説明

癌を治療するための、O−アセチル化型のGD2ガングリオシドに特異的なモノクローナル抗体の使用

本発明は、O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識するモノクローナル抗体または前記抗体の断片の、細胞がO−アセチル化GD2を発現する癌の診断および治療のための使用に関し、前記抗体または前記断片は、診断の特異性を向上し、治療の毒性を低減するために、腫瘍細胞が発現するO−アセチル化GD2分子を認識し、末梢神経の表面で発現するGD2分子は認識しない。本発明はまた、細胞がO−アセチル化GD2を発現する癌を治療および診断するために有利に使用される人工修飾抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、O−アセチル化型のGD2ガングリオシドを発現する細胞を有する癌の診断および治療のための新規な方法を提供する。これら方法は、O−アセチル化GD2を認識し、健康細胞および末梢神経系の神経線維は認識しない、組換えモノクローナル抗体またはその断片の使用を本質的に含む。この新規な方法は、既に癌の治療に使用されている抗体および誘導体に比べて、癌細胞への特異的がより高く、治療の毒性を低減しうる。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞の表面には多くの抗原決定基がある。これらの抗原決定基の一部は腫瘍に特異的な抗原である。この腫瘍抗原は、主にまたはもっぱら癌細胞表面で発現する。
【0003】
これらのヒト腫瘍抗原は、マウス等の異なる種の免疫系によって、抗体として知られる分子の産生を誘導する。この抗体には、抗体自身が由来する抗原分子を特異的に認識するという特徴がある。
【0004】
モノクローナル抗体とそのヒト腫瘍抗原との間のこの特異的認識は、癌の免疫ターゲッティングに特に利点がある。実際、これによって、腫瘍を診断するための検出剤または治療するための毒性薬剤を患部組織または患部臓器に集中させることができる。これらの検出剤または毒性薬剤としては、その投与の前または後に抗体に人工的に連結された、必要に応じて放射性の、化学化合物、または生体化合物が含まれ得る。これらの薬剤はまた、抗体によって腫瘍細胞へと集まる、患者に天然に存在する生体化合物(補体成分、ケモカイン、サイトカイン、細胞毒性細胞(例えばTまたはNKリンパ球))であってもよい。
【0005】
ガングリオシドは細胞膜の構成成分であり、その一部は腫瘍抗原として特徴付けられている。GD2ガングリオシドは、特に黒色腫、膠芽腫、小細胞肺性癌、神経芽細胞腫等の神経外胚葉起源のヒトの癌で多く発現していることが示され得る。上記の腫瘍病理のリストは網羅的ではない。網膜芽細胞腫および骨肉腫もGD2ガングリオシドを発現する。一部の卵巣癌もGD2ガングリオシドを発現する。GD2ガングリオシドは、セラミドが、グルコース・ガラクトース・N−アセチル−ガラクトサミンの配列を有するオリゴ糖と組み合わさって形成される糖脂質酸(glycolipid acid)である。ガラクトース分子には2分子のシアル酸が結合している。末端シアル酸にO−アセチル部分を加えてO−アセチル化GD2が生成されるように修飾することができる。GD2に特異的でありかつそのO−アセチル化型も認識する抗体を用いることで、特定の種類のがん、特に神経外胚葉起源の腫瘍が、GD2およびそのO−アセチル化型であるO−アセチル化GD2を様々な比率で発現していることを示すことができるであろう。
【0006】
マウスで産生された、数種のモノクローナル抗GD2抗体が報告されている。抗GD2モノクローナル抗体である14.G2aおよび3F8(それぞれクラスIgG2aおよびIgG3マウス免疫グロブリンに属する)の治療における使用が臨床研究で試験されてきた。
【0007】
これらの研究から、マウスモノクローナル抗体に固有な複数の悪性副作用が指摘されてきた。
【0008】
そのような副作用の1つは、マウス抗体に対して人間が起こす免疫応答によって生じるアレルギー反応またはアナフィラキシー反応である。
【0009】
マウスで産生されたモノクローナル抗体のこのような免疫原性の問題を解決するために、遺伝子工学技術を用いてキメラ抗体を製造することが可能である。「キメラ」抗体とは、マウス抗体をコードする遺伝情報の幾分重要な部分をヒト抗体の対応する部分を用いて遺伝的に改変された抗体を意味する。一般的に、マウス抗体の重鎖および軽鎖(VおよびV)の可変領域が保存され、抗体分子の残りの部分がヒト抗体に由来する。このキメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体に固有の腫瘍抗原特異的な認識を維持する一方で、ヒト抗体に固有の生理学的性質およびエフェクター特性を有する。それゆえ、臨床研究から、キメラ抗体ch.l4G2aおよびch.14.18は、それらが由来するマウスモノクローナル抗体と比較して低い免疫原性および長い血清半減期を有することが示されている。さらに、マウス抗GD2モノクローナル抗体は、キメラ化されたときにより強くヒトエフェクター細胞をリクルートする能力を示し、一方マウス抗体がこれらのヒトエフェクター細胞をリクルートする能力は限定的であることが示されている。
【0010】
さらにマウス抗体をヒト抗体に同定するには、抗体の特異性を決定する抗原付着部位を含むいわゆるCDR領域または「相補性決定領域」中のアミノ酸のみをマウス抗体から保存することで行うことができる。「ヒト化」抗体とは、最初のマウス抗体のCDRのアミノ酸のみ(所望により、さらにこのCDR領域近くの数アミノ酸)が保存され、分子の残りの部分がヒト抗体に由来する、遺伝的に改変された抗体を意味する。
【0011】
先行技術の不利
治療または診断のためのインビボでのモノクローナル抗体の使用のためには、後者が特定の特異性、親和性、および非毒性という要件を満たす必要がある。しかし、モノクローナルおよびキメラ抗GD2抗体について行われた臨床研究から、キメラ化またはヒト化で解決されない大きな悪性副作用である抗GD2抗体による神経毒性が立証された。実際、抗GD2抗体を投与された神経外胚葉起源の癌患者は、抗体を投与されている間痛みに苦しみ、これらの患者の一部は末梢神経系の神経障害を発症した。この作用は、末梢系の神経線維細胞の表面にGD2ガングリオシドが存在することで説明される。
【0012】
したがって、抗GD2抗体の使用に固有のこの神経毒性が、この抗体を用いた免疫療法の臨床開発を制限してきたことは明確である。しかし、依然として非常に多くのGD2抗原標的が、神経外胚葉起源の癌の免疫ターゲッティングにとって非常に重要な要素である。
【0013】
この神経毒性の問題を解決する助けとなるであろう1つのアプローチは、GD2ガングリオシドとは異なる神経外胚葉起源の癌に関係する腫瘍抗原を認識し、かつ末梢系神経線維を認識しない抗体の使用であると考えられる。
【0014】
数年前、本発明者らは、抗GD2抗体を製造するために、一連のマウスの免疫化を行った。それによって複数の抗GD2抗体を単離し、その特徴解析の結果、特に、O−アセチル部分が存在するようにわずかに修飾されたGD2ガングリオシド分子を特異的に認識する、8B6と称するマウスIgG3クラスの抗体を同定した。この研究および特に8B6抗体については、引用することにより本明細書の一部とされる文献(Variable Region Gene Segments of Nine Monoclonal Antibodies Specific to Disialoganglisosides (GD2, GD3) and their O-Acetylated Derivative;Cerato et al., Hybridoma Volume 16, Number 4, 1997, 307-316
)に記載されている。
【0015】
この抗体の構造が調べられたが、その先の展開は行われなかった。実際、当時、公知の抗GD2抗体に比べてこの新規の抗体に特別な興味が払われることはなかった。非アセチル化型のGD2とは対照的に、O−アセチル化GD2の人間内での組織分布については、アセチル化型GD2に特異的なモノクローナル抗体の使用に基づく方法等の感度のよい検出方法がないために、未だに明確に実証されていない。したがって、この新規の抗体を臨床使用すれば、抗GD2モノクローナル抗体を使用した場合と同じ神経毒性の問題を生じるであろうと予想されていた。さらに、8B6抗体は細胞毒性活性が実証されておらず、IgG3抗体は凝集しやすいために扱いが容易ではない。
【0016】
発明の目的
GD2ガングリオシドを認識せず、O−アセチル化GD2ガングリオシドに特異的なモノクローナル抗体は、末梢神経線維を認識せず、そのため神経毒性を生じないという利点を有し得る。したがって、このような抗体は抗GD2モノクローナル抗体と比較して、GD2ガングリオシドをO−アセチル化型で発現する神経外胚葉起源のヒトの癌等の特定の種類の癌の免疫ターゲッティングに大きな利点を有し得る。
【0017】
このような抗体は当業者に公知の種々の技術で得ることができる。これらの技術では、最初に動物、特にマウス、ラット、ハムスター等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ラマ等のラクダ科の免疫化が含まれている。免疫原性材料、すなわち、それに対して抗体が産生される抗原を含む製剤は、精製された糖脂質自体または未精製物もしくは一部精製混合物に含まれる糖脂質であってもよく、あるいは、糖脂質またはその部分(特にグリコシル化された親水性部分)の1つであってもよく、必要に応じて、免疫応答を刺激するための「キャリア」としてのタンパク質または脂質に共有結合されていてもよい。別の免疫化プロセスでは、免疫原性材料は、抗原を発現する細胞から調製することができ、そのような細胞は、腫瘍サンプルから得られる腫瘍細胞または初代細胞の株の細胞培養により得られる。有用な株としては、特に、マウスまたはヒトのEL−4胸腺腫、例えば、ヒトIMR32神経芽細胞腫、ヒトU87MG膠芽腫、HCI−H82小細胞肺性癌、およびヒトM21黒色腫等の動物細胞株が包含される。次いでこれらの細胞を全体(生細胞または固定細胞)として投与するか、分画して例えば細胞膜または細胞質成分を含む一部精製画分のみを注射することができる。
【0018】
これらの免疫原性材料は、種々の経路、特に皮下、腹腔内、または筋肉内で、単独またはアジュバント(特にミョウバンまたはフロイントアジュバント)存在下で動物に投与することができる。免疫化は、数日から数ヶ月の頻度で繰り返すことができる。
【0019】
一般的な3つの方法で、産業用途で使用できる抗体を提供することができる。第1の方法には、免疫化した動物から血液試料を採取し、当業者に公知のプロセスで、この血液試料からある程度(more or less)精製された抗体(血清または血漿、全免疫グロブリン)を含む画分を抽出することが含まれてなる。この抗体をクロマトグラフィー技術または免疫吸着によってさらに精製してもよい。第2の方法では、抗体を合成することができる脾臓またはリンパ節細胞等の細胞を採取し、特に、当業者に公知のプロセスに従うウイルス形質転換または体細胞ハイブリダイゼーションにより、それらを不死化することが含まれてなる。不死化細胞の中から、クローニングによって、目的の抗体を産生する細胞のスクリーニングが可能になり、細胞培養することで、これらの抗体を培養液上清から単離し、それらを大量精製することが可能になる。最後に第3の方法には、抗体を合成することができる細胞、特に動物(免疫化されているか否かに関わらず)またはヒトから採取した脾臓、リンパ節、または末梢リンパ球細胞からRNAを単離し、cDNAライブラリーを編集し、そこから当業者に公知の方法に基づくスクリーニング、特にファージディスプレイ発現系としても知られるバクテリオファージ表面でのライブラリー発現によって、目的の抗体の配列を選択することが含まれている。VH領域とVL領域を連結する「単鎖」断片(「単鎖Fv」、scFv)の形態またはVH−CH1ペプチドセグメント(後者は定常領域の第1ドメインに相当)に関連する軽鎖からなるF(ab)断片の形態で繊維状ファージの表面で発現される(「ファージディスプレイ」)、ヒトのVH領域とVL領域を組み合わせたライブラリーの構築。
【0020】
本発明の抗体は、前述の方法のいずれかで得られた抗体から、O−アセチル化GD2抗原を認識し、非O−アセチル化GD2抗原は認識しないという点で選択することができ、この特徴を必要な特異性という。この選択は、抗体単離プロセスの間に、例えば必要な特異性を有する抗体産生細胞のみを増殖させることで行うことができる。あるいは、この特異性を有する抗体を選択するために、既に単離されている抗体を探索することもできるであろう。この目的のために、種々の方法を、特に間接免疫螢光法を、O−アセチル化GD2を発現することが知られている細胞(特にIMR32)を認識する抗体を、GD2は発現するがO−アセチル化GD2は発現しない細胞(特にNeuro2A)も認識するであろう抗体から識別するために細胞に対して使用することができる。O−アセチル化GD2を発現する細胞のみに結合し、GD2のみを発現する細胞には結合しない抗体を選択するために、乾燥細胞にELISA免疫酵素アッセイを使用することもできるであろう。O−アセチル化GD2およびGD2の両方を発現する細胞(特にIMR32)の糖脂質成分を分離するシリカ薄層クロマトグラフィーを用いて、O−アセチル化GD2に相当するバンドのみを標識する抗体だけを得ることによっても、必要な特異性を有する抗体を選択することができるであろう。この結果は、脂質抽出物中のO−アセチル化GD2をアルカリ処理で分解し、標識が効果的に消失されることを調べることで確認することができるであろう。本発明の抗体の特異性を確認するためのこれらの技術の実例は、以下の本発明の詳細な説明に記載されている。同じ目的のために当業者はその他の方法を開発することもできる。
【0021】
本発明の抗体は、種々の用途に好適なものにするために、当業者に公知の種々の技術で修飾することができる。したがって、単鎖scFv抗体、および抗原結合能を維持している種々の融合タンパク質を製造するために、従来技術で公知の種々の方法を用いることができる。特に、例えば抗原認識能を失うことなくマウス定常領域をヒトの定常領域と交換するために、抗体のいわゆる定常領域を全体的に修飾することが知られている。キメラ抗体の構築には、マウスモノクローナル抗体のVH領域およびVL領域をコードするDNAの単離すること並びにそれをヒト免疫グロブリンの定常領域HおよびLをコードするDNAに結合させることが含まれてなる。このような遺伝的構築は、ヒトにおいて定常部分の免疫原性が全くないか非常に低いヒトハイブリッド抗体(一般的にヒトIgGlの定常部とヒトCκ領域)を提供する。さらに、抗原認識に必要な領域、いわゆる超可変領域、相補性決定領域またはCDRのみを保存し、実施のためにその他全部を置換することは公知であり、これは「ヒト化」として知られている。得られたこれらのタンパク質の混合物を、記述を簡単にするために「人工修飾抗体(artificially modified antibody)」という用語で呼ぶ。
【0022】
これらのタンパク質のいくつかは本発明の抗体にとって特に興味深い。例えば、GD2ガングリオシドを認識せずO−アセチル化GD2ガングリオシドの認識が保存された人工修飾O−アセチル化抗GD2抗体は、マウスO−アセチル化抗GD2モノクローナル抗体と比べて、より優れた物理的特徴およびエフェクター特徴を有するかもしれないという点で、大きな利点を有し得る。
【0023】
O−アセチル化GD2に特異的な人工修飾抗体は、毒性物質または治療物質を健康な組織または細胞内に送達することのある上記抗体の拡散を可能な限り防止するために、対応する抗原に対して十分な親和性を有するべきである。本発明の範囲内では、GD2ガングリオシドに対する親和性は10−7mol/リットルを超えるべきである。これらの抗体の親和性は当業者に公知の技術により高めることができる。したがって、バクテリオファージ表面で抗体断片の発現は、所与のscFvから高親和性変異体を探索するのに役立つツールを構成する。したがって、免疫応答発生中に観察される親和性成熟を模倣することも可能である。したがって、ランダム変異または標的変異とその後の免疫吸着/溶出サイクルの繰り返しによる選択のための技術の使用が成功しており、最初の断片の約10倍の親和性を有する抗体断片が得られてきた。
【0024】
本発明の特別な目的は、この例に限定されるべきではないが、必要な特異性を示すことが知られている8B6抗体から製造された人工修飾抗体、および配列番号3〜8に示す相補性決定領域の配列を使用した組換えタンパク質に関する。
【0025】
本発明の目的はまた、特定の癌の診断または治療に有用な性質を抗体に提供するための、必要な特異性を有する抗体の修飾を提供することである。これらの応用においては、抗体またはその誘導体をいくつかの癌状態を患っている患者に注射することが必要である。この場合、ヒト抗体の配列により密接に関連する配列を有する誘導体が好ましい。なぜならそれらは、処置された患者が注射された分子に対して抗体を産生するのを抑え、許容度を高くし、反復投与を可能にするからである。さらにそのような誘導体は、注射した抗体に特異的な特定の決定基に対する抗体応答(治療的価値があると言われているいわゆる抗イディオタイプ抗体)にとっても有利に働く可能性がある。
【0026】
治療用途には、標的抗原(本件の場合はO−アセチル化GD2)を発現する腫瘍細胞に対して細胞毒性活性を提供する修飾が好ましい。
【0027】
一部のクラスの免疫グロブリンのみが、補体を活性化する性質または細胞媒介性の細胞毒性を誘導する性質を有することが知られている。例として、8B6抗体はO−アセチル化GD2を認識するが、この細胞毒性を十分効果的に誘導することはできない。したがって、本発明の別の目的は、O−アセチル化GD2を認識し、細胞毒性活性を有する抗体を提供することである。これは特に、この細胞毒性を誘発することができる抗体の定常領域(クラス1ヒト免疫グロブリンの定常領域等)で抗体定常領域を置換することで行うことができる。その後、細胞毒性能をさらに高めることができ、これは特に、特別にグリコシル化(低フコシル化を含む)された抗体を、例えば特別に選択されたまたは形質転換された細胞を用いて製造することで行われるだろう。文献に記載の具体的な変異を、同じ目的のために本抗体配列に導入することもできる。
【0028】
本発明に基づく治療抗体を製造する別の方法は、必要な特異性を有する抗体誘導体に細胞毒性薬剤を組み合わせることである。前記細胞毒性薬剤は、毒性化学物質;タキサン類、ニチニチソウアルカロイド類、それらの誘導体等の細胞毒性抗腫瘍薬等の、アンチセンスRNA;アントラサイクリン系薬剤、アルキル化剤;リシンもしくはシュードモナス毒素等の植物または細菌の毒素等の、生物学的毒性薬剤;または、131−ヨウ素、90−イットリウム、177−ルテチウム、186−レニウム、67−銅等のベータ粒子を放出する放射性同位元素;または111−インジウム等のオージェ電子を放出する放射性同位元素;またはさらに、213−ビスマス、212−ビスマス、211−アスタチン等のアルファ粒子を放出する放射性同位元素であってもよい。これらの例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。抗体はまた、当業者に公知の分子工学的方法で、サイトカインと組み合わせた融合タンパク質の形態で製造することもできる。使用されるサイトカインは基本的に、インターロイキン−2(IL−2)、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、およびIL−18等のインターロイキンファミリーの一員;GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)またはG−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)等の造血成長因子;腫瘍壊死因子(TNF)、およびケモカインである。得られた抗体−サイトカイン融合タンパク質は、それが由来する抗体の特異性とサイトカインの生物学的性質を有する。
【0029】
本発明の抗体はまた、当業者に公知の任意の技術の後で、細胞または生体液試料中のO−アセチル化GD2抗原の存在を検出するためにインビトロで診断を行うにしても、あるいは公知の医療イメージング技術(すなわちシンチグラフィーまたは陽電子放射断層撮影法)の1つで検出可能になるように修飾された抗体誘導体の投与によってインビボで行うにしても、診断に有利に適用することができる。その場合、抗体誘導体は、シンチグラフィー・イメージングまたは単一光子断層撮影法については、131−ヨウ素、123−ヨウ素、111−インジウム、または99m−テクネチウム等のガンマ光子を放出する放射性同位元素と組み合わされるか、あるいは陽電子放射断層撮影法については、18−フッ素、124−ヨウ素、86−イットリウム、64−銅、44−スカンジウム等の陽電子放出同位元素と組み合わされる。これらの例も本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
本発明の抗体は、毒性または放射性の化合物と組み合わせることができる。毒性物は、エステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、またはチオエーテル結合等の種々の化学結合で化学的に、または共有結合で抗体に結合される。放射性原子は、求電子置換(ヨウ素同位体元素の場合)または求核置換(18−フッ素の場合)で直接結合されるか、またはヨウ素同位元素の場合であればBolton and Hunter試薬のような放射標識された反応性シントンを介して結合されるか、またはヨウ素同位元素もしくは211−アスタチンの場合であればスタニル化された活性エステルを介して結合されるか、あるいは放射性金属の場合であればキレート剤を用いて結合される。後者の場合、キレート剤の中から、どれが生体液中で金属と共に高い安定性を有する錯体を提供するか選ぶことは、当業者の知識範囲に含まれる。従って、DTPAを111−インジウムと有利に使用することができるが、90−イットリウムでの標識にはDOTAが好ましいであろう。
【0031】
本発明の抗体は、毒性薬剤または検出可能な薬剤が抗体に直接結合されているのではなく、むしろ患者に抗体誘導体を投与した後の第2ステージで投与される低分子量分子(抗体誘導体はこの小分子をインビボで認識することができる)に結合している、当業者に公知の方法で使用することができる。この場合、抗体誘導体は特に二重特異性抗体もしくは免疫コンジュゲートであるか、または抗体誘導体とアビジンの融合タンパク質である。このアプローチは、インビボでの腫瘍の診断および治療に本発明の抗体と有利に使用することができる。
【0032】
したがって、本発明の抗体および「誘導体」、「抗体誘導体」または「誘導体材料」は、そのような腫瘍の診断または治療に有利に使用することができる。これらには、黒色腫、小細胞肺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫等の神経外胚葉起源の腫瘍が包含される。本発明の生成物は、これらの腫瘍の検出および治療に、特に腫瘍が散在しているかまたは既存の処置に反応しない場合に、有利に適用することができる。
【発明の概要】
【0033】
本発明は、黒色腫、膠芽腫、小細胞肺性癌、神経芽細胞腫等をはじめとする神経外胚葉起源のヒトの癌の免疫ターゲッティングのための抗体の使用を開示する。
【0034】
上述の本発明の種々の態様の全てにおいて、特に驚くべきことに、O−アセチル化GD2に特異的なモノクローナル抗体が、GD2ガングリオシドおよびそのO−アセチル化型を発現する腫瘍細胞を認識する一方で、GD2を発現する神経線維には付着しないことが明らかとなった。したがって、このような抗体は、末梢神経線維を認識しない、神経外胚葉起源の腫瘍細胞に限定された特異性を有する。この特異性の向上は、治療への適用における毒性の低減につながり、これは特に、GD2ガングリオシドを認識する抗体で観察される正常末梢神経組織への付着がないことによるものである。したがって本発明は、このような抗体の、GD2を認識する抗体と比べて特異性が向上され、毒性が低下した、癌の診断および治療のための使用を包含する。
【0035】
本発明の抗体は、その認識する腫瘍細胞に対する細胞毒性活性を有し、これは、内因性のものであるか(これが本発明の抗体をキメラ化またはヒト化する理由の1つである)、または抗体が毒性薬剤、特に放射性薬剤のベクターとして働くためである。
【0036】
したがって、本発明は、O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識する任意のモノクローナルキメラ抗体またはモノクローナルヒト化抗体、またはこの抗体の断片を包含し、前記抗体または前記断片は、末梢神経表面で発現するGD2分子は認識せず、腫瘍細胞が発現するO−アセチル化GD2分子を認識する。
【0037】
本発明はまた、特に元の抗体の性質を修飾するため、特にその免疫原性を低減させるため、またはその毒性活性を増大させるため、または注入後のクリアランスを早めるもしくは遅らせるため、当業者に公知の分子遺伝学的技術を用いて数個のアミノ酸が別のアミノ酸で置換された抗体を提供する。
【0038】
有利には、本発明の人工修飾モノクローナル抗体またはその断片は、O−アセチル化GD2に対して10−7mol/リットルを超える親和性を有し、GD2自体には10分の1未満の親和性を有するκ−IgGであり、前記抗体または前記断片が単一特異性または二重特異性であることを特徴とする。
【0039】
特に本発明は、限定されるものではないが、H鎖可変領域の相補性決定領域が配列番号3、配列番号4および配列番号5で表されるアミノ酸配列を有し、L鎖可変領域の相補性決定領域が配列番号6、配列番号7および配列番号8で表されるアミノ酸配列を有する、任意の人工修飾モノクローナル抗体またはその断片を提供する。
【0040】
特に本発明は、限定されるものではないが、非ヒト抗体の重鎖可変領域をコードするcDNAをヒト免疫グロブリンの定常領域をコードするcDNAに連結することで得られる重鎖を有し、同じ非ヒト抗体の軽鎖可変領域をコードするcDNAをヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域をコードするcDNAに連結することで得られる軽鎖を有する人工修飾モノクローナル抗体またはその断片において、前記非ヒト抗体がマウス8B6モノクローナル抗体であり、前記人工修飾抗体がO−アセチル化GD2ガングリオシドに対して産生されたものであり末梢神経繊維を認識しないことを特徴とする、任意の人工修飾モノクローナル抗体またはその断片を提供する。
【0041】
特に本発明は、限定されるものではないが、配列番号1で表されるアミノ酸推定配列の重鎖可変領域を有し、配列番号2で表されるアミノ酸推定配列の軽鎖可変領域を有する、任意の人工修飾モノクローナル抗体またはその断片を提供する。
【0042】
請求項5に記載の人工修飾モノクローナル抗体またはその断片は、CHO細胞株を用いて得られるKM8B6抗体またはその断片であることが好ましい。
【0043】
本発明はまた、本発明の人工修飾抗体またはその断片に由来する医薬分子であって、抗体またはその断片が、分子X(ここでXは毒性分子、薬、プロドラッグ、または特異性に無関係な二次抗体である)に結合している任意の医薬分子を提供する。
【0044】
一つの態様によれば、上記毒性分子は、毒性の化学分子、生物学的分子、または放射性分子であって、上記分子は、O−アセチル化GD2ガングリオシドを発現する腫瘍細胞を死滅させることを意図したものである。
【0045】
本発明の医薬分子の標的になる前記腫瘍細胞は、神経芽細胞腫、黒色腫、膠芽腫、または小細胞肺癌の細胞であることが好ましい。
【0046】
本発明の医薬分子は、糖の付加によってFc領域が変異しており、したがって、免疫細胞および補体系分子の活性化を調節するものであることが好ましい。
【0047】
本発明はまた、腫瘍細胞表面でO−アセチル化GD2ガングリオシドの発現を示す癌の診断のための任意の分子を提供し、前記分子は本発明の人工修飾抗体またはその断片に由来し、前記抗体または前記断片は、この抗体または前記断片を蛍光または放射活性で検出するための薬剤に結合している。
【0048】
したがって、本発明は、O−アセチル化型のGD2ガングリオシドを発現する細胞を有する癌を治療処置するための薬の製造、またはそのような癌を診断するための製品の製造のための、本発明の人工修飾抗体もしくはその断片および/または本発明の分子の任意の使用に関する。
【0049】
さらに、本発明は、医薬分子の製造における8B6モノクローナル抗体(論文’Variable Region Gene Segments of Nine Monoclonal Antibodies Specific to Disialoganglisosides (GD2, GD3) and their O-Actylated Derivatives‘, Cerato et al., Hybridoma Volume 16, n°4, 1997, 307-316’に記載されている)の任意の使用を提供し、前記抗体は毒性の化学物質、生物学的薬剤、または放射性薬剤に結合しており、ここで前記分子はO−アセチル化GD2ガングリオシドを発現する腫瘍細胞を死滅させることを意図したものである。
【0050】
特に本発明は、限定されるものではないが、前記細胞が神経芽細胞腫、黒色腫、膠芽腫、または小細胞肺癌の細胞であるような使用を提供する。
【0051】
特に本発明は、限定されるものではないが、前記治療分子が糖の付加によってFc領域が変異しており、従って免疫細胞および補体系分子の活性化を調節する使用を提供する。
【0052】
本発明はまた、腫瘍細胞の表面にO−アセチル化GD2ガングリオシドを発現する癌を診断するための分子の製造のための、8B6モノクローナル抗体の任意の使用を提供し、前記分子は前記抗体に由来し、ここで前記抗体は蛍光または放射活性によって抗体を検出するための薬剤に結合している。
【0053】
本発明はまた、本発明の人工修飾抗体をコードするDNAの任意の配列、およびプロモーターに機能的に連結されたそのようなDNA配列を含む任意の発現ベクターを提供する。
【0054】
本発明はまた、そのような発現ベクターを含む任意の細胞、特に動物細胞、および本発明の人工修飾抗体を産生する任意の非ヒト形質転換体を提供する。
【0055】
最後に、本発明は、O−アセチル化GD2ガングリオシドに対する人工修飾抗体を製造するための任意の方法を提供し、前記プロセスは、好適な条件下における細胞または非ヒト形質転換体中でのDNA配列の発現、および抗体の回収を含んでなる。
【0056】
細胞または形質転換体は、抗体が蓄積する条件下で培養することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】プラスミドpcDNA3(登録商標)60C3 L−VLの構築を示す図である。
【図2】プラスミドpcDNA3(登録商標)60C3 Lの構築を示す図である。
【図3】プラスミドpcDNA3(登録商標)KM8B6Lの構築を示す図である。
【図4】人工修飾抗体KM8B6の軽鎖の塩基配列およびアミノ酸推定配列を示す図である。
【図5】プラスミドpBluescript(登録商標)II SK(+)60C3 L−VHの構築を示す図である。
【図6】プラスミドpBluescript(登録商標)II SK(+)KM60C3−Hの構築を示す図である。
【図7】プラスミドpBluescript(登録商標)II SK(+)KM8B6−Hの構築を示す図である。
【図8】プラスミドpcDNA3.1/Hygro(著作権)(+)KM8B6−Hの構築を示す図である。
【図9】人工修飾抗体の重鎖KM8B6の塩基配列および推定アミノ酸配列を示す図である。
【図10】精製した抗O−アセチル化GD2人工修飾抗体KM8B6のSDS−PAGE分析を示す図である。分析は、還元条件下(左側)および非還元条件下(右側)で行った。左から順に、分子量マーカー、KM8B6、IgG3 8B6(還元条件)、高分子量マーカー、KM8B6、およびIgG3 8B6(非還元条件)。
【図11】免疫蛍光で測定した、IMR32およびNeuroA細胞(それぞれO−アセチル化GD2抗原ありまたはなし)上の8B6抗体およびKM8B6抗体の反応性を示すグラフである。縦軸は検出された細胞数、横軸は蛍光強度を示す。青色のプロットは、基準となる反応性に相当し、赤色のプロットは生成物の反応性に相当する。
【図12】ELISAアッセイで試験した、IMR32細胞およびNeuroA細胞上の8B6抗体およびKM8B6抗体の反応性を示すグラフである。
【図13】シリカ薄層クロマトグラフィーで分離したラット脳ガングリオシドについてKM8B6抗体を用いて得られた免疫染色のプロフィールを示す図である。バンドA:種々のラット脳ガングリオシドの遊走のレゾルシノール染色。
【図14】神経芽細胞腫細胞およびヒト神経繊維の免疫組織化学的アッセイの結果を示す図である。
【図15】毒性試験(ADCC)の結果を示す図である。人工修飾KM8B6抗体およびそれが由来するマウス8B6 mAbのパーセントADCC活性を示す。リツキサン(Rituxan(登録商標)):ネガティブコントロールとして使用した抗CD20抗体。
【図16】マウスにおける、O−アセチル化GD2抗原を発現するマウスEL4胸腺腫に対する8B6 mAbの抗腫瘍効果のインビボ試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
人工修飾KM8B6抗体の製造
【0059】
1.マウスモノクローナル抗体60C3の可変L−VL領域をコードするcDNAの調製
【0060】
(a)モノクローナル60C3抗体を産生する60C3ハイブリドーマからの全RNAの抽出
【0061】
RNAble試薬(EUROBIO社、Courtaboeuf、フランス)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、指数増殖期の106 60C3ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出する。260nmでの吸光度を測定して全RNA濃度を決定する。
【0062】
(b).60C3 L−VLcDNAの塩基配列の獲得
【0063】
60C3 L−VL可変領域をコードするcDNAをRACE−PCRによってメッセンジャーRNAから遺伝子増幅し、可変領域(VL)と組み合わされたシグナルペプチド(L)をコードする塩基配列を得た。この増幅は、BD Biosciences社(サンノゼ、カリフォルニア州、米国)から入手したSMART(商標)RACE cDNA Amplificationキットをメーカーの取扱説明書に従って用いて行った。逆転写に使用する全RNA量は1μgである。反応産物を、メーカーから入手可能なトリシンEDTA緩衝液100μL中に希釈した。体積2.5μLの希釈産物を遺伝子増幅に使用した。使用した60C3 VLのcDNAに特異的なアンチセンスプローブは、5’−60C3 VL:5’−TTT CAG CTC CAG CTT GGT CCC AGC −3’(配列番号9)である。増幅は、反応混合液をPERKIN−ELMER(PE)DNA thermal Cycler 480(PERKIN ELMER WELLESLEY社、マサチューセッツ州、米国)で以下の条件でインキュベートすることで行った:(94℃5秒、72℃3分)を5サイクル;その後(94℃5秒、次いで70℃10秒、その後72℃3分)を5サイクル、および(94℃5秒、次いで69℃10秒、および72℃3分)を25サイクル。RACE−PCRの反応産物を、泳動用緩衝液にトリスEDTA(pH8;40mMのトリス塩基(SIGMA CHEMICALS Co製))、25mMのEDTA(INERCHIM社、Montlucon、フランス)、20mMの酢酸(イタリア、RodanoのCARLO ERBA REAGENTI SPA社、Rodano、MI、イタリア)を用い、1%アガロースゲル電気泳動(Q.BIOGENE社、モーガンアーバイン、カリフォルニア州、米国)で分析する。次いで、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、予想される分子量を有する産物を精製する。60C3 L−VL領域をコードするcDNA配列を確認するための得られた精製産物の核酸配列の決定は、GENOME EXPRESS社(Meylan、フランス)が行った。60C3抗体の軽鎖可変領域と組み合わされたシグナルペプチドに相当する配列をこうして決定し、60C3 L−VLのcDNAを発現ベクターにクローニングするためのプローブを設計した。
【0064】
(c).60C3 L−VLcDNAの増幅
【0065】
60C3ハイブリドーマ細胞の全RNA抽出物から、RT−PCRによって60C3 L−VLcDNAを増幅させた。反応混合液は以下の通りである:0.5μgのオリゴd(T)18(NEW ENGLAND BIOLABS社、ビバリー、マサチューセッツ州、米国)、1μgのRNA、および0.5mMのdNTP(PROMEGA社、マディソン、ウィスコンシン州、米国)、これらを滅菌水で12μLにする(qsp12μL)。この混合液を65℃(乾燥制御された浴)で5分間、その後4℃(氷水)で2分間インキュベートしてRNAを変性させる。この反応混合液に、4μLの5×First−strand Buffer溶液(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、10mMのDTT(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、160UのRnasine(PROMEGA社)、および800Uの逆転写酵素(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)を加える。得られた混合液を37℃で1時間、その後反応を停止させるために70℃で15分間インキュベートする。以下の合成オリゴヌクレオチドを用いたPCR遺伝子増幅によって、60C3 L−VLcDNAのコピーを得る;5’−BamHI 60C3 L−VL:5’−AG GGA TCC AAA GAC AAA ATG GAT−3’(センスプローブ、配列番号10)および3’−XhoI 60C3 L−VL:5’−TT CAG CTC GAG CTT GGT CCC AGC ACC−3’(アンチセンスプローブ、配列番号11)。
【0066】
使用した合成プローブはDNA配列にサイレント変異を導入し、この変異は、アミノ酸配列は変化させない一方で、ベクターへのクローニングに必要なBamHIおよびXhoI制限酵素認識部位を導入する。
【0067】
反応媒体は以下の組成を有する:500μMのdNTP(PROMEGa社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−Xhol 60C3 L−VLおよびプローブ5’−BamHI 60C3。
【0068】
この増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラー(PELTIER THERMAL CYCLER)を用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。
【0069】
PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動分析で確認した後、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、60C3 L−VLcDNAを精製する。
【0070】
2.60C3 L−VLcDNAを有する組換えプラスミドの構築:pcDNA3(登録商標)60C3 L−VL
【0071】
(a).ベクターpcDNA3(登録商標)および60C3 L−VLcDNAの消化、並びに消化したベクターの脱リン酸化
【0072】
制限酵素で消化し、目的のcDNAを挿入するために必要な付着末端を有する直鎖状ベクターを得る。この消化は、以下の条件で行われる:NEB2 10×緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、ベクターpcDNA3(登録商標)または60C3 L−VLcDNA(1(μg)、制限酵素BamHI(10U)、制限酵素XhoI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNew England Biolabs Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続ける。消化したベクターおよびインサートを、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。次いでベクターをCIP(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を用いて37℃で1時間脱リン酸化する。反応混合液の組成は以下の通りである:10×NEB3緩衝剤(5μL)、ベクター(1μg)、CIP(1μL)。この反応は、ベクターのセルフライゲーションの割合を減少させることでライゲーション収率を高める。実際、遊離端部の5’端および3’端のリン酸部分を消化して抑制すると、ベクターの自発的な閉鎖が妨げられる。
【0073】
(b).ライゲーション反応
【0074】
T4リガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を使用してライゲーションすることで、消化および脱リン酸化されたベクターpcDNA3(登録商標)中に、消化された60C3 L−VLcDNAが挿入される。この反応はさらに16℃の水浴中で16時間、以下の反応媒体中で行われる:ライゲーション緩衝液 5×(4μL)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、200ngの消化および脱リン酸化されたベクター、T4リガーゼ(400U)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、(1kbのインサートについて)170ngの精製cDNA。インサート:ベクターのモル比は3:1である。
【0075】
(c).コンピテント細菌大腸菌XL1 blue(STRATAGENE社)の形質転換
【0076】
ライゲーション反応産物20μLをコンピテント細菌懸濁液100μLに加える。得られた混合液を4℃で30分間インキュベートする。次いでこの細菌に42℃で2分間ヒートショックを与え、続いて4℃に2分間置く。次いで、体積1mLのLB培地を加え、この細菌を撹拌(250rpm)しながら37℃で1時間インキュベートする。4000×g、4℃で5分間遠心して細菌を回収する。細菌ペレットを10μLのLB培地にとり、その後100μg/mLのアンピシリン(SIGMA CHEMICALS CO社)および12.5μg/mLのテトラサイクリン(SIGMA CHEMICALS CO社)を含む2XTY寒天培地の入ったペトリ皿に蒔く。37℃で一晩インキュベートした後、抵抗性のコロニーが発達する。
【0077】
(d).PCRによる、ベクターpcDNA3(登録商標)中にインサート60C3 L−VLの存在の確認
【0078】
単離したコロニーを、換気フード内で無菌条件下にて以下のPCR反応混合液を含むチューブにそれぞれ入れる:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−XhoI 60C3 L−VLおよびプローブ5’−BamHI 60C3。
【0079】
この増幅はMJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラーを用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。増幅されたPCR産物のサイズを1%アガロースゲル電気泳動分析で確認する。適切に形質転換されたクローンだけで、予想されるサイズのPCR産物が得られる。
【0080】
(e).目的のプラスミドpcDNA3(登録商標)60C3 L−VLの製造
【0081】
滅菌つまようじを使用し、コロニーを採取した後、これを、100μg/mLのアンピシリン(SIGMA CHEMICALS CO社)および12.5μg/mLのテトラサイクリン(SIGMA CHEMICALS CO社)を含む5mLのLB選択液体培地に加え、37℃で16時間インキュベートする。次いで、QIAprepスピンミニプレップキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、この細菌希釈液からプラスミドDNAのミニプレップを行う。
【0082】
3.ヒトP3Non2モノクローナル抗体の定常領域hu−CκをコードするcDNAの調製
【0083】
(a).P3Non2モノクローナル抗体を産生するP3Non2ハイブリドーマからの全RNAの抽出
【0084】
RNAble試薬(フランス、CourtaboeufのEUROBIO社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、指数増殖期の106 P3Non2ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出する。260nmでの吸光度を測定することで、全RNA濃度を決定する。
【0085】
(b).hu−CκcDNAの増幅
【0086】
hu−CκのcDNAの増幅は、P3Non2ハイブリドーマ細胞からの全RNA抽出物をRT−PCRすることで行った。反応混合液は以下の通りである:0.5μgのオリゴd(T)18(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社、ビバリー、マサチューセッツ州、米国)、1μgのRNA、0.5mMのdNTP(PROMEGA社、マディソン、ウィスコンシン州、米国)、これらを滅菌水で12μLにした(qsp12μL)。この混合液を65℃(乾燥制御された浴)で5分間、次いで4℃(氷水)で2分間インキュベートし、RNAを変性させる。次いでこの反応混合液に、4μLの5×First−strand Buffer溶液(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、10mMのDTT(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、160UのRnasine(PROMEGA社)、および800Uの逆転写酵素(Invitrogen Life Biotechnologies社)を加える。得られた混合液を37℃で1時間、次いで反応を停止させるために70℃で15分間インキュベートする。60C3 L−VLcDNAのコピーを、以下の合成オリゴヌクレオチドを用いたPCR遺伝子増幅で得る;5’−XhoI hu−Cκ:5’−AG CTC GAG CTG AAA CGA ACT GTG GCT GCA C−3’(センスプローブ、配列番号12)および3’−XbaI hu−Cκ:5’−CTT CTA GAT TTA ACA CTC TCC CCT GTT GA−3’(アンチセンスプローブ、配列番号13)。
【0087】
使用の合成プローブはDNA配列にサイレント変異を導入し、この変異は、アミノ酸配列は変化させない一方で、ベクターにクローニングするために必要なXbaIおよびXhoI制限酵素認識部位を導入する。
【0088】
反応媒体は以下の組成を有する:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−XbaI hu−Cκおよびプローブ5’−XhoI hu−Cκ。
【0089】
この増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラー(PELTIER THERMAL CYCLER)を用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。
【0090】
PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動分析で確認した後、QIAquick Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、hu−CκcDNAを精製する。
【0091】
4.人工修飾抗体KM60C3の軽鎖の発現ベクターの構築:pcDNA3(登録商標)KM60C3−L
【0092】
(a).ベクターpcDNA3(登録商標)60C3 L−VLおよびhu−CκcDNAの消化、および消化したベクターの脱リン酸化
【0093】
消化は以下の条件下で行う:NEB2 10×緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、ベクターpcDNA3(登録商標)60C3 L−VLまたはhu−CκcDNA(1μg)、制限酵素XhoI(10U)、制限酵素XbaI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNEW ENGLAND BIOLABS Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続けた。消化したベクターおよびインサートを、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。次いで、ベクターをCIP(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を用いて37℃で1時間脱リン酸化する。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB310×緩衝剤(5μL)、ベクター(1μg)、CIP(1μL)。
【0094】
(b).ライゲーション反応
【0095】
T4リガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を使用してライゲーションすることで、消化および脱リン酸化されたベクターpcDNA3(登録商標)60C3 L−VL中に、消化されたcDNAであるhu−CκcDNAが挿入される。この反応はさらに16℃の水浴中で16時間、以下の反応媒体中で行われる:ライゲーション緩衝液 5×(4μL)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、200ngの消化および脱リン酸化されたベクター、T4リガーゼ(400U)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、(1kbのインサートについて)170ngの精製cDNA。インサート:ベクターのモル比は3:1である。ライゲーション反応産物を、コンピテント細菌大腸菌XL1 blue(STRATAGENE社)の形質転換に使用する。
【0096】
(c).PCRによる、ベクターpcDNA3(登録商標)60C3 L−VL中にインサートhu−Cκの存在の確認
【0097】
単離した抵抗性のコロニーを、換気フード内で無菌条件下にて以下のPCR反応混合液を含むチューブに入れる:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−XbaI hu−Cκおよびプローブ5’−XhoI hu−Cκ。増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラーを用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。増幅されたPCR産物のサイズを1%アガロースゲル電気泳動分析で確認する。適切に形質転換されたクローンでのみ、予想されるサイズのPCR産物が得られる。
【0098】
(d).目的のプラスミドpcDNA3(登録商標)KM60C3−Lの製造
【0099】
滅菌つまようじを使用し、コロニーを採取した後、これを、100μg/mLのアンピシリン(SIGMA CHEMICALS CO社)および12.5μg/mLのテトラサイクリン(SIGMA CHEMICALS CO社)を含む5mLのLB選択液体培地に加え、37℃で16時間インキュベートする。次いで、QlAprepスピンミニプレップキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、この細菌希釈液からプラスミドDNAのミニプレップを行う。
【0100】
5.人工修飾抗体KM 8B6の軽鎖の発現ベクターの構築:pcDNA3(登録商標)8B6−L
【0101】
(a).ベクターpcDNA3(登録商標)hu−Cκの獲得
【0102】
制限酵素BamHIおよびXhoIで消化することで、ベクターpcDNA3(登録商標)KM60C3−LからベクターpcDNA3(登録商標)hu−Cκを調製した。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB210×緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、ベクター(1μg)、制限酵素BamHI(10U)、制限酵素XhoI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNEW ENGLAND BIOLABS Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続ける。消化したベクターを、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。次いでベクターをCIP(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を用いて37℃で1時間脱リン酸化する。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB3緩衝剤10×(5μL)、ベクター(1μg)、CIP(1μL)。
【0103】
(b).8B6モノクローナル抗体を産生する8B6ハイブリドーマからの全RNAの抽出
【0104】
RNAble試薬(フランス、CourtaboeufのEUROBIO社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、指数増殖期の106 8B6ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出する。260nmでの吸光度を測定して全RNA濃度を決定する。
【0105】
(c).8B6 L−VLcDNAの塩基配列の獲得
【0106】
可変領域8B6 L−VLをコードするcDNAをRACE−PCRによってメッセンジャーRNAから遺伝子増幅し、可変領域(VL)と組み合わされたシグナルペプチド(L)をコードする塩基配列を得た。この増幅は、BD BIOSCIENCES社(サンノゼ、カリフォルニア州、米国)から入手したSMART(商標)RACE cDNA Amplificationキットをメーカーの取扱説明書に従って用いて行った。逆転写に使用する全RNA量は1μgである。反応産物を、メーカーから入手可能なトリシンEDTA緩衝液100μL中に希釈した。体積2.5μLの希釈産物を遺伝子増幅に使用した。使用した8B6 VL cDNAに特異的なアンチセンスプローブは以下の通りである:κ型マウス抗体軽鎖の定常部muCκをコードするcDNAとハイブリダイズする3’−muCκ:5’−gtt cat act cgt cct tgg tca acg tga ggg−3’。増幅は、反応混合液をPERKIN−ELMER(PE)DNA thermal Cycler 480(PERKIN ELMER WELLESLEY社、マサチューセッツ州、米国)で以下の条件でインキュベートすることで行った:(94℃5秒、72℃3分)を5サイクル、次いで(94℃5秒、次いで70℃10秒、その後72℃3分)を5サイクル、(94℃5秒、69℃10秒、72℃3分)を25サイクル。RACE−PCR反応産物を、泳動用緩衝液にトリスEDTA(pH8;40mMのトリス塩基(SIGMA CHEMICALS Co社))、25mMのEDTA(INERCHIM社、Montlucon、フランス)、20mMの酢酸(CARLO ERBA REAGENTI SPA社、Rodano、MI、イタリア)を用い、1%アガロースゲル電気泳動(Q.BIOGENE社、モーガンアーバイン、カリフォルニア州、米国)で分析する。次いで、QIAquickGel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、予想される分子量を有する産物を精製する。8B6 V−VL領域をコードするcDNA配列を確認するための得られた精製産物の核酸配列の決定は、GENOME EXPRESS社(Meylan、フランス)が行った。8B6抗体の軽鎖可変領域と組み合わされたシグナルペプチドに相当する配列をこうして決定し、8B6 L−VLcDNAを発現ベクターにクローニングするためのプローブを設計した。
【0107】
(d).8B6 L−VLcDNAの増幅
【0108】
60C3ハイブリドーマ細胞の全RNA抽出物から、RT−PCRによって8B6 L−VLcDNAを増幅させた。反応混合液は以下の通りである:0.5μgのオリゴd(T)18(NEW ENGLAND BIOLABS社、ビバリー、マサチューセッツ州、米国)、1μgのRNA、および0.5mMのdNTP(PROMEGA社、マディソン、ウィスコンシン州、米国)、これらを滅菌水で12μLにする(qsp12μL)。この混合液を65℃(乾燥制御された浴)で5分間、その後4℃(氷水)で2分間インキュベートしてRNAを変性させる。次いでこの反応混合液に、4μLの5×First−strand Buffer溶液(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、10mMのDTT(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、160UのRnasine(PROMEGA社)、および800Uの逆転写酵素(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)を加える。得られた混合液を37℃で1時間、その後反応を停止させるために70℃で15分間インキュベートする。以下の合成オリゴヌクレオチドを用いたPCR遺伝子増幅によって、8B6 L−VLcDNAのコピーを得る;5’− BamHI 8B6 L−VL:5’− AAG GGA TCC GCC ACC ATG AAG TTG CCT GTT −3’(センスプローブ、配列番号14)および3’−XhoI 8B6 L−VL:5’−CCG TTT TAT CTC GAG CTT GGT CCC−3’(アンチセンスプローブ、配列番号15)。
【0109】
使用の合成プローブはDNA配列にサイレント変異を導入し、この変異は、アミノ酸配列は変化させない一方で、ベクターへのクローニングに必要なBamHIおよびXhoI制限酵素認識部位を導入する。
【0110】
反応媒体は以下の組成を有する:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−XhoI 8B6 L−VLおよびプローブ5’−BamHI 8B6 L−VL。
【0111】
この増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラー(PELTIER THERMAL CYCLER)を用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。
【0112】
PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動分析で確認した後、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、8B6 L−VLcDNAを精製する。
【0113】
(e).8B6 L−VLcDNAの消化
【0114】
8B6 L−VLcDNAを制限酵素BamHIおよびXhoIで消化する。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB2 10×緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、8B6 L−VLcDNA(1μg)、制限酵素BamHI(10U)、制限酵素XhoI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNEW ENGLAND BIOLABS Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続ける。消化したインサートを、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。
【0115】
(f).ライゲーション反応
【0116】
T4リガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を使用してライゲーションすることで、消化および脱リン酸化されたベクターpcDNA3(登録商標)hu−Cκ中に、消化された8B6 L−VLcDNAが挿入される。この反応をさらに16℃の水浴中で16時間、以下の反応媒体中で行う:ライゲーション緩衝液 5×(4μL)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、200ngの消化および脱リン酸化されたベクターpcDNA3(登録商標)hu−Cκ、T4リガーゼ(400U)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、(1kbのインサートについて)170ngの精製8B6 L−VLcDNA。インサート:ベクターのモル比は3:1である。ライゲーション反応産物を、コンピテント細菌大腸菌XL1 blue(STRATAGENE社)の形質転換に使用する。
【0117】
(g).PCRによる、ベクターpcDNA3(登録商標)hu−Cκ中にインサート8B6 L−VLの存在の確認
【0118】
単離した抵抗性のコロニーを、換気フード内で無菌条件下にて以下のPCR反応混合液を含むチューブに入れる:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(Invitrogen Life Technologies社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−XhoI 8B6 L−VLおよびプローブ5’−BamHI 8B6 L−VL。増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラーを用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。増幅されたPCR産物のサイズを1%アガロースゲル電気泳動分析で確認する。適切に形質転換されたクローンでのみ、予想されるサイズのPCR産物が得られる。
【0119】
(h).目的のプラスミドpcDNA3(登録商標)KM8B6 Lの製造
【0120】
滅菌つまようじを使用し、コロニーを採取した後、これを、100μg/mLのアンピシリン(SIGMA CHEMICALS CO社)および12.5μg/mLのテトラサイクリン(SIGMA CHEMICALS CO社)を含む5mLのLB選択液体培地に加え、37℃で16時間インキュベートする。次いで、QIAprep(登録商標)スピンミニプレップキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、この細菌希釈液からプラスミドDNAのミニプレップを行う。
【0121】
マウス60C3モノクローナル抗体のL−VH可変領域をコードするcDNAの調製
【0122】
(a).60C3 L−VHcDNAの塩基配列の獲得
【0123】
60C3 L−VH可変領域をコードするcDNAをRACE−PCRによってメッセンジャーRNAから遺伝子増幅し、可変領域(VL)と組み合わされたシグナルペプチド(L)をコードする塩基配列を得た。この増幅は、BD BIOSCIENCES社(サンノゼ、カリフォルニア州、米国)から入手したSMART(商標)RACE cDNA Amplificationキットをメーカーの取扱説明書に従って用いて行った。逆転写に使用する全RNA量は1μgである。反応産物を、メーカーから入手可能なトリシンEDTA緩衝液100μL中に希釈した。体積2.5μLの希釈産物を遺伝子増幅に使用した。使用した60C3VHのcDNAに特異的なアンチセンスプローブは、κ型マウス抗体軽鎖のmuC−κ定常部をコードするcDNAにハイブリダイズする3’−60C3 L−VH:5’−TGC AGA GAC AGT GAC CAG CAG AGT AGT CCC−3’(アンチセンスプローブ、配列番号16)である。増幅は、反応混合液をPERKIN−ELMER(PE)DNA thermal Cycler 480(PERKIN ELMER WELLESLEY社、マサチューセッツ州、米国)で以下の条件でインキュベートすることで行った:(94℃5秒、72℃3分)を5サイクル、その後(94℃5秒、次いで70℃10秒、その後72℃3分)を5サイクル、および(94℃5秒、その後69℃10秒、72℃3分)を25サイクル。RACE−PCRの反応産物を、泳動用緩衝液にトリスEDTA(pH8;40mMのトリス塩基(SIGMA CHEMICALS Co社))、25mMのEDTA(INERCHIM社、Montlucon、フランス)、20mMの酢酸(CARLO ERBA REAGENTI SPA社、Rodano、MI、イタリア)を用い、1%アガロースゲル電気泳動(Q.BIOGENE社、モーガンアーバイン、カリフォルニア州、米国)で分析する。次いで、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、予想される分子量を有する産物を精製する。60C3 L−VH領域をコードするcDNA配列を確認するための得られた精製産物の核酸配列の決定は、GENOME EXPRESS社(Meylan、フランス)が行った。60C3抗体の軽鎖可変領域と組み合わされたシグナルペプチドに相当する配列をこうして決定し、60C3 L−VHのcDNAを発現ベクターにクローニングするためのプローブを設計した。
【0124】
(b).60C3 L−VHcDNAの増幅
【0125】
60C3ハイブリドーマ細胞の全RNA抽出物から、RT−PCRによって、60C3 L−VHcDNAを増幅させた。反応混合液は以下の通りである:0.5μgのオリゴd(T)18(NEW ENGLAND BIOLABS社、ビバリー、マサチューセッツ州、米国)、1μgのRNA、および0.5mMのdNTP(PROMEGA社、マディソン、ウィスコンシン州、米国)、これらを滅菌水で12μLにする(qsp12μL)。この混合液を65℃(乾燥制御された浴)で5分間、その後4℃(氷水)で2分間インキュベートしてRNAを変性させる。この反応混合液に、4μLの5×First−strand Buffer溶液(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、10mMのDTT(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、160UのRnasine(PROMEGA社)、および800Uの逆転写酵素(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)を加える。得られた混合液を37℃で1時間、その後反応を停止させるために70℃で15分間インキュベートする。以下の合成オリゴヌクレオチドを用いたPCR遺伝子増幅によって、60C3 L−VHcDNAのコピーを得る;5’−BamHI 60C3 L−VH:5’−CAG GAT CCG AAC ACA CTG ACT CTA ACC ATG G−3’(センスプローブ、配列番号17)および3’−NheI 60C3 L−VH:5’−T GCT AGC TGC AGA GAC AGT GAC CAG AGT−3’(アンチセンスプローブ、配列番号18)。
【0126】
使用の合成プローブはDNA配列にサイレント変異を導入し、この変異は、アミノ酸配列は変化させない一方でベクターへのクローニングに必要なBamHIおよびXhoI制限酵素認識部位を導入する。
【0127】
反応媒体は以下の組成を有する:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(Invitrogen Life Technologies社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−NheI 60C3 L−VHおよびプローブ5’−BamHI 60C3 L−VH。
【0128】
この増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラー(PELTIER THERMAL CYCLER)を用いて以下の条件で行った:94℃5分間;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。
【0129】
PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動分析で確認した後、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、60C3 L−VHcDNAを精製する。
【0130】
7.60C3 L−VHCdnaを有する組換えプラスミドの構築
【0131】
(a).クローニングベクターpBluescript II SK(+)60C3 L−VHの構築
【0132】
60C3 L−VH領域をコードする配列の、ベクターpBluescript II SK(+)への挿入は、制限酵素EcoRV(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)でベクターを消化して平滑末端断面を作ることを含んでなる。得られた直鎖状プラスミドをdTTP存在下でTaqポリメラーゼで処理し、ベクターの3’末端にさらにチミジンを付加してセルフライゲーションを防ぐ。60C3 L−VHcDNAを得るために使用するTaqDNAポリメラーゼは、PCR産物の各3’末端に1つの末端アデニンを付加する5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、このような産物は上記のベクターに直接クローニングすることができる。このライゲーション反応はA/T相補性のおかげで、平滑末端によるライゲーション反応と比べて収率が非常に高い。このライゲーション反応産物を、コンピテント細菌大腸菌XL1 blue(STRATAGENE社)の形質転換に使用する。
【0133】
(b).PCRによる、ベクターpBluescript II SK(+)中に60C3 L−VHインサートの存在の確認
【0134】
単離した抵抗性のコロニーを、換気フード内で無菌条件下にて以下のPCR反応混合液を含むチューブに入れる:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−NheI 60C3 L−VHおよびプローブ5’−BatnHI 60C3 L−VH。増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラーを用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。増幅されたPCR産物のサイズを1%アガロースゲル電気泳動分析で確認する。適切に形質転換されたクローンでのみ、予想されるサイズのPCR産物が得られる。
【0135】
(c).目的のプラスミドpBluescript II SK(+)60C3 L−VHの製造
【0136】
この目的のために、滅菌つまようじを使用し、コロニーを採取した後、これを、100μg/mLのアンピシリン(SIGMA CHEMICALS Co社)および12.5μg/mLのテトラサイクリン(SIGMA CHEMICALS Co社)を含む5mLのLB選択液体培地に加え、37℃で16時間インキュベートする。次いで、QIAprepスピンミニプレップキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、この細菌希釈液からプラスミドDNAのミニプレップを行う。
【0137】
(d).酵素消化による、ベクターpBluescript II SK(+)60C3 L−VH中の60C3 L−VHインサートの方向の確認
【0138】
60C3 L−VHインサートがセンス方向で存在することを、酵素BamHI(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、ベクターpBluescript II SK(+)60C3 L−VHを酵素消化することで確認する。実際、Tクローニング技術では、インサートが一方向であることは要求されないため、インサートはセンス方向またはアンチセンス方向に挿入され得る。60C3 L−VHインサートは、センス方向のときだけ、2つのBamHI制限酵素認識部位によってフランキング部位が得られる。したがって、酵素BamHIでの消化後、電気泳動分析によって、60C3 L−VHcDNAをセンス方向で有するクローンを識別および選択することができる。
【0139】
8.hu−Cγ1ヒト抗体の定常領域をコードするcDNAの調製
【0140】
a.γ1イソタイプの重鎖を産生するLP1ヒトミエローマ株からの全RNAの抽出
【0141】
RNAble試薬(CourtaboeufのEUROBIO社、フランス)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、指数増殖期の106 LP1ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出する。260nmでの吸光度を測定して全RNA濃度を決定する。
【0142】
b.hu−Cγ1cDNAセグメントの遺伝子増幅
【0143】
LP1ハイブリドー
マの全RNA抽出物から、hu−Cγ1cDNAを増幅させた。反応混合液は以下の通りである:0.5μgのオリゴd(T)18(NEW ENGLAND BIOLABS社、ビバリー、マサチューセッツ州、米国)、1μgのRNA、および0.5mMのdNTP(PROMEGA社、マディソン、ウィスコンシン州、米国)、これらを滅菌水で12μLにする(qsp12μL)。この混合液を65℃(乾燥制御された浴)で5分間、その後4℃(氷水)で2分間インキュベートしてRNAを変性させる。次いでこの反応混合液に、4μLの5×First−strand Buffer溶液(Invitrogen Life Biotechnologies社)、10mMのDTT(Invitrogen Life Biotechnologies社)、160UのRnasine(PROMEGA社)、および800Uの逆転写酵素(Invitrogen Life Biotechnologies社)を加える。得られた混合液を37℃で1時間、その後反応を停止させるために70℃で15分間インキュベートする。以下の合成オリゴヌクレオチドを用いたPCR遺伝子増幅によって、hu−Cγ1cDNAのコピーを得る;5’−Nhel hu−Cγ1:5’−CA GCT AGC ACC AAG GGC CCA TCG GTC TTC C−3’(センスプローブ、配列番号19)および3’−XbaI hu−Cγ1:5’−AGC CTC TCC CTG TCT CCG GGT AAA TAA TCT AGA CG−3’(アンチセンスプローブ、配列番号20)。
【0144】
使用した合成プローブはDNA配列にサイレント変異を導入し、この変異は、アミノ酸配列は変化させない一方ベクターへのクローニングに必要なNheIおよびXbaI制限酵素認識部位を導入する。
【0145】
反応媒体は以下の組成を有する:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’−XbaI hu−Cγ1およびプローブ5’−NheI hu−Cγ1。
【0146】
この増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラー(PELTIER THERMAL CYCLER)を用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで、94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。
【0147】
PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動分析で確認した後、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、hu−Cγ1cDNAを精製する。
【0148】
9.hu−Cγ1cDNAと結合した60C3 L−VHcDNAを有する組換えプラスミドの構築:pBluescript II SK(+)KM60C3 H
【0149】
(a).ベクターpBluescript II SK(+)60C3 L−VHおよびhu−Cγ1cDNAの消化、並びに消化したベクターの脱リン酸化
【0150】
消化は以下の条件下で行う:10×BEB2緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、ベクターpBluescript II SK(+)60C3 L−VHまたはhu−Cγ1cDNA(1μg)、制限酵素NheI(10U)、制限酵素XbaI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNEW ENGLAND BIOLABS Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続ける。消化したベクターおよびインサートを、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。次いでベクターをCIP(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を用いて37℃で1時間脱リン酸化する。
【0151】
反応媒体の組成は以下の通りである:10×NEB3緩衝剤(5μL)、ベクター(1μg)、CIP(1μL)。
【0152】
(b).ライゲーション反応
【0153】
T4リガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を使用してライゲーションすることで、消化および脱リン酸化されたベクターpBluescript II SK(+)60C3 L−VH中に、消化されたhu−Cγ1cDNAが挿入される。このライゲーション反応をさらに16℃の水浴中で16時間、以下の反応媒体中で行う:ライゲーション緩衝液 5×(4μL)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、200ngの消化および脱リン酸化されたベクターpBluescript II SK(+)60C3 L−VH、T4リガーゼ(400U)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、(1kbのインサートについて)170ngの精製hu−Cγ1cDNA。インサート:ベクターのモル比は3:1である。このライゲーション反応産物を、コンピテント細菌大腸菌XL1 blue(STRATAGENE社)の形質転換に使用する。
【0154】
(c).PCRによる、ベクターpBluescript II SK(+)60C3 L−VH中のhu−Cγ1インサートの存在および方向の確認
【0155】
NheIおよびXbaI制限酵素認識部位を選んだことにより、hu−Cγ1インサートはセンス方向またはアンチセンス方向であり得る。これはこれらの制限酵素認識部位の配列が、インサートが一方向であることを要求しないためである。インサートがセンス方向であることをPCRで確認する。単離したコロニーをそれぞれ、換気フード内で無菌条件下にて以下のPCR反応混合液を含むチューブにそれぞれ入れる:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのセンスプローブおよびアンチセンスプローブ。この増幅はMJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラーを用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。使用したプローブは、5’−BamHI 60C3 L−VH:5’−CAG GAT CCG AAC ACA CTG ACT CTA ACC ATG G−3’(センスプローブ、配列番号21)および3’−XbaI hu−Cγ1:5’−AGC CTC TCC CTG TCT CCG GGT AAA TAA TCT AGA CG−3’(アンチセンスプローブ、配列番号21)である。
【0156】
インサートの方向が適切でなければ、増幅されるべき配列と同じ鎖上にプローブがあるため、増幅は起こらない。増幅されたPCR産物のサイズを1%アガロースゲル電気泳動分析で確認する。適切に形質転換されたクローンでのみ、予想されるサイズのPCR産物が得られる。
【0157】
(d).目的のプラスミドpBluescript II SK(+)KM60C3 Hの製造
【0158】
滅菌つまようじを使用し、コロニーを採取した後、これを、100μg/mLのアンピシリン(SIGMA CHEMICALS Co社)および12.5μg/mLのテトラサイクリン(SIGMA CHEMICALS Co社)を含む5mLのLB選択液体培地に加え、37℃で16時間インキュベートする。次いで、QIAprepスピンミニプレップキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、この細菌希釈液からプラスミドDNAのミニプレップを行う。
【0159】
10.人工修飾抗体重鎖KM 8B6の発現ベクターの構築:pcDNA3/Hygro 8B6−H
【0160】
(a).ベクターpBluescript II SK(+)hu−Cγ1の獲得
【0161】
制限酵素BamHIおよびXbaIを用いて消化することで、ベクターpBluescript II SK(+)KM60C3 HからベクターpBluescript II SK(+)hu−Cγ1を製造した。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB2 10×緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、ベクター(1μg)、制限酵素BamHI(10U)、制限酵素XbaI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNEW ENGLAND BIOLABS Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続ける。次いで、このベクターを、QIAquick Gel Extractionキット(QIAGEN)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。次いで、ベクターをCIP(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を用いて37℃で1時間脱リン酸化する。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB3 10×緩衝剤(5μL)、ベクター(1μg)、CIP(1μL)。
【0162】
(b).8B6モノクローナル抗体を産生する8B6ハイブリドーマからの全RNAの抽出
【0163】
RNAble試薬(CourtaboeufのEUROBIO社、フランス)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、指数増殖期の106 8B6ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出する。260nmでの吸光度を測定して全RNA濃度を決定する。
【0164】
(c).8B6 L−VHcDNAの塩基配列の獲得
【0165】
8B6 L−VH可変領域をコードするcDNAをRACE−PCRによってメッセンジャーRNAから遺伝子増幅し、可変領域(VH)と組み合わされたシグナルペプチド(L)をコードする塩基配列を得た。この増幅は、BD BIOSCIENCES社(サンノゼ、カリフォルニア州、米国)から入手したSMART RACE cDNA Amplificationキットをメーカーの取扱説明書に従って用いて行った。逆転写に使用した全RNA量は1μgであった。反応産物を、メーカーから入手可能なトリシンEDTA緩衝液100μL中に希釈した。体積2.5μLの希釈産物を遺伝子増幅に使用した。使用した8B6 L−VHcDNAに特異的なアンチセンスプローブは、γ3型マウス抗体の重鎖muC−γ3定常部をコードするcDNAにハイブリダイズする3’−muCγ3:5’−tGA TCA ACT CAG TCT TGC TGG CTG GGT GGG−3’(配列番号23)。増幅は、反応混合液をPERKIN−ELMER(PE)DNA thermal Cycler 480(米国マサチューセッツ州のPERKIN ELMER WELLESLEY社、マサチューセッツ州、米国)で以下の条件でインキュベートすることで行った:(94℃5秒、72℃3分)を5サイクル;その後(94℃5秒、次いで70℃10秒、72℃3分)を5サイクル;その後(94℃5秒、次いで69℃10秒、その後72℃3分)を25サイクル。このRACE−PCRの反応産物を、泳動用緩衝液にトリスEDTA(pH8;40mMトリス塩基(SIGMA CHEMICALS Co))、25mMのEDTA(INERCHIM社、Montlucon、フランス)、20mMの酢酸(CARLO ERBA REAGENTI SPA社、Rodano、MI、イタリア)を用い、1%アガロースゲル電気泳動(Q.BIOGENE社、モーガンアーバイン、カリフォルニア州、米国)で分析する。次いで、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、予想される分子量を有する産物を精製する。8B6 L−VH領域をコードするcDNA配列を確認するための得られた精製産物の核酸配列の決定は、GENOME EXPRESS社(Meylan、フランス)が行った。8B6抗体の重鎖可変領域と組み合わされたシグナルペプチドに相当する配列をこうして決定し、8B6 L−VHのcDNAを発現ベクターpBluescript II SK(+)hu−Cγ1にクローニングするためのプローブを設計した。
【0166】
(d).8B6 L−VHセグメントの遺伝子増幅
【0167】
8B6ハイブリドーマ細胞の全RNA抽出物から、RT−PCRによって8B6 L−VHcDNAを増幅させた。反応混合液は以下の通りである:1μLのオリゴd(T)18(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社、ビバリー、マサチューセッツ州、米国)、1μgのRNA、および0.5mMのdNTP(PROMEGA社、マディソン、ウィスコンシン州、米国)、これらを滅菌水で12μLにする(qsp12μL)。この混合液を65℃(乾燥制御された浴)で5分間、その後4℃(氷水)で2分間インキュベートしてRNAを変性させる。次いでこの反応混合液に、4μLの5×First−strand Buffer溶液(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、10mMのDTT(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)、160UのRnasine(PROMEGA社)、および800Uの逆転写酵素(INVITROGEN LIFE BIOTECHNOLOGIES社)を加える。得られた混合液を37℃で1時間、その後反応を停止させるために70℃で15分間インキュベートする。以下の合成オリゴヌクレオチドを用いたPCR遺伝子増幅によって、8B6 L−VHcDNAのコピーを得る;5’−BamHI 8B6 L−VH:5’−CCG TCG GAT CCG GCC ACC ATG AAG TTG TGG−3’(センスプローブ、配列番号24)および3’−NheI 8B6 L−VH:5’−CGG GGT GCT AGC TGA GGA GAC TGT−3’(アンチセンスプローブ、配列番号25)。
【0168】
使用の合成プローブはDNA配列にサイレント変異を導入し、この変異は、アミノ酸配列は変化させない一方ベクターへのクローニングに必要なBamHIおよびNheI制限酵素認識部位を導入する。
【0169】
反応媒体は以下の組成を有する:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1μLのcDNA(マトリックス)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500M.Mのプローブ3’−NheI 8B6 L−VHおよびプローブ5’−BamHI 8B6 L−VH。
【0170】
この増幅は、MJ−リサーチ社製のPTC200サーマルサイクラー(PELTIER THERMAL CYCLER)を用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。
【0171】
PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動分析で確認した後、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、8B6 L−VHcDNAを精製する。
【0172】
(e).8B6 L−VHCdnaの消化
【0173】
制限酵素BamHIおよびNheIで8B6 L−VHcDNAを消化する。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB2 10×緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、8B6 L−VHcDNA(1μg)、制限酵素BamHI(10U)、制限酵素NheI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNEW ENGLAND BIOLABS Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続ける。消化したインサートを、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。
【0174】
(f).ライゲーション反応
【0175】
ライゲーションによって、消化および脱リン酸化されたベクターpBluescript II SK(+)hu−Cγ1中に、消化された8B6 L−VHcDNAが挿入される。この反応をさらに16℃の水浴中で16時間、以下の反応媒体中で行う:ライゲーション緩衝液 5×(4μL)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、200ngの消化および脱リン酸化されたベクターpBluescript II SK(+)hu−Cγ1、T4リガーゼ(400U)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、(1kbのインサートについて)170ngの精製8B6 L−VHcDNA。インサート:ベクターのモル比は3:1である。このライゲーション反応産物を、コンピテント細菌大腸菌XL1 blue(STRATAGENE社)の形質転換に使用する。
【0176】
(g).人工修飾抗体重鎖をコードするcDNAの獲得
【0177】
人工修飾抗体重鎖をコードするcDNAを製造するために、ベクターpBluescript II SK(+)KM8B6 Hを制限酵素BamIおよびXbaIで消化する。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB2 10×緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、ベクター(1μg)、制限酵素BamHI(10U)、制限酵素XbaI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNEW ENGLAND BIOLABS Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続ける。遊離したインサートを、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。
【0178】
(h).ベクターpcDNA3/Hygroの消化および消化したベクターの脱リン酸化
【0179】
消化は以下の条件で行う:NEB2 10×緩衝剤(5μL)、BSA 100×(0.5μL)、ベクター(1μg)、制限酵素BamHI(10U)、制限酵素XbaI(10U)。制限酵素、反応緩衝液、およびBSA溶液の供給元はNEW ENGLAND BIOLABS Inc.社であった。反応を37℃の水浴中で3時間続ける。消化したベクターおよびインサートを、QIAquick(登録商標)Gel Extractionキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて精製する。次いでベクターをCIP(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)を用いて37℃で1時間脱リン酸化する。反応媒体の組成は以下の通りである:NEB3緩衝剤 10×(5μL)、ベクター(1μg)、CIP(1μL)。
【0180】
(i).ライゲーション反応
【0181】
ライゲーション反応によって、消化および脱リン酸化されたベクターpcDNA3/Hygro中に、人工修飾抗体重鎖をコードするcDNAが挿入される。反応をさらに16℃の水浴中で16時間、以下の反応媒体中で行う:ライゲーション緩衝液 5×(4μL)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、200ngの消化および脱リン酸化されたベクターpcDNA3/Hygro、T4リガーゼ(400U)(NEW ENGLAND BIOLABS Inc.社)、(1kbのインサートについて)170ngの人工修飾抗体重鎖をコードする精製cDNA。インサート:ベクターのモル比は3:1である。このライゲーション反応産物を、コンピテント細菌大腸菌XL1 blue(STRATAGENE社)の形質転換に使用する。
【0182】
(j).PCRによる、ベクターpcDNA3/Hygro中に人工修飾抗体重鎖をコードするcDNAの存在の確認
【0183】
単離した抵抗性のコロニーを、換気フード内で無菌条件下にて以下のPCR反応混合液を含むチューブに入れる:500μMのdNTP(PROMEGA社)、1μLのTaqポリメラーゼ(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、10μLのPCR緩衝液(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、1.5mMのMgC1(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社)、500μMのプローブ3’およびプローブ5’。この増幅はMJ−リサーチ社のPTC200サーマルサイクラーを用いて以下の条件で行った:94℃5分;次いで94℃30秒、55℃45秒、および72℃1分を35サイクル。使用するプローブは、5’−BamHI 60C3 L−VH:5’−CCG TCG GAT CCG GCC ACC ATG AAG TTG TGG−3’(センスプローブ、配列番号26)および3’−Nhel 8B6 L−VH:5’−CGG GGT GCT AGC TGA GGA GAC TGT−3’(アンチセンスプローブ、配列番号27)である。
【0184】
増幅されたPCR産物のサイズを1%アガロースゲル電気泳動分析で確認する。適切に形質転換されたクローンでのみ、予想されるサイズのPCR産物が得られる。
【0185】
(k).目的のプラスミドpcDNA3 KM8B6 Lの製造
【0186】
滅菌つまようじを使用し、コロニーを採取した後、これを、100μg/mLのアンピシリン(SIGMA CHEMICALS Co社)および12.5μg/mLのテトラサイクリン(SIGMA CHEMICALS Co社)を含む5mLのLB選択液体培地に加え、37℃で16時間インキュベートする。次いで、QIAprep(登録商標)スピンミニプレップキット(QIAGEN社)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、この細菌希釈液からプラスミドDNAのミニプレップを行う。
【0187】
11.人工修飾KM8B6抗体の発現のための、CHO細胞のトランスフェクション
【0188】
人工修飾KM8B6抗体を発現および分泌させるのための宿主細胞としてCHO細胞を使用した。この細胞を、PolyFect(登録商標)キット(QIAGEN GMBH社、Hilden、ドイツ)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、それぞれ人工修飾KM8B6抗体の軽鎖(図4)および重鎖(図9)をコードするプラスミドpDNA3(登録商標)KM8B6−LおよびpDNA3.1/Hygro(著作権)KM8B6−Hでコトランスフェクションした。形質転換した細胞は、ジェネテシン(登録商標)およびハイグロマイシンB(登録商標)(INVITROGEN LIFE TECHNOLOGIES社、カールズバッド、カリフォルニア州、米国)に対する抵抗性で選択した。抵抗性クローンは、限定希釈法による従来のクローニング技術によって得た。次いでこれらを、ELISA免疫酵素アッセイを用いて、KM8B6抗体の発現および分泌に基づいて選択した。KM8B6抗体を3.8ng/mLで分泌する、安定なトランスフェクタントクローンを選択した。
【0189】
12.8B6抗体およびKM8B6抗体の精製
【0190】
ガングリオシドに特異的なマウスモノクローナル抗体を、対応するハイブリドーマ(Cerato et al、1997)の培養液上清から産生した。これらをマウスIgG3の不可逆的な同種親和性凝集現象(Chapman et al、1990)を制限する本発明者らが開発した手法に基づいて、プロテインAクロマトグラフィー(GE HEALTHCARE AMERSHAM BIOSCIENCE AB社、ウプサラ、スウェーデン)で精製した。カラムを、最初に0.1Mトリス塩酸(pH7.6)の緩衝剤で平衡化する。10%の平衡化緩衝剤を含む培養液上清サンプル2Lを、流速1mL/分でカラムに流す。次いで、カラムを10体積の平衡化緩衝剤で洗浄する。プロテインAに固定された材料を、酸性緩衝剤(0.1Mクエン酸塩、0.3MのNaCl、pH3)で溶出して画分ごとに回収し、これを回収用チューブに緩衝剤(1Mのトリス塩酸、pH7.6)を予め入れておくことで回収後すぐに中和する。回収画分の吸光度変化を測定することで、この精製の進行をモニターする。次いで、有用な画分をPBS溶液(0.3MのNaCl、pH7.4)に透析し、0.22μmのフィルターで濾過して滅菌する。280nmでの吸光度を測定してタンパク質の量を決定し、次いでマウスIgG3の同種親和性凝集現象を防ぐために、mAb濃度を1mL当たりのAcNが0.9mg以下の濃度になるように調整する。精製したAcMをそのまま4℃で使用まで保存する。
【0191】
プラスミドpcDNA3 KM8B6−LおよびpcDNA3/Hygro KM8B6−Hで安定にコトランスフェクションされたクローンに由来するCHO細胞培養液上清から、人工修飾KM8B6抗体をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーで精製した。
【0192】
精製した抗体を、還元変性条件下でSDS−PAGE分析で分析する。10%のグリセロール(VWR社、Fontenay sous Bois、フランス)および5%のβ−メルカプトエタノール(PROMEGA社)を含む0.5Mのトリス塩酸(pH6.8)緩衝液にサンプルを取る。これを5分間煮沸し、次いでLaemmliの方法に基づくSDS−PAGE電気泳動で分析する。1.5mm厚のポリアクリルアミドゲル(VWR社)(ゲルの上部と下部のポリアクリルアミド濃度はそれぞれ4.5%および12%)のウェルに3μgのタンパク質を置く。室温、200Vで45分間電気泳動した後、ゲルを固定し、クーマシーブルーR250(SIGMA CHEMICALS Co社)で染色する。分子量マーカーPrecision Plus Protein(登録商標)Standards(BIO−RAD社)の移動度から分子量を計算する。
【0193】
還元変性条件下の12%SDS−PAGEゲル分析は、LおよびHキメラ鎖の分子量がそれぞれ25kDaおよび50kDaであることを示している。非還元変性条件下の6%SDS−PAGEゲル分析は、LおよびH鎖が適切に組立てられて抗体分子を産生していること、並びに人工修飾抗体の分子量が約150kDaであることを示している。
【0194】
13.KM8B6抗体特異性の研究
【0195】
(a).生細胞の間接免疫螢光法による
【0196】
O−アセチル化GD2を発現するIMR32細胞およびO−アセチル化GD2を発現しないNeuro2A細胞について、抗体特異性を調べた。10個の細胞を、8B6またはKM8B6抗体と共に4℃で30分間インキュベートする。次いで1%PBS−BSA緩衝剤(pH7.4)で細胞を2回洗浄し、1%PBS−BSAに1/100希釈したフルオレセインイソチオシアネート(JACKSON IMMUNORESEARCH EUROPE LTD社、Cambrideshire、英国)で標識したヤギF(ab)2抗マウス免疫グロブリン抗体または抗ヒト免疫グロブリン抗体の存在下で再度30分間インキュベートする。再度PBSで3回洗浄した後、死細胞および細胞残骸を除去した後、フローサイトメーターFACScan(Beton−Dockinson社、マウンテンビュー、カリフォルニア州
を用いてSSC/FL1−Hウィンドウ内で、10000個の細胞を分析する。二次抗体のみで非特異的に標識されたコントロールを用いてベースを調節した後に1Logを超える蛍光を有する細胞を陽性と呼ぶ。
【0197】
得られた結果は、KM8B6抗体は、8B6抗体のように、IMR32細胞のみを認識することを示している。
【0198】
(b).96ウェルマクロタイタープレート内の乾燥細胞のELISA免疫酵素アッセイによる
【0199】
O−アセチル化GD2を発現するIMR32細胞およびO−アセチル化GD2を発現しないNeuro2A細胞に対する抗体特異性を調べた。腫瘍細胞のインビトロ培養物を、トリプシン処理で培養基質から剥離する。PBSで3回洗浄した後、細胞をMaxisorp平底マイクロタイタープレート(NUNC A/S社、ロスキレ、デンマーク)の各ウェルに、10個の細胞を含む体積50μLのPBS中を分注する。次いで、プレートを37℃のオーブンに一晩置いてPBSを蒸発させる。プレートは、直接使用することもできるし、使用まで室温で数ヶ月保存することもできる。分析のために、非特異的部位を飽和させる目的で、プレートを最初に室温で1時間、1%BSAを含む200μLのPBS緩衝液(pH7.4)と一緒に撹拌しながらインキュベートする。次いでプレートを、0.1%BSAを含むPBS緩衝液に希釈した抗体溶液100μLと一緒に撹拌しながら室温で2時間インキュベートする。200μLのPBS緩衝液でそれぞれ3回洗浄した後、全マウス免疫グロブリンまたは全ヒト免疫グロブリンのいずれかに特異的なビオチン化抗体に由来するF(ab’)2溶液(JACKSON IMMUNORESEARCH EUROPE LTD社、Cambrideshire、英国)を0.1%PBS−BSAに1/2500に希釈した溶液100μLを、各ウェルに入れる。室温で撹拌しながら1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した後、ビオチン化ストレプトアビジンペルオキシダーゼ(JACKSON IMMUNORESEARCH EUROPE LTD社、Cambrideshire、英国)の0.1%PBS−BSA溶液を1時間反応させ、その後洗浄して除去する。固定された複合体の発達は、100μLのABTS基質(ROCHE DIAGNOSTICS GMBH社、マンハイム、ドイツ)を添加することで行った。分光光度計(MultisanEX;Thermo Electron Corporation社、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いて異なる時間間隔でプレートのを405nmで読み取ることで、吸光度を決定する。
【0200】
得られた結果は、KM8B6抗体は、8B6抗体のように、IMR32細胞でのみ、用量依存的に固定されることを示している。
【0201】
(c).シリカ薄層上
【0202】
IMR32細胞の全ガングリオシド抽出物について分析を行った。Ariga et al.(1991)に記載されている技術に従って、組織ガングリオシドを抽出する。抽出するサンプルを10体積のクロロホルム/メタノール(C:M)混合物(1:1、v/v)中で粉砕し、室温で一晩機械的に撹拌する。濾過後、残渣を2.5体積の(C:M)(1:1、v/v)に取り、さらに6時間撹拌する。次いで、混合物を濾過し、ロータリーエバポレータ上でこれら2つの濾液を減圧下で蒸発させる。次いで、乾燥残渣を酢酸塩の形態のDEAE−Sephadex A−25(SIGMA CHEMICALS Co社)を2mL含むカラムに入れる。15mLの媒体Aで中性脂質を除去する。次いで、0.4Mの酢酸ナトリウム(SIGMA CHEMICALS Co社)を含む15mLのメタノールでガングリオシドを溶出する。McLuerの方法(1990)に従ってC18疎水性ゲルのSep−Pakカラム(Waters Co.社、ミルフォード、マサチューセッツ州)を用いて脱塩するために、得られた画分にpH7.4のPBSを30mL添加する。C18ゲルを、最初に2カラム体積のメタノールで、その後1:2(v/v)メタノール/PBS混合物で前処理(condition)する。次いで、脱塩する抽出物を流速1mL/分でカラムに流す。ガングリオシドの炭化水素鎖は、疎水性結合を通してゲルと相互作用するが、塩およびその他の非疎水性分子は2カラム体積の蒸留水で除去される。次いで、1体積のメタノール、続けて1体積の2:1(v/v)クロロホルム/メタノール混合物で、スフィンゴ糖脂質を溶出する。このカラムから溶出されるガングリオシドは、好適な更なる1体積の2:1(v/v)C/M混合物に濃縮され、−20℃で保存される。
【0203】
次いで、薄層クロマトグラフィーでガングリオシドを分離する。この方法は、全ガングリオシドのプロフィール決定を可能にする。HPTLCプレートは、アルミホイル上にコーティングされたシリカゲル60(MERCK社)で構成される。スポットしたガングリオシドを、展開溶媒で満たした容器内で、室温で20分間展開する。この媒体(移動相)は、C/M/CaCl混合物の0.22%水溶液(50:45:10、v/v/v)から構成される。ガングリオシドは、シアル化されているほど極性が強くなり、移動性が最も低くなる。ガングリオシドプレートの検出は、レゾルシノール/HCl試薬を用いて化学的に行う(Svennerholm、1963)。この試薬は、ガングリオシドに特徴的なシアル酸とだけ反応する。レゾルシノールで発達した後、全抽出物からガングリオシドの展開に対応する複数の染色バンドが観察される。分離されたガングリオシドの同定は、特異的モノクローナル抗体によって行うか、調べるガングリオシド抽出物と同時に展開するマーカーとして使用される標準ガングリオシドとの比較によって行う。
【0204】
シリカ薄層上でガングリオシドを展開した後、プレートをヘキサン中0.01%のポリ−(イソブチル)−メタクリレート溶液に1分間浸漬し、その後風乾する。これによって、後の段階でゲルが基板からはがれるのを防ぐために、プレートを可塑化することができる。その後、ガングリオシドへの抗体結合の発達を除いて、乾燥細胞を用いたELISAアッセイ法をモニターする。この発達は、産物1mgをメタノール1mLに溶解し、20mLのPBSにとり、そこに30体積の酸素水30μLを加えて使用直前に調製した4−クロロ−1−ナフトール溶液(SIGMA ALDRICH CHEMIE GMBH社、STENHEIM、ドイツ)を用いて行われる。
【0205】
結果は、KM8B6抗体は、8B6抗体のように、ガングリオシド抽出物をアルカリ処置しない場合に、O−アセチル化GD2のみを認識することを示している。
【0206】
14.神経系および腫瘍組織におけるGD2ガングリオシドおよびそのO−アセチル化型の分布の研究
【0207】
腫瘍サンプル(膠芽腫、神経芽細胞腫、黒色腫、肺癌)を外科切除により得た。ヒト末梢神経のサンプルは、筋皮神経の末端感覚分岐部、腓骨神経の側枝から採取した。これらは、診断に問題を生じさせる前角状態(正常知覚神経)または末梢神経障害を診断するためのサンプルである。体積0.5cm以下の組織サンプルを採取し、液体窒素の温度に冷却したイソペンタン中で凍結させる。60秒後にサンプルを取り出し、予め−70℃に冷却した凍結管に移す。凍結組織の10μM切片をクリオスタットでカットする。切片をSuoerfrost Gold+スライドガラス(VWR社)に回収する。切片を3分間風乾し、次いでアセトンで10分間固定し、再度風乾する。次いで、免疫組織化学的方法で分析するまで、切片を−20℃で保存する。組織サンプルの免疫染色は、以下の一次マウスmAbを用いて行った:
【0208】
GD2に特異的な一次抗体:
【0209】
GD2に特異的なmAb 10B8(IgG3、κ)
【0210】
GD2−O−Acに特異的な8B6 mAb(IgG3、κ)
【0211】
ネガティブコントロール用の試薬として使用する一次抗体:DNPに特異的なMCA2063mAb(IgG3、κ)(Serotec France社、Cergy Saint Christophe、フランス)
【0212】
被験組織サンプルにおけるこれらの抗体の結合の発達は、マウス一次抗体と使用するためのDakoCytomation Envision+ SystemのPeroxydase HRPキット(DAKO社、Glostrup、デンマーク)をメーカーの取扱説明書に従って用いて行った。次いで、水性マウント媒体Aquadex(VWR社)と共に、スライドとカバーガラスの間にサンプルをマウントする。次いで、倍率100倍および400倍の光学顕微鏡を用いた光学顕微鏡分析によって標識を確認する。各サンプルにつきランダムに選択した3つの顕微鏡フィールドのデジタル顕微鏡写真を分析する。
【0213】
様々な患者の全ての腫瘍サンプルで、膜および細胞質は10B8抗体および8B6抗体での標識に陽性であったが、健康細胞はこれらの抗体のいずれでも標識されなかった。MCA2063抗DNP抗体では標識は検出されなかった。
【0214】
全ての被験神経サンプルで、有髄線維節間部は10B8抗体で標識されたが、軸索および線維芽細胞は標識されていなかった。この標識は、8B6抗体では全くまたはほとんど検出できなかった。MCA2063抗体では標識は観察されなかった。
【0215】
15.O−アセチル化8B6およびKM8B6抗GD2抗体の細胞毒性の研究
【0216】
(a).標的細胞懸濁液の調製
【0217】
RPMI培地で培養した1×10個のIMR32ヒト神経芽細胞腫細胞を、1.85MBqのNa25ICrC存在下で37℃にて1時間インキュベートする。次いで、RPMIで細胞を3回洗浄し、遠心後、RPMIに再懸濁し、放射性物質の自発的な脱塩を測定するために4℃で30分間インキュベートする。
【0218】
最後の遠心後、細胞を5mLのRPMIに取り、濃度を2×10細胞/mLに調節する。
【0219】
(b).エフェクター細胞の調製
【0220】
自発的ドナーから、ヘパリンの入った血液試験管内にヒト血液を採取した。遠心による(1,800×g、30分間)Ficoll(登録商標)勾配で、全血液から末梢血液白血球を分離した。得られた細胞を洗浄するためにRPMI中で1500×gで3回遠心して、RPMIに再懸濁し、細胞濃度を5×10細胞/mLとした。
【0221】
(c).ADCC活性の測定
【0222】
Falcon社から入手したU底96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに、a)で得られた標的細胞懸濁液50μLを添加する。次いで、b)で得られたエフェクター細胞懸濁液100μLを添加する(すなわち、1ウェル当たり50000細胞)。標的細胞とエフェクター細胞数の比率は1:50である。次いで、8B6抗体、および人工修飾KM8B6抗体、およびリツキサン(登録商標)、κIgGl、ネガティブコントロールとして使用する抗CD20ヒト−マウス抗体を、濃度1μg/mLまたは10μg/mLで各ウェルに添加する。この混合物を37℃で4時間インキュベートする。遠心後、プレートを遠心し、γカウンターを用いて上清中の51Crの量を測定する。同じ手順で、抗体を含まない媒体とエフェクター細胞懸濁液の代わりの5N水酸化ナトリウム溶液とを加え、遊離した51Crの総量を測定する。次いで、以下の式を用いてADCCを計算する:
【0223】
〔数1〕
%ADCC活性=(上清中の51Cr−自発的に遊離した51Cr)/(全51Cr−自発的に遊離した51Cr)
【0224】
16.マウスリンパ腫の同質遺伝子モデルにおける8B6抗体の腫瘍活性
【0225】
GD2抗原を発現するマウスEL−4Tリンパ腫をマウスC57BL/6系統に皮下移植した同質遺伝子的なモデル(Zhang H、 Zhang S、 Cheung NK、 Ragupathi G、 Livingston PO;Antibodies against GD2 ganglioside can eradicate syngenic cancer micrometastases. Cancer Res. 1998、 58: 2844−9)における8B6抗体の抗腫瘍活性を測定した。これらのEL4細胞はO−アセチル化GD2抗原も発現する。A1グレードの承認を受けた動物小屋で飼育した24頭のマウスに、12週齢の時点で、PBSに懸濁した20×10個のEL−4細胞を皮下注射で投与した。マウス12頭のバッチを2つ構成した。バッチAのマウスには、70μgのmAb 8B6を200μLのPBS緩衝液でi.v.投与し、これはEL4細胞の注射後1日目から21日目まで3日間隔で行った。バッチBのマウスには、同じ手順で200μLのPBS溶液だけを投与した。次いで、腫瘍の体積を2日間隔で測定した。腫瘍体積は以下の式を用いて評価した:体積(mm)=長さ(mm)×幅(mm)×0.5(Zeng G、Li DD、Gao L、Birkle S、Bieberich E、Tokuda A、Yu RK;Alteration of ganglioside composition by stable transfection with antisense vectors against GD3−synthase gene expression. Biochemistry 1999 38: 8762−9)。体積>3000mmを示したマウスを屠殺する。
【0226】
得られた結果を図16に示す。PBSi.v.と投与したバッチBは非処置コントロールバッチに相当する(図16、プレートB)腫瘍は接種10日後から検出され始め、それに続き指数増殖を示し始める。接種20日後、2匹を除き全てのマウスの腫瘍が1000mmを超える。腫瘍が3000mmを超えたので、動物実験の規制に従って、30日目の前に全てのマウスを屠殺した。8B6抗体で処置したバッチAのマウス(図16、プレートA)では、腫瘍の発達の遅延が見られる。さらに、この抗体を投与されたマウスでは腫瘍の増殖が遅延する。接種20日後、処置した全てのマウスで腫瘍は1000mmを超えていない。30日後、非処置マウスが全て死亡したのに対し、8B6 mAbで処置したマウスは58%が生存している。40日後、処置したマウスの25%がまだ生存しており、50日後では、マウスの8%がまだ生存しており、明白な腫瘍を示さず、治癒したとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GD2ガングリオシドを認識せず、O−アセチル化GD2ガングリオシドを認識する抗体の、癌の治療のための使用であって、GD2ガングリオシドを認識する抗体を治療的投与に使用するときに認められる毒性がなく、前記抗体が、腫瘍細胞が発現するO−アセチル化GD2分子を認識し、末梢神経およびその他の正常神経組織の表面で発現するGD2分子は認識しないものである、使用。
【請求項2】
O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識する前記抗体が、O−アセチル化GD2に対して10リットル/molを超える親和性を有し、GD2自体に対してその10分の1より低い親和性を有するκ−IgGである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識する前記抗体が、モノクローナル抗体または前記抗体の断片である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識する前記抗体が、元の抗体の特性を修飾するため、特にその免疫原性を低減するため、またはその毒性活性を増大させるため、または注入後のそのクリアランスを早めるまたは遅らせるため、当業者に公知の遺伝学的技術を用いて数個のアミノ酸を他のアミノ酸に置換した前記元の抗体に相当する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識する前記抗体が、配列番号3、配列番号4および配列番号5で表されるアミノ酸配列を含んでなるH鎖可変領域の相補性決定領域を有し、配列番号6、配列番号7および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含んでなるL鎖可変領域の相補性決定領域を有する8B6抗体である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識する前記抗体が、キメラ抗体またはその断片である、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識する前記抗体が、ヒト抗体またはその断片である、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識する前記抗体が、配列番号3、配列番号4および配列番号5で表されるアミノ酸配列を含んでなるH鎖可変領域の相補性決定領域を有し、配列番号6、配列番号7および配列番号8で表されるアミノ酸配列を含んでなるL鎖可変領域の相補性決定領域を有するキメラまたはヒト化抗体である、請求項6、7または8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記癌が、神経芽細胞腫、黒色腫、膠芽腫、または小細胞肺癌である、請求項1〜8に記載の使用。
【請求項10】
前記抗体またはその断片が、分子Xに結合しており、該分子Xが、毒性分子、薬剤、プロドラッグ、または特異性に関連しない二次抗体であることを特徴とする、請求項1〜9に記載の使用。
【請求項11】
前記毒性分子が、毒性の化学分子、生物学的分子、または放射性分子であり、前記分子が、O−アセチル化GD2ガングリオシドを発現する腫瘍細胞を死滅させることを意図したものである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記抗体が、糖の付加でFc領域が変異しており、これによって免疫細胞および補体系分子の活性化を調節する、請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
O−アセチル化型のGD2ガングリオシドのみを認識するモノクローナル抗体であって、元の抗体の特性を修飾するため、特にその免疫原性を低減するため、またはその毒性活性を増大させるため、または注入後のそのクリアランスを早めるまたは遅らせるため、当業者に公知の遺伝学的技術を用い、数個のアミノ酸を他のアミノ酸に置換した前記元の抗体に相当する、モノクローナル抗体。
【請求項14】
キメラまたはヒト化された、GD2ガングリオシドを認識せずO−アセチル化型のGD2ガングリオシドを認識するモノクローナル抗体またはその断片であって、H鎖可変領域の相補性決定領域が、配列番号3、配列番号4、および配列番号5で表されるアミノ酸配列を有し、L鎖可変領域の相補性決定領域が、配列番号6、配列番号7および配列番号8で表されるアミノ酸配列を有する、請求項13に記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【請求項15】
キメラまたはヒト化された、配列番号1で表される推定アミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有し、配列番号2で表される推定アミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有する、請求項14に記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【請求項16】
CHO細胞株を用いて得られる、請求項13、14、または15のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【請求項17】
前記抗体またはその断片が、分子Xに結合しており、前記分子Xが、毒性分子、薬剤、プロドラッグ、または特異性に関係しない二次抗体である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の抗体に由来する医薬分子。
【請求項18】
前記毒性分子が、毒性の化学分子、生物学的分子、または放射性分子であり、前記分子が、O−アセチル化GD2ガングリオシドを発現する腫瘍細胞を死滅させることを意図したものである、請求項17に記載の医薬分子。
【請求項19】
前記治療分子が、糖の付加でFc領域が変異しており、これによって免疫細胞および補体系分子の活性化を調節する、請求項17〜18に記載の医薬分子。
【請求項20】
腫瘍細胞の表面にO−アセチル化GD2ガングリオシドを発現する癌を診断するための分子であって、前記分子が請求項13〜16のいずれか一項に記載の抗体またはその断片に由来し、前記抗体または前記断片が、蛍光または放射活性により前記抗体を検出するための薬剤に結合している、分子。
【請求項21】
請求項13〜16のいずれか一項に記載の抗体をコードするDNA配列。
【請求項22】
プロモーターに機能的に連結された、請求項21のDNA配列を含んでなる発現ベクター。
【請求項23】
請求項22の発現ベクターを含んでなる細胞。
【請求項24】
前記細胞が動物細胞である、請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
請求項13〜16のいずれか一項に記載の抗体を産生する、非ヒト形質転換体。
【請求項26】
O−アセチル化GD2ガングリオシドに対する抗体の製造方法であって、
好適な条件下で、請求項23〜25のいずれか一項に記載の細胞または非ヒト形質転換体中で請求項21に記載のDNA配列を発現させ、前記抗体を回収することを含んでなる、方法。
【請求項27】
請求項23〜25のいずれかに記載の細胞または非ヒト形質転換体が、抗体の蓄積する条件下で培養される、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−505909(P2010−505909A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531833(P2009−531833)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060750
【国際公開番号】WO2008/043777
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(505028222)ユニベルシテ ドゥ ナント (3)
【Fターム(参考)】