説明

発光ダイオード装置

【課題】発光ダイオードから発光させた光を、発光ダイオードの観測者側表面の法線方向から90°未満の任意の角度で外部に放射させることを可能とする。
【解決手段】発光ダイオード11の発光部12を被覆させ、発光部12から発生される光を、透明材料で形成されたキャップ部14を介して外部に放射させる。キャップ部14に円錐状凹部15を形成し、この円錐状凹部15に発光部12から放射された光を、発光ダイオード11の観測者側表面の法線方向から90°未満の特定の角度で屈折させるための傾斜境界面16を形成した。これにより、発光ダイオード11から直接、円錐状凹部15に到達する光の入射角を臨界角以下の範囲で増大させ、発光ダイオード11の観測者側表面の法線方向から90°未満の大きな角度の光を効率的に外部に放射させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光ダイオードから発光された光に指向性を与えて外部へ放射するようにした発光ダイオード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発光ダイオード装置は、発光部に電流を供給するためのリードと、発光部を覆うキャップ部を有し、このキャップ部に発光部から放射された光束を、側方反射部を用いて全反射させることによってキャップ部の側方へ放射される光束に変換させている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平8-255934号公報(第3頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術では、側方反射部で反射された光は、発光ダイオードの観測者側表面の法線から90°付近の真横方向で外部に放射されることになる。自動車のストップランプ、センターハイマウントストップランプ、ウィンカー等の用途では、光源を設置する面の法線方向に対して真横方向ではなく、30〜60°程度の角度に強い光を放射する光源が要望される。この場合、側方反射部の傾斜を発光ダイオードの観測者側表面の法線方向に近づけることを必要とする。しかし、発光ダイオードから放射される光の放射角度は拡がりを持つため、この放射光を側方反射部で反射させるためには、高さ寸法の大きい側方反射部が必要となり、発光ダイオード装置の大型化につながるという問題があった。
【0004】
この発明の目的は、発光ダイオードが発光した光を発光ダイオードの観測者側表面の法線方向から90°未満の任意の角度で外部に放射することができる発光ダイオード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の発光ダイオード装置は、発光ダイオードと、少なくとも前記発光ダイオードの発光部を被覆させ、該発光部から発生される光を外部に放射させる透明部材と、前記透明部材に、前記発光部から放射された光を前記発光ダイオードの観測者側表面の法線方向から90°未満の特定の角度で屈折させる傾斜境界面を形成した円錐状凹部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、発光ダイオードにより発光された光を、発光ダイオードの観測者側表面の法線方向から90°未満の任意の角度で効率的に外部に放射させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1、図2はこの発明の発光装置の第1の実施形態について説明するためのもので、図1は概略について説明するための斜視図、図2は図1の断面図である。
図1、図2において、11は発光素子の一つである発光ダイオードの全体を示したものである。この発光ダイオード11は、発光部12と、この発光部12に電流を供給するためのリード131,132および発光部12を覆うように形成された例えばエポキシやアクリル樹脂等の透明部材で形成されたキャップ部14で被覆して構成している。これらの基本構成は、キャップ部14の構成を除き従来の発光ダイオードと同様のものである。この実施形態では、キャップ部14の先端に円錐状凹部15が形成される。
【0008】
ところで、発光ダイオード11の発光部12から発生させ、図2に示す中心軸Cから左側の円錐状凹部15の傾斜境界面16に到達する光束をFL1〜FL5とした場合の入射角は、円錐端17に到達する光束FL1の入射角θ1が最大となる。光束FL2〜FL5の入射角θ2〜θ5の関係は、θ2>θ3>θ4>θ5となる。θ1≦臨界角であれば、傾斜境界面16の任意の場所に到達する光の入射角θ1〜θ5は、傾斜境界面16で全反射せずに透過させることができる。傾斜境界面16は、θ1>θ2>θ3>θ4>θ5の関係を維持するような傾斜に形成する。
【0009】
ところで、図2中の角度φ1は、90°−θ1と表わせることから、角度φ1を用いてθ1≦臨界角を変形させると、φ1≧(90°−臨界角)となる。以下、角度φ2〜φ5は、φ1<φ2<φ3<φ4<φ5の関係となる。臨界角は、透明材料によって異なりエポキシやアクリル樹脂では両者の屈折率を約1.5程度とした場合、41.8°となる。従って、角度φ1〜φ5は(90°−41.8°)以上であり、発光部12から放射された光で傾斜境界面16に到達されたものはここで屈折した後、外部に透過する。キャップ部14は、空気よりも高屈折率であり、一般に高屈折率の物質側から低屈折率の物質へ光が透過する場合、屈折角は入射角よりも大きくなる。
【0010】
入射角に対する屈折角増大の割合(屈折角−入射角)は、入射角が大きくなるほど増加する。よって、傾斜境界面16を備えた円錐状凹部15を設けることで、発光ダイオード11から直接、円錐状凹部15に到達する光の入射角を臨界角以下の範囲で増大させ、発光ダイオード11の観測者側表面の法線方向から90°未満の大きな角度で光を外部に放射させることができる。また、角度φを≧(90°−臨界角)の範囲とすることで、円錐状凹部15の寸法は制限され、発光ダイオード装置全体の小型化、薄型化に寄与する。
【0011】
このように、高屈折率の透明部材側から低屈折率の外部へ光を透過させる場合、円錐状凹部15の傾斜境界面16は、発光ダイオード11の発光部12から放射される光の入射角を平坦な境界面の場合よりも増大させることができるので、中心軸Cからより大きな角度で外気中に光を放射させることができる。
【0012】
図3は、この発明の第2の実施形態について説明するための断面図である。この実施形態は、キャップ部14の傾斜境界面161が、発光ダイオード11の観測者側表面の法線を中心軸とする観測者側表面に対して凸状の曲面とした構成の部分が上記実施形態と異なり、同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0013】
すなわち、凸状曲面の傾斜境界面161の任意点における接平面31の接点32と発光ダイオード11とを結ぶ直線のなす角θが、(90°−臨界角)以上の値となる曲面形状としている。傾斜境界面161の任意の場所に到達する光束FL1〜FL3のそれぞれの入射角θ1〜θ3は、θ以上であることから、傾斜境界面161でほとんどが全反射せず透過できる。傾斜境界面161を凸状の曲面にすることにより透過後の光の放射角度は、図3のように互いに平行に近くなり、換言すれば放射角度が平行になるような曲率の曲面とすることで、指向性を強めることができる。
【0014】
この実施形態では、傾斜境界面161の凸状曲面形状とすることで、発光ダイオード11から直接到達する光の入射角を曲面の中心軸Cに近い位置では大きく、遠い位置では小さく、臨界角以下の範囲で調整することができる。これにより、中心軸Cから90°未満までの角度で外部に放射される光の指向性をより強めることができる。
【0015】
図4は、この発明の第3の実施形態について説明するための断面図である。この実施形態は、円錐状凹部15の第1の傾斜境界面162とキャップ部14の外周に発光ダイオード11の観測者側表面の法線に沿って発光部12側から円錐状凹部15の方向へ向かうに従い、漸次先細り形状となる第2の傾斜境界面163を形成したものである。図中、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0016】
この実施形態は、発光ダイオード11の観測者側表面の法線方向から90°未満の大きな角度で光を外部に放射させるものである。キャップ部14の外側に発光部12側から先細りとなる第2の傾斜境界面163を形成した場合、そこに到達する光の入射角θは非常に小さくなるために全反射せず、また透過した光の方向は第1の傾斜境界面162を透過した光の放射方向に近いため、第2の傾斜境界面163を持たない場合に比してキャップ部14の側面側で全反射し無駄になっていた光も有効利用することができる。
【0017】
この実施形態では、第1の傾斜境界面162からの放射に加え、第2の傾斜境界面163からも放射可能であることから、発光部12から発光される光のキャップ部14外への放射効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施形態について説明するための発光ダイオード装置の概略構造を示す斜視図。
【図2】この発明の第1の実施形態について説明するための断面図。
【図3】この発明の第2の実施形態について説明するための断面図。
【図4】この発明の第3の実施形態について説明するための断面図。
【符号の説明】
【0019】
11 発光ダイオード
12 発光部
131,132 リード
14 キャップ部
15 円錐状凹部
16,161 傾斜境界面
162 第1の傾斜境界面
163 第2の傾斜境界面
17,171 円錐端
θ1〜θ5 光束の入射角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードと、
少なくとも前記発光ダイオードの発光部を被覆させ、該発光部から発生される光を外部に放射させる透明部材と、
前記透明部材に、前記発光部から放射された光を前記発光ダイオードの観測者側表面の法線方向から90°未満の特定の角度で屈折させる傾斜境界面を形成した円錐状凹部とを備えたことを特徴とする発光ダイオード装置。
【請求項2】
前記透明部材の傾斜境界面が、前記発光ダイオードの観測者側表面の法線を中心軸とする円錐状凹部であり、該円錐状凹部の開口面の縁と前記発光ダイオードとを結ぶ直線と、前記円錐状凹部の母線のなす角度を、(90°−前記透明部材と空気との前記傾斜境界面における臨界角)以上の範囲としたことを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード装置。
【請求項3】
前記傾斜境界面が、前記発光ダイオードの観測者側表面の法線を中心軸とする観測者側表面に対して凸状の曲面を有し、該凸状曲面の任意の点における接平面と、該接平面と前記凸状曲面との接点と前記発光ダイオードとを結ぶ直線のなす角が、(90°−臨界角)以上の値となる曲面に形成したことを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード装置。
【請求項4】
前記透明部材の外周にも第2の傾斜境界面を形成し、該第2の傾斜境界面は前記発光ダイオードの観測者側表面の法線に沿って前記発光部側から前記円錐状凹部へ向かうに従い先細り形状となるように傾斜したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光ダイオード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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