癌細胞で発現するCD−43およびCEAの炭水化物含有エピトープを認識する抗体およびそれを使用する方法
本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合せず、かつ、非造血系癌細胞の細胞表面のエピトープへの結合後、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下で非造血系癌細胞のアポトーシスを誘導することができる新規な抗体であって、エピトープは、炭水化物構造を含み、エピトープに対する抗体の結合は、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造またはLNT構造を含む炭水化物により阻害される、抗体を提供する。さらに、本発明は、診断および治療目的での本明細書に記載の抗体の使用も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年6月7日に出願された米国仮出願第60/811,850号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
本発明は、非造血系腫瘍または癌細胞に発現するCD43および癌胎児性抗原(CEA:carcinoembryonic antigen)のエピトープを含む炭水化物を認識する新規なモノクローナル抗体に関する。これらの抗体は、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下でそうした非造血系腫瘍または癌細胞において細胞死(たとえば、アポトーシス)を誘導する特性を有する。これらのモノクローナル抗体は、診断薬および治療薬として有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
CD43(シアロホリンまたはロイコシアリンとも呼ばれる)は、シアル酸に富む分子で、すべてのT細胞を含むほとんどのヒト白血球および血小板において高度に発現し、分子量は、115,000〜135,000である。X染色体関連劣性免疫不全障害であるウィスコット−アルドリッチ症候群の男性T細胞では、CD43の発現が不完全である(Remold−O’Donnellら、(1987)Blood 70(1):104−9;Remold−O’Donnelら、(1984)J.Exp.Med.159:1705−23)。
【0004】
機能の研究から、抗CD43モノクローナル抗体が末梢血Tリンパ球の増殖(Mentzerら、(1987)J.Exp.Med.1;165(5):1383−92;Parkら、(1991)Nature,350:706−9)および単球の活性化(Nongら、(1989)J.Exp.Med.1:170(1):259−67)を刺激することが明らかにされた。モノクローナル抗CD43抗体L11は、リンパ節およびパイエル板HEV(high endothelial venule)へのT細胞の結合を遮断する。抗体L11は、血液から系統的な二次リンパ組織へのT細胞の血管外遊走を阻害する(McEvoyら、(1997)J.Exp.Med.185:1493−8)。CD43分子を認識するモノクローナル抗体は、CD34を高密度で発現する、細胞系統マーカー陰性の骨髄造血前駆細胞(HPC:hematopoietic progenitor cell)(Bazilら、(1996)Blood,87(4):1272−81.)およびヒトTリンパ芽球様細胞(Brownら、(1996)J.Biol.Chem.271:27686−95)のアポトーシスを誘導する。最近の研究ではさらに、CD43が、ヒトT細胞のE−セレクチンのリガンドとして機能することも示唆された(非特許文献1;非特許文献2)。
【0005】
興味深いことに、科学者らにより、ある種の非造血系腫瘍細胞、特に結腸直腸腺癌の細胞表面にもCD43分子が発現することが発見されている。非特許文献3:非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6を参照されたい。結腸癌細胞株(COLO205)に発現するCD43のグリカンは、白血球のCD43のグリカンと異なることが明らかになっている(Baeckstromら、(1997)J.Biol.Chem.272:11503−9)。CD43が過剰に発現すると、腫瘍抑制タンパク質p53が活性化され(非特許文献7)、p65の転写活性の阻害などによりNF−κB標的遺伝子のサブセットが抑制されると考えられてきたが(非特許文献8)、結腸腫瘍形成におけるCD43の原因的役割を示す直接的な証拠は未だに認められていない。非造血系腫瘍細胞の治療剤として従来の抗CD43抗体を用いるのは、腫瘍にも免疫T細胞にも強く結合するため実用的ではない。非造血系腫瘍または癌細胞に発現するCD43に特異的に結合しても、白血球または造血系由来の他の細胞に発現するCD43には結合しない抗体を作製することが依然として求められている。こうした抗体は、CD43を発現する非造血系癌を処置する治療薬として有用である可能性がある。
【0006】
CEAは通常、種々の腺上皮組織(胃腸管、気道および尿生殖管など)に発現し、細胞の頂端膜側に局在していると思われる(非特許文献9)。こうした組織から生じる腫瘍では、頂端膜ドメインから細胞表面全体に延在するCEAの発現レベルが上昇するとともに、このタンパク質が血液へ分泌される(非特許文献9)。結腸直腸癌、膵臓癌、肺癌、胃癌、肝細胞癌、乳房癌および甲状腺癌など、多くのタイプの癌では、CEAの過剰な発現が観察された。したがって、CEAは、腫瘍マーカーとして用いられており、癌の予後および管理においては、癌患者の血液中のCEA量の増加を測定するため、免疫学的アッセイが長年にわたり臨床の場で用いられている(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。
【0007】
より重要なのは、CEAが、標的治療の腫瘍関連抗原として有用性が期待されるようになったことである(非特許文献13)。癌免疫療法にCEAを標的として用いる主要な戦略が2つ開発されている。1つの方法は、抗CEA抗体によるCEA発現腫瘍細胞への自殺遺伝子(一酸化窒素合成酵素(iNOS:inducible nitric oxide synthase)遺伝子)(Kuroki M.ら、(2000)Anticancer Res.20(6A):4067−71)または同位元素(Wilkinson R W.ら、(2001)PNAS USA 98,10256−60,Goldenberg,D.M.(1991)Am.J.Gastroenterol.,86:1392−1403,Olafsen T.ら、Protein Engineering,Design & Selection,17,21−27,2004)の特異的ターゲティングである。また、この方法は、抗体、あるいは、薬物、トキシン、放射性ヌクレオチド、免疫調節物質(immumodulator)またはサイトカインなどの治療薬とコンジュゲートされた抗体フラグメントを使用するまでに広がっている。もう1つの方法は、免疫細胞溶解活性を利用するもので、具体的には抗体依存性細胞傷害(ADCC:antibody−dependent cellular cytotoxicity)または補体依存性細胞傷害(CDC:complement−dependent cytotoxicity)によりCEA発現腫瘍細胞を除去する(Imakiire Tら、,(2004)Int.J.Cancer:108,564−570)。これらの方法は、サイトカインを放出させるため、副作用が認められる場合が多い。
【0008】
本明細書に開示する参考文献、刊行物および特許出願については、参照によってその全体を本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Matsumotoら、J.Immunol.(2005)175:8042−50
【非特許文献2】Fuhlbriggeら、Blood(2006)107:1421−6
【非特許文献3】Santamariaら、Cancer Research(1996)56:3526−9
【非特許文献4】Baeckstromら、J.Biol.Chem.(1995)270:13688−92
【非特許文献5】Baeckstromら、J.Biol.Chem.(1997)272:11503−9
【非特許文献6】Sikutら、Biochem.Biophy.Res.Commun.(1997)238:612−6
【非特許文献7】Kadajaら、Oncogene(2004)23:2523−30
【非特許文献8】Laosら、Int.J.Oncol.(2006)28:695−704
【非特許文献9】Hammarstrom,S. Semin.Cancer Biol.(1999)9,67−81.
【非特許文献10】Gold P,ら、J.Expl.Med.(1965)122:467−81
【非特許文献11】Chevinsky,A.H. Semin.Surg.Oncol.(1991)7,162−166
【非特許文献12】Shively,J.E.ら、Crit.Rev.Oncol.Hematol.(1985)2,355−399
【非特許文献13】Kuroki M,ら、Anticancer Res(2002)22:4255−64
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
一態様では、本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球(たとえば、ヒト末梢性T細胞)またはJurkat細胞(リンパ芽球様の白血病細胞)に発現するCD43には特異的に結合しない新規な抗体を提供する。抗体が結合するエピトープは、炭水化物を含む。こうした抗体は、そうした非造血系癌細胞において、抗体への細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下で細胞死を誘導することができる。
【0011】
本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43および/またはCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合せず、かつ、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合後、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下で、非造血系癌細胞のアポトーシスを誘導することができる抗体であって、エピトープは、炭水化物を含み、エピトープに対する抗体の結合は、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造またはLNT構造を含む炭水化物により阻害される、抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗体が結合するエピトープは、フコース感受性である。
【0012】
非造血系癌細胞は、結腸直腸癌および胃癌由来の細胞を含むが、これに限定されるものではない。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するエピトープに結合すると、癌細胞の数を減少させ、および/または癌細胞の成長または増殖を阻害する。たとえば、抗体の存在下での細胞数の減少率または細胞成長の阻害率は、抗体の非存在下での細胞数または細胞成長と比較して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約65%、約75%またはそれ以上のいずれかである。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAの細胞外ドメインの立体構造エピトープ(conformation epitope)を認識し、立体構造エピトープは、トリペプチドが形成する構造、N’−Trp−Pro−Ile−C’と等価な物理的特徴および化学的特徴を持つ構造を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、N末端にアミノ酸配列N’−Trp−Pro−Ile−C’を含むポリペプチドに結合する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞の細胞表面にあるエピトープへの結合において、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞の細胞表面にあるエピトープへの結合において、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合において、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列由来の3つのCDR(complementarity−determining region)を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗体である。
【0023】
別の態様では、本発明は、重鎖および/または軽鎖または本明細書に記載の抗体のフラグメントを含むポリペプチドを提供する。また、本発明は、本明細書に記載の抗体のいずれかに由来するポリペプチドであって、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合せず、かつ、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するCD43への結合後、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能に非存在下で、非造血系癌細胞のアポトーシスを誘導することができる、ポリペプチドを提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドのいずれかをコードしているポリヌクレオチドを提供する。また、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを含むベクター(発現ベクターなど)を提供する。さらに、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドのいずれかを含む組成物を提供する。ある実施形態では、抗体またはポリペプチドを薬品に結合させる。いくつかの実施形態では、薬品は、治療薬(たとえば、放射性部分、細胞毒および化学療法剤)である。いくつかの実施形態では、薬品は、標識(たとえば、酵素、蛍光分子およびビオチン)である。
【0026】
また、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチド、あるいは、その抗体もしくはポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドのいずれかおよび薬学的に許容されるキャリアを有効量で含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、抗体またはポリペプチドを治療薬に結合させる。いくつかの実施形態では、組成物を、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射および筋肉内注射による投与用および経口、粘膜、吸入、舌下などのような他の投与形態用に製剤化する。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物は、本発明の複数種の抗体を含んでもよいし、本発明の抗体1種類と一緒に1種または複数種の他の抗癌抗体または他の抗癌剤を含んでもよい。
【0028】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドを作製する方法であって、抗体またはポリペプチドを作製できる条件下で宿主細胞またはその子孫を培養することを含み、宿主細胞は、抗体またはポリペプチドをコードしている発現ベクターを含む、方法を提供する いくつかの実施形態では、この方法は、抗体またはポリペプチドを精製することをさらに含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、好適な細胞において1種または複数種の抗体をコードしているポリヌクレオチドを発現させる(1つのベクターから、1つの軽鎖または重鎖として別々に発現させても、軽鎖および重鎖の両方として発現させもよい)ことで本明細書に記載の抗体のいずれかを作製し、通常、その後、目的の抗体またはポリペプチドを回収および/または単離する、方法を提供する。
【0030】
別の態様では、本発明は、細胞表面にエピトープを発現している非造血系癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法であって、癌細胞を本明細書に記載の抗体またはポリペプチドと接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、個体内にある。
【0031】
別の態様では、本発明は、個体の非造血系癌を処置する方法であって、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドを含む組成物を有効量で個体に投与することを含み、抗体またはポリペプチドは個体の癌細胞に結合する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌は、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌または肺癌である。
【0032】
別の態様では、本発明は、個体の非造血系癌を処置する方法であって、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドおよび別の抗癌剤を一定量で個体に投与することを含み、抗体またはポリペプチドは、個体の癌細胞に結合し、それにより抗体またはポリペプチドおよび抗癌剤の併用が個体の癌の効果的な処置となる、方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、個体の非造血系癌を処置するキットであって、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドを含む、キットを提供する。こうしたキットは、癌を処置するために抗体またはポリペプチドを個体に投与する際の説明書をさらに含んでも構わない。
【0034】
別の態様では、本発明は、非造血系癌の検出または診断、非造血系癌のある個体の処置を目的とした特定、あるいは非造血系癌の進行の監視を行う方法であって、サンプルを本明細書に記載の抗体またはポリペプチドと接触させることと、サンプルの細胞に対する抗体またはポリペプチドの結合の有無またはレベルを検出することとを含む、方法を提供する。サンプルにおいて抗体と細胞間で結合が見られれば、サンプルに癌細胞が含まれている可能性があり、および/または癌のある個体を本明細書に記載の抗体で処置してもよいことが示唆される。この方法は、結合のレベルを対照と比較するステップをさらに含んでも構わない。
【0035】
別の態様では、本発明は、非造血系癌の検出または診断、非造血系癌のある個体の処置を目的とした特定、あるいは非造血系癌の進行の監視を行うキットであって、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドおよびサンプルにおける細胞に対する抗体またはポリペプチドの結合を検出する試薬を含む、キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、5F1の標的タンパク質の同定結果を示す。COLO205ライセート(レーン1および3)またはCOLO320ライセート(レーン2および4)由来の、5F1のイムノアフィニティーカラムの溶出液中のタンパク質を、市販の抗CD43抗体AF2038(レーン1および2)または抗体5F1(レーン3および4)でイムノブロットした。
【図2A】図2Aは、3種の癌細胞株:結腸直腸癌細胞(COLO205およびDLD−1)および胃癌細胞(NCI−N87)に対する抗体5F1の結合のフローサイトメトリー解析結果を示す。
【図2B】図2Bは、正常な内皮細胞(HUVEC)、正常な(胎児)肺細胞(MRC−5)、正常な乳腺上皮細胞(MCF−10A)、正常な結腸直腸細胞(CCD841−CoN)、活性化Tリンパ球(活性化は7日間)または正常な末梢血単核球(PBMC)に対する抗体5F1の結合のフローサイトメトリー解析結果を示す。
【図3】図3は、抗体5F1または9E10(抗myc抗体)あるいは対照培地の存在下で、6、24および48時間インキュベートした後のCOLO205細胞の細胞質におけるヌクレオソームの平均エンリッチメントを示す。
【図4】図4は、抗体5F1、9E10またはアジドとインビトロで72時間インキュベートした後、WST−1アッセイで測定したCOLO205の細胞成長の結果を示す。
【図5】図5は、WST−1アッセイで測定した細胞成長の結果を示す。結腸直腸癌(colorectal carcinoma)細胞COLO205および正常な結腸直腸細胞株CCD841−CoNを、未処理あるいは9E10、5F1(「m133−5F1」という)または0.5%アジドとインキュベートした。
【図6】図6は、様々な濃度の5F1(0、2、4、8、16、32、64ug/ml)、9E10(64ug/ml)または0.5%アジドとのインキュベーション後のCOLO205細胞のMTT染色の結果を示す。
【図7】図7は、SCIDマウスのヒトCOLO205腫瘍に対する抗体5F1(「m133−5F1」ともいう)のインビボでの(腫瘍の大きさに対する)作用を示す。抗体5F1(500μg/注射)または対照抗体9E10(500μg/注射)あるいはPBS(未処理)を0、3、5、7、10、12、14および17日目に注射した。
【図8】図8は、SCIDマウスにおけるヒトCOLO205腫瘍に対する化学薬品5FU/LVを加えた抗体5F1のインビボでの作用(腫瘍の大きさに対する)を示す。COLO205細胞の接種から1週間後、25mg/kgの5FU/LVを1日おきに4回静脈内注射した。腫瘍移植から7日後3週にわたり、抗体5F1を0、6.25mg/kg、12.5mg/kgおよび25mg/kgで週2回腹腔内注射した。
【図9】図9Aは、COLO205細胞に対するキメラ抗体5F1の結合のフローサイトメトリー結果を示す。図9Bは、COLO205細胞と対照培地(未処理)、アジ化ナトリウム(0.5%)、マウス抗体5F1(m5F1、2〜32μg/ml)またはキメラ抗体5F1(c5F1、2〜32μg/ml)とのインキュベーション後のアネキシンV陽性細胞およびPI陽性細胞の比率を示す。
【図10】図10は、様々な抗体とのインキュベーション後のアポトーシス細胞死に対するCOLO205およびNCI−N87細胞の染色を示す。COLO205およびNCI−N87細胞を、対照、9E10(30ug/ml)、m5F1(10ug/ml)またはm5F1(30ug/ml)と一晩インキュベートした。次いで細胞をYO−PRO−1(A)またはアネキシン−VとPIとの併用(B)で染色した。条件ごとの染色比率を棒グラフに示す。
【図11】図11は、m5F1が、COLO205細胞に発現する組換えヒトCEA(rhCEA)に結合するが、COS−7細胞に発現するrhCEAを認識しないことを示す。図11Aでは、flagタグ付きヒトCEAを発現しているCOLO205細胞可溶化物を抗Flag抗体M2で免疫沈降し、免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにかけてから、NC紙にトランスファーした。NC紙を、図示したように抗Flag M2、m5F1、51−41、138−10またはCEA/Ab−3とインキュベートした。図11Bでは、flagタグ付きヒトCEAを発現しているCOS−7細胞(+)またはCEAを発現していないCOS−7細胞(−)の細胞可溶化物を抗Flag抗体M2で免疫沈降し、免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにかけてから、NC紙にトランスファーした。NC紙を、図示したように抗Flag M2、m5F1またはCEA/Ab−3とインキュベートした。
【図12】図12は、m5F1が、COLO205細胞に発現する組換えCD43(rhCD43)に結合するが、COS−7細胞に発現するrhCD43を認識しないことを示す。図12Aでは、COLO205細胞に発現し、プロテインAセファロースビーズで精製した可溶性CD43をSDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーし、このNC紙を、抗体m5F1、51−14または138−10でウエスタンブロットした。図12Bでは、hCD43またはhCD43/myc−HisをトランスフェクトしたCOS−7細胞、あるいはトランスフェクトしなかった細胞の細胞可溶化物をSDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーし、このNC紙を、抗CD43(MEM59)(左パネル)またはm5F1(右パネル)でウエスタンブロットした。
【図13】図13は、m5F1抗体がフコース依存性糖エピトープを認識することを示す。COLO205細胞に発現するrhCEAを0、0.01、0.03、0.1mUのα−1→(2,3,4)−フコシダーゼで処理した。処理後、タンパク質をSDS−PAGEにかけてから、クマーシーブルー染色するか(右パネル)、m5F1抗体を用いてウエスタンブロットを行った。
【図14】図14は、Lewisa−ラクトース(Lea−ラクトース)、Lewisb−ラクトース(Leb−ラクトース)、Lewisx−ラクトース(Lex−ラクトース)、ラクトース、Lewisy(Ley)、シアリル−Lewisx(シアリル−Lex)、Lewisa(Lea)、ラクト−N−テトラオース(LNT)およびレクト−N−ジフコヘキサオース II(LNDFH II)の構造を示す。
【図15】図15は、オリゴ糖を加えてCOLO205細胞に対するm5F1、138−10および51−41の結合を競合させた結合阻害アッセイの結果を示す。オリゴ糖(LNDFH II、LNT、sLe(x)、Le(y)、ラクトース、Le(x)−ラクトース、Le(b)−ラクトース、Le(a)−ラクトースまたはLe(a);それぞれ1mM)を、2×105個のCOLO205細胞を含む異なるウェルに加え、続いて抗体(138−10、51−41またはm5F1)を加えて、対照には抗体を加えなかった。COLO205細胞に対する抗体の結合をフローサイトメトリー解析で測定した。各抗体に対するオリゴ糖による結合阻害を、平均蛍光(florescence)値で判定した阻害率として図に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
「抗体」とは、免疫グロブリン分子の可変領域に存在する少なくとも1つの抗原認識部位を介して炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどのような標的に特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、この語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体ばかりでなく、そのフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(ScFv)、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の任意の修飾構造も包含する。抗体は、IgG、IgAまたはIgM(またはこれらのサブクラス)など任意のクラスの抗体を含むが、抗体は、特定のクラスである必要はない。免疫グロブリンは、抗体の重鎖定常ドメインのアミノ酸配列によって異なるクラスに分類することができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという5つの主要なクラスがあり、そのうちの一部は、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2などのサブクラス(アイソタイプ)にさらに分けることができる。免疫グロブリンの個々のクラスに対応する重鎖の定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。免疫グロブリンの各クラスのサブユニット構造および三次元構造は、周知である。
【0038】
本発明の抗体は、抗体の少なくとも1つのCDR領域により決定されるポリペプチドに対する親和性を持つ二重特異性分子、多重特異性分子、単鎖分子ならびにキメラ分子およびヒト化分子をさらに含むものである。さらに、本発明の抗体は、抗体の重鎖可変ドメインまたは抗体の軽鎖可変ドメインのどちらかである単一ドメイン抗体もさらに含む。Holtら、,Trends Biotechnol.21:484−490,2003を参照。また、抗体の6つの天然型相補性決定領域のうち3つを含む、抗体の重鎖可変ドメインまたは抗体の軽鎖可変ドメインのどちらかを含むドメイン抗体の作製方法についても、当該技術分野において公知である。たとえば、Muyldermans,Rev.Mol.Biotechnol.74:277−302,2001を参照されたい。
【0039】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体群の中の抗体をいう。言い換えれば、抗体集団を構成する個々の抗体は、わずかながら存在する場合がある自然に発生し得る突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は通常、特異性が高く、単一の抗原部位を標的とする。さらに、各モノクローナル抗体は、異なる決定基(エピトープ)を標的にする様々な抗体を含むことが一般的なポリクローナル抗体調製物と異なり、抗原の単一決定基を標的にする。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られた抗体の特性を示すもので、任意の特定の方法により抗体を作製する必要があるものと解釈してはならない。たとえば、本発明に従って使用できるモノクローナル抗体については、Kohler and Milstein,1975,Nature,256:495に最初に記されたハイブリドーマ法で製造してもよいし、米国特許第4,816,567号に記載されているような組換えDNA法で製造してもよい。さらに、たとえば、McCaffertyら、,1990,Nature,348:552−554に記載の技法を用いて作製されたファージライブラリーからモノクローナル抗体を単離しても構わない。
【0040】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」とは、第1の種の可変領域または可変領域の一部と第2の種の定常領域を持つ抗体をいう。インタクトなキメラ抗体は、キメラ軽鎖の2つのコピーおよびキメラ重鎖の2つのコピーを含む。キメラ抗体の作製については、当該技術分野において公知である(Cabillyら、(1984),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:3273−3277;Harlow and Lane(1988),Antibodies:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory)。一般に、こうしたキメラ抗体では、軽鎖および重鎖の可変領域がともに、一方の哺乳動物種に由来する抗体の可変領域に類似しているのに対し、定常部分は、他方の動物種に由来する抗体の配列に相同的である。こうしたキメラ形態の明確な利点の1つは、たとえば、容易に入手できる非ヒト宿主生物のハイブリドーマまたはB細胞を、たとえば、ヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて用いて、可変領域を現在知られている供給源から簡便に得ることができることにある。この可変領域には、調製しやすく特異性が供給源による影響を受けないという利点があり、定常領域がヒトであれば、抗体を注射する際に非ヒト供給源由来の定常領域の場合よりもヒト被験者が免疫反応を起こしにくい。しかしながら、この定義は、この特定例に限定されるものではない。
【0041】
「単離された」抗体とは、その天然環境の成分から同定され、分離および/または回収された抗体である。
【0042】
本明細書で使用する場合、「実質的に純粋」とは、純度(すなわち、夾雑物を含まない)が少なくとも50%、一層好ましくは純度が少なくとも90%、一層好ましくは純度が少なくとも95%、一層好ましくは純度が少なくとも98%、一層好ましくは純度が少なくとも99%である材料をいう。
【0043】
本明細書で使用する場合、「ヒト化」抗体とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最低限しか含まない特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合部分配列など)である非ヒト(たとえばマウス)抗体の形態をいう。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(complementary determining region)(CDR)由来の残基を、所望の特異性、親和性および能力を持つマウス、ラットまたはウサギなど、非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換える、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR:framework region)残基を、対応する非ヒト残基で置き換える。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移植したCDRまたはフレームワーク配列にも見られないが、抗体性能の一層の改良および最適化を行うために加える残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は実質的に、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの全部を含む。その可変ドメインでは、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全部または実質的に全部は、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。さらに、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリンのそれを含むのが最も望ましい。抗体は、国際公開第99/58572号に記載されているように改変したFc領域を含んでも構わない。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体から変化している1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)(元の抗体の1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼べる)を持っている。
【0044】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」は、ヒトから作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を持っている抗体をいい、および/または、当該技術分野において公知か、本明細書に開示されたヒト抗体の作製技法のいずれかを用いて作製されている。ヒト抗体のこの定義は、少なくとも1種のヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1種のヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。そうした例の1つとして、マウス軽鎖ポリペプチドおよびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体がある。当該技術分野において公知の種々の技法を用いてヒト抗体を作製することができる。一実施形態では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughanら、,1996,Nature Biotechnology,14:309−314;Sheetsら、,1998,PNAS,(USA)95:6157−6162;Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.,227:381;Marksら、,1991,J.Mol.Biol.,222:581)。また、たとえば、内在性免疫グロブリン遺伝子を一部または完全に不活化したマウスのようなトランスジェニックアニマルにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入して、ヒト抗体を作製してもよい。このアプローチについては、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;および同第5,661,016号に記載されている。あるいは、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球(このBリンパ球については個体から回収してもよいし、インビトロで感作してもよい)を不死化することで、ヒト抗体を調製することもできる。たとえば、Coleら、,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boernerら、,1991,J.Immunol.,147(1):86−95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0045】
抗体の「可変領域」とは、抗体の軽鎖可変領域または抗体の重鎖可変領域のどちらかあるいは両方をいう。重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域とも呼ばれる3つの相補性決定領域(CDR)が結合している4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖のCDRは、FRにより近接してつながっており、他方のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。2つのCDRを決定するには、少なくとも(1)異種間の配列多様性に基づくアプローチ(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda MD));および(2)抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al−lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927−948))といった技法がある。本明細書で使用する場合、CDRは、このアプローチのどちらか、または、2つのアプローチを併用して定義されるCDRを指してもよい。
【0046】
抗体の「定常領域」とは、抗体の軽鎖定常領域または抗体の重鎖定常領域のどちらかあるいは両方をいう。抗体の定常領域は通常、構造を安定化させるほか、抗体鎖の結合、分泌、経胎盤移行および補体結合など他の生物学的機能を与えるが、抗原に対する結合には関与していない。定常領域の遺伝子のアミノ酸配列および対応するエクソン配列は、それが由来する種によって異なるが、アロタイプが生じるアミノ酸配列の変異は、概ね種内の特定の定常領域に限られる。各鎖の可変領域は、結合ポリペプチド配列で定常領域に結合している。この結合配列は、軽鎖遺伝子の「J」配列と、重鎖遺伝子の「D」配列および「J」配列の組み合わせとによってコードされている。
【0047】
本明細書で使用する場合、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」および「ADCC」とは、Fc受容体(FcR:Fc receptor)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(たとえばナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞に結合した抗体を認識し、その後、標的細胞を溶解させる細胞媒介性の反応をいう。目的の分子のADCC活性については、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを用いて判定することができる。そうしたアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)およびNK細胞がある。その代わりに、またはそれに加えて、たとえば、Clynesら、,1998,PNAS(USA),95:652−656に開示されたような動物モデルを用いて、目的の分子のADCC活性をインビボで判定してもよい。
【0048】
「補体依存性細胞傷害」および「CDC」とは、補体の存在下で標的を溶解させることをいう。補体活性化の経路は、補体系の第1の成分(C1q)が同族抗原と複合体を形成した分子(たとえば抗体)に結合することで始まる。補体活性化を判定するには、たとえば、Gazzano−Santoro et al,J.Immunol.Methods,202:163(1996)に記載されているようなCDCアッセイを行ってもよい。
【0049】
本明細書では、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という語については同義で用い、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。ポリマーは、直鎖でも分枝でもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸を挟んで結合していてもよい。さらに、この語は、天然に修飾されている、あるいは、たとえば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または標識成分とのコンジュゲーションのような他の任意の操作または修飾などの介入により修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。さらに、この定義には、たとえば、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(たとえば、天然ではないアミノ酸など)および当該技術分野において公知の他の修飾体を含むポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドは抗体をベースにしているため、ポリペプチドが、単鎖または結合鎖として生じる可能性があることが理解されよう。
【0050】
本明細書では、「ポリヌクレオチド」または「核酸」については、同義に用い、任意の長さヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基および/またはこれらのアナログ、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマーに取り込まれる場合がある任意の基質であってもよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドおよびそのアナログを含んでも構わない。ヌクレオチド構造の修飾を行う場合は、ポリマーの構築の前でも後でもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分を含んでいてもよい。ポリヌクレオチドについては、標識成分とのコンジュゲーションなどより、重合後にさらに修飾することもできる。他のタイプの修飾として、たとえば、「キャップ」、アナログによる1種または複数種の天然ヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間の修飾(たとえば、非荷電結合(たとえば、メチルホスホナート、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カバマートなど)および荷電結合(たとえば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアートなど)による修飾、たとえば、タンパク質(たとえば、ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リシンなど)などのペンダント部分を含ませる修飾、インターカレーター(たとえば、アクリジン、ソラレンなど)による修飾、キレート剤(たとえば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含ませる修飾、アルキル化剤を含ませる修飾、修飾結合(たとえば、αアノマー核酸など)による修飾)、およびポリヌクレオチド(単数または複数)の無修飾形態が挙げられる。さらに、たとえば、糖に普通に存在するヒドロキシル基のいずれかを、ホスホン酸基、リン酸基で置換しても、標準的な保護基で保護しても、活性化して新たなヌクレオチドへの追加結合を作製してもよいし、固体支持体にコンジュゲートしてもよい。5’および3’末端のOHについては、リン酸化しても、アミンまたは1〜20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換しても構わない。さらに、他のヒドロキシルを標準的な保護基に誘導体化することもできる。さらに、ポリヌクレオチドは、一般に当該技術分野において公知のリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態を含んでもよく、たとえば、2’−−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環式糖アナログ、αアノマー糖、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、環状アナログおよびメチルリボシドなどの塩基性ヌクレオシドアナログがある。1つまたは複数のホスホジエステル結合を別の結合基で置換してもよい。そうした別の結合基として、ホスファートを、P(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、’’(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)(RまたはR’は各々独立にHまたは任意にエーテル(−O−)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルを含む置換もしくは非置換アルキル(1〜20個のC)である)で置換する実施形態があるが、これに限定されるものではない。ポリヌクレオチドのすべての結合が同一である必要はない。前述の記載を、RNAおよびDNAを含む本明細書に言及するすべてのポリヌクレオチドに適用する。
【0051】
本明細書で使用する場合、「ベクター」とは、1種または複数種の目的の遺伝子(単数または複数)または配列(単数または複数)を送達し、好ましくは宿主細胞において発現させることができるコンストラクトをいう。ベクターの例として、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、陽イオン性縮合剤に結合されたDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入したDNAまたはRNA発現ベクターおよび生成細胞などのある種の真核細胞があるが、これに限定されるものではない。
【0052】
本明細書で使用する場合、「発現制御配列」とは、核酸の転写を指令する核酸配列をいう。発現制御配列は、構成的もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーターまたはエンハンサーであってもよい。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動的に連結されている。
【0053】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、有益または所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的な用途の場合、有益または所望の結果には、疾患、その合併症および疾患の発生過程で見られる病理学的中間表現型の生化学的、組織学的および/または行動的症状を含む、疾患のリスクの除去もしくは抑制、重症度の緩和または発症の遅延などの結果が含まれる。治療用途の場合、有益または所望の結果には、疾患に起因する1つまたは複数の症状の減少、疾患に罹患している人の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬の用量の減少、ターゲティングなどによる別の薬の作用の強化、疾患の進行の遅延および/または生存の延長などの臨床結果がある。癌または腫瘍の場合、薬物の有効量は、癌細胞の数の減少;腫瘍の大きさの縮小;周辺臓器への癌細胞浸潤の抑制(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止);腫瘍転移の抑制(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の抑制;および/または障害に伴う1つまたは複数の症状のある程度の軽減に作用する場合がある。有効投与量を、単回で投与しても、複数回で投与してもよい。本発明において、薬物、化合物または医薬組成物の有効投与量は、直接あるいは間接に予防処置または治療処置を達成するのに十分な量である。臨床的な観点から理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効投与量を、別の薬物、化合物または医薬組成物との併用で達成する場合もあれば、そうでない場合もある。したがって、1種または複数種の治療薬を投与する観点から、「有効投与量」を考慮してもよく、1種または複数種の他の薬品と併用して、所望の結果を得る可能性がある、または、得ている場合、単一の薬品を有効量で投与すると考えてもよい。
【0054】
本明細書で使用する場合、「併用して」とは、1つの処置方式に加えて別の処置方式を投与することをいう。そのため、「併用して」とは、他方の処置方式を個体に投与する前、投与している最中または投与した後に、一方の処置方式を投与することをいう。
【0055】
本明細書で使用する場合、「処置」または「処置する」とは、好ましくは臨床的な結果を含め有益または所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の有益または所望の臨床的な結果として、癌性細胞の増殖(proliferation)の抑制(または癌細胞の破壊)、疾患に起因する諸症状の減少、疾患に罹患している人の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬の用量の減少、疾患の進行の遅延および/または個体の生存の延長の1つまたは複数があるが、これに限定されるものではない。
【0056】
本明細書で使用する場合、「疾患の発生の遅延」とは、疾患(癌など)の発生を遅らせる、妨げる、遅くする、妨害する、安定させる、および/または先延ばしすることをいう。こうした遅延の時間の長さは、疾患の既往および/または処置する個体によって異なってもよい。当業者には明らかなように、十分なまたはかなりの遅延は、個体が疾患を発生しないという点で実質的に予防を包含する。たとえば、転移の発生のような後期癌を遅延させることができる。
【0057】
「個体」または「被検体」とは、哺乳動物であり、一層好ましくはヒトである。さらに、哺乳動物には、家畜、競技用動物、ペット(ネコ、イヌ、ウマなど)、霊長類、マウスおよびラットも含まれるが、これに限定されるものではない。
【0058】
本明細書で使用する場合、「特異的に認識する」または「特異的に結合する」という語は、生体分子などの不均一な分子集団の存在下で標的の有無の判定に役立つ、標的と抗体間の誘引または結合などの測定可能で再現性のある相互作用をいう。たとえば、エピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、標的の他のエピトープまたは標的以外のエピトープに結合するよりも高い親和性、結合活性で、容易に、および/または長時間そのエピトープに結合する抗体である。この定義を読めば、たとえば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は、第2の標的に特異的または優先的に結合することもあれば、そうでない場合があることも理解されるであろう。そのため、「特異的結合」または「優先的な結合」は、必ずしも排他的な結合を(含んでもよいが)必要としない。標的に特異的に結合する抗体の結合定数は、少なくとも約103M−1または104M−1、場合によっては約105M−1または106M−1、他の場合には約106M−1または107M−1、約108M−1〜109M−1または約1010M−1〜1011M−1またはそれ以上であってもよい。種々のイムノアッセイフォーマットを用いて、特定のタンパク質に対して特異的な免疫反応を示す抗体を選択することができる。たとえば、固相ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)イムノアッセイを用いて、タンパク質に対して特異的な免疫反応を示すモノクローナル抗体を日常的に選択することができる。たとえば、特定の免疫反応性を判定できるイムノアッセイのフォーマットおよび条件については、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York参照されたい。
【0059】
本明細書で使用する場合、「癌」、「腫瘍」、「癌性」および「悪性」という語は、一般に無秩序な細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すか、説明する。癌の例として、腺癌などの癌腫、リンパ腫、芽腫、メラノーマおよび肉腫があるが、これに限定されるものではない。そうした癌のより具体的な例として、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、胃腸癌、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、神経膠腫、卵巣癌、肝癌およびヘパトーマなどの肝臓癌、膀胱癌、乳房癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎細胞癌およびウィルムス腫瘍などの腎臓癌、基底細胞癌、メラノーマ、前立腺癌、甲状腺癌、精巣癌、食道癌および様々なタイプの頭頸部癌がある。
【0060】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の言及を含む。たとえば、「抗体」について言及する場合、1つの抗体からモル量のような多数の抗体をいい、当業者に公知のその等価物を含んでおり、以下同様である。
【0061】
本明細書に記載の本発明の態様および変形例は、態様および変形例「からなる」および/または態様および変形例「から本質的になる」ものを含むことが理解されよう。
【0062】
非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAの炭水化物エピトープに特異的に結合する抗体およびポリペプチド
本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43および/またはCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球(末梢性T細胞など)またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合しない抗体に由来する、単離された抗体およびポリペプチドを提供する。本発明の抗体およびポリペプチドは、以下の特徴のうち1つまたは複数をさらに有していてもよい:(a)エピトープを含む分子をα−1→(2,3,4)−フコシダーゼで処置した場合、エピトープに対する抗体またはポリペプチドの結合が減少する;(b)エピトープに対する抗体またはポリペプチドの結合が、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造および/またはLNT構造を含む炭水化物により阻害される;(c)癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合後、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の存在下で(アポトーシスなどにより)非造血系癌細胞の死を誘導する;(d)癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合後、非造血系癌細胞の細胞成長または増殖を阻害する;および(e)結腸直腸癌および胃癌など、個体の細胞表面にエピトープを発現させる非造血系癌を処置または防止する。
【0063】
本明細書で使用する場合、「阻害」という語は、部分的阻害および完全な阻害を含む。たとえば、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造またはLNT構造を含む炭水化物で、CD43およびCEAのエピトープに対する抗体またはポリペプチドの結合を、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%阻害する。エピトープに対する抗体の結合については、直接的な競合または他のメカメカニズムにより阻害することもできる。
【0064】
エピトープを発現する非造血系癌細胞の例として、結腸直腸癌細胞(COLO205およびDLD−1など)および胃癌細胞(NCI−N87など)があるが、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明の抗体およびポリペプチドは、非造血系癌細胞に存在するCD43の細胞外ドメインを認識できるが、白血球のCD43(たとえば、末梢性T細胞)の細胞外ドメインまたはJurkat細胞(リンパ芽球様の白血病細胞)に発現するCD43の細胞外ドメインには結合しない。いくつかの実施形態では、本発明の新規な抗体またはポリペプチドは、造血系由来の細胞に発現するCD43に特異的に結合しない。
【0066】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、単鎖(ScFv)、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および必要な特異性を持つ抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の任意の変形構造を包含してもよい。抗体は、マウス由来でも、ラット由来でも、ラクダ由来でも、ヒト由来でも、他の任意のものの由来(ヒト化抗体など)でも構わない。
【0067】
CD43またはCEAに対するポリペプチド(抗体を含む)の結合親和性は、約500nM、約400nM、約300nM、約200nM、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pMまたは約50pMのいずれかを下回ってもよい。当該技術分野において周知のように、結合親和性をKD、すなわち解離定数で表してもよく、結合親和性が高まると、KDは小さくなる。CD43またはCEAに対する抗体の結合親和性を判定する1つのやり方は、抗体の単機能Fabフラグメントの結合親和性を測定する。単機能Fabフラグメントを得るには、抗体(たとえば、IgG)をパパインで切断しても、組換えによって発現させてもよい。表面プラズモン共鳴(BIAcore3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR:surface plasmon resonance)システム,BIAcore,INC,ピスカウェイ(Piscaway),ニュージャージー州)およびELISAで抗体のFabフラグメントの親和性を判定してもよい。反応速度論的会合速度(kon)および解離速度(koff)(通常25℃で測定)を得て、平衡解離定数(KD)値をkon/koffとして算出する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびポリペプチドは、癌細胞の数を減少させ、および/またはエピトープを持つ腫瘍または癌細胞の細胞成長または増殖を阻害する。好ましくは、細胞数の減少率または細胞成長もしくは増殖の阻害率は、抗体またはポリペプチドを処置していない細胞と比較して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約65%、約75%またはそれ以上である。癌細胞には、結腸直腸癌、膵臓癌、肺癌、胃癌があるが、これに限定されるものではない。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびポリペプチドは、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合後、たとえば、アポトーシスにより細胞死を単独で誘導することができる。本明細書で使用する場合、「細胞死を誘導する」という語は、本発明の抗体またはポリペプチドが、細胞表面に発現する分子と直接的に相互作用することができ、細胞の細胞死を誘導するには、細胞毒コンジュゲーションまたは他の免疫エフェクター機能、すなわち、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または食作用などの他の因子の助けを借りずに、結合/相互作用だけで十分であることをいう。
【0070】
本明細書で使用する場合、「アポトーシス」という語は、遺伝子依存性の細胞内の細胞破壊プロセスをいう。アポトーシスは、壊死とは異なる。アポトーシスでは、細胞骨格の破壊、細胞質の収縮および凝縮、細胞膜表面におけるホスファチジルセリンの発現ならびにブレッビングが起こり、細胞膜に結合した小胞またはアポトーシス小体が形成される。このプロセスは、「プログラムされた細胞死」とも呼ばれる。アポトーシスの過程では、curved細胞表面、核クロマチンの凝縮、染色体DNAの断片化およびミトコンドリア機能の低下などの特徴的な現象が観察される。アネキシンV、ヨウ化プロピジウム、DNA断片化アッセイおよびYO−PRO−1(インビトロジェン(Invitrogen))による細胞の染色など、既知の様々な技法を用いてアポトーシスを検出することができる。
【0071】
細胞死(アポトーシスなど)を検出する方法には、形態、DNA断片化、酵素活性およびポリペプチド分解などの検出があるが、これに限定されるものではない。参照によって本明細書に援用するSimanら、,米国特許第6,048,703号;Martin and Green(1995),Cell,82:349−52;Thomberry and Lazebnik(1998),Science,281:1312−6;Zouら、,米国特許第6,291,643号;Scovassi and Poirier(1999),Mol.Cell Biochem.,199:125−37;Wyllie e tal.(1980),Int.Rev.Cytol,68:251−306;Belhocineら、(2004),Technol.Cancer Res.Treat.,3(1):23−32を参照されたい。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびポリペプチドは、非造血系癌細胞に発現する立体構造エピトープを認識し、このエピトープは、トリペプチドが形成する構造、N’−Trp−Pro−Ile−C’と等価な物理的特徴および化学的特徴を持つ構造を含む。本明細書で使用する場合、「エピトープは、ペプチドが形成する構造と等価な物理的特徴および化学的特徴を持つ構造を含む」とは、抗体結合に関して2つの構造の物理化学的特性が同等であるため、抗体が一方の構造に特異的に結合すれば、両方の構造に結合することをいう。いくつかの実施形態では、抗体およびポリペプチドは、ポリペプチドのN末端にアミノ酸配列、N’−Trp−Pro−Ile−C’を含むポリペプチドに結合する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびポリペプチドは、癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合において抗体5F1、138−10または51−41と競合する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはポリペプチドは、抗体5F1、138−10および51−41のうち少なくとも1つが結合するCD43またはCEAのエピトープに結合する。
【0074】
競合アッセイを用いて、同一または立体的にオーバーラップするエピトープを認識することで2つの抗体が同じエピトープに結合するかどうか、あるいは、ある抗体が別の抗体の抗原への結合を競合的に阻害するかどうかを判定することができる。こうしたアッセイは、当該技術分野において公知であり、実施例に詳細に記載してある。一般には、抗原または抗原を発現している細胞をマルチウェルプレートに固定化し、非標識の抗体が標識抗体の結合を遮断する能力を測定する。そうした競合アッセイの一般的な標識は、放射性標識または酵素標識である。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体5F1または5F1に由来する抗体である。5F1の重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれ配列番号1および配列番号2に記載してある。本発明は、抗体5F1のフラグメントもしくは領域を含む抗体またはポリペプチドを提供する。一実施形態では、フラグメントは、抗体5F1の軽鎖である。別の実施形態では、フラグメントは、抗体5F1の重鎖である。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体5F1の軽鎖および/または重鎖由来の1つまたは複数の可変領域を含む。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体5F1の軽鎖および/または重鎖由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7に示す重鎖可変領域および配列番号8に示す軽鎖可変領域を含むh5F1などの5F1のヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体5F1に由来する1つまたは複数のCDRは、5F1の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つのCDRと、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%が同一である。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体138−10または138−10に由来する抗体である。138−10の重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれ配列番号3および配列番号4に記載してある。本発明は、抗体138−10のフラグメントもしくは領域を含む抗体またはポリペプチドを提供する。一実施形態では、フラグメントは、抗体138−10の軽鎖である。別の実施形態では、フラグメントは、抗体138−10の重鎖である。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体138−10の軽鎖および/または重鎖由来の1つまたは複数の可変領域を含む。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体138−10の軽鎖および/または重鎖由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、138−10のヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体138−10に由来する1つまたは複数のCDRは、138−10の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つのCDRと、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%が同質である。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体51−41または51−41に由来する抗体である。51−41の重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれ配列番号5および配列番号6に記載してある。本発明は、抗体51−41のフラグメントもしくは領域を含む抗体またはポリペプチドを提供する。一実施形態では、フラグメントは、抗体51−41の軽鎖である。別の実施形態では、フラグメントは、抗体51−41の重鎖である。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体51−41の軽鎖および/または重鎖由来の1つまたは複数の可変領域を含む。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体51−41の軽鎖および/または重鎖由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、51−41のヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体51−41に由来する1つまたは複数のCDRは、51−41の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つのCDRと、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%が同一である。
【0078】
いくつかの実施形態では、CDRは、KabatのCDRである。他の実施形態では、CDRは、ChothiaのCDRである。他の実施形態では、CDRは、KabatおよびChothiaのCDRの組み合わせ(「混合型(combined)CDR」または「拡張型(extended)CDR」ともいう)である。換言すれば、複数のCDRを含む任意の実施形態では、CDRは、Kabat、Chothiaおよび/または混合型のいずれであっても構わない。
【0079】
抗体および抗体に由来するポリペプチドを製造する方法については、当該技術分野において公知であり、本明細書に開示してある。確立した方法を用いて本発明のモノクローナル抗体を調製することができる。たとえば、Kohler and Milstein(1975),Nature,256:495に記載されているようなハイブリドーマ技法を用いてモノクローナル抗体を調製してもよい。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主生物を免疫剤(たとえば、CD43またはCEAを発現している癌細胞、本明細書に記載の抗体を用いて精製できるCD43またはCEA(癌細胞に発現する細胞外ドメインおよびそのフラグメントを含む)またはポリペプチドのN末端にアミノ酸配列N’−Trp−Pro−IIe−C’を含むポリペプチド)で免疫して、免疫剤に特異的に結合する抗体を作製する、あるいは作製する能力のあるリンパ球を誘導するのが一般的である。あるいは、リンパ球をインビトロで感作してもよい。次いで、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を用いてリンパ球を不死化細胞株と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−1031)。不死化細胞株は、ほとんどの場合、形質転換された哺乳動物細胞、具体的には齧歯動物、ウサギ、ウシおよびヒト由来の骨髄腫細胞である。普通は、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株を用いる。好ましくは、融合していない不死化細胞の成長または生存を阻害する1種または複数種の物質を含む好適な培地で、ハイブリドーマ細胞を培養してもよい。たとえば、親細胞にヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT:hypoxanthine guanine phosphoribosyl transferase)酵素が欠損している場合、ハイブリドーマの培地は、HGPRT欠損細胞の成長を防ぐ物質ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含むのが一般的である(「HAT培地」)。
【0080】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による高レベルで安定な抗体の発現を支持するもので、かつ、HAT培地などの培地に感受性である。一層好ましい不死化細胞株は、たとえば、Salk Institute Cell Distribution Center,サンディエゴ,カリフォルニア州およびアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection),マナッサス,ヴァージニア州から入手可能なマウスの骨髄腫株である。ヒトモノクローナル抗体の作製に関しては、ヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株についても記載されている(Kozbor,J.Immunol.(1984),133:3001;Brodeurら、,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)。
【0081】
その後、ハイブリドーマ細胞を培養する培地について、モノクローナル抗体の有無をアッセイすればよい。抗体に対して、非造血系癌または腫瘍細胞に発現するCD−43またはCEAのエピトープには特異的に結合するが、CD43を発現する白血球、Jurkat細胞および/またはCD43を発現する造血系由来の他の細胞には特異的に結合しないかどうかをスクリーニングすることができる。エピトープを含む癌細胞または細胞外ドメイン(そのフラグメントを含む)を用いてスクリーニングを行っても構わない。たとえば、実施例10に記載のCOLO205細胞に発現するCEA−N−A2を用いてスクリーニングを行ってもよい。
【0082】
Jurkat細胞株は、リンパ芽球様の白血病細胞であり、Schneiderらにより14歳の少年の末梢血から樹立された。Schneiderら、,Int.J.Cancer 19:621−626,1977を参照されたい。様々なJurkat細胞株が、たとえば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(たとえば、ATCC TIB−152、ATCC TIB−153、ATCC CRL−2678)から市販されている。
【0083】
好ましくは、ハイブリドーマ細胞が産生するモノクローナル抗体の結合特異性を免疫沈降またはラジオイムノアッセイ(RIA:radioimmunoassay)もしくは酵素免疫測定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイで判定する。そうした技法およびアッセイは、当該技術分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性については、たとえば、Munson and Pollard(1980),Anal.Biochem.,107:220のスキャッチャード(Scatchard)解析により判定することができる。
【0084】
同定した抗体における細胞死(たとえば、アポトーシス)を誘導する能力および/または細胞の成長または増殖を阻害する能力について、当該技術分野において公知の方法および本明細書に記載の方法を用いてさらに検査してもよい。
【0085】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、希釈を少なくした手順でサブクローニングし、標準的な方法(Goding、上掲)で成長させてもよい。そのための好適な培地として、たとえば、ダルベッコ変法イーグル培地またはRPMI−1640培地がある。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、哺乳動物の腹水のようにインビボで成長させてもよい。
【0086】
ハイブリドーマ細胞を培養してモノクローナル抗体を作製できれば、ハイブリドーマ細胞が分泌する抗体をさらに単離または精製することができる。たとえば、プロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなど、従来の免疫グロブリン精製手順で培地または腹水から抗体を単離または精製しても構わない。
【0087】
本発明の抗体を、参照によって本明細書に援用する米国特許第4,816,567号および同第6,331,415号に記載されているような組換えDNA法で作製してもよい。たとえば、本発明のモノクローナル抗体をコードしているDNAを、従来の手順(たとえば、マウスの抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブなど)を用いて容易に単離して配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そうしたDNAの好ましい供給源になる。DNAを単離したら、発現ベクターに組み込み、次いでそのベクターを、本来ならば免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルのCOS細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得ることができる。さらに、たとえば、マウスの相同配列をヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列に置換して(米国特許第4,816,567号)、あるいは、非免疫グロブリンのポリペプチドのコード配列の全部または一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合的に連結してDNAを修飾してもよい。本発明の抗体の定常ドメイン、あるいは、本発明の抗体における1つの抗原結合部位の可変ドメインを、そうした非免疫グロブリンのポリペプチドと置換してキメラ二価抗体を作製してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体を2種の発現ベクターから発現させる。第1の発現ベクターは、抗体の重鎖の可変領域をコードしている第1の部分および抗体の重鎖の定常領域をコードしている第2の部分を含む抗体(たとえば、ヒト化抗体)の重鎖をコードしている。いくつかの実施形態では、第1の部分は、配列番号7に示すアミノ酸配列を持つ可変領域をコードしている。第2の発現ベクターは、抗体の軽鎖の可変領域をコードしている第1の部分および抗体の軽鎖の定常領域をコードしている第2の部分を含む抗体の軽鎖をコードしている。いくつかの実施形態では、第1の部分は、配列番号8に示すアミノ酸配列を持つ可変領域をコードしている。
【0089】
あるいは、本発明の抗体(たとえば、ヒト化抗体)を単一の発現ベクターから発現させる。単一の発現ベクターは、本発明の抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードしている。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、配列番号7に示すアミノ酸配列を持つ重鎖の可変領域および配列番号8に示すアミノ酸配列を持つ軽鎖の可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を含む。
【0090】
通常、発現ベクターは、宿主細胞と適合性のある種に由来する転写調節配列および翻訳調節配列を含む。さらに、ベクターは通常、形質転換細胞における表現型による選抜を可能にする特定の遺伝子(単数または複数)も保有する。
【0091】
真核細胞の様々な組換え宿主ベクター発現系が知られており、それを本発明に用いてもよい。たとえば、真核微生物では、Saccharomyces cerevisiae、すなわち一般のパン酵母が最も多く用いられるが、Pichia pastorisなど他にも多くの菌株を用いることができる。ATCCから入手可能なSp2/0またはチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)など、多細胞生物に由来する細胞株を宿主として用いてもよい。真核細胞の形質転換に好適な典型的なベクタープラスミドには、たとえば、pSV2neoおよびpSV2gpt(ATCC)、pSVLおよびpSVK3(ファルマシア(Pharmacia))ならびにpBPV−1/pML2d(インターナショナルバイオテクノロジーインク(International Biotechnology,Inc.))がある。
【0092】
本発明に有用な真核宿主細胞は、好ましくは、ハイブリドーマ細胞、骨髄腫細胞、形質細胞腫細胞またはリンパ腫細胞である。しかしながら、哺乳動物の宿主細胞が、タンパク質の発現のための転写および翻訳DNA配列を認識し、リーダー配列を切断してタンパク質を分泌させてリーダーペプチドを処理し、たとえば、グリコシル化のようなタンパク質の翻訳後修飾を行える場合、他の真核宿主細胞を好適に用いることができる。
【0093】
したがって、本発明は、本明細書に開示するDNAコンストラクトを含む組換え発現ベクターで形質転換されていて、かつ、本発明の抗体またはポリペプチドを発現することができる真核宿主細胞を提供する。故に、いくつかの実施形態では、本発明の形質転換宿主細胞は、本明細書に記載の軽鎖DNA配列および重鎖DNA配列と、抗体またはポリペプチドの発現を誘導する軽鎖および重鎖をコードしているDNA配列に基づいて配置している転写調節配列および翻訳調節配列とを含む少なくとも1つのDNAコンストラクトを含む。
【0094】
本発明に用いる宿主細胞については、当該技術分野において周知の標準的なトランスフェクション手順により種々のやり方で形質転換することができる。用いることができる標準的なトランスフェクション手順には、エレクトロポレーション法、プロトプラスト融合法およびリン酸カルシウム沈殿法がある。こうした技法は概ね、F.Toneguzzoら、(1986),Mol.Cell Biol,6:703−706;G.Chuら、,Nucleic Acid Res.(1987),15:1311−1325;D.Riceら、,Proc.Natl.Acad.Sci USA(1979),79:7862−7865;and V.Oiら、,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1983),80:825−829に記載されている。
【0095】
発現ベクターが2種類の場合、2種の発現ベクターを宿主細胞に1つ1つ別々に導入してもよいし、一緒に導入してもよい(同時導入または同時トランスフェクト)。
【0096】
また、本発明は、抗体またはポリペプチドの作製方法であって、抗体またはポリペプチドをコードしている発現ベクター(単数または複数)を含む宿主細胞を培養することと、当業者に周知のやり方で培養から抗体またはポリペプチドを回収することとを含む、方法も提供する。
【0097】
また、所望の抗体をトランスジェニックアニマルで作製することもできる。適切な発現ベクターを卵に微量注入することと、その卵を偽妊娠の雌に移植することと、所望の抗体を発現する子孫を選択することとを含む標準的な方法により、好適なトランスジェニックアニマルを得ることができる。
【0098】
また、本発明は、癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープを特異的に認識するキメラ抗体を提供する。たとえば、キメラ抗体の可変領域と定常領域は、別の種に由来する。いくつかの実施形態では、重鎖と軽鎖の可変領域は、ともに本明細書に記載のマウスの抗体に由来する。いくつかの実施形態では、可変領域は、配列番号1および配列番号2に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、可変領域は、配列番号3および配列番号4に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、可変領域は、配列番号5および配列番号6に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖と軽鎖の定常領域は、ともにヒト抗体である。
【0099】
本発明のキメラ抗体については、当該技術分野で確立された技法によって調製することができる。たとえば、参照によって各々を本明細書に援用する米国特許第6,808,901号、米国特許第6,652,852号、米国特許第6,329,508号、米国特許第6,120,767号および米国特許第5,677,427号を参照されたい。一般に、抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードしているcDNAを得て、cDNAを発現ベクターに挿入して、真核宿主細胞に導入すると、本発明のキメラ抗体が発現することで、キメラ抗体を調製することができる。好ましくは、発現ベクターには、任意の可変重鎖または軽鎖配列を発現ベクターに挿入しやすいように機能的に完全な定常重鎖または軽鎖配列がある。
【0100】
本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープを特異的に認識するヒト化抗体を提供する。ヒト化抗体は、CDRの残基を、所望の特異性、親和性および能力を持つマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDRの残基で置換したヒト抗体が一般的である。場合によっては、ヒト抗体のFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基で置換することもある。
【0101】
モノクローナル抗体をヒト化するには、一般に4つのステップがある。それは:(1)出発抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予想されるアミノ酸配列を決定するステップ、(2)ヒト化抗体を設計するステップ、すなわち、ヒト化プロセスにおいて用いる抗体フレームワーク領域を決定するステップ、(3)実際のヒト化の方法/技法のステップおよび(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。たとえば、米国特許第4,816,567号;同第5,807,715号;同第5,866,692号;同第6,331,415号;同第5,530,101号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第5,585,089号;同第6,180,370号;および同第6,548,640号を参照されたい。たとえば、抗体を臨床試験およびヒトの処置に用いる場合、定常領域を操作してヒト定常領域との類似性を高め、免疫反応を抑えることができる。たとえば、米国特許第5,997,867号および同第5,866,692号を参照されたい。
【0102】
抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持したまま抗体をヒト化することが重要である。それには、三次元モデルの親配列およびヒト化配列を用いて親配列および種々の概念的ヒト化産物を解析するプロセスでヒト化抗体を調製すればよい。三次元の免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択した候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を図解表示するコンピュータプログラムを入手することができる。こうした表示を検討すれば、候補免疫グロブリン配列の機能に対して推定される残基の役割の解析、すなわち、抗原に対する候補免疫グロブリンの結合能力に影響を与える残基の解析を行うことができる。こうして、コンセンサス配列および移入配列からFR残基を選択し組み合わせて、標的抗原(単数または複数)に対する親和性の増強など、抗体の所望の特徴を得る。一般に、CDR残基は、抗原結合に直接関与し、最も大きな影響を与える。ヒト化抗体は、抗体の1つまたは複数の特徴を改良するためヒンジ領域が改変されていてもよい。
【0103】
別の方法として、抗体をスクリーニングしファージディスプレイ法による組換えで製造する。たとえば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号および同第6,265,150号;およびWinterら、,Annu.Rev.Immunol 12:433−455(1994)を参照されたい。あるいは、ファージディスプレイ法(McCaffertyら、,Nature 348:552−553(1990))を用いて非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメインの遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体フラグメントをインビトロで作製してもよい。この手法によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなど糸状のバクテリオファージのメジャーあるいはマイナーコートタンパク質の遺伝子にインフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面に機能的な抗体フラグメントとして提示させる。糸状の粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAのコピーを含んでいるため、抗体の機能的特性に基づき選択を行えば、その特性を示す遺伝子をコードしている抗体を選択することにもなる。したがって、このファージは、ある程度B細胞の特性と類似している。ファージディスプレイについては、種々のフォーマットで行うことができる。概説には、たとえば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3,564−571(1993)を参照されたい。ファージディスプレイでは、V−遺伝子セグメントの複数の供給源を用いることができる。Clackson et al, Nature 352:624−628 (1991)は、多様な抗オキサゾロン抗体を、感作したマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模でランダムなコンビナトリアルライブラリーから単離した。感作されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを作成することができ、 Markら、,J.Mol.Biol.222:581−597(1991),or Griffithら、,EMBOJ.12:725−734(1993)が記載した技法に本質的に従って多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を単離してもよい。自然な免疫反応では、抗体遺伝子は高い頻度で突然変異を積み重ねる(体細胞突然変異)。変異(change)がある程度導入されると、親和性が高まり、高親和性の表面免疫グロブリンを提示しているB細胞は優先的に複製され、その後の抗原チャレンジの過程で分化される。この自然なプロセスを、「鎖シャフリング」と呼ばれる手法を用いて模倣することができる。Marks,ら、Bio/Technol.10:779−783(1992))を参照されたい。この方法では、重鎖V領域遺伝子および軽鎖V領域遺伝子を、非免疫ドナーから得られるVドメイン遺伝子の自然に発生する変異体のレパートリー(レパートリー)と順次置換することで、ファージディスプレイで得られる「一次」ヒト抗体の親和性を改善することができる。この手法であれば、親和性がpM〜nMの範囲にある抗体および抗体フラグメントの作製が可能である。非常に大きなファージ抗体レパートリー(「マザーオブオールライブラリー(mother−of−all libraries)」とも呼ばれる)を作製する戦略については、Waterhouse et al,Nucl.Acids Res.21:2265−2266 (1993)に記載されている。また、遺伝子シャフリングを用いて齧歯動物抗体からヒト抗体を得てもよく、この場合、ヒト抗体は、最初の齧歯動物抗体と同等の親和性と特性を持つ。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法では、ファージディスプレイ手法で得られる齧歯動物抗体の重鎖Vドメイン遺伝子または軽鎖Vドメイン遺伝子をヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換し、齧歯動物−ヒトキメラを作製する。抗原を選択することが、機能的な抗原結合部位を回復できるヒト可変領域の単離につながる。すなわち、エピトープがパートナーの選択を支配する(インプリントする)。このプロセスを繰り返して残りの齧歯動物Vドメインを置換すれば、ヒト抗体が得られる(国際公開第93/06213号,published April 1,1993を参照)。CDRグラフティングによる従来の齧歯動物抗体のヒト化と異なり、この手法では、齧歯動物由来のフレームワーク残基またはCDR残基のない完全なヒト抗体が得られる。上記の考察はヒト化抗体に関するが、考察対象の一般的な原理は、たとえば、イヌ、ネコ、霊長類、ウマおよびウシ用に抗体をカスタマイズする際に適用できることは明らかである。
【0104】
ある実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。抗原に特異的に結合する非ヒト抗体を用いて、その抗原に結合する完全ヒト抗体を作製することができる。たとえば、当業者は、非ヒト抗体の重鎖を様々なヒト軽鎖を発現する発現ライブラリーと共発現させる鎖スワッピング手法を用いてもよい。次いで、得られたハイブリッド抗体(1つのヒト軽鎖と1つの非ヒト重鎖を含む)については、抗原結合をスクリーニングする。その後、抗原結合に関与する軽鎖をヒト抗体の重鎖ライブラリーと共発現させる。得られたヒト抗体を対象に、抗原結合について、もう一度スクリーニングを行う。このような技法については、米国特許第5,565,332号により詳細に記載されている。さらに、抗原を用いてヒト免疫グロブリン遺伝子を導入したトラスジェニック動物に接種してもよい。たとえば、米国特許第5,661,016号を参照されたい。
【0105】
抗体は、少なくとも2種類の抗原に対して結合特異性を持つモノクローナル抗体の二重特異性抗体でもよく、本明細書に開示する抗体を用いて調製することができる。二重特異性抗体を製造する方法は、当該技術分野において公知である(たとえば、Suresh et al,1986,Methods in Enzymology 121:210を参照)。従来の組換え型二重特異性抗体の作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現をベースとし、その2つの重鎖は異なる特異性を持っていた(Millstein and Cuello,1983,Nature 305,537−539)。
【0106】
二重特異性抗体の製造の一アプローチによれば、所望の結合特異性を持つ抗体可変ドメイン(抗体抗原結合部位)を免疫グロブリンの定常ドメイン配列と融合する。この融合は、好ましくはヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域のうち少なくとも一部を含む免疫グロブリンの重鎖定常ドメインとの融合である。この定常ドメインは、各融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖との結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を含むことが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、異なる発現ベクターに挿入し、好適な宿主生物に共導入する。こうして別々のベクターに共導入すれば、この構築に用いる3つのポリペプチド鎖の比率が異なるとき収量が最適になる場合、実施形態における3つのポリペプチドフラグメントの相互の割合を調節する際の柔軟性が高まる。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖が同じ割合で発現した方が高い収量になる場合、またはその割合に特に重要性がない場合、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入してもよい。
【0107】
一アプローチでは、二重特異性抗体は、一方の腕に第1の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖があり、他方の腕にハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を与える)がある。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖を持つこうした非対称構造により、不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから所望の二重特異性化合物を分離しやくなる。このアプローチは、国際公開第94/04690号,published March 3,1994に記載されている。
【0108】
共有結合で結合した2つの抗体を含むヘテロコンジュゲート抗体も、本発明の範囲内である。そうした抗体は、免疫系細胞を不要な細胞に向かわせるのに使用される(米国特許第4,676,980号)ほか、HTV感染の処置(国際公開第91/00360号および国際公開第92/200373号;および欧州特許第03089号)にも使用されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を用いて製造することができる。好適な架橋剤および技法については、当該技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0109】
単鎖Fvフラグメントも、Iliades et al,1997,FEBS Letters,409:437−441に記載されているように作製することができる。種々のリンカーを用いたこうした単鎖フラグメントの結合については、Korttら、,1997,Protein Engineering,10:423−433に記載されている。抗体の組換え作製および操作の様々な技法は、当該技術分野において周知である。
【0110】
本発明は、上記のモノクローナル抗体ばかりでなく、抗体の活性結合領域を含むその任意のフラグメント(Fab、F(ab’)2、scFv、Fvフラグメントおよび同種のものなど)を包含するものである。そうしたフラグメントを、当該技術分野において確立された技法を用いて本明細書に記載のモノクローナル抗体から作製することができる(Rousseauxら、(1986),in Methods Enzymol,121:663−69 Academic Press)。
【0111】
抗体フラグメントを調製する方法は、当該技術分野において周知である。たとえば、ペプシンで抗体を酵素的に切断しF(ab’)2と呼ばれる100Kdのフラグメントを得ることで抗体フラグメントを作製することができる。このフラグメントを、チオール還元剤および任意にジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の保護基を用いてさらに切断して、50Kdの一価Fab’フラグメントを作製してもよい。あるいは、パパインを用いて酵素的に切断して、2つの一価Fabフラグメントおよび1つのFcフラグメントを直接作製しても構わない。こうした方法は、たとえば、米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号およびそこに含まれる参考文献に記載されており、特許については、参照によって本明細書に援用する。さらに、Nisonoffら、(1960),Arch Biochem.Biophys.89:230;Porter(1959),Biochem.J.73:119,Edelmanら、,in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL.1,page 422(Academic Press 1967)を参照されたい。
【0112】
あるいは、抗体のFabをコードしているDNAを原核生物の発現ベクターまたは真核生物の発現ベクターに挿入し、そのベクターを、Fabを発現する原核生物または真核生物に導入してFabを作製することができる。
【0113】
本発明は、特性に大きな影響を与えない機能的に等価な抗体ならびに活性および/または親和性に強弱がある変異体など、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドの修飾体を包含する。たとえば、抗体5F1またはヒト化抗体のアミノ酸配列を変異させて、癌細胞に発現するCD43またはCEAに対して所望の結合親和性を持つ抗体を得てもよい。ポリペプチドの修飾は、当該技術分野において日常的に行われており、本明細書に詳細に記載する必要はない。修飾ポリペプチドの例として、アミノ酸残基の保存的置換を持つポリペプチド、機能活性に著しい有害な変化を与えないアミノ酸の1つまたは複数の欠失あるいは付加を含むポリペプチド、または化学的アナログを使用したポリペプチドが挙げられる。
【0114】
アミノ酸配列の挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまで幅があるアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合だけでなく、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入がある。末端挿入の例として、N末端にメチオニル残基を持つ抗体あるいはエピトープタグとの融合抗体がある。抗体分子のこれ以外の挿入変異体には、抗体の血清半減期を延長させる酵素またはポリペプチドと、抗体のN末端またはC末端との融合がある。
【0115】
置換変異体は、抗体分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、代わりに別の残基が挿入されている。置換による突然変異誘発で大きな関心を集めている部位として、超可変領域があるが、FRの変更も考えられる。保存的置換を次の表に「保存的置換」の項目で示す。こうした置換により生物活性に変化が生じた場合、次の表に「例示的置換」として示してある、あるいは、アミノ酸クラスを参照して下記に詳述するように、より実質的な変化を導入して、その産物をスクリーニングしてもよい。
【0116】
【化1】
抗体の生物学的特性の実質的な修飾を達成するには、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、たとえば、シートまたはらせん構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性または(c)側鎖の大きさの維持に対する作用が大きく異なる置換を選択する必要がある。以下に天然の残基を、共通の側鎖特性に基づき群に分けてある:
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)非荷電極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性(負に荷電):Asp、Glu;
(4)塩基性(正に荷電):Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0117】
非保存的置換に関しては、こうしたクラスのうちのあるクラスのメンバーを別のクラスと置換することで作製する。
【0118】
抗体の適切な立体構造の維持に関与していない任意のシステイン残基については、一般的にはセリンで置換して、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を阻害することもできる。反対に、特に抗体が、Fvフラグメントなどの抗体フラグメントである場合、システイン結合(単数または複数)を抗体に付加して、安定性を高めることもできる。
【0119】
アミノ酸修飾は、1個または複数個のアミノ酸の変換または修飾から可変領域などの領域の完全な再設計まで多岐にわたる場合がある。可変領域を変換すれば、結合親和性および/または特異性が変化することがある。いくつかの実施形態では、CDRドメイン内に1〜5個以下の保存的アミノ酸置換を作製する。他の実施形態では、CDRドメイン内に1〜3個以下の保存的アミノ酸置換を作製する。なお他の実施形態では、CDRドメインは、CDRH3および/またはCDR L3である。
【0120】
また、修飾体は、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチドならびに、たとえば、様々な糖によるグリコシル化、アセチル化およびリン酸化など他の翻訳後修飾を受けたポリペプチドも含む。抗体は、定常領域の保存位置でグリコシル化する(Jefferis and Lund,1997,Chem.Immunol.65:111−128;Wright and Morrison,1997,TibTECH 15:26−32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boydら、,1996,Mol.Immunol.32:1311−1318;Wittwe and Howard,1990,Biochem.29:4175−4180)および立体構造に影響する可能性がある糖タンパク質の部分と糖タンパク質の提示された三次元表面との間の分子内相互作用(Hefferis and Lund,supra;Wyss and Wagner,1996,Current Opin.Biotech.7:409−416)に影響を与える。また、オリゴ糖は、特異的認識構造に基づき一定の糖タンパク質をある種の分子に向かわせる役割を果たす場合がある。さらに、抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に作用することも報告されている。特に、テトラサイクリンによる調節でβ(1,4)−N−アセチルグルコサミン転移酵素III(GnTIII)(バイセクティングGlcNAcの形成を触媒する糖転移酵素)を発現させたCHO細胞では、ADCC活性の増強が報告された(Umanaら、,1999,Mature Biotech.17:176−180)。
【0121】
抗体のグリコシル化は一般に、N結合型またはO結合型のどちらかである。N結合型とは、アスパラギン残基側鎖への炭水化物部分の結合をいう。トリペプチド配列のアスパラギン−X−セリン、アスパラギン−X−トレオニンおよびアスパラギン−X−システイン(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこうしたトリペプチド配列のいずれかが存在すれば、有望なグリコシル化部位になる。O結合型グリコシル化とは、糖であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合をいうが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンを用いてもよい。
【0122】
抗体へのグリコシル化部位の付加を達成するには、アミノ酸配列が上記のトリペプチド配列の1つまたは複数を含むようにアミノ酸配列を変化させると都合がよい(N結合型グリコシル化部位の場合)。この変更を、元の抗体の配列にセリン残基またはトレオニン残基の1つまたは複数を付加することで、あるいは、セリン残基またはトレオニン残基の1つまたは複数で置換することで行うこともできる(O結合型グリコシル化部位の場合)。
【0123】
さらに、根底にあるヌクレオチド配列を変化させずに抗体のグリコシル化パターンを変化させることもできる。グリコシル化の大部分は、抗体の発現に用いる宿主細胞によって決まる。たとえば、有望な治療剤としての抗体などの組換え糖タンパク質の発現に用いる細胞型が天然細胞であることは稀であるため、抗体のグリコシル化パターンの変形を想定することができる(たとえば、Hseら、,1997,J.Biol.Chem.272:9062−9070を参照)。
【0124】
抗体の組換え作製の過程で、宿主細胞の選択の他にグリコシル化に影響する要因として、成長モード、培地組成、培養密度、酸素反応、pH、精製スキームおよび同種のものなどがある。個々の宿主生物で得られるグリコシル化パターンを変えるため、オリゴ糖生成に関与する一定の酵素の導入または過剰発現など、様々な方法が提案されている(米国特許第5,047,335号;同第5,510,261号および第5,278,299号)。グリコシル化またはある種のグリコシル化については、たとえば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、N−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を用いて糖タンパク質を酵素的に除去することができる。さらに、組換え宿主細胞を遺伝子改変して、ある種の多糖類の処理を不完全なものにすることもできる。これらおよび類似の技法は、当該技術分野において周知である。
【0125】
他の修飾方法には、以下に限定されるものではないが、酵素的手段、酸化置換およびキレート化など当該技術分野において公知のカップリング技法の使用がある。たとえば、修飾を利用してイムノアッセイ用標識を結合してもよい。修飾ポリペプチドについては、当該技術分野において確立された手順を用いて製造して、当該技術分野において公知の標準アッセイによりスクリーニングすることができ、その一部を下記および実施例に記載してある。
【0126】
本発明の抗体またはポリペプチドを治療薬および標識などの薬品とコンジュゲート(たとえば、結合)してもよい。治療薬の例として、放射性部分、細胞毒または化学療法分子が挙げられる。
【0127】
本発明の抗体(またはポリペプチド)は、蛍光分子、放射性分子、酵素または当該技術分野において公知の他の任意の標識などの標識に結合してもよい。本明細書で使用する場合、「標識」という語は、検出できる任意の分子をいう。ある実施形態では、放射能標識アミノ酸を組み込むことで抗体を標識することができる。ある実施形態では、印を付けたアビジン(たとえば、光学的方法または比色法で検出可能な蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)で検出できるビオチン部分を抗体に結合してもよい。ある実施形態では、標識を別の試薬に組み込むか結合させて、試薬を目的の抗体に結合させても構わない。たとえば、標識を抗体に組み込むか結合させて、その抗体を目的の抗体を特異的に結合させることができる。ある実施形態では、標識またはマーカーは、治療的に作用してもよい。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法は、当該技術分野において公知であり、それを用いても構わない。標識のある種の一般的なクラスとして、酵素標識、蛍光標識、化学発光標識および放射性標識が挙げられる。ポリペプチドの標識の例として、放射性同位元素またはラジオヌクレオイド(たとえば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(たとえば、フルオレセインイソトシアナート(FITC:fluorescein isothocyanate)、ローダミン、ランタニド蛍光体、フィコエリトリン(PE:phycoerythrin))、酵素標識(たとえば、西洋わさびペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース酸化酵素、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒロゲナーゼ、リンゴ酸デヒロゲナーゼ、ペニシリナーゼ、ルシフェラーゼ)、化学発光、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(たとえば、ロイシン ジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)があるが、これに限定されるものではない。ある実施形態では、標識を様々な長さのスペーサーアームで結合して立体障害の起こる可能性を低下させる。
【0128】
また、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドおよび薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む医薬組成物も提供する。薬学的に許容される賦形剤は、当該技術分野において公知であり、薬理学的に有効な物質を投与しやすくする、どちらかといえば不活性な物質である。たとえば、賦形剤は、形状またはコンシステンシーを与えてもよいし、希釈薬として働いてもよい。好適な賦形剤には、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、重量オスモル濃度を変化させる塩、被包剤、緩衝剤および皮膚浸透促進剤があるが、これに限定されるものではない。非経口的および経口的薬物送達用の賦形剤および製剤については、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)に記載されている。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明は、薬剤としての使用および/または薬剤製造のための使用に関わりなく、本明細書に記載の方法のいずれかに用いる(本明細書に記載の)組成物を提供する。
【0130】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
また、本発明は、本明細書に記載のモノクローナル抗体およびポリペプチドのいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に記載の重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号2に記載の軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号2由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に記載の核酸配列および/または配列番号10に記載の核酸配列を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3に記載の重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号4に記載の軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号4由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号11に記載の核酸配列および/または配列番号12に記載の核酸配列を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号5に記載の重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号6に記載の軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号5由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号6由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13に記載の核酸配列および/または配列番号14に記載の核酸配列を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7に記載の重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号8に記載の軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号15に記載の核酸配列および/または配列番号16に記載の核酸配列を含む。
【0135】
当業者であれば、遺伝コードの縮重が原因で、本明細書に記載するようなポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列が多く存在することが分かる。こうしたポリヌクレオチドの一部は、任意の天然の遺伝子のヌクレオチド配列との相同性が極めて低い。したがって、本発明は、コドン使用量の相違によって変化する各ポリヌクレオチドを明確に意図している。さらに、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子も本発明の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換など、1つまたは複数の突然変異が原因で変化する内因性の遺伝子である。その結果生じるRNAおよびタンパク質は、異なる構造または機能を持つ場合もあるが、持っていなくてもよい。対立遺伝子は、標準技法(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較など)を用いて同定することができる。
【0136】
本発明のポリヌクレオチドについては、化学合成、組換え方法またはPCRを用いて得ることができる。ポリヌクレオチドの化学的合成方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に詳細に記載する必要はない。当業者であれば、本明細書に記載の配列および市販のDNA合成機を用いて所望のDNA配列を製造することができる。
【0137】
組換え法を用いたポリヌクレオチドの作製の場合、本明細書で詳細に考察しているように、所望の配列を含むポリヌクレオチドを好適なベクターに挿入し、さらに、そのベクターを複製および増幅に好適な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入するのは、当該技術分野において公知の任意の手段で構わない。細胞に関しては、直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F−配合またはエレクトロポレーションにより外来性ポリヌクレオチドを導入して形質転換する。外来性ポリヌクレオチドを導入したら、組み込まれていないベクター(プラスミドなど)として細胞内で維持しても、宿主細胞ゲノムに組み込んでもよい。こうして増幅させたポリヌクレオチドを、当該技術分野においてよく知られている方法で宿主細胞から単離することができる。たとえば、Sambrookら、(1989)を参照されたい。
【0138】
あるいは、PCRを用いると、DNA配列の複製が可能になる。PCR技法は、当該技術分野において周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullisら、eds.,Birkauswer Press, Boston(1994)に記載されている。
【0139】
また、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド(抗体を含む)のいずれかをコードしている核酸配列も含むベクターを提供する(たとえば、クローニングベクター、発現ベクター)。好適なクローニングベクターに関しては、標準技法に従って構築してもよいし、当該技術分野において入手可能な多数のクローニングベクターから選択してもよい。選択するクローニングベクターは、使用しようとする宿主細胞によって異なってもよいが、有用なクローニングベクターは通常、自己複製能を持ち、特定の制限エンドヌクレアーゼに対して1つの標的があればよく、および/またはベクターを含むクローンの選択に使用できるマーカー用の遺伝子を運搬することができる。好適な例として、プラスミドおよび細菌ウイルス(たとえば、pUC18、pUC19、Bluescript(たとえば、pBS SK+))およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNAおよびシャトルベクター(pSA3およびpAT28など)が挙げられる。これらおよび他の多くのクローニングベクターは、バイオラッド(BioRad)、ストラテジーン(Strategene)およびインビトロジェンなどの商業ベンダーから入手できる。
【0140】
発現ベクター通常は、本発明によるポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチドコンストラクトである。発現ベクターは、宿主細胞でエピソームとして、あるいは染色体DNAの重要な部分として複製可能の場合がある。好適な発現ベクターには、プラスミド、ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスなど)、コスミドおよび国際公開第87/04462号に開示された発現ベクター(単数または複数)があるが、これに限定されるものではない。ベクター成分としては通常、シグナル配列;複製起点;1つまたは複数のマーカー遺伝子;好適な転写制御エレメント(プロモーター、エンハンサーおよびターミネーターなど)の1つまたは複数があるが、これに限定されるものではない。発現(すなわち、翻訳)では、ほとんどの場合、リボソーム結合部位、翻訳開始部位および終止コドンなど、1つまたは複数の翻訳制御エレメントも必要とされる。
【0141】
目的のポリヌクレオチドを含むベクターについては、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランまたは他の物質などを用いたトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(たとえば、ベクターがワクシニアウイルスなどの病原体の場合)のような多数の適切な手段のいずれかで宿主細胞に導入してもよい。多くの場合、宿主細胞の特色に応じて導入するベクターまたはポリヌクレオチドを選択することになる。
【0142】
また、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。目的の抗体、ポリペプチドまたはタンパク質をコードしている遺伝子を単離するには、異種DNAを過剰発現できる任意の宿主細胞を用いることができる。哺乳動物の宿主細胞の非限定的な例として、COS細胞、HeLa細胞およびCHO細胞があるが、これに限定されるものではない。さらに、国際公開第87/04462号を参照されたい。好適な非哺乳動物の宿主細胞には、原核生物(大腸菌または枯草菌など)および酵母(S.cerevisae、S.pombe;またはK.lactisなど)がある。
【0143】
診断用途
本発明は、エピトープの発現(正常なサンプルと比較した場合の発現の増加または減少、および/または通常はエピトープの発現が見られない組織(単数または複数)および/または細胞(単数または複数)で発現が認められるなどの異常な発現)に関連している疾患、障害または症候の検出、診断および監視を対象とした、本発明の抗体、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用方法を提供する。
【0144】
いくつかの実施形態では、この方法は、結腸直腸、膵臓癌、胃癌および肺癌などの癌の疑いがある被検体から得たサンプルにおけるエピトープの発現を検出することを含む。好ましくは、この検出方法は、サンプルと本発明の抗体、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとを接触させること、および結合レベルが対照サンプルまたは比較サンプルのレベルと異なるかどうかを判定することを含む。また、この方法は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドが患者の治療法として適切かどうかを判定するのにも有用である。
【0145】
本明細書で使用する場合、「サンプル」または「生物学的サンプル」という語は、生物全体またはその組織、細胞もしくは構成要素(たとえば、以下に限定されるものではないが、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、臍帯血、尿、膣液および精液などの体液)のサブセットをいう。「サンプル」または「生物学的サンプル」はさらに、生物全体またはその組織、細胞もしくは構成要素のサブセットから調製されるホモジネート、ライセートまたは抽出物、あるいは、以下に限定されるものではないが、たとえば、血漿、血清、髄液、リンパ液(lymph fluid)、皮膚管、気道、腸管および尿生殖器官の外部切片、涙液、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、臓器など、その画分または部分をいう。ほとんどの場合、サンプルを動物から採取しているが、「サンプル」または「生物学的サンプル」という語は、インビボで、すなわち、動物から取り出すことなく解析される細胞または組織もいう。一般に、「サンプル」または「生物学的サンプル」は、動物由来の細胞を含むが、さらに、癌関連ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのレベルの測定に用いることができる血液、唾液または尿の非細胞性の画分など、非細胞性の生物材料もいう。さらに、「サンプル」または「生物学的サンプル」は、タンパク質または核酸分子などの細胞成分を含み、かつ、生体を繁殖させる栄養ブロスまたはゲルなどの培地もいう。
【0146】
一実施形態では、細胞または細胞/組織ライセートを抗体と接触させ、抗体と細胞間の結合を判定する。同じ組織型の対照細胞と比較して被検細胞に結合活性が示された場合、被検細胞が癌性であることが示唆されることがある。いくつかの実施形態では、被検細胞は、ヒト組織由来である。
【0147】
特異的な抗体−抗原結合の検出には、当該技術分野において公知の様々な方法を用いることができる。本発明に従って行うことができる例示的なイムノアッセイとして、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA:fluorescence polarization immunoassay)、蛍光イムノアッセイ(FIA:fluorescence immunoassay)、エンザイムイムノアッセイ(EIA:enzyme immunoassay)、比濁阻害イムノアッセイ(NIA:nephelometric inhibition immunoassay)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。指標部分または標識基については、対象となる抗体に結合させればよいが、用いる方法の様々な使用の要件を満たすように選択する。使用要件は、アッセイ機器が利用できるかどうか、さらに機器に適合するイムノアッセイの手順により左右されることが多い。適切な標識として、放射性核種(たとえば、125I、131I、35S、3Hまたは32P)、酵素(たとえば、アルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼまたはβ−グラクトシダーゼ)、蛍光部分もしくはタンパク質(たとえば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、GFP(green fluorescent protein)またはBFP(bule fluorescent protein))または発光部分(たとえば、カンタムドットコーポレーション(Quantum Dot Corporation),パロアルト,カリフォルニア州が提供するQdot(商標)ナノ粒子)があるが、これに限定されるものではない。上記の様々なイムノアッセイを行う際に用いることができる一般的な技法は、当業者に公知である。
【0148】
診断のために、抗体を含むポリペプチドを、以下に限定されるものではないが、放射性同位元素、蛍光標識および当該技術分野において知られている種々の酵素−基質標識などの検出可能な部分で標識してもよい。標識を抗体にコンジュゲートする方法は、当該技術分野において公知である。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体を含むポリペプチドを標識しなくてもよく、その有無を、本発明の抗体に結合する標識抗体を用いて検出してもよい。
【0150】
本発明の抗体については、競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイおよび免疫沈降アッセイなど、任意の既知のアッセイ方法において用いることができる。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)を参照されたい。
【0151】
抗体およびポリペプチドを、インビボイメージングなどのインビボ診断アッセイに用いてもよい。通常、抗体またはポリペプチドを放射性核種(111In、99Tc、14C、131I、125Iまたは3Hなど)で標識して、免疫シンチオグラフィーを用いて目的の細胞または組織の位置を特定できるようにする。
【0152】
さらに、当該技術分野において周知の技法を用いて、病理研究用の染色試薬としてこの抗体を使用しても構わない。
【0153】
治療用途
本発明の抗体の非常に驚くべき特色は、非造血系癌の細胞死を効果的に誘導する作用に関する。したがって、本発明は、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、乳房癌、肝細胞癌および甲状腺癌などの癌を処置する際の、本発明の抗体およびポリペプチドの治療用途を提供する。癌細胞に発現するエピトープを本明細書に記載の抗体が認識するのであれば、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳房癌、脳腫瘍、悪性メラノーマ、腎細胞癌、膀胱癌、リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、テコーマトーシス、アンドロブラストーマ、子宮内膜肥厚、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、神経線維腫、乏突起膠腫、髄芽腫、神経節芽細胞腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、過誤芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状腺肉腫およびウィルムス腫瘍など、任意の癌を処置することができる。この方法は、処置する個体において本明細書に記載の抗体またはポリペプチドと腫瘍または癌細胞との間の結合を検出するステップをさらに含んでも構わない。
【0154】
通常、抗体またはポリペプチドを含む組成物を、処置が必要な被検体に有効量で投与することで、癌細胞の成長を阻害し、および/または癌細胞の死を誘導する。好ましくは、この組成物を薬学的に許容されるキャリアとともに製剤化する。
【0155】
一実施形態では、組成物を、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射および筋肉内注射による投与および経口、粘膜、吸入、舌下などによる他の形の投与用に製剤化する。
【0156】
別の実施形態では、本発明は、検出可能な標識または治療薬もしくは細胞傷害性薬剤などの他の分子にコンジュゲートした本発明の抗体またはポリペプチドを含む組成物の投与を意図している。この薬品は、放射性同位元素、トキシン、トキソイド、炎症剤、酵素、アンチセンス分子、ペプチド、サイトカインまたは化学療法剤を含んでもよい。抗体をそうした分子とコンジュゲートする方法は通常、当業者に公知である。たとえば、国際公開第92/08495号;国際公開第91/14438号;国際公開第89/12624号;米国特許第5,314,995号;および欧州特許第396,387号を参照されたい。これらの開示については、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0157】
一実施形態では、この組成物は、細胞傷害性薬剤にコンジュゲートした抗体またはポリペプチドを含む。細胞傷害性薬剤は、細胞に有害な任意の薬品を含んでもよい。抗体またはフラグメントにコンジュゲートすることができる細胞傷害性薬剤の好ましいクラスとして、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにこれらのアナログまたはホモログが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0158】
処置に必要な投与量は、投与経路の選択、製剤の性質、被検体の疾病の性質、被検体の大きさ、体重、表面積、年齢および性別、投与する他の薬物および主治医の判断によって異なる。好適な投与量は、0.01〜1000.0mg/kgの範囲である。
【0159】
一般に、以下の用量のいずれかを用いることができる:少なくとも約50mg/kg体重;少なくとも約10mg/kg体重;少なくとも約3mg/kg体重;少なくとも約1mg/kg体重;少なくとも約750μg/kg体重;少なくとも約500μg/kg体重;少なくとも約250μg/kg体重;少なくとも約100μg/kg体重;少なくとも約50μg/kg体重;少なくとも約10μg/kg体重;少なくとも約1μg/kg体重またはそれ未満の用量を投与する。数日間以上にわたる反復投与の場合、症候に応じて、疾患症状の所望の抑制が認められるまで処置を持続する。例示的な投与レジメンは、抗体を約6mg/kgで週1回投与することを含む。ただし、開業医が達成したい薬物動態学的消失のパターンにより、他の投与レジメン(dosage regimen)が有用な場合もある。一般に、半減期などの経験的判断が投与量の決定に寄与する。こうした治療の進行については、従来の技法およびアッセイにより容易に監視できる。
【0160】
一部の被検体では、複数回の投与が必要とされる場合がある。投与頻度を決定してから、治療の過程で投与頻度を調整してもよい。たとえば、処置する癌のタイプおよびステージ、薬品を投与するのが予防目的か治療目的か、今までの治療、患者の病歴および薬品に対する反応ならびに主治医の裁量に基づき、投与頻度の決定または調整を行うことができる。一般に、臨床医は、所望の結果が得られる適切な投与量に達するまで治療用抗体(ヒト化5F1など)を投与する。場合によっては、抗体の持続放出性製剤が適切なこともある。持続的な放出を実現するための様々な製剤および装置については、当該技術分野において公知である。
【0161】
一実施形態では、抗体またはポリペプチドの投与量を、1回または複数回の投与(単数または複数)を行っている被検体ごとに経験に基づき決定しても構わない。抗体またはポリペプチドの投与量を段階的に増やして被検体に投与する。抗体またはポリペプチドの有効性を判定するには、CD43またはCEAなどの疾患症状のマーカーを監視すればよい。また、インビボでの有効性を、腫瘍量または腫瘍容積、疾患進行までの経過時間(TDP:time to disease progression)および/または奏効率(RR:response rate)の判定により判定することもできる。
【0162】
本発明の方法による抗体またはポリペプチドの投与は、たとえば、被投与者の生理的状態、投与が治療目的か予防目的か、さらに当業者の知る他の要因に応じて連続的でも、間歇的でも構わない。抗体またはポリペプチドの投与は、本質的に事前に選択した期間にわたり連続的であってもよいし、間隔をおいた一連の投与であってもよい。
【0163】
他の製剤は、以下に限定されるものではないが、リポソームのようなキャリアなど、当該技術分野において公知の好適な送達形態である。たとえば、Mahatoら、(1997)Pharm.Res.14:853−859を参照されたい。リポソーム調製物には、サイトフェクチン、多重膜ベシクルおよび単層リポソームがあるが、これに限定されるものではない。
【0164】
別の実施形態では、組成物は、1種または複数種の抗癌剤、本明細書に記載の1種または複数種の抗体、あるいは別の抗原に結合する抗体またはポリペプチドを含んでもよい。こうした組成物は、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種の抗体を含んでも構わない。抗体および他の抗癌剤に関しては、同じ製剤(たとえば、当該技術分野でよく呼ばれる混合物)中にあっても、別の製剤中にあってもよいが、同時または連続的に投与すれば、広範な個体群の処置に特に有用である。
【0165】
また、本発明の抗体またはポリペプチド(抗体5F1またはヒト化形態など)のいずれかをコードしているポリヌクレオチドを用いて、本発明の抗体またはポリペプチドのいずれかを送達し、所望の細胞に発現させることもできる。発現ベクターを用いて抗体またはポリペプチドの発現を誘導できることは明らかである。発現ベクターについては、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、髄腔内投与、脳室内投与、経口投与、経腸的投与、非経口的投与、鼻腔内投与、経皮的投与、舌下投与または吸入など、当該技術分野において公知の任意の手段で投与することができる。たとえば、発現ベクターの投与には、注射、経口投与、パーティクルガンまたはカテーテル投与および局所投与などの局所または全身投与がある。当業者であれば、インビボで外来性タンパク質の発現を得るための発現ベクターの投与に精通している。たとえば、米国特許第6,436,908号;同第6,413,942号;および同第6,376,471号を参照されたい。
【0166】
本発明の抗体またはポリペプチドのいずれかをコードしているポリヌクレオチドを含む治療用組成物の標的送達を用いることもできる。受容体を介したDNA送達の技法は、たとえば、Findeisら、,Trends Biotechnol.(1993)11:202;Chiouら、,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer (J.A.Wolff,ed.)(1994);Wuら、,J.Biol.Chem.(1988)263:621;Wuら、,J.Biol.Chem.(1994)269:542;Zenkeら、(1990),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:3655;Wuら、(1991),J.Biol.Chem.266:338に記載されている。局所投与の遺伝子治療プロトコルでは、DNA約100ng〜約200mgの範囲でポリヌクレオチドを含む治療用組成物を投与する。また、遺伝子治療プロトコルにおいては、DNAを約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μgおよび約20μg〜約100μgの濃度範囲で用いてもよい。
【0167】
遺伝子送達ビヒクルを用いて本発明の治療用ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを送達してもよい。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス由来でも、非ウイルス由来でも構わない(Jolly(1994),Cancer Gene Therapy 1:51;Kimura(1994),Human Gene Therapy 5:845;Connelly(1985),Human Gene Therapy 1:185;and Kaplitt(1994),Nature Genetics 6:148を全般的に参照)。そうしたコード配列の発現を、哺乳動物の内因性または異種プロモーターを用いて誘導してもよい。コード配列の発現は、構成的でも、あるいは、調節的でも構わない。
【0168】
所望のポリヌクレオチドを所望の細胞に送達し、発現させるウイルスベースのベクターは、当該技術分野において周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルとして、組換えレトロウイルス(たとえば、国際公開第90/07936号;国際公開第94/03622号;国際公開第93/25698号;国際公開第93/25234号;国際公開第93/11230号;国際公開第93/10218号;国際公開第91/02805号;米国特許第5,219,740号;同特許第4,777,127号;独国特許第2,200,651号;および欧州特許第0345242号を参照)、たとえば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532))などのアルファウイルスベースのベクター、およびアデノ随伴ウイルス(AAV:adeno−associated virus)ベクター(たとえば、国際公開第94/12649号、国際公開第93/03769号;国際公開第93/19191号;国際公開第94/28938号;国際公開第95/11984号および国際公開第95/00655号を参照)が挙げられるが、これに限定されるものではない。Curiel(1992),Hum.Gene Ther.3:147に記載されているような死滅アデノウイルスに結合したDNAの投与を用いてもよい。
【0169】
さらに、以下に限定されるものではないが、死滅アデノウイルスに単独で結合した、あるいは結合していないポリカチオン性凝縮DNA(たとえば、Curiel(1992),Hum.Gene Ther.3:147を参照);リガンド結合DNA(たとえば、Wu(1989),J.Biol.Chem.264:16985を参照);真核細胞の送達ビヒクル細胞(たとえば、米国特許第5,814,482号;国際公開第95/07994号;国際公開第96/17072号;国際公開第95/30763号;および国際公開第97/42338号を参照)および核電荷の中和または細胞膜との融合など、非ウイルス性の送達ビヒクルおよび方法を用いても構わない。
【0170】
さらに、裸のDNAを用いてもよい。例示的な裸のDNAの導入方法については、国際公開第90/11092号および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして働くリポソームについては、米国特許第5,422,120号;国際公開第95/13796号;国際公開第94/23697号;国際公開第91/14445号;および欧州特許第0524968号に記載されている。さらなるアプローチは、Philip(1994),Mol.Cell Biol.14:2411およびWoffendin(1994),Proc.Natl.Acad.Sci 91:1581に記載されている。
【0171】
本発明の抗体を含む組成物については、化学療法剤(5−FU、5−FU/MTX、5−FU/ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビンまたはウラシル/テガフールなど)、免疫アジュバント、成長阻害剤、細胞傷害性薬剤およびサイトカインなど1種または複数種の他の治療薬と連続的に、または、同時に投与してもよい。抗体および治療薬の量は、使用する薬物のタイプ、処置対象の病状ならびに投与スケジュールおよび投与経路によって異なるが、通常、各治療薬を個々に使用する場合よりも少量になる。
【0172】
本明細書に記載の抗体を含む組成物の投与後、当業者に周知の様々な方法によりインビトロでもインビボでも組成物の有効性を評価することができる。候補組成物の抗癌活性を検査する場合、様々な動物モデルがよく知られている。こうしたモデルには、無胸腺ヌードマウスまたはscid/scidマウスに異種移植したヒト腫瘍、あるいはp53ノックアウトマウスなどのマウスの遺伝性腫瘍モデルがある。こうした動物モデルのインビボでの性質から、ヒト患者の反応が具体的に予測される。こうしたモデルを、たとえば、皮下注射、尾静脈注射、脾臓移植、腹腔内移植および腎被膜下移植など標準技法を用いて細胞を同系マウスに導入して作製してもよい。
【0173】
キット
また、本発明は、本方法で使用するキットも提供する。本発明のキットは、本明細書に記載の精製抗体またはポリペプチドと、本明細書に記載の本発明の方法のいずれかに従った使用説明書とを含む1つまたは複数の容器を含む。いくつかの実施形態では、こうした説明書は、本明細書に記載の方法のいずれかに従って結腸直腸癌などの非造血系癌を処置する抗体の投与に関する説明を含む。キットは、個体に疾患があるかどうかおよびその疾患のステージ、あるいは個体の癌細胞にエピトープが発現しているかどうかの確認を踏まえた、処置に好適な個体の選択に関する説明をさらに含んでも構わない。
【0174】
いくつかの実施形態では、サンプル中の癌細胞を検出するキットは、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドと、サンプル中の細胞に対する抗体またはポリペプチドの結合を検出する試薬とを含む。
【0175】
癌を処置する抗体またはポリペプチドの使用に関する説明書には通常、対象となる処置についての投与量、投与スケジュールおよび投与経路に関する情報が含まれている。容器は、1回用量でも、バルクパッケージ(たとえば、反復投与用のパッケージ)でも、サブユニット用量でも構わない。本発明のキットに付属の説明書は一般に、ラベルまたは添付文書(たとえば、キットに含まれる紙シート)に記載された説明書であるが、機械読み取り可能な説明書(たとえば、磁気または光学保存ディスク上にある説明書)でも問題ない。
【0176】
ラベルまたは添付文書には、その組成物を用いて本明細書に記載の癌を処置する旨表示されている。本明細書に記載の方法のいずれかの実施に関する説明書を提供してもよい。
【0177】
本発明のキットは、適切にパッケージされている。適切なパッケージには、バイアル、ビン、ジャー、フレキシブルパッケージ(たとえば、シールマイラーまたはビニール袋)および同種のものが含まれるが、これに限定されるものではない。さらに、吸入器、鼻腔内投与装置(たとえば、アトマイザー)またはミニポンプなどの注入装置のような特定の装置と組み合わせて用いるパッケージも意図している。キットには、滅菌アクセスポートがあってもよい(たとえば、容器は、皮下注射針で穿刺可能な栓が付いた静脈内注射液バッグまたはバイアルであってもよい)。さらに、容器にも、滅菌アクセスポートがあってもよい(たとえば、容器は、皮下注射針で穿刺可能な栓が付いた静脈内注射液バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの有効な薬物は、本明細書に記載の抗体である。容器は、薬学的に有効な第2の薬物をさらに含んでも構わない。
【0178】
キットは任意に、緩衝剤および説明情報など他の要素も提供する。通常、キットは、容器と、容器の表面上あるいは容器に付属したラベルまたは添付文書(単数または複数)とを含む。
【実施例】
【0179】
以下の実施例は、本発明の説明を目的としており、本発明を限定するために提供するものではない。
【0180】
(実施例1)
癌細胞に発現するCD43に特異的に結合するモノクローナル抗体の作製および特徴付け
モノクローナル抗体の作製
フードインダストリーリサーチアンドデベロップメントインスティテュート(Food Industry Research and Development Institute)(CCRC 60054),新竹(Hsin−chu),台湾からヒト結腸直腸腺癌の細胞株COLO205(ATCC CCL−222)を購入し、RPMI1640培地(ギブコ(GIBCO)BRL)で10%FBS(fetal bovine serum)(ハイクローン(Hyclone))、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(ギブコBRL)とともに5%CO2の湿潤雰囲気において37℃にて生育させた。8週齢の雌性Balb/cマウスを、500μlのPBS((phosphate−buffered saline))に加えた2×107個のCOLO205細胞またはCFA(complete Freund’s adjuvant)に加えた10マイクログラムの部分精製タンパク質で2週ごとに3回免疫し、最後に200μlのPBSに加えた2×106個のCOLO205細胞または10マイクログラムの部分精製タンパク質で追加免役した。最後の追加免疫から5日後、その脾臓細胞をX63骨髄腫細胞と融合した。ハイブリドーマを、10%FBS(ハイクローン)およびHAT(Hybri−Max(登録商標)、シグマ(Sigma)H0262、最終濃度はヒポキサンチン100μM、アミノプテリン0.4μM、チミジン16μM)を補充したDMEM(Dulbecco’s modified Eagle medium)で選択した。モノクローナル抗体5F1、51−41および138−10を分泌している3種のハイブリドーマ細胞株m5F1、m51−41、m138−10を作製した。
【0181】
モノクローナル抗体5F1の標的抗原の同定および特徴付け
結腸直腸癌組織またはCOLO205細胞由来の膜タンパク質を、プロテアーゼ阻害剤(コンプリート錠;ロシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))を含む抽出緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、1%ノニデットP−40)で単離した。最初に、膜タンパク質のライセートを、プロテインGセファロース(アマシャムファルマシアバイオテクインク(Amersham Pharmacia Biotech Inc.),ニュージャージー州、米国)に固定化した非免疫マウスのIgGを含む1mlのカラムで前除去して、その溶出部分を、プロテインG−セファロースに結合した5F1の1mlのカラムに直接導入した。カラムを洗浄し、5F1の標的タンパク質を溶出させた。単離されたタンパク質の純度を銀染色で可視化して、さらに8%SDS−PAGEでの分離後、ウエスタンブロッティングで同定した。さらに、単離されたタンパク質を用いてマウスを免疫し、138−10または51−41など他の5F1様抗体を作製した。
【0182】
免疫沈降実験では、この膜タンパク質を5F1または抗CD43抗体(AF2038,R&D System,Inc.)とインキュベートし、続いてプロテインGセファロース(アマシャムファルマシアバイオテクインク,ニュージャージー州,米国)とインキュベートした。その沈殿物を8%SDS−PAGEにかけて、ウエスタン(またはイムノ)ブロット解析に供した。
【0183】
タンパク質を等量のサンプル緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH6.8)、100mMのDTT(dithiothreitol)、2%SDS(sodium dodecyl sulfate)、0.1%ブロモフェノールブルー、10%グリセロール)と混合し、8%SDS−PAGEで分離してから、ニトロセルロース膜(Hybond−C Super,アマシャム)にトランスファーした。次いで、ニトロセルロース膜をPBSに加えた5%スキムミルクでブロックして、5F1または抗CD43mAb(AF2038)とインキュベートした。その後、ブロットを、西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリン(ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories),ウエストグローブ(West Grove),ペンシルベニア州)で処理し、化学発光試薬(ECL,アマシャム,英国)で展開した。
【0184】
5F1がCD43を認識するかどうかを検査するため、市販されている抗CD43mAb(AF2038、R&D system,Inc.)を用いて、ウエスタンブロット解析でCOLO205ライセート由来の5F1親和性精製タンパク質の種類を確認した。5F1結合陰性細胞株COLO320由来のライセートを対照として用いた。今回の結果(図1)によれば、抗CD43(AF2038)抗体と5F1抗体がともに5F1のイムノアフィニティーカラムで捕獲したタンパク質と反応しており、5F1がCD43を認識することが強く示唆された。
【0185】
モノクローナル抗体5F1は、非造血系癌細胞のCD43に発現する細胞表面を特異的に認識する。
【0186】
2×105個のCOLO205細胞を、v底96ウェルプレートの各ウェルに播種し、5F1抗体と0.33〜1μg/mlの範囲の様々な濃度で4℃にて1時間インキュベートした。細胞を200μlのFACS(fluorescence−activated cell sorter)緩衝液(1×PBS+1%FBS)で2回洗浄し、1μg/ml(FACS緩衝液中)のヤギ抗マウスIgG−PE(サザンバイオテク(Southern Biotech.))100μlで染色してから、4℃で30間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、フローサイトメトリー(BD LSR,BDライフサイエンシズ(BD Life Sciences))で解析した。
【0187】
フローサイトメトリーによる抗体結合の結果を以下の表1に示す。5F1(アイソタイプ:IgG3)または138−10(アイソタイプ IgM)または51−41(アイソタイプ IgM)などのモノクローナル抗体は、COLO205結腸直腸癌細胞およびNCI−N87胃癌細胞の細胞質膜表面に発現するCD43を認識するが、末梢性TとJurkat(リンパ芽球様の白血病細胞株;ATCC TIB−152)のいずれも認識しない。以下の表1を参照されたい。さらに、フローサイトメトリーのデータ(図2Aおよび図2B)によれば、5F1は、結腸直腸癌細胞(DLD−1)および胃癌細胞(NCI−N87)など、他のタイプの癌細胞に結合するが、正常な内皮細胞(HUVEC)、正常な肺細胞(MRC−5)、正常な乳腺上皮細胞(MCF−10A)、正常な結腸直腸細胞(CCD841−CoN)、活性化Tリンパ球(数日間活性化した)または正常な末梢血単核球(PBMC)には結合しない。
【0188】
表1は、結腸直腸癌細胞、胃癌細胞、ヒト末梢性T細胞およびJurkat(リンパ芽球様の白血病細胞株)に対する5F1、138−10または51−41などの抗CD43抗体の抗原結合特性を示す。
【0189】
【表1】
COLO205細胞およびヒト結腸直腸癌組織における5F1の標的タンパク質の発現を検出するため、通例の免疫組織化学的方法を用いた。簡単に説明すると、細胞または組織を固定し、1μg/mlの5F1で免疫染色して、ビオチン標識抗マウスIgGとインキュベートし、次いでアビジンビオチンペルオキシダーゼ複合体(ベクターラボラトリーズインク(Vector Laboratories,Inc.),バーリンゲーム(Burlingame),カリフォルニア州,米国)とインキュベートし、色素原3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩で染色した。免疫組織化学試験から、結腸直腸癌患者由来の組織の52.5パーセント(31/59)が5F1により陽性に染色された。
【0190】
(実施例2)
癌細胞に発現するCD43に特異的に結合する抗体のアポトーシス活性
ELISAアッセイによる、COLO205細胞において5F1が誘導するアポトーシスの検出
5F1が誘導する細胞死のタイプを評価するため、培養プレートで結腸直腸癌細胞を生育させ、5F1とともに、あるいはそれなしでインキュベートした。ヌクレオソーム間の(アポトーシス)DNA断片化のレベルを、細胞死検出ELISAPLUSキット(ロシェ、カタログ番号1774425)を用いて、細胞質内のモノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームに結合したヒストン−DNA複合体を抗体により捕獲および検出して判定した。製造者の指示に従って、ELISAアッセイを行った。簡単に説明すると、1×104個のCOLO205細胞を96ウェルプレートの各ウェルに蒔き、10μg/mlの濃度で5F1または9E10(抗myc抗体)、あるいは、培地対照とインキュベートした。37℃でインキュベートしてから6、24または48時間後、細胞を洗浄し、200μlの溶解緩衝液で30分間インキュベートした。核をペレットした(200×g、10分)後、断片化DNAを含む20μlの上清(細胞質画分)を、ビオチン標識抗ヒストンモノクローナル抗体とインキュベートしておいたストレプトアビジンコート済みマイクロタイタープレートに移した。抗ヒストン抗体に結合したヌクレオソームの断片化DNAの量を、ABTS(2,2−アジノ−ジ[3−エチルベンズチアゾリンスルホナート−6−ジアンモニウム塩])を基質として用いてペルオキシダーゼコンジュゲート抗DNAモノクローナル抗体で評価した。最後に、ペルオキシダーゼ基質と10〜20分間インキュベートした際に、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス(Moleclar Devices),SPECTRA max M2)で405nmの吸光度を判定した。溶解緩衝液および基質のみを含むウェルの値をバックグラウンドとして差し引いた。細胞質に放出されたモノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームを特異的なエンリッチメントとして、以下の式を用いた値からデータを解析した:
エンリッチメント係数(E.F.)=サンプル(死につつある/死んだ細胞)のmU/培地対照(mAb処理をしてない細胞)のmU
mU=吸光度[10−3]
図3に示したデータから、インキュベーションから24時間後にCOLO205細胞の細胞質で5F1がヌクレオソームのエンリッチメントを誘導したことが示唆される。5F1で処理した細胞質において検出された断片化DNAは、培地対照と比較して4倍を超えて増加した。対照抗体9E10(抗myc抗体)で処理した細胞でも、培地のみで処理した細胞でも、そうしたエンリッチメントは観察されなかったことから、癌細胞にアポトーシスを引き起こす原因となったのは5F1のみと考えられる。
【0191】
アネキシンVおよびPI(propidium iodide)染色を用いた、COLO205細胞において5F1、138−10および51−41が誘導するアポトーシスの検出
アネキシンVは、アポトーシスプロセスの初期に細胞質膜の外側の方に向きを変えるリン脂質を染色する。したがって、FACS分析で測定したように、アネキシンVの染色から、アポトーシスの生じた細胞が示唆される。1.2×105個のCOLO205細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、次いでこの細胞に、培地または新鮮培地(未処理対照)で希釈した5F1を様々な濃度(2〜16μg/ml)で加えた。5F1が腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導するのに架橋剤(CL:cross−linker)を必要とするかどうかを検査するため、20μg/mlのウサギ抗マウスIgG(ジャクソンイムノリサーチ,カタログ番号315−005−045)を比較のため一連のサンプルに加えた。37℃で6時間インキュベートした後、この細胞を、100μlのアネキシンV結合緩衝液に加えた0.25μlのFITCコンジュゲートアネキシンV(ストロングバイオテクコーポレーション(Strong Biotech Corporation))で室温にて15分間染色した。次いでこの細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI、DNA染色色素)染色しフローサイトメトリーで解析した。
【0192】
フローサイトメトリーのデータから、架橋剤の非存在下で4μg/ml以上の濃度で6時間5F1を処理すると、非常に多くの結腸直腸癌細胞でアポトーシスが生じることが示唆されることから、5F1は単独でCOLO205細胞のアポトーシスを効果的に誘導すると考えられる。
【0193】
他の抗C43抗体、138−10および51−41によるCOLO205細胞のアポトーシス誘導作用も検査した。以下の表2は、結腸直腸癌細胞においてアポトーシスを誘導する5F1、138−10または51−41を示す。COLO205細胞を、32マイクログラム/mlの各抗体と6時間インキュベートし、アネキシン−V、次いでPIで染色して、その後FACS分析を行った。
【0194】
表2.COLO205細胞における5F1、138−10および51−41によるアポトーシスの誘導。
【0195】
【表2】
上記の結果から、癌に発現するCD43に特異的な抗体で処理すると、癌細胞のアポトーシスを誘導できることが示唆される。
【0196】
YO−PRO−1染色またはアネキシンVおよびPI染色を用いた、NCI−87細胞においてm5F1が誘導するアポトーシスの検出
4×105個のNCI−N87(ヒト胃癌(gastric carcinoma)細胞株)細胞または5×105個のCOLO205細胞を、12ウェル培養プレート(ヌンク(Nunc)のカタログ番号150628)に播種した。一晩培養した後、培地を交換し、図10に示した濃度の抗体またはアジドを加えて6時間インキュベートした。次にこの細胞を、トリプシン処理し、集めてYO−PRO−1(インビトロジェンのカタログ番号Y3603)で染色するか、アネキシン−V−FITC & PI(ストロングバイオテク,アポトーシス検出キット,カタログ番号AVK250)で二重染色した。
【0197】
図10Aおよび10Bに示すように、YO−PRO−1染色(A)およびアネキシン−V−FITCおよびPIを用いた二重染色(B)による測定から、抗体m5F1は、NCI−87およびCOLO205細胞においてアポトーシスを誘導した。こうしたデータは、m5F1も胃癌(gastric carcinoma)細胞においてアポトーシスを誘導できることを示す。
【0198】
(実施例3)
5F1による癌細胞の成長阻害
5F1は単独で癌細胞の成長を阻害する
結腸直腸癌細胞(COLO205)および正常な内皮細胞(HUVEC)を播種し、5F1または対照抗体9E10とインキュベートした。陰性対照として未処理の細胞もインキュベートした。本明細書に記載するように増殖活性を検出するため、MTTおよびWST−1アッセイを用いて細胞生存を評価した。
【0199】
WST−1アッセイは、細胞ミトコンドリアのデヒドロゲナーゼによりテトラゾリウム塩WST−1がホルマザンへと切断されることに基づいている。生成されるホルマザンについては、分光光度計で450nmの吸光度を測定して定量することができる。生細胞が増殖すれば、酵素の全活性が増強されるが、酵素活性の低下は、細胞の成長阻害を示す。そこで、WST−1アッセイを用いて、5F1処理後の腫瘍細胞の生存率を評価した。簡単に説明すると、100μlの培地に加えた4×103個のCOLO205細胞を、処理ごとに5回ずつ96ウェル培養プレートに播種した。次に10μg/mlの5F1、対照抗体9E10(抗myc抗体)または新鮮培地(未処理の対照)を加えた。このアッセイには、細胞毒性対照としてさらに0.5%アジ化ナトリウム(NaN3)の処理も加えた。37℃での3日のインキュベーション期間後、20μlのWST−1試薬(ロシェ、カタログ番号1664807)を各ウェルに加え、この混合物を37℃で30分間インキュベートした。処理した細胞の生存率を反映する450nmの吸光度を測定した。COLO205細胞に関するWST−1アッセイの結果を図4に示す。データから、COLO205細胞の成長が著しく阻害された(図4)一方、HUVEC(データなし)の成長には5F1処理の影響がないことが示唆された。抗体5F1で処理した癌細胞の生存率の割合は、アイソタイプコントロール抗体9E10で処理した結腸直腸癌細胞と比較して50%未満に低下した。0.5%アジ化ナトリウムで処理した陽性対照群の生存率は、19%であった。
【0200】
別の実験では、細胞(2×103)を、96ウェル培養プレートの各ウェルに播種し、10マイクログラム/mlのモノクローナル抗体5F1または対照の抗体9E10(c−mycに対する抗体)とインキュベートした。未処理細胞を陰性対照として用い、0.5%アジ化ナトリウムで処理した細胞を陽性対照として用いた。37℃での2日または3日のインキュベーション期間後、10ulのWST−1試薬を各ウェルに加え、この細胞をさらに30分間インキュベートした。その後、上記のようにWST−1細胞生存アッセイを行った。図5に示すその結果から、抗体5F1はCOLO205などの結腸直腸癌(colorectal carcinoma)細胞の成長を実質的に阻害したのに対し、正常な結腸直腸細胞株(CCD841−CoNなどには影響を与えなかった。
【0201】
MTTは、細胞の生存状況および増殖の測定に役立つテトラゾリウムをベースにしたもう1つの方法である。黄色のテトラゾリウムであるMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を、NADH(nicotinamide adenine dinucleotide)およびNADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)などの還元等価物を生成する代謝的に活性な細胞と、一部はデヒドロゲナーゼ酵素の作用とで還元する。得られた細胞内の紫色のホルマザンについては可溶化し、分光光度的手段で定量することができる。細胞(5×103)を96ウェル培養プレートの各ウェルに播種し、モノクローナル抗体5F1(濃度範囲は0〜64μg/ml)またはc−mycに対する対照抗体9E10(64μg/ml)とインキュベートした。未処理細胞を陰性対照として用い、0.5%アジ化ナトリウムで処理した細胞を陽性対照として用いた。37℃での72時間のインキュベーション期間後、10μlのMTT試薬を各ウェルに加え、この細胞を、紫色の沈殿が目視可能になるまでさらに2〜4時間インキュベートした。100ulの界面活性剤試薬(DMSO:dimethyl sulfoxide)を加える。570nmのサンプルの吸光度を記録する。MTTアッセイのデータから、5F1が用量依存的(0〜64μg/ml)にCOLO205の細胞増殖を阻害し、ED50(50%阻害の有効用量)が8μg/ml(図6)であることが明らかになった。図6にも示してあるように、64μg/mlの5F1の使用時に細胞成長の顕著な阻害が確認されたのに対し、同じ濃度の対照抗体9E10ではそうした作用は見られなかった。
【0202】
インビボでの5F1の抗腫瘍作用の評価
マウスの腫瘍異種移植モデルを用いてインビボでの5F1の抗腫瘍作用を解析した。5×106個のCOLO205細胞を0日目にSCIDマウスの後側腹部に皮下移植した。細胞接種から1週間後、ある実験では、マウスを、腹腔内注射により500マイクログラムの5F1またはPBSで処理した。別の実験では、樹立腫瘍を持つマウスの4群(各群にマウス6匹)を、25mg/kgの5−フルオロウラシルおよびロイコボリン(5FU/LV)で1日おきに4回静脈内処理し、さらに様々な用量で5F1を週2回腹腔内注射するか、あるいはそれをしなかった。
【0203】
ある実験では、0日目にマウス1匹当たり1×107個の結腸直腸癌細胞COLO205を皮下注射して、SCIDマウスに腫瘍を移植し、次いで0、3、5、7、10、12、14および17日目にモノクローナル抗体5F1(1用量当たり500μg)または対照モノクローナル抗体9E10(c−mycに対して産生される抗体)またはPBSを腹腔内注射して処理した。この実験では、各群でマウス15匹を使用した。腫瘍の大きさを、腫瘍産物の2つの幅と長さ(WxWxL)を基準に5日目から24日目まで測定し、mm3で表した。図7に示すように、モノクローナル抗体5F1は、対照抗体9E10およびPBS(未処理)と比較して腫瘍の成長を効果的に抑制した。
【0204】
5F1と5FU/LVのような化学療法薬との併用作用を調べるため、腫瘍移植から7日後3週にわたり、マウスに25mg/kgの5FU/LVを1日おきに4回静脈内注射し、5F1抗体を様々な量で週2回腹腔内注射するか、あるいはしなかった。カリパスによる週2回の腫瘍容積(mm3)の測定に基づき腫瘍成長を判定し、腫瘍の大きさを、式:π/6×長径×(短径)2(Kievit E,Cancer Research,60:6649−55)を用いて算出した。図8に示すように、5F1抗体処理と5FU/LV処理を併用すると、化学療法薬の単独処理の場合と比較してヒト結腸直腸腫瘍の成長が著しく阻害された(図8)。
【0205】
(実施例4)
3つの新規な抗CD43抗体5F1、138−10および51−41は、癌細胞に発現する類似のエピトープを認識する。
【0206】
3つの新規な抗CD43抗体(5F1、138−10および51−41)の結合特性を解明するため、FACS分析を用いた。COLO205細胞(100,000個)を、ビオチン標識していない様々な量の抗体5F1、138−10および51−41の存在下で、1マイクログラム/mlのビオチン標識5F1で4℃にて1時間染色した。洗浄後、この細胞を、同じ条件で30分間ストレプトアビジン−FITCによりさらに染色した。この細胞を洗浄し、FACSで解析した。以下の表3に示すデータは、ある代表的な実験の平均蛍光強度である。51−41抗体および138−10抗体はともに、COLO205細胞に対するビオチン標識5F1の結合で競合できることから、3つの抗体はすべて、COLO205細胞の表面に発現する類似の結合部位に結合すると考えられる。
【0207】
表3.5F1、138−10および51−41は、COLO205細胞に発現する類似のエピトープを認識する。
【0208】
【表3】
(実施例5)
抗体5F1のエピトープの特定
モノクローナル抗体5F1が認識するエピトープ構造をさらに明らかにするため、このモノクローナル抗体を用いて様々なポリペプチド配列に対する特異的反応を検査した。96ウェルマイクロタイタープレートを、0.1MのNaHCO3(pH8.6)コーティング緩衝液に加えた濃度10μg/mlの抗体5F1(1ウェル当たり50μl)で4℃にて一晩コートした。洗浄後、このプレートを、0.1MのNaHCO3(pH8.6)、5mg/mlのBSA(bovine serum albumin)、0.02%NaN3(150μl/ウェル)を含むブロッキング緩衝液で4℃にて少なくとも1時間インキュベートしてブロックした。次いでプレートを、様々なポリペプチドのフラグメントを含む融合タンパク質と種々の濃度で室温にて1時間インキュベートした。TBS(tris−buffered saline)を含む0.5%トウィーンで洗浄後、結合した融合タンパク質−ポリペプチドを、1mg/mlのBSAを含む0.2Mのグリシン−HCl(pH2.2)緩衝液で溶出し、1Mのトリス−HCl(pH9.1)で中和した。次いで、溶出した融合タンパク質−ポリペプチドのアミノ酸配列を特定した。抗体5F1が結合するポリペプチドは、N末端からC末端までにトリペプチド配列Trp−Pro−Ile(WPI)を含む。このトリペプチドアミノ酸配列は、CD43のアミノ酸配列には存在しない。Pallantら、,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1328−32,1989;Shelleyら、,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2819−23,1989を参照されたい。
【0209】
抗体5F1が結合するトリペプチドのエピトープをさらに確認するため、サンドイッチELISAを実施した。96ウェルマイクロタイタープレートを、1ウェル当たり50μlとして1μg/mlの濃度の抗体(5F1または対照抗体9E10)で4℃にて一晩コートした。プレートを、PBSに加えた0.25%BSA(150μl/ウェル)で37℃にて1時間インキュベートしてブロックした。次いでプレートを、キャリアタンパク質と融合したポリペプチドの様々なフラグメントを含む融合タンパク質と室温で2時間インキュベートした。0.05%トウィーン20を含むPBSで4回洗浄した後、プレートを、キャリアタンパク質に特異的な2μg/mlの抗体と室温で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBSTで4回洗浄した。次いでHRPとコンジュゲートした3000倍希釈のヤギ抗キャリアタンパク質特異的抗体50μlを各ウェルに加え、このプレートを37℃で1時間インキュベートした。HRP酵素の基質を加えて酵素反応を行い、これら2つの抗体(5F1および9E10)に対するこれらに対する指定のポリペプチドの反応性を判定した。以下の表4は、5F1または9E10をプレートに固定化した際のELISAアッセイのデータを示す。「+」は、指定のポリペプチドがこのモノクローナル抗体に結合することを示し、「−」は、指定のポリペプチドがこのモノクローナル抗体に結合しないことを示す。モノクローナル抗体5F1は、トリペプチドのWPIエピトープ構造を認識した。トリペプチドのWPI配列は、CD43には存在しないため、こうしたデータから、5F1は、トリペプチドWPIが形成する構造に類似または等価な物理的および/または化学的特徴を持つ構造を含む立体構造エピトープを認識することが示唆される。
【0210】
表4.5F1が認識するエピトープ構造
【0211】
【表4】
(実施例6)
5F1、138−10および51−41の軽鎖および重鎖の可変領域のクローニングおよび抗体のヒト化
5F1の軽鎖および重鎖の可変領域のcDNAをPCRで増幅し、その合成cDNAを、配列決定できるようにpCRII(インビトロジェン)にサブクローニングした。複数の独立クローンからヌクレオチド配列を得て解析した。各抗体の軽鎖V領域または重鎖V領域に相当するように、独立クローンから同一のcDNA配列を選択した。以下の表5は、5F1、138−10、51−41およびヒト化5F1(h5F1Vc)の軽鎖V領域および重鎖V領域の翻訳アミノ酸配列およびそのV領域をコードしているヌクレオチド配列を示す。
【0212】
表5.抗体の可変領域のアミノ酸配列および抗体の可変領域をコードしている核酸配列(CDRを下線で示す)
5F1の重鎖アミノ酸配列(配列番号1)およびヌクレオチド配列(配列番号9)
【0213】
【化2】
5F1の軽鎖アミノ酸配列(配列番号2)およびヌクレオチド配列(配列番号10)
【0214】
【化3】
138−10の重鎖アミノ酸配列(配列番号3)およびヌクレオチド配列(配列番号11)
【0215】
【化4】
138−10の軽鎖アミノ酸配列(配列番号4)およびヌクレオチド配列(配列番号12)
【0216】
【化5】
51−41の重鎖アミノ酸配列(配列番号5)およびヌクレオチド配列(配列番号13)
【0217】
【化6】
51−41の軽鎖アミノ酸配列(配列番号6)およびヌクレオチド配列(配列番号14)
【0218】
【化7】
h5F1Vcの重鎖アミノ酸配列(配列番号7)およびヌクレオチド配列(配列番号15)
【0219】
【化8】
h5F1Vcの軽鎖アミノ酸配列(配列番号8)およびヌクレオチド配列(配列番号16)
【0220】
【化9】
(実施例7)
キメラ5F1抗体の作製および特徴付け
キメラ抗体5F1(c5F1)の構築および作製
キメラ抗体を発現するベクターを構築するため、5F1の軽鎖V領域をプラスミドpVKにサブクローニングした。pVKは、CMVプロモーターおよびヒト軽鎖定常領域を含む。ヒト軽鎖定常領域に関する配列および生物学的情報は、Hieter, P.A.,ら、(1980),Cloned human and mouse kappa immunoglobulin constant and J region genes conserve homology in functional segments.Cell,22(1 Pt 1):p.197−207で確認することができる。
【0221】
5F1の重鎖V領域をプラスミドpVg1にサブクローニングした。pVg1プラスミドはCMVプロモーターを持ち、ヒトIgG1の重鎖定常領域を含んでいる。ヒトIgG1の重鎖定常領域に関する配列および生物学的情報は、Ellison,J.W.,BJ.Berson,and L.E.Hood(1981),The Nucleotide sequence of a human immunoglobulin C gamma 1 gene.,Nucleic Acids Res.10:4071で確認することができる。
【0222】
次に、この軽鎖および重鎖を発現するプラスミドをCos−7細胞に共導入した。c5F1を含む上清を採取してc5F1のアポトーシス誘導機能を解析した。
【0223】
c5F1の機能試験
その後、c5F1を含む上清については、表面染色によりCOLO205細胞に対するc5F1の結合を検査し、c5F1の機能を上記のようなアネキシンVアポトーシスアッセイで検査した。結合アッセイでは、0.58マイクログラム/mlのc5F1を用いた。アポトーシスアッセイでは、2〜32マイクログラム/mlのm5F1、c5F1および9E10(対照の抗myc抗体)を用い、インキュベーション時間は16時間であった。c5F1を含む上清は、マウスの5F1と同じようにCOLO205細胞に結合し、COLO205細胞におけるアポトーシスを誘導することから、クローン化cDNAフラグメントは実際に、5F1のV領域をコードしていることが明らかにされる(図9Aおよび図9B)。
【0224】
(実施例8)
m5F1による結腸直腸癌組織の免疫組織化学的研究
m5F1による組織染色
m5F1標的の発現を、結腸直腸癌患者(n=59)由来の原発腫瘍組織のパラフィン包埋サンプルを用いて免疫組織化学的検査により調査した。パラフィン包埋ヒト結腸および直腸癌組織の組織アレイをスーパーバイオチップスラボラトリーズ(SuperBioChips Laboratories)から入手した(ヒト組織アレイ,カタログ番号CD1)。製造者の指示に従って免疫組織化学的検査の標準的な染色手順を用いた(ベクタステインエリートABCキット(VECTASTAIN Elite ABC Kit),ベクターラボラトリーズ)。すべての切片を58℃で1時間加熱し、キシレンで5回脱パラフィン処理を行い、濃度を段階的に下げながらエタノールで再水和した。正常な血清(ベクタステイン,PK6102)で1時間ブロックした後、この切片を1μg/mlの濃度でm5F1と室温で1時間インキュベートし、その後、ビオチン標識二次抗マウス抗体(ベクタステイン,PK6102)とインキュベートした。次に、切片をストレプトアビジン−ビオチン複合体(ベクタステイン,PK6102)とインキュベートした。このスライドをジアミノベンジジン溶液で展開した。最後に、このスライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水処理を行い、透徹して50%グリセロールPBSでマウントした。
【0225】
グレード分類による判定
2名の観察者により組織切片の抗原発現を評価し、5F1による染色を以下の経験的な半定量システムを用いてグレード分けした:
−は、陰性;+−は、弱い染色;+は、中程度の染色;++は、強い染色。
【0226】
結果
m5F1による染色では、すべての切片において、膜関連の染色が顕著であった。全体で、59個の腫瘍標本のうち31個(52.5%)が5F1標的に対して陽性染色を呈し、59個のうち27個(45.8%)が強い発現レベルを示した。19サンプル(32.2%)がm5F1標的の発現に対して陰性染色を呈した。検査対象の結腸直腸癌サンプル全体の染色結果の概要を表6に示す。こうしたデータから、抗体m5F1を結腸直腸癌の診断に使用できることが示唆される。
【0227】
表6.ヒト結腸直腸癌における5F1標的の発現頻度
【0228】
【表6】
(実施例9)
m5F1は、COLO205に発現する組換えヒトCEA(rhCEA)およびCD43(rhCD43)に結合するが、COS−7細胞に発現するrhCEAまたはrhCD43を認識しない
タンパク質サンプルの調製
COLO205およびCOS細胞におけるFlagタグ付き組換えCEAの免疫沈降:全長CEAタンパク質(35〜702aa)をコードしているcDNAをプラスミドpFlag−CMV−1にクローニングした。組換え(engineered)プラスミドDNAを、エレクトロポレーションによりCOLO205に導入するか(安定発現株の構築のため)、リポフェクタミン2000(インビトロジェン,カタログ番号11668−019)によりCOS細胞に導入した(一過性発現実験のため)。細胞を発現する抗原を回収して、プロテアーゼ阻害剤(ロシェ,カタログ番号11836145001)を含む溶解緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH8.5)、150mMのNaCl、1%NP40)に溶解させた。細胞可溶化物の上清を抗Flag(M2,ストラタジーン(Stratagene),カタログ番号200472)結合プロテインGセファロースビーズ(GEヘルスケア(GE Healthcare),カタログ番号17−0618−02)と4℃で2時間インキュベートした。次いで、このプロテインGセファロースビーズを溶解緩衝液で3回洗浄した。SDS−PAGEおよびウエスタンブロットには、プロテインGセファロースビーズを含むIP(immunoprecipitation)産物をサンプルとして使用した。
【0229】
COLO205細胞に発現するCr1タグ付きCD43の可溶性組換えタンパク質の精製: CD43タンパク質の細胞外ドメインをコードしているcDNAを、N末端にFlagタグとC末端にCr1タグを含む修飾pcDNA3プラスミドにクローニングした。この組換え(engineered)プラスミドDNAを、安定発現株の樹立のためエレクトロポレーションによりCOLO205細胞に導入した。COLO205に発現する可溶性組換えhCD4320−253は、N末端に3×FlagタグおよびC末端Cr1タグを含む。この可溶性タンパク質をプロテインAセファロースビーズ(GEヘルスケア,カタログ番号17−1279−02)で精製した。グリシン緩衝液で溶出しPBSに対して透析した後、このタンパク質サンプルを今後の使用に備えて−20℃で保存した。
【0230】
CD43の全細胞可溶化物は、COS細胞に一過性に発現した:全長ヒトCD43(pcDNA3.1myc−His)を含むコンストラクトをリポフェクタミン2000(インビトロジェン,カタログ番号11668−019)によりCOS細胞に導入した。細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含むRIPA(radioimmunoprecipitation assay)緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、1mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、0.25%SDS、1%NP−40)で溶解し、21,900g、4℃で10分間遠心(centrifugeg)して上清を回収 した。バイオラッド(Bio−Rad)による定量後、ウエスタンブロット解析のため、タンパク質ライセートを十分な量でSDS−PAGEに流した。
【0231】
ウエスタンブロット解析
サンプル緩衝液の添加後、このタンパク質サンプルを95℃で煮沸し、SDS−PAGEミニゲルに流してから、NC(nitrocellulose)紙(GEヘルスケア,Hybond−ECL,カタログ番号RPN303D)にトランスファーした。この膜をTBSに加えた5%脱脂乳でブロックした後、一次抗体を加えた。一次抗体の結合を、HRPコンジュゲート二次抗体(NENライフサイエンス(NEN Life Science),HRP−ヤギ抗マウスIgG,カタログ番号NEF822またはサザンバイオテク,HRP−ヤギ抗マウスIg,カタログ番号1010−05)で検出し、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(GEヘルスケア,カタログ番号RPN2106)で展開した。
【0232】
結果
図11Aに示す実験では、rhCEAを発現しているCOLO205細胞の細胞可溶化物を抗Flag抗体で免疫沈降し(immunoprecipated)、この免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーした。NC紙を、抗Flag、m5F1、50−14、51−41、138−10、186−14、280−6または抗CEA抗体(CEA/Ab−3;クローン名COL−1でネオマーカー(NeoMarker)カタログMS−613−P1ABX)などの様々な抗体でブロットした。図11Aのデータから、m5F1、51−41および138−10は、COLO205細胞に発現するrhCEAを認識することが示された。
【0233】
図11Bに示す実験では、COS−7細胞に発現するrhCEAの細胞可溶化物を抗Flag抗体で免疫沈降し(immunoprecipated)、免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーした。NC紙を、抗Flag、m5F1または抗CEA(CEA/Ab−3)などの様々な抗体でブロットした。図11Bのデータから、m5F1は、COS−7細胞に発現するrhCEAに結合しないことが示された。
【0234】
図12Aに示す実験では、COLO205に発現した可溶性タンパク質をプロテインAセファロースビーズで精製し、SDSゲルにかけて、NC紙にトランスファーした。NC紙を、m5F1、51−41または138−10などの様々な抗体でブロットした。図12Aのデータから、m5F1、51−41および138−10は、COLO205細胞に発現するrhCD43を認識することが示された。
【0235】
図12Bに示す実験では、COLO205に発現した可溶性タンパク質をプロテインAセファロースで精製し、SDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーした。NC紙を、抗CD43(MEM59)(左パネル)またはm5F1(右パネル)でブロットした。図12Bのデータから、m5F1は、COS−7細胞に発現するrhCD43を認識しないことが示された。こうしたデータからは、m5F1が認識するエピトープは、一定の細胞型に特異的な翻訳後修飾を含むことが示唆される。
【0236】
(実施例10)
m5F1、51−41、138−10が認識するエピトープは、Lewisa(Lea)構造を含み、フコース依存的である
グリコシダーゼ処理
組換えヒトCEA(rhCEA)を、COLO205細胞に発現したヒトCEAタンパク質から作製した。CEAのアミノ酸35−145(Nドメイン)およびアミノ酸324−415(A2ドメイン)を持つ融合体であるrhCEA(CEA−N−A2)をコードしているcDNAを、Flagタグを含む修飾pcDNA3プラスミドにクローニングした。CEAのアミノ酸残基の位置は、プレタンパク質のアミノ酸の位置がベースになる。組換え(engineered)プラスミドDNAを、安定発現株の構築のためエレクトロポレーションによりCOLO205細胞に導入した。組換えCEAタンパク質を、抗Flag抗体を用いて安定発現株を発現する組換えCEAの細胞培養上清から精製した。
【0237】
各反応ごとに、約1.8μgの組換えタンパク質(rhCEA)を、Xanthomonas sp.由来のα−1→(2,3,4)−フコシダーゼ溶液(シグマ,カタログ番号F1924)と様々な量(0、0.01、0.03または0.1mU)で37℃にて20時間インキュベートした。処理後、このタンパク質サンプルをSDS−PAGEに流し、クマーシーブルー染色(図13左パネル)またはm5F1によるウエスタンブロット検出(図13右パネル)を行った。
【0238】
図13に示すように、rhCEAに対するm5F1の結合は、この抗原をα−1→(2,3,4)−フコシダーゼで処理すると減少することから、m5F1は、フコース感受性糖エピトープを認識すると考えられる。
【0239】
オリゴ糖競合アッセイ
m5F1が認識する糖エピトープをさらに検査するため、様々なオリゴ糖との競合アッセイを行った。オリゴ糖(シグマのカタログ番号03499のLewisa、シグマのカタログ番号L7033のLewisb−ラクトース、シグマのカタログ番号L7777のLewisx−ラクトース、シグマのカタログ番号L7784のLewisy、シグマのカタログ番号S1782のシアリル−Lewisx、シグマのカタログ番号L6770のラクト−N−テトラオース、シグマのカタログ番号L6645のラクト−N−ジフコヘキサオースII、カルバイオケム(Calbiochem)のカタログ番号434626のLewisaおよびシグマのカタログ番号L3750のβ−ラクトース)を購入し、PBSに溶解した。こうしたオリゴ糖の構造を図14に示す。オリゴ糖(最終濃度1mM)を、2×105個のCOLO205細胞を含む異なるウェルに加え、続いて標記の抗体(m5F1、51−41または138−10;それぞれ0.25ug/ml)を添加した。4℃での1時間のインキュベーション後、その上清を捨て、二次抗体(サザンバイオテク,RPE−ヤギ抗マウスIgG,カタログ番号1032−09またはサザンバイオテク,RPE−ヤギ抗マウスIgM,カタログ番号1022−09)を加えた。さらに、フローサイトメトリー解析で細胞結合シグナルを検出した。
【0240】
図15に示すように、LNDFH II、Le(a)−ラクトースおよびLe(a)はすべて、様々なレベルで、COLO205細胞に対する抗体m5F1、51−41および138−10の結合を阻害した。LNTも、COLO205細胞に対する抗体51−41および138−10の結合を阻害したが、m5F1の結合を大きく阻害することはなかった。このことから、こうした抗体が認識するエピトープは、Lea構造またはそれに類する構造を含み、フコース感受性である可能性があることが示唆される。さらに、m5F1抗体のフコース依存性は、抗体51−41および138−10よりも高い。
【0241】
前述の発明について理解しやすいように説明および実施例によりある程度詳細に記載してきたが、その説明および実施例を、本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0242】
参考文献
【0243】
【化10】
【0244】
【化11】
【0245】
【化12】
【0246】
【化13】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年6月7日に出願された米国仮出願第60/811,850号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
本発明は、非造血系腫瘍または癌細胞に発現するCD43および癌胎児性抗原(CEA:carcinoembryonic antigen)のエピトープを含む炭水化物を認識する新規なモノクローナル抗体に関する。これらの抗体は、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下でそうした非造血系腫瘍または癌細胞において細胞死(たとえば、アポトーシス)を誘導する特性を有する。これらのモノクローナル抗体は、診断薬および治療薬として有用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
CD43(シアロホリンまたはロイコシアリンとも呼ばれる)は、シアル酸に富む分子で、すべてのT細胞を含むほとんどのヒト白血球および血小板において高度に発現し、分子量は、115,000〜135,000である。X染色体関連劣性免疫不全障害であるウィスコット−アルドリッチ症候群の男性T細胞では、CD43の発現が不完全である(Remold−O’Donnellら、(1987)Blood 70(1):104−9;Remold−O’Donnelら、(1984)J.Exp.Med.159:1705−23)。
【0004】
機能の研究から、抗CD43モノクローナル抗体が末梢血Tリンパ球の増殖(Mentzerら、(1987)J.Exp.Med.1;165(5):1383−92;Parkら、(1991)Nature,350:706−9)および単球の活性化(Nongら、(1989)J.Exp.Med.1:170(1):259−67)を刺激することが明らかにされた。モノクローナル抗CD43抗体L11は、リンパ節およびパイエル板HEV(high endothelial venule)へのT細胞の結合を遮断する。抗体L11は、血液から系統的な二次リンパ組織へのT細胞の血管外遊走を阻害する(McEvoyら、(1997)J.Exp.Med.185:1493−8)。CD43分子を認識するモノクローナル抗体は、CD34を高密度で発現する、細胞系統マーカー陰性の骨髄造血前駆細胞(HPC:hematopoietic progenitor cell)(Bazilら、(1996)Blood,87(4):1272−81.)およびヒトTリンパ芽球様細胞(Brownら、(1996)J.Biol.Chem.271:27686−95)のアポトーシスを誘導する。最近の研究ではさらに、CD43が、ヒトT細胞のE−セレクチンのリガンドとして機能することも示唆された(非特許文献1;非特許文献2)。
【0005】
興味深いことに、科学者らにより、ある種の非造血系腫瘍細胞、特に結腸直腸腺癌の細胞表面にもCD43分子が発現することが発見されている。非特許文献3:非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6を参照されたい。結腸癌細胞株(COLO205)に発現するCD43のグリカンは、白血球のCD43のグリカンと異なることが明らかになっている(Baeckstromら、(1997)J.Biol.Chem.272:11503−9)。CD43が過剰に発現すると、腫瘍抑制タンパク質p53が活性化され(非特許文献7)、p65の転写活性の阻害などによりNF−κB標的遺伝子のサブセットが抑制されると考えられてきたが(非特許文献8)、結腸腫瘍形成におけるCD43の原因的役割を示す直接的な証拠は未だに認められていない。非造血系腫瘍細胞の治療剤として従来の抗CD43抗体を用いるのは、腫瘍にも免疫T細胞にも強く結合するため実用的ではない。非造血系腫瘍または癌細胞に発現するCD43に特異的に結合しても、白血球または造血系由来の他の細胞に発現するCD43には結合しない抗体を作製することが依然として求められている。こうした抗体は、CD43を発現する非造血系癌を処置する治療薬として有用である可能性がある。
【0006】
CEAは通常、種々の腺上皮組織(胃腸管、気道および尿生殖管など)に発現し、細胞の頂端膜側に局在していると思われる(非特許文献9)。こうした組織から生じる腫瘍では、頂端膜ドメインから細胞表面全体に延在するCEAの発現レベルが上昇するとともに、このタンパク質が血液へ分泌される(非特許文献9)。結腸直腸癌、膵臓癌、肺癌、胃癌、肝細胞癌、乳房癌および甲状腺癌など、多くのタイプの癌では、CEAの過剰な発現が観察された。したがって、CEAは、腫瘍マーカーとして用いられており、癌の予後および管理においては、癌患者の血液中のCEA量の増加を測定するため、免疫学的アッセイが長年にわたり臨床の場で用いられている(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。
【0007】
より重要なのは、CEAが、標的治療の腫瘍関連抗原として有用性が期待されるようになったことである(非特許文献13)。癌免疫療法にCEAを標的として用いる主要な戦略が2つ開発されている。1つの方法は、抗CEA抗体によるCEA発現腫瘍細胞への自殺遺伝子(一酸化窒素合成酵素(iNOS:inducible nitric oxide synthase)遺伝子)(Kuroki M.ら、(2000)Anticancer Res.20(6A):4067−71)または同位元素(Wilkinson R W.ら、(2001)PNAS USA 98,10256−60,Goldenberg,D.M.(1991)Am.J.Gastroenterol.,86:1392−1403,Olafsen T.ら、Protein Engineering,Design & Selection,17,21−27,2004)の特異的ターゲティングである。また、この方法は、抗体、あるいは、薬物、トキシン、放射性ヌクレオチド、免疫調節物質(immumodulator)またはサイトカインなどの治療薬とコンジュゲートされた抗体フラグメントを使用するまでに広がっている。もう1つの方法は、免疫細胞溶解活性を利用するもので、具体的には抗体依存性細胞傷害(ADCC:antibody−dependent cellular cytotoxicity)または補体依存性細胞傷害(CDC:complement−dependent cytotoxicity)によりCEA発現腫瘍細胞を除去する(Imakiire Tら、,(2004)Int.J.Cancer:108,564−570)。これらの方法は、サイトカインを放出させるため、副作用が認められる場合が多い。
【0008】
本明細書に開示する参考文献、刊行物および特許出願については、参照によってその全体を本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Matsumotoら、J.Immunol.(2005)175:8042−50
【非特許文献2】Fuhlbriggeら、Blood(2006)107:1421−6
【非特許文献3】Santamariaら、Cancer Research(1996)56:3526−9
【非特許文献4】Baeckstromら、J.Biol.Chem.(1995)270:13688−92
【非特許文献5】Baeckstromら、J.Biol.Chem.(1997)272:11503−9
【非特許文献6】Sikutら、Biochem.Biophy.Res.Commun.(1997)238:612−6
【非特許文献7】Kadajaら、Oncogene(2004)23:2523−30
【非特許文献8】Laosら、Int.J.Oncol.(2006)28:695−704
【非特許文献9】Hammarstrom,S. Semin.Cancer Biol.(1999)9,67−81.
【非特許文献10】Gold P,ら、J.Expl.Med.(1965)122:467−81
【非特許文献11】Chevinsky,A.H. Semin.Surg.Oncol.(1991)7,162−166
【非特許文献12】Shively,J.E.ら、Crit.Rev.Oncol.Hematol.(1985)2,355−399
【非特許文献13】Kuroki M,ら、Anticancer Res(2002)22:4255−64
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
一態様では、本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球(たとえば、ヒト末梢性T細胞)またはJurkat細胞(リンパ芽球様の白血病細胞)に発現するCD43には特異的に結合しない新規な抗体を提供する。抗体が結合するエピトープは、炭水化物を含む。こうした抗体は、そうした非造血系癌細胞において、抗体への細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下で細胞死を誘導することができる。
【0011】
本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43および/またはCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合せず、かつ、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合後、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下で、非造血系癌細胞のアポトーシスを誘導することができる抗体であって、エピトープは、炭水化物を含み、エピトープに対する抗体の結合は、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造またはLNT構造を含む炭水化物により阻害される、抗体を提供する。いくつかの実施形態では、抗体が結合するエピトープは、フコース感受性である。
【0012】
非造血系癌細胞は、結腸直腸癌および胃癌由来の細胞を含むが、これに限定されるものではない。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するエピトープに結合すると、癌細胞の数を減少させ、および/または癌細胞の成長または増殖を阻害する。たとえば、抗体の存在下での細胞数の減少率または細胞成長の阻害率は、抗体の非存在下での細胞数または細胞成長と比較して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約65%、約75%またはそれ以上のいずれかである。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAの細胞外ドメインの立体構造エピトープ(conformation epitope)を認識し、立体構造エピトープは、トリペプチドが形成する構造、N’−Trp−Pro−Ile−C’と等価な物理的特徴および化学的特徴を持つ構造を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、N末端にアミノ酸配列N’−Trp−Pro−Ile−C’を含むポリペプチドに結合する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞の細胞表面にあるエピトープへの結合において、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞の細胞表面にあるエピトープへの結合において、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合において、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列由来の3つのCDR(complementarity−determining region)を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むヒト化抗体である。
【0023】
別の態様では、本発明は、重鎖および/または軽鎖または本明細書に記載の抗体のフラグメントを含むポリペプチドを提供する。また、本発明は、本明細書に記載の抗体のいずれかに由来するポリペプチドであって、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合せず、かつ、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するCD43への結合後、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能に非存在下で、非造血系癌細胞のアポトーシスを誘導することができる、ポリペプチドを提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドのいずれかをコードしているポリヌクレオチドを提供する。また、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれかを含むベクター(発現ベクターなど)を提供する。さらに、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドのいずれかを含む組成物を提供する。ある実施形態では、抗体またはポリペプチドを薬品に結合させる。いくつかの実施形態では、薬品は、治療薬(たとえば、放射性部分、細胞毒および化学療法剤)である。いくつかの実施形態では、薬品は、標識(たとえば、酵素、蛍光分子およびビオチン)である。
【0026】
また、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチド、あるいは、その抗体もしくはポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドのいずれかおよび薬学的に許容されるキャリアを有効量で含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、抗体またはポリペプチドを治療薬に結合させる。いくつかの実施形態では、組成物を、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射および筋肉内注射による投与用および経口、粘膜、吸入、舌下などのような他の投与形態用に製剤化する。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物は、本発明の複数種の抗体を含んでもよいし、本発明の抗体1種類と一緒に1種または複数種の他の抗癌抗体または他の抗癌剤を含んでもよい。
【0028】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドを作製する方法であって、抗体またはポリペプチドを作製できる条件下で宿主細胞またはその子孫を培養することを含み、宿主細胞は、抗体またはポリペプチドをコードしている発現ベクターを含む、方法を提供する いくつかの実施形態では、この方法は、抗体またはポリペプチドを精製することをさらに含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、好適な細胞において1種または複数種の抗体をコードしているポリヌクレオチドを発現させる(1つのベクターから、1つの軽鎖または重鎖として別々に発現させても、軽鎖および重鎖の両方として発現させもよい)ことで本明細書に記載の抗体のいずれかを作製し、通常、その後、目的の抗体またはポリペプチドを回収および/または単離する、方法を提供する。
【0030】
別の態様では、本発明は、細胞表面にエピトープを発現している非造血系癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法であって、癌細胞を本明細書に記載の抗体またはポリペプチドと接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、個体内にある。
【0031】
別の態様では、本発明は、個体の非造血系癌を処置する方法であって、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドを含む組成物を有効量で個体に投与することを含み、抗体またはポリペプチドは個体の癌細胞に結合する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌は、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌または肺癌である。
【0032】
別の態様では、本発明は、個体の非造血系癌を処置する方法であって、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドおよび別の抗癌剤を一定量で個体に投与することを含み、抗体またはポリペプチドは、個体の癌細胞に結合し、それにより抗体またはポリペプチドおよび抗癌剤の併用が個体の癌の効果的な処置となる、方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、個体の非造血系癌を処置するキットであって、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドを含む、キットを提供する。こうしたキットは、癌を処置するために抗体またはポリペプチドを個体に投与する際の説明書をさらに含んでも構わない。
【0034】
別の態様では、本発明は、非造血系癌の検出または診断、非造血系癌のある個体の処置を目的とした特定、あるいは非造血系癌の進行の監視を行う方法であって、サンプルを本明細書に記載の抗体またはポリペプチドと接触させることと、サンプルの細胞に対する抗体またはポリペプチドの結合の有無またはレベルを検出することとを含む、方法を提供する。サンプルにおいて抗体と細胞間で結合が見られれば、サンプルに癌細胞が含まれている可能性があり、および/または癌のある個体を本明細書に記載の抗体で処置してもよいことが示唆される。この方法は、結合のレベルを対照と比較するステップをさらに含んでも構わない。
【0035】
別の態様では、本発明は、非造血系癌の検出または診断、非造血系癌のある個体の処置を目的とした特定、あるいは非造血系癌の進行の監視を行うキットであって、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドおよびサンプルにおける細胞に対する抗体またはポリペプチドの結合を検出する試薬を含む、キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、5F1の標的タンパク質の同定結果を示す。COLO205ライセート(レーン1および3)またはCOLO320ライセート(レーン2および4)由来の、5F1のイムノアフィニティーカラムの溶出液中のタンパク質を、市販の抗CD43抗体AF2038(レーン1および2)または抗体5F1(レーン3および4)でイムノブロットした。
【図2A】図2Aは、3種の癌細胞株:結腸直腸癌細胞(COLO205およびDLD−1)および胃癌細胞(NCI−N87)に対する抗体5F1の結合のフローサイトメトリー解析結果を示す。
【図2B】図2Bは、正常な内皮細胞(HUVEC)、正常な(胎児)肺細胞(MRC−5)、正常な乳腺上皮細胞(MCF−10A)、正常な結腸直腸細胞(CCD841−CoN)、活性化Tリンパ球(活性化は7日間)または正常な末梢血単核球(PBMC)に対する抗体5F1の結合のフローサイトメトリー解析結果を示す。
【図3】図3は、抗体5F1または9E10(抗myc抗体)あるいは対照培地の存在下で、6、24および48時間インキュベートした後のCOLO205細胞の細胞質におけるヌクレオソームの平均エンリッチメントを示す。
【図4】図4は、抗体5F1、9E10またはアジドとインビトロで72時間インキュベートした後、WST−1アッセイで測定したCOLO205の細胞成長の結果を示す。
【図5】図5は、WST−1アッセイで測定した細胞成長の結果を示す。結腸直腸癌(colorectal carcinoma)細胞COLO205および正常な結腸直腸細胞株CCD841−CoNを、未処理あるいは9E10、5F1(「m133−5F1」という)または0.5%アジドとインキュベートした。
【図6】図6は、様々な濃度の5F1(0、2、4、8、16、32、64ug/ml)、9E10(64ug/ml)または0.5%アジドとのインキュベーション後のCOLO205細胞のMTT染色の結果を示す。
【図7】図7は、SCIDマウスのヒトCOLO205腫瘍に対する抗体5F1(「m133−5F1」ともいう)のインビボでの(腫瘍の大きさに対する)作用を示す。抗体5F1(500μg/注射)または対照抗体9E10(500μg/注射)あるいはPBS(未処理)を0、3、5、7、10、12、14および17日目に注射した。
【図8】図8は、SCIDマウスにおけるヒトCOLO205腫瘍に対する化学薬品5FU/LVを加えた抗体5F1のインビボでの作用(腫瘍の大きさに対する)を示す。COLO205細胞の接種から1週間後、25mg/kgの5FU/LVを1日おきに4回静脈内注射した。腫瘍移植から7日後3週にわたり、抗体5F1を0、6.25mg/kg、12.5mg/kgおよび25mg/kgで週2回腹腔内注射した。
【図9】図9Aは、COLO205細胞に対するキメラ抗体5F1の結合のフローサイトメトリー結果を示す。図9Bは、COLO205細胞と対照培地(未処理)、アジ化ナトリウム(0.5%)、マウス抗体5F1(m5F1、2〜32μg/ml)またはキメラ抗体5F1(c5F1、2〜32μg/ml)とのインキュベーション後のアネキシンV陽性細胞およびPI陽性細胞の比率を示す。
【図10】図10は、様々な抗体とのインキュベーション後のアポトーシス細胞死に対するCOLO205およびNCI−N87細胞の染色を示す。COLO205およびNCI−N87細胞を、対照、9E10(30ug/ml)、m5F1(10ug/ml)またはm5F1(30ug/ml)と一晩インキュベートした。次いで細胞をYO−PRO−1(A)またはアネキシン−VとPIとの併用(B)で染色した。条件ごとの染色比率を棒グラフに示す。
【図11】図11は、m5F1が、COLO205細胞に発現する組換えヒトCEA(rhCEA)に結合するが、COS−7細胞に発現するrhCEAを認識しないことを示す。図11Aでは、flagタグ付きヒトCEAを発現しているCOLO205細胞可溶化物を抗Flag抗体M2で免疫沈降し、免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにかけてから、NC紙にトランスファーした。NC紙を、図示したように抗Flag M2、m5F1、51−41、138−10またはCEA/Ab−3とインキュベートした。図11Bでは、flagタグ付きヒトCEAを発現しているCOS−7細胞(+)またはCEAを発現していないCOS−7細胞(−)の細胞可溶化物を抗Flag抗体M2で免疫沈降し、免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにかけてから、NC紙にトランスファーした。NC紙を、図示したように抗Flag M2、m5F1またはCEA/Ab−3とインキュベートした。
【図12】図12は、m5F1が、COLO205細胞に発現する組換えCD43(rhCD43)に結合するが、COS−7細胞に発現するrhCD43を認識しないことを示す。図12Aでは、COLO205細胞に発現し、プロテインAセファロースビーズで精製した可溶性CD43をSDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーし、このNC紙を、抗体m5F1、51−14または138−10でウエスタンブロットした。図12Bでは、hCD43またはhCD43/myc−HisをトランスフェクトしたCOS−7細胞、あるいはトランスフェクトしなかった細胞の細胞可溶化物をSDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーし、このNC紙を、抗CD43(MEM59)(左パネル)またはm5F1(右パネル)でウエスタンブロットした。
【図13】図13は、m5F1抗体がフコース依存性糖エピトープを認識することを示す。COLO205細胞に発現するrhCEAを0、0.01、0.03、0.1mUのα−1→(2,3,4)−フコシダーゼで処理した。処理後、タンパク質をSDS−PAGEにかけてから、クマーシーブルー染色するか(右パネル)、m5F1抗体を用いてウエスタンブロットを行った。
【図14】図14は、Lewisa−ラクトース(Lea−ラクトース)、Lewisb−ラクトース(Leb−ラクトース)、Lewisx−ラクトース(Lex−ラクトース)、ラクトース、Lewisy(Ley)、シアリル−Lewisx(シアリル−Lex)、Lewisa(Lea)、ラクト−N−テトラオース(LNT)およびレクト−N−ジフコヘキサオース II(LNDFH II)の構造を示す。
【図15】図15は、オリゴ糖を加えてCOLO205細胞に対するm5F1、138−10および51−41の結合を競合させた結合阻害アッセイの結果を示す。オリゴ糖(LNDFH II、LNT、sLe(x)、Le(y)、ラクトース、Le(x)−ラクトース、Le(b)−ラクトース、Le(a)−ラクトースまたはLe(a);それぞれ1mM)を、2×105個のCOLO205細胞を含む異なるウェルに加え、続いて抗体(138−10、51−41またはm5F1)を加えて、対照には抗体を加えなかった。COLO205細胞に対する抗体の結合をフローサイトメトリー解析で測定した。各抗体に対するオリゴ糖による結合阻害を、平均蛍光(florescence)値で判定した阻害率として図に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
「抗体」とは、免疫グロブリン分子の可変領域に存在する少なくとも1つの抗原認識部位を介して炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどのような標的に特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、この語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体ばかりでなく、そのフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(ScFv)、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の任意の修飾構造も包含する。抗体は、IgG、IgAまたはIgM(またはこれらのサブクラス)など任意のクラスの抗体を含むが、抗体は、特定のクラスである必要はない。免疫グロブリンは、抗体の重鎖定常ドメインのアミノ酸配列によって異なるクラスに分類することができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという5つの主要なクラスがあり、そのうちの一部は、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2などのサブクラス(アイソタイプ)にさらに分けることができる。免疫グロブリンの個々のクラスに対応する重鎖の定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。免疫グロブリンの各クラスのサブユニット構造および三次元構造は、周知である。
【0038】
本発明の抗体は、抗体の少なくとも1つのCDR領域により決定されるポリペプチドに対する親和性を持つ二重特異性分子、多重特異性分子、単鎖分子ならびにキメラ分子およびヒト化分子をさらに含むものである。さらに、本発明の抗体は、抗体の重鎖可変ドメインまたは抗体の軽鎖可変ドメインのどちらかである単一ドメイン抗体もさらに含む。Holtら、,Trends Biotechnol.21:484−490,2003を参照。また、抗体の6つの天然型相補性決定領域のうち3つを含む、抗体の重鎖可変ドメインまたは抗体の軽鎖可変ドメインのどちらかを含むドメイン抗体の作製方法についても、当該技術分野において公知である。たとえば、Muyldermans,Rev.Mol.Biotechnol.74:277−302,2001を参照されたい。
【0039】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体群の中の抗体をいう。言い換えれば、抗体集団を構成する個々の抗体は、わずかながら存在する場合がある自然に発生し得る突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は通常、特異性が高く、単一の抗原部位を標的とする。さらに、各モノクローナル抗体は、異なる決定基(エピトープ)を標的にする様々な抗体を含むことが一般的なポリクローナル抗体調製物と異なり、抗原の単一決定基を標的にする。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られた抗体の特性を示すもので、任意の特定の方法により抗体を作製する必要があるものと解釈してはならない。たとえば、本発明に従って使用できるモノクローナル抗体については、Kohler and Milstein,1975,Nature,256:495に最初に記されたハイブリドーマ法で製造してもよいし、米国特許第4,816,567号に記載されているような組換えDNA法で製造してもよい。さらに、たとえば、McCaffertyら、,1990,Nature,348:552−554に記載の技法を用いて作製されたファージライブラリーからモノクローナル抗体を単離しても構わない。
【0040】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」とは、第1の種の可変領域または可変領域の一部と第2の種の定常領域を持つ抗体をいう。インタクトなキメラ抗体は、キメラ軽鎖の2つのコピーおよびキメラ重鎖の2つのコピーを含む。キメラ抗体の作製については、当該技術分野において公知である(Cabillyら、(1984),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:3273−3277;Harlow and Lane(1988),Antibodies:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory)。一般に、こうしたキメラ抗体では、軽鎖および重鎖の可変領域がともに、一方の哺乳動物種に由来する抗体の可変領域に類似しているのに対し、定常部分は、他方の動物種に由来する抗体の配列に相同的である。こうしたキメラ形態の明確な利点の1つは、たとえば、容易に入手できる非ヒト宿主生物のハイブリドーマまたはB細胞を、たとえば、ヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて用いて、可変領域を現在知られている供給源から簡便に得ることができることにある。この可変領域には、調製しやすく特異性が供給源による影響を受けないという利点があり、定常領域がヒトであれば、抗体を注射する際に非ヒト供給源由来の定常領域の場合よりもヒト被験者が免疫反応を起こしにくい。しかしながら、この定義は、この特定例に限定されるものではない。
【0041】
「単離された」抗体とは、その天然環境の成分から同定され、分離および/または回収された抗体である。
【0042】
本明細書で使用する場合、「実質的に純粋」とは、純度(すなわち、夾雑物を含まない)が少なくとも50%、一層好ましくは純度が少なくとも90%、一層好ましくは純度が少なくとも95%、一層好ましくは純度が少なくとも98%、一層好ましくは純度が少なくとも99%である材料をいう。
【0043】
本明細書で使用する場合、「ヒト化」抗体とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最低限しか含まない特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合部分配列など)である非ヒト(たとえばマウス)抗体の形態をいう。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(complementary determining region)(CDR)由来の残基を、所望の特異性、親和性および能力を持つマウス、ラットまたはウサギなど、非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基に置き換える、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR:framework region)残基を、対応する非ヒト残基で置き換える。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移植したCDRまたはフレームワーク配列にも見られないが、抗体性能の一層の改良および最適化を行うために加える残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は実質的に、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの全部を含む。その可変ドメインでは、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全部または実質的に全部は、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。さらに、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリンのそれを含むのが最も望ましい。抗体は、国際公開第99/58572号に記載されているように改変したFc領域を含んでも構わない。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体から変化している1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)(元の抗体の1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼べる)を持っている。
【0044】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」は、ヒトから作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を持っている抗体をいい、および/または、当該技術分野において公知か、本明細書に開示されたヒト抗体の作製技法のいずれかを用いて作製されている。ヒト抗体のこの定義は、少なくとも1種のヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1種のヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。そうした例の1つとして、マウス軽鎖ポリペプチドおよびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体がある。当該技術分野において公知の種々の技法を用いてヒト抗体を作製することができる。一実施形態では、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される(Vaughanら、,1996,Nature Biotechnology,14:309−314;Sheetsら、,1998,PNAS,(USA)95:6157−6162;Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.,227:381;Marksら、,1991,J.Mol.Biol.,222:581)。また、たとえば、内在性免疫グロブリン遺伝子を一部または完全に不活化したマウスのようなトランスジェニックアニマルにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入して、ヒト抗体を作製してもよい。このアプローチについては、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;および同第5,661,016号に記載されている。あるいは、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球(このBリンパ球については個体から回収してもよいし、インビトロで感作してもよい)を不死化することで、ヒト抗体を調製することもできる。たとえば、Coleら、,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boernerら、,1991,J.Immunol.,147(1):86−95;および米国特許第5,750,373号を参照されたい。
【0045】
抗体の「可変領域」とは、抗体の軽鎖可変領域または抗体の重鎖可変領域のどちらかあるいは両方をいう。重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域とも呼ばれる3つの相補性決定領域(CDR)が結合している4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖のCDRは、FRにより近接してつながっており、他方のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。2つのCDRを決定するには、少なくとも(1)異種間の配列多様性に基づくアプローチ(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda MD));および(2)抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al−lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927−948))といった技法がある。本明細書で使用する場合、CDRは、このアプローチのどちらか、または、2つのアプローチを併用して定義されるCDRを指してもよい。
【0046】
抗体の「定常領域」とは、抗体の軽鎖定常領域または抗体の重鎖定常領域のどちらかあるいは両方をいう。抗体の定常領域は通常、構造を安定化させるほか、抗体鎖の結合、分泌、経胎盤移行および補体結合など他の生物学的機能を与えるが、抗原に対する結合には関与していない。定常領域の遺伝子のアミノ酸配列および対応するエクソン配列は、それが由来する種によって異なるが、アロタイプが生じるアミノ酸配列の変異は、概ね種内の特定の定常領域に限られる。各鎖の可変領域は、結合ポリペプチド配列で定常領域に結合している。この結合配列は、軽鎖遺伝子の「J」配列と、重鎖遺伝子の「D」配列および「J」配列の組み合わせとによってコードされている。
【0047】
本明細書で使用する場合、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」および「ADCC」とは、Fc受容体(FcR:Fc receptor)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(たとえばナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞に結合した抗体を認識し、その後、標的細胞を溶解させる細胞媒介性の反応をいう。目的の分子のADCC活性については、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを用いて判定することができる。そうしたアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核球(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)およびNK細胞がある。その代わりに、またはそれに加えて、たとえば、Clynesら、,1998,PNAS(USA),95:652−656に開示されたような動物モデルを用いて、目的の分子のADCC活性をインビボで判定してもよい。
【0048】
「補体依存性細胞傷害」および「CDC」とは、補体の存在下で標的を溶解させることをいう。補体活性化の経路は、補体系の第1の成分(C1q)が同族抗原と複合体を形成した分子(たとえば抗体)に結合することで始まる。補体活性化を判定するには、たとえば、Gazzano−Santoro et al,J.Immunol.Methods,202:163(1996)に記載されているようなCDCアッセイを行ってもよい。
【0049】
本明細書では、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という語については同義で用い、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。ポリマーは、直鎖でも分枝でもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸を挟んで結合していてもよい。さらに、この語は、天然に修飾されている、あるいは、たとえば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または標識成分とのコンジュゲーションのような他の任意の操作または修飾などの介入により修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。さらに、この定義には、たとえば、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(たとえば、天然ではないアミノ酸など)および当該技術分野において公知の他の修飾体を含むポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドは抗体をベースにしているため、ポリペプチドが、単鎖または結合鎖として生じる可能性があることが理解されよう。
【0050】
本明細書では、「ポリヌクレオチド」または「核酸」については、同義に用い、任意の長さヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドまたは塩基および/またはこれらのアナログ、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマーに取り込まれる場合がある任意の基質であってもよい。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドおよびそのアナログを含んでも構わない。ヌクレオチド構造の修飾を行う場合は、ポリマーの構築の前でも後でもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分を含んでいてもよい。ポリヌクレオチドについては、標識成分とのコンジュゲーションなどより、重合後にさらに修飾することもできる。他のタイプの修飾として、たとえば、「キャップ」、アナログによる1種または複数種の天然ヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間の修飾(たとえば、非荷電結合(たとえば、メチルホスホナート、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カバマートなど)および荷電結合(たとえば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアートなど)による修飾、たとえば、タンパク質(たとえば、ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リシンなど)などのペンダント部分を含ませる修飾、インターカレーター(たとえば、アクリジン、ソラレンなど)による修飾、キレート剤(たとえば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含ませる修飾、アルキル化剤を含ませる修飾、修飾結合(たとえば、αアノマー核酸など)による修飾)、およびポリヌクレオチド(単数または複数)の無修飾形態が挙げられる。さらに、たとえば、糖に普通に存在するヒドロキシル基のいずれかを、ホスホン酸基、リン酸基で置換しても、標準的な保護基で保護しても、活性化して新たなヌクレオチドへの追加結合を作製してもよいし、固体支持体にコンジュゲートしてもよい。5’および3’末端のOHについては、リン酸化しても、アミンまたは1〜20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換しても構わない。さらに、他のヒドロキシルを標準的な保護基に誘導体化することもできる。さらに、ポリヌクレオチドは、一般に当該技術分野において公知のリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態を含んでもよく、たとえば、2’−−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環式糖アナログ、αアノマー糖、アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、環状アナログおよびメチルリボシドなどの塩基性ヌクレオシドアナログがある。1つまたは複数のホスホジエステル結合を別の結合基で置換してもよい。そうした別の結合基として、ホスファートを、P(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、’’(O)NR2(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)(RまたはR’は各々独立にHまたは任意にエーテル(−O−)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルジルを含む置換もしくは非置換アルキル(1〜20個のC)である)で置換する実施形態があるが、これに限定されるものではない。ポリヌクレオチドのすべての結合が同一である必要はない。前述の記載を、RNAおよびDNAを含む本明細書に言及するすべてのポリヌクレオチドに適用する。
【0051】
本明細書で使用する場合、「ベクター」とは、1種または複数種の目的の遺伝子(単数または複数)または配列(単数または複数)を送達し、好ましくは宿主細胞において発現させることができるコンストラクトをいう。ベクターの例として、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、陽イオン性縮合剤に結合されたDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入したDNAまたはRNA発現ベクターおよび生成細胞などのある種の真核細胞があるが、これに限定されるものではない。
【0052】
本明細書で使用する場合、「発現制御配列」とは、核酸の転写を指令する核酸配列をいう。発現制御配列は、構成的もしくは誘導性プロモーターなどのプロモーターまたはエンハンサーであってもよい。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動的に連結されている。
【0053】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、有益または所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的な用途の場合、有益または所望の結果には、疾患、その合併症および疾患の発生過程で見られる病理学的中間表現型の生化学的、組織学的および/または行動的症状を含む、疾患のリスクの除去もしくは抑制、重症度の緩和または発症の遅延などの結果が含まれる。治療用途の場合、有益または所望の結果には、疾患に起因する1つまたは複数の症状の減少、疾患に罹患している人の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬の用量の減少、ターゲティングなどによる別の薬の作用の強化、疾患の進行の遅延および/または生存の延長などの臨床結果がある。癌または腫瘍の場合、薬物の有効量は、癌細胞の数の減少;腫瘍の大きさの縮小;周辺臓器への癌細胞浸潤の抑制(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止);腫瘍転移の抑制(すなわち、ある程度の遅延および好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の抑制;および/または障害に伴う1つまたは複数の症状のある程度の軽減に作用する場合がある。有効投与量を、単回で投与しても、複数回で投与してもよい。本発明において、薬物、化合物または医薬組成物の有効投与量は、直接あるいは間接に予防処置または治療処置を達成するのに十分な量である。臨床的な観点から理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効投与量を、別の薬物、化合物または医薬組成物との併用で達成する場合もあれば、そうでない場合もある。したがって、1種または複数種の治療薬を投与する観点から、「有効投与量」を考慮してもよく、1種または複数種の他の薬品と併用して、所望の結果を得る可能性がある、または、得ている場合、単一の薬品を有効量で投与すると考えてもよい。
【0054】
本明細書で使用する場合、「併用して」とは、1つの処置方式に加えて別の処置方式を投与することをいう。そのため、「併用して」とは、他方の処置方式を個体に投与する前、投与している最中または投与した後に、一方の処置方式を投与することをいう。
【0055】
本明細書で使用する場合、「処置」または「処置する」とは、好ましくは臨床的な結果を含め有益または所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の有益または所望の臨床的な結果として、癌性細胞の増殖(proliferation)の抑制(または癌細胞の破壊)、疾患に起因する諸症状の減少、疾患に罹患している人の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬の用量の減少、疾患の進行の遅延および/または個体の生存の延長の1つまたは複数があるが、これに限定されるものではない。
【0056】
本明細書で使用する場合、「疾患の発生の遅延」とは、疾患(癌など)の発生を遅らせる、妨げる、遅くする、妨害する、安定させる、および/または先延ばしすることをいう。こうした遅延の時間の長さは、疾患の既往および/または処置する個体によって異なってもよい。当業者には明らかなように、十分なまたはかなりの遅延は、個体が疾患を発生しないという点で実質的に予防を包含する。たとえば、転移の発生のような後期癌を遅延させることができる。
【0057】
「個体」または「被検体」とは、哺乳動物であり、一層好ましくはヒトである。さらに、哺乳動物には、家畜、競技用動物、ペット(ネコ、イヌ、ウマなど)、霊長類、マウスおよびラットも含まれるが、これに限定されるものではない。
【0058】
本明細書で使用する場合、「特異的に認識する」または「特異的に結合する」という語は、生体分子などの不均一な分子集団の存在下で標的の有無の判定に役立つ、標的と抗体間の誘引または結合などの測定可能で再現性のある相互作用をいう。たとえば、エピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、標的の他のエピトープまたは標的以外のエピトープに結合するよりも高い親和性、結合活性で、容易に、および/または長時間そのエピトープに結合する抗体である。この定義を読めば、たとえば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は、第2の標的に特異的または優先的に結合することもあれば、そうでない場合があることも理解されるであろう。そのため、「特異的結合」または「優先的な結合」は、必ずしも排他的な結合を(含んでもよいが)必要としない。標的に特異的に結合する抗体の結合定数は、少なくとも約103M−1または104M−1、場合によっては約105M−1または106M−1、他の場合には約106M−1または107M−1、約108M−1〜109M−1または約1010M−1〜1011M−1またはそれ以上であってもよい。種々のイムノアッセイフォーマットを用いて、特定のタンパク質に対して特異的な免疫反応を示す抗体を選択することができる。たとえば、固相ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)イムノアッセイを用いて、タンパク質に対して特異的な免疫反応を示すモノクローナル抗体を日常的に選択することができる。たとえば、特定の免疫反応性を判定できるイムノアッセイのフォーマットおよび条件については、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York参照されたい。
【0059】
本明細書で使用する場合、「癌」、「腫瘍」、「癌性」および「悪性」という語は、一般に無秩序な細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すか、説明する。癌の例として、腺癌などの癌腫、リンパ腫、芽腫、メラノーマおよび肉腫があるが、これに限定されるものではない。そうした癌のより具体的な例として、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、胃腸癌、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、神経膠腫、卵巣癌、肝癌およびヘパトーマなどの肝臓癌、膀胱癌、乳房癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎細胞癌およびウィルムス腫瘍などの腎臓癌、基底細胞癌、メラノーマ、前立腺癌、甲状腺癌、精巣癌、食道癌および様々なタイプの頭頸部癌がある。
【0060】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の言及を含む。たとえば、「抗体」について言及する場合、1つの抗体からモル量のような多数の抗体をいい、当業者に公知のその等価物を含んでおり、以下同様である。
【0061】
本明細書に記載の本発明の態様および変形例は、態様および変形例「からなる」および/または態様および変形例「から本質的になる」ものを含むことが理解されよう。
【0062】
非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAの炭水化物エピトープに特異的に結合する抗体およびポリペプチド
本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43および/またはCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球(末梢性T細胞など)またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合しない抗体に由来する、単離された抗体およびポリペプチドを提供する。本発明の抗体およびポリペプチドは、以下の特徴のうち1つまたは複数をさらに有していてもよい:(a)エピトープを含む分子をα−1→(2,3,4)−フコシダーゼで処置した場合、エピトープに対する抗体またはポリペプチドの結合が減少する;(b)エピトープに対する抗体またはポリペプチドの結合が、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造および/またはLNT構造を含む炭水化物により阻害される;(c)癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合後、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の存在下で(アポトーシスなどにより)非造血系癌細胞の死を誘導する;(d)癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合後、非造血系癌細胞の細胞成長または増殖を阻害する;および(e)結腸直腸癌および胃癌など、個体の細胞表面にエピトープを発現させる非造血系癌を処置または防止する。
【0063】
本明細書で使用する場合、「阻害」という語は、部分的阻害および完全な阻害を含む。たとえば、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造またはLNT構造を含む炭水化物で、CD43およびCEAのエピトープに対する抗体またはポリペプチドの結合を、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%阻害する。エピトープに対する抗体の結合については、直接的な競合または他のメカメカニズムにより阻害することもできる。
【0064】
エピトープを発現する非造血系癌細胞の例として、結腸直腸癌細胞(COLO205およびDLD−1など)および胃癌細胞(NCI−N87など)があるが、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明の抗体およびポリペプチドは、非造血系癌細胞に存在するCD43の細胞外ドメインを認識できるが、白血球のCD43(たとえば、末梢性T細胞)の細胞外ドメインまたはJurkat細胞(リンパ芽球様の白血病細胞)に発現するCD43の細胞外ドメインには結合しない。いくつかの実施形態では、本発明の新規な抗体またはポリペプチドは、造血系由来の細胞に発現するCD43に特異的に結合しない。
【0066】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、単鎖(ScFv)、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および必要な特異性を持つ抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の任意の変形構造を包含してもよい。抗体は、マウス由来でも、ラット由来でも、ラクダ由来でも、ヒト由来でも、他の任意のものの由来(ヒト化抗体など)でも構わない。
【0067】
CD43またはCEAに対するポリペプチド(抗体を含む)の結合親和性は、約500nM、約400nM、約300nM、約200nM、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pMまたは約50pMのいずれかを下回ってもよい。当該技術分野において周知のように、結合親和性をKD、すなわち解離定数で表してもよく、結合親和性が高まると、KDは小さくなる。CD43またはCEAに対する抗体の結合親和性を判定する1つのやり方は、抗体の単機能Fabフラグメントの結合親和性を測定する。単機能Fabフラグメントを得るには、抗体(たとえば、IgG)をパパインで切断しても、組換えによって発現させてもよい。表面プラズモン共鳴(BIAcore3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR:surface plasmon resonance)システム,BIAcore,INC,ピスカウェイ(Piscaway),ニュージャージー州)およびELISAで抗体のFabフラグメントの親和性を判定してもよい。反応速度論的会合速度(kon)および解離速度(koff)(通常25℃で測定)を得て、平衡解離定数(KD)値をkon/koffとして算出する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびポリペプチドは、癌細胞の数を減少させ、および/またはエピトープを持つ腫瘍または癌細胞の細胞成長または増殖を阻害する。好ましくは、細胞数の減少率または細胞成長もしくは増殖の阻害率は、抗体またはポリペプチドを処置していない細胞と比較して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約65%、約75%またはそれ以上である。癌細胞には、結腸直腸癌、膵臓癌、肺癌、胃癌があるが、これに限定されるものではない。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびポリペプチドは、非造血系癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合後、たとえば、アポトーシスにより細胞死を単独で誘導することができる。本明細書で使用する場合、「細胞死を誘導する」という語は、本発明の抗体またはポリペプチドが、細胞表面に発現する分子と直接的に相互作用することができ、細胞の細胞死を誘導するには、細胞毒コンジュゲーションまたは他の免疫エフェクター機能、すなわち、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または食作用などの他の因子の助けを借りずに、結合/相互作用だけで十分であることをいう。
【0070】
本明細書で使用する場合、「アポトーシス」という語は、遺伝子依存性の細胞内の細胞破壊プロセスをいう。アポトーシスは、壊死とは異なる。アポトーシスでは、細胞骨格の破壊、細胞質の収縮および凝縮、細胞膜表面におけるホスファチジルセリンの発現ならびにブレッビングが起こり、細胞膜に結合した小胞またはアポトーシス小体が形成される。このプロセスは、「プログラムされた細胞死」とも呼ばれる。アポトーシスの過程では、curved細胞表面、核クロマチンの凝縮、染色体DNAの断片化およびミトコンドリア機能の低下などの特徴的な現象が観察される。アネキシンV、ヨウ化プロピジウム、DNA断片化アッセイおよびYO−PRO−1(インビトロジェン(Invitrogen))による細胞の染色など、既知の様々な技法を用いてアポトーシスを検出することができる。
【0071】
細胞死(アポトーシスなど)を検出する方法には、形態、DNA断片化、酵素活性およびポリペプチド分解などの検出があるが、これに限定されるものではない。参照によって本明細書に援用するSimanら、,米国特許第6,048,703号;Martin and Green(1995),Cell,82:349−52;Thomberry and Lazebnik(1998),Science,281:1312−6;Zouら、,米国特許第6,291,643号;Scovassi and Poirier(1999),Mol.Cell Biochem.,199:125−37;Wyllie e tal.(1980),Int.Rev.Cytol,68:251−306;Belhocineら、(2004),Technol.Cancer Res.Treat.,3(1):23−32を参照されたい。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびポリペプチドは、非造血系癌細胞に発現する立体構造エピトープを認識し、このエピトープは、トリペプチドが形成する構造、N’−Trp−Pro−Ile−C’と等価な物理的特徴および化学的特徴を持つ構造を含む。本明細書で使用する場合、「エピトープは、ペプチドが形成する構造と等価な物理的特徴および化学的特徴を持つ構造を含む」とは、抗体結合に関して2つの構造の物理化学的特性が同等であるため、抗体が一方の構造に特異的に結合すれば、両方の構造に結合することをいう。いくつかの実施形態では、抗体およびポリペプチドは、ポリペプチドのN末端にアミノ酸配列、N’−Trp−Pro−Ile−C’を含むポリペプチドに結合する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびポリペプチドは、癌細胞の細胞表面に発現するエピトープへの結合において抗体5F1、138−10または51−41と競合する。いくつかの実施形態では、本発明の抗体またはポリペプチドは、抗体5F1、138−10および51−41のうち少なくとも1つが結合するCD43またはCEAのエピトープに結合する。
【0074】
競合アッセイを用いて、同一または立体的にオーバーラップするエピトープを認識することで2つの抗体が同じエピトープに結合するかどうか、あるいは、ある抗体が別の抗体の抗原への結合を競合的に阻害するかどうかを判定することができる。こうしたアッセイは、当該技術分野において公知であり、実施例に詳細に記載してある。一般には、抗原または抗原を発現している細胞をマルチウェルプレートに固定化し、非標識の抗体が標識抗体の結合を遮断する能力を測定する。そうした競合アッセイの一般的な標識は、放射性標識または酵素標識である。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体5F1または5F1に由来する抗体である。5F1の重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれ配列番号1および配列番号2に記載してある。本発明は、抗体5F1のフラグメントもしくは領域を含む抗体またはポリペプチドを提供する。一実施形態では、フラグメントは、抗体5F1の軽鎖である。別の実施形態では、フラグメントは、抗体5F1の重鎖である。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体5F1の軽鎖および/または重鎖由来の1つまたは複数の可変領域を含む。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体5F1の軽鎖および/または重鎖由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7に示す重鎖可変領域および配列番号8に示す軽鎖可変領域を含むh5F1などの5F1のヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体5F1に由来する1つまたは複数のCDRは、5F1の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つのCDRと、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%が同一である。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体138−10または138−10に由来する抗体である。138−10の重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれ配列番号3および配列番号4に記載してある。本発明は、抗体138−10のフラグメントもしくは領域を含む抗体またはポリペプチドを提供する。一実施形態では、フラグメントは、抗体138−10の軽鎖である。別の実施形態では、フラグメントは、抗体138−10の重鎖である。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体138−10の軽鎖および/または重鎖由来の1つまたは複数の可変領域を含む。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体138−10の軽鎖および/または重鎖由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、138−10のヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体138−10に由来する1つまたは複数のCDRは、138−10の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つのCDRと、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%が同質である。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体51−41または51−41に由来する抗体である。51−41の重鎖可変配列および軽鎖可変配列をそれぞれ配列番号5および配列番号6に記載してある。本発明は、抗体51−41のフラグメントもしくは領域を含む抗体またはポリペプチドを提供する。一実施形態では、フラグメントは、抗体51−41の軽鎖である。別の実施形態では、フラグメントは、抗体51−41の重鎖である。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体51−41の軽鎖および/または重鎖由来の1つまたは複数の可変領域を含む。なお別の実施形態では、フラグメントは、抗体51−41の軽鎖および/または重鎖由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、51−41のヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体51−41に由来する1つまたは複数のCDRは、51−41の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つのCDRと、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%が同一である。
【0078】
いくつかの実施形態では、CDRは、KabatのCDRである。他の実施形態では、CDRは、ChothiaのCDRである。他の実施形態では、CDRは、KabatおよびChothiaのCDRの組み合わせ(「混合型(combined)CDR」または「拡張型(extended)CDR」ともいう)である。換言すれば、複数のCDRを含む任意の実施形態では、CDRは、Kabat、Chothiaおよび/または混合型のいずれであっても構わない。
【0079】
抗体および抗体に由来するポリペプチドを製造する方法については、当該技術分野において公知であり、本明細書に開示してある。確立した方法を用いて本発明のモノクローナル抗体を調製することができる。たとえば、Kohler and Milstein(1975),Nature,256:495に記載されているようなハイブリドーマ技法を用いてモノクローナル抗体を調製してもよい。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主生物を免疫剤(たとえば、CD43またはCEAを発現している癌細胞、本明細書に記載の抗体を用いて精製できるCD43またはCEA(癌細胞に発現する細胞外ドメインおよびそのフラグメントを含む)またはポリペプチドのN末端にアミノ酸配列N’−Trp−Pro−IIe−C’を含むポリペプチド)で免疫して、免疫剤に特異的に結合する抗体を作製する、あるいは作製する能力のあるリンパ球を誘導するのが一般的である。あるいは、リンパ球をインビトロで感作してもよい。次いで、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を用いてリンパ球を不死化細胞株と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−1031)。不死化細胞株は、ほとんどの場合、形質転換された哺乳動物細胞、具体的には齧歯動物、ウサギ、ウシおよびヒト由来の骨髄腫細胞である。普通は、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株を用いる。好ましくは、融合していない不死化細胞の成長または生存を阻害する1種または複数種の物質を含む好適な培地で、ハイブリドーマ細胞を培養してもよい。たとえば、親細胞にヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT:hypoxanthine guanine phosphoribosyl transferase)酵素が欠損している場合、ハイブリドーマの培地は、HGPRT欠損細胞の成長を防ぐ物質ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含むのが一般的である(「HAT培地」)。
【0080】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による高レベルで安定な抗体の発現を支持するもので、かつ、HAT培地などの培地に感受性である。一層好ましい不死化細胞株は、たとえば、Salk Institute Cell Distribution Center,サンディエゴ,カリフォルニア州およびアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection),マナッサス,ヴァージニア州から入手可能なマウスの骨髄腫株である。ヒトモノクローナル抗体の作製に関しては、ヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株についても記載されている(Kozbor,J.Immunol.(1984),133:3001;Brodeurら、,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)。
【0081】
その後、ハイブリドーマ細胞を培養する培地について、モノクローナル抗体の有無をアッセイすればよい。抗体に対して、非造血系癌または腫瘍細胞に発現するCD−43またはCEAのエピトープには特異的に結合するが、CD43を発現する白血球、Jurkat細胞および/またはCD43を発現する造血系由来の他の細胞には特異的に結合しないかどうかをスクリーニングすることができる。エピトープを含む癌細胞または細胞外ドメイン(そのフラグメントを含む)を用いてスクリーニングを行っても構わない。たとえば、実施例10に記載のCOLO205細胞に発現するCEA−N−A2を用いてスクリーニングを行ってもよい。
【0082】
Jurkat細胞株は、リンパ芽球様の白血病細胞であり、Schneiderらにより14歳の少年の末梢血から樹立された。Schneiderら、,Int.J.Cancer 19:621−626,1977を参照されたい。様々なJurkat細胞株が、たとえば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(たとえば、ATCC TIB−152、ATCC TIB−153、ATCC CRL−2678)から市販されている。
【0083】
好ましくは、ハイブリドーマ細胞が産生するモノクローナル抗体の結合特異性を免疫沈降またはラジオイムノアッセイ(RIA:radioimmunoassay)もしくは酵素免疫測定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイで判定する。そうした技法およびアッセイは、当該技術分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性については、たとえば、Munson and Pollard(1980),Anal.Biochem.,107:220のスキャッチャード(Scatchard)解析により判定することができる。
【0084】
同定した抗体における細胞死(たとえば、アポトーシス)を誘導する能力および/または細胞の成長または増殖を阻害する能力について、当該技術分野において公知の方法および本明細書に記載の方法を用いてさらに検査してもよい。
【0085】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、希釈を少なくした手順でサブクローニングし、標準的な方法(Goding、上掲)で成長させてもよい。そのための好適な培地として、たとえば、ダルベッコ変法イーグル培地またはRPMI−1640培地がある。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、哺乳動物の腹水のようにインビボで成長させてもよい。
【0086】
ハイブリドーマ細胞を培養してモノクローナル抗体を作製できれば、ハイブリドーマ細胞が分泌する抗体をさらに単離または精製することができる。たとえば、プロテインAセファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなど、従来の免疫グロブリン精製手順で培地または腹水から抗体を単離または精製しても構わない。
【0087】
本発明の抗体を、参照によって本明細書に援用する米国特許第4,816,567号および同第6,331,415号に記載されているような組換えDNA法で作製してもよい。たとえば、本発明のモノクローナル抗体をコードしているDNAを、従来の手順(たとえば、マウスの抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブなど)を用いて容易に単離して配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そうしたDNAの好ましい供給源になる。DNAを単離したら、発現ベクターに組み込み、次いでそのベクターを、本来ならば免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルのCOS細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得ることができる。さらに、たとえば、マウスの相同配列をヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列に置換して(米国特許第4,816,567号)、あるいは、非免疫グロブリンのポリペプチドのコード配列の全部または一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合的に連結してDNAを修飾してもよい。本発明の抗体の定常ドメイン、あるいは、本発明の抗体における1つの抗原結合部位の可変ドメインを、そうした非免疫グロブリンのポリペプチドと置換してキメラ二価抗体を作製してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体を2種の発現ベクターから発現させる。第1の発現ベクターは、抗体の重鎖の可変領域をコードしている第1の部分および抗体の重鎖の定常領域をコードしている第2の部分を含む抗体(たとえば、ヒト化抗体)の重鎖をコードしている。いくつかの実施形態では、第1の部分は、配列番号7に示すアミノ酸配列を持つ可変領域をコードしている。第2の発現ベクターは、抗体の軽鎖の可変領域をコードしている第1の部分および抗体の軽鎖の定常領域をコードしている第2の部分を含む抗体の軽鎖をコードしている。いくつかの実施形態では、第1の部分は、配列番号8に示すアミノ酸配列を持つ可変領域をコードしている。
【0089】
あるいは、本発明の抗体(たとえば、ヒト化抗体)を単一の発現ベクターから発現させる。単一の発現ベクターは、本発明の抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードしている。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、配列番号7に示すアミノ酸配列を持つ重鎖の可変領域および配列番号8に示すアミノ酸配列を持つ軽鎖の可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を含む。
【0090】
通常、発現ベクターは、宿主細胞と適合性のある種に由来する転写調節配列および翻訳調節配列を含む。さらに、ベクターは通常、形質転換細胞における表現型による選抜を可能にする特定の遺伝子(単数または複数)も保有する。
【0091】
真核細胞の様々な組換え宿主ベクター発現系が知られており、それを本発明に用いてもよい。たとえば、真核微生物では、Saccharomyces cerevisiae、すなわち一般のパン酵母が最も多く用いられるが、Pichia pastorisなど他にも多くの菌株を用いることができる。ATCCから入手可能なSp2/0またはチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)など、多細胞生物に由来する細胞株を宿主として用いてもよい。真核細胞の形質転換に好適な典型的なベクタープラスミドには、たとえば、pSV2neoおよびpSV2gpt(ATCC)、pSVLおよびpSVK3(ファルマシア(Pharmacia))ならびにpBPV−1/pML2d(インターナショナルバイオテクノロジーインク(International Biotechnology,Inc.))がある。
【0092】
本発明に有用な真核宿主細胞は、好ましくは、ハイブリドーマ細胞、骨髄腫細胞、形質細胞腫細胞またはリンパ腫細胞である。しかしながら、哺乳動物の宿主細胞が、タンパク質の発現のための転写および翻訳DNA配列を認識し、リーダー配列を切断してタンパク質を分泌させてリーダーペプチドを処理し、たとえば、グリコシル化のようなタンパク質の翻訳後修飾を行える場合、他の真核宿主細胞を好適に用いることができる。
【0093】
したがって、本発明は、本明細書に開示するDNAコンストラクトを含む組換え発現ベクターで形質転換されていて、かつ、本発明の抗体またはポリペプチドを発現することができる真核宿主細胞を提供する。故に、いくつかの実施形態では、本発明の形質転換宿主細胞は、本明細書に記載の軽鎖DNA配列および重鎖DNA配列と、抗体またはポリペプチドの発現を誘導する軽鎖および重鎖をコードしているDNA配列に基づいて配置している転写調節配列および翻訳調節配列とを含む少なくとも1つのDNAコンストラクトを含む。
【0094】
本発明に用いる宿主細胞については、当該技術分野において周知の標準的なトランスフェクション手順により種々のやり方で形質転換することができる。用いることができる標準的なトランスフェクション手順には、エレクトロポレーション法、プロトプラスト融合法およびリン酸カルシウム沈殿法がある。こうした技法は概ね、F.Toneguzzoら、(1986),Mol.Cell Biol,6:703−706;G.Chuら、,Nucleic Acid Res.(1987),15:1311−1325;D.Riceら、,Proc.Natl.Acad.Sci USA(1979),79:7862−7865;and V.Oiら、,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1983),80:825−829に記載されている。
【0095】
発現ベクターが2種類の場合、2種の発現ベクターを宿主細胞に1つ1つ別々に導入してもよいし、一緒に導入してもよい(同時導入または同時トランスフェクト)。
【0096】
また、本発明は、抗体またはポリペプチドの作製方法であって、抗体またはポリペプチドをコードしている発現ベクター(単数または複数)を含む宿主細胞を培養することと、当業者に周知のやり方で培養から抗体またはポリペプチドを回収することとを含む、方法も提供する。
【0097】
また、所望の抗体をトランスジェニックアニマルで作製することもできる。適切な発現ベクターを卵に微量注入することと、その卵を偽妊娠の雌に移植することと、所望の抗体を発現する子孫を選択することとを含む標準的な方法により、好適なトランスジェニックアニマルを得ることができる。
【0098】
また、本発明は、癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープを特異的に認識するキメラ抗体を提供する。たとえば、キメラ抗体の可変領域と定常領域は、別の種に由来する。いくつかの実施形態では、重鎖と軽鎖の可変領域は、ともに本明細書に記載のマウスの抗体に由来する。いくつかの実施形態では、可変領域は、配列番号1および配列番号2に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、可変領域は、配列番号3および配列番号4に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、可変領域は、配列番号5および配列番号6に示すアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖と軽鎖の定常領域は、ともにヒト抗体である。
【0099】
本発明のキメラ抗体については、当該技術分野で確立された技法によって調製することができる。たとえば、参照によって各々を本明細書に援用する米国特許第6,808,901号、米国特許第6,652,852号、米国特許第6,329,508号、米国特許第6,120,767号および米国特許第5,677,427号を参照されたい。一般に、抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードしているcDNAを得て、cDNAを発現ベクターに挿入して、真核宿主細胞に導入すると、本発明のキメラ抗体が発現することで、キメラ抗体を調製することができる。好ましくは、発現ベクターには、任意の可変重鎖または軽鎖配列を発現ベクターに挿入しやすいように機能的に完全な定常重鎖または軽鎖配列がある。
【0100】
本発明は、非造血系癌細胞に発現するCD43およびCEAのエピトープを特異的に認識するヒト化抗体を提供する。ヒト化抗体は、CDRの残基を、所望の特異性、親和性および能力を持つマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種のCDRの残基で置換したヒト抗体が一般的である。場合によっては、ヒト抗体のFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基で置換することもある。
【0101】
モノクローナル抗体をヒト化するには、一般に4つのステップがある。それは:(1)出発抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび予想されるアミノ酸配列を決定するステップ、(2)ヒト化抗体を設計するステップ、すなわち、ヒト化プロセスにおいて用いる抗体フレームワーク領域を決定するステップ、(3)実際のヒト化の方法/技法のステップおよび(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。たとえば、米国特許第4,816,567号;同第5,807,715号;同第5,866,692号;同第6,331,415号;同第5,530,101号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第5,585,089号;同第6,180,370号;および同第6,548,640号を参照されたい。たとえば、抗体を臨床試験およびヒトの処置に用いる場合、定常領域を操作してヒト定常領域との類似性を高め、免疫反応を抑えることができる。たとえば、米国特許第5,997,867号および同第5,866,692号を参照されたい。
【0102】
抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持したまま抗体をヒト化することが重要である。それには、三次元モデルの親配列およびヒト化配列を用いて親配列および種々の概念的ヒト化産物を解析するプロセスでヒト化抗体を調製すればよい。三次元の免疫グロブリンモデルは一般に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択した候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を図解表示するコンピュータプログラムを入手することができる。こうした表示を検討すれば、候補免疫グロブリン配列の機能に対して推定される残基の役割の解析、すなわち、抗原に対する候補免疫グロブリンの結合能力に影響を与える残基の解析を行うことができる。こうして、コンセンサス配列および移入配列からFR残基を選択し組み合わせて、標的抗原(単数または複数)に対する親和性の増強など、抗体の所望の特徴を得る。一般に、CDR残基は、抗原結合に直接関与し、最も大きな影響を与える。ヒト化抗体は、抗体の1つまたは複数の特徴を改良するためヒンジ領域が改変されていてもよい。
【0103】
別の方法として、抗体をスクリーニングしファージディスプレイ法による組換えで製造する。たとえば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号および同第6,265,150号;およびWinterら、,Annu.Rev.Immunol 12:433−455(1994)を参照されたい。あるいは、ファージディスプレイ法(McCaffertyら、,Nature 348:552−553(1990))を用いて非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメインの遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体フラグメントをインビトロで作製してもよい。この手法によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、M13またはfdなど糸状のバクテリオファージのメジャーあるいはマイナーコートタンパク質の遺伝子にインフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面に機能的な抗体フラグメントとして提示させる。糸状の粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAのコピーを含んでいるため、抗体の機能的特性に基づき選択を行えば、その特性を示す遺伝子をコードしている抗体を選択することにもなる。したがって、このファージは、ある程度B細胞の特性と類似している。ファージディスプレイについては、種々のフォーマットで行うことができる。概説には、たとえば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3,564−571(1993)を参照されたい。ファージディスプレイでは、V−遺伝子セグメントの複数の供給源を用いることができる。Clackson et al, Nature 352:624−628 (1991)は、多様な抗オキサゾロン抗体を、感作したマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模でランダムなコンビナトリアルライブラリーから単離した。感作されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを作成することができ、 Markら、,J.Mol.Biol.222:581−597(1991),or Griffithら、,EMBOJ.12:725−734(1993)が記載した技法に本質的に従って多様な抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を単離してもよい。自然な免疫反応では、抗体遺伝子は高い頻度で突然変異を積み重ねる(体細胞突然変異)。変異(change)がある程度導入されると、親和性が高まり、高親和性の表面免疫グロブリンを提示しているB細胞は優先的に複製され、その後の抗原チャレンジの過程で分化される。この自然なプロセスを、「鎖シャフリング」と呼ばれる手法を用いて模倣することができる。Marks,ら、Bio/Technol.10:779−783(1992))を参照されたい。この方法では、重鎖V領域遺伝子および軽鎖V領域遺伝子を、非免疫ドナーから得られるVドメイン遺伝子の自然に発生する変異体のレパートリー(レパートリー)と順次置換することで、ファージディスプレイで得られる「一次」ヒト抗体の親和性を改善することができる。この手法であれば、親和性がpM〜nMの範囲にある抗体および抗体フラグメントの作製が可能である。非常に大きなファージ抗体レパートリー(「マザーオブオールライブラリー(mother−of−all libraries)」とも呼ばれる)を作製する戦略については、Waterhouse et al,Nucl.Acids Res.21:2265−2266 (1993)に記載されている。また、遺伝子シャフリングを用いて齧歯動物抗体からヒト抗体を得てもよく、この場合、ヒト抗体は、最初の齧歯動物抗体と同等の親和性と特性を持つ。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法では、ファージディスプレイ手法で得られる齧歯動物抗体の重鎖Vドメイン遺伝子または軽鎖Vドメイン遺伝子をヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置換し、齧歯動物−ヒトキメラを作製する。抗原を選択することが、機能的な抗原結合部位を回復できるヒト可変領域の単離につながる。すなわち、エピトープがパートナーの選択を支配する(インプリントする)。このプロセスを繰り返して残りの齧歯動物Vドメインを置換すれば、ヒト抗体が得られる(国際公開第93/06213号,published April 1,1993を参照)。CDRグラフティングによる従来の齧歯動物抗体のヒト化と異なり、この手法では、齧歯動物由来のフレームワーク残基またはCDR残基のない完全なヒト抗体が得られる。上記の考察はヒト化抗体に関するが、考察対象の一般的な原理は、たとえば、イヌ、ネコ、霊長類、ウマおよびウシ用に抗体をカスタマイズする際に適用できることは明らかである。
【0104】
ある実施形態では、抗体は、完全ヒト抗体である。抗原に特異的に結合する非ヒト抗体を用いて、その抗原に結合する完全ヒト抗体を作製することができる。たとえば、当業者は、非ヒト抗体の重鎖を様々なヒト軽鎖を発現する発現ライブラリーと共発現させる鎖スワッピング手法を用いてもよい。次いで、得られたハイブリッド抗体(1つのヒト軽鎖と1つの非ヒト重鎖を含む)については、抗原結合をスクリーニングする。その後、抗原結合に関与する軽鎖をヒト抗体の重鎖ライブラリーと共発現させる。得られたヒト抗体を対象に、抗原結合について、もう一度スクリーニングを行う。このような技法については、米国特許第5,565,332号により詳細に記載されている。さらに、抗原を用いてヒト免疫グロブリン遺伝子を導入したトラスジェニック動物に接種してもよい。たとえば、米国特許第5,661,016号を参照されたい。
【0105】
抗体は、少なくとも2種類の抗原に対して結合特異性を持つモノクローナル抗体の二重特異性抗体でもよく、本明細書に開示する抗体を用いて調製することができる。二重特異性抗体を製造する方法は、当該技術分野において公知である(たとえば、Suresh et al,1986,Methods in Enzymology 121:210を参照)。従来の組換え型二重特異性抗体の作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現をベースとし、その2つの重鎖は異なる特異性を持っていた(Millstein and Cuello,1983,Nature 305,537−539)。
【0106】
二重特異性抗体の製造の一アプローチによれば、所望の結合特異性を持つ抗体可変ドメイン(抗体抗原結合部位)を免疫グロブリンの定常ドメイン配列と融合する。この融合は、好ましくはヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域のうち少なくとも一部を含む免疫グロブリンの重鎖定常ドメインとの融合である。この定常ドメインは、各融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖との結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を含むことが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、異なる発現ベクターに挿入し、好適な宿主生物に共導入する。こうして別々のベクターに共導入すれば、この構築に用いる3つのポリペプチド鎖の比率が異なるとき収量が最適になる場合、実施形態における3つのポリペプチドフラグメントの相互の割合を調節する際の柔軟性が高まる。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖が同じ割合で発現した方が高い収量になる場合、またはその割合に特に重要性がない場合、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入してもよい。
【0107】
一アプローチでは、二重特異性抗体は、一方の腕に第1の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖があり、他方の腕にハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を与える)がある。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖を持つこうした非対称構造により、不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから所望の二重特異性化合物を分離しやくなる。このアプローチは、国際公開第94/04690号,published March 3,1994に記載されている。
【0108】
共有結合で結合した2つの抗体を含むヘテロコンジュゲート抗体も、本発明の範囲内である。そうした抗体は、免疫系細胞を不要な細胞に向かわせるのに使用される(米国特許第4,676,980号)ほか、HTV感染の処置(国際公開第91/00360号および国際公開第92/200373号;および欧州特許第03089号)にも使用されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を用いて製造することができる。好適な架橋剤および技法については、当該技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0109】
単鎖Fvフラグメントも、Iliades et al,1997,FEBS Letters,409:437−441に記載されているように作製することができる。種々のリンカーを用いたこうした単鎖フラグメントの結合については、Korttら、,1997,Protein Engineering,10:423−433に記載されている。抗体の組換え作製および操作の様々な技法は、当該技術分野において周知である。
【0110】
本発明は、上記のモノクローナル抗体ばかりでなく、抗体の活性結合領域を含むその任意のフラグメント(Fab、F(ab’)2、scFv、Fvフラグメントおよび同種のものなど)を包含するものである。そうしたフラグメントを、当該技術分野において確立された技法を用いて本明細書に記載のモノクローナル抗体から作製することができる(Rousseauxら、(1986),in Methods Enzymol,121:663−69 Academic Press)。
【0111】
抗体フラグメントを調製する方法は、当該技術分野において周知である。たとえば、ペプシンで抗体を酵素的に切断しF(ab’)2と呼ばれる100Kdのフラグメントを得ることで抗体フラグメントを作製することができる。このフラグメントを、チオール還元剤および任意にジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の保護基を用いてさらに切断して、50Kdの一価Fab’フラグメントを作製してもよい。あるいは、パパインを用いて酵素的に切断して、2つの一価Fabフラグメントおよび1つのFcフラグメントを直接作製しても構わない。こうした方法は、たとえば、米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号およびそこに含まれる参考文献に記載されており、特許については、参照によって本明細書に援用する。さらに、Nisonoffら、(1960),Arch Biochem.Biophys.89:230;Porter(1959),Biochem.J.73:119,Edelmanら、,in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL.1,page 422(Academic Press 1967)を参照されたい。
【0112】
あるいは、抗体のFabをコードしているDNAを原核生物の発現ベクターまたは真核生物の発現ベクターに挿入し、そのベクターを、Fabを発現する原核生物または真核生物に導入してFabを作製することができる。
【0113】
本発明は、特性に大きな影響を与えない機能的に等価な抗体ならびに活性および/または親和性に強弱がある変異体など、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドの修飾体を包含する。たとえば、抗体5F1またはヒト化抗体のアミノ酸配列を変異させて、癌細胞に発現するCD43またはCEAに対して所望の結合親和性を持つ抗体を得てもよい。ポリペプチドの修飾は、当該技術分野において日常的に行われており、本明細書に詳細に記載する必要はない。修飾ポリペプチドの例として、アミノ酸残基の保存的置換を持つポリペプチド、機能活性に著しい有害な変化を与えないアミノ酸の1つまたは複数の欠失あるいは付加を含むポリペプチド、または化学的アナログを使用したポリペプチドが挙げられる。
【0114】
アミノ酸配列の挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまで幅があるアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合だけでなく、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入がある。末端挿入の例として、N末端にメチオニル残基を持つ抗体あるいはエピトープタグとの融合抗体がある。抗体分子のこれ以外の挿入変異体には、抗体の血清半減期を延長させる酵素またはポリペプチドと、抗体のN末端またはC末端との融合がある。
【0115】
置換変異体は、抗体分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、代わりに別の残基が挿入されている。置換による突然変異誘発で大きな関心を集めている部位として、超可変領域があるが、FRの変更も考えられる。保存的置換を次の表に「保存的置換」の項目で示す。こうした置換により生物活性に変化が生じた場合、次の表に「例示的置換」として示してある、あるいは、アミノ酸クラスを参照して下記に詳述するように、より実質的な変化を導入して、その産物をスクリーニングしてもよい。
【0116】
【化1】
抗体の生物学的特性の実質的な修飾を達成するには、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、たとえば、シートまたはらせん構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性または(c)側鎖の大きさの維持に対する作用が大きく異なる置換を選択する必要がある。以下に天然の残基を、共通の側鎖特性に基づき群に分けてある:
(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)非荷電極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性(負に荷電):Asp、Glu;
(4)塩基性(正に荷電):Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0117】
非保存的置換に関しては、こうしたクラスのうちのあるクラスのメンバーを別のクラスと置換することで作製する。
【0118】
抗体の適切な立体構造の維持に関与していない任意のシステイン残基については、一般的にはセリンで置換して、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を阻害することもできる。反対に、特に抗体が、Fvフラグメントなどの抗体フラグメントである場合、システイン結合(単数または複数)を抗体に付加して、安定性を高めることもできる。
【0119】
アミノ酸修飾は、1個または複数個のアミノ酸の変換または修飾から可変領域などの領域の完全な再設計まで多岐にわたる場合がある。可変領域を変換すれば、結合親和性および/または特異性が変化することがある。いくつかの実施形態では、CDRドメイン内に1〜5個以下の保存的アミノ酸置換を作製する。他の実施形態では、CDRドメイン内に1〜3個以下の保存的アミノ酸置換を作製する。なお他の実施形態では、CDRドメインは、CDRH3および/またはCDR L3である。
【0120】
また、修飾体は、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチドならびに、たとえば、様々な糖によるグリコシル化、アセチル化およびリン酸化など他の翻訳後修飾を受けたポリペプチドも含む。抗体は、定常領域の保存位置でグリコシル化する(Jefferis and Lund,1997,Chem.Immunol.65:111−128;Wright and Morrison,1997,TibTECH 15:26−32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boydら、,1996,Mol.Immunol.32:1311−1318;Wittwe and Howard,1990,Biochem.29:4175−4180)および立体構造に影響する可能性がある糖タンパク質の部分と糖タンパク質の提示された三次元表面との間の分子内相互作用(Hefferis and Lund,supra;Wyss and Wagner,1996,Current Opin.Biotech.7:409−416)に影響を与える。また、オリゴ糖は、特異的認識構造に基づき一定の糖タンパク質をある種の分子に向かわせる役割を果たす場合がある。さらに、抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に作用することも報告されている。特に、テトラサイクリンによる調節でβ(1,4)−N−アセチルグルコサミン転移酵素III(GnTIII)(バイセクティングGlcNAcの形成を触媒する糖転移酵素)を発現させたCHO細胞では、ADCC活性の増強が報告された(Umanaら、,1999,Mature Biotech.17:176−180)。
【0121】
抗体のグリコシル化は一般に、N結合型またはO結合型のどちらかである。N結合型とは、アスパラギン残基側鎖への炭水化物部分の結合をいう。トリペプチド配列のアスパラギン−X−セリン、アスパラギン−X−トレオニンおよびアスパラギン−X−システイン(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこうしたトリペプチド配列のいずれかが存在すれば、有望なグリコシル化部位になる。O結合型グリコシル化とは、糖であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合をいうが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンを用いてもよい。
【0122】
抗体へのグリコシル化部位の付加を達成するには、アミノ酸配列が上記のトリペプチド配列の1つまたは複数を含むようにアミノ酸配列を変化させると都合がよい(N結合型グリコシル化部位の場合)。この変更を、元の抗体の配列にセリン残基またはトレオニン残基の1つまたは複数を付加することで、あるいは、セリン残基またはトレオニン残基の1つまたは複数で置換することで行うこともできる(O結合型グリコシル化部位の場合)。
【0123】
さらに、根底にあるヌクレオチド配列を変化させずに抗体のグリコシル化パターンを変化させることもできる。グリコシル化の大部分は、抗体の発現に用いる宿主細胞によって決まる。たとえば、有望な治療剤としての抗体などの組換え糖タンパク質の発現に用いる細胞型が天然細胞であることは稀であるため、抗体のグリコシル化パターンの変形を想定することができる(たとえば、Hseら、,1997,J.Biol.Chem.272:9062−9070を参照)。
【0124】
抗体の組換え作製の過程で、宿主細胞の選択の他にグリコシル化に影響する要因として、成長モード、培地組成、培養密度、酸素反応、pH、精製スキームおよび同種のものなどがある。個々の宿主生物で得られるグリコシル化パターンを変えるため、オリゴ糖生成に関与する一定の酵素の導入または過剰発現など、様々な方法が提案されている(米国特許第5,047,335号;同第5,510,261号および第5,278,299号)。グリコシル化またはある種のグリコシル化については、たとえば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、N−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を用いて糖タンパク質を酵素的に除去することができる。さらに、組換え宿主細胞を遺伝子改変して、ある種の多糖類の処理を不完全なものにすることもできる。これらおよび類似の技法は、当該技術分野において周知である。
【0125】
他の修飾方法には、以下に限定されるものではないが、酵素的手段、酸化置換およびキレート化など当該技術分野において公知のカップリング技法の使用がある。たとえば、修飾を利用してイムノアッセイ用標識を結合してもよい。修飾ポリペプチドについては、当該技術分野において確立された手順を用いて製造して、当該技術分野において公知の標準アッセイによりスクリーニングすることができ、その一部を下記および実施例に記載してある。
【0126】
本発明の抗体またはポリペプチドを治療薬および標識などの薬品とコンジュゲート(たとえば、結合)してもよい。治療薬の例として、放射性部分、細胞毒または化学療法分子が挙げられる。
【0127】
本発明の抗体(またはポリペプチド)は、蛍光分子、放射性分子、酵素または当該技術分野において公知の他の任意の標識などの標識に結合してもよい。本明細書で使用する場合、「標識」という語は、検出できる任意の分子をいう。ある実施形態では、放射能標識アミノ酸を組み込むことで抗体を標識することができる。ある実施形態では、印を付けたアビジン(たとえば、光学的方法または比色法で検出可能な蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)で検出できるビオチン部分を抗体に結合してもよい。ある実施形態では、標識を別の試薬に組み込むか結合させて、試薬を目的の抗体に結合させても構わない。たとえば、標識を抗体に組み込むか結合させて、その抗体を目的の抗体を特異的に結合させることができる。ある実施形態では、標識またはマーカーは、治療的に作用してもよい。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法は、当該技術分野において公知であり、それを用いても構わない。標識のある種の一般的なクラスとして、酵素標識、蛍光標識、化学発光標識および放射性標識が挙げられる。ポリペプチドの標識の例として、放射性同位元素またはラジオヌクレオイド(たとえば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(たとえば、フルオレセインイソトシアナート(FITC:fluorescein isothocyanate)、ローダミン、ランタニド蛍光体、フィコエリトリン(PE:phycoerythrin))、酵素標識(たとえば、西洋わさびペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース酸化酵素、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒロゲナーゼ、リンゴ酸デヒロゲナーゼ、ペニシリナーゼ、ルシフェラーゼ)、化学発光、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(たとえば、ロイシン ジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)があるが、これに限定されるものではない。ある実施形態では、標識を様々な長さのスペーサーアームで結合して立体障害の起こる可能性を低下させる。
【0128】
また、本発明は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドおよび薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む医薬組成物も提供する。薬学的に許容される賦形剤は、当該技術分野において公知であり、薬理学的に有効な物質を投与しやすくする、どちらかといえば不活性な物質である。たとえば、賦形剤は、形状またはコンシステンシーを与えてもよいし、希釈薬として働いてもよい。好適な賦形剤には、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、重量オスモル濃度を変化させる塩、被包剤、緩衝剤および皮膚浸透促進剤があるが、これに限定されるものではない。非経口的および経口的薬物送達用の賦形剤および製剤については、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)に記載されている。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明は、薬剤としての使用および/または薬剤製造のための使用に関わりなく、本明細書に記載の方法のいずれかに用いる(本明細書に記載の)組成物を提供する。
【0130】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
また、本発明は、本明細書に記載のモノクローナル抗体およびポリペプチドのいずれかをコードしているヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、軽鎖可変領域配列および重鎖可変領域配列を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に記載の重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号2に記載の軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号2由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に記載の核酸配列および/または配列番号10に記載の核酸配列を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3に記載の重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号4に記載の軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号4由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号11に記載の核酸配列および/または配列番号12に記載の核酸配列を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号5に記載の重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号6に記載の軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号5由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号6由来の1つ、2つまたは3つのCDRを含む軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13に記載の核酸配列および/または配列番号14に記載の核酸配列を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7に記載の重鎖可変領域をコードしている核酸配列および/または配列番号8に記載の軽鎖可変領域をコードしている核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号15に記載の核酸配列および/または配列番号16に記載の核酸配列を含む。
【0135】
当業者であれば、遺伝コードの縮重が原因で、本明細書に記載するようなポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列が多く存在することが分かる。こうしたポリヌクレオチドの一部は、任意の天然の遺伝子のヌクレオチド配列との相同性が極めて低い。したがって、本発明は、コドン使用量の相違によって変化する各ポリヌクレオチドを明確に意図している。さらに、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子も本発明の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加および/または置換など、1つまたは複数の突然変異が原因で変化する内因性の遺伝子である。その結果生じるRNAおよびタンパク質は、異なる構造または機能を持つ場合もあるが、持っていなくてもよい。対立遺伝子は、標準技法(ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較など)を用いて同定することができる。
【0136】
本発明のポリヌクレオチドについては、化学合成、組換え方法またはPCRを用いて得ることができる。ポリヌクレオチドの化学的合成方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に詳細に記載する必要はない。当業者であれば、本明細書に記載の配列および市販のDNA合成機を用いて所望のDNA配列を製造することができる。
【0137】
組換え法を用いたポリヌクレオチドの作製の場合、本明細書で詳細に考察しているように、所望の配列を含むポリヌクレオチドを好適なベクターに挿入し、さらに、そのベクターを複製および増幅に好適な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入するのは、当該技術分野において公知の任意の手段で構わない。細胞に関しては、直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F−配合またはエレクトロポレーションにより外来性ポリヌクレオチドを導入して形質転換する。外来性ポリヌクレオチドを導入したら、組み込まれていないベクター(プラスミドなど)として細胞内で維持しても、宿主細胞ゲノムに組み込んでもよい。こうして増幅させたポリヌクレオチドを、当該技術分野においてよく知られている方法で宿主細胞から単離することができる。たとえば、Sambrookら、(1989)を参照されたい。
【0138】
あるいは、PCRを用いると、DNA配列の複製が可能になる。PCR技法は、当該技術分野において周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullisら、eds.,Birkauswer Press, Boston(1994)に記載されている。
【0139】
また、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド(抗体を含む)のいずれかをコードしている核酸配列も含むベクターを提供する(たとえば、クローニングベクター、発現ベクター)。好適なクローニングベクターに関しては、標準技法に従って構築してもよいし、当該技術分野において入手可能な多数のクローニングベクターから選択してもよい。選択するクローニングベクターは、使用しようとする宿主細胞によって異なってもよいが、有用なクローニングベクターは通常、自己複製能を持ち、特定の制限エンドヌクレアーゼに対して1つの標的があればよく、および/またはベクターを含むクローンの選択に使用できるマーカー用の遺伝子を運搬することができる。好適な例として、プラスミドおよび細菌ウイルス(たとえば、pUC18、pUC19、Bluescript(たとえば、pBS SK+))およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNAおよびシャトルベクター(pSA3およびpAT28など)が挙げられる。これらおよび他の多くのクローニングベクターは、バイオラッド(BioRad)、ストラテジーン(Strategene)およびインビトロジェンなどの商業ベンダーから入手できる。
【0140】
発現ベクター通常は、本発明によるポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチドコンストラクトである。発現ベクターは、宿主細胞でエピソームとして、あるいは染色体DNAの重要な部分として複製可能の場合がある。好適な発現ベクターには、プラスミド、ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスなど)、コスミドおよび国際公開第87/04462号に開示された発現ベクター(単数または複数)があるが、これに限定されるものではない。ベクター成分としては通常、シグナル配列;複製起点;1つまたは複数のマーカー遺伝子;好適な転写制御エレメント(プロモーター、エンハンサーおよびターミネーターなど)の1つまたは複数があるが、これに限定されるものではない。発現(すなわち、翻訳)では、ほとんどの場合、リボソーム結合部位、翻訳開始部位および終止コドンなど、1つまたは複数の翻訳制御エレメントも必要とされる。
【0141】
目的のポリヌクレオチドを含むベクターについては、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランまたは他の物質などを用いたトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(たとえば、ベクターがワクシニアウイルスなどの病原体の場合)のような多数の適切な手段のいずれかで宿主細胞に導入してもよい。多くの場合、宿主細胞の特色に応じて導入するベクターまたはポリヌクレオチドを選択することになる。
【0142】
また、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。目的の抗体、ポリペプチドまたはタンパク質をコードしている遺伝子を単離するには、異種DNAを過剰発現できる任意の宿主細胞を用いることができる。哺乳動物の宿主細胞の非限定的な例として、COS細胞、HeLa細胞およびCHO細胞があるが、これに限定されるものではない。さらに、国際公開第87/04462号を参照されたい。好適な非哺乳動物の宿主細胞には、原核生物(大腸菌または枯草菌など)および酵母(S.cerevisae、S.pombe;またはK.lactisなど)がある。
【0143】
診断用途
本発明は、エピトープの発現(正常なサンプルと比較した場合の発現の増加または減少、および/または通常はエピトープの発現が見られない組織(単数または複数)および/または細胞(単数または複数)で発現が認められるなどの異常な発現)に関連している疾患、障害または症候の検出、診断および監視を対象とした、本発明の抗体、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用方法を提供する。
【0144】
いくつかの実施形態では、この方法は、結腸直腸、膵臓癌、胃癌および肺癌などの癌の疑いがある被検体から得たサンプルにおけるエピトープの発現を検出することを含む。好ましくは、この検出方法は、サンプルと本発明の抗体、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとを接触させること、および結合レベルが対照サンプルまたは比較サンプルのレベルと異なるかどうかを判定することを含む。また、この方法は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドが患者の治療法として適切かどうかを判定するのにも有用である。
【0145】
本明細書で使用する場合、「サンプル」または「生物学的サンプル」という語は、生物全体またはその組織、細胞もしくは構成要素(たとえば、以下に限定されるものではないが、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、臍帯血、尿、膣液および精液などの体液)のサブセットをいう。「サンプル」または「生物学的サンプル」はさらに、生物全体またはその組織、細胞もしくは構成要素のサブセットから調製されるホモジネート、ライセートまたは抽出物、あるいは、以下に限定されるものではないが、たとえば、血漿、血清、髄液、リンパ液(lymph fluid)、皮膚管、気道、腸管および尿生殖器官の外部切片、涙液、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、臓器など、その画分または部分をいう。ほとんどの場合、サンプルを動物から採取しているが、「サンプル」または「生物学的サンプル」という語は、インビボで、すなわち、動物から取り出すことなく解析される細胞または組織もいう。一般に、「サンプル」または「生物学的サンプル」は、動物由来の細胞を含むが、さらに、癌関連ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのレベルの測定に用いることができる血液、唾液または尿の非細胞性の画分など、非細胞性の生物材料もいう。さらに、「サンプル」または「生物学的サンプル」は、タンパク質または核酸分子などの細胞成分を含み、かつ、生体を繁殖させる栄養ブロスまたはゲルなどの培地もいう。
【0146】
一実施形態では、細胞または細胞/組織ライセートを抗体と接触させ、抗体と細胞間の結合を判定する。同じ組織型の対照細胞と比較して被検細胞に結合活性が示された場合、被検細胞が癌性であることが示唆されることがある。いくつかの実施形態では、被検細胞は、ヒト組織由来である。
【0147】
特異的な抗体−抗原結合の検出には、当該技術分野において公知の様々な方法を用いることができる。本発明に従って行うことができる例示的なイムノアッセイとして、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA:fluorescence polarization immunoassay)、蛍光イムノアッセイ(FIA:fluorescence immunoassay)、エンザイムイムノアッセイ(EIA:enzyme immunoassay)、比濁阻害イムノアッセイ(NIA:nephelometric inhibition immunoassay)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。指標部分または標識基については、対象となる抗体に結合させればよいが、用いる方法の様々な使用の要件を満たすように選択する。使用要件は、アッセイ機器が利用できるかどうか、さらに機器に適合するイムノアッセイの手順により左右されることが多い。適切な標識として、放射性核種(たとえば、125I、131I、35S、3Hまたは32P)、酵素(たとえば、アルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼまたはβ−グラクトシダーゼ)、蛍光部分もしくはタンパク質(たとえば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、GFP(green fluorescent protein)またはBFP(bule fluorescent protein))または発光部分(たとえば、カンタムドットコーポレーション(Quantum Dot Corporation),パロアルト,カリフォルニア州が提供するQdot(商標)ナノ粒子)があるが、これに限定されるものではない。上記の様々なイムノアッセイを行う際に用いることができる一般的な技法は、当業者に公知である。
【0148】
診断のために、抗体を含むポリペプチドを、以下に限定されるものではないが、放射性同位元素、蛍光標識および当該技術分野において知られている種々の酵素−基質標識などの検出可能な部分で標識してもよい。標識を抗体にコンジュゲートする方法は、当該技術分野において公知である。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体を含むポリペプチドを標識しなくてもよく、その有無を、本発明の抗体に結合する標識抗体を用いて検出してもよい。
【0150】
本発明の抗体については、競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイおよび免疫沈降アッセイなど、任意の既知のアッセイ方法において用いることができる。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)を参照されたい。
【0151】
抗体およびポリペプチドを、インビボイメージングなどのインビボ診断アッセイに用いてもよい。通常、抗体またはポリペプチドを放射性核種(111In、99Tc、14C、131I、125Iまたは3Hなど)で標識して、免疫シンチオグラフィーを用いて目的の細胞または組織の位置を特定できるようにする。
【0152】
さらに、当該技術分野において周知の技法を用いて、病理研究用の染色試薬としてこの抗体を使用しても構わない。
【0153】
治療用途
本発明の抗体の非常に驚くべき特色は、非造血系癌の細胞死を効果的に誘導する作用に関する。したがって、本発明は、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、乳房癌、肝細胞癌および甲状腺癌などの癌を処置する際の、本発明の抗体およびポリペプチドの治療用途を提供する。癌細胞に発現するエピトープを本明細書に記載の抗体が認識するのであれば、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳房癌、脳腫瘍、悪性メラノーマ、腎細胞癌、膀胱癌、リンパ腫、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌、喉頭癌、テコーマトーシス、アンドロブラストーマ、子宮内膜肥厚、子宮内膜症、胚芽腫、線維肉腫、カポジ肉腫、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、神経線維腫、乏突起膠腫、髄芽腫、神経節芽細胞腫、神経膠腫、横紋筋肉腫、過誤芽腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、甲状腺肉腫およびウィルムス腫瘍など、任意の癌を処置することができる。この方法は、処置する個体において本明細書に記載の抗体またはポリペプチドと腫瘍または癌細胞との間の結合を検出するステップをさらに含んでも構わない。
【0154】
通常、抗体またはポリペプチドを含む組成物を、処置が必要な被検体に有効量で投与することで、癌細胞の成長を阻害し、および/または癌細胞の死を誘導する。好ましくは、この組成物を薬学的に許容されるキャリアとともに製剤化する。
【0155】
一実施形態では、組成物を、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射および筋肉内注射による投与および経口、粘膜、吸入、舌下などによる他の形の投与用に製剤化する。
【0156】
別の実施形態では、本発明は、検出可能な標識または治療薬もしくは細胞傷害性薬剤などの他の分子にコンジュゲートした本発明の抗体またはポリペプチドを含む組成物の投与を意図している。この薬品は、放射性同位元素、トキシン、トキソイド、炎症剤、酵素、アンチセンス分子、ペプチド、サイトカインまたは化学療法剤を含んでもよい。抗体をそうした分子とコンジュゲートする方法は通常、当業者に公知である。たとえば、国際公開第92/08495号;国際公開第91/14438号;国際公開第89/12624号;米国特許第5,314,995号;および欧州特許第396,387号を参照されたい。これらの開示については、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0157】
一実施形態では、この組成物は、細胞傷害性薬剤にコンジュゲートした抗体またはポリペプチドを含む。細胞傷害性薬剤は、細胞に有害な任意の薬品を含んでもよい。抗体またはフラグメントにコンジュゲートすることができる細胞傷害性薬剤の好ましいクラスとして、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにこれらのアナログまたはホモログが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0158】
処置に必要な投与量は、投与経路の選択、製剤の性質、被検体の疾病の性質、被検体の大きさ、体重、表面積、年齢および性別、投与する他の薬物および主治医の判断によって異なる。好適な投与量は、0.01〜1000.0mg/kgの範囲である。
【0159】
一般に、以下の用量のいずれかを用いることができる:少なくとも約50mg/kg体重;少なくとも約10mg/kg体重;少なくとも約3mg/kg体重;少なくとも約1mg/kg体重;少なくとも約750μg/kg体重;少なくとも約500μg/kg体重;少なくとも約250μg/kg体重;少なくとも約100μg/kg体重;少なくとも約50μg/kg体重;少なくとも約10μg/kg体重;少なくとも約1μg/kg体重またはそれ未満の用量を投与する。数日間以上にわたる反復投与の場合、症候に応じて、疾患症状の所望の抑制が認められるまで処置を持続する。例示的な投与レジメンは、抗体を約6mg/kgで週1回投与することを含む。ただし、開業医が達成したい薬物動態学的消失のパターンにより、他の投与レジメン(dosage regimen)が有用な場合もある。一般に、半減期などの経験的判断が投与量の決定に寄与する。こうした治療の進行については、従来の技法およびアッセイにより容易に監視できる。
【0160】
一部の被検体では、複数回の投与が必要とされる場合がある。投与頻度を決定してから、治療の過程で投与頻度を調整してもよい。たとえば、処置する癌のタイプおよびステージ、薬品を投与するのが予防目的か治療目的か、今までの治療、患者の病歴および薬品に対する反応ならびに主治医の裁量に基づき、投与頻度の決定または調整を行うことができる。一般に、臨床医は、所望の結果が得られる適切な投与量に達するまで治療用抗体(ヒト化5F1など)を投与する。場合によっては、抗体の持続放出性製剤が適切なこともある。持続的な放出を実現するための様々な製剤および装置については、当該技術分野において公知である。
【0161】
一実施形態では、抗体またはポリペプチドの投与量を、1回または複数回の投与(単数または複数)を行っている被検体ごとに経験に基づき決定しても構わない。抗体またはポリペプチドの投与量を段階的に増やして被検体に投与する。抗体またはポリペプチドの有効性を判定するには、CD43またはCEAなどの疾患症状のマーカーを監視すればよい。また、インビボでの有効性を、腫瘍量または腫瘍容積、疾患進行までの経過時間(TDP:time to disease progression)および/または奏効率(RR:response rate)の判定により判定することもできる。
【0162】
本発明の方法による抗体またはポリペプチドの投与は、たとえば、被投与者の生理的状態、投与が治療目的か予防目的か、さらに当業者の知る他の要因に応じて連続的でも、間歇的でも構わない。抗体またはポリペプチドの投与は、本質的に事前に選択した期間にわたり連続的であってもよいし、間隔をおいた一連の投与であってもよい。
【0163】
他の製剤は、以下に限定されるものではないが、リポソームのようなキャリアなど、当該技術分野において公知の好適な送達形態である。たとえば、Mahatoら、(1997)Pharm.Res.14:853−859を参照されたい。リポソーム調製物には、サイトフェクチン、多重膜ベシクルおよび単層リポソームがあるが、これに限定されるものではない。
【0164】
別の実施形態では、組成物は、1種または複数種の抗癌剤、本明細書に記載の1種または複数種の抗体、あるいは別の抗原に結合する抗体またはポリペプチドを含んでもよい。こうした組成物は、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種の抗体を含んでも構わない。抗体および他の抗癌剤に関しては、同じ製剤(たとえば、当該技術分野でよく呼ばれる混合物)中にあっても、別の製剤中にあってもよいが、同時または連続的に投与すれば、広範な個体群の処置に特に有用である。
【0165】
また、本発明の抗体またはポリペプチド(抗体5F1またはヒト化形態など)のいずれかをコードしているポリヌクレオチドを用いて、本発明の抗体またはポリペプチドのいずれかを送達し、所望の細胞に発現させることもできる。発現ベクターを用いて抗体またはポリペプチドの発現を誘導できることは明らかである。発現ベクターについては、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、髄腔内投与、脳室内投与、経口投与、経腸的投与、非経口的投与、鼻腔内投与、経皮的投与、舌下投与または吸入など、当該技術分野において公知の任意の手段で投与することができる。たとえば、発現ベクターの投与には、注射、経口投与、パーティクルガンまたはカテーテル投与および局所投与などの局所または全身投与がある。当業者であれば、インビボで外来性タンパク質の発現を得るための発現ベクターの投与に精通している。たとえば、米国特許第6,436,908号;同第6,413,942号;および同第6,376,471号を参照されたい。
【0166】
本発明の抗体またはポリペプチドのいずれかをコードしているポリヌクレオチドを含む治療用組成物の標的送達を用いることもできる。受容体を介したDNA送達の技法は、たとえば、Findeisら、,Trends Biotechnol.(1993)11:202;Chiouら、,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer (J.A.Wolff,ed.)(1994);Wuら、,J.Biol.Chem.(1988)263:621;Wuら、,J.Biol.Chem.(1994)269:542;Zenkeら、(1990),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:3655;Wuら、(1991),J.Biol.Chem.266:338に記載されている。局所投与の遺伝子治療プロトコルでは、DNA約100ng〜約200mgの範囲でポリヌクレオチドを含む治療用組成物を投与する。また、遺伝子治療プロトコルにおいては、DNAを約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μgおよび約20μg〜約100μgの濃度範囲で用いてもよい。
【0167】
遺伝子送達ビヒクルを用いて本発明の治療用ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを送達してもよい。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス由来でも、非ウイルス由来でも構わない(Jolly(1994),Cancer Gene Therapy 1:51;Kimura(1994),Human Gene Therapy 5:845;Connelly(1985),Human Gene Therapy 1:185;and Kaplitt(1994),Nature Genetics 6:148を全般的に参照)。そうしたコード配列の発現を、哺乳動物の内因性または異種プロモーターを用いて誘導してもよい。コード配列の発現は、構成的でも、あるいは、調節的でも構わない。
【0168】
所望のポリヌクレオチドを所望の細胞に送達し、発現させるウイルスベースのベクターは、当該技術分野において周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルとして、組換えレトロウイルス(たとえば、国際公開第90/07936号;国際公開第94/03622号;国際公開第93/25698号;国際公開第93/25234号;国際公開第93/11230号;国際公開第93/10218号;国際公開第91/02805号;米国特許第5,219,740号;同特許第4,777,127号;独国特許第2,200,651号;および欧州特許第0345242号を参照)、たとえば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532))などのアルファウイルスベースのベクター、およびアデノ随伴ウイルス(AAV:adeno−associated virus)ベクター(たとえば、国際公開第94/12649号、国際公開第93/03769号;国際公開第93/19191号;国際公開第94/28938号;国際公開第95/11984号および国際公開第95/00655号を参照)が挙げられるが、これに限定されるものではない。Curiel(1992),Hum.Gene Ther.3:147に記載されているような死滅アデノウイルスに結合したDNAの投与を用いてもよい。
【0169】
さらに、以下に限定されるものではないが、死滅アデノウイルスに単独で結合した、あるいは結合していないポリカチオン性凝縮DNA(たとえば、Curiel(1992),Hum.Gene Ther.3:147を参照);リガンド結合DNA(たとえば、Wu(1989),J.Biol.Chem.264:16985を参照);真核細胞の送達ビヒクル細胞(たとえば、米国特許第5,814,482号;国際公開第95/07994号;国際公開第96/17072号;国際公開第95/30763号;および国際公開第97/42338号を参照)および核電荷の中和または細胞膜との融合など、非ウイルス性の送達ビヒクルおよび方法を用いても構わない。
【0170】
さらに、裸のDNAを用いてもよい。例示的な裸のDNAの導入方法については、国際公開第90/11092号および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして働くリポソームについては、米国特許第5,422,120号;国際公開第95/13796号;国際公開第94/23697号;国際公開第91/14445号;および欧州特許第0524968号に記載されている。さらなるアプローチは、Philip(1994),Mol.Cell Biol.14:2411およびWoffendin(1994),Proc.Natl.Acad.Sci 91:1581に記載されている。
【0171】
本発明の抗体を含む組成物については、化学療法剤(5−FU、5−FU/MTX、5−FU/ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビンまたはウラシル/テガフールなど)、免疫アジュバント、成長阻害剤、細胞傷害性薬剤およびサイトカインなど1種または複数種の他の治療薬と連続的に、または、同時に投与してもよい。抗体および治療薬の量は、使用する薬物のタイプ、処置対象の病状ならびに投与スケジュールおよび投与経路によって異なるが、通常、各治療薬を個々に使用する場合よりも少量になる。
【0172】
本明細書に記載の抗体を含む組成物の投与後、当業者に周知の様々な方法によりインビトロでもインビボでも組成物の有効性を評価することができる。候補組成物の抗癌活性を検査する場合、様々な動物モデルがよく知られている。こうしたモデルには、無胸腺ヌードマウスまたはscid/scidマウスに異種移植したヒト腫瘍、あるいはp53ノックアウトマウスなどのマウスの遺伝性腫瘍モデルがある。こうした動物モデルのインビボでの性質から、ヒト患者の反応が具体的に予測される。こうしたモデルを、たとえば、皮下注射、尾静脈注射、脾臓移植、腹腔内移植および腎被膜下移植など標準技法を用いて細胞を同系マウスに導入して作製してもよい。
【0173】
キット
また、本発明は、本方法で使用するキットも提供する。本発明のキットは、本明細書に記載の精製抗体またはポリペプチドと、本明細書に記載の本発明の方法のいずれかに従った使用説明書とを含む1つまたは複数の容器を含む。いくつかの実施形態では、こうした説明書は、本明細書に記載の方法のいずれかに従って結腸直腸癌などの非造血系癌を処置する抗体の投与に関する説明を含む。キットは、個体に疾患があるかどうかおよびその疾患のステージ、あるいは個体の癌細胞にエピトープが発現しているかどうかの確認を踏まえた、処置に好適な個体の選択に関する説明をさらに含んでも構わない。
【0174】
いくつかの実施形態では、サンプル中の癌細胞を検出するキットは、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドと、サンプル中の細胞に対する抗体またはポリペプチドの結合を検出する試薬とを含む。
【0175】
癌を処置する抗体またはポリペプチドの使用に関する説明書には通常、対象となる処置についての投与量、投与スケジュールおよび投与経路に関する情報が含まれている。容器は、1回用量でも、バルクパッケージ(たとえば、反復投与用のパッケージ)でも、サブユニット用量でも構わない。本発明のキットに付属の説明書は一般に、ラベルまたは添付文書(たとえば、キットに含まれる紙シート)に記載された説明書であるが、機械読み取り可能な説明書(たとえば、磁気または光学保存ディスク上にある説明書)でも問題ない。
【0176】
ラベルまたは添付文書には、その組成物を用いて本明細書に記載の癌を処置する旨表示されている。本明細書に記載の方法のいずれかの実施に関する説明書を提供してもよい。
【0177】
本発明のキットは、適切にパッケージされている。適切なパッケージには、バイアル、ビン、ジャー、フレキシブルパッケージ(たとえば、シールマイラーまたはビニール袋)および同種のものが含まれるが、これに限定されるものではない。さらに、吸入器、鼻腔内投与装置(たとえば、アトマイザー)またはミニポンプなどの注入装置のような特定の装置と組み合わせて用いるパッケージも意図している。キットには、滅菌アクセスポートがあってもよい(たとえば、容器は、皮下注射針で穿刺可能な栓が付いた静脈内注射液バッグまたはバイアルであってもよい)。さらに、容器にも、滅菌アクセスポートがあってもよい(たとえば、容器は、皮下注射針で穿刺可能な栓が付いた静脈内注射液バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの有効な薬物は、本明細書に記載の抗体である。容器は、薬学的に有効な第2の薬物をさらに含んでも構わない。
【0178】
キットは任意に、緩衝剤および説明情報など他の要素も提供する。通常、キットは、容器と、容器の表面上あるいは容器に付属したラベルまたは添付文書(単数または複数)とを含む。
【実施例】
【0179】
以下の実施例は、本発明の説明を目的としており、本発明を限定するために提供するものではない。
【0180】
(実施例1)
癌細胞に発現するCD43に特異的に結合するモノクローナル抗体の作製および特徴付け
モノクローナル抗体の作製
フードインダストリーリサーチアンドデベロップメントインスティテュート(Food Industry Research and Development Institute)(CCRC 60054),新竹(Hsin−chu),台湾からヒト結腸直腸腺癌の細胞株COLO205(ATCC CCL−222)を購入し、RPMI1640培地(ギブコ(GIBCO)BRL)で10%FBS(fetal bovine serum)(ハイクローン(Hyclone))、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(ギブコBRL)とともに5%CO2の湿潤雰囲気において37℃にて生育させた。8週齢の雌性Balb/cマウスを、500μlのPBS((phosphate−buffered saline))に加えた2×107個のCOLO205細胞またはCFA(complete Freund’s adjuvant)に加えた10マイクログラムの部分精製タンパク質で2週ごとに3回免疫し、最後に200μlのPBSに加えた2×106個のCOLO205細胞または10マイクログラムの部分精製タンパク質で追加免役した。最後の追加免疫から5日後、その脾臓細胞をX63骨髄腫細胞と融合した。ハイブリドーマを、10%FBS(ハイクローン)およびHAT(Hybri−Max(登録商標)、シグマ(Sigma)H0262、最終濃度はヒポキサンチン100μM、アミノプテリン0.4μM、チミジン16μM)を補充したDMEM(Dulbecco’s modified Eagle medium)で選択した。モノクローナル抗体5F1、51−41および138−10を分泌している3種のハイブリドーマ細胞株m5F1、m51−41、m138−10を作製した。
【0181】
モノクローナル抗体5F1の標的抗原の同定および特徴付け
結腸直腸癌組織またはCOLO205細胞由来の膜タンパク質を、プロテアーゼ阻害剤(コンプリート錠;ロシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))を含む抽出緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、1%ノニデットP−40)で単離した。最初に、膜タンパク質のライセートを、プロテインGセファロース(アマシャムファルマシアバイオテクインク(Amersham Pharmacia Biotech Inc.),ニュージャージー州、米国)に固定化した非免疫マウスのIgGを含む1mlのカラムで前除去して、その溶出部分を、プロテインG−セファロースに結合した5F1の1mlのカラムに直接導入した。カラムを洗浄し、5F1の標的タンパク質を溶出させた。単離されたタンパク質の純度を銀染色で可視化して、さらに8%SDS−PAGEでの分離後、ウエスタンブロッティングで同定した。さらに、単離されたタンパク質を用いてマウスを免疫し、138−10または51−41など他の5F1様抗体を作製した。
【0182】
免疫沈降実験では、この膜タンパク質を5F1または抗CD43抗体(AF2038,R&D System,Inc.)とインキュベートし、続いてプロテインGセファロース(アマシャムファルマシアバイオテクインク,ニュージャージー州,米国)とインキュベートした。その沈殿物を8%SDS−PAGEにかけて、ウエスタン(またはイムノ)ブロット解析に供した。
【0183】
タンパク質を等量のサンプル緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH6.8)、100mMのDTT(dithiothreitol)、2%SDS(sodium dodecyl sulfate)、0.1%ブロモフェノールブルー、10%グリセロール)と混合し、8%SDS−PAGEで分離してから、ニトロセルロース膜(Hybond−C Super,アマシャム)にトランスファーした。次いで、ニトロセルロース膜をPBSに加えた5%スキムミルクでブロックして、5F1または抗CD43mAb(AF2038)とインキュベートした。その後、ブロットを、西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリン(ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ(Jackson ImmunoResearch Laboratories),ウエストグローブ(West Grove),ペンシルベニア州)で処理し、化学発光試薬(ECL,アマシャム,英国)で展開した。
【0184】
5F1がCD43を認識するかどうかを検査するため、市販されている抗CD43mAb(AF2038、R&D system,Inc.)を用いて、ウエスタンブロット解析でCOLO205ライセート由来の5F1親和性精製タンパク質の種類を確認した。5F1結合陰性細胞株COLO320由来のライセートを対照として用いた。今回の結果(図1)によれば、抗CD43(AF2038)抗体と5F1抗体がともに5F1のイムノアフィニティーカラムで捕獲したタンパク質と反応しており、5F1がCD43を認識することが強く示唆された。
【0185】
モノクローナル抗体5F1は、非造血系癌細胞のCD43に発現する細胞表面を特異的に認識する。
【0186】
2×105個のCOLO205細胞を、v底96ウェルプレートの各ウェルに播種し、5F1抗体と0.33〜1μg/mlの範囲の様々な濃度で4℃にて1時間インキュベートした。細胞を200μlのFACS(fluorescence−activated cell sorter)緩衝液(1×PBS+1%FBS)で2回洗浄し、1μg/ml(FACS緩衝液中)のヤギ抗マウスIgG−PE(サザンバイオテク(Southern Biotech.))100μlで染色してから、4℃で30間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、フローサイトメトリー(BD LSR,BDライフサイエンシズ(BD Life Sciences))で解析した。
【0187】
フローサイトメトリーによる抗体結合の結果を以下の表1に示す。5F1(アイソタイプ:IgG3)または138−10(アイソタイプ IgM)または51−41(アイソタイプ IgM)などのモノクローナル抗体は、COLO205結腸直腸癌細胞およびNCI−N87胃癌細胞の細胞質膜表面に発現するCD43を認識するが、末梢性TとJurkat(リンパ芽球様の白血病細胞株;ATCC TIB−152)のいずれも認識しない。以下の表1を参照されたい。さらに、フローサイトメトリーのデータ(図2Aおよび図2B)によれば、5F1は、結腸直腸癌細胞(DLD−1)および胃癌細胞(NCI−N87)など、他のタイプの癌細胞に結合するが、正常な内皮細胞(HUVEC)、正常な肺細胞(MRC−5)、正常な乳腺上皮細胞(MCF−10A)、正常な結腸直腸細胞(CCD841−CoN)、活性化Tリンパ球(数日間活性化した)または正常な末梢血単核球(PBMC)には結合しない。
【0188】
表1は、結腸直腸癌細胞、胃癌細胞、ヒト末梢性T細胞およびJurkat(リンパ芽球様の白血病細胞株)に対する5F1、138−10または51−41などの抗CD43抗体の抗原結合特性を示す。
【0189】
【表1】
COLO205細胞およびヒト結腸直腸癌組織における5F1の標的タンパク質の発現を検出するため、通例の免疫組織化学的方法を用いた。簡単に説明すると、細胞または組織を固定し、1μg/mlの5F1で免疫染色して、ビオチン標識抗マウスIgGとインキュベートし、次いでアビジンビオチンペルオキシダーゼ複合体(ベクターラボラトリーズインク(Vector Laboratories,Inc.),バーリンゲーム(Burlingame),カリフォルニア州,米国)とインキュベートし、色素原3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩で染色した。免疫組織化学試験から、結腸直腸癌患者由来の組織の52.5パーセント(31/59)が5F1により陽性に染色された。
【0190】
(実施例2)
癌細胞に発現するCD43に特異的に結合する抗体のアポトーシス活性
ELISAアッセイによる、COLO205細胞において5F1が誘導するアポトーシスの検出
5F1が誘導する細胞死のタイプを評価するため、培養プレートで結腸直腸癌細胞を生育させ、5F1とともに、あるいはそれなしでインキュベートした。ヌクレオソーム間の(アポトーシス)DNA断片化のレベルを、細胞死検出ELISAPLUSキット(ロシェ、カタログ番号1774425)を用いて、細胞質内のモノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームに結合したヒストン−DNA複合体を抗体により捕獲および検出して判定した。製造者の指示に従って、ELISAアッセイを行った。簡単に説明すると、1×104個のCOLO205細胞を96ウェルプレートの各ウェルに蒔き、10μg/mlの濃度で5F1または9E10(抗myc抗体)、あるいは、培地対照とインキュベートした。37℃でインキュベートしてから6、24または48時間後、細胞を洗浄し、200μlの溶解緩衝液で30分間インキュベートした。核をペレットした(200×g、10分)後、断片化DNAを含む20μlの上清(細胞質画分)を、ビオチン標識抗ヒストンモノクローナル抗体とインキュベートしておいたストレプトアビジンコート済みマイクロタイタープレートに移した。抗ヒストン抗体に結合したヌクレオソームの断片化DNAの量を、ABTS(2,2−アジノ−ジ[3−エチルベンズチアゾリンスルホナート−6−ジアンモニウム塩])を基質として用いてペルオキシダーゼコンジュゲート抗DNAモノクローナル抗体で評価した。最後に、ペルオキシダーゼ基質と10〜20分間インキュベートした際に、マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス(Moleclar Devices),SPECTRA max M2)で405nmの吸光度を判定した。溶解緩衝液および基質のみを含むウェルの値をバックグラウンドとして差し引いた。細胞質に放出されたモノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームを特異的なエンリッチメントとして、以下の式を用いた値からデータを解析した:
エンリッチメント係数(E.F.)=サンプル(死につつある/死んだ細胞)のmU/培地対照(mAb処理をしてない細胞)のmU
mU=吸光度[10−3]
図3に示したデータから、インキュベーションから24時間後にCOLO205細胞の細胞質で5F1がヌクレオソームのエンリッチメントを誘導したことが示唆される。5F1で処理した細胞質において検出された断片化DNAは、培地対照と比較して4倍を超えて増加した。対照抗体9E10(抗myc抗体)で処理した細胞でも、培地のみで処理した細胞でも、そうしたエンリッチメントは観察されなかったことから、癌細胞にアポトーシスを引き起こす原因となったのは5F1のみと考えられる。
【0191】
アネキシンVおよびPI(propidium iodide)染色を用いた、COLO205細胞において5F1、138−10および51−41が誘導するアポトーシスの検出
アネキシンVは、アポトーシスプロセスの初期に細胞質膜の外側の方に向きを変えるリン脂質を染色する。したがって、FACS分析で測定したように、アネキシンVの染色から、アポトーシスの生じた細胞が示唆される。1.2×105個のCOLO205細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、次いでこの細胞に、培地または新鮮培地(未処理対照)で希釈した5F1を様々な濃度(2〜16μg/ml)で加えた。5F1が腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導するのに架橋剤(CL:cross−linker)を必要とするかどうかを検査するため、20μg/mlのウサギ抗マウスIgG(ジャクソンイムノリサーチ,カタログ番号315−005−045)を比較のため一連のサンプルに加えた。37℃で6時間インキュベートした後、この細胞を、100μlのアネキシンV結合緩衝液に加えた0.25μlのFITCコンジュゲートアネキシンV(ストロングバイオテクコーポレーション(Strong Biotech Corporation))で室温にて15分間染色した。次いでこの細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI、DNA染色色素)染色しフローサイトメトリーで解析した。
【0192】
フローサイトメトリーのデータから、架橋剤の非存在下で4μg/ml以上の濃度で6時間5F1を処理すると、非常に多くの結腸直腸癌細胞でアポトーシスが生じることが示唆されることから、5F1は単独でCOLO205細胞のアポトーシスを効果的に誘導すると考えられる。
【0193】
他の抗C43抗体、138−10および51−41によるCOLO205細胞のアポトーシス誘導作用も検査した。以下の表2は、結腸直腸癌細胞においてアポトーシスを誘導する5F1、138−10または51−41を示す。COLO205細胞を、32マイクログラム/mlの各抗体と6時間インキュベートし、アネキシン−V、次いでPIで染色して、その後FACS分析を行った。
【0194】
表2.COLO205細胞における5F1、138−10および51−41によるアポトーシスの誘導。
【0195】
【表2】
上記の結果から、癌に発現するCD43に特異的な抗体で処理すると、癌細胞のアポトーシスを誘導できることが示唆される。
【0196】
YO−PRO−1染色またはアネキシンVおよびPI染色を用いた、NCI−87細胞においてm5F1が誘導するアポトーシスの検出
4×105個のNCI−N87(ヒト胃癌(gastric carcinoma)細胞株)細胞または5×105個のCOLO205細胞を、12ウェル培養プレート(ヌンク(Nunc)のカタログ番号150628)に播種した。一晩培養した後、培地を交換し、図10に示した濃度の抗体またはアジドを加えて6時間インキュベートした。次にこの細胞を、トリプシン処理し、集めてYO−PRO−1(インビトロジェンのカタログ番号Y3603)で染色するか、アネキシン−V−FITC & PI(ストロングバイオテク,アポトーシス検出キット,カタログ番号AVK250)で二重染色した。
【0197】
図10Aおよび10Bに示すように、YO−PRO−1染色(A)およびアネキシン−V−FITCおよびPIを用いた二重染色(B)による測定から、抗体m5F1は、NCI−87およびCOLO205細胞においてアポトーシスを誘導した。こうしたデータは、m5F1も胃癌(gastric carcinoma)細胞においてアポトーシスを誘導できることを示す。
【0198】
(実施例3)
5F1による癌細胞の成長阻害
5F1は単独で癌細胞の成長を阻害する
結腸直腸癌細胞(COLO205)および正常な内皮細胞(HUVEC)を播種し、5F1または対照抗体9E10とインキュベートした。陰性対照として未処理の細胞もインキュベートした。本明細書に記載するように増殖活性を検出するため、MTTおよびWST−1アッセイを用いて細胞生存を評価した。
【0199】
WST−1アッセイは、細胞ミトコンドリアのデヒドロゲナーゼによりテトラゾリウム塩WST−1がホルマザンへと切断されることに基づいている。生成されるホルマザンについては、分光光度計で450nmの吸光度を測定して定量することができる。生細胞が増殖すれば、酵素の全活性が増強されるが、酵素活性の低下は、細胞の成長阻害を示す。そこで、WST−1アッセイを用いて、5F1処理後の腫瘍細胞の生存率を評価した。簡単に説明すると、100μlの培地に加えた4×103個のCOLO205細胞を、処理ごとに5回ずつ96ウェル培養プレートに播種した。次に10μg/mlの5F1、対照抗体9E10(抗myc抗体)または新鮮培地(未処理の対照)を加えた。このアッセイには、細胞毒性対照としてさらに0.5%アジ化ナトリウム(NaN3)の処理も加えた。37℃での3日のインキュベーション期間後、20μlのWST−1試薬(ロシェ、カタログ番号1664807)を各ウェルに加え、この混合物を37℃で30分間インキュベートした。処理した細胞の生存率を反映する450nmの吸光度を測定した。COLO205細胞に関するWST−1アッセイの結果を図4に示す。データから、COLO205細胞の成長が著しく阻害された(図4)一方、HUVEC(データなし)の成長には5F1処理の影響がないことが示唆された。抗体5F1で処理した癌細胞の生存率の割合は、アイソタイプコントロール抗体9E10で処理した結腸直腸癌細胞と比較して50%未満に低下した。0.5%アジ化ナトリウムで処理した陽性対照群の生存率は、19%であった。
【0200】
別の実験では、細胞(2×103)を、96ウェル培養プレートの各ウェルに播種し、10マイクログラム/mlのモノクローナル抗体5F1または対照の抗体9E10(c−mycに対する抗体)とインキュベートした。未処理細胞を陰性対照として用い、0.5%アジ化ナトリウムで処理した細胞を陽性対照として用いた。37℃での2日または3日のインキュベーション期間後、10ulのWST−1試薬を各ウェルに加え、この細胞をさらに30分間インキュベートした。その後、上記のようにWST−1細胞生存アッセイを行った。図5に示すその結果から、抗体5F1はCOLO205などの結腸直腸癌(colorectal carcinoma)細胞の成長を実質的に阻害したのに対し、正常な結腸直腸細胞株(CCD841−CoNなどには影響を与えなかった。
【0201】
MTTは、細胞の生存状況および増殖の測定に役立つテトラゾリウムをベースにしたもう1つの方法である。黄色のテトラゾリウムであるMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を、NADH(nicotinamide adenine dinucleotide)およびNADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)などの還元等価物を生成する代謝的に活性な細胞と、一部はデヒドロゲナーゼ酵素の作用とで還元する。得られた細胞内の紫色のホルマザンについては可溶化し、分光光度的手段で定量することができる。細胞(5×103)を96ウェル培養プレートの各ウェルに播種し、モノクローナル抗体5F1(濃度範囲は0〜64μg/ml)またはc−mycに対する対照抗体9E10(64μg/ml)とインキュベートした。未処理細胞を陰性対照として用い、0.5%アジ化ナトリウムで処理した細胞を陽性対照として用いた。37℃での72時間のインキュベーション期間後、10μlのMTT試薬を各ウェルに加え、この細胞を、紫色の沈殿が目視可能になるまでさらに2〜4時間インキュベートした。100ulの界面活性剤試薬(DMSO:dimethyl sulfoxide)を加える。570nmのサンプルの吸光度を記録する。MTTアッセイのデータから、5F1が用量依存的(0〜64μg/ml)にCOLO205の細胞増殖を阻害し、ED50(50%阻害の有効用量)が8μg/ml(図6)であることが明らかになった。図6にも示してあるように、64μg/mlの5F1の使用時に細胞成長の顕著な阻害が確認されたのに対し、同じ濃度の対照抗体9E10ではそうした作用は見られなかった。
【0202】
インビボでの5F1の抗腫瘍作用の評価
マウスの腫瘍異種移植モデルを用いてインビボでの5F1の抗腫瘍作用を解析した。5×106個のCOLO205細胞を0日目にSCIDマウスの後側腹部に皮下移植した。細胞接種から1週間後、ある実験では、マウスを、腹腔内注射により500マイクログラムの5F1またはPBSで処理した。別の実験では、樹立腫瘍を持つマウスの4群(各群にマウス6匹)を、25mg/kgの5−フルオロウラシルおよびロイコボリン(5FU/LV)で1日おきに4回静脈内処理し、さらに様々な用量で5F1を週2回腹腔内注射するか、あるいはそれをしなかった。
【0203】
ある実験では、0日目にマウス1匹当たり1×107個の結腸直腸癌細胞COLO205を皮下注射して、SCIDマウスに腫瘍を移植し、次いで0、3、5、7、10、12、14および17日目にモノクローナル抗体5F1(1用量当たり500μg)または対照モノクローナル抗体9E10(c−mycに対して産生される抗体)またはPBSを腹腔内注射して処理した。この実験では、各群でマウス15匹を使用した。腫瘍の大きさを、腫瘍産物の2つの幅と長さ(WxWxL)を基準に5日目から24日目まで測定し、mm3で表した。図7に示すように、モノクローナル抗体5F1は、対照抗体9E10およびPBS(未処理)と比較して腫瘍の成長を効果的に抑制した。
【0204】
5F1と5FU/LVのような化学療法薬との併用作用を調べるため、腫瘍移植から7日後3週にわたり、マウスに25mg/kgの5FU/LVを1日おきに4回静脈内注射し、5F1抗体を様々な量で週2回腹腔内注射するか、あるいはしなかった。カリパスによる週2回の腫瘍容積(mm3)の測定に基づき腫瘍成長を判定し、腫瘍の大きさを、式:π/6×長径×(短径)2(Kievit E,Cancer Research,60:6649−55)を用いて算出した。図8に示すように、5F1抗体処理と5FU/LV処理を併用すると、化学療法薬の単独処理の場合と比較してヒト結腸直腸腫瘍の成長が著しく阻害された(図8)。
【0205】
(実施例4)
3つの新規な抗CD43抗体5F1、138−10および51−41は、癌細胞に発現する類似のエピトープを認識する。
【0206】
3つの新規な抗CD43抗体(5F1、138−10および51−41)の結合特性を解明するため、FACS分析を用いた。COLO205細胞(100,000個)を、ビオチン標識していない様々な量の抗体5F1、138−10および51−41の存在下で、1マイクログラム/mlのビオチン標識5F1で4℃にて1時間染色した。洗浄後、この細胞を、同じ条件で30分間ストレプトアビジン−FITCによりさらに染色した。この細胞を洗浄し、FACSで解析した。以下の表3に示すデータは、ある代表的な実験の平均蛍光強度である。51−41抗体および138−10抗体はともに、COLO205細胞に対するビオチン標識5F1の結合で競合できることから、3つの抗体はすべて、COLO205細胞の表面に発現する類似の結合部位に結合すると考えられる。
【0207】
表3.5F1、138−10および51−41は、COLO205細胞に発現する類似のエピトープを認識する。
【0208】
【表3】
(実施例5)
抗体5F1のエピトープの特定
モノクローナル抗体5F1が認識するエピトープ構造をさらに明らかにするため、このモノクローナル抗体を用いて様々なポリペプチド配列に対する特異的反応を検査した。96ウェルマイクロタイタープレートを、0.1MのNaHCO3(pH8.6)コーティング緩衝液に加えた濃度10μg/mlの抗体5F1(1ウェル当たり50μl)で4℃にて一晩コートした。洗浄後、このプレートを、0.1MのNaHCO3(pH8.6)、5mg/mlのBSA(bovine serum albumin)、0.02%NaN3(150μl/ウェル)を含むブロッキング緩衝液で4℃にて少なくとも1時間インキュベートしてブロックした。次いでプレートを、様々なポリペプチドのフラグメントを含む融合タンパク質と種々の濃度で室温にて1時間インキュベートした。TBS(tris−buffered saline)を含む0.5%トウィーンで洗浄後、結合した融合タンパク質−ポリペプチドを、1mg/mlのBSAを含む0.2Mのグリシン−HCl(pH2.2)緩衝液で溶出し、1Mのトリス−HCl(pH9.1)で中和した。次いで、溶出した融合タンパク質−ポリペプチドのアミノ酸配列を特定した。抗体5F1が結合するポリペプチドは、N末端からC末端までにトリペプチド配列Trp−Pro−Ile(WPI)を含む。このトリペプチドアミノ酸配列は、CD43のアミノ酸配列には存在しない。Pallantら、,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1328−32,1989;Shelleyら、,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2819−23,1989を参照されたい。
【0209】
抗体5F1が結合するトリペプチドのエピトープをさらに確認するため、サンドイッチELISAを実施した。96ウェルマイクロタイタープレートを、1ウェル当たり50μlとして1μg/mlの濃度の抗体(5F1または対照抗体9E10)で4℃にて一晩コートした。プレートを、PBSに加えた0.25%BSA(150μl/ウェル)で37℃にて1時間インキュベートしてブロックした。次いでプレートを、キャリアタンパク質と融合したポリペプチドの様々なフラグメントを含む融合タンパク質と室温で2時間インキュベートした。0.05%トウィーン20を含むPBSで4回洗浄した後、プレートを、キャリアタンパク質に特異的な2μg/mlの抗体と室温で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBSTで4回洗浄した。次いでHRPとコンジュゲートした3000倍希釈のヤギ抗キャリアタンパク質特異的抗体50μlを各ウェルに加え、このプレートを37℃で1時間インキュベートした。HRP酵素の基質を加えて酵素反応を行い、これら2つの抗体(5F1および9E10)に対するこれらに対する指定のポリペプチドの反応性を判定した。以下の表4は、5F1または9E10をプレートに固定化した際のELISAアッセイのデータを示す。「+」は、指定のポリペプチドがこのモノクローナル抗体に結合することを示し、「−」は、指定のポリペプチドがこのモノクローナル抗体に結合しないことを示す。モノクローナル抗体5F1は、トリペプチドのWPIエピトープ構造を認識した。トリペプチドのWPI配列は、CD43には存在しないため、こうしたデータから、5F1は、トリペプチドWPIが形成する構造に類似または等価な物理的および/または化学的特徴を持つ構造を含む立体構造エピトープを認識することが示唆される。
【0210】
表4.5F1が認識するエピトープ構造
【0211】
【表4】
(実施例6)
5F1、138−10および51−41の軽鎖および重鎖の可変領域のクローニングおよび抗体のヒト化
5F1の軽鎖および重鎖の可変領域のcDNAをPCRで増幅し、その合成cDNAを、配列決定できるようにpCRII(インビトロジェン)にサブクローニングした。複数の独立クローンからヌクレオチド配列を得て解析した。各抗体の軽鎖V領域または重鎖V領域に相当するように、独立クローンから同一のcDNA配列を選択した。以下の表5は、5F1、138−10、51−41およびヒト化5F1(h5F1Vc)の軽鎖V領域および重鎖V領域の翻訳アミノ酸配列およびそのV領域をコードしているヌクレオチド配列を示す。
【0212】
表5.抗体の可変領域のアミノ酸配列および抗体の可変領域をコードしている核酸配列(CDRを下線で示す)
5F1の重鎖アミノ酸配列(配列番号1)およびヌクレオチド配列(配列番号9)
【0213】
【化2】
5F1の軽鎖アミノ酸配列(配列番号2)およびヌクレオチド配列(配列番号10)
【0214】
【化3】
138−10の重鎖アミノ酸配列(配列番号3)およびヌクレオチド配列(配列番号11)
【0215】
【化4】
138−10の軽鎖アミノ酸配列(配列番号4)およびヌクレオチド配列(配列番号12)
【0216】
【化5】
51−41の重鎖アミノ酸配列(配列番号5)およびヌクレオチド配列(配列番号13)
【0217】
【化6】
51−41の軽鎖アミノ酸配列(配列番号6)およびヌクレオチド配列(配列番号14)
【0218】
【化7】
h5F1Vcの重鎖アミノ酸配列(配列番号7)およびヌクレオチド配列(配列番号15)
【0219】
【化8】
h5F1Vcの軽鎖アミノ酸配列(配列番号8)およびヌクレオチド配列(配列番号16)
【0220】
【化9】
(実施例7)
キメラ5F1抗体の作製および特徴付け
キメラ抗体5F1(c5F1)の構築および作製
キメラ抗体を発現するベクターを構築するため、5F1の軽鎖V領域をプラスミドpVKにサブクローニングした。pVKは、CMVプロモーターおよびヒト軽鎖定常領域を含む。ヒト軽鎖定常領域に関する配列および生物学的情報は、Hieter, P.A.,ら、(1980),Cloned human and mouse kappa immunoglobulin constant and J region genes conserve homology in functional segments.Cell,22(1 Pt 1):p.197−207で確認することができる。
【0221】
5F1の重鎖V領域をプラスミドpVg1にサブクローニングした。pVg1プラスミドはCMVプロモーターを持ち、ヒトIgG1の重鎖定常領域を含んでいる。ヒトIgG1の重鎖定常領域に関する配列および生物学的情報は、Ellison,J.W.,BJ.Berson,and L.E.Hood(1981),The Nucleotide sequence of a human immunoglobulin C gamma 1 gene.,Nucleic Acids Res.10:4071で確認することができる。
【0222】
次に、この軽鎖および重鎖を発現するプラスミドをCos−7細胞に共導入した。c5F1を含む上清を採取してc5F1のアポトーシス誘導機能を解析した。
【0223】
c5F1の機能試験
その後、c5F1を含む上清については、表面染色によりCOLO205細胞に対するc5F1の結合を検査し、c5F1の機能を上記のようなアネキシンVアポトーシスアッセイで検査した。結合アッセイでは、0.58マイクログラム/mlのc5F1を用いた。アポトーシスアッセイでは、2〜32マイクログラム/mlのm5F1、c5F1および9E10(対照の抗myc抗体)を用い、インキュベーション時間は16時間であった。c5F1を含む上清は、マウスの5F1と同じようにCOLO205細胞に結合し、COLO205細胞におけるアポトーシスを誘導することから、クローン化cDNAフラグメントは実際に、5F1のV領域をコードしていることが明らかにされる(図9Aおよび図9B)。
【0224】
(実施例8)
m5F1による結腸直腸癌組織の免疫組織化学的研究
m5F1による組織染色
m5F1標的の発現を、結腸直腸癌患者(n=59)由来の原発腫瘍組織のパラフィン包埋サンプルを用いて免疫組織化学的検査により調査した。パラフィン包埋ヒト結腸および直腸癌組織の組織アレイをスーパーバイオチップスラボラトリーズ(SuperBioChips Laboratories)から入手した(ヒト組織アレイ,カタログ番号CD1)。製造者の指示に従って免疫組織化学的検査の標準的な染色手順を用いた(ベクタステインエリートABCキット(VECTASTAIN Elite ABC Kit),ベクターラボラトリーズ)。すべての切片を58℃で1時間加熱し、キシレンで5回脱パラフィン処理を行い、濃度を段階的に下げながらエタノールで再水和した。正常な血清(ベクタステイン,PK6102)で1時間ブロックした後、この切片を1μg/mlの濃度でm5F1と室温で1時間インキュベートし、その後、ビオチン標識二次抗マウス抗体(ベクタステイン,PK6102)とインキュベートした。次に、切片をストレプトアビジン−ビオチン複合体(ベクタステイン,PK6102)とインキュベートした。このスライドをジアミノベンジジン溶液で展開した。最後に、このスライドをヘマトキシリンで対比染色し、脱水処理を行い、透徹して50%グリセロールPBSでマウントした。
【0225】
グレード分類による判定
2名の観察者により組織切片の抗原発現を評価し、5F1による染色を以下の経験的な半定量システムを用いてグレード分けした:
−は、陰性;+−は、弱い染色;+は、中程度の染色;++は、強い染色。
【0226】
結果
m5F1による染色では、すべての切片において、膜関連の染色が顕著であった。全体で、59個の腫瘍標本のうち31個(52.5%)が5F1標的に対して陽性染色を呈し、59個のうち27個(45.8%)が強い発現レベルを示した。19サンプル(32.2%)がm5F1標的の発現に対して陰性染色を呈した。検査対象の結腸直腸癌サンプル全体の染色結果の概要を表6に示す。こうしたデータから、抗体m5F1を結腸直腸癌の診断に使用できることが示唆される。
【0227】
表6.ヒト結腸直腸癌における5F1標的の発現頻度
【0228】
【表6】
(実施例9)
m5F1は、COLO205に発現する組換えヒトCEA(rhCEA)およびCD43(rhCD43)に結合するが、COS−7細胞に発現するrhCEAまたはrhCD43を認識しない
タンパク質サンプルの調製
COLO205およびCOS細胞におけるFlagタグ付き組換えCEAの免疫沈降:全長CEAタンパク質(35〜702aa)をコードしているcDNAをプラスミドpFlag−CMV−1にクローニングした。組換え(engineered)プラスミドDNAを、エレクトロポレーションによりCOLO205に導入するか(安定発現株の構築のため)、リポフェクタミン2000(インビトロジェン,カタログ番号11668−019)によりCOS細胞に導入した(一過性発現実験のため)。細胞を発現する抗原を回収して、プロテアーゼ阻害剤(ロシェ,カタログ番号11836145001)を含む溶解緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH8.5)、150mMのNaCl、1%NP40)に溶解させた。細胞可溶化物の上清を抗Flag(M2,ストラタジーン(Stratagene),カタログ番号200472)結合プロテインGセファロースビーズ(GEヘルスケア(GE Healthcare),カタログ番号17−0618−02)と4℃で2時間インキュベートした。次いで、このプロテインGセファロースビーズを溶解緩衝液で3回洗浄した。SDS−PAGEおよびウエスタンブロットには、プロテインGセファロースビーズを含むIP(immunoprecipitation)産物をサンプルとして使用した。
【0229】
COLO205細胞に発現するCr1タグ付きCD43の可溶性組換えタンパク質の精製: CD43タンパク質の細胞外ドメインをコードしているcDNAを、N末端にFlagタグとC末端にCr1タグを含む修飾pcDNA3プラスミドにクローニングした。この組換え(engineered)プラスミドDNAを、安定発現株の樹立のためエレクトロポレーションによりCOLO205細胞に導入した。COLO205に発現する可溶性組換えhCD4320−253は、N末端に3×FlagタグおよびC末端Cr1タグを含む。この可溶性タンパク質をプロテインAセファロースビーズ(GEヘルスケア,カタログ番号17−1279−02)で精製した。グリシン緩衝液で溶出しPBSに対して透析した後、このタンパク質サンプルを今後の使用に備えて−20℃で保存した。
【0230】
CD43の全細胞可溶化物は、COS細胞に一過性に発現した:全長ヒトCD43(pcDNA3.1myc−His)を含むコンストラクトをリポフェクタミン2000(インビトロジェン,カタログ番号11668−019)によりCOS細胞に導入した。細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含むRIPA(radioimmunoprecipitation assay)緩衝液(50mMのトリス−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl、1mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、0.25%SDS、1%NP−40)で溶解し、21,900g、4℃で10分間遠心(centrifugeg)して上清を回収 した。バイオラッド(Bio−Rad)による定量後、ウエスタンブロット解析のため、タンパク質ライセートを十分な量でSDS−PAGEに流した。
【0231】
ウエスタンブロット解析
サンプル緩衝液の添加後、このタンパク質サンプルを95℃で煮沸し、SDS−PAGEミニゲルに流してから、NC(nitrocellulose)紙(GEヘルスケア,Hybond−ECL,カタログ番号RPN303D)にトランスファーした。この膜をTBSに加えた5%脱脂乳でブロックした後、一次抗体を加えた。一次抗体の結合を、HRPコンジュゲート二次抗体(NENライフサイエンス(NEN Life Science),HRP−ヤギ抗マウスIgG,カタログ番号NEF822またはサザンバイオテク,HRP−ヤギ抗マウスIg,カタログ番号1010−05)で検出し、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(GEヘルスケア,カタログ番号RPN2106)で展開した。
【0232】
結果
図11Aに示す実験では、rhCEAを発現しているCOLO205細胞の細胞可溶化物を抗Flag抗体で免疫沈降し(immunoprecipated)、この免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーした。NC紙を、抗Flag、m5F1、50−14、51−41、138−10、186−14、280−6または抗CEA抗体(CEA/Ab−3;クローン名COL−1でネオマーカー(NeoMarker)カタログMS−613−P1ABX)などの様々な抗体でブロットした。図11Aのデータから、m5F1、51−41および138−10は、COLO205細胞に発現するrhCEAを認識することが示された。
【0233】
図11Bに示す実験では、COS−7細胞に発現するrhCEAの細胞可溶化物を抗Flag抗体で免疫沈降し(immunoprecipated)、免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーした。NC紙を、抗Flag、m5F1または抗CEA(CEA/Ab−3)などの様々な抗体でブロットした。図11Bのデータから、m5F1は、COS−7細胞に発現するrhCEAに結合しないことが示された。
【0234】
図12Aに示す実験では、COLO205に発現した可溶性タンパク質をプロテインAセファロースビーズで精製し、SDSゲルにかけて、NC紙にトランスファーした。NC紙を、m5F1、51−41または138−10などの様々な抗体でブロットした。図12Aのデータから、m5F1、51−41および138−10は、COLO205細胞に発現するrhCD43を認識することが示された。
【0235】
図12Bに示す実験では、COLO205に発現した可溶性タンパク質をプロテインAセファロースで精製し、SDS−PAGEにかけて、NC紙にトランスファーした。NC紙を、抗CD43(MEM59)(左パネル)またはm5F1(右パネル)でブロットした。図12Bのデータから、m5F1は、COS−7細胞に発現するrhCD43を認識しないことが示された。こうしたデータからは、m5F1が認識するエピトープは、一定の細胞型に特異的な翻訳後修飾を含むことが示唆される。
【0236】
(実施例10)
m5F1、51−41、138−10が認識するエピトープは、Lewisa(Lea)構造を含み、フコース依存的である
グリコシダーゼ処理
組換えヒトCEA(rhCEA)を、COLO205細胞に発現したヒトCEAタンパク質から作製した。CEAのアミノ酸35−145(Nドメイン)およびアミノ酸324−415(A2ドメイン)を持つ融合体であるrhCEA(CEA−N−A2)をコードしているcDNAを、Flagタグを含む修飾pcDNA3プラスミドにクローニングした。CEAのアミノ酸残基の位置は、プレタンパク質のアミノ酸の位置がベースになる。組換え(engineered)プラスミドDNAを、安定発現株の構築のためエレクトロポレーションによりCOLO205細胞に導入した。組換えCEAタンパク質を、抗Flag抗体を用いて安定発現株を発現する組換えCEAの細胞培養上清から精製した。
【0237】
各反応ごとに、約1.8μgの組換えタンパク質(rhCEA)を、Xanthomonas sp.由来のα−1→(2,3,4)−フコシダーゼ溶液(シグマ,カタログ番号F1924)と様々な量(0、0.01、0.03または0.1mU)で37℃にて20時間インキュベートした。処理後、このタンパク質サンプルをSDS−PAGEに流し、クマーシーブルー染色(図13左パネル)またはm5F1によるウエスタンブロット検出(図13右パネル)を行った。
【0238】
図13に示すように、rhCEAに対するm5F1の結合は、この抗原をα−1→(2,3,4)−フコシダーゼで処理すると減少することから、m5F1は、フコース感受性糖エピトープを認識すると考えられる。
【0239】
オリゴ糖競合アッセイ
m5F1が認識する糖エピトープをさらに検査するため、様々なオリゴ糖との競合アッセイを行った。オリゴ糖(シグマのカタログ番号03499のLewisa、シグマのカタログ番号L7033のLewisb−ラクトース、シグマのカタログ番号L7777のLewisx−ラクトース、シグマのカタログ番号L7784のLewisy、シグマのカタログ番号S1782のシアリル−Lewisx、シグマのカタログ番号L6770のラクト−N−テトラオース、シグマのカタログ番号L6645のラクト−N−ジフコヘキサオースII、カルバイオケム(Calbiochem)のカタログ番号434626のLewisaおよびシグマのカタログ番号L3750のβ−ラクトース)を購入し、PBSに溶解した。こうしたオリゴ糖の構造を図14に示す。オリゴ糖(最終濃度1mM)を、2×105個のCOLO205細胞を含む異なるウェルに加え、続いて標記の抗体(m5F1、51−41または138−10;それぞれ0.25ug/ml)を添加した。4℃での1時間のインキュベーション後、その上清を捨て、二次抗体(サザンバイオテク,RPE−ヤギ抗マウスIgG,カタログ番号1032−09またはサザンバイオテク,RPE−ヤギ抗マウスIgM,カタログ番号1022−09)を加えた。さらに、フローサイトメトリー解析で細胞結合シグナルを検出した。
【0240】
図15に示すように、LNDFH II、Le(a)−ラクトースおよびLe(a)はすべて、様々なレベルで、COLO205細胞に対する抗体m5F1、51−41および138−10の結合を阻害した。LNTも、COLO205細胞に対する抗体51−41および138−10の結合を阻害したが、m5F1の結合を大きく阻害することはなかった。このことから、こうした抗体が認識するエピトープは、Lea構造またはそれに類する構造を含み、フコース感受性である可能性があることが示唆される。さらに、m5F1抗体のフコース依存性は、抗体51−41および138−10よりも高い。
【0241】
前述の発明について理解しやすいように説明および実施例によりある程度詳細に記載してきたが、その説明および実施例を、本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0242】
参考文献
【0243】
【化10】
【0244】
【化11】
【0245】
【化12】
【0246】
【化13】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非造血系癌細胞に発現するCD43またはCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合せず、かつ、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下で、該非造血系癌細胞の細胞表面のエピトープに結合後、該非造血系癌細胞のアポトーシスを誘導することができるモノクローナル抗体であって、エピトープは、炭水化物を含み、該エピトープに対する該抗体の結合は、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造またはLNT構造を含む炭水化物により阻害される、モノクローナル抗体。
【請求項2】
前記エピトープは、フコースを含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記エピトープに対する前記抗体の結合は、Lea構造を含む炭水化物により阻害される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
前記エピトープに対する前記抗体の結合は、Lea−ラクトース構造を含む炭水化物により阻害される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記エピトープに対する前記抗体の結合は、LNDFH II構造を含む炭水化物により阻害される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記エピトープに対する前記抗体の結合は、LNT構造を含む炭水化物により阻害される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
前記抗体は、前記非造血系癌細胞に発現する前記CD43またはCEAの細胞外ドメインの立体構造エピトープを認識し、該立体構造エピトープは、トリペプチドN’−Trp−Pro−Ile−C’により形成される構造と等価な物理的特徴および化学的特徴を持つ構造を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
前記抗体は、ポリペプチドのN末端にN’−Trp−Pro−Ile−C’のアミノ酸配列を含む該ポリペプチドに結合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記抗体は、前記非造血系癌細胞の細胞表面に存在する前記エピトープへの結合に際して、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
前記抗体は、前記非造血系癌細胞の細胞表面に存在する前記エピトープへの結合に際して、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
前記抗体は、前記非造血系癌細胞の細胞表面に存在する前記エピトープへの結合に際して、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項12】
前記抗体は、ヒト化抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項13】
前記抗体は、キメラ抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項14】
前記抗体は、ヒト抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項15】
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項16】
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項17】
前記抗体は、配列番号3のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項18】
前記抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項19】
前記抗体は、配列番号5のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
前記抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項21】
前記抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項22】
前記非造血系癌細胞は、結腸直腸癌細胞または胃癌細胞である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項23】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を産生する細胞。
【請求項24】
請求項1に記載のモノクローナル抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む、組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のモノクローナル抗体をコードしている核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項1に記載のモノクローナル抗体をコードしている核酸配列を含む、ベクター。
【請求項27】
請求項26に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項28】
癌を有する個体の非造血系癌を処置するための方法であって、請求項1に記載の1種または複数種のモノクローナル抗体を含む組成物の有効量を該個体に投与することを含み、該1種または複数種の抗体は、該個体において該癌細胞に結合する、方法。
【請求項29】
前記非造血系癌は、結腸直腸癌または胃癌である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記モノクローナル抗体は、細胞毒にコンジュゲートされている、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
個体の非造血系癌を処置するための方法であって、一定量の請求項1に記載の1種または複数種のモノクローナル抗体および一定量の別の抗癌剤を該個体に投与することを含み、該1種または複数種の抗体は、該個体において該癌細胞に結合し、それにより該モノクローナル抗体および該抗癌剤の併用が、該個体において癌の有効な処置を提供する、方法。
【請求項32】
前記非造血系癌は、結腸直腸癌または胃癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗癌剤は、化学療法剤である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を含む医薬組成物と、非造血系癌を処置するために、該医薬組成物の有効量を個体に投与するための説明書とを含む、キット。
【請求項1】
非造血系癌細胞に発現するCD43またはCEAのエピトープには特異的に結合するが、白血球またはJurkat細胞に発現するCD43には特異的に結合せず、かつ、細胞毒コンジュゲーションおよび免疫エフェクター機能の非存在下で、該非造血系癌細胞の細胞表面のエピトープに結合後、該非造血系癌細胞のアポトーシスを誘導することができるモノクローナル抗体であって、エピトープは、炭水化物を含み、該エピトープに対する該抗体の結合は、Lea構造、Lea−ラクトース構造、LNDFH II構造またはLNT構造を含む炭水化物により阻害される、モノクローナル抗体。
【請求項2】
前記エピトープは、フコースを含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記エピトープに対する前記抗体の結合は、Lea構造を含む炭水化物により阻害される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
前記エピトープに対する前記抗体の結合は、Lea−ラクトース構造を含む炭水化物により阻害される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記エピトープに対する前記抗体の結合は、LNDFH II構造を含む炭水化物により阻害される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記エピトープに対する前記抗体の結合は、LNT構造を含む炭水化物により阻害される、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
前記抗体は、前記非造血系癌細胞に発現する前記CD43またはCEAの細胞外ドメインの立体構造エピトープを認識し、該立体構造エピトープは、トリペプチドN’−Trp−Pro−Ile−C’により形成される構造と等価な物理的特徴および化学的特徴を持つ構造を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
前記抗体は、ポリペプチドのN末端にN’−Trp−Pro−Ile−C’のアミノ酸配列を含む該ポリペプチドに結合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記抗体は、前記非造血系癌細胞の細胞表面に存在する前記エピトープへの結合に際して、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
前記抗体は、前記非造血系癌細胞の細胞表面に存在する前記エピトープへの結合に際して、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
前記抗体は、前記非造血系癌細胞の細胞表面に存在する前記エピトープへの結合に際して、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項12】
前記抗体は、ヒト化抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項13】
前記抗体は、キメラ抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項14】
前記抗体は、ヒト抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項15】
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項16】
前記抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項17】
前記抗体は、配列番号3のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項18】
前記抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項19】
前記抗体は、配列番号5のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列由来の3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
前記抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項21】
前記抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項22】
前記非造血系癌細胞は、結腸直腸癌細胞または胃癌細胞である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項23】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を産生する細胞。
【請求項24】
請求項1に記載のモノクローナル抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む、組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のモノクローナル抗体をコードしている核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項1に記載のモノクローナル抗体をコードしている核酸配列を含む、ベクター。
【請求項27】
請求項26に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項28】
癌を有する個体の非造血系癌を処置するための方法であって、請求項1に記載の1種または複数種のモノクローナル抗体を含む組成物の有効量を該個体に投与することを含み、該1種または複数種の抗体は、該個体において該癌細胞に結合する、方法。
【請求項29】
前記非造血系癌は、結腸直腸癌または胃癌である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記モノクローナル抗体は、細胞毒にコンジュゲートされている、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
個体の非造血系癌を処置するための方法であって、一定量の請求項1に記載の1種または複数種のモノクローナル抗体および一定量の別の抗癌剤を該個体に投与することを含み、該1種または複数種の抗体は、該個体において該癌細胞に結合し、それにより該モノクローナル抗体および該抗癌剤の併用が、該個体において癌の有効な処置を提供する、方法。
【請求項32】
前記非造血系癌は、結腸直腸癌または胃癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗癌剤は、化学療法剤である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
請求項1に記載のモノクローナル抗体を含む医薬組成物と、非造血系癌を処置するために、該医薬組成物の有効量を個体に投与するための説明書とを含む、キット。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−539380(P2009−539380A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514412(P2009−514412)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/013587
【国際公開番号】WO2007/146172
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508359619)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/013587
【国際公開番号】WO2007/146172
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(508359619)
【Fターム(参考)】
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