説明

発光スクリーン及び画像表示装置の製造方法

【課題】万が一の放電発生時の放電電流を抑制し、かつリブの剥がれを防止する。
【解決手段】リブ形成ステップにおいて、一定幅Lの前駆物質6aを用いたと仮定した場合において、一定幅Lの前駆物質6aが焼成後に給電配線7との交差部13で幅狭となっている場合は、前駆物質6bは、一定幅Lを有する基準幅部6bと、交差部13に位置し一定幅Lより幅広の幅広部6dと、を有するように形成され、一定幅Lの前駆物質6aが焼成後に給電配線7との交差部13で幅広となっている場合は、前駆物質6bは、基準幅部6bと、交差部13に位置し一定幅Lより幅狭の幅狭部6cと、を有するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光スクリーン及び画像表示装置の製造方法に関する。本発明は特に、スペーサの固定のために設けられるリブの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子を備えた画像表示装置では、電子放出素子を真空中で駆動させるために真空容器が必要となる。真空容器は大気圧による圧縮荷重を受けるため、大気圧の支持構造としてスペーサが用いられている。特許文献1,2には、スペーサの固定方法としてリブ構造(隔壁)を用いた構成が提案されている。この構成はスペーサの固定に大型の装置を必要とせず、簡易に組立ができる。スペーサの取付け精度も大型装置を用いる場合と比べて優れている。
【0003】
これらの文献に記載されている画像表示装置では、電子を発光素子に衝突させるための電位を電子放出素子に与えるアノード電極が、発光スクリーンの全面に連続的に配置されている。このような構成では、万が一、発光スクリーンに放電が生じたときに、放電電流がアノード電極の全域から放電部に向けて流れることになる。過大な放電電流は電子放出素子などの重要な部品の損傷につながるおそれがある。そこで、特許文献3にはアノード電極を分割し、アノード電極同士を抵抗の高い給電配線で接続する技術が開示されている。各アノード電極へは給電配線を介して電位が供給され、万が一放電が生じた場合には、給電配線の高い抵抗によって放電電流を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-53001号公報
【特許文献2】米国特許第6049165号明細書
【特許文献3】特開2006−185614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載されたようなリブ構造を特許文献3に記載されたアノード電極の分割構成に適用すれば、スペーサの取付け精度の確保と放電電流の抑制を同時に実現する画像表示装置が実現できるはずである。しかし、このような構成では、スペーサを取り付けるためのリブと高抵抗配線とが交差する配置とならざるを得ない。リブ及び高抵抗配線は材料物質をスクリーン印刷等によって線状に形成し、その後焼成して作ることが一般的である。リブは焼成によって収縮し、幅が縮小する。その際、リブは高抵抗配線との交差部で、高抵抗配線からの拘束を受け、交差部以外の部位とは異なる収縮率で縮小する。このため、リブは高抵抗配線との交差部では、他の部位と比べ幅広または幅狭となるように収縮する。このような幅の変動部では、リブに剥がれが生じることがある。リブの剥がれはスペーサの取付け精度を低下させるだけでなく、最悪の場合、スペーサの固定すら不可能とするおそれがある。
【0006】
本発明は、万が一の放電発生時の放電電流が抑制され、かつリブの剥がれが生じにくい発光スクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発光スクリーンの製造方法は、互いに平行に延びる第1の線状部と、互いに平行に延び第1の線状部と直交する第2の線状部と、からなるブラックマトリックスを、基板上に形成するステップと、ブラックマトリックスの第1の線状部上に給電配線を形成するステップと、ブラックマトリックスの第2の線状部上に、熱収縮性の材料からなる前駆物質を、給電配線の上を跨いで給電配線と交差するように線状に配置し、前駆物質を焼成してリブを形成するリブ形成ステップと、第1の線状部と第2の線状部とで形成されるブラックマトリックスの各開口部に発光部材を形成し、発光部材の上に、給電配線と電気的に接続されるようにメタルバックを形成するステップと、を有している。リブ形成ステップにおいて、一定幅の前駆物質を用いたと仮定した場合において、焼成後の一定幅の前駆物質が給電配線との交差部で幅狭となっている場合は、前駆物質は、一定幅を有する基準幅部と、交差部に位置し一定幅より幅広の幅広部と、を有するように形成され、給電配線との交差部で幅広となっている場合は、前駆物質は、基準幅部と、交差部に位置し一定幅より幅狭の幅狭部と、を有するように形成される。
【0008】
熱収縮性の材料からなる前駆物質は焼成により熱収縮するが、密着性などの様々な原因によって、下地材から拘束力を受ける。リブの剥がれは特にリブの幅が急激に変化している部位で発生する。幅狭となっている場合とは、前駆物質が給電配線以外の部位に拘束されるため、前駆物質の他の部位よりも収縮して幅狭になっている場合である。このような場合は、あらかじめ交差部に幅広部を形成しておくことで、他の部位よりも収縮しても、焼成後の他の部位との幅の差は小さく抑えられる。幅広となっている場合とは、前駆物質が給電配線に拘束されて前駆物質の他の部位よりも収縮量が小さく幅広となっている場合である。このような場合は、あらかじめ交差部に幅狭部を形成しておくことで、他の部位と比べて収縮量が不足しても、焼成後の他の部位との幅の差は小さく抑えられる。これによって、リブ幅の急激な変化が防止され、リブの剥がれを抑制することができる。しかも、ブラックマトリックスの第1の線状部上に給電配線を形成し、その後にメタルバックを、給電配線と電気的に接続されるように形成するので、放電時の放電電流の抑制も可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、万が一の放電発生時の放電電流が抑制され、かつリブの剥がれが生じにくい発光スクリーンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像表示装置の基本構成を示す部分破断斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るフェースプレートの部分詳細図である。
【図3】リブに剥がれが発生するメカニズムとそれを防止する方法を示す図である。
【図4】リブに剥がれが発生するメカニズムとそれを防止する方法を示す図である。
【図5】フェースプレートの変形例を示す部分詳細図である。
【図6】第2の実施形態に係るフェースプレートの部分詳細図である。
【図7】第3の実施形態に係るフェースプレートの部分詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の画像表示装置は、CRT(Cathode Ray Tube)、FED(Field Emission Display)などの電子線表示装置や、プラズマ表示装置に好適に適用できる。特にFEDは、真空容器を構成するフェースプレートとリアプレートとの離隔距離がスペーサで規定されているため、本発明が適用される好ましい形態である。
【0012】
本発明の実施形態について、FEDのうち、表面伝導型電子放出素子を用いた画像表示装置(SED(Surface-Conduction Electron-Emitter Display))を例に、図面を用いて具体的に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像表示装置の基本構成を示す部分破断斜視図である。画像表示装置31は、リアプレート21と、リアプレート21と対向して位置するフェースプレート1と、を有している。フェースプレート1とリアプレート21は、外枠12とともに真空容器10を形成している。真空容器10の内部には、リアプレート21とフェースプレート1との間に位置し、リアプレート21とフェースプレート1とを相互に支持するスペーサ11が設けられている。スペーサ11は高抵抗部材からなっており、帯電防止のために微量の電流を流すことができる。真空容器10に不図示の電源や駆動回路等を加えて画像表示装置31が構成される。
【0014】
リアプレート21は、ガラス基板22と、ガラス基板22の上に形成された走査配線23及び信号配線24と、2次元状に配列された複数の表面伝導型電子放出素子25と、を備えている。走査配線23はN本、信号配線24はM本あり、表面伝導型電子放出素子25は行列状にN×M個形成されている。N及びMは正の整数であり、目的とする表示画素数に応じて適宜設定される。例えばFHD(Full High Definition)であれば、N=1080本、M=1920×3=5760本である。
【0015】
図2は、フェースプレートの部分詳細図である。同図(a)はフェースプレートの平面図、同図(b)は同図(a)のA−A線で切断した断面図である。同図(c)は、同図(a)のB部拡大図(リブは焼成前の状態を示す。)である。以下、図1,2を参照してフェースプレート1の構成を説明する。
【0016】
フェースプレート1は基板2を備えている。基板2は、特に真空維持や強度の点でガラス基板が好ましく、高歪み防止ガラスが好適に用いられる。基板2上には黒色部材であるブラックマトリックス3が設けられている。ブラックマトリックス3は、互いに平行に延びる第1の線状部3aと、互いに平行に延び第1の線状部3aと直交する第2の線状部3bと、からなっている。ブラックマトリックス3は開口部9を有しており、開口部9には例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体からなる発光部材4が塗り分けられている。
【0017】
基板2上には、各々が少なくとも1つの発光部材4を覆い、互いに間隙をおいて行列状に配列されたメタルバック5が設けられている。基板2上にはまた、メタルバック5にアノード電位を供給するとともに、互いに隣接するメタルバック5を電気的に接続する給電配線7が形成されている。給電配線7は放電の際の電流を抑えるために高抵抗体からなっている。給電配線7の抵抗値は、放電電流抑制の効果から1×10-1Ω/□以上が好ましい。一方、抵抗値が高すぎると表示画像の輝度低下が顕著になるため、上限は1×108Ω/□以下が好ましい。給電配線7は開口部9間をY方向に延びており、メタルバック5の各列毎に設けられている。給電配線7は抵抗と容量の関係からできるだけ幅が広いことが好ましく、最大で開口部9間の距離に等しい幅とすることができる。給電配線7は、メタルバック5との接続のために引出し配線8を有している。引出し配線8は給電配線7から分岐して設けられ、給電配線7の延びる方向に関し片側だけに形成されている。引出し配線8の上にメタルバック5を形成することで給電配線7とメタルバック5とが接続される。メタルバック5が2次元状に分割され、個々のメタルバック5が給電配線7によって接続されているため、耐放電機能の優れた画像表示装置31を提供することが可能となる。
【0018】
画像表示装置31の作動時には、電子の一部が拡散反射し、さらにその一部が再度蛍光体を発光させることによって、いわゆるハレーションが引き起こされる場合がある。そのため、ハレーション抑制のため、基板2には一方向に延びるリブ6が設けられている。リブ6は発光部材4を挟むようにX方向に延びており、リアプレート21に向かって(Z方向に)突出した形状をしている。リブ6によって電子の拡散反射や蛍光体への再突入が抑えられ、ハレーションが効果的に抑制される。ハレーション防止の観点からは、リブ6の位置はできるだけ開口部9に近いことが好ましい。焼成後のリブ6の高さは、ハレーションを効果的に抑制するため、120μm以上が好ましい。リブ6の高さの上限は、リブ6の強度を確保し、かつ電子線の進入を妨害しないために、300μm以下に抑えることが好ましい。
【0019】
Y方向に隣接する開口部9の間にはリブ6が2本ずつ位置しており、そのいくつかはX方向に延びるスペーサ11の支持にも用いられている。スペーサ11は発光部材4及びメタルバック5の形成されていない位置で、第2の線状部3b上の互いに隣接するリブ6の間に挟まれて固定されている。つまり、隣り合うリブ6の間の隙間が、スペーサ11を支持するための台座として利用されている。このような構成により、簡易なスペーサ支持構造を構成することができる。スペーサ11はリブ6によって固定されるとともに、リブの下方でY方向に延びる給電配線7と電気的に接続されている。このため、スペーサ11を好ましい電位に規定することができる。
【0020】
メタルバック5は給電配線7を介して、真空容器10の不図示の高圧端子と電気的に接続されており、不図示の高圧電源より1kV〜15kV程度の高圧が印加される。走査配線23及び信号配線24は、それぞれ真空容器10の端子Dyn(nは1〜N)及びDxm(mは1〜M)と電気的に接続され、不図示の駆動回路より、それぞれ走査信号と画像信号が与えられる。電子放出素子25は信号に応じた電子を放出する。電子はメタルバック5の電位によって引き寄せられ、メタルバック5を突き抜け、発光部材4の蛍光体を発光させる。輝度は、電圧や信号によって調整することができる。
【0021】
次に、以上説明した画像表示装置のうち、特にフェイスプレート(発光スクリーン)の製造方法について説明する。
【0022】
(ブラックマトリックスの形成ステップ)上記の構成のブラックマトリックス3を、基板上に形成する。
【0023】
(給電配線の形成ステップ)図2(a),(c)に示すように、ブラックマトリックス3の第1の線状部3a上に給電配線7を形成する。給電配線7は、パターン印刷やディスペンス、フォトペースト法などの公知の方法で形成することができ、精度や生産性の観点からフォトペースト法を用いるのが好ましい。具体的には、ガラスフリットを母材とし抵抗材を分散したフォトペーストをスクリーン印刷によって基板全面に塗布する。そして所定のフォトマスクを用いて露光及び現像を行い、パターンを形成した後に焼成する。焼成後の給電配線7のパターンは、画面サイズや使用する抵抗材の体積抵抗率で決まり、線幅は20μm〜120μm、膜厚は3μm〜20μmが好ましい。給電配線7は、後述する前駆物質を焼成してリブ6を形成する際に一緒に焼成しても構わない。しかし、リブ6の剥がれをより効果的に抑制するためには、リブ6の焼成よりも前に給電配線7を焼成しておくことが望ましい。つまり、給電配線7の焼成は給電配線7のパターン形成後、前駆物質の形成の前に行うのが好ましい。
【0024】
(リブ形成ステップ)ブラックマトリックス3の第2の線状部3b上に、熱収縮性の材料からなる前駆物質6aを配置する。前駆物質6aは、給電配線7の上を跨いで給電配線7と交差するように線状に形成する。前駆物質6aは、パターン印刷、厚膜のブラスト、フォトペースト法など、公知の方法によって形成することができる。なかでも生産性、精度、大画面対応の点からフォトペースト法が好ましい。具体的には、スリットコータなどの塗布装置を用いて基板2上に前駆物質6aのペーストを塗布する。その後、あらかじめ形成したマークを基準として、所定のフォトマスクで露光、現像し、パターンを形成する。その後、ペースト中のガラス成分が焼結するのに必要な温度で前駆物質6aを焼成し、リブ6を形成する。
【0025】
一般に、画像表示装置にスペーサを組み込む際、ブラックマトリックスの開口部には非常に高い精度が求められる。本実施形態のようにブラックマトリックス3とリブ6をフォト工程により形成することで、ブラックマトリックス3の開口部9とリブ6の位置精度が高まり、好適である。
【0026】
(発光部材及びメタルバックの形成ステップ)互いに隣接する第1の線状部3aと互いに隣接する第2の線状部3bとで形成されるブラックマトリックス3の各開口部9に発光部材4を形成する。その後、発光部材4の上に、給電配線7と電気的に接続されるようにメタルバック5を形成する。
【0027】
画像表示装置を製造する場合は、上述のステップに従って発光スクリーンを製造するとともに、発光部材4に電子を照射するようにされた電子放出素子25を備えたリアプレート21を製造する。その後、発光スクリーンとリアプレート21との間にスペーサ11を配置する。スペーサ11は互いに隣接するリブ6の間に配置される。
【0028】
ここで、リブの剥がれを抑えるための方法について説明する。リブ6の剥がれは、リブ6と給電配線7との密着性(材料や接触面形状)などにより決まる。このような要因で生じるリブ6の剥がれは、本発明によれば、前駆物質6aの給電配線7との交差部13における前駆物質6aの幅を調整することで、容易に抑制することができる。
【0029】
図3(a)を参照して、リブに剥がれが発生するメカニズムを説明する。まず、一定幅Lの前駆物質6aを上述のステップに従い焼成した場合を仮定する。前駆物質6aは、焼成によって熱収縮し、幅が減少する。前駆物質6aはほとんどの領域でブラックマトリックス3の第2の線状部3b上に直接形成されるが、給電配線7との交差部13では、給電配線7の上に、給電配線7と接触して形成される。第2の線状部3b上に形成された部分と給電配線7との交差部13では、密着性等の差により、前駆物質6aは互いに異なる幅で収縮する。図3(a)には、収縮後の前駆物質6aの輪郭を破線で示している。
【0030】
前駆物質6aの給電配線7から十分離れた位置では、幅はほぼ一定値(幅B)となる。これに対し、交差部13における焼成後の幅は、幅Bより大きい幅Aとなっている。これは、前駆物質6aが給電配線7に拘束されて、幅Bまで収縮せず、給電配線との交差部13で幅広となっていることを意味する。前駆物質6aは給電配線7のところだけが膨れた、破線で示したような形状に変形する。前駆物質6aの剥がれは前駆物質6aの直線状の周縁部では発生しにくく、凸部や凹部などの曲率半径の小さな曲線部で発生する。このため、図3(a)の例では、黒丸で表示した位置で剥がれが生じ易くなる。
【0031】
従って、剥がれの発生を抑えるには、前駆物質6aが焼成後に、角部や隅部がなるべく発生しない形状に収縮するように、あるいは、発生してもなるべく緩やかな曲線形状となるように、焼成前の前駆物質6aの形状を調整しておけばよい。そこで本実施形態では、図3(b)、図2(c)に示すように、前駆物質6aと給電配線7との交差部13における前駆物質6aの幅をLより小さいL’としている。こうすることによって、前駆物質6aの交差部13付近における焼成後の幅が小さくなり、全体として幅Bに近づく。これによって、幅の急激な変化が起きにくくなり、曲率半径の小さな曲線部も生じにくくなるため、剥がれが生じにくくなる。つまり、A>Bである場合は、前駆物質6aは、一定幅Lを有する基準幅部6bと、交差部13に位置し一定幅Lより幅狭の幅狭部6cと、を有するように形成すればよい。
【0032】
図3(b)では、前駆物質6aが幅狭部6cで給電配線7の縁部14と交差している。これに対して図3(c)は、前駆物質6aが基準幅部6bで給電配線7の縁部14と交差している例を示している。つまり、基準幅部6bが交差部13の中まで張り出している。図3(c)の場合も、幅の急激な変化が起きにくく、剥がれが生じにくいが、図3(b)の構成の方がより好ましい。図3(c)の構成では、前駆物質6aが基準幅部6bで給電配線7の縁部14と交差しているため、縁部14の両側における焼成後の幅の差が大きく、縁部14の付近に局所的に鋭い曲線部ができるためである。さらに、給電配線7上で前駆物質6aの幅が変化しているため、そのような部位でも局所的に鋭い曲線部ができる。
【0033】
図4は、A<Bの場合を示す、図3と同様の図である。図4(a)を参照すると、前駆物質6aは給電配線7以外の部位(ブラックマトリックス3等)に拘束されて、交差部13で大きく収縮している。このような場合は、図4(b)に示すように、A>Bの場合とは逆に、前駆物質6aの交差部13に幅広部6dを形成しておけば、焼成後の幅AをBに近づけることができる。つまり、A<Bである場合は、一定幅Lを有する基準幅部6bと、交差部13に位置し一定幅Lより幅広の幅広部6dと、を有するように形成すればよい。
【0034】
図4(b)では、前駆物質6aが基準幅部6bで給電配線7の縁部14と交差している。これに対して図4(c)は、前駆物質6aが幅広部6dで給電配線7の縁部14と交差している例を示している。図4(c)の場合も、幅の急激な変化が起きにくく、剥がれが生じにくいが、図4(b)の構成の方がより好ましい。図4(c)の構成では、幅広部6dが給電配線7の縁部14と交差しているため、縁部14の両側における焼成後の幅の差が大きく、縁部14の付近に局所的に鋭い曲線部ができるためである。
【0035】
焼成後のリブ6の幅は、リブ6の位置精度とスペーサ11の支持機能の観点から、基準幅部6bで30μmから150μmの間とすることが好ましい。リブに幅狭部6cを設ける場合、幅狭部6cの幅が狭いと焼成の際に断線が生じることがある。このため、焼成前の幅狭部6cの幅は基準幅部6bの幅の0.5倍以上とすることが好ましい。リブに幅広部6dを設ける場合、焼成前の幅広部6dの幅は基準幅部6bの幅の1.5倍以下とすることが好ましい。
【0036】
本実施形態では、前駆物質6aの幅は非連続的に変化している。しかし、幅狭部6cと基準幅部6bの間(A>Bの場合)、あるいは基準幅部6bと幅広部6dとの間(A<Bの場合)にフィレットを設けてもよい。これによって、幅の変化が緩やかになり、剥がれの発生を一層効果的に抑制することができる。フィレット15の例を図5に示す。
【0037】
以上説明したように、リブ6の給電配線7との交差部13に幅狭部6cまたは幅広部6dを設けることで、焼成による幅のばらつきを防ぐことができる。このため、リブ6の製作精度やスペーサ11の支持機能を確保することが容易となる。
【0038】
(第2の実施形態)
本実施形態は、リブ6の構成を除いて第1の実施形態と同様である。図6は第2の実施形態を示す、図2と同様の図である。リブ形成ステップでは、ブラックマトリックス3の第1の線状部3aにも前駆物質6aが配置される。前駆物質6aは、第2の線状部3b上に配置された前駆物質6aとともに焼成されて、ブラックマトリックス3の開口部9を包囲するリブ6が形成される。開口部9はX方向に延びるリブ6だけでなく、Y方向に延びるリブ6によっても包囲されるため、本実施形態によれば、ハレーションの抑制効果が大きい発光スクリーンが得られる。
【0039】
(第3の実施形態)
本実施形態では、第2の実施形態と同様、ブラックマトリックス3の開口部9を包囲するリブが形成されている。図7は第3の実施形態を示す、図2と同様の図である。本実施形態ではさらに、スペーサ11が位置する部位以外で、リブ6が井桁状に構成されている。本実施形態によれば、第2の実施形態に比べ、さらに安定したリブ6の構造が得られる。
【0040】
(実施例1)
実施例1では基板2として、旭硝子社製PD−200を用いた。水により洗浄した基板2の上に黒色ペースト(ノリタケ製:NP−7811M1)を、スクリーン印刷によって全面に印刷した。次に、発光部材4を配置する位置にマトリックス状の開口パターンが形成されるように、フォトマスクを用いて露光、現像を行い、ブラックマトリックス3の前駆体を形成した。開口部9のピッチは、X方向に210μm、Y方向に630μmとし、開口部9のサイズはX方向に90μm、Y方向に220μmとした。この結果、X方向で隣り合う2つの開口部9の間隔は120μmとなった。
【0041】
次に、抵抗材を分散したペースト(ノリタケ製)を、スクリーン印刷によって、基板2の全面に印刷した。その後、フォトマスクを用いて露光、現像を行った。フォトマスクのパターンは、X方向ピッチ210μmでY方向にストレートに延びる、幅60μmのパターンとした。最後に580℃で焼成を行ってペースト中の有機成分を焼失させ、厚さ10μmの給電配線7を形成した。これと同時に、引出し配線8も形成した。引出し配線8は給電配線7から開口部9に向かって延びる、幅60μmのストレート形状のパターンとした。同時に焼成されたブラックマトリックス3の前駆体は、厚さ3μmのブラックマトリックス3となった。
【0042】
次に、基板の上にリブ6をフォトペースト法により形成した。具体的にはまず、硼珪酸ガラス粉末からなる絶縁ペーストを焼成後の膜厚が190μmになるようにスリットコータで塗布し、120℃で20分乾燥させ、リブ6の前駆物質を形成した。次に、フォトマスクを用いてリブの前駆物質を露光、現像した後、580℃で焼成を行い、リブ6を形成した。フォトマスクのパターンは、ブラックマトリックス3の開口部9の間をX方向に延びるストレート形状のパターンとした。リブ6の幅は60μmであり、Y方向に延びる給電配線7との交差部13は、Y方向幅40μm、X方向長さ100μmの幅狭部6cとした。Y方向における幅狭部6cの中心とY方向における給電配線7の中心は一致させた。
【0043】
次に、発光部材4を形成した。具体的には、CRTの分野で用いられているP22蛍光体を分散したペーストを、スクリーン印刷法により、開口部9に落し込み印刷した。本実施例ではカラーディスプレイとなるようにRGB3色の蛍光体を塗り分けた。各蛍光体の膜厚は12μmとし、3色の蛍光体を印刷後120℃で乾燥させた。乾燥は色毎に行ってもよいし、3色一括で行っても構わない。その後に、結着材として作用する珪酸アルカリ(いわゆる水ガラス)を含む水溶液をスプレー塗布した。
【0044】
次に、ブラックマトリックス3の開口部9に合わせて版開口部が形成されたスクリーン版を用いて、アクリルエマルジョンを落し込み印刷した。アクリルエマルジョンの厚さは蛍光体粉体の隙間をアクリル樹脂で埋める厚さとした。
【0045】
次に、メタルバック5としてアルミニウム膜を蒸着した。まず90℃に加温した基板2に、ラミネータ装置を用いてドライフィルムレジストを貼り付けた。次に、各発光部材4に対応した部分のみに開口部を有するフォトマスクを用いて、ドライフィルムレジストを露光、現像し、マスクを形成した。マスクの開口部サイズはX方向に120μm、Y方向に250μmであり、各開口部の中心は対応する発光部材4の中心に合わせた。その後、メタルバック5の膜厚が120nmとなるようにアルミニウムを成膜した。その後、450℃で加熱して、アクリル樹脂を分解除去した。
【0046】
なお、フェースプレート1にはスルーホールを通してフェースプレート1を貫通する高電圧導入端子(不図示)を設け、高電圧導入端子を画像形成領域の端部で、給電配線7と接続した。
【0047】
このようにして作製したフェースプレート1を用いて、リアプレート21と、外枠12と、導電性のスペーサ11とを組み合わせて、図1に示す画像表示装置31を作製した。この際、リブの間にスペーサ11を固定し、給電配線7と接続するように組み立てた。給電配線7を介してメタルバック5に8kVの電圧を印加し、画像を表示したところ、スペーサ11の位置ズレによる画像欠陥がない良好な画像を得ることができた。これより、スペーサ11の位置ズレを引き起こす程度のリブの剥がれが生じていないことが推測された。また、リブ6を設けたことにより、ハレーションによる混色が少ない良好な画像を表示することができた。
【0048】
(実施例2)
本実施例は第2の実施形態に対応しており、ブラックマトリックス3の開口部9を囲むようにリブを形成した点を除き、実施例1と同様な構成とした。実施例1では幅狭部6cをリブの両側に設けたが、実施例2ではY方向にもリブがあることから、幅狭部6cはリブのない側だけに設けた。実施例1と同様の条件で画像表示装置31を作製し作動させたところ、画像欠陥がなく、かつハレーションによる混色が少ない良好な画像を表示することができた。
【0049】
(実施例3)
本実施例は、第3の実施形態に対応しており、スペーサ11が位置する部位以外でリブが井桁状に構成されている点を除き、実施例2と同様な構成とした。実施例1と同様の条件で画像表示装置31を作製し作動させたところ、画像欠陥がなく、かつハレーションによる混色が少ない良好な画像を表示することができた。
【符号の説明】
【0050】
3 ブラックマトリックス
6 リブ
6a 前駆物質
7 給電配線
13 交差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延びる第1の線状部と、互いに平行に延び前記第1の線状部と直交する第2の線状部と、からなるブラックマトリックスを、基板上に形成するステップと、
前記ブラックマトリックスの前記第1の線状部上に給電配線を形成するステップと、
前記ブラックマトリックスの前記第2の線状部上に、熱収縮性の材料からなる前駆物質を、前記給電配線の上を跨いで前記給電配線と交差するように線状に配置し、該前駆物質を焼成してリブを形成するリブ形成ステップと、
互いに隣接する前記第1の線状部と互いに隣接する前記第2の線状部とで形成される前記ブラックマトリックスの各開口部に発光部材を形成し、該発光部材の上に、前記給電配線と電気的に接続されるようにメタルバックを形成するステップと、
を有し、
前記リブ形成ステップにおいて、一定幅の前駆物質を用いたと仮定した場合において、前記一定幅の前駆物質が焼成後に前記給電配線との交差部で幅狭となっている場合は、前記前駆物質は、前記一定幅を有する基準幅部と、前記交差部に位置し前記一定幅より幅広の幅広部と、を有するように形成され、前記一定幅の前駆物質が焼成後に前記給電配線との交差部で幅広となっている場合は、前記前駆物質は、前記基準幅部と、前記交差部に位置し前記一定幅より幅狭の幅狭部と、を有するように形成される、発光スクリーンの製造方法。
【請求項2】
前記一定幅の前駆物質が焼成後に前記給電配線との交差部で幅狭となっている場合は、前記前駆物質は、前記基準幅部で前記給電配線の縁部と交差するように形成され、幅広となっている場合は、前記前駆物質は、前記幅狭部で前記給電配線の前記縁部と交差するように形成される、請求項1に記載の発光スクリーンの製造方法。
【請求項3】
前記リブ形成ステップは、前記ブラックマトリックスの前記第1の線状部にも前駆物質を配置し、前記第2の線状部上に配置された前記前駆物質とともに焼成して、前記ブラックマトリックスの前記開口部を包囲するリブを形成することを含む、請求項1または2に記載の発光スクリーンの製造方法。
【請求項4】
前記リブ形成ステップは、前記一定幅の前駆物質が焼成後に前記給電配線との交差部で幅狭となっている場合は、前記幅広部と前記基準幅部との間にフィレットを、幅広となっている場合は、前記幅狭部と前記基準幅部との間にフィレットを設けることを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の発光スクリーンの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法に従って発光スクリーンを製造するステップと、
前記発光部材に電子を照射するようにされた電子放出素子を備えたリアプレートを製造するステップと、
前記発光スクリーンと前記リアプレートとの間にスペーサを配置するステップであって、前記スペーサを、前記発光部材及び前記メタルバックの形成されていない位置で、前記第2の線状部上の互いに隣接する前記リブの間で支持させることを含むステップと、
を有する、画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−238556(P2011−238556A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111179(P2010−111179)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】