説明

癌を特徴付ける、制御する、診断する、および処置するための組成物ならびに方法

本発明は、癌を特徴付ける、制御する、診断する、および処置するための組成物ならびに方法に関する。例えば、本発明は、乳癌細胞を含む癌細胞の特定のクラスの腫瘍形成を阻害する、および転移を予防するための組成物ならびに方法を提供する。本発明はまた、腫瘍形成を制御する化合物を同定するための系および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、National Institutes of Healthからの認可番号CA075136-06を受けて一部、なされた。政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【0002】
発明の分野
本発明は、癌を特徴付ける、制御する、診断する、および処置するための組成物ならびに方法に関する。例えば、本発明は、乳癌細胞を含む癌細胞の特定のクラスの腫瘍形成を阻害する、および転移を予防するための組成物ならびに方法を提供する。本発明はまた、腫瘍形成を制御する化合物を同定するための系および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
癌は、死亡の主な原因の一つであり、転移性癌は、しばしば、不治である6。最新治療は、腫瘍退縮を生じ得るが、それらは、転移性乳癌のような一般的な腫瘍をまれにしか治さない6。固形腫瘍は、癌細胞の不均一な集団からなる。急性骨髄性白血病(AML)のように7、たいていの悪性ヒト乳房腫瘍において、癌細胞の小さな別個の集団は、免疫不全マウスに腫瘍を形成する能力が強化されていることが、最近、実証された1。以前には、試験された9つの腫瘍のうち8つにおいて、CD44+CD24-/low系統-集団は、免疫不全マウスへ注入された場合、腫瘍を形成する能力を有することが示された。「腫瘍形成性」細胞と呼ばれるこれらの細胞のわずか200個が、マウスにおいて一貫して腫瘍を形成した。対照的に、腫瘍における癌細胞の大部分は、代わりの表現型を有する「非腫瘍形成性」細胞からなる。これらの細胞は、104個ほどもの細胞が注入された場合でさえも、NOD/SCIDマウスに腫瘍を形成できなかった1。いくつかの腫瘍において、腫瘍形成性細胞のさらなる濃縮は、癌細胞のESA+Cd44+CD24-/low系統-集団を単離することにより可能であった。腫瘍形成性癌細胞を前向きに単離する能力は、これらの細胞における治療標的を表す重要な生物学的経路の研究を可能にする。当技術分野は、癌を特徴付ける、制御する、診断するおよび処置するためのさらなる系ならびに方法を必要としている。
【発明の開示】
【0004】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および句が下に定義されている:
【0005】
本明細書に用いられる場合、用語「抗癌剤」、「通常の抗癌剤」または「癌治療薬」は、癌の処置に用いられる(例えば、哺乳動物において)、任意の治療剤(例えば、化学療法化合物および/または分子治療化合物)、放射線治療、外科的処置を指す。
【0006】
本明細書に用いられる場合、用語「薬物」および「化学療法剤」は、生理学的系(例えば、対象、またはインビボ、インビトロもしくはエクスビボの細胞、組織および器官)において疾患または病理学的状態を診断、処置または予防するために用いられる薬理活性のある分子を指す。薬物は、薬物が投与された生きている生物体、組織、細胞またはインビトロ系の生理を変化させることにより作用する。用語「薬物」および「化学療法剤」は、抗過剰増殖性および抗悪性腫瘍性化合物、加えて他の生物学的治療化合物を含むことが意図される。
【0007】
本明細書に用いられる場合、用語「プロドラッグ」は、放出するために、または「プロドラッグ」を活性「ドラッグ」へ変換する(例えば、酵素的に、機械的に、電磁気的になど)ために、標的の生理学的系内で生体内変換(例えば、自発的または酵素的のいずれか)を必要とする親「ドラッグ」分子の薬理不活性の誘導体を指す。「プロドラッグ」は、安定性、毒性、特異性の欠如、または限定された生物学的利用能に関連した問題を克服するように設計される。例示的な「プロドラッグ」は、活性「ドラッグ」分子それ自身、および化学的マスキング基(例えば、「ドラッグ」の活性を可逆性に抑制する基)を含む。いくつかの好ましい「プロドラッグ」は、代謝条件下で切断可能な基を有する化合物の変異体または誘導体である。例示的な「プロドラッグ」は、それらが、生理学的条件下で加溶媒分解を受ける、または酵素分解もしくは他の生化学的変換(例えば、リン酸化、水素付加、脱水素、グリコシル化など)を受ける場合、インビボまたはインビトロで薬学的活性になる。プロドラッグは、しばしば、哺乳動物生物体において、可溶性、組織適合性、または遅延型放出の利点を提供する。(例えば、Bundgard, Design of Prodrugs, pp. 7-9, 21-24, Elsevier, Amsterdam (1985); およびSilverman, The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, pp. 352-401, Academic Press, San Diego, CA (1992)を参照)。一般的な「プロドラッグ」は、適切なアルコール(例えば、低級アルカノール)と親の酸の反応により調製されるエステル、アミン(例えば、上記のような)または反応してアシル化塩基誘導体を形成する塩基性基(例えば、低級アルキルアミド)と親の酸化合物の反応により調製されるアミド、のような酸誘導体を含む。
【0008】
「有効量」とは、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与において投与され得る。
【0009】
本明細書に用いられる場合、用語「投与」とは、生理学的系(例えば、対象、またはインビボ、インビトロもしくはエクスビボの細胞、組織および器官)へ薬物、プロドラッグ、抗体もしくは他の作用物質、または治療的処置を与えるという行為を指す。人体への例示的な投与経路は、注射(例えば、静脈内に、皮下に、腫瘍内に、腹腔内になど)などにより、眼(眼の)、口(経口の)、皮膚(経皮的な)、鼻(鼻の)、肺(吸入する)、口腔粘膜(頬の)、耳を介してであり得る。
【0010】
「同時投与」とは、生理学的系(例えば、対象、またはインビボ、インビトロもしくはエクスビボの細胞、組織および器官)への1つより多い化学剤または治療的処置(例えば、放射線治療)の投与を指す。それぞれの化学剤および治療的処置の「同時投与」は、同時に、または任意の時間的順番もしくは物理的組み合わせで、あり得る。
【0011】
本明細書に用いられる場合、用語「生物学的利用能」は、生理学的系(例えば、対象、またはインビボ、インビトロもしくはエクスビボの細胞、組織および器官)への投与後、生物学的標的流体(例えば、血液、細胞質、CNS液など)、組織、細胞小器官または細胞間隙へ吸収され得る作用物質の能力の任意の尺度を指す。
【0012】
本明細書に用いられる場合、用語「体内分布」は、生理学的系への投与後、細胞小器官、細胞(例えば、インビボまたはインビトロ)、組織、器官、または生物体における作用物質の位置を指す。
【0013】
本明細書に用いられる場合、「過剰増殖性疾患」とは、動物における増殖性細胞の局在性集団が、正常な成長の通常の制限により支配されない任意の状態を指す。過剰増殖性疾患の例は、腫瘍、新生物、リンパ腫などを含む。新生物は、それが浸潤または転移を起こさない場合には良性であり、それがこれらのいずれかを起こす場合には、悪性であると言われている。「転移性」細胞または組織とは、細胞が、隣接する身体構造に侵入し、かつ破壊することができることを意味する。肥厚化は、構造または機能における有意な変化なしに組織または器官における細胞数の増加を含む、細胞増殖の形態である。化生は、完全に分化した細胞の一つの型が、分化した細胞のもう一つの型と置き換わる、制御された細胞成長の形態である。化生は、上皮または結合組織細胞に起こり得る。典型的な化生は、やや無秩序な化生性上皮を含む。
【0014】
本明細書に用いられる場合、用語「新生物性疾患」は、良性(非癌性)もしくは悪性(癌性)である細胞または組織の任意の異常な成長を指す。
【0015】
本明細書に用いられる場合、用語「抗新生物薬」は、標的にされる(例えば、悪性)新生物の増殖、成長、または蔓延を阻止する任意の化合物を指す。
【0016】
本明細書に用いられる場合、用語「退縮」は、基礎的な非病原性の例示的対象、細胞、組織または器官と比較して、罹患した対象、細胞、組織または器官の、非病的またはより少ない病理学的状態への回復を指す。例えば、腫瘍の退縮は、腫瘤の減少、および腫瘍の完全な消失を含む。
【0017】
本明細書に用いられる場合、用語「予防する」、「予防すること」、および「予防」は、対象において過剰増殖性または新生物性細胞の発生における減少を指す。予防は、完全であり得る、例えば、対象における過剰増殖性または新生物性細胞の完全欠如であり得る。予防はまた、対象における過剰増殖性または新生物性細胞の発生が、本発明がなければ発生したであろうものより少ないような、部分的であり得る。
【0018】
本明細書に用いられる場合、用語「インビトロ」は、人工的環境、および人工的環境内で生じる過程または反応を指す。インビトロの環境は、限定されるわけではないが、試験管および細胞培養物からなり得る。用語「インビボ」は、自然環境(例えば、動物または細胞)、および自然環境内で生じる過程または反応を指す。
【0019】
本明細書に用いられる場合、用語「細胞培養物」は、任意のインビトロの細胞の培養物を指す。この用語内に含まれるのは、卵母細胞および胚を含む、連続継代細胞系(例えば、不死の表現型を有する)、初代細胞培養物、有限細胞系(例えば、非形質転換細胞)、およびインビトロで維持された任意の他の細胞集団である。
【0020】
本明細書に用いられる場合、用語「対象」は、本発明の方法により処置されるべき生物体を指す。そのような生物体は、限定されるわけではないが、ヒトおよび獣医学的動物(イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギなど)を含む。本発明に関して、用語「対象」は、一般的に、処置を受けるであろう、または処置を受けた個体を指す。
【0021】
本明細書に用いられる場合、用語「診断される」は、疾患の、それの徴候および症状、または遺伝的分析、病理学的分析、組織学的分析などによる認識を指す。
【0022】
本明細書に用いられる場合、用語「結合について競合する」は、第二分子が結合するのと同じ標的に結合するという活性を有する第一分子に関して用いられる。第一分子による結合の効率(例えば、動力学または熱力学)は、第二分子による標的結合の効率、と同じ、またはより高い、またはより低くくあり得る。例えば、標的への結合についての平衡結合定数(Kd)は、2つの分子について異なり得る。
【0023】
本明細書に用いられる場合、用語「アンチセンス」は、特定のRNA配列(例えば、mRNA)に相補的である核酸配列(例えば、RNA、ホスホロチオネートDNA)に関して用いられる。この定義内に含まれるのは、低分子干渉RNAまたはマイクロRNAのような遺伝子発現を制御する分子を含む、天然または合成のアンチセンスRNA分子である。
【0024】
用語「試験化合物」は、身体の機能の病害、疾病、疾患、障害を処置もしくは予防する、またはそうでなければ、試料の生理学的もしくは細胞状態を変化させるために用いられ得る、任意の化学的実体、薬、薬物などを指す。試験化合物は、既知および可能性のある治療化合物の両方を含む。試験化合物は、本発明のスクリーニング方法を用いることにより治療に役立つことが決定され得る。「既知の治療化合物」は、そのような処置または予防において有効であることが示されている(例えば、動物試験、またはヒトへの投与に関する先行実験を通して)治療化合物を指す。好ましい態様において、「試験化合物」は、抗癌剤である。特に好ましい態様において、「試験化合物」は、細胞においてアポトーシスを誘導する抗癌剤である。
【0025】
本明細書に用いられる場合、用語「精製された」、または「精製すること」は、試料から望ましくない成分の除去を指す。本明細書に用いられる場合、用語「実質的に精製された」は、それらの自然環境から取り出され、単離または分離されて、それらが天然で付随している他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは少なくとも75%含まない、および最も好ましくは少なくとも90%含まない分子(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、化学化合物)を指す。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」は、それゆえに、実質的に精製されたポリヌクレオチドである。
【0026】
本明細書に用いられる場合、「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」は、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびそれらの断片または部分、および一本鎖または二本鎖であり得るゲノムもしくは合成起源のDNAまたはRNAを指し、かつセンス鎖またはアンチセンス鎖を表す。本明細書に用いられる場合、用語「をコードする核酸分子」、「をコードするDNA配列」、「をコードするDNA」、「をコードするRNA配列」、および「をコードするRNA」は、デオキシリボ核酸またはリボ核酸に沿ったデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの順序または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの順序は、そのmRNAから翻訳されたポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。DNAまたはRNA配列は、従って、アミノ酸配列についてコードする。
【0027】
用語「遺伝子」は、ポリペプチドまたは前駆体(例えば、プロインスリン)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を指す。ポリペプチドは、完全長コード配列により、または完全長もしくは断片の所望の活性もしくは機能的性質(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達など)が保持される限り、コード配列の任意の部分により、コードされ得る。その用語はまた、構造遺伝子のコード領域を含み、かつ遺伝子が完全長mRNAの長さに対応するように、コード領域へ5'末端および3'末端の両方に隣接して、いずれの末端にも約1 kbまたはそれ以上の間、位置する配列を含む。コード領域の5'側に位置し、かつmRNA上に存在する配列は、5'非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3'側または下流に位置し、かつmRNA上に存在する配列は、3'非翻訳配列と呼ばれる。用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNA型およびゲノム型の両方を含む。遺伝子のゲノム型またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)へ転写される遺伝子のセグメントであり、イントロンは、エンハンサーのような制御エレメントを含み得る。イントロンは、核または一次転写産物から除去される、または「スプライスされて除かれ」、イントロンは、それゆえに、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物に存在しない。mRNAは、新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の配列または順序を特定するように翻訳中に機能する。
【0028】
本明細書に用いられる場合、用語「外因性遺伝子」は、宿主生物体もしくは細胞に天然では存在しない、または宿主生物体もしくは細胞へ人工的に導入されている遺伝子を指す。
【0029】
本明細書に用いられる場合、用語「ベクター」は、適切な制御エレメントと付随している場合、複製の能力があり、かつ細胞間で遺伝子配列を移動することができる、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどのような任意の遺伝要素を指す。従って、その用語は、クローニングおよび発現媒体、加えてウイルスベクターを含む。
【0030】
本明細書に用いられる場合、用語「遺伝子発現」は、遺伝子にコードされた遺伝情報を遺伝子の「転写」により(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素的作用を介して)RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNAまたはsnRNA)へ、および遺伝子をコードするタンパク質について、mRNAの「翻訳」によりタンパク質へ、変換する過程を指す。遺伝子発現は、その過程における多くの段階で制御され得る。「上方制御」または「活性化」とは、遺伝子発現産物(すなわち、RNAまたはタンパク質)の産生を増加させる制御を指し、一方、「下方制御」または「抑圧」とは、産生を減少させる制御を指す。上方制御または下方制御に関与する分子(例えば、転写因子)は、しばしば、それぞれ、「アクチベーター」および「リプレッサー」と呼ばれる。
【0031】
本明細書に用いられる場合、用語「抗原結合タンパク質」は、特定の抗原に結合するタンパク質を指す。「抗原結合タンパク質」は、限定されるわけではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体およびヒト化抗体、Fab断片、F(ab')2断片、およびFab発現ライブラリーを含む免疫グロブリンを含む。当技術分野において公知の様々な方法が、ポリクローナル抗体の産生のために用いられる。抗体の産生について、限定されるわけではないが、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含む、様々な宿主動物が、所望のエピトープに対応するペプチドの注入により免疫され得る。好ましい態様において、ペプチドは、免疫原性担体(例えば、ジフテリアトキソイド、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはキーホールリンペットヘモシニアン(KLH))へ結合される。様々なアジュバントは、限定されるわけではないが、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシニアン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guerin))およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)のような有用の可能性のあるヒトアジュバントを含め、宿主種に依存して、免疫学的応答を増加させるために用いられる。
【0032】
モノクローナル抗体の調製について、培養中の連続継代細胞系により抗体分子の産生を与える任意の技術が用いられ得る(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY参照)。これらは、限定されるわけではないが、KohlerおよびMilstein(Kohler and Milstein, Nature, 256:495-497 (1975))により最初に開発されたハイブリドーマ技術、加えて、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えば、Kozbor et al., Immunol. Today, 4:72 (1983))、およびヒトモノクローナル抗体を産生し得るEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 (1985))を含む。
【0033】
本発明により、一本鎖抗体の作製について記載された技術(U.S. 4,946,778;参照として本明細書に組み入れられる)が、所望されるとおり特定の一本鎖抗体を作製するように適応され得る。本発明の追加の態様は、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にするFab発現ライブラリーの構築(Huse et al., Science, 246:1275-1281 (1989))のために当技術分野において公知の技術を利用する。
【0034】
抗体分子のイディオタイプ(抗原結合領域)を含む抗体断片は、公知の技術により作製され得る。例えば、そのような断片は、限定されるわけではないが、以下のものを含む:抗体分子のペプシン消化により作製され得るF(ab')2断片;F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより作製され得るFab'断片、ならびにパパインおよび還元剤で抗体分子を処理することにより作製され得るFab断片。
【0035】
抗原結合タンパク質をコードする遺伝子は、当技術分野において公知の方法により単離され得る。抗体の産生において、所望の抗体についてのスクリーニングは、当技術分野において公知の技術(例えば、放射性免疫測定法、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、「サンドイッチ」免疫測定法、免疫放射線測定法、ゲル拡散沈降素反応法、免疫拡散測定法、インサイチュー免疫測定法(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位体標識)、ウェスタンブロット法、沈降反応法、凝集測定法(例えば、ゲル凝集測定法、赤血球凝集測定法など)、補体結合測定法、免疫蛍光測定法、プロテインA測定法、および免疫電気泳動測定法など)などにより達成され得る。
【0036】
本明細書に用いられる場合、用語「調節する」は、限定されるわけではないが、細胞成長、増殖、浸潤、血管形成、アポトーシスなどを含む、細胞機能の局面に影響を及ぼし得る(例えば、促進し得るまたは遅延させ得る)化合物の活性を指す。
【0037】
発明の概要
本発明は、癌を特徴付ける、制御する、診断するおよび処置するための組成物ならびに方法に関する。例えば、本発明は、乳癌細胞を含む癌細胞の特定のクラスの腫瘍形成を阻害する、および転移を予防するための組成物ならびに方法を提供する。本発明はまた、腫瘍形成を制御する化合物を同定するための系および方法を提供する。
【0038】
例えば、本発明は、腫瘍試料において腫瘍形成性細胞の存在を同定するための研究および臨床診断方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、腫瘍形成性細胞に特徴的な1つもしくは複数(例えば、2、3、4、・・・)のマーカーまたは性質(例えば、非腫瘍形成性細胞の特徴を示さない1つもしくは複数のマーカーまたは性質)を検出する段階を含む。いくつかの好ましい態様において、1つまたは複数のマーカーは、限定されるわけではないが、Notch4の発現、抗Notch4抗体への曝露による細胞死、Manic Fringeの発現、NotchリガンドDeltaのその非腫瘍形成性細胞と比較して変化した発現、Jaggedの発現、およびドミナントネガティブなアデノウイルスベクターdnMAML1への曝露による細胞死を含む。本発明は、細胞の性質に制限されないが、いくつかの好ましい態様において、細胞は、乳癌腫瘍由来である。
【0039】
いくつかの態様において、腫瘍形成性細胞の同定は、対象についての処置方法を選択する際に用いられる。例えば、いくつかの態様において、処置方法は、Notch4経路インヒビターの対象への投与を含む。他の態様において、処置方法は、ミコトンドリアのアポトーシスを引き起こす薬物(例えば、BakおよびBaxのレギュレーター、Bcl-2およびBclXLのレギュレーター、電子伝達のレギュレーター − 例えば、参照としてその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願第20030119029号などを参照)の投与を含む。いくつかの態様において、処置方法は、γ-セクレターゼインヒビターの対象への投与を含む。γ-セレクターゼインヒビターは、限定されるわけではないが、それぞれが参照としてその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願第20030216380号、第20030135044号、第20030114387号、第20030100512号、第20030055005号、第20020013315号および米国特許第6,448,229号に記載されたもの、加えて市販されているインヒビター(例えば、Calbiochem製)を含む。いくつかの態様において、処置方法は、Manic Fringeインヒビターの対象への投与を含む。Manic Fringeインヒビターは、限定されるわけではないが、抗Manic Fringe抗体、Manic Fringe発現を標的とされるsiRNA分子、Manic Fringeを阻害する低分子などを含む。
【0040】
本発明はまた、以下の段階を含む、化合物を選択するまたは特徴付ける(例えば、基礎研究、薬剤スクリーニング、薬物試験、モニタリング治療などのために)ための方法を提供する:
a)腫瘍形成性細胞(例えば、乳腺細胞)を含む試料を供給する段階;
b)試料を試験化合物に曝露する段階;および
c)試験化合物に応答しての細胞における変化を検出する段階。
いくつかの態様において、試験化合物は、抗体(Notchシグナル伝達経路を制御する抗体)を含む。いくつかの態様において、化合物は、抗新生物性化合物を含む。いくつかの態様において、第二または追加の化合物が、同時投与される(例えば、既知の抗新生物性治療化合物)。いくつかの態様において、検出段階は、その腫瘍形成性細胞の細胞死を検出する段階を含む(例えば、カスパーゼなどのようなアポトーシスマーカーの検出)。
【0041】
本発明はまた、腫瘍形成性細胞を有する対象を同定する、および同定された腫瘍形成性細胞の性質に基づいて適切な処置方法でその対象を処置するための方法を提供する。例えば、本発明は、以下の段階を含む、腫瘍形成性細胞(例えば、乳腺細胞)を有する対象を処置するための方法を提供する:
a)対象において腫瘍形成性乳腺細胞の存在を同定する段階;
b)腫瘍形成性細胞の性質を同定するために腫瘍形成性細胞に特徴的な1つもしくは複数のマーカーまたは性質を同定する段階;および、
c)腫瘍形成性細胞の性質に基づいて治療方法を選択する段階。
いくつかの態様において、腫瘍形成性細胞が、Notch4を発現させることと特徴付けられる場合、または、例えば、腫瘍形成性細胞がNotch4を発現させないが、隣接する非腫瘍形成性細胞がNotch4を発現させる場合、方法は、Notch4経路インヒビターまたは他の適切な治療用物質の対象への投与を含む。いくつかの態様において、方法は、対象からの腫瘍の外科的除去およびNotch4経路インヒビターまたは他の適切な治療化合物の対象への投与(例えば、残存する腫瘍形成性細胞により引き起こされる腫瘍形成または転移を予防するために)を含む。いくつかの態様において、方法は、Notch4経路インヒビターまたは他の適切な治療化合物、および第二の抗新生物薬の対象への同時投与を含む。
【0042】
本発明はさらに、例えば、Notch経路インヒビターまたは他の適切な治療化合物を、転移を有することが疑われる(例えば、転移を受けていることが疑われる、または転移のリスクを有することが疑われる)対象へ投与する段階を含む、転移を予防するまたは低減させる方法を提供する。いくつかの態様において、Notch経路インヒビターは、抗Notch4抗体を含む。いくつかの態様において、化合物は、ミトコンドリアのアポトーシスを引き起こす薬物を含む。いくつかの態様において、化合物は、γ-セクレターゼインヒビターである。いくつかの態様において、投与は、固形腫瘍(例えば、乳房腫瘍)の対象からの除去と組み合わせて行われる。
【0043】
本発明はまた、以下の段階を含む、癌(例えば、乳癌)を有する対象において腫瘍形成性細胞を低減させるまたは排除する方法を提供する:γ-セクレターゼインヒビターを対象へ投与する(例えば、腫瘍形成性細胞が殺される、または増殖するもしくは転移を引き起こすのを阻害されるような条件下で)段階。
【0044】
本発明はまた、以下の段階を含む、癌(例えば、乳癌)を有する対象において腫瘍形成性細胞を低減させるまたは排除する方法を提供する:Manic Fingeインヒビターを対象へ投与する(例えば、腫瘍形成性細胞が殺される、または増殖するもしくは転移を引き起こすのを阻害されるような条件下で)段階。
【0045】
発明の詳細な説明
固形腫瘍は、新しい腫瘍を形成するそれらの能力において異なる癌細胞の不均一な集団からなる。腫瘍を形成する能力を有する癌細胞(すなわち、腫瘍形成性癌細胞)およびこの能力を欠く癌細胞(すなわち、非腫瘍形成性癌細胞)は、表現型に基づいて識別され得る1。腫瘍形成性癌細胞および正常な幹細胞は、自己再生の過程を通してそれら自身を複製する基本的能力を共有するため、腫瘍形成性癌細胞の特徴付けおよび同定を可能にするために腫瘍形成性癌細胞における可能性のある自己再生経路を研究された本発明の開発中に行われた実験は、癌治療用物質をスクリーニングするための系を提供し、かつ治療標的およびそれらの標的へ向けられる化合物を提供する。
【0046】
従って、本発明は、癌を特徴付ける、制御する、診断するおよび処置するための組成物ならびに方法に関する。例えば、本発明は、乳癌細胞を含む癌細胞の特定のクラスの腫瘍形成を阻害する、および転移を予防するための組成物ならびに方法を提供する。本発明はまた、腫瘍形成を制御する化合物を同定するための系および方法を提供する。
【0047】
例えば、本発明は、腫瘍形成性細胞を同定し、かつ腫瘍形成性細胞の存在に関連した疾患(過剰増殖性疾患)または生物学的事象(例えば、腫瘍転移)を診断するための方法を提供する。特に、本発明は、腫瘍形成性である癌内の細胞のクラスを同定し、それらの存在が、例えば、対象に医学的処置を受けさせるべきかどうかを選択する、適切な処置方法を選択する、治療方法の成功もしくは進行をモニターする(例えば、薬物試験において、または個人に合わせた継続中の治療を選択する際に)、または新しい治療化合物もしくは治療標的についてスクリーニングする際測定され得るように、そのような細胞の検出可能な特徴を提供する。
【0048】
本発明はまた、治療組成物および方法を提供する。特に、本発明は、腫瘍形成および転移を調節する、生物学的標的ならびにそれらの生物学的標的のレギュレーターを同定する。そのような治療方法は、例えば、単独で、または他の治療方法(例えば、他の抗新生物薬の同時投与)もしくは診断工程(例えば、本発明の治療方法を受け入れられる患者は、本発明の診断方法により同定される)と組み合わせて、用いられ得る。
【0049】
本発明はまた、機能が腫瘍形成に必要であり、新規な薬物標的を提供するタンパク質を同定するために、腫瘍形成性細胞により発現される遺伝子およびタンパク質を同定するための系ならびに方法を提供する。
【0050】
いくつかの態様において、Notchタンパク質およびNotchシグナル伝達経路のレギュレーターの発現は、腫瘍形成性細胞を同定するために用いられる。Notchタンパク質および/またはNotchシグナル伝達経路のレギュレーターはまた、研究、薬剤スクリーニング、および治療方法に使用を見出す。例えば、Notch発現または機能(例えば、Notch4)のインヒビターは、細胞増殖、過剰増殖性疾患発生または進行、および癌転移を予防するまたは低下させる際に使用を見出す。いくつかの態様において、インヒビターは、固形腫瘤の除去後、残存する過剰増殖性細胞の増殖および転移を低下させるのを助けるために利用される。例えば、非腫瘍形成性細胞(固形腫瘤の切除において除去され得る細胞)は、隣接細胞が増殖を起こすのを防ぐ因子を発現させることが、本明細書で示されている。従って、腫瘍除去後の適切な治療的処置は、この機能の代替を提供し、残存する腫瘍形成性細胞の増殖および転移を抑制する。
【0051】
本発明は、腫瘍形成性細胞型のいずれの特定の型にも限定されないし、また腫瘍形成を制御する際に用いられる化合物もしくは因子の性質にも本発明は限定されない。従って、本発明は、乳癌細胞および抗体および腫瘍形成のアデノウイルスのインヒビターを用いて下に例証されているが、当業者は、本発明がこれらの例証的実施例に限定されないことは認識しているものと思われる。例えば、限定されるわけではないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜種、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞癌、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫を含む、様々な新生物性状態が本発明の教示から恩恵を受けることが企図される。
【0052】
同様に、本発明は、低分子干渉RNA分子、低分子薬物などを含む、抗体、タンパク質、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、参照としてその全体が本明細書に組み入れられる、Notch4アンチセンスオリゴヌクレオチドを記載する、米国特許第6,379,925号を参照)を含め、腫瘍形成を制御するために様々な作用物質の使用を企図する。
【0053】
Notch経路は、胚細胞および様々な正常な幹細胞の維持にとって重要であり2,3、Notch突然変異は、マウスにおいて乳癌へと導く4,5。本発明は、癌(例えば、ヒト乳癌)のサブセットにおいて、NotchアゴニストDeltaが、腫瘍形成性乳癌細胞に生存シグナルを供給し、それらがインビトロでコロニーを形成するのを可能にすることを実証している。
【0054】
Notchシグナル伝達のインヒビター(NumbおよびNumb様;またはNotch活性化を遮断する抗体もしくは低分子のような)は、本発明の方法において腫瘍形成性細胞を阻害するために用いられ得る。この様式において、Notch経路は、腫瘍形成性細胞の増殖を絶つまたは阻害するように改変される。例えば、Notch4を認識する抗体は、インビトロおよびインビボにおいて、乳癌腫瘍細胞の成長を遮断し(例えば、参照としてその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許公開第20020119565号を参照)、本明細書で、例えば、腫瘍転移を予防する際に(例えば、固形腫瘍除去後)、使用を見出す。さらに、図6および下の実施例の部に示されているように、γ-セクレターゼインヒビターの投与が、腫瘍形成性細胞を処置する際に使用を見出し、Notch4を直接的には標的としない様式でのNotch経路の阻害が、同様に、本発明の方法において使用を見出す。同様に、図5に示されているように、ドミナントネガティブなMastermind様-1アデノウイルス(dnMAML1Ad)、Notch転写活性化のインヒビターの投与が腫瘍形成性細胞を処置する際に使用を見出す。
【0055】
それどころか、可溶性Delta(Han et al., Blood 95(5): 161625 (2000))、Notchリガンドを用いるNotchの刺激がインビトロで腫瘍細胞の成長および生存を促進したことが、以前に見出されている。従って、Notch経路の刺激は癌細胞の成長および生存を促進することが以前に見出されている。
【0056】
本発明の開発中に行われた実験は、Notchシグナル伝達のドミナントネガティブなNotchインヒビターまたはNotch4に対するブロッキング抗体による阻害が、それぞれ、試験された5つの腫瘍のうちの5つ由来、または3つの腫瘍のうちの2つ由来の、癌細胞においてミトコンドリアの死の経路を介してアポトーシスを誘導したことを示した。場合によっては、腫瘍形成性および非腫瘍形成性癌細胞は、Notch、Notchリガンド、およびNotch修飾因子のFringeファミリーのメンバーの発現において異なった。腫瘍形成性癌細胞の生存度が抗Notch4抗体により影響を及ぼされなかった腫瘍において、Notch4発現は、非腫瘍形成性癌細胞において検出されたが、腫瘍形成性癌細胞においては検出されなかった。従って、乳癌の一部の場合においては、Notchシグナル伝達は、癌細胞の腫瘍形成性サブセットの成長を調節することができること、ならびに腫瘍形成性および非腫瘍形成性癌細胞は、このシグナル伝達経路の成分を異なって発現させることを実験は実証している。これらの結果は、腫瘍形成性癌細胞の予想される同定が、これらの細胞の重要な機能に影響を及ぼし得る因子の同定を可能にすることを実証している。この分集団は腫瘍形成を作動させるため、これらの細胞における標的の同定は、より効果的な癌治療を提供する。
【0057】
腫瘍が一般的な細胞表面表現型を有する腫瘍形成性細胞の小集団を含むという観察は、固形腫瘍生物学を理解するために、およびまた効果的な癌治療の開発のために、重要な意味を有する36。最新の癌処置が転移性疾患を治すことができないことは、腫瘍形成性細胞の効果的でない殺傷のせいである可能性がある。腫瘍形成性細胞が作用物質により残される場合には、腫瘍は退縮し得るが、残存する腫瘍形成性細胞は腫瘍再発を作動させるだろう。腫瘍形成性集団に焦点を合わせることにより、自己再生および生存のような癌細胞の腫瘍形成性集団における本質的な生物学的機能に関与する重要なタンパク質を同定することができる。より効果的に乳癌を処置する可能性のある治療標的の同定のための腫瘍形成性細胞の予想される同定の重要性は、T1およびT4、2個の異なる対象から得られた腫瘍試料により例証されている。Notchシグナル伝達がdnMAML1アデノウイルスにより阻害され、かつ両方の腫瘍がNotch4を発現させている場合、両方の腫瘍は死滅するが、抗Notch4抗体に曝露された場合、T1クローン原性細胞のみが死滅する。これは、T1腫瘍形成性細胞はNotch4を発現させていたが、Notch1およびNotch2を発現した腫瘍形成性T4細胞においてNotch4の発現は検出することができなかったという観察により説明され得る。Notchリガンドは腫瘍形成性癌細胞において低レベルで発現されているという観察は、腫瘍生物学のために意味を有する。間質細胞-癌細胞の相互作用が腫瘍の成長および転移において重要な役割を果たし得ることが、長い間、仮定されてきた(37に概説されている)。Notch活性化はクローン原性細胞の成長を促進するため、特定の組織における細胞によるNotchリガンドの発現は、その特定部位への腫瘍の伝播に寄与し得る。
【0058】
Notch受容体の活性化は、以前に、乳癌に結びつけられており、Notchシグナル伝達が、活性化されたRas発癌遺伝子をトランスフェクションされた細胞の形質転換に役割を果たしているが、新規のヒト乳癌におけるそれの役割は知られていない17-20。本発明の開発中に行われた実験は、T1(Tumor 1)と名付けられた、患者から単離されたヒト乳癌細胞におけるNotch活性化の効果を、培養中のその細胞をNotchリガンドDeltaの可溶性型、Delta-Fc、に曝露することにより試験した。可溶性Deltaは、培養中の未分画のT1癌細胞により形成されたコロニーの数を5倍増加させた(図1a)。次に、T1から単離された腫瘍形成性細胞のインビトロで増殖する能力へのNotchシグナル伝達の阻害の効果は、細胞をドミナントネガティブなMastermind様-121-24アデノウイルス(dnMAML1Ad、図5)、Notch転写活性化のインヒビター、に感染させることにより試験された(図1b)。感染から2日後、dnMAML1Adは、生存可能なT1腫瘍形成性癌細胞、または試験された他の患者からのすべての4つの腫瘍(T2〜T5と名付けられた)由来のクローン原性乳癌細胞において、結果として、18%〜45%の減少を生じたが、対照アデノウイルスベクターは生じなかった(図1c)。これらのデータは、Notch活性化が、試験された新規の腫瘍のすべての5つにおいて、クローン原性癌細胞の生存または増殖を促進したことを示している。
【0059】
ヒト乳癌におけるNotch4の可能性のある役割が調べられた。Notch4発現は、T1およびT4を含む、試験された5つの腫瘍のうちの4つにおいて検出された(表1)。
【0060】
(表1)定量的RT-PCR遺伝子発現解析

【0061】
T1癌細胞は、Notchシグナル伝達を阻害するNotch4に対するポリクローナル抗体の存在下において培養された(図2a)。Notch4を発現させるT1癌細胞(表1、図2b)が、インビトロでこの抗体に曝露された場合、コロニー形成は著しく阻害された(図2c、d)。この阻害は、抗体が産生されたNotch4ペプチドとの抗体のプレインキュベーションによりほとんど完全に排除され、抗Notch4抗体の特異性を確認した(図2c、d)。他方では、T4癌細胞によるコロニー形成は、抗Notch4抗体により影響を及ぼされなかった(図2c)。定量的RT-PCRを用いて、T1およびT4の非腫瘍形成性癌細胞1の両方においてNotch4の発現(表1)を検出することができた。しかしながら、T1およびT4腫瘍形成性細胞が試験された場合、Notch4発現は、T1腫瘍形成性癌細胞において検出されたが、T4腫瘍形成性細胞は、Notch1およびNotch2を発現させていたが、Notch4を発現させていなかった。(表1)これらのデータは、両方の腫瘍由来のクローン原性細胞は、dnMAML1アデノウイルスに感染させた場合死滅するが(図1c)、T1クローン原性細胞のみが抗Notch4抗体により影響を及ぼされた(図2c)という観察についての説明を提供する。さらなる実験は、抗Notch4抗体がインビボで腫瘍形成性T1癌細胞による腫瘍形成を阻害するかどうかを試験した。わずか200個のT1腫瘍形成性癌細胞が、NOD/SCIDマウスにおいて一貫して腫瘍を形成することができる1。それゆえに、200個のT1腫瘍形成性癌細胞は、対照緩衝液かまたは抗Notch4抗体のいずれかとインキュベートされ、その後、マウスへ注入された。未処理の細胞の9の注入のうち7、および処理された細胞の9の注入のうち0が、腫瘍を形成した(図2e)。多数の抗体処理された細胞による腫瘍形成は、対照細胞と比較して遅れた。
【0062】
さらなる実験は、抗Notch4抗体が、この腫瘍における、および追加の患者から単離された腫瘍細胞における、癌細胞の増殖を阻害する機構を研究した。Notch刺激は、ある状況において細胞増殖を促進し、状況が違えば、増殖を阻害すること、および別の場合では、細胞生存を促進することが示された13,25,26。これらの可能性の間で識別するために、抗Notch4抗体と培養された細胞において生存度が測定された。抗体への曝露の2日間後、T1クローン原性癌細胞の細胞死において著しい増加があったが、T4クローン原性癌細胞においてはなかった(図3a、3b)。Notch4シグナル伝達の阻害が細胞死を誘導した機構を決定するためのさらなる分析に十分なT1、T4およびT5腫瘍細胞があった。T1から単離されたクローン原性癌細胞の抗Notch4ブロッキング抗体への曝露は、アポトーシスに特徴的な分解されたDNAを有するT1腫瘍形成性癌細胞の蓄積へと導いた(図3a)。対照培養物と比較して、抗体曝露から36時間後、T1およびT5クローン原性癌細胞において活性化されたカスパーゼ3/7を有する細胞の数に著しい増加があったが、T4クローン原性癌細胞においてはなかった(図3b)。これらのデータは、新規のヒト乳房腫瘍のサブセットにおいて、Notch経路活性化が、細胞の腫瘍形成性集団への必要な生存シグナルを供給することを示している。
【0063】
プログラム細胞死は、受容体媒介型(外因性)経路かまたはミトコンドリア(内因性)経路のいずれかを介して引き起こされ得る。残念なことに、まれな腫瘍形成性癌細胞について広範囲な分子および生化学的分析を行うことは、現在のところ技術的に不可能である。それゆえに、生存のためにNotchシグナル伝達に依存する乳癌細胞系が得られた。MCF-7細胞はNotch4を発現させ(図2b)、dnMAML1アデノウイルスおよび抗Notch4抗体の両方は、これらの細胞を殺傷した(図3a、3cおよび3d)。腫瘍から直接的に単離された細胞についての場合のように、Notchシグナル伝達の阻害は、結果として、MCF-7細胞においてカスパーゼの活性化を生じた(図3b)。細胞死が、内因性の細胞死の経路を介してだったのかまたは外因性だったのかを決定するために、ドミナントネガティブな(dn)FADDまたはBcl-XLのいずれかを発現させたMCF-7細胞が用いられ、結果として、内因性および外因性の死の経路、それぞれに阻害を生じた(図3e)27,28。dnMAML1アデノウイルスに感染した場合、Bcl-xLは、MCF-7細胞をアポトーシスから保護したが、dnFADDは保護しなかった(図3cおよび3d)。これらの結果は、Notchシグナル伝達が、ミトコンドリア死の経路を介するアポトーシスから癌細胞を保護することを実証している。
【0064】
Notchシグナル伝達は複雑である。複数のNotchおよびNotchリガンド、加えてシグナル伝達を調節するためにこれらのNotchを修飾するいくつかのFringeがある。正常な組織における幹細胞およびそれらの前駆体細胞子孫によるNotchシグナル伝達経路の様々なメンバーの示差的な発現は、幹細胞運命決定において重要な役割を果たしている11,15,29。T4腫瘍形成性および非腫瘍形成性癌細胞によるNotch4の示差的な発現は、類似した状況が腫瘍においても生じ得ることを示唆したため、他のNotch経路遺伝子が癌細胞の異なる集団において異なって発現されるかどうかを決定するために実験が行われた。異なる患者から単離された乳癌細胞においてNotchシグナル伝達経路成分を同定するために、定量的RT-PCRを用いて、5つの腫瘍のそれぞれ由来の癌細胞によるNotch、NotchリガンドおよびFringeの発現を調べた。1つまたは複数のNotchの発現がすべての腫瘍において検出された(表1)。いくつかの正常な組織において、間質細胞かまたは分化した子孫のいずれかは、幹細胞においてNotchを活性化させるパラクリンシグナルを与えるNotchリガンドを発現させる3,11,30。Notchシグナル伝達は、3つのFringeタンパク質、Manic、Lunatic、およびRadical、の発現により正常組織においてさらに調節される。Fringeのそれぞれは、特定のNotch受容体を異なってグリコシル化し、受容体のシグナル伝達を調節する29,31,32。それゆえに、実験は、腫瘍形成性および非腫瘍形成性癌細胞が、Notchリガンドおよび/またはFringeタンパク質のそれらの発現において異なるかどうかを決定するために行われた。これを達成するために、定量的RT-PCRが、T1およびT4から単離された2,000個の腫瘍形成性癌細胞および2,000個の非腫瘍形成性癌細胞1から単離されたRNAを用いて行われた(図4)。NotchリガンドDelta1およびDelta4の発現は、T1腫瘍形成性細胞と比較して、T1非腫瘍形成性細胞において3倍高かったが、Jagged1発現は、両方の集団において同じであった(表1)。同様に、T4非腫瘍形成性細胞は、腫瘍形成性癌細胞が発現させるより、NotchリガンドDelta1およびJagged1の3倍高いレベルを発現させたが、Delta3およびDelta4の発現は、いずれの集団においても検出されなかった(表1)。
【0065】
腫瘍の大部分は、非腫瘍形成性癌細胞1からなり、これらの細胞は、腫瘍形成性癌細胞が発現させるよりNotchリガンドの高いレベルを発現させるため、これらのデータは、非腫瘍形成性癌細胞が、腫瘍形成性癌細胞へ生存シグナルを与えることを示唆している。定量的RT-PCRにより調べられた場合、調べられた両方の腫瘍において、腫瘍形成性細胞によるManic Fringeの発現は、検出されたが、非腫瘍形成性細胞によるものは検出されなかった(表1)。逆に、腫瘍の両方において、非腫瘍形成性細胞によるLunatic FringeおよびRadical Fringeは検出されたが、腫瘍形成性細胞によるものは検出されなかった(表1)。Manic Fringeの強制的な発現が、発癌性形質転換に結びつけられており33、マイクロアレイ分析において、Manic Fringe発現が正常な幹細胞で最も高かった34ことから、これらのデータは意味がある。
【0066】
Bmi-1発癌遺伝子は正常な造血幹細胞および白血病細胞の両方の自己再生を制御するという最近の観察は、自己再生経路を癌へ堅固に結びつける8,35。正常な幹細胞および腫瘍における癌細胞のサブセットの両方は、自己再生する基礎的能力を共有するため、自己再生経路が、正常幹細胞および腫瘍形成性癌細胞により共有される可能性が高い。それゆえに、癌細胞内で自己再生を制御する経路の同定は、本発明者らのこれらの疾患の理解に重大な意味を有する。
【0067】
上の実験は、試料の性質を特徴付けること、治療的処置を通して標的にすること、ならびに治療、薬剤スクリーニング適用および研究適用を選択かつモニターする際に援助することを可能にする、腫瘍形成性細胞対非腫瘍形成性細胞について特異的な生物学的マーカーを識別する様々なものを提供する。
【0068】
治療剤
本発明による腫瘍形成のレギュレーターを含む薬学的組成物は、任意の有効な方法により投与され得る。例えば、Notchリガンド、抗Notch抗体、またはNotchシグナル伝達/応答経路においてタンパク質のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する他の治療剤が、任意の有効な方法により投与され得る。例えば、抗Notch治療剤の有効濃度を含む生理学的に適切な溶液が、局所的に、眼内に、非経口で、経口で、鼻腔内に、静脈内に、筋肉内に、皮下に、または任意の他の有効な手段により、投与され得る。特に、抗Notch治療剤は、標的組織の腫瘍細胞を処置するのに有効な量で注射針により、標的癌または腫瘍組織へ直接的に注射され得る。または、眼、胃腸管、尿生殖路(例えば、膀胱)、肺および気管支系などのような体腔に存在する癌または腫瘍が、抗Notch治療剤の有効濃度を含む生理学的に適切な組成物(例えば、滅菌している、食塩水もしくはリン酸緩衝液のような溶液、懸濁液、または乳濁液)を、注射針での直接的注入により、または癌もしくは腫瘍にかかっている中空器官へ置かれたカテーテルもしくは他の送達チューブを介して、受けることができる。X線、ソノグラム、または光ファイバー可視化システムのような任意の有効な画像化装置が、標的組織の位置を見つけて、注射針またはカテーテルチューブを導くために用いられ得る。もう一つの代替において、抗Notch治療剤の有効濃度を含む生理学的に適切な溶液が、直接的には届けられることができないまたは解剖学的に単離されることができない癌または腫瘍を処置するために血液循環へと全身投与され得る。
【0069】
すべてのそのような操作は、抗Notch治療剤が腫瘍細胞に接触する、形質導入するまたはトランスフェクションする(作用物質の性質に依存して)ことを可能にするように標的腫瘍と十分接触して抗Notch治療剤を置くという目標を共通して有する。一つの態様において、中空器官の上皮層に存在する固形腫瘍は、中空の体液によって満たされた器官へベクター懸濁液を注入することにより、または中空の空気で満たされた器官へ噴霧するもしくは霧状にして吹き付けることにより、処置され得る。従って、腫瘍細胞(固形腫瘍幹細胞のような)は、肺気管支樹の内層、胃腸管の内層、女性生殖器官、尿生殖路、膀胱の内層、胆嚢、および抗Notch治療剤と接触させるように到達できる任意の他の器官組織における上皮組織の中または間に存在し得る。もう一つの態様において、固形腫瘍は、例えば、脊髄、脊髄神経根もしくは脳のような中枢神経系の内層の中または上に位置し得るので、脳脊髄液に注入された抗Notch治療剤は、その空間における固形腫瘍の細胞に接触かつ形質導入する。(従って、抗Notch治療剤は、当技術分野において公知の方法を用いて血液脳関門を横断するように改変され得る。)抗Notch治療剤が腫瘍内部の腫瘍細胞に接触かつ影響を及ぼすように、抗Notch治療剤が、ベクター懸濁液の腫瘍への直接的注入により固形腫瘍へ投与され得ることは、腫瘍学の業者は理解できる。
【0070】
本発明により同定される腫瘍形成性細胞はまた、抗癌細胞抗体を産生するために用いられ得る。一つの態様において、方法は、腫瘍形成性細胞の濃縮された集団または単離された腫瘍形成性細胞を得る段階;細胞複製を防ぐために集団を処理する(例えば、照射により)段階;および固形腫瘍幹細胞に対する免疫応答を誘導するのに有効な量でヒトまたは動物対象へ処理された細胞を投与する段階を含む。注入されるまたは経口で投与されるべき細胞の有効用量に関する手引きとして、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,218,166号、第6,207,147号および第6,156,305号を参照されたい。もう一つの態様において、方法は、固形腫瘍幹細胞の濃縮された集団または単離された固形腫瘍幹細胞を得る段階;腫瘍幹細胞をインビトロ培養において、抗体が産生されることになっているヒト対象または宿主動物由来の免疫エフェクター細胞(当技術分野において公知の免疫学的方法による)と混合する段階;培養物から免疫エフェクター細胞を取り出す段階;および動物において免疫応答を刺激するのに有効である用量で宿主動物へ免疫エフェクター細胞を移植する段階を含む。
【0071】
いくつかの態様において、治療剤は抗体(例えば、抗Notch4抗体)である。モノクローナル抗体は、培養中の連続継代細胞系による抗体分子の産生を与える任意の技術を用いて調製され得る。これらは、限定されるわけではないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV-ハイブリドーマ技術を含む(例えば、Kozbor D. et al., J. Immunol. Methods 81:31-42 (1985); Cote R J et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026-2030 (1983); およびCole S P et al. Mol. Cell Biol. 62:109-120 (1984)参照)。
【0072】
さらに、適切な抗原特異性および生物活性を有する分子を得るためにマウス抗体遺伝子のヒト抗体遺伝子へのスプライシングのような「キメラ抗体」の作製について開発された技術が用いられ得る(例えば、Morrison S L et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-6855 (1984); Neuberger M S et al. Nature 312:604-608 (1984); およびTakeda S et al. Nature 314:452-454 (1985)参照)。
【0073】
様々な免疫測定法が、所望の特異性を有する抗体を同定し得るスクリーニングに用いられ得る。確立された特異性を有するポリクローナル抗体かまたはモノクローナル抗体のいずれかを用いる競合結合測定法または免疫放射線測定法についての多数のプロトコールは、当技術分野において周知である。
【0074】
抗体はまた、ヒト化抗体であり得る。本明細書に用いられる場合、用語「ヒト化抗体」は、抗体がヒト抗体により近く似ており、かつそれの本来の結合能力をなお保持しているように、非抗原結合領域におけるアミノ酸配列が変化している抗体分子を指す。抗体は、それらが、より少ない免疫原性であり、それゆえに、患者へ治療的に投与された場合、より長く存続するように、ヒト化される。
【0075】
ヒト抗体は、抗体治療に適した本質的にいずれの疾患標的にも対する、高親和性、完全ヒト抗体産物候補の作製および選択を可能にする、Abgenix(Fremont, Calif, USA)からのXENOMOUSEテクノロジーを用いて作製され得る。それぞれ参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,235,883号、第6,207,418号、第6,162,963号、第6,150,584号、第6,130,364号、第6,114,598号、第6,091,001号、第6,075,181号、第5,998,209号、第5,985,615号、第5,939,598号および第5,916,771号;Yang X et al., Crit Rev Oncol Hemato 38(1):17-23 (2001); Chadd H E & Chamow S M. Curr Opin Biotechnol 12(2):188-94 (2001); Green L L, Journal of Immunological Methods 231 11-23 (1999); Yang X-D et al., Cancer Research 59(6):1236-1243 (1999); およびJakobovits A, Advanced Drug Delivery Reviews 31:33-42 (1998)を参照されたい。完全ヒトタンパク質配列を有する抗体は、マウス抗体遺伝子発現が抑制され、ヒト抗体遺伝子発現と機能的に置換されるが、マウス免疫系の残りを無傷のままにしておく、遺伝子操作されたマウスの系統を用いて作製される。さらに、本発明の腫瘍形成性細胞の中または上に存在するマーカーに対して方向づけられた抗体の作製は、薬剤開発のために標的を同定する方法として用いられ得る。
【0076】
本発明のいくつかの態様において、本発明の抗新生物形成性治療剤は、他の抗新生物性治療と同時投与される。幅広い範囲の治療剤が、本発明との使用を見出す。本発明の作用物質と同時投与され得る、または本発明の作用物質と会合され得るいずれの治療剤も、本発明の方法での使用に適している。
【0077】
本発明のいくつかの態様は、本発明の治療化合物および、少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、限定されるわけではないが、化学療法用抗新生物薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、および抗炎症剤を含む)、および/または治療技術(例えば、外科的処置、放射線治療)を施すための方法(治療方法、研究方法、薬剤スクリーニング方法)を提供する。
【0078】
抗新生物(例えば、抗癌)薬の様々なクラスが、本発明の特定の態様における使用を企図される。本発明との使用に適した抗癌剤は、限定されるわけではないが、アポトーシスを誘導する作用物質、アデノシンデアミナーゼ機能を阻害する、ピリミジン生合成を阻害する、プリン環生合成を阻害する、ヌクレオチド相互変換を阻害する、リボヌクレオチドレダクターゼを阻害する、チミジン一リン酸(TMP)合成を阻害する、ジヒドロ葉酸還元を阻害する、DNA合成を阻害する、DNAとの付加物を形成する、DNAを損傷する、DNA修復を阻害する、DNAと共にインターカレートする、アスパラギンを脱アミノする、RNA合成を阻害する、タンパク質合成または安定性を阻害する、微小管合成または機能を阻害する作用物質などを含む。
【0079】
いくつかの態様において、本発明の組成物および方法における使用に適した例示的な抗癌剤は、限定されるわけではないが、以下のものを含む:
1)微小管インヒビター(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビンデシンなど)、微小管安定剤(例えば、パクリタキセル(TAXOL)およびドセタキセルなど)、ならびにエピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP-16)およびテニポシド(VM-26)など)およびトポイソメラーゼIを標的にする作用物質(例えば、カンプトテシンおよびイシリノテカン(CTP-11)など)のようなトポイソメラーゼインヒビターを含むクロマチン機能インヒビター、を含むアルカロイド;
2)ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミドおよびブスルファン(MYLERAN)など)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチンおよびセムスチンなど)および他のアルキル化剤(例えば、デカルバジン、ヒドロキシメチルメラミン、チオテパおよびミトマイシンなど)を含む共有結合性DNA結合剤(アルキル化剤);
3)核酸インヒビター(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)など)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(ダウノマイシンおよびセルビジン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、およびイダルビシン(イダマイシンなど)、アントラセネジオン(例えば、ミトキサントロンなどのようなアントラサイクリン類似体)、ブレオマイシン(BLENOXANEなど)、およびプリカマイシン(ミトラマイシン)などを含む非共有結合性DNA結合剤;
4)葉酸代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、FOLEXおよびMEXATEなど)、プリン代謝拮抗剤(例えば、6-メルカプトプリン(6-MP、PURINETHOLなど)、6-チオグアニン(6-TG)、アザチオプリン、アシクロビル、ガンシクロビル、クロロデオキシアデノシン、2-クロロデオキシアデノシン(CdA)、および2'-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)など)、ピリミジンアンタゴニスト(例えば、フルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル(ADRUCIL)、5-フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(フロックスウリジン)など)、およびシトシンアラビノシド(例えば、CYTOSAR(ara-C)およびフルダラビンなど)を含む代謝拮抗剤;
5)L-アスパラギナーゼを含む酵素およびヒドロキシ尿素など;
6)グルココルチコイド、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェンなど)、非ステロイド性抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミドなど)、およびアロマターゼインヒビター(例えば、アナストロゾール(ARIMIDEX)など)を含むホルモン;
7)白金化合物(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチンなど);
8)抗癌薬、毒素および/または放射性核種などと結合したモノクローナル抗体;
9)生物反応修飾物質(例えば、インターフェロン(例えば、IFN-αなど)およびインターロイキン(例えば、IL-2など)など);
10)養子免疫治療;
11)造血成長因子;
12)腫瘍細胞分化を誘発する作用物質(例えば、オールトランス型レチノイン酸など);
13)遺伝子治療技術;
14)アンチセンス治療技術;
15)腫瘍ワクチン;
16)腫瘍転移に対して向けられた治療(例えば、バチマスタットなど);
17)血管形成インヒビター;
18)プロテオソームインヒビター(例えば、VELCADE);
19)アセチル化および/またはメチル化のインヒビター(例えば、HDACインヒビター);
20)NFκBの修飾因子;
21)細胞周期制御のインヒビター(例えば、CDKインヒビター);
22)p53タンパク質機能の修飾因子;ならびに、
23)放射線放射。
【0080】
癌治療に関連して日常的に用いられる任意の腫瘍細胞崩壊剤が、本発明の組成物および方法において使用を見出す。例えば、U.S Food and Drug Administrationは、米国において使用を認可された腫瘍細胞崩壊剤の処方集を管理している。U.S.F.D.A.への国際対応機関は同様の処方集を管理している。表Xは、米国において使用が認可された例示的な抗新生物薬の一覧表を提供している。その例示的な作用物質について、すべての米国認可化学療法剤上に必要とされる「製品ラベル」が、認可表示、投薬情報、毒性データなどを記載していることを当業者は認識しているものと思われる。
【0081】










【0082】
抗菌治療剤もまた、本発明の治療剤として用いられ得る。微生物体の機能を殺す、阻害する、またはそうでなければ減弱することができる任意の作用物質、加えてそのような活性を有するように企図される任意の作用物質が用いられ得る。抗菌剤は、限定されるわけではないが、天然および合成抗生物質、抗体、阻害性タンパク質(例えば、デフェンシン)、アンチセンス核酸、膜破壊性剤などを含み、単独でまたは組み合わせて用いられる。実際、限定されるわけではないが、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などを含む抗生物質の任意の型が用いられ得る。
【0083】
なおさらなる態様において、本発明は、特定の細胞型(例えば、腫瘍細胞)を特異的に標的化することができるターゲティング剤と付随した本発明の化合物(および任意の他の化学療法剤)を提供する。一般的に、ターゲティング剤と付随している治療化合物は、ターゲティング剤の細胞表面部分との相互作用を通して新生物性細胞を標的化し、受容体媒介性エンドサイトーシスを通して細胞へ取り入れられる。
【0084】
標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面上に位置していることが知られている任意の部分が、本発明との使用を見出す。例えば、そのような部分に対して方向づけられた抗体は、本発明の組成物をその部分を含む細胞表面へ向ける。または、ターゲティング部分は、細胞表面上に存在する受容体へ向けられるリガンド、または逆であり得る。同様に、ビタミンもまた、本発明の治療用物質を特定の細胞へ向けるために用いられ得る。
【0085】
本明細書に用いられる場合、用語「ターゲティング分子」は治療化合物を対象となる細胞、組織および器官へ向けるのに有用な化学的成分およびその部分を指す。様々な型のターゲティング分子が本発明との使用を企図され、限定されるわけではないが、シグナルペプチド、抗体、核酸、毒素などを含む。ターゲティング部分は、追加として、付随した化学化合物(例えば、低分子)の結合、または標的化される細胞、組織および器官への化合物の侵入を促進し得る。好ましくは、ターゲティング部分は、特定の細胞下の位置および細胞小器官を含む対象、組織または細胞内の標的化される部位へ付着した化合物を選択的に送達する際に、それらの特異性、親和性、および効力に従って選択される。
【0086】
様々な効率の問題は、すべての薬物、および、特に高細胞毒性薬物(例えば、抗癌薬)、の投与に影響を及ぼす。特に重要な一つの問題は、投与された作用物質が、標的化された細胞(例えば、癌細胞)、組織または器官のみに影響を及ぼすことを保証することである。高細胞毒性剤の非標的細胞への非特異的または非意図的送達は、深刻な毒性問題を引き起こし得る。
【0087】
非特異的薬物送達に関連した問題に取り組むために、薬物ターゲティングスキームを考案するように多数の試みがなされた。(例えば、K.N. Syrigos and A.A. Epenetos Anticancer Res., 19:606-614 (1999); Y.J. Park et al., J. Controlled release, 78:67-79 (2002); R.V.J. Chari, Adv. Drug Deliv. Rev., 31:89-104 (1998); およびD. Putnam and J. Kopecek, Adv. Polymer Sci., 122:55-123 (1995)参照。)抗体およびリガンドペプチド(例えば、内皮細胞についてRDG)のような薬物分子へ結合しているターゲティング部分は、特定の薬物に関連したいくつかの副次的な毒性問題を軽減するために用いられた。しかしながら、薬物のターゲティング部分との結合のみでは、薬物は通常、標的細胞へ行く途中で生物活性があるため、非標的細胞への可能性のある副作用を完全には打ち消せない。特定の標的化された組織へ移動する間、不活性である、ターゲティング部分-プロドラッグ結合体における進歩により、これらの懸念の一部が減らされた。酵素切断のような生体内変換は、典型的には、標的部位において、プロドラッグを生物活性のある分子へ変換する。
【0088】
従って、いくつかの好ましい態様において、本発明は、標的部位に到達するまで不活性であり、その後、活性のある治療薬分子へと変換される、プロドラッグ結合体を提供する。ADEPTおよびATTEMPTSは、本発明の特定の態様と適合性のある2つの例示的なプロドラッグ送達系である。(K.N. Syrigos and A.A. Epenetos, Anticancer Res., 19:606-614 (1999); K.D. Bagshawe, Brit. J. Cancer, 56:531-532 (1987); Y.J. Park et al., J. Controlled Release, 72:145-156 (2001); およびY.J. Park et al., J. Controlled Release, 78:67-79 (2002)参照。)
【0089】
治療剤のいくつかの型、特に水溶性低分子量の作用物質、の対象の血流からの急速なクリアランスは、有効な低分子投与にさらにもう一つの障害を与える。まだなお他の障害は、投与される作用物質の急速なクリアランス(例えば、タンパク分解性分解)または可能性のある免疫原性から来る。
【0090】
自然系において、対象における低分子のクリアランスおよび他の薬物動態学的行動は、一連の輸送タンパク質により制御される。(例えば、H.T. Nguyen, Clin. Chem. Lab. Anim., (第2版) pp. 309-335 (1999); およびG.J. Russell-Jones and D.H. Alpers, Pharm. Biotechnol., 12:493-520 (1999)参照)。従って、好ましい態様において、可能性のある治療用物質を試験および開発する場合、作用物質の薬物動態が考慮される。
【0091】
対象における作用物質クリアランスの速度は、典型的には操作できる。例えば、作用物質の高分子担体への付着(例えば、結合)は、通常、循環および保持時間を延ばす。従って、本発明のいくつかの態様は、分子の分解を減少させる(防ぐ)ために、および対象の血流における保持を向上させるために、ポリエチレングリコール(PEG)、または類似した生体高分子、に結合した低分子を提供する。(例えば、R.B. Greenwald et al., Critical Rev. Therapeutic Drug Carrier Syst., 17:101-161 (2000)参照。)PEGのタンパク質-タンパク質相互作用を妨げる能力は、多くの薬物の免疫原性を低減させることができる。
【0092】
いくつかの治療剤、ならびに特に、ペプチドおよび核酸のような親水性かつ高分子の薬物の投与に影響を及ぼすもう一つの問題は、これらの作用物質が標的化された細胞膜へ入るのが困難であることである。小さな(典型的には、1,000ダルトン未満)疎水性分子は、標的細胞膜に入るのが困難であることに左右されない。さらに、低分子量の細胞毒性薬物は、しばしば、急速に成長する腫瘍内の高い間質圧および好ましくない血流性質のせいで(R.K. Jain, Int. J. Radiat. Biol., 60:85-100 (1991); およびR.K. Jain and L.T. Baxter, Cancer Res., 48:7022-7032 (1998))、腫瘍のような標的組織においてよりむしろ、正常組織においてより効率的に局在する(K. Bosslet et al., Cancer Res., 58:1195-1201 (1998))。
【0093】
特定の態様、特に細胞毒性剤を送達することに向けられた態様、は本発明の治療組成物の送達を援助するために以下の方法もしくは組成物の1つまたは複数を利用する:微量注入(例えば、M. Foldvari and M. Mezei, J. Pharm. Sci., 80:1020-1028 (1991)参照);掻爬負荷(scrape loading)(例えば、P.L. McNeil et al., J. Cell Biol, 98:1556-1564 (1984)参照);電気穿孔法(例えば、R. Chakrabarti et al., J. Biol. Chem., 26:15494-15500 (1989)参照);リポソーム(例えば、M. foldvari et al., J. Pharm. Sci., 80:1020-1028 (1991); およびJ.N. Moreira et al., Biochim Biophys Acta, 515:167-176 (2001)参照);水溶性重合体のようなナノ担体(例えば、増強された透過および保持(enhanced permeation and retention)「EPR」、例えば、H. Maeda et al., J. Controlled Release, 65:271-284 (2000); H. Maeda et al., 前記; およびL.W. Seymour, Crit. Rev. Therapeu. Drug Carrier Systems, 9:135-187 (1992)参照);細菌毒素(例えば、T.I. Prior et al., Biochemistry, 31:3555-3559 (1992); およびH. Stenmark et al., J. Cell Biol., 113:1025-1032 (1991)参照);腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)系を含む、受容体媒介性エンドサイトーシスおよびファゴサイトーシス(例えば、R.V.J. Chari, Adv. Drug Deliv. Rev., 31:89-104 (1998); I. Mellman, Annu. Rev. Cell Dev. Biol., 12:575-625 (1996); C.P. Leamon and P.S. Low, J. Biol. Chem., 267(35):24966-24971 (1992); H. Ishihara et al., Pharm. Res., 7:542-546 (1990); S.K. Basu, Biochem. Pharmacol., 40:1941-1946 (1990); およびG.Y. Wu and C.H. Wu, Biochemistry, 27:887-892 (1988)参照);他の適した組成物および方法は、当技術分野において公知である。
【0094】
化合物および抗癌剤は、限定されるわけではないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロースおよび水を含む、任意の滅菌した、生体適合性の薬学的担体において投与され得る。いくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、1つの作用物質(例えば、抗体)を含み得る。他の態様において、薬学的組成物は、少なくとも2つの作用物質(例えば、抗体および1つまたは複数の通常の抗癌剤)の混合物を含む。なおさらなる態様において、本発明の薬学的組成物は、以下の条件の1つまたは複数の下で患者へ投与される少なくとも2つの作用物質を含む:異なる周期現象において、異なる持続期間において、異なる濃度において、異なる投与経路による、など。いくつかの態様において、治療化合物は、抗癌剤の前に、例えば、抗癌剤の投与の0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、12時間または18時間、1日、2日、3日、4日、5日、または6日、1週間、2週間、3週間または4週間前に、投与される。いくつかの態様において、治療化合物は、抗癌剤の後に、例えば、抗癌剤の投与から0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、12時間または18時間、1日、2日、3日、4日、5日、または6日、1週間、2週間、3週間または4週間後に、投与される。いくつかの態様において、治療化合物および抗癌剤は、同時であるが、異なる計画で投与され、例えば、治療化合物は、毎日投与され、一方、抗癌剤は、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回、投与される。他の態様において、治療化合物は、週に1回、投与され、一方、抗癌剤は、毎日、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回投与される。
【0095】
処置される状態に依存して、本薬学的組成物の好ましい態様は、製剤化されて、全身的または局所的に投与される。製剤化および投与についての技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」 (Mack Publishing Co, Easton Pa.)の最新版に見出され得る。適した経路は、例えば、経口または経粘膜的投与、および非経口送達(例えば、筋肉内、皮下、脊髄内、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内投与)を含み得る。
【0096】
本発明は、治療化合物、およびいくつかの態様において、1つまたは複数の通常の抗癌剤を、許容される薬学的送達方法および調製技術に従って投与することを企図する。例えば、治療化合物および適した抗癌剤は、生理的食塩水のような薬学的に許容される担体において対象へ静脈内に投与され得る。薬学的作用物質の細胞内送達についての標準的方法が企図される(例えば、リポソームによる送達)。そのような方法は、当業者に周知である。
【0097】
いくつかの態様において、本発明の製剤は、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、脊髄内、および腹腔内)に有用である。いくつかの企図された抗癌剤(例えば、治療ポリペプチド)の治療的同時投与はまた、遺伝子治療試薬および技術を用いて達成され得る。
【0098】
本発明のいくつかの態様において、治療化合物は、対象へ、単独で、または1つもしくは複数の通常の抗癌剤と組み合わせて、または成分が任意で賦形剤もしくは他の薬学的に許容される担体と混合されている薬学的組成物において投与される。本発明の好ましい態様において、薬学的に許容される担体は生物学的に不活性である。好ましい態様において、本発明の薬学的組成物は経口投与に適した投薬量で当技術分野において周知の薬学的に許容される担体を用いて製剤化される。そのような担体は、薬学的組成物が、対象によるそれぞれの経口的なまたは鼻くうでの摂取のために、錠剤、ピル、カプセル、糖衣錠、液体、ゲル、シロップ、スラリー、溶液、懸濁液などとして製剤化されるのを可能にする。
【0099】
経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、その結果生じた混合物を任意ですりつぶし、錠剤または糖衣錠のコアを得るために必要に応じて適した補助剤を加えた後に、混合物を顆粒へ加工することにより得られ得る。適した賦形剤は、乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモなどからのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質のような炭水化物またはタンパク質である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような崩壊剤または可溶化剤が添加され得る。
【0100】
注射について、本発明の薬学的組成物は、水溶液において、好ましくはハンクス液、リンガー液、または生理緩衝食塩水のような生理学的に適合性のある緩衝液において、製剤化され得る。組織または細胞投与について、透過されるべき特定のバリアに適切な浸透剤が用いられる。そのような浸透剤は、当業者に公知である。
【0101】
本発明における使用に適した薬学的組成物は、活性成分が意図された目的に達し得る有効量で含まれている組成物を含む。作用物質の有効量の決定は、特に本明細書に提供された開示を考慮すれば、十分、薬理学的分野の業者が対応できる範囲である。
【0102】
活性成分に加えて、好ましい薬学的組成物は、活性化合物の薬学的に有用な形への加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む適切な薬学的に許容される担体を含み得る。
【0103】
本発明の薬学的組成物は、限定されるわけではないが、通常の混合、溶解、粒状化、糖衣錠作製、微粒子状化、乳化、カプセル化、閉じ込め、または凍結乾燥工程などの手段によるを含む、薬学的組成物を調製するための任意の適切な技術を用いて製造され得る。
【0104】
本組成物の摂取可能な製剤はさらに、食品添加物、香味剤、着色剤、ビタミン、ミネラル、および植物性栄養物のような一般的に安全として認識されている(GRAS)食材および物質における含有物についてUnited States Department of Agricultureにより認可された任意の材料を含み得る。本明細書に用いられる場合、用語「植物性栄養物」は、生物学的効果を有する植物から単離された有機化合物を指し、限定されるわけではないが、以下のクラスの化合物を含む:イソフラボノイド、オリゴマープロアントシアニジン、インドール-3-カルビノール、スルフォラフォン、繊維性リガンド、植物フィトステロール、フェルラ酸、アントシアノシド、トリテルペン、オメガ3/6脂肪酸、ポリアセチレン、キノン、カテチン、没食子酸塩およびクェルセチン。
【0105】
糖衣錠コアは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタンも含み得る濃縮糖溶液、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物のような適切なコーティング剤と共に供給される。染料または色素は、製品識別のために、または活性化合物の量(すなわち、投薬量)を特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティング剤へ添加され得る。
【0106】
経口投与のために企図された薬学的調製物は、ゼラチン製の押し込み型カプセルおよびゼラチン製の密封された軟カプセル、ならびにグリセロールまたはソルビトールのようなコーティング剤を含む。いくつかの態様において、押し込み型カプセルは、乳糖もしくはデンプンのような増量剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および任意で、安定剤と混合された活性成分を含み得る。いくつかの軟カプセルの態様において、活性化合物は、安定剤を含むまたは含まない、脂肪油、流動パラフィン、もしくは液体ポリエチレングリコールのような適切な液体または溶媒に、溶解または懸濁される。
【0107】
非経口投与のための薬学的製剤は、活性化合物の水溶液を含む。水性注入懸濁液は、任意で、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランのような懸濁液の粘性を増加させる物質を含む。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注入懸濁液として調製され得る。この局面において、適した親油性溶媒または媒体は、ゴマ油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。任意で、懸濁液は、適した安定剤、または化合物の溶解性を増加させ、それに従って、高濃度溶液の調製を可能にする作用物質を含む。
【0108】
好ましい態様において、投与計画は、限定されるわけではないが、治療効果の所望のレベルおよび得られる治療効果の実際的レベルを含む周知の薬理学的および治療的考慮に基づいて、臨床医または薬理学的分野に熟練した他の者により作成される。一般的に、化学療法剤を投与するための周知の薬理学的原則に従うことが賢明である(例えば、一度に、および3〜4の作用物質半減期ごと以内に、50%より多く、用量を変化させないことが一般的に賢明である)。用量依存性毒性の考慮すべき問題を比較的、ほとんどまたは全くもたない組成物について、かつ最大効力(例えば、癌細胞の破壊)が望まれる場合、平均の必要とされる用量を超える用量はまれではない。投薬のこのアプローチは、一般的に、「極量」ストラテジーと呼ばれている。
【0109】
さらなる投薬の考慮すべき問題は、投与されることになっている作用物質についての適切な目標レベルを計算すること、作用物質の蓄積および可能性のある毒性、抵抗性の刺激、効力の欠損、ならびに作用物質の治療指数の範囲を記載することに関する。
【0110】
特定の態様において、本発明は、作用物質の投与を力価測定する日常的方法を用いることを企図する。投与についての一つの一般的なストラテジーは、対象における作用物質についての妥当な目標レベルを設定することである。いくつかの好ましい態様において、作用物質レベルは、対象の血漿において測定される。適切な用量レベルおよび頻度は、その後、作用物質についての所望の定常状態目標レベルを達成するように設計される。対象における作用物質の実際の、または平均のレベルは、用量レベルまたは頻度が目標レベルを維持するように調整され得るように、モニターされる(例えば、1時間ごとに、毎日、毎週など)。もちろん、投与されることになっている特定の作用物質の薬物動態学および薬物動力学(例えば、生物学的利用能、クリアランスまたは生体内蓄積、生体内分布、薬物相互作用など)は、何が熟慮された妥当な目標レベルであるかに影響を与え、それに従って、用量レベルまたは頻度に影響を与える可能性があり得る。
【0111】
目標レベル投薬方法は、典型的には、対象における作用物質についての望ましい範囲(または治療範囲)に関して定められる妥当な治療目標を確立することに頼る。一般的に、治療範囲の下限値は、最大可能治療効果の約50%を与える作用物質の濃度とおおよそ等しい。治療範囲の上限値は、通常、作用物質の毒性により確立され、それの効力によって確立されない。本発明は、特定の作用物質についての治療範囲の上限値は、対象の5%未満または10%未満が毒性副作用を示す濃度であることが企図される。いくつかの態様において、治療範囲の上限値は、下限値より約2倍、またはそれ未満である。当業者は、これらの投薬の考慮すべき問題が極めて変わりやすく、ある程度、個別的である(例えば、遺伝性素因、免疫学的考慮、耐性、抵抗性などに基づいて)ことを理解しているものと思われる。従って、いくつかの態様において、特定の対象における作用物質についての有効な目標投薬レベルは、別の対象における最適よりも、1、...5、...10、...15、...20、...50、...75、...100、...200、...X%高くあり得る。逆に、いくつかの対象は、対象の一部または大部分において最適な治療レベルを典型的に生じるものよりはるかに低い(1、...5、...10、...15、...20、...50、...75、...100、...200、...X%)投薬レベルまたは頻度で健康問題に関連した有意な副作用および毒性を受け得る。より明確な情報を欠く場合、目標投与レベルは、しばしば、治療範囲の中間に設定される。
【0112】
追加の態様において、用量間での作用物質濃度の著しい変動は一般的に望ましくないため、本発明は間欠投与方法を提供する。作用物質の吸収および分布が、バランスがとれて自発性である状況において、濃度変動は、作用物質の排出半減期により決定される。
【0113】
投与される組成物が比較的非毒性である態様において、治療効力を保証するのに必要なものの数倍の作用物質の濃度でさえも十分許容されるため、極量投薬方法が用いられ得る。これらの態様において、投与間隔は、対象の系における作用物質の濃度が、対象から排除される前の比較的長い時間、治療効果の範囲内に留まっているように延ばされ、追加の投与は、作用物質のレベルを治療的効果のある範囲へ戻すことが要求される。従って、これらの態様の若干数において、投与間隔は、作用物質の排出半減期より長い。
【0114】
他の態様において、組成物が比較的狭い治療範囲を有する場合、特定の投与間隔で生じる最大および最小濃度を計算することが重要であり得る。好ましい態様において、投与される作用物質の最小の定常状態濃度は、薬理学的分野の業者に周知である、任意で作用物質の生物学的利用能について補正される方程式を用いて決定される。
【0115】
なお他の態様において、作用物質が多次指数関数的速度式に従い、かつ作用物質が経口で投与される場合、最大の定常状態濃度の推定は、作用物質分布および吸収に関するいくつかの指数定数の操作を含む。
【0116】
本発明はまた、作用物質の負荷量を対象へ投与するための方法を提供する。本明細書に用いられる場合、「負荷量」とは、処置の開始時点において与えられる時、治療剤の目標濃度を直ちに供給する一つまたは一連の用量である。いくつかの態様において、負荷量は、投与の一定速度を用いて供給される作用物質の定常状態目標レベルに到達するために必要とされる時間に関連して、作用物質の目標レベルの即時的必要性を有する対象へ投与される。様々なマイナスの考慮すべき事柄が、対象の状態の緊急性に対して不利に働くと思われる。これらの考慮すべき事柄は、限定されるわけではないが、以下のことを含む:
1)負荷量は、しばしば、突然患者に作用物質の毒性濃度に曝露し得る1つの大きなボーラスで投与される;
2)長い半減期を有する作用物質は、より低い一定速度スキーム下で投与される作用物質と比較して、目標レベルより上のレベルで残存する。負荷量は、しばしば、大きく、迅速で、非経口で与えられ、従って、作用物質が対象の血漿において平衡を得ることができる前に、危険な副作用が投与の部位に発生する可能性があり得る。
【0117】
好ましい態様において、臨床医は、公知の薬理学的原則および方程式に基づいて個別化された投与計画を設計する。一般的に、臨床医は、限定されるわけではないが、F(用量の部分的生物学的利用能)、Cp(血漿における濃度)、CL(クリアランス/クリアランス速度)、Vss(定常状態での薬物分布の容量)、Css(定常状態での濃度)、およびt1/2(薬物半減期)、加えて作用物質の吸収および分配の速度についての情報を含む、作用物質の様々な薬理学的および薬物動態学的性質の知識に基づいて個別化された投与計画を設計する。当業者は、これらの変数のさらなる説明について、および個別化される投与計画の計算を例証する完全な方程式について、周知の薬理学的テキスト(例えば、Goodman and Gilman's Pharmaceutical Basis of Therapeutics, 第10版, Hardman et al., eds., 2001)のいくつでも参照する。当業者はまた、個々の対象においてこれらの変数における可能性のある変動を予想することができるものと思われる。例えば、F、CLおよびVssについて観察された値における標準偏差は、典型的には、それぞれ、約20%、50%および30%である。個々の対象において幅広く変動する可能性のあるパラメーターの実際的効果は、対象においてCssが達成された時点の95%が、目標レベルのそれの35%と270%の間であることである。低い治療指数を有する薬物について、これは望ましくない幅広い範囲である。しかしながら、当業者は、いったん、作用物質のCp(血漿における濃度)が測定されたならば、F、CLおよびVssの値を直接的に推定することは可能であることを認識しているものと思われる。これは、臨床医が特定の対象の投与計画を効果的に微調整することを可能にする。
【0118】
なお他の態様において、本発明は、継続的治療薬モニタリング技術が、個々の投薬方法および計画をさらに調整するために用いられることを企図する。例えば、一つの態様において、Cssデータは、CL/Fの推定をさらに正確にするために、ならびにその後、公知の薬理学的原則および方程式を用いて所望の作用物質目標レベルを達成するために個々の維持投薬を調整するために用いられる。治療薬モニタリングは、投薬スケジュール中の実際にいつでも行われることができる。好ましい態様において、モニタリングは、投薬中の複数の時点において、特に間欠投与を施している場合に実施される。例えば、薬物モニタリングは、用いられる投薬方法(例えば、間欠投与、負荷量、維持投薬、ランダム投薬、または任意の他の投薬方法)に関わらず、作用物質の投与の1秒の何分の何か以内、数秒内、数分内、数時間内、数日内、数週間内、数ヶ月内などに、付随して行われ得る。しかしながら、迅速な試料採取が作用物質投与の次に来る場合、作用物質の血漿濃度における変化は遅れる可能性がある(例えば、分配の遅い速度または他の薬物動力学的因子のせいで)ため、作用物質効果および動力学における変化は、容易には観察できない可能性があることを当業者は認識しているものと思われる。従って、作用物質投与直後に得られた対象試料は、制限されたまたは減少した値を有する可能性がある。
【0119】
投与の予想された定常状態目標レベル中に対象から生物学的試料を収集することの主要目的は、その後、作用物質のCL/F比の修正された推定値を計算することに基づいて個体の投与計画を改変することである。しかしながら、初期の吸収後薬物濃度は、典型的には、作用物質クリアランスを反映しないことを当業者は認識しているものと思われる。初期の吸収後薬物濃度は、作用物質の吸収速度、作用物質分布の、定常状態よりむしろ中心の容量、および分配速度により原則的に決定される。これらの薬物動態学的性質のそれぞれは、治療長期維持投与計画を計算する場合、制限された値を有する。
【0120】
従って、好ましい態様において、目的が治療長期維持投薬である場合、生物学的試料は、前の用量が投与されてからかなり後に、およびいっそうより好ましくは、次の計画された用量が投与される直前に、対象となる対象、細胞または組織から得られる。
【0121】
なお他の態様において、治療剤が投与間の間欠期において対象によりほとんど完全に排除される場合、本発明は、前の投与後様々な時点において、および最も好ましくは、用量が投与された直後に、対象から生物学的試料を収集することを企図する。
【0122】
さらに他の態様において、作用物質の低いクリアランスが問題を含み、毒性問題がそれの蓄積に起因する可能性が高い場合、本発明は、次の用量の投与直前に作用物質濃度を測定することを企図する。これらの態様において、最大および最小作用物質濃度の測定が好ましい。
【0123】
本発明の方法はさらに、一定維持用量が投与される場合、定常状態は、4作用物質半減期の満了後初めて、到達される。投薬後あまりに早く収集された試料は、作用物質クリアランスを正確には反映しない。しかしながら、高い毒性である可能性がある作用物質について、作用物質の第4半減期の満了前すでに、有意な毒性および損傷が続いている可能性が高い。従って、作用物質濃度に対して管理を維持することが重要である場合には、負荷量が投与されていないことを仮定すれば、第一試料は、2半減期後、採取される。作用物質濃度がすでに、最終的な予想された平均定常状態濃度の90%を超える場合には、用量率は半減され、もう一つの試料は、さらなる2半減期後に得られる。この試料がもう一度、目標レベルを超す場合には、用量は再び半減される。第一濃度が許容限度を超さない場合には、その後の投与は、最初の用量率で与えられる。濃度が予想されたものより低い場合には、定常状態は、約2半減期内に達成される可能性が高くありうり、この時点において、用量率は、本明細書に記載されているように、調整され得る。
【0124】
間欠投与を含む態様において、濃度情報の収集のタイミングに関するさらなる懸念は、試料が次の予定された投与直前に得られた場合には、濃度は平均ではなく、最小値にあるだろうことである;しかしながら、本明細書で考察されているように、推定平均濃度は、薬理学的分野において公知の方程式を用いて計算され得る。
【0125】
一次速度式を有する治療剤を投与する場合、定常状態における平均の最小および最大濃度は、用量および投与速度に対して直線性を有する。従って、これらの態様において、測定された作用物質濃度と所望の作用物質濃度の比は、投薬を調整するために用いられる。
【0126】
本発明のもう一つの局面において、コンピュータプログラムは、投与計画を設計する際に助けになる。典型的には、これらのプログラムは、測定された薬物濃度および個々の対象に関連した様々な因子(例えば、測定されたまたは予想された)を考慮に入れる。
【0127】
本発明は、対象、組織、細胞培養物、もしくは動物の薬剤投与データまたは試料を収集することに対するいずれの特定の一時的な制約にも限定されない。さらに、本発明は、対象、組織、細胞培養物、または試験動物実験動物もしくはそうでないものから試料(例えば、生物学的試料)のいずれの特定の型を収集することにも限定されない。実際、いくつかの態様において、本発明は、限定されるわけではないが、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、脂質、糖類、糖脂質、イオン種、代謝産物、無機分子、高分子および高分子前駆体、加えて、細胞画分、血液(例えば、限定されるわけではないが、血漿、血清、代謝産物、因子、酵素、ホルモン、および有機または無機分子を含む、細胞性の、可溶性または不溶性の血液成分)、浸出物、分泌物、排出物、細胞および組織生検材料、CNS液(脳脊髄液)、涙腺、唾液腺および他の腺の分泌物、精液など、ならびにこれらの組み合わせ、または任意の他の細胞下、細胞、組織、生物体、系もしくは生物体の生物学的材料を含む、生物学的試料を得ることを企図する。対象から採取された生物学的試料は、化学的もしくは生化学的変化(例えば、遺伝子発現における変化)、または治療剤の投与から結果として生じた他の効果について分析され得る。さらなる生物学的試料および試料採取の考慮すべき問題は、下に記載されている。
【0128】
これらの態様の一部において、治療組成物の生物学的および薬理学的効果は、限定されるわけではないが、顕微鏡法(光学、蛍光(共焦点蛍光、免疫蛍光)、位相差、微分干渉、暗視野、または電子(透過型、走査型、低温)、NMR、オートラジオグラフィー)、細胞分別技術(例えば、蛍光活性化)、クロマトグラフィー技術(例えば、ゲル濾過、イオン交換、疎水性、アフィニティー、HPLC)、電気泳動技術(例えば、SDS-PAGE、2D-、3D-、等電点)、超遠心分離、免疫細胞化学および免疫組織化学テクノロジー(例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、免疫ブロッティング)、組換えを含む核酸テクノロジー(例えば、PCR(インバース、リバース、ネスティッド)、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、サウスウェスタンブロッティング、インサイチューハイブリダイゼーション、FISH、ニックトランスレーション、DNアーゼフットプリンティング、DNアーゼ高感受性サイトマッピング、マクサム-ギルバートシーケンシング、サンガーシーケンシング、ゲルシフト(易動度シフト)分析、S1ヌクレアーゼ分析、RNアーゼプロテクションアッセイ、CATアッセイ、トランスジェニック技術、ノックアウト技術、およびレポーター遺伝子系)、アミノ酸分析(例えば、エドマン分解)、形態学的、病理学的または表現型的観察、および装置の助け有りまたは無しの他の観察を含む、収集された試料において日常的実験室方法を用いて測定される。
【0129】
いくつかの態様において、対象は、彼らの健康状態、ならびに本発明の治療組成物(例えば、薬物、低分子、ならびに他の治療剤および技術)および方法の投与に起因し得る何かの変化に関して直接的にまたは間接的に、質問される。
【0130】
様々な患者間および患者内の薬物動態学的な考慮すべき問題は、個々の患者についての投薬および投与計画の設計に影響を及ぼす。任意の与えられた薬物について、特定の対象においてその薬物動態学的性質の、最終的応答における全変動の半分またはそれ以上までの、幅広い変動があり得る。これらの変動する要因の重要性は、一部、作用物質およびその通常の排出経路に依存する。例えば、主として、腎臓により除去され、変化せずに泌尿器系へ排出される作用物質は、代謝的に不活性化されている作用物質より、類似した腎機能を有する対象においてより小さい患者間変動性を示す傾向にある。広範に代謝される作用物質、ならびに高い代謝性クリアランスおよび大きな初回通過排出速度を有する作用物質は、患者間生物学的利用能における大きな差を示す。生体内変換のより遅い速度を有する作用物質は、典型的には、個々の対象の間で排出速度において最も大きい変動を有する。対象遺伝子型における違いもまた、異なる代謝速度を決定する際に重要な役割を果たしている。個々の対象の器官機能における病理学的および生理学的変動(例えば、腎疾患または肝疾患)は、作用物質の処分速度に影響を及ぼすことができる重要な要因である。腎臓または肝臓の疾患は、しばしば薬物処分を損ない、それに従って患者間の薬物変動性を増加させる。他の要因(例えば、年齢)もまた、本発明の特定の組成物または方法に対する標的化された細胞および組織(例えば、脳)の応答性に影響を及ぼし得、作用物質についての治療目的レベルの予想される範囲を変えることができる。
【0131】
侵襲的患者試料(例えば、血液、血清、血漿、組織など)が対象において治療剤の濃度を測定するために必要である場合、収集方法の設計は、限定されるわけではないが、以下のことを含む様々な基準を考慮した後に取りかかるべきである:
1)作用物質の濃度と、任意の所望の治療効果または回避できる毒性効果との間に関係は存在するかどうか;
2)作用物質処分における小さな患者内変動以外に、実質的な患者間変動性があるかどうか;
3)作用物質の効果をモニターすることは、別な方法では困難または非実際的であるかどうか;および、
4)作用物質の治療濃度は、毒性濃度に近いかどうか。
なお他の態様において、濃度測定は、薬物動態学的、薬物動力学的または薬理学的効果の追加の測定で補われる。
【0132】
場合によっては、考慮すべき患者間応答変動が、作用物質の濃度が目標レベルへ調整された後に存在する。いくつかの作用物質について、この薬物動力学的変動性は、対象応答における全変動のほとんどの原因となる。いくつかの態様において、作用物質の濃度と観察された応答の大きさの間の関係は、応答がインビトロでの単純化された系で測定される場合でさえも、複雑であり得るが、典型的には、S字状の濃度-効果曲線が見られる。しばしば、作用物質濃度(例えば、対象の血漿における)と測定された効果の間に単一の特徴的な関係はない。いくつかの態様において、濃度-効果曲線は、上に凹であり得る。他の態様において、曲線は、下に凹である。なお他の態様において、データプロットは直線状、S字状、または逆U字形である。さらに、結果として生じる濃度-効果関係曲線は、測定されることになっている応答がいくつかの効果の複合体である場合には、歪められ得る。いくつかの好ましい態様において、複合性濃度-効果曲線は、当業者が利用できる計算および技術を用いてより単純な成分曲線へと分解される。
【0133】
単純化された濃度-効果関係は、それらの厳密な形に関わらず、以下の4つの性質変数を有するとして見られ得る:効力、傾き、最大効果および個体変動。作用物質の効力は、濃度-効果曲線の濃度軸との交差により測定されることを当業者は認識しているものと思われる。効力はしばしば、所望の効果を生じるのに必要とされる作用物質の用量として表されるが、複雑にする薬物動態学的変数を避けるために、インビトロ系における所望の状況に最もぴったりと近づく、対象における(例えば、血漿における)作用物質の濃度に関するものとして、より適切に表される。効力は作用物質投与に影響を及ぼすが、作用物質効力のみの知識は、目標レベルを得るのに十分な用量が、都合よく、対象へ投与され得る限り、臨床用途において比較的、重要ではない。より強い作用物質が、より弱い作用物質より必ずしも治療的に優れているとは限らないことは、一般的に受け入れられている。しかしながら、この原則の一つの例外は、経皮的作用物質の領域においてである。
【0134】
作用物質が対象において誘導できる最大効果は、それの最大効果または臨床効果と呼ばれている。作用物質の最大効果は、典型的には、作用物質およびそれの受容体-エフェクター系の性質により決定され、濃度-効果曲線のプラトーにおいて反映される。しかしながら、臨床用途において、作用物質の用量は、望ましくない効果(例えば、毒性)により制限されうり、作用物質の本当の最大効果は、実際には、対象を傷つけることなく達成できないものであり得る。
【0135】
濃度-効果曲線の勾配および形は、少なくとも一部、作用物質の受容体への結合を記載する曲線の形を含め、作用物質の作用機構を反映する。濃度-効果曲線の上昇は、作用物質の臨床的に有用な用量範囲を示す。本明細書に列挙される用量範囲は、理にかなった薬物動態学的原則に基づいた近似値であること、および実際の応答は、作用物質の同じ濃度を与えられた異なる個体の間で変動し、時間が経てば、特定の個体においてさえ変動することを当業者は認識しているものと思われる。濃度-効果曲線は、平均応答に基づいているか、または特定の時間での特定の個体における実際の応答を反映するように作成されているかのいずれかである。
【0136】
特定の対象において特定された効果を生じる作用物質の濃度は、個体有効濃度と呼ばれている。個体有効濃度は、通常、対数正規分布を示し、結果として、所望の効果に達することの頻度に対して濃度の対数をプロットすることから正常変動曲線を生じる。作用物質濃度の関数としての、所望の効果に達する個体の累積頻度分布は、濃度-パーセント曲線または素量的濃度-効果曲線と呼ばれている。この曲線の形は、典型的にはS字状である。濃度-パーセント曲線の勾配は、個々の患者における閾値から最大効果までの濃度範囲の表現よりむしろ、集団における薬物動力学的変動性の表現である。
【0137】
中央値有効用量(ED50)は、集団の50%において所望の効果を生じるのに十分な作用物質の用量であることを当業者は認識しているものと思われる。
【0138】
前臨床薬物試験において、用量(MTD)は、実験動物において測定される。MTD対ED50の比は、作用物質の治療指数の表示であり、所望の効果を生じることにおける作用物質の選択性の尺度である。臨床試験において、毒性効果を生じるのに十分な作用物質の用量、または好ましくは濃度は、臨床の治療指数を提供するために集団における治療効果に必要とされる濃度と比較される。しかしながら、集団における個々の薬物動力学的変動のせいで、たいていの対象において治療効果を生じるのに必要とされる作用物質の濃度または用量は、時折、作用物質が大きな治療指数を有するにも関わらず、いくらかの対象において毒性を生じる濃度と重なる。単一の効果を生じる治療剤はほとんどなく、従って、測定されることになっている効果に依存して、作用物質についての治療指数は異なり得る。
【0139】
本発明の好ましい態様は、投与レベルおよび計画を個別化するためのアプローチを提供する。好ましい態様において、特定の対象についての最適な処置計画は、限定されるわけではないが、投与された作用物質に対する対象応答における変動の可能性のある源、診断詳細(例えば、疾患の重症度および病期、併発症の存在など)、受けるべきその他の処方箋および非処方箋薬、あらかじめ定められた効力目標、許容される毒性限界、処置対未処置または他の様々な有効作用物質での処置の費用便益分析、対象遵守の可能性、可能性のある服用間違い、作用物質吸収の速度および程度、対象の身体サイズおよび気質、作用物質の分布、作用物質の薬物動態学的プロフィール(例えば、生理学的変数、病理学的変数、遺伝的因子および素因、薬物相互作用、可能性のある薬剤耐性、クリアランスの推定速度)、可能性のある薬物-受容体相互作用、機能状態、ならびにプラシーボ効果を含む、様々な生物学的および薬理学的因子を考慮した後に設計される。
【0140】
好ましい態様において、臨床医は、対象において投与された作用物質の最終的な効果を測定するための適切なマーカーを選択する。本発明は、いくつかの態様において、作用物質の効果の適切なマーカーが、いくつかの測定可能な生物学的状態または化学的レベル(例えば、毒素負荷、ウイルス力価、抗原負荷、温度、炎症、血球数、抗体、腫瘍形態など)における減少(または増加)を含むことを企図する。多数の診断方法および試験が、限定されるわけではないが、細胞培養アッセイ(例えば、軟寒天における浸潤アッセイなど)、ラジオグラフィー(例えば、胸部X線)、コンピュータ断層撮影法、またはコンピュータ体軸断層撮影(CAT)スキャン、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、磁気共鳴画像法(MRIまたはNMRI)、マンモグラフィー、超音波検査(経膣、経結腸直腸)、シンチマンモグラフィー(例えば、テクネチウム99mセスタミビ(sestamib)、テクネチウム99mテトロホスミン(tetrofosmin))、吸引(例えば、子宮内膜)、触診、PAPテスト(スメア)、S状結腸鏡検査(例えば、フレキシブル光ファイバー)、糞便潜血検査(例えば、グアヤクに基づくFOBT)、直腸指診、結腸鏡検査、仮想結腸鏡検査(結腸グラフィー(colonography)としても知られている)、バリウム注腸、検便(例えば、K.W. Kinzler and B. Vogelstein, Cell, 87(2):159-70 (1996); S.M. Dong et al., J. Natl. Cancer Inst., 93(11):858-865 (2001); G. Traverso et al., N. Engl. J. Med., 346(5):311-20 (2002), G. Traverso et al., Lancet, 359(9304):403 (2002); およびD.A. Ahlquist et al., Gstroenterology, 119(5):1219-1227 (2000)参照)、血清前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング、内視鏡検査、ガリウムスキャン、骨髄および組織生検(例えば、コア針、経皮針生検、開胸術、子宮内膜など)および組織学的検査、直接的および/または間接的臨床観察(例えば、患者調査、問診、または質問表)、生物学的組織、液体およびそれらの中のマーカーの細胞学的試料採取ならびに収集(例えば、血液、尿(例えば、血尿スクリーニング、尿細胞学的検査)、痰(例えば、痰細胞学)、糞、CNS液(例えば、LP、脊髄穿刺)、タンパク質およびペプチドを含む血液生成物(例えば、Bcl-2ファミリータンパク質)、癌マーカー(例えば、CA 125(卵巣癌)、CA 15-3(乳癌)、CEA(卵巣、肺、乳房、膵臓、および胃腸管癌)、PSA(前立腺癌)、p53遺伝子産物、MIC2遺伝子産物)、代謝産物(例えば、バニルマンデル酸(VMA)およびホモバニリン酸(HVA))、抗原(例えば、血清α-フェトプロテイン(AFP))、塩、ミネラル、ビタミン、可溶性因子、不溶性因子、核酸など)を含め、様々なマーカーに関する情報を集めるために利用できる。
【0141】
好ましい態様において、作用物質の毒性および治療効力は、例えば、MTDおよびED50を測定するための、細胞培養物または実験動物における標準的薬学的方法を用いて測定される。大きな治療指数を示す作用物質が好ましい。細胞培養アッセイまたは動物モデルから得られたデータは、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ(Equus caballus)、ネコ(Felis catus)およびイヌ(Canis familiaris)など)における投薬範囲を策定するために用いられ得る。好ましい投薬濃度は、作用物質についての計算されたまたは観察されたED50値に近い。より好ましい投薬濃度は、作用物質のED50に近く、かつほとんど、または全く毒性を引き起こさない。任意の与えられた用量は、製剤、患者の感受性、および投与経路に依存して、任意の特定の作用物質についての治療指数内で変動し得る、治療指数を超え得る、または治療指数より低くあり得る。
【0142】
実施例
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様および局面を実証かつさらに例証するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0143】
方法
腫瘍確立および分析
ヒト乳癌腫瘍は、以前に報告されているように1、8週齢の雌NOD-SCIDマウスにおいて確立された。
【0144】
細胞培養
継代-1または継代-2の原発乳癌細胞が、ウシ胎児血清(1%)、インスリン(5 μg/ml)、ヒドロコルチゾン(1 μg/ml)、EGF(10 μg/ml)、コレラ毒素(0.1 μg/ml)、トランスフェリンおよびセレニウム(GIBCO BRL、推奨希釈度)、ペニシリン/ストレプトマイシン、ならびにフンギゾン(Gibco/BRL)を追加したHAM-F12培地において三つ組のコラーゲンコーティングされた12ウェルの皿にまかれた。培地は、2日に1回、交換された。
【0145】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーのために細胞を調製するために、マウスにおいて1回または2回継代されたヒト乳癌腫瘍1の単細胞懸濁液は、腫瘍を細かに切り刻み、それらをM199培地(Gibco/BRL, Rockville, MD)において一定で撹拌しながら、37℃で2〜4時間、コラゲナーゼ3(Worthington)の200 u/mlで消化することにより作製された。抗体は、抗CD44、抗CD24、抗ESA-FITC(Biomeda, CA)、抗H2Kおよびヤギ抗ヒトNotch4(Santa Cruz Products, Santa Cruz, CA)を含んだ。注をつけられていない限り、抗体はPharmingen(San Diego, CA)から購入された。抗体は、実験に依存して、様々な蛍光色素へ直接的に結合された。すべての実験において、マウス細胞は、フローサイトメトリー中、H2K+(クラスI MHC)細胞を捨てることにより除去された。死んでいる細胞は、生存度色素7-AADを用いて除去された。フローサイトメトリーは、FACSVantage(Becton Dickinson, San Jose, CA)上で行われた。
【0146】
Notch受容体アッセイ
HES-1−ルシフェラーゼ受容体構築物は、HES-1 Notch応答エレメントを用いて作製された38。-194と+160の間のHES-1マウス遺伝子の断片は、PCRにより増幅され、pGL2基本的ベクター(Promega)へKpnI部位とBgl II部位の間にサブクローニングされた。MCF-7細胞は、HES-1-lucおよびpSV2Neoを同時トランスフェクションされ、ジェネテシンを含む培地において選択された。トランスフェクションされたMCF-7細胞は、Notch4ポリクローナル抗体(Santa Cruz; 20 ug/ml最終濃度)、可溶性Delta-Fc(13)、もしくはNotch4抗体ブロッキングペプチド(4 mg/100 ml最終濃度、Santa Cruz Products)の存在下または非存在下において、12ウェルプレートで同時培養された。ルシフェラーゼアッセイは記載されているように38、行われた。Delta-FcまたはFc対照タンパク質は、それらを分泌するように操作された293細胞の上清から濃縮された11。Delta-FcまたはFc対照タンパク質は、架橋抗Fc抗体(Jackson Immunosearch)と共に乳癌細胞培養物へ添加された11
【0147】
アポトーシスアッセイ
10,000個〜20,000個の腫瘍形成性T1細胞(ESA+CD44+CD24-/low系統-)、またはT5、T7およびT8由来の系統-腫瘍細胞は、フローサイトメトリーにより分別され、コラーゲンコーティング化組織培養プレート上で増殖された。抗Notch4ポリクローナル抗体(Santa Cruz, CA)はその後、培地へ添加され(20 mg/ml最終濃度)、一方、PBSが対照プレートへ添加された。抗Notch4抗体をブロックするために、抗Notch4抗体は、ブロッキングペプチド(Santa Cruz, CA)と氷上で30分間プレインキュベートされ、その後、それが培地へ添加された。48時間後、細胞はトリプシン処理され、収集された。105個の細胞が、HBSS 2% 熱不活性化子ウシ血清において懸濁され、その後、生きている細胞における活性カスパーゼを検出するために、FAM-DEVD-FMK、カスパーゼ3および7に特異的なカルボキシフルオレセイン標識ペプチド基質(CaspaTag(商標)カスパーゼ活性キット、Intergen Company, NY)、を用いてアポトーシスについてアッセイされた。カスパーゼ陽性細胞は、FACSVantageフローサイトメーター(Becton Dickinson, CA)を用いて、陰性のものと区別された。細胞周期およびアポトーシスについてのPI染色は、記載されているように39、行われた。
【0148】
組換えアデノウイルス
Ad-GFP-dnMAML1と名付けられたE3欠損アデノウイルスベクターは、以下のように構築された:ヒトMAML1のアミノ酸1位〜302位のコード領域は、EcoRI部位およびATG開始コドンを含むフォワードプライマーならびにHpaI部位を含むリバースプライマーでのPCRにより、正常乳房細胞から作製された。結果として生じたDNA断片は、MSCVneoEBベクターにIRES-GFP遺伝子の上流にクローニングされた。dnMAML1-IRES-GFPはその後、アデノウイルスシャトルベクターpACCMV2へEcoRIおよびBamHI部位にクローニングされた。組換えアデノウイルスは、その後、University of Michiganウイルスコアで作製された。細胞は、12ウェルプレートにおいて培養され、感染事象は3連で実行された。ウイルス感染は、様々な濃度でのウイルス粒子をFBSを含まない培地へ添加することにより行われた。初めに、最適なウイルス濃度が、高い遺伝子発現および細胞毒性を最小にするための低いウイルス力価の最適なバランスに達するようにAD-GFPを用いることにより、各細胞系または初代細胞について決定された。インキュベーションの4時間後、感染培地は、各細胞型について適切なFBS量を追加された。形質導入効率(感染後24時間)は、40Xの倍率での3つの別々の顕微鏡視野からの、GFP陽性細胞の数を細胞の総数で割ることにより、またはFACSがGFPを調べるために用いられる場合のCellquestにより、計算された。
【0149】
PCR分析
Fringe、Notchおよびそれらのリガンドの遺伝子発現分析は、定量的RT-PCRにより行われた。調べられる遺伝子についてのPCR反応のためのプライマーは、Applied Biosystemsから購入された。2000個の腫瘍形成性および非腫瘍形成性細胞は、上記のマーカーを用いて、各集団および各アッセイされる遺伝子について3連でフローサイトメトリーにより単離された。RNA単離は、GIBCO BRLプロトコールに従ってTrizolを用いて行われた。cDNA作製は、オリゴdTアンカープライマーを用いて行われ、PCR反応は、Taqman Assay-on-demandシステム(Applied Biosystems)を用いて調製された。PCR反応は、核酸配列を検出および定量化する高処理量のリアルタイムPCRシステムである、ABI PRISM(登録商標)7900HT Sequence Detection System(AB)上で実行された。PCR産物のアガロースゲル電気泳動分析は、単一のPCR産物を実証した(データ示さず)。示差的な遺伝子発現の統計学的解析は、2ΔΔCT方法を用いて行われた40
【0150】
ウェスタン分析
pcDNA3をトランスフェクションされたMCF-7細胞(MCF-7-V)、ドミナントネガティブなFADDをトランスフェクションされたMCF-7細胞(MCF-7/dnFADD)27、およびBcl-XLをトランスフェクションされたMCF-7細胞の2クローン(MCF-7/BCL-XL、クローン1および2)28由来の細胞可溶化物の等量が、予想されるタンパク質の発現について試験された。293T細胞は、pcDNA3-FLAG-BCL-XLを一過性にトランスフェクションされた。FLAG-BCL-XLタンパク質hADの発現は、抗FLAG抗体を用いて検証されている。AUIタグ付きdnFADDタンパク質を検出するために、抗AUIマウスモノクローナル抗体(1/1,000)が用いられた(Covance, Berkeley-CA)。BCL-XLレベルは、抗BCL-Xs/l(S-18)ウサギポリクローナル抗体(希釈1/500)(Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz-CA)を用いて検出された。
【0151】
原発腫瘍1、腫瘍4(T1およびT4と名付けられた)について、腫瘍形成性ESA+CD44+CD24-/low系統-集団(Tと名付けられた)からの2000個の細胞、または各腫瘍由来の非腫瘍形成性集団(NTと名付けられた)からの2000個の細胞の試料は、以前に記載されているように1、分別された。原発腫瘍2、3および5(T2、T3およびT5と名付けられた)について、各腫瘍由来の2000個のH2K-細胞が、以前に記載されているように、分別された。これは、腫瘍形成性および非腫瘍形成性癌細胞の混合された集団を表している。各遺伝子は、3つの独立して分別された細胞の試料を用いて分析された。(+)は、遺伝子の発現が検出されたことを示す。(-)は、遺伝子発現が検出されなかったことを示す。(ND)は、アッセイが行われなかったことを示す。4つのNotch受容体のそれぞれ、加えて、DeltaおよびJaggedファミリーのNotchリガンドの分析が示されている。Fringe(Lunatic、ManicおよびRadical)もまた分析された。
【0152】
Notch経路シグナル伝達の制御を通しての癌幹細胞増殖の制御
この実施例は、Notch4を直接的に標的化することなくNotch経路シグナル伝達を標的化することにより、細胞増殖を制御するための化合物および方法を記載する。
【0153】
γ-セクレターゼインヒビター。細胞生存度は、Notchを発現させることが示されている、三つ組の20,000個のMCF-7細胞を6ウェルプレートにまくことによりアッセイされた。48時間後、γ-セクレターゼインヒビターの1.19 μg/mlが細胞へ加えられた。全細胞およびトリパンブルー陰性(生存)細胞は、12、24および48時間後、数えられ、対照ウェルと比較した生存細胞の%が測定された。
【0154】
本発明の開発中に行われた実験は、Notchシグナル伝達妨害物の、MCF-7細胞の生存および増殖への効果を試験するように設計された。細胞は、Notch受容体の最終切断を阻害して、Notch細胞内(IC)ドメインの放出を阻止し、本質的にはNotchシグナル伝達を遮断する、γ-セクレターゼインヒビターと共培養された(Karlstrom et al., J. Biol. Chem., 277:6763 (2002))。その後、細胞生存度が、インヒビターへの曝露後、アッセイされた。生存細胞の割合は、曝露後12、24および48時間目に測定された。24時間後、生存度における有意な減少があり、細胞の大部分は、48時間後に死滅した。γ-セクレターゼインヒビターのNotchシグナル伝達経路への特異性を測定するために、安定にトランスフェクションされたMCF-7細胞は、HES-1プロモーターの制御下においてレポータールシフェラーゼ遺伝子と共に用いられた。HES-1プロモーター、Notchシグナル伝達の下流要素、のトランス活性化または抑制は、その後、標準ルシフェラーゼアッセイでモニターされ得る。細胞は、γ-セクレターゼインヒビターと共培養され、ルシフェラーゼ活性における変化をモニターされた。インヒビターは明らかに、曝露から12時間後、ルシフェラーゼの活性を減少させたが、細胞生存度はまだ高く、それがNotch受容体の発現を特異的に抑制したことを示している。
【0155】
Notchシグナル伝達の阻害がMCF-7細胞において細胞死を引き起こす機構を決定するために、カスパーゼ活性化が、γ-セクレターゼインヒビターへの曝露での細胞において測定された。曝露後24時間目に、細胞における分解されたDNAの蓄積がアッセイされたが、それはアポトーシスの特徴である。対照MCF-7細胞培養物と比較して、γ-セクレターゼインヒビターに曝露された細胞における活性化されたカスパーゼ3/7を有する細胞の数の実質的な増加があった。これらのデータは、MCF-7細胞系において、遮断されたNotchシグナル伝達経路が、カスパーゼ3/7活性化によるアポトーシスを誘導したことを示している。
【0156】
実験は、乳房腫瘍を有する5人の異なる患者由来の乳癌細胞のインビトロで増殖する能力への、Notchシグナル伝達の阻害の効果を試験するために行われた。患者由来の細胞が培養された。Notchシグナル伝達の役割は、これらの5つの異なる細胞培養物をγ-セクレターゼインヒビターに曝露することにより調べられた。細胞を、コラーゲンコーティング化プレート上の前に確立された細胞培養培地に置き、増殖するようにさせた。インヒビターは、その後、培養物へ加えられ、生存度アッセイが48時間後に行われた。γ-セクレターゼインヒビターは、図7に示されているように、これらの細胞の生存度へ劇的な効果を生じた。これらのデータは、Notch活性化が、これらの新規の腫瘍のすべての5つにおいて乳癌細胞の生存または増殖を促進することを実証した。
【0157】
インビボでのNotchシグナル伝達の阻害が腫瘍形成性癌細胞による腫瘍形成を阻害する
実験は、インビボで、Notchシグナル伝達の遮断が乳癌細胞による腫瘍形成を阻害するかどうかを決定するために行われた。以前に、腫瘍形成性癌細胞と呼ばれる、乳癌腫瘍における癌細胞の少数派のみが、異種移植片マウスモデルにおいて腫瘍を形成し、一方、癌細胞の多数派はこの能力を欠いていることが見出された(Al-Hajj et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:3983 (2003))。患者乳房腫瘍1(TP1)由来のわずか1000個の腫瘍形成性癌細胞、および患者乳房腫瘍4(TP4)由来の10,000個の腫瘍形成性癌細胞が、NOD/SCIDマウスにおいて新しい腫瘍を形成することができた(Al-Hajj et al., 前記)。それゆえに、TP1およびTP4腫瘍形成性癌細胞は、対照アデノウイルスかまたはdnMAML1アデノウイルスかのいずれかと3時間、インキュベートされた。NOD/SCIDマウスは、各群の10,000個または1,000個のTP1腫瘍形成性癌細胞を注射された。マウスへの注射の時点において対照アデノウイルスかまたはdnMAML1アデノウイルスかのいずれかに感染した癌細胞の大部分はまだ生存しているにしても、dnMAML1アデノウイルスに感染した細胞、感染TP1細胞、の10個の注射のうちどれも腫瘍を形成せず、一方、対照アデノウイルスに感染した細胞の注射のすべては、腫瘍を形成した。同様に、対照アデノウイルスに感染した10,000個のTP4細胞のすべての5個の注射は、腫瘍を形成したが、dnMAML-1アデノウイルスに感染した10,000個の細胞の注射のどれも形成しなかった。これらのデータは、Notchシグナル伝達が、インビボで癌細胞生存および新しい腫瘍の形成にとって重要であり、本発明の方法によるこの経路の遮断が、これらの細胞の腫瘍を形成する能力の喪失へと導くことを示している。
【0158】
参考文献




【0159】
上の明細書において挙げられたすべての刊行物および特許は、参照として本明細書に組み入れられている。本発明の記載された方法および系の様々な改変ならびにバリエーションは、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、当業者にとって明らかであると考えられる。本発明は、特定の好ましい態様に関して記載されているが、主張されているような本発明が、そのような特定の態様に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、関連分野の業者にとって明らかである、本発明を実施するための記載された様式の様々な改変は、本発明の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】乳癌細胞におけるNotchシグナル伝達を示す。図1Aは、可溶性Deltaがコロニー形成を促進することを示す。ESA+CD44+CD24-/low系統-T1腫瘍形成性乳癌細胞が分別され、組織培養培地のみ(対照)、Fc対照断片11を追加した培地(Fc)、またはDelta-Fcを追加した培地(Delta)におけるコラーゲンコーティング化プレート上にまかれた。可溶性Delta-Fcとの細胞の培養は、結果として、対照細胞または対照Fc断片11だけで処理された細胞のいずれよりも5倍多いコロニーを生じた。図1Bは、ドミナントネガティブなアデノウイルスベクターによるNotchシグナル伝達の阻害を示す。MCF-7細胞は、Notch応答性HES-1プロモーターの制御下におけるルシフェラーゼミニ遺伝子を安定にトランスフェクションされた38。ルシフェラーゼ活性は、その後、Delta-Fcを含む培地においてウイルスと培養されない対照MCF-7細胞において(対照)、またはGFPのみのアデノウイルス(Ad-GFP)もしくはドミナントネガティブなアデノウイルスベクターdnMAML1(Ad-GFP-dnMAML1)での感染から48時間後に、測定された。Ad-GFPアデノウイルスはそうではなかったが、Ad-GFP-dnMAML1アデノウイルスは、ルシフェラーゼ活性を有意に減少させた。図1Cは、Notch受容体転写下方制御の、原発腫瘍細胞への効果を示す。ESA+CD44+CD24-/low系統-癌細胞1(T1)または異なる患者由来の系統-癌細胞1(T2〜T5)は、12ウェルのコラーゲンコーティング化組織培養プレートにおいて分別された。細胞を、示されているように、ドミナントネガティブなアデノウイルス構築物または対照GFPウイルスに感染させた。トリパンブルー排除法が、感染から48時間後に生存細胞を数えるために用いられた。dnMAML1は、T1、T2、T4およびT5において生存細胞の数を有意に減少させたが、T3細胞への効果はより少なかった。
【図2】腫瘍形成性乳癌細胞におけるNotch4シグナル伝達を示す。図2Aは、Notch経路レポーター遺伝子アッセイの結果を示す。ルシフェラーゼ活性は、対照Fc断片(+Fc)、可溶性Delta-Fc(+Delta)、可溶性Delta-Fcおよび抗Notch4ポリクローナル抗体(+N4Ab)と、または可溶性Delta-Fc、抗Notch4ポリクローナル抗体、加えてポリクローナル抗体が産生されたブロッキングペプチド(+ブロック)とインキュベートされている、HES-1/ルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定にトランスフェクションされたMCF-7細胞から得られた抽出物において測定された。抗Notch4抗体は、ルシフェラーゼ活性を阻害し、この阻害は、ブロッキング抗体のブロッキングペプチドとのプレインキュベーションにより一部分は、逆転した。図2Bは、乳癌細胞によるNotch4発現を示す。NOD/SCIDマウスにおいて1回継代されている、分別されていない癌細胞および腫瘍形成性(CD44+CD24-/low系統-)T1細胞は、Notch4の発現についてRT-PCRにより分析された。RT-PCRはまた、用いられたMCF-7細胞がNotch4 mRNAを発現させたことを確認するために行われた。図2Cは、コロニー形成を示す。20,000個のT1またはT4癌細胞を、Delta-Fc(+Delta)またはFc断片のみ(+Fc)のいずれかを含む表示された組織培養培地において14日間、増殖させた。3連の培養は、抗体なし(+Delta)、ポリクローナル抗Notch抗体(+N4Ab)、または抗Notch4抗体プラスブロッキングペプチド(+N4Ab+ブロック)を追加した表示された培地を用いて行われた。図2Dは、各条件において14日間後に形成された代表的なコロニーの写真を示し(10x対物レンズ)、表は、各ウェルにおいて数えられたコロニーの数を示している。可溶性Delta-Fcは、コロニー形成を刺激したが(p<0.001)、ポリクローナル抗Notch4抗体は、Delta-Fcの存在下においてコロニー形成を阻害した(p<0.001)。抗体が、抗Notch4抗体を産生するために用いられたペプチドとプレインキュベートされた場合、抗体の阻害効果は、ほとんど完全に逆転された(p<0.001)。結果は、3つの独立した実験を代表している。図2Eは、ESA+CD44+CD24-/low系統-腫瘍形成性細胞が第一または第二継代T1腫瘍から単離されたことを示している。200個の細胞は、対照緩衝液において、またはポリクローナル抗Notch4抗体とインキュベートされた後に、マウスの乳房脂肪体の領域へ注射された。腫瘍形成は、5ヶ月間の期間に渡ってモニターされた。2つの独立した実験からの結果である。
【図3】アポトーシスの機構を示す。図3Aは、抗Notch4抗体で処理された癌細胞の生存度を示す。ESA+CD44+CD24-/low系統-腫瘍形成性腫瘍1(T1)またはMCF-7細胞は、抗Notch抗体と48時間、培養された。細胞は、収集され、PIで染色され、生存度は、フローサイトメトリーにより測定された。図3Bは、抗Notch4抗体によるカスパーゼ活性化を示す。ESA+CD44+CD24-/low系統-腫瘍形成性腫瘍1(T1)細胞、H2K-腫瘍4(T4)もしくは腫瘍5(T5)細胞、またはMCF-7細胞は、対照培地(-)または抗Notch4抗体を含む培地(+)において培養され、36時間後、カスパーゼ3/7は、蛍光基質CaspoTag(商標)を用いてフローサイトメトリーにより測定された。抗Notch4抗体への曝露後、活性化されたカスパーゼ3/7を発現させる細胞の割合は、対照細胞と比較して、T1腫瘍始原細胞、T5細胞およびMCF-7細胞において著しく増加した。T4細胞は、カスパーゼ活性化の高レベルを示さなかった。図3Cおよび3Dは、Notch転写トランス活性化の阻害の、MCF-7細胞への効果を示す。野生型MCF-7細胞、Bcl-XLまたはドミナントネガティブなFADD(dnFADD)を安定にトランスフェクションされたMCF-7細胞を、dnMAML1または対照GFPアデノウイルスに感染させた。48時間後、対照アデノウイルスに感染した細胞に対するdnMAML1 ADに感染している生存細胞の割合は、図3Cに示されている。図3Dは、表示されているように、対照GFPまたはGFP-dnMAML1アデノウイルスのいずれかに感染した各細胞型の顕微鏡写真(20x対物レンズ)を示す。図3Eは、MCF-7細胞系におけるdnFADDおよびBCL-XLの発現レベルを示す。親のMCF-7細胞(MCF-7wt)、ドミナントネガティブなFADDを発現させるミニ遺伝子をトランスフェクションされたMCF-7細胞(MCF-7dnFADD)、またはBCL-XLをトランスフェクションされた2つの異なるクローン(MCF-7-BCL-XL-c1およびMCF-7-BCL-XL-c2)による表示されたタンパク質の発現を測定するためにウェスタンブロットが行われた。FLAGタグ付きBCL-XLをトランスフェクションされた293T細胞は、BCL-XLの発現についての陽性対照としての役割を果たす。dnMAML1は、親のMCF-7細胞系およびMCF-7/dnFADD細胞系における生存細胞の数を有意に減少させるが、2つのMCF-7/Bcl-XL細胞系へは、極小の効果のみを生じる。
【図4】腫瘍形成性および非腫瘍形成性癌細胞の単離を示す。以前に、NOD/SCIDマウスにおいて腫瘍形成性について試験されている腫瘍1(a、b、c)または腫瘍4(d、e、f)の分集団を単離するためにフローサイトメトリーが用いられた1。細胞は、ESA、CD44、CD24、系統マーカー、マウス-H2K(マウスから得られた継代された腫瘍について)に対する抗体および7AADで染色された。死細胞(7AAD+)、マウス細胞(H2K+)および正常細胞は、すべての分析から排除された。各プロットは、生きているヒト系統-癌細胞のESA CD24染色パターンを描く1。細胞の分別された腫瘍形成性(c、f)および非腫瘍形成性(b、e)集団の再分析が示されている。腫瘍形成性細胞は、検出可能なCD44の発現に基づいて単離された(ゲートは示されず)。T4細胞のESA+CD44+CD24-/low系統-集団は、腫瘍形成性の可能性を低下させたが、存在している。
【図5】アデノウイルスのNotchシグナル伝達の阻害を示し、Ad-GFP-dnMAML1ウイルス構築物を示す。ヒトMAML1のアミノ酸1位〜302位のコード領域は、MSCVneoEBベクターへIRES-GFP遺伝子の上流にクローニングされた。dnMAML1-IRES-GFP断片は、その後、アデノウイルスシャトルベクターpACCMV2へ、EcoRIおよびBamHI部位にクローニングされた。
【図6】γ-セクレターゼインヒビターの、MCF-7細胞生存度およびNotch受容体活性化への効果を実証するグラフを示す。細胞生存度は、Notchを発現させることが示されている三つ組の20,000個のMCF-7細胞を6ウェルプレートにまくことによりアッセイされた。48時間後、γ-セクレターゼインヒビターの様々な量が細胞へ加えられた。全細胞およびトリパンブルー陰性(生存)細胞が、24時間後に数えられ、細胞生存率が測定された。HES-1プロモーターの制御下でレポータールシフェラーゼ遺伝子を安定にトランスフェクションされたMCF-7細胞は、6ウェルプレートにおいて、上のように、様々な濃度のγ-セクレターゼインヒビターと共培養された。HES1プロモーターのトランス活性化または抑制は、標準的ルシフェラーゼアッセイでモニターされた。γ-セクレターゼインヒビターは、明らかに、Notch受容体の発現を抑制し、細胞の生存度を有意に減少させる。これらの結果は、γ-セクレターゼインヒビターが腫瘍形成性癌細胞におけるNotchの阻害において使用を見出すことを実証している。
【図7】γ-セクレターゼインヒビターで処理された、およびγ-セクレターゼインヒビター無しでの、培養癌細胞についての生存細胞率のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、腫瘍試料において腫瘍形成性細胞の存在を同定するための方法:腫瘍形成性細胞に特徴的な1つもしくは複数のマーカーまたは性質を検出する段階であって、1つもしくは複数のマーカーまたは性質が、非腫瘍形成性細胞に特徴的ではなく、1つもしくは複数のマーカーまたは性質が、Notch4の発現、抗Notch4抗体への曝露後の細胞死、Manic Fringeの発現、非腫瘍形成性細胞と比較してNotchリガンドDeltaの変化した発現、Jaggedの発現、およびドミナントネガティブなアデノウイルスベクターdnMAML1またはγ-セクレターゼインヒビターへの曝露後の細胞死からなる群より選択される、段階。
【請求項2】
腫瘍が乳癌腫瘍を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つもしくは複数のマーカーまたは性質の2つ以上が検出される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
腫瘍形成性細胞の存在または非存在に基づいて対象についての処置方法を選択する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
処置方法がNotch4経路インヒビターの対象への投与を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
処置方法が、対象にミトコンドリアのアポトーシスを引き起こす薬物の投与を含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
処置方法がγ-セクレターゼインヒビターの対象への投与を含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
処置方法がManic Fringeインヒビターの対象への投与を含む、請求項4記載の方法。
【請求項9】
以下の段階を含む、化合物を選択するまたは特徴付けるための方法:
a)腫瘍形成性乳房細胞を含む試料を供給する段階;
b)該試料を試験化合物に曝露する段階;および、
c)該試験化合物に応じて該細胞における変化を検出する段階。
【請求項10】
化合物が抗体を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
化合物が抗新生物性化合物を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
細胞が公知の抗新生物性治療化合物でさらに処置される、請求項9記載の方法。
【請求項13】
試料がヒト乳房組織を含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
検出段階が腫瘍形成性乳房細胞の細胞死を検出することを含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
検出段階が腫瘍形成性細胞に特徴的な1つもしくは複数のマーカーまたは性質における変化を検出することを含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
以下の段階を含む、腫瘍形成性乳房細胞を有する対象を処置するための方法:
a)対象において腫瘍形成性乳房細胞の存在を同定する段階;
b)腫瘍形成性乳房細胞の性質を同定するために腫瘍形成性乳房細胞に特徴的な1つもしくは複数のマーカーまたは性質を同定する段階;および、
c)腫瘍形成性乳房細胞の性質に基づいて治療方法を選択する段階。
【請求項17】
1つもしくは複数のマーカーまたは性質が、Notch4の発現、抗Notch4抗体への曝露後の細胞死、Manic Fringeの発現、非腫瘍形成性細胞と比較してNotchリガンドDeltaの変化した発現、Jaggedの発現、およびドミナントネガティブなアデノウイルスベクターdnMAML1またはγ-セクレターゼインヒビターへの曝露後の細胞死からなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
腫瘍形成性乳房細胞がNotch4を発現するものとして特徴付けられる場合、治療方法がNotch4経路インヒビターの対象への投与を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
治療方法が、対象からの腫瘍の外科的除去およびNotch経路インヒビターの対象への投与を含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
治療方法がNotch経路インヒビターおよび第二の抗新生物薬の対象への同時投与を含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
転移を有することが疑われる対象へNotch経路インヒビターを投与する段階を含む、転移を予防するまたは低減させる方法。
【請求項22】
Notch経路インヒビターが抗Notch4抗体を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
化合物がγ-セクレターゼインヒビターを含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
化合物がManic Fringeインヒビターを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
化合物が、ミトコンドリアのアポトーシスを引き起こす薬物を含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
投与が対象からの固形腫瘍の除去と共に行われる、請求項21記載の方法。
【請求項27】
固形腫瘍が乳房腫瘍を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
γ-セクレターゼインヒビターを対象へ投与する段階を含む、乳癌対象において腫瘍形成性細胞を低減させるかまたは除去する方法。
【請求項29】
Manic Fringeインヒビターを対象へ投与する段階を含む、乳癌対象において腫瘍形成性細胞を低減させるかまたは除去する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−526455(P2007−526455A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552240(P2006−552240)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/003419
【国際公開番号】WO2005/074633
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506265783)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (1)
【Fターム(参考)】