説明

癌治療のためのDsg2アンタゴニスト

【課題】 本発明は、癌治療に用いる薬剤に関するものである。
【解決手段】 用いる薬剤はDsg2に拮抗するアンタゴニストであり、前記アンタゴニストはDsg2のEC2ドメイン中のアミノ酸配列TQDVFVGSVEELSAAHTLVMKINATDADEPNTLNSKISYR(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節する。さらに本発明は、特異的なポリペプチドおよび医薬製剤をも含む。さらに本発明は、Dsg2アンタゴニストをスクリーニングする方法をも含む。スクリーニングの対象となる前記アンタゴニストは、Dsg2のEC2ドメイン中のアミノ酸配列TQDVFVGSVEELSAAHTLVMKINATDADEPNTLNSKISYR(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療に用いる薬剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌に分類される一連の疾患においては、一群の細胞が無制御的に増殖(通常の範囲を超えて分裂)し、浸潤(隣接組織に侵入して破壊)し、場合によっては転移(リンパ液または血液を通じた体内の別部位への拡散)を起こす。これら3つの悪性形質は、癌と良性腫瘍とを分つものである。良性腫瘍は自己寛解的であって、浸潤や転移を行わない。大多数の癌は腫瘍形成するものであり、腫瘍を形成しないもの(例えば白血病)は少数である。
【0003】
癌をもたらす要因には、外因性因子(煙草、感染性生物、化学物質、および放射線)も内因性因子(遺伝性変異、ホルモン、免疫状態、および代謝に起因する変異)の両方が存在する。これらの因子は場合によっては共同して作用し、あるいは連続的に作用することで、発癌を誘導または促進し得る。癌の罹患年齢は全年齢的であって胎児にさえも及び得るが、大多数の癌種のリスクは加齢に伴い増大する。ヒト死因のうち、癌は13%を占める。全世界における2007年の癌死亡者数は760万人であった(米国癌学会による)。通常の癌診断には、病理医による生検組織標本の組織学的検査が必要である。ただし悪性腫瘍の第一徴候は、症状またはX線画像における異常であり得る。
【0004】
ほとんど全ての癌の原因は、悪性変換細胞における遺伝物質の異常である。前記異常の原因は発癌物質の作用であり得る(例えば煙草煙、放射線、化学物質、または感染性因子)。その他の癌促進性の遺伝子異常は、DNA複製中のエラーによってランダムに獲得され得る。あるいは遺伝子異常は遺伝性であり得、その場合には出生時に全細胞中に存在する。通常の癌の遺伝力には、発癌物質と宿主ゲノムとの複雑な相互作用が影響する。ますます認識されつつあるところでは、発癌の遺伝学的機序の新側面であるDNAメチル化やmicroRNA等も同様に重要である。
【0005】
通常の癌に見られる遺伝子異常は、2つの大きな遺伝子群に影響を及ぼす。通常の癌細胞内では癌促進性の発癌遺伝子が活性化しており、これら癌細胞に新たな細胞特性を付与する(例えば増殖および分裂の亢進、プログラム細胞死に対する抵抗性、正常な組織境界の侵犯、および異種組織環境における定着能)。また、癌細胞内では腫瘍抑制遺伝子が不活性化しており、その結果としてそれらの細胞は正常機能(例えば正確なDNA複製、細胞周期の制御、組織内における細胞配向性および細胞接着性、ならびに免疫系防御細胞との相互作用)を喪失する。
【0006】
大多数の癌は治療することができ、ある場合には治癒するが、それは具体的な癌の種類、位置、および病期に依存する。診断後の癌治療には、通常は外科手術、化学療法、および放射線治療の併用療法を用いる。研究の進展によって、癌の種類に対する治療法の特異性は増しつつある。昨今、ある種の癌においては、検出可能な分子異常に対して特異的に作用する標的治療薬の開発が大幅に進んでいる。かかる標的治療薬は、正常細胞に対するダメージを最小化する。癌患者の予後に最も影響を与えるのは、癌の種類および病期(または重症度)である。さらに、組織学的分化度および特異的分子マーカーの発現も、予後診断および治療計画の策定に有用であり得る。
【0007】
転移とは、ある器官または身体部位から異なる非隣接器官または身体部位への疾病(例えば癌)の拡散である。癌細胞は原発腫瘍から離脱、漏出、または放散して、リンパ管および血管に侵入して血流中を循環し、異なる身体部位の正常組織に定着して増殖することができる。転移は(良性腫瘍に対する)悪性腫瘍の三大特徴の1つである。大多数の腫瘍およびその他の新生物は転移可能であるが、転移の程度は様々である(例えばグリオーマおよび基底細胞癌の転移頻度は低い)。腫瘍細胞が転移して生じた新たな腫瘍は二次腫瘍または転移性腫瘍と呼称され、二次腫瘍の細胞は原発腫瘍と同様の性質を示す。すなわち、例えば乳癌が肺に転移する場合には、二次腫瘍を構成する細胞は異常な肺細胞ではなく異常な乳房細胞である。この肺内腫瘍の呼称は「転移性乳癌」であって、「転移性肺癌」ではない。
【0008】
治療法および生存率は、癌が局所性か否か、あるいは他部位に進展しているか否かによって異なる。癌が他組織および他器官に進展する場合には、患者の生存率は低下し得る(ただし、ある種の非浸潤癌(すなわち白血病および脳癌)は致命的であり得る)。転移癌の治療手段には、放射線手術、化学療法、放射線治療、生物学的療法、ホルモン療法、外科手術、またはこれらの併用療法があり得る。治療法の選択は、通常は原発癌の種類、転移腫瘍サイズおよび転移部位、患者の年齢および一般的健康状態、ならびに各種治療法の適用歴に依存する。CUP(原発不明癌)と診断された患者において原発腫瘍位置が不明な場合でも、当該疾病を治療することは可能である。しかし、現行可能な治療選択によって転移癌が治癒することはほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の背景に鑑みれば明らかであるように、癌治療に使用可能な新規薬剤を見出すことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上皮組織、心筋組織、およびその他の組織における細胞間接着結合の主要なタイプの1つとして、デスモソームがある。デスモソームは複数の膜貫通型糖タンパク質を含有し、それら糖タンパク質はそれぞれデスモソームカドヘリン、デスモコリン(Dsc)、およびデスモグレイン(Dsg)と呼称される。各タンパク質は3つ以上の遺伝子アイソフォームとして存在し、これらのアイソフォームは組織特異的発現パターンを示す。
【0011】
デスモソームを有する全組織では、Dsg2が広範に発現している。Dsg2の細胞外ドメインは4つのカドヘリンリピートドメイン(EC1からEC4)を含有し、各ドメインの長さは約110アミノ酸である。細胞外リピートドメインEC1内には細胞間接着を仲介する細胞接着・認識(CAR)部位が存在する。そのことから、Dsg2は膜貫通型の細胞接着分子と見なされている。さらに最近の研究によれば、Dsg2は単なる細胞接着分子ではないことを示している。Dsg2は血管新生の促進およびアポトーシスシグナル伝達に関与し、マトリックスメタロプロテアーゼ類(MMPs)の基質である。
【0012】
本発明者らは、Dsg2が細胞の上皮間葉転換(EMT)の制御に重要な役割を果たすことを見出した。EMTは細胞の発生プログラムの1つであって、細胞接着の喪失と細胞移動性の増大とを特徴とする。EMTは、中胚葉形成や神経管形成等の多数の発生プロセスに必須である。それに加えて、EMTは腫瘍の進行、浸潤、および転移において中心的な役割を果たす。癌細胞はEMTを行って細胞接着を喪失し、間葉系特性を獲得するが、これらのうち一部は浸潤および転移に必要である。
【0013】
本発明の第一の態様では、癌予防薬または癌治療薬として用いるDsg2アンタゴニストを提供する。前記アンタゴニストは、Dsg2のEC2ドメイン中のアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節する。
【0014】
上記のように、本発明者らはDsg2がEMTの制御に重要な役割を果たすことを明らかにした。本発明者らは(1)肝細胞増殖因子/散乱因子(HGF/SF)を用いてEMTを誘導するとデスモソーム接着因子の大多数が下方制御されるが、Dsg2は下方制御されない。(2)Dsg2をトランスフェクションした上皮細胞をHGF/SFで処理すると間葉様形態を呈し、細胞移動性および浸潤性の増大を示す。(3)Dsg2のEC2ドメインに対する抗体は、HGF/SFで誘導したEMTをインビトロでブロックする、ことを明らかにした。本発明者らのさらなる発見によれば、Dsg2のEC2ドメインに対する抗体は、癌細胞(例えばMCF7ヒト乳癌細胞、LNCaPヒト前立腺癌細胞、およびKM12ヒト大腸癌細胞)の浸潤を阻害する。本発明者らはいかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、Dsg2は細胞内で機能してEMTを促進できることを提唱する。
【0015】
国際公開第99/057149号パンフレットの著者は、Dsg2のEC2ドメインに由来する細胞接着・認識(CAR)部位を調整剤として用いることで、癌の治療および/または転移阻害が可能であることを示唆している。前記著者の主張によれば、かかる調整剤は、カドヘリンを介する細胞接着を阻害すると考えられる。しかし意外にも本発明者らは、Dsg2のEC2ドメイン中のCAR部位には、Dsg2のEMT促進活性を仲介する機能はないことを見出した。それとは対照的に、Dsg2のEC2ドメイン中の非CAR配列は、Dsg2のEMT促進活性を制御する。Dsg2のEC2ドメイン中の非CAR配列に由来するペプチド断片類は、EMTおよび細胞浸潤をインビトロでブロックする。CAR配列を除去したDsg2のEC2ドメインに対して作製した抗体も同様である。このように本発明者らは、Dsg2のEC2ドメイン中の非CAR配列は、Dsg2のEMT促進活性を制御することを示した。本発明以前には、Dsg2のEC2ドメイン中の非CAR配列にはいかなる機能も帰属されていなかった。この非CAR配列は、CAR配列に対するホモロジーを持たない。
【0016】
Dsg2のEC2ドメイン中の非CAR配列に由来するペプチド断片類と、CAR配列を除去したDsg2のEC2ドメインに対して作製した抗体類は、Dsg2のEMT促進機能に拮抗する作用を持つ。すなわち前記の(Dsg2のEC2ドメイン中の)非CAR配列の機能に拮抗するアンタゴニスト類は、癌予防剤または癌治療剤として明らかに非常に有用である。これらの薬剤は、具体的には癌細胞のEMTならびにそれに伴う浸潤性および転移性を低下させる。これらの発見は新規であって、Dsg2およびEMTにDsg2が果たす役割に関する過去の知見からは予測不可能であった。
【0017】
Dsg2(デスモグレイン2)は、ヒトの膜貫通型細胞接着タンパク質の1つである。そのタンパク質構造の概略図を図1に示す。Dsg2のアミノ酸配列の一例は配列番号2に記載する。その他の例は、複数のタンパク質データベースに登録されている(例えばNCBI登録番号NP_001934.2)。
【0018】
Dsg2のEC2ドメイン(細胞外ドメイン2)は配列番号2の配列のアミノ酸位置161〜273であって、その配列は

(配列番号3)に記載する。
【0019】
Dsg2のEC2ドメイン中の提唱されたCAR配列は配列番号2の配列のアミノ酸位置210〜218であって、その配列は

(配列番号4)に記載する。
【0020】
本発明者らは、Dsg2のEMT促進活性の制御に関与する非CAR配列を、Dsg2のEC2ドメイン中に同定した。この領域は配列番号2の配列のアミノ酸位置160〜199であって、その配列は

(配列番号1)に記載する。
【0021】
本発明の第一の態様は、Dsg2に拮抗するアンタゴニストに関する。このアンタゴニストは、Dsg2のEC2ドメイン中のアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節するものである。
【0022】
用語「Dsg2のEC2ドメイン中のアミノ酸配列(配列番号1)またはその断片もしくはバリアント」には、Dsg2のEMT促進機能を制御するために前記アンタゴニストが機能調節する対象として、

(配列番号1)のアミノ酸配列が包含される。配列番号1の「その断片もしくはバリアント」には、前記アンタゴニストが影響を与える対象として、配列番号1で規定するEC2ドメインの部分またはその配列のバリアントが包含される。
【0023】
前記ペプチドの「断片」は、好ましくは、完全な前記親ペプチドの全長アミノ酸のうち一部分を含んでなる。前記断片は、親ペプチドの生物活性(この場合はDsg2のEMT促進機能を制御する能力)を保持していることが好ましい。
【0024】
前記ペプチドの「バリアント」が指すものには、1つ以上の位置にアミノ酸の挿入、欠失、または置換(保存的置換もしくは非保存的置換)を行ったペプチドが含まれる。ただし、これらの変更の結果生ずるタンパク質の基本的性質(例えばDsg2のEMT促進活性を制御する能力、タンパク質相互作用、熱安定性、および一定のpH範囲での活性(pH安定性))が、大きく変わらないものとする。前記の「大きく」とは、バリアントの性質が変化している可能性があっても、それが親タンパク質の性質に照らして非自明性であるとは言えないと当業者が認識することを意味する。
【0025】
前記の「保存的置換」の組み合わせは、例えばGly/Ala、Val/Ile/Leu、Asp/Glu、Asn/Gln、Ser/Thr、Lys/Arg、およびPhe/Tyrである。
【0026】
かかるバリアントを作製するためには、タンパク質工学的手法および部位特異的変異導入法を用いてもよい。これらの方法は当業者には公知である。
【0027】
本明細書の実施例が提供するアッセイは、当業者が直ちに使用してEMTおよび細胞浸潤に対するDsg2の効果を測定することが可能である。これらのアッセイは「EMT阻害アッセイ」および「細胞浸潤アッセイ」と呼称する。本発明者が示すように、これらのアッセイを用いることで、Dsg2を介するEMTおよび細胞浸潤に対する薬剤類の拮抗能力を測定することができる。
【0028】
用語「アンタゴニスト」には、Dsg2ポリペプチドの生理作用に(好ましくはEMT促進機能に影響を与えることで)干渉する任意の物質が包含される。本発明の態様は、好ましくは治療有効量のアンタゴニストを提供する。本明細書における「治療有効量の」アンタゴニストとは、アンタゴニスト投与患者の癌予防または癌治療のために十分量のアンタゴニストを指す。
【0029】
本発明の第一の態様の一実施形態では、前記アンタゴニストはDsg2のEMT促進機能を低下させる。これは好ましくは、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を低下させることによる。前記の作用はDsg2のEMT促進機能の低下として測定可能である。好ましくは、アンタゴニストによる前記の機能低下は10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上である。本明細書の実施例に記載の「EMT阻害アッセイ」および「細胞浸潤アッセイ」を用いることで、Dsg2のEMT促進機能を測定し、同活性に対して前記アンタゴニストが及ぼす効果を測定することができる。
【0030】
Dsg2のEC2ドメイン中のアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能をアンタゴニストが調節し得る方法が多様であることは、理解されよう。
【0031】
例えば本発明の一実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列に対してアンタゴニストが特異的に結合する。かかるアンタゴニストは、Dsg2のEMT促進活性を制御するEC2中の非CAR領域を妨げる。「特異的に結合」には、配列番号1のアミノ酸配列の一部分のアミノ酸残基に対してアンタゴニストが結合することが包含される。すなわちDsg2のEMT促進活性を制御するEC2中の非CAR領域を妨げるためには、アンタゴニストは必ずしも全アミノ酸残基に結合しなくてもよい。
【0032】
本発明のさらなる実施形態のアンタゴニストは、配列番号1のアミノ酸の全体もしくは一部分またはそれらのアミノ酸誘導体もしくはアナログを包含する。かかるアンタゴニストは、EC2中の非CAR領域を介する機能を阻害する競合的阻害剤となり得る。
【0033】
本発明のさらなる実施形態のアンタゴニストは、EC2中の非CAR領域と相互作用する分子に対して結合する。これはアンタゴニストがDsg2のEMT促進活性を制御する機能の一部である。
【0034】
アンタゴニストの例としては、ポリペプチドに結合して前記機能に影響を及ぼす化学的リガンドが挙げられる。より広義には、前記ポリペプチド類の1つに結合してポリペプチドの正常機能を妨げる抗体または抗体断片も包含される。前記アンタゴニストはポリペプチドの細胞内局在を変えるものであってもよい。これらによって機能するポリペプチドの量が低下する。
【0035】
好ましくは、本発明の第一の態様のアンタゴニストは、抗体、抗体断片、抗体の誘導体、ペプチド、ペプチド模倣体、または小分子である。
【0036】
好ましい前記抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。
【0037】
ポリペプチド活性の調整剤としての抗体の用途は公知である。事実、医療用途(例えば複数種類の癌)に用いられる抗体系の治療薬はその数を増しつつある。本明細書の実施例では、EC2中のCAR配列を除去したDsg2ポリペプチドに対して結合可能なポリクローナル抗体の実例を提供する。すなわちこの抗体は、本発明の第一の態様のアンタゴニストである。
【0038】
抗体類は、動物への抗原注射によってポリクローナル血清として作製してもよい。好ましいポリクローナル抗体を作製するには、当分野の公知技術を用いて動物(例えばウサギ)に抗原接種してよい。
【0039】
ヒト患者の治療用途に用いるポリクローナル抗体は、配列番号1のアミノ酸配列に由来する種々のペプチドに対して作製し得る。例えば本明細書の実施例では、

(配列番号5)の配列に対するポリクローナル抗体を作製した。前記配列は、CAR配列を除去したDsg2のEC2ドメインの一部分である。
【0040】
あるいは、本発明の抗体はモノクローナル抗体であってもよい。かかる抗体の作製には従来のハイブリドーマ法を用いてもよい。本発明のアンタゴニストとして用いるモノクローナル抗体を作製するためには、ポリクローナル血清の作製に使用したものと同一の抗原を使用してもよい。これはすなわち、

(配列番号5)の全長またはその断片もしくはバリアントである。
【0041】
抗体または免疫グロブリンタンパク質の最も単純な形態は、IgGクラスの抗体に代表されるY字型分子である。前記分子は、4つのポリペプチド鎖(2本の等しい重鎖(H鎖、各50kDa)と2本の等しい軽鎖(L鎖、各25kDa))からなる。各軽鎖はジスルフィド結合と非共有結合とによって重鎖の1つと結合している(H−L結合)。同様のジスルフィド結合および非共有結合によって、2個の等しいH−L鎖のH鎖同士が架橋して、免疫グロブリンの基本である4本鎖構造(H−L)が形成される。
【0042】
免疫グロブリン軽鎖は、1個のVドメイン(V)と1個の定常ドメイン(C)とからなる。重鎖は1個のVドメインと3個または4個のCドメイン(C1、C2、C3、およびC4)とからなる(H鎖イソタイプにより異なる)。
【0043】
各軽鎖または重鎖のN末端領域に存在する可変ドメイン(Vドメイン)は配列多様性に富み、抗原に対する特異的結合性を担う。抗原に対する抗体の特異性を実際に規定するのは、超可変ループまたは相補性決定領域(CDRs)として知られるV領域中のアミノ酸配列である。H鎖V領域およびL鎖V領域のそれぞれには3個のCDRsが存在し、それら6個のCDRsが組み合わされて抗体中の抗原結合部位を形成する。V領域内のその他のアミノ酸の多様性は低く、超可変ループを支持する役割を持ち、フレームワーク領域(FRs)と呼称される。
【0044】
Vドメイン以外の領域(Cドメイン)の配列は比較的一定である。本発明の抗体類の性質を決定する特徴がVドメインおよびVドメインであることは理解されよう。さらに、CドメインおよびCドメインそのものの性質は、総体的に本発明にとって重要でないことも理解されよう。実際に、本発明で用いる好ましい抗体間では、CドメインおよびCドメインが大きく異なっていてもよい。のみならず、好ましい抗体の機能性誘導体は、Cドメインを含まずに可変ドメインを含んでなってもよい(例えばscFV抗体)。この詳細は後述する。
【0045】
本発明の第一の態様の有用なアンタゴニストと考えられる好ましい抗体類は、Vドメイン(第一ドメイン)およびVドメイン(第二ドメイン)を保持してもよい。それらの誘導体の配列相同性は75%であってもよく、より好ましくは90%であってよく、最も好ましくは95%以上である。配列バリエーションの大多数はフレームワーク領域(FRs)内に存在し得、抗体およびその機能性誘導体のCDRs配列が最大の保存性を持つべきことは理解されよう。
【0046】
本発明の第一の態様で用いるアンタゴニストには多数の好ましい実施形態があり、それらは可変ドメインと定常ドメインとの両方を持つ分子に関する。しかしながら、抗体断片類(例えばscFV抗体またはFAbs)も本発明に包含されることは理解されよう。これらは、本質的に抗体の定常領域を含まずに可変領域を含んでなる。
【0047】
本発明の第一の態様の有用なアンタゴニストと考えられるscFV抗体断片は、Dsg2の配列番号1に対して作製した抗体の、VドメインとVドメインとの全体を含んでいてもよい。VドメインとVドメインとは適当なリンカーペプチドを介して繋がってもよい。
【0048】
ある動物種で作製した抗体(特にmAbs)を用いて別の動物種を治療する場合には、複数の大きな障害が存在することが知られている。例えばヒトに対して適用したマウス抗体は、血清中循環半減期が短くなる傾向があり、かつ治療患者の免疫系によって外来タンパク質として認識され得る。この結果、無用のヒト抗マウス抗体(HAMA)応答が引き起こされ得る。これは抗体の排除を増強し、抗体の治療効果をブロックし、過敏症反応を誘導するため、抗体の頻繁な投与が要求される場合には特に問題となる。これらのファクターはマウスモノクローナル抗体のヒト治療用途を制限することから、ヒト化抗体を開発するための抗体工学の発達が促されてきた。
【0049】
従って、ヒト患者の癌予防薬または癌治療薬として抗体を用いる際には、非ヒト由来の抗体およびその断片はヒト化することが好ましい。かかる抗体は本発明の目的に適う抗体誘導体と見なされる。
【0050】
抗体のヒト化は、V領域配列(例えば非ヒトハイブリドーマが産生したモノクローナル抗体由来)とヒト抗体由来のC領域配列(および理想的にはV領域由来FRs)とを接合することによって行う。これにより得られる「設計」抗体は、親抗体である非ヒト抗体よりも低免疫原性であって、それゆえに臨床用途への適合性が高い。
【0051】
ヒト化抗体はモノクローナルキメラ抗体であってもよい。その場合には、組み換えDNA技術を用いて、げっ歯類免疫グロブリンの定常領域をヒト抗体の定常領域で置換する。このキメラH鎖遺伝子およびキメラL鎖遺伝子を、適当な制御エレメントを持つ発現ベクターにクローニングし、哺乳類細胞に導入して、十分にグリコシル化された抗体を産生させる。適切なヒトH鎖C領域遺伝子を選択して前記工程に供することで、抗体の生物活性を予見可能である。このようなキメラ分子は緑内障の治療または予防に使用されている。
【0052】
抗体類のさらなるヒト化方法には、抗体のCDR移植または再成形が包含される。かかる抗体を生産するためには、非ヒト抗体の重鎖CDRsと軽鎖CDRs(これらは抗原結合部位を形成する)とを、それらに対応するヒト抗体フレームワーク領域に移植する。
【0053】
ヒト化抗体断片類は、本発明で用いる好ましい薬剤の典型である。ヒト抗体可変鎖のファージライブラリーをスクリーニングすることによって、配列番号1中のエピトープを認識するヒトFAbsを同定可能である。当分野の公知技術(例えば、モルフォシス社またはケンブリッジ・アンティボディ・テクノロジー社が開発の技術)を使用することで、本発明のアンタゴニストとして用いるFabsを作製してもよい。簡潔には、一本鎖Fvライブラリー由来の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをFab発現ベクターに移し替えることによって、ヒトFabs抗体コンビナトリアルライブラリーを作製する。このライブラリーは2.1×1010種類の抗体断片を産生し得る。次に前記ペプチドを「ベイト」として用いて、所望の結合特性を持つ抗体断片を前記ライブラリーから同定し得る。
【0054】
本実施形態で使用可能なその他の好ましい薬剤の1つは、ドメイン抗体(dAbs)である。dAbsは抗体の最小結合機能ユニットであって、ヒト抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域に当たる。dAbsの分子量は約13kDaである(完全な抗体の約1/10以下のサイズに該当)。
【0055】
本実施形態で使用可能なその他の好ましい薬剤の例としては、二特異性Fab-scFv(「バイボディ(bibody)」)と三特異性Fab-(scFv)(「トリボディ(tribody)」)とが挙げられる。バイボディまたはトリボディにおいては、1個のscFv分子とVL-CL(L)鎖およびVH-CH(Fd)鎖の一方または両方とを融合する。例えば、トリボディを作製するためには2個のscFvをFabのC末端に融合し、バイボディを作製するためには1個のscFvをFabのC末端に融合する。かかる分子類の調製は、当分野で利用可能な情報を当業者が用いることでルーチン的に実施可能である。
【0056】
本発明のアンタゴニストは、配列番号1のアミノ酸配列の一部分または全体またはそれらのアミノ酸誘導体もしくはアナログを含んでなる、ペプチドまたはペプチド模倣体であってもよい。
【0057】
本明細書の実施例では、配列番号1のアミノ酸配列の一部分を含有するペプチドの例

(配列番号6)および

(配列番号7)を提供する。本発明者らが明らかにしたところでは、これらのペプチドはDsg2のEMT促進活性に拮抗する。すなわち、これらのペプチドは本発明のアンタゴニストの好ましい実施形態である。
【0058】
配列番号6および配列番号7のペプチドに加えて、さらに配列番号1のアミノ酸配列の一部分を含んでなるペプチドも調製可能である。Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしての前記ペプチドの有用性を測定するには、本明細書の実施例の「EMT阻害アッセイ」および「細胞浸潤アッセイ」を用いることができる。
【0059】
ペプチド調製はルーチンプロセスである。例えば、本明細書の実験例で用いるペプチドはペプチド2.0社(シャンティリー、バージニア州、米国)が合成した。多数他社も商業的なペプチド合成を提供している。ペプチド調製のための複数の実験室技術も公知であって、それらの方法は当業者によって容易に実施可能である。すなわち、当業者は配列番号1のアミノ酸配列の一部分または全部を含有するペプチドを調製することができる。また、本明細書の情報および公知の一般的知識に基づいて、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしての前記ペプチドの有用性を試験することができる。
【0060】
本発明のアンタゴニストペプチドは、配列番号1のアミノ酸の全40残基を含んでいてもよく、任意の置換アミノ酸を含んでいてもよい。しかし上記のように、本発明者らは、10アミノ酸

(配列番号7)または20アミノ酸

(配列番号6)を含有するペプチドもDsg2のEMT促進活性に対して拮抗可能であることを見出している。従って、本発明の好ましいペプチドは、約10アミノ酸(例えば配列番号7、8、9、10、11、または12)から約20アミノ酸(例えば配列番号18、19、20、21、または22)であり得る。
【0061】
本発明のアンタゴニストペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列由来ではない追加のアミノ酸配列を含有してもよい。例えば、ペプチドに別種の機能を付与する追加のアミノ酸配列(標識タグまたは触媒ドメイン等)を含有してもよい。かかるペプチドも本発明のアンタゴニストに包含される。
【0062】
本発明の実施のためには、配列番号1が規定するアミノ酸の範疇に含まれる好ましいペプチドに由来する、誘導体またはアナログも使用し得ることは理解されよう。
【0063】
用語「誘導体または(その)アナログ」は、アミノ酸残基を類似の側鎖またはペプチド骨格を持つアミノ酸残基(天然アミノ酸、非天然アミノ酸、またはアミノ酸模倣体)で置換したペプチドを意味する。さらに、前記ペプチドの末端のうち1つまたは両方をN末端保護基およびC末端保護基(例えばアセチル基またはアミド基と類似の性質を持つ基)で保護してもよい。得られた最終ペプチドのアミノ酸配列には変更、トランケーション、または修飾が施されていてもよい。上記のように、当業者は本明細書の情報および公知の一般的知識に基づいて、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしての誘導体またはアナログの有用性を試験することができる。
【0064】
かかる誘導体はインビボのペプチド半減期を延伸させるものであってもよく、あるいは半減期を短縮させるものであってもよい。本発明のペプチドおよびポリペプチドの半減期を延伸させ得る誘導体の例としては、ポリペプチドのペプトイド誘導体、ポリペプチドのDアミノ酸誘導体、およびペプチド−ペプトイドハイブリッドが挙げられる。
【0065】
本発明のペプチド類およびポリペプチド類は、種々の原因(例えば生物系に内在するプロテアーゼ活性)で分解され得る。かかる分解は、ポリペプチドの生物学的利用能を制限する(すなわちポリペプチドによる生物学的機能の発揮を制限し得る)。現今、既に確立された種々の技術を用いることによって、生物安定性が増強された誘導体を設計し生産することが可能である。かかるポリペプチド誘導体の生物学的利用能は、プロテアーゼを介した分解に対する耐性を高めることで改善され得る。本発明の用途に好適な誘導体またはアナログのプロテアーゼ耐性は、親ペプチドよりも高いことが好ましい。
【0066】
好ましくは、本発明のポリペプチドのプロテアーゼ耐性をさらに高めるために、N末端および/またはC末端を保護してもよい。例えばN末端の保護は、アセチル基、アルキル基、アリール基、アルキル−CO−基、またはアリール−CO−基を用いて行ってもよい。これらの各基は任意選択で置換してもよい。C末端は、アミド基または置換アミド基によって保護してもよい。
【0067】
ポリペプチド誘導体およびその親ポリペプチドのプロテアーゼ耐性を評価するには、公知のタンパク質分解アッセイを用いてよい。しかる後に、ポリペプチド誘導体および親ポリペプチドのプロテアーゼ耐性の相対値を比較し得る。
【0068】
本発明のポリペプチドのペプトイド誘導体の設計は、ポリペプチドの構造情報に基づいて容易に行い得る。市販ソフトウェアを用い、既に確立されたプロトコルに従ってペプトイド誘導体を制作してもよい。
【0069】
レトロペプトイド(全アミノ酸が逆順に並びかつペプトイド残基により置換されたもの)は、アポリポタンパク質由来の抗菌性ポリペプチドを模倣することができる。リガンド結合溝におけるレトロペプトイドの結合方向は、1つのペプトイド残基を含有するペプトイド−ペプチドハイブリッドまたはペプチドとは逆向きになると予想される。つまり、ペプトイド残基の側鎖は、親ペプチドの側鎖と同じ方向に配向することができる。
【0070】
本発明のペプチドの修飾形態のさらなる実施形態は、Dアミノ酸ペプチドを含んでなる。Lアミノ酸ではなくDアミノ酸を用いてペプチドを調製することで、通常の代謝プロセスによるかかる薬剤の無用な分解が大きく抑制される。その結果として薬剤の必要投与量が減少し、投与頻度が低下する。
【0071】
本発明のペプチド類、誘導体類、またはアナログ類は、生体細胞により有利に発現可能な製品の典型である。
【0072】
用語「ペプチド模倣体」は、特定のペプチドの構造的特徴と望ましい医薬的特徴とを模倣した化合物であって、不適当な特徴が除去されたものを指す。例えばモルフィンは経口投与可能な化合物であって、かつエンドルフィンペプチドのペプチド模倣体である。ペプチド模倣体の設計と合成とには他にも種々の方法が存在し、それらの方法は当分野で公知である。
【0073】
本発明のアンタゴニストは小分子であってもよい。「小分子」は、薬理学および生化学において公知の低分子量化合物である。多数の医薬品は小分子である。かかるアンタゴニストの同定は、小分子ライブラリーのハイスループット・スクリーニングの一環として可能である。本発明のスクリーニング法(下記)は、かかるインヒビターの好適な同定法の典型である。
【0074】
その他のアンタゴニスト分子種も、本発明の第一の態様に包含される。例えば、アンタゴニストはアプタマーであってもよい。
【0075】
アプタマーとは、配列依存的な特異的形状をとる核酸分子であって、特定の標的リガンドに結合する。この結合は、アプタマーとリガンドとの噛み合わせ(鍵と鍵穴モデル)に基づく。通常のアプタマーは、一本鎖DNA分子(ssDNA)、二本鎖DNA分子(dsDNA)、または一本鎖RNA分子(ssRNA)を含んでなり得る。アプタマーは核酸標的との結合に用いてもよく、非核酸標的との結合に用いてもよい。従って、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントを認識して結合し、その機能を調節するアプタマーを製造し得る。好適なアプタマーはランダム配列プールからセレクションしてもよく、特定の標的分子に対して高親和性で結合する特異的アプタマーを同定し得る。所望の特異性を持つアプタマーの製造法およびセレクション方法は当業者に公知であって、例としてはSELEX法(試験管内人工進化法)が挙げられる。簡潔には、オリゴヌクレオチドの大規模ライブラリーを作製する。インビトロ・セレクションとポリメラーゼ連鎖反応による増幅とを反復する工程によって、大量の機能性核酸を単離することが可能となる。
【0076】
本発明の第二の態様では、癌予防薬または癌治療薬として用いるDsg2アンタゴニストを提供する。前記アンタゴニストはDsg2ポリペプチドまたはその断片もしくはバリアントであって、前記ポリペプチド中のDsg2のEC2ドメインの配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアント内には、1つ以上のアミノ酸残基の置換、逆位、および/または欠失が存在する。
【0077】

(配列番号1)のアミノ酸配列の機能を調節することでDsg2のEMT促進機能に影響を及ぼすアンタゴニスト以外の、本発明で使用し得る別種のアンタゴニストは、配列番号1のアミノ酸配列を改変して機能喪失させたDsg2ポリペプチドであり得る。かかるポリペプチドは、天然Dsg2の競合的阻害剤として機能することでアンタゴニストとして作用し、その結果として天然Dsg2のEMT促進機能を減じることができる。
【0078】
本発明で初めて自明かつ公知となったところでは、配列番号1のアミノ酸領域はDsg2のEMT促進機能を制御する。
【0079】
上記のように当業者は、

(配列番号1)の配列中の1つ以上のアミノ酸残基が置換、逆位、および/または欠失したDsg2ポリペプチドの(Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしての)有用性を試験することが可能である。前記試験は、本明細書の実施例に記載の「EMT阻害アッセイ」および「細胞浸潤アッセイ」を用いて行い得る。
【0080】
本態様のポリペプチドは、

(配列番号1)の配列中の1つ以上のアミノ酸残基が置換、逆位、および/または欠失した配列番号2またはその断片を含んでいてもよい。「断片」が含意するところでは、前記ポリペプチドはDsg2アミノ酸配列の全長は含有しなくても、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしては機能できるものである。
【0081】
本発明のポリペプチドの「バリアント」は、1つ以上の位置にアミノ酸の挿入、欠失、または置換(保存的置換もしくは非保存的置換)を行ったDsg2ポリペプチドを指す。例えば、前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列の一部分または全長を欠失していてもよい。
【0082】
本発明の第二の態様のポリペプチドを調製する方法は、当分野で公知である。例えば、サンブルック(Sambrook)らが記載した(「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第3版、米国、コールドスプリングハーバー研究所出版局、2001年」)、組み換えDNA技術の利用が挙げられる。
【0083】
Dsg2のアミノ酸配列の一例を、配列番号2に記載する。その他の例は複数のタンパク質データベースに登録されている(例えばNCBI登録番号NP_001934.2)。Dsg2のアミノ酸配列をコードする核酸配列の一例としては、NCBI登録番号NG_007072.2が挙げられる。
【0084】
当業者は前記情報に基づいて、

(配列番号1)の配列中の1つ以上のアミノ酸残基を置換、逆位、および/または欠失したDsg2ポリペプチドを容易に調製することができる。
【0085】
本発明の第二の態様の好ましい一実施形態のアンタゴニストは、配列番号8のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドである。配列番号8は実施例の後に記載する。配列番号8のポリペプチド配列は、配列番号2のアミノ酸配列を持つDsg2ポリペプチドからEC2の非CAR配列(配列番号4)を除去したものである。
【0086】
本発明の第二の態様の好ましい一実施形態のアンタゴニストは、配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドである。配列番号9は実施例の後に記載する。配列番号9のポリペプチド配列は、配列番号2のアミノ酸配列を持つDsg2ポリペプチドからEC1とEC2のCAR配列を除去したものに当たる。
【0087】
本発明の第三の態様では、癌予防薬または癌治療薬として用いる、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストを提供する。
【0088】
上記したように、国際公開第99/057149号パンフレットの著者は、Dsg2のEC2ドメインに由来する細胞接着・認識(CAR)部位を調整剤として用いることで、癌治療および/または転移阻害が可能であることを示唆している。前記著者の記載によれば、かかる調整剤はカドヘリンを介する細胞接着を阻害すると考えられる。
【0089】
しかし注目すべきことに、Dsg2のEC2ドメインのCAR部位に由来する調整剤は、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしては働かない。このことは、本明細書の実施例のデータからも明らかである。つまり、国際公開第99/057149号パンフレットに開示の調整剤は、本発明の第三の態様のアンタゴニスト類ではない。
【0090】
これに加えて、本発明以前には、Dsg2ポリペプチドの何れの領域がDsg2のEMT促進機能を担うのかは公知でもなく自明でもなかった。
【0091】
用語「Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニスト」には、上記の本発明の第一の態様および第二の態様のアンタゴニスト類が包含される。すなわち前記アンタゴニストは、配列番号1のアミノ酸配列に対して特異的に結合するか、配列番号1のアミノ酸配列の一部分もしくは全体またはそれらのアミノ酸誘導体もしくはアナログを含有するか、あるいはEC2の非CAR領域と相互作用する分子に結合する。これらは、前記アンタゴニストがDsg2のEMT促進活性を制御するための機能の一環である。
【0092】
本態様の好ましいアンタゴニストは、抗体、抗体断片、抗体の誘導体、ペプチド、ペプチド模倣体、または小分子である。好ましくは、本態様のアンタゴニストは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ペプチド、またはペプチド模倣体である。前記のペプチドまたはペプチド模倣体は、配列番号1のアミノ酸配列の一部分もしくは全体またはそれらのアミノ酸誘導体もしくはアナログを含んでなる(例えば、

(配列番号6)および

(配列番号7)のアミノ酸配列を含んでなるペプチド)。
【0093】
好ましくは、本態様のアンタゴニストは、Dsg2ポリペプチドまたはその断片もしくはバリアントであって、かつDsg2のEC2ドメインの配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアント内の1つ以上のアミノ酸が置換、逆位、および/または欠失したものである。好ましくは、前記アンタゴニストは、配列番号8のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドである。好ましくは、前記アンタゴニストは、配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドである。
【0094】
Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしてのその他の薬剤の有用性は、本明細書の実施例に記載の「EMT阻害アッセイ」および「細胞浸潤アッセイ」を用いて測定可能である。例えば、本発明のスクリーニング法によってアンタゴニストを同定することができる。
【0095】
上記のように、前記態様のアンタゴニスト類は、Dsg2のEMT促進機能を低下させる機能を持ち得る。EMTは細胞発生プログラムの1つであって、その特徴は細胞接着の喪失および細胞移動性の増大である。EMTは種々の発生プロセスに関与する。癌に関してDsg2の機能と最も関わりが深い発生プロセスは、細胞転移および細胞浸潤である。すなわち、本態様の好ましいアンタゴニストは、Dsg2の細胞転移促進機能および/または細胞浸潤促進機能を低下させる。Dsg2の細胞転移促進機能および/または細胞浸潤促進機能に及ぼすアンタゴニストの効果を測定する方法は、本明細書の実施例に記載の「EMT阻害アッセイ」および「細胞浸潤アッセイ」にて提供する。
【0096】
用語「癌」はあらゆる種類の癌を包含するものとする。例えば、膀胱癌、乳癌(女性乳癌および男性乳癌)、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌(腎細胞癌)、白血病、肺癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、および甲状腺癌が挙げられる。
【0097】
本明細書の実施例で明らかにするように、Dsg2は前立腺癌細胞系列、乳癌細胞系列、および皮膚癌細胞系列のEMTを促進する機能を持つ。よって本発明の好ましい一実施形態においては、対象とする癌は前立腺癌、乳癌、および皮膚癌である。
【0098】
本発明の第一の態様、第二の態様、および第三の態様のアンタゴニスト類は、癌予防または癌治療に用いられる。
【0099】
癌の診断法は当分野では公知である。例えば、http://www.cancer.gov/では、種々の癌の詳細、それらの診断法、および治療法候補を提供している。
【0100】
本発明の第一の態様、第二の態様、および第三の態様のアンタゴニスト類は、医薬として用いられる。前記医薬を処方する多様な方法は、下記に記載する。
【0101】
本発明のさらなる態様では、第一の態様、第二の態様、および第三の態様のアンタゴニスト用途として、癌予防薬または癌治療薬の製造における用途を提供する。
【0102】
本発明のさらなる一態様では、癌の治療法を提供する。前記治療法は、第一の態様、第二の態様、および第三の態様のアンタゴニストの治療有効量を患者に投与することを含む。
【0103】
本発明の第四の態様では、

(配列番号1)のアミノ酸配列、

(配列番号6)のアミノ酸配列、

(配列番号7)のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含んでなる、ペプチドを提供する。
【0104】
本発明以前には、Dsg2ポリペプチドの何れの領域がDsg2のEMT促進機能を担うのかは公知でもなく自明でもなかった。すなわち、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしての本態様のペプチド類の有用性は、以前には予見不可能であった。
【0105】
本態様の好ましいペプチドは、Dsg2に拮抗するアンタゴニストであって、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節する。「その断片もしくはバリアント」には、本発明の第一の態様に係る上記ペプチドの断片またはバリアントが包含される。
【0106】
本態様のペプチドの調製に係るその他の情報は、例えば上記の第一の態様に記載されている。前記の例では、本態様のペプチドの調製法の詳細も提供する。
【0107】
本発明の第五の態様では、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片もしくはバリアントを含んでなり、かつDsg2のEC2ドメインの配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアント内の1つ以上のアミノ酸が置換、逆位、および/または欠失した、ポリペプチドを提供する。
【0108】
本態様の一実施形態では、前記ポリペプチドは配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列を含んでなる。
【0109】
本発明以前には、Dsg2ポリペプチドの何れの領域がDsg2のEMT促進機能を担うのかは公知でもなく自明でもなかった。すなわち、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしての本態様のポリペプチドの有用性は、以前には予見不可能であった。
【0110】
本態様の好ましいポリペプチドは、Dsg2に拮抗するアンタゴニストである。「断片もしくはバリアント」には、本発明の第二の態様に関する上記ポリペプチドの断片またはバリアントが包含される。
【0111】
本態様のポリペプチドの調製に関するその他の情報は、例えば上記の第二の態様に記載されている。前記の例では、本態様のポリペプチドの調製法の詳細も提供する。
【0112】
本発明の第六の態様では、

(配列番号1)のアミノ酸配列、

(配列番号6)のアミノ酸配列、

(配列番号7)のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントに対して特異的に結合可能な、抗体を提供する。
【0113】
本発明以前には、Dsg2ポリペプチドの何れの領域がDsg2のEMT促進機能を担うのかは公知でも自明でもなかった。すなわち、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストとしての本態様の抗体の有用性は、以前には予見不可能であった。
【0114】
本態様の好ましい抗体はDsg2に拮抗するアンタゴニストであって、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節する。「その断片もしくはバリアント」には、本発明の第一の態様に係る上記ポリペプチドの断片またはバリアントが包含される。
【0115】
本態様の抗体の調製に関するその他の情報は、例えば上記の第一の態様に記載されている。前記の例では、本態様の抗体の調製法の詳細も提供する。
【0116】
本発明の第七の態様では、本発明の第四の態様、第五の態様、または第六の態様のペプチド、ポリペプチド、または抗体を、医療用途に提供する。
【0117】
本発明の第八の態様では、医薬組成物を提供する。前記医薬組成物は、治療有効量の本発明のアンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチド、または抗体と、任意選択の薬理学的に許容される賦形剤とを含んでなるものである。一実施形態においては、前記のアンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチド、または抗体の量は、約0.01mgから約800mgである。また別の実施形態では、前記のアンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチド、または抗体の量は、約0.01mgから約500mgである。さらに別の実施形態では、前記のアンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチド、または抗体の量は、約0.01mgから約250mgである。さらにまた別の実施形態では、前記のアンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチド、または抗体の量は、約0.1mgから約60mgである。さらにまた別の実施形態では、前記のアンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチド、または抗体の量は、約0.1mgから約20mgである。
【0118】
本発明は、医薬組成物の製造工程を提供する。前記製造工程は、治療有効量の本発明のアンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチド、または抗体と、薬理学的に許容される賦形剤とを結合するステップを含んでなる。「治療有効量」とは、投与患者に癌予防および/または癌治療をもたらす任意量の本発明のアンタゴニスト、ペプチド、ポリペプチド、または抗体である。「患者」とは、脊椎動物、哺乳類、家畜、またはヒトである。
【0119】
本明細書の「薬理学的に許容される賦形剤」とは、当業者に公知の任意の生理学的賦形剤であって、医薬の処方に有用なものを指す。
【0120】
本発明で使用するアンタゴニスト類は、種々の方法で医薬用途に供することが可能である。
【0121】
前記アンタゴニスト類は、種々の剤形の組成物と組み合わせてもよく、特に前記組成物の用途に従って組み合わせてよい。前記組成物の剤形は、例えば粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、エアゾル、スプレー、ミセル、経皮パッチ、リポソーム、またはヒトもしくは動物に投与可能なその他の適当な任意剤形であり得る。本発明の組成物の前記賦形剤は投与患者が十分に許容可能なものであるべきで、かつ好ましくは標的細胞、標的組織、または標的器官まで前記アンタゴニストを送達可能なものであるべきことは、理解されよう。それ故前記アンタゴニストの送達は、適当な保護担体粒子(例えばミセル)を用いて行われることが好ましい。
【0122】
本発明の抗体類またはその機能性誘導体を使用可能な方法は、多様である。例えば全身投与が必要な場合には、前記抗体類またはその誘導体を組成物中に含ませた上で、錠剤形、カプセル剤形、または液剤形で経口摂取させてもよい。好ましくは、前記抗体類またはその誘導体を血流中に注射投与する。注射は静脈注射(ボーラスまたは注入)であってもよく、皮下注射(ボーラスまたは注入)であってもよい。あるいはその代わりに、前記抗体類を肝臓に直接注射してもよい。
【0123】
治療薬実体であるポリペプチド類は種々の剤形の医薬組成物と組み合わせてもよく、特に前記組成物の用途に従って組み合わせてよい。例えば、前記組成物の剤形は粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、エアゾル、スプレー、ミセル、経皮パッチ、リポソーム、またはヒトもしくは動物に投与可能なその他の適当な任意剤形であり得る。本発明の組成物の前記賦形剤は投与患者が十分に許容可能なものであるべきで、かつ好ましくは標的細胞、標的組織、または標的器官まで前記治療薬を送達可能なものであるべきことは、理解されよう。
【0124】
好ましい一実施形態においては、前記賦形剤は液体であって、前記医薬組成物の剤形は液剤形である。また別の実施形態においては、前記賦形剤はゲルであって、前記組成物の剤形はクリーム等である。
【0125】
アンタゴニストは、薬剤徐放性デバイスまたは薬剤時限放出型デバイス中に充填してもよい。例えば、かかるデバイスを皮膚上または皮下に挿入した上で、数週間または数ヶ月間に渡って前記化合物を放出させてもよい。かかるデバイスが特に有利であり得るのは、例えば本発明のアンタゴニストによる長期間治療が必要な場合であって、かつ通常は頻回投与(例えば、少なくとも毎日投与)が必要とされる場合である。
【0126】
アンタゴニストの必要量がその生物活性と生物学的利用能とによって規定されることは、理解されよう。前記の生物活性および生物学的利用能自体は、投与モード、用いるアンタゴニストの物理化学的性質、および治療法(前記アンタゴニストを単剤療法と複合療法との何れに用いるか)に依存する。前記必要量は、治療標的細胞の細胞数および状態にも依存すると考えられる。投与頻度も上記因子の影響を被ると考えられ、特に治療患者体内における前記アンタゴニストの半減期に影響されると考えられる。
【0127】
最適投与量は当業者によって決定され得、用いるアンタゴニストの種類、有効成分量、投与モード、および病状進行度に依存する。その他、実際の治療患者により異なるファクターが存在し(例えば患者の年齢、体重、性別、食事、および投与時期)、それらに合わせて用量調整の必要が生ずると予想される。
【0128】
公知の工程(例えば医薬品製造業者が用いる従来工程(インビボ実験法および臨床試験等))を用いることで、本発明のアンタゴニストの具体的な処方と厳密な最適治療計画(例えばアンタゴニストの日用量および投与頻度)とを策定してもよい。
【0129】
本発明のアンタゴニストの通常の日用量は、0.01μg/kg体重から0.5g/kg体重を癌予防および/または癌治療に用いてもよく、これは実際に用いるアンタゴニストの種類によって異なる。より好ましい日用量は0.01mg/kg体重から200mg/kg体重であり、最も好ましい日用量は約1mg/kgから100mg/kgである。
【0130】
日用量の投与方法は単回投与(例えば一日一回注射)であってもよい。あるいはその代わりに、アンタゴニストを一日複数回投与する必要も生じ得る。例えば、本発明のアンタゴニストを、25mgから7000mgの用量で一日二回(重症度によっては三回以上)投与してもよい(体重を70kgとした場合)。治療患者の1回目投与は朝であってもよく、二回目投与は夕方であってもよい(一日二回投与の場合)。あるいは、1回目投与の後3時間または4時間毎に投与してもよい。あるいはその代わりに、薬剤徐放性デバイスを用いて最適用量を患者に投与することで、繰り返し投与を避けてもよい。
【0131】
本発明の第九の態様では、Dsg2アンタゴニストをスクリーニングする方法を提供する。前記アンタゴニストは、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節するものであって、前記スクリーニング法は、Dsg2ポリペプチドを含有する細胞を試験化合物に対して曝露するステップ(i)と、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能に及ぼす前記試験化合物の効果を測定するステップ(ii)とを備える。
【0132】
本発明の前記方法を用いることで、癌治療に有用であり得る化合物を同定することができる。
【0133】
本発明の第九の態様の一実施形態の前記方法は、Dsg2のEMT促進活性を低下させる試験化合物をセレクションするステップをさらに含む。
【0134】
本発明の第九の態様の一実施形態の前記方法は、セレクションした試験化合物(またはその誘導体もしくはアナログ)と薬理学的に許容される担体とを混合するステップをさらに含む。
【0135】
本発明の第九の態様の方法は、薬剤またはリード化合物のスクリーニング法に関する。前記試験化合物は、ドラッグライク化合物またはドラッグライク化合物開発用のリード化合物であってもよい。
【0136】
用語「ドラッグライク化合物」は当業者には公知であって、医療用途に適した性質(例えば医薬の有効成分としての性質)を持つ化合物の意味を包含し得る。すなわちドラッグライク化合物は、例えば有機化学的方法で合成し得る分子であってもよい。次善の合成法は、分子生物学的方法または生化学的方法である。好ましい前記分子は小分子であり、5000ダルトン未満であってもよく、水溶性であってもよい。ドラッグライク化合物が示し得るその他の特徴としては、1種類または複数種類の特定のタンパク質との選択的相互作用がある。また、ドラッグライク化合物は生物学的利用能を持ってもよく、および/または標的細胞の細胞膜に対して透過性であってもよい。ただし、これらの特徴が必須ではないことは理解されよう。
【0137】
用語「リード化合物」も当業者には公知であって、前記化合物のままでは薬剤用途に適さない(例えば所期の標的に対する効果が弱い、作用が非選択的である、不安定である、可溶性が低い、合成困難である、または生物学的利用能が低い)が、それを出発材料としてより望ましい性質を持ち得る別の化合物を設計し得るという意味を包含し得る。
【0138】
本発明の第七の態様および第八の態様の方法は、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能に及ぼす試験化合物の効果を測定するステップを含む。
【0139】
これらの方法の何れにも、「標準試料」(すなわち、試験化合物に曝露していない動物または細胞から採取したタンパク質試料または核酸試料)が必要である。標準試料(試験化合物に曝露していない動物または細胞から採取したタンパク質試料または核酸試料)中のDsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能と、試験用試料(試験化合物に曝露した動物または細胞から採取したタンパク質試料または核酸試料)中のDsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能とを比較することで、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能に及ぼす試験化合物の効果を測定することができる。この結果として、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能に対して試験化合物が増強作用を持つか、阻害作用を持つか、あるいは無影響かが明らかになる。
【0140】
Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能を評価する前記ステップは、種々の方法を用いて実施し得る。
【0141】
本発明のスクリーニング法は、「ライブラリー・スクリーニング」(この用語は当業者には公知である)に用いることができる。例えば、本発明の方法を用いることで、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能に影響を及ぼす試験化合物を検出(および任意選択で同定)し得る。ライブラリーの一部を用いて、所望の結果が得られるかどうかを検査してもよい。
【0142】
本発明の第七の態様および第八の態様の方法のさらなる実施形態では、特定の化合物を配合して薬理学的に許容される組成物を製造する。
【0143】
本明細書に記載の全要件(請求項、要約、および図面を包含する)および/または本明細書に開示の方法もしくは工程の全ステップは、上記態様のいずれか1つと任意の組み合わせで組み合わせてもよい。ただし、組み合わせる要件および/またはステップの一部以上が相互排他的な組み合わせは除外する。
【0144】
以下では実施例と図とを参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】CAR部位の機能阻害と非CAR部位の機能阻害との差異を示す、模式図である。
【図2】抗Dsg2−EC2抗体によるEMTの阻害を示す、顕微鏡写真である。抗EC1抗体および抗EC4抗体はEMTを阻害しない。
【図3】抗Dsg2−EC2抗体による細胞浸潤能の阻害を示す、顕微鏡写真である。(A)A375ヒトメラノーマ細胞、(B)MCF7ヒト乳癌細胞、(C)LNCaPヒト前立腺癌細胞。
【図4】抗非CAR部位抗体によるEMTと細胞浸潤との阻害を示す、顕微鏡写真である。CARドメイン(VFYLNKDTG)を除去したDsg2のEC2ペプチド配列を用いて、ウサギポリクローナル抗体を作製した。(A)作製した抗体は、EMTを顕著に阻害する。(B)細胞浸潤アッセイにより、マトリゲル製ゲル中への細胞の増殖・浸潤能を測定する。作製した抗体は、MCF7ヒト乳癌細胞の浸潤能を阻害する。
【図5】非CAR配列ペプチドによるEMTと細胞浸潤との阻害を示す、顕微鏡写真である。8つの合成ペプチドを調製した。(A)Dsg2のEC2中の非CAR配列(ペプチド4およびペプチド7)は、EMTを顕著に阻害する。CAR配列およびその他の非CAR配列は、EMTに影響しない。(B)非CAR配列(ペプチド4およびペプチド7)は、MCF7ヒト乳癌細胞の浸潤能を阻害する。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0146】
実施例1:
<上皮間葉転換を制御するDsg2機能の解析>
(序)
本発明は、上皮間葉転換(EMT)を阻害するためにDsg2のEC2ドメイン中の非CAR配列の機能を調節することに関する。
【0147】
上皮組織、心筋組織、およびその他の組織における細胞間接着結合の主要なタイプの1つとして、デスモソームがある。デスモソームは膜貫通型糖タンパク質類を含有し、それらの糖タンパク質はそれぞれデスモソームカドヘリン、デスモコリン(Dsc)、およびデスモグレイン(Dsg)と呼称される。各タンパク質は3つ以上の遺伝子アイソフォームとして存在し、これらのアイソフォームは組織特異的発現パターンを示す。
【0148】
デスモソームを有する全組織では、Dsg2が広範に発現する。Dsg2の細胞外ドメインは4つのカドヘリンリピートドメイン(EC1からEC4)を含有し、各ドメインの長さは約110アミノ酸である。前記の細胞外リピートドメインEC1内には細胞間接着を仲介する細胞接着・認識(CAR)部位が存在する。そのことから、Dsg2は膜貫通型の細胞接着分子と見なされている。しかしごく近時の研究によれば、Dsg2は単なる細胞接着分子ではないことを示している。Dsg2は血管新生の促進およびアポトーシスシグナル伝達に関与し、MMPsの基質である。のみならず、Dsg2がEMTに関する役割を持つことも明らかにされている。EMTは、細胞間接着とは非常に異なる生理作用である。
【0149】
これらの知見に鑑みて、本発明者らはDsg2と同タンパク質の特定の領域とがEMTの制御に果たす役割を解析した。また、Dsg2を調節することによって癌細胞の浸潤を阻害可能かどうかを解析した。
【0150】
(結果と考察)
以前は、Dsg2がEMTに関する役割を有すると示唆されていた。しかし、何がDsg2のこの活性を担っているのかは不明である。
【0151】
図1はDsg2の模式図であって、同タンパク質のドメインの既知の機能および提唱された機能を示す。細胞外ドメインであるEC1およびEC2は、細胞間接着を仲介する細胞接着・認識(CAR)部位を含有する。Dsg2のEC1ドメイン中のCAR配列

(配列番号10)は細胞間接着機能を持つことが知られており、EC2ドメイン中のCAR配列

(配列番号4)にも類似の細胞間接着機能があることが提唱されている。
【0152】
本発明者らは、EC1に対して特異的に結合する抗体、EC2に対して特異的に結合する抗体、およびEC4に対して特異的に結合する抗体がEMTに及ぼす効果を解析した。図2および図3が示すように、抗EC2抗体はヒトメラノーマ細胞、ヒト乳癌細胞、およびヒト前立腺癌細胞の細胞浸潤ならびにEMTを阻害する。一方、抗EC1抗体および抗EC4抗体は同様の効果を示さない。このことから、Dsg2のEMT制御活性は同タンパク質のEC2ドメイン内の配列によって仲介されると考えられる。
【0153】
既に提唱されたところによれば、Dsg2のEC2ドメイン中にはCARドメインが存在する。Dsg2ならびにその他のデスモコリン(Dsc)およびデスモグレイン(Dsc1、Dsc2、Dsc3、Dsg1、Dsg2、およびDsg3)においては、CARドメインが細胞接着機能を有することが明らかにされている。しかし、CARによるデスモソーム接着をブロックすると、細胞遊走、細胞浸潤、および細胞転移が促進されることが知られている。これとは対照的に、抗EC2抗体はEMTを阻害し、その結果として細胞接着は維持され、細胞遊走、細胞浸潤、および細胞転移は妨げられる。よってDsg2のEC2ドメイン中のCAR配列は、同タンパク質のEMT促進活性には寄与しないと考えられる。
【0154】
本発明者らはここに至って、Dsg2のEC2ドメイン中で同タンパク質のEMT促進活性を制御する領域を同定することを企図した。本発明者は前記目的のために、Dsg2のEC2由来ペプチド

(配列番号5)に対するウサギポリクローナル抗体を作製した。前記のペプチドは、CARドメイン全長を除去したものである。
【0155】
次に前記抗体を用いて「EMT阻害アッセイ」および「細胞浸潤アッセイ」を行い(詳細は下記)、前記抗体が細胞に及ぼす効果を測定した。この結果を図4に示す。作製した抗体がEMTを顕著に阻害し(パネルA)、またMCF7ヒト乳癌細胞の浸潤能を阻害することが解る(パネルB)。このデータから明らかであるように、Dsg2のEMT促進機能はEC2ドメイン中の非CAR領域によって仲介される。
【0156】
次に、本発明者はDsg2のEC2ドメイン由来のペプチド系列を調製した。調製したペプチドは、
ペプチド1:コントロールペプチド

(配列番号11)、
ペプチド2:EC1ドメイン中のCAR配列

(配列番号10)、
ペプチド3:EC2ドメイン中のCAR配列

(配列番号4)、
ペプチド4:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号6)、
ペプチド5:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号12)、
ペプチド6:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号13)、
ペプチド7:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号7)、
およびペプチド8:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号14)、
である。
【0157】
次に前記ペプチドを用いて「EMT阻害アッセイ」および「細胞浸潤アッセイ」を行い(詳細は下記)、前記ペプチドが細胞に及ぼす効果を測定した。この結果を図5に示す。ペプチド4およびペプチド7が、EMTと細胞浸潤とを顕著に阻害することが解る。このデータから再び明らかであるように、Dsg2のEMT促進機能はEC2ドメイン中の非CAR領域によって仲介される。
【0158】
以上で本発明者が明らかにしたように、Dsg2のEC2ドメイン中の非CAR配列の阻害および前記非CAR配列に拮抗するアンタゴニストは、EMTあるいは浸潤をインビトロでブロックする。また、インビボの癌浸潤および腫瘍転移をブロックする潜在能力を持つ。
【0159】
<実験プロトコル>
(抗体の作製)
ポリクローナル抗体の作製は、アブジェント社(サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)によった。要約すると、免疫ペプチド配列

(配列番号5)を合成し、キャリア蛋白質であるKLH(スカシ貝ヘモシアニン)にコンジュゲーションし、これを用いてウサギを免疫した。ウサギから採血し、飽和硫安沈殿によって抗体を調製し、PBSに対して透析した。
【0160】
(ペプチド)
本実験で使用したペプチドは、ペプチド2.0社(シャンティリー、バージニア州、米国)で合成された。
ペプチド1:コントロールペプチド

(配列番号11)
ペプチド2:EC1ドメイン中のCAR配列

(配列番号10)
ペプチド3:EC2ドメイン中のCAR配列

(配列番号4)
ペプチド4:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号6)
ペプチド5:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号12)
ペプチド6:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号13)
ペプチド7:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号7)
ペプチド8:EC2ドメイン中の非CAR配列

(配列番号14)
【0161】
(EMT阻害アッセイ)
2.5ng/mlのHGF/SFを含有する標準培地(96穴プレート)でMDCK細胞を24時間培養し、10%サブコンフルエントなMDCK細胞に対して抗体またはペプチドを添加した。抗体処理またはペプチド処理をしないMDCK細胞では、HGF/SFによってEMTが誘導された。2.5ng/mlのHGF/SFを含有する標準培地でMDCK細胞を培養し、10%サブコンフルエントなMDCK細胞に対して種々の抗体およびペプチドを種々の濃度で添加することによって、それらのEMT阻害効果を検討した。
【0162】
(細胞浸潤アッセイ)
グロースファクターリデュースト・マトリゲル(商標)マトリックス(BD、ベクトン・ディッキンソン・バイオサイエンス社(ベッドフォード、マサチューセッツ州、米国))を、冷蔵庫内に1日間置いて解凍してから使用した。予冷却したピペットで前記マトリゲルマトリックスを氷上で均一に混合した。標準培地に懸濁した細胞(1×10細胞/ml)4μlに対して、種々の濃度の抗体またはペプチド1μlを添加し(コントロールでは添加しない)、冷やしたエッペンドルフチューブ中で95μlのマトリゲルマトリックスと混合した。冷やしたピペットで完全に混合した後、前記細胞のマトリゲル混合物のうち30μlを、48穴プレートに分注した。前記プレートを37℃のCOインキュベータ内で1時間インキュベートし、小滴状の前記混合物を重合させた。250μlの標準培地を添加して前記の細胞/マトリゲル小滴を覆い、数日間インキュベートした。顕微鏡下でニコン4500クールピクス・デジタルカメラを用い、細胞/マトリゲル小滴中の4つの領域の細胞浸潤イメージを盲検的に記録した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌予防薬または癌治療薬に用いるDsg2アンタゴニストであって、
前記アンタゴニストが、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節することを特徴とする、Dsg2アンタゴニスト。
【請求項2】
請求項1に記載のアンタゴニストであって、
前記アンタゴニストがDsg2のEMT促進機能を低下せしめることを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアンタゴニストであって、
前記アンタゴニストが、配列番号1のアミノ酸配列に対して特異的に結合することを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のアンタゴニストであって、
配列番号1のアミノ酸配列の一部分もしくは全部またはそれらのアミノ酸誘導体もしくはアナログを、前記アンタゴニストが含有することを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアンタゴニストであって、
前記アンタゴニストが抗体、抗体断片、抗体の誘導体、ペプチド、ペプチド模倣体、または小分子であることを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項6】
請求項5に記載のアンタゴニストであって、
前記アンタゴニストがポリクローナル抗体であることを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項7】
請求項5に記載のアンタゴニストであって、
前記アンタゴニストがペプチドまたはペプチド模倣体であって、
前記ペプチドまたは前記ペプチド模倣体が、配列番号1のアミノ酸配列の一部分もしくは全部またはそれらのアミノ酸誘導体もしくはアナログを含有する、
ことを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項8】
請求項7に記載のアンタゴニストであって、

(配列番号1)のアミノ酸配列、

(配列番号6)のアミノ酸配列、

(配列番号7)のアミノ酸配列、またはそれらのアミノ酸誘導体もしくはアナログを、前記ペプチドが含んでなることを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項9】
癌予防薬または癌治療薬に用いるDsg2アンタゴニストであって、
前記アンタゴニストが、Dsg2ポリペプチドまたはその断片もしくはバリアントであり、
前記ポリペプチド中のDsg2のEC2ドメインの配列

(配列番号1)内またはその断片もしくはバリアント内に、1つ以上のアミノ酸残基の置換、逆位、および/または欠失が存在する、
ことを特徴とする、Dsg2アンタゴニスト。
【請求項10】
請求項9に記載のアンタゴニストであって、
前記ポリペプチドが、配列番号8のアミノ酸配列または配列番号9のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項11】
癌予防薬または癌治療薬に用いる、Dsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニスト。
【請求項12】
請求項11に記載のDsg2のEMT促進機能に拮抗するアンタゴニストであって、
請求項1から請求項10のいずれか1項により規定されることを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のアンタゴニストであって、
前記アンタゴニストが、Dsg2の細胞転移促進機能および/または細胞浸潤促進機能を低下せしめることを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のアンタゴニストであって、
前記癌が、前立腺癌、乳癌、または皮膚癌であることを特徴とする、アンタゴニスト。
【請求項15】

(配列番号1)のアミノ酸配列、

(配列番号6)のアミノ酸配列、

(配列番号7)のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントを含んでなることを特徴とする、ペプチド。
【請求項16】
配列番号2のアミノ酸配列またはその断片もしくはバリアントを含んでなるポリペプチドであって、
前記ポリペプチド中のDsg2のEC2ドメインの配列

(配列番号1)内またはその断片もしくはバリアント内に、1つ以上のアミノ酸残基の置換、逆位、および/または欠失が存在することを特徴とする、ポリペプチド。
【請求項17】
請求項16に記載のポリペプチドであって、
前記ポリペプチドが、配列番号8のアミノ酸配列または配列番号9のアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする、ポリペプチド。
【請求項18】

(配列番号1)のアミノ酸配列、

(配列番号6)のアミノ酸配列、

(配列番号7)のアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくはバリアントに対して、特異的に結合可能であることを特徴とする、抗体。
【請求項19】
請求項10から請求項13のいずれか1項に記載のペプチド、ポリペプチド、または抗体であって、
医療用途に用いられることを特徴とする、ペプチド、ポリペプチド、または抗体。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のアンタゴニストペプチド、アンタゴニストポリペプチド、またはアンタゴニスト抗体と、薬理学的に許容される賦形剤とを含んでなることを特徴とする、医薬品。
【請求項21】
Dsg2アンタゴニストをスクリーニングする方法であって、
前記アンタゴニストが、Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列

(配列番号1)またはその断片もしくはバリアントの機能を調節し、
前記スクリーニング法が、
Dsg2ポリペプチドを含有する細胞を試験化合物に対して曝露するステップ(i)と、
Dsg2のEC2ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)の機能に及ぼす前記試験化合物の効果を測定するステップ(ii)と、
を備える、
ことを特徴とする、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
前記方法が、Dsg2のEMT促進活性を低下せしめる試験化合物をセレクションするステップをさらに備えることを特徴とする、方法。
【請求項23】
請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法が、セレクションした前記薬剤(またはその誘導体もしくはアナログ)と薬理学的に許容される担体とを混合するステップをさらに備えることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2013−505285(P2013−505285A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530324(P2012−530324)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001776
【国際公開番号】WO2011/036440
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512073769)アスクレピウム・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Asclepiumm Limited
【Fターム(参考)】