癌ワクチン
本開示は、血液癌、例えば、リンパ腫、白血病または骨髄腫の予防および治療において有用な、少なくとも1種のアジュバントを含むワクチンに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リンパ腫、白血病または骨髄腫などの血液癌の予防および治療において有用なワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、1つまたは複数の細胞集団が制御されずに増殖することによって正常な生物学的機能が妨げられる異常な病態である。増殖性変化は、通常、あまり組織化されていない状態への後戻りを含めた、細胞の性質の他の変化を伴う。癌細胞は、一般には「形質転換された」と称される。形質転換された細胞は、一般に、以下の性質のいくつかを示す:球状の形態、胎児性抗原の発現、成長因子非依存性、接触阻止の欠如、足場非依存性、および高密度になるまで成長すること。癌細胞は、腫瘍を形成し、「原発性」または「二次性」腫瘍と称される。原発性腫瘍により、元の形質転換された細胞が発生する器官において癌細胞が成長する。二次性腫瘍は、癌細胞が原発性腫瘍から逃れ、別の器官において二次性腫瘍を確立することから生じる。このプロセスは、転移と称され、このプロセスは、例えば、肝細胞癌または肺癌の場合と同様に、攻撃的であり得る。
【0003】
リンパ腫は、リンパ球で起こり、リンパ節において固形腫瘍を形成する癌である。リンパ腫とは、多数のリンパ球を起源とする癌を分類する用語である。例えば、B細胞腫瘍、例えば、慢性リンパ球白血病、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、バーキットリンパ腫など;T細胞腫瘍、例えば、T細胞前リンパ球性白血病、NK細胞白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、成人T細胞白血病など。さらに、リンパ腫としては、細分することができる古典的ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。上記に加えて、免疫不全に関連するリンパ腫、例えば、HIV感染に関連するリンパ腫、移植後のリンパ腫およびメトトレキサート治療に関連するリンパ腫が蔓延している。これらの後者のリンパ腫は、ワクチン接種が実行可能な療法ではないので、特定の難しさがある。リンパ腫の治療は、一般には、化学療法および放射線療法であり、これは、特定のリンパ腫および病期に応じて有効な治療であり得る。免疫不全の対象を保護するワクチンを提供することが望ましい。現在のところ、このクラスの癌に対する、ワクチン接種するための検証された有効な手段はない。
【0004】
抗体の、その抗原に対する結合特異性を決定する抗体の領域は、相補性決定領域(CDR)と称され、「超可変領域」または「イディオタイプ」とも称される。抗体の抗原結合領域は、ランダムに引き出されたアミノ酸配列で構成されているので、これらはB細胞の1つのクローンまたは少数クローンに対して独特である。したがって、これらの独特のペプチド配列は、それ自体が抗原性であり、組み合わさって抗体分子の独特のイディオタイプを構成する。抗原は、いくつものエピトープで構成されているので、同様に、イディオタイプもいくつもの「イディオトープ」で構成されている。特定のイディオタイプの精製した免疫グロブリンを用いて免疫化することにより、そのイディオタイプに対する抗体応答を生成することができる。
【0005】
免疫グロブリンに対する免疫応答を誘導することを目的として、免疫グロブリンをワクチン抗原として使用する2つのシステムがある。どちらのシステムでも、免疫応答を惹起するために、抗体の超可変領域またはイディオタイプを使用する。どちらの場合でも、抗体のイディオタイプを使用して抗イディオタイプ(抗Id)応答を生成する。第1の場合では、抗体のイディオタイプは、免疫エフェクター応答の実際の標的である。例えば、B細胞リンパ腫および白血病は、一般に、B細胞の単一のクローンから生じ、したがって、それらの細胞表面上に、腫瘍に独特の、またはほぼ独特の免疫グロブリンを発現し得る。この免疫グロブリンイディオタイプに対する免疫応答の生成は、ワクチン接種の所望の効果であり、これは、腫瘍細胞のクリアランスに役立ち得る。生成される抗イディオタイプ応答は、抗体媒介性応答とT細胞媒介性応答の両方からなり得る。したがって、免疫グロブリンイディオタイプは、腫瘍に特異的な抗原の最も良い例の1つであり得る。第2のシステムでは、何らかの理由で精製することが難しいか、直接投与すると免疫原性が低い腫瘍抗原または病原体もしくは別の供給源由来の抗原であり得る抗原と交差反応する応答を生成させるために、いわゆる「内部イメージ抗イディオタイプ抗体」を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の抗イディオタイプワクチンを含めた、イディオタイプに基づくワクチンが当技術分野で公知である。しかし、これらのワクチンには問題が伴う。第1に、リンパ腫の患者に対して、イディオタイプはその個体の腫瘍に対して独特であると思われるので、ワクチンを個別に作製しなければならず、また、多くの場合、所望のイディオタイプを分泌するハイブリドーマを作製するステップ、免疫グロブリンを精製するステップ、および、次いでKLHなどのタンパク質担体とコンジュゲートするステップを伴うワクチンの製剤化には数ヶ月かかり得る。第2に、ヒト免疫グロブリンは本質的にヒトにおける免疫原性が低く、したがって、イディオタイプに対する免疫応答を増大させるために担体とコンジュゲートさせても、抗Id抗体応答が弱い傾向がある(実際、コンジュゲートに対する応答の大部分は、免疫原性の高い担体タンパク質を対象とする)。第3に、マウスおよびヒトの両方において、イディオタイプタンパク質に対するCD4+T細胞およびCD8+CTL応答の両方が、治療反応を媒介することにおいて重要であり得、KLHなどの担体とコンジュゲートすることはCTL応答を生成するための最も効率的な手段ではないことが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、リンパ腫の予防的な治療および治療的な治療のためのワクチンおよび治療レジメンに関する。
【0008】
本発明の態様によると、
i)リンパ腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバント、またはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチンが提供される。
【0009】
CD40モノクローナル抗体が当技術分野で公知である。例えば、US2009/007471[その内容全体、特に前記抗体の可変領域のアミノ酸配列が参照により組み込まれる]には、本発明による、図12に開示されている配列で表されるワクチンにおいて使用するのに適したヒト化抗ヒトCD40およびキメラ抗ヒトCD40が開示されている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、前記第2のアジュバントは、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される。
【0011】
本発明の別の代替的な実施形態では、前記アジュバントは、TLRアゴニスト、例えば、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリイノシン・ポリシチジン酸[ポリI:C]およびそれらの誘導体などである。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、ポリI:Cである。
【0013】
ポリI:Cは、B細胞および樹状細胞によって発現されるToll様受容体TLR3に結合するアジュバントである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、細菌細胞壁誘導体、例えば、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、MPLである。
【0016】
アジュバントは、免疫細胞の活性を調節することによって抗原に対する特異的な免疫応答を増大させる物質または手順である。アジュバントの例としては、単に例として、同時刺激分子に対するアゴニスト抗体、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、リポソーム、ミョウバン、QS21が挙げられる。したがって、アジュバントは免疫調節物質である。担体は、第2の分子に結合すると、それに対する免疫応答を増大させる免疫原性分子である。担体という用語は、以下のように解釈される。担体は、第2の分子に結合すると、それに対する免疫応答を増大させる免疫原性分子である。一部の抗原は、本来免疫原性ではないにもかかわらず、キーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風トキソイドなどの外来タンパク質分子と結びつくと抗体応答を生成することができ得る。そのような抗原は、B細胞エピトープを含有するが、T細胞エピトープは含有しない。そのようなコンジュゲートのタンパク質部分(「担体」タンパク質)により、ヘルパーT細胞を刺激するT細胞エピトープが提供され、今度は、それによって抗原に特異的なB細胞が刺激されて血漿細胞に分化し、抗原に対する抗体を産生する。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞などの他の免疫細胞も刺激し、担体は、細胞に媒介される免疫ならびに抗体の生成において類似の役割を果たし得る。T細胞エピトープを欠く特定の抗原、例えば、反復B細胞エピトープを有するポリマーなど(例えば、細菌性多糖類)は、本来、限られた程度に免疫原性である。これらは、Tに依存しない抗原として公知である。そのような抗原は、はるかに強力な抗体応答を引き出す状況の下で、破傷風トキソイドなどの担体と結びつけることが有益である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、前記イディオタイプ抗原は、前記イディオタイプ免疫グロブリンのFab断片またはF(ab)2’Fd断片を含む、またはそれからなる。
【0018】
イディオタイプ抗原は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域、すなわち(Fab、F(ab)2’、Fd断片内にあってよい、またはそれどころか、重鎖可変領域および軽鎖可変領域と別の抗体の定常領域との間のキメラであってよい。
【0019】
本発明の態様によると、
i)リンパ腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片;および
iii)リンパ腫の治療において使用するための、連結したイディオタイプ抗原とCD40モノクローナル抗体アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチンが提供される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、前記リンパ腫は、B細胞リンパ腫である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、前記B細胞リンパ腫は、慢性リンパ球白血病、B細胞前リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、骨髄腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症など)、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞新生物、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、MALTリンパ腫とも称される節外周辺帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病からなる群から選択される。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫である。
【0023】
本発明の代替の好ましい実施形態では、前記リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記リンパ腫は、免疫不全関連リンパ腫である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、前記免疫不全関連リンパ腫は、HIV関連である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、前記免疫不全関連リンパ腫は、移植関連である。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記免疫不全関連リンパ腫は、メトトレキサート治療の結果である。
【0028】
本発明の別の態様によると、
i)骨髄腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバント、またはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)骨髄腫の治療において使用するための、連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチンが提供される。
【0029】
本発明のワクチンまたはワクチンを含む医薬組成物を投与する場合、それらは、薬学的に許容される調製物で投与する。そのような調製物は、常套的に、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存料、適合性の担体、補足的な免疫増強剤、および場合によって、本発明のワクチンとは別に、または、組み合わせが適合する場合、組み合わせた調製物で投与することができる化学療法剤などの他の治療剤を含有してよい。本発明のワクチンは、注射を含めた任意の従来の経路によって、またはある期間にわたる段階的な注入によって投与することができる。投与は、例えば、経口的、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮的であってよい。
【0030】
本発明の組成物は、有効量で投与する。「有効量」は、単独で、または別の用量と一緒に、所望の免疫学的応答を生じさせる組成物の量である。リンパ腫を治療する場合では、所望の応答は、疾患の進行を阻害することである。これは、単に疾患の進行を一時的に遅くすることを含んでよいが、疾患の進行を恒久的に停止することを含むことがより好ましい。これは、常套的な方法によってモニターすることができる。
【0031】
前述の方法において使用するワクチンは、好ましくは、滅菌されており、所望の応答を生じさせるための有効量を患者に投与するのに適した重量または体積の単位で含有する。応答は、例えば、腫瘍の退縮、疾患の症状の減少、アポトーシスの調節などを決定することによって測定することができる。
【0032】
ワクチンを投与するための、投与量、注射のスケジュール、注射する部位、投与形式(例えば、腫瘍内)などが前述のものと異なる他のプロトコールは当業者に公知になる。例えば、ヒト以外の哺乳動物への、試験目的または獣医学的な治療目的での組成物の投与は、上記と実質的に同じ条件下で行う。対象は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、好ましくはヒトであり、非ヒト霊長類、雌ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯類を含む。
【0033】
本発明の別の態様によると、リンパ腫の予防法または治療に適したワクチンを製造する方法であって、
i)リンパ腫を有する、またはそれにかかりやすい対象からイディオタイプ抗原を単離するステップ;
ii)前記イディオタイプ抗原をCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片と連結して複合体を形成し、場合によって、連結した複合体を単離するステップ;および
iii)少なくとも1種の追加的なアジュバントを伴った、連結した抗原/アジュバント複合体の調製物を形成するステップ
を含む方法が提供される。
【0034】
本発明の別の態様によると、リンパ腫の予防法または治療に適したワクチンを製造する方法であって、
i)リンパ腫の細胞を含む単離された生体試料を用意するステップ;
ii)CD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片を産生する単離されたハイブリドーマ細胞を用意するステップ;
iii)リンパ腫の細胞と前記ハイブリドーマ細胞系との融合を促進してハイブリッド細胞を形成するのに適した調製物を形成するステップ;
iv)前記ハイブリッド細胞を、1つの免疫グロブリンまたは部分がCD40に対して特異的であり、第2の免疫グロブリンまたは部分がリンパ腫のイディオタイプである少なくとも2つの免疫グロブリンまたはその抗原結合部分を含むモノクローナル抗体についてスクリーニングするステップ;および
v)連結した抗原/アジュバント複合体と、少なくとも1種の追加的なアジュバントとの調製物を形成するステップ
を含む方法が提供される。
【0035】
本発明の好ましい方法では、前記第2のアジュバントは、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される。
【0036】
本発明の別の代替の方法では、前記アジュバントは、TLRアゴニスト、例えば、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などである。
【0037】
本発明の好ましい方法では、前記アジュバントは、ポリI:Cである。
【0038】
本発明の好ましい方法では、前記アジュバントは、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である。
【0039】
本発明の好ましい方法では、前記アジュバントは、MPLである。
【0040】
本発明の態様によると、
i)リンパ腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;および
ii)リンパ腫の治療において使用するための、イディオタイプ抗原に対する免疫応答を増強するアジュバント
を含むワクチンが提供される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される。
【0042】
本発明の別の代替の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、ポリI:Cである。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、MPLである。
【0046】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という単語、およびその単語の変形、例えば、「含むこと(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むが、これに限定されない(including but not limited to)」を意味し、他の部分、添加物、構成成分、整数またはステップを排除することを意図しない(そして、排除しない)。
【0047】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、単数形は、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、複数形を包含する。具体的には、不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数だけでなく複数も意図していると理解されるべきである。
【0048】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と併せて記載されている特徴、整数、特性、化合物、化学的部分または化学基は、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または実施例に、それに適合しない場合を除き、適用可能であると理解されるべきである。
【0049】
ここで、本発明の実施形態を、単に例として、以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ワクチンを2ヶ月隔てて2回投薬した後の、マウス(群当たりn=5)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および60日目における生存[B]を示すグラフである。
【図2】2回目のワクチン接種の14日後、腫瘍の攻撃前のIgG抗A20抗体の応答を示すグラフである。
【図3】2回目のワクチン接種の14日後、腫瘍の攻撃前のIgG抗A20抗体の応答を示すグラフである。
【図4】単回のワクチン接種の14日後、腫瘍の攻撃前のIgG抗A20抗体の応答を示すグラフである。
【図5】ADX40−A20コンジュゲートワクチンのIgG1アイソタイプおよびIgG2aアイソタイプを単回投薬した後の、マウス(群当たりn=5)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および60日目における生存[B]を示すグラフである。
【図6】ワクチンを2週間隔てて2回投薬した後のマウス(群当たりn=5)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および60日目における生存[B]を示すグラフである。
【図7】ワクチンをMPLと一緒に、またはMPLなしで、2週間隔てて2回投薬した後のマウス(群当たりn=5)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および60日目における生存[B]を示すグラフである[免疫試験5a]。
【図8】ワクチンを、ポリI:Cと一緒に、またはポリI:Cとなしで、2週間隔てて2回投薬した後のマウス(群当たりn=10)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および生存曲線[B]を示すグラフである[免疫試験5b]。
【図9】ワクチンをGM−CSFと一緒に、2回投薬した後の、マウス(群当たりn=10)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A、C]および生存曲線[B、D]を示すグラフである[免疫試験6および10]。
【図10】ADX40−A20コンジュゲートまたはKLH−A20コンジュゲートの用量レベルを増加させた後の、マウス(群当たりn=10)のA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A、C]および生存曲線[B、D]を示すグラフである[免疫試験7および9]。
【図11】ADX40リンパ腫ワクチンの作用様式の潜在性を例示しているグラフである。
【図12】図12a:ヒトCD40に結合するCD40モノクローナル抗体の可変性の重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。 図12b:ヒトCD40に結合するCD40モノクローナル抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図12c:ヒトIgG1重鎖定常領域と融合したCD40可変領域を含むキメラ抗体を示す図である。 図12d:ヒトCD40に結合するCD40モノクローナル抗体の可変性の軽鎖のヌクレオチド配列を示す図である。 図12e:ヒトCD40に結合するCD40モノクローナル抗体の可変性の軽鎖のアミノ酸配列を示す図である。 図12f:図12eで言及された全長の可変性の軽鎖を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
材料および方法
コンジュゲートするためのイディオタイプタンパク質の作製
リンパ腫ワクチンまたは白血病ワクチンに組み入れるための腫瘍イディオタイプタンパク質は、2つの一般の方法のうちの1つによって得ることができる。どちらの場合でも、腫瘍細胞は、まず生検によって得られる。
【0052】
第1の方法は、腫瘍細胞をヒト/マウスヘテロハイブリドーマまたは骨髄腫株などの同様の不死化細胞株と融合して、別のハイブリドーマを作製し、次いでそれを、腫瘍イディオタイプタンパク質の分泌に基づいて選択する、ハイブリドーマレスキューである。次いで、選択されたハイブリドーマを組織培養物中、通常バイオリアクター内で成長させて上清を得、それからイディオタイプタンパク質を精製する123。
【0053】
第2の方法は、組換えIdの作製である。この方法では、Idを含有し腫瘍に特異的な免疫グロブリンの重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方のcDNA配列を、PCRなどの標準の分子生物学的方法によってクローニングする。次いで、クローニングされた配列の両方を、共有されている免疫グロブリン定常領域の配列を含有するプラスミドに挿入し、最終的に、完全なプラスミドを細菌、哺乳動物の細胞、昆虫細胞、酵母細胞またはタバコ植物体などの種々の生きている宿主に形質導入する。その後、Idタンパク質を培養物の上清またはトランスフェクトされた細胞から精製する4。
【0054】
コンジュゲートの調製
A20イディオタイプタンパク質(A20)を、PEG融合によって調製したA20リンパ腫の細胞とP3X63骨髄腫細胞との間のレスキューハイブリドーマのバイオリアクターの上清から、プロテインGアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。A20イディオタイプタンパク質をまず、スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシラート(スルホ−SMCC)と反応させて、マレイミド活性化A20を作製した。その間に、マウスのIgG1抗CD40モノクローナル抗体またはIgG2a抗CD40モノクローナル抗体(どちらもADX40;IgG1変異体およびIgG2a変異体)をS−アセチルチオグリコール酸N−スクシンイミジル(SATA)で処理して、保護されたスルフヒドリル基を導入した。その後、抗体をヒドロキシルアミンで脱アセチル化することにより、遊離のスルフヒドリル基を生成させ、それをA20のマレイミド基と反応させて安定なコンジュゲートを形成した。アイソタイプを適合させた対照抗体を、同様にA20とコンジュゲートした。
【0055】
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウエスタンブロット法によって架橋を確認した。
【0056】
マウスの免疫化および攻撃
6〜8週齢の雌のBALB/cマウスに、免疫原を1回または2回、腹腔内注射し、その後、最後の免疫化の少なくとも2週間後に、A20リンパ腫の細胞105個を用いて皮下に攻撃した。腫瘍の成長を、直径15mmになるまでモニターし、その時点でマウスを選別した。生存曲線は、腫瘍が15mmの閾値に到達したマウスに生存しているマウスがいないことを示している。60日目における生存は、目に見える腫瘍が出現していないマウスの百分率を表す。
【0057】
対照ワクチン接種には、アイソタイプを適合させた対照コンジュゲート、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とコンジュゲートしたA20、単独のA20抗原、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含めた。
【0058】
体液性免疫応答
A20のFab断片に対するIgGを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、ラット抗マウスIgG Fc特異的検出抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を使用して測定した。
【実施例1】
【0059】
2回のワクチン接種の効果(免疫試験1)
ADX40 IgG1変異体を用いて2ヶ月隔ててワクチン接種し、2回目のワクチン接種の20日後に攻撃したマウス(群当たり5匹)の腫瘍の体積および生存データが、それぞれ図1Aおよび1Bに示されている。
【0060】
ADX40−A20コンジュゲート群における腫瘍の増生は、アイソタイプ対照、KLH−A20コンジュゲートまたは単独のA20を用いてワクチン接種した動物よりも有意に低く(ダンの検定後補正(Dunn’s post−test correction)を用いたクラスカル・ワリス検定による、p<0.01)、また、同様にPBS群よりも有意に低くかった(p<0.05)。
【0061】
ADX40−A20コンジュゲートで免疫化した群の60日目の生存は、アイソタイプ対照で免疫化した群よりも有意に良かった(p=0.048、フィッシャーの正確確率検定)が、KLH−A20コンジュゲート、単独のA20抗原、またはPBSを与えた動物よりも生存が高かったにもかかわらず、これは統計的有意性に達しなかった。
【0062】
図2は、2回目のワクチン接種の14日後に誘導された抗A20抗体応答を示している。アイソタイプ対照コンジュゲートは、抗体誘導の点で免疫原性が高かったが、これは、腫瘍の成長の減少または生存の改善に転換されなかった。ADX40−A20コンジュゲートおよびKLH−A20コンジュゲートに対する抗体応答も観察されたが、アイソタイプ対照に対するよりもレベルが低く、これは、腫瘍の増生の阻止が、抗体応答に部分的にしか反映されないことを示している。
【実施例2】
【0063】
1回のワクチン接種の効果(免疫試験2)
ADX40 IgG1変異体コンジュゲートを用いて一度ワクチン接種し、14日後に攻撃したマウス(群当たり10匹)の腫瘍の体積および生存データが図3A〜Cに示されている。
【0064】
ADX40−A20コンジュゲート群における腫瘍の増生は、どちらの対照群よりも有意に低く、遅かった(PBS、p<0.05;対照コンジュゲート、p<0.001;ダンの後補正(Dunn’s post correction)を用いたクラスカル・ワリス検定)。しかし、ADX40−A20コンジュゲート処置群における60日目における生存は、初期の時点ではコンジュゲート群において生存が良かったが、PBS対照群よりも、有意に良くなかった。
【0065】
コンジュゲートを用いた単回の免疫化により、ADX40−A20処置群において対照の動物よりもわずかに強力な抗体応答がもたらされた(図4)。
【実施例3】
【0066】
IgG1ADX40アイソタイプとIgG2a ADX40アイソタイプの比較(免疫試験3)
それぞれ攻撃の14日前に単回のワクチン接種として与えたADX40 IgG1変異体およびADX40 IgG2a変異体の腫瘍の増生および60日目における生存データの比較が、それぞれ図5Aおよび5Bに示されている。
【0067】
ADX40コンジュゲート変異体の両方で、PBS対照群と比較して初期の腫瘍の成長の遅延および60日目における生存の増加の傾向があったが、ADX40変異体または対照のいずれとの間にも腫瘍の増生または60日目における生存に統計的有意差はなかった(クラスカル・ワリス検定およびカイ二乗検定)。
【実施例4】
【0068】
組み合わせアジュバントの評価(免疫試験4)
アジュバントであるMPLまたはポリI:CをADX40 IgG1変異体−A20コンジュゲートワクチンと組み合わせることの効果を、マウス(群当たり5匹)に、2週間隔てて2回ワクチン接種し、2週間後に攻撃する攻撃試験において探究した。腫瘍の増生および生存データがそれぞれ図6Aおよび6Bに示されている。
【0069】
コンジュゲートの1回の投薬または2回の投薬のいずれでも、PBS群またはKLHコンジュゲート群のいずれに対しても腫瘍の成長に有意差は導かれなかった。ADX40プラスMPLにより、KLHコンジュゲートと比較して(p<0.01)およびPBSと比較して(p<0.05)腫瘍の成長が有意に遅くなった。ADX40プラスポリI:Cにより、PBS群およびKLH群の両方と比較して腫瘍の成長が有意に遅くなった(p<0.01)。全ての比較は、ダンの後検定(Dunn’s post−test)を用いたクラスカル・ワリス検定によった。
【0070】
単独のADX40を1回または2回与えることによって、60日目における生存は、KLH群またはPBS群と比較して有意に改善されなかった。
【実施例5】
【0071】
MPLを用いた実験(免疫試験5a)およびポリI:Cを用いた実験(免疫試験5b)を、マウスのより大きな群(群当たり10匹)を用いて繰り返し、そのデータがそれぞれ図7および8に示されている。
【0072】
ADX40−A20+MPLで免疫化したマウスは、腫瘍の成長が、KLH−A20+MPLで免疫化したマウスと比較して有意に遅くなった(P<0.01、クラスカル・ワリス検定)。MPLとADX40の相加効果の明らかな傾向があったが、これはこの時に統計的に有意ではなかった。
【0073】
しかし、MPLとは異なり、第2の攻撃ではポリI:CはADX40−A20抗腫瘍の効力を有意に増さなかったが、KLH−A20コンジュゲートと組み合わせると、アジュバントのアジュバント効果の傾向があった。
【実施例6】
【0074】
「臨床的な」レジメンを用いた比較(免疫試験6および10a)
ADX40とコンジュゲートしたA20Aの効果を、臨床的なイディオタイプリンパ腫ワクチン(すなわち、KLHとコンジュゲートし、GM−CSFでアジュバントしたイディオタイプ抗原)と一緒に使用するレジメンと類似したレジメンと比較するために、マウス10匹の群に、ADX40−A20、ADX40+GM−CSFおよびKLH−A20+GM−CSFを2回注射した(14日間隔てて)。GM−CSFをマウス1匹当たり55ngの用量で、ワクチン接種日から開始して4日連続で皮下に与えた(すなわち、臨床的なレジメンと同様)。腫瘍の体積および生存データがそれぞれ図9Aおよび9Bに示されている。
【0075】
ADX40コンジュゲート+GM−CSF群(21日目まで)およびADX40コンジュゲート群(31日目まで)では、腫瘍の成長が有意に遅延し、これは、ADX40コンジュゲートが「臨床的な」ワクチン類似体よりも優れていることを示している。
【0076】
ADX40コンジュゲートおよびADX40コンジュゲート+GM−CSFは、対照PBS群に対して有意な生存優位性を有した(それぞれp=0.001およびp<0.03。対照PBS群の生存期間中央値は17日間であった。これは、KLHコンジュゲート+GM−CSFでは19.5日間まで増加し、ADX40コンジュゲート+GM−CSFおよびADX40コンジュゲートでは、それぞれ24日および31日に増加した。免疫試験10aからのデータ(図9Cおよび9D)は、これらの知見を裏付けている。
【実施例7】
【0077】
確認実験のためのコンジュゲートの用量を最適化するために、マウス10匹の群に、10μg、20μgまたは50μgのADX40−A20コンジュゲートまたはKLH−A20コンジュゲートを与えた。腫瘍の体積および生存データが図10に示されている。
【0078】
最低用量(10μg)のADX40−A20コンジュゲートおよび中間の用量(20μg)のKLH−A20コンジュゲートが最も有効であることが見いだされた。次いで、もっと低い用量範囲のADX40を用いてさらなる実験を実施し、10、5μgのコンジュゲートおよび2.5μgのコンジュゲートを1回または2回投薬した、5μgのADX40コンジュゲートが、1回だけであろうと、2回であろうと、最も有効な用量であると思われた(図10)。コンジュゲートを2回投薬すると、用量に関係なく、予想通り、1回の投薬よりも良い転帰が生じた。最終的に、異なるマウスイディオタイプタンパク質とのADX40の対照コンジュゲートによっては保護が誘導されず、これは、ADX40ワクチンによって誘導される保護の特異性を示している。
【実施例8】
【0079】
腫瘍を皮下移植した3日後(最初の実験)または3日後および11日後(第2の実験)に、ADX40−A20コンジュゲートまたはKLH−A20+GM−CSFを与えるという2つの治療的なワクチン接種試験を行った。どのワクチンレジメンも、対照と比較して腫瘍の増生または生存に対する有意な効果を有さなかった(データは示していない)。これらのデータは、臨床的な設定ではイディオタイプワクチン接種は、化学療法後に寛解の状態にある、疾患の残留が最小限である患者に一般に使用されるので、驚くべきものではない。
【実施例9】
【0080】
種々の攻撃実験からの生存データのメタ分析が表1に示されている。ADX40−A20を与えたマウスは、KLH−A20を与えたマウスと比較して生存が有意に改善された(それぞれ26%、2.8%;p=0.007)。さらに、ADX40−20を与えたマウスの60日目の生存は、KLH−A20プラスGM−CSFの現行の臨床的なレジメンを与えたマウスと同様であった(25%)が、注射は8回ではなく2回であった。最後に、ADX40−A20プラスMPLを与えた動物の生存が他の群を有意に超えたので、追加的なアジュバントをADX40コンジュゲートと組み合わせると相乗効果が見られるとことを示す証拠がある。
【実施例10】
【0081】
実施例10は、潜在的な作用様式を例示している。マウスを、ADX40−A20+MPLで免疫化し、攻撃の直前に、CD4T細胞またはCD8T細胞のいずれか、またはその両方を枯渇させた。CD4細胞単独の枯渇では、腫瘍の成長または生存率に対する明白な影響はなかった。CD8T細胞の枯渇により、防御が減少し、これは、ADX40+MPL保護を媒介することにおけるCD8T細胞の可能性のある役割を示している。CD4細胞およびCD8細胞両方の枯渇により、防御のさらなる減少がみられた;図11。
(参考文献)
1.Carroll WL, Thielemans K, Dilley J, Levy R. Mouse x human heterohybridomas as fusion partners with human B cell tumors. J Immunol Methods. 1986;89:61 -72.
2.Rodriguez-Calvillo M, Inoges S, Lopez-Diaz de Cerio A, Zabalegui N, Villanueva H, Bendandi M. Variations in "rescuability" of immunoglobulin molecules from different forms of human lymphoma: implications for anti-idiotype vaccine development. Crit Rev Oncol Hematol. 2004;52:1 -7.
3.Kwak LW, Campbell MJ, Czerwinski DK, Hart S, Miller RA, Levy R. Induction of immune responses in patients with B-cell lymphoma against the surface-immunoglobulin idiotype expressed by their tumors. N Engl J Med. 1992;327:1209- 1215.
4.Park HJ, Neelapu SS. Developing idiotype vaccines for lymphoma: from preclinical studies to phase III clinical trials. Br J Haematol. 2008;142:179-191 .
【技術分野】
【0001】
本開示は、リンパ腫、白血病または骨髄腫などの血液癌の予防および治療において有用なワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、1つまたは複数の細胞集団が制御されずに増殖することによって正常な生物学的機能が妨げられる異常な病態である。増殖性変化は、通常、あまり組織化されていない状態への後戻りを含めた、細胞の性質の他の変化を伴う。癌細胞は、一般には「形質転換された」と称される。形質転換された細胞は、一般に、以下の性質のいくつかを示す:球状の形態、胎児性抗原の発現、成長因子非依存性、接触阻止の欠如、足場非依存性、および高密度になるまで成長すること。癌細胞は、腫瘍を形成し、「原発性」または「二次性」腫瘍と称される。原発性腫瘍により、元の形質転換された細胞が発生する器官において癌細胞が成長する。二次性腫瘍は、癌細胞が原発性腫瘍から逃れ、別の器官において二次性腫瘍を確立することから生じる。このプロセスは、転移と称され、このプロセスは、例えば、肝細胞癌または肺癌の場合と同様に、攻撃的であり得る。
【0003】
リンパ腫は、リンパ球で起こり、リンパ節において固形腫瘍を形成する癌である。リンパ腫とは、多数のリンパ球を起源とする癌を分類する用語である。例えば、B細胞腫瘍、例えば、慢性リンパ球白血病、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、バーキットリンパ腫など;T細胞腫瘍、例えば、T細胞前リンパ球性白血病、NK細胞白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、成人T細胞白血病など。さらに、リンパ腫としては、細分することができる古典的ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。上記に加えて、免疫不全に関連するリンパ腫、例えば、HIV感染に関連するリンパ腫、移植後のリンパ腫およびメトトレキサート治療に関連するリンパ腫が蔓延している。これらの後者のリンパ腫は、ワクチン接種が実行可能な療法ではないので、特定の難しさがある。リンパ腫の治療は、一般には、化学療法および放射線療法であり、これは、特定のリンパ腫および病期に応じて有効な治療であり得る。免疫不全の対象を保護するワクチンを提供することが望ましい。現在のところ、このクラスの癌に対する、ワクチン接種するための検証された有効な手段はない。
【0004】
抗体の、その抗原に対する結合特異性を決定する抗体の領域は、相補性決定領域(CDR)と称され、「超可変領域」または「イディオタイプ」とも称される。抗体の抗原結合領域は、ランダムに引き出されたアミノ酸配列で構成されているので、これらはB細胞の1つのクローンまたは少数クローンに対して独特である。したがって、これらの独特のペプチド配列は、それ自体が抗原性であり、組み合わさって抗体分子の独特のイディオタイプを構成する。抗原は、いくつものエピトープで構成されているので、同様に、イディオタイプもいくつもの「イディオトープ」で構成されている。特定のイディオタイプの精製した免疫グロブリンを用いて免疫化することにより、そのイディオタイプに対する抗体応答を生成することができる。
【0005】
免疫グロブリンに対する免疫応答を誘導することを目的として、免疫グロブリンをワクチン抗原として使用する2つのシステムがある。どちらのシステムでも、免疫応答を惹起するために、抗体の超可変領域またはイディオタイプを使用する。どちらの場合でも、抗体のイディオタイプを使用して抗イディオタイプ(抗Id)応答を生成する。第1の場合では、抗体のイディオタイプは、免疫エフェクター応答の実際の標的である。例えば、B細胞リンパ腫および白血病は、一般に、B細胞の単一のクローンから生じ、したがって、それらの細胞表面上に、腫瘍に独特の、またはほぼ独特の免疫グロブリンを発現し得る。この免疫グロブリンイディオタイプに対する免疫応答の生成は、ワクチン接種の所望の効果であり、これは、腫瘍細胞のクリアランスに役立ち得る。生成される抗イディオタイプ応答は、抗体媒介性応答とT細胞媒介性応答の両方からなり得る。したがって、免疫グロブリンイディオタイプは、腫瘍に特異的な抗原の最も良い例の1つであり得る。第2のシステムでは、何らかの理由で精製することが難しいか、直接投与すると免疫原性が低い腫瘍抗原または病原体もしくは別の供給源由来の抗原であり得る抗原と交差反応する応答を生成させるために、いわゆる「内部イメージ抗イディオタイプ抗体」を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の抗イディオタイプワクチンを含めた、イディオタイプに基づくワクチンが当技術分野で公知である。しかし、これらのワクチンには問題が伴う。第1に、リンパ腫の患者に対して、イディオタイプはその個体の腫瘍に対して独特であると思われるので、ワクチンを個別に作製しなければならず、また、多くの場合、所望のイディオタイプを分泌するハイブリドーマを作製するステップ、免疫グロブリンを精製するステップ、および、次いでKLHなどのタンパク質担体とコンジュゲートするステップを伴うワクチンの製剤化には数ヶ月かかり得る。第2に、ヒト免疫グロブリンは本質的にヒトにおける免疫原性が低く、したがって、イディオタイプに対する免疫応答を増大させるために担体とコンジュゲートさせても、抗Id抗体応答が弱い傾向がある(実際、コンジュゲートに対する応答の大部分は、免疫原性の高い担体タンパク質を対象とする)。第3に、マウスおよびヒトの両方において、イディオタイプタンパク質に対するCD4+T細胞およびCD8+CTL応答の両方が、治療反応を媒介することにおいて重要であり得、KLHなどの担体とコンジュゲートすることはCTL応答を生成するための最も効率的な手段ではないことが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、リンパ腫の予防的な治療および治療的な治療のためのワクチンおよび治療レジメンに関する。
【0008】
本発明の態様によると、
i)リンパ腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバント、またはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチンが提供される。
【0009】
CD40モノクローナル抗体が当技術分野で公知である。例えば、US2009/007471[その内容全体、特に前記抗体の可変領域のアミノ酸配列が参照により組み込まれる]には、本発明による、図12に開示されている配列で表されるワクチンにおいて使用するのに適したヒト化抗ヒトCD40およびキメラ抗ヒトCD40が開示されている。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、前記第2のアジュバントは、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される。
【0011】
本発明の別の代替的な実施形態では、前記アジュバントは、TLRアゴニスト、例えば、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリイノシン・ポリシチジン酸[ポリI:C]およびそれらの誘導体などである。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、ポリI:Cである。
【0013】
ポリI:Cは、B細胞および樹状細胞によって発現されるToll様受容体TLR3に結合するアジュバントである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、細菌細胞壁誘導体、例えば、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、MPLである。
【0016】
アジュバントは、免疫細胞の活性を調節することによって抗原に対する特異的な免疫応答を増大させる物質または手順である。アジュバントの例としては、単に例として、同時刺激分子に対するアゴニスト抗体、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、リポソーム、ミョウバン、QS21が挙げられる。したがって、アジュバントは免疫調節物質である。担体は、第2の分子に結合すると、それに対する免疫応答を増大させる免疫原性分子である。担体という用語は、以下のように解釈される。担体は、第2の分子に結合すると、それに対する免疫応答を増大させる免疫原性分子である。一部の抗原は、本来免疫原性ではないにもかかわらず、キーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風トキソイドなどの外来タンパク質分子と結びつくと抗体応答を生成することができ得る。そのような抗原は、B細胞エピトープを含有するが、T細胞エピトープは含有しない。そのようなコンジュゲートのタンパク質部分(「担体」タンパク質)により、ヘルパーT細胞を刺激するT細胞エピトープが提供され、今度は、それによって抗原に特異的なB細胞が刺激されて血漿細胞に分化し、抗原に対する抗体を産生する。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞などの他の免疫細胞も刺激し、担体は、細胞に媒介される免疫ならびに抗体の生成において類似の役割を果たし得る。T細胞エピトープを欠く特定の抗原、例えば、反復B細胞エピトープを有するポリマーなど(例えば、細菌性多糖類)は、本来、限られた程度に免疫原性である。これらは、Tに依存しない抗原として公知である。そのような抗原は、はるかに強力な抗体応答を引き出す状況の下で、破傷風トキソイドなどの担体と結びつけることが有益である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、前記イディオタイプ抗原は、前記イディオタイプ免疫グロブリンのFab断片またはF(ab)2’Fd断片を含む、またはそれからなる。
【0018】
イディオタイプ抗原は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域、すなわち(Fab、F(ab)2’、Fd断片内にあってよい、またはそれどころか、重鎖可変領域および軽鎖可変領域と別の抗体の定常領域との間のキメラであってよい。
【0019】
本発明の態様によると、
i)リンパ腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片;および
iii)リンパ腫の治療において使用するための、連結したイディオタイプ抗原とCD40モノクローナル抗体アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチンが提供される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、前記リンパ腫は、B細胞リンパ腫である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、前記B細胞リンパ腫は、慢性リンパ球白血病、B細胞前リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、骨髄腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症など)、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞新生物、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、MALTリンパ腫とも称される節外周辺帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病からなる群から選択される。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫である。
【0023】
本発明の代替の好ましい実施形態では、前記リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記リンパ腫は、免疫不全関連リンパ腫である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、前記免疫不全関連リンパ腫は、HIV関連である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、前記免疫不全関連リンパ腫は、移植関連である。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記免疫不全関連リンパ腫は、メトトレキサート治療の結果である。
【0028】
本発明の別の態様によると、
i)骨髄腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバント、またはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)骨髄腫の治療において使用するための、連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチンが提供される。
【0029】
本発明のワクチンまたはワクチンを含む医薬組成物を投与する場合、それらは、薬学的に許容される調製物で投与する。そのような調製物は、常套的に、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存料、適合性の担体、補足的な免疫増強剤、および場合によって、本発明のワクチンとは別に、または、組み合わせが適合する場合、組み合わせた調製物で投与することができる化学療法剤などの他の治療剤を含有してよい。本発明のワクチンは、注射を含めた任意の従来の経路によって、またはある期間にわたる段階的な注入によって投与することができる。投与は、例えば、経口的、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、または経皮的であってよい。
【0030】
本発明の組成物は、有効量で投与する。「有効量」は、単独で、または別の用量と一緒に、所望の免疫学的応答を生じさせる組成物の量である。リンパ腫を治療する場合では、所望の応答は、疾患の進行を阻害することである。これは、単に疾患の進行を一時的に遅くすることを含んでよいが、疾患の進行を恒久的に停止することを含むことがより好ましい。これは、常套的な方法によってモニターすることができる。
【0031】
前述の方法において使用するワクチンは、好ましくは、滅菌されており、所望の応答を生じさせるための有効量を患者に投与するのに適した重量または体積の単位で含有する。応答は、例えば、腫瘍の退縮、疾患の症状の減少、アポトーシスの調節などを決定することによって測定することができる。
【0032】
ワクチンを投与するための、投与量、注射のスケジュール、注射する部位、投与形式(例えば、腫瘍内)などが前述のものと異なる他のプロトコールは当業者に公知になる。例えば、ヒト以外の哺乳動物への、試験目的または獣医学的な治療目的での組成物の投与は、上記と実質的に同じ条件下で行う。対象は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、好ましくはヒトであり、非ヒト霊長類、雌ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯類を含む。
【0033】
本発明の別の態様によると、リンパ腫の予防法または治療に適したワクチンを製造する方法であって、
i)リンパ腫を有する、またはそれにかかりやすい対象からイディオタイプ抗原を単離するステップ;
ii)前記イディオタイプ抗原をCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片と連結して複合体を形成し、場合によって、連結した複合体を単離するステップ;および
iii)少なくとも1種の追加的なアジュバントを伴った、連結した抗原/アジュバント複合体の調製物を形成するステップ
を含む方法が提供される。
【0034】
本発明の別の態様によると、リンパ腫の予防法または治療に適したワクチンを製造する方法であって、
i)リンパ腫の細胞を含む単離された生体試料を用意するステップ;
ii)CD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片を産生する単離されたハイブリドーマ細胞を用意するステップ;
iii)リンパ腫の細胞と前記ハイブリドーマ細胞系との融合を促進してハイブリッド細胞を形成するのに適した調製物を形成するステップ;
iv)前記ハイブリッド細胞を、1つの免疫グロブリンまたは部分がCD40に対して特異的であり、第2の免疫グロブリンまたは部分がリンパ腫のイディオタイプである少なくとも2つの免疫グロブリンまたはその抗原結合部分を含むモノクローナル抗体についてスクリーニングするステップ;および
v)連結した抗原/アジュバント複合体と、少なくとも1種の追加的なアジュバントとの調製物を形成するステップ
を含む方法が提供される。
【0035】
本発明の好ましい方法では、前記第2のアジュバントは、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される。
【0036】
本発明の別の代替の方法では、前記アジュバントは、TLRアゴニスト、例えば、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などである。
【0037】
本発明の好ましい方法では、前記アジュバントは、ポリI:Cである。
【0038】
本発明の好ましい方法では、前記アジュバントは、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である。
【0039】
本発明の好ましい方法では、前記アジュバントは、MPLである。
【0040】
本発明の態様によると、
i)リンパ腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;および
ii)リンパ腫の治療において使用するための、イディオタイプ抗原に対する免疫応答を増強するアジュバント
を含むワクチンが提供される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される。
【0042】
本発明の別の代替の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、ポリI:Cである。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、前記アジュバントは、MPLである。
【0046】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という単語、およびその単語の変形、例えば、「含むこと(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むが、これに限定されない(including but not limited to)」を意味し、他の部分、添加物、構成成分、整数またはステップを排除することを意図しない(そして、排除しない)。
【0047】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、単数形は、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、複数形を包含する。具体的には、不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数だけでなく複数も意図していると理解されるべきである。
【0048】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と併せて記載されている特徴、整数、特性、化合物、化学的部分または化学基は、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または実施例に、それに適合しない場合を除き、適用可能であると理解されるべきである。
【0049】
ここで、本発明の実施形態を、単に例として、以下の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ワクチンを2ヶ月隔てて2回投薬した後の、マウス(群当たりn=5)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および60日目における生存[B]を示すグラフである。
【図2】2回目のワクチン接種の14日後、腫瘍の攻撃前のIgG抗A20抗体の応答を示すグラフである。
【図3】2回目のワクチン接種の14日後、腫瘍の攻撃前のIgG抗A20抗体の応答を示すグラフである。
【図4】単回のワクチン接種の14日後、腫瘍の攻撃前のIgG抗A20抗体の応答を示すグラフである。
【図5】ADX40−A20コンジュゲートワクチンのIgG1アイソタイプおよびIgG2aアイソタイプを単回投薬した後の、マウス(群当たりn=5)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および60日目における生存[B]を示すグラフである。
【図6】ワクチンを2週間隔てて2回投薬した後のマウス(群当たりn=5)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および60日目における生存[B]を示すグラフである。
【図7】ワクチンをMPLと一緒に、またはMPLなしで、2週間隔てて2回投薬した後のマウス(群当たりn=5)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および60日目における生存[B]を示すグラフである[免疫試験5a]。
【図8】ワクチンを、ポリI:Cと一緒に、またはポリI:Cとなしで、2週間隔てて2回投薬した後のマウス(群当たりn=10)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A]および生存曲線[B]を示すグラフである[免疫試験5b]。
【図9】ワクチンをGM−CSFと一緒に、2回投薬した後の、マウス(群当たりn=10)におけるA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A、C]および生存曲線[B、D]を示すグラフである[免疫試験6および10]。
【図10】ADX40−A20コンジュゲートまたはKLH−A20コンジュゲートの用量レベルを増加させた後の、マウス(群当たりn=10)のA20リンパ腫について、腫瘍の成長[A、C]および生存曲線[B、D]を示すグラフである[免疫試験7および9]。
【図11】ADX40リンパ腫ワクチンの作用様式の潜在性を例示しているグラフである。
【図12】図12a:ヒトCD40に結合するCD40モノクローナル抗体の可変性の重鎖のヌクレオチド配列を示す図である。 図12b:ヒトCD40に結合するCD40モノクローナル抗体のアミノ酸配列を示す図である。 図12c:ヒトIgG1重鎖定常領域と融合したCD40可変領域を含むキメラ抗体を示す図である。 図12d:ヒトCD40に結合するCD40モノクローナル抗体の可変性の軽鎖のヌクレオチド配列を示す図である。 図12e:ヒトCD40に結合するCD40モノクローナル抗体の可変性の軽鎖のアミノ酸配列を示す図である。 図12f:図12eで言及された全長の可変性の軽鎖を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
材料および方法
コンジュゲートするためのイディオタイプタンパク質の作製
リンパ腫ワクチンまたは白血病ワクチンに組み入れるための腫瘍イディオタイプタンパク質は、2つの一般の方法のうちの1つによって得ることができる。どちらの場合でも、腫瘍細胞は、まず生検によって得られる。
【0052】
第1の方法は、腫瘍細胞をヒト/マウスヘテロハイブリドーマまたは骨髄腫株などの同様の不死化細胞株と融合して、別のハイブリドーマを作製し、次いでそれを、腫瘍イディオタイプタンパク質の分泌に基づいて選択する、ハイブリドーマレスキューである。次いで、選択されたハイブリドーマを組織培養物中、通常バイオリアクター内で成長させて上清を得、それからイディオタイプタンパク質を精製する123。
【0053】
第2の方法は、組換えIdの作製である。この方法では、Idを含有し腫瘍に特異的な免疫グロブリンの重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方のcDNA配列を、PCRなどの標準の分子生物学的方法によってクローニングする。次いで、クローニングされた配列の両方を、共有されている免疫グロブリン定常領域の配列を含有するプラスミドに挿入し、最終的に、完全なプラスミドを細菌、哺乳動物の細胞、昆虫細胞、酵母細胞またはタバコ植物体などの種々の生きている宿主に形質導入する。その後、Idタンパク質を培養物の上清またはトランスフェクトされた細胞から精製する4。
【0054】
コンジュゲートの調製
A20イディオタイプタンパク質(A20)を、PEG融合によって調製したA20リンパ腫の細胞とP3X63骨髄腫細胞との間のレスキューハイブリドーマのバイオリアクターの上清から、プロテインGアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。A20イディオタイプタンパク質をまず、スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシラート(スルホ−SMCC)と反応させて、マレイミド活性化A20を作製した。その間に、マウスのIgG1抗CD40モノクローナル抗体またはIgG2a抗CD40モノクローナル抗体(どちらもADX40;IgG1変異体およびIgG2a変異体)をS−アセチルチオグリコール酸N−スクシンイミジル(SATA)で処理して、保護されたスルフヒドリル基を導入した。その後、抗体をヒドロキシルアミンで脱アセチル化することにより、遊離のスルフヒドリル基を生成させ、それをA20のマレイミド基と反応させて安定なコンジュゲートを形成した。アイソタイプを適合させた対照抗体を、同様にA20とコンジュゲートした。
【0055】
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウエスタンブロット法によって架橋を確認した。
【0056】
マウスの免疫化および攻撃
6〜8週齢の雌のBALB/cマウスに、免疫原を1回または2回、腹腔内注射し、その後、最後の免疫化の少なくとも2週間後に、A20リンパ腫の細胞105個を用いて皮下に攻撃した。腫瘍の成長を、直径15mmになるまでモニターし、その時点でマウスを選別した。生存曲線は、腫瘍が15mmの閾値に到達したマウスに生存しているマウスがいないことを示している。60日目における生存は、目に見える腫瘍が出現していないマウスの百分率を表す。
【0057】
対照ワクチン接種には、アイソタイプを適合させた対照コンジュゲート、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とコンジュゲートしたA20、単独のA20抗原、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含めた。
【0058】
体液性免疫応答
A20のFab断片に対するIgGを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、ラット抗マウスIgG Fc特異的検出抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を使用して測定した。
【実施例1】
【0059】
2回のワクチン接種の効果(免疫試験1)
ADX40 IgG1変異体を用いて2ヶ月隔ててワクチン接種し、2回目のワクチン接種の20日後に攻撃したマウス(群当たり5匹)の腫瘍の体積および生存データが、それぞれ図1Aおよび1Bに示されている。
【0060】
ADX40−A20コンジュゲート群における腫瘍の増生は、アイソタイプ対照、KLH−A20コンジュゲートまたは単独のA20を用いてワクチン接種した動物よりも有意に低く(ダンの検定後補正(Dunn’s post−test correction)を用いたクラスカル・ワリス検定による、p<0.01)、また、同様にPBS群よりも有意に低くかった(p<0.05)。
【0061】
ADX40−A20コンジュゲートで免疫化した群の60日目の生存は、アイソタイプ対照で免疫化した群よりも有意に良かった(p=0.048、フィッシャーの正確確率検定)が、KLH−A20コンジュゲート、単独のA20抗原、またはPBSを与えた動物よりも生存が高かったにもかかわらず、これは統計的有意性に達しなかった。
【0062】
図2は、2回目のワクチン接種の14日後に誘導された抗A20抗体応答を示している。アイソタイプ対照コンジュゲートは、抗体誘導の点で免疫原性が高かったが、これは、腫瘍の成長の減少または生存の改善に転換されなかった。ADX40−A20コンジュゲートおよびKLH−A20コンジュゲートに対する抗体応答も観察されたが、アイソタイプ対照に対するよりもレベルが低く、これは、腫瘍の増生の阻止が、抗体応答に部分的にしか反映されないことを示している。
【実施例2】
【0063】
1回のワクチン接種の効果(免疫試験2)
ADX40 IgG1変異体コンジュゲートを用いて一度ワクチン接種し、14日後に攻撃したマウス(群当たり10匹)の腫瘍の体積および生存データが図3A〜Cに示されている。
【0064】
ADX40−A20コンジュゲート群における腫瘍の増生は、どちらの対照群よりも有意に低く、遅かった(PBS、p<0.05;対照コンジュゲート、p<0.001;ダンの後補正(Dunn’s post correction)を用いたクラスカル・ワリス検定)。しかし、ADX40−A20コンジュゲート処置群における60日目における生存は、初期の時点ではコンジュゲート群において生存が良かったが、PBS対照群よりも、有意に良くなかった。
【0065】
コンジュゲートを用いた単回の免疫化により、ADX40−A20処置群において対照の動物よりもわずかに強力な抗体応答がもたらされた(図4)。
【実施例3】
【0066】
IgG1ADX40アイソタイプとIgG2a ADX40アイソタイプの比較(免疫試験3)
それぞれ攻撃の14日前に単回のワクチン接種として与えたADX40 IgG1変異体およびADX40 IgG2a変異体の腫瘍の増生および60日目における生存データの比較が、それぞれ図5Aおよび5Bに示されている。
【0067】
ADX40コンジュゲート変異体の両方で、PBS対照群と比較して初期の腫瘍の成長の遅延および60日目における生存の増加の傾向があったが、ADX40変異体または対照のいずれとの間にも腫瘍の増生または60日目における生存に統計的有意差はなかった(クラスカル・ワリス検定およびカイ二乗検定)。
【実施例4】
【0068】
組み合わせアジュバントの評価(免疫試験4)
アジュバントであるMPLまたはポリI:CをADX40 IgG1変異体−A20コンジュゲートワクチンと組み合わせることの効果を、マウス(群当たり5匹)に、2週間隔てて2回ワクチン接種し、2週間後に攻撃する攻撃試験において探究した。腫瘍の増生および生存データがそれぞれ図6Aおよび6Bに示されている。
【0069】
コンジュゲートの1回の投薬または2回の投薬のいずれでも、PBS群またはKLHコンジュゲート群のいずれに対しても腫瘍の成長に有意差は導かれなかった。ADX40プラスMPLにより、KLHコンジュゲートと比較して(p<0.01)およびPBSと比較して(p<0.05)腫瘍の成長が有意に遅くなった。ADX40プラスポリI:Cにより、PBS群およびKLH群の両方と比較して腫瘍の成長が有意に遅くなった(p<0.01)。全ての比較は、ダンの後検定(Dunn’s post−test)を用いたクラスカル・ワリス検定によった。
【0070】
単独のADX40を1回または2回与えることによって、60日目における生存は、KLH群またはPBS群と比較して有意に改善されなかった。
【実施例5】
【0071】
MPLを用いた実験(免疫試験5a)およびポリI:Cを用いた実験(免疫試験5b)を、マウスのより大きな群(群当たり10匹)を用いて繰り返し、そのデータがそれぞれ図7および8に示されている。
【0072】
ADX40−A20+MPLで免疫化したマウスは、腫瘍の成長が、KLH−A20+MPLで免疫化したマウスと比較して有意に遅くなった(P<0.01、クラスカル・ワリス検定)。MPLとADX40の相加効果の明らかな傾向があったが、これはこの時に統計的に有意ではなかった。
【0073】
しかし、MPLとは異なり、第2の攻撃ではポリI:CはADX40−A20抗腫瘍の効力を有意に増さなかったが、KLH−A20コンジュゲートと組み合わせると、アジュバントのアジュバント効果の傾向があった。
【実施例6】
【0074】
「臨床的な」レジメンを用いた比較(免疫試験6および10a)
ADX40とコンジュゲートしたA20Aの効果を、臨床的なイディオタイプリンパ腫ワクチン(すなわち、KLHとコンジュゲートし、GM−CSFでアジュバントしたイディオタイプ抗原)と一緒に使用するレジメンと類似したレジメンと比較するために、マウス10匹の群に、ADX40−A20、ADX40+GM−CSFおよびKLH−A20+GM−CSFを2回注射した(14日間隔てて)。GM−CSFをマウス1匹当たり55ngの用量で、ワクチン接種日から開始して4日連続で皮下に与えた(すなわち、臨床的なレジメンと同様)。腫瘍の体積および生存データがそれぞれ図9Aおよび9Bに示されている。
【0075】
ADX40コンジュゲート+GM−CSF群(21日目まで)およびADX40コンジュゲート群(31日目まで)では、腫瘍の成長が有意に遅延し、これは、ADX40コンジュゲートが「臨床的な」ワクチン類似体よりも優れていることを示している。
【0076】
ADX40コンジュゲートおよびADX40コンジュゲート+GM−CSFは、対照PBS群に対して有意な生存優位性を有した(それぞれp=0.001およびp<0.03。対照PBS群の生存期間中央値は17日間であった。これは、KLHコンジュゲート+GM−CSFでは19.5日間まで増加し、ADX40コンジュゲート+GM−CSFおよびADX40コンジュゲートでは、それぞれ24日および31日に増加した。免疫試験10aからのデータ(図9Cおよび9D)は、これらの知見を裏付けている。
【実施例7】
【0077】
確認実験のためのコンジュゲートの用量を最適化するために、マウス10匹の群に、10μg、20μgまたは50μgのADX40−A20コンジュゲートまたはKLH−A20コンジュゲートを与えた。腫瘍の体積および生存データが図10に示されている。
【0078】
最低用量(10μg)のADX40−A20コンジュゲートおよび中間の用量(20μg)のKLH−A20コンジュゲートが最も有効であることが見いだされた。次いで、もっと低い用量範囲のADX40を用いてさらなる実験を実施し、10、5μgのコンジュゲートおよび2.5μgのコンジュゲートを1回または2回投薬した、5μgのADX40コンジュゲートが、1回だけであろうと、2回であろうと、最も有効な用量であると思われた(図10)。コンジュゲートを2回投薬すると、用量に関係なく、予想通り、1回の投薬よりも良い転帰が生じた。最終的に、異なるマウスイディオタイプタンパク質とのADX40の対照コンジュゲートによっては保護が誘導されず、これは、ADX40ワクチンによって誘導される保護の特異性を示している。
【実施例8】
【0079】
腫瘍を皮下移植した3日後(最初の実験)または3日後および11日後(第2の実験)に、ADX40−A20コンジュゲートまたはKLH−A20+GM−CSFを与えるという2つの治療的なワクチン接種試験を行った。どのワクチンレジメンも、対照と比較して腫瘍の増生または生存に対する有意な効果を有さなかった(データは示していない)。これらのデータは、臨床的な設定ではイディオタイプワクチン接種は、化学療法後に寛解の状態にある、疾患の残留が最小限である患者に一般に使用されるので、驚くべきものではない。
【実施例9】
【0080】
種々の攻撃実験からの生存データのメタ分析が表1に示されている。ADX40−A20を与えたマウスは、KLH−A20を与えたマウスと比較して生存が有意に改善された(それぞれ26%、2.8%;p=0.007)。さらに、ADX40−20を与えたマウスの60日目の生存は、KLH−A20プラスGM−CSFの現行の臨床的なレジメンを与えたマウスと同様であった(25%)が、注射は8回ではなく2回であった。最後に、ADX40−A20プラスMPLを与えた動物の生存が他の群を有意に超えたので、追加的なアジュバントをADX40コンジュゲートと組み合わせると相乗効果が見られるとことを示す証拠がある。
【実施例10】
【0081】
実施例10は、潜在的な作用様式を例示している。マウスを、ADX40−A20+MPLで免疫化し、攻撃の直前に、CD4T細胞またはCD8T細胞のいずれか、またはその両方を枯渇させた。CD4細胞単独の枯渇では、腫瘍の成長または生存率に対する明白な影響はなかった。CD8T細胞の枯渇により、防御が減少し、これは、ADX40+MPL保護を媒介することにおけるCD8T細胞の可能性のある役割を示している。CD4細胞およびCD8細胞両方の枯渇により、防御のさらなる減少がみられた;図11。
(参考文献)
1.Carroll WL, Thielemans K, Dilley J, Levy R. Mouse x human heterohybridomas as fusion partners with human B cell tumors. J Immunol Methods. 1986;89:61 -72.
2.Rodriguez-Calvillo M, Inoges S, Lopez-Diaz de Cerio A, Zabalegui N, Villanueva H, Bendandi M. Variations in "rescuability" of immunoglobulin molecules from different forms of human lymphoma: implications for anti-idiotype vaccine development. Crit Rev Oncol Hematol. 2004;52:1 -7.
3.Kwak LW, Campbell MJ, Czerwinski DK, Hart S, Miller RA, Levy R. Induction of immune responses in patients with B-cell lymphoma against the surface-immunoglobulin idiotype expressed by their tumors. N Engl J Med. 1992;327:1209- 1215.
4.Park HJ, Neelapu SS. Developing idiotype vaccines for lymphoma: from preclinical studies to phase III clinical trials. Br J Haematol. 2008;142:179-191 .
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)リンパ腫または白血病に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原、
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチン。
【請求項2】
前記第2のアジュバントが、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
前記アジュバントが、ポリI:Cである、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記アジュバントが、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項6】
前記アジュバントが、MPLである、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
前記イディオタイプ抗原が、前記イディオタイプ抗原のFab断片またはF(ab)2’断片を含む、またはそれからなる、請求項1から6までのいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項8】
i)リンパ腫または白血病に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)リンパ腫または白血病の治療において使用するための、連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチン。
【請求項9】
前記リンパ腫または白血病が、B細胞リンパ腫または白血病である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記B細胞リンパ腫が、慢性リンパ球性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球白血病、B細胞前リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、骨髄腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症など)、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞新生物、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、MALTリンパ腫とも称される節外周辺帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病からなる群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記リンパ腫が、免疫不全関連リンパ腫である、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記免疫不全関連リンパ腫がHIV関連である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記免疫不全関連リンパ腫が移植関連である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記免疫不全関連リンパ腫が、メトトレキサート治療の結果である、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
i)骨髄腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)骨髄腫の治療において使用するための、連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチン。
【請求項16】
リンパ腫の予防法または治療に適したワクチンを製造する方法であって、
i)リンパ腫または白血病を有する、またはそれにかかりやすい対象からイディオタイプ抗原を単離するステップ;
ii)前記イディオタイプ抗原をCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントと連結して複合体を形成し、場合によって、連結した複合体を単離するステップ;および
iii)少なくとも1種の追加的なアジュバントを伴った、連結した抗原/アジュバント複合体の調製物を形成するステップ
を含む方法。
【請求項17】
リンパ腫の予防法または治療に適したワクチンを製造する方法であって、
i)リンパ腫の細胞を含む単離された生体試料を用意するステップ;
ii)CD40モノクローナル抗体を産生する単離されたハイブリドーマ細胞を用意するステップ;
iii)リンパ腫の細胞と前記ハイブリドーマ細胞系との融合を促進してハイブリッド細胞を形成するのに適した調製物を形成するステップ;
iv)前記ハイブリッド細胞を、1つの免疫グロブリンがCD40に対して特異的であり、第2の免疫グロブリンがリンパ腫または白血病のイディオタイプである少なくとも2つの免疫グロブリンを含むモノクローナル抗体についてスクリーニングするステップ;および
v)連結した抗原/アジュバント複合体と、少なくとも1種の追加的なアジュバントとの調製物を形成するステップ
を含む方法。
【請求項18】
前記第2のアジュバントが、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記アジュバントが、ポリI:Cである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アジュバントが、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項22】
i)リンパ腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;および
ii)リンパ腫の治療において使用するための、イディオタイプ抗原に対する免疫応答を増強するアジュバント
を含むワクチン。
【請求項23】
前記アジュバントが、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される、請求項22に記載のワクチン。
【請求項24】
前記アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである、請求項22に記載のワクチン。
【請求項25】
前記アジュバントがポリI:Cである、請求項22に記載のワクチン。
【請求項26】
前記アジュバントが、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である、請求項22に記載のワクチン。
【請求項27】
前記アジュバントがMPLである、請求項26に記載のワクチン。
【請求項1】
i)リンパ腫または白血病に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原、
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチン。
【請求項2】
前記第2のアジュバントが、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
前記アジュバントが、ポリI:Cである、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記アジュバントが、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項6】
前記アジュバントが、MPLである、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
前記イディオタイプ抗原が、前記イディオタイプ抗原のFab断片またはF(ab)2’断片を含む、またはそれからなる、請求項1から6までのいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項8】
i)リンパ腫または白血病に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)リンパ腫または白血病の治療において使用するための、連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチン。
【請求項9】
前記リンパ腫または白血病が、B細胞リンパ腫または白血病である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記B細胞リンパ腫が、慢性リンパ球性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球白血病、B細胞前リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、骨髄腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症など)、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞新生物、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、MALTリンパ腫とも称される節外周辺帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病からなる群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記リンパ腫が、免疫不全関連リンパ腫である、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記免疫不全関連リンパ腫がHIV関連である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記免疫不全関連リンパ腫が移植関連である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記免疫不全関連リンパ腫が、メトトレキサート治療の結果である、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
i)骨髄腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;
ii)前記イディオタイプ抗原と連結したCD40モノクローナル抗体アジュバントまたはそのCD40結合性断片;ならびに
iii)骨髄腫の治療において使用するための、連結したイディオタイプ抗原およびCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントに対する免疫応答を増強する第2のアジュバント
を含むワクチン。
【請求項16】
リンパ腫の予防法または治療に適したワクチンを製造する方法であって、
i)リンパ腫または白血病を有する、またはそれにかかりやすい対象からイディオタイプ抗原を単離するステップ;
ii)前記イディオタイプ抗原をCD40モノクローナル抗体またはそのCD40結合性断片アジュバントと連結して複合体を形成し、場合によって、連結した複合体を単離するステップ;および
iii)少なくとも1種の追加的なアジュバントを伴った、連結した抗原/アジュバント複合体の調製物を形成するステップ
を含む方法。
【請求項17】
リンパ腫の予防法または治療に適したワクチンを製造する方法であって、
i)リンパ腫の細胞を含む単離された生体試料を用意するステップ;
ii)CD40モノクローナル抗体を産生する単離されたハイブリドーマ細胞を用意するステップ;
iii)リンパ腫の細胞と前記ハイブリドーマ細胞系との融合を促進してハイブリッド細胞を形成するのに適した調製物を形成するステップ;
iv)前記ハイブリッド細胞を、1つの免疫グロブリンがCD40に対して特異的であり、第2の免疫グロブリンがリンパ腫または白血病のイディオタイプである少なくとも2つの免疫グロブリンを含むモノクローナル抗体についてスクリーニングするステップ;および
v)連結した抗原/アジュバント複合体と、少なくとも1種の追加的なアジュバントとの調製物を形成するステップ
を含む方法。
【請求項18】
前記第2のアジュバントが、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記アジュバントが、ポリI:Cである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アジュバントが、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項22】
i)リンパ腫に罹患している患者から単離されたイディオタイプ抗原;および
ii)リンパ腫の治療において使用するための、イディオタイプ抗原に対する免疫応答を増強するアジュバント
を含むワクチン。
【請求項23】
前記アジュバントが、GMCSF、インターフェロンガンマ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFα、およびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される、請求項22に記載のワクチン。
【請求項24】
前記アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリI:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである、請求項22に記載のワクチン。
【請求項25】
前記アジュバントがポリI:Cである、請求項22に記載のワクチン。
【請求項26】
前記アジュバントが、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)および/またはモノホスホリルリピドA[MPL]などの細菌細胞壁誘導体である、請求項22に記載のワクチン。
【請求項27】
前記アジュバントがMPLである、請求項26に記載のワクチン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9i】
【図9ii】
【図10i】
【図10ii】
【図10iii】
【図11】
【図12i】
【図12ii】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9i】
【図9ii】
【図10i】
【図10ii】
【図10iii】
【図11】
【図12i】
【図12ii】
【公表番号】特表2013−520482(P2013−520482A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554424(P2012−554424)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050372
【国際公開番号】WO2011/104558
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512219459)アジュバンティクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050372
【国際公開番号】WO2011/104558
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512219459)アジュバンティクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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