説明

発光ナノ粒子およびそれらの調製方法

【課題】発光ナノ粒子を合成するための方法、およびこのような方法によって調製されたナノ粒子の提供。
【解決手段】発光ナノ粒子であって、以下の工程:a)単離された半導体コアを提供する工程;b)該コアと、以下:i.第1のシェル前駆体、ii.第2のシェル前駆体、iii.溶媒、およびiv.第2族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、Fe、Nb、Cr、Mn、Co、Cu、およびNiからなる群より選択される元素を含む、添加剤、を混合して、反応分散物を形成する工程;c)該半導体コア上への無機シェルの形成を誘導する温度で、それに十分な時間にわたって、該反応分散物を加熱する工程、を包含する方法によって調製された、ナノ粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に発光ナノ粒子およびそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ粒子(例えば、1〜7nmの範囲の直径を有するCdSe結晶)は、(特に、生物学的領域において)広範な用途を有する重要な新規の物質である。これらの物質の多くの固有の特性のうちで、光物理学的特徴は、最も有用な特徴のうちのいくつかの特徴である。具体的には、これらの物質は、強い発光(これは、粒子寸法依存的および粒子組成依存的である)を示し得、極めて狭いバンド幅を有し得、そして環境面で無反応性(insensitive)である;このような発光は、物質における最高のエネルギー放出よりも短い波長を有する電磁放射で効率的に励起され得る。これらの特性は、高度に多重化された系における生物学的状態および生物学的プロセスの超高感度発光レポーターとしての半導体ナノクリスタルの使用を可能にする。
【0003】
しかし、いくつかの裸のナノクリスタル(すなわち、ナノクリスタルコア)は、これらの用途のための十分に強い発光または安定な発光を示さない。実際、多くの用途に必要とされる環境が、これらの物質の完全な破壊を実質的に導き得る。ナノクリスタルの有用性を増強する重要な革新は、コアのまわりに無機のシェルを加えることである。このシェルは、好ましくは(例えば、増大されたレドックス特性を介して)電子的に絶縁であり、光学的に非干渉性であり、化学的に安定であり、そして内在する物質に格子一致(lattice−match)するように適切に選択された物質で構成される。この最後の特性は、シェルのエピタキシャル成長がしばしば所望されるので、重要である。さらに格子を一致させること、すなわち、シェルの結晶格子とコアの結晶格子との差を最小化することは、部分的欠損(local defect)、シェルの亀裂または長期(long−range)の欠損の可能性を最小化する。
【0004】
かなりの資源が、ナノ粒子コア合成を最適化することに向けられている。多くの努力が、結果として得られた物質における重要な物理化学的性質の最適化に集中している。例えば、光励起の結果生じる強く狭い発光バンドが、一般的に望ましい。発光特性に影響する物理的要因としては、物質の結晶化度、コア−シェル界面欠損、表面の不完全性または非放射性不活性化経路(または非効率的な放射性経路)を増強する「トラップ」、粒子の全体の形態、および不純物の存在が挙げられる。無機のシェルの使用は、この領域において極めて重要な革新である。なぜなら、その使用は、上述の特性の劇的な改善を生じ、そして改善された環境的無反応性、化学的安定性および光化学的安定性、低減された自己クエンチング特性などを提供するからである。
【0005】
シェル被覆化方法論は、今日まで、比較的未発達であった。シェルの組成、厚さ、および質(例えば、結晶化度、粒子被覆率(coverage))は、ほとんど制御されておらず、そして粒子蛍光におけるそれらの効果のメカニズムは、ほとんど理解されていない。内在の蛍光エネルギーにおける被覆の影響は、少ない基準のセットに基づく被覆物質の選択および程度を介してまばらにのみ制御されている。
【0006】
Hinesら(1996)「Synthesis and Characterization of Strongly Luminescing ZnS−Capped CdSe NanoCrystals」、J.Phys.Chem.100:468(非特許文献1)は、蛍光収率において有意な改善:室温で50%までの量子収率、を示すZnSキャップ化CdSeナノクリスタルの調製を記載する。残念ながら、放出される光の質は、得られたキャップ化ナノクリスタルのコアの大きな寸法分布(12〜15%rms)のために受け入れられないままである。大きな寸法分布は、広いスペクトル範囲にわたる光の放出を生じる。さらに、報告された調製方法は、このプロセスから得られる粒子寸法の制御を可能にせず、故に色(すなわち、発光波長)の制御を可能にしない。
【0007】
DanekらはZnSe被覆層によるCdSeナノクリスタルの電子的不動態化および化学的不動態化を報告する(Chem.Materials 8:173,1996(非特許文献2))。ZnSeとの改善された単位セル一致化によって、このようなZnSeキャップ化CdSeナノクリスタルが、ZnSアナログと同等か、またはよりよい量子収率を示すことが予測され得るが、得られた物質は、わずかに発光性(0.4%量子収率以下)なままであった。
【0008】
コア−シェル型発光ナノ粒子を開示する他の参考文献としては、Dabbousiら、(1997)「(CdSe)ZnS Core/shell Quantum Dots:Synthesis and Characterization of a Size Series of Highly Luminescent Nanocrystallites」、J.Phys.Chem.B 101:9463(非特許文献3)、Pengら(1997)「Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/Shell Nanocrystals with Photostability and Electronic Accessibility」、J,Am.Chem.Soc.119:7019(非特許文献4)、およびPengら(1998)「Kinetics of II−VI and III−V Colloidal Semiconductor Nanocrystal Growth:Focusing of Size Distributions」、J.Am.Chem.Soc.120:5343(非特許文献5)が挙げられる。コア−シェルナノ粒子に関する、発行された米国特許としては、Bawendiらに対する米国特許第6,207,229号(特許文献1)および同第6,332,901号(特許文献2)が挙げられる。しかし、これらの参考文献の各々は、コアおよびシェルの格子構造における構造的不適合についていかなる修正も提供しない。
【0009】
反応付加物の使用を介して従来法により調製されたコア−シェル物質と比較された場合に優れた化学的特性、優れた光化学的特性、および/または優れた光物理的特性を示すコア−シェルを提供する方法が、本明細書中に記載される。この方法は、内在のコアによりよく結びつくシェルを製造し得る。この方法はまた、コア励起子に電子的により絶縁性であるシェルを製造し得る。さらに、この方法は、コア上へのシェル物質の制御可能な沈着を容易にし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,207,229号
【特許文献2】米国特許第6,332,901号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Hinesら(1996)「Synthesis and Characterization of Strongly Luminescing ZnS−Capped CdSe NanoCrystals」、J.Phys.Chem.100:468
【非特許文献2】Danekら、Chem.Materials 8:173,1996
【非特許文献3】Dabbousiら、(1997)「(CdSe)ZnS Core/shell Quantum Dots:Synthesis and Characterization of a Size Series of Highly Luminescent Nanocrystallites」、J.Phys.Chem.B 101:9463
【非特許文献4】Pengら(1997)「Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/Shell Nanocrystals with Photostability and Electronic Accessibility」、J,Am.Chem.Soc.119:7019
【非特許文献5】Pengら(1998)「Kinetics of II−VI and III−V Colloidal Semiconductor Nanocrystal Growth:Focusing of Size Distributions」、J.Am.Chem.Soc.120:5343
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の開示)
従って、単離された半導体コアを提供する工程、第1のシェル前駆物質、第2のシェル前駆物質、溶媒、ならびに付加物とコアを混合する工程を包含する方法に従って調製される発光性ナノ粒子を提供することによって、上述の当該分野における必要性に取り組むことが、本発明の主な目的である。この付加物としては、2族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、またはFe、Nb、Cr、Mn、Co、Cu、およびNiが挙げられ得る。このようにして形成される反応分散物は、半導体コア上に無機のシェルの形成を引き起こすのに十分な温度および期間、加熱される。
【0013】
発光ナノ粒子を調製する方法を提供することが、本発明のなお別の目的である。この方法において、単離された半導体コアが提供され、そして第1のシェル前駆物質、第2のシェル前駆物質、溶媒、ならびに付加物と混合される。得られた反応分散物は、半導体コア上に無機のシェルの形成を引き起こすために十分な温度および期間、加熱される。
【0014】
発光ナノ粒子を調製する方法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。この方法において、第1の前駆物質および第2の前駆物質が、第1の溶媒系に注入され、均一な核形成を起こすのに十分な温度に維持される。この核形成は、第1の格子構造を有する第1の半導体物質からなる個々の半導体コアの単分散集団の形成を生じる。次いで、個々のコアの単分散集団の少なくとも一部が、コア分散物(これはまた、第2の溶媒および潜在的に付加物前駆物質を含む)を形成するために使用され得る。第2の溶媒系は、第1の溶媒系と同じであり得る。第1のシェル前駆物質および第2のシェル前駆物質(ならびに潜在的に付加物前駆物質)は、次いで、コア溶液に添加され、各々の個々のコア上にシェルの形成(半導体コアと無機シェルとの間に位置する界面領域を有する)を生じる。この界面領域は、上記のように、半導体コア、シェル、および潜在的に付加物前駆物質からなる。このシェルは、第2の格子構造を有する第2の物質からなり、そしてまた必要に応じて付加物を含み得る。
【0015】
半導体コア、半導体コアの周りの無機のシェル、およびその間の界面領域からなる蛍光ナノ粒子を提供することが、本発明の別の目的である。この半導体コアは、第1の格子構造を有する第1の半導体物質からなる。このシェルは、第2の格子構造を有する第2の無機物質からなる。界面領域は、半導体コアおよびシェルならびにさらなる付加物(これは、第1の格子構造および第2の格子構造(すなわち、それぞれコアおよびシェル)の両方に組み込まれ得る)の成分から構成され得る。
【0016】
このコアは、(a)元素の周期表の2族、12族、13族または14族から選択される第1の元素および元素の周期表の16族から選択される第2の元素、(b)元素の周期表の13族から選択される第1の元素および元素の周期表の15族から選択される第2の元素、または(c)14族元素から構成され得る。半導体コアにおける使用に適切な物質の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、Al、AlSe、AlTe、Ga、GaSe、GaTe、In、InSe、InTe、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、BP、Si、およびGeならびにそれらの第3級および第3級の混合物、化合物、および固溶液。特に好ましい半導体コア物質は、CdSe、CdTe、CdS、ZnSe、InP、InAs、およびPbSe、ならびにそれらの混合物および固溶液である。
【0017】
無機のシェルは、(a)元素の周期表の2族、12族、13族または14族から選択される第1の元素および元素の周期表の16族から選択される第2の元素、(b)元素の周期表の13族から選択される第1の元素および元素の周期表の15族から選択される第2の元素、または(c)14族元素から構成され得る。適切な第2の物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:MgO、MgS、MgSe、MgTe、CaO、CaS、CaSe、CaTe、SrO、SrS、SrSe、SrTe、BaO、BaS、BaSe、BaTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、Al、Al、AlSe、AlTe、Ga、Ga、GaSe、GaTe、In、In、InSe、InTe、SiO、GeO、SnO、SnO、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbO、PbS、PbSe、PbTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、BPならびにそれらの第3級および第4級の混合物、化合物、および固溶液。好ましい第2の物質は、CdSe、CdS、ZnSe、ZnS、CdO、ZnO、SiO、AlおよびZnTeである。必要に応じて、分散物との適合性を提供するように選択される有機の被覆または他の被覆が、シェルを取り囲み得る。
【0018】
付加物は、一般的に元素の周期表の2族、元素の周期表の12族、元素の周期表の13族、元素の周期表の14族、元素の周期表の15族、および元素の周期表の16族ならびにFe、Nb、Cr、Mn、Co、Cu、およびNiから選択される物質で構成され、そしてまた半導体コア中に見られ得る。付加物(これは、界面領域に存在する)はまた、シェル全体にわたって存在し得る。シェルに存在する場合、付加物は、シェルに一様に分布し得るか、または半導体コアから外側に向かって減少していく濃度で存在し得る。いくつかの場合、付加物は、結晶構造を有する界面領域(コア物質の格子構造とシェル物質の格子構造との間での遷移的な格子構造として働く)を提供するように選択される。
【0019】
1つの好ましい実施形態において、半導体コアは、CdSeまたはCdTeであり、無機のシェルは、ZnSであり、そして付加物はCdである。別の好ましい実施形態において、半導体コアは、CdSeまたはCdTeであり、無機のシェルは、CdSであり、そして付加物はZnである。
【0020】
本発明のさらなる目的、利点、および新規の特徴は、一部、以下の説明において示され、そして一部、以下の試験において当業者に明らかであるか、または本発明の実施によって学ばれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、従来のコア−シェル構造の簡単な2−D描写を示す。
【図2】図2は、発光ナノ粒子の簡単な2−D描写を示し、ここでシェルは、界面領域により一緒にコアに結び付けられ、界面領域は、コアとシェルとの間に位置づけられ、そしてシェルおよびコアの化学物質のいくらかまたは全部で構成され得る。
【図3】図3は、コア−シェル構造の簡単な2−D描写を示し、ここで界面領域およびシェルは、勾配の形態をとる。
【図4】図4は、本明細書中で開示された方法によって調製された同等に発光する物質の光減衰(photo−decay)曲線と比較された標準的なコア−シェルナノクリスタルについての光減衰曲線を示す。
【図5】図5は、標準的なシェル反応に添加された硫黄の関数としてのコア−シェル輝度を示す。
【図6】図6は、実施例5において調製された発光ナノクリスタルについて保存溶液添加の関数としての発光の放出のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
(概要および定義)
本発明を詳細に説明する前に、他に示されない限り、本発明は、特定のナノ粒子物質または製造プロセス(これらは、変動し得るので)に限定されないことが理解されるべきである。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、そして制限されることが意図されないこともまた理解されるべきである。
【0023】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、その内容が明らかに他を示さない限り、複数参照を含むことに注意されたい。故に、例えば、「ナノ粒子(a nanoparticle)」は、1つのナノ粒子だけでなく、2つ以上のナノ粒子なども含む。
【0024】
本発明の説明および請求項において、以下の用語は、下記に示す定義に従って使用される。
【0025】
用語「ナノ粒子」は、約1nm〜約1000nmの範囲、好ましくは約2nm〜約50nmの範囲、より好ましくは約2nm〜約20nmの範囲の直径を有する粒子、一般的には、半導体粒子または金属粒子をいう。
【0026】
用語「半導体コア」は、無機半導体物質、無機半導体物質の混合物または固溶液、あるいは有機半導体物質から構成される、本明細書中に記載されるようなコアナノ粒子をいう。用語「無機のシェル」は、無機物質、あるいは無機物質の混合物または固溶液から構成される、本明細書中に記載されるようなシェルをいう。好ましくは、無機のシェルは、無機半導体物質または絶縁物質から構成される。
【0027】
用語「半導体ナノクリスタル」、「量子ドット」および「QdotTMナノクリスタル」は、本明細書中で交換可能に使用され、発光性である(すなわち、これらは励起した際に電磁放射を放出し得る)結晶性無機物質をいい、被覆物または第2の無機物質の「シェル」内に含まれる1つ以上の第1の半導体物質の内部コアを含む。無機のシェルに取り囲まれる半導体ナノクリスタルコアは、「コア−シェル」半導体ナノクリスタルと呼ばれる。周りのシェル物質は、好ましくは、コア物質のバンドギャップ(bandgap)エネルギーより長いバンドギャップエネルギーを有し、そしてコア物質の原子の間隔と近い原子の間隔を有するように選択され得る。コアおよび/またはシェルに適切な半導体物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:元素の周期表の2族、12族、13族または14族から選択される第1の元素および元素の周期表の16族から選択される第2の元素からなる物質(例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTeなど);元素の周期表の13族から選択される第1の元素および元素の周期表の15族から選択される第2の元素からなる物質(GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、BPなど);14族元素からなる物質(Ge、Siなど);PbS、PbSeなどのような物質;および合金、固溶液、ならびにそれらの混合物。本明細書中で使用される場合、元素の周期表およびそれらの族に対する全ての参照は、Handbook of Chemistry and Physics、第81版(CRC Press、2000)に示される元素族の番号付けについての新しいIUPAC系に対する。
【0028】
用語「固溶液」は、本明細書中で使用され、イオンまたはイオン基の、別のイオンまたは別のイオン基への交換の結果(例えば、いくらかのCd原子がZnで交換されたCdS)である組成のバリエーションをいう。これは、「混合物」と対称的であり、混合物のサブセットは、「合金」(本明細書中で使用され、そのメンバーが2つ以上の物質から構成され、それぞれがそれ自体を識別する特性を保持する、明確な特性を有する物質のクラスをいう)である。
【0029】
「発光」は、物体からの電磁放射線(例えば、光)を放射するプロセスを意味する。発光は、系が、光子の形態で対応するエネルギーの放出を伴って、励起状態から下位状態へ遷移する場合に生じる。これらのエネルギー状態は、電気的状態、振動状態、回転状態、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。発光を担う遷移は、系において貯蔵されるエネルギーの放出を介して化学的に刺激され得るか、動力学的に刺激され得るか、または外部供給源から系に添加され得る。エネルギーの外部供給源は、化学的、熱的、電気的、磁気的、電磁的、物理的または系が基底状態より高い状態に励起されるのを引き起こし得る任意の他の型を含む、種々の型であり得る。例えば、系は、光の光子を吸収することによって、電場に配置されることによって、または化学的な酸化−還元反応を介して、励起され得る。発光の間に放射される光子のエネルギーは、低いエネルギーマイクロ波放射から高エネルギーX線放射までの範囲であり得る。代表的に、発光は、UVからIR放射までの範囲の電磁放射をいい、そして通常、可視電磁放射(すなわち、光)をいう。
【0030】
用語「単分散」は、粒子の集団(例えば、コロイド系)をいい、ここで、粒子は、実質的に同一な大きさおよび形を有する。本発明の目的のために、粒子の「単分散」集団は、少なくとも約60%の粒子、より好ましくは、約75%から約90%の粒子が、特定の粒子の大きさの範囲に収まることを意味する。単分散粒子の集団は、直径が10%rms(平方自乗平均)未満、そして好ましくは5%rms未満偏向する。
【0031】
句「ナノ粒子の1つ以上の大きさ」は、句「ナノ粒子の1つ以上の粒子の大きさの分布」と同義に使用される。当業者は、ナノ粒子(例えば、半導体ナノ結晶)の特定の大きさが、粒子の大きさの分布として実際に得られることを理解する。
【0032】
半導体ナノ結晶の電磁放射線発光に関する、用語「狭域波長帯域」、「狭域振幅」または「狭域スペクトル線幅」の使用は、発光の波長帯域が、約60nmを超えない発光の波長帯域、好ましくは約30nmの幅を超えない、およびより好ましくは約20nmの幅を超えず、そして中心についてほぼ対称性である波長帯域を意味する。言及される帯域幅は、発光の半波高全幅値(FWHM)の測定から決定され、そして、200nmから2000nmの発光の範囲で適切であることに注意すべきである。
【0033】
半導体ナノ結晶の励起に関する、用語「広域波長帯域」の使用は、開始放射線の波長と等しいかまたはそれより短い波長を有する放射線の吸収を意味する(開始放射線は、半導体ナノ結晶によって吸収され得、そして光学的に放射性の発光を生じる最も長い波長の(最も低いエネルギー)放射線であることが理解される)。この開始は、発光の「狭域波長帯域」の近くで、しかし、これよりもわずかに高いエネルギーで発生する。これは、高いエネルギー側の発光ピークの近くで発生する色素分子の「狭域吸収帯域」とは対照的であるが、その波長から迅速に落ちて、そして、しばしば、発光から100nmより遠い波長において無視できる。
【0034】
用語「発光ピーク」は、特定の大きさの分布を有する半導体ナノ結晶によって示される特徴的な発光スペクトル内で、最も高い相対強度を有する光の波長をいう。
【0035】
用語「励起波長」は、半導体ナノ結晶のピーク発光波長よりも短い波長(高いエネルギー)を有する電磁エネルギーをいう。
【0036】
(発光ナノ粒子)
新規のコア−シェル構造を包含する発光ナノ粒子の調製方法を、本明細書中に開示する。この方法によって調製された発光ナノ粒子もまた開示される。理論に束縛されることは望まれないが、これらの方法は、コア物質とシェル物質との間の格子構造の不一致を補うことによって半導体コア上の高品質の厚いシェルの過成長を促進するようである。この補償は、以下に提案されるいくつかのコア−シェル構造の1つ以上を生じ得る。簡便なコア−シェル構造を、図1に示す。
【0037】
第1の実施形態において、発光ナノ粒子の調製方法およびそれによって調製された発光ナノ粒子を提供する。この方法は、単離された半導体コアを提供する工程を包含する。単離されたコアを、第1のシェル前駆体、第2の前駆体、本明細書中に記載されるような溶媒および添加剤と混合して、反応性の分散物を形成する。反応性の分散物を、半導体コア上での無機物シェルの形成を誘導するのに十分な温度まで、十分な時間加熱する。
【0038】
この方法の1つのバリエーションにおいて、添加剤および溶媒を、第1および第2のシェル前駆体の添加前に、単離された半導体コアに添加する。シェル前駆体の添加前に、コア−添加剤−溶媒混合物を、適切な温度(例えば、摂氏50〜300℃)まで加熱し得る。必要に応じて、シェル形成を誘導するのに十分な温度まで加熱する工程を、第1および第2のシェル前駆体の添加と同時に開始し得る。
【0039】
この方法のなお別のバリエーションにおいて、溶媒および単離された半導体コアを混合する。このように形成された混合物を、添加剤および第1のシェル前駆体とを混合する。続いて、第2のシェル前駆体を添加し、そしてシェル形成を誘導するのに十分な温度までこの反応物を加熱する工程を、第2のシェル前駆体の添加の前か同時に開始し得る。
【0040】
この方法のなお別のバリエーションにおいて、溶媒、半導体コアおよび第1のシェル前駆体を混合、その後添加剤をそれらへと添加し、次いで第2のシェル前駆体を添加する。シェル形成を誘導するのに十分な温度までこの反応物を加熱する工程を、第2のシェル前駆体の添加の前か同時に開始し得る。
【0041】
シェル前駆体および添加剤の添加は、反応混合物への予め調製されたその溶液を滴下するか、迅速に注入することによってなされ得る。
【0042】
別の実施形態において、発光ナノ粒子を提供する。発光ナノ粒子は、単分散粒子集団のメンバーである半導体コアから構成される。単分散粒子集団は、一般的に、コアの直径において10%rms以下の偏向、好ましくは5%rms以下の偏向を示す。半導体コアは、第1の格子構造を有する第1の半導体物質から構成される。半導体コアの周囲は、第2の格子構造を有する第2の無機物質から構成される無機シェルである。シェルが半導体コアに接触する、界面領域が形成される。発光ナノ粒子はまた、界面領域に単独で存在し得るかまたは界面領域およびシェルの両方に存在し得るか、あるいはコア、界面領域およびシェルに存在し得る添加物を含み得る。
【0043】
半導体コアおよび/またはシェルのためのコア物質およびシェル物質としての使用に適切な組成物としては、限定されないが、以下が挙げられる:周期表の元素の2族、12族、13族または14族から選択される第1の元素および16族から選択される第2の元素から構成される物質(例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTeなど);周期表の元素の13族から選択される第1の元素および15族から選択される第2の元素から構成される物質(例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、BPなど);14族の元素から構成される物質(Ge、Siなど);PbS、PbSeなどのような物質;ならびにこれらの合金、固溶体および混合物。
【0044】
添加剤は、2族、12族、13族、14族、15族および16族の元素ならびにFe、Nb、Cr、Mn、Co、CuおよびNiからなる群から選択され得、そしてまた半導体コア中に見出され得る。1つの実施形態において、添加剤は、単純に、超豊富な(super−abundance)シェル前駆体のうち1つである。添加剤は、界面領域にのみ存在し得るか、または界面領域およびシェルの両方に存在し得るか、あるいは、コア、界面領域およびシェルに存在し得る。あるいは、添加剤は、ナノ粒子に少しも取り込まれないかもしれないが、半導体コア上の高品質な厚いシェルの過成長を単に促進し得る。シェル中に存在する場合、添加剤は、シェル全体に均一に分布し得るか、または勾配として(すなわち、半導体コアから外向きの方向で減少していく濃度を示す勾配として)分布し得る。
【0045】
上記で議論されるように、1つの実施形態において、発光ナノ粒子は、シェルがシェルとコアとの接合点で形成された界面領域によって半導体コアに結び付けられるコア−シェル構造を含む。この界面領域は、一般的に、シェルおよびコアからのいくつかまたは全ての化学元素から構成される固溶体の形態であり、そしてまた添加剤を含む(図2を参照のこと)。界面領域は、不連続であり得るか、単層を含むか、または多くの単層を含み得、そしてこの領域は、元素のいくつかの組み合わせを取りこみ得る。例えば、CdSe(コア)、Cd(添加剤)およびZnS(外層)を有するナノ結晶において、界面領域は、Cd/Zn/S、Cd/Se/ZnまたはさらにCd/Se/Zn/Sの組み合わせを含み得る。この領域はまた、コア構造またはシェル構造のいずれかに対してネイティブでない元素を含み得る。例えば、CdSe/ZnS/Cdコアにおいて、少数の酸素原子が、合成の間、界面領域へととり込まれ得る。添加剤として使用され得、そして第1および第2のコア前駆体でも、第1および第2のシェル前駆体でもない別の元素としては、Fe、Nb、Cr、Mn、Co、CuおよびNiが挙げられる。
【0046】
別の実施形態において、発光ナノ粒子は、第2の物質および添加剤が、固溶体勾配の形態で存在するコア−シェル構造を含む(図3を参照のこと)。CdSe/ZnS/Cdの例において、シェルは、主にコアに近接するCdおよびSeならびに主に表面に近接するZnおよびSを含み、そして半導体コアからの距離が増加するにつれたこれらの極端の間の多少滑らかな組成上の勾配を含む。
【0047】
なお別の実施形態において、発光ナノ粒子は、全部(または全部に近い)のシェル自体が、添加剤および第2の半導体物質の固溶体であるシェル構造を有する。再び、この場合において、固溶体は、第2の半導体物質および添加剤中の元素のいくつかの組み合わせを含み得る(いくつかの可能な組み合わせは、全ての元素を含まない)。
【0048】
これらのコア−シェル構造の増強された特性を説明するような代替の理論が、同様に存在する。例えば、添加剤は、ナノ粒子に取り込まれ得るが、格子整合(matching)剤として作用しない。この場合において、得られた材料の増強された特性は、粒子の基底状態および/または励起状態のさらなる電子的安定化の結果であり得る。添加剤は、全く粒子に取り込まれる必要がないこともまた可能である。この場合において、添加剤は、(例えば、動力学的バリアの低下または酸化還元化学の促進によって)上位の形態での下に存在するコア上へのシェル物質の分散を堆積し得る。
【0049】
上記の全ての実施形態において、シェルは、一般的に、約0.1〜約20単層(約4〜約15単層が代表的である)から構成され、そしてコアの直径は、約20Å〜約125Åの範囲内である。発光ナノ粒子の直径は、約1nm〜約1000nmの範囲、好ましくは約2nm〜約50nmの範囲、およびより好ましくは、約2nm〜約20nmの範囲である。1つまたは両方が添加剤に置き換えられ得る場合、単層は、第3の元素および第4の元素の各々の1つから構成される。
【0050】
照射される場合、半波高全幅値(FWHM)で測定される場合、ナノ粒子は、約60nmを超えない、好ましくは約30nmを超えない、およびより好ましくは約20nmを超えない、帯域幅で光を発光する。CdSeについて、発光ナノ粒子によって示された蛍光ルミネセンス量子の収率は、約30%より高く、そして発光ナノ粒子によって示された狭域バンドギャップエッジの発光は、約440nm〜約660nmのスペクトルの範囲である。
【0051】
さらに、発光ナノ粒子はまた、シェル上で有機保護膜または他の保護膜でコートされ得る。保護膜は、懸濁媒体との適合性を提供するように選択された材料から構成され得る(例えば、懸濁媒体に対する親和性を有する部分、および表面に対する親和性を保有する部分で終了する短鎖ポリマー)。適切な保護膜材料としては、限定されないが以下が挙げられる:ポリスチレン、ポリアクリレートまたは他のポリマー(例えば、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリビニル、ポリ−ジアセチレン、ポリフェニレン−ビニレン、ポリペプチド、ポリサッカリド、ポリスルホン、ポリピロール、ポリイミダゾール、ポリチオフェンおよびポリエーテル;エポキシ;石英ガラス;シリカゲル;チタニア;シロキサン;ポリホスフェート;ヒドロゲル;アガロース;セルロースなど。コーティングは、約2〜100nmの範囲の厚さ、好ましくは2〜10nmの範囲の厚さであり得る。
【0052】
(調製および合成)
本明細書中に記載される方法は、半導体コアおよび無機物シェルの合成の間、元素の導入の程度および性質を制御するために、体系的な合成様式において使用され得る。この方法は、単一の反応容器内(すなわち、「ワンポット(one−pot)」合成)で行なわれ得るか、または半導体コアおよび無機物シェルの分離合成を使用して行なわれ得る。
【0053】
コアは、多くの方法によって調製され得る。1つの実施形態において、コアは、別個の粒子の均質な核形成を誘導するのに十分な温度に保たれた反応溶液に、第1および第2のコア前駆体を注入することによって調製される。核形成に次いで、粒子を、所望の大きさに達するまで成長させ、次いで、反応温度を下げることによってクエンチする。半導体ナノ結晶コア生成の他の方法は、例えば、以下において提供される:米国特許第6,306,736号(Alivisatosらに対して2001年10月23日に発行された)、同第6,225,198号(Alivisatosらに対して2001年5月2日に発行された)、同第6,207,229号(Bawendiらに対して2001年3月27日に発行された)、同第6,048,616号(Gallagherらに対して2000年4月11日に発行された)、同第5,990,479号(Weissらに対して1999年11月23日に発行された)、同第5,985,173号(Grayらに対して1999年11月16日に発行された)、同第5,690,807号(Clark,Jr.らに対して1997年11月25日に発行された)、同第5,505,928号(Alivisatosらに対して1996年4月9日に発行された)、同第5,262,357号(Alivisatosらに対して1993年11月16日に発行された);米国出願番号09/971,798,表題「Synthesis of Colloidal Nanocrystals」(US 2002−0066401(発明者:Pengら)として2002年6月6日に公開された)、同09/751,670、表題「Flow Synthesis of Quantum Dots」(US 2002−0083888(発明者:Zehnderら)として2002年7月4日に公開された)および同09/732,013、表題「Preparation of Nanocrystallites」(US 2002−0071952(発明者:Bawendiら)として2002年6月13日に公開された);PCT公開番号WO 99/26299(1999年5月27日に公開された(発明者:Bawendiら));およびMurrayら(1993)J.Am.Chem.Soc.115:8706−8715;Guzelianら(1996)J.Phys.Chem.100:7212−7219;Pengら(2001)J.Am.Chem.Soc.123:183−184;Hinesら(1996)J.Phys.Chem.100:468;Dabbousiら(1997)J.Phys.Chem.B 101:9463;Pengら(1997)J.Am.Chem.Soc.119:7019;Pengら(1998)J.Am.Chem.Soc.120:5343;およびQuら(2001)Nano Lett.1:333−337。
【0054】
コア反応の成長期の間、粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、サンプルの吸着または発光のピーク位置および線幅をモニターすることによって近似され得る。スペクトルにおける変化に対して応答する、反応パラメーター(例えば、温度およびモノマー濃度)の動態的改変は、これらの特性の調整を可能にする。
【0055】
このように調製されたコアは、当業者に周知の方法(例えば、非溶媒(例えば、メタノール)を用いた綿状反応)を使用して単離され得る。必要に応じて、このように調製され、そして単離されたコアは、シェル形成の前にアミン処理工程に共され得る。このようなアミン処理は、Talapinら(2001)Nano Letters 1:207によって開示され、そして当業者によって十分に理解される。一旦個々の半導体コアを含有する単分散粒子集団が形成されると、半導体コアは、第1の溶媒から単離され得、次いでコア溶液を形成するために第2の溶媒中に配置され得る。添加剤前駆体もまた、コア溶液中に含まれ得る。
【0056】
あるいは、コア溶液は、単に、コアの単分散集団が形成される元の溶液からなり得る。この方法を使用して、発光ナノ粒子は、「ワンポット」合成で形成され得る。添加剤を、コア溶液を形成するための単分散粒子集団を含有する溶液に添加するだけで良い。添加剤が、半導体コアの1つの元素からなり得る場合、単分散粒子集団を含有する溶液は、「そのまま」(すなわち、このように形成されたコアのさらなる精製または単離なしで)使用され得る、第1または第2のコア前駆体の十分な量(例えば、添加されるコア前駆体の量に対して少なくとも5%の集団中の過剰な未反応のコア前駆体、好ましくは、添加されるコア前駆体の量の対して10%〜50%の集団中の未反応のコア前駆体)が溶液中に残っていれさえすれば、1回のコアの合成が完了する。必要である場合、さらなる第1または第2の前駆体あるいは他の添加剤が添加され得る。
【0057】
次いで、コア溶液は、シェル形成を誘導するのに十分な温度まで加熱され、そして第1のおよび第2のシェル前駆体が、注入される。シェルが半導体コア上で形成される温度は、得られるナノ粒子の質に関与する。比較的高い温度でのシェル形成は、オストワルド熟成を介して個々のコアに成長を開始させ得、粒子のサイズ分布の悪化を生じ、より広がったスペクトル線幅を引き起こす。比較的低い温度でのシェル形成は、前駆体の不完全な分解またはシェルの格子構造の減少した整合性を引き起こし得る。シェルを形成するための代表的な温度は、約100℃〜約300℃の範囲である。実際の温度範囲は、前駆体および半導体コアの相対的安定性に依存して、変化し得る。コア−シェル発光ナノ結晶の調製は、例えば、Bawendiらに対する米国特許第6,207,229号に開示される。
【0058】
添加剤前駆体ならびに第1および第2のシェル前駆体の濃度、ならびにコア溶液に対するこれらの前駆体の添加速度は、均質な核形成よりも半導体コア上でのシェルの不均質成長を促進するように選択され、第1および第2のシェル前駆体の元素からなる半導体コアを生成する。不均質な成長を支持する条件としては、コア溶液への第1および第2のシェル前駆体を含有する溶液の滴下(例えば、1〜2滴/秒)ならびに低濃度での前駆体の維持が挙げられる。低濃度は、代表的に、0.0005〜0.5Mの範囲である。この様式において、シェルは、半導体コアとシェルとの間に形成される界面領域を伴って半導体コア上で形成される。
【0059】
半導体コアとシェルとが接触する界面領域は、シェルおよびコアの両方の元素ならびに添加剤の元素を含み得る。理論に束縛されることを望まないが、発光ナノ粒子の少なくとも界面領域へのこのような添加剤の取り込みによって、コアおよびシェルの格子構造における差異によって引き起こされるコア−シェルの界面における応力が、減少され得ると考えられる。これらの応力の減少は、強くかつ均一なコア−シェル複合体を非常に改善するように役立つ。
【0060】
コアおよびシェル前駆体の多くの化学形態が、本発明の方法において使用され得る。例えば、MeCdのような有機金属前駆体は、酸化物(例えば、CdO)または塩(例えば、CdCl、Cd(アセトアセトネート)、Cd(アセテート)およびCd(NO)と同じように使用され得る。他の適切な前駆体としては、元素状態の前駆体(例えば、元素状態のSe)、トリ−アルキルホスフィン付加物、プロトン性の化合物(例えば、HSeまたはNaHSe)が挙げられる。適切な有機金属前駆体は、Bawendiらに対する米国特許第6,322,901号および同第6,207,229号に開示され、そして前駆体物質として弱酸を使用する合成方法は、Quら(2001)「Alternative Routes toward High Quality CdSe Nanocrystals」,Nano Lett.,1(6):333−337,米国出願番号09/971,798,表題「Synthesis of Colloidal Nanocrystals(US 2002−0066401(発明者:Pengら)として2002年6月6日に公開された)および同09/732,013表題「Preparation of Nanocrystallites」(US 2002−0071952(発明者:Bawendiら)として2002年6月13日に公開された)に開示される。
【0061】
従って、第1および第2のコア前駆体、第1および第2のシェル前駆体または添加剤前駆体のいずれか1つとして使用するための適切な化学形態としては、限定されないが、以下が挙げられる:16族の元素;16族の元素のトリアルキルホスフィン(例えば、トリ−n−ブチルホスフィン置換されたSe);ビス−トリアルキルシリル置換された16族の元素(例えば、ビス(トリメチルシリルセレニド));およびそれらの混合物;2族、12族および14族の金属酸化物;C1〜4アルキル置換された2族、12族および14族の金属;弱酸(例えば、アセテートおよびカルボネート)の2族、12族および13族の金属塩;ならびに2族、12族、13族および14族の金属;およびそれらの混合物。
【0062】
適切な第1の溶媒および第2の溶媒は、以下からなる群より選択され得る:酸(特に脂肪酸)、アミン、ホスフィン、酸化ホスフィン、ホスホン酸(およびホスホルアミド、リン酸、リン酸など)、ならびにこれらの混合物。アルカン、アルケン、ハロ−アルカン、エーテル、アルコール、ケトン、エステルなどを含む他の溶媒はまた、これに関して、特に、添加されるナノ粒子リガンドの存在下で、有用である。第1の溶媒および第2の溶媒は、同じであり得、そして「ワンポット(one−pot)」型シリンジにおいて同じ溶液を含み得ることが理解される。好ましい酸としては、ステアリン酸およびラウリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。適切なアミンとしては、ドデシルアミンのようなアルキルアミンが挙げられるがこれらに限定されない。好ましいホスフィンとしては、トリオクチルホスフィンが挙げられるが、これらに限定されず;好ましい酸化ホスフィンとしては、酸化トリオクチルホスフィンが挙げられるがこれらに限定されず;そして好ましいホスホン酸としては、テトラデシルホスホン酸が挙げられるがこれらに限定されない。溶媒は、上記の溶媒のいずれかの混合物を含み得ることが理解される。
【0063】
「ワンポット」法において、半導体コア合成からの「キャリーオーバー(carry−over)」前駆体が、シェル形成の間の添加材料として用いられ得る。多くのコア形成反応が、これらの反応が完了に進まないような様式で行われ得る。他のコア形成反応は、過剰の試薬の存在下で行われる。これらの条件下で形成されたコアは、単離および精製なしに、キャリーオーバー過剰前駆体および/または未反応前駆体と共に、シェル形成反応に添加され得る。実際、オーバーコーティング手順が、添加される前駆体の量に対して、少なくとも5%の割合で過剰の未反応の前駆体を含む、低(粒子)収率のコア反応から未精製の溶液を用いて行われる場合に、非常に薄いシェル、固有の形態、および驚くべく光物理学的特性を有する材料の形成が生じることが観察されている。好ましくは、未反応の前駆体は、添加される前駆体の量に対して10%〜50%の割合である。さらに、キャリーオーバー前駆体と同じまたは異なり得る添加剤が、コアと組み合わされて、キャリーオーバー量を増大し得る。
【0064】
本明細書中に記載される方法は、(最終粒子の廃棄性によってのみ制限される)所定の厚さのシェルの添加を可能にする。本発明はまた、実質的に低い環境感受性(例えば、クエンチャーとしてのメタノールの存在に対する低下した感受性)である、非常に安定(不活性)な材料を調製する方法を提供する。図4に示されるものは、本明細書中に開示される方法により調製された比較的発光性の材料についての光崩壊曲線と比較した、標準的なコア−シェルナノクリスタルについての光崩壊曲線である。
【0065】
本発明は、コア−シェル構造を調製する以前の方法を超えるさらなる利点を提供する。以前の合成方法から得られるシェルは、コアを完全に電気的に絶縁するとは考えられないので、励起した電子および/またはホールは、コア−シェルナノクリスタル中のシェル層を通り抜け得る。このことは、コア発光エネルギーに対するコア−シェル発光における赤色移動を導く。このプロセスは、代表的に、十分に制御されない。一般的に、より大きなシフトが、より小さな粒子で見られ、そして最小のシフトがより大きな粒子で見られるか、またはシフトがより大きな粒子で見られない。本明細書中に記載されるこの方法は、このプロセスに対してさらなる程度の制御を加え、大きなまたは小さな粒子で大きなシフトを可能にし、その結果、色変化を促進させる。本発明の関連する利点は、この方法が、以前の方法により生じる発光スペクトルよりも、実質的により狭い発光スペクトルを有するコア−シェルナノ粒子を生じるという事実から生じる。さらに、有機リガンドまたは生物学的リガンドを有するコア−シェルナノクリスタル表面の改変は、重要な科学的挑戦を表し;シェル中の添加要素を取込む能力は、重要な表面 対 リガンド相互作用を調節する別の手段を提供する。最後に、シェルに対するこのような改変は、弱められた発光間欠性挙動を有する材料の調製を可能にするようである。
【0066】
本発明は、その好ましい特定の実施形態と共に記載されているが、先の記載および以下の実施例は、本発明の範囲を例証し、そしてこれを限定しないことを意図されることが理解される。本発明の範囲内の他の局面、利点、および改変は、本発明が属する当業者に明らかである。
【0067】
本発明の実施は、他に述べない限り、当業者の範囲内にある合成無機化学および有機化学などの従来の技術を用いる。このような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、Kirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology;およびHouse’s Modern Synthetic Reactionを参照のこと。
【実施例】
【0068】
以下の実施例は、本明細書中に開示されそして特許請求される組成物を調製および使用する方法の完全な開示および記載を、当業者に提供するように示される。数(例えば、量、温度、割合、時間など)に関する精度を保証するための努力がなされたが、いくらかの誤差および偏差は、考慮されるべきである。他に示されない限り、部は、重量部であり、温度は摂氏(℃)であり、そして圧力は、大気圧かまたは大気圧付近である。さらに、全ての出発材料を購入したか、または既知の手順を用いて合成した。以下の実施例の全てにおいて、材料を以下のように得た;トリ−n−オクチルホスフィン(TOP)およびビス(トリメチルシリル)スルフィドは、Flukaから得た;トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)(90%)は、Alfa Aesarから得た;ジメチルカドミウム、ジエチル亜鉛、およびセレン元素は、Stremから得た;カドミウムジアセテート(無水)は、Prochemから得た;そしてテトラデシルホスホン酸(TDAP)は、J.Chemから得た。
【0069】
(実施例1)
(追加のジメチルカドミウムを用いるコア−シェルナノクリスタルの調製)
トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO、30g)を、マントルヒーター上の攪拌子を含み、そしてバンプトラップおよび熱電対(および温度コントローラー)を備えた、3つ首丸底フラスコ中で、180℃で減圧下1時間脱気した。溶融反応物を、乾燥N雰囲気下に置いて、350℃に加熱した。不活性雰囲気のグローブボックスの中で、Se(360mg)を、トリ−n−オクチルホスフィン(TOP、20mL)の中でジメチルカドミウム(230μl)と混合した。シングルラピッドインジェクションにおいて、このTOP溶液を、反応物から熱源を取り除いた後に、熱TOPOポットに添加した。インジェクションの後、温度を、265℃まで下げ、そして290℃に加熱した。1℃/時間の傾きで熱を上げながら、粒子の最大発光が608nmに達するまで、6.5時間反応に供した。この反応物を、100℃まで冷却した。デシルアミン(11mL)をシリンジを介して添加し、そして加熱を一晩維持した。
【0070】
類似の反応装置を用いて、第2の部分のTOPO(15g)を、180℃にて3時間減圧下で脱気し、次いで、N下に置いて、そして60℃に冷却した。一部の攪拌しているCdSeコア反応物(3.4mL)を、1mLのジメチルカドミウムストック溶液(10mLのTOP中120μl)と共にこの新しい反応物に移した。この反応物を、215℃まで加熱した。ジエチル亜鉛(208mg)、ビス(トリメチルシリル)スルフィド(300mg)、およびTOP(12.3g)からなるオーバーコーティングストック溶液を、約1時間の過程にわたって反応物へと滴下した。このストックの添加後、215℃にて10分間、加熱を続けた。最終的に、反応物を、90℃まで冷却して、そして一晩攪拌した。オーバーコーティング反応をまた、比較の目的のためにジメチルカドミウムストック溶液の非存在下で実行した。
【0071】
2つのサンプルのTEM分析は、反応物へのジメチルカドミウムの添加が、コントロール(ジメチルカドミウムを添加しない)反応についての1.5単層と比較して、約5単層厚であった、シェルの成長を可能にしたことを示した。この観察と一致して、コントロール実験における6nmと比較して、19nmのCdSeコアに対するシェルの添加の際の発光シフトを観察した。254nmでの遠UV照射下での光安定性もまた比較し、そしてカドミウム含有金属が、実質的により光不活性であることを見出した。発光スペクトルにおける(裸のコアに対する)有意な狭小化もまた観察した。
【0072】
(実施例2)
(追加のカドミウムジアセテートを用いるコア−シェルナノクリスタルの調製) ナノクリスタルを、シェルオーバーコーティング手順におけるジメチルカドミウム/TOP溶液を、カドミウムジアセテート/TOP溶液と交換した以外、実施例1に記載されるのと類似の様式で調製した。カドミウムジアセテート/TOP溶液の0.67M溶液の0.25mLを用いた。得られたオーバーコーティングされたナノクリスタルは、実施例1で調製されたものと類似のシェル厚を表した。光安定性もまた同等であった。
【0073】
(実施例3)
(添加剤として非常に大量のシェル前駆体を用いるコア−シェルナノクリスタルの調製)
コア反応を、ナノ粒子の発光ピークが608nmではなく622nmに達した時に、反応を停止した以外、実施例1に記載されるように実行した。ジメチルカドミウムも、カルシウムジアセテートもシェル反応物に添加しなかった。シェルストック溶液は、TOP(6.3g)、ジエチル亜鉛(206mg)、およびビス(トリメチルシリル)スルフィド(450mg)を含んだ。シェル反応を、図5に示されるS前駆体:Zn前駆体比で含んで行った。さらに、コントロール反応を、1:1のモル比のS前駆体とZn前駆体を用いて行った。シェル厚および粒子の形態を、全てのS前駆体:Zn前駆体比について評価した。劇的な差異を、粒子の明るさにおいて観察し:0.76および0.22の発光量子収率を、それぞれ、1.5:1のS前駆体:Zn前駆体モル比反応物およびコントロール反応物について測定した(図5を参照のこと)。
【0074】
(実施例4)
(イオン性前駆体のみを用いるコアおよび改変型シェル)
(CdSeコア合成)
セレンの第1の前駆体溶液を、10mLのTBP(トリ−n−ブチルホスフィン)中に0.79gのSeを溶解することにより調製した。カドミウムの第2の前駆体溶液を、50gの最終重量までTOP中の5.76g無水カドミウムアセテートを溶解することにより調製した。
【0075】
丸底フラスコ中で、21g TOPO(>95%の純度)を、Nを噴霧しながら、7.09gのカドミウムアセテート/TOP第2前駆体溶液、1.97gテトラデシルホスホン酸、および5.47mL TOPと混合し、そして250℃に加熱した。一旦、温度が250℃に達すると、噴霧を止め、温度を270℃に上げて、そしてこの温度を20分間維持した。初めから終りまで、溶液を攪拌しながら維持した。次いで、7mLのTBP(99%の純度)を注入し、温度低下をもたらした。温度コントローラーを290度に設定した。温度が270℃に戻ったとき、4.96mLの前もって調製したTBP:Se第1前駆体溶液を迅速に注入した。反応を冷却により停止した。最終の発光ピークを、569nmであり、26nmの半分の高さでの全幅(full−width at half height)(FWHM)を有した。
【0076】
(ZnSシェル合成)
上で調製したCdSe粒子(「コア」)の10mLを、20mLの75%メタノール/25%イソプロパノール(v/v)で凝集させた。遠心分離後、コアを5mLのヘキサン中に再分散させた。
【0077】
3g TOPOを、丸底フラスコ中で減圧下180℃にて1時間脱気した。3mL TOPおよび2mL TBPを、脱気したTOPOに添加した。ヘキサン中のコアの分散物を添加し、そして30〜60℃にて減圧下でヘキサンを除去した。次いで、2.5mLのデシルアミンを添加し、そして合わせた溶液を、100℃にて一晩維持した。
【0078】
2gの前もって調製したカドミウムアセテート/TOP第2前駆体溶液を、2.6mL TOPおよび0.557g TDPAと丸底フラスコ中で混合した。混合物を250℃まで加熱し、次いで、60℃まで冷却した。2mLのこの混合物をアミンで処理したコアに添加した。
【0079】
第3の前駆体溶液を、4g TOP、53mgジエチル亜鉛および76mgビス−トリメチルシリルスルフィドを混合することにより作製した。
【0080】
4g TOPO(工業用グレード)を、丸底フラスコ中で、減圧下にて180℃で3時間脱気した。11mLのカドミウムを加えた、デシルアミン処理コアを、このフラスコに添加した。このフラスコを215℃に加熱した。第3の前駆体ストック溶液を、コアを含むフラスコに、20μL/分の速度で添加した。添加の後、フラスコを冷却させ、そして10mLのトルエンを、保存の前に添加した。
【0081】
最終発光ピークは、607nmであり、23nmの半分の高さでの全幅(FWHM)を有した。量子収率(95%標準ローダミン101に対する)は、53%であった。
【0082】
(実施例5)
(CdTe/ZnSコア−シェル構造)
(CdTeコアの調製)
TDPA(0.56g)、TOPO(5.00g)、およびTeflon(登録商標)をコーティングした小さな攪拌子を、3つ首丸底フラスコ中に置いた。このフラスコを、マグネチックスターラープレート上の60Wマントルヒーター内の所定の位置に固定し、白いゴム製のセプタムを装着し、コンデンサーを真空−窒素マニホルドに接続し、そして熱電対を温度コントローラーに接続した。リアクタを真空にし、そして窒素を三回充填し、そして減圧下で攪拌しながら100℃に加熱し、これを3時間維持した。容器を窒素で充填し、そして窒素ブランケットを維持した。シリンジにより、TOP中のカドミウムアセテート(0.5m、2.00g)を、セプタムを通して添加した。2つの18ゲージの針をセプタムに挿入し、そしてリアクタに窒素を噴霧しながら、温度を320℃まで上げた。これら2つの針を、250℃で取り除いた。温度が初めて310℃になった10分後、TOP中のTOP:Te(1.75m、0.86g)をシリンジにより添加した。マントルヒーターを4.25分後に取り除き、そして反応物を冷却させた。反応物が100℃に冷却されたとき、トルエン(4.8mL)を添加した。攪拌しながら、メタノール(14.5mL)を添加し、そして凝集したコアを遠心分離により単離した。コアを5mLのメタノールでリンスし、そして風乾させた。ヘキサン(14mL)を添加してコアを分散させた。
【0083】
(CdTe/ZnSコア−シェルの調製)
ヘキサン(3.5mL)中に分散させたCdTeコアを、TOPO(5.00g)を含む3つ首丸底フラスコに添加した。フラスコに、真空−窒素マニホルドに接続した6インチコンデンサー、白色のゴム製セプタム、および温度コントローラーに接続された熱電対を装着した。ヘキサンを加熱なしに減圧下で除去し、温度を室温未満に低下させた。一旦真空になると、反応物を100℃に加熱し、そして90分間維持した。窒素に切り替えた後、TOP(2.50g)およびデシルアミン(4.35mL)を添加した。反応物を100℃にて一晩維持した。TDPA(0.336g)を、ゴム製セプタム、真空−窒素マニホルド接続部、および温度コントローラーに接続した熱電対を備えた、25mLの3つ首丸底フラスコ中に置いた。リアクタを真空にし、そして窒素を3回充填した。TOP中のカドミウムアセテート(0.5m、1.21g)およびTOP(1.30g)を、窒素下で添加し、そして反応物を250℃に加熱し、引き続いて、100℃に冷却した。熱液体をコアに移した。混合しながら、ジエチル亜鉛(0.075g)を、TOP(0.50g)を含むバイアルに添加した。この混合物に、ビス(トリメチルシリル)スルフィド(0.108g)を混合しながら添加した。このバイアルを旋回させて内容物を混合し、シリンジに移した。CdTeコア溶液を215℃に加熱し、そして亜鉛/イオウ/TOP溶液を、1mL/時間で添加した。最後に、温度を90℃に低下させ、これを1日維持した。ストック溶液添加の関数としての発光の発生のプロットを、図5に表す。
【0084】
この実験において、カドミウム(塩の形態)を、Zn/Sシェルオーバーコーティング反応における添加剤として用いた。テルルを、(恐らくTOP付加物の形態で)代わりに添加して、シェルに添加される潜在的なコア由来の要素の別の例を提供し得る。さらに、セレン(潜在的にTOPとの付加物として)を、カドミウムまたはテルルの代わりに用い得る。セレンは、コアに対してもシェルにも対してもネイティブではないが、性質においてイオウとテルルとの間の中間物であり、従って、十分に有望な候補物である。
【0085】
(実施例6)
(コアをシェルを有するCd(II)前駆体から作製する:添加剤としてのコア反応物の成分の使用)
(コア合成)
セレン(Se)の第1の前駆体溶液を、10mlのTBP中に0.79gのSeを溶解することにより調製した。カドミウムの第2の前駆体溶液を、40mLの最終容量まで、TOP中に6.15gの無水カドミウムアセテートを溶解することにより調製した。
【0086】
丸底フラスコ中に、3gのTOPO(>95%の純度)を0.76mLのカドミウムアセテート/TOP第2前駆体溶液、0.282gのTDPAおよび1.24mLのTOPと混合し、そしてNを噴霧しながら250℃まで加熱した。一旦、温度が250℃に達すると、噴霧を止め、温度を270℃に上げ、そしてこの温度を20分間維持した。初めから終りまで、溶液を攪拌しながら維持した。次いで、1mlのTBP(99%の純度)を注入し、温度を低下させた。次いで、温度コントローラーを290℃に設定した。温度が270度に戻ったとき、0.71mLの事前に調製したTBP:Seの第1前駆体溶液を迅速に注入した。TBP:Seを注入した11分後、反応を、熱源を取除くことにより停止して、コア分散物を形成させた。コア分散物中のコアの最終発光ピークは、582nmであり、25nmの半分の高さでの全幅(FWHM)を有した。
【0087】
(シェル合成)
2.0mLのデシルアミンを、コア分散物に添加した。それによって形成された、デシルアミン/コア分散物を100℃にて一晩維持した。11gのTOPO(Alfa、工業用グレード)を、丸底フラスコ中で減圧下で180℃にて1時間脱気した。3mlのデシルアミン/コア分散物を、TOPOに添加して、TOPO/デシルアミン/コア分散物を形成させた。フラスコを200℃に加熱した。シェル前駆体ストック溶液を5.0gのTOP、30mgのジエチル亜鉛、および43mgのビス−トリメチルシリルスルフィドを混合することにより作製した。2.9mLのシェル前駆体ストックを、100μl/分の速度でTOPO/デシルアミン/コア分散物に添加した。次いで、フラスコを冷却させ、そしてこのように形成したコア−シェル分散物の保存の前に、トルエンを添加した。
【0088】
コア−シェルの最終発光ピークは、605nmであり、21nmのFWHMを有した。量子収率(Rhodamine 101に対する)は40%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ナノ粒子であって、以下の工程:
a)単離された半導体コアを提供する工程;
b)該コアと、以下:
i.第1のシェル前駆体、
ii.第2のシェル前駆体、
iii.溶媒、および
iv.第2族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、Fe、Nb、Cr、Mn、Co、Cu、およびNiからなる群より選択される元素を含む、添加剤、
を混合して、反応分散物を形成する工程;
c)該半導体コア上への無機シェルの形成を誘導する温度で、それに十分な時間にわたって、該反応分散物を加熱する工程、
を包含する方法によって調製された、ナノ粒子。
【請求項2】
前記溶媒および前記添加剤が、前記第1のシェル前駆体および第2のシェル前駆体の添加の前に、前記コアと混合され、そして工程(c)が、該第1のシェル前駆体および第2のシェル前駆体の添加と同時である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記半導体コアが、以下:
a)第2族、第12族、第13族、または第14族から選択される、第1の元素、および第16族から選択される第2の元素;
b)第13族から選択される第1の元素、および第15族から選択される第2の元素;
ならびに
c)第14族元素、
からなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記半導体コアが、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、Al、AlSe、AlTe、Ga、GaSe、GaTe、In、InSe、InTe、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、BP、SiおよびGe、ならびにこれらの三元混合物、三元化合物、および三元固溶体、ならびに四元混合物、四元化合物、および四元固溶体からなる群より選択される材料を含む、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記半導体コアが、CdSe、CdTe、CdS、ZnSe、InP、InAs、およびPbSeからなる群より選択される材料を含む、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記無機シェルが、以下:
a)第2族、第12族、第13族、または第14族から選択される、第1の元素、および第16族から選択される第2の元素;
b)第13族から選択される第1の元素、および第15族から選択される第2の元素;
ならびに
c)第14族元素、
からなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記無機シェルが、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CaO、CaS、CaSe、CaTe、SrO、SrS、SrSe、SrTe、BaO、BaS、BaSe、BaTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、Al、Al、AlSe、AlTe、Ga、Ga、GaSe、GaTe、In、In、InSe、InTe、SiO、GeO、SnO、SnO、SnS、SnSe、SnTe、PbO、PbO、PbS、PbSe、PbTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、BP、ならびにこれらの三元混合物、三元化合物、および三元固溶体、ならびに四元混合物、四元化合物、および四元固溶体からなる群より選択される材料を含む、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記無機シェルが、CdSe、CdS、ZnSe、ZnS、CdO、ZnO、SiO、Al、およびZnTeからなる群より選択される材料を含む、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記半導体コアが、CdSe、CdTe、CdS、ZnSe、InP、InAs、およびPbSeからなる群より選択される材料を含み、そして前記無機シェルが、CdSe、CdS、ZnSe、ZnS、CdO、ZnO、SiO、Al、およびZnTeからなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記半導体コアが、CdSeまたはCdTeであり、そして前記無機シェルが、ZnSであり、そして前記添加剤が、Cdであるか、または該無機シェルが、CdSであり、そして該添加剤が、Znである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記溶媒および前記半導体コアが、前記第2のシェル前駆体の添加の前に、前記添加剤と混合され、そして工程(c)が、該第2のシェル前駆体の添加と同時である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記溶媒および前記半導体コアが、前記添加剤の添加の前に、前記第1のシェル前駆体と混合され、そして工程(c)が、該第2のシェル前駆体の添加と同時である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項13】
発光ナノ粒子であって、以下の工程:
a)半導体コアを調製する工程であって、該調製は、第1の量の第1のコア前駆体および第1の量の第2のコア前駆体を添加して、反応溶液を形成する工程、ならびに半導体コアの形成を生じる条件下で、そしてある量の第1の添加剤の存在下で、該第1のコア前駆体を該第2のコア前駆体と反応させる工程であって、該添加剤が、未反応の第1のコア前駆体、第2のコア前駆体、または第1のコア前駆体と第2のコア前駆体との両方を、反応溶液中に含む、工程を包含する方法による、工程、
b)該反応溶液と、第1のシェル前駆体および第2のシェル前駆体を混合して、反応分散物を形成する工程;
c)該半導体コアの上への無機シェルの形成を誘導する温度で、これに十分な時間にわたって、該反応分散物を加熱する工程、
を包含する方法によって調製された、発光ナノ粒子。
【請求項14】
工程(b)の前または工程(b)の間に、第2の添加剤が前記反応溶液と混合される、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
前記第2の添加剤が、第2の量の前記第1のコア前駆体、前記第2のコア前駆体、または該第1のコア前駆体と該第2のコア前駆体との両方である、請求項14に記載のナノ粒子。
【請求項16】
前記第2の量の前記第2の添加剤が、添加される前記第1のコア前駆体、添加される前記第2のコア前駆体、または該第1のコア前駆体と該第2のコア前駆体との両方の量の、少なくとも5%の割合である、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記第2の添加剤が、第2族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、Fe、Nb、Cr、Mn、Co、Cu、およびNiからなる群より選択される、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項18】
発光ナノ粒子であって、以下:
a)第1の格子構造を有する第1の半導体材料を含む、半導体コアであって、該半導体コアは、単分散粒子集団のメンバーである、半導体コア;
b)該半導体コアを囲むシェルであって、第2の格子構造を有する第2の半導体材料を含む、シェル;
c)該半導体コアと該シェルとの間の、界面領域;ならびに
d)該第1の格子構造と第2の格子構造との両方に適合性の、添加剤であって、該添加剤は、該界面領域、または該界面領域と該シェルとの両方に存在する、添加剤、を含む、発光ナノ粒子。
【請求項19】
前記第1の半導体材料が、第2族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、および第16族元素からなる群より選択される第1の元素を含み、そして前記添加剤が、第2族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、Fe、Nb、Cr、Mn、Co、Cu、およびNiからなる群より選択される、請求項18に記載の発光ナノ粒子。
【請求項20】
前記第1の半導体材料が、CdSe、CdTe、CdS、ZnSe、InP、InAs、およびPbSeからなる群より選択され、そして前記第2の半導体材料が、CdSe、CdS、ZnSe、ZnS、CdO、ZnO、SiO、Al、およびZnTeからなる群より選択され、そして前記添加剤が、Cd、Se、Te、S、In、P、As、Pb、Zn、O、Si、およびAlからなる群より選択される、請求項19に記載の発光ナノ粒子。
【請求項21】
前記添加剤が、前記シェル全体に存在する、請求項18に記載の発光ナノ粒子。
【請求項22】
前記シェルが、前記半導体コアから外向きの方向で、前記添加剤の減少する濃度の勾配を示す、請求項21に記載の発光ナノ粒子。
【請求項23】
前記添加剤が、前記シェルの全体に均一に分布している、請求項21に記載の発光ナノ粒子。
【請求項24】
前記添加剤が、前記発光ナノ粒子の前記界面領域にのみ存在している、請求項18に記載の発光ナノ粒子。
【請求項25】
発光ナノ粒子を調製する方法であって、以下の工程:
a)単離された半導体コアを提供する工程;
b)該コアと、以下:
i.第1のシェル前駆体、
ii.第2のシェル前駆体、
iii.溶媒、および
iv.第2族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、Fe、Nb、Cr、Mn、Co、Cu、およびNiからなる群より選択される元素を含む、添加剤、
を混合して、反応分散物を形成する工程;
c)該半導体コア上への無機シェルの形成を誘導する温度で、それに十分な時間にわたって、該反応分散物を加熱する工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記溶媒および前記添加剤が、前記第1のシェル前駆体および第2のシェル前駆体の添加の前に、前記コアと混合され、そして工程(c)が、該第1のシェル前駆体および第2のシェル前駆体の添加と同時である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒および前記半導体コアが、前記第2のシェル前駆体の添加の前に、前記添加剤および前記第1のシェル前駆体と混合され、そして工程(c)が、該第2のシェル前駆体の添加と同時である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒および前記半導体コアが、前記添加剤および第2のシェル前駆体の添加の前に、前記第1のシェル前駆体と混合され、そして工程(c)が、該第2のシェル前駆体の添加と同時である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
発光ナノ粒子を調製する方法であって、以下の工程:
a)半導体コアを調製する工程であって、該調製は、第1の量の第1のコア前駆体および第1の量の第2のコア前駆体を添加して、反応溶液を形成する工程、ならびに半導体コアの形成を生じる条件下で、そしてある量の第1の添加剤の存在下で、該第1のコア前駆体を該第2のコア前駆体と反応させる工程であって、該添加剤が、未反応の第1のコア前駆体、第2のコア前駆体、または該第1のコア前駆体と第2のコア前駆体との両方を、反応溶液中に含む、工程を包含する方法による、工程、
b)該反応溶液と、第1のシェル前駆体および第2のシェル前駆体を混合して、反応分散物を形成する工程;
c)該半導体コアの上への無機シェルの形成を誘導する温度で、これに十分な時間にわたって、該反応分散物を加熱する工程、
を包含する、方法。
【請求項30】
工程(b)の前または工程(b)の間に、第2の添加剤が前記反応溶液と混合される、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−132906(P2010−132906A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294045(P2009−294045)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2004−500316(P2004−500316)の分割
【原出願日】平成14年7月17日(2002.7.17)
【出願人】(502221282)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】