説明

発光値の補正方法、およびアナライトの補正濃度の決定方法

本発明は、結合タンパク質が少なくとも1つのアナライトに結合するときに信号を与えることが可能な装置と、温度計とを使用することによる、発光値の補正方法、および補正アナライト濃度の決定方法に関する。本発明は、そのような装置およびプロセッサを含み、測定温度に基づいてレポーター基の測定発光を補正するシステムにも関する。本発明はさらに、発光情報と温度情報を記憶するメモリと、発光情報を補正するプロセッサを含む装置に関する。本発明はさらに、本発明の方法を実行するコンピュータプログラム、およびプログラムが記憶される機械読取可能記憶媒体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質と温度計とを有する装置を使用することにより、発光値を補正する方法、および/またはアナライトの補正濃度(corrected analyte concentration)を決定する方法に関する。本発明は、測定された温度に基づいて、レポーター基の測定された発光(luminescence)を補正する上記装置と処理装置とを含むシステムにも関する。本発明はさらに、本発明の方法を実行するコンピュータプログラムと、プログラムを記録するコンピュータまたは機械読取可能記憶媒体とに関する。レポーター基(reporter group)の発光情報と温度情報とを記憶するメモリを含む装置、および発光情報を補正する処理装置も含まれる。
【背景技術】
【0002】
グルコース、乳酸または酸素のような、特定の個体内の生理学上適切なアナライトのin vivoでの濃度をモニタリングすることは、それが様々な病気および疾患の診断と治療を改善できるため、患者の健康に対して極めて重要である。例えば、高レベルまたは低レベルのグルコースや他のアナライトは、有害な影響を及ぼしうる。グルコースのモニタリングは、糖尿病を持つ人に対して特に重要である。なぜならば、糖尿病患者は、体内のグルコースレベルを下げるためにインスリンがいつ必要か、または体内のグルコースレベルを上げるために追加のグルコースがいつ必要かを決定しなければならないからである。
【0003】
現在、多くの糖尿病患者は「フィンガースティック」方法を使用して、血中グルコースレベルをモニタリングする。頻繁な(1日あたり数回)採血による痛みのため、患者がこの方法に従うのは難しい。結果として、血中グルコースまたは他のグルコース含有生体液を頻繁および/または継続的にモニタリングするための、非侵襲的(non-invasive)な方法またはin vivoにおける侵襲が最小限の方法、およびよりin vitroにおける効率的な方法を開発する努力がなされてきた。これらの方法のうち最も有望なものの一部は、バイオセンサーの使用を含む。
【0004】
バイオセンサーは、変換(検出)素子と結合した生体認識素子を使用して、特定の定量的または準定量的なアナライト情報を提供することが可能な装置である。バイオセンサーの生体認識素子は選択性を決定し、その結果、一つまたは複数の測定対象アナライトのみが信号へとつながる。変換器(transducer)は、生体認識素子の認識を準定量的または定量的信号に変換する。
【0005】
頻繁な、および/または継続的なin vivoモニタリングの方法は、2つの一般的なカテゴリ、即ち「非侵襲的」または「最小の侵襲(minimally invasive)」に入る傾向がある。非侵襲的モニタリングは、皮膚および組織内の分光学的変化を直接追跡することで、アナライトのレベルを決定する。赤外線および電磁波のインピーダンス分光法は、この技術の例である。頻繁な較正、再現可能な試料照射、個体間の分光バックグラウンドの変化が必要なため、これらの方法の進歩は遅かった。「最小の侵襲」方法は、人体からの直接的な血液の採取を避けるもので、中間的な検知素子を使用した生体液内の信号変化のモニタリングによって行う。この種のバイオセンサーは変換(検出)素子と結合した生体認識素子を使用して、特定の定量的または準定量的なアナライト情報の提供が可能な装置である。
【0006】
関連出願の記載
本発明は、米国特許出願第10/721,797号の一部継続出願である2004年10月19日出願の同時係属米国特許出願第10/967,220号の一部継続出願であり、両方の出願全体を、本明細書に引用して取り込む。
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第10/039,833号公報
【特許文献2】米国特許出願第10/776,643号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0,153,026号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0,134,346号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0,130,167号公報
【特許文献6】米国特許出願第10/721,091号公報
【特許文献7】米国特許第6,277,627号公報
【特許文献8】米国特許第6,197,534号公報
【特許文献9】国際出願公開第WO03/060,464 A2号公報
【特許文献10】米国特許出願第10/721,021号公報
【特許文献11】米国特許出願第10/428,295号公報
【特許文献12】米国特許出願第10/967,220号公報
【特許文献13】米国仮特許出願第60/577,931号公報
【特許文献14】米国特許第6,642,015号公報
【特許文献15】米国特許第6,706,532号公報
【非特許文献1】Ballerstadt, R., Schultz, J. S. の「Competitive-binding assay method based on fluorescence quenching of ligands held in close proximity by a multivalent receptor」Ana, Chem. Acta 345(1-3):203-212(1997)
【非特許文献2】Russell, R. J., Pishko M. V., Gefrides C. C., McShane, M. J., Cote, G. L. の「A fluorescence-based glucose biosensor using convanavalin A and dextran encapsulated in a poly(ethylene glycol)hydrogel」Anal. Chem. 71(15):3126-3132(1999)
【非特許文献3】Tolosa, L., I. Gryczynski, L. R. Eichhorn, J. D. Dattelbaum, F. N. Castellano, G.Rao, and J. R. Lakowiczの「Glucose sensor for low-cost lifetime-based sensing using a genetically engineered protein」Anal. Biochem. 267:114-120(1999)
【非特許文献4】Hellinga, H. W., and J. S. Marvinの「Protein engineering and the development of generic biosensors」Trends Biotechnol.16:183-189(1998)
【非特許文献5】Salins, L. L., R. A. Ware, C. M. Ensorand S. Daunertの「Anovel reagentless sensing system for measuring glucose based on the galactose/glucose-binding protein」Anal.Biochem 294:19-26(2001)
【非特許文献6】de Lorimier, R. M., J. J. Smith, M. A. Dwyer, L. L. Looger, K. M. Sali, C. D. Paavola, S. S. Rizk, S. Sadigov, D. W. Conrad, L. Loew, and H. W. Hellinga.「Construction of a fluorescent biosensor family」Protein Sci. 11:2655-2675(2002)
【非特許文献7】Shilton, B. H., M. M. Flocco, M. Nilsson, and S. L. Mowbrayの「Conformational changes of three periplasmic receptors for bacterial chemotaxis and transport: the maltose-, glucose/galactose- and ribosebinding proteins」J. Mol. Biol. 264:350-363(1996)
【非特許文献8】Salins, L. L., R. A. Ware, C. M. Ensor, and S. Daunertの「A novel reagentless sensing system for measuring glucose based on the galactose/glucose-binding protein」Anal Biochem 294:19-26(2001)
【非特許文献9】Turcatti, 等J Bio, Chem. 1996 271, 33, 19991-19998
【非特許文献10】Greg T. Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, 1996, San Diego, pp. 4-16
【非特許文献11】H.J.Gruber等, Bioconjugate Chem., (2000),11,161-166
【非特許文献12】Cass等, Anal.Chenz. 1994, 66, 3840-3847
【非特許文献13】McArthur M.J.等, J. Lipid Res.,40:1371-1383 (1999)
【非特許文献14】Abreu, M.S.C.等, Biophys.J., 84:386-399,(2003)
【非特許文献15】Weisiger, R.A.,Am.J.Physiol-Gastr., 277:G109-G119, (1999)
【非特許文献16】Quinn等, Biomaterials, 18:1665-1670(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
頻繁なまたは継続的なアナライトモニタリングに関する従来システムの多くは、グルコースオキシターゼ(GOx)のような酵素を使用して、グルコースをグルクロン酸および過酸化水素に酸化させて電気化学信号を生成するアンペロメトリック(amperometric)バイオセンサーを含む。これらのセンサーは、酸素欠乏と酸化副生成物の蓄積とにより、不正確な測定をしやすい。グルコース濃度の正確な測定には過度の酸素が必要で、これは人間の血液または間質液(interstitial fluid)には一般的に存在しない。また、電気化学反応自体は、酵素とその保護層との両方を抑制し、悪化させる可能性がある酸化副生成物を蓄積する。
【0009】
電気化学信号ではなく光信号に基づくバイオセンサーが開発され、このバイオセンサーは安定性および較正において有意な改善を提供することができる。例えば、第2のアナライト独立信号に対してアナライト依存の光信号を参照することで、センサー内のノイズと不安定性の源を補正することができる。現在の光検知方法は、グルコースオキシダーゼのような酵素化学に依存する。ある一般的な方法においては、酸素感受性の蛍光染料を使用して、GOxの酵素反応による酸素の消費量をモニタリングする。これは、蛍光信号レベルが酸素レベルの変化とともに変化する光学的バイオセンサーであるが、上記のセンサーはこの同じ化学に基づくアンペロメトリック装置と同じ問題、即ち酸素欠乏と酵素低下に陥りやすい。
【0010】
酵素検知(例えば、GOx)に関連する問題を解決するため、電気化学的または光学的、非酵素タンパク質ベースの光学的または蛍光検知が検討されている。優位なFRETアッセイ(assay)を生成するため、標識コンカナバリンAおよびデキストランが使用されてきたが、このシステムは両方の成分の取り込みを必要とし、アッセイの動的な範囲は制限されている(非特許文献1及び2参照)。
【0011】
別のタンパク質ベースの検知化学は、大腸菌(E.coli)ペリプラスム受容体、グルコース‐ガラクトース結合タンパク質(GGBP)を使用して、グルコース結合に応答して蛍光信号を生成する(非特許文献3、4、5、及び6参照)。GGBPは、リガンド結合時に大幅に構造が変化し、その2つの球状ドメイン間にリガンドを捕捉する(非特許文献7参照)。環境的に敏感な蛍光プローブでタンパク質を部位特異的に標識する(labeling)ことで、この属性を引き出して蛍光信号を生成することができる(特許文献8参照)。GGBPはグルコースも消費しないし、反応生成物も生成しないため、GGBPを無試薬式センサーとして使用することができる。これは、アンペロメトリックバイオセンサーを上回る正確性と信頼性を提供できる。
【0012】
頻繁な、および/または継続的な機能性バイオセンサーは、センサーの完全性と機能性と患者の快適性を維持しつつ、検知素子を光学検知素子に結合しなければならない。例えば、生体認識素子と付属の変換素子は生体適合性材料内に組み込まれるのが望ましく、その生体適合性材料は、検知素子を免疫システムから防護し、アナライトが内外に拡散することを可能とし、検知素子が患者の血液または他の生体液(例えば、間質液)に浸出することを回避する。効率的な使用を可能とするために、結合タンパク質は配向制御と立体構造の自由度を要するので、文献にあるように、多数の物理的吸収、およびランダムまたは大量の共有表面結合または固定ストラテジーは、次善であるかまたは失敗するかのいずれかである。さらに、再現可能な方法および/または制御された方法で、試料を光で試験する手段が考案されなければならない。
【0013】
1つの方法は、検知素子を光ファイバーの1端に結合し、励起源(excitation source)または検出器のような光学素子を他端に結合することである。しかしながら、結合タンパク質を光ファイバーの1端に結合することは、タンパク質の立体構造および/または配向の移動性維持という上述の問題に陥りやすい。さらに、光ファイバーケーブル化することは、患者がセンサーを定期的に取り除く、または取り替える必要がありうるので、患者の使用の観点からは非現実的である。ファイバー全体の交換は、費用がかかり、不便である可能性がある。最後に、例えば励起源、検出器、および他の光学素子を備える光学システムは十分に堅牢で、例えば患者の動作または光学読取器内の電子機器のドリフトによる光学配置の変化に耐えるかまたはそれを補正しなければならない。光学システムは、高電力消費および/または大型素子に依存せずに、十分に敏感でレポーター染料からの信号を検出しなければならない。その高電力消費および/または大型素子により、システムは持ち運び不能および従って装着不可となりうる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質と温度計とを有する装置を使用することにより、レポーター基の発光値を補正する方法、および/またはアナライトの補正濃度を決定する方法に関する。レポーター基は、結合タンパク質が少なくとも1つのアナライトに結合するときに、発光信号を提供することができる。
【0015】
本発明は、測定温度に基づいて測定したレポーター基の発光を補正する装置(device)と、そのような装置を含むシステム、及び処理装置(processor)にも関する。本発明はさらに、発光情報および温度情報を格納するメモリと、発光情報を補正する処理装置を含む装置に関する。本発明はさらに、本発明の方法を実行するコンピュータプログラムと、プログラムを記録するコンピュータまたは機械読取可能記憶媒体とに関する。
【0016】
本発明の態様、利点およびその他の特徴は、以下の詳細な説明を考慮すると明らかであり、以下の詳細な説明は、本発明の様々な非制限的な実施態様を開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施態様を説明する。以下の本発明の詳細な説明は、全ての実施態様を示すことを意図していない。本発明の実施態様の説明において、明確さのため特定の用語を採用している。しかしながら、本発明はそのように選択した特定の用語に制限されると意図していない。各特定素子は、同一目的を達成する同一方法で動作する技術的等価物全てを含むことは理解されるべきである。
【0018】
本発明は、望ましい臨床的または解剖的範囲内の、着目する少なくとも1つのアナライトを結合するように操作された少なくとも1つの結合タンパク質(binding protein)を含む。さらに、1つまたは複数の発光レポーター基(luminescent reporter group)がその結合タンパク質に会合される。1つまたは複数の結合タンパク質は、それらの会合レポーター基とともに、検知素子(sensing element)を備える。
【0019】
検知素子は、1つまたは複数の結合タンパク質、1つまたは複数のレポーター基、および任意の参照基(optional reference group)を備え、光導管(optical conduit)の端部、または光導管と結合するディスポーザブルチップ内部に固定されることができる。光導管またはディスポーザブルチップ内部での検知素子の固定は、ディップコーティングまたはスピンコーティング(dip or spin coating)、共有結合、プラズマ処理等により、検知素子の薄膜を直接光導管またはチップ上に被着することで達成することができる。あるいは、検知素子をポリマーマトリックス内に最初に固定し、マトリックスを光導管またはチップに、接着剤、射出成形、ディップコーティングまたはスピンコーティング、プラズマコーティング、真空蒸着、インクジェット技術、共有結合性相互作用、イオン相互作用、またはファンデルワールス相互作用、あるいは機械的付着またはそれらの任意の組合せのいずれかにより、付着することができる。代替的な実施態様において、検知化学の薄膜を光導管に付着させて、半透過膜で覆うことができる。
【0020】
光学システムは、電磁励起源から光導管を下って検知素子を含む遠位端に光を通過させることで、レポーター基及び参照基の発光応答を問合せることができる。光学システムは、レポーター基および参照基の発光応答が生成する返信信号をモニタリングおよび解析することもできる。レポーター基の発光特性は、波長、強度、ライフタイム、エネルギー伝達効率、または極性のいずれかであり、結合タンパク質からのアナライトの結合または非結合に応じて変化する。
【0021】
本発明の目的は、発光に対する温度の影響を利用して、少なくとも1つのレポーター基から補正発光値を決定し、少なくとも1つのレポーター基を使用して、アナライト濃度を決定および/または補正することである。
【0022】
発光標識の多数の特性は、温度変化に応じて変化することができ、それらの特性には例えば、強度、最大放射波長、ライフタイム、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)効率性、極性、および当業者に公知の他の特性を含む。
【0023】
本発明の発明者は、蛍光活性のような蛍光強度は、数個の可能なメカニズムを通して温度に反比例かつ非線形に関係することを発見した。発光における温度依存性を生成するメカニズムは、これらに限定されないが、溶媒相互作用、増加した分子移動を通したエネルギーロス等を含む。
【0024】
発光に及ぼすこの温度効果を、複数の方法で使用することができる。非制限的な例として、まず、生体的に不活性な基質の蛍光を測定することで、温度変化を計算することができる。第2に、(例えばin vivo蛍光バイオセンサーのチップ付近の)生体試料における温度変化を測定することで、発光信号を補正することができる。第3に、合成装置を構築して、蛍光測定値を使用して温度を測定し、温度測定値を使用して別の蛍光測定値を補正することができる。
【0025】
例えばフルオレセイン、NBD、テキサスレッド等のような染料の蛍光-温度関係は、広範囲の温度(例えば、室温から人体温度まで)にわたり非線形である。しかしながら、その関係は、狭い温度範囲(例えば、通常の人体温度の範囲)では近似的に線形である。温度補正時に局所線形性を利用する方法を本明細書内で説明する。
【0026】
一定の蛍光ベースの応用に対し、正確な温度補正は必要でない。例えば、温度による蛍光変化が摂氏1度あたり2−3%のオーダーにある場合、一般的な室温振動は蛍光変化を生じさせ、その蛍光変化は、より大きく変化する温度よりも、他の実験誤差源と比較して重要でない。
【0027】
例えばin vivoバイオセンサーのような生体的応用において、様々な温度効果を補償することが有用である。例えば、参照読取値が取得される室温とin vivo温度が異なるだけでなく、体温は多数の要因に依存して数度変化する可能性がある。さらに、例えば皮膚内または皮下に位置するバイオセンサーの場合、温度変化の外部源(太陽光、空調、衣服等)は、さらに広範囲の温度を生じさせうる。
【0028】
さらに、発光測定の特定の応用例、例えば蛍光標識した結合タンパク質によるグルコース測定に対して、蛍光測定誤差はセンサー出力において増幅することができる。例えば、3%のオーダーの蛍光誤差は、タンパク質染料の性能特性に依存して最大12−15%の伝達(reported)グルコースにおける誤差を生じさせうる。12−15%の誤差は、この種のバイオセンサーの商業的応用に対しては受け入れられない可能性がある。従って、1−2%温度が変化すると、それが説明されない場合、一部の発光バイオセンサーは成り立たなくなる。
【0029】
発光(例えば、蛍光)と温度との間の反比例関係は、温度増加に伴う分子移動の増加に起因し、その分子移動の増加は分子衝突を増加させ、次いでエネルギーロスを生じさせる。蛍光はエネルギー損失現象であり、任意のエネルギーロスの競合する経路は蛍光を減少させる。
【0030】
温度―蛍光関係を、本明細書内で説明する定常状態の発光測定値を使用して利用することができる。この方法は、時間領域の発光測定値に対しても適用することができる。温度は、時間に対する発光減衰速度に影響する。バイオセンサーのような発光装置の減衰曲線の変化を使用して温度を計算することができ、または温度測定値を使用して時間領域データを補正することができる。
【0031】
装置
本発明は、少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質と温度計とを有する装置を包含する。温度計は、その少なくとも1つの結合タンパク質付近の生体試料の温度を測定することができる。その少なくとも1つのレポーター基は、前記結合タンパク質が本明細書内で説明するように少なくとも1つのアナライトに結合するとき、検出可能な信号を提供することができる。(「アナライト(analyte)」という用語は、本明細書において、「対象アナライト」または「リガンド」とも称される。これらの用語のいずれかを単体で使用することは、同一または異なるアナライトの少なくとも1つを包含することを意味する。)「レポーター基(reporter group)」という用語は、本明細書内で定義した1つまたは複数の同一または異なるレポーター基を言う。(「レポーター基」の単体での使用は、少なくとも1つの同一または異なるレポーター基を包含することを意味する。)「結合タンパク質(binding protein)」という用語は、本明細書内で説明した1つまたは複数の同一または異なる結合タンパク質、ポリペプチドおよび/または変異結合タンパク質を言う。(「結合タンパク質」という用語は、少なくとも1つの同一または異なる結合タンパク質を包含することを意味する。)これらの定義は、本出願全体の定義全てにあるように、本明細書内で説明した本発明の任意の実施態様にも関連し、本明細書内にあるからという理由で、いずれの特定の実施態様のものに制限されるものではなく、あるいは本明細書内にないからという理由で、制限されることはない。
【0032】
本発明に係る装置は、in vivo及びex vivoの装置両方を含み、例えば、バイオセンサーを含む。本発明に係るバイオセンサーは、当業者に明らかな任意の形態を取ることができ、例えば、特許文献1および2において説明されるマトリックスを含む。
【0033】
例えば、本発明に係る装置は、(1)近位端(proximal end)および遠位端(distal end)を有する光導管と、(2)少なくとも1つの対象アナライトと結合するように構成された少なくとも1つの結合タンパク質を備える光導管の遠位端に光学的に近接する検知素子とを含むことができ、前記検知素子は少なくとも1つのレポーター基も備える。
【0034】
光導管は、約0.1cmから1mまでの長さで変えることでき、光学システムを出入りする光と、検知素子を出入りする光とを結合することができる。例えば、光導管は、レンズ、反射チャネル、針、または光ファイバーとすることができる。光ファイバーは、光ファイバー(単一またはマルチモード)の1本の素線または2つ以上のファイバー束のいずれかとすることができる。一実施態様においては、ファイバー束は二分岐する。ファイバーは、非テーパ形またはテーパ形とすることができ、患者の皮膚を貫通することができる。
【0035】
光学システムは、光導管の近位端に接続することができる。光学システムは、1つまたは複数の励起源おおび1つまたは複数の検出器の組合せから成る。光学システムは、フィルタ、2色性素子、電力供給、ならびに信号検出および変調用電子機器から成ることもできる。光学システムは、任意にマイクロプロセッサを含んでもよい。
【0036】
光学システムは、1つまたは複数の問合せ波長(interrogating wevelengths)を光導管に結合することで、継続的または間欠的のいずれかで試料を問合せる。前記1つまたは複数の問合せ波長は、光導管を通過し、検知素子に照射される。アナライト濃度の変化により、検知素子の一部であるレポーター基の発光の波長、強度、ライフタイム、エネルギー伝達効率、および/または極性が変化する。変化した発光信号は光導管を通って光学システムに戻り、そこで検出、解析、および記憶および/または表示される。一実施態様において、光学システムは複数の励起源を備える。1つまたは複数のこれらの励起源を変調して、検出した信号を動的に信号処理し、それによって信号対ノイズおよび検出感度を強化することができる。変調を使用して、装置の電力消費を低減し、光退色のような望ましくない現象を最小化することで検知素子のライフタイムを増加することもできる。光学システムは、1つまたは複数の電磁エネルギー検出器を含むこともでき、この電磁エネルギー検出器を使用して、レポーター基および任意の参照基からの発光信号を検出し、内部参照および/または較正することができる。光学システムの総電力消費量は低く保持され、それにより装置はバッテリー電力で動作することができる。
【0037】
検知素子は1つまたは複数の結合タンパク質を備え、その結合タンパク質は、少なくとも1つの対象アナライト、および少なくとも1つのレポーター基と結合するように構成される。センサーの検知素子または生体認識素子は選択性を決定し、その結果、測定すべきアナライトは信号に至る。その選択は例えば、アナライト(例えば、グルコース)の化学構造が変化しないアナライトの生化学的認識、または素子がアナライトの生化学反応を触媒する生物触媒作用に基づくことができる。従って、「結合タンパク質」という用語は以下を満たすタンパク質(変異タンパク質を含む)を言う。即ち、アナライトが存在しない時点と、濃度が時間変化する状態でアナライトが存在する時点とを区別可能な検出可能および/または可逆的な信号を提供または変換できるように特定のアナライトと相互作用するか、または濃度に依存して特定のアナライトと相互作用するタンパク質である。変換(transduction event)は、連続的でプログラムされた一時的な手段を含み、その手段は1回限りまたは再利用可能な応用例を含む。アナライトの存在または濃度との相関関係が確立される場合、可逆信号変換は即時であるかまたは時間依存であることができる。変換に影響するように変異した結合タンパク質を、本発明に従って使用することができる。
【0038】
適切な結合タンパク質は、同時継続出願である特許文献3乃至6に説明されているものであることができる。適切な結合タンパク質は、特許文献7乃至9に説明されているものであることもでき、これらの内容の全体を引用して組み込む。
【0039】
本明細書内で使用され、引用して組み込んだ出願で説明されるように、「変異結合タンパク質(mutated binding protein)」という用語(例えば、「変異ガラクトース/グルコース結合タンパク質」(「GGBP」))は、アミノ酸を含むバクテリアからの変異結合タンパク質を含み、そのアミノ酸は、自然に発生するタンパク質に存在するアミノ酸で置換され、そのアミノ酸から欠失され、またはそのアミノ酸に付加されたものである。置換、欠失または挿入可能なものは、5個未満のアミノ酸残基(amino acid residues)、あるいは1個または2個の残基を含むことができる。結合タンパク質の変異の例は、システイン基、非自然的に発生するアミノ酸(例えば、引用により組み込む非特許文献9を参照のこと)の付加または置換、および実質的に非反応性のアミノ酸を反応性アミノ酸で置換して電気化学または光応答性レポーター基の共有結合を提供することを含む。「反応性アミノ酸(reactive amino acid)」は、チオール反応染料によるシステインの標識に類似する標識剤で修飾可能なアミノ酸を意味する。非反応性アミノ酸は、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等を含み、これらは一度タンパク質に組み込まれると容易に修飾できない側鎖を有する(アミノ酸の側鎖反応性の分類に関する、非特許文献10を参照のこと)。
【0040】
変異結合タンパク質を、ヒスチジンタグをタンパク質のN末端、C末端、または両末端上に有するように操作することができる。ヒスチジン融合タンパク質(histidine fusion protein)は分子生物学の分野で広く使用され、タンパク質の精製を補助する。タグ付けシステム(tagging system)の例は、約6個のヒスチジンを含むタグを有するタンパク質を生成し、タグ付けは、変異結合タンパク質の結合活性を損ねないことが望ましい。本発明の一実施態様によると、結合タンパク質は1つ、2つ、3つまたはそれより多くの変異体を有することができる。例えば、本発明の一実施態様によると、変異結合タンパク質は、149位でグルタミン酸に置換したシステインと、213位でアラニンに置換したアルギニンと、238位でロイシンに置換したセリンとを含む3重変異体(E149C/A213R/L238S)を有するグルコースガラクトース結合タンパク質(GGBP)である。前記タンパク質は149位で、例えばN,N‘−ジメチルーN−(ヨードアセチル)−N’−(7−ニトロベンズー2−オキサー1,3−ジアゾール−4−イル)エチレンジアミン(IANBDアミド)オキシで標識することができる。この変異GGBP(E149C/A213R/L238S)はグルコース固有であり、レポーター基はグルコース結合に応答して蛍光強度変化を受ける。
【0041】
本発明によって使用可能な変異結合タンパク質の別の例は、本明細書に引用により組み込む特許文献1および2で説明されている。
【0042】
血液、唾液、涙、汗、尿、脳脊髄液、リンパ液、間質液、血漿、血清、眼球液、動物性組織および中膜等の生体試料におけるグルコース濃度を正確に決定するため、バイオセンサーの検知分子の結合定数を調整して、着目する生体溶液の生理学的および/または病理学的動作範囲を一致させることが望ましい。適切な結合定数なしでは、信号は、特定の生理学的および/または病理学的濃度の範囲外にある可能性がある。さらに、センサーを、各々が異なる結合定数を有する2個以上のタンパク質を使用して構成し、本明細書内に引用により組み込む特許文献8で説明されるように、広範囲のグルコース濃度に渡って正確な測定値を提供することができる。
【0043】
変換器は、生体認識素子の認識を、準定量的または定量的信号に変換する。可能な変換器技術は、光学、電気化学、音波/機械または比色分析である。利用した光学特性は、吸光度、蛍光/リン光、生体発光/化学発光、反射率、光散乱指数および屈折率を含む。以下でさらに説明するように、蛍光化合物のような従来のレポーター基または他の発光基を、本発明によって使用することができる。しかしながら、発光標識に加えて他のレポーター基を使用できることが考慮されている。
【0044】
本発明に係る「レポーター基」は、結合タンパク質を対象アナライトへ結合する際の発光変化を受けることができる。部位の特定の変異および/または一定のレポーター基の付着により、結合定数が予測不能に修正される可能性がある。さらに、レポーター基を含む結合タンパク質は望ましい結合定数を有するが、アナライトの結合時に容易に検出できる信号変化とはならない。特定のタンパク質に付着した特定のレポータープローブ感度を特定のアナライトを検出するために決定する要因の一部は、これらに限定されないが、選択したプローブとタンパク質のアミノ酸残基との間の特定相互作用の性質を含むことができる。
【0045】
本明細書で使用した「検出可能信号変化(detectable signal change)」は、リガンド−タンパク質結合の検出を可能とするようにレポーター基の特性変化を認識する能力を言う。例えば、結合タンパク質(または変異結合タンパク質)は、検出可能なレポーター基を含むことができ、そのレポーター基の検出可能な特性は、グルコース結合時に発生するタンパク質構造が変化するときに変化する。
【0046】
レポーター基の例は、これらに限定されないが、有機染料、有機染料の組、蛍光または生体発光融合タンパク質、蛍光または生体発光融合タンパク質の組、または上記の任意の組合せを含む。レポーター基は、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer)を受けるドナーとアクセプターとから構成されることができる。他の発光標識部分は、ユウロピウム(Eu3+)およびテルビウム(Tb3+)のようなランタニドと、一般的にフェナントロリンのようなジイミンリガンド複合体内にあるルテニウム[Ru(II)]、レニウム[Re(I)]、またはオスミウム[Os(II)]を含む。
【0047】
一実施態様によると、少なくとも1つのレポーター基は発光標識を含み、発光特性を有することができる。発光レポーター基は、これらに限定されないが、タンパク質内のシステイン残基に共有結合した有機芳香染料分子または、例えば、操作した結合タンパク質に融合したタンパク質のような発光生体分子を含む。システインまたは他のアミノ酸は結合タンパク質に操作され、発光レポーター分子の付着部位となることができる。結合タンパク質へのアナライトの結合の結果、1つまたは複数のレポーター基の発光特性が変化する。影響を受けた発光特性は、吸収または放射波長、吸収または放射強度、放射ライフタイム、放射極性、および/またはエネルギー伝達効率であってもよい。アナライトの結合は可逆的であり、非結合により再度、レポーター分子の発光特性が変化する。
【0048】
「発光性(luminescent)」および「発光(luminescence)」という用語は、これらに限定されないが、蛍光、リン光、生体発光、電気化学および化学発光並びに、当業者に対して明らかな任意の他の形態の発光を含む。従って、発光標識は例えば、蛍光標識、リン光標識、または他の発光標識であることができる。例として、一定波長の光に露光することで蛍光を発するように励起できる蛍光標識を、本発明によって使用することができる。リン光標識した結合タンパク質も、本発明に従って使用することができる。
【0049】
一実施態様によると、少なくとも1つのレポーター基は、蛍光プローブを含むことができる。本明細書で使用されるように、「蛍光プローブ(fluorophore)」は、エネルギーを吸収し、その後に光を放射する分子を言う。本発明のレポーター基として有用な蛍光プローブの非制限的な例は、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、5−TMRIA(テトラメチルローダミンー5−ヨードアセトアミド)、クオンタムレッドTM、テキサスレッドTM、Cy3、N−((2−ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンゾオキサジアゾール(IANBD)、6−アクリロイル−2−ジメチルアミノアフタレン(蛍光基acrylodan)、ピレン、ルシファーイエロー、Cy5、ダポキシル(登録商標)(2−ブロモアセトアミドエチル)スルホンアミド、(N−(4,4−ジフロロ−1,3,5,7,−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−2−イル)ヨードアセトアミド(Bodipy507/545IA)、N−(4,4−ジフロロ−5,7−ジフェニル−5−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオニル)−N‘−ヨードアセチルエチレンジアミン(BODIPY530/550IA)5−((((2−ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸(1,5−IAEDANS)、およびカルボキシ−X−ローダミン、5/6−ヨードアセトアミド(XRIA5,6)を含み、IANBDを使用することが望ましい。蛍光プローブレポーター基の多数の検出可能な固有特性をモニタリングして、グルコース結合を検出することができる。グルコース結合時の変化を示すことが可能な特性の一部は、蛍光ライフタイム、蛍光強度、蛍光異方性または極性、および蛍光放射のスペクトルシフトを含む。これらの蛍光プローブ特性の変化を、タンパク質構造の変化の結果生じる変化のような蛍光プローブ環境の変化から誘起することができる。IANBDのような環境感度染料はこの点で特に有用である。蛍光プローブ特性の他の変化は、アナライト自身との相互作用、または第2レポーター基との相互作用から、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を使用して2つの蛍光プローブ間の距離の変化をモニタリングするときに、生じることができる。
【0050】
一実施態様によると、長励起および放射波長(例えば、約600nmまたはより長い励起または放射波長)で動作する蛍光プローブを、分子センサーをin vivoで使用し、例えば埋め込み型バイオセンサー装置(600nmより下方で不透明である皮膚)に組み込むときに、使用することができる。Cy−5のチオール反応性誘導体を、例えば、本明細書内に引用により組み込む非特許文献11に記述されているように調製することができる。これらの蛍光プローブを含む共役体は、例えば変異GGBPに構築した様々なシステイン変異体に付着され、選別されて、グルコース結合時に蛍光が最も大きく変化したものを識別する。
【0051】
一実施態様によると、レポーター基は発光標識であり、発光標識は、グルコース親和性を有し、グルコース結合時に発光特性における検出可能なシフトを生成する変異タンパク質となる。検出可能特性の変化は、変異タンパク質に結合する標識の環境変化に起因する可能性がある。
【0052】
蛍光プローブのレポータープローブを有する標識変異結合タンパク質を、本発明によって、例えば非特許文献12で説明される手続き、またはそれ以外で説明される手続き、および当業者に公知の手続きに従って、使用することができる。
【0053】
本発明に係る別の適切なレポーター基の例は、例えば、本明細書内に引用により組み込む特許文献1、2、及び10で説明されている。
【0054】
レポーター基は、当技術分野で公知の任意の従来手段によりタンパク質または変異タンパク質に「付着(attached to)」または「会合(associated with)」することができる。本明細書内で使用するように、「付着」および「会合」という用語を、次のことを意味するように、ほとんど同じ意味で使用する。即ち、レポーター基を結合タンパク質と共有結合的または非共有結合的に会合させて、対象アナライトを結合タンパク質に結合するときに、波長、強度、ライフタイム、エネルギー伝達効率、および/または極性のようなレポーター基の発光特性が変化することである。
【0055】
例えば、レポーター基を、タンパク質上のアミンまたはカルボキシル残基によって付着することができる。例として、システイン残基上のチオール基による共有結合を使用することができる。例えば、変異GGBPに対して、11位、14位、19位、43位、74位、107位、110位、112位、113位、137位、149位、152位、213位、216位、238位、287位、および292位に位置するシステインが本発明において望ましい。当技術分野で公知の任意のチオール反応性基を使用して、蛍光プローブのようなレポーター基を操作したタンパク質のシステインに付着することができる。例えば、ヨードアセトアミドブロモアセトアミド、またはマレイミドはこの目的で使用可能な公知のチオール反応性部分である。付着方法は、例えば、本明細書内に引用により組み込む特許文献1でも説明されている。
【0056】
任意に、検知素子は、1つまたは複数の参照基を含むこともできる。レポーター基とは異なり、参照基は、対象アナライトを結合タンパク質へ結合するときに実質的に不変である発光信号を有する。参照基からの発光信号は内部的な光学的標準となり、その光学的標準を使用して、例えば光学システムにおける電気ドリフトあるいは試料または光導管の移動による光学アーティファクトを補正することができる。参照基を較正用に使用することもできる。参照基を、検知素子、レポーター基を含まない結合タンパク質、ポリマーマトリックス、ポリマー鎖、結合タンパク質でない生体分子、光導管、またはチップを含む、装置の任意数の構成素子に付着することができる。一実施態様において、参照基を、生理的適性濃度でアナライトに対して応答がほとんどない、もしくは有意な応答がないよう操作した結合タンパク質に付着することができる。
【0057】
一実施態様によると、検知素子は、光導管に対して光学的近接の位置にある。「光学的近接(optical proximity)」は、ある物体に別の物体が光信号を送信できるか、またはある物体から別の物体が光信号を受信できるように、装置の構成素子が互いに十分に近いことを意味する。検知素子を、いくつかの方法で光導管に光学的に近接して配置することができる。その方法には例えば、光導管に直接付着させること、光導管に連結するコネクタに付着させること、光導管に付着したポリマー鎖またはポリマーマトリックスに付着させること、または光導管に連結したコネクタに付着したポリマー鎖またはポリマーマトリックスに付着させることがある。検知素子を光導管に恒久的に貼り付けるか、または検知素子を便利および経済的に置換できるように置換可能に付着させることができる。
【0058】
他の実施態様において、検知素子は、さらに1つまたは複数の参照基を備えることができる。レポーター基とは異なり、参照基は、対象アナライトを結合タンパク質に結合するときに実質的に不変であることが可能な発光信号を有する。「実質的に不変(substantially unchanged)」とは、参照基の発光の変化が、レポーター基が受ける発光の変化よりかなり小さいことを意味する。参照基は、発光染料および/またはタンパク質から構成することができ、内部参照および較正に使用される。参照基は、検知素子、レポーター基を含まない結合タンパク質、ポリマーマトリックス、ポリマー鎖、結合タンパク質でない生体分子、光導管、またはチップを含む、装置の任意数の構成素子に付着することができる。
【0059】
検知素子(典型的には、関連するレポーター基および任意の参照基を有する結合タンパク質を指す)は、例えば共有結合相互作用、イオン相互作用、またはファンデルワールス相互作用、ディップコーティング、スピンコーティング、プラズマコーティング、または真空蒸着を使用して光導管の遠位端に直接取り付けることができる。検知素子をコネクタに取り付けることもでき、そのため検知素子は容易に着脱可能となり、検知素子を交換することができる。
【0060】
他の実施態様において、検知素子をポリマーマトリックスに付着するかまたはポリマーマトリックス内に固定することができる。本明細書で使用するように、「マトリックス(matrix)」という用語は、アナライトに浸透可能な任意の2次元または3次元構造であることができる。マトリックスは、他の生体分子からの相当の干渉を任意に防ぐことができ、十分に生体適合であることができる。一部の実施態様において、マトリックスにより、結合タンパク質はある程度の構造(配座)移動性および/または配向移動性を維持することができる。マトリックスは複数の層を構成してもよく、内部層は結合タンパク質を維持する役割を果たし、1つまたは複数の外部層は浸透性を制御し、および/または生体適合性を達成させる。例えば、ポリマーマトリックスは、全体の内容が本明細書に引用して組み込まれている、特許文献11で説明されているもののうちのいずれであってもよい。固定(immobilization)は、例えば、検知素子をポリマーマトリックスに共有結合するか、または検知素子をマトリックス内に物理的に捕捉することにより達成することができる。ポリマーマトリックスが物理的に検知素子を捕捉する例においては、マトリックスの孔は検知素子を維持するような大きさである。検知素子がポリマーマトリックスに付着される実施態様においては、検知素子は、例えば共有結合またはイオン結合を使用してマトリックスに付着される。ポリマーマトリックスを、接着剤、ディップコーティングまたはスピンコーティング、プラズマコーティング、共有結合相互作用、イオン相互作用、またはファンデルワールス相互作用、機械コネクタ、あるいはそれらの組合せを使用して光導管の遠位端に付着することができる。
【0061】
他の実施態様において、検知素子はポリマー鎖に付着される。検知素子をポリマー鎖に付着する方法は、共有結合相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。ポリマー鎖は、ディップコーティングまたはスピンコーティング、プラズマコーティング、真空蒸着、共有結合相互作用、イオン相互作用、またはファンデルワールス相互作用、もしくはそれらの組み合わせを使用して、光導管の遠位端に付着される。
【0062】
他の実施態様において、装置はさらに、皮膚を貫通して検知素子が皮内または皮下腔の体液に接することができるように設計されたチップ(テーパ形または非テーパ形)を含んでいてもよい。チップは使い捨てである。チップは、プラスチック、鋼鉄、ガラス、ポリマー、あるいはこれらまたは同様物の任意の組合せを材料とすることができる。チップを、接着剤または機械金具を使用して光導管(ファイバー)に直接付着してもよい。チップを使用して、チップが光導管と検知素子を包含するように検知素子を光導管内に収納してもよい。一実施態様において、検知素子をチップに内蔵することもできる。
【0063】
装置はさらに、装置の成分(component)を別の装置に付着するために使用可能なコネクタを備えることができる。コネクタは例えば、標準ファイバー光学コネクタ、ルアーロック、プラスチック、金属、またはガラス製のスリーブ、またはバネ荷重筐体のような任意の機械装置であってもよい。例えば、コネクタを使用して検知素子を光導管に付着したり、または光導管を光学システムに付着したりしてもよい。コネクタの主要目的は、他の成分を容易に着脱可能にすることで自身が交換可能になるような成分を提供することである。
【0064】
一実施態様によると、光学システムで生成した1つまたは複数の波長の光を、光導管を下って検知素子に導くことができる。光導管は、光を最小の損失で送信する光ファイバーまたは短いライトガイド(light guide)であることができる。検知素子は、ポリマーマトリックスに固定されるか、ポリマー鎖に付着されるか、使い捨てチップに組み込まれるか、光導管の遠位端に直接付着されるか、またはコネクタに付着されるかのいずれかである、1つまたは複数の関連発光レポーター基を有する1つまたは複数の結合タンパク質を含んでいてもよい。検知素子は、参照信号または較正信号を提供する目的の生体分子、ポリマー、または有機分子に選択可能に付着される追加の発光参照基を含んでいてもよい。検知素子を直接またはポリマーマトリックス経由のいずれかで光導管の遠位端に付着するか、または光導管の遠位端に付着される使い捨てチップに付着することができる。この場合、使い捨てチップは光導管に対して、機械的に、あるいは接着剤を介して、または当業者に公知の任意の他の適切な手法により、位置付けられる。
【0065】
一実施態様において、ダイクロイックミラー(dichroic mirror)またはビームスプリッタ(beamsplitter)を使用して、電磁エネルギー源からの光を直接光導管に向けることができる。励起源は、例えばアークランプ(arc lamp)、レーザーダイオード、またはLEDから構成されることができるが、これらに限定されるものではない。これらの実施態様において、光導管は例えば、光ファイバーケーブルであってもよく、同ファイバーを、電磁エネルギー源からの励起光を検知素子に送り、またレポーター基または参照基からの発光信号を光学システムに送り戻すために使用してもよい。ダイクロイック素子は、励起光からの戻り信号を分離し、その信号を電磁エネルギー検出器に方向付けてもよい。検出器は、これらに限らないが、例えば、光ダイオード、CCDチップ、または光電子増倍管を含んでいてもよい。複数の発光信号が検知素子から戻る場合は、追加のダイクロニック素子を使用して、戻り信号の一部を複数の検出器に方向付けてもよい。アナライトに敏感でない発光参照基は、アナライト依存の伝達分子とともに含まれて参照信号を与えることが望ましい。この参照信号を使用して、例えば、光学または電気ドリフトを補正することができる。
【0066】
二分岐光束(bifurcated optical bundle)または融合光ファイバー処理(fused optical fiber arrangement)を使用して検知素子を行き来する光を送信する他の実施態様によって、励起源からの光を、分岐ファイバー束の1つのアームに沿って送信することができる。検知素子からの戻り発光信号を分岐ファイバーの第2のアームを使用して検出することができ、その結果、この場合にファイバー束が戻り発光からの励起を分離する役割を果たす。ダイクロイック光学、ビームスプリッタ、または偏光子をさらに使用して、例えば波長または偏光に基づいて、戻り発光をさらに分割することができる。任意に、帯域通過フィルタを使用して、検出すべき発光波長を選択することができる。電源は、光学システムに電力を供給する。
【0067】
例えば、光導管が光ファイバーを備えるとき、検知素子を光学システムの端に付着する様々な方法または手段を使用することができる。当業者は、検知素子と光ファイバーとの間の十分または緊密な接触を得て、検知素子が動作中に光ファイバーから剥離することを防ぎ、光が検知素子を行き来して十分に送信されることを保証するような、設計上の配慮に注意しなければならないことを認識するであろう。さらに、動作中の検知素子の完全性を維持することは、信頼できる信号応答を確実に得る上で重要である。例えば、in vivoで使用するとき、検知素子は、収縮、膨張、劣化の原因となったり、信号強度、発光、応答時間等の他の望ましい機能特性に否定的に影響を与えたりする可能性がある様々な環境に晒されるかもしれない。従って、光学的付着方法または手段は、特定の検知素子や特定の応用例の特性、構成、およびサイズによって異なってもよい。例えば、本出願において優先権(priority)を主張する特許文献12の図3に示す付着方法は、個別に使用しても、あるいは組合せて使用してもよい。
【0068】
一実施態様において、例えば共有結合相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用、ディップコーティング、スピンコーティング、プラズマコーティング、真空蒸着、インクジェット技術、またはそれらの組合せを使用して、検知素子を光ファイバーの遠位端に直接付着することができる。あるいは、結合タンパク質、関連するレポーター基および任意の参照基を備えた検知素子を、例えば単層または長鎖ポリマーのようなポリマーに付着することができ、そのポリマーは、例えばディップコーティングまたはスピンコーティング、プラズマコーティング、真空蒸着、共有結合相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用、インクジェット技術、またはそれらの組合せを使用して光ファイバーの遠位端に直接付着してもよい。
【0069】
他の実施態様によると、光ファイバーは針内部にある(針内ファイバー)。本明細書で使用されるように、「針(needle)」という用語は微小針(microneedle)を含むが、それに限定されるわけではない。針は、ベベル(bevel)のような修正遠位端を有していてもよく、貫通深度および/あるいは1つまたは複数の側面ポートを制御して、アナライトが針に含まれる検知素子6にアクセスできるようにする。検知素子は、本発明に記述されている方法および/または参照として本明細書に組み込まれた任意の応用例で説明されている任意の方法を使用し、針内部に位置して光ファイバーに直接付着してもよいし、代わりに、光ファイバーと機械的に接触するのみであってもよい。別の実施態様において、針の遠位端を波形にして、検知素子を針に機械的に固定することができる。
【0070】
一実施態様において、光ファイバーの外径は約50−400ミクロンの間で、約50−200ミクロンの間が望ましく、針の内径は光ファイバーの外径より少々大きく、光ファイバーを針へ挿入するのに対応している。その変形として、針を、例えば光ファイバーに摩擦嵌合または圧着することで、光ファイバーに機械的に固定することができる。別の実施態様において、光ファイバーを、接着剤または当業者に公知の任意の他の適切な手段により、針内部に化学的に固定することができる。この点に関しては、光ファイバーおよび検知素子を統合した針を含むバイオセンサーチップ部品を、一過的使用用に使い捨てとして製造してもよいし、またはin vivoに留置して継続使用することもできる。他の実施態様において、光ファイバーは針内に取り出し可能に挿入したり取り出したりできるので、針をin vivoに留置してもよく、また光ファイバーは一過的使用用にも希望通りに挿入したり除去することができる。一実施態様において、針の近位端は、付着可能な光学要素を受け、例えば光学システムに接続または接するように構成または寸法決定した光学的結合部材を含む。一実施態様において、針は直線針であるが、別の実施態様においては、針はその長さに沿った任意の場所に1つまたは複数の屈曲または屈曲部を有することができる。さらに、他の実施態様において、針の遠位端は、マトリックスを越えて、およびマトリックスに隣接して拡張する遠位端に屈曲チップ部を含んでいてもよく、反射または光散乱面または、光ファイバーに面する光反射面を有する層を含み、発光を改善し、および/または戻り信号を増幅することができる。針部品の他の実施態様は、1つまたは複数のポートまたは穴を含み、そのポートまたは穴を通してアナライトが流れるかまたは移動して、アナライトが、針に含まれる検知素子にアクセスすることができる。
【0071】
他の実施態様は、ウェアラブル(wearable)な光学バイオセンサーを含む。一実施態様において、チップ部は鋼鉄の針を備え、その針は長さが約1−10mmで、その内部に光ファイバーに固定した検知素子を含む。ファイバー、検知素子、および針は取り付け具内に位置する。チップ部または針は光ファイバーおよび検知素子を含み、患者の皮膚に直角に挿入されて検知素子が皮内または皮下腔のいずれかに残る。例示的な実施態様において、針を取付金具上に固定し、挿入深度を制御することができる。この際、針は患者の皮膚内で、約0.1mmから約10mmの間、または約1mmから約2mmの間の距離だけ伸びることができる。粘着性リングは、取付金具と針部品を適所に保持することができる。光学システムはその後、取付金具と針部品を、光学システムを有する光ファイバーと接するコネクタで締め付けることができる。光学読取器は、台から例えば約0.02−1メートル離れることができ、光ファイバーを有するシステムの残りの部分に接続することができる。励起源は、例えばランプ、レーザーダイオード、またはLEDから構成されるが、これらに限定されるわけではない。検出器は、例えば光ダイオード、CCDチップ、または光電子増倍管から構成されるが、これらに限定されるわけではない。別の実施態様において、複数のチップ部または針部品を単一の取付金具に付着することができる。この際に、チップ部または針部品を構成して複数のアナライトを試験することができるが、そこでは各針部品が単一のアナライトを試験するよう構成される。他の実施態様において、チップ部または針部品を取付金具に付着し、薬品を少なくとも1つのチップ部または針部品を通して運ぶことができる。このようにして、薬品運搬システムを設計し、正確な用量の薬品をアナライトの試験に基づいて計算し、同じバイオセンサー取付金具に付着したチップ部または針部品経由で運ぶことができる。これらの実施態様において、薬品運搬に使用するチップ部または針部品は、1つまたは複数のポートを備え、それを通して薬品を運ぶことができる。
【0072】
他の実施態様において、温度プローブのような温度計を、少なくとも1つのチップ部または針部品の内部に含むこと、それらに隣接させること、またはそれらに付着することができる。温度プローブは、例えば温度感知蛍光プローブを使用したサーモカップル(thermocouple)または光学的温度モニターであってもよい。他の変形において、バイオセンサーチップをウェアラブルパッチ(patch)装置に組み込むことができ、そこではチップ部の近位端はパッチに付着し、パッチは患者の皮膚外部に着用できるよう構成およびサイズ決定される。別の実施態様においては、バイオセンサーチップを時計に組み込むことができ、そこではチップ部の近位端は時計に付着し、時計は患者の手首外部に装着できるよう構成およびサイズ決定される。
【0073】
「温度計(thermometer)」という用語は、温度を測定可能なあらゆる装置または構成を含むよう使用される。本発明による温度計は、これらに限らないが、例えばサーモカップルおよび/または赤外線装置を含む全ての形態の温度センサーを含む。温度計は、例えば、温度を検出および/または測定可能な発光染料も含むことができる。従って、本発明の一実施態様によると、少なくとも1つのレポーター基と温度計は同一の発光染料であるか、または互いに連動して使用される別個の染料であることができる。
【0074】
本発明による一温度計は、少なくとも1つの結合タンパク質に近接する生体試料または少なくとも生体試料の一部の温度を検出および/または測定することができる。「少なくとも1つの結合タンパク質に近接する」とは、例えば、少なくとも1つの結合タンパク質から約0から6インチ、または約1から3インチ離れた生体試料の温度を温度計が測定できることを意味するが、しかしながら近接度はこれらの距離に制限されず、温度計は実際、結合タンパク質からさらに遠くてもよく、それでもなお本発明に包含される。本発明の一実施態様によると、温度は少なくとも約0.4℃、または少なくとも約0.2℃の精度で正確である。
【0075】
「生体試料(biological sample)」という用語は、全てのin vivo及びin vitroの生体試料を含むよう意図され、血液、唾液、涙、汗、尿、脳脊髄液、リンパ液、間質液、血漿、血清、眼液、動物性組織および中膜、および当業界に公知の任意の他の生体試料を含むがこれらに限定されるものではない。
【0076】
「アナライト(analyte)」または「対象アナライト(target analyte)」は、結合タンパク質を使用して検出可能な1つまたは複数の同一または異なるアナライトを含む。一実施態様によると、検出すべきアナライトはグルコースを含み、判定されるべきアナライトの存在または濃度はグルコースの存在または濃度である。しかしながら、本発明の実施態様に従って多数の他のアナライトおよびアナライト濃度を、検出および判定することができる。対象アナライトは、濃度を測定することが望まれる任意の分子または化合物であることができる。
【0077】
測定可能なアナライトの種類の例は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、糖タンパク質またはプロテオグリカン、リポタンパク質、リポ多糖体、薬品、薬物代謝産物、有機小分子、無機分子、天然高分子、合成高分子を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
本明細書で使用されるように、「炭水化物(carbohydrate)」は、単糖類、二糖類、オリゴ糖および多糖類を含むが、これらに限定されるわけではない。「炭水化物」はまた、糖類の従来の定義に入らない炭素、水素および酸素を備える分子、即ち、少なくとも3つの炭素原子を含む直鎖ポリヒドロキシル基のアルデヒドまたはケトン誘導体も含むが、これらに限定されるわけではない。従って、例えば、炭水化物は3つより少ない炭素原子を含むことができる。
【0079】
本明細書で使用されるように、「脂質(lipid)」という用語は、当業界で使用されるもの、即ち、非極性の化学基から主にまたは排他的に作られ、たいがいの有機溶媒に容易に溶けるが水性溶媒には溶けにくい生体起源の物質である。脂質の例は、脂肪酸、トリアシルグリセロール、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、ステロイドおよびそれらの誘導体を含む。例えば、「脂質」は、これらに限らないが、セラミドを含み、セラミドは、スフィンゴ脂質誘導体、およびセレブロシドおよびガングリオシドのようなセラミド誘導体を含むがこれらに限定されるものではない。「脂質」はまた、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール等のようなグリセロリン脂質(またはリン脂質)の共通集合も含むがこれらに限定されない。
【0080】
本明細書で使用されるように、「薬品(drug)」は、特定細胞種へのその活性または効果が未知の、公知の薬品または薬品候補であることができる。「薬物代謝産物(drug metabolite)」は、別の化合物に化学的に変化した薬品の副産物または分解産物である。本明細書で使用されるように、「有機小分子(small organic molecule)」は、本発明で強調した他の分類に厳密には適合しない有機分子または化合物を含むが、これらに限定されない。
【0081】
一実施態様において、全ての対象アナライトは、例えばタンパク質、または脂肪酸または炭水化物といった同一クラスの化合物である。他の実施態様によると、少なくとも1つの対象アナライトは、他の対象アナライトとは異なる化合物クラスである。例えば、装置は、タンパク質、ポリペプチド、または炭水化物を測定することができる。しかし本発明のさらに他の実施態様においては、どの対象アナライトも同一クラスの化合物にはない。さらに、対象アナライトは、例えばグルコース、パルミテート、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸エステル、およびアラキドン酸塩といった化合物クラス内の特定化合物であることができる。または、対象アナライトは、例えば脂肪酸の化合物クラス全体、またはそのサブクラスの一部であることができる。対象分析物の特定の例は、グルコース、ガラクトース、脂肪酸、乳酸(ラクテート)、C反応性タンパク質、炭水化物、およびサイトカイン、エイコサノイド、ロイコトリエンのような抗炎症性メディエータ(mediator)を含むが、これらに限定されない。一実施態様において、対象アナライトは脂肪酸、C反応性タンパク質、およびロイコトリエンである。他の実施態様において、対象アナライトはグルコース、乳酸および脂肪酸である。
【0082】
本明細書で使用した「脂肪酸(fatty acid)」は、遊離脂肪酸(FFA)と他の分子にエステル化した脂肪酸とを含む全ての脂肪酸を含む。特定の脂肪酸の例は、パルミテート、ステアレート、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸エステル、およびアラキドン酸塩を含むが、これらに限らない。「遊離脂肪酸(free fatty acid)」という用語は、FFAがトリグリセリドまたはリン脂質のような他の分子の一部でないという点で、当業界での使用通りに使用されている。遊離脂肪酸は、アルブミンに結合または吸収される非エステル化脂肪酸も含む。本明細書で使用されるように、「非結合遊離脂肪酸(非結合FFA)」とは、アルブミンまたは他の血清タンパク質に結合されない、または吸収されない遊離脂肪酸を示す。実際、非結合FFAは低レベルで体内を循環する(本明細書に全部が引用により組み込まれている非特許文献13を参照のこと)。さらに、細胞膜をはさんでアルブミン結合遊離脂肪酸と非結合遊離脂肪酸とが均衡し、それが容易に確立される証拠もある。例えば、非結合FFAは脂肪細胞を介してアルブミンに拡散することができ、FFAが他の組織に運搬される。アルブミン結合FFAはその後、FFAをエネルギー源として保存し使用することができる別の細胞膜を介して拡散する(本明細書に全部が引用により組み込まれている非特許文献14および15を参照のこと)。
【0083】
本発明による別のアナライトは、次の1つまたは複数の文献で説明されている。即ち、特許文献1、特許文献2、特許文献10および/または特許文献13であり、それらは本明細書に引用して組み込まれている。
【0084】
一実施態様において、対象アナライトは標識付けされない。上記に制限されないが、本発明の装置は、対象アナライトの測定に対するin vivo設定において、その装置が対象内で発生または出現するので、特に有用である。それ自体、対象アナライトは標識付けされる必要はない。勿論、標識付けされない対象アナライトを、in vivoまたはin situ設定において同様に測定することもできる。他の実施態様において、対象アナライトを標識付けすることができる。標識付けした対象アナライトはin vivo、in vitroまたはin situの設定で測定することができる。
【0085】
レポーター基および/または結合タンパク質の選択は、判定すべきアナライト濃度に影響される。適切なレポーター基および/または結合タンパク質を、決定するべきアナライト濃度、および本発明の開示、および本明細書に引用して組み込まれている特許文献1、特許文献2、特許文献10および/または特許文献13の開示に基づいた当業者の通常の技術の1つによって、選択することができる。さらに、本開示に照らして当業者には明らかなように、本発明で説明される数式(formulae)のパラメータ値は、決定すべきアナライトの濃度、レポーター基、および/または結合タンパク質によって異なる。本発明は、上記の修正および変形も含んでいる。
【0086】
少なくとも1つのレポーター基を付着させた結合タンパク質は、信号を生成することができる。本発明の一実施態様において、本発明の装置、システムまたは方法はさらに、信号情報を獲得し、または信号を測定する1つまたは複数の信号検出器または他の手段を含むことができる。生成された信号は、アナライトが結合領域(binding domains)に結合したことを示すことができ、従って、アナライトの濃度を示すことができる。言い換えると、アナライトが結合領域に結合することで、検出器を使用して識別できる信号の質を決定または変更することができる。信号の質(signal quality)の変化は、光波長変化および信号強度を含むが、これらに限定されるわけではない。一実施態様において、結合領域は、対象アナライトに結合されないときは信号を生成しない。他の実施態様において、結合領域は対象アナライトに結合されないときでも信号を生成するが、対象アナライトの結合は依然、信号の質を変化させ、結合は識別可能である。また、信号の変化を検出器が識別できさえすれば、アナライトを結合領域に結合することが信号強度を減少させる可能性もある。
【0087】
本発明の一実施態様において、検出器は、蛍光の波長および/または強度を測定することが可能な蛍光光度計(fluorometer)である。他の検出器の例としては、赤外線分光光度計、UV−Vis分光光度計、表面プラスモン共鳴(SPR)で使用可能な光ダイオード、および裸眼であってもよい。SPRにおいて、表面近くの試料の屈折指数特性は対象分子が存在するとき変化し、屈折光の強度は、試料とガラス媒体の界面に存在する金属面により弱められる。強度の減少は2媒体の屈折率に依存する明確な角度で発生し、「共鳴角(resonance angle)」と呼ばれる。
【0088】
本発明の装置は、in vivo、in vitro及びin situを含む様々な設定で使用することができる。本発明の一実施態様では、装置は医療装置またはインプラント(implant)である。インプラントをin vivo設定で使用するとき、インプラントは、検出可能な炎症/拒否反応をほとんどまたは全く生じない生体適合でなければならない。インプラントをより生体適合に表現する一実施態様は、インプラントを生体適合ポリマー、例えばポリ(ウレタン)エラストマー、ポリ(ウレア)およびポリ(塩化ビニル)で被覆することを備える。ポリ(ウレタン)エラストマーは、高い引っ張り強さ、優れた耐引裂性および耐摩耗性ならびに生体学的環境における相対的に良好な安定性を含む、優秀な機械特性を有する。セグメント化ポリウレタンの優秀な機械特性は、軟部と硬部のミクロ相分離から生じた2相のモルフォロジー(morphology)に起因する。ポリウレタンを長期の医療インプラントに使用するとき、軟部は典型的にはポリ(テトラメチレンオキサイド)(PTMO)のようなポリ(エーテル)マクロジオールから形成され、硬部は4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)のようなジイソシアネート、および1,4−ブタンジオールのようなジオール鎖延長剤から抽出される。インプラントの他の被覆は、本明細書に参照として組み入れた特許文献14に開示されているポリ(ウレア)組成物を含むことができる。
【0089】
生体適合インプラントを生成する他の数式(formulations)は、本明細書に引用して組み込まれる特許文献15に開示されている。さらに、本明細書に引用して組み込まれる非特許文献16は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)ヒドロゲルで構築したアンペロメトリックグルコース電極バイオセンサーを、酵素バイオセンサーに生体適合性を与える外部層として報告している。
【0090】
一実施態様によると、本発明の装置は、光学センサーに近接した生体試料の温度を測定可能な光学センサーと温度計とを含むセンサー装置(例えば、バイオセンサー)である。光学センサーは、光学センサーに近接した生体試料内の少なくとも1つのアナライトを測定できる。本発明による光学センサーの限定されない例は、Ocean Opticsにより販売されているような蛍光酸素プローブ(FOXY Fiber Optic Oxygen Sensors)を含む。
【0091】
本発明に係る別の装置は、少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質を有する装置を含み、その少なくとも1つのレポーター基は、少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料の温度を検出することができる。従って、これらの実施態様によると、レポーター基はアナライト検出器と温度センサーとの両方の役割を果たすか、または少なくとも2つのレポーター基を利用して、少なくとも1つのレポーター基が、少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料の温度を検出することができる。
【0092】
また、結合タンパク質レポーター基の対の各々は、アナライトセンサーまたは温度センサーの両方の役割を果たすのではなく、それらのいずれかの役割を果たすことができる。本発明に係る装置は、アナライトセンサーの役割を果たす少なくとも1つの結合タンパク質レポーター基の対と、温度センサーの役割を果たす少なくとも1つの対を含むことができる。本発明に係る装置の別の実施態様は、1つまたは複数の追加のアナライト検出化合物、および/または温度センサーのような1つまたは複数の追加の温度計を含んでもよい。一実施態様によると、一方のタンパク質が活性で他のものが活性でない場合、同種の染料を異なるタンパク質に付着させることができる。
【0093】
本発明に係る実施態様によると、検知素子または製造したチップ装置は無菌であることができる。ここで、「無菌(sterile)」とは、基本的に微生物またはバクテリアがないことを意味する。一定の製造方法において、集めた成分(component)を、製造の各段階後に定期的に消毒することができる。例えば、一実施態様において、製造段階の各々の後にスリーブ(sleeve)を消毒して、最終的に無菌のパッケージ装置とすることができる。または、集めたファイバーおよび検知素子または製造したチップ装置を、最終段階で無菌にすることができる。
【0094】
方法
本発明に係る方法は、少なくとも1つのレポーター基の発光情報を取得すること、生体試料の温度情報を取得すること、および温度情報に基づいて補正発光値を決定することを含み、補正発光値は試料内の少なくとも1つのアナライトの濃度を示す。この方法はさらに、補正発光情報に基づいて少なくとも1つのアナライトの濃度を決定することを含んでいてもよい。一実施態様によると、発光情報は、少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質から取得した情報を備え、少なくとも1つのレポーター基は、少なくとも1つの結合タンパク質が少なくとも1つのアナライトに結合するときに発光する。別の実施態様によると、温度情報は、少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料の少なくとも一部の温度に関する情報を含む。
【0095】
本発明に係る一方法によると、室温での補正発光(LRT)は、少なくとも次の変数の関数であることができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、温度(T)、および室温(TR)である。一方法によると、室温(LRT)でのレポーター基の発光は、以下の式で決定することができる。
【0096】
【数1】

【0097】
ここで、LRTは室温に補正した発光で、L(T)は室温(T)でのレポーター基の発光、TRは室温、SQ1は温度と発光との間の2次関係の強さに関する係数、およびSQ2は温度と発光との間の1次関係の強さに関する係数である。
【0098】
ここで使用するように、「室温(room temperature)」という用語は、例えば、センサーの製造ロットを代表するセンサーを工場較正中に、参照発光値を取得できる温度のことを言う。「室温」という用語は、一般に摂氏約21度および23度の間の温度を言う。参照発光読取値(reference luminescence readings)が範囲外の温度で取得可能な限り、「室温」とは任意の上記の温度を指す。
【0099】
本発明は、センサーから放射した発光情報の補正方法も含んでおり、室温(LRT)での発光は以下の式で決定される。
【0100】
【数2】

【0101】
変数は、上述のとおりである。
【0102】
上記の方法は、室温での発光(LRT)を以下の1つまたは複数の変数により決定することを含む。即ち、温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))を決定すること、室温(TR)を決定すること、温度と発光との間の2次関係の強さに関する係数(SQ1)を決定すること、および温度と発光との間の1次関係の強さに関する係数(SQ2)を決定することである。
【0103】
上述のように、本発明の方法によると、「発光(luminescence)」という用語は、蛍光、リン光または当業者に公知の任意の他の種類の発光を含むことができる。従って、本発明の一実施態様によると、室温に補正した蛍光(FRT)は、少なくとも以下の変数のうちの1つの関数であることができる。即ち、室温(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))、温度(T)、および室温(TR)である。一方法によると、室温(FRT)での蛍光は以下の式で決定される。
【0104】
【数3】

【0105】
ここで、FRTは室温に補正した蛍光であり、F(T)は室温(T)でのレポーター基の蛍光であり、TRは室温であり、SQ1は温度と蛍光との間の2次関係の強さに関する係数、およびSQ2は温度と蛍光との間の1次関係の強さに関する係数である。
【0106】
本発明は、センサーから放射した蛍光情報の補正方法も包含し、室温での蛍光(FRT)は以下の式で決定される。
【0107】
【数4】

【0108】
変数は、上述のとおりである。
【0109】
上記の方法は、室温での蛍光(FRT)を以下の1つまたは複数の変数により決定することを含む。即ち、温度(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))決定すること、室温(TR)を決定すること、温度と蛍光との間の2次関係の強さに関する係数(SQ1)を決定すること、および温度と蛍光との間の1次関係の強さに関する係数(SQ2)を決定することである。
【0110】
本発明の一実施態様によると、補正発光(LRT)は少なくとも以下の変数のうちの1つの関数であることができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、温度(T)、皮膚温度または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および室温(TR)と皮膚温度(TS)との間の領域における感度(S2)である。従って、一実施態様によると、補正発光は以下の式で決定される。
【0111】
【数5】

【0112】
ここで、LRTは室温に補正した発光、L(T)は室温(T)でのレポーター基の発光、S1は皮膚温度および体内温度領域周辺の温度感度、S2は室温(TR)および皮膚温度(TS)の間の領域に適用される感度である。温度感度(S)は、1度あたりの(補正信号または参照信号からの)発光信号の損失の割合で表される。
【0113】
従って、本発明は、センサーから放射した発光情報の補正方法も包含し、室温(LRT)での補正発光は以下の式で決定される。
【0114】
【数6】

【0115】
変数は、上述したとおりである。
【0116】
これらの方法は、室温での発光(LRT)を以下の1つまたは複数の変数により決定することができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))を決定すること、皮膚温度または体内温度領域周辺の温度感度(S1)を決定すること、および室温(TR)と皮膚温度(TS)との間の領域に適用される感度(S2)を決定することである。
【0117】
再び述べるが、「発光」は蛍光、リン光または他の種類の発光を含むことができ、補正蛍光(FRT)は少なくとも以下の変数のうちの1つの関数であることができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))、温度(T)、皮膚温度または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および室温(TR)と皮膚温度(TS)との間の領域における感度(S2)である。従って、一実施態様によると、補正蛍光は以下の式で決定される。
【0118】
【数7】

【0119】
ここで、FRTは室温に補正した蛍光で、F(T)は室温(T)でのレポーター基の蛍光、S1は皮膚および体内温度領域周辺の温度感度で、S2は室温(TR)および皮膚温度(TS)の間の領域に適用される感度である。
【0120】
従って、本発明は、センサーから放射した蛍光情報の補正方法も包含し、室温での補正蛍光(FRT)は以下の式で決定される。
【0121】
【数8】

【0122】
変数は、上述したとおりである。
【0123】
これらの方法は、室温での蛍光(FRT)を以下の1つまたは複数の変数により決定することを含む。即ち、温度(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))を決定すること、皮膚温度または体内温度領域周辺の温度感度(S1)を決定すること、および室温(TR)と皮膚温度(TS)との間の領域に適用される感度(S2)を決定することである。
【0124】
他の実施態様によると、室温での補正発光(LRT)は以下の変数の少なくとも1つの関数であることができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、温度(T)、および皮膚温度または体内温度領域(TS)周りの温度感度(S1)である。従って、一実施態様によると、補正発光は以下の公式で決定することができる。
【0125】
【数9】

【0126】
ここで、LRTは室温に補正した発光で、L(T)は室温(T)でのレポーター基の発光、S1は皮膚温度または体内温度領域(TS)周辺の温度感度で、FCは、アナライト濃度が決定される哺乳動物の名目皮膚温度(「T−skin」)および室温(「T−room」)での差異に起因する発光の変化を考慮した補正要素(correction factor)である。
【0127】
従って、本発明は、センサーから放射した発光情報の補正方法も包含し、補正発光は以下の式で決定される。
【0128】
【数10】

【0129】
これらの方法は、室温での発光(LRT)を以下の1つまたは複数の変数により決定することを含むことができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))を決定すること、皮膚温度または体内温度領域(TS)周辺の温度感度(S1)を決定することであり、FCは、名目T−skinおよびT−room間の差異に起因する発光変化を考慮した補正要素である。
【0130】
発光が蛍光である他の実施態様によると、室温での補正蛍光(FRT)は以下の変数の少なくとも1つの関数であることができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))、温度(T)、および皮膚温度または体内温度領域(TS)周辺の温度感度(S1)である。従って、一実施態様によると、補正蛍光は以下の式で決定することができる。
【0131】
【数11】

【0132】
ここで、FRTは室温に補正した蛍光で、F(T)は室温(T)でのレポーター基の蛍光、S1は皮膚温度または体内温度領域(TS)周辺の温度感度で、FCは、名目T−skinおよびT−room間の差異に起因する発光変化を考慮した補正要素である。
このように、本発明はセンサーから放射した蛍光情報の補正方法も包含し、そこでは補正蛍光は以下の式で決定される。
【0133】
【数12】

【0134】
これらの方法は、室温での蛍光(FRT)を以下の1つまたは複数の変数により決定することができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))を決定すること、皮膚温度または体内温度領域(TS)周辺の温度感度(S1)を決定することであり、FCは、名目T−skinおよびT−room間の差異に起因する発光変化を考慮した補正要素である。
【0135】
本発明は、この例で与えた方程式を含む本発明で与えた方程式の他の再定式化または近似も包含するが、本開示を考察する当業者には自明であろう。
【0136】
本発明はさらに、室温(T)でのレポーター基の参照発光(例えば、蛍光)を参照体内温度での発光に変換することを含む方法を包含する。従って、実際に測定した発光は、発光と参照体内温度との関係に基づいて参照体内温度に変換することができる。上記の変換は、例えば、以下の1つまたは複数の方程式によって実行することができる。
【0137】
【数13】

【0138】
ここで、L(T)は室温(T)でのレポーター基の発光、LRTは室温での発光、SQ1は温度と発光との間の2次関係の強さに関する係数、およびSQ2は温度と発光との間の1次関係の強さに関する係数、TRは室温、S1は皮膚温度または体内温度領域(TS)周辺の温度感度、S2は室温(TR)および皮膚温度(TS)の間の領域に適用される感度、およびFCは、T−skin、T−body、およびT−roomを考慮した補正要素である。
【0139】
このように、本発明は、センサーから放射した発光情報の補正方法も包含し、補正発光は以下の式の任意で決定される。
【0140】
【数14】

【0141】
ここで、L(T)は室温(T)でのレポーター基の発光、LRTは室温での発光、SQ1は温度と発光との間の2次関係の強さに関する係数、およびSQ2は温度と発光との間の1次関係の強さに関する係数、TRは室温、S1は皮膚温度または体内温度領域(TS)周りの温度感度、S2は室温(TR)および皮膚温度(TS)の間の領域に適用される感度、およびFCは、T−skin、T−body、およびT−roomを考慮した補正要素である。上記の方法は、任意の上記変数を測定および/または決定すること、および1つまたは複数の上記式を使用してL(T)および/またはLRTを求めることを含む。
【0142】
従って、発光が蛍光である場合、本発明に係る方法は、室温(T)でのレポーター基の参照蛍光を参照体内温度での蛍光に変換することを含む方法を包含する。従って、実際に測定した蛍光は、蛍光と参照体内温度との間の関係に基づいて参照体内温度に変換することができる。上記の変換は、例えば、以下の1つまたは複数の方程式によって実行することができる。
【0143】
【数15】

【0144】
ここで、F(T)は室温(T)でのレポーター基の蛍光、FRTは室温での蛍光、SQ1は温度と蛍光との間の2次関係の強さに関する係数、およびSQ2は温度と蛍光との間の1次関係の強さに関する係数、TRは室温、S1は皮膚温度または体内温度領域(TS)周辺の温度感度、S2は室温(TR)および皮膚温度の間の領域に適用される感度、およびFCは、T−skin、T−body、およびT−roomを考慮した補正要素である。
【0145】
従って、本発明は、センサーから放射した蛍光情報の補正方法も包含し、補正蛍光は以下の式の任意で決定される。
【0146】
【数16】

【0147】
ここで、F(T)は室温(T)でのレポーター基の蛍光、FRTは室温での蛍光、SQ1は温度と蛍光との間の2次関係の強さに関する係数、およびSQ2は温度と蛍光との間の1次関係の強さに関する係数、TRは室温、S1は皮膚温度または体内温度領域(TS)周辺の温度感度、S2は室温(TR)および皮膚温度(TS)の間の領域に適用される感度、およびFCは、T−skin、T−body、およびT−roomを考慮した補正要素である。上記の方法は、任意の上記変数を測定および/または決定すること、および1つまたは複数の上記式を使用してF(T)および/またはFRTを求めることを含む。
【0148】
本発明が包含する別の方法は、参照温度(T)でレポーター基の参照蛍光を参照体内温度(例えば、生体試料の参照温度)での蛍光に、例えば上述の方法により変換することを含む。従って、測定した蛍光を、変換した参照蛍光と比較することができる。これは、蛍光強度測定値が絶対測定値ではなく相対測定値であるので、有用である。測定した蛍光は参照蛍光と比較され、その結果、測定した蛍光または参照蛍光を変換することができる。さらに、測定した蛍光または参照蛍光のいずれかを変換することは、(バックグラウンドの変化を考慮するためなど)温度以外の他の要素を含むことができる。
【0149】
少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質に近接する生体試料からの温度情報を使用して、初期に決定した生体試料内の少なくとも1つのアナライト濃度を補正する方法も、本発明は包含する。一実施態様によると、初期に決定した少なくとも1つのアナライト濃度は、少なくとも1つの結合タンパク質が少なくとも1つのアナライトに結合するときに信号を与える少なくとも1つのレポーター基によって、決定される。
【0150】
本発明に係る方法は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)測定値、蛍光極性および蛍光異方性を取り込むように拡張することができる。例えば、上記方法によると、異なる温度での測定値を取得し、温度と信号の関係を決定し、FRET測定値、蛍光極性または蛍光異方性が使用されるか否かに基づいて適切な補正要素を決定することができる。
【0151】
一実施態様によると、本発明に係る方法は、発光情報(例えば強度、最大放射の波長、ライフタイム、FRET効率性、極性等)を受信すること、温度情報を受信すること、および温度情報に基づいて補正発光値を決定することを含む。これらの実施態様によると、発光情報を少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質から受信することができ、その少なくとも1つのレポーター基は、タンパク質が少なくとも1つのアナライトに結合するときに発光する。温度情報は、少なくとも1つの結合タンパク質に近接する生体試料の温度に関する情報を含むことができる。これらの実施態様による方法は、補正発光値に基づいてアナライトの補正濃度を決定することをさらに含むことができる。
【0152】
システム
本発明には、さらに以下ものを含むシステムが含まれる。即ち、少なくとも1つのアナライトを自身に結合するときに信号を生成できる、少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質、前記信号の測定手段、前記少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料の温度の測定手段、および測定した信号を前記測定温度に基づいて補正する手段である。
【0153】
本発明のシステムによると、当業者には明らかなように、信号の測定手段は例えば、強度、ライフタイム、極性等の発光信号を検出する任意の手段を含む。非制限的な例として、上記手法は、蛍光光度計のような1つまたは複数の検出器を含むことができる。蛍光光度計は、少なくとも1つのアナライトが少なくとも1つの結合タンパク質に結合するときに少なくとも1つのレポーター基から発光される蛍光を測定することができる。
【0154】
少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料の温度を測定する任意の方法を、本発明によって使用することができる。例えば、温度の測定手段は、サーモカップル、赤外線装置または当業者に公知の他の手段のような温度計を含むことができる。
【0155】
測定信号を測定温度に基づいて補正する任意の手段を、本発明によって使用することができる。例えば、測定信号を、コンピュータ、プロセッサまたは他の手段により補正することができる。
【0156】
従って、一実施態様によると、本発明は以下を含むシステムを含む。即ち、少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質、蛍光光度計、温度計、およびプロセッサである。レポーター基からの発光信号は、検出すべき少なくとも1つのアナライト濃度の変化に応じて変化する。プロセッサは、信号処理、1つまたは複数の信号の数学的操作、および/またはデータ格納および処理を行うことができる。コンピュータまたはプロセッサは、光学システムの他の成分(component)と物理的に接触するか、または他の実施態様において、光学システムの他の成分から数メートルまで物理的に離れることができる。これらの実施態様において、光学システム内のエネルギー検出器および/または電子処理要素からの情報は、コンピュータまたはプロセッサに無線で通信される。コンピュータまたはプロセッサは、検知素子に固有の較正情報も保存することができる。
【0157】
本発明に係る他のシステムは、少なくとも1つのアナライトを自身に結合するときに信号を生成できる、少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質、信号を測定するための蛍光光度計、少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料の温度を測定可能な温度計、および測定した発光を測定温度に基づいて補正するプロセッサを含むことができる。
【0158】
本発明による別のシステムは、生体試料内の少なくとも1つのアナライトの濃度を測定または検出でき、生体試料の温度を測定できるセンサーと、プロセッサとを含む。
【0159】
本発明の一実施態様によると、プロセッサを適応させて、測定温度に基づいてアナライトの濃度を補正することができる。
【0160】
メモリおよびプロセッサを含む装置
本発明の更なる実施態様は、レポーター基の発光情報と温度情報を記憶するメモリと、温度情報に基づいて発光情報を補正するプロセッサを含む装置を含む。メモリの適切な形態と適切なプロセッサは、当業者には明らかであろう。
【0161】
一実施態様によると、プロセッサは、室温に補正した発光(LRT)を少なくとも以下の変数のうちの一つに基づいて決定することができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、室温(TR)、皮膚温度(TS)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、室温(TR)および皮膚温度(TS)間の領域に適用する感度(S2)である。したがって、本発明に係る一プロセッサは、室温に補正した蛍光(FRT)を少なくとも以下の一つに基づいて決定することができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))、室温(TR)、皮膚温度(TS)、皮膚温度領域または体内温度周辺の温度感度(S1)、室温(TR)および皮膚温度(TS)間の領域に適用する感度(S2)である。
【0162】
プログラム
本発明は、コンピュータに本発明で説明した方法および/あるいは1つまたは複数のそれらの部分を実行させるよう適応したプログラムをも対象とする。適切なプログラムを、当業者は本開示を考慮して準備できる。
【0163】
コンピュータ読取可能記憶媒体
本発明は、コンピュータ読取可能記憶媒体(本発明において「機械読取可能媒体」とも言う)をも対象とし、本発明で説明した方法および/あるいは1つまたは複数のそれらの部分をコンピュータに実行させるよう適応したプログラムが、そのコンピュータ読取可能な記憶媒体上に記録される。コンピュータ読取可能な記憶媒体の適切な形態は、当業者に明らかであろう。非制限的な例として、ディスク、CDおよび、現在公知のまたは後に開発されうるランダムアクセスメモリ(RAM)を経由した一時記憶を含む他の形態の記憶媒体を、本発明によって使用することができる。
【0164】
本発明は、命令を含む機械読取可能媒体をも包含し、その命令を機械が実行することにより補正発光値が決定される。一実施態様によると、機械読取可能命令は、少なくとも以下の変数の一つに基づいて室温に補正した発光(LRT)値を決定するコードセグメントを含む。即ち温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、温度(T)、室温(TR)、皮膚温度(TS)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、室温(TR)および皮膚温度(TS)間の領域に適用する感度(S2)である。一実施態様によると、機械読取可能命令は、補正発光値を、温度(T)でのレポーター基の発光L(T)、温度(T)、および室温(TR)のうち少なくとも1つの関数として決定するコードセグメントを含む。他の実施態様によると、機械読取可能命令は、補正発光値を、温度(T)でのレポーター基の発光L(T)、温度(T)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および皮膚温度(TS)のうち少なくとも1つの関数として決定するコードセグメントを含む。
【0165】
本発明による一機械読取可能媒体は、命令を含み、その命令を機械が実行することにより補正輝度値が決定される。これらの実施態様によると機械読取可能命令は、少なくとも以下の一つの変数に基づいて室温に補正した蛍光(FRT)を決定するコードセグメントを含む。即ち、温度(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))、温度(T)、室温(TR)、皮膚温度(TS)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、室温(TR)および皮膚温度(TS)間の領域に適用する感度(S2)である。一実施態様によると、機械読取可能命令は、補正発光値を、温度(T)でのレポーター基の蛍光F(T)、温度(T)、および室温(TR)のうち少なくとも1つの関数として決定するコードセグメントを含む。他の実施態様によると、機械読取可能命令は、補正発光値を、温度(T)でのレポーター基の蛍光F(T)、温度(T)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および皮膚温度(TS)のうち少なくとも1つの関数として決定するコードセグメントを含む。
【0166】
コンピュータデータ信号
本発明の更なる実施態様は、伝送媒体に組み込んだコンピュータデータ信号を含み、伝送媒体内でコンピュータデータ信号は、コンピュータで読取可能なプログラムコードを含む。一実施態様によると、プログラムコードは、少なくとも以下の一つに基づいて室温に補正した発光(LRT)値を決定するコードセグメントを含む。即ち、温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、温度(T)、室温(TR)、皮膚温度(TS)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、室温(TR)および皮膚温度(TS)間の領域に適用する感度(S2)である。一実施態様によると、プログラムコードは、補正発光値を、温度(T)でのレポーター基礎の発光L(T)、温度(T)、および室温(TR)のうち少なくとも1つの関数として決定するコードセグメントを含む。他の実施態様によると、プログラムコードは、補正発光値を、温度(T)でのレポーター基の発光L(T)、温度(T)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および皮膚温度(TS)のうち少なくとも1つの関数として決定するコードセグメントを含む。
【0167】
本発明の一実施態様は、伝送媒体に組み込んだコンピュータデータ信号を含み、伝送媒体内でコンピュータデータ信号は、コンピュータで読取可能なプログラムコードを含み、伝送媒体内でプログラムコードは、室温に補正した蛍光(FRT)値を決定するコードセグメントを含む。これらの実施態様によると、室温に補正した蛍光(FRT)値は、少なくとも以下の一つに基づくことができる。即ち、温度(T)でのレポーター基の蛍光(F(T))、温度(T)、室温(TR)、皮膚温度(TS)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、室温(TR)および皮膚温度(TS)間の領域に適用する感度(S2)である。一実施態様によると、プログラムコードは、補正蛍光値を、温度(T)でのレポーター基の蛍光F(T)、温度(T)、および室温(TR)のうち少なくとも1つの関数として決定するコードセグメントを含む。他の実施態様によると、プログラムコードは、補正蛍光値を、温度(T)でのレポーター基の蛍光F(T)、温度(T)、皮膚温度領域または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および皮膚温度(TS)のうち少なくとも1つの関数として決定するコードセグメントを含む。
【0168】
本発明は、多数の異なる形態における実施態様により充足されるが、本発明の開示と例は、例および/または本発明の原理の説明として考えられるべきであり、開示した実施態様および説明した実施態様において本発明の範囲を制限することを意図していないという了解のもとで、本発明の実施態様を本書に詳細に説明する。当業者に対して明らかなように、様々な変更および修正が可能であり、それらは本発明の範囲内として考えられており、当業者は本発明の趣旨から逸脱することなくそれらを行うことができる。
【0169】

例1
この実験の目的は、連続グルコースモニタリングシステム(「CGMS」)センサーが温度に敏感であるかどうかを決定すること、およびもしそうである場合、その感度の大きさと再現性を決定することである。この実験は、とりわけ、温度を独自に測定する場合の蛍光の補正計算を示す。
【0170】
実験方法
様々な光学センサー(針内ファイバー)を使用して数回の実験を行った。シンチレーション瓶(scintillation vials)内にグルコース溶液(5および30mM)を含ませ、加熱ブロック内に置いたシンチレーション瓶内にセンサーを置いた。ブロックの温度は、各グルコース濃度に対して、室温から40℃に、そしてまた室温へと一度循環した。センサーの蛍光と溶液温度のデータを収集した。これらの実験の1つから得た試料データを図1に示す。設置点周辺の振動は、加熱ブロック制御装置に起因する。
【0171】
データ分析
各実験に対して、温度の差異を計算した(室温と豚の皮膚参照温度)。室温は21.3℃と仮定し、豚の皮膚参照温度は35℃と仮定した。各センサーからの蛍光データを4つの部分に分割した。即ち、
5mMに関する全てのデータ
30mMに関する全てのデータ
5mMかつ30℃超の温度に関する全てのデータ、および
30mMかつ30℃超の温度に関する全てのデータ
である。
【0172】
各部分に対して、室温参照または皮膚温度参照(30℃超に対して)のいずれかを使用して勾配と切片を計算した。
【0173】
1分間の試料率で1時間あたり0.3%の定常変位に対してデータを補正した。初期データ収集の試験中、温度-蛍光曲線は21−40℃の範囲全体に渡って線形でないことが言及されている。しかしながら、高温のデータだけを考える場合、温度-蛍光関係はより近似的に線形であった。
【0174】
2つの補正要素を計算した。第1の補正要素はデータを一部の皮膚参照温度(TS)に補正し、第2の補正要素は皮膚参照温度からのデータを室温に補正するために使用した。実際は、これらの2つの要素を掛け合わせてもよい。ここで報告したセンサーの場合、皮膚参照温度TSに関する温度感度は‐2.5%/℃であり、TSからTRへの補正要素は‐2.3%/℃の感度を使用した。
【0175】
室温での蛍光測定値を「FRT」で表し、任意の温度での同一源を「F(T)」で表す。次に、関係は十分に線形であると仮定する。
【0176】
【数17】

【0177】
上記の式において、「m」は回数/度(摂氏)の単位を有し、負の数である。上で示したように、温度感度(S)は、1度あたりの(補正信号または参照信号からの)蛍光信号損失の比として表される。
【0178】
【数18】

【0179】
Sは温度の逆数の単位を有する。補正信号FRTが未知なので、Sは測定した蛍光で表される。前述の2つの方程式を組み合わせると、以下の式が得られる。
【0180】
【数19】

【0181】
この方程式は、温度補正した蛍光値を与える。温度-蛍光曲線が室温から任意のin vivo温度まで十分に線形であると仮定すると、上述の方程式が使用できる。データ内の非線形性が重要であると認識すると、2段階のアプローチを取ることができる。皮膚温度(TS)領域周りに適用される感度(S1)と、室温と皮膚温度との間の領域に適用される感度(S2)を仮定すると、以下の式が得られる。
【0182】
【数20】

【0183】
ここまでは、データは、S1とS2の両方が負で、ほぼ同じオーダーの規模であることを示す。
【0184】
in vivo温度感度(S1)、およびin vitroからin vivoへの補正要素(FC)を考えることは概念的に容易である。
【0185】
【数21】

【0186】
この形において、TS、TR、およびS2に対して代表値を与えると、FCは正で1より大きい。ここで報告したデータの場合、FC=1.27である。
【0187】
データに2次関数を当てはめることも可能である。
【0188】
【数22】

【0189】
二次補正は、特にTSまたはTRより離れた温度に対して、2段階アプローチよりも若干、より正確でなければならない。しかしながら、含まれる感度係数は直感的に把握されず、必要な計算量が増加する。ここで報告したデータに対して、S1は近似的に+5e-2%/(℃)2で、S2は近似的に-3%/℃である。
【0190】
高濃度(30mM)試験部からの蛍光データを温度の関数として図2にプロットし、同一試験の低グルコース濃度(5mM)部に対するデータを図3にプロットする。未補正データのF-T曲線は、いずれの場合も線形ではない。以下を仮定し、データから計算した感度を使用してデータを21℃に補正し戻した。
- 全ての温度に対して、1つの感度との1次関係
- 2つの感度(TS周りのS1、およびTRからTSへのS2)関係を仮定
- 2次の関係
2段階アプローチに対して、第2の感度は30℃超の温度に対して適用されるのみであり、30℃未満では結果は単一感度の方法と同じであることに注意する。その2段階の方法は、高温で2次の方法とほぼ同じ補正を与える。
【0191】
低グルコース濃度および高グルコース濃度データに適用した補正は、同じ感度を使用した。その補正により、測定した蛍光を参照温度(21℃)と同等のものに変更し戻すことを意図している。図3の低グルコース濃度の場合、21℃で収集したデータは全ての未補正データと同一曲線上にあり、高温での補正データは同じ強さである。しかしながら高グルコース濃度の場合は、21℃付近で収集したデータは残りのデータと同一曲線上にはなく、温度感度の計算には使用しなかった。高温での補正蛍光は従って、21℃付近の実データからの補正値である。
【0192】
ここで報告したセンサー試験の(線形フィットを使用した)全体および高温の感度を図4に示す。特に、図4は、CGMSプローブの有限集合に対する温度感度を示し、感度は他のプローブに対して異なることができる。高温感度を、30℃超で収集したデータのみを使用して計算した。パーセントの変化は、1度あたりの蛍光変化が参照温度(皮膚温度に対して35℃[「高温(high T)」]、室温に対して21.3℃[「全温度(all T)」])で蛍光により分割されるとき、計算される。
【0193】
例2
第2の発光レポーター(reporter)を使用した温度補正の例を以下に示す。この例において、検知および参照レポーター基(reporting group)の両方は、温度において広く2次である温度感度を有するが、感度の強さは各々に対して異なる。この例において、参照レポーター基(reporting group)はセンサーで使用したものと同じ染料であるが、期待したアナライト濃度の範囲上のアナライトの存在に対して敏感でない結合タンパク質に付着される。他の実施態様において、参照染料は、検出基(sensing group)とは異なる励起/放射特性を有することができる。
【0194】
実験方法
2つのタンパク質染料の組み合わせのうちの1つを有する様々な光学センサー(針内ファイバー)を使用して実験を行った。30mMのグルコース溶液を含み、加熱ブロック内に置いたシンチレーション瓶内にセンサーを置いた。ブロックの温度は、室温から35℃、そして室温に二回循環させた。センサーの蛍光と溶液温度を収集した。
【0195】
データ分析
アナライトに敏感でないレポーター基(reporting group)に対して、温度感度を以下のように表すことができる。
【0196】
【数23】

【0197】
ここで、R(T)は温度(T)での参照レポーター基の発光であり、RRTは室温(TR)での参照レポーター基の発光である。
【0198】
アナライト検知レポーター基(reporting group)の温度感度は、以下のように表すことができる。
【0199】
【数24】

【0200】
さらに、室温で参照レポーター基(reporting group)は、12という相対蛍光値を生成し、検知レポーター基(reporting group)は、15という相対蛍光値を生成した。この例で説明した方法は、検知および参照レポーター基(reporting group)の相対蛍光強度には依存しない。
【0201】
検知蛍光比率と参照蛍光比率の間の関係は多項式で正しく表すことができ、当業者に対して明らかな多数の手段の1つによりその多項式に到達することができる。この場合、
【0202】
【数25】

【0203】
となる。
【0204】
検知蛍光信号をこの方程式と参照信号比によって補正した。1つの冷却サイクルに対する未補正および補正センサー信号を図5に示す。補正信号は、22℃から35℃の温度範囲全体に渡る手法の+/−0.75%内にある。
【0205】
検知信号および参照信号の間の関係は、最終的な正確性を少々失うのみで、十分に線形で表現できた。さらに、温度感度を、例えば期待される皮膚温度範囲のような狭域で比較することができ、その狭域上でより正確な当てはめ(fit)を得ることができた。さらに、参照信号を使用して、センサー信号を参照皮膚温度に補正することができ、検知‐レポーター基(reporting group)温度感度を使用して、最終的に室温に変換することができた。または、参照温度での参照蛍光値を、検知‐レポーター基(reporting group)の温度感度を使用して、参照皮膚温度での信号に変換することができた。
【0206】
本発明を、特定の実施形態とその応用例の手法とで説明してきたが、請求項に記載する本発明の範囲を逸脱することなく、当業者により多数の修正および変形を行うことができる。
【0207】
本発明は、以下の付属図面で説明した実施態様を参照して容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】グルコース溶液を含んだシンチレーション瓶内に光学センサーを置き、シンチレーション瓶を加熱ブロック内に置いた実験から得られた試料データを示す図である。
【図2】温度関数として高濃度(30mM)部からプロットした例示的な実験の蛍光データを示す図である。
【図3】温度関数として低濃度(5mM)部からプロットした例示的な実験の蛍光データを示す図である。
【図4】試験センサーに対する全体的および高温度の感度を示す図である。
【図5】例示的な実験に従う冷却サイクルに対する、未補正および補正センサーを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質、および
温度計
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのレポーター基は、発光標識を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記温度計は、サーモカップルおよび赤外線装置から構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記レポーター基は、前記少なくとも1つの結合タンパク質が少なくとも1つのアナライトに結合するときに、信号を提供することができることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアナライトは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、糖タンパク質またはプロテオグリカン、リポタンパク質、リポ多糖体、薬物、薬物代謝産物、有機小分子、無機分子、天然高分子、および合成高分子から構成されるグループから選択された少なくとも1つのアナライトを備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアナライトは、グルコース、ガラクトース、乳酸、脂肪酸、C反応性タンパク質、炭水化物、および抗炎症メディエータから構成されるグループから選択された少なくとも1つのアナライトを備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
近接した生体試料内の少なくとも1つのアナライトを測定可能な光学センサー、および
前記光学センサーに近接した前記生体試料の温度を測定可能な温度計
を備えることを特徴とする装置。
【請求項8】
少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質を備える装置であって、
前記少なくとも1つのレポーター基は、前記少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料の温度を検出可能であることを特徴とする装置。
【請求項9】
少なくとも1つのレポーター基の発光情報を取得すること、
生体試料の温度情報を取得すること、および
前記温度情報に基づいて補正発光値を決定すること
を備える方法であって、
前記補正発光値は、前記生体試料内の少なくとも1つのアナライトの濃度を示すことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記補正発光値に基づいて、前記少なくとも1つのアナライトの濃度を決定することをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記発光情報は、前記少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質からの情報を備え、
前記少なくとも1つのレポーター基は、前記少なくとも1つの結合タンパク質が前記少なくとも1つのアナライトに結合するときに発光することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記温度情報は、前記少なくとも1つの結合タンパク質に近接した前記生体試料の少なくとも一部の温度に関する情報を備えることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのアナライトは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、糖タンパク質またはプロテオグリカン、リポタンパク質、リポ多糖体、薬物、薬物代謝産物、有機小分子、無機分子、天然高分子、および合成高分子から構成されるグループから選択された少なくとも1つのアナライトを備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのアナライトは、グルコース、ガラクトース、乳酸、脂肪酸、C反応性タンパク質、炭水化物、および抗炎症メディエータから構成されるグループから選択された少なくとも1つのアナライトを備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記補正発光値は、
温度(T)での前記レポーター基の発光L(T)、
温度(T)、および
室温(TR
から構成されるグループから選択された少なくとも1つの変数の関数であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記補正発光値は、次式、


を使用して決定され、
式中、LRTは室温での発光、L(T)は温度(T)での前記レポーター基の発光、TRは室温、SQ1は温度と発光との間の二次関係の大きさに関する係数、およびSQ2は温度と発光との間の線形関係の大きさに関する係数であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記補正発光値は、補正蛍光値であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記補正発光値は、
温度(T)での前記レポーター基の発光(L(T))、
温度(T)、
皮膚温度または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および
室温(TR)と皮膚温度(TS)との間の領域における感度(S2)
から構成されるグループから選択された少なくとも1つの変数の関するであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記補正発光値は、次式、

を使用することを備える方法により決定され、
式中、LRTは室温での発光であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記補正発光値は、補正蛍光値であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記補正発光値は、次式、

を使用することを備える方法により決定され、
式中、LRTは室温での発光、FCは、アナライト濃度が決定される哺乳動物の名目皮膚温度と、前記哺乳動物の内部体温と、室温とにおける差異に起因する発光の変化を考慮した補正要素であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料からの温度情報を使用して、前記生体試料内の少なくとも1つのアナライトの初期に決定した濃度を補正することを備える方法であって、
前記少なくとも1つのアナライトの前記初期に決定した濃度は、前記少なくとも1つの結合タンパク質が前記少なくとも1つのアナライトに結合するときに信号を提供する前記少なくとも1つのレポーター基により決定されることを特徴とする方法。
【請求項23】
蛍光情報を補正する方法であって、
複数の温度でのレポーター基の蛍光を測定すること、
温度-信号関係を決定すること、および
少なくとも1つの補正要素を決定すること
を備えることを特徴とする方法。
【請求項24】
少なくとも1つのレポーター基が付着した少なくとも1つの結合タンパク質、
蛍光光度計、
温度計、および
プロセッサ
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項25】
前記の少なくとも1つの結合タンパク質は、少なくとも1つのアナライトが前記少なくとも1つの結合タンパク質に結合するときに信号を生成できること、
前記蛍光光度計は、前記信号を測定できること、
前記温度計は、前記少なくとも1つの結合タンパク質に近接した生体試料の温度を測定できること、および
プロセッサは、前記測定した温度に基づいて、測定した発光を補正できること
を特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
生体試料内の少なくとも1つのアナライトを検出可能で、前記生体試料の温度を測定可能であるセンサー、および
プロセッサ
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項27】
前記プロセッサは、前記測定温度に基づいて、補正したアナライト濃度を提供することができるように構成されることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
レポーター基の発光情報と温度情報を記憶するメモリ、および
温度情報に基づいて発光情報を補正するプロセッサ
を備えることを特徴とする装置。
【請求項29】
前記プロセッサは、
温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、
温度(T)、
室温(TR)、
皮膚温度(TS)、
皮膚温度または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および
室温(TR)と皮膚温度(TS)との間の領域での感度(S2)
から構成されるグループから選択された少なくとも1つの変数の関数として補正発光値を決定することを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
コンピュータに、請求項9に記載の方法を実行させるように構成されることを特徴とするプログラム。
【請求項31】
コンピュータに、請求項9に記載の方法を実行させるように構成されたプログラムを記録することを特徴とするコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項32】
命令を含む機械読取可能媒体であって、機械による前記命令の実行は補正蛍光値を決定し、前記機械読取可能命令は、
温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、
温度(T)、
室温(TR)、
皮膚温度(TS)、
皮膚温度または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および
室温(TR)と皮膚温度(TS)との間の領域での感度(S2)
から構成されるグループから選択された少なくとも1つの変数の関数として前記補正発光値を決定するためのコードセグメントを備えることを特徴とする機械読取可能媒体。
【請求項33】
送信媒体において具現化され、コンピュータ読取可能プログラムコードを備えるコンピュータデータ信号であって、前記コンピュータ読取可能プログラムコードは、
温度(T)でのレポーター基の発光(L(T))、
温度(T)、
室温(TR)、
皮膚温度(TS)、
皮膚温度または体内温度領域周辺の温度感度(S1)、および
室温(TR)と皮膚温度(TS)との間の領域での感度(S2)
から構成されるグループから選択された少なくとも1つの変数の関数として補正発光値を決定するためのコードセグメントを備えることを特徴とするコンピュータデータ信号。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−517298(P2008−517298A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538009(P2007−538009)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/037614
【国際公開番号】WO2006/044972
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】