説明

発光デバイスおよびそのための材料

アノード、正孔輸送層、発光層およびカソードを備えた有機発光デバイスであって、正孔輸送層が、9,9ビフェニルフルオレン単位を含む繰返し単位を有するポリマーを含み、該9−フェニル環が、独立に場合により置換されており、該フルオレン単位が場合により縮合していることを特徴とする有機発光デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正孔輸送層を有する有機発光デバイスおよび正孔輸送層における使用に適した材料に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の有機発光デバイス(OLED)は、基板を備え、その基板上にアノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に位置し、少なくとも1種のポリマー性エレクトロルミネッセンス材料を含む発光層を支持している。動作時には、正孔が、アノードを介してデバイス中に注入され、電子が、カソードを介してデバイス中に注入される。正孔および電子は、発光層内で結合して励起子を形成し、次いでその励起子が、放射崩壊を受けて発光する。他の層もOLED中に存在してもよく、例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)などの正孔注入材料の層を、アノードと発光層との間に設けることにより、アノードから発光層への正孔の注入を補助してもよい。さらに、正孔輸送層を、アノードと発光層との間に設けることにより、正孔の発光層への輸送を補助してもよい。
【0003】
デバイスの作製に使用されるポリマーは、その堆積を促進するために、好ましくは汎用有機溶媒に可溶である。可溶性ポリマーの一例は、ポリフルオレンであり、これは良好な膜形成特性を有し、SuzukiまたはYamamoto重合により容易に形成し得る。これによって、生成ポリマーの位置規則性(regioregulatory)に対する高度な制御が可能になる。
【0004】
国際公開第99/20675号は、共役ポリマーの調製法に関する。9,9−二置換フルオレン単位が開示されており、その置換基は、C1〜C20ヒドロカルビルまたは1個もしくは複数のS、N、O、PもしくはSi原子を含有するC1〜C20ヒドロカルビル、C4〜C16ヒドロカルビルカルボニルオキシ、あるいはC4〜C16アルキル(トリアルキルシロキシ)から選択される。さらに、その2個の置換基は、フルオレン環上の9位炭素と共に、C5〜C20環構造、またはS、NもしくはOの1個もしくは複数のヘテロ原子を含有するC4〜C20環構造を形成し得るとも言われている。n−オクチル置換基だけしか例示されていない。
【0005】
J.Am.Chem.Soc.2001,123,946〜953は、青色発光ホモポリマーに関する。ポリマー20bは、次式を有する。
【0006】
【化1】

【0007】
欧州特許第1088875号は、フェニルアントラセン系ポリマーを有するエレクトロルミネッセンスデバイスを開示している。アダマンタンスペーサー基が、Tgを上げるためにポリマー中に組み込まれている。ポリマー67は、次式の繰返し単位:
【0008】
【化2】

を有し、式中R2=R3=4−メトキシフェニルである。このポリマーはルミネッセンス材料であると言われている。
【0009】
国際公開第02/092723号は、青色発光ポリマーを開示している。2,7−連結9,9ジアリールフルオレン繰返し単位をエレクトロルミネッセンスポリマー中に組み込むことにより、ガラス転移温度(Tg)が上昇すると言われている。特に、次式の繰返し単位:
【0010】
【化3】

が開示され、式中好ましくは、各Arが、次式の置換されていてもよい残基:
【0011】
【化4】

からなる群から選択され、式中n=1、2または3であり、Rが、可溶化基または水素である。特に好ましい基Rは、水素、および置換されていてもよいアルキルまたはアルコキシであり、最も好ましくは、Rが水素またはブチルである。
【0012】
国際公開第02/092724号は、電子輸送および発光ポリマーに関する。国際公開第02/092724号の発明の一態様によるポリマーは、次式を有する基:
【0013】
【化5】

を含む第1の繰返し単位を有し、この基は置換または非置換であり、式中nは、1、2または3であり、Xは、水素、またはアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールアルキル、アルキルアリール、シアノ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアリール、ハロヘテロアリールもしくはアルコキシ基である。好ましくは、Xは、水素またはアルキル基である。こうしたポリマーは、電子輸送材料として以前使用されたポリマーより高いTg値を有すると言われている。175℃のTgが挙げられている。9頁には、Xは、メチル、エチル、n−ブチル、s−ブチルまたは三級ブチルから選択されるのが好ましいと言われている。
【0014】
米国特許第6653438号は、共役発光ポリマーに関する。ポリマーに組み込むモノマーが開示され、次式を有する。
【0015】
【化6】

実施例P4では、このモノマーが、トリフェニルアミン繰返し単位および第2の異なるフルオレン繰返し単位と共に、ポリマーに組み込まれている。
【0016】
国際公開第2004/023573号は、光学デバイスの形成法を開示している。その方法によれば、第1の層が第1の電極上に形成され、第2の層が第1の層に接して形成される。第1の層が、熱、真空および周囲条件での乾燥処理の1つまたは複数により、少なくとも部分的に不溶化された後、第2の層が堆積される。第1の層は、第1の半導性材料の堆積により形成され、第2の層は、第2の半導性材料の堆積により形成される。第1および第2の半導性材料の一方または両方がポリマーである場合、該ポリマーは共役しているのが好ましいと言われている。さらに、そのような(共役)ポリマーは、好ましくは、9−置換または9,9−二置換フルオレンの2,7−ジイル繰返し単位、最も好ましくは次式の置換されていてもよい単位:
【0017】
【化7】

を含むと言われており、式中RおよびR’は、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される。
【0018】
国際公開第2006/070185号は、アミンのモノマーおよびポリマーに関する。特に好ましいアミンポリマーには、置換されていてもよい2,7−連結フルオレン、最も好ましくは次式の繰返し単位:
【0019】
【化8】

が挙げられると言われており、式中R1およびR2は、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される。18頁には、好ましい正孔輸送ポリマーは、ABコポリマー、または「第1の繰返し単位」およびトリアリールアミン繰返し単位であると明言されている。「第1の繰返し単位」は、アリーレン繰返し単位から選択されるものと規定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
発光デバイス中の正孔輸送層のために、新規で好ましくは改良された材料を提供する必要性が常に存在する。特に、フルカラーディスプレーにおける青色、赤色および緑色エレクトロルミネッセンス材料のために汎用正孔輸送層として使用できる、新規で好ましくは改良された材料を見出すことが望ましい。
【0021】
国際公開第2004/023573号に明言されているように、発光デバイスを形成する場合、発光層の形成前に、正孔輸送層を加熱することが好ましくなり得る。より好ましくは、正孔輸送層は、正孔輸送材料のガラス転移温度より高く加熱される。したがって、低いガラス転移温度(Tg)を有する正孔輸送材料を提供することにより、このTgより高く加熱できることがさらに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、正孔輸送ポリマーの安定性を増加させ(デバイス中に使用した際、使用寿命を改善する)、青色、赤色および緑色エレクトロルミネッセンス材料との適合性から見て、HOMOおよびLUMO準位が望ましいポリマーを生成できる繰返し単位を組み込んだ、新規な正孔輸送ポリマーの提供によって、予想外にも上記問題を少なくとも部分的に解決した。こうした利点は、該繰返し単位が、該ポリマーのTgを有意に上げずに実現される。この結果は、従来技術の指示によれば、この繰返し単位は該ポリマーのTgを劇的に高めるので、全く予想外であった。
【0023】
溶解処理されるデバイスでは、発光層は、溶液から堆積される際、下側の正孔輸送層を溶解しないことが重要であることは、理解されよう。本発明者らは、驚くべきことに、低Tg正孔輸送材料が、高Tg材料より容易に不溶化することを見出した。
【0024】
したがって、本発明の第1の態様は、アノード、正孔輸送層、発光層およびカソードを備えた有機発光デバイスであって、正孔輸送層が、ポリマー主鎖中にフルオレン単位を含み、一般式Iを満足する繰返し単位:
【0025】
【化9】

を有するポリマーを含み、式中R1およびR2は、各々独立に置換基を表し、各xは、独立に0または整数であり、該フルオレン単位が場合により縮合していることを特徴とする有機発光デバイスを提供する。
【0026】
好ましくは、フルオレン単位が縮合されておらず、本発明の第1の態様による繰返し単位が、一般式Iaを満足する。
【0027】
【化10】

【0028】
一般式Iを満足する繰返し単位は、鎖間距離の調整を可能にする一方、ポリマーのTgがデバイス処理に実用的であることを保証する。これは、部分的には鎖長の選択を介して実現し得る。一般式Iを満足する繰返し単位は、さらに、励起子に対する安定性の向上、および使用寿命の延長をもたらす。
【0029】
一般式Iを満足する繰返し単位を有する正孔輸送ポリマーの使用によって、デバイスの駆動電圧の低下を実現できることも発見された。駆動電圧が、正孔輸送層または発光層中の正孔輸送繰返し単位により制御されると以前考えられていたので、この結果は驚くべきことであった。
【0030】
本明細書中のいずれにも記載されるような有機発光デバイスは、好ましくは、青色、赤色および緑色発光層を有するフルカラーディスプレー中に含まれ、そこでは、正孔輸送層は、青色、赤色および緑色エレクトロルミネッセンス材料に共通である。
【0031】
「赤色エレクトロルミネッセンス材料」とは、エレクトロルミネッセンスにより、波長範囲600〜750nm、好ましくは600〜700nm、より好ましくは610〜650nmを有し、最も好ましくは650〜660nmあたりに発光ピークを有する放射線を放射する有機材料を意味する。
【0032】
「緑色エレクトロルミネッセンス材料」とは、エレクトロルミネッセンスにより、波長範囲510〜580nm、好ましくは510〜570nmを有する放射線を放射する有機材料を意味する。
【0033】
「青色エレクトロルミネッセンス材料」とは、エレクトロルミネッセンスにより、波長範囲400〜500nm、より好ましくは430〜500nmを有する放射線を放射する有機材料を意味する。
【0034】
正孔輸送ポリマーのTgは、好ましくは200℃未満、より好ましくは175℃未満である。正孔輸送ポリマーのTgは、示差走査熱量測定法により測定できる。本明細書に示す値は、40°/分で測定される。
【0035】
正孔輸送ポリマーは、好ましくは、そのポリマーを不溶化するために、堆積後に好ましくは180〜200℃で20〜60分間加熱されている。好ましくは、この層は、少なくとも5〜10nmの深さまで不溶化している。
【0036】
必須ではないが、正孔輸送ポリマーは、ポリマーの堆積後に架橋する架橋性単位を備えてもよい。架橋のために正孔輸送ポリマー中に存在すべき適切な単位、およびそのための適切な技法は、例えば国際公開第96/20253号、国際公開第05/49686号および国際公開第05/052027号に開示されるように、当業者には公知のことであろう。
【0037】
好ましくは、正孔輸送ポリマーは、溶液から堆積して層を形成できるように、可溶性である。ポリアリーレン、特にポリフルオレンに適切な溶媒には、トルエンおよびキシレンなどのモノまたはポリアルキルベンゼンが挙げられる。特に好ましい溶液堆積技法は、スピンコーティングおよびインクジェットプリンティングである。
【0038】
正孔輸送層は、アノードおよび発光層の間に位置し、好ましくは4.5から5.8、より好ましくはおよそ4.8〜5.5eVのHOMO準位を有する。HOMO準位は、サイクリックボルタンメトリーにより測定することができる。
【0039】
一般式(I)の繰返し単位におけるフルオレン単位は、さらなる環構造と全く縮合していないのが好ましい。しかし、それは縮合して、ベンゾフルオレンまたはインデノフルオレンなどの単位を形成してもよい。縮合していない場合、フルオレン単位は、隣接単位との共役を最大限にするために、2位および7位を介して隣接単位と連結されるのが好ましい。しかし、ある特定の場合、ポリマー内の共役度を低下させ、それによりバンドギャップを増加させるために、3位および/または6位を介してフルオレン単位を連結することが有利なこともある。
【0040】
好ましくは、R1およびR2の一方または両方は、炭素原子1から12個を有する、直鎖または分岐アルキル基などの置換基を表す。より好ましくは、R1およびR2の一方または両方は、炭素原子5から20個を有する置換基を表す。
【0041】
好ましくは、R1およびR2の一方または両方は、ポリエチレングリコール鎖またはアルコキシ鎖を含む置換基を表す。
【0042】
一実施形態では、R1およびR2の少なくとも一方は、フェニル環上のメタ位に配置されている。メタ位に存在すべき好ましい置換基には、好ましくは炭素原子が5個を超えるアルキル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖または分岐でもよい。
【0043】
有利なことに、一般式Iを満足し、メタ位(複数可)に置換基(複数可)を有するフルオレン単位は、式Iの繰返し単位が9,9ジオクチルフルオレン繰返し単位で置き換えられた同等なポリマーに比して、優れた使用寿命を有するが、実質的に同じTgを有することが判明した。
【0044】
一実施形態では、R1およびR2は共に、メタ位に配置されている。
【0045】
該繰返し単位は、一般式IIを満足し得る。
【0046】
【化11】

【0047】
別の実施形態では、R1およびR2の少なくとも一方は、フェニル環上のパラ位に配置されている。パラ位に配置されるべき好ましい置換基は、炭素原子を5個以上有する。
【0048】
一実施形態では、R1およびR2は共に、パラ位に配置され、好ましくは各々炭素原子を5個以上有する。
【0049】
該繰返し単位は、一般式IIIを満足し得る。
【0050】
【化12】

【0051】
該繰返し単位は、一般式IVを満足し得る。
【0052】
【化13】

【0053】
本発明によれば、一般式Iを満足する繰返し単位は、ラダー型単位またはインデノフルオレンなどの拡張された共役を含んだ環系内に含み得る。
【0054】
一般式Iを満足する繰返し単位は、一般に、正孔輸送ポリマーにおいて、正孔の輸送を担当することはなかろう。したがって、正孔輸送ポリマーはコポリマーであることが好ましい。正孔輸送ポリマーは、好ましくは、トリアリールアミン繰返し単位などの正孔輸送繰返し単位を含む。
【0055】
正孔輸送ポリマーは、好ましくは、一般式Iを満足する繰返し単位を10から80mol%、より好ましくは30から80mol%、より一層好ましくは50から80mol%または30から60mol%含む。
【0056】
正孔輸送ポリマーは、好ましくはトリアリールアミン繰返し単位を含む。好ましいトリアリールアミン繰返し単位は、式1を満足する繰返し単位:
【0057】
【化14】

から選択し得るが、式中Ar1およびAr2は、置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基であり、nは、1以上、好ましくは1または2であり、Rは、Hまたは置換基、好ましくは置換基である。Rは、好ましくはアルキルまたはアリールまたはヘテロアリールであり、最も好ましくはアリールまたはヘテロアリールである。式1の単位におけるアリール基またはヘテロアリール基のいずれもが、置換されていてもよい。好ましい置換基には、アルキル基およびアルコキシ基が挙げられる。
【0058】
式1の繰返し単位におけるアリール基またはヘテロアリール基のいずれも(即ち、Rがアリールまたはヘテロアリールである場合のAr1、Ar2、およびR)が、直接結合、または2価の連結原子もしくは連結基によって連結されていてもよい。好ましい2価の連結原子および連結基には、O、S、置換Nおよび置換Cが挙げられる。
【0059】
式1を満足する特に好ましい単位には、式2から4の単位:
【0060】
【化15】

が挙げられ、式中Ar1およびAr2は、上記定義の通りであり、Ar3は、置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基である。存在する場合、Ar3の好ましい置換基には、アルキル基およびアルコキシ基が挙げられる。アリール基またはヘテロアリール基のAr1、Ar2およびAr3のいずれの2つも、直接結合、または2価の連結基もしくは連結原子によって、場合により連結されていてもよい。存在する場合、連結性の結合、基または原子は、好ましくは、共通のN原子に結合している2つのアリール基またはヘテロアリール基を連結する。
【0061】
好ましい正孔輸送ポリマーは、一般式Iを満足する繰返し単位とトリアリールアミン繰返し単位とのコポリマーである。
【0062】
他の繰返し単位、例えば、さらなるフルオレン繰返し単位、好ましくは、置換されていてもよい2,7−連結フルオレン、さらにより好ましくは、一般式22を満足するフルオレン:
【0063】
【化16】

が存在していてもよく、式中R5およびR6は、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される。R1およびR2の少なくとも一方は、置換されていてもよいC4〜C20アルキル基またはアリール基を含む。
【0064】
一実施形態では、正孔輸送ポリマーは、2,7−連結9,9ジアルキルフルオレンまたは2,7−連結9,9ジアルコキシフルオレンの繰返し単位を含む。
【0065】
本発明による好ましい正孔輸送ポリマーは、9,9−ジアルキルまたはジアルキルオキシフルオレン繰返し単位、一般式Iを満足する繰返し単位、および1種または複数の異なるトリアリールアミン繰返し単位からなる。
【0066】
本発明による別の好ましい正孔輸送ポリマーは、一般式Iを満足する繰返し単位、および1種または複数の異なるトリアリールアミン繰返し単位からなる。
【0067】
好ましくは、発光デバイスは、アノードおよび正孔輸送層の間に配置された正孔注入層をさらに有する。好ましくは、正孔注入層は、導電性の有機または無機材料を含む。適切な導電性有機材料は、荷電種、特に荷電ポリマーなどの荷電材料を、電荷平衡ドーパントと共に通常含む。ドープされた有機正孔注入材料の例には、ドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特に、欧州特許第0901176号および欧州特許第0947123号に開示されるようなポリスチレンスルホネート(PSS)、ポリアクリル酸、またはフッ素化スルホン酸、例えばNafion(登録商標)などの電荷平衡ポリ酸でドープされたPEDT;米国特許第5723873号および米国特許第5798170号に開示されるようなポリアニリン;ならびにポリ(チエノチオフェン)が挙げられる。導電性無機材料の例には、Journal of Physics D:Applied Physics(1996),29(11),2750〜2753に開示されるようなVOx、MoOxおよびRuOxなどの遷移金属酸化物が挙げられる。
【0068】
別の実施形態では、一般式Iを満足する繰返し単位におけるペンダントフェニル基の一方または両方は、1個または複数、好ましくは2個の置換基を有する。ペンダントフェニル基の一方または両方が2個の置換基を有する場合、1個の置換基は、フェニル環上の各メタ位に配置されているのが好ましい。
【0069】
本発明の第2の態様は、発光デバイスにおける正孔輸送ポリマーとしての使用に適したポリマーであって、該ポリマーは一般式Iを満足し、フルオレン単位、R1およびR2、ならびにxが式Iに関して上記いずれかで定義した通りである繰返し単位を有し、175℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とするポリマーを提供する。
【0070】
第2の態様によるポリマーは、好ましくはコポリマーである。
【0071】
第2の態様によるポリマーにおいて、好ましくは、ペンダントフェニル基の両方が、パラ置換基(より好ましくは、各々が3個超の炭素原子を有する、より一層好ましくは、5個超の炭素原子を有する)を有するか、またはフェニル基の両方が、メタ置換基を有する。
【0072】
第2の態様によるポリマーは、本発明の第1の態様による正孔輸送ポリマーについて定義した通りでもよい。
【0073】
本発明の第3の態様は、共役ポリマーの調製に適したモノマーであって、
(A)一般式Iを満足し、R1およびR2が各々独立に置換基を表す構造単位、ならびに
(B)2個の反応性脱離基
を含み、
(i)R1およびR2が、各々独立にパラ位に配置され、5個以上の炭素原子を含有する、または
(ii)R1およびR2が、各々独立にメタ位に配置され、5個以上の炭素原子を含有する、または
(iii)R1およびR2の一方が、メタ位に配置され、R1およびR2の他方が、パラ位に配置されており、R1およびR2が、各々独立に5個以上の炭素原子を含有する
モノマーを提供する。
【0074】
2個の反応性脱離基は、好ましくは、ボロン酸またはボロン酸エステルなどのホウ素誘導体、ならびに金属挿入に関与できる、ハロゲン(好ましくは塩素、臭素またはヨウ素、最も好ましくは臭素)、トシレート、メシレートおよびトリフレートなどの脱離基からなる群から独立に選択される。
【0075】
本発明の第4の態様は、第1の態様に関して規定したような発光デバイスを作製する方法であって、正孔輸送層を堆積させ、次いで正孔輸送層を加熱するステップを含む方法を提供する。
【0076】
本発明を、添付した図を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明によるデバイスの概略を表示した図である。
【図2】実施例1に明示したデバイスについて輝度対時間プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1の実施形態は、本発明によるデバイスを例示しており、該デバイスは、アノード1を基板上に最初に形成した後、導電性正孔注入層2、正孔輸送層3、発光層4およびカソード5を堆積させることにより形成される。しかし、本発明のデバイスが、カソードを基板上に最初に形成した後、他の層および最後にアノードを堆積させることによっても形成できることは理解されよう。電子輸送層が、発光層およびカソードの間に存在してもよい。存在する場合、電子輸送層は、およそ3〜3.5eVのLUMO準位を有するのが好ましい。
【0079】
アノードは、好ましくはITOから作製される。
【0080】
カソードは、エレクトロルミネッセンス層への電子の注入を可能にする仕事関数を有する材料から選択される。カソードとエレクトロルミネッセンス材料との有害な相互作用の可能性など、他の要因もカソードの選択に影響する。カソードは、アルミニウム層などの単一材料からなってもよい。代替として、カソードは、複数種の金属、例えば国際公開第98/10621号に開示されるようなカルシウムおよびアルミニウムの二重層、国際公開第98/57381号、Appl.Phys.Lett.2002,81(4),634および国際公開第02/84759号に開示される元素バリウム、または、電子注入を補助する化合物、例えば、国際公開第00/48258号に開示されるフッ化リチウムもしくはAppl.Phys.Lett.2001,79(5),2001に開示されるフッ化バリウムなどの金属フッ化物の薄層;あるいは金属酸化物、特に、酸化バリウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属酸化物を含み得る。デバイスへの効率的な電子注入を行うためには、カソードは、好ましくは3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有する。
【0081】
光学デバイスは、水分および酸素に敏感である傾向を示す。したがって、基板は、水分および酸素のデバイスへの進入を防止する良好なバリヤー性を有することが好ましい。基板は、一般にガラスであるが、代替基板も、特にデバイスの柔軟性が望ましい場合に使用し得る。例えば、基板は、プラスチック層およびバリヤー層が交互する基板を開示している米国特許第6268695号におけるようなプラスチック、または欧州特許第0949850号に開示されるような薄いガラスおよびプラスチックの積層板を備えてもよい。
【0082】
デバイスは、水分および酸素の進入を防止するために、封止材で封止することが好ましい。適切な封止材には、ガラスシート、例えば国際公開第01/81649号に開示されるような、ポリマーおよび誘電材の交互積層体などのバリヤー性が適切なフィルム、例えば国際公開第01/19142号に開示されるような密封容器が挙げられる。基板または封止材を透過し得る、大気中の水分および/または酸素を全て吸収するためのゲッター材料を、基板と封止材との間に配置してもよい。
【0083】
実用的なデバイスでは、電極の少なくとも一方は、光が吸収(光応答性デバイスの場合)または放射(OLEDの場合)されるように、半透明である。アノードが透明な場合、それはインジウム錫酸化物を通常含む。透明なカソードの例は、例えば英国特許第2348316号に開示されている。
【0084】
発光層は、エレクトロルミネッセンス材料だけからなってもよく、またはエレクトロルミネッセンス材料を1種もしくは複数のさらなる材料と組み合わせて含んでもよい。特に、エレクトロルミネッセンス材料は、例えば国際公開第99/48160号に開示されるように、正孔および/または電子輸送材料とブレンドしてもよい。あるいは、エレクトロルミネッセンス材料を電荷輸送材料に共有結合させてもよい。
【0085】
発光層における使用に適したエレクトロルミネッセンスポリマーには、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(アリーレンビニレン)、およびポリアリーレンとして、ポリフルオレン、特に2,7−連結9,9ジアルキルポリフルオレンまたは2,7−連結9,9ジアリールポリフルオレン;ポリスピロフルオレン、特に2,7−連結ポリ−9,9−スピロフルオレン;ポリインデノフルオレン、特に2,7−連結ポリインデノフルオレン;ポリフェニレン、特にアルキルまたはアルコキシ置換ポリ−1,4−フェニレンが挙げられる。このようなポリマーは、例えばAdv.Mater.2000 12(23) 1737〜1750およびその中の参考文献に開示されている。
【0086】
デバイスに使用されるポリマーは、好ましくは共役しており、したがってアリーレン繰返し単位、特に、J.Appl.Phys.1996,79,934に開示されるような1,4−フェニレン繰返し単位;欧州特許第0842208号に開示されるようなフルオレン繰返し単位;例えばMacromolecules 2000,33(6),2016〜2020に開示されるようなインデノフルオレン繰返し単位;および例えば欧州特許第0707020号に開示されるようなスピロフルオレン繰返し単位を含む。こうした繰返し単位の各々は、置換されていてもよい。置換基の例には、C1-20アルキルまたはアルコキシなどの可溶化基;フッ素、ニトロまたはシアノなどの電子吸引基;および正孔輸送層に使用するもの以外のポリマーの場合、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を上げる置換基が挙げられる。
【0087】
上記に言及したようなアリーレン繰返し単位を含むポリマーは、それがデバイスのどの層で使用されているか、および共繰返し単位(co-repeat units)の特質に依存して、正孔輸送、電子輸送および発光の機能の1種または複数を行い得る。
特に、
− 9,9−ジアルキルフルオレン−2,7−ジイルのホモポリマーなどの、特に上記に言及したようなアリーレン繰返し単位のホモポリマーは、電子輸送を行うために利用し得る。
− 特に上記に言及したようなアリーレン繰返し単位、およびトリアリールアミン繰返し単位、特に式1から4から選択される繰返し単位を含むコポリマーは、正孔輸送および/または発光を行うために利用し得る。
【0088】
この種類の特に好ましい正孔輸送ポリマーは、特に上記に言及したようなアリーレン繰返し単位と、トリアリールアミン繰返し単位とのコポリマーである。
【0089】
− 特に上記に言及したようなアリーレン繰返し単位、およびヘテロアリーレン繰返し単位を含むコポリマーは、電子輸送または発光のために利用し得る。好ましいヘテロアリーレン繰返し単位は、式7から21:
【0090】
【化17】

から選択され、式中R8およびR9は、同じまたは異なっており、各々独立に、水素または置換基、好ましくはアルキル、アリール、ペルフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである。製造が容易なため、R6およびR7は同じであることが好ましい。より好ましくは、それらは同じであって、各々フェニル基である。
【0091】
【化18】

【0092】
【化19】

【0093】
【化20】

【0094】
エレクトロルミネッセンスコポリマーは、例えば国際公開第00/55927号および米国特許第6353083号に開示されるように、エレクトロルミネッセンス領域と、正孔輸送性領域および電子輸送性領域の少なくとも一方とを含み得る。正孔輸送性領域および電子輸送性領域の一方だけが与えられる場合、エレクトロルミネッセンス領域は、正孔輸送機能および電子輸送機能の他方も与え得る。
【0095】
このようなポリマー内の異なる領域は、米国特許第6353083号のようにポリマー主鎖に沿って与えられてもよいし、または国際公開第01/62869号のようにポリマー主鎖からのペンダント基として与えられてもよい。
【0096】
共役ポリマーを調製する好ましい方法は、例えば国際公開第00/53656号に記載されているようなSuzuki重合、および例えばT.Yamamoto,”Electrically Conducting And Thermally Stable π−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes”,Progress in Polymer Science 1993,17,1153〜1205に記載されているようなYamamoto重合である。この両重合法は、金属錯体触媒の金属原子がモノマーのアリール基と脱離基との間に挿入される、「金属挿入」を介して作用する。Yamamoto重合の場合はニッケル錯体触媒が使用され、Suzuki重合の場合はパラジウム錯体触媒が使用される。
【0097】
例えば、Yamamoto重合による線状ポリマーの合成では、2個の反応性ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、Suzuki重合の方法によれば、少なくとも一方の反応性基は、ボロン酸またはボロン酸エステルなどのホウ素誘導体基であり、他方の反応性基は、ハロゲンである。好ましいハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素、最も好ましくは臭素である。
【0098】
したがって、本願を通して例示されるようなアリール基を含む、繰返し単位および末端基は、適切な脱離基を保持するモノマーから誘導し得ることが理解されよう。
【0099】
Suzuki重合は、位置規則性コポリマー、ブロックコポリマーおよびランダムコポリマーを調製するために使用し得る。特に、ホモポリマーまたはランダムコポリマーは、一方の反応性基がハロゲンであり、他方の反応性基がホウ素誘導体基である場合に調製し得る。あるいは、ブロックコポリマーまたは位置規則性コポリマー、特にAB型のコポリマーは、第1のモノマーの両反応性基がホウ素であり、第2のモノマーの両反応性基がハロゲンである場合に調製し得る。
【0100】
ハロゲンの代替として、金属挿入に関与できる他の脱離基には、トシレート、メシレートおよびトリフレートが挙げられる。
【0101】
単一のポリマーまたは複数のポリマーが、層を形成するために溶液から堆積し得る。ポリアリーレン、特にポリフルオレンに適した溶媒には、トルエンおよびキシレンなどのモノおよびポリアルキルベンゼンが挙げられる。特に好ましい溶液堆積法は、スピンコーティングおよびインクジェットプリンティングである。
【0102】
スピンコーティングは、エレクトロルミネッセンス材料のパターン形成が不要な場合、例えば、照明用途または単純なモノクロのセグメントディスプレーに向けたデバイスに特に適切である。
【0103】
インクジェットプリンティングは、情報量の多いディスプレー、特にフルカラーディスプレーに特に適している。OLEDのインクジェットプリンティングは、例えば欧州特許第0880303号に記載されている。
【0104】
デバイスの多層を溶解処理で形成する場合、隣接層間の相互混合を防止する技法、例えば、1つの層の架橋後に次の層を堆積させること、または第1の層を形成している材料が、第2の層の堆積に使用される溶媒に可溶化しないように隣接層同士の材料を選択することによる技法を、当業者であれば認識されていよう。
【0105】
燐光発光体用の多数のホストは、CBPの名で知られている4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、およびTCTAの名で知られている(4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン)などのIkai et al.(Appl.Phys.Lett.,79 no.2,2001,156)に開示されている、「低分子」ホスト;ならびにMTDATAの名で知られているトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニルアミンなどのトリアリールアミンを含めて、当技術分野において記載されている。ポリマー、特に、例えばAppl.Phys.Lett.2000,77(15),2280に開示されている、ポリ(ビニルカルバゾール)などのホモポリマー;Synth.Met.2001,116,379,Phys.Rev.B 2001,63,235206およびAppl.Phys.Lett.2003,82(7),1006におけるポリフルオレン;Adv.Mater.1999,11(4),285におけるポリ[4−(N−4−ビニルベンジルオキシエチル,N−メチルアミノ)−N−(2,5−ジ−tert−ブチルフェニルナフタルイミド];ならびにJ.Mater.Chem.2003,13,50〜55におけるポリ(パラ−フェニレン)も、ホストとして知られている。コポリマーもホストとして知られている。
【0106】
発光用の好ましい金属錯体は、式(X)の置換されていてもよい錯体:
ML1q2r3s
(X)
を含み、式中Mは金属であり、L1、L2およびL3は各々配位基であり、qは整数であり、rおよびsは各々独立に0または整数であって、(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計は、M上で利用できる配位部位の数に等しく、aはL1上の配位部位の数であり、bはL2上の配位部位の数であり、cはL3上の配位部位の数である。
【0107】
重元素Mは、強いスピン−軌道結合を誘発することにより、迅速な項間交差および三重項状態からの発光(燐光)を可能にする。適切な重金属Mには、
− セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、エルビウムおよびネオジムなどのランタニド金属、ならびに
− d−ブロック金属、特に第2および第3周期(row)のd−ブロック金属、即ち39から48番元素および72から80番元素、特にルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金および金
が挙げられる。
【0108】
f−ブロック金属に適切な配位基には、カルボン酸、1,3−ジケトネート、ヒドロキシカルボン酸、アシルフェノールおよびイミノアシル基を含めたシッフ塩基などの酸素または窒素ドナー系が挙げられる。知られているように、発光性のランタニド金属錯体には、金属イオンの第1励起状態より高い三重項励起エネルギー準位を有する増感基(複数可)が必要である。発光は、金属のf−f遷移で起こるので、発光色は、金属の選定によって決定される。鋭い発光は、一般に幅が狭く、ディスプレー用途に有用な純色発光を生じる。
【0109】
d−ブロック金属は、ポルフィリンまたは式(XI)の二座配位子:
【0110】
【化21】

などの炭素または窒素ドナーと有機金属錯体を形成し、式中Ar7およびAr8は、同じまたは異なってもよく、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールから独立に選択され、X1およびY1は、同じまたは異なってもよく、炭素または窒素から独立に選択され、Ar7およびAr8は、一緒に縮合していてもよい。X1が炭素であり、Y1が窒素である配位子は、特に好ましい。
【0111】
二座配位子の例は、以下に図示する通りである。
【0112】
【化22】

【0113】
Ar7およびAr8は、各々1個または複数の置換基を保持してもよい。特に好ましい置換基には、国際公開第02/45466号、国際公開第02/44189号、米国特許第2002−117662号および米国特許第2002−182441号に開示されるように、当該錯体の発光をブルーシフトするために使用し得るフッ素またはトリフルオロメチル;特許公開第2002−324679号に開示されているようなアルキル基またはアルコキシ基;国際公開第02/81448号に開示されるように、発光材料として使用した際の錯体へ、正孔輸送を補助するために使用し得るカルバゾール;国際公開第02/68435号および欧州特許第1245659号に開示されるように、さらなる基を結合するための配位子の官能化に役立てることができる臭素、塩素またはヨウ素;ならびに国際公開第02/66552号に開示されるように、金属錯体の溶解処理性を得る、または高めるために使用し得るデンドロンが挙げられる。
【0114】
d−ブロック元素との使用に適した他の配位子には、ジケトネート、特にアセチルアセトネート(acac)、トリアリールホスフィンおよびピリジンが挙げられ、これらは各々置換されていてもよい。
【0115】
典型金属錯体は、配位子主体の、または電荷移動による発光を示す。こうした錯体の場合、発光色は、配位子ならびに金属の選定により決定される。
【0116】
ホスト材料および金属錯体は、物理的ブレンドの形態で組み合わせてもよい。あるいは、金属錯体をホスト材料に化学的に結合してもよい。ポリマーホストの場合、金属錯体は、ポリマー主鎖に結合した置換基として化学結合する、ポリマー主鎖中の繰返し単位として組み込む、またはポリマーの末端基として付与するのいずれかでよいが、以上のことは、例えば、欧州特許第1245659号、国際公開第02/31896号、国際公開第03/18653号および国際公開第03/22908号に開示されている。
【0117】
広範囲の蛍光性低分子量金属錯体が、知られており、有機発光デバイスにおいて実証されてきた[例えば、Macromol.Sym.125(1997)1〜48、米国特許第5150006号、米国特許第6083634号および米国特許第5432014号を参照されたい]が、特にトリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムがある。二価または三価金属に適した配位子には、例えば、酸素−窒素もしくは酸素−酸素供与原子、置換基酸素原子を伴った環内窒素原子一般、または置換基酸素原子を伴った置換基の窒素原子もしくは酸素原子を有する、8−ヒドロキシキノレートおよびヒドロキシキノキサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナト(II)などのオキシノイド、ベンズアゾール(III)、シッフ塩基、アゾインドール、クロモン誘導体、3−ヒドロキシフラボン、ならびにサリチラトアミノカルボキシレートおよびエステルカルボキシレートなどのカルボン酸が挙げられる。存在してもよい置換基には、(ヘテロ)芳香環上のハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、アリールまたはヘテロアリールが挙げられ、これらは発光色を改変し得る。
【実施例1】
【0118】
次の構造を有する第1のデバイスを形成した。
ITO/PEDOT:PSS/HTL1/ブルーポリマー/BaOx5nm/Al>250nm
次の構造を有する比較用デバイスを形成した。
ITO/PEDOT:PSS/HTL2/ブルーポリマー/BaOx5nm/Al>250nm
【0119】
正孔輸送層およびブルーポリマー層を溶液から堆積させた。正孔輸送層は、エレクトロルミネッセンス層を堆積させる前に焼き付けた。
【0120】
HTL1およびHTL2のTgは、同様である。
【0121】
ブルーポリマーは、例えば国際公開第02/092723号に開示されるように、フルオレン単位およびトリアリールアミン単位を含んだポリマーを含む。
【0122】
第1のデバイスの正孔輸送層「HTL1」は、ジアルキルフルオレン、ジアリールフルオレンおよびトリアリールアミンの各繰返し単位を含んだ正孔輸送ポリマーを含む。
【0123】
比較用デバイスの正孔輸送層「HTL2」は、ジアルキルフルオレンおよびトリアリールアミンの各繰返し単位を含んだ正孔輸送ポリマーを含む。
【0124】
結果:
電圧は、電圧計を用いて測定した。CIE座標および輝度は、Minolta CS200 ChromaMeterを用いて測定した。
【0125】
デバイスの結果は、HTL2と比較して、HTL1の色は類似しており、駆動電圧および外部量子効率(EQE)が僅かに低下していることを示す。平均使用寿命は以下に示してあり、輝度対時間プロットは図2に示してある。その結果は、HTL1は、HTL2と比較して、使用寿命が30%改善されていることを示す。
【0126】
【表1】

【0127】
以下のデータは、Tgを調整するための実行可能鎖長の選択を示している。HTL1においてメタ置換DPFを用いると、HTL2の場合と同等な処理温度を得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、正孔輸送層、発光層およびカソードを備えた有機発光デバイスであって、正孔輸送層が、ポリマー主鎖中にフルオレン単位を含み、一般式Iを満足する繰返し単位:
【化1】

を有するポリマーを含み、式中R1およびR2は、各々独立に置換基を表し、各xは、独立に0または整数であり、該フルオレン単位が場合により縮合している
ことを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項2】
正孔輸送ポリマーのTgが200℃未満である、請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
正孔輸送ポリマーが、堆積後の加熱により再配列した、請求項1または請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
正孔輸送ポリマーが、溶液から堆積して層を形成できるように可溶性である、請求項1から3のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
正孔輸送層が、およそ4.5から5.8、好ましくは4.8から5.5eVのHOMO準位を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
1およびR2の一方または両方が、炭素原子5から20個を有する置換基を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
1およびR2の一方または両方が、直鎖または分岐アルキル基を表す、請求項1から6のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
1およびR2の少なくとも一方が、フェニル環上のメタ位に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
1およびR2が共にメタ位に配置されている、請求項8に記載の有機発光デバイス。
【請求項10】
1およびR2の少なくとも一方が、フェニル環のパラ位に配置されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項11】
1およびR2が共にパラ位に配置されている、請求項10に記載の有機発光デバイス。
【請求項12】
正孔輸送ポリマーがコポリマーである、請求項1から11のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項13】
正孔輸送ポリマーが、トリアリールアミン繰返し単位を含む、請求項12に記載の有機発光デバイス。
【請求項14】
正孔輸送ポリマーが、一般式Iを満足する繰返し単位を30から80mol%含む、請求項12または請求項13に記載の有機発光デバイス。
【請求項15】
正孔輸送ポリマーが、一般式Iを満足する繰返し単位とトリアリールアミン繰返し単位とのコポリマーである、請求項12または請求項13に記載の有機発光デバイス。
【請求項16】
正孔輸送ポリマーが、一般式22を満足するさらなるフルオレン繰返し単位:
【化2】

を含み、式中R5およびR6は、水素、または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立に選択される、請求項12から14のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項17】
アノードおよび正孔輸送層の間に配置された正孔注入層をさらに有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項18】
正孔注入層が導電性の有機材料を含む、請求項17に記載の有機発光デバイス。
【請求項19】
前記デバイスが、青色、赤色および緑色発光層を有するフルカラーディスプレー中に含まれ、正孔輸送層が、青色、赤色および緑色エレクトロルミネッセンス材料に共通である、請求項1から18のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項20】
発光デバイスにおける正孔輸送ポリマーとしての使用に適したポリマーであり、一般式Iを満足する繰返し単位:
【化3】

を有し、式中R1およびR2は、各々独立に置換基を表し、各xは、独立に0または整数であり、フルオレン単位が場合により縮合しているポリマーであって、175℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とするポリマー。
【請求項21】
請求項2、4または6から16のいずれか一項に規定したような正孔輸送ポリマーである、請求項21に記載のポリマー。
【請求項22】
共役ポリマーの調製に適したモノマーであって、
(A)一般式Iを満足し、
【化4】

式中R1およびR2が各々独立に置換基を表す構造単位、ならびに
(B)2個の反応性脱離基
を含み、
(i)R1およびR2が、各々独立にパラ位に配置され、5個以上の炭素原子を含有する、または
(ii)R1およびR2が、各々独立にメタ位に配置され、5個以上の炭素原子を含有する、または
(iii)R1およびR2の一方が、メタ位に配置され、R1およびR2の他方が、パラ位に配置されており、R1およびR2が、各々独立に5個以上の炭素原子を含有する
モノマー。
【請求項23】
2個の反応性脱離基が、ホウ素誘導体基、ハロゲン、トシレート、メシレートおよびトリフレートからなる群から独立に選択される、請求項22に記載のモノマー。
【請求項24】
請求項3に規定したような発光デバイスを作製する方法であって、正孔輸送層を堆積させ、次いで正孔輸送層を加熱するステップを含む方法。
【請求項25】
正孔輸送ポリマーが、請求項2、4または6から16のいずれか一項に規定した通りである、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−504654(P2011−504654A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534538(P2010−534538)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003872
【国際公開番号】WO2009/066061
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【出願人】(506061668)サメイション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】