説明

発光モジュール及び熱保護方法

提案されるのは、半導体発光装置10及び熱スイッチ20を有する発光モジュール1である。熱スイッチ20は、装置10を過熱から保護するように配されている。上昇された温度で、装置10の前記接合部は、前記装置の破局的な故障を生じる臨界的なレベルに到達し得る。本発明によれば、前記熱スイッチは、前記半導体発光装置を分路するように配される。このことは、熱スイッチ20によって提供される熱保護が、装置10の前記(接合部の)温度に直接的に関連するので、特に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光モジュールに関する。より更に詳細には、本発明は、半導体発光装置及び熱スイッチを有するモジュールに関する。更に、本発明は、このような発光モジュールの熱保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した種類の発光モジュールの実施例は、特許出願公開第2006060165号から知られている。この文献には、バイメタル要素と直列に電気的に接続されているLEDを有する発光装置を開示している。この装置の外部電源への接続は、前記LEDを点滅させる。この効果は、エネルギが、電流が前記装置を流れている場合に前記バイメタル要素内に放散され、前記回路が開いている場合に前記バイメタル要素から放散されるので、前記バイメタル要素の繰り返される加熱及び冷却サイクルから生じる。
【0003】
前記バイメタル要素の動作による当該回路の繰り返される開閉は、前記LEDを過熱から保護することができ、従って、接合部の温度が臨界的なレベルに到達した場合の破局的な故障から保護することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許出願公開第2006060165号におけるLEDを流れる電流の中断は、明らかに、主に前記LEDの(接合部の)温度に依存していない。実際、前記バイメタル要素の機能のためのメインドライバは、前記バイメタル要素自体の抵抗性の電気エネルギ(resistive electrical energy)の損失である。従って、これは、良好に調整されていると共に、前記LED自体の接合部の温度に関連付けられている熱保護を提供していない。
【0005】
本発明の目的は、上述の種類の発光モジュールであって、調整されていると共に半導体発光装置の接合部の温度と相関している熱保護を提供する発光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の本発明の第1の見地によるモジュールによって達成される。接合部持つ半導体発光装置と熱スイッチとを有する発光モジュールであって、前記熱スイッチは前記半導体発光装置を分路するように配されることを特徴とする、発光モジュールである。
【0007】
エレクトロニクスにおいて、分路とは、電流が回路内の点の周りを通過する(pass around)ことを可能にする。前記回路の前記点と並列に前記分路を組み立てることで、このことを達成する。更に、本発明における熱スイッチは、発光ダイオード又はレーザダイオードと電気的に並列に配されている。有利には、電気エネルギは、まさに動作条件下で、前記熱スイッチにおいて放散しない。その代わりに、これらの条件下で、前記半導体発光装置の(前記接合部)は、電気エネルギから光への非理想的な変換のために熱くなる。前記装置と隣接させての(又は少なくとも前記装置のすぐ近くにおける)前記熱スイッチの組み立ては、有益には、放射性のエネルギ輸送か又は前記モジュールの構成要素を介する伝導的なエネルギ輸送かの何れかによって、前記装置が前記熱スイッチを加熱する結果をもたらす。従って、有利には、前記スイッチによって提供される熱的保護は、前記半導体装置の(前記接合部の)温度に直接的に関連している。更に、多数のモジュールを直列ストリングにおいて結合する場合、本発明は、前記ストリングにおける他のモジュールを流れる電流を妨害することなく、単一のモジュールの過熱からの保護を可能にする。
【0008】
実施例において、前記熱スイッチは、前記接合部が動作条件下で臨界温度に到達するのを防止する所定の分路温度において動作するように配されている。有利には、このことは、破滅的な損傷が発生する前に、前記モジュールに供給される電流を遮断するのを可能にする。
【0009】
本発明の実施例において、前記熱スイッチは、熱膨張係数αを有する高熱膨張係数(HCTE)材料と、熱膨張係数α(ここで、α>α)を有する低熱膨張係数(LCTE)材料とを有している。有利には、このことは、前記熱スイッチが幾何学的に変形するのを可能にし、前記スイッチを閉じさせ、従って、当該半導体装置への前記電流供給を遮断させる。
【0010】
実施例において、前記HCTE材料は金属を含有しており、前記LCTE材料はセラミックを含有している。有利には、これらの材料の種類は、従来技術において知られている通常の製作方法によって容易に組み立てられることができる。典型的には、金属は、セラミックよりも大きい係数を有する。例えば、幾つかの便利な金属の熱膨張係数は、Cu〜18・10―6/℃、Al〜24・10―6/℃、及びMnPd(典型的には80%/20%、剛性のために微量のNiが付加されている)合金〜30・10―6/℃である。同様に、幾つかの便利なセラミックの係数は、Si〜3・10―6/℃、AlN〜4・10―6/℃及びAl〜8・10―6/℃である。本発明の実施例によれば、前記熱スイッチは、バイメタル要素を有している。有利には、このような要素は、直ちに利用可能であり、非常に経済的である。
【0011】
本発明による発光モジュールの実施例において、前記HCTE材料は、2つの部分において設けられており、これらの部分は、互いに離間されて配されており、間隙を形成している。有利には、このことは、電気的に、前記HCTE材料の第1の部分を前記半導体装置のn型側に電気的に接続する及び前記HCTE材料の第2の部分を前記半導体装置のp型側に電気的に接続することを可能にする。
【0012】
本発明の実施例において、前記間隙は、分路温度を規定する所定の大きさを有するように配される。有利には、前記熱膨張係数は、前記2つの部分が前記間隙をブリッジするのに必要な温度上昇の決定を可能にする。前記モジュール(材料、幾何学的な形状因子等)の設計は、前記接合部の温度上昇と前記熱スイッチの温度上昇との間の固定された関係を誘導する。従って、前記間隙の大きさは、前記接合部の熱容量と一致する保護分路のレベルにおいてブリッジされるように容易に設計されることができる。
【0013】
第2の見地によれば、本発明は、半導体発光装置を過熱から保護するための方法であって、接合部を持つ半導体発光装置を設けるステップと、熱スイッチを設けるステップとを有し、前記熱スイッチによって前記半導体発光装置を分路するステップを特徴とする、方法を提供する。有利には、このような方法は、前記半導体発光装置を有する発光モジュールの熱設計の制御及び試験に使用されることもできる。
【0014】
本発明のこれら及び他の見地は、以下に記載される実施例を参照して、明らかになり、説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来技術による発光モジュールを示している。
【図2】本発明による実施例の概略図を示している。
【図3】本発明による実施例の製作ステップを示している。
【図4】本発明による実施例の製作ステップを示している。
【図5】本発明による実施例の製作ステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の更なる詳細、フィーチャ及び有利な点は、添付図面に関連する例示的で好適な実施例に関する以下の記載において開示される
【0017】
図1は、従来技術による発光モジュール500を示している。前記モジュールは、第1のリードフレーム部520のカップ内に位置決めされているLED510を有している。更に、前記モジュールは、(隔離540によって前記第1のリードフレーム部から離されている)第2のリードフレーム部530a、bを有している。LED510は、ダイオード接合部を挟んでいるn型及びp型半導体層を有するエピタキシャルパッケージ511を有している。n型コンタクト層512は、LED510を第1のリードフレーム部520に接続しており、p型コンタクト層513及び結合ワイヤ550は、前記LEDを第2のリードフレーム部530aに接続している。第1のリードフレーム部520及び第2のリードフレーム部530bは、電源への接続を提供している。最後に、前記モジュールは、LED510と直列に組み立てられるバイメタル要素560を有する。前記モジュールを介しての電流の供給は、結果として、前記LEDからの光放出と、自身の設計によってひとたび所定の温度に到達すると前記電気回路を開くように配されている電気抵抗バイメタル要素560におけるエネルギ放散とをもたらす。開いている場合、前記LEDは発光を停止し、前記バイメタル要素は冷える。結果として、これは、前記回路を閉じ、前記電流が前記モジュールを通って流れ、前記サイクルを再開するのを可能にする。従って、前記LEDは、自動的な点滅効果を呈する。バイメタル要素560の機能のためのメインドライバは、この要素自体の抵抗性の電気エネルギの損失であるので、明らかに、前記電気回路の中断は、前記LED自体の(接合部の)温度に主として依存しない。
【0018】
図2は、本発明による実施例の概略図を示している。これは、外部電源100に接続されている発光モジュール1を示している。前記モジュールは、半導体発光装置10(以下、LEDとして示す)を有しているが、レーザダイオード及び熱スイッチ20が、良好に機能することが理解されるであろう。前記LEDは、所定の波長の光を発するように配されている接合部を含むエピタキシャルパッケージ(従来技術において知られているように作製される)を有している。前記熱スイッチは、前記LEDを分路する。有利には、電気エネルギは、まさに動作条件下で熱スイッチ20において放散しない。実際、LED10は、熱スイッチ20の動作のための熱源として機能する。従って、熱スイッチ20をLED10に隣接させて位置決めすることは、放射性エネルギ輸送か又はモジュール1の構成要素(図示略)を介した伝導性エネルギ輸送かの何れかによって、熱スイッチ20がLED10によって加熱されるのを可能にする。従って、熱スイッチ20によって提供される熱保護は、LED10の前記(接合部の)温度に直接的に関連する。明らかに、このスイッチは、自身が保護しなければならないLED10の前記接合部と同じ温度において動作していない。発光モジュール1の設計の形状因子は、前記接合部と熱スイッチ20との間の温度差を決定する。従って、前記スイッチは、臨界的な接合部温度よりもかなり低い所定の分路温度で動作するように配される又は較正されることができる。有利には、このことは、LED10を臨界的な接合部の温度への到達から保護し、従って動作条件下の破局的な故障から保護することを可能にする。ひとたび熱スイッチ20が閉じると、前記電流はLED10の周りを通過し、結果として、これを冷却することをもたらす。次いで、LED10における減少された熱放散は、熱スイッチ20に冷却させ、再度開かせる。このことは、モジュール1内のLED10の温度の安定化を可能にする。
【0019】
図3乃至5は、本発明による実施例の作製ステップを示している。図3から始まり、図3は、基板5を有する発光モジュール1を示している。基板5上に、パターン12、13が、LED10のn型側及びp型側と電気的に接触するために堆積されている。LED10に隣接した場所において、モジュール1は、熱スイッチ20を有する。実施例において、スイッチ20は、HCTE材料30(図5)及びLCTE材料40(図4)を有している。HCTE材料30は、熱膨張係数αを有する。同様に、LCTE材料40は、熱膨張係数αを有する。α>αの関係が成立している。LCTE材料40は、有益には、Si、Al又はAlNのような、セラミックを有するのに対し、HCTE材料30は、銅、アルミニウム又はMnPd合金のような、金属を有する。有利には、これらの材料の種類は、半導体発光装置の作製のために使用される通常の作製方法によって容易に組み立てられることができる。実施例において、LCTE材料40を通るバイア35(図3)は、HCTE材料30をパターン12、13に接続している。LCTE材料40は、電気絶縁体としても機能する。
【0020】
実施例において、HCTE材料30は、2つの部分31、32(図5)を有している。有益には、これらの部分をLCTE材料40上で互いに小さい距離において配することが、前記部分間に間隙36を作る。一実施例において、間隙36は、所定の大きさを有する。有利には、このことは、前記分路の温度の規定を可能にしている。前記分路の温度に等しい温度上昇ΔTは、熱スイッチ20を、前記間隙の大きさdがd=α・ΔTである場合に閉じるようにさせる。
【0021】
本発明による半導体発光装置10を保護するための方法は、モジュール1を有する照明アセンブリの熱設計の試験において効果的に利用されることができる。現在、前記熱設計を点検するために、過渡検査器及びIRイメージングのような、高価な及びエラーを起こしやすい方法が使用されているが、本発明の方法の用途は、この領域における多くの問題を軽減する。まず第一に、既知の方法は、時代遅れになる。本発明の方法は、臨界的な設計温度に前記照明アセンブリ(それぞれ、発光モジュール1)において到達した場合、肉眼に直接的に認められるからである。結局、この臨界温度限界への到達において、LED10は、消える。第二に、本発明による発光モジュール1は、低い費用で大量作製されることができる。第三に、モジュール1は、所定の温度レベルにおいて機能するように設計されることができる。これらの有利な点は、前記モジュールを、広範囲の用途及び温度のための非常に多用途のツールにする。
【0022】
本発明は、上述の実施例を参照して説明されたが、代替的な実施例が、同じ目的を達成するために使用されることもできることは、明らかである。従って、本発明の範囲は、上述の実施例に限定されるものではない。例えば、上述の熱スイッチ20の代わりとして、バイメタル要素を有していても良い。
【0023】
従って、本発明の精神及び範囲は、添付請求項及びこれらと同等のものによってのみ制限されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部を持つ半導体発光装置と、
熱スイッチと、
を有する発光モジュールであって、前記熱スイッチは、前記半導体発光装置を分路するように配されていることを特徴とする、発光モジュール。
【請求項2】
前記熱スイッチは、前記接合部が、動作条件下で臨界温度に到達するのを防止する所定の分路温度において動作する、請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記熱スイッチは、熱膨張係数αを有するHCTE材料と、α>αである熱膨張係数αを有するLCTE材料とを有する、請求項2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記HCTE材料は金属を含有しており、前記LCTE材料はセラミックを含有している、請求項3に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記熱スイッチがバイメタル要素を有する、請求項3に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記HCTE材料は、2つの部分において設けられており、前記部分は、互いに離間して配されており、間隙を形成している、請求項2に記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記間隙が、分路の温度を規定する所定の大きさを有するように配されている、請求項6に記載の発光モジュール。
【請求項8】
前記熱スイッチは、半導体発光装置に隣接して位置決めされている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の発光モジュール。
【請求項9】
前記半導体発光装置は、発光ダイオード又はレーザダイオードを有している、請求項1乃至8の何れか一項に記載の発光モジュール。
【請求項10】
半導体発光装置を過熱から保護する方法であって、
接合部を持つ半導体発光装置を設けるステップと、
熱スイッチを設けるステップと、
を有する方法において、前記熱スイッチによって前記半導体発光装置を分路するステップを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−507258(P2011−507258A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537578(P2010−537578)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/IB2008/055190
【国際公開番号】WO2009/077932
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【出願人】(500507009)フィリップス ルミレッズ ライティング カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (197)
【Fターム(参考)】