kg、10mg/体重1kg、15mg/体重1kg、20mg/体重1kg、または1〜20mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療レジメンには、1週間ごとに1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、1カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回または3〜6カ月ごとに1回の投与が含まれる。本開示の抗CTLA抗体またはその抗原結合部分のための投与レジメンには、たとえば、1mg/体重1kg、3mg/体重1kg、5mg/体重1kg、10mg/体重1kg、15mg/体重1kg、または20mg/体重1kg、静脈内投与によるものが含まれ、抗体は、以下の投薬スケジュールのうちの1つを使用して与える:(i)4週間ごとに6回の投与、その後、3カ月ごと、(ii)3週間ごと、(iii)1〜20mg/体重1kgを1回、続いて、1〜20mg/体重1kgを3週間ごと。
【0088】
以下の実験の実施例を参照して、本発明をさらに詳述する。これらの実施例は例示目的のみで提供し、別段に指定しない限りは、限定することを意図しない。したがって、本発明は、いかなる様式でも以下の実施例に限定されると解釈されるべきでなく、むしろ、本明細書中に提供する教示の結果として明らかとなるありとあらゆる変形が包含されると解釈されるべきである。
【実施例1】
【0089】
トレメリムマブで治療した患者のCRPの分析
CTLA4の遮断を用いて治療した患者の延命効果を予測する、血清C反応性タンパク質の能力は、以前に治療していない切除不能な黒色腫を有する患者における、トレメリムマブ対化学療法(ダカルバジンまたはテモゾロミド)のランダム化多施設第3相試験である臨床治験A3671009からのデータの分析で発見された。アームAにランダム化された患者は、90日ごとに15mg/kgの用量でトレメリムマブを最大で4回静脈内投与された。アームBにランダム化された患者は、1000mg/mのダカルバジンまたは200mg/mのテモゾロミドのいずれかを、治験責任者の判断で投与された。治験の主要目的は、2つの治療アームにおける患者の全生存を比較することであった。客観的な腫瘍応答は副次的評価項目であった。
【0090】
A3671009治験では、治療を開始する前にほとんどの患者で血清CRPを測定した。以下に記載した分析では、ベースラインCRPとは、試験へのランダム化の14日前までに患者から採取した血清で行ったCRPアッセイの結果をいう。
【0091】
表1は、中央値全生存(OS)、2つの治療アームの生存の危険率、および2つの治療アームの全生存の差異のp値を、CRP分類ごとに示す。低いベースラインCRPを有する患者の治療群間で臨床的に有意かつ統計的に有意な差異が存在していた(図1を参照)。1.48の危険率は、CTLA4の遮断を受けた患者を支持している、全生存の48%の改善を表す。高いベースラインCRPを有する患者における治療群間では明白な差異は存在しなかった(図2を参照)。これは、治療前に低いCRPを有する患者の群では、化学療法とは対照的にCTLA4の遮断を用いた治療から顕著な利益が導かれる一方で、低いベースラインCRPを有する患者の群では、化学療法と比較してCTLA4の遮断を用いた治療からどのような延命効果も導かれないと考えられることを実証している。
【0092】
【表1】

【0093】
表2は、低CRP群中の患者のベースライン特徴を治療アームごとに示す。アームBでは正常LDHを有する患者およびECOG一般状態0を有する患者がわずかに高い割合である以外は、アームは良好に一致しており、これらの要素は、どちらも予後良好に関連しており、化学療法アームを支持している。このことは、トレメリムマブを受けた患者のより良好な生存は、2つのアーム間のベースライン要素の不均衡に起因し得ないことを示している。
【0094】
【表2】

【0095】
図1および2は、CRP分類および治療アームごとの全生存のカプランマイヤープロットを示す。
【0096】
【表3−1】

【0097】
【表3−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRP濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の1.5倍以下の血清CRP濃度を有する対象に、CTLA4拮抗剤を投与することを含む、黒色腫を治療する方法。
【請求項2】
a)対象における血清CRP濃度を決定することと、b)前記対象におけるCRP濃度が、CRP濃度の測定に使用するアッセイ方法によって決定される、正常上限の1.5倍以下である場合に、CTLA4拮抗剤を対象に投与することとを含む、黒色腫を治療する方法。
【請求項3】
a)患者における血清CRP濃度を測定することと、b)前記血清CRP濃度を、濃度の測定に使用するCRPアッセイの正常上限と比較することとを含み、正常上限の1.5倍以下である患者における血清CRP濃度が、患者に対する免疫療法治療の利益を示す、黒色腫患者に対する免疫療法治療の利益を予測する方法。
【請求項4】
正常上限の1.5倍以下の血清CRP濃度を有する前記黒色腫患者に対する免疫療法からの利益が、正常上限の1.5倍より高い血清CRP濃度を有する黒色腫患者と比較した全生存の改善である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記黒色腫が切除不能なIV期の黒色腫である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記免疫療法治療が、前記黒色腫患者にCTLA4拮抗剤を投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記CTLA4拮抗剤が、抗CTLA4抗体またはその抗原結合部分である、請求項1、2、または6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記抗CTLA4抗体または抗原結合部分が、配列番号17、18、19、20、21、および22に記載の重鎖および軽鎖のCDR配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗CTLA4抗体または抗原結合部分が、配列番号25、26、27、28、29、および30に記載の重鎖および軽鎖のCDR配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体がトレメリムマブである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体がイピリムマブである、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−93901(P2011−93901A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−227146(P2010−227146)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】