説明

癌処置

死抵抗性癌細胞を特徴とする癌を処置するための方法および組成物が記述される。一般に、こうした方法は、癌細胞の数種、および好ましくは大部分若しくは全部で細胞分裂異常を誘導する化合物の治療上有効な量の投与を必要とする。こうした処置の有効性の評価方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、癌、とりわけ薬物誘発性アポトーシスに抵抗性の癌の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
1.はじめに。
本出願は、以下の米国仮出願、すなわち“Cancer Treatments(癌処置)“と題されかつ2004年11月5日出願の第60/625,193号;および“Cancer Treatments(癌処置)”と題されかつ2005年3月10日出願の第60/660,266号のそれぞれの利益およびそれらに対する優先権を主張する。これらの出願のそれぞれは、図、表および請求の範囲を包含するそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0003】
以下の記述は本発明の理解において有用でありうる情報を包含する。それは、いかなるこうした情報も本特許請求される発明に対する従来技術であるか若しくはそれに関すること、または、明示的若しくは黙示的に参照されるいかなる刊行物も従来技術であることの承認ではない。
【0004】
2.背景。
癌は現在米国で第二位の死因であり、そして米国の8百万を超える人が癌と診断されている。1995年には、癌は米国の全死亡の23.3%を占めた。非特許文献1を参照されたい。
【0005】
癌は分子レベルで完全に理解されてはいない。ある種のウイルス、ある種の化学物質若しくは放射のような発癌物質への細胞の曝露が、「抑制」遺伝子を不活性化若しくは「癌遺伝子」を活性化するDNA変化につながることが既知である。抑制遺伝子は増殖調節遺伝子であり、突然変異に際してもはや細胞増殖を制御し得ない。癌遺伝子は当初は正常遺伝子(癌原遺伝子と呼ばれる)であり、突然変異若しくは変えられた発現情況によりトランスフォーミング遺伝子となる。トランスフォーミング遺伝子の産物は不適切な細胞増殖を引き起こす。20種以上の異なる正常な細胞遺伝子が、遺伝子変化により癌遺伝子になり得る。形質転換された細胞は、細胞形態学、細胞と細胞の相互作用、膜内容物、細胞骨格構造、タンパク質分泌、遺伝子発現および死亡率を包含する多くの方法で正常細胞と異なる(形質転換された細胞は無制限に増殖し得る)。
【0006】
新生物すなわち腫瘍は細胞成長(cell growth)の異常な調節されないかつ無秩序の増殖(proliferation)であり、そして一般に癌と称される。新生物は、それが破壊的増殖、侵襲性および転移性の特性を有する場合に悪性すなわち癌性である。侵襲性は、典型的に組織の境界を規定する基底層を突き破りそれによりしばしば身体の循環系に進入する、浸潤すなわち周囲組織の破壊による新生物の局所拡延を指す。転移は、典型的には、リンパ若しくは血管による腫瘍細胞の播種を指す。転移はまた、漿膜腔またはクモ膜下若しくは他の空隙を通る直接拡張による腫瘍細胞の移動も指す。転移の過程により、身体の他領域への腫瘍細胞移動は最初の出現の部位から離れた領域に新生物を確立する。
【0007】
癌は今や、主として3種の型の治療法すなわち外科手術;放射線;および化学療法の1種若しくは組合せで処置される。外科手術は病的組織の大量除去を伴う。外科手術はある部位、例えば乳房、結腸および皮膚に位置する腫瘍の除去においてときに有効である一方
、それは脊柱のような他領域に位置する腫瘍の処置でも、白血病のような播種性腫瘍状態の処置にも使用し得ない。放射線治療は、曝露された細胞に対する死若しくは損傷を引き起こすイオン化放射への生存組織の曝露を伴う。放射線治療からの副作用は急性かつ一時的でありうる一方、他者は不可逆的でありうる。化学療法は細胞複製若しくは細胞代謝の破壊を伴う。それは最もしばしば乳房、肺および精巣癌の処置で使用される。
【0008】
腫瘍性疾患の処置で使用される全身性化学療法の副作用は、癌の処置を受ける患者により最も恐れられる。これらの副作用のうち、吐き気および嘔吐が最も一般的である。他の有害な副作用は、骨髄レスキュー(rescue)若しくは放射線治療を伴う高用量の化学療法を受領する患者における血球減少、感染症、悪液質、粘膜炎;脱毛症(脱毛);掻痒症、蕁麻疹および血管浮腫のような皮膚合併症;神経学的合併症;肺および心の合併症;ならびに生殖器および内分泌の合併症を包含する。化学療法誘発性の副作用は患者の生活の質に重大な影響を与え、そして処置への患者コンプライアンスに劇的に影響しうる。であるから、改良された処置方法が必要とされる。
【0009】
3.定義。
「アルキル化剤」は、DNAを化学的に修飾しかつその機能を破壊する化学療法化合物を指す。数種のアルキル化剤は、二本鎖DNA分子の同一鎖若しくは相補鎖上のヌクレオチド間の架橋の形成を引き起こす一方、なお他者はDNA鎖間の塩基対不適正を引き起こす。例示的アルキル化剤は、ベンダムスチン(bendamustine)、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ダカルバジン(dacarbazine)、ヘキサメチルメラミン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、ミトタン、マイトマイシン、ピポブロマン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、チオテパおよびトリエチレンメラミンを包含する。
【0010】
「代謝拮抗剤」は、DNAを合成するのに必要とされる、DNA合成に必要とされるもの(例えばヌクレオシドおよびヌクレオチド)を包含する生体分子の合成を妨害する化学療法剤を指す。代謝拮抗剤の例は、カペシタビン、クロロデオキシアデノシン、シタラビン(およびその活性化型ara−CMP)、シトシンアラビノシド、ダカバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ペントスタチン、トリメトレキサートおよび6−チオグアニンを包含する。
【0011】
「抗分裂剤」は、典型的には微小管形成の破壊により有糸分裂を妨害する化学療法剤を指す。抗有糸分裂化合物の例は、ナベルビン、パクリタキセル、タキソテール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンを包含する。
【0012】
本発明の情況において、「化学療法剤」は悪性細胞および組織を破壊することを意図している化学物質を指す。化学療法剤は、癌若しくは他の悪性病変を予防若しくは処置するために患者に投与される場合に抗腫瘍効果を有する小分子、核酸(例えばアンチセンス分子、リボザイム、小分子干渉RNA分子など)ならびにタンパク質(例えば抗体、抗体フラグメント、サイトカイン、酵素およびペプチドホルモン)を包含する。化学療法剤は、しばしば作用機序に基づき分類に分割される(例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤および抗分裂剤)。
【0013】
「併用療法」という用語は、示される治療効果を達成するために最低2種の別個の療法の規定を伴う治療レジメンを指す。例えば、併用療法は2種若しくはそれ以上の化学的に別個の有効成分、例えば速効性の化学療法剤および骨髄保護剤の投与を伴いうる。あるいは、併用療法は、1種若しくはそれ以上の化学療法剤の投与、ならびに放射線治療および
/あるいは外科手術または患者の生活の質を向上させるか若しくは癌を処置するかのいずれかのための他の技術を伴いうる。2種若しくはそれ以上の化学的に別個の有効成分の投与の情況において、有効成分を同一組成物の一部として若しくは異なる組成物として投与しうることが理解される。別個の組成物として投与される場合、異なる有効成分を含んでなる組成物は、同一若しくは異なる時点で、同一若しくは異なる経路により、同一若しくは異なる投薬レジメンを使用して、全部特定の情況が必要とするとおりかつ主治医により決定されるとおり投与しうる。同様に、1種若しくはそれ以上の化学療法剤が例えば放射線および/若しくは外科手術と組合せられる場合、該薬物(1種若しくは複数)は外科手術若しくは放射線治療の前若しくは後に送達しうる。
【0014】
「挿入剤」は、二本鎖DNA分子の隣接塩基対間にそれ自身を挿入してDNA構造を破壊しかつDNA複製、遺伝子転写および/若しくはDNA結合タンパク質のDNAへの結合を妨害する化学療法剤を指す。
【0015】
「単剤療法」は、単一用量として投与されるにしろ若しくは長時間にわたり数個の用量で投与されるにしろ、1種の治療上有効な化合物の送達に基づく処置レジメンを指す。
【0016】
医薬品の商品化の情況において、「販促」、「販促する」、「販促すること」などの用語は、特定の製薬学的化合物、組成物若しくは処置レジメンの処方、供給、購入および/若しくは使用を誘導することを直接若しくは間接的に意図している、該化合物、組成物若しくは処置レジメンの発見、研究、開発および/若しくは商品化に関与する製造元、供給元若しくは他の実体により若しくはその代わりに実施されるいかなるおよび全部の情報、説得および学術的活動を指す。こうした活動は、限定されるものでないが医学専門家(例えば医師および看護師)、薬剤師、医療管理者、保険会社若しくは政府の代表者ならびに患者(潜在的患者を包含する)を挙げることができる、供給および配布の連鎖にある何人にも向けられうる。言い換えれば、販促の主目的は、特定の製薬学的化合物、組成物若しくは処置レジメンの販売若しくは使用、および/またはそれにおける利益を刺激することであり、そして、従って、この目的にかなうことを意図しているいかなる活動も、該特定の製薬学的化合物、組成物若しくは処置レジメンの「販促」を構成する。
【0017】
本発明の「特許可能な」組成物、方法、機械若しくは製品は、該分析が実施される時点で特許可能性に対する全部の法定の要件を主題が満たすことを意味している。例えば、新規性、非自明性などに関して、1個若しくはそれ以上の請求項が新規性、非自明性などを無効にするとみられる1個若しくはそれ以上の態様を包含することを後の調査が示す場合、「特許可能な」態様への明確な限定により制限される該請求項(1個若しくは複数)は、特許不可能な態様(1個若しくは複数)を特別に排除する。また、それに付随する請求項は、最も広範な合理的な範囲を提供しならびにそれらの妥当性を保存するの双方のように解釈されるべきである。さらに、特許性に対する法定の要件の1個若しくはそれ以上が改正される場合、または、特許性に対する特定の法定の要件が、本出願が出願されるか若しくは特許として発行される時点から、付随する請求の範囲の1個若しくはそれ以上の妥当性が疑問視される時点まで満足されているかどうかを評価するため標準が変わる場合、請求の範囲は、(1)それらの妥当性を保存しかつ(2)該環境下で最も広範な合理的な解釈を提供する方法で解釈されるべきである。
【0018】
「製薬学的に許容できる塩」という用語は、本発明の化合物の生物学的有効性および特性を保持しかつ生物学的に若しくは別の方法で望ましくなくない塩を指す。多くの場合、本発明の化合物は、アミノおよび/若しくはカルボキシル基またはそれに類似の基の存在によって酸および/若しくは塩基塩を形成することが可能である。製薬学的に許容できる酸付加塩は無機および有機酸から製造しうる一方、製薬学的に許容できる塩基付加塩は無機および有機塩基から製造し得る。製薬学的に許容できる塩の総説については、非特許文
献2を参照されたい。「非毒性の製薬学的に許容できる塩」という表現は、非毒性の製薬学的に許容できる無機若しくは有機酸または無機若しくは有機塩基と形成される非毒性の塩を指す。例えば、塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などのような無機酸由来のもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、フマル酸、メタンスルホン酸およびトルエンスルホン酸などのような有機酸から製造される塩を包含する。塩はまたアンモニア、ヒドロキシエチルアミンおよびヒドラジンのような無機塩基からのものも包含する。適する有機塩基は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ヒドロキシエチルアミン、モルホリン、ピペラジンおよびグアニジンを包含する。
【0019】
「複数の」は1以上を意味している。
【0020】
「リツキシマブ難治性」という用語は、リツキシマブでの、しかし医師若しくは処置する専門家により決定されるところの単剤として若しくは組合せでのいずれかで与えられるリツキシマブ治療に難治性の疾患(リツキシマブ処置完了6か月以内に応答なし若しくは進行と定義される)、および/またはさらなる処置を保証されないようにする前のリツキシマブ治療に対する予期しない反応によりさらなる処置に不適切な、前の処置を意味している。
【0021】
「抗CD20難治性」という用語は、CD20抗原と相互作用する剤での、しかし医師若しくは処置する専門家により決定されるところの単剤として若しくは組合せでのいずれかで与えられる抗CD20剤に難治性の疾患(抗CD20剤処置完了6か月以内に応答なし若しくは進行と定義される)、および/若しくはさらなる処置を保証されないようにする前の抗CD20治療に対する予期しない反応によりさらなる処置に不適切な、前の処置を意味している。
【0022】
細胞周期の「S期」は染色体が複製される期を指す。
【0023】
「種」という用語は多様な文脈で本明細書で使用される(例えば化学療法剤の特定の1種)。各情況において、該用語は、該特定の情況で言及される種類の化学的に不明瞭な分子の一集団を指す。
【0024】
「被験体」若しくは「患者」という用語は、本発明の分子により遂げられ得る処置の必要な動物を指す。本発明により処置し得る動物は脊椎動物を包含し、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタならびに霊長類(ヒトおよびヒト以外の霊長類を包含する)動物のような哺乳類がとりわけ好ましい例である。
【0025】
「治療上有効な量」は、こうした処置の必要な被験体に投与される場合に処置を遂げるのに十分な有効成分の量を指す。癌治療の情況において、「治療上有効な量」は、特定の癌と相互に関連づけられる1種若しくはそれ以上の遺伝子の発現の増大若しくは減少、腫瘍量の減少、癌細胞溶解、生物学的サンプル(例えば生検、および全血、血漿、血清、尿などのような体液のアリコート)中の1種若しくはそれ以上の癌細胞死マーカーの検出、誘導アポトーシス若しくは他の細胞死経路の誘導などを包含する、癌細胞の生存若しくは代謝と関連する1種若しくはそれ以上のパラメータの客観的に測定される変化を生じるものである。もちろん、治療上有効な量は、処置されている特定の被験体および状態、被験体の重量および齢、疾患状態の重症度、選ばれる特定の化合物、従われるべき投薬レジメン、投与のタイミング、投与様式などに依存して変動することができ、それらの全部は当
業者により容易に決定され得る。併用療法の情況において、特定の1有効成分の治療上有効な量を構成するものは、単剤療法(すなわち有効成分として1種のみの化学的実体を使用する治療レジメン)として投与される場合の該有効成分の治療上有効な量を構成するものと異なりうることが認識されるであろう。
【0026】
「処置」若しくは「処置すること」という用語は、疾患若しくは障害に対し予防若しくは保護すること(すなわち臨床症状を発生させないこと);疾患若しくは障害を阻害すること(すなわち臨床症状の発症を停止若しくは抑制すること);および/または疾患若しくは障害を緩和すること(すなわち臨床症状の退縮を引き起こすこと)を包含する、疾患若しくは障害のいかなる処置も意味している。認識されるであろうとおり、究極の誘導事象(1種若しくは複数)は未知のことも若しくは潜在的なこともあるため、疾患若しくは障害を「予防すること」と「抑制すること」を識別することは常に可能なわけではない。従って、「予防」という用語は、「予防すること」および「抑制すること」双方を包含するある型の「処置」を構成することが理解されるであろう。「保護」という用語は従って「予防」を包含する。
【非特許文献1】U.S.Dept.of Health and Human Servuces、National Center for Health Statistics、Health United States 1996−1997 and Injury Chartbook 117(1997)
【非特許文献2】Bergeら((1997)J.Pharm.Sci.、vol.66、1)
【発明の開示】
【0027】
[発明の要約]
本発明の一目的は、単独または他の化合物および/若しくは処置とともに癌細胞で細胞分裂異常を誘発する化合物(例えばベンダムスチン)の投与による、死抵抗性癌細胞(death−resistant cancer cell)を特徴とする癌の特許可能な処置方法を提供することである。好ましい態様において、これらの方法は、患者が死抵抗性癌細胞を特徴とする癌を有するかどうかを決定すること、およびその場合にその後該患者に治療上有効な量のベンダムスチンを投与することを伴う。本発明のなお別の目的は、癌治療の投与の間若しくは後の1若しくはそれ以上の期間に患者から採取した生物学的サンプル中の癌細胞死マーカーの検出に基づく癌処置の有効性の評価方法に関する。
【0028】
従って、本発明の一局面は、その癌が、死抵抗性癌細胞、すなわちアポトーシス若しくは他のプログラムされた細胞死経路に抵抗する癌細胞、ならびに例えば単独の若しくは抗CD20剤、例えばリツキシマブとともにの1種若しくはそれ以上のアルキル化剤の投与により誘発されうるところの多剤耐性(MDR)を表す細胞を特徴とする癌患者の特許可能な処置方法に関する。これらの方法は、死抵抗性癌細胞で細胞分裂異常を誘導する治療上有効な量の化合物を患者に投与することを含んでなる。こうした細胞は薬物誘発性アポトーシスに抵抗性であるものを包含する。こうした細胞の例は、典型的にはp53をコードする遺伝子中の若しくはその欠失を包含するその突然変異の結果としてp53欠損を有するものを包含する。こうした癌の代表例は、非ホジキンリンパ腫(「NHL」)および慢性リンパ球性白血病(「CLL」)を包含する。細胞分裂異常を誘導するためのとりわけ好ましい一化合物はアルキル化剤ベンダムスチンである。従って、関連する一局面は、特定の癌の細胞の死抵抗性癌細胞としての特徴付け、次いで、単独で若しくは他の化学療法剤、佐剤、外科手術および/若しくは放射線とともにのこうした細胞で細胞分裂異常を誘導する化合物(例えばベンダムスチン)での処置を伴う処置方法に関する。加えて、こうした処置レジメンの有効性をモニターして、該特定の単剤療法若しくは併用療法処置が所望の効果を達成しているかどうかを評価し得る。
【0029】
本発明の別の局面は、癌、とりわけ死抵抗性癌細胞を特徴とする癌のある種の関連する特許可能な処置方法に関する。これらの方法は、癌を含んでなる細胞の少なくとも一部分が細胞周期のS期にある時点での治療上有効な量の化合物の患者への投与を含んでなる。いくつかの態様において、患者の癌細胞の少なくとも一部分が、S期に細胞を駆動する化合物を患者に投与することの結果としてS期に駆動される。ベンダムスチンは癌細胞をS期に駆動するためのとりわけ好ましい化合物である。ベンダムスチンは癌細胞をS期に駆動することにおいて有用であるため、付加的な好ましい態様は、より活性である(すなわち、細胞が細胞周期のS期にある場合により大きな治療効果、例えば細胞傷害性を発揮する)1種若しくはそれ以上の他の化学療法剤種のその後の投与を伴う。こうした方法において、1種若しくはそれ以上の化学療法剤のその後の投与は、好ましくはベンダムスチン投与後最低約10分、および好ましくは最低約30ないし約60分若しくはそれ以上に起こるとは言え、こうした他の剤(1種若しくは複数)の投与はベンダムスチンが投与された後約72時間、好ましくは約48時間若しくはそれ未満以内に起こることが好ましい。これらの好ましい態様のいくつかにおいて、他の化学療法剤(1種若しくは複数)は、ベンダムスチンの投与後約30分ないし約36時間以内、好ましくはベンダムスチンの投与後約30分ないし24時間以内、およびいくつかの場合にはベンダムスチンの投与後約30分ないし6ないし約12時間以内に与えられる。関連する方法は癌治療に伴う毒性を低下させることを伴う。こうした方法は、癌患者に治療上有効な量のベンダムスチンの複数の用量を投与することを含んでなる。第一の用量はおそらく望ましくない毒性をもたらすであろう。こうした場合に、第二のもの(若しくは他のその後の用量)の投与を、該望ましくない毒性が弱まり始めた後まで遅らせうる。いくつかの場合には、異なる時点で投与されるベンダムスチンの用量もまた変動しうる。
【0030】
本発明のなお別の局面は、従って、それが単剤療法であろうと若しくは併用療法であろうと、処置の経過中若しくはその完了後のいずれかのアルキル化剤(例えばベンダムスチン)の投与に基づく癌処置の有効性の特許可能な評価方法に関する。1種のアルキル化剤(例えばベンダムスチン)の投与を伴う治療レジメンの投与後に該評価を実施する場合、好ましくは、アルキル化剤がその意図される若しくは所望の治療効果を発揮し得るように十分な期間を経過させる。こうした方法において、処置の有効性と相関する癌細胞死のマーカー(すなわち、死につつある若しくは死んだ癌細胞により産生若しくはそれらにより放出される分子(例えばタンパク質、炭水化物、脂質、核酸若しくは他の分子)、ならびに細胞生存能力の欠如、増殖することの不能、老化などのような表現型)を、患者から得た生物学的サンプル中で検出して、での処置が有効であったかどうかを決定する。細胞死の好ましいマーカーは、アデニル酸キナーゼ活性レベル、PARP切断生成物のレベルおよび低下された細胞生存率を包含する。マーカーに依存して、こうした検出は定性的、半定量的若しくは定量的でありうる。検出されるマーカーの存在若しくはレベルは、該処置が有効であるかもしくはあったかどうかを示す。
【0031】
本発明のなお別の局面において、本発明は、1種若しくはそれ以上のアルキル化剤および抗CD20剤(例えばリツキシマブ)に抵抗性すなわち難治性の癌を有する患者にベンダムスチンを投与することに基づく癌の処置に関する。好ましくは、これらの方法は死抵抗性癌細胞を特徴とする癌に対し配備される。本発明の関連する一局面は、難治性癌すなわち死抵抗性癌細胞を特徴とする癌、とりわけ1種若しくはそれ以上のアルキル化剤および抗CD20剤、例えばリツキシマブの組合せでの処置に難治性の癌を処置するためのベンダムスチン使用を販促することを伴う、こうした癌の処置における事業の実施方法に関する。なお別の局面は、患者の癌がベンダムスチン処置の影響を受けやすいかどうかに関する。認識されるであろうとおり、ベンダムスチン感受性のいかなる適する評価も使用し得る。これらの方法のいくつかの好ましい態様において、患者から採取した癌組織からの細胞サンプルの若干若しくは全部を、癌細胞に対し毒性である化合物の非存在下で該癌細胞を増殖させる増殖条件下でベンダムスチンに曝露する。感受性の評価をその後、該アッ
セイの結果に基づき行う。例えば、対照と比較しての低下された増殖は、該細胞およびこれゆえに該患者の癌がベンダムスチンに基づく治療に感受性であることを示すとみられる。対照的に、に対する影響なし(若しくは高められた増殖)は感受性の欠如を示すとみられる。
【0032】
本発明のなお別の局面は、死抵抗性癌細胞を特徴とする癌の処置、すなわち難治性の癌、とりわけ1種若しくはそれ以上のアルキル化剤および抗CD20剤、例えばリツキシマブの組合せでの処置に難治性の癌の処置のための医薬品の製造におけるベンダムスチンの使用に関する。好ましくは、こうした医薬品は治療上有効な量のベンダムスチンを包含する。
【0033】
[図面の簡単な説明]
本特許出願はカラーで作成された最低1個の図を含有する。カラー図面(1個若しくは複数)を伴う本特許出願の複写は要求および必要な料金の支払いに際して提供されることができる。
【0034】
図1は、遺伝子発現プロファイルをそれぞれ示す2図AおよびBを有する。該図は12,000種以上の既知遺伝子を含有するAffymetix遺伝子チップ(U133A)を使用して非ホジキンリンパ腫細胞株SU−DHL−1で測定した遺伝子発現の変化を示す。ベンダムスチンはIC50(25μM;レーン1)およびIC90(35μM;レーン2)で試験した。クロラムブシル(5μM;レーン3)およびホスホルアミドマスタード(シクロホスファミド代謝物、50μM;レーン4)はIC90で試験した。mRNAの単離は曝露後8時間に実施した。A.示されるクラスター図は対照(希釈剤、DMSO)に比較しての上位100種の最も調節される遺伝子を表す。赤色は上方調節された遺伝子を表し;青色は下方制御された遺伝子を表す。B.該クラスター図は全3種の試験した薬物により同時に誘導される遺伝子を表す。
図2は、3個の棒グラフ2A、2Bおよび2Cを有する。Q−PCR分析を、等毒性濃度のベンダムスチン、ホスホルアミドマスタードおよびクロラムブシルに曝露したSU−DHL−1細胞で、下の方法の節に記述されるとおり実施した。入力cDNAのレベルは18s RNAについてのアッセイを使用して正規化し、そして未処理サンプル中の転写物のレベルを1に設定した。図2Aは、2種の代表的なp53依存性遺伝子p21およびNOXAの相対的RNAレベルを示す。図2BはM期の細胞周期チェックポイントに関与する4種の遺伝子、すなわちpolo様キナーゼ1(PLK−1)、auroraキナーゼAおよびB、ならびにサイクリンB1のRNAレベルを示す。図2CはDNA修復機構に関与する遺伝子EXO1およびFen1の相対的RNAレベルを示す。柱(column)はDMSO処理対照からの変化の倍数の平均±SEを表す。結果は3回の独立した実験から得た。
図3は、NHL細胞(SU−DHL−1)でのシクロホスファミド(50μM)およびクロラムブシル(4μM)に比較してのベンダムスチン(50μM)のその高められたアポトーシス効果を示す数種のイムノブロットを示す。これらのイムノブロットを生成するため、細胞ライセートを、下の実験の節に記述されるとおり20時間の曝露後に調製した。β−アクチンでのメンブレンのプロービングが負荷対照としてはたらき、そして調節されたタンパク質の下に示される。左上図は、リン酸化型特異的抗体を使用して検出された、Ser15がリン酸化されたp53の発現を表す。左中図は全p53およびp21発現を示す。左下図はBaxの発現を表す。右図は、特異的カスパーゼ切断部位を認識する抗体を使用しての完全長PARP(上)およびPAPPのカスパーゼ切断フラグメントの発現を示す。
図4は、選択されたDNA修復機構の機能分析を表す2グラフAおよびBよりなる。図4Aは、ベンダムスチンが塩基除去修復(BER)を介するDNA損傷修復に至るがしかしシクロホスファミドは至らないことを示す。修復酵素Ape−1(ベンダムスチンの細胞傷害活性においてBER経路で決定的な役割を演じているプリン塩基のないエンドヌクレアーゼ)、およびシクロホスファミド代謝物ホスホルアミドマスタード(PM)の役割を、Ape−1阻害剤メトキシアミン(MX)を使用して評価した。ベンダムスチンおよびMXで観察される曲線の左方移動は、ベンダムスチンにより生じられるDNA損傷がBERにより修復されることを示す。図4Bは、MGMT修復活性の阻害がベンダムスチンの細胞傷害性に影響を及ぼさないことを示す。ベンダムスチンの細胞傷害活性における修復酵素MGMT(O−メチルグアニン−DNAメチルトランスフェラーゼ)の役割を、MGMT阻害剤O−ベンジルグアニン(O−BG)を使用して評価した。O−ベンジルグアニンの添加はベンダムスチンのIC50を有意に変化せず、従って、ベンダムスチンがO−アルキルグアニンDNA付加物を誘導することはありそうにない。対照的に、O−ベンジルグアニンは、カルムスチンおよびホスホルアミドマスタード(PM)のような他のナイトロジェンマスタードに対し細胞を大きく感作する。
図5は、ベンダムスチンが腫瘍細胞に効率的に進入し、かつ、最低3種のシグナル伝達経路、すなわち1)おそらくNOXAおよびBaxのような前アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーにより媒介される固有のアポトーシスの強い活性化をもたらす「正準」p53依存性ストレス経路の活性化;2)NHL若しくはCLL患者で頻繁に使用される他のアルキル化剤により活性化されない塩基除去修復機構のようなDNA修復機構の活性化;ならびに3)キナーゼPLK−1ならびにAurora AおよびBのような数種の有糸分裂チェックポイントの阻害の開始をもたらす、長期のかつ広範囲のDNA損傷を誘導することを具体的に説明する。特定の論理に束縛されることを願わない一方、DNA損傷の同時の誘導および有糸分裂チェックポイントの阻害が、おそらく、ベンダムスチンに曝露された腫瘍細胞が有糸分裂を受ける前にDNA損傷を効率的に修復することを予防する。細胞は従って損傷されたDNAを伴い有糸分裂に進入するか、若しくは「慣習的」p53依存性アポトーシスに進行し得ない細胞が、細胞分裂異常による死を受けることができる。この代替のプログラムされた細胞死経路は、伝統的なアポトーシスの強い活性化と一緒になって、ベンダムスチンがin vitroでの薬剤耐性癌細胞の死滅においてならびに化学難治性腫瘍を有する患者において非常に有効である理由であると考えられる。
図6は、下の実施例3に記述される「ウォッシュアウト」実験のいくつかの経過で実施したアデニル酸キナーゼアッセイの結果を示すヒストグラムである。これらの実験において、SU−DHL−1細胞を50μMベンダムスチン、20μMホスホルアミドマスタード若しくは2μMクロラムブシルのいずれかで30、60若しくは90分間のいずれか処理した。調時的薬物インキュベーション後に、細胞を1×PBSで洗浄して特定の化学療法剤を「洗い流し」、そしてその後新鮮培地を添加した。細胞をその後48時間培養し、その時間の後にアデニル酸キナーゼアッセイを細胞上清で実施した。桃色の棒は0分の薬物(すなわち薬物なし)インキュベーションを表す。緑色の棒は30分のインキュベーションを表し、橙色の棒は60分のインキュベーションを表し、そして紫色の棒は120分のインキュベーションを表す。該結果は、3種の薬物および「薬物なし」対照に対する上清中のアデニル酸キナーゼ活性のレベルをプロットする。標準偏差を該グラフの各棒の上部に表す。
図7は、図6のように、下の実施例3に記述される「ウォッシュアウト」実験のいくつかの経過で実施したアデニル酸キナーゼアッセイの結果を示すヒストグラムである。図6および7に描かれる結果間の差違は、図6に表されるデータが、薬物のそれぞれが培養物から「洗い流された」後の48時間の細胞培養に関する一方、図7のデータは特定の薬物を「洗い流した」後の72時間の細胞培養に関することである。
【0035】
当業者が認識するであろうとおり、以下の記述は本発明のある好ましい態様を詳細に記述し、そして従って代表的にすぎず、そして本発明の実際の範囲を描かない。本発明を詳細に記述する前に、本発明は記述される特定の分子、系、および方法論に制限されないことが理解される。これらは変動しうるためである。本明細書で使用される用語法は特定の態様のみを記述する目的上であり、そして付随する請求の範囲により定義される本発明の範囲を制限することを意図していないこともまた理解されるべきである。
【0036】
[発明の詳細な記述]
本発明は、アルキル化剤ベンダムスチンが、慣習的化学療法レジメンに難治性のものを包含する多数の癌細胞型に対し非常に迅速な細胞傷害効果を発揮するという驚くべき発見に基づく。ベンダムスチンは、下に詳述されるとおり、他の抗癌剤に比較して別個の作用様式によりその毒性効果を発揮することもまた発見された。
【0037】
ベンダムスチンすなわち4−{5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチル−2−ベンズイミダゾリル}はナイトロジェンマスタードの分類の化学療法剤である。ベンダムスチンは主としてアルキル化活性を表す。すなわちそれはDNA損傷剤である。ヒトに(典型的にはボーラス静脈内注入により)投与される場合、ベンダムスチンは短い血清半減期(約2時間)を有する。従ってそれは患者の身体から迅速に消失される。驚くべきことに、細胞取り込み後にベンダムスチンはその永続的な細胞傷害効果を迅速に発揮することが発見された。事実、下の実施例3に報告されるとおり、該化合物の細胞傷害効果の大半は、癌細胞を該剤に約30分と同じくらい短い間曝露することに際して発揮される。
【0038】
ベンダムスチン処置の現在のプロトコルは、典型的に、それぞれ同等量のベンダムスチンを含有する3回の別個のボーラス静脈内注入の送達を必要とする。第二の注入は一般に第一の注入の1日後、次いで第三の注入は第一の注入の3週後に与える。本レジメンは、骨髄抑制を包含するベンダムスチン処置に関する毒性に起因して使用された。ベンダムスチンの短い血清半減期およびその速効性を考えれば、薬物関連の毒性は、第二およびその後の投与を遅らせることにより低減し得る。事実、広範囲のかつおそらく致死的な腫瘍溶解が非ホジキンリンパ腫のベンダムスチン処置に関してときに報告されているため、薬物の複数回投与のより大きな間隔を空けることが腫瘍溶解の発生を低下させるのに役立つ。不必要な毒性を低減させることに加え、特定の処置レジメンでのベンダムスチン投与のより大きな間隔を空けることは、治療濃度期間(therapeutic window)、すなわち薬物がその意図される治療上の利益を発揮している期間を増大させるのにもまた役立つことができる。
【0039】
本発明の実務で使用される組成物(1種若しくは複数)は、ヒトおよび他の哺乳動物を包含する被験体への投与、すなわちそれぞれ「製薬学的」および「獣医学」投与のための薬剤(すなわち医薬品若しくは治療的組成物)を製造するための製薬学的調合技術の慣習的方法に従って加工しうる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.、フィラデルフィア州イーストン)の最新版を参照されたい。典型的には、ベンダムスチンのような化合物は、組成物として製薬学的に許容できる担体と組み合わせられる。組成物(1種若しくは複数)はまた、以下、すなわち保存剤;可溶化剤;安定剤;湿潤剤;乳化剤;甘味料;着色料;着臭剤;塩;緩衝剤;コーティング剤および抗酸化剤の1種若しくはそれ以上も包含しうる。
【0040】
本発明の実務で使用される薬物は遊離酸若しくは塩基として製造することができ、それらをその後、好ましくは適する化合物と組み合わせて製薬学的に許容できる塩を生じる。「製薬学的に許容できる塩」という表現は、非毒性の製薬学的に許容できる無機若しくは有機酸または無機若しくは有機塩基と形成される非毒性の塩を指す。例えば、塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などのような無機酸由来のもの、ならびに、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、フマル酸、メタンスルホン酸およびトルエンスルホン酸などのような有機酸から調製される塩を包含する。塩はまたアンモニア、ヒドロキシエチルアミンおよびヒドラジンのような無機塩基からのものも包含する。適する有機塩基は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ヒドロキシエチルアミン、モルホリン、ピペラジンおよびグアニジンを包含する。
【0041】
いかなる場合も、治療的組成物は、好ましくは、所定の量の所望の治療剤(例えばベンダムスチン)および担体(すなわち生理学的に許容できる賦形剤)を含有する投薬単位の形態で作成される。ヒト若しくは他の哺乳動物(または他の動物)のためのいずれかのこうした分子の治療上有効な量を構成するものは、とりわけ、疾患若しくは障害の型、被験体の齢、重量、性、医学的状態、状態の重症度、投与経路、および使用される特定の化合物を包含する多様な因子に依存することができる。従って、投薬レジメンは広範に変動しうるが、しかし標準的方法を使用して慣例に決定し得る。いかなる場合も、化学療法剤の「有効量」は所望の細胞傷害性を導き出す量である。所望の効果を達成するのに必要とされるこうした治療的分子の量は、特定の分子それ自身、処置されるべき疾患若しくは障害、該分子に応答する被験体の癌の能力、投与経路などを包含する多数の考慮に依存することができる。所望の効果を達成するのに必要とされる分子の正確な量は実務家の判断に依存することができ、そして各個々の被験体に特有である。しかしながら、適する投薬量は、1日あたり体重1キログラムあたり約数ナノグラム(ng)から約数ミリグラム(mg)までの有効成分の範囲にわたりうる。
【0042】
治療的組成物の製造法は当該技術分野で十分に理解されている。典型的には、こうした組成物は、液体溶液若しくは懸濁液のいずれかとしての注入可能物(injectable)として製造されるが、しかしながら、注入前に液体中の溶液若しくは懸濁液に適する固体の形態もまた製造し得る。調製物はまた乳化もされ得る。有効な治療成分はしばしば、生理学的に許容できかつ有効成分と適合性である賦形剤と混合される。適する賦形剤は、例えば、注射用水、生理的食塩水、D−ブドウ糖、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組合せである。加えて、所望の場合は、組成物は、少量の、有効成分の有効性を高める湿潤若しくは乳化剤、解熱剤、安定剤、増粘剤、懸濁化剤、麻酔薬、保存剤、抗酸化剤、静菌剤、鎮痛薬、pH緩衝剤などのような補助物質を含有し得る。こうした成分は付加的な治療上の利益を提供し得るか、若しくは該製薬学的組成物の投与の結果として引き起こされうるいかなる潜在的な副作用も予防するために作用し得る。
【0043】
本発明の組成物は、慣習的担体、補助物質およびベヒクルを含有する投薬単位製剤で、経口で、非経口で、吸入スプレーにより、直腸で、節内に(intranodally)、クモ膜下に若しくは局所で投与しうる。ヒト投与に意図される治療的組成物の情況においては製薬学的に許容できる担体を使用する。「製薬学的に許容できる担体」および「生理学的に許容できる担体」という用語は、被験体に投与される場合に生理学的に耐えられかつ胃の不調、眩暈などのような意図されないアレルギー若しくは類似の予期しない反応を典型的に生じない分子実体および組成物を指す。
【0044】
経口投与のためには、組成物は、例えば、とりわけカプセル剤、錠剤、舐剤、トローチ剤、散剤、懸濁剤若しくは液体を包含するいずれの適する形態のものであってもよい。液体は、生理的食塩水、D−ブドウ糖若しくは水を包含する適する担体を含む組成物として注入により投与しうる。「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内若しくは腹腔内経路を介する注入(infusion)(連続的若しくは間欠的注入(infusion)を包含する)および注入(injection)を包含する。直腸投与のための坐剤は、有効成分(1種若しくは複数)を、常温で固体しかし生理学的温度で液体であるカカオバターおよび/若しくはポリエチレングリコールのような適する非刺激性賦形剤と混合することにより製造し得る。
【0045】
組成物は固体の形態(顆粒剤、散剤若しくは坐剤を包含する)でもまた製造しうる。組成物は、滅菌のような慣習的製薬学的操作にかけることができ、かつ/若しくは保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などのような慣習的補助物質を含有しうる。経口投与のための固体の投薬形態物はカプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を包含しうる。こうした固体の投薬形態物において、有効成分をショ糖、乳糖若しくはデンプンのような最低1種の不活性賦形剤と混合しうる。こうした投薬形態物はまた、不活性希釈剤以外の付加的な物質、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も含みうる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、該投薬形態物はまた緩衝剤も含みうる。錠剤および丸剤は、付加的に、腸溶コーティングを伴い製造し得る。経口投与のための液体の投薬形態物は、水のような当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含有する、製薬学的に許容できる乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を包含しうる。こうした組成物はまた、湿潤剤甘味料、着香料(flavoring)および香料(perfuming agent)のような補助物質も含みうる。
【0046】
無菌の注入可能な水性若しくは油性懸濁剤のような注入可能な製剤は、適する分散若しくは湿潤剤および懸濁化剤を使用して既知の方法に従って処方しうる。注入可能な製剤はまた、非毒性の非経口で許容できる希釈剤若しくは溶媒中の無菌の注入可能な溶液若しくは懸濁液でもありうる。使用しうる適するベヒクルおよび溶媒は、とりわけ、注射用水、リンゲル液、等張の塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の不揮発性油を溶媒若しくは懸濁媒として使用し得る。この目的上、合成のモノ若しくはジグリセリドを包含するいかなる無刺激性の不揮発性油も使用しうる。加えて、オレイン酸のような脂肪酸は注入可能物の製剤中で使用を見出す。
【0047】
局所投与のためには、適する局所用量の組成物を1日1ないし4、および好ましくは2若しくは3回投与しうる。用量はまた、用量を適用しない介在する日を伴っても投与しうる。局所送達のための適する組成物は、しばしば、製剤の0.001%から10w/w%までの有効成分、例えば1%から2重量%までを含んでなるとはいえ、それは製剤の約10w/w%、しかし好ましくは5w/w%未満、およびより好ましくは0.1%から1%までを含みうる。局所投与に適する製剤は、皮膚を通る浸透に適する液体若しくは半液体製剤(例えばリニメント剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤若しくはパスタ剤)、および眼、耳若しくは鼻への投与に適する滴剤を包含する。
【0048】
(例えば無菌(sterile)すなわち無菌(aseptic)条件を達成するような)本発明の組成物の例示的投与方法は当業者に明らかであろう。こうした目的上適するある種の方法が、GoodmanとGilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics、第7版(1985)に示されている。患者への投与は間欠的;または漸次の、継続的、一定、若しくは制御された速度であり得る。
【0049】
非ホジキンリンパ腫の処置のためのベンダムスチンの局所の治療上有効な用量は、2連
続日の単回用量として若しくは用量間に数日を伴い与えられる約60〜120mg/mからであり得る。該周期を約3ないし4週毎に反復し得る。慢性リンパ球性白血病(CLL)の処置のためには、ベンダムスチンを第1および2日に約80〜100mg/mで与えることができる。該周期を約4週後に反復し得る。ホジキン病(ステージII〜IV)の処置のためには、ベンダムスチンは、約4週毎の該周期の反復を伴う、第1および15日のダウノルビシン25mg/m、第1および15日のブレオマイシン10mg/m、第1および15日のビンクリスチン1.4mg/mならびに第1〜5日のベンダムスチン50mg/mを含む「DBVBeレジメン」で与えることができる。乳癌に対しては、第1および8日のベンダムスチン(120mg/m)を、約4週毎の該周期の反復を伴い、第1および8日のメトトレキセート40mg/m、ならびに第1および8日の5−フルオロウラシル600mg/mとともに与えることができる。乳癌治療の第二列として、ベンダムスチンは、約4週毎の該周期の反復を伴い、第1および2日に約100〜150mg/mで与えることができる。
【0050】
本発明の方法は単剤療法および併用療法の双方を伴う。併用療法の情況において、本発明は2種若しくはそれ以上の化学療法剤の投与を想定している。多様な化学療法剤が当該技術分野で既知である。これらの化合物のいくつかは、1種若しくはそれ以上の癌の適応症の処置における使用のため既に承認されている。他者は前臨床および臨床開発の多様な段階にある。本発明の併用療法の実務で有用な化学療法剤の例は、アルキル化剤ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ダカルバジン、ヘキサメチルメラミン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、ミトタン、マイトマイシン、ピポブロマン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、チオテパおよびトリエチレンメラミンを包含する。ベンダムスチンとともにの使用のための好ましい代謝拮抗剤は、カペシタビン、クロロデオキシアデノシン、シタラビン(およびその活性化型ara−CMP)、シトシンアラビノシド、ダカバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ペントスタチン、トリメトレキサートならびに6−チオグアニンを包含する。ベンダムスチンとの併用療法で使用し得る好ましい抗分裂化合物は、ナベルビン、パクリタキセル、タキソテール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンを包含する。
【0051】
化学療法剤の他の分類は、トポイソメラーゼI阻害剤(例えばカンプトテシン、イリノテカン。トポテカンなど);ダウノルビシン、ドキソルビシン、エトポシド、イダルビシン、ミトキサントロンおよびテニポシドのようなトポイソメラーゼII阻害剤:血管新生阻害剤(例えばダルテパリン、スラミンなど);アレムツズマブ、ベバシズマブ、ベキサロテン、エプラツズマブ、ゲムツズマブ、オゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、メシル酸イマチニブ、ラルチトレキセド、レブリミド、リツキシマブ、トラスツズマブを包含する抗体;チロシンキナーゼ阻害剤;挿入剤;ならびにアナストロゾール、エストロゲン、抗エストロゲン(例えばフルベストラントおよびタモキシフェン)、エキセメスタン、フルタミド、ゴセレリン、リュープロリド、ニルタミド、レビマソール、レトロゾール、プレドニゾンおよびトレミフェンのようなホルモンを包含する。他の化学療法剤は、アンジオスタチン、アスパラギナーゼ、デニルエキンジフチトクス(deniluekin diftitox)、エンドスタチン、イミキモド、インターフェロン、インターロイキン−11およびペグアスパルガーゼのようなタンパク質を包含する。なお他の化学療法剤は、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミフォスチン、アムサクリン、三酸化ヒ素、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボキシアミドトリアゾール、セレコキシブ、ダクチノマイシン、エピルビシン、ゲルダンマイシン、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17 AAG)、イリノテカン、2−メトキシエストラジオール、ミトラマイシン、マイトマイシンC、オキザリプラチン、スクアラミン、テモゾラミド、サリドマイド、トレチノイン トリアピンおよびバルルビシンのような分子を包含する。当業者が認識するであろうとおり、これらおよび現在既知の若しくは後に開発される他の化学療法剤は、癌を包含する多様な新形成を処置するためにベンダムスチンとともに使用しうる。
【0052】
実施例
以下の実施例は、本発明のある局面を具体的に説明するため、および本発明の実施において当業者を補助するために提供される。これらの実施例はいかなる様式でも本発明の範囲を制限すると決してみなされるべきでない。
【実施例1】
【0053】
ベンダムスチンの作用機序の分子解析
A.緒言。
ベンダムスチン(TreandaTM、Salmedix,Inc.カリフォルニア州;RibomustinTM(Ribosepharm GmbH、独国・ミュンヘン))は慣習的DNA損傷剤に難治性のものを包含する、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病、充実性腫瘍、乳房および小細胞肺癌ならびに多発性骨髄腫のような多様なヒト癌に対する立証された前臨床および臨床活性をもつ抗腫瘍剤である。ベンダムスチンすなわち4−{5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチル−2−ベンズイミダゾリル}酪酸塩酸塩は、元は低毒性ならびにアルキル化および代謝拮抗双方の特性をもつ剤を製造する意図を伴い合成された。それは3個の下位構造要素、すなわち2−クロロエチルアミンアルキル化基;ベンズイミダゾール環;および酪酸側鎖を有する。2−クロロエチルアミンアルキル化基は、シクロホスファミド、クロラムブシルおよびメルファランのような他のナイトロジェンマスタードと共有される。ベンズイミダゾール中央環系はベンダムスチンの独特の特徴であるとは言え、酪酸側鎖はクロラムブシルに存在する。この多局面構造が、その独特の抗腫瘍活性プロファイルに寄与するとみられ、そしてそれを慣習的アルキル化剤と識別する。
【0054】
DNAアルキル化剤は化学療法の装備一式中で極めて有用である。こうした薬物は、これらの化合物の数種のプログラムされた壊死を誘導する能力、および核を欠く細胞中でさえアポトーシスを誘導する他者(例えばプラチン類)の能力のような予期されない作用機序を有しうる。「ナイトロジェンマスタード」の場合、主要な差違が、多様な適応症でのそれらの識別された使用、すなわち、主としてNHLの処置において使用されるシクロホスファミド;慢性リンパ球性白血病の処置において使用されるクロラムブシル;および多発性骨髄腫の処置において使用されるメルファラン、により反映されるように、それらの活性プロファイルに存在する。
【0055】
他のアルキル化剤と共通のベンダムスチンの主な抗腫瘍作用は、DNAの対形成した鎖間の架橋の形成に由来するとは言え、他の作用機序もまた関わるとみられる。従って、ベンダムスチンの抗腫瘍作用は、単純に古典的なアルキル化活性より複雑である機構に由来しうる。ベンダムスチンにより引き起こされるDNA二本鎖切断はシクロホスファミド若しくはBNCUにより引き起こされるものより有意により耐性であり、ベンダムスチンは他のアルキル化剤に対しin vitroおよびex vivoで抵抗性である細胞株に対する活性を示し、そして独特の前アポトーシス活性が、数種のin vitro腫瘍モデルで単剤としておよび他の抗癌剤と組合せのベンダムスチンにより示されたためである。ベンダムスチンの正確な作用機序に関する詳細な分子研究はわずかなままである。この理由から、従来技術の分子ツールを使用して、ベンダムスチンの作用機序を完全に分析した。本実施例は、NHL細胞株中でベンダムスチンにより誘発される遺伝子発現プロファイル変化を解析するための薬ゲノム学的アッセイ由来の結果を提示する。これらの薬ゲノム学的分析は、アポトーシスシグナル伝達の開始、DNA修復の機構および有糸分裂チェックポイントの調節を扱う機能アッセイにより検証された。最後に、ベンダムスチンは、国立癌研究所(National Cancer Institute)のヒト腫瘍の60種の細胞株のin vitroスクリーニングでプロファイルされ、そして他のアルキル化剤(すなわちクロラムブシルおよびホスホルアミドマスタード(シクロホスファミドの代謝物))のライブラリーに対するその比較活性が研究された。結果はまた、NHL細胞株中でベンダムスチンにより誘発された遺伝子発現プロファイル変化を解析するための薬ゲノム学アッセイを使用しても生成された。これらの薬ゲノム学分析は、Q−PCR、およびアポトーシスシグナル伝達の開始、DNA修復の機構および有糸分裂チェックポイントの調節を扱う機能アッセイにより検証された。一緒に、これらの結果は、ベンダムスチンが他のDNAアルキル化剤と異なる複数の作用機序を有することを示し、慣習的治療に難治性の腫瘍を有する患者におけるベンダムスチンの活性を説明する。
【0056】
B.材料および方法。
a.細胞。
SU−DHL−1細胞はカリフォルニア大学サンディエゴ校から得た。細胞は10%FBS(Invitrogen)および100単位/mlペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI 1640(Hyclone)中で増殖させた。
【0057】
b.試薬。
塩酸ベンダムスチンはFujisawa Deutschland(独国ミュンヘン)から得た。シクロホスファミドの活性代謝物、ホスホルアミドマスタードシクロヘキシルアミン塩(PM、NSC69945)は、国立癌研究所(NCI)の開発治療薬プログラム(Developmental Therapeutics Program)(DTP)の合成集積所(repository)から得た。全部の他の試薬はSigma−Aldrichのような商業的供給源から得た。
【0058】
c.薬物処理。
本実施例で提示されるアッセイの大部分について、ベンダムスチン、ホスホルアミドマスタード(シクロホスファミドの活性代謝物)およびクロラムブシルに使用した濃度は、3日にわたるMTTアッセイで測定されたそれらの細胞傷害活性に基づき選択した。薬物はDMSO中で調製し、そしてその後培地で希釈した。
【0059】
d.RNAサンプルの調製および発現データの分析。
細胞を1mLのTRIZOL溶液(Invitrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)中で収集し(5×10細胞)、そして全RNAを製造元の説明書に従い単離した。ビオチン標識cDNA(15μg)を各GeneChipアレイ(Affymetrix、サンタクララ)にハイブリダイズさせた。簡潔には、チップへのハイブリダイゼーションのための材料を調製するための手順は複数の段階を必要とした。全RNAを単離し、そして光学密度により定量した。cDNAを、第一鎖cDNAを生成させるためdNTP、DTTおよびSuperscript IIとともに、T7プロモーター(dT7−(T)24)と結合したポリA尾部を認識する特異的プライマーを使用して生成した。このアプローチはポリA(+)mRNAを単離する必要性を軽減した。第二鎖は、DNAリガーゼ、DNA pol IおよびRNアーゼHを用いてdNTPを付加すること、およびT4 DNAポリメラーゼを追加の5分間添加する前に16℃で2時間インキュベートすることにより合成した。cDNAをカラム精製しかつ定量した。in vitro転写(IVT)を、高密度オリゴヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーション前に実施した。この反応の出発原料は1μgのcDNAであり、それに、10mMビオチニル化11−CTPおよび10mMビオチニル化16−UTPを添加することにより補償されるように25%より少ないCTPおよびUTPを用いてNTPを付加した。適切な緩衝液中37℃で6時間のT7酵素の最終添加がビオチニル化IVT RNAを生じ、それをその後カラム精製した(RNeasy、Qiagen)。
【0060】
化学的に断片化したIVT RNA(15μg)を、95℃に加熱した適切な緩衝液中で対照オリゴヌクレオチド、標準(ハウスキーピング遺伝子を包含する)およびサケ精子DNAと5分間混合し、そしてチップに42℃で16時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイズされない物質を2×SSPEで洗い落とし、そしてフィコエリトリン標識アビジンをその後反応に添加した。過剰の蛍光色素を洗い落とし、そしてチップをその後、各合成部分(feature)(合成部分は7.5平方ミクロンである)の蛍光の強度について走査した。
【0061】
e.生物情報学解析。
Affymetrix GeneChipの走査画像を解析するためのCORGON法の使用を伴った遺伝子発現データの解析のための戦略および方法を開発した。CORGONは、その中心的統計学的方法が既知である無料で入手可能なソフトウェアである(Sasikら(2002)、Bioinformatics、vol.18、no.12:1633−40)。条件の最低1種でp<0.05(95%信頼水準)で存在した遺伝子のみをさらなる解析に考慮した。CORGONのAffymetix Microarray Suite(AMS)5.0ソフトウェアとの比較は、AMS 5.0について29%に比較してCORGONについて4.4%の擬陽性誤差率を示した。選択された遺伝子を平均若しくはピークの調節の程度に従って選別した。上位100種の最も調節される遺伝子を、それらの発現パターンの類似性に基づきクラスター化のため選んだ。階層的クラスター化法を使用した。この最初の分類は、どれが検討中の過程により調節される主遺伝子および経路であったかの決定において極めて有用であった。共調節されると思われた遺伝子のクラスターをプロモーター解析にかけた。次の段階はGO3解析、すなわち該過程に関するGene Ontologyデータベース(ウェブサイト:www.geneontology.org)の統計学的に有意の条件(term)を見出すための不偏かつ教師なしツールであった。GO3は、有意に調節された系の決定的な成分を同定する過程を容易にする。データベースに3種のオントロジー、すなわち分子機能;生物学的過程;および細胞成分が存在した。該解析は、UCSDのAIDS研究ゲノム学中核センター(Center for AIDS Research Genomics Core Facility)で実施した。
【0062】
f.定量的PCR分析。
特異的転写物の発現レベルを定量的PCR(Q−PCR)を使用して測定した。各処理したSU−DHL−1細胞ペレットからの全RNAを、RNeasyミニプレップキット(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)を使用して単離した。cDNAは、製造元のプロトコルに従い、ThermoScript逆転写酵素キット(Invitrogen)およびオリゴdTプライマーを使用して作成した。Q−PCR増幅および定量はiCycler装置(Bio−RAD、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して実施した。サンプル増幅は、12.5μLの2×IQ SybrGreenTMミックス(Bio−Rad)、1μMの各プライマー、および80ngの全RNAに対応する容量のcDNAを含有する25μLの容量で実施した。循環条件は:95℃5秒間;各プライマーの適切なアニーリング温度で30秒;および72℃30秒間であった。アッセイの標的特異性を融解曲線分析により検証した。各遺伝子の発現を各サンプルについて18sの発現レベルに関し正規化した。未処理対照に関する各遺伝子の発現をその後、LivakとSchmittgen((2001)、Methods、vol.25:402−408)の方法に従って計算した。プライマーは、Beacon DesignerTM(Premier Biosoft、カリフォルニア州パロアルト)を使用して設計したか、若しくは文献に基づき設計した。プライマー配列およびアニーリング温度は後に続くとおりである(各プライマーは5’から3’、次いでその配列番号で書かれている)。
【0063】
【表1】

【0064】
g.COMPARE解析。
ベンダムスチンを、60種のヒト腫瘍細胞株よりなるNCIのin vitro抗腫瘍スクリーニングで試験した。試験は、10倍希釈の最小5濃度を伴い、そして各スクリーニングを2回反復した。48時間連続薬物曝露プロトコルを使用した。スルホローダミンBタンパク質アッセイが細胞生存率若しくは増殖を推定した。COMPARE法および関連データは、開発治療薬プログラム(Developmental Therapeutics Program)(DTP)ウェブサイト(ウェブサイト:dtp.nci.nih.gov)で無料で入手可能である。NCIはベンダムスチンに番号NSC138783を割り当てた。
【0065】
h.ウエスタンブロット分析。
SU−DHL−1細胞を50μMベンダムスチン、2μMクロラムブシル、若しくは20μMホスホルアミドマスタードとともに20時間インキュベートした。細胞を1×PBSで2回洗浄し、そして溶解直前に添加する氷冷溶解緩衝液(1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mMフッ化ナトリウム、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche、ニュージャージー州ナットレー)およびホスファターゼインヒビターカクテル(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を含む1Mトリス−HCl(pH7.4)、1M KCl、5mM EDTA、1% NP−40、0.5%デオキシコリンナトリウム)で1時間溶解した。非溶解性膜、DNAおよび他の沈殿物をペレットにし、そしてタンパク質上清を得た。タンパク質濃度はブラッドフォードアッセイ(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を使用して測定した。20μgのライセートを4〜12%ポリアクリルアミドゲル上でのゲル電気泳動により分離し、ニトロセルロースメンブレン(Invitrogen)に転写し、そして以下の一次モノクローナル抗体、すなわち抗p53、抗リン酸化p53(Ser15特異的)、抗p21および抗切断型PARP(カスパーゼ特異的切断部位)(それらは全部Cell Signaling(マサチューセッツ州ビバリー)から購入した);抗Baxおよび抗PARP(BD Pharmingen(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した)、ならびに負荷対照に使用した抗β−アクチン(Sigma(ミズーリ州セントルイス)から購入した)を使用するイムノブロッティングにより検出した。一次抗体を4℃で穏やかに振とうしながら一夜インキュベートした。メンブレンを1×PBSで3回洗浄し、そしてAlexa Flour 680ヤギ抗マウス二次抗体(4000倍)(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)とともに穏やかに振とうしながら室温で2時間インキュベートした。ブロットを1×PBSで3回洗浄し、そしてLiCor Odysseyスキャナで走査した。
【0066】
i.in vitroの細胞に基づくApe−1およびAGTアッセイ。
細胞を、6mMメトキシアミン(Sigma)、若しくは50μMのO−ベンジルグアニン(Sigma)(それぞれ、Ape−1塩基除去修復酵素およびアルキルグアニルトランスフェラーゼ(AGT)酵素の阻害剤)のいずれかとともに30分間プレインキュ
ベートした。細胞をその後、多様な濃度の示される剤に72時間曝露した。細胞傷害性をMTTアッセイ(13)により評価し、そして、未処理対照の値を50%阻害した薬物濃度としてIC50を測定した。解析はGraphPad Prismバージョン3.00
GraphPadソフトウェア(カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して実施した。
【0067】
j.細胞周期分析。
SU−DHL−1細胞を、等毒性(IC50)濃度のベンダムスチン(50μM)、クロラムブシル(4μM)若しくはホスホルアミドマスタード(50μM)とともに8時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、そして70%エタノール20℃中で最低1時間固定した。固定した細胞をPBSで洗浄することにより再水和した。細胞を、PBS中10μg/mlヨウ化プロピジウム(Calbiochem、カリフォルニア州ラホヤ)、10μg/ml RNアーゼA(DNアーゼを含まない、Novagen、ウィスコンシン州マディソン)、および10μl/ml Triton−X(Sigma)よりなるヨウ化プロピジウム染色溶液に再懸濁した。サンプルをFACSCalibur(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を使用して分析した。細胞周期分布の解析は、DNA ModFit LT(Verity House Software,Inc.カリフォルニア州サニーベール)モデル化ソフトウェアを使用して実施した。
【0068】
k.H2AXフォーカス形成
細胞を、10%FBSを補充したRPMI 1640培地中Lab−Tekチャンバースライドガラス(Nalge Nunc Intl.、イリノイ州ネーパービル)上で増殖させた。細胞を最低1日間付着させた後、細胞をDMSO若しくは50μMベンダムスチンいずれかを含む培地中で処理した。細胞を37℃で30分間インキュベートし、そしてその後PBSで2回洗浄した。それらを37℃で追加の4時間インキュベートした。細胞をその後1×PBSで2回洗浄し、そして−20℃の100%メタノール中で10分インキュベートして細胞を固定した。それらをその後1×PBSでそれぞれ5分間3回洗浄した。それらをブロッキング緩衝液(1×PBS中10%FBS、1%BSA)中室温で1時間インキュベートした。スライドガラスを、一次ポリクローナル抗H2AX抗体(R
& D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)とともに一夜揺らしながら4℃でインキュベートした。抗体はブロッキング緩衝液中1:10,000の比で希釈した。スライドガラスを1×PBSで3回洗浄し、そしてAlexa Flour 488ヤギ抗ウサギ二次抗体(4000倍)(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)とともに穏やかに振とうしながら室温で45分間インキュベートした。スライドガラスを1×PBSで3回洗浄し、そしてその後チャンバーを除去し、そしてDAPIを伴うSlowFade Light Antifade(Molecular Probes)を細胞に添加しかつカバーガラスをスライドガラス上に封止した。分析は、DIC光学系および蛍光を伴う電動式Zeiss AxioPlan 2e画像化顕微鏡、Zeiss AxioCam HRmカメラおよびZeiss Axiovisionソフトウェアバージョン4.2を使用して実施した。
【0069】
l.残基Ser139でのH2AXのリン酸化のイムノブロット。
細胞株は10%FBSを補充したRPMI 1640培地中でコンフルエンスまで増殖させた。細胞をその後、1×PBSで2回洗浄し、そして、溶解直前に添加する氷冷溶解緩衝液(1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mM NaF、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche、ニュージャージー州ナットレー)およびホスファターゼインヒビターカクテル(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を含む、1Mトリス−HCl(pH7.4)、1M KCl、5mM EDTA、1% NP−40、0.5%デオキシコリンナトリウム)で1時間溶解した。非溶解性膜、DNAおよび他の沈殿物をペレットにし、そしてタンパク質上清を得た。タンパク質濃度はブラッドフォードアッセイ(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を使用して測定した。20マイクログラムのライセートを4〜12%ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動により分離し、ニトロセルロースメンブレン(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)に転写し、そしてポリクローナル抗H2AX抗体(R & D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を使用するイムノブロッティングにより検出した。抗体は1:2000の比でブロッキング緩衝液で希釈し、そしてメンブレンを穏やかに振とうしながら室温で2時間インキュベートした。メンブレンを1×PBSで3回洗浄し、そしてAlexa Flour 680ヤギ抗ウサギ二次抗体(5000倍)(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)とともに穏やかに振とうしながら室温で2時間インキュベートした。ブロットを1×PBSで3回洗浄し、そしてLiCor Odysseyスキャナで走査した。
【0070】
C.結果。
a.遺伝子発現プロファイリングは、クロラムブシル若しくはシクロホスファミドと異なる、ベンダムスチンにより調節されるシグネチャ遺伝子を同定する。
【0071】
ベンダムスチン、クロラムブシルおよびホスホルアミドマスタード(シクロホスファミドの活性代謝物)の等毒性濃度を、薬物への3日の曝露後に細胞生存率を測定することにより測定した。本研究に提示されるアッセイについて、ベンダムスチン、ホスホルアミドマスタードおよびクロラムブシルに使用した濃度はこのデータに基づき選択した(下の表1)。これらの濃度はまた、各薬物の臨床上達成可能な濃度も反映する。Affymetrix GeneChip解析を使用して、薬物処理したSU−DHL−1(非ホジキンリンパ腫細胞株、対照細胞に比較される細胞)中の12,000を越える遺伝子の発現レベルを比較した。SU−DHL−1細胞を、IC50濃度(25μM)およびIC90濃度(35μM)のベンダムスチンとともにインキュベートした。クロラムブシルおよびシクロホスファミドの代謝物ホスホルアミドマスタードはIC90、すなわちそれぞれ5μMおよび50μMで試験した。遺伝子発現を、薬物で処理後8時間モニターして、この初期ストレス応答の近接事象を同定した。
【0072】
ゲノム解析は、該遺伝子の大多数が、上位100種の調節される遺伝子のクラスター図(図1A)により示されるとおり、3種の試験した薬物間で同様に調節されることを示した。大部分の遺伝子は該薬物への曝露に際して上方制御された(赤色)。遺伝子の一サブセットは薬物処理後に転写的に抑制された(青色)。重要なことに、試験した他2種の薬物に比較して、ベンダムスチンによる示差的調節を表した一群の遺伝子が同定された。
【0073】
誘導される遺伝子の多く(図1B)は、それらのプロモーター領域にp53応答エレメントを有することが知られ、そしてp53依存性とみなされる。これらの遺伝子の例は:p21(p53で誘導される細胞分裂キナーゼ阻害剤);wip1(p53で誘導されるタンパク質ホスファターゼ1);NOXA(p53で誘導される前アポトーシスBcl−2ファミリーメンバー);DR5/KILLER(p53に調節されるDNA損傷誘導可能な細胞死受容体);およびBTG2である。興味深いことに、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの4メンバー(メンバー6、9、10および10b)が、上位100種の調節される遺伝子中で同定された。これらの遺伝子の数種は外因性アポトーシス経路(REF、TRAIL/TNFアポトーシス)の調節で決定的に重要な役割を演じていることが示されている。数種の他の遺伝子は、ベンダムスチンと他2種の化合物の間で反対の傾向を表す(データは示されない)。これらの遺伝子は双方の濃度でベンダムスチンにより上方制御されるが、しかしクロラムブシルおよびホスホルアミドマスタード双方により下方制御された。
【0074】
ベンダムスチン、クロラムブシルおよびホスホルアミドマスタード間の薬ゲノム学的差違を評価するため、遺伝子プロファイリングからの結果をGO3ソフトウェア(該過程に関連したGene Ontology(GO)データベース(ウェブサイト:www.geneontology.org)中の統計学的に有意の条件を見出すための不偏かつ教師なしツール)で再解析した。ベンダムスチン処理した細胞で有意に上方若しくは下方制御されかつ対照処理された細胞中での発現のレベルの最低1.5倍上若しくは下の遺伝子を、Gene Ontology(GO)共同事業体により提供される生物学的過程の注釈に結びつけた。GO注釈の階層構造に基づき、各初期娘期(immediate daughter term)(P値)が選択された遺伝子の数に偶然結びつけられる確率を計算した。DMSO処理対照およびベンダムスチン処理細胞(IC90用量で)を比較するGO解析の結果を下の表2に報告する。下の表2で、第一列は一般的範疇を表し、第二および第三列は特定の生物学的過程の数および名称であり、そして最後の列は各過程のp値である。p値はGO3ソフトウェアを使用して計算した。4種の主要な機能群、すなわち(1)DNA損傷、ストレス応答、アポトーシス;(2)DNA代謝、DNA修復、転写;(3)細胞増殖、細胞周期、有糸分裂チェックポイント;および(4)細胞調節が、ベンダムスチンにより統計学的に調節されることが見出された。これらの群のそれぞれは、ベンダムスチンにより有意に調節されることが見出された数種の生物学的過程を包含する。最低のp値を提供しかつ従って最も統計学的に有意であった生物学的過程は:DNA損傷ストレスに対する応答(GO6974);DNA代謝(GO6259);および細胞増殖(GO8283)であった。
【0075】
クロラムブシルおよびホスホルアミドマスタードを用いて実施した類似の解析は、ベンダムスチンおよびクロラムブシルで得られたプロファイル間に重なりがほとんど存在しないことを示唆した。遺伝子調節における若干の類似性がベンダムスチンとホスホルアミドマスタードの間で観察されたとは言え、これらは「DNA代謝、DNA修復および転写」群に限定された。これらの結果は、遺伝子アレイの結果の定量的検証およびベンダムスチンのより決定的な差別化のための特定の遺伝子産物の選択のための基礎を提供した。
【0076】
b.リアルタイム定量的Q−PCR分析によるゲノム解析の検証。
アレイデータの確認および検証をリアルタイム定量的PCR分析(Q−PCR)により実施した。p53シグナル伝達、アポトーシス、DNA修復および細胞周期/有糸分裂チェックポイントに関与する数種の遺伝子は、全部、試験した他のアルキル化剤とベンダムスチンを比較する場合に示差的に調節された。
【0077】
Q−PCR検証に選択した「正準」p53依存性遺伝子の2例は、p21(Cip1/Waf1)すなわちサイクリン依存性キナーゼ阻害剤1A、および前アポトーシスBH3−only Bcl−2ファミリーメンバーNOXAであった。双方の遺伝子は、ベンダムスチンへの曝露8時間後にSU−DHL−1細胞中で誘導されることが見出された。双方の遺伝子はまた、等毒性濃度のホスホルアミドマスタードおよびクロラムブシルにより、しかしはるかにより低い程度まで誘導された(図2A)。
【0078】
検証分析から出現した最も特筆すべき結果の1つは、polo様キナーゼ1(PLK−1)、AuroraキナーゼAおよびB、ならびにサイクリンB1を包含する数種の有糸分裂関連遺伝子の示差的調節であった。これらの遺伝子は有糸分裂チェックポイントの調節で重要を演じていると考えられる。ベンダムスチンでの処理は全部のこれらの遺伝子のmRNA発現の60ないし80%下方制御に至った。対照的に、ホスホルアミドマスタード若しくはクロラムブシルは、おそらくAuroaキナーゼを除き、これらの遺伝子の転写物に対する小さな影響のみ発揮した(図2B)。
【0079】
差違はまた、DNA修復遺伝子エキソヌクレアーゼ−1(EXO1)のmRNA発現の
分析でも出現した。ベンダムスチンは、ホスホルアミドマスタード(1.5倍)若しくはクロラムブシル(1.8倍)で観察されたものと比較して、Exo1発現のわずかにより強い(2.5倍)上方制御を誘導した(図2C)。Fen1(flapエンドヌクレアーゼ1)もまたベンダムスチンにより上方制御され、そして、ホスホルアミドマスタードは、等毒性濃度で使用した場合にこの遺伝子を同一レベルまで上方制御した(図2C)。
【0080】
c.NHL細胞中でのベンダムスチンによるアポトーシスシグナル伝達。
NHL細胞中でのベンダムスチン誘導性のプログラムされた細胞死に関与する分子事象を分析するため、重要なアポトーシスタンパク質の発現をイムノブロット分析によりモニターした。該結果は、ベンダムスチンが古典的p53依存性アポトーシス経路を効率的かつ迅速に起動させ得ることを明確に示した。初期若しくは頂点の(apical)事象の1つは、セリン15残基のリン酸化を特異的に認識する抗体を使用して検出されるとおり、p53リン酸化の誘導である。Ser15リン酸化p53の8倍の上方制御が、ベンダムスチンに曝露したSU−DHL−1細胞で観察された一方、小さい上方制御のみがホスホルアミドマスタード処理した細胞で見られ、また、クロラムブシル処理した細胞で変化は観察されなかった(図3、左上図)。
【0081】
リン酸化されたp53の誘導と平行して、全p53の発現の強い増大が、ベンダムスチン処理した細胞で見られた。クロラムブシル処理した細胞は全p53の小さな増大を表した一方、ホスホルアミドマスタードへの曝露はp53レベルの変化を誘導しなかった。p21タンパク質発現で観察された変化は、p53のタンパク質発現レベルの変化に比較した場合に、薬物のそれぞれについて小さかった。Bax(重要なBH3−only前アポトーシスBcl−2ファミリーメンバー)のタンパク質発現の増大は、ベンダムスチン処理したSU−DHL−1細胞でのみ観察された(図3、左下図)。
【0082】
ホスホルアミドマスタードおよびクロラムブシルとベンダムスチンの効果の比較において観察された最も顕著な差違は、PARP(ポリADP−リボースポリメラーゼ−1)の発現を比較した場合に見出された。PARPはDNA修復機構で重要な決定的なNADを要求する酵素である。PARPはまた前アポトーシスタンパク質分解性カスパーゼ酵素の「初期」基質でもある。ベンダムスチンで処理したSU−DHL−1細胞はPARPタンパク質発現の劇的な減少を示した(図3、右上図)。PARP発現の該減少の理由は、「切断特異的」酵素により認識されるタンパク質分解性切断生成物の出現により示されるとおり、カスパーゼによるその切断であった(図3、右中図)。注目すべきことに、PARPの発現の変化は、等毒性濃度のホスホルアミドマスタード若しくはクロラムブシルにより処理したNHL細胞で検出されなかった。類似の結果は、ベンダムスチンの用量(50μM)を維持しつつ2倍の等毒性用量のホスホルアミドマスタード(40μM)およびクロラムブシル(4μM)を使用する場合に観察された(データは示されない)。従って、PARP発現レベルの評価を多様な目的上使用し得る。例えば、PARPアッセイは特定の治療レジメンの有効性に関する指標を提供するはずであり得、ここで、低下されたPARP発現(好ましくは、PARP切断生成物の存在などについてタンパク質レベルで、例えばPARP活性により測定される)は、投与された薬物が所望の効果を有していることを示す。加えて、PARPアッセイは、例えば、組織の細胞(例えば生検若しくは他の生物学的サンプル由来の細胞)が特定の治療(例えばベンダムスチン単剤療法、若しくは治療の1種がベンダムスチンを利用する併用療法)に応答することがありそうであるかどうかを決定するのに予後的に使用し得る。
【0083】
d.塩基除去修復の阻害はベンダムスチン活性を阻害するが、しかしO−メチルグアニン−DNAメチルトランスフェラーゼ修復は阻害しない。
修復酵素Ape−1、すなわちベンダムスチンおよびシクロホスファミドの代謝物ホスホルアミドマスタードの細胞傷害活性において塩基除去修復(BER)経路で決定的な役
割を演じている、プリン塩基のないエンドヌクレアーゼの役割を、Ape−1阻害剤メトキシアミンを使用して評価した。ベンダムスチンのIC50は、メトキシアミン添加でおよそ4倍(およそ50μMからおよそ12μMまで)低下された(図4A)。対照的に、ホスホルアミドマスタードのIC50は、メトキシアミンを添加した場合にわずかにのみ変化した。該結果は、BERがベンダムスチン誘導性のDNA損傷の修復において重要な役割を演じうるが、しかしシクロホスファミドにより誘導される損傷の修復においてはしないかもしれないことを示唆する。
【0084】
ベンダムスチンの抗腫瘍活性に対するO−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)の既知の阻害剤、O−ベンジルグアニンの効果もまたSU−DHL−1細胞で試験した。該結果は、ベンダムスチンの細胞傷害効力がO−ベンジルグアニンを添加することにより高められなかったことを示した。反対の結果がシクロホスファミドで得られ、シクロホスファミドと異なり、ベンダムスチンはO−メチルグアニン−DNAメチルトランスフェラーゼDNA修復機構に認め得るほど頼らないことを示唆した(図4B)。
【0085】
e.ベンダムスチンHClは二本鎖切断の形成を迅速に誘導して独特の細胞周期変化をもたらす。
二本鎖切断(DSB)を誘導するベンダムスチンHClの能力を検討するため、2種の生化学的マーカー、すなわち免疫蛍光によるγ−H2AXヒストンの核局在化;およびイムノブロット分析による残基Ser139でのH2AXのリン酸化を分析した。結果は、ベンダムスチンHClが、多剤耐性およびp53欠損株を包含する多様な腫瘍細胞中でDSBを強力かつ迅速に誘導したことを確認した。50μMベンダムスチンHClとのインキュベーションは約30分後に検出可能な核内フォーカスの形成に至る。時間経過分析は、γ−H2AXのSer139リン酸化が、ベンダムスチンHCLへの24時間の連続曝露後、ならびに該薬物への非常に短い曝露(30分)、次いで薬物の除去(ウォッシュアウト)後に検出可能であったことを示した。ベンダムスチンHClは、シクロホスファミドのような他の2−クロロエチルアミノDNAアルキル化剤でよりも早期に発生するH2AXのリン酸化を誘導した。50μMベンダムスチンHClに8時間曝露したSU−DHL−1リンパ腫細胞の細胞周期分析は、付随するG2M停止を伴わずに40%超の平均のS期分布の増大を示した。等毒性濃度のクロラムブシルおよびシクロホスアミドへの曝露は、S期分布をそれぞれおよそ20%および15%増大させた。これらの知見は、ベンダムスチンHClが、一過性の30分曝露後でさえDNA二本鎖切断を誘導し得ることを具体的に説明する。
【0086】
f.ベンダムスチンは、NCIのCOMPARE解析を使用して活性の独特なプロファイルを表す。
ベンダムスチンの細胞傷害性を、国立癌研究所の前臨床抗腫瘍薬発見スクリーニング(NCIスクリーニング)の60種のヒト細胞株で評価した。NCIスクリーニングは、潜在的抗腫瘍薬の相対的効力を45,000種以上の化合物および天然産物の広範囲のデータベースからの既知の治療薬と比較するのに有用である。COMPARE解析を、「種(seed)」としてベンダムスチンを用いて生成させたGI50の結果を使用して実施した。高いPearson相関係数(PCC)をもつ化合物は、しばしば類似の作用機序を有する。ベンダムスチンは、NCIスクリーニングでいかなる剤とも強い相関(>0.8)を示さなかった(下の表3)。ベンダムスチンとの6種の上位の一致のうち、メチル化剤DTIC(ダカルバジン)のみがおよそ80%の相関一致(correlative agreement)(r値)を示した。対照的に、0.83超の相関係数をもつ全25種の化合物が、メルファラン、クロラムブシル、若しくはシクロホスファミドの活性代謝物について同定された。加えて、本スクリーニングでのメルファラン、クロラムブシルおよびシクロホスファミドの感受性パターンの直接比較は、該3種の薬物間の高い相関係数を示した(0.762〜0.934、データは示されない)。これらのデータは、該剤の感受性プロファイルの統計学的一致、および共通の作用機序の高い見込みを示す。ベンダムスチンと、ナイトロジェンマスタードの分類の他メンバーの間の相関の欠如は説得力があり、そしてベンダムスチンが別個の抗腫瘍活性パターンを有することを示す。
【0087】
D.考察。
多様な生物学的および分析ツールを使用して得られたこれらの実験の結果は、ベンダムスチンが、シクロホスファミドおよびクロラムブシルのような同一の「ナイトロジェンマスタード」活性部分を共有する他の臨床で使用される化合物と比較した場合に、別個の作用機序を有することを示す。
【0088】
本研究で使用したツールの1種は薬ゲノム学アプローチであり、選択された薬物との標的細胞株のインキュベーションに際して、数千の完全に特徴付けられた遺伝子の発現レベルの同時の解析およびモニタリングを可能にし、他の抗癌薬の作用機序を解明するために成功裏に使用されている。その大きな利点は、それを他のDNAアルキル化剤と識別する、ベンダムスチンの別個の作用機序の同定に至った不偏情報の生成であった。
【0089】
本アプローチを用い、強い古典的p53依存性のストレス応答「シグネチャ」がベンダムスチンについて検出され、また、ホスホルアミドマスタードおよびクロラムブシル処理した細胞で存在したが、しかし大きく低下された強度でであった。Q−PCR分析は遺伝子アレイ分析を確認し、p21(Waf/Cip1)およびNOXAのようなp53応答エレメントを含有する遺伝子の上方制御を検証した。サイクリン依存性キナーゼの阻害剤、とりわけ細胞周期のG期の間に機能するものとして、p21/Waf1/Cip1はp53誘発性のG停止を少なくとも部分的に媒介すると考えられる。p53誘発性の細胞周期停止およびアポトーシスに至る機構は広範囲に検討かつ報告されている。Noxaはタンパク質のBcl−2ファミリーのBcl−2相同性3(BH3)−onlyメンバーをコードする。NOXAは、p53媒介性のトランス活性化の標的でありかつミトコンドリア機能異常によるp53依存性アポトーシスの媒介物質として機能することが示された。Noxaが欠損のマウス胚線維芽細胞は、DNA損傷に応答しての癌遺伝子依存性アポトーシスに対する顕著な抵抗性を示した。
【0090】
p53前アポトーシス経路の活性化をその後、リン酸化p53(Ser15)の検出ならびにBaxの上方制御を伴い、イムノブロット分析により確認した。他のナイトロジェンマスタードはp53媒介性ストレス応答を誘導することが以前に報告されているとは言え、ベンダムスチンは、等毒性用量のシクロホスファミド代謝物(PM)若しくはクロラムブシルに比較した場合に、より強くかつより迅速に誘導されるシグナルを提供する。ベンダムスチンはまた、多様なタンパク質のポリ(ADPリボシル化)を触媒する酵素PARPの迅速かつ広範囲の切断を誘導することも見出された。ベンダムスチンはPARP切断を誘導するとは言え、SU−DHL−1細胞でPARP切断を引き起こす該3種の薬物の能力間の差違は顕著であった。PARP切断のこの迅速な誘導は、DNA修復機構に対するPARPの重要性を考えれば、ベンダムスチンの作用機序において決定的な役割を演じうる。事実、DNA損傷に応答して、細胞は最初にPARPを活性化し、DNA修復酵素および転写因子へのDNAの到達可能性の増大をもたらす。加えて、PARPはアポトーシス若しくは壊死いずれかによる細胞死の開始に関与している。
【0091】
ベンダムスチンおよび他の試験したナイトロジェンマスタードの薬ゲノム学プロファイリングから出現した別の大きな差違は、polo様キナーゼ1(PLK−1)、Auroraキナーゼ(AおよびB)ならびにサイクリンB1の発現レベルに対する影響であった。有糸分裂チェックポイントキナーゼPLK−1およびAuroraは、CDK/サイクリン複合体の活性化および不活性化、セントロソームの集成および成熟、ならびに分裂中期−分裂後期転移の間の分裂後期促進複合体(APC)の活性化、ならびに細胞質分裂のような細胞周期調節の多くの局面に関与している。興味深いことに、これらのチェックポイント調節物質を、siRNAを使用して、若しくは標的を定めた小分子を使用して阻害する場合、DNA損傷薬物の効果の増強が、細胞分裂異常の出現と一緒になって観察される。細胞分裂異常は、分裂中期の間に発生する細胞死の一形態であり、そして形態学的にアポトーシスと異なる。細胞分裂異常は、機能的p53の非存在下で、若しくは慣習的なカスパーゼ依存性アポトーシスが抑制されている細胞で発生し得る。この理由から、細胞分裂異常の開始は腫瘍細胞死の目立つ機構である。それはまた慣習的化学療法剤を使用する数回の化学療法により選択された腫瘍細胞中でも機能しうるからである。ベンダムスチンにより導き出される広範囲のかつ耐性のDNA損傷、およびベンダムスチンによるM期特異的チェックポイントの同時の阻害は、処理した細胞中で細胞分裂異常を誘発しうる。これは、シクロホスファミドおよびクロラムブシル含有レジメンに難治性の患者におけるベンダムスチンの臨床で報告された活性を説明しうる。
【0092】
効率的なDNA修復機構は、DNAアルキル化薬の作用機序において決定的な役割を演じていることが示された。別個のDNA修復機構の活性化はまた、類似の化学的特徴を共有する薬物に対する別個の活性プロファイルも賦与しうる。本明細書に記述される薬ゲノム学分析は、ホスホルアミドマスタードおよびクロラムブシルに比較して、ベンダムスチンにより示差的に調節されるDNA修復遺伝子を同定した。1つのこうした遺伝子、エキソヌクレアーゼ1(Exo1)は、MutSおよびMutLホモログと相互作用する5’−3’エキソヌクレアーゼであり、そしてDNAミスマッチ修復の除去段階ならびに二本鎖切断のプロセシングおよび修復に関与している。Exo1は、体細胞突然変異およびクラススイッチ組換えに関与しており、そして従ってB細胞機能および抗体の生成において非常に重要である。
【0093】
ベンダムスチン、シクロホスファミドおよびクロラムブシルの間の修復機構の差違をさらに検討するため、機能アッセイを実施した。2種の主要な機構、すなわち、DNA修復タンパク質O−アルキルグアニンDNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT);およびプリン塩基のない/ピリミジン塩基のないエンドヌクレアーゼApe−1を検討した。偏在性酵素AGTは、ニトロソ尿素およびトリアゼンを包含する数種のアルキル化剤により引き起こされるO−アルキルグアニンDNA付加物を除去する。臨床上の証拠は、高レベルのAGTを発現する脳腫瘍は、テモゾロミドのような数種のDNAアルキル化剤により抵抗性でありうる脳腫瘍を示唆する。ヌクレオシドO−ベンジルグアニン(O−BG)はAGTタンパク質を効果的に不活性化するための手段を提供する。数種の細胞株において、ベンジルグアニンは、活性化された形態のシクロホスファミドの毒性を明瞭に高める。ここで示されるとおり、シクロホスファミドの細胞傷害効力は、O−ベンジルグアニンを添加することにより高められたがしかしベンダムスチンはされず、ベンダムスチンがAGTにより修復され得るO−アルキルグアニンDNA付加物を誘導しないことを示す。
【0094】
Ape−1/Ref−1は、塩基除去修復(BER)経路で決定的な役割を演じているプリン塩基のない/ピリミジン塩基のないエンドヌクレアーゼである。BERは、DNAアルキル化剤、およびテモゾロミドのようなDNAメチル化剤を包含する多様なDNA損傷薬物により誘発される損傷により活性化される。Ape−1の役割を、その酵素活性の特異的阻害剤、化合物メトキシアミン(MX)を使用して試験した。ベンダムスチンの細胞傷害活性はMXによるApe−1の阻害により高められ、BERに対する役割を示した。シクロホスファミド代謝物を使用して変化は観察されず、これらの薬物により活性化されるDNA修復機構間の大きな差違の根拠をなした。
【0095】
NCIのヒト腫瘍の60種の細胞株のin vitroスクリーニング(NCI Hu
man Tumor 60 Cell line In Vitro Screen)は、潜在的抗腫瘍剤の相対的効力の他の既知治療薬との比較において有用である。化合物の対が、COMPARE統計解析プログラムにより評価されるとおり、該一団を使用してのそれらのスクリーニング結果間に高い相関係数を有することが見出される場合は、該剤はしばしば類似の作用機序を有することが、多くの場合にまた示されている。ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシルおよびシクロホスファミドについて観察される高い相関は、全部既知のアルキル化剤とであり、共通の作用機序を見出すCOMPARE解析の能力を確認する。ベンダムスチンとの6種の上位の一致のうち、メチル化剤DTIC(ダカルバジン)のみがおよそ80%の相関一致(r値)を示した。これらの結果は、ベンダムスチンが他の既知のアルキル化剤に関して異なる作用機序を表すことを示す。
【0096】
本実施例に提示される結果に基づき、ベンダムスチンの推定される作用機序を図5に具体的に説明する。ベンダムスチンは腫瘍細胞に効率的に進入し得、そして、おそらくベンダムスチンのベンズイミダゾール環系により賦与されるアジリジニウム遷移状態環の高度の化学的安定性により、長期のおよび広範囲のDNAアルキル化および断片化を誘導し得る。ベンダムスチン処置は、3種の主要なシグナル伝達経路、すなわち1)NOXAおよびBaxのような前アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーにより媒介される固有のアポトーシスの強い活性化をもたらす「正準」p53依存性ストレス経路の活性化;2)NHL若しくはCLL患者で頻繁に使用される他のナイトロジェンマスタードにより活性化されない塩基除去修復機構のようなDNA修復機構の活性化;ならびに3)キナーゼPLK−1ならびにAurora AおよびBのような数種の有糸分裂チェックポイントの阻害の開始をもたらす。DNA損傷および有糸分裂チェックポイントの阻害の同時の誘導は、ベンダムスチンに曝露された腫瘍細胞が、有糸分裂を受ける前にDNA損傷を効率的に修復することを可能にしないとみられる。広範囲に損傷されたDNAを伴い有糸分裂に進入するDNA、若しくは「慣習的」p53依存性アポトーシスに進行し得ない細胞は、細胞分裂異常による死を受けることができる。この代替のプログラムされた細胞死経路は、伝統的アポトーシスの強い活性化と一緒になって、ベンダムスチンがin vitroの薬剤耐性細胞で、ならびに化学難治性腫瘍を運搬する患者で有効である理由を示す。結果として、ベンダムスチン処置は、とりわけ、低悪性度の非ホジキンリンパ腫および他の血液学的癌を伴う患者の処置のための臨床家の装備一式への重要な追加を表すことができる。
【実施例2】
【0097】
NHL細胞中でのベンダムスチン活性は細胞分裂異常死経路を誘導する
上の実施例1に記述されるとおり、ベンダムスチンは別個の作用機序をもつアルキル化剤であり、そして伝統的なDNA損傷剤に難治性のNHLおよびCLL患者で臨床試験を受けている。ベンダムスチンはNHL細胞中の遺伝子発現の独特の変化を誘導し、また、他の2−クロロエチルアミンアルキル化剤との交差耐性の欠如を表す。定量的PCR分析は、G2/Mチェックポイント調節物質Polo様キナーゼ1(PLK−1)およびAurora Aキナーゼ(AurkA)が、臨床上適切な濃度の薬物への曝露の8時間後にNHL細胞株SU−DHL−1中で下方制御されることを確認した。これらの同一の遺伝子の変化は、細胞を等毒性用量のクロラムブシル若しくはシクロホスファミドの活性代謝物に曝露した場合に観察されなかった。
【0098】
古典的なカスパーゼ媒介性のアポトーシスを受けることが不可能な細胞で細胞毒性を誘導するベンダムスチンの能力を検討した。多剤耐性MCF−7/ADR細胞およびp53欠損RKO−E6結腸腺癌細胞を、50μMベンダムスチン単独、若しくは50μMベンダムスチンおよび20μM汎カスパーゼ阻害剤zVAD−fmkいずれかに2若しくは3日間曝露した。zVAD−fmkはアネキシンV陽性細胞中でベンダムスチン誘導性の増
大を阻害することが可能であったとは言え、単独若しくはzVAD−fmkと組合せのいずれかのベンダムスチンで処理した細胞中のDNA染色DAPIを使用する核形態の顕微鏡的分析は、微小核形成の増大された発生率を示した。多/微小核形成および異常なクロマチン凝縮は双方とも細胞分裂異常の顕著な特徴であり、そしてビンカアルカロイドおよびタキサン類のような微小管結合薬物に曝露された腫瘍細胞中で観察されている。細胞分裂異常の活性化は、古典的アポトーシス経路が阻害された腫瘍細胞中でのベンダムスチンの細胞傷害性およびその活性を増幅しうる。
【実施例3】
【0099】
即効性のベンダムスチンはリンパ腫および白血病細胞での強力なアポトーシスおよび細胞死を活性化する
上述されたとおり、アルキル化剤ベンダムスチンはとりわけ薬剤耐性癌に対し化学療法活性を表し、そして他の関連する抗腫瘍剤に比較した場合に独特の作用機序を有する。他の抗腫瘍性ナイトロジェンマスタードと同様に、ベンダムスチンはヒトで比較的短い血清半減期を有し(およそ2時間)、そしてボーラス静脈内注入により臨床投与される。本実施例で報告される研究の目的は、in vitroで癌細胞に短期間曝露される場合に細胞死およびアポトーシスを誘導するベンダムスチンの能力を評価することであった。こうした実験モデルでのベンダムスチンの活性を、他の構造的に関連する剤と比較した。得られた結果は、ベンダムスチンが細胞への短い(30分)曝露後に最大の抗腫瘍活性を発揮することを示す。これらの結果を得るため、NHL細胞株SU−DHL−1を、30分から4時間までの範囲にわたる短期間、50μMベンダムスチンに曝露し、洗浄し、そして薬物を含まない培地中で20時間回復させた。ベンダムスチンに約30分程度曝露した細胞は、薬物曝露後48および72時間に細胞内ATPおよび上清中へのアデニル酸キナーゼの遊離の測定を包含する多様な生物学的アッセイにより測定されるとおり、生存可能性の大きな喪失を表した(図6および7)。対照的に、この分類のアルキル化剤の他のメンバー(ここでは、クロラムブシル、メルファラン、およびシクロホスファミド代謝物ホスホルアミドマスタード;クロラムブシルおよびホスホルアミドマスタードのデータを示す)で処理した細胞は、これらの剤に30、60および120分間曝露した場合に生存可能性の最小限の喪失を経験した。これら他のナイトロジェンマスタードは、これらのアッセイでベンダムスチンに匹敵する細胞傷害効果を誘導するのにはるかにより長い曝露期間(最低4時間)を必要とした。これらの知見はMTTに基づくアッセイを使用して確認され、ここでは、ベンダムスチンは、薬物への30分、4時間若しくは72時間の曝露後72時間にSU−DHL−1およびHL−60細胞で類似のIC50を有した。比較すると、クロラムブシル、メルファランおよびホスホルアミドマスタードは、連続(72時間)曝露に比較して、これらの同一の細胞株と30分間インキュベートした場合に10ないし20倍より高いIC50値を表した。
【0100】
細胞内ATPレベルは、以下のルシフェラーゼに基づくATPアッセイを使用してアッセイした。10mLのCellTiter−Glo(R)試薬を適切な量のCellTiter−Glo基質(製造元の説明書に従う;Promega Corp.)と混合し、そして混合物を10分間平衡化させた。100μLのこの溶液をその後100μLの細胞含有培地と合わせ、そして該混合物を10分間インキュベートさせた。CCDに基づくプレートリーダーを使用して発光を検出した。
【0101】
処理した細胞の細胞膜が完全性を失い、ADKが培地(若しくは生物学的サンプルの情況では細胞外空隙、血液など)に放出されるため、アデニル酸キナーゼ(ADK)アッセイを選択した。96ウェルプレートでADKアッセイを実施するため、各試験ウェル中で、細胞をペレットにするために短時間遠心分離した培地のアリコートからの20μLの上清を、たった今調製しかつ15分間平衡化させた100μLのADK試薬(製造元の説明書に従った20mLのCambrex ToxiLight試薬および適切な量のCambrex ToxiLight基質;Cambrex Corp.、ニュージャージー州)と混合した。反応混合物をその後2分間インキュベートしてキナーゼ反応を起こさせた。サンプルからの発光をその後即座にプレートリーダーで読み取った。
【0102】
細胞生存率は、特定の細胞培養物の20μLのアリコートを、使用直前に10倍希釈に希釈した180μLのGuava ViaCount試薬(Guava Technologies、カリフォルニア州ヘイワード)と混合することによってもまたアッセイした。各混合物をその後5分間インキュベートした。ViaCount細胞計数アッセイをその後、1,000全細胞あたりの生細胞の数が測定されることを可能にするGuava PCフローサイトメーターを使用して実施した。生対死細胞を、それらの劣化しつつある細胞膜を通って死んだ若しくは死につつある細胞に拡散し得る色素7AADを使用して識別した。
【0103】
実施例1に記述されるとおり、PARP(ポリ[ADPリボース]ポリメラーゼ)切断の迅速な誘導は、NHL細胞でのベンダムスチン誘導性の細胞死の顕著な特徴である。最大のPARP切断は、50μMのSDX−105に約30分程度曝露しかつ薬物ウォッシュアウト後さらに8時間インキュベートしたSU−DHL−1細胞で観察された。NARP切断は、40μMホスホルアミドマスタード、4μMクロラムブシル若しくは2μMメルファランで類似の様式で30分間処理した細胞で観察されなかった。使用した各薬物の濃度は、72時間の薬物曝露後にMTT[臭化3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム]に基づくアッセイにより測定されるとおり、50μMベンダムスチンと比較した場合に等毒性濃度を表す。
【0104】
MTTアッセイを実施して多様な薬物の用量を滴定して、処理した細胞の50%を死滅させるのに必要とされる有効濃度を決定した。これらのアッセイは96ウェルプレートで実施した。濃度は最大500μMまでの範囲にわたった。各アッセイにおいて、対照は未処理細胞および死滅細胞を包含した。「ウォッシュアウト」実験で細胞を試験するのに使用するプレートについて、プレートを5分間遠心分離して細胞をペレットにした。培地をその後除去し、細胞ペレットを1×PBSで1回すすぎ、そしてその後新鮮培地に再懸濁した。細胞を、特定の投薬量の薬物とともに、5.0%COを含有する雰囲気中37℃で3日間インキュベートした。3日後に10μLのMTT(12mM)試薬(新鮮培地に溶解し、濾過滅菌し、2〜8℃に保存した5mg/mL MTT(Promega))を各ウェルに添加した。4時間インキュベーション後に、100μLの溶解緩衝液(20%SDS、0.015M HCl)を各ウェルに添加した。混合物を、5.0%COを含有する雰囲気中37℃に一夜置いて細胞を溶解させた。翌朝、細胞溶解の程度を、595nmでのマルチウェル走査分光光度計の示度を使用して測定した。
【0105】
匹敵する結果が、ヒト癌細胞株HL−60を100μMベンダムスチン若しくは12μMクロラムブシルで処理することにより得られた。薬物への曝露の期間は30分、1時間若しくは2.5時間であり、ここで、薬物を含有する培地は示される時間後に除去しかつ薬物を含有しない新鮮培地で置換した。
【0106】
一緒にすれば、これらの結果は、それを他の関連するアルキル化剤と識別する、癌細胞との短時間のインキュベーション後でさえ不可逆的細胞死経路を活性化するベンダムスチンの独特の能力を具体的に説明する。こうした即効性の細胞傷害性はベンダムスチンの強力な臨床活性を確認し、そして慣習的化学療法に難治性であるものを包含する多様な癌を処置するためにそれが有用であろうことを示す。
【実施例4】
【0107】
臨床データ
本研究は、再発したか若しくは以前の化学療法レジメンに難治性であるMHLを伴う患者でのベンダムスチンの有効性および毒性を評価した。リツキシマブに難治性の患者は処置6か月以内に疾患の進行を有した。
【0108】
方法:本フェーズII多施設試験は、米国およびカナダの17施設からの再発した低悪性度若しくは形質転換リツキシマブ難治性B細胞NHLを伴う患者を登録した。低悪性度の組織学的表現型が患者の84%で見られた一方、16%は形質転換疾患を有した。患者の年齢の中央値は63歳(範囲:38〜84歳)であり、そして88%がステージIII/IVの疾患を有した。患者は、21日毎に6サイクルまで、第1および2日に30〜60分にわたるベンダムスチン120mg/m IVを受領した。国際作業部会(International Working Group)の基準を使用して応答を測定した。
【0109】
結果:intent−to−treat(ITT)集団は、2という以前の化学療法の中央値を伴う、75例の重度に前処置された患者よりなった。ITT集団における全体奏功率(ORR)は74%であり;25%は完全奏功を有し、49%は部分奏功を有し、12%は安定を有し、そして14%は進行を有した。以前のアルキル化剤処置に難治性であった15例の患者(最低1回の以前のアルキル化剤含有治療後に進行した患者)のうち、10例(67%)がベンダムスチンに対する奏功を経験した。応答の持続期間の中央値は全患者について6.6か月、低悪性度患者について9.3か月、および形質転換患者について2.4か月であった。
【0110】
結論:単剤ベンダムスチンは、以前のアルキル化剤処置にもまた難治性であった患者を包含する、重度に前処置されたリツキシマブ難治性の低悪性度および形質転換NHL患者において、不都合な予後の特徴にもかかわらず、許容できる毒性を伴い、耐えられる奏功を生じた。
【0111】
本発明は上の実施例に関して記述されたとは言え、改変および変形が本発明の技術思想および範囲内に包含されることが理解されるであろう。従って、本発明は付随する請求の範囲によってのみ制限される。
【0112】
本明細書に開示かつ特許請求される組成物および方法の全部は、本開示に照らして過度の実験を伴わずに作成および実施し得る。本発明の組成物および方法は好ましい態様に関して記述された一方、変形を、付随する請求の範囲により定義されるところの本発明の技術思想および範囲から離れることなく、本明細書に記述される組成物および方法に、ならびに該方法の段階若しくは段階の連続において適用しうることが当業者に明らかであろう。
【0113】
本明細で挙げられる全部の特許、特許出願および刊行物は、本発明の関する技術分野の当業者の水準を暗示する。優先権若しくは別の利益が特許請求されるものを包含する全部の特許、特許出願および刊行物は、各個々の刊行物が引用することに組み込まれることをとりわけかつ個々に示した場合と同一の程度まで、そっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0114】
本明細書に具体的に記述される本発明は、適しては本明細書にとりわけ開示されないいかなる要素(1種若しくは複数)の非存在下でも実施しうる。従って、例えば、本明細書の各例において、「含んでなる」、「より本質的になる」および「よりなる」という用語のいずれも、他の2用語のいずれかで置換されうる。使用された用語および表現は、記述の条件としてかつ制限の条件としてでなく使用され、そして、こうした用語および表現の使用において、示されかつ記述される特徴若しくはそれらの部分のいかなる同等物も排除
するという意図は存在しないが、しかし、特許請求される本発明の範囲内で多様な改変が可能であることが認識される。従って、本発明は好ましい態様および任意の特徴により具体的に開示されたとは言え、開示される本明細書の概念の改変および変形が当業者により行われうること、ならびにこうした改変および変形は付随する請求の範囲により定義されるところの本発明の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】遺伝子発現プロファイルをそれぞれ示す2図AおよびBを有する。該図は12,000種以上の既知遺伝子を含有するAffymetix遺伝子チップ(U133A)を使用して非ホジキンリンパ腫細胞株SU−DHL−1で測定した遺伝子発現の変化を示す。ベンダムスチンはIC50(25μM;レーン1)およびIC90(35μM;レーン2)で試験した。クロラムブシル(5μM;レーン3)およびホスホルアミドマスタード(シクロホスファミド代謝物、50μM;レーン4)はIC90で試験した。mRNAの単離は曝露後8時間に実施した。A.示されるクラスター図は対照(希釈剤、DMSO)に比較しての上位100種の最も調節される遺伝子を表す。赤色は上方調節された遺伝子を表し;青色は下方制御された遺伝子を表す。B.該クラスター図は全3種の試験した薬物により同時に誘導される遺伝子を表す。
【図2】3個の棒グラフ2A、2Bおよび2Cを有する。Q−PCR分析を、等毒性濃度のベンダムスチン、ホスホルアミドマスタードおよびクロラムブシルに曝露したSU−DHL−1細胞で、下の方法の節に記述されるとおり実施した。入力cDNAのレベルは18s RNAについてのアッセイを使用して正規化し、そして未処理サンプル中の転写物のレベルを1に設定した。図2Aは、2種の代表的なp53依存性遺伝子p21およびNOXAの相対的RNAレベルを示す。図2BはM期の細胞周期チェックポイントに関与する4種の遺伝子、すなわちpolo様キナーゼ1(PLK−1)、auroraキナーゼAおよびB、ならびにサイクリンB1のRNAレベルを示す。図2CはDNA修復機構に関与する遺伝子EXO1およびFen1の相対的RNAレベルを示す。柱(column)はDMSO処理対照からの変化の倍数の平均±SEを表す。結果は3回の独立した実験から得た。
【図3】NHL細胞(SU−DHL−1)でのシクロホスファミド(50μM)およびクロラムブシル(4μM)に比較してのベンダムスチン(50μM)のその高められたアポトーシス効果を示す数種のイムノブロットを示す。これらのイムノブロットを生成するため、細胞ライセートを、下の実験の節に記述されるとおり20時間の曝露後に調製した。β−アクチンでのメンブレンのプロービングが負荷対照としてはたらき、そして調節されたタンパク質の下に示される。左上図は、リン酸化型特異的抗体を使用して検出された、Ser15がリン酸化されたp53の発現を表す。左中図は全p53およびp21発現を示す。左下図はBaxの発現を表す。右図は、特異的カスパーゼ切断部位を認識する抗体を使用しての完全長PARP(上)およびPAPPのカスパーゼ切断フラグメントの発現を示す。
【図4】選択されたDNA修復機構の機能分析を表す2グラフAおよびBよりなる。図4Aは、ベンダムスチンが塩基除去修復(BER)を介するDNA損傷修復に至るがしかしシクロホスファミドは至らないことを示す。修復酵素Ape−1(ベンダムスチンの細胞傷害活性においてBER経路で決定的な役割を演じているプリン塩基のないエンドヌクレアーゼ)、およびシクロホスファミド代謝物ホスホルアミドマスタード(PM)の役割を、Ape−1阻害剤メトキシアミン(MX)を使用して評価した。ベンダムスチンおよびMXで観察される曲線の左方移動は、ベンダムスチンにより生じられるDNA損傷がBERにより修復されることを示す。図4Bは、MGMT修復活性の阻害がベンダムスチンの細胞傷害性に影響を及ぼさないことを示す。ベンダムスチンの細胞傷害活性における修復酵素MGMT(O−メチルグアニン−DNAメチルトランスフェラーゼ)の役割を、MGMT阻害剤O−ベンジルグアニン(O−BG)を使用して評価した。O−ベンジルグアニンの添加はベンダムスチンのIC50を有意に変化せず、従って、ベンダムスチンがO−アルキルグアニンDNA付加物を誘導することはありそうにない。対照的に、O−ベンジルグアニンは、カルムスチンおよびホスホルアミドマスタード(PM)のような他のナイトロジェンマスタードに対し細胞を大きく感作する。
【図5】ベンダムスチンが腫瘍細胞に効率的に進入し、かつ、最低3種のシグナル伝達経路、すなわち1)おそらくNOXAおよびBaxのような前アポトーシスBCL−2ファミリーメンバーにより媒介される固有のアポトーシスの強い活性化をもたらす「正準」p53依存性ストレス経路の活性化;2)NHL若しくはCLL患者で頻繁に使用される他のアルキル化剤により活性化されない塩基除去修復機構のようなDNA修復機構の活性化;ならびに3)キナーゼPLK−1ならびにAurora AおよびBのような数種の有糸分裂チェックポイントの阻害の開始をもたらす、長期のかつ広範囲のDNA損傷を誘導することを具体的に説明する。特定の論理に束縛されることを願わない一方、DNA損傷の同時の誘導および有糸分裂チェックポイントの阻害が、おそらく、ベンダムスチンに曝露された腫瘍細胞が有糸分裂を受ける前にDNA損傷を効率的に修復することを予防する。細胞は従って損傷されたDNAを伴い有糸分裂に進入するか、若しくは「慣習的」p53依存性アポトーシスに進行し得ない細胞が、細胞分裂異常による死を受けることができる。この代替のプログラムされた細胞死経路は、伝統的なアポトーシスの強い活性化と一緒になって、ベンダムスチンがin vitroでの薬剤耐性癌細胞の死滅においてならびに化学難治性腫瘍を有する患者において非常に有効である理由であると考えられる。
【図6】下の実施例3に記述される「ウォッシュアウト」実験のいくつかの経過で実施したアデニル酸キナーゼアッセイの結果を示すヒストグラムである。これらの実験において、SU−DHL−1細胞を50μMベンダムスチン、20μMホスホルアミドマスタード若しくは2μMクロラムブシルのいずれかで30、60若しくは90分間のいずれか処理した。調時的薬物インキュベーション後に、細胞を1×PBSで洗浄して特定の化学療法剤を「洗い流し」、そしてその後新鮮培地を添加した。細胞をその後48時間培養し、その時間の後にアデニル酸キナーゼアッセイを細胞上清で実施した。桃色の棒は0分の薬物(すなわち薬物なし)インキュベーションを表す。緑色の棒は30分のインキュベーションを表し、橙色の棒は60分のインキュベーションを表し、そして紫色の棒は120分のインキュベーションを表す。該結果は、3種の薬物および「薬物なし」対照に対する上清中のアデニル酸キナーゼ活性のレベルをプロットする。標準偏差を該グラフの各棒の上部に表す。
【図7】図6のように、下の実施例3に記述される「ウォッシュアウト」実験のいくつかの経過で実施したアデニル酸キナーゼアッセイの結果を示すヒストグラムである。図6および7に描かれる結果間の差違は、図6に表されるデータが、薬物のそれぞれが培養物から「洗い流された」後の48時間の細胞培養に関する一方、図7のデータは特定の薬物を「洗い流した」後の72時間の細胞培養に関することである。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が死抵抗性癌細胞を特徴とする癌を有することを決定すること、次いで治療上有効な量のベンダムスチンを該患者に投与することを含んでなる、癌の処置方法。
【請求項2】
癌がアポトーシスに抵抗性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
死抵抗性癌細胞がp53欠損を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
癌が非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ベンダムスチンを投与すること、最低約30分しかし約48時間を超えない間待機すること、および細胞が細胞周期のS期にある場合により活性である別の化学療法剤(1種若しくは複数)を投与することを含んでなる、癌患者の処置方法。
【請求項6】
化学療法剤が、ベンダムスチンの投与の約30分ないし約36時間後に与えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
化学療法剤が、ベンダムスチンの投与の約30分ないし24時間後に与えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
化学療法剤が、ベンダムスチンの投与の約30分ないし12時間後に与えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
化学療法剤が、ベンダムスチンの投与の約30分ないし6時間後に与えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
患者が死抵抗性癌細胞を特徴とする癌を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
癌患者から採取した生物学的サンプル中の癌細胞死のマーカーのレベルが処置の有効性と相関するかどうかを決定することを含んでなり、該決定が該癌を処置することを意図している治療レジメンの投与の間若しくは後になされ、該治療レジメンがアルキル化剤の投与を含んでなる、癌処置の有効性の評価方法。
【請求項12】
アルキル化剤がベンダムスチンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
a.治療上有効な量のベンダムスチンで癌を処置すること;
b.ベンダムスチンに所望の治療効果を発揮させるのに十分な時間待機すること;およびc.癌細胞死のマーカーのレベルを測定して、ベンダムスチンでの処置が有効であったかどうか決定すること
を含んでなる、癌処置の有効性の評価方法。
【請求項14】
第一の用量の治療上有効な量のベンダムスチンを患者に投与すること(第一のベンダムスチン用量が望ましくない毒性をもたらす)、および、該望ましくない毒性が弱まり始めた後まで該患者への第二の用量の治療上有効な量のベンダムスチンの投与を遅らせることを含んでなる、癌患者にベンダムスチンの複数の用量を投与することを含んでなる癌治療に伴う毒性の低減方法。
【請求項15】
a.患者の癌組織からの細胞サンプルの少なくとも一部分を、癌細胞に対し毒性である
化合物の非存在下で該癌細胞を増殖させる増殖条件下でベンダムスチンに曝露すること;および
b.該癌がベンダムスチン曝露に感受性であるかどうか評価すること
を含んでなる、患者の癌がベンダムスチンに感受性であるかどうかの評価方法。
【請求項16】
癌がベンダムスチン曝露に感受性であるかどうかの評価が、癌細胞死のマーカーのレベルを測定することを含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
癌細胞死のマーカーが、アデニル酸キナーゼ活性のレベル、細胞の生存率およびPARP切断生成物のレベルよりなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者が1種若しくはそれ以上のアルキル化剤および抗CD20剤に抵抗性と特徴づけられる癌を有することを決定することを含んでなり、前記患者に治療上有効な量のベンダムスチンを投与することを含んでなる、癌の処置方法。
【請求項19】
癌が非ホジキンリンパ腫である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
抗CD20剤がリツキシマブである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
死抵抗性癌細胞を特徴とする癌を処置するための使用のためベンダムスチンを販促することを含んでなる、死抵抗性癌細胞を特徴とする癌の処置に関連する事業を行う方法。
【請求項22】
癌が、1種若しくはそれ以上のアルキル化剤および抗CD20剤の組合せを含んでなる処置に対し難治性の癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
難治性癌を処置するためのベンダムスチン使用を販促することを含んでなる、難治性癌の処置に関連する事業を行う方法。
【請求項24】
難治性癌が、1種若しくはそれ以上のアルキル化剤および抗CD20剤の組合せでの処置に難治性の癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
死抵抗性癌細胞を特徴とする癌の処置のための医薬品の製造におけるベンダムスチンの使用。
【請求項26】
難治性癌の処置のための医薬品の製造におけるベンダムスチンの使用。
【請求項27】
難治性癌が、1種若しくはそれ以上のアルキル化剤および抗CD20剤の組合せでの処置に難治性の癌である、請求項26に記載の使用。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−519047(P2008−519047A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540086(P2007−540086)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/040068
【国際公開番号】WO2006/065392
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(505158024)セフアロン・インコーポレーテツド (21)
【Fターム(参考)】