説明

発光スクリーンおよび発光スクリーンの製造方法

【課題】発光スクリーンの周辺領域での放電を抑制し、メタルバック間の電気的接続を改善する。
【解決手段】発光スクリーン1の製造方法は、画像を表示する領域となるべき画像表示領域10と画像表示領域10の外側の周辺領域11とを有する基板2の上に、格子状に配列され且つ内部に発光部材4を備えた複数の開口を有する抵抗層6を、画像表示領域10から周辺領域11にかけて延在すると共に前記複数の開口が少なくとも画像表示領域10に位置するように設ける第1の工程と、抵抗層6よりも高い抵抗値を有する抵抗調整層7を、抵抗層6の上に、画像表示領域10および周辺領域11の全体を複数の領域に分割するように設ける第2の工程と、抵抗層6の外縁よりも内側の領域に、抵抗調整層7によって分割された領域内で露出した抵抗層6及び発光部材4の部分を覆うように、メタルバック5を成膜する第5の工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に用いられる発光スクリーンおよび当該発光スクリーンの製造方法に係わる。特に、電子放出素子から放出された電子線の照射により発光して画像を表示する発光部材を備えた発光スクリーンおよび当該発光スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子を用いた画像表示装置は、蛍光面に電子放出素子よりも数kV高い電圧を与えることで電子線を加速しているが、蛍光面と電子放出素子の距離が1〜2mm程度であるため、強電界が形成される。この強電界により、しばしば放電の問題が起こる。放電発生時に流れる電流を制限するため、特開平10−326583では、蛍光面に形成するメタルバックを分断し、それぞれのメタルバックを抵抗体で接続する構成が開示されている。また特開2008−181867では、画像表示領域の外側の周辺領域で、互いに分割されたメタルバック同士を特定の形状の抵抗体で互いに電気的に接続することが示されている。具体的には、メタルバックが隣接する部分毎に特定形状の細い抵抗体が設けられ、当該メタルバック同士が電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−326583号公報
【特許文献2】特開2008−181867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示装置を構成する発光スクリーンの画像表示領域にはメタルバックが形成されているが、画像表示領域内にメタルバックを確実に形成するため、一般に、画像表示領域の外側の周辺領域にもメタルバックが形成されてしまう。
【0005】
従来、帯電防止を目的として、画像表示領域の外側の周辺領域のメタルバックは、画像表示領域のメタルバックと抵抗体を介して電気的に接続されている。また、周辺領域で互いに分割されたメタルバック同士も抵抗体を介して電気的に接続されている。しかし、本発明者による検討により、特許文献2に記載の構成では、メタルバックと抵抗体との接続箇所で断線が起こり易く、周辺領域のメタルバックが帯電し易いという問題があることがわかった。更に、特許文献2に記載の構成では、発光スクリーンの周辺領域の各々のメタルバックの電気的容量が大きいため、放電によるダメージが大きくなり易いという問題があることもわかった。本発明は、発光スクリーンの周辺領域での放電を抑制し、メタルバック間の電気的接続を改善することができる発光スクリーンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光スクリーンの製造方法は、画像を表示する領域となるべき画像表示領域と該画像表示領域の外側の周辺領域とを有する基板の上に、格子状に配列され且つ内部に発光部材を備えた複数の開口を有する抵抗層を、前記画像表示領域から前記周辺領域にかけて延在すると共に前記複数の開口が少なくとも前記画像表示領域に位置するように設ける第1の工程と、前記抵抗層よりも高い抵抗値を有する抵抗調整層を、前記抵抗層の上に、前記画像表示領域および前記周辺領域の全体を複数の領域に分割するように設ける第2の工程と、前記抵抗層の外縁よりも内側の領域に、前記抵抗調整層によって分割された前記領域内で露出した前記抵抗層及び前記発光部材の部分を覆うように、メタルバックを成膜する第3の工程と、を備えている。
【0007】
本発明の発光スクリーンは、画像を表示する画像表示領域および該画像表示領域の外側の周辺領域を有する基板と、少なくとも前記画像表示領域において格子状に配置された複数の開口を有し、前記基板の上の前記画像表示領域から前記周辺領域にかけて延在する抵抗層と、前記抵抗層の前記複数の開口に設けられた発光部材と、前記抵抗層よりも高い抵抗値を有し、前記画像表示領域および前記周辺領域の全体を複数の領域に分割するように、前記抵抗層上に設けられた抵抗調整層と、前記抵抗層の外縁よりも内側の領域であって、少なくとも前記抵抗調整層によって分割された領域内の抵抗層上に設けられたメタルバックと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光スクリーンの周辺領域での放電を抑制し、メタルバック間の電気的接続を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の発光スクリーンの製造方法を示す工程図である。
【図2】第1の実施形態の発光スクリーンの一部を拡大した図である。
【図3】本発明の発光スクリーンを備えた画像表示装置の部分破断斜視図である。
【図4】発光スクリーンの基本構成を示す平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の発光スクリーンの一部を拡大した図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の発光スクリーンの一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、CRT(Cathode Ray Tube)やFED(Field Emission Display)などの電子線表示装置やプラズマ表示装置などの画像表示装置に用いられる発光スクリーンに適用できる。特に、FEDでは、発光スクリーンとしてのフェースプレートに、アノード電極としてメタルバックを設けており、更にリアプレートとの距離が短いことから強電界が形成される。よって、FEDに用いられる発光スクリーンは、本発明が適用される好ましい形態である。
【0011】
本発明の実施の形態について、FEDの中でも特に表面伝導型電子放出素子を用いた画像表示装置(SED:Surface-conduction Electron-emitter Display)を例に、図面を用いて具体的に説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図3は、本発明の実施形態に係る画像表示装置41の基本構成を示す部分破断斜視図である。画像表示装置41は、2次元格子状に配列された複数の表面伝導型電子放出素子25を備えたリアプレート21と、リアプレート21と対向して位置する発光スクリーンとしてのフェースプレート1とを有している。フェースプレート1及びリアプレート21は、外枠32とともに真空容器を形成している。真空容器の内部には、リアプレート21とフェースプレート1との間に位置し、リアプレート21とフェースプレート1とを相互に支持するスペーサ31が設けられている。スペーサ31は、帯電防止のため、微量の電流を流すことのできる高抵抗部材からなっている。真空容器に不図示の電源や駆動回路等を加えて画像表示装置41が構成される。
【0013】
リアプレート21は、基板22と、基板22の上に形成された走査配線23及び信号配線24と、表面伝導型電子放出素子25と、を備えている。走査配線23はN本、信号配線24はM本あり、表面伝導型電子放出素子25は行列状にN×M個形成されている。N及びMは正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。例えばFHD(Full High Definition)であれば、N=1080本、M=1920×3=5760本である。
【0014】
図4は、発光スクリーンとしてのフェースプレート1の基本構成を示す平面図である。図4では、画像表示領域10内の構成は省略している。図2は、図4に示す領域12を拡大した平面図である。図2(a)は領域12の平面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’線で切断した断面図であり、図2(c)は図2(a)のB−B’線で切断した断面図である。フェースプレート1の画像表示領域10には蛍光体層や分割されたメタルバック5、分割されたメタルバック5を互いに電気的に接続する抵抗層6などが形成されている。画像表示領域10のメタルバック5にアノード電位を供給する共通電極9が、画像表示領域10の一端に沿って位置する。画像表示領域10のメタルバック5と共通電極9とは互いに接続抵抗8で接続されている。画像表示領域10と共通電極9との間は周辺領域11であり、周辺領域11にもメタルバック5や抵抗層6が形成されている。画像表示領域10の外側の周辺領域11は、画像表示領域10の外周を取り囲むように形成され、その境界は表示に寄与する画素外周にある。
【0015】
以下、図2を参照して、発光スクリーンとしてのフェースプレート1の構成を詳細に説明する。フェースプレート1は基板2を備えている。基板2は、特に真空維持や強度の点でガラス基板が好ましく、高歪み防止ガラスを好適に用いることができる。
【0016】
基板2上にはブラックマトリックス3が設けられている。ブラックマトリックス3の抵抗値は後述する抵抗層6の抵抗値よりも高く、約100倍以上であることが好ましい。ブラックマトリックス3は、画像表示領域10に複数の開口を有しており、それぞれの開口には、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体からなる発光部材4が設けられている。
【0017】
基板2の上、本実施形態ではブラックマトリックス3上に接して、抵抗層6が設けられている。抵抗層6は、基板2側の端面の面積よりも基板2から突出した方の端面の面積が大きい段差形状(いわゆる逆テーパ形状)となっており、この段差形状により、後に成膜されるメタルバック5は複数の部分に分断される。なお、抵抗層6の厚さは、段差形状によってメタルバック5を確実に分断できるように、10μm以上であることが好ましい。抵抗層6は、画像表示領域10において、発光部材4間をX方向に延びた複数の横線部6aと、発光部材4間をY方向に延びた複数の縦線部6bと、を有し、網目状に形成されている(図2(b)、図2(c)参照)。発光部材4はX方向にR,G,Bと順番に並んでいるため、縦線部6bは横線部6aよりも幅が狭くなっており、例えば、縦線部6bの幅は30〜100μm、横線部6aの幅は150〜390μmである。更に抵抗層6は、画像表示領域10の外側の周辺領域11にも形成されている。本実施形態では、周辺領域11の抵抗層6は、一様に形成されている。抵抗層6は、画像表示領域10および周辺領域11に、抵抗層6よりも後に形成されるメタルバック5の領域よりも外側まで延在している。なお、メタルバック5の形成工程において、膜の回り込みやマスクの位置精度などを考慮して、抵抗層6はメタルバック5領域よりも1mm以上大きい領域に形成することが好ましい。また、抵抗層6は一体に形成されることが好ましく、その形状は、X方向とY方向にそれぞれ分離することなく延在したパターンとなる。また、抵抗層6の前駆体パターンは、金属微粒子をガラス母材に分散したフォトペーストを使用したフォトリソグラフィ法などにより形成できる。
【0018】
更に抵抗層6の上には、抵抗調整層7が設けられている。抵抗調整層7は、画像表示領域10において、抵抗層6の縦線部6b上に、縦線部6bに沿って設けられている。抵抗層6の横線部6aと縦線部6bとが交差する位置では、抵抗調整層7の幅が広くなっている。本実施形態では、画像表示領域10と周辺領域11との境界にも抵抗調整層7が設けられており、その外側の周辺領域には抵抗調整層7は設けられていない。抵抗層6と抵抗調整層7は互いに積層した構成となるが、抵抗層6が互いに分割されたメタルバック5間の電流経路として機能する。この機能を発揮させるため、抵抗調整層7の抵抗値は、抵抗層6の抵抗値よりも高く、100倍以上であることが好ましい。また、抵抗調整層7は、抵抗層6と接する面の面積よりも基板2から突出した方向の先端面の面積の方が大きい段差形状(逆テーパ形状)となっており、抵抗層6と同様にこの段差形状により、後に成膜されるメタルバック5は分断する。なお抵抗調整層7の厚さは、段差形状により確実にメタルバック5を分断するために、10μm以上あることが好ましい。また、抵抗調整層7の形成においては、まず、ガラスを母材としたフォトペーストのフォトリソグラフィ法などにより抵抗調整層7の前駆体パターンを形成する方法を用いることができる。この場合、ガラス母材を焼結させるために必要な温度で焼成することで抵抗調整層7が形成される。なお、この時、前述の抵抗層6の前駆体パターンを同時に焼成することで抵抗層6を形成することが好ましい。
【0019】
基板2の上には、メタルバック5が設けられている。画像表示領域10において、メタルバック5は抵抗調整層7によって複数の領域に分断されており、分断された各々のメタルバック5は少なくとも1つの発光部材4を覆っている。本実施形態では、メタルバック5は、Y方向に沿って形成されており、X方向に分断されて配されている。また、各々のメタルバック5は、抵抗調整層7で分断された領域の下層として設けられた抵抗層6により、Y方向に互いに電気的に接続されている。周辺領域11において、メタルバック5は抵抗層上に一様に設けられており、メタルバック5の外縁は抵抗層6の外縁よりも内側に位置している。抵抗層6と抵抗調整層7で形成される抵抗の値は、放電電流抑制の効果から、1×10-1Ω/□以上が好ましい。一方、抵抗値が高すぎると、表示画像の輝度低下が顕著になるため、抵抗値は1×108Ω/□以下が好ましい。フェースプレート1の周辺領域11に成膜されたメタルバック5の下に抵抗層6を設けることにより、メタルバック5と抵抗層6の、図中のX方向およびY方向の電気的な接続箇所を無くした構成となる。メタルバック5はアルミニウムなどの金属を蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法により形成できる。なお図2(a)において、パターン形状を表すため、抵抗調整層7上のメタルバックを不図示としている(後述する図5(a)および図6(a)でも同様)。
【0020】
図3を参照すると、メタルバック5は、真空容器の高圧端子と、共通電極9および接続抵抗8を介して電気的に接続され、不図示の高圧電源により1kV〜15kV程度の高圧が印加される。走査配線23及び信号配線24は、それぞれ真空容器の端子Dyn(nは1〜N)及びDxm(mは1〜M)と電気的に接続され、不図示の駆動回路より、それぞれ走査信号及び画像信号が与えられる。電子放出素子25は信号に応じた電子を放出し、電子はメタルバック5の電位に引き寄せられ、メタルバック5を突き抜け、発光部材4の蛍光体を発光させる。輝度は、電圧や信号によって調整することができる。
【0021】
本発明によれば、フェースプレート1の周辺領域11のメタルバック5の下層に、該メタルバック5よりも大きい領域にまで抵抗層6が形成されている。特に、抵抗層6は、基板2の上の画像表示領域10から周辺領域11にかけて延在して設けられている。これにより、メタルバック5と抵抗層6との断線の虞が低減される。
【0022】
画像を表示するとき、電子放出素子25から放出された電子はフェースプレート1の周辺領域11に直接入射することはないが、発光部材4に入射した電子からの散乱電子が周辺領域11に入射することがある。周辺領域11のメタルバック5が画像表示領域10と電気的に接続していないと、散乱電子により周辺領域11のメタルバック5が帯電し、異常放電につながる。本発明では、フェースプレート1の周辺領域11の領域において、メタルバック5の下層に画像表示領域10から延在した抵抗層6を形成することで、メタルバック5と抵抗層6との電気的接続、メタルバック5間の電気的接続を改善することが可能となる。本発明により、画像表示領域10と周辺領域11をより確実に電気的に接続する構成が可能となり、周辺領域11での帯電を防ぎ、異常放電を抑えることが可能となる。
【0023】
次に、図1を参照して、発光スクリーンとしてのフェースプレート1の製造方法について説明する。図1は発光スクリーンの製造工程図であり、図4の領域12、つまり図2に示す領域に対応する部分を示している。
【0024】
第1の工程として、画像を表示する領域となるべき画像表示領域10と周辺領域11とを有する基板2の上に、格子状に配列され且つ内部に発光部材4を備えた複数の開口を有する抵抗層6を設ける。抵抗層6は、画像表示領域10から周辺領域11にかけて延在すると共に複数の開口が少なくとも画像表示領域10に位置するように設けられる。具体例として、まず基板2を準備し(図1(a)参照)、この後、必要に応じて、基板2には所定のパターンのブラックマトリックス3を塗布する(図1(b)参照)。次に、少なくとも画像表示領域10において格子状に配置された複数の開口を有する抵抗層6を、基板2の上の画像表示領域10から周辺領域11にかけて延在するように設ける(図1(c)参照)。本実施形態では、周辺領域11の抵抗層6は一様なパターンとなっている。次に、抵抗層6の複数の開口に発光部材4を設ける(図1(d)参照)。
【0025】
次に、第2の工程として、抵抗層6よりも高い抵抗値を有する抵抗調整層7を、抵抗層の上に、画像表示領域10および周辺領域11の全体を複数の領域に分割するように設ける(図1(e)参照)。
【0026】
次に、第3の工程として、抵抗層6の外縁よりも内側の領域に、抵抗調整層7によって分割された領域内で露出した抵抗層6及び発光部材4の部分を覆うように、メタルバック5を成膜する(図1(f)参照)。例えば蒸着やスパッタリングなどを利用すると、メタルバック5は、基板2の上の、抵抗層6の外縁よりも内側の領域全体に成膜される。このとき、メタルバック5は、前述したように、抵抗調整層7の段差形状によって複数の部分に分割される。画像表示領域10では、露出している発光部材4上にもメタルバック5が成膜される。このようにして、上述した発光スクリーンが製造される。
【0027】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態における発光スクリーンの、図4に示す領域12に相当する部分を拡大した平面図である。図5(a)は発光スクリーンの一部を拡大した平面図であり、図5(b)は図5(a)のA−A’線で切断した断面図であり、図5(c)は図5(a)のB−B’線で切断した断面図である。
【0028】
本実施形態では、発光スクリーンとしてのフェースプレート1は、周辺領域11の構成を除いて第1の実施形態と同じである。第1の実施形態において、周辺領域11の抵抗層6は一様な塗りつぶし(ベタパターン)としているが、本実施形態では、周辺領域11の抵抗層6は、格子状に配置した複数の開口を有している(図5(a)参照)。メタルバック5は、抵抗層6上および複数の開口内に設けられており、抵抗層6の段差形状により、周辺領域11のメタルバック5が複数の部分に分割された構成となる。そのため、周辺領域11において、放電に寄与し得る、各々のメタルバック5の容量を低減させることが出来、その結果、放電電流を抑制することが出来る。この構成では、抵抗層6の開口内に設けられたメタルバック5と抵抗層6とは断線してしまうが、それぞれのメタルバック5の分割サイズを十分小さくすることで、帯電の影響を極力抑えることが出来る。分割された各々のメタルバック5の大きさは1画素〜4画素であることが好ましいが、放電電流の抑制の観点から1〜2画素がより好ましい。なお、周辺領域11の抵抗層6上のメタルバック5は、画像表示領域10のメタルバック5と電気的に接続されていることは、第1の実施形態と同様である。
【0029】
第2の実施形態の発光スクリーンの製造方法は、第1の実施形態で述べた製造方法と概ね同様である。ただし、前述の第1の工程において、周辺領域11にも複数の開口を有するように抵抗層6を設ける。これにより、前述の第3の工程として、メタルバック5を成膜したときに、メタルバック5は、周辺領域11の抵抗層6の開口内や抵抗層6上にも成膜される。
【0030】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態における発光スクリーンの、図4に示す領域12に相当する部分を拡大した平面図である。図6(a)は発光スクリーンの当該部分の平面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A’線で切断した断面図であり、図6(c)は図6(a)のB−B’線で切断した断面図である。
【0031】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、画像表示領域10の外側の周辺領域11にも抵抗調整層7を設けた構成である。
【0032】
抵抗調整層7は、周辺領域11を複数の領域に分割するように設けられている。メタルバック5は、抵抗調整層7で分割された領域内の抵抗層6上に設けられている。周辺領域11のメタルバック5が複数の部分に分割される構成は、第2の実施形態で形成した分断領域と同様であってよい(図6(a)参照)。本実施形態では、第1の実施形態に比べ、メタルバック5同士の電気的接続を抵抗層6が行い、メタルバック5間の分断を抵抗調整層7が行う構成である。抵抗調整層7で分断されたメタルバック5は、下層の抵抗層6で電気的に接続されており、その結果、第2の実施形態と比べ、分割したメタルバック5間の電気的接続性を改善することが出来、より放電電流を抑制することが出来る。
【0033】
第3の実施形態の発光スクリーンの製造方法は、第1の実施形態で説明した製造方法と概ね同様である。ただし、前述の第2の工程において、周辺領域11を複数の領域に分割するように抵抗調整層7を設ける。これにより、前述の第3の工程としてメタルバック5を成膜したときに、メタルバック5は、抵抗調整層7で分割された領域内の抵抗層6上にも設けられる。
【実施例1】
【0034】
以下、図1および図2に基づいて実施例の説明を行う。
【0035】
本実施例では、基板2としては、旭硝子社製PD−200を用いた。水により洗浄した基板2の上に黒色のフォトペースト(ノリタケ製:NP−7811M1)をスクリーン印刷により全面に印刷した。その後、所定のパターンを有するフォトマスクを用いて露光・現像を行い、ブラックマトリックス3の前駆体を形成した。所定のパターンとは、発光部材4を配置する位置に対応したマトリクス状の開口部を有するパターンであり、開口部のピッチは、図中のX方向に210μm、図中のY方向に630μmとし、開口部のサイズはX方向に90μm、Y方向に220μmとした。この結果、X方向で隣り合う2つの開口部の間隔は120μmであった。
【0036】
更に基板2上には、抵抗材を分散したフォトペースト(ノリタケ)をスクリーン印刷により全面に印刷した。その後、所定のパターンを有するフォトマスクを用いて露光・現像を行い、最後に500℃で焼成を行ってフォトペースト中の有機成分を焼失させ、厚さ12μmの抵抗層6を形成した。また、このとき同時に焼成されたブラックマトリックス3の前駆体は厚さ3μmのブラックマトリックス3となる。所定のパターンは、まず画像表示領域10において、Y方向に延びる幅50μmのストレート形状のパターンであり、ブラックマトリックス3の、X方向に並んだ開口間に位置してY方向に延びるパターンである。またX方向に延びる幅210μmのストレート形状のパターンであり、ブラックマトリックス3のY方向に並んだ開口間に位置してX方向に延びるパターンである。次に発光スクリーン1の周辺領域11において、抵抗層6は、接続抵抗を形成する領域を除いて基板2の外周方向に延びており、そのパターンは周辺領域11を覆う形状をしている。周辺領域11の抵抗層6を形成する範囲は、後の工程で形成するメタルバック5とゲッタを成膜する領域よりも2mm広い範囲である。更に、抵抗層6と同時に接続抵抗8を形成した。接続抵抗8は、共通電極9から画像表示領域10に延びる幅50μmのストレート形状をしたパターンである。
【0037】
次に基板2上に、抵抗材を分散したフォトペースト(ノリタケ)をスクリーン印刷により全面に印刷した。その後、所定のパターンを有するフォトマスクを用いて露光・現像を行い、最後に500℃で焼成を行ってフォトペースト中の有機成分を焼失させ厚さ15μmの抵抗調整層7を形成した。抵抗調整層7は、抵抗層6上にあり、Y方向に延びた互いに略平行なパターンである。
【0038】
次に発光部材4として、CRTの分野で用いられているP22蛍光体を分散したペーストを用い、ブラックマトリックス3の開口に合わせてスクリーン印刷法により蛍光体を落し込み印刷した。本実施例ではカラーディスプレイとなるようにRGBの3色の蛍光体を塗り分けた。各蛍光体の膜厚は12μmとした。3色の蛍光体を印刷後120℃で乾燥した。乾燥は色毎に行っても3色を一括して行っても構わない。更に、後に結着材として作用する珪酸アルカリ、いわゆる水ガラスを含む水溶液をスプレー塗布した。
【0039】
次にアクリルエマルジョンを、ブラックマトリックス3の開口に合わせて版開口を形成したスクリーン版により落し込み印刷した。アクリルエマルジョンの厚さは蛍光体粉体の隙間をアクリル樹脂で埋める厚さである。
【0040】
次にメタルバック5としてアルミニウム膜を蒸着した。メタルバック5の膜厚が120nmとなるようにアルミニウムを成膜した。この後、450℃で加熱することにより前記アクリル樹脂を分解除去した。なお、この後のパネル化工程の真空状態下でメタルバック5上にゲッタを成膜する。ゲッタの厚さは概ね50nm程度である。
【0041】
なお、フェースプレート1にはスルーホールを通してフェースプレート1を貫通する高電圧導入端子が設けられ、高電圧導入端子は共通電極9と周辺領域11の端部で接続されている(不図示)。
【0042】
このようにして製造したフェースプレート1を用いて、リアプレート21、外枠32、導電性のスペーサ31を組み合わせて、図1に示す画像表示装置41を作製し、放電によるダメージの評価を行った。メタルバック5に印加する電圧を最大13kVまで上昇させても、周辺領域11の不要な帯電による異常放電は起こらなかった。また、強制的に放電を起こしても、周辺領域11において抵抗層6とメタルバック5の分断が起きることなく、放電電流を0.5A程度まで抑制できた。
【実施例2】
【0043】
本実施例の発光スクリーンは、周辺領域11の抵抗層6が複数の開口を有するパターンに変更した以外は、実施例1と同様に製造することができる(図5参照)。実施例1に比べ本実施例では、周辺領域11のメタルバック5を抵抗層6により細分化することにより、放電が起こったときの放電電流をより抑制することが可能となった。
【実施例3】
【0044】
本実施例の発光スクリーンは、実施例1の構成に対して周辺領域11にも抵抗調整層7を設けること以外は、実施例1と同様に製造することができる(図6参照)。本実施例では、実施例1,実施例2に比べ、抵抗層6の上層に抵抗調整層7を設けたことで、画像表示領域10と周辺領域11との間のメタルバック5の電気的接続と、周辺領域11の複数分割されたメタルバック5同士の分断との、両方に対応した構成となる。
【符号の説明】
【0045】
1 発光スクリーン(フェースプレート)
2 基板
4 発光部材
5 メタルバック
6 抵抗層
7 抵抗調整層
10 画像表示領域
11 周辺領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する領域となるべき画像表示領域と該画像表示領域の外側の周辺領域とを有する基板の上に、格子状に配列され且つ内部に発光部材を備えた複数の開口を有する抵抗層を、前記画像表示領域から前記周辺領域にかけて延在すると共に前記複数の開口が少なくとも前記画像表示領域に位置するように、設ける第1の工程と、
前記抵抗層よりも高い抵抗値を有する抵抗調整層を、前記抵抗層の上に、前記画像表示領域および前記周辺領域の全体を複数の領域に分割するように設ける第2の工程と、
前記抵抗層の外縁よりも内側の領域に、前記抵抗調整層によって分割された前記領域内で露出した前記抵抗層及び前記発光部材の部分を覆うように、メタルバックを成膜する第3の工程と、を備えている、発光スクリーンの製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程において、前記基板の上の、前記抵抗層の外縁よりも内側の領域全体に、前記メタルバックを成膜する、請求項1に記載の発光スクリーンの製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、前記周辺領域にも複数の開口を有するように前記抵抗層を設ける、請求項2に記載の発光スクリーンの製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程において、前記周辺領域を複数の領域に分割するように前記抵抗調整層を設ける、請求項2に記載の発光スクリーンの製造方法。
【請求項5】
画像を表示する画像表示領域および該画像表示領域の外側の周辺領域を有する基板と、
少なくとも前記画像表示領域において格子状に配置された複数の開口を有し、前記基板の上の前記画像表示領域から前記周辺領域にかけて延在する抵抗層と、
前記抵抗層の前記複数の開口に設けられた発光部材と、
前記抵抗層よりも高い抵抗値を有し、前記画像表示領域および前記周辺領域の全体を複数の領域に分割するように、前記抵抗層上に設けられた抵抗調整層と、
前記抵抗層の外縁よりも内側の領域であって、少なくとも前記抵抗調整層によって分割された領域内の抵抗層上に設けられたメタルバックと、を備えている、発光スクリーン。
【請求項6】
前記抵抗層は前記周辺領域にも複数の開口を有し、該周辺領域の該複数の開口に前記メタルバックが設けられている、請求項5に記載の発光スクリーン。
【請求項7】
前記抵抗調整層は、前記周辺領域を複数の領域に分割するように設けられており、
前記メタルバックは、前記抵抗調整層で分割された領域内の前記抵抗層上に設けられている、請求項5に記載の発光スクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−18884(P2012−18884A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156929(P2010−156929)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】