説明

癌治療に用いられるメチレンジオキシベンゾ[I]フェナントリジン誘導体

本発明は、式Iで示される化合物(式中、A、B、XおよびYは、明細書中で定義された値のいずれかを有する)、加えて、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物の製造方法、および癌およびその他のトポイソメラーゼが介在する状態を治療するための治療方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年3月6日付けで出願された米国仮出願第61/158,156号の優先権を主張する(この明細書は、参照により本発明に包含させる)。
【0002】
政府の資金援助
本明細書において説明される発明は、国立癌研究所(National Cancer
Institute)によって認定された助成金番号CA098127、CA39662およびCA077433の政府の支援でなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
トポイソメラーゼは、例えばDNA複製、修復、転写および組換え、加えて染色体凝縮および分離などのプロセスに関与する偏在的な酵素である。トポイソメラーゼI(TOP1)は、DNA損傷を引き起こし、最終的には細胞死に至らしめる酵素−DNA切断複合体を安定化させるそれらの能力に基づき、数種の抗癌剤の標的である。カンプトテシン(CPT)は、TOP1標的物質として同定された最初の化合物であった(Hsaing, Y.H.; Hertsberg, R.; Hecht, S.; Liu, L.F. Camptothecin Induced Protein-Linked DNA Breaks Via Mammalian DNA Topoisomerase I, J. Biol. Chem., 1985, 260, 14873-14878)。それ以来、2種の臨床的なTOP1−標的物質であるトポテカン(ハイカムチン(Hycamtin(R)))およびイリノテカン(CPT−11/カンプトサール(Camptosar(R)))が開発されている。トポテカンおよびイリノテカンを臨床で用いられるように開発するには、それらの水溶性をCPTよりも改善することが重要であった。これらの物質は、それらの構造内に、δ−ラクトンを含むカンプトテシンのコア構造を包含させたものである。このラクトン部分は加水分解を受けやすく、結果生じたカルボン酸は、ヒト血清アルブミンに高い親和性を有する。加えて、これらの臨床的な物質はいずれも、輸送体が介在する細胞外への排出を受けやすいことが知られており、それにより細胞内の蓄積が限定的になる可能性があり、多剤耐性を併発させてきた。これらのカンプトテシンに対する耐性と共に、MDR1(P糖タンパク質)および乳癌耐性タンパク質(BCRP)の特異的な過剰発現が生じた。
【0004】
それ以外の抗癌特性を有するトポイソメラーゼ標的物質としては、LaVoie等の米国特許第7,208,492号で説明されているものが挙げられる。説明されている具体的な化合物としては、化合物206および化合物216が挙げられる。
【0005】
【化1】

【0006】
これらはそれぞれ、米国特許第7,208,492号に記載されている式IIおよび式Iで示される化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,208,492号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hsaing, Y.H.; Hertsberg, R.; Hecht, S.; Liu, L.F. Camptothecin Induced Protein-Linked DNA Breaks Via Mammalian DNA Topoisomerase I, J. Biol. Chem., 1985, 260, 14873-14878
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような先の報告があるにもかかわらず、癌治療に有用なさらなる物質への必要性が依然としてある。さらに、抗癌剤、具体的には、哺乳動物において、強化された細胞毒性、または、強化された代謝的安定性、長い半減期、または、改善された経口での生物学的利用率を有するトポイソメラーゼI標的物質、または、排出輸送体の基質ではないか、または、排出輸送体によって細胞から排除される特性を低減させたトポイソメラーゼI標的物質に対する必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、トポイソメラーゼIおよび/またはトポイソメラーゼIIに対する阻害活性を示す化合物、および、薬剤耐性癌細胞などの癌細胞に対して有効な細胞毒性薬である化合物を提供する。本発明の化合物は、カルボキサミド部分を有するベンゾ[i]フェナントリジンのコアをベースとしており、このコアは、ペンダントアミノ基を有するアルキル基を含み、そのアミノ基に隣接するメチレンが二置換されている。出願人は、アミノ基に隣接する上記メチレンが二置換されていることによって、メチレンが非置換の化合物と比べて有意に強化された細胞毒性を有する化合物が提供されることを見出した。本発明の代表的な化合物は、BCRPの基質ではないことがわかっている。
【0011】
従って、式I:
【0012】
【化2】

【0013】
で示される化合物である本発明の化合物、もしくは、それらの塩またはプロドラッグを提供し、式中:
AおよびBの一方は、−C(O)NH(CRCRNRであり、他方は、Hであり;
およびRは、それぞれ独立して、(C〜C)アルキルであるか;または、RおよびRは、それらが結合している炭素と一緒に、3〜6員環のシクロアルキルを形成し;
およびRは、それぞれ独立して、Hまたは(C〜C)アルキルであり、ここ
で(C〜C)アルキルは、任意に、アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい;または、RおよびRは、それらが結合している窒素と一緒に、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノを形成し;
CRそれぞれに関して;RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはCHであり;
nは、1、2または3であり;
Xは、−OCHであり、Yは、−ORであるか;または、Yは、−OCHであり、Xは、ORであり;
は、H、CH、−C(O)R、−C(O)OR、または、−C(O)NRであり;
は、(C〜C)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、または、(C〜C)シクロアルキルであり;
は、(C〜C)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、または、(C〜C)シクロアルキルであり;および、
およびRは、それぞれ独立して、H、アリール、ヘテロアリール、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、または、(C〜C)アルキルであるか;または、RおよびRは、それらが結合している窒素と一緒に、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノを形成する。
【0014】
本発明はまた、医薬的に許容される賦形剤、希釈剤またはキャリアーと組み合わせた、式Iで示される化合物、または、それらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む医薬組成物も提供する。
【0015】
本発明はまた、哺乳動物(例えばヒト)に、トポイソメラーゼを調節する作用をもたらすのに有効な、式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、このような治療が必要な哺乳動物においてトポイソメラーゼ活性を調節する方法も提供する。
【0016】
本発明はまた、インビトロまたはインビボで、癌細胞を、前記癌細胞の増殖を阻害するのに有効な量の式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグと接触させることによって、癌(例えば白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、または、乳癌)の細胞増殖を阻害することを含む方法も提供する。
【0017】
本発明はまた、哺乳動物(例えばヒト)における癌(例えば白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、または、乳癌)を治療する方法も提供し、本方法は、前記哺乳動物に、式Iで示される化合物、または、それらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む。
【0018】
本発明はまた、薬物療法で使用するための(例えば、白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌または乳癌などの癌を治療理する際に使用するための)式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグも提供する。
【0019】
本発明はまた、哺乳動物(例えばヒト)における癌(例えば白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、または、乳癌)を治療するのに有用な医薬品を製造するための、式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグの使用も提供する。
【0020】
本発明は、哺乳動物(例えばヒト)における予防的または治療的な癌(例えば白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、または、乳癌)の治療で使用するための、式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを提供する。
【0021】
本発明はまた、式Iで示される化合物またはそれらの塩の製造に有用な、本明細書において開示された方法および中間体も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
特に他の説明がない限り、以下の定義を用いる:ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル等は直鎖状および分岐状の基の両方を意味する;ただし例えばプロピルのように個々のラジカルについて述べる場合は直鎖のラジカルのみを含み、イソプロピルのような分岐鎖の異性体はそうであることを明確に述べることとする。アリールは、フェニルラジカル、または、約9〜10個の環原子を有するオルト位で融合した二環式の炭素環ラジカル(ここで少なくとも1つの環は芳香族である)を意味する。ヘテロアリールは、炭素からなる5または6個の環原子、ならびに、それぞれ過酸化物ではない酸素、硫黄およびN(X)からなる群より選択される1〜4個のヘテロ原子を含む単環式の芳香環のラジカル(ここでXは存在しないか、または、H、O、(C〜C)アルキル、フェニルまたはベンジルである)を包含し、加えて、過酸化物ではない酸素、硫黄およびN(X)からなる群より選択されるヘテロ原子をそれぞれ1〜4個含む約8〜10個の環原子のオルト位で融合した二環式複素環のラジカルも包含する。
【0023】
当業者であれば当然のことながら、本発明のキラル中心を有する化合物が存在する可能性があり、光学的に活性なラセミ体で単離してもよい。いくつかの化合物は多形を示す可能性がある。当然のことながら、本発明は、本明細書において説明された有用な特性を有する本発明の化合物の、あらゆるラセミ体の形態、光学的に活性な形態、多形の形態、または、立体異性体の形態、または、それらの混合物を包含し、光学的に活性な形態の製造方法は当業界公知である(例えば、再結晶技術によるラセミ体の分割、光学的に活性な出発原料からの合成、キラル合成、または、キラル固定相を用いたクロマトグラフィーによる分離によって製造される)。
【0024】
以下に列挙されるラジカル、置換基および範囲に関する具体的な値は単に説明のためであり、それらはラジカルおよび置換基に関して定義された範囲に含まれるその他の規定値またはその他の値を排除するものではない。
【0025】
具体的には、(C〜C)アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルであってもよく;(C〜C)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、または、ヘキシルであってもよく;(C〜C)シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、または、シクロヘキシル、であってもよい。本明細書で用いられる用語「アリール(C〜C)アルキル」は、(C〜C)アルキルラジカルであって、(C〜C)アルキルラジカルの水素原子のうち1個またはそれより多くがアリールラジカルで置き換えられている(C〜C)アルキルラジカルを意味する。本明細書で用いられる用語「ヘテロアリール(C〜C)アルキル」は、(C〜C)アルキルラジカルであって、(C〜C)アルキルラジカルの水素原子のうち1またはそれより多くがヘテロアリールラジカルで置き換えられている(C〜C)アルキルラジカルを意味する。
【0026】
式Iで示される化合物の具体的な群は、Aが、−C(O)NH(CRCRNRであり、BがHである化合物である。
【0027】
式Iで示される化合物の具体的な群は、Bが、−C(O)NH(CRCRNRであり、AがHである化合物である。
【0028】
nの具体的な値は、1または2である。
【0029】
nの具体的な値は、1である。
【0030】
CRの具体的な値は、CHである。
【0031】
の具体的な値は、(C〜C)アルキルである。
【0032】
の具体的な値は、(C〜C)アルキルである。
【0033】
式Iで示される化合物の具体的な群は、RおよびRがそれぞれ独立して(C〜C)アルキルである化合物である。
【0034】
の具体的な値は、メチルである。
【0035】
の具体的な値は、メチルである。
【0036】
式Iで示される化合物の具体的な群は、RおよびRがそれぞれメチルである化合物である。
【0037】
の具体的な値は、Hまたは(C〜C)アルキルであり、ここで(C〜C)アルキルは、任意に、アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0038】
の具体的な値は、Hまたは(C〜C)アルキルであり、ここで(C〜C)アルキルは、任意に、アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0039】
式Iで示される化合物の具体的な群は、RおよびRがそれぞれ独立してHまたは(C〜C)アルキルである化合物である。
【0040】
式Iで示される化合物の具体的な群は、RおよびRがそれぞれ独立して(C〜C)アルキルである化合物である。
【0041】
式Iで示される化合物の具体的な群は、RおよびRがそれぞれメチルである化合物である。
【0042】
Aの具体的な値は、−C(O)NHCHC(CHN(CH、−C(O)NH(CHC(CHN(CH、または、−C(O)NH(CHC(CHN(CHである。
【0043】
Bの具体的な値は、−C(O)NHCHC(CHN(CH、−C(O)NHCHC(CHN(CHPh)、−C(O)NHCHC(CHNH、−C(O)NH(CHC(CHN(CH、または、−C(O)NH(CHC(CHN(CHである。
【0044】
式Iで示される化合物の具体的な群は、Xが−OCHであり、Yが−ORである化合物である。
【0045】
式Iで示される化合物の具体的な群は、Yが−OCHであり、Xが−ORである化合物である。
【0046】
の具体的な値は、H、CH、−C(O)R、−C(O)OR、または、−C(O)NRである。
【0047】
の具体的な値は、−C(O)R、−C(O)OR、または、−C(O)NRである。
【0048】
の具体的な値は、Hである。
【0049】
の具体的な値は、CHである。
【0050】
の具体的な値は、(C〜C)アルキルである。
【0051】
の具体的な値は、(C〜C)アルキルである。
【0052】
の具体的な値は、H、または、(C〜C)アルキルである。
【0053】
の具体的な値は、H、または、(C〜C)アルキルである。
【0054】
具体的な式Iで示される化合物は、以下の化合物もしくはそれらの塩またはプロドラッグである:2,3−ジメトキシ−N−(2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロピル)−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;または、N−(2−(ジベンジルアミノ)−2−メチルプロピル)−2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;または、N−(2−アミノ−2−メチルプロピル)−2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;または、2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11−カルボン酸2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロピルアミド;または、2,3−ジメトキシ−N−(3−(ジメチルアミノ)−3−メチルブチル)−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;または、2,3−ジメトキシ−N−(4−(ジメチルアミノ)−4−メチルペンチル)−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11−カルボン酸3−(ジメチルアミノ)−3−メチルブチルアミド;2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11−カルボン酸4−(ジメチルアミノ)−4−メチルペンチルアミド。
【0055】
用語「プロドラッグ」は、本明細書で用いられるように、生物系に投与すると、自然に起こる化学反応、酵素が触媒する化学反応、光分解および/または代謝性の化学反応の結果として、または、その他のある種のプロセスによって、医薬物質、すなわち活性成分を生成するあらゆる化合物を意味する。従ってプロドラッグは、治療的に活性な化合物の修飾された(例えば、共有結合で修飾された)類似体であるか、または、将来的に治療的に活性な化合物になる可能性がある形態である。またプロドラッグは、活性代謝産物、または、それ自身治療的に活性な化合物であってもよい。
【0056】
一例として、プロドラッグは、代謝中に、全身に、細胞内部で、加水分解によって、酵
素的な切断によって、または、その他のある種のプロセスによって活性な阻害化合物を生成するものでもよい(Bundgaard, Hans, “Design and Application of Prodrugs” in A
Textbook of Drug Design and Development(1991), P. Krogsgaard-Larsen and H. Bundgaard, Eds. Harwood Academic Publishers, pp. 113-191; Tranoyl-Opalinski, I., Fernandes, A., Thomas, M., Gesson, J.-P., and Papot, S., Anti-Cancer Agents in Med.
Chem., 8(2008) 618-637)。本発明のプロドラッグ化合物で酵素的に活性化するメカニズムを有し得る酵素としては、これらに限定されないが、ニトロレダクターゼ、プロテアーゼ(例えば、前立腺特異抗原(PSA)のようなセリンプロテアーゼ)、アミダーゼ、エステラーゼ、微生物酵素、ホスホリパーゼ、コリンエステラーゼ、および、ホスファターゼ(phosphase)が挙げられる。
【0057】
所定の式Iで示される化合物は、その他の式Iで示される化合物のプロドラッグとして機能する可能性があるため、これらも本発明の実施態様である。例えば、Rが−C(O)R、−C(O)OR、または、−C(O)NRである式Iで示される化合物は、それらに対応するRが水素の式Iで示される化合物のプロドラッグとして機能する可能性がある。
【0058】
特に有用なプロドラッグは、フェノール官能基を介して連結しているものである。従って、本発明の一実施態様において、式Iで示される化合物のフェノールを放出する式Iで示される化合物を含むプロドラッグが提供される。その他の実施態様において、本発明は、標的部分(例えば抗体)を含むプロドラッグを提供する。
【0059】
本発明のさらなる実施態様として提供される式Iで示される化合物の製造方法を、以下の手法で説明する(ここで一般式のラジカルの意味は、特に他の指示がなければ上記で示した通りである)。
【0060】
以下のスキーム1〜6で説明されるようにして、代表的な本発明の化合物を製造した。
【0061】
【化3】

【0062】
【化4】

【0063】
【化5】

【0064】
【化6】

【0065】
【化7】

【0066】
【化8】

【0067】
Bが、−C(O)NH(CRCRNRであり、Aが水素である式Iで示される化合物は、それに対応する式2:
【0068】
【化9】

【0069】
で示される酸を、式Iで示される化合物に、例えば式2で示される酸とアミンとをカップリングすることによって変換して、式Iで示される化合物を提供することによって製造できる。従って、式2の中間体の酸は、式Iで示される化合物を製造するのに有用である。
【0070】
Aが−C(O)NH(CRCRNRであり、Bが水素である式Iで示される化合物は、それに対応する式3:
【0071】
【化10】

【0072】
で示される酸を、式Iで示される化合物に変換することによって製造してもよく、例えば、式3で示される酸とアミンとをカップリングして、式Iで示される化合物を提供することによって製造してもよい。従って、式3の中間体の酸は、式Iで示される化合物を製造するのに有用である。
【0073】
従って、本発明は、
a)Bが−C(O)NH(CRCRNRである式Iで示される化合物を製造する方法を提供するものであり、本方法は、式2で示される化合物を適切なアミン(例えばHN(CRCRNR)で処理して、式Iで示される化合物を提供することを含む。
【0074】
b)Aが−C(O)NH(CRCRNRである式Iで示される化合物を製造する方法を提供するものであり、本方法は、式3で示される化合物を適切なアミン(例えばHN(CRCRNR)で処理して、式Iで示される化合物を提供することを含む。
【0075】
c)式Iで示される化合物を製造する方法を提供するものであり、本方法は、それに対応する1個またはそれより多くの保護基が結合している化合物を脱保護して、式Iで示される化合物を提供することを含む。
【0076】
d)式Iで示される化合物の塩を製造する方法を提供するものであり、本方法は、式Iで示される化合物を、酸(例えば有機酸または無機酸)または塩基(例えばアルカリ塩基、または、アルカリ性の塩基)で処理して、式Iで示される化合物の塩を提供することを含む。
【0077】
化合物が十分な塩基性または酸性を有する場合、式Iで示される化合物の塩は、式Iで示される化合物を単離するための、または、それらを精製するための中間体として有用な可能性がある。加えて、式Iで示される化合物を医薬的に許容される酸性または塩基性塩として投与することが適切な場合がある。医薬的に許容される塩の例は、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸と形成された有機酸付加塩であり、例えばトシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩、および、α−グリセロリン酸塩である。また適切な無機塩が形成されてもよく、このような無機塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、および、炭酸塩が挙げられる。
【0078】
医薬的に許容される塩は、当業界公知の標準的手法を用いて得てもよく、例えばアミンのような十分に塩基性の化合物と、生理学的に許容できるアニオンを提供する適切な酸とを反応させることによって得てもよい。またカルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)の塩も製造することができる。
【0079】
式Iで示される化合物は、医薬組成物として製剤化し、選択された投与経路に適応した様々な形態で、すなわち経口または非経口、静脈内、筋肉内、局所または皮下経路に適応
した様々な形態で哺乳類宿主(例えば人間の患者)に投与してもよい。
【0080】
従って、本発明の化合物は、例えば不活性希釈剤または消化可能な食用のキャリアーのような医薬的に許容される媒体と組み合わせて、例えば経口によって全身投与してもよい。これらは、ハードまたはソフトシェルゼラチンカプセル中に封入してもよいし、錠剤に圧縮してもよいし、または、患者の食事の食物中に直接含ませてもよい。治療のための経口投与の場合、本活性化合物は、1種またはそれより多くの賦形剤と組み合わせて、食べられる錠剤(ingestible tablet)、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェーハなどの形態で用いてもよい。このような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むと予想される。組成物および製剤のパーセンテージは当然ながら変化してもよく、都合のよい形態としては規定された1回投与量の質量の約2〜約60%であり得る。このような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、有効な用量レベルが達成されると予想されるような量である。
【0081】
また錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどは以下:結合剤、例えばトラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプン、または、ゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、アルギン酸など;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;および、甘味剤、例えばスクロース、フルクトース、ラクトース、または、アスパルテームを含んでいてもよく、または、矯味矯臭剤、例えばペパーミント、ウインターグリーン油、または、サクランボ香料が添加されてもよい。1回投与量がカプセルである場合、それらは上記のタイプの材料に加えて、液体キャリアー、例えば植物油またはポリエチレングリコールを含んでいてもよい。その他の様々な材料がコーティングとして存在していてもよいし、または、その他の方法で個々の1回投与量の物理的形状を改変するために存在していてもよい。例えば錠剤、丸剤またはカプセルは、ゼラチン、ワックス、セラックまたは糖などでコーティングされていてもよい。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてスクロースまたはフルクトース、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベン、色素および香料、例えばサクランボまたはオレンジ風味相乗剤を含んでいてもよい。当然ながら、あらゆる1回投与量を製造するのに用いられるあらゆる材料は医薬的に許容されるものであり、使用される量で実質的に非毒性であると予想される。加えて、本活性化合物は、持続放出性製剤、粒子および装置に包含されていてもよい。
【0082】
また本活性化合物は、点滴または注射によって静脈内または腹腔内に投与してもよい。本活性化合物またはその塩の溶液は、水で製造してもよく、任意に非毒性の界面活性剤と混合してもよい。また分散液は、グリセロール、液状のポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物中で製造してもよいし、油中で製造してもよい。通常の貯蔵および使用状態で、これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含む。
【0083】
注射または点滴に適した製薬の投薬形態は、滅菌水溶液もしくは分散液であってもよく、または、滅菌注射用または点滴用溶液もしくは分散液の即時調整に適した活性成分を含む滅菌粉末であってもよく、これらは任意にリポソーム中にカプセル封入されていてもよい。いずれの場合においても、最終的な投薬形態は、製造および貯蔵条件下で、滅菌済みであり、流動性があり、かつ安定であると予想される。液体キャリアーまたは媒体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性のグリセリルエステル、および適切なそれらの混合物を含む溶媒または液状分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えばリポソームの形成、分散液の場合は必要な粒度の維持、または界面活性剤の使用によって維持することもできる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合において、等張剤、例えば糖類、緩衝液または塩化ナトリウムを
含ませることが好ましいと予想される。持続的な注射用組成物の吸収は、組成物に、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる物質を使用することによって達成することができる。
【0084】
滅菌注射用溶液は、活性化合物を必要な量で、適切な溶媒に必要に応じて上記で列挙した様々なその他の成分と合わせ、続いてろ過滅菌することによって製造される。滅菌注射用溶液を調整するための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、それにより予めろ過滅菌した溶液中に含ませた活性成分、加えてあらゆる追加の望ましい成分の粉末が得られる。
【0085】
局所投与の場合、本発明の化合物は、液体である場合、純粋な形態で適用してもよい。しかしながら、一般的には、皮膚科学的に許容されるキャリアー(これらは、固体または液体であり得る)と組み合わせて組成物または製剤としてそれらを皮膚に投与することがことが望ましいと予想される。
【0086】
有用な固形キャリアーとしては、微粉化した固体、例えばタルク、粘土、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナ、ナノ粒子などが挙げられる。有用な液体キャリアーとしては、水、アルコールもしくはグリコール、または、水−アルコール/グリコールのブレンドが挙げられ、これらは任意に非毒性の界面活性剤を用いて、本発明の化合物を有効なレベルで溶解または分散させることができる。定められた用途に応じて特性を最適化するために、アジュバント、例えば芳香剤および追加の抗菌剤を添加することができる。得られた液体組成物は、吸収性パッドから適用してもよいし、包帯およびその他の手当て用品を含浸するのに用いてもよいし、または、ポンプ型装置またはエアロゾルスプレー装置を用いて罹患した領域上に噴霧してもよい。
【0087】
また、増粘剤、例えば合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸の塩およびエステル、脂肪族アルコール、変性セルロースまたは変性無機物質などを液体キャリアーと共に使用することによっても、使用者の皮膚に直接適用するための塗り広げ可能なペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することができる。
【0088】
式Iで示される化合物の有用な投与量は、動物モデルでそれらのインビトロでの活性とインビボでの活性とを比較することによって決定してもよい。マウスやその他の動物における有効な投与量からヒトの場合の量を推測する方法は、当分野でよく知られている;例えば、米国特許第4,938,949号を参照。
【0089】
治療で使用するのに必要な本化合物、または、それらの活性な塩または誘導体の量は、選択された具体的な塩だけでなく、投与経路、治療しようとする状態の性質、ならびに患者の年齢および状態に応じて様々であると予想され、これらは、最終的には担当の医師または臨床医の裁量であると予想される。
【0090】
しかしながら、適切な用量は、一般的に1日あたり約0.1〜約100mg/kg(体重)の範囲であると予想され、例えば1日あたり約0.5〜約75mg/kg(受容者の体重)、例えば1〜約50mg/kg、好ましくは1〜20mg/kg/日の範囲である。
【0091】
本化合物は、1回投与量で製剤化されることが便利であり;例えば、投与量1回あたり0.5〜100mg、都合のよい形態としては1〜75mg、最も都合のよい形態としては0.5〜25mgの活性成分を含むことが便利である。一実施態様において、本発明は、このような1回投与量で製剤化された本発明の化合物を含む組成物を提供する。
【0092】
望ましい用量は、都合のよい形態としては、単回投与の形態で存在していてもよいし、または、数回に分けた用量で存在していてもよく、その場合、適切なインターバルで、例えば1日あたり2回、3回、4回またはそれより多い回数で分けた用量で投与される。このような分割された用量そのものをさらに、例えば大体の間隔をあけた数回の投与に分割してもよい。
【0093】
本発明の化合物のトポイソメラーゼIまたはIIが介在するDNA切断を引き起こす能力は、当業界公知の薬理学的なモデルを用いて決定してもよく、例えば以下で説明される試験Aのようなモデルを用いて決定してもよい。
【0094】
試験A:トポイソメラーゼIが介在するDNA切断の分析
以前に説明されているようにして、ヒトトポイソメラーゼIをエシェリキア・コリ(Escherichia coli)中で発現させ、T7発現系を用いて組換え融合タンパク質として単離した(31)。説明されているようにして、プラスミドYepGも、アルカリ溶解法、続いてフェノールによる脱タンパク質およびCsCl/エチジウム等密度遠心法によって精製した(32)。これまでに述べられたようにして、プラスミドの3’末端の標識付けを、制限酵素での消化、続いてクレノーポリメラーゼによる末端の平坦化によって達成した(33)。これまでに報告されているようにして、切断分析を行った(34,35)。トポイソメラーゼI存在下で薬物およびDNAを室温で30分間インキュベートした。この反応を5μLの5%SDSおよび1mg/mLプロテインキナーゼKの添加によって止め、37℃で追加で1時間インキュベートした。続いて、中性アガロースゲル上にローディングする前に、NaOH、EDTA、スクロースおよびブロモフェノールブルーをそれぞれ最終濃度75mM、2.5%および0.05mg/mLで添加することによってサンプルをアルカリ変性させた。ゲルを展開させた後、典型的には24時間曝露させて、DNA断片化の程度の特徴が示されたオートラジオグラムを得た。トポイソメラーゼIが介在するDNA切断の値は、相対有効濃度(Relative Effective Concentration;REC)として記録した。REC値は、カンプトテシンと相対させた濃度を反映するものであり、この値は任意に0.2と仮定してもよい(すなわち、ヒトトポイソメラーゼIの存在下でプラスミドDNAにおいて同等の10%の切断を起こすことができる値である)。表1に、代表的な本発明の式Iで示される化合物、加えて比較化合物に関するこの分析の結果をに示す。このデータから、代表的な本発明の化合物は、トポイソメラーゼIを標的とすることが示される。
【0095】
【表1】

【0096】
試験Aで用いられるヒトトポイソメラーゼIを適切なトポイソメラーゼIIで置き換えることによって、類似の分析を用いて本発明の化合物のトポイソメラーゼIIが介在するDNA切断を起こす能力を評価することができる。
【0097】
本発明の化合物の細胞傷害効果を、当業界公知の薬理学的なモデルを用いて決定してもよく、例えば以下で説明される試験Bのようなモデルを用いて決定してもよい。
【0098】
試験B:細胞毒性分析(癌細胞系および排出輸送細胞系)
MTT−マイクロタイタープレートテトラゾリニウム細胞毒性分析(MTA)を用いて細胞毒性を決定した。ヒトリンパ芽球RPMI8402およびそのカンプトテシン耐性変異株細胞系のCPT−K5は、安藤俊夫博士(Dr.Toshiwo Andoh)(愛知県がんセンター研究所(Aichi Cancer Center Research
Institute),名古屋,日本)から提供された(36)。P388マウス白血病細胞系およびそのCPT耐性TOP1欠乏変異株P388/CPT45(37)は、Michael R.MatternおよびRandal K.Johnson(グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline),キングオブプロシア,ペンシルベニア州)から提供された。KB3−1細胞系およびその薬剤耐性変異株KBV−1(38)は、K.V.Chin(The Cancer Institute of New
Jersey,ニューブルンズウィック,ニュージャージー州)から提供された。KBH5.0細胞系は、以前に述べたように(21)、ヘキスト(Hoechst)33342に対する段階的な選択によってKB3−1から誘導した。96ウェルのマイクロタイタ
ープレートを用いて細胞毒性分析を行った。5%CO、37℃の懸濁液中で細胞を増殖させ、10%加熱不活性化ウシ胎児血清、L−グルタミン(2mM)、ペニシリン(100U/mL)およびストレプトマイシン(0.1mg/mL)が補充されたRPMI培地中で規則的な継代によって維持した。IC50を決定するために、細胞を様々な濃度の薬物連続的に4日間晒し、4日目の最後にMTT分析を行った。分析はそれぞれ何も薬物を含まないコントロールを用いて行った。いずれの分析も6個の複製ウェルで少なくとも2回行われた。
【0099】
以下の表2に、式Iで示される化合物である代表的な本発明の化合物と比較化合物とに関する試験Bからの実験結果を示す。これらの結果から、本発明の化合物は、腫瘍細胞系に対する細胞毒性薬として機能する可能性があることが示された。従って本発明の式Iで示される化合物は、癌(例えば白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、または、乳癌)を治療するための治療剤として、および、その他の化学療法剤に対して耐性を有する腫瘍を治療するための治療剤として有用な可能性がある。
【0100】
加えて本発明の化合物は、トポイソメラーゼIの機能をさらに調査するための薬理学的なツールとしても有用な可能性がある。
【0101】
【表2】

【0102】
本発明の化合物の活発に輸送される能力は、当業界公知の薬理学的なモデルを用いて決
定してもよく、例えば以下で説明される試験のようなモデルを用いて決定してもよい。
【0103】
また、代表的な本発明の化合物の細胞毒性も、細胞系KB3−1(親の細胞系)、KBV−1(排出輸送体MDR1を過剰発現する変異体)およびKBH5.0(BCRPを過剰発現する変異体)で試験した。表3にこれらのデータをまとめた。親の細胞系と変異体細胞系との間の相対的な細胞毒性に差があることは、化合物が排出輸送体の基質であることを示唆する可能性がある。これらのデータから、試験された全ての化合物は、程度は異なるがMDR1の基質であり得ること、および、化合物31および34は、BCRPの基質ではないことがわかる。従って本発明の式Iで示される化合物は、その他の抗癌剤、特にBCRPによって排出されやすい抗癌剤(例えばアントラサイクリン、ミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン、ビスアントロン(bisanthrone)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、および、epirubin)に対して耐性である腫瘍を治療するのに有用である可能性がある。
【0104】
【表3】

【0105】
本発明の化合物のインビボでの抗腫瘍活性は、当業界公知の薬理学的なモデルを用いて決定してもよく、例えば、以下で説明される試験Cのようなモデルを用いて決定してもよい。
【0106】
試験C:ヒト腫瘍異種移植片分析
タコニック・ファームズ社(Taconic Farms,Inc.)(ジャーマンタウン,米国ニューヨーク州)から得られたおよそ9週齢の雌NCR/NUNUマウスを用いて生物学的試験を行った。マウスを、層流式HEPAフィルターを有するマイクロアイソレーターケージング(laminar flow HEPA filtered microisolator caging)(アレンタウン・ケージング・イクイップメント社(Allentown Caging Equipment Co.),アレンタウン,ニュージャージー州,米国)で1つのケージあたり4匹で飼育した。マウスに、オートクレーブ可能なピュリナ繁殖業者用フード(Purina autoclavable
breeder chow)番号5021を給餌し、逆浸透によって適宜精製した飲用水を与えた。動物用施設に到着してから5日後、マウスの右わき腹に、0.1mLのRPMI1640培地中の1.5×10個のMDA−MB−435腫瘍細胞を皮下注射(25ゲージの針×5/8インチ)によって植え付けた。75cmのフラスコ中で、MDA−MB−435細胞をRPMI1640培地および10%ウシ胎児血清を用いて増殖させた。植え付け後19〜20日に、腫瘍は十分な大きさになった。実験群ごとに、腫瘍を有するマウスを、腫瘍体積に基づいて均一になるように同調させた。マイクロキャリパーを
用いて腫瘍を測定することによって腫瘍体積を計算した。長さ(l)は腫瘍の最大の二次元距離であり、幅(w)は、この長さに対して垂直な最大の距離である(mmで測定)。式(l×w)/2を用いて腫瘍体積を計算した。この実験におけるそれぞれのマウスの体重を個々に毎日量った。各実験群における用量の調整は、表4で指定したように、平均体重に対する処理の効果の有無に基づいて実験期間中にわたり行われた。一日おきに腫瘍体積をそれぞれ個々のマウスについて決定した。化合物31(206のα,α−ジメチル類似体)が、表4に示したように抗癌剤としての206よりも優れた許容性を示し、有意に高い効果を示した。
【0107】
【表4】

【0108】
トポイソメラーゼ阻害剤はまた、抗菌活性、抗真菌活性、抗原虫活性、駆虫活性および抗ウイルス活性を有することが知られている。従って本発明のトポイソメラーゼ阻害剤は、抗菌剤、抗真菌剤、抗乾癬薬(乾癬)抗原虫薬、駆虫薬または抗ウイルス剤としても有用である可能性がある。具体的に言えば、哺乳動物のトポイソメラーゼI毒としての活性がわずかか、またはそのような活性がないことが実証されている本発明の化合物は、類似分子の作用機序を持つ可能性があることから、活性および選択性の高い抗菌剤、抗真菌剤、抗原虫薬、駆虫薬、または、抗ウイルス剤である可能性がある。従って、本発明の所定の化合物は、哺乳動物における全身性抗菌剤、抗真菌剤、抗原虫薬、駆虫薬または抗ウイルス剤として特に有用である可能性がある。本発明はまた、哺乳動物における抗菌作用、抗真菌作用、抗原虫作用、駆虫作用または抗ウイルス作用を生じさせるのに有用な医薬品を製造するための本発明の化合物の使用も提供する。
【0109】
本明細書で用いられる用語「哺乳動物の充実性腫瘍」は、頭頸部、肺、中皮腫、縦隔、食道、胃、膵臓、肝胆道系、小腸、結腸、直腸、肛門、腎臓、尿管、膀胱、前立腺、尿道、陰茎、精巣、婦人科系の臓器、卵巣、乳房、内分泌系、皮膚の中枢神経系の癌;軟部組織および骨の肉腫;および、皮膚および眼球内で発生した黒色腫を含む。用語「血液系悪性腫瘍」は、小児白血病およびリンパ腫、ホジキン病、リンパ球および皮膚由来のリンパ腫、急性および慢性白血病、AIDSに伴う形質細胞腫瘍および癌を含む。治療に好ましい哺乳動物種は、ヒトおよび家畜である。
【実施例】
【0110】
ここで、以下の限定されない実施例によって本発明を説明する。
【0111】
実施例1:化合物31の合成
2,3−ジメトキシ−N−(2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロピル)−8,9−メチレン−ジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド(31)。無水CHCl(250mL)中の酸2(450mg,1.2mmol)(Zhu, S. Ruchelman, A.L., Zhou, N., Liu, A.A., Liu, L,F., and LaVoie, E.J., Bioorg. Med. Chem., 13, (2005) 6782-6794)の懸濁液にSOCl(18mL,247mmol)を添加し、5時間還流した。この反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、高真空下で1時間乾燥させた。固形残留物を、無水DCM(150mL)およびTEA(10mL,72mmol)の混合物中に懸濁し、2時間撹拌した。続いてそこに2−ジメチルアミノ−2−メチルプロピルアミン(7)(2.5g,21mmol)を入れて、1時間撹拌し、飽和NaHCO3溶液で希釈し、抽出した。有機層を乾燥させ、ろ過し、濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、31を84%の収率で得た;融点274〜276℃; IR (CHCl3) 3384, 1663; 1H NMR (CDCl3) δ 1.23 (s, 6H), 2.31 (s, 6H), 3.62 (d, 2H, J = 5), 4.04 (s, 3H), 4.15 (s, 3H), 6.13 (s, 2H), 7.28 (bs, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.67 (s, 1H), 7.73 (s, 1H), 8.02 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 9.72 (s, 1H);
13C NMR (CDCl3) δ 19.6, 37.4, 46.8, 55.0, 55.1, 98.2, 101.1, 105.1, 105.6, 116.4, 119.7, 119.9, 124.7, 128.5, 135.5, 140.8, 143.8, 147.6, 148.5, 148.9, 149.6,
169.2; C27H29N3O5LiのHRMS計算値: 482.2267;実測値 482.2278。
【0112】
必要なアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチルプロピルアミン(7)を以下のように製造した。
【0113】
a)−ジメチルアミノ−2−メチルプロピオニトリル(6)。水100mL中のKCN(13g,200mmol)の溶液を、ジメチルアミン塩酸塩(16.3g,200mmol)およびアセトン(6.96g,120mmol)の撹拌し冷却した懸濁液に添加した。この混合物を室温で一晩撹拌し、続いてエーテル(50mL×3)で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥させ、続いて真空中で濃縮し、生成物9.32gを無色の水のような液体として92%の収率で得た。1H NMR (CDCl3) δ 1.42 (s, 6H), 2.36 (s, 6H); 13C NMR (CDCl3) δ 26.8, 40.8, 57.2, 119.7。
【0114】
b)−ジメチルアミノ−2−メチルプロピルアミン(7)。150mLのエーテル中のLAH(3.8g,100mmol)の懸濁液に、−5℃でエーテル(12mL)中の6(5.6g,50mmol)の溶液を一滴ずつ添加した。この反応液を室温で5時間撹拌し、続いて−5℃に冷却した。4mLの水、4mLの15%NaOH、および、12mLの水を連続的に添加した。得られた混合物をろ過し、ろ液を水、ブラインで抽出し、NaSO上で乾燥させた。有機抽出物を真空中で濃縮し、続いて蒸留し、無色の水のような液体5.3gを91%の収率で得た。沸点145〜147℃; 1H NMR (CDCl3) δ 0.95 (s, 6H), 1.38 (s, 2H), 2.20 (s, 6H), 2.56 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ 19.2, 37.5, 49.9, 55.8。
【0115】
実施例2:化合物32の合成
N−(2−(ジベンジルアミノ)−2−メチルプロピル)−2,3−ジメトキシ−8,9−メチレン−ジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド(32)。DCM(15mL)中の酸2(97mg,0.26mmol)の懸濁液に、過量のSOCl(5mL,69mmol)を添加し、3時間還流した。この反応混合物を真空下で完全に乾燥するまで濃縮した。残留物をDCM(10mL)中に懸濁し、2−ジベンジルアミノ−2−メチル−プロピルアミン(28)(400mg,1.5mmol)で2時間還流した。この反応混合物を水(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、淡黄色の固体32を60%の収率で得た;融点257−259℃; IR (CHCl3) 1651; 1H NMR (CDCl3) δ 1.54 (s, 6H), 3.84 (d, 2H,
J = 5), 3.99 (s, 4H), 4.14 (s, 3H), 4.39 (s, 3H), 6.43 (s, 2H), 7.22 (m, 7H), 7.34 (m, 4H), 7.86 (s, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.98 (s, 1H), 8.28 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 10.1 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3) δ 22.8, 48.2, 53.7, 56.0, 56.3, 99.5, 102.1, 102.3, 106.4, 116.7, 121.0, 124.1, 126.0, 127.1, 128.5, 137.5, 141.1, 144.3, 149.0, 150.2, 151.0, 169.3; C39H37N3O5LiのHRMS計算値: 634.2893;実測値 634.2879。
【0116】
必要なアミン、2−ジベンジルアミノ−2−メチル−プロピルアミン(28)を以下のように製造した。
【0117】
a)2−ジベンジルアミノ−2−メチルプロパン−1−オール(13)。アセトンおよび水(4:1、100mL)中の2−アミノ−2−メチル−プロパン−1−オール(5.1mL,53.3mmol)の溶液に、臭化ベンジルおよび炭酸カリウム(14.74g,106.6mmol)を添加した。得られた反応混合物を40時間還流加熱した。この反応混合物を蒸発させ、ジクロロメタンと水とで分配した。続いて有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、蒸発させ、15gの13を98%の収率で淡黄色の固体として得た; 1H NMR (CDCl3) δ 1.13 (s, 6H), 3.02 (s, 1H), 3.47 (s, 2H), 3.76 (s, 4H), 7.17-7.28 (m, 10H)。
【0118】
b)2−(ジベンジルアミノ)−2−メチルプロピル)イソインドリン−1,3−ジオン(27)。無水THF中のトリフェニルホスフィン(1.96g,7.5mmol)、フタルイミド(1.1g,7.5mmol)、および、2−ジベンジルアミノ−2−メチルプロパン−1−オール(1.35g,5.0mmol)の溶液に、THF中のDEAD(1.3g,7.5mmol)を反応液が室温を超えないように一滴ずつ添加した。この反応液を、窒素雰囲気下で、室温で2時間撹拌した。この反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物をヘキサン中の20〜30%CHClを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで処理し、1.25gの27を得た(62.5%の収率)。
【0119】
c)2−(2−(ジベンジルアミノ)−2−メチルプロピルアミン(28)。無水エタノール(6ml)およびベンゼン(4ml)中の2−(ジベンジルアミノ)−2−メチルプロピル)イソインドリン−1,3−ジオン(1.25g,3.14mmol)の溶液に、0.54mlの酢酸(9.42mmol)、続いて50%ヒドラジン水溶液(0.46ml,9.42mmol)を添加し、この混合物を還流しながら8時間撹拌した。得られた固形残留物をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物をEtOAc中に溶解させ、1.0NのHClで2回抽出した。水層を分離し、5%NaOHで塩基性にし、EtOAcで抽出した。有機層を低圧力下で濃縮し、CHCl中の1〜2%MeOHの勾配を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、474mgの28を得た(56.4%の収率)。
【0120】
実施例3:化合物33の合成
N−(2−アミノ−2−メチルプロピル)−2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド(33)。酢酸(5mL)およびギ酸(1mL)中の32(22mg,0.03mmol)の溶液にPdブラック(20mg)を添加し、室温で2時間撹拌した。この反応混合物をセライトを通過させてろ過した、減圧下で濃縮し、10%NaOH(4mL)塩基性にし、クロロホルム(60mL)中の2%メタノールで抽出した。有機層をNaSO上で乾燥させ、ろ過し、濃縮した。粗生成物を短いカラムで精製し、淡黄色の固体155を58%の収率で得た;融点269〜271℃(度); IR (CHCl3) 3373, 1635; 1H NMR (CDCl3) δ 1.23 (s, 6H), 3.83 (bs, 2H), 4.02 (s, 3H), 4.16 (s, 3H), 6.12 (s, 2H), 7.35 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 8.09 (s, 1H), 8.51 (s, 1H), 9.80 (s, 1H); C25H25N3O5LiのHRMS計算値: 454.1954;実測値 454.1943。
【0121】
実施例4:化合物34の合成
2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11−カルボン酸2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロピルアミド(34)。10%NaOH(5mL)およびエタノール(10mL)中の酸3(15mg,0.037mmol)(米国特許第7,208,492号)の混合物を撹拌しながら1時間加熱還流した。この反応混合物を2NのHClでpHに酸性化し、続いて乾燥するまで蒸発させた。残留物を10mLのジクロロメタンに懸濁し、0.5mLの塩化チオニルを添加した。得られた反応混合物を2時間還流し、続いて濃縮した。反応残留物を再度ジクロロメタンに懸濁し、0.5mLのトリエチルアミンを添加した。15分後、0.5mLの2−ジメチルアミノ−2−メチルプロピルアミン(7)を添加し、得られた反応混合物を1時間還流した。有機溶媒および過量のアミンを減圧下で除去し、残留物を20:1のCHCl/MeOH中でクロマトグラフィーにかけ、11mgのオフホワイト色の粉末を62%の収率で得た;融点222〜225℃; IR (KBr) 1642; 1H NMR (CDCl3) δ 1.26 (s, 6H), 2.15 (s, 6H), 3.55 (d, 2H, J=4.8), 4.05 (s, 3H), 4.15 (s, 3H), 6.10 (s, 2H), 6.93 (br, 1H), 7.25 (s, 1H), 7.50 (s, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.97 (s, 1H), 8.05 (s, 1H), 9.85 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3) δ 19.8, 37.2, 47.8, 54.7, 55.2, 55.3, 100.9, 101.2, 101.8, 106.3, 107.2, 118.6, 120.6, 124.9, 125.2, 126.7, 129.6, 129.7, 142.6, 144.5, 147.0, 148.1, 149.3, 150.5, 171.0; C27H29N3O5HのHRMS計算値: 476.2185;実測値 476.2180。
【0122】
実施例5:化合物42の合成
2,3−ジメトキシ−N−(3−(ジメチルアミノ)−3−メチルブチル)−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド(42)。使用されたアミンが2−ジメチルアミノ−2−メチルブチルアミン(40)であったことを除き、34と類似の手順を用いて、化合物42を酸2から合成した。淡黄色の固体17mgを71%の収率で得た;融点228〜230℃; IR (KBr) 1636; 1H NMR (CDCl3) δ 1.54 (s, 6H), 2.33 (t, 2H, J = 8.4), 2.83 (s, 6H), 3.75 (t, 2H, J = 8.4), 4.03 (s,
3H), 4.13 (s, 3H), 6.14 (s, 2H), 7.32 (s, 1H), 7.81 (s, 1H), 7.92 (s, 1H), 7.95
(s, 1H), 8.34 (s, 1H), 9.70 (s, 1H); 13C NMR (CDCl3) δ 20.5, 34.6, 35.4, 36.7,
54.9, 55.2, 63.5, 97.4, 98.5, 101.3, 101.7, 102.7, 105.3, 116.5, 119.5, 120.3, 123.0, 136.3, 137.4, 141.8, 148.6, 149.3, 150.2, 168.8; C28H31N3O5HのHRMS計算値:
490.2336;実測値 490.2339。
【0123】
必要なアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチルブチルアミン(40)を以下のように製造した。
【0124】
a)4−クロロ−N,N,2−トリメチルブタン−2−アミン塩酸塩(37)。第一アミン36(3g,29mmol)に、ギ酸(2.86mL,73mmol)およびホルマリン(5.43mL,73mmol)をゆっくり添加した。得られた反応混合物を5時間加熱還流し、次に 室温に冷却し、過量のKOHで塩基性にした。この混合物をエーテル(100mL×2)で抽出した。エーテル層をNaSO上で乾燥させ、濃縮し、無色の油を得た。この油(1g,7.63mmol)をクロロホルム(15mL)中に溶解させ、塩化チオニル(2.78mL,38.2mmol)を添加した。この反応混合物を2時間還流加熱し、乾燥するまで蒸発させ、続いてエーテルで粉砕した。得られたオフホワイト色の固体(1.35g,95%の収率)を真空中で一晩乾燥させた。1H NMR (CDCl3)
δ 1.41 (s, 6H), 2.20 (t, 2H, J = 8.0), 2.65 (s, 3H), 2.68 (s, 3H), 3.62 (t, 2H, J = 8.0); 13C NMR (CDCl3) δ 21.9, 37.6, 38.8, 39.6, 63.7。
【0125】
b)2−ジメチルアミノ−2−メチルブチルアミン(40)。DMF(10mL)中の
37(1g,5.4mmol)の溶液にカリウムフタルイミド(2g,10.8mmol)を添加し、得られた反応混合物を70℃で24時間加熱した。この反応混合物を1mLの水で急冷し、乾燥するまで濃縮した。残留物をクロロホルム中に溶解させ、水で洗浄した、2NのHClで抽出し、続いて塩基性にした。沈殿を再度クロロホルム(100mL×2)で抽出した。最終的に有機溶液の濃縮物から黄色の油700mgを50%の収率得た。この黄色の油(700mg,2.7mmol)をエタノール(100ml)中でヒドラジン(0.8mL,16.2mmol)と共に60℃で18時間加熱した。この反応混合物を冷却し、ろ過し、ろ液を慎重に濃縮して、無色の油200mgを57%の収率で得た。1H NMR (CDCl3) δ 1.01 (s, 6H), 1.47 (s, br, 1H), 1.56 (t, 2H, J = 8.0), 2.22 (s, 6H), 2.76 (t, 2H, J = 8.0); 13C NMR (CDCl3) δ 21.9, 37.1, 37.6, 42.5, 54.4. C7H18N2HのHRMS計算値: 131.1543;実測値 131.1549。
【0126】
実施例6:化合物43の合成
2,3−ジメトキシ−N−(4−(ジメチルアミノ)−4−メチルペンチル)−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド(43)。使用されたアミンが2−ジメチルアミノ−2−メチルペンチルアミン(41)であったことを除き、34と類似の手順を用いて、化合物43を酸2から合成した。淡黄色の固体19mgを79%の収率で得た;融点235〜237℃; IR (KBr) 1623; 1H NMR (CDCl3) δ 1.32 (s, 6H), 1.79 (m, 4H), 2.52 (s, 6H), 3.63 (m, 2H), 3.99 (s, 3H), 4.08 (s, 3H), 6.06 (s, 2H), 7.35 (s, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.92 (s, 1H), 8.04 (s, 1H), 9.67 (s, 1H); C29H33N3O5HのHRMS計算値: 504.2480;実測値 504.2478。
【0127】
必要なアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチルペンチルアミン(41)を以下のように製造した。
【0128】
2−ジメチルアミノ−2−メチルペンチルアミン(41)。アセトニトリル中のKCN(1.55g,23.8mmol)の溶液に18−クラウン−6(229mg)を添加し、続いて化合物37(1.3g,8.1mmol)を添加した。この反応混合物を一晩加熱還流し、濃縮した。残留物をクロロホルムと水とで分配し、有機溶媒を濃縮し、黄色の油400mgを38%の収率で得た。150mLのエーテル中のLAH(380mg,10mmol)の懸濁液に、以前に得られた油(350mg,2.7mmol)のエーテル(2mL)中の溶液を−5℃で一滴ずつ添加した。この反応液を室温で5時間撹拌し、続いて−5℃に冷却した。0.4mLの水、0.4mLの15%NaOH、および、1.2mLの水を連続的に添加した。得られた混合物をろ過し、ろ液を水、ブラインで抽出し、NaSO上で乾燥させた。有機抽出物を真空中で濃縮し、続いて蒸留して、無色の水のような液体320mgを82%の収率で得た。1H NMR (CDCl3) δ 1.00 (s, 6H), 1.40
(m, 2H), 1.46 (m, 2H), 2.20 (s, 6H), 2.68 (m, 2H)。
【0129】
実施例7:化合物44の合成
2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11−カルボン酸3−(ジメチルアミノ)−3−メチルブチルアミド(44)。使用されたアミンが2−ジメチルアミノ−2−メチルブチルアミン(40)であったことを除き、34と類似の手順を用いて、化合物44を酸3から合成した。淡黄色の固体17mgを70%の収率で得た;融点233〜235℃; IR (KBr) 1641; 1H NMR (CDCl3) δ 1.49 (s, 6H), 2.24 (m, 2H), 2.79 (s, 6H), 3.59 (m, 2H), 4.00 (s, 3H), 4.08 (s, 3H), 6.13 (s, 2H), 7.25 (s, 1H), 7.35 (s, 1H), 7.62 (s, 1H), 7.88 (s, 1H), 8.08 (s, 1H), 9.72 (s, 1H); C28H31N3O5HのHRMS計算値: 490.2336;実測値 490.2327。
【0130】
実施例8:化合物45の合成
2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11
−カルボン酸4−(ジメチルアミノ)−4−メチルペンチルアミド(45)。使用されたアミンが2−ジメチルアミノ−2−メチルペンチルアミン(41)であったことを除き、34と類似の手順を用いて、化合物45を酸3から合成した。淡黄色の固体15mgを62%の収率で得た;融点239〜242℃; IR (KBr) 1649; 1H NMR (CDCl3) δ 1.42 (s, 6H), 1.87 (m, 4H), 2.63 (s, 6H), 3.61 (m, 2H), 4.07 (s, 3H), 4.20 (s, 3H), 6.22 (s, 2H), 7.49 (s, 1H), 7.84 (s, 1H), 8.04 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 8.46 (s, 1H), 9.83 (s, 1H); C29H33N3O5HのHRMS計算値: 504.2480;実測値 504.2481。
【0131】
実施例9:以下で、ヒトにおける治療または予防的使用のための式Iで示される化合物(「化合物X」)を含む代表的な製剤の投薬形態を説明する。
【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】

【0136】
【表9】

【0137】
【表10】

【0138】
上記の製剤は製薬分野において周知の従来の手法により得てもよい。
【0139】
全ての公報、特許および特許文書は参照により本明細書に包含させ、個々に参照により本明細書に包含させたのと同等とする。様々な具体的な好ましい実施態様および技術を参照しながら本発明を説明した。しかしながら、当然のことながら、本発明の本質および範囲内に含まれるのであれば多くのバリエーションおよび改変が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中:
AおよびBの一方は、−C(O)NH(CRCRNRであり、他方は、Hであり;
およびRは、それぞれ独立して、(C〜C)アルキルであるか;または、RおよびRは、それらが結合している炭素と一緒に、3〜6員環のシクロアルキルを形成し;
およびRは、それぞれ独立して、Hまたは(C〜C)アルキルであり、ここで(C〜C)アルキルは、任意に、アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい;または、RおよびRは、それらが結合している窒素と一緒に、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノを形成し;
CRそれぞれに関して;RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはCHであり;
nは、1、2または3であり;
Xは、−OCHであり、Yは、−ORであるか;または、Yは、−OCHであり、Xは、ORであり;
は、H、CH、−C(O)R、−C(O)OR、または、−C(O)NRであり;
は、(C〜C)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、または、(C〜C)シクロアルキルであり;
は、(C〜C)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、または、(C〜C)シクロアルキルであり;および、
およびRは、それぞれ独立して、H、アリール、ヘテロアリール、アリール(アルキル)、ヘテロアリール(アルキル)、または、(C〜C)アルキルであるか;または、RおよびRは、それらが結合している窒素と一緒に、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノを形成する]
で示される化合物またはそれらの塩またはプロドラッグ。
【請求項2】
Aが−C(O)NH(CRCRNRであり、BがHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Bが−C(O)NH(CRCRNRであり、AがHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
nが1または2である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
nが1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
CRがそれぞれCHである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
およびRがそれぞれ独立して(C〜C)アルキルである、請求項1〜6のい
ずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
およびRがそれぞれメチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
およびRがそれぞれ独立してHまたは(C〜C)アルキルであり、ここで(C〜C)アルキルは、任意に、アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
およびRがそれぞれ独立してHまたは(C〜C)アルキルである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
およびRがそれぞれ(C〜C)アルキルである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
およびRがそれぞれメチルである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Aが、−C(O)NHCHC(CHN(CH、−C(O)NH(CHC(CHN(CH、または、−C(O)NH(CHC(CHN(CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Bが、−C(O)NHCHC(CHN(CH、−C(O)NHCHC(CHN(CHPh)、−C(O)NHCHC(CHNH、−C(O)NH(CHC(CHN(CH、または、−C(O)NH(CHC(CHN(CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Xが−OCHであり、Yが−ORである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
Yが−OCHであり、Xが−ORである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
が、−C(O)R、−C(O)OR、または、−C(O)NRである、請求項15または16に記載の化合物。
【請求項18】
およびRが(C〜C)アルキルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
およびRがそれぞれ独立してHまたは(C〜C)アルキルである、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項20】
がCHである、請求項15または16に記載の化合物。
【請求項21】
がHである、請求項15または16に記載の化合物。
【請求項22】
以下の化合物、もしくは、それらの塩またはプロドラッグ:
2,3−ジメトキシ−N−(2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロピル)−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;
または、N−(2−(ジベンジルアミノ)−2−メチルプロピル)−2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;
または、N−(2−アミノ−2−メチルプロピル)−2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;
または、2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11−カルボン酸2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロピルアミド;
または、2,3−ジメトキシ−N−(3−(ジメチルアミノ)−3−メチルブチル)−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;
または、2,3−ジメトキシ−N−(4−(ジメチルアミノ)−4−メチルペンチル)−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−12−カルボキサミド;
または、2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11−カルボン酸3−(ジメチルアミノ)−3−メチルブチルアミド;または、
2,3−ジメトキシ−8,9−メチレンジオキシベンゾ[i]フェナントリジン−11−カルボン酸4−(ジメチルアミノ)−4−メチルペンチルアミド。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグ、および、医薬的に許容される賦形剤、希釈剤またはキャリアーを含む組成物。
【請求項24】
哺乳動物に、トポイソメラーゼを調節する作用をもたらすのに有効な量の請求項1〜22のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、このような治療が必要な哺乳動物においてトポイソメラーゼ活性を調節する方法。
【請求項25】
インビトロまたはインビボで、前記癌細胞を、前記癌細胞の増殖を阻害するのに有効な量の請求項1〜22のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物、もしくはそれらの塩またはプロドラッグと接触させることによって癌細胞増殖を阻害することを含む方法。
【請求項26】
哺乳動物に、有効量の請求項1〜22のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグを投与することを含む、哺乳動物における癌を治療するための治療方法。
【請求項27】
前記癌が、白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、または、乳癌である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
薬物療法で使用するための、請求項1〜22のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項29】
哺乳動物における癌治療に有用な医薬品を製造するための、請求項1〜22のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物、または、それらの医薬的に許容される塩の使用。
【請求項30】
前記癌が、白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、または、乳癌である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
哺乳動物における予防的または治療的な癌治療で使用するための、請求項1〜22のいずれか一項に記載の式Iで示される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩もしくはプロドラッグ。
【請求項32】
前記癌が、白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、中枢神経系癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、または、乳癌である、請求項31に記載の使用。

【公表番号】特表2012−519705(P2012−519705A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553137(P2011−553137)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026381
【国際公開番号】WO2010/102219
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(504303344)ラットガーズ,ザ・ステート・ユニバーシティ・オブ・ニュージャージー (3)
【出願人】(509011466)ユニバーシティ・オブ・メディシン・アンド・デンティストリー・オブ・ニュージャージー (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MEDICINE AND DENTISTRY OF NEW JERSEY
【Fターム(参考)】