説明

癌診断方法および癌診断キット

【課題】消化器癌の検査、診断あるいは治療に有用なCT抗原を見出し、当該CT抗原を癌マーカーとする新規な癌診断方法および癌診断キットを提供する
【解決手段】精巣特異的タンパク質として知られているGKAP1(G kinase anchoring protein 1)は、胃癌組織で発現し、胃癌患者の血清中に抗体が存在するCT抗原であることを見出した。血清中の抗GKAP1抗体の存在、癌組織におけるGKAP1の発現を正常レベルと比較することにより、胃癌の診断が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な癌診断方法および癌診断キットに関するものであり、より詳細には、G kinase anchoring protein 1(以下「GKAP1」と記す)の発現または抗GKAP1抗体の存在を指標とする癌診断方法および癌診断キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
消化器癌、特に胃癌、大腸癌には、検査、診断あるいは治療に有用な癌抗原が少ない。それゆえ、消化器癌の検査、診断あるいは治療に有用な癌抗原を見出し、これをマーカーとして診断等に適用することは極めて重要である。
【0003】
癌抗原のなかで、癌・精巣抗原(Cancer−Testis抗原、以下「CT抗原」と記す)は、各種の癌組織、および正常組織のうち精巣と一部卵巣・胎盤組織で発現が認められる抗原群である。現在多くのCT抗原が同定、報告されており、その数は確定していないが、約38個のCT抗原が知られている。しかしながら、これらのCT抗原のすべてが癌患者に対して免疫原性が強いわけではなく、癌の診断、検査のマーカー、あるいは癌治療に有望なCT抗原は限られている。
【0004】
現在報告されている代表的なCT抗原として、MAGE(非特許文献1参照)、SSX(非特許文献2参照)、NY−ESO−1(非特許文献3参照)を挙げることができる。
【0005】
MAGEとNY−ESO−1については欧米を中心に臨床応用され、一定の効果が得られた例もある(例えば、NY−ESO−1の臨床応用については非特許文献4参照)。
【0006】
しかしながら、過去に報告されているCT抗原は胃癌や大腸癌などの消化器癌での発現はまれであり、しかも消化器癌患者の抗体産生の頻度もきわめて少ない。例えば、大腸癌患者のNY−ESO−1、MAGE、SSXに対する抗体産生能は何れも0%であることが報告されている(非特許文献5参照)。
【0007】
また、CT抗原のうち、現在癌治療等への応用に最も有望とされているものはNY−ESO−1であるが、
本願発明者らが、様々な上皮系腫瘍の患者についてNY−ESO−1に対する抗体産生能を調べたところ、膀胱癌で7%(9/124、非特許文献5参照)、前立腺癌で4.6%(10/218、非特許文献6参照)、乳癌で1.6%(1/62、非特許文献7参照)、食道癌で3.9%(2/51、非特許文献8参照)、肝臓癌で2.2%(2/92、非特許文献9参照)であり、何れ癌種もそれほど高くないという結果を報告している。
【非特許文献1】van der Bruggen P, Traversari C, Chomez P, Lurquin C, De Plaen E, van den Eynde B, Knuth A, Boon T.A gene encoding an antigen recognized by cytolytic T lymphocytes on a human melanoma. Science 254: 1643-1647, 1991.
【非特許文献2】Gure AO, Tureci O, Sahin U, Tsang S, Scanlan MJ, Jager E, Knuth A, Pfreundschuh M, Old LJ, Chen YT. SSX: a multigene family with several members transcribed in normal testis and human cancer. Int. J. Cancer 72: 965-971, 1997.
【非特許文献3】Chen YT, Scanlan, MJ, Sahin U, Tureci O, Gure AO, Tsang S, Williamson B, Stockert E, Pfreundschuh M, Old LJ. A testicular antigen aberrantly expressed in human cancers detected by autologous antibody screening. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 1914-1918, 1997.
【非特許文献4】Jager E, Gnjatic S, Nagata Y, Stockert E, Jager D, Karbach J, Neumann A, Rieckenberg J, Chen YT, Ritter G, Hoffman E, Arand M, Old LJ, Knuth A. Induction of primary NY-ESO-1 immunity: CD8+ T lymphocyte and antibody responses in peptide-vaccinated patients with NY-ESO-1+ cancers. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 12198-12203.
【非特許文献5】Stockert E, Jager E, Chen YT, Scanlan MJ, Gout I, Karbach J, Arand M, Knuth A, Old LJ. A survey of the humoral immune response of cancer patients to a panel of human tumor antigens. J. Exp. Med. 187: 1349-1354, 1998.
【非特許文献6】Kurashige T, Noguchi Y, Saika T, Ono T, Nagata Y, Jungbluth AA, Ritter G, Chen YT, Stockert E, Tsushima T, Kumon H, Old LJ, Nakayama E. NY-ESO-1 expression and immunogenicity associated with transitional cell carcinoma: correlation with tumor grade. Cancer Res. 61: 4671-4674, 2001.
【非特許文献7】Nakada T, Noguchi Y, Sato S, Ono T, Saika T, Kurashige T, Gnjatic S, Ritter G, Chen YT, Stockert E, Nasu Y, Tsushima T, Kumon H, Old LJ, Nakayama E. NY-ESO-1 mRNA expression and immunogenicity in advanced prostate cancer. Cancer Immunity 3: 10, 2003.
【非特許文献8】Sugita Y, Wada S, Fujita S, Nakata T, Sato S, Noguchi Y, Jungbluth AA, Yamaguchi M, Chen YT, Stockert E, Gnjatic S, Williamson B, Scanlan MJ, Ono T, Sakita I, Yasui M, Miyoshi Y, Tamaki Y, Matsuura N, Noguchi S, Old LJ, Nakayama E, Monden M. NY-ESO-1 expression and immunogenicity in malignant and benign breast tumors.Cancer Res. 64: 2199-2204, 2004.
【非特許文献9】Fujita S, Wada H, Jungbluth AA. Sato S, Nakata T, Noguchi Y, Doki Y, Yasui M, Sugita Y, Yasuda T, Yano M, Ono T, Chen YT, Higashiyama M, Gnjatic S, Old LJ, Nakayama E, Monden M. NY-ESO-1 expression and immunogenicity in esophageal cancer.Clin. Cancer Res. 10: 6551-6558, 2004.
【非特許文献10】Nakamura, S, Nouso K, Noguchi Y, Higashi T, Ono T, Jungbluth AA, Chen YT, Old LJ, Nakayama E, Shiratori Y. Expression and immunogenicity of NY-ESO-1 in hepatocellular carcinoma. J. Gastroenterol. Hepatol. 21: 1281-1285, 2006.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、過去に報告されているCT抗原は、上皮系腫瘍患者の血清中に抗体が存在する頻度が極めて低い。さらに、胃癌や大腸癌などの消化器癌患者については、文献的なデータが全くないのが現状である。
【0009】
大腸癌については、本願発明者らが58例の大腸癌患者血清を用いてNY−ESO−1に対する抗体産生能を調べたが、抗体産生能は0%であった(未発表)。また、本発明者らの胃癌患者血清を用いた予備的解析においても、NY−ESO−1に対する抗体を証明できていない。
【0010】
このように、上皮系腫瘍、特に胃癌や大腸癌などの消化器系癌の診断に有用な癌マーカーを見出すことは容易ではなく、それゆえ消化器系癌の診断に有用な癌マーカーの開発が非常に強く望まれている。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、消化器癌の検査、診断あるいは治療に有用なCT抗原を見出し、当該CT抗原を癌マーカーとする新規な癌診断方法および癌診断キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、正常精巣由来のcDNAライブラリーと胃癌患者血清とを用いたSEREX(serological analysis of cancer antigens by recombinant cDNA expression cloning)法を実施し、陽性クローン中のGKAP1がCT抗原であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る癌診断方法は、被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、被検体由来の試料において、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドのレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程、および上記ポリヌクレオチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含することを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る癌診断方法は、被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドのレベルを測定するポリペプチド測定工程、および上記ポリペプチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含することを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る癌診断方法は、被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体のレベルを測定する抗体測定工程、および上記抗体のレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含することを特徴としている。
【0016】
上記本発明に係る癌診断方法は、上皮系腫瘍または皮膚癌の診断に用いることが好ましく、胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種の診断に用いることがより好ましい。
【0017】
本発明に係るキットは、被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドを備えることを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係るキットは、被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係るキットは、被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドを備えることを特徴としている。
【0020】
上記本発明に係るキットは、上皮系腫瘍または皮膚癌の診断に用いることが好ましく、胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種の診断に用いることがより好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、胃癌、大腸癌などの消化器癌の診断に有効なCT抗原をマーカーに用いた新規な癌診断方法および癌診断キットを提供することができる。当該CT抗原は、消化器癌に限定されず、乳癌、頭頸部癌、肺癌などの他の上皮系腫瘍や、悪性黒色腫などの皮膚癌の診断にも有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.癌診断方法
本発明者らは、正常精巣由来のcDNAライブラリーと胃癌患者血清とを用いてSEREX法を実施し、陽性クローンの1つであるGKAP1がCT抗原であることを見出した。すなわち、胃癌患者の血清中に抗GKAP1抗体が存在することを見出した。さらに、GKAP1の発現解析を行い、GKAP1がヒト正常組織では精巣のみに強く発現していること、一方、癌組織および癌細胞株において発現が認められることを確認した。これらの知見に基づいて、癌マーカーとしてGKAP1を用いる本発明が完成した。
【0023】
ここで、SEREX(serological analysis of cancer antigens by recombinant cDNA expression cloning)法は、癌組織由来のcDNA発現ライブラリーの中から患者血清中の抗体が認識する抗原遺伝子を同定する方法であり(Sahin U, Tureci O, Schmitt H, Cochlovius B, Johannes T, Schmits R, Stenner F, Luo G, Schobert I, Pfreundschuh M. Human neoplasms elicit multiple specific immune responses in the autologous host. Proc Natl Acad Sci U S A. 1995 Dec 5;92(25):11810-3.)、癌抗原のスクリーニング方法として優れていることが知られている。
【0024】
また、GKAP(G kinase anchoring protein)は2000年にマウスで同定された(GKAP42)。マウスのcGMP依存性のシグナル伝達に関するcGMP−dependent protein kinase(cGK)の解析中にクローニングされたものである(Yuasa,K., Omori,K. and Yanaka,N. Binding and phosphorylation of a novel male germ cell-specific cGMP-dependent protein kinase-anchoring protein by cGMP-dependent protein kinase Ialpha. J. Biol. Chem. 275 (7), 4897-4905 (2000))。もう1編GKAP42に関する論文があり、これもマウスでのシグナル伝達に関するものである(Smolenski A, Schultess J, Danielewski O, Garcia Arguinzonis MI, Thalheimer P, Kneitz S, Walter U, Lohmann SM. Quantitative analysis of the cardiac fibroblast transcriptome-implications for NO/cGMP signaling. Genomics. 2004 Apr;83(4):577-87.)。ヒトでのGKAP1に関する論文はなく、その後、Yuasaのグループにより2001年4月3日にヒト遺伝子としてGenBankデータベースに登録された(testis specific gene, AB033131: testis specific gene2, AB033132)。さらに、2001年7月13日に中国よりGKAP42(FKSG21)として登録された(AF319476)。しかし、これらはいずれも直接クローニングされたものではなく、遺伝子断片であった(それぞれ1683bp、1530bp、1542bp)。さらに、ヒトゲノム情報をもとにGKAP1(G kinase anchoring protein 1)として2004年6月29日にGenBankに登録された(BC014476)。GenBankを統括しているNCBIにより修正、確認され、2005年9月24日に全長1796bpの遺伝子として再登録された(NM_025211)。
【0025】
以上のように、ヒトGKAP1は公知であるが、癌での発現に関する報告は過去になく、GKAP1の癌での発現および癌患者血清中の抗GKAP1抗体の存在は、本発明者らが初めて見出したものである。
【0026】
配列番号1には、ヒトGKAP1cDNAの塩基配列が示されており、配列番号2にはヒトGKAP1遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を示している。なお、ヒトGKAP1cDNAの塩基配列は、GenBankに登録されているヒトGKAP1mRNAの塩基配列(1796bp、GenBank ACCESSION NM_025211)のうち、3’末端の20bpのa(アデニン)の連続配列(ポリAテール)を除いた1776bpの塩基配列と一致する。
【0027】
本発明に係る癌診断方法は、被検体由来の試料を用いて、当該試料における上記GKAP1の発現レベルを測定し、このレベルを正常レベルと比較することにより癌を診断する方法である。GKAP1の発現レベルは転写産物(mRNA)量、または翻訳産物(タンパク質)量を測定することにより決定することができる。
【0028】
また、本発明に係る癌診断方法は、被検体由来の試料を用いて、当該試料における抗GKAP1抗体のレベルを測定し、このレベルを正常レベルと比較することにより癌を診断する方法である。抗GKAP1抗体のレベルは被検体由来の血清における抗GKAP1抗体の力価を測定することにより決定することができる。
【0029】
本発明の癌診断方法の適用対象となる被検体は特に限定されるものではなく広く動物一般を含むが、ヒトであることが好ましい。被検体がヒトである場合、癌患者や癌を有する疑いのある患者のみでなく、健常人も被検体となり得る。
【0030】
本発明の癌診断方法に用いられる被検体由来の試料としては、非検体から得られるものであれば特に限定されない。例えば、血液(血清、血漿、血球等)、尿、糞便、喀痰、腹水、腹腔洗浄液、生検組織、外科的に切除された検体などを挙げることができる。
【0031】
正常レベルとは、正常健康個体(健常人)におけるGKAP1の発現レベル、または抗GKAP1抗体のレベルを意味する。正常レベルは、比較する非検体由来の試料と同一の正常細胞、組織、体液を試料として用いて測定されたものであることが好ましい。また、正常レベルは正常健康個体集団の平均レベルを用いることがより好ましい。
【0032】
癌を診断するとは、被検体が癌を有しているか否かの判定、進行度合いの判定、治療効果の判定を行うことが意図される。
【0033】
また、診断の対象となる癌の種類は特に限定されるものではないが、上皮系腫瘍または皮膚癌であることが好ましい。上皮系腫瘍としては、例えば、胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、卵巣上皮癌、前立腺癌などを挙げることができる。また、皮膚癌としては、悪性黒色腫を挙げることができる。
【0034】
(1)GKAP1のmRNAレベルを指標とする癌診断方法
一実施形態において、本発明に係る癌診断方法は、被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、被検体由来の試料において、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドのレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程、および上記ポリヌクレオチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含するものであればよい。なお、ポリヌクレオチドにはDNAおよびRNAの両方が含まれる。
【0035】
本実施形態では、ポリヌクレオチド測定工程において、GKAP1のmRNAレベルを測定すればよい。
【0036】
mRNAレベルを測定する方法としては、特定のmRNAレベルを測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、GKAP1遺伝子のmRNAもしくはそのcDNAの塩基配列またはそれらの相補塩基配列の一部からなるポリヌクレオチドであって、GKAP1遺伝子のいずれかのmRNAまたはcDNAに部位特異的に結合(ハイブリダイズ)するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いた方法が挙げられる。上記プライマーやプローブは、GKAP1遺伝子のmRNAまたはそのcDNAと部位特異的塩基対を形成するものであれば、mRNAを測定・検出するための様々な修飾がされたものであってよい。
【0037】
上記プライマーとして使用するポリヌクレオチドは、配列番号1に示される塩基配列またはその相補配列に基づいて設計されるものであれば限定されない。例えば、配列番号3および4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。これらのポリヌクレオチドは、本発明者らが実際にRT−PCRを実施した際に用いたプライマーであり、GKAP1cDNAを特異的に増幅させるものであることが実証されている。上記プローブとして使用するポリヌクレオチドは、配列番号1に示される塩基配列に基づいて設計されるものであれば限定されない。例えば、配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。当該ポリヌクレオチドは、本発明者らが実際にノザンブロット法を実施した際に用いたプローブであり、GKAP1mRNAを特異的に検出できるものであることが実証されている。なお、目的のmRNA(cDNA)を特異的に増幅させるプライマーとして利用可能なポリヌクレオチドは当該mRNA(cDNA)を特異的に検出するためのプローブとして使用可能であることは当業者にとって周知である。
【0038】
上述のmRNAまたはcDNAに部位特異的に結合するポリヌクレオチドを含むプライマーやプローブを用いてmRNAを測定する公知の方法としては、例えば、RT−PCR法、リアルタイムRT−PCR法、コンペティティブPCR法、in Situ ハイブリダイゼーション法、in Situ PCR法、DNAアレイ法などを挙げることができる。
【0039】
例えば、上記RT−PCR法は、試料から調製したトータルRNAやmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、このcDNAを鋳型に目的領域をPCRで増幅する方法である。さらに、リアルタイムRT−PCR法は、cDNAを鋳型に目的領域をPCR増幅する際に、リアルタイムモニタリング用試薬を用いて増幅産物の生成過程をリアルタイムでモニタリングし、解析する方法である。リアルタイムモニタリング試薬としては、例えば、SYBR(登録商標:Molecular Probes社)Greenや、TaqMan(登録商標:Applied Biosystems社)プローブ等が挙げられる。
【0040】
例えば、上記DNAアレイ法は、支持体上にGKAP1のcDNAまたはその部分配列が固定化し、試料から調製したmRNAまたはcDNAとインキュベートする。この際、上記mRNAまたはcDNAを蛍光標識等することにより、支持体上に固定化したDNAと試料から調製したmRNAまたはcDNAとのハイブリダイゼーションを検出し、試料中のmRNAレベルを測定することができる。
【0041】
上記比較工程においては、ポリヌクレオチド測定工程で測定した試料中のGKAP1mRNAレベルを正常レベルと比較すればよい。正常レベルは、上述のように、比較する非検体由来の試料と同一の正常細胞、組織、体液を試料として用いて、同一の方法で測定されたものであることが好ましい。正常レベルは正常健康個体由来の試料を同時に測定してもよく、背景データとして蓄積されているデータを用いてもよい。被検体由来の試料におけるmRNAレベルが正常レベルより高い場合に、被検体は癌を有していると判定することが可能である。正常レベルより高い場合とは、少なくとも2倍高いレベルであり、好ましくは3倍高いレベルである。
【0042】
(2)GKAP1のタンパク質レベルを指標とする癌診断方法
一実施形態において、本発明に係る癌診断方法は、被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドのレベルを測定するポリペプチド測定工程、および上記ポリペプチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含するものであればよい。
【0043】
本実施形態では、ポリペプチド測定工程において、GKAP1タンパク質のレベルを測定すればよい。
【0044】
タンパク質の発現レベルを測定する方法としては、特定のタンパク質レベルを測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、GKAP1タンパク質に特異的に結合する抗体を使用する方法を挙げることができる。抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。また、完全な抗体分子でもよく特異的に結合し得る抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント等)でもよい。
【0045】
抗体を用いてタンパク質レベルを測定する公知の方法としては、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA法(固相酵素免疫検定法)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、免疫組織化学法、抗体アレイ法などを挙げることができる。これらの中でも、より感度がよく、簡便という点から、ELISA法が好ましい。
【0046】
上記比較工程においては、ポリペプチド測定工程で測定した試料中のGKAP1タンパク質レベルを正常レベルと比較すればよい。正常レベルは、上述のように、比較する非検体由来の試料と同一の正常細胞、組織、体液を試料として用いて、同一の方法で測定されたものであることが好ましい。正常レベルは正常健康個体由来の試料を同時に測定してもよく、背景データとして蓄積されているデータを用いてもよい。被検体由来の試料におけるGKAP1タンパク質レベルが正常レベルより高い場合に、被検体は癌を有していると判定することが可能である。正常レベルより高い場合とは、少なくとも2倍高いレベルであり、好ましくは3倍高いレベルである。
【0047】
(3)抗GKAP1抗体のレベルを指標とする癌診断方法
一実施形態において、本発明に係る癌診断方法は、被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体のレベルを測定する抗体測定工程、および上記抗体のレベルを正常レベルと比較する比較工程を包含するものであればよい。
【0048】
本実施形態では、抗体測定工程において、抗GKAP1抗体の力価レベルを測定すればよい。なお、抗GKAP1抗体の力価レベルの測定に用いる試料は、通常血清である。
【0049】
抗体の力価レベルを測定する方法としては、特定の抗体の力価レベルを測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、抗原であるGKAP1タンパク質を用いたELISA法、タンパク質アレイを挙げることができる。抗GKAP1抗体の力価測定に用いるGKAP1タンパク質は、生体試料から精製して取得することも可能であるが、組換えタンパク質として取得することが好ましい。組換えGKAP1タンパク質は、GKAP1遺伝子を挿入した発現ベクターを宿主に導入して発現させ、精製することにより取得することができる。
【0050】
上記比較工程においては、抗体測定工程で測定した試料中の抗GKAP1抗体レベルを正常レベルと比較すればよい。正常レベルは正常健康個体由来の試料(血清)を同時に測定してもよく、背景データとして蓄積されているデータを用いてもよい。被検体由来の試料における抗GKAP1抗体レベルが正常レベルより高い場合に、被検体は癌を有していると判定することが可能である。正常レベルより高い場合とは、少なくとも2倍高いレベルであり、好ましくは3倍高いレベルである。
【0051】
2.キット
本発明に係るキットは、被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドを備えるものであればよい。配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、GKAP1のmRNAを測定するために使用するプライマー、プローブを挙げることができる。本キットはGKAP1遺伝子の発現レベルの測定に好適に用いることができる。
【0052】
一実施形態として、本キットはGKAP1mRNA測定用のRT−PCRキットまたはGKAP1mRNA測定用のリアルタイムRT−PCRキットを構成することができる。また、ユーザーの選択によりRT−PCRまたはリアルタイムRT−PCRの何れかを選択できるキットとすることもできる。
【0053】
本キットは、GKAP1のmRNAをRT−PCRにより増幅するためのプライマーセットを備えていればよく、当該プライマーセット以外のキットの構成品は特に限定されないが、例えば、組織または細胞からRNAを調製するための試薬、逆転写酵素、逆転写反応に用いる緩衝液、耐熱性DNAポリメラーゼ、PCR用試薬、リアルタイムPCR用試薬、PCR用チューブ、PCR用プレートなどを備えていることが好ましい。
【0054】
また、本発明に係るキットは、被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えるものでもよい。本キットはGKAP1タンパク質のレベル測定に好適に用いることができる。
【0055】
さらに、本発明に係るキットは、被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドを備えるものでもよい。本キットは抗GKAP1抗体のレベル測定に好適に用いることができる。
【0056】
一実施形態として、本キットはELISA用キットを構成することができる。キットには、GKAP1タンパク質に特異的に結合する抗体またはGKAP1タンパク質が予めELISA用プレートに固定化(固相化)された状態でキットに含まれていることが好ましい。さらに、GKAP1タンパク質に特異的に結合する抗体が固相化されたELISA用プレートとGKAP1タンパク質が固相化されたELISA用プレートとの両方を備えるキットとすれば、GKAP1タンパク質のレベルと抗GKAP1抗体のレベルの両方を測定できるキットとすることができる。
【0057】
上記ELISA用プレート以外のキットの構成品は特に限定されないが、例えば、標識された二次抗体、発色用試薬、洗浄用緩衝液などを備えていることが好ましい。
【0058】
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0059】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0060】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、核酸の抽出、切断、連結、大腸菌の形質転換、遺伝子の塩基配列決定、等一般の遺伝子組換えに必要な方法は、特に記載のない限り、各操作に使用する市販の試薬、機器装置等に添付されている説明書や、実験書(例えば「Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 3rd Ed(Sambrookら(2001), Cold Spring Harbor Laboratory Press)」)に基本的に従った。
【0061】
〔実施例1:SEREX法による胃癌患者血清中の抗体が認識する抗原の解析〕
SEREX法は、図1に概略を示したように、癌患者から摘出した癌組織から直接mRNAを抽出し作製したcDNA発現ライブラリーから、癌患者の血清を用いて癌抗原を検索する方法である。本実施例1では、胃癌の診断に有用な癌・精巣抗原を単離すべく、正常精巣由来のcDNAライブラリーと胃癌患者血清とを用いたSEREX法を実施した。
【0062】
(1)胃癌患者血清
原発巣および肝転移巣共に縮小傾向を示した胃腺癌患者から血清を得た。なお、当該患者血清は、予め正常精巣から得たタンパク質画分と強く反応することを確認したものを選択した。血清はTBS(Tris-Buffered Saline)で10倍に希釈した後、E.coli Y1090/Y1089のアフィニティーカラム(BioDynamics Lab Inc., Tokyo)を用いて抗バクテリア抗体の吸収処理を行った。
【0063】
(2)cDNA発現ライブラリーの作製
正常精巣Total RNA(BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA, USA)よりQuick Prep Micro mRNA purification kit(Stratagene, La Jolla, CA, USA)を用いてmRNAを精製した。5μgのmRNAよりcDNAを合成し、γZAP Express vector(Stratagene)に組み換えてファージにパッケージングし、cDNA発現ライブラリーを作製した。
【0064】
(3)正常精巣cDNAライブラリーの免疫スクリーニング
150mmプレートあたり約4,000個のファージを蒔き、6〜8時間培養した。IPTGで誘導した蛋白質を直径135mmニトロセルロースメンブラン(Schleicher & Schuell, Dassel, Germany)に転写した後、抗バクテリア抗体を吸収した胃癌患者血清(TBSで200倍に希釈)とさらに15時間反応させ、パーオキシデース標識抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, Pa., USA)で検出した。この時、抗体産生細胞に由来するIgGクローンを除去するために、メンブランをあらかじめ二次抗体のみで処理した。陽性クローンを単離し、それぞれ直径82mmあるいは47mmのメンブランを用いて2次、3次スクリーニングを行い、単クローンとした。
【0065】
(4)インサートcDNAの塩基配列の決定
陽性クローンをin vivoエキシジョンによりpBK−CMVプラスミドにした後、インサートcDNAの塩基配列を解析し(ABI PRISM R310 Genetic Analyzer; PE Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)、遺伝子データベース(http://www.ncbi.nih.gov/BLAST/Blast.cgi)によるホモロジー検索を行った。
【0066】
(5)結果
約20万クローンをスクリーニングした結果、表1に示した45個の陽性クローンを単離した。
【0067】
【表1】

【0068】
ホモロジー検索の結果、21種類の遺伝子を同定した(OY−ST−1〜21)。これらのうち、データベースによる正常組織発現の検索により、2種類の遺伝子は精巣特異的であった。精巣特異的に発現する遺伝子として、OY−ST−2:G kinase anchoring protein 1(GKAP1)が2クローン、OY−ST−5:synaptonemal complex protein 1, SYCP1(SCP-1)が1クローン単離された。他の19種類の遺伝子については正常組織に広範囲に発現しているか、あるいは発現のデータは得られなかった。SCP−1(OY−ST−5)はSEREX法が開発された初期に発見された代表的ながん・精巣抗原(CT抗原)の一つであるが、その免疫原性は弱いことが知られている(Tureci, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998)。
【0069】
OY−ST−2のインサートcDNAの塩基配列(配列番号1)は全長1776bpであった。この塩基配列は、GenBankデータベースに登録されているGKAP1 mRNA(1796bp、accession No. NM_025211)の第1位〜第1776位と一致し、変異は認められなかった。GKAP1については、癌での発現について報告されていないことから、以後、GKAP1について発現解析を行った。
【0070】
〔実施例2:GKAP1の発現解析〕
(1)RT−PCRによる発現解析
GKAP1特異的プライマーとして、
G-SN(sense: 5’-CATTGTCAAACCCAGTACAG-3’、配列番号3)
G-ASN(antisense: 5’-CTTTCAGAACCACTTCCTGG-3’、配列番号4)
を使用した。プライマーはDNA合成機で合成した。
【0071】
ヒト正常組織由来cDNA(MTC panel, BD Biosciences Clontech)は購入した。
【0072】
癌組織は、4人の胃癌患者から手術あるいは生検によって得られた組織の提供を受け、それぞれ癌部と非癌部を得た。なお、実施例1および2に用いた癌患者または健常人由来の試料は、すべて、あらかじめ担当医により口頭および文書で直接提供者に説明し、インフォームドコンセントを得たものについてのみ提供を受けた。癌患者または健常人由来の試料は匿名化を行い、個人情報は厳重に保護したうえで研究に用いた。本研究の内容およびインフォームドコンセントのための説明文書および同意文書については、岡山大学大学院医歯薬学研究科「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」倫理委員会の承認を受けている。
【0073】
癌細胞株として、5種類の大腸癌細胞株、7種類の肺癌細胞株、5種類の悪性黒色腫細胞株、2種類の卵巣癌細胞株を用いた。これらのうち、肺癌細胞株KM、並びに卵巣癌細胞株O−32およびO−37は、本発明者らが独自に樹立した細胞株である。悪性黒色腫細胞株については米国スローン・ケタリング癌研究所で樹立されたものであり、当該研究所から本発明者らが入手したものである。これら以外の細胞株は、癌研究に一般に用いられているものであり、通常、公知の細胞保存機関等から入手可能である。
【0074】
癌組織および癌細胞株については、それぞれtotal RNAを抽出し(RNeasy; Qiagen, Hilden, Germany)、MMLV逆転写酵素とoligo(DT)15プライマーによりcDNAを合成した(Ready-To-Go You-Prime First-Strand Beads; Amersham Biosciences, Buckinghamshire, UK)。RT−PCRは変性94℃、1分、アニーリング60℃、1分、伸長72℃、1分30秒を32サイクル行った。正常組織についてはさらに3サイクル延長し、35サイクルでもPCRを行った。PCR産物はアガロースゲル電気泳動で解析した。合成したcDNAについて同時にG3PDH遺伝子の増幅を確認した。
【0075】
(2)ノザンブロット法による発現解析
ヒト正常組織におけるGKAP1遺伝子の発現をノザンブロットにより解析した。精巣cDNAを上記GKAP1特異的プライマー(G-SNおよびG-ASN)を用いてPCR法により増幅した。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分離・精製した後、ランダムプライム標識法により32Pで標識し、これをGKAP1特異的プローブとして用いた。なお、当該GKAP1特異的プローブの塩基配列を配列番号5に示した。32P標識GKAP1特異的プローブを用いて65℃、17時間ハイブリダイズし(BD MTN Multiple Tissue Northern Blots; BD Biosciences Clontech)、バイオ・イメージアナライザBAS−2000II(Fuji Film)で解析した。
【0076】
(3)発現解析の結果
図2に、RT−PCRによるヒト正常組織のGKAP1遺伝子発現解析結果を示した。
図2に示したように、調べた16種類の正常組織のうち精巣にのみ発現がみられ、他の15種類の正常組織には発現がみられなかった。
【0077】
図3に、ノザンブロット法によるヒト正常組織のGKAP1遺伝子発現解析結果を示した。図3に示したように、精巣に約1.8kbの強いハイブリダイズシグナルがみられた。
【0078】
図4に、4人の胃癌患者の胃癌手術摘出組織より得た、癌部および非癌部におけるGKAP1遺伝子の発現を、RT−PCRにより解析した結果を示した。図4に示したように、患者4の癌部に弱いGKAP1遺伝子の発現が認められた。
【0079】
図5に、乳癌組織および頭頸部癌組織におけるGKAP1遺伝子の発現を、RT−PCRにより解析した結果を示した。図5に示したように、乳癌組織では4例中1例にGKAP1遺伝子の発現が認められた。頭頸部癌組織では28例中9例にGKAP1遺伝子の発現が認められた。図5にはその代表例として11例の結果を示している。
【0080】
図6に、癌細胞株におけるGKAP1遺伝子の発現を、RT−PCRにより解析した結果を示した。図6に示したように、肺癌細胞株で7例中2例に強い発現が認められ、他の5例の肺癌細胞株にも弱い発現が認められた。悪性黒色腫では5例中3例に弱い発現が認められた。一方、大腸癌細胞株、卵巣癌細胞株には発現は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は癌の診断に用いるものであり、臨床検査薬産業、試薬産業、医療機器産業等において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】SEREX法の概略を示す図である。
【図2】RT−PCRによるヒト正常組織のGKAP1遺伝子発現解析結果を示す画像である。
【図3】ノザンブロット法によるヒト正常組織のGKAP1遺伝子発現解析結果を示す画像である。
【図4】胃癌手術摘出組織より得た癌部および非癌部におけるGKAP1遺伝子の発現を、RT−PCRにより解析した結果を示す画像である。
【図5】乳癌組織および頭頸部癌組織におけるGKAP1遺伝子の発現を、RT−PCRにより解析した結果を示す画像である。
【図6】癌細胞株におけるGKAP1遺伝子の発現を、RT−PCRにより解析した結果を示す画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、
被検体由来の試料において、配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドのレベルを測定するポリヌクレオチド測定工程、および
上記ポリヌクレオチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程
を包含することを特徴とする癌診断方法。
【請求項2】
被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、
被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドのレベルを測定するポリペプチド測定工程、および
上記ポリペプチドのレベルを正常レベルと比較する比較工程
を包含することを特徴とする癌診断方法。
【請求項3】
被検体由来の試料を用いて癌を診断する方法であって、
被検体由来の試料において、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体のレベルを測定する抗体測定工程、および
上記抗体のレベルを正常レベルと比較する比較工程
を包含することを特徴とする癌診断方法。
【請求項4】
上記癌が上皮系腫瘍または皮膚癌であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の癌診断方法。
【請求項5】
上記癌が胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の癌診断方法。
【請求項6】
被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、
配列番号1に示される塩基配列またはその部分配列を含むポリヌクレオチドを備えることを特徴とするキット。
【請求項7】
被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、
配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えることを特徴とするキット。
【請求項8】
被検体由来の試料を用いて癌を診断するためのキットであって、
配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその部分配列からなるポリペプチドを備えることを特徴とするキット。
【請求項9】
上記癌が上皮系腫瘍または皮膚癌であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の癌診断方法。
【請求項10】
上記癌が胃癌、大腸癌、乳癌、頭頸部癌、肺癌および悪性黒色腫から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の癌診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−61536(P2008−61536A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240787(P2006−240787)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】