説明

癌を検出するためのメチル化遺伝子バイオマーカー

本発明は、患者試料を、特にメチル化SPARC核酸分子の存在について分析することにより癌を診断する方法、そして特に、膵癌の診断のための方法を含む。本発明はまた、癌患者に治療有効量の脱メチル化剤を投与することによる、癌を処置するための治療方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2003年6月24日に出願された仮出願U.S.S.N. 60/482,146は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
発明の分野
本発明は、癌の検出に重要なメチル化遺伝子バイオマーカーを提供する。より具体的には、本発明は、SPARCのメチル化遺伝子であるバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
複数の刊行物および特許文献を、この発明が関係する従来技術を説明するために本明細書中に引用してある。ナンバリングしてあるこれら参考文献の完全な引用は、本明細書の末尾に見出すことができる。各引用文献は、その全体が記載されているごとくに本明細書に組み込まれる。
膵癌は、あらゆる悪性腫瘍の中で最も高い死亡率を有するものの1つであり続けている。毎年、28,000人の患者が膵癌と診断され、そのほとんどが本症により死亡する。より早期の、治療可能な病期における膵癌の信頼性のあるスクリーニングを可能にする腫瘍マーカーが現在知られていないため、大多数の患者は進行した病期で診断される。これは、膵癌の強い家族歴を有する患者にとっては特別な問題である。かかる患者は、生涯において膵癌を発症するリスクが5〜7倍まで高い可能性がある。膵癌に対する我々の基礎知識および臨床管理における様々な進歩にもかかわらず、膵癌と診断される実質的に全ての患者は、本症により死亡する。膵癌の高死亡率は、主として、進行した病期における整合性のある診断および効果的なスクリーニング方法の欠如によるものである。
【0003】
浸潤性の膵管腺癌はあらゆる固形腫瘍の中で最も侵襲的なものの1つであり、浸潤性膵癌は、宿主の顕著な線維形成性反応を伴うことが多い。腫瘍細胞自体の潜在的な侵襲性の他に、初期浸潤(primary invasion)部位における当該宿主の反応が、膵癌の進行の重要な要因であると考えられている。実際、膵癌の浸潤性表現型に影響を与える、膵癌細胞と間質線維芽細胞との間の相互作用に関する証拠が存在する(Maehara et al., 2001)。膵癌細胞内で起こる遺伝子的および非遺伝子的事象に関する我々の理解における大幅な進歩とは対照的に、腫瘍−宿主相互作用に関連する分子機構は十分明らかにされていない。Ryuらは、連続的遺伝子発現解析(SAGE)を用い、原発癌および継代した癌細胞系の遺伝子発現プロファイルを比較し、浸潤特異的遺伝子(invasion-specific gene)のクラスターを特定した(Ryu et al., 2001)。特定された遺伝子の多くは腫瘍性上皮に隣接する間質細胞によって特異的に発現されており、したがって、これらは、腫瘍−宿主相互作用の潜在的なメディエーターである(Iacobuzio-Donahue et al., 2002b)。
【0004】
SPARC(システインに富む酸性の分泌性タンパク質)/オステオネクチン/BM40は、組織リモデリング、創傷の修復、形態形成、細胞分化、細胞増殖、細胞移動および血管形成を含む多様な生物学的過程に関与する、マトリックス細胞性の糖タンパク質である(Jendraschak and Sage, 1996、Yan and Sage, 1999、Bradshaw and Sage, 2001、Brekken and Sage, 2001)。SPARCは、広範囲にわたるヒトの悪性新生物において高度に発現され、そして、SPARCの無秩序な発現は、疾患の進行および/または予後の不良に相関していることが多い(Wewer et al., 1988、Bellahcene and Castronovo, 1995、Porte et al., 1995、Porter et al., 1995、Ledda et al., 1997、Porte et al., 1998、Massi et al., 1999、Rempel et al., 1999、Thomas et al., 2000、Yamanaka et al., 2001)。興味深いことに、ある種の腫瘍では、SPARCの強い発現が、腫瘍細胞に隣接する間質において主に検出されている(Le Bail et al., 1999、Paley et al., 2000、Iacobuzio-Donahue et al., 2002a)。これらの知見は、SPARCが腫瘍細胞と周囲の宿主細胞との間の境界部位(site of interface)において、腫瘍の進行に関与しているという仮説を導くものである。最近、Yiuとその共同研究者らは、外因性SPARCによる卵巣癌細胞の処置が、細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘発することを示した(Yiu et al., 2001)。さらに、卵巣癌細胞におけるSPARCの強制的な発現は、ヌードマウスで腫瘍原性の低減もたらし、このことは、SPARCが腫瘍抑制機能を有することを示唆するものである(Mok et al., 1996)。細胞増殖に対するその効果に加えて、SPARCは腫瘍浸潤に関連している。SPARCは、in vitroで前立腺癌細胞および乳癌細胞の浸潤能力を増大させ(Jacob et al., 1999、Briggs et al., 2002)、in vivoでグリオーマの浸潤を促進することが示された(Schultz et al., 2002)。このように、SPARCの生物学的機能は癌の種類によって異なるようであり、このタンパク質が膵癌の進行に関与しているか否かは知られていない。
【0005】
したがって、膵癌と他の種類の癌におけるSPARCの正確な役割を決定するための切迫した必要がある。さらにまた、早期の医学的介入が救命により効果的となることができるように、膵癌を検出および診断するための、特に浸潤前の病期または早い病期において検出および診断するための新規方法の開発に対する大きなニーズがある。実際、膵癌のための新しい検出方法は、他の種類の癌の診断に同様に役立つだろう。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、早期の医学的処置および患者生存率の向上を可能にする、癌、特に膵癌の、早い病期での検出のための方法を提供する。
本発明は、対象からの試料におけるメチル化SPARC核酸分子またはその変異体の検出を含む、癌を診断する方法に関する。本発明の方法は、全ての非メチル化シトシンをウラシルに変換するが、メチル化されたものは変換しない、亜硫酸水素ナトリウムまたはこれと同等の剤によるSPARC DNAの修飾と、引き続くメチル化DNAに特異的なプライマー対非メチル化DNAに特異的なプライマーの増幅とを含む。この「メチル化特異的PCR」またはMSP法は、少量のみのDNAを必要とし、所定のCpGアイランド遺伝子座の0.1%のメチル化アレルを検知し、かつ、種々の試料タイプで行うことができる。
メチル化SPARC核酸分子の存在は、健常人の試料に関連づける。試料は、好ましくは、細胞増殖疾患、特に膵癌を有することが疑われる哺乳類から得る。
【0007】
好ましい態様においては、膵癌の指標となる核酸分子は、配列番号1(SPARC核酸配列)において特定された分子と少なくとも約80%の配列同一性を有する配列を含み、より好ましくは、核酸分子は配列番号1において特定される分子と少なくとも約90%の配列同一性を有する配列を含み、最も好ましくは、核酸分子は配列番号1において特定される分子と少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。
別の好ましい態様においては、核酸分子は、癌を有する患者において、正常個体における発現レベルと比較してより低いレベルで発現している。好ましくは、核酸分子は、癌を有する患者において、正常個体における発現と比較して少なくとも約15倍低く発現しており、より好ましくは、核酸分子は、癌を有する患者において、正常個体における発現と比較して少なくとも約10倍低く発現しており、最も好ましくは、核酸分子は、癌を有する患者において、正常個体における発現と比較して少なくとも約5倍低く発現している。
別の好ましい態様においては、好ましい核酸分子の検出のために用いられる試料は、ヒト患者を含む哺乳類患者から得られる。
【0008】
本発明はまた、哺乳類に脱メチル化剤の治療有効量を投与することを含む、癌に罹患している哺乳類を処置するための方法を提供する。本方法は、膵癌に罹患している患者を処置するために用いることができる。
配列番号1において特定される分子に対応する配列と実質的に相補的な分子を含む診断キットも提供される。好ましくは、キットは、配列番号1において特定される分子と少なくとも約80%の配列同一性、より好ましくは、配列番号1において特定される分子と少なくとも約90%の配列同一性、最も好ましくは、配列番号1において特定される分子と少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む分子を含む。
好ましくは、キットは癌の検出のためのキットの使用に関する書面による指示を含み、この指示は、癌患者からメチル化SPARC核酸分子を検出することを規定する。
発明の他の側面は、以下に記載されている。
【0009】
発明の詳細な説明
この発明は、本明細書中に記載された特定の材料および方法に限られないものと理解される。また、本明細書中に用いられている用語は、特定の態様を記載するためのものであって、添付した特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないものと理解されるべきである。本明細書中で用いる場合、単数形は、文脈がはっきりと別様に指示するものでない限り、複数形を含む。
別様に定義されない限り、本明細書中に用いられる全ての技術的および科学的用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。以下の参考文献は、当業者に、この発明において用いられている用語の多くの一般的な定義を提供するものである:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994)、The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988)、The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991)、およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書中で用いる場合、以下の用語は、他に特定されない限り、これらに割り当てられた意味を有する。
本明細書中に言及されている全ての刊行物は、当該刊行物中に報告され、かつ、本発明との関連で用いられ得る細胞系、プロトコル、試薬およびベクターを説明し、開示する目的で引用してある。このうちのいずれも、本発明が先行発明によってかかる開示に先行しないという自白として解釈されるべきではない。
【0010】
定義
本発明の文脈において、「バイオマーカー」は、ヒトの癌を有する患者から採取した試料中に、対照対象(例えば、診断が陰性もしくは検出不能な癌を有する者、正常対象または健康対象)から採取した同等の試料との対比において存在する核酸分子を意味する。本発明の文脈において、バイオマーカーは特に、配列番号1において特定されるメチル化SPARC、またはその変異体である。
「診断」は、病的状態の存在または性質を特定することを意味する。癌に関する本発明の文脈においては、メチル化SPARC核酸の存在は癌、そして特に膵癌の診断である。診断方法によって、その感度および特異度は異なる。診断検査の「感度」は、試験結果が陽性である罹患個体のパーセンテージである(「真陽性」のパーセント)。検査により検出されなかった罹患個体は、「偽陰性」である。罹患しておらず、かつ検査において陰性の試験結果であった対象は、「真陰性」と呼ばれる。診断検査の「特異度」は1−偽陽性率であり、ここで「偽陽性」率は、疾患を有していないが、試験結果が陽性である者の比率と定義される。特定の診断方法は、状態の決定的な診断は提供しないかもしれないが、同方法が診断を補助するポジティブな指標を提供すればそれで十分である。
【0011】
マーカーの「試験量」は、試験されている試料中に存在するマーカーの量を示す。試験量は、絶対量(例えばμg/ml)か、または相対量(例えば信号の相対強度)であってもよい。
マーカーの「診断量」は、ヒトの癌の診断に合致する対象試料中のマーカーの量を示す。診断量は、絶対量(例えばμg/ml)か、または相対量(例えば信号の相対強度)であってもよい。
マーカーの「対照量」は、マーカーの試験量に対して比較される任意の量または量の範囲であってもよい。例えば、マーカーの対照量は、ヒトの癌を有しない者のマーカーの量であってもよい。対照量は、絶対量(例えばμg/ml)か、または相対量(例えば信号の相対強度)であってもよい。
「検出する」は、検出すべき物の存在、不存在または量を特定することを示す。
「患者」は、本明細書中では、処置すべき哺乳類対象を意味し、ヒト患者が好ましい。場合によっては、発明の方法は、実験動物、獣医用途、および疾患の動物モデルの開発において利用法が見出され、これには、限定されることなく、マウス、ネズミおよびハムスターを含む齧歯類、および霊長類が含まれる。
【0012】
本明細書中で用いられる場合、「薬学的に許容し得る」成分は、妥当な利益/危険率に相応した、過度な不都合な副作用(例えば毒性、刺激性、およびアレルギー反応)なしに、ヒトおよび/または動物への使用に好適なものである。
本明細書中で用いられる場合、用語「安全かつ有効な量」は、この発明の様式で用いられる場合、妥当な利益/危険率に相応した、過度な不都合な副作用(例えば毒性、刺激性、およびアレルギー反応)なしに、所望の治療応答をもたらすのに十分な成分の量を示す。「治療有効量」は、所望の治療応答をもたらすのに十分な本発明の化合物の量を意味する。例えば、癌、肉腫またはリンパ腫の増殖を遅延するか、または癌を縮小させまたは転移を防止するのに有効な量である。具体的な安全かつ有効な量、または治療有効量は、処置する特定の状態、患者の身体的条件、処置する哺乳類または動物の種類、処置の継続時間、併用治療の性質(もしあれば)、および使用される具体的な剤形および化合物またはその誘導体の構造などの要因により異なる。
【0013】
本明細書中で用いられる場合、「増殖性成長疾患(proliferative growth disorder)」、「腫瘍性疾患(neoplastic disease)」、「腫瘍」、「癌」は、相互変換可能に用いられ、本明細書中で用いられる場合、制御されない、異常な細胞増殖によって特徴づけられる状態を示す。好ましくは、処置される癌は膵癌であり、膵臓における異常な細胞増殖は、同器官におけるいずれの細胞であってもよい。癌の例は、癌腫、芽腫および肉腫を含むが、これらに限定されない。本明細書中で用いられる場合、用語「癌腫」は、皮膚、または、より一般的には身体器官の上皮に見出される、上皮から生じる腫瘍を示す。
用語「かかる処置が必要な」は、本明細書中で用いられる場合、ケアを提供する者、例えばヒトの場合、医師、ナース、ナースプラクティショナー等によりなされた、患者が処置を要する、または処置から利益を得るという判断を示す。この判断は、ケアを提供する者の専門知識の範囲内にある種々の要因に基づいてなされるが、同要因には、患者が、本発明の化合物により処置可能な状態の結果として病気であるか、または病気になり得るという知見が含まれる。
【0014】
「処置」は、本発明により行われる、疾患の発症を予防し、または、疾患の病態もしくは症状を変化させる介入である。したがって、「処置」は治療的処置、および予防的または防止的措置の両方を示す。「処置」は、緩和ケアとして特定することもできる。処置を必要とするものは、既に疾患を有するもの、および疾患を予防すべきものを包含する。腫瘍(例えば癌)治療において、治療薬は直接腫瘍細胞の病状を減少させてもよく、または、腫瘍細胞を、他の治療剤、例えば放射線および/または化学療法による処置に対しより感受性にしてもよい。
本明細書中に開示されている組成物またはそのアゴニストの「有効量」は、腫瘍性細胞の「細胞増殖を阻害すること」に関しては、標的細胞の増殖をある程度阻害することができる量である。本用語は、標的細胞の増殖阻害効果、静細胞効果および/または細胞毒性効果および/またはアポトーシスおよび/または壊死を引き起こすことができる量をさらに含む。「有効量」、例えば、本明細書中に記載された核酸分子と相互作用する潜在的な候補剤の、腫瘍性細胞増殖を阻害するためのものは、当該技術分野でよく知られた方法を用いて、実験的に、かつ定法により決定することができる。
【0015】
「治療有効量」は、腫瘍性疾患または腫瘍性細胞の処置に関しては、以下の1または2以上の効果を生じさせることができる量を示す:(1)腫瘍増殖の(i)減速および(ii)完全な増殖停止、を含む、ある程度の阻害、(2)腫瘍細胞数の減少、(3)腫瘍サイズの維持、(4)周辺器官への腫瘍細胞浸潤の(i)低減、(ii)減速または(iii)完全な防止、を含む阻害、(5)転移の(i)低減、(ii)減速または(iii)完全な防止、を含む阻害、(7)(i)腫瘍サイズの維持、(ii)腫瘍サイズの縮小、(iii)腫瘍の増殖の減速、(iv)浸潤の低減、減速または防止、または(v)転移の低減、減速または防止、をもたらし得る抗腫瘍免疫応答の増強、および/または、疾患に関連する1または2以上の症状のある程度の緩和。
【0016】
別の側面において、本発明はヒト癌患者および対照(例えば、ヒトの癌が検出されない個体)の試料に存在するバイオマーカー(すなわち、メチル化SPARC)を検出するための方法を提供する。バイオマーカーは、多数の生体試料で検出することができる。試料は、好ましくは生体液、組織または器官試料である。この発明に有用な生体液試料の例としては、血液、血清、血漿、膵液、吸引液、尿、涙、唾液などが挙げられる。
【0017】
SPARC核酸分子の検出
正常な膵臓は、正常な管上皮と比較して優勢な腺房細胞と小島とを含む。正常な膵管上皮は、したがって、バルクな正常膵臓の遺伝子発現分析においては低く表される。したがって、好ましい態様においては、バイオチップ、例えばAffymetrix GeneChipなどによって特定されたSPARC遺伝子は、正常膵管上皮細胞の培養物中に高発現する遺伝子を除外するためにさらに精製される。示差的に発現したものとしてAffymetrix GeneChipにより特定された各遺伝子について、対応するSAGEタグを特定し、正常膵管上皮ライブラリーHXおよびH126のSAGEmapデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SAGE/)に存在するSAGEの総数を決定した。好ましくは、これらの2つのSAGEライブラリーのうちの約1つに少なくとも約5つのタグを有するすべての遺伝子を、その後さらなる分析から除外した。
連続的遺伝子発現解析(SAGE)は、遺伝子断片に対応する転写物の部分的な、決定された配列の特定および特徴化に基づいている。これらの決定された転写配列「タグ」は、例えば、細胞、組織または抽出物において発現している遺伝子のマーカーである。
【0018】
SAGEは、いくつかの原則に基づく。第1に、短いヌクレオチド配列タグ(9〜10bp)は、それが転写物中の明確な位置から単離されるという条件で、転写物をユニークに同定するための十分な情報量を含む。例えば、9bp程度の短い配列は、タグ部位におけるランダムなヌクレオチド分布を考えると262,144個の転写物(4の9乗)を識別することができるが、概算は、ヒトゲノムが約80,000〜200,000個の転写物(Fields, et al., Nature Genetics, 7:345 1994)をコードすることを示唆している。タグのサイズは、例えば、ゲノムによりコードされる転写物の数がより少ない下等な真核生物または原核生物では、より短くてもよい。例えば、6〜7bp程度の短いタグは、酵母における転写物を識別するのに十分だろう。
第2に、タグのランダムな二量体化は、バイアス(増幅および/またはクローニングに起因)の少ない手順を可能にする。第3に、これらの短配列タグの連結は、単一のベクターまたはクローン内で多数のタグをシーケンシングすることにより、転写物の効果的な分析を連続的に行うことを可能にする。情報が連続した一連のデータとして送られるコンピュータでのシリアル通信と同様に、配列タグの連続分析は、レジスタおよび各タグの境界を確立する手段を要する。本発明による、決定されたタグを配列から派生させる概念は、配列データベースに試料のタグをマッチングさせるのに役立つ。好ましい態様においては、コンピューターを用いた方法を、試料配列と既知配列とのマッチングに用いる。
【0019】
ここで用いるタグは、遺伝子をユニークに特定する。これは、その長さと、採取元の遺伝子におけるその特別な位置(3’)によるものである。完全長遺伝子は、タグを遺伝子データベースの要素とマッチングさせることによって、またはタグ配列をプローブとして利用し、cDNAライブラリーからこれまで未確認であった遺伝子を物理的に単離することによって特定することができる。DNAプローブを用いて遺伝子をライブラリーから単離する方法は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、Veculescu et al., Science 270: 484 (1995), and Sambrook et al. (1989), MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)を参照。データベース入力項目とのマッチングにより、またはcDNA分子と物理的にハイブリダイズさせることにより、一旦遺伝子または転写物が特定されたならば、転写物中のハイブリダイズした領域またはマッチング領域を決定することができる。タグ配列が、SAGEタグを精製するために用いた制限酵素の制限部位に直接隣接した3’末端にない場合は、誤ったマッチングがなされた可能性がある。SAGEタグの同一性の確認は、特定の細胞種において、タグの転写レベルと特定された遺伝子の転写レベルとを比較することにより行うことができる。
遺伝子発現の分析は、上記の方法に限定されずに、当該技術分野において知られている任意の方法を含み得る。これらの原理はいずれも、単独で、組み合わせて、または、配列特定の他の知られた方法と組み合わせて適用することができる。
【0020】
当該技術分野において知られている遺伝子発現分析の方法の例としては、DNAアレイまたはマイクロアレイ(Brazma and Vilo, FEBS Lett., 2000, 480, 17-24、Celis, et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16)、SAGE(連続的遺伝子発現分析)(Madden, et al., Drug Discov. Today, 2000, 5, 415-425)、READS(制限酵素消化cDNAの増幅)(Prashar and Weissman, Methods Enzymol., 1999, 303, 258-72)、TOGA(全遺伝子発現分析)(Sutcliffe, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 2000, 97, 1976-81)、タンパク質アレイおよびプロテオミクス(Celis, et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16、Jungblut, et al., Electrophoresis, 1999, 20, 2100-10)、発現配列タグ(EST)シーケンシング(Celis, et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16、Larsson, et al., J. Biotechnol., 2000, 80, 143-57)、サブストラクティブRNAフィンガープリント法(SuRF)(Fuchs, et al., Anal. Biochem., 2000, 286, 91-98、Larson, et al., Cytometry, 2000, 41, 203-208)、サブストラクティブクローニング、ディファレンシャルディスプレイ(DD)(Jurecic and Belmont, Curr. Opin. Microbiol., 2000, 3, 316-21)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(Carulli, et al., J. Cell Biochem. Suppl., 1998, 31, 286-96)、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)法(Going and Gusterson, Eur. J. Cancer, 1999, 35, 1895-904)、および質量分析法(To, Comb. Chem. High Throughput Screen, 2000, 3, 235-41に総説されている)が挙げられる。
【0021】
好ましい態様においては、発現配列タグ(EST)を、癌細胞で過剰発現している核酸分子を特定するのに用いることもできる。種々のデータベースからのESTを特定することができる。例えば、好ましいデータベースとしては、例えば、Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)、Cancer Genome Anatomy Project(CGAP)、GenBank、EMBL、PIR、SWISS-PROTなどが挙げられる。疾患に関連する遺伝子変異のデータベースであるOMIMは、幾分かは、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のために開発された。OMIMは、インターネットのワールドワイドウェブを介して、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/Omim/にてアクセスすることができる。癌細胞の分子解剖学を解明するのに必要な情報および技術的ツールを構築するための学際的プロジェクトであるCGAPは、インターネットのワールドワイドウェブを介して、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/ncicgap/にてアクセスすることができる。これらのデータベースの一部は、完全もしくは部分的なヌクレオチド配列を含み得る。加えて、代替的転写形態(alternative transcript form)は、民間の遺伝子データベースから選択することもできる。あるいは、核酸分子は入手可能な刊行物から選択することができ、または、特に本発明に関連して用いるために決定することができる。
【0022】
代替的転写形態は、コンティグ配列を生成するコンピューターソフトウェアにより、各データベース内にある個々のESTから生成することができる。本発明の別の態様においては、核酸分子のヌクレオチド配列は、オーバーラップする複数のESTをアッセンブルすることによって決定される。当業者が知っており、かつ利用可能なESTデータベース(dbEST)は、約500〜1000のヌクレオチドを含むおよそ約100万の異なるヒトのメッセンジャーRNA配列、および多数の異なる生物からの様々な数のESTを含む。dbESTは、インターネットのワールドワイドウェブを介して、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/dbEST/index.htmlにてアクセスすることができる。これらの配列は、ゲノムシーケンシングのためにcDNA発現クローンを用いるクローンニング方法に由来するものである。ESTは、新しい遺伝子の発見、ゲノムのマッピング、およびゲノム配列におけるコード領域の特定に用途を有する。急速に利用できるようになってきているEST配列情報の別の重要な特徴は、組織特異的遺伝子発現データである。これは、治療的介入のために選択的な1種または2種以上の遺伝子を標的化するのに極めて有用であり得る。EST配列は比較的短いため、完全な配列を提供するためにこれらをアッセンブルする必要がある。利用可能なクローンの各々はシーケンシングされているため、データベース中には多数のオーバーラップする領域が報告されていることになる。最終結果は、例えば、正常細胞および癌細胞からの代替的転写形態の顕在化である。
【0023】
オーバーラップしたESTの5’および3’の両方向に沿ったアッセンブルにより全長「仮想転写物」がもたらされる。結果として得られる仮想転写物は、すでに特徴づけられた核酸を表す場合もあるし、または、既知の生物学的機能を有しない新規な核酸である場合もある。当業者に知られかつ利用可能な米国ゲノム研究所(TIGR)ヒトゲノムインデックス(HGI)データベースは、ヒト転写物のリストを含む。TIGRは、インターネットのワールドワイドウェブを介して、例えば、tigr.orgにてアクセスすることができる。転写物はこのようにして、当業者が知っており、かつ利用可能な仮想転写物を作成するTIGR-Assemblerにより生成することができる。TIGR-Assemblerは、EST、BACまたは小型ゲノムなどのオーバーラップ配列データの大きなセットをアッセンブルするためのツールであり、原核生物または真核生物の配列をアッセンブルするのに用いることができる。TIGR-Assemblerは、たとえば、インターネットのファイル転送プロトコルを介して、例えば、tigr.org/pub/software/TIGRにてアクセスすることができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSutton, et al., Genome Science & Tech., 1995, 1, 9-19に記載されている。加えて、当業者に知られかつ利用可能なGLAXO-MRCは、仮想転写物を構築するための別のプロトコルである。さらに、UNIX(登録商標)プラットフォームで動作する「Find Neighbors and Assemble EST Blast」プロトコルは、仮想転写物を構築するために本出願人らにより開発されたものである。PHRAPは、Find Neighbors and Assemble EST Blastにおける配列アッセンブルのために用いられている。PHRAPは、インターネットのワールドワイドウェブを介して、例えば、chimera.biotech.washington.edu/uwgc/tools/phrap.htmにてアクセスすることができる。ESTの特定、および完全長RNA分子を形成するためのコンティグESTの生成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第09/076,440号に詳述されている。
【0024】
さらに別の側面においては、図1A〜1Mに特定された核酸分子の変異体を、膵癌を検出するために用いることができる。「アレル」または「変異体」は、遺伝子の代替的な形態である。本発明において特に有用なのは、本発明の方法により特定された任意の潜在的膵腫瘍マーカーをコードする遺伝子の変異体である。変異体は核酸配列における少なくとも1つの突然変異から生じ得、そして、変化したmRNAを生じ得るか、または、その構造もしくは機能が変化していてもしていなくてもよいポリペプチドを生じ得る。任意の所与の天然または組換え遺伝子は、アレル形態を有しないか、1種もしくは多数のアレル形態を有し得る。変異体を生じさせる一般的な突然変異性の変化は、通常、ヌクレオチドの天然の欠失、付加または置換であるとされている。これらのタイプの変化の各々は、単独で、または他のものとの組み合わせで、所与の配列中に1回または2回以上生じ得る。
【0025】
例えば、早い病期で膵癌を検出することができる変異体核酸分子をさらに特定するために、例えば、核酸分子を、相同性により複数の組に分類することができる。核酸分子の組の成員を比較する。好ましくは、核酸分子の組は、核酸の代替的転写形態の組である。好ましくは、核酸の代替的転写形態の組の成員は、病態または生物学的状態と関連しているか、またはそれがコードするタンパク質がこれと関連している。したがって、核酸分子の組の成員の比較は、病態または生物学的状態と関連している、またはそれがコードするタンパク質がこれと関連している、核酸の少なくとも1つの代替的転写形態の特定をもたらす。本発明の好ましい態様において、核酸分子の組の成員は、共通の遺伝子からのものである。本発明の別の態様においては、核酸分子の組の成員は、複数の遺伝子からのものである。本発明の別の態様においては、核酸分子の組の成員は、異なる分類学上の種からのものである。異なる分類学上の種からの複数の核酸のヌクレオチド配列は、配列類似性検索、オーソログ検索、またはその両方を実行することによって特定することができ、かかる検索は、当業者に知られている。
【0026】
配列類似性検索は、手作業で、または、当業者に知られたいくつかの利用可能なコンピュータープログラムを用いて実行することができる。好ましくは、当業者に利用可能であり、かつ知られたBlastおよびSmith-Watermanアルゴリズムなどを用いることができる。Blastは、ヌクレオチドおよびタンパク質配列データベースの分析を支援するために設計されたNCBIの配列類似性検索ツールである。Blastは、インターネットのワールドワイドウェブを介して、例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/にてアクセスすることができる。GCG Packageは、パブリックドメインデータベースか、または、現地で利用できる任意の検索可能なデータベースで用いることができるBlastのローカルバージョンを提供する。GCG Package v9.0は、100以上の互いに関連するソフトウェアプログラムを含む市販のソフトウェアパッケージであり、配列を編集し、マッピングし、比較し、アラインメントすることによって配列の分析を可能にする。GCG Packageに含まれる他のプログラムとしては、例えば、RNAの二次構造予測、核酸フラグメントのアッセンブル、および進化論的分析を容易にするプログラムが挙げられる。加えて、最も著名な遺伝子データベース(GenBank、EMBL、PIRおよびSWISS-PROT)が、GCG Packageとともに頒布され、データベース検索および操作プログラムにより完全にアクセスできる。GCGは、インターネットのワールドワイドウェブを介して、例えば、http://www.gcg.com/にてアクセスすることができる。Fetchは、アクセッション番号に基づき、アノテーション付のGenBankレコードを得ることができるGCGで利用できるツールであり、Entrezと類似している。別の配列類似性検索は、Pangea製のGeneWorldおよびGeneThesaurusで実行することができる。GeneWorld 2.5は、ポリヌクレオチドおよびタンパク質配列の分析のための自動化された、柔軟性のある、ハイスループットのアプリケーションである。GeneWorldは、配列の自動分析とアノテーションを可能にする。GCGと同様に、GeneWorldには相同性検索、遺伝子の検出、複数配列アラインメント、二次構造予測およびモチーフ特定のためのいくつかのツールが組み込まれている。GeneThesaurus 1.0(商標)は、多ソースからからの情報を提供し、パブリックなデータおよびローカルなデータについてのリレーショナルデータモデルを提供する、配列およびアノテーションデータ登録サービスである。
【0027】
別の代替的な配列類似性検索は、例えば、BlastParseによって実行することができる。BlastParseは、上述の方策を自動化する、UNIX(登録商標)プラットフォーム上で動作するPERLスクリプトである。BlastParseは対象となる標的アクセッション番号のリストを取り込み、全てのGenBankフィールドを「タブで区切られた」テキストとして解析するが、これは、その後より簡単な検索および分析のために「リレーショナルデータベース」形式で保存することができ、柔軟性がもたらされる。最終結果は、容易にソートし、フィルタリングし、検索できる一連の完全に解析されたGenBankレコード、ならびにアノテーションのリレーショナルデータベースである。
【0028】
好ましくは、前述のように配列類似性検索において、標的核酸に相同性を有する異なる分類学上の種からの複数個の核酸は、その中で標的核酸のオーソログを見つけるために、さらに線引きされる。オーソログは、大幅に異なる生物において、配列類似性があり、その生物において類似の機能を行っている2つの遺伝子を指す、遺伝子分類において定義された用語である。対照的に、パラログ(paralog)は遺伝子重複によって生じる1つの種内の遺伝子であるが、新たな機能を進化させたものであり、アイソタイプとも呼ばれる。任意に、パラログ検索も行うことができる。オーソログ検索を実行することによって、可能な限り多様な生物からの相同配列の網羅的なリストが得られる。その後、これらの配列は、オーソログであるための基準に合う最良の代表配列を選ぶために分析される。オーソログ検索は、例えば、Compareを含む、当業者が利用可能なプログラムによって実行することができる。好ましくは、オーソログ検索は、各配列について、完全かつ解析されたGenBankアノテーションへのアクセスにより実行される。現在、GenBankから得られるレコードは、「フラットファイル」であって、自動分析のためにふさわしくない。好ましくは、オーソログ検索は、Q-Compareプログラムを用いて実行される。Q-Compareプロトコルの好ましいステップは、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,221,587号に示されたフローチャートに記載されている。
【0029】
好ましくは、種間配列比較は、当業者に知られ、かつ利用可能であるCompareを用いて実行される。Compareは、ウインドウ/ストリンジェンシーを用いた配列のペアワイズ比較を可能にするGCGツールである。Compareは、特定の品質のマッチングが見出された箇所を含む出力ファイルを作成する。これらは、別のGCGツールであるDotPlotによりプロットすることができる。
【0030】
この発明のSPARC核酸分子は、実験部分に記載された技法により単離することができ、またはPCRを用いて複製することができる。PCR技術は、米国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号および第4,683,202号、および、PCR:Polymerase Chain Reaction(Mullis et al. eds, Birkhauser Press, Boston (1994))または前掲MacPherson et al.(1991)および(1994)、ならびにこれらで引用されている参考文献の主題である(下記のメチル化特異的PCRを参照)。あるいは、当業者は、本明細書中に提供された配列と市販のDNA合成装置とを用いてDNAを複製することができる。したがって、この発明はまた、ポリヌクレオチドの線形配列、ヌクレオチド、適切なプライマー分子、酵素などの化学製品およびその複製のための指示を提供し、ポリヌクレオチドを得るために化学的に複製するか、または適切な方向にヌクレオチドを連結させることによる、この発明のポリヌクレオチドを得るための方法を提供する。別の態様においては、これらのポリヌクレオチドはさらに単離される。またさらに、当業者は、ポリヌクレオチドを適切な複製ベクターに挿入し、複製および増幅のためにベクターを適切な宿主細胞(原核生物のまたは真核生物の)に挿入することができる。このようにして増幅されたDNAは、当業者によく知られている方法によって細胞から単離することができる。この手法によってポリヌクレオチドを得るための方法、ならびに、このようにして得られるポリヌクレオチドが、ここでさらに提供される。
【0031】
用語「核酸分子」および「腫瘍マーカー」または「ポリヌクレオチド」は、特に明記しない限り、本明細書を通して同義的に用いられる。本明細書中で用いる場合、「核酸分子」は、一本鎖形態かまたは二重らせん状の、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン、「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはデオキシシチジン、「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態、またはこれらの任意のホスホエステル類似物、例えばホスホロチオエートおよびチオエステルなどを示す。二本鎖DNA−DNA、DNA−RNAおよびRNA−RNAらせんが可能である。用語核酸分子、そして特にDNAまたはRNA分子は、分子の一次構造および二次構造のみを示し、これを任意の特定の三次元形態に限定するものではない。したがって、この用語は、とりわけ、線状または環状DNA分子(例えば制限断片)、プラスミドおよび染色体において見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を論じる場合、配列は、本明細書中、DNAの非転写鎖(すなわちメッセンジャーRNAと配列相同性を有する鎖)に沿って5’から3’の方向にある配列のみを与える通常の慣例に従って記載され得る。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を経たDNA分子である。
【0032】
発明の1つの態様においては、メチル化されたSPARC核酸分子の存在が正常対象の試料と相関している。試料は、好ましくは、細胞増殖性疾患、特に膵癌を有することが疑われる哺乳類から得られる。好ましくは、癌の指標となる核酸分子は、配列番号1において特定された分子と少なくとも約80%の配列同一性を有する配列を含み、より好ましくは、核酸分子は、配列番号1において特定された分子と少なくとも約90%の配列同一性を有する配列を含み、最も好ましくは、核酸分子は、配列番号1において特定された分子と少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む。
別の好ましい態様においては、核酸分子は、正常個体における発現レベルと比較して癌患者でより低いレベルで発現される。好ましくは、核酸分子は、正常個体における発現と比較して癌患者で少なくとも約15倍低く発現され、より好ましくは、核酸分子は、正常個体における発現と比較して癌患者で少なくとも約10倍低く発現され、最も好ましくは、核酸分子は、正常個体における発現と比較して癌患者で少なくとも約5倍低く発現される。
【0033】
2配列(核酸またはポリペプチド)間の同一性および類似性のパーセントは、数学的なアルゴリズムを用いて決定することができる(例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988、Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994、Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987、およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991を参照)。
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列は最適な比較目的のためにアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入し、非相同配列は比較目的のために無視することができる)。2配列の間の同一性パーセントは、2配列の最適なアラインメントのために導入する必要があったギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、両配列が共有する同一の位置の数の関数である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを、それぞれ比較する。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置で同一である(本明細書中で用いる場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と同義である)。
【0034】
「比較ウインドウ」は、2配列を最適にアラインメントしたあと、同数の連続した位置を有する参照配列と比較し得る、25個〜600個、普通には約50個〜約200個、より普通には約100個〜約150個からなる群から選択される数の連続した位置を有するセグメントを示す。比較のための配列のアラインメントの方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0035】
例えば、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムの一部である、Needleman-Wunschアルゴリズム(J. Mol. Biol. (48): 444-453, 1970)を用いて、SmithおよびWatermanの局所相同アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2: 482, 1981)によって、PearsonおよびLipman(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444, 1988)およびAltschul, et al.(Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402, 1997)の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(GAP、BESTFIT、FASTAおよびGenetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.から入手可能なWisconsin Genetics Software Package中のBLAST)によって、または手作業によるアラインメントおよび目視検査(例えば、前掲Ausubel et al.参照)によって決定することができる。ギャップパラメータは、ユーザーの必要性に合うように変更することができる。例えば、GCGソフトウェアパッケージを使用する場合、NWSgapdna.CMPマトリックス、および40、50、60、70または80のギャップウェイト、および1、2、3、4、5または6のレングスウェイト(length weight)を用いることができる。Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスを用いた典型的なギャップウェイトは、16、14、12、10、8、6または4であり、一方典型的なレングスウェイトは1、2、3、4、5または6である。GCGソフトウェアパッケージは、核酸配列間の同一性パーセントを決定するのに用いることができる。2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、E. MyersおよびW. Millerのアルゴリズム(CABIOS 4: 11-17, 1989)を用いて決定されることもでき、これは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組込まれ、PAM120加重残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12およびギャプペナルティ4を用いる。
【0036】
本発明の核酸配列は、配列データベースに対して、例えば、他のファミリーの成員または関連配列を特定するために、検索を実行するためのクエリー配列としてさらに用いることができる。かかる検索は、Altschul, et al.(J. Mol. Biol. 215: 403-10, 1990)のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実行することができる。BLASTによるヌクレオチド検索は、NBLASTプログラムにより、典型的なスコア=100およびワード長=12を用いて、本発明の核酸分子と相同な、またはこれと十分な同一性パーセントを有するヌクレオチド配列を得るために実行することができる。BLASTによるタンパク質検索は、XBLASTプログラムにより、典型的なスコア=50およびワード長=3を用いて、本発明のタンパク質と十分に相同な、またはこれと十分な同一性%を有するアミノ酸配列を得るために実行することができる。比較目的でギャップを有するアラインメントを得るために、ギャップ入り(gapped)BLASTを、Altschul et al. (Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402, 1997)に記載のとおりに用いることができる。BLASTおよびギャップ入りBLASTプログラムを用いる場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTとNBLAST)のデフォルトパラメーターを用いることができる。
【0037】
本発明に従って、当該技術分野の範囲内の慣用の分子生物学技術、微生物学技術および組換えDNA技術を利用することができる。そのような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (本明細書中では「Sambrook et al., 1989」)、DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985)、Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed. 1984)、Nucleic Acid Hybridization [B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1985)]、Transcription And Translation [B. D. Hames & S. J. Higgins, eds. (1984)]、Animal Cell Culture [R. I. Freshney, ed. (1986)]、Immobilized Cells And Enzymes [IRL Press, (1986)]、B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984)、F. M. Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)を参照。
【0038】
本明細書中で用いられる場合、用語「断片(fragment)またはセグメント(segment)」は、核酸配列、遺伝子、またはポリペプチドに適用されるときには、通常少なくとも約5の連続核酸塩基長(核酸配列または遺伝子に関して)またはアミノ酸長(ポリペチドに関して)、典型的には少なくとも約10の連続核酸塩基長またはアミノ酸長、より典型的には少なくとも約20の連続核酸塩基長またはアミノ酸長、普通は少なくとも約30の連続核酸塩基長またはアミノ酸長、好ましくは少なくとも約40の連続核酸塩基長またはアミノ酸長、より好ましくは少なくとも約50の連続核酸塩基長またはアミノ酸長、より一層好ましくは少なくとも約60〜80または81以上の連続核酸塩基長またはアミノ酸長である。本明細書中で用いられる場合、「オーバーラップ断片」は、核酸の5’末端から始まって、核酸の3’末端に終わる、コンティグ核酸断片を示す。各々の核酸または断片は、少なくとも1個の隣接する核酸位置を次の核酸断片と共有し、より好ましくは少なくとも約3個の隣接する核酸塩基を共有し、最も好ましくは、少なくとも約10個の隣接する核酸塩基を共有する。
【0039】
核酸に関して有意な「断片」は、少なくとも約17ヌクレオチド、一般に少なくとも20ヌクレオチド、より一般的には少なくとも23ヌクレオチド、通常少なくとも26のヌクレオチド、より通常には少なくとも29ヌクレオチド、しばしば少なくとも32ヌクレオチド、よりしばしば少なくとも35ヌクレオチド、典型的には少なくとも38ヌクレオチド、より典型的には少なくとも41ヌクレオチド、普通には少なくとも44ヌクレオチド、より普通には少なくとも47ヌクレオチド、好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも53ヌクレオチド、そして、特に好ましい態様においては少なくとも56ヌクレオチドまたは57ヌクレオチド以上の隣接するセグメントである。さらなる好ましい態様は、これらの数を超える長さ、例えば63、72、87、96、105、117などを含む。前記断片は、任意の位置の組に末端を有してもよいが、特に構造ドメインの境界の間、例えば膜貫通部分に末端を有してもよい。
相同核酸配列は、比較した場合、有意な配列同一性または類似性を示す。核酸の相同性に関する基準は、通常、配列比較によるまたはハイブリダイゼーション条件に基づく、当該技術分野において一般的に用いられているいずれかの相同性の尺度である。ハイブリダイゼーション条件は、以下に更に詳しく記載してある。
【0040】
本明細書中で用いられる場合、核酸配列比較に関して、「実質的な相同性」は、セグメントまたはその相補鎖のいずれかが、比較した場合、適切なヌクレオチドの挿入または欠失と共に最適にアラインメントしたときに、ヌクレオチドの少なくとも約50%、一般的に少なくとも56%、より一般的に少なくとも59%、通常には少なくとも62%、より通常には少なくとも65%、しばしば少なくとも68%、よりしばしば少なくとも71%、典型的には少なくとも74%、より典型的には少なくとも77%、普通は少なくとも80%、より普通には少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95〜98%または98%以上において同一であり、そして、特別な態様においては、ヌクレオチドの約99%以上の高率で同一である。あるいは、セグメントが鎖またはその相補鎖に、典型的には図1A〜1Mに由来する断片、例えば39829_atを用いて、選択的なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする場合に、実質的な相同性が存在する。典型的には、少なくとも約14ヌクレオチドの範囲にわたって、少なくとも約55%、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、そして最も好ましくは少なくとも約90%の相同性がある場合に、選択的なハイブリダイゼーションが起こる。Kanehisa (1984) Nuc. Acids Res. 12:203-213参照。相同性比較の長さは、記載されているとおり、より長い範囲にわたってもよく、ある態様においては、少なくとも約17ヌクレオチド、普通には少なくとも約20ヌクレオチド、より普通には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約40ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約50ヌクレオチド、そしてより好ましくは少なくとも約75〜100ヌクレオチドまたは101ヌクレオチド以上の範囲にわたる。セグメントの終端は、多くの異なる一組の組合せにあってもよい。
【0041】
ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーションの文脈における相同性に言及する場合、塩、温度、有機溶媒および他のパラメータ、典型的にはハイブリダイゼーション反応で制御されるパラメータの、ストリンジェントな組み合わされた条件である。ストリンジェントな温度条件は、普通には、約30℃を超える、より普通には約37℃を超える、典型的には約45℃を超える、より典型的には約55℃を超える、好ましくは約65℃を超える、そしてより好ましくは約70℃を超える温度を含む。ストリンジェントな塩条件は、通常約1000mM未満、普通には約500mM未満、より普通には約400mM未満、典型的には約300mM未満、好ましくは約200mM未満、より好ましくは約150mM未満である。しかし、パラメータの組合せは、いかなる単一のパラメータの基準よりはるかに重要である。例えば、Wetmur and Davidson (1968) J. Mol. Biol. 31:349-370を参照。
【0042】
メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(MSP)
1つの態様において、本発明はメチル化されたCpGを含むSPARC核酸を検出する方法を提供し、本方法は、核酸を含む検体と非メチル化シトシンを修飾する剤とを接触させる工程、検体中のCpGを含有する核酸をCpG特異的なオリゴヌクレオチドプライマーで増幅する工程、および、メチル化核酸を検出する工程を含む。増幅工程は任意であるが、本発明の好ましい方法においては望ましいと理解される。
【0043】
用語「修飾する」は、本明細書中で用いられる場合、非メチル化シトシンを、非メチル化シトシンとメチル化シトシンとを区別する別のヌクレオチドへ変換することを意味する。好ましくは、剤は非メチル化シトシンをウラシルに変える。好ましくは、非メチル化シトシンを修飾するために用いられる剤は亜硫酸水素ナトリウムであるが、非メチル化シトシンを同様に修飾するが、メチル化シトシンはそうしない他の剤も、本発明の方法で用いることができる。亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)は、シトシンの5,6二重結合と容易に反応するが、メチル化シトシンとは十分に反応しない。シトシンは亜硫酸水素塩イオンと反応し、脱アミノ化を受けやすいスルホン化シトシン反応中間体を形成し、スルホン化ウラシルを生じる。スルホン酸基はアルカリ条件下で除去することができ、結果としてウラシルが形成される。ウラシルはTaqポリメラーゼによってチミンとして認識されるため、PCRの際、反応生成物は、開始時のテンプレートDNAに5‐メチルシトシンが存在した位置にのみシトシンを含むことになる。
【0044】
亜硫酸水素塩修飾の後、検体中のCpG含有核酸の増幅のために本発明で用いられるプライマーは、未処理DNAとの間で、メチル化DNAと非メチル化DNAとを特異的に識別する。非メチル化DNAのためのMSPプライマーは、メチル化DNAに保持されているCと区別するために、好ましくは、3’CG対中にTを有し、相補体はアンチセンスプライマー用に設計される。MSPプライマーは通常配列中に比較的少数のCまたはGを含むが、これは、センスプライマーではCが存在せず、アンチセンスプライマーではGが存在しないためである(Cは、増幅産物においてT(チミジン)として増幅されるU(ウラシル)に変化する)。
【0045】
本発明のプライマーは、多型座における有意な数の核酸に重合の特異的な開始をもたらすために、十分な長さと適切な配列のオリゴヌクレオチドを包含する。具体的には、用語「プライマー」は、本明細書中で用いられる場合、2個または3個以上、好ましくは3個より多く、そして最も好ましくは8個より多いデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む配列であって、該配列が多型座鎖に実質的に相補的なプライマー伸長産物の合成を開始させることができるものを示す。合成を導く環境条件としては、ヌクレオシド三リン酸および重合のための剤、例えばDNAポリメラーゼの存在、ならびに適切な温度およびpHが挙げられる。プライマーは、増幅における最大の効率のために好ましくは一本鎖であるが、二本鎖であってもよい。二本鎖である場合は、プライマーは、伸長産物の調製に用いる前に、まずその鎖を分離するために処理する。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、重合のための誘導剤の存在下で、伸長産物の合成を準備するのに十分長くなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、緩衝液、およびヌクレオチド組成を含む多くの要因に依存する。オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には12〜20個または21個以上のヌクレオチドを含むが、より少数のヌクレオチドを含んでもよい。
【0046】
本発明のプライマーは、増幅されるゲノム遺伝子座の各々の鎖と「実質的に」相補的であり、上記のように適切なGまたはCヌクレオチドを含むように設計されている。これは、プライマーが、重合のための剤が機能できる条件下で、そのそれぞれの鎖にハイブリダイズするために十分に相補的でなければならないことを意味する。言い換えると、プライマーは、5’および3’フランキング配列に対し、これらとハイブリダイズし、かつ、ゲノム遺伝子座の増幅を可能にするために、十分な相補性を有するべきである。
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、関係する反応工程の数に対して指数関数的な量の標的遺伝子座を産生する酵素連鎖反応である増幅方法に利用される。典型的には、一方のプライマーは遺伝子座のマイナス(−)鎖と相補的であり、他方はプラス(+)鎖と相補的である。変性核酸にプライマーをアニールさせ、その後、酵素、例えばDNAポリメラーゼIのクレノー断片(large fragment)およびヌクレオチドによる伸長により、標的遺伝子座配列を含む、新たに合成された+および−鎖が得られる。これらの新しく合成された配列もテンプレートであるため、変性、プライマーアニーリングおよび伸長のサイクルを繰り返すことにより、プライマーにより定義された領域(すなわち標的遺伝子座配列)の指数関数的産生がもたらされる。連鎖反応の産物は、用いた特定のプライマーの端に対応する末端を有する、分離した核酸の二本鎖である。
【0047】
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、任意の適切な方法、例えば慣用のリン酸トリエステルおよびリン酸ジエステル法、またはその自動化された態様を用いて調製することができる。このような自動化された態様の1つにおいては、ジエチルホスホルアミダイトを出発材料として用い、Beaucageら(Tetrahedron Letters, 22:1859-1862, 1981)によって記載されたように合成することができる。オリゴヌクレオチドを修飾された固体支持体上で合成する一方法が、米国特許第4,458,066号に記載されている。
それが標的遺伝子座(例えばCpG)を含む特定の核酸配列を含むか、または含む疑いがあることを前提に、精製されたかまたは精製されていない形態の任意の核酸検体を、1または2以上の出発核酸として用いることができる。従って、本方法は、例えば、DNAまたはRNA(メッセンジャーRNAを含む)を利用することができ、ここで、DNAまたはRNAは一本鎖であっても二本鎖であってもよい。RNAをテンプレートとして用いる場合は、テンプレートをDNAに逆転写するために最適な酵素および/または条件が用いられる。加えて、各々の鎖を1本ずつ含むDNA‐RNAハイブリッドを用いてもよい。核酸の混合物を利用することもでき、または、同一のもしくは異なるプライマーを用いた、本明細書中の先の増幅反応において産生された核酸を、そのようにして用いることができる。増幅される特定の核酸配列、すなわち標的遺伝子座は、前記特定の配列が完全な核酸を構成するように、より大きな分子のフラクションであってもよく、または最初に分離した分子として存在していてもよい。増幅される配列が純粋な形で最初に存在することは必要でない。それは複雑な混合物のマイナーなフラクション、例えば、ヒトの全DNAに含まれているようなものであってもよい。
【0048】
メチル化CpGを検出するために用いる、核酸を含む検体は、脳組織、大腸組織、泌尿生殖組織、造血組織、胸腺組織、精巣組織、卵巣組織、子宮組織、前立腺組織、乳房組織、大腸組織、肺組織、および腎組識を含む任意の給源からのものであってもよく、Maniatisら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y., pp 280, 281, 1982)によって記載されたような種々の技法によって抽出することができる。
抽出された試料が純粋でない場合には(例えば、血漿、血清もしくは血液、またはパラフィンに包埋された試料)、増幅の前に、試料の細胞、液体、組織または動物の細胞膜を開き、核酸(1または2以上)の鎖(1または2以上)を露出させおよび/または分離するのに効果的な量の試薬によって処理することができる。鎖を露出させ、分離するための溶解および核酸変性工程は、増殖がより一層容易に起こることを可能にする。
【0049】
試料の標的核酸配列が2本の鎖を含む場合、それがテンプレートとして用いることができるようになる前に、核酸の鎖を分離する必要がある。鎖の分離は、別々の工程として、またはプライマー伸長産物の合成と同時に行うことができる。この鎖の分離は、物理的、化学的または酵素的手段を含む、種々の適切な変性条件を用いて達成することができ、語「変性(denaturing)」は、全てのかかる手段を包含する。核酸鎖を分離する1つの物理的な方法は、変性するまで核酸を加熱することを含む。典型的な熱変性は、約1〜10分までの範囲の時間にわたる、約80℃〜105℃の範囲の温度を伴ってもよい。鎖の分離はまた、ヘリカーゼとして知られている酵素の種類からの酵素により、または、ヘリカーゼ活性を有し、かつ、リボATPの存在下でDNAを変性することが知られている酵素RecAにより誘導することができる。ヘリカーゼによる核酸の鎖分離に好適な反応条件はKuhn Hoffmann-Berling(CSH-Quantitative Biology, 43:63, 1978)によって記載されており、RecAを用いるための技術は、C. Radding (Ann. Rev. Genetics, 16:405-437, 1982)に総説されている。
【0050】
1または2以上の核酸の相補鎖が分離されると、核酸がもともと二本鎖であったか一本鎖であったかどうかに関係なく、分離された鎖は、さらなる核酸鎖の合成のためのテンプレートとして用いられる状態にある。この合成は、テンプレートへのプライマーのハイブリダイゼーションが生じるのを可能にする条件の下で実行される。通常、合成は緩衝水溶液中、好ましくは、pH7〜9、最も好ましくは約pH8で行われる。好ましくは、過剰モル(ゲノム核酸については、通常プライマー:テンプレート=約10:1)の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、分離されたテンプレート鎖を含んでいるバッファーに添加する。しかしながら、本発明の方法が診断用途に用いられる場合は、相補鎖の量がわからない可能性があることは理解されており、そのため、相補鎖の量に対するプライマーの量を確実に決定することはできない。しかしながら、実際問題として、増幅される配列が複雑な長鎖の核酸鎖の混合物に含まれる場合、加えられるプライマーの量は通常、相補鎖(テンプレート)の量よりもモル過剰である。本方法の効率を改善するために、大幅なモル過剰が好ましい。
【0051】
デオキシリボヌクレオシド三リン酸dATP、dCTP、dGTPおよびdTTPは、適当な量で、プライマーと別に、または一緒に合成混合物に添加し、得られた溶液を約90℃〜100℃で、約1〜10分、好ましくは1〜4分加熱する。この加熱期間の後、溶液を室温に放冷するが、それはプライマーハイブリダイゼーションにとって好ましい。冷えた混合物に、プライマー伸長反応を行うための適切な剤(本明細書中では「重合のための剤」と称する)を添加し、当該技術分野において知られている条件の下で反応を起こさせる。重合のための剤はまた、それが耐熱性であるならば、他の試薬と共に加えてもよい。この合成(または増幅)反応は、室温から、重合のための剤がもはや機能しなくなる温度までの間で行ってもよい。したがって、例えば、DNAポリメラーゼを剤として用いる場合、温度は通常約40℃未満である。最も好都合には、反応は室温で生じる。
【0052】
重合のための剤は、プライマー伸長産物の合成を達成するために機能するいかなる化合物または系であってもよく、酵素が含まれる。この目的のための適切な酵素は、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノー断片、T4DNAポリメラーゼ、他の入手可能なDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼ突然変異タンパク質、リバーストランスクリプターゼ、および耐熱酵素を含む他の酵素(すなわち、変性を引き起こすために十分高い温度に供された後にプライマー伸長を行う酵素)を含む。好適な酵素は、各遺伝子座の核酸鎖と相補的であるプライマー伸長産物を形成するのに適切な方法で、ヌクレオチドの連結を促進する。一般的に、合成は各プライマーの3’端から開始され、テンプレート鎖に沿って5’方向に、合成が終了するまで進行し、異なる長さの分子を産生する。しかしながら、上記と同様の方法を用いて、5’端から合成を開始し、他の方向へ進行させる重合のための剤は存在し得る。
好ましくは、増幅方法は、本明細書中に記載され、当業者に一般的に用いられているPCRによる。増幅の代替法は記載されており、本発明のプライマーを用いたPCRにより増幅されるメチル化または非メチル化遺伝子座が、代替手段によって同様に増幅される限り、これを利用することもできる。
【0053】
増幅された産物は、シーケンシングによってメチル化物または非メチル化物として好ましくは特定される。本発明の方法によって増幅された配列は、溶液中かまたは固体支持体に結合させた後に、特定のDNA配列の検出に通常適用される任意の方法、例えば、PCR、オリゴマーレストリクション(Saiki, et al., Bio/Technology, 3:1008-1012, 1985)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析(Conner, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:278, 1983)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Landegren, et al., Science, 241:1077, 1988)などにより、評価、検出、クローニング、シーケンシングなどをさらに行うことができる。DNA分析のための分子技術は総説されている(Landegren, et al., Science, 242:229-237, 1988)。
任意に、核酸のメチル化パターンを、制限酵素消化およびサザンブロット分析によって確認することができる。5'CpGメチル化を検出するのに用いることができるメチル化感受性の制限エンドヌクレアーゼの例としては、例えばSmaI、SacII、EagI、MspI、HpaII、BstUIおよびBssHIIが挙げられる。
【0054】
メチル化SPARC遺伝子関連癌の処置
DNA低メチル化が、メチル化媒介性のメカニズムによって沈黙化していた腫瘍抑制遺伝子、特にメチル化SPARC遺伝子の再活性化を誘導するため、DNMT阻害剤、例えば5−アザ−シチジン(5−アザ−CR)および5−アザ−2’−デオキシシチジン(5−アザ−CdR)もまた、広く研究されている。HDAC阻害剤または脱メチル化剤と、他の化学療法剤との組み合わせは、可能な分子標的治療戦略として用いることができる。特に、ヒストンは物理的および機能的な相互作用によってDNAに結合しているため、HDAC阻害剤と脱メチル化剤との組み合わせは有効である。このように、HDACおよびDNMT阻害の組合せは、ヒト膵癌、肺癌、乳癌、胸部癌、白血病および大腸癌細胞系において、アポトーシス、分化および/または細胞増殖の停止を誘導することに非常に有効(かつ相乗的)であり得る。有効な剤としては、HDAC阻害剤、例えばトリコスタチンA(TSA)、酪酸ナトリウム、デプシペプチド(FR901228、FK228)、バルプロン酸(VPA)およびスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ならびに、単独で、そして、ヒト癌細胞の併用療法に用いられる脱メチル化剤、5−アザ−CdRが挙げられる。
【0055】
診断キット
別の側面において、本発明はヒトの癌の診断のためのキットを提供し、該キットは本発明のバイオマーカーを検出するのに用いることができる。例えば、本キットは本明細書中に記載されたメチル化SPARC核酸であって、ヒト癌患者の試料中には存在し、正常対象においては存在しないバイオマーカーを検出するのに用いることができる。本発明のキットは、多くの用途を有する。例えば、対象がヒトの癌を有するか、または否定的な診断を有するかを識別するのに用いることができ、そうして、ヒトの癌診断を補助する。別の例では、本キットは、ヒトの癌のためのin vitroモデル、またはin vivo動物モデルにおいて、バイオマーカーの発現を調節する化合物を特定するのに用いることができる。
試験試料を対照情報標準(control information standard)と比較し、試料中に検出されたバイオマーカーの試験量が、ヒトの癌の診断と一致した診断量であるかどうかを決定することができるように、本キットは任意に標準または対照情報をさらに含んでもよい。
【0056】
以下の例は、限定するためにでなく、例示のために提供される。特定の例が提供されているが、上記の記載は例示的であって限定的ではない。前述の態様の任意の1または2以上の特徴は、本発明における任意の他の態様の1または2以上の特徴と、任意の方法で組み合わせることができる。さらにまた、発明の多くのバリエーションは、本明細書を精査することにより当業者に明らかになる。本発明の範囲は、したがって、上記の説明を参照して決定されてはならないが、その代わりに、添付の特許請求の範囲とその均等物の全範囲を参照して決定されなければならない。
この出願で引用される全ての刊行物および特許文献は、あたかも各々の個々の刊行物または特許文献が個々に表示されているかのように、その全体が全ての目的について同じ程度に、参照により組み込まれる。本出願人らは、本明細書中の種々の参考文献の引用によって、任意の特定の参考文献が本発明の「先行技術」であると認める訳ではない。
【0057】

材料と方法
材料
モノクローナル抗−SPARC抗体(クローンON1-1)は、Zymed Laboratories, Inc. (South San Francisco, CA)から入手した。5−アザ−2’−デオキシシチジン(5Aza-dC)とヒト組換えトランスフォーミング成長因子(TGF)−β1は、Sigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から入手した。精製ヒト血小板SPARCタンパク質は、Calbiochem(Cambridge, MA)から入手した。
【0058】
細胞系および組織試料
17種のヒト膵癌細胞系(AsPC1、BxPC3、Capan1、Capan2、CFPAC1、Colo357、Hs766T、MiaPaCa2、Panc1、PL1、PL3、PL6、PL9、PL10、PL11、PL12およびPL13)は、10%のウシ胎児血清(FBS)、ストレプトマイシン、およびペニシリンを添加したRPMI1640(Invitrogen, Carlsbad, CA)中、5%COを含む湿潤雰囲気で、37℃にて維持した。正常ヒト膵管上皮(HPDE)に由来する不死化細胞系は、Dr. Ming-Sound Tsao (University of Toronto, Ontario)によって寛大に提供され、Keratinocyte-SFM(Invitrogen)中で維持した。初代線維芽細胞は、最初に、33才の男性患者の慢性膵炎組織(panc−f1)、61才の女性膵癌患者の非癌性膵組織(panc−f3)、または55才の女性患者の膵腺癌組織(panc−f5)から増殖させた。これらの線維芽細胞培養物は、上皮細胞の混入を排除するために光学顕微鏡法によって慎重に評価し、10%のFBSを含むRPMI1640で維持し、5〜10回の継代で用いた。ジョンズホプキンス病院で切除された25個の原発性膵腺癌のホルマリン固定パラフィンブロックを、組織の利用可能性に基づいて選択した。膵癌異種移植片は、外科的に切除した原発性膵癌から確立し(Hahn et al., 1995)、24種の異種移植片をこの研究のために無作為に選択した。正常膵管上皮細胞は、種々の膵臓疾患を有する10人の患者(平均年齢64.3才、範囲、36〜83才)から切除した膵臓から、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)システムにより、選択的に顕微解剖した。血清試料は、膵疾患患者からのものである。
【0059】
オリゴヌクレオチドアレイハイブリダイゼーションおよびデータ分析
全RNAは、TRIZOL試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて培養細胞または凍結組織から単離した。第一鎖および第二鎖cDNAは、10μgの全RNAから、T7−(dT)24プライマー(Genset Corp., South La Jolla, CA)およびSuperScript Choiceシステム(Invitrogen)を用いて合成した。標識cRNAは、精製cDNAから、BioArray HighYield RNA Transcript Labeling Kit(Enzo Diagnostics, Inc., Farmingdale, NY)を用いた37℃における6時間のin vitro転写(IVT)反応によって合成し、RNeasy Mini Kit(QIAGEN, Valencia, CA)を用いて精製した。cRNAは、94℃で35分間、フラグメンテーションバッファー(40mmol/lのトリス-アセテート(pH8.1)、100mmol/lの酢酸カリウム、30mmol/lの酢酸マグネシウム)中で断片化した。断片化したcRNAは、その後、18,462個のユニークな遺伝子/EST転写物を有するHuman Genome U133Aチップ(Affymetrix, Santa Clara, CA)に、45℃で16時間ハイブリダイズさせた。洗浄および染色手順は、Affymetrix Fluidics Stationにて、製造者の指示に従って行った。その後、プローブをレーザースキャナーでスキャンし、各転写物の信号強度(バックグランド除去済、ノイズ調節済)および検出コール(detection call)(有、無または不十分)を、Microarray Suite Software 5.0(Affymetrix)を用いて決定した。
【0060】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
4μgの全RNAを、Superscript II(Invitrogen)を用いて逆転写した。SPARC RT−PCR反応は以下の条件の下に実行した:95℃で5分間、その後、95℃で20秒間、63℃で20秒間そして72℃で20秒間を28サイクル、そして、72℃で4分間の最終伸長。プライマー配列は、5’−AAG ATC CAT GAG AAT GAG AAG−3’(フォワード)、および、5’−AAA AGC GGG TGG TGC AAT G−3’(リバース)であった。mRNAの完全性をチェックするために、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)も、同じPCR条件で増幅した。半定量分析のために、RT−PCRはSPARC用およびGAPDH用のプライマーにより二重反応で実行し、最適サイクルを決定するために、両遺伝子における線形増幅の範囲を、連続したPCRサイクルについて検討した。SPARC mRNA発現の相対強度は、その後、全mRNAの代用としての対応するGAPDH mRNAの測定値を用いて、変化するRNA回収に関して補正した。
【0061】
免疫組織化学
5μmの切片をコートスライドグラス上に切り出し、定法により脱パラフィンした。抗原回復は、95℃に加熱した10mMのクエン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)中、スチーマー内で、20分間行った。内因性のペルオキシダーゼ活性を、3%のH水溶液で5分間ブロックした後、切片を、終濃度4μg/mlの抗SPARCモノクローナル抗体と共に60分間インキュベートした。標識は、Envision Plus Detection Kit(DAKO、Carpinteria、CA)により、製造者により推奨されたプロトコルに従って検出し、全ての切片をヘマトキシリンで対比染色した。SPARCの免疫標識の程度を、3つのグループに分類した。0%:陰性、=または<10%:限局性、そして>10%:陽性。免疫標識の強度は、弱(+)、中(++)、または強(++)に分類した。
【0062】
メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(MSP)
SPARC遺伝子のメチル化状態は、先に記載された(Herman et al., 1996)MSPによって測定した。簡潔に述べると、1μgのゲノムDNAを、亜硫酸水素ナトリウムにより16時間、50℃にて処理した。精製後、1μlの亜硫酸水素塩処理DNAを、メチル化DNAまたは非メチル化DNAのいずれかに特異的なプライマーを用いて、以下の条件の下で増幅した:95℃で5分間、その後、95℃で20秒間、62℃で20秒間そして72℃で30秒間を40サイクル、そして、72℃で4分間の最終伸長。プライマー配列は、非メチル化反応(132bp)については、TTT TTT AGA TTG TTT GGA GAG TG(フォワード)およびAAC TAA CAA CAT AAA CAA AAA TAT C(リバース)、そして、メチル化反応(112bp)については、GAG AGC GCG TTT TGT TTG TC(フォワード)およびAAC GAC GTA AAC GAA AAT ATC G(リバース)であった。5μlの各PCR産物を3%のアガロースゲルに負荷し、エチジウムブロマイド染色によって視覚化した。
【0063】
5Aza−dC処置
8種の膵癌細胞系(AsPC1、BxPC3、Capan2、CFPAC1、Hs766T、MiaPaCa2、PL3とPL12)を、5Aza−dCで処理した。対数増殖期にある細胞を、T−75培養フラスコに播種した。一晩のインキュベーションの後、24時間ごとに薬剤と培養培地とを交換しながら、細胞を継続して4日間、5Aza−dC(1μM)に暴露した。
SPARC酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)
細胞を、1×10細胞/ウェルの密度で6穴プレートに播種した。一晩のインキュベーションの後、細胞をリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、2mlの無血清培地中、24時間インキュベートした。馴化培地を回収し、細胞片を除去するために遠心分離した。馴化培地のSPARC濃度を、メーカーの指示に従って酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(Haematological Technologies, Inc., Essex Junction, VT)を用い、製造者の指示にしたがって測定した。同様にして、膵疾患患者の血清中のSPARCレベルを測定した。
【0064】
SPARCによる膵癌細胞の処置
我々は、2種の膵癌細胞系(AsPC1およびPanc1)を、外因性SPARCで処置した。対数増殖期の細胞を、1×10細胞/ウェルの密度で24穴プレートに播種した。一晩のインキュベーションの後、細胞を、ヒト血小板SPARCタンパク質(10μg/ml)有りまたは無しで72時間処置し、細胞の数を3つの独立したウェルにおいて、血球計算板により計数した。
線維芽細胞/膵癌細胞共培養
線維芽細胞を6穴プレートに播種し、48〜72時間増殖させた。その後、膵癌細胞(CFPAC1)をトランスウェル装置(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)の上室中に播種した。同装置は、腫瘍細胞と線維芽細胞とを物理的に分離するが、可溶性因子を介した細胞間の相互作用は許容する。48時間のインキュベーションの後、線維芽細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理により回収した。
統計分析
統計分析は、Fisherの直接確率計算法または対応のないStudentのt検定(両側)により行った。差異は、P<0.05で有意とみなした。
【0065】
例1:連続的遺伝子発現分析(SAGE)およびオリゴヌクレオチドマイクロアレイによる膵癌におけるSPARCの遺伝子発現分析
オリゴヌクレオチドマイクロアレイを、膵癌細胞の5Aza−dCによる処置によって5倍またはこれを超えて誘導される遺伝子を特定するために用いた(Sato et al.、原稿提出済)。SPARCは、我々がこのアプローチを用いて特定した遺伝子のうちの1つであった。我々は、したがって、膵癌におけるSPARC遺伝子の遺伝子発現およびメチル化状態を分析した。最初に我々は、正常膵管上皮、膵癌細胞系および原発性膵癌組織の短期培養物におけるSPARCの遺伝子発現パターンを決定するために、オンラインSAGEデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SAGE/)を検索した。SAGEタグ−遺伝子マッピング(SAGE Tag to Gene Mapping)分析は、SPARC遺伝子に対応するHs.111779タグ(ATGTGAAGAG)が、正常膵管上皮細胞培養物からの2つのライブラリー(H126およびHX)の両方に存在したが、SPARCタグが4つの膵癌細胞系のうちの3つで確認されなかったことを示した(図1A)。対照的に、SPARCタグは、2種の原発性膵腺癌組織(Panc91−16113およびPanc96−6252)で、高レベルに検出されており、これは、この遺伝子が、侵襲性膵癌の組織検体において発現が特異的に確認されるが、継代した膵癌細胞系ではそうではない、「侵襲特異的遺伝子」である可能性を示唆するものである(Ryu et al., 2001)。
【0066】
我々は次に、LCMにより選択的に顕微解剖した正常膵管上皮の2つの凍結組織試料、非腫瘍性膵上皮細胞系(HPDE)、および5種の膵癌細胞系(AsPC1、CFPAC1、Hs766T、MiaPaCa2およびPanc1)における全体的な遺伝子発現プロファイルを分析することにより(U133Aオリゴヌクレオチドマイクロアレイ、Affymetrix)、SPARCの発現を測定した。SPARC転写物は、正常膵管上皮細胞およびHPDEにおいて検出された(図1B)。対照的に、SPARCは5種の膵癌細胞系のうちの4種で発現されなかった。
【0067】
例2:膵癌細胞系および初代線維芽細胞におけるSPARC mRNAの発現
RT−PCRを、17種の膵癌細胞系のパネル、および膵腺癌組織(panc−f5)に由来する初代線維芽細胞におけるSPARC mRNAの発現を検討するために行った。SPARC転写物は、非腫瘍性膵管上皮細胞系(HPDE)で検出可能であり、膵癌由来の線維芽細胞で強く発現していたが、17種の膵癌細胞系のうちの15種(88%)で発現が欠如していた(図1C)。注目すべきは、7種の膵癌細胞系(AsPC1、Capan1、Capan2、CFPAC1、Hs766T、MiaPaCa2およびPanc1)のRT−PCR結果が、これら同じ細胞系に関するSAGEおよび/またはオリゴヌクレオチドアレイのデータと同様であったことである。これらの結果は、大部分の膵癌細胞系と間質線維芽細胞との間の、SPARC発現の著しい違いを示すものである。
【0068】
例3:膵癌におけるSPARC発現の免疫組織化学分析
SPARCタンパク質の発現を、25の原発性膵腺癌組織において、抗SPARCモノクローナル抗体による免疫組織化学的標識によって検討した。25例のうちの19例(76%)において、腫瘍周囲の間質細胞、おそらく線維芽細胞に中程度(++)〜強い(+++)SPARCの発現が見られ、陽性の免疫標識が細胞質全体にわたる暗褐色顆粒として確認された(図2)。これらの症例においては、発現は腫瘍性上皮に直接隣接した間質線維芽細胞で最も顕著であったが、浸潤した癌から離れた間質においては染色は弱いか、欠如していた。SPARCの免疫標識は、25例のうちの8例(32%)で腫瘍性上皮においても観察されたが、腫瘍細胞の50%が強く標識されていた1例を除き、標識は弱く限局性であった。残りの17例(68%)では、腫瘍細胞は腫瘍全体にわたってSPARCについて標識されなかった(図2)。正常管上皮の免疫反応性は、症例によって異なっており、一部の正常管細胞は弱い細胞質内染色を示したが、他はそうではなかった。これらの免疫組織化学的知見は、原発性膵癌組織のSAGEライブラリーで検出された増加したSPARCタグが、主として間質線維芽細胞に由来していたことを示唆するものである。
【0069】
例4:膵癌におけるSPARC遺伝子のメチル化分析
我々は次に、17種の膵癌細胞系のパネルでSPARC遺伝子のメチル化状態を分析した。SPARCは、エクソン1からイントロン1にわたるCpGの比較的豊富な配列(64%のGC含量、GpCに対するCpGの比率0.6、および279bpの長さ)を有し、これはCpGアイランドの基準を満たす(図3A)。MSPにより、我々はSPARC CpGアイランドが17種の膵癌細胞系のうちの16種(94%)で異常にメチル化されていることを見出した(図3B)。SPARCのメチル化状態はその発現と相関しており、異常なメチル化を示す16種の細胞系のうちの15種(94%)はmRNA発現の欠如を示した。対照的に、メチル化アレルは、線維芽細胞、非腫瘍性管細胞系(HPDE)、または高いmRNA発現(P=0.004)を有する膵癌細胞系(PL9)においては確認されなかった。
【0070】
DNAメチル化がSPARCのサイレンシングのためのメカニズムであることを確認するために、我々はSPARCメチル化を有する8種の膵癌細胞系を、脱メチル化剤5Aza−dCで処置した。SPARC mRNAの発現は、5Aza−dC処置後、8種の細胞系のうちの7種で回復した(図3C)。しかしながら、1種の細胞系(Hs766T)においては、5Aza−dC処置は、SPARC発現を回復させなかった。さらにまた、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤トリコスタチンA(TSA)または5Aza−dCとTSAとの組合せによるHs766Tの処置は、SPARC発現を誘導しなかった(データは示さず)。これらの結果は、DNAメチル化およびヒストン脱アセチル化以外の他のメカニズムが、この細胞系におけるSPARCのサイレンシングに関与している可能性を示唆するものである。
【0071】
SPARCのメチル化状態はまた、ヒト原発性膵癌から確立した24種の異種移植腫瘍のパネルで分析し、これを、LCMによって選択的に顕微解剖した10種の正常膵管上皮におけるメチル化パターンと比較した。SPARCの異常なメチル化は24種の膵臓異種移植片(図3D)のうちの21種(88%)で検出されたが、10種の正常管上皮試料のいずれもメチル化アレルを示さなかった(図3E)。これらの結果は、原発性膵癌および膵癌細胞系におけるSPARCの異常なメチル化パターンを確認するものである。
【0072】
例5:膵癌細胞の増殖に対するSPARCの影響
SPARCは分泌性のタンパク質であり、複数の生物学的機能を有するため、膵癌細胞および間質線維芽細胞におけるSPARC発現の変化したパターンは、腫瘍−宿主境界部位での腫瘍の進行に影響を及ぼす可能性がある。発現データに基づき、我々はSPARCタンパク質が浸潤性膵癌中の間質線維芽細胞から分泌されると仮定した。この仮説を検証するために、我々は3種の膵癌細胞系(AsPC1、BxPC3およびPanc1)および膵癌に由来する線維芽細胞(panc−f5)からの馴化培地中のSPARC濃度をELISAにより測定した。SPARC分泌の量は、検出可能なmRNA発現を有しないAsPC1およびBxPC3からの培地においてごくわずか(0〜30ng/ml)であり、SPARCタンパク質のわずかに高い分泌(〜100ng/ml)が検出可能なmRNA発現を有するPanc1で検出された。最も高いSPARC分泌(〜1400ng/ml)は、線維芽細胞培養物において確認された。これらの結果は、試験管内でSPARC mRNA発現とin vitroでのSPARC分泌量との間の相関を示すものである。
【0073】
in vitroでの膵癌細胞の増殖に対する外因性SPARCタンパク質の影響も検討した。我々は2種の膵癌細胞系(AsPC1およびPanc1)を、精製したSPARCタンパク質で処置し、72時間後に細胞の数を計数した。外因性SPARC(10μg/ml)での処置は、〜27%までAsPC1細胞の増殖を有意に抑制した(5.8±0.8対4.2±0.3(×10細胞)、(P=0.001))(図4)。同様に、Panc1細胞のSPARC(10μg/ml)への暴露は、〜30%の増殖抑制をもたらした(5.0±0.4対3.5±0.4(×10細胞)、(P<0.0001))(図4)。このように、これらの結果は、外因性SPARCタンパク質が膵癌細胞に対し増殖抑制活性を有することを示唆するものである。
【0074】
例6:膵疾患を有する患者における血清SPARCレベル
膵腺癌を有する患者20人、良性膵疾患を有する患者20人、および健康な個人20人からの血清試料におけるSPARCタンパク質の濃度を、ELISAにより測定した。これらの3グループ間で、平均SPARCレベルに有意差はなかった(データは示さず)。
【0075】
例7:腫瘍−間質相互作用の、線維芽細胞におけるSPARC発現への影響
腫瘍−宿主相互作用と、間質線維芽細胞におけるSPARCの転写調節との関係を解明するために、異なる組織学的種類の膵臓組織に由来する3種の初代線維芽細胞培養物においてSPARC mRNAの発現を比較した。半定量RT−PCRを用いて、我々は、慢性膵炎組織に由来する線維芽細胞(panc−f1)および膵癌患者からの非癌膵組織に由来するもの(panc−f3)が、膵癌組織に由来する線維芽細胞(panc−f5)と比較してSPARC mRNAのより弱い発現を示すことを見出した(図5A)。これらの結果は、腫瘍周囲の間質に局在化したSPARC発現という免疫組織化学的知見と共に、我々に間質線維芽細胞のSPARC発現が腫瘍細胞との相互作用によって調節されると仮定させるに至った。この仮説を直接検証するために、我々は線維芽細胞(panc−f3)と膵癌細胞(CFPAC1)とが可溶性因子を介して連絡することができる共培養系を用いた。panc−f3におけるSPARC mRNA発現は、これらの細胞を膵癌細胞と共培養した場合に顕著に(〜4.6倍)増大した(図5B)。このように、線維芽細胞におけるSPARC転写は、膵癌細胞によって分泌される可溶性メディエーターに応答して上方調節され得る。
【0076】
TGF−βなど複数の増殖因子が線維芽細胞におけるSPARC発現を誘導することが知られ(Wrana et al., 1991、Reed et al., 1994)、そして、TGF−βが膵癌細胞により高発現される主要な分泌タンパク質の1つであるため(Friess et al., 1993)、我々はTGF−βの線維芽細胞(panc−f3)におけるSPARC発現への影響を検討した。線維芽細胞をTGF−β(5ng/ml)で24時間インキュベートした場合、SPARC mRNA発現は、〜3.3倍増大したが、これはTGF−βが、パラクリン様式で間質線維芽細胞におけるSPARCの転写を刺激する、腫瘍由来因子の候補であり得ることを示すものである。我々はまた、異なる内因性SPARC発現を有する2種の膵癌細胞系(mRNA発現のないAsPC1および検出可能な発現を有するPanc1)を、TGF−β(5ng/ml)で処置した。処置の後、Panc1においてSPARC mRNA発現の軽度の増大(〜1.5倍の増大)が観察されたが、AsPC1においては転写物は検出不能のままであった(データは示さず)。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】正常膵管上皮細胞(H126およびHX)、膵癌細胞系(CAPAN1、CAPAN2、HS766TおよびPanc1)、および原発性膵腺癌組織(Panc91−16113およびPanc96−6252)の短期培養物に由来する8種の膵臓SAGEライブラリーにおける、SPARC遺伝子に対応するHs.111779タグ(ATGTGAAGAG)の頻度を示す、オンラインSAGEタグ−遺伝子マッピング分析の結果(A)、LCMにより選択的に顕微解剖した正常膵管上皮細胞の2つの凍結組織試料、非腫瘍性膵上皮細胞系(HPDE)、および5種の膵癌細胞系(AsPC1、CFPAC1、Hs766T、MiaPaCa2およびPanc1)におけるオリゴヌクレオチドマイクロアレイによるSPARCの遺伝子発現分析の結果(B)、非腫瘍性膵上皮細胞系(HPDE)、膵癌に由来する初代線維芽細胞、および17種の膵癌細胞系におけるのSPARCの逆転写PCR分析の結果(C)をそれぞれ示した図である。Cにおいては、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)を、RNA対照として用いた。
【0081】
【図2】膵腺癌におけるSPARCに関する免疫組織化学染色(A:×50、BおよびC:×160)を表した図である。SPARCについて陰性である腫瘍性上皮とは対照的に、間質細胞において強い細胞質内標識が検出された。
【図3】SPARC遺伝子の5’領域におけるCpGジヌクレオチド(縦線)の分布(A)、膵癌細胞系および非腫瘍性HPDEにおけるSPARCのメチル化特異的PCR(MSP)分析の結果(B)、5−アザ2’−デオキシシチジン(5Aza−dC)による処置の前(−)および後(+)の、異常なSPARCメチル化を有する膵癌細胞系におけるRT−PCRによるSPARC mRNAの発現(C)、膵癌異種移植片におけるSPARCのMSP分析の結果(D)、選択的に顕微解剖した正常膵管上皮におけるSPARCのMSP分析の結果(E)をそれぞれ示した図である。Aにおいては、CpGリッチな配列(CpGアイランド)が、エクソン1からイントロン1にわたっていることが示されている。Bにおいて、レーンUおよびMにおけるPCR産物は、それぞれ、非メチル化およびメチル化テンプレートの存在を示している。
【0082】
【図4】in vitroでの膵癌細胞の増殖に対する外因性SPARCの影響を表した図である。2種の膵癌細胞系(AsCP1およびPanc1)を、SPARC(10μg/ml)有りまたは無しで処置し、処置の72時間後に細胞数を計数した。表示した細胞数は、3つの独立したウェルからの6測定値の平均値±SDである。
【図5】慢性膵炎組織(panc−f1)、膵癌を有する患者からの非癌膵組織(panc−f3)、および膵腺癌組織(panc−f5)に由来する初代線維芽細胞におけるSPARC発現の半定量RT−PCR分析の結果(A)、膵癌細胞(CFPAC1)との共培養時における線維芽細胞(panc−f3)でのSPARC mRNA発現の変化(B)をそれぞれ示した図である。Aに示す棒グラフは、対応するGAPDH発現に正規化された各試料についての相対的なSPARC mRNAの発現を表している。Bに示す棒グラフは、2つの独立したPCR反応からの相対的なSPARC発現レベル(GAPDHに対して正規化したもの)の平均値±SDを表している。
【0083】
【図6】ヒトSPARC遺伝子の核酸配列(配列番号1)、アクセッション番号X82259を表した図である。
【図7】亜硫酸水素塩シーケンシングプライマーの核酸配列、フォワード(配列番号2)およびリバース(配列番号3)を表した図である。
【図8】メチル化特異的PCRプライマー、非メチル化、フォワード(配列番号4)およびリバース(配列番号5)、ならびに、メチル化、フォワード(配列番号6)およびリバース(配列番号7)を表した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象からの試料におけるメチル化SPARC核酸分子またはその変異体の検出を含む、癌を診断するための方法。
【請求項2】
メチル化SPARC核酸分子の存在が、癌を有しない対象からの試料と比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料が、細胞増殖性疾患を有することが疑われる哺乳類から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試料が、膵癌を有することが疑われる哺乳類から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
メチル化SPARC核酸分子が、配列番号1(図6)に対応する配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
メチル化SPARC核酸分子が、配列番号1(図6)において特定された分子と少なくとも約80%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
メチル化SPARC核酸分子が、配列番号1(図6)において特定された分子と少なくとも約90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
メチル化SPARC核酸分子が、配列番号1(図6)において特定された分子と少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
核酸分子が、癌を有する患者において、正常個体における発現と比較して、少なくとも低く発現されている、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
核酸分子が、癌を有する患者において、正常個体における発現と比較して、少なくとも約5倍低く発現されている、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
核酸分子が、癌を有する患者において、正常個体における発現と比較して、少なくとも約10倍低く発現されている、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
癌が膵癌である、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
対象試料が哺乳類患者から得られる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
対象試料がヒト患者から得られる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
癌細胞がメチル化SPARC核酸分子を含む癌を有する患者を処置する方法であって、前記患者への治療有効量の脱メチル化剤の投与を含む、前記方法。
【請求項16】
脱メチル化剤が5−アザ−シチジンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
メチル化SPARC核酸を検出する方法が、メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(MSP)を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
メチル化CpG含有SPARC核酸分子を検出する方法であって、非メチル化シトシンをウラシルに変化させるために、核酸含有検体と亜硫酸水素塩とを接触させる工程、SPARC核酸と、メチル化および非メチル化CpGを識別するオリゴヌクレオチドプライマーとを接触させる工程、および、核酸中のメチル化CpGを検出する工程を含む、前記方法。
【請求項19】
検体中のCpG含有核酸を、オリゴヌクレオチドプライマーによって増幅する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
増幅工程がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
CpG含有核酸がプロモーター領域にある、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
プロモーターが腫瘍抑制遺伝子プロモーターである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
検体が、膵臓、脳、大腸、泌尿生殖器、肺、腎臓、造血器、乳房、胸腺、精巣、卵巣および子宮からなる群から選択される組織からのものである、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−524393(P2007−524393A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517688(P2006−517688)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/020535
【国際公開番号】WO2005/017183
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(301059640)ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ (34)
【Fターム(参考)】