説明

発光セラミックス、発光素子、シンチレータ及び発光セラミックスの製造方法

【課題】放射線や光が入射したときに光を出射する、波長変換セラミックスや放射線−光変換セラミックスなどの発光セラミックスであって、発光減衰時間が短い発光セラミックスを提供する。
【解決手段】発光セラミックスは、(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とするセラミックスを還元雰囲気中において熱処理してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光セラミックス、それを用いた発光素子、シンチレータ及び発光セラミックスの製造方法に関する。特に、本発明は、放射線−光変換セラミックスや波長変換セラミックスなどの発光セラミックス、放射線−光変換素子や波長変換素子などの発光素子、シンチレータ及び放射線−光変換セラミックスや波長変換セラミックスなどの発光セラミックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線や光が入射したときに発光する発光素子が種々知られている。このような発光素子の具体例としては、例えば、紫外線などが入射したときに、入射した紫外線よりも波長の長い光を出射させる波長変換素子や、放射線が入射したときに蛍光を出射する放射線−光変換素子などが挙げられる。
【0003】
例えば、放射線−光変換素子は、放射線検出器であるシンチレータなどに利用されている。シンチレータなどに利用される放射線−光変換素子に対しては、シンチレータの空間分解能や時間分解能を高めるために、発光効率が高く、かつ発光減衰時間が短いことが要求される。このような要求を満たす放射線−光変換素子としては、例えば下記の特許文献1,2に記載されているような単結晶材料を用いたものが挙げられる。
【0004】
また、下記の特許文献3には、希土類を含む酸硫化物系または酸化物系のセラミックシンチレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2006/049284 A1号公報
【特許文献2】特開平2−225587号公報
【特許文献3】特許第2989184号公報
【特許文献4】WO 2007/060816 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載されているような単結晶の放射線−光変換材料は、製造が困難であり、また、結晶異方性を有するため、放射線−光変換素子への加工が困難であるという問題がある。
【0007】
一方、特許文献3に記載されているセラミックシンチレータであれば、セラミックスであるため、単結晶の放射線−光変換材料よりも容易に製造することができ、かつ、放射線−光変換素子への加工も容易である。しかしながら、発光中心を希土類とした場合は、発光減衰時間が数百μ秒〜数m秒程度となり、発光減衰時間を十分に短くすることが困難であるという問題がある。
【0008】
従って、製造が容易な放射線−光変換セラミックスであって、発光減衰時間が短い放射線光変換セラミックスが求められている。
【0009】
同様に、例えば、紫外線などの光が入射したときに、入射光よりも波長の長い光を出射する波長変換材料に関しても、製造が容易なセラミックスにより構成されており、かつ発光減衰時間が短いものが求められている。
【0010】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、放射線や光が入射したときに光を出射する、波長変換セラミックスや放射線−光変換セラミックスなどの発光セラミックスであって、発光減衰時間が短い発光セラミックスを提供することにある。
【0011】
なお、上記特許文献4には、La,Y,Gd,Yb及びLuから選ばれる少なくとも一種と、Ti,Sn,Zr及びHfから選ばれる少なくとも一種とを含む酸化物であって、パイロクロア型化合物を主成分とし、かつ主成分の結晶系が立方晶である透光性セラミックスが記載されている。しかしながら、特許文献4に記載の透光性セラミックスは、放射線や光を照射したときに実質的に光を出射しない。従って、特許文献4に記載の透光性セラミックスは、発光セラミックスには該当しない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第1の発光セラミックスは、(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とするセラミックスを還元雰囲気中において熱処理してなる。
【0013】
本発明に係る第1の発光セラミックスのある特定の局面では、厚みが1mmであるときの波長450nm〜800nmにおける光透過率が40%以上である。
【0014】
本発明に係る第2の発光セラミックスは、 (La(1−x)Sr)(C(1−y)Ta)O(但し、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とする。本発明に係る第2の発光セラミックスの厚みが1mmであるときの波長450nm〜800nmにおける光透過率は、74%以上である。
【0015】
本発明に係る第1,第2の発光セラミックスのある特定の局面では、発光セラミックスは、入射光よりも波長が長い光を出射する波長変換セラミックスである。
【0016】
波長変換セラミックスは、入射光を、紫外線、可視光、赤外線、X線またはγ線とするものであってもよい。また、波長変換セラミックスは、出射光を、紫外線、可視光、赤外線、X線またはγ線とするものであってもよい。波長変換セラミックスの具体例としては、紫外線−可視光変換セラミックス、可視光−可視光変換セラミックス、可視光−赤外線変換セラミックス、X線−可視光変換セラミックス、γ線−可視光変換セラミックスなどが挙げられる。
【0017】
なお、本発明において、「可視光」とは、波長が400nm〜800nmの範囲内にある光をいう。「紫外線」とは、波長が240nm〜400nmの範囲内にある光をいう。「赤外線」とは、波長が800nm〜2500nmの範囲内にある光をいう。
【0018】
本発明に係る第1,第2の発光セラミックスの他の特定の局面では、発光セラミックスは、放射線が入射したときに光を出射する放射線−光変換セラミックスである。放射線には、α線、β線、中性子、γ線、X線が含まれる。
【0019】
本発明に係る第1,第2の発光セラミックスのさらに他の特定の局面では、発光セラミックスの密度が6g/cm以上である。
【0020】
本発明に係る発光素子は、上記本発明に係る第1,第2の発光セラミックスからなる。
【0021】
本発明に係るシンチレータは、上記本発明に係る発光セラミックスと、発光素子から出射される光を検出する検出器とを備えている。発光セラミックスは、放射線が入射したときに光を出射する放射線−光変換セラミックスである。
【0022】
本発明に係る発光セラミックスの製造方法では、(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とするセラミックスを還元雰囲気中において熱処理することにより発光セラミックスを得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、放射線や光が入射したときに光を出射する、波長変換セラミックスや放射線−光変換セラミックスなどの発光セラミックスであって、発光減衰時間が短い発光セラミックスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を実施した一実施形態に係るシンチレータの模式図である。
【図2】評価サンプルNo.1の還元熱処理前の光透過率と、還元熱処理後の光透過率とを表すグラフである。
【図3】評価サンプルNo.1の蛍光発光強度の経時変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1に示すシンチレータ1を例に挙げて説明する。但し、シンチレータ1は、単なる例示である。本発明に係るシンチレータは、シンチレータ1に何ら限定されない。また、本発明に係る発光セラミックス及びその製造方法並びに発光素子も、本実施形態において説明する発光セラミックス及びその製造方法並びに発光素子に何ら限定されない。
【0026】
図1は、本実施形態に係るシンチレータの模式図である。
【0027】
図1に示すように、シンチレータ(放射線検出器)1は、発光素子10と、検出器11とを備えている。
【0028】
本実施形態において、発光素子10は、放射線12が入射したときに、入射した放射線12の強度に応じた強度の光(具体的には、可視光)13を出射する素子である。発光素子10と検出器11とは、発光素子10から出射された光13が検出器11に入射するように配置されている。検出器11は、入射した光13の強度を検出する。
【0029】
ここで、上述のように、発光素子10は、入射した放射線12の強度に応じた強度の光13を出射する素子である。このため、検出器11により検出された光13の強度は、放射線12の強度と相関する。従って、検出器11において、放射線12の強度が間接的に検出される。
【0030】
なお、検出器11は、例えば、光電子増倍管やフォトダイオードなどにより構成することができる。
【0031】
本実施形態において、発光素子10は、(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とする発光セラミックスである。この発光セラミックスは、例えば100μ秒以下という短い発光減衰時間を有している。このため、この発光セラミックスからなる発光素子10を用いることにより、分解能の高いシンチレータ1を実現することができる。
【0032】
また、上記発光セラミックスは、セラミックスであるため、例えば単結晶の発光材料と較べて製造が容易であり、かつ、発光素子10の製造も容易となる。
【0033】
また、この発光セラミックスは、例えば6g/cm以上という高い密度を有するため、高い放射線吸収能を有する。
【0034】
なお、(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とするセラミックスは、焼成後において、直ちに発光セラミックスとして機能するものではない。このセラミックスを還元雰囲気中において熱処理することにより、上記発光セラミックスが得られる。
【0035】
上記発光セラミックスにおいて、Wは、電気的中性を保つための正の数であるが、例えば3である。すなわち、(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oの具体例としては、例えば(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oが挙げられる。
【0036】
発光セラミックスの発光効率を高める観点からは、発光セラミックスの光透過率が高いことが好ましい。より具体的には、発光セラミックスの発光波長における光透過率が高いことが好ましい。この場合、発光セラミックスの内部における発光の発光セラミックスからの取り出し効率が高くなるためである。具体的には、発光セラミックスの厚みが1mmであるときの波長450nm〜800nmにおける光透過率が、40%以上であることが好ましく、74%以上であることが好ましい。
【0037】
また、発光セラミックスの光透過率を高める観点から、AがLaであり、BがSrであることが好ましい。
【0038】
なお、上記セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oを還元雰囲気中において熱処理することにより発光セラミックスが得られる理由としては、以下の理由が考えられる。すなわち、セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oを焼成により作製する際において、金属原子の欠陥が生成したり、金属原子の価数が変化したりすることにより、多数のホールが発生するものと考えられる。セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oを還元雰囲気中において熱処理すると、還元前の酸素サイトからホールに電子が供給されることにより、ホールが中和されるものと考えられる。そして、電子を失った酸素空孔によりアクセプタ準位が形成されることによりセラミックスが発光するようになるものと考えられる。つまり、アクセプタ準位が形成されると、放射線の照射により励起された励起電子がそのアクセプタ準位にトラップされ、その後、失活する際に光が出射されるものと考えられる。
【0039】
なお、本実施形態では、発光素子10が、放射線の照射により発光する放射線−光変換素子である例について説明したが、発光素子10を構成している発光セラミックスは、入射光よりも波長が長い光を出射する波長変換セラミックスとしても機能する。具体的には、上記実施形態の発光セラミックスは、紫外線が入射したときに、紫外線よりも波長が長い可視光を出射する。このため、本実施形態の発光セラミックスを用いることにより、波長変換素子を作製することも可能である。
【0040】
次に、本実施形態の発光セラミックスの製造方法について説明する。
【0041】
まず、セラミック原料粉末を所定の形状に形成し、未焼成のセラミック成形体を形成する。次に、その未焼成のセラミック成形体を酸素を含む雰囲気中において焼成することにより、セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oを作製する。セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oの焼成雰囲気は、酸素濃度が98体積%以上であることが好ましい。焼成温度(最高温度)は、例えば、1500℃〜1800℃程度とすることができる。焼成工程における焼成温度(最高温度)保持時間は、例えば、5時間〜100時間程度とすることができる。
【0042】
次に、得られたセラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oを還元雰囲気中において熱処理(還元熱処理)することにより発光セラミックスを作製する。セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oを熱処理する還元雰囲気は、例えば、H/HO雰囲気であってもよい。セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oの熱処理温度(最高温度)は、例えば、800℃〜1200℃であることが好ましく、900℃〜1100℃であることがより好ましい。また、セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oの熱処理温度(最高温度)における保持時間は、例えば、1時間〜100時間程度とすることができる。
【0043】
なお、セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oの波長450nm〜800nmにおける光透過率は、上記熱処理により向上する。これは、上述のように、セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oを焼成により作製する際に生じたホールがカラーセンターとなって波長450nm〜800nmといった短波長の光を吸収していたところ、上記還元アニールによってカラーセンターとなっていたホールが中和されたためであると考えられる。
【0044】
なお、上述の通り、本実施形態における発光セラミックスは、論理上、(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oで表されるが、(A(1−x))と(C(1−y)Ta)のモル比((A(1−x)):(C(1−y)Ta))は、厳密に1:1に限定されるものではない。本発明において、発光セラミックス(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oには、(A(1−x))と(C(1−y)Ta)のモル比((A(1−x))/(C(1−y)Ta))が0.95〜1.05であるものも含まれるものとする。
【0045】
本実施形態における発光セラミックスの主成分の結晶系は、立方晶であってもよい。
【0046】
また、本実施形態における発光セラミックスは、(A(1−x))(C(1−y)Ta)Oで表されるものであるが、A,B,C,Ta,O成分以外に、不可避的に混入する不純物(以下、「不可避的不純物」とする。)を含むものであってもよい。不可避的不純物の具体例としては、SiO,B,Al等が挙げられる。
【0047】
(実験例)
まず、原料として、高純度のLa(OH)、Yb、Lu、Gd、SrCO、BaCO、Al、Ga、Taを準備した。これらの原料を下記の表1の組成に秤量し、ボールミルで20時間湿式混合した。得られた混合物を乾燥させた後、1400℃で3時間仮焼し、仮焼物を得た。この仮焼物を、水および有機分散剤とともにボールミルに入れ、12時間湿式粉砕した。この粉砕物を用い、湿式成形にて直径30mm、厚さ5mmの円板状に成形した。
【0048】
次に、上記成形物を同組成からなる粉体に埋め、酸素雰囲気下(約98%酸素濃度)で、1700℃の温度にて20時間焼成し焼結体を得た。得られた焼成体は、XRDにより、単純立方晶のペロブスカイト型化合物を主成分としていることが分かった。また、得られた焼結体の密度をアルキメデス法を用いて測定した。結果を下記の表1に示す。
【0049】
その後、焼結体の両面を、厚みが1.0mmの基板となるように鏡面研磨した後、基板を半分にカットした。次にその一方についてH/HO還元雰囲気(酸素分圧:1×10−15MPa)中において熱処理を行うことにより評価サンプルを作製し、他方を熱処理前の評価サンプルとした。熱処理の最高温度は、1000℃、1000℃における保持時間は3時間とした。
【0050】
次に、作製した評価サンプル及び熱処理前のサンプルについて、島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2500PCを用いて光透過率の測定を行った。結果を下記の表1及び図2に示す。なお、図2に示す光透過率曲線は、サンプルNo.1の熱処理前の光透過率(一点破線)と、熱処理後の光透過率(実線)とを表している。表1に示す光透過率は、波長450nmにおける直線透過率である。
【0051】
次に、作製した評価サンプル及び熱処理前のサンプルについて、株式会社堀場製作所製蛍光リン光分光光度計FluoroMax−4Pを用いて、表1に示す波長の紫外線を照射したときの蛍光分光測定を行った。結果を下記の表1に示す。なお、表1において、「発光波長」とは、発光強度が最大となった波長である。「発光強度」とは、発光強度が最大となった波長における発光強度である。また、表1に示す発光強度は、評価サンプル1の発光強度を1とした規格化値である。
【0052】
次に、評価サンプルについて、株式会社堀場製作所製蛍光リン光分光光度計FluoroMax−4Pを用いて、発光強度の経時変化の測定を行った。なお、この測定は、UV光を照射した際、最も強い発光が得られた波長について行った。具体的には、サンプルNo.1に関しては、励起波長を310nmとし、波長450nmの光の強度を測定した。そして、得られたグラフの直線部分を指数関数により禁じすることにより、減衰時定数を算出した。結果を下記の表1に示す。また、評価サンプルNo.1の蛍光発光強度の経時変化を表すグラフを図3に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
上記表1に示すように、主成分の組成式が(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)であるサンプルNo.1〜7,10〜12では、紫外線の照射により、発光寿命が100μ秒以下の発光が観察された。また、サンプルNo.1〜7,10〜12に関しては、紫外線の照射により発光が観察されたことから、紫外線よりも高いエネルギーを有するX線やγ線などの放射線を照射した際にも発光が生じるものと考えられる。
【0055】
また、サンプルNo.1〜7,10〜12では、密度が6g/cm以上であった。
【0056】
サンプルNo.1〜7,10〜12において、還元熱処理により波長450nmにおける光透過率の上昇が見られ、熱処理後の波長450nmにおける光透過率は、40%以上であった。なかでも、AがLaであり、BがSrである評価サンプルNo.1,4,12で74%以上という高い光透過率が得られた。
【0057】
一方、主成分の組成式が(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)ではないサンプルNo.8,9では、紫外線の照射により、発光が観察されなかった。
【0058】
また、サンプルNo.8,9では、熱処理前及び熱処理後のいずれにおいても波長450nmにおける光透過率が10%以下と低かった。
【符号の説明】
【0059】
1…シンチレータ
10…発光素子
11…検出器
12…放射線
13…光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とするセラミックスを還元雰囲気中において熱処理してなる、発光セラミックス。
【請求項2】
厚みが1mmであるときの波長450nm〜800nmにおける光透過率が40%以上である、請求項1に記載の発光セラミックス。
【請求項3】
(La(1−x)Sr)(C(1−y)Ta)O(但し、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とし、厚みが1mmであるときの波長450nm〜800nmにおける光透過率が74%以上である、発光セラミックス。
【請求項4】
入射光よりも波長が長い光を出射する波長変換セラミックスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光セラミックス。
【請求項5】
紫外線が入射したときに、可視光を出射する、請求項4に記載の発光セラミックス。
【請求項6】
放射線が入射したときに光を出射する放射線−光変換セラミックスである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光セラミックス。
【請求項7】
密度が6g/cm以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光セラミックス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光セラミックスからなる発光素子。
【請求項9】
請求項8に記載の発光素子と、
前記発光素子から出射される光を検出する検出器とを備え、
前記発光セラミックスは、放射線が入射したときに光を出射する放射線−光変換セラミックスである、シンチレータ。
【請求項10】
(A(1−x))(C(1−y)Ta)O(但し、Aは、La,Gd,Yb及びLuからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、Bは、Sr及びBaの少なくとも一方であり、Cは、Al及びGaの少なくとも一方であり、0.2≦x≦0.95、0<y≦0.6、0.4≦y/x≦0.6、Wは、電気的中性を保つための正の数である。)で表される複合ペロブスカイト型化合物を主成分とするセラミックスを還元雰囲気中において熱処理することにより発光セラミックスを得る、発光セラミックスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1637(P2012−1637A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138255(P2010−138255)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】