説明

発光素子、その製造方法および発光方法

発光素子は:発光性基材と;該発光性基材の表面上に形成された金属微細構造を有する金属層と;を含み、前記発光性基材は、Y3AlxGa5-xO12:Tbかつ0≦x≦5の化学組成を有する発光体を含む。発光素子の製造方法および発光方法もまた提供される。前記発光素子は、良好な発光の均一性、高い発光効率、良好な発光安定性および単純な構造を有しており、極めて高い輝度を有する発光装置において用いられうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<発明の分野>
本開示は、発光体に関連し、特に、発光体で作られたガラス基板を含む発光素子、その製造方法および発光方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
<背景>
発光性基材として用いられる従来の材料として、蛍光体、ナノ結晶、ガラス等が挙げられる。結晶および蛍光体と比較して、ガラスは透明であり、硬く、そして高い化学的安定性および優れた発光性能を有している。加えて、ガラスは、多様な形状および大きさを備えた表示装置や発光性の光源といった様々な形状の製品に容易に加工することができる。
【0003】
たとえば、真空電子工学において、電界放出素子(電界放出素子)は通常、発光性基材を光源として使用しており、発光性基材は、照明およびディススプレー技術において広い展望を示していると共に、国内および海外の研究機関の高い関心を集めている。電界放出素子の動作原理とは、真空中、加速電界を形成するために、電界放出陰極アレイ(Field emissive arrays、FEAs)に正電圧を印加し、陰極から放出された電子は高速で陽極基板上の発光材料にぶつかることによって発光することである。電界放出素子は広い動作温度幅(−40℃〜80℃)、短い応答時間(<1ms)、単純な構造、低いエネルギー消費量を有していると共に、環境保護の要請に適合している。さらに、蛍光体といった材料、発光性基材、発光性フィルム等は、電界放出素子において発光体としての役割を果たしうるものであるが、しかしながら、これらはすべて低い発光特性という重大な問題点を抱えており、したがって、特に照明の用途において、電界放出素子の利用が著しく制限されている。
【発明の概要】
【0004】
<発明の要約>
本開示の一態様において、発光の均一性が高く、安定性が良好であり、単純な構造を有する発光素子、および簡易な工程を備え、廉価な製造方法が求められている。
【0005】
本開示の他の態様において、簡単な操作、良好な信頼性を有し、さらに発光効率が改善した発光素子の発光方法もまた、求められている。
【0006】
発光素子は、発光性基材と;該発光性基材の表面上に形成された金属微細構造を有する金属層と;を含み、前記発光性基材は、Y3AlxGa5-xO12:Tbかつ0≦x≦5の化学組成を有する。
【0007】
発光素子の製造方法は、Y3AlxGa5-xO12:Tbかつ0≦x≦5の化学組成を有する発光体を含む発光性基材を作製し;前記発光性基材の表面上に金属層を形成し;前記発光性基材および前記金属層を真空中でアニールして(annealing)前記金属層の金属微細構造を形成し、続いて、前記発光性基材および前記金属層を冷却して発光素子を形成することを含む。
【0008】
発光素子の発光方法は、上述の製造方法により発光素子を得て;陰極線を前記金属層に放射し、前記陰極線の放射により前記金属層と前記発光性基材との間に表面プラズモンを生じさせ、続いて、前記発光性基材を発光させることを含む。
【0009】
上述の発光素子において、金属微細構造を有する前記金属層は、発光性基材の表面上に形成され、陰極線が照射され、前記金属層と前記発光性基材との間に表面プラズモンが生じうる。表面プラズモン効果に起因して、発光性基材の内部量子効率が極めて増大し、発光性基材の自然放出が極めて増加し、その結果、発光性基材の発光効率が改善され、発光体の低い発光効率の問題が克服される。したがって、発光素子の発光方法において、ひとたび金属層に陰極線を放出すると、金属層と発光性基材との間に表面プラズモンが生じ、こうして発光効率および信頼性が改善される。発光素子は、発光性基材および金属層を含む単純な二層構造を有する。加えて、発光性基材と金属層との間に均一な界面が形成され、その結果、優れた発光の均一性および安定性が達成される。発光素子の発光方法において、ひとたび陰極線を金属層に放射すると、金属層と発光性基材との間に表面プラズモンが生じ、こうして、発光効率および発光性基材の信頼性が改善される。
【0010】
上述の発光素子の製造方法において、発光素子は、発光性基材上に金属層を形成し、発光性基材および金属層をアニールすることにより得られうる。したがって、製造方法は単純かつ廉価である。発光素子は、電界放出ディスプレーといった、超高輝度および高速動作を伴う発光装置に広く応用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
<図面の簡単な説明>
図面中の構成要素は必ずしも一定の縮尺であるわけではなく、代わりに、本開示の原理を明瞭に図示することに重点が置かれている。
【図1】図1は、本開示の一実施形態による発光素子の概略図である。
【図2】図2は、発光素子の製造方法の一実施形態のフローチャートである。
【図3】図3は、発光素子を用いた発光方法の一実施形態のフローチャートである。
【図4】図4は、金属層を備えない発光性基材と比較した実施例1の発光素子の発光スペクトルであり、この発光スペクトルは、5KVの加速電圧の陰極線により励起されたShimadzu RF-5301PC分光計により測定されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<詳細な説明>
開示は例示としてものであって、添付の図面の形状により制限されるものではなく、図面中、類似の参照番号は類似の要素を示す。本開示における「一」または「1つの」実施形態の参照は、必ずしも同じ実施形態を参照するものではなく、このような参照は、少なくとも1つを意味するものであると認められる。
【0013】
図1を参照すると、発光素子の一実施形態は、発光性基材13および該発光性基材13の表面上に形成された金属層14を含んでいる。前記金属層14は、金属微細構造を有し、金属微細構造は、マイクロ−ナノ構造と称されうる。さらに、前記金属微細構造は非周期的であり、すなわち、不規則な配向の金属結晶から成る。
【0014】
本開示の一実施形態において、発光性基材13は、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体がドープされた(doped)発光ガラスでありうるものであり、前記ガラスは20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有している。前記ガラスは低融点のガラス粉末から形成されうるが、このガラスは上記材料に限定されるものではない。発光性基材中において、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体の質量百分率は5%〜35%であり、かつ0≦x≦5である。通常、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体は、Tbがドープされたガーネット系材料と称されうるものであり、Y3Al5O12:TbまたはY3(Al,Ga)5O12:Tb材料とも呼ばれうる。
【0015】
本開示の他の実施形態において、前記発光性基材13としては、透明または半透明の基材、および該基材上に形成されたY3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光性フィルムが挙げられ、前記金属層14は発光性フィルム上に形成される。
【0016】
前記金属層14は、抗酸化性および耐食性金属といった、高い化学的安定性を有する金属、または一般的な金属から形成されうるものである。前記金属層14は、Au,Ag,Al,Cu,Ti,Fe,Ni,Co,Cr,Pt,Pd,Mg,およびZnからなる群から選択される少なくとも1つの金属により形成されると好ましく、Au,Ag,およびAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属により形成されるとより好ましい。前記金属層14は、一種類の金属または複合金属によって形成されうる。複合金属は、二種類以上の上記金属の合金でありうる。たとえば、金属層14は、Ag/Al合金層またはAu/Al合金層でありうるが、AgまたはAuの重量百分率は、70%より多いと好ましい。前記金属層14は、0.5〜200nmの範囲の厚みを有しており、好ましくは、1〜100nmの範囲である。
【0017】
発光素子として、発光素子10は、電界放出ディスプレー、電界放出光源、および大きな広告ディスプレー等の超高輝度および高速動作を伴う発光装置に広く応用することができる。電界放出ディスプレーを例にとると、陽極は、加速電界を形成するために電界放出陰極に正電位を印加し、陰極は電子、すなわち陰極線16を金属層14に放出し、その結果、金属層14と発光性基材13との間に表面プラズモンが生じる。表面プラズモン効果に起因して、発光性基材13の内部量子効率は極めて増大し、発光性基材の自然放出が極めて増加し、その結果、発光性基材の発光効率が改善され、発光体の低い発光効率の問題が克服される。さらに、金属層が発光性基材13の表面上に形成されるため、金属層全体と発光性基材13との間に均一な接触面が形成され、このようにして発光の均一性が改善される。
【0018】
図1および図2を参照すると、発光素子の製造方法の一実施形態のフローチャートが示されており、このフローチャートは、以下の工程を含んでいる:
工程S01、発光性基材13がY3AlxGa5-xO12:Tbかつ0≦x≦5の化学組成で作製される。
【0019】
工程S02、金属層14が発光性基材13上に形成される。
【0020】
工程S03、金属層14の金属微細構造を形成するため、発光性基材13および金属層14が真空中アニールされ(annealed)、その後、発光素子10を形成するため、発光性基材13および金属層14が冷却される。
【0021】
工程S01において、上述の発光性基材13は、2つの構造を採りうる:第1の発光構造は、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体がドープされた発光ガラスであり、第2の発光構造は、基板上に形成されたY3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光性フィルムである。第1の発光構造の形成は:発光体およびガラス粉末を混合し;1000〜1300℃の温度範囲で溶融させ;室温まで冷却し、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体を添加した発光ガラスを得ることを含んでいる。前記ガラス粉末は、20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有している。Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体もまた、粉末であってもよい。発光体およびガラス粉末を、1:19〜7:13の質量比率で混合し、(このとき、発光体は、混合物の5%〜35%を占める);1000〜1300℃の温度範囲で前記混合物を溶融させ;鋼板上に前記混合物を載置して室温に冷却し;発光性基材13を得る。好ましい実施形態において、溶融温度は、1200℃でありうる。
【0022】
第2の発光構造の形成は、透明または半透明の基材の表面上に発光性フィルムを形成することを含み、前記発光性フィルムは、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する。Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光性フィルムは、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、化学蒸着、分子線エピタキシー、パルスレーザー蒸着、またはスプレー熱分解処理により、前記基材の表面上に形成されうる。
【0023】
上述の通り、金属層14は、抗酸化性および耐食性金属といった、高い化学的安定性を有する金属、または一般的な金属といった金属源を被覆することにより形成される。金属層14は、Au,Ag,Al,Cu,Ti,Fe,Ni,Co,Cr,Pt,Pd,Mg,およびZnからなる群から選択される少なくとも1つの金属により形成されると好ましく、Au,Ag,およびAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属により形成されるとより好ましい。工程S02において、金属層14は、スパッタリングまたは蒸着などの方法に限定されるものではないが、PVD法またはCVD法によって、上述の金属の少なくとも1つを用いて発光性基材13の表面上に形成される。金属層14は、0.5〜200nmの幅の厚さを有しており、好ましくは、1〜100nmである。
【0024】
工程S03において、発光性基材13上に金属層14を形成した後、金属層14および発光性基材13が50〜650℃の温度幅で、5分〜5時間アニールされ、室温まで冷却される。好ましいアニール温度幅は、100〜600℃であり、好ましいアニール時間の幅は15分から3時間である。
【0025】
図1および図3を参照すると、発光素子の発光方法のフローチャートが示されており、このフローチャートは、以下の工程を含んでいる:
工程S11、発光素子10が上記記載の製造方法にしたがって得られる。
【0026】
工程S12、陰極線16が金属層14に放射される。陰極線16の放射により、金属層14と発光性基材13との間に表面プラズモンが生じ、発光性基材13を発光させる。
【0027】
発光素子10は、上述のような構造および組成の特徴を有している。応用において、工程S12は、電界放出ディスプレーまたは光源によって実行される。真空中、陽極は、加速電界を形成するために電界放出陰極に正電位を印加し、陰極は陰極線16を放出する。陰極線16により励起され、電子ビームは金属層14を貫通し、発光性基材13を発光させる。かような工程の間、金属層14と発光性基材13との間に表面プラズモンが生じる。表面プラズモン効果に起因して、発光性基材13の内部量子効率が極めて増大し、発光性基材の自然放出が極めて増加し、その結果、発光性基材の発光効率が改善される。
【0028】
上述の通り、発光性基材13は2つの構造を有しており、第1の構造に基づくと、電子ビームは金属層14を貫通し、発光ガラス中のY3AlxGa5-xO12:Tbを発光させる。かような工程の間、Y2SiO5:Tbがドープされた発光ガラスの表面と金属層14との間に表面プラズモンが生じ、表面プラズモンによりY2SiO5:Tbが発光する。第2の構造に基づくと、電子ビームは金属層14を貫通し、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光性フィルムを発光させる。かような工程の間、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光性フィルムの表面と金属層14との間に表面プラズモンが生じ、表面プラズモンによりY2SiO5:Tbが発光する。
【0029】
表面プラズモン(SP)は、金属と媒質との間の界面に沿って広がる波であり、その振幅は、界面からの距離が増大するにしたがって指数関数的に減衰する。金属の表面構造を変化させると、表面プラズモンポラリトン(SPPs)の特性、分散関係、励起モード、カップリング効果は著しく変化する。SPPsにより生じる電磁場は、波長以下の大きさの構造において、光波の伝播を抑制することができるだけでなく、電磁波放射を生じさせると共に、電磁波放射を光周波数からマイクロ波帯まで制御することができ、このようにして、光の伝播の能動的な制御が実行される。したがって、本実施形態は、発光性基材の光学密度を増加させ、また、発光性基材の自然放出速度を向上させるためにSPPsの励起を用いる。さらに、表面プラズモンのカップリング効果を用いることができ、発光性基材が発光する際、共鳴振動現象が生じ、こうして、発光性基材の内部量子効率が極めて増大し、その結果、発光性基材の発光効率が改善される。
【0030】
発光素子の異なる組成や製造方法、およびこれらの性能を説明するため、複数の実施例を挙げる。以下の実施形態において、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体は市販品を用いることができる。
【0031】
(実施例1)
Y3(Al,Ga)5O12:Tbの組成を有する蛍光体およびガラス粉末を、質量比で1:4となるように混合し、溶融させてY3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光体がドープされた発光ガラスを得た。ガラス粉末は、20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有するものを用いた。厚さが2nmである銀の単層を、マグネトロンスパッタリング装置を用いて発光ガラスの表面上に被覆させた。前記発光ガラスおよび前記銀層を、300℃で30分間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0032】
上記で得られた発光素子のスペクトルを測定した。作製された発光素子に電子銃からの陰極線を衝突させて電子ビーム金属層に貫通させ、Y3(Al, Ga)5O12:Tbがドープされた発光ガラスを発光させた。その結果、図4に示す発光スペクトルが得られた。図4に示されるように、発光体は緑色の発光体であり、曲線11は、金属層を有さない発光性基材の発光スペクトルを示し、曲線12は、金属層を有する実施例1の発光素子の発光スペクトルを示す。図4に示されるように、表面プラズモンが金属層と発光性基材との間に生じるため、波長が350〜700nmの範囲において、金属層を有さない発光性基材と比較して、金属層を有する実施例1の発光素子は、発光の積分強度が2.6倍も大きく、したがって、発光性能が極めて改善されている。
【0033】
他の例は、実施例1と類似の発光スペクトルおよび発光性能を有しており、以下では説明を省略する。
【0034】
(実施例2)
Y3Al5O12:Tbの組成を有する蛍光体およびガラス粉末を、質量比で1:19となるように混合し、溶融させてY3Al5O12:Tbの組成を有する発光体がドープされた発光ガラスを得た。ガラス粉末は、20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有するものを用いた。厚さが0.5nmである金の単層を、マグネトロンスパッタリング装置を用いて発光ガラスの表面上に被覆させた。前記発光ガラスおよび前記金層を、200℃で1時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0035】
(実施例3)
Y3Al5O12:Tbの組成を有する蛍光体およびガラス粉末を、質量比で7:13となるように混合し、溶融させてY3Al5O12:Tbの組成を有する発光体がドープされた発光ガラスを得た。ガラス粉末は、20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有するものを用いた。厚さが200nmであるアルミニウムの単層を、マグネトロンスパッタリング装置を用いて発光ガラスの表面上に被覆させた。前記発光ガラスおよび前記アルミニウム層を、500℃で5時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0036】
(実施例4)
両面が研磨された1×1cmのサファイア基板を選択した。Y3Al5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネトロンスパッタリングを用いてサファイア基板上に形成し、厚さが100nmであるマグネシウムの単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記マグネシウム層を、650℃で5分間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0037】
(実施例5)
両面が研磨された1×1cmのマグネシウム酸化物基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、分子線エピタキシーを用いてマグネシウム酸化物基板上に形成し、厚さが1nmであるパラジウムの単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記パラジウム層を、100℃で3時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0038】
(実施例6)
両面が研磨された1×1cmのマグネシウム酸化物基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、スプレー熱分解によってマグネシウム酸化物基板上に形成し、厚さが5nmである白金の単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記白金層を、450℃で15分間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0039】
(実施例7)
両面が研磨された1×1cmの石英基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いて石英基板上に形成し、厚さが20nmである鉄の単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記鉄層を、50℃で5時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0040】
(実施例8)
両面が研磨された1×1cmの石英基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いて石英基板上に形成し、厚さが10nmであるチタンの単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記チタン層を、150℃で2時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0041】
(実施例9)
両面が研磨された1×1cmの石英基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いて石英基板上に形成し、厚さが50nmである銅の単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記銅層を、200℃で2.5時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0042】
(実施例10)
両面が研磨された1×1cmの石英基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いて石英基板上に形成し、厚さが150nmである亜鉛の単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記亜鉛層を、350℃で30分間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0043】
(実施例11)
両面が研磨された1×1cmの石英基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いて石英基板上に形成し、厚さが120nmであるクロムの単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記クロム層を、250℃で2時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0044】
(実施例12)
両面が研磨された1×1cmの石英基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いて石英基板上に形成し、厚さが40nmであるニッケルの単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記ニッケル層を、80℃で4時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0045】
(実施例13)
両面が研磨された1×1cmの石英基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いて石英基板上に形成し、厚さが180nmであるコバルトの単層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。前記発光性フィルムおよび前記コバルト層を、400℃で1時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0046】
(実施例14)
Y3Al5O12:Tbの組成を有する蛍光体およびガラス粉末を、質量比で3:17となるように混合し、溶融させてY3Al5O12:Tbの組成を有する発光体がドープされた発光ガラスを得た。ガラス粉末は、20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有するものを用いた。厚さが0.5nmである金/アルミニウム層を、マグネトロンスパッタリング装置を用いて発光ガラスの表面上に被覆させた。金/アルミニウム層において、金は約80重量%を占め、アルミニウムは約20%を占めていた。前記発光ガラスおよび前記金/アルミニウム層を、200℃で1時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0047】
(実施例15)
Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する蛍光体およびガラス粉末を、質量比で3:7となるように混合し、溶融させてY3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光体がドープされた発光ガラスを得た。ガラス粉末は、20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有するものを用いた。厚さが15nmである銀/アルミニウム層を、マグネトロンスパッタリング装置を用いて発光ガラスの表面上に被覆させた。銀/アルミニウム層において、銀は約90重量%を占め、アルミニウムは約10%を占めていた。前記発光ガラスおよび前記銀/アルミニウム層を、200℃で1時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0048】
(実施例16)
両面が研磨された1×1cmの石英基板を選択した。Y3Al5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いて石英基板上に形成し、厚さが10nmである銀/アルミニウム層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。銀/アルミニウム層において、銀は約80重量%を占め、アルミニウムは約20%を占めていた。前記発光性フィルムおよび前記銀/アルミニウム層を、150℃で2時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0049】
(実施例17)
両面が研磨された1×1cmのマグネシウム酸化物基板を選択した。Y3(Al, Ga)5O12:Tbの組成を有する発光性フィルムを、マグネシウムスパッタリングを用いてマグネシウム酸化物基板上に形成し、厚さが10nmである金/アルミニウム層を、電子ビーム蒸着装置を用いて発光性フィルムの表面上に被覆させた。金/アルミニウム層において、金は約90重量%を占め、アルミニウムは約10%を占めていた。前記発光性フィルムおよび前記金/アルミニウム層を、150℃で2時間、1×10−3Paよりも低い真空度の真空中でアニールし、室温まで冷却し、発光素子を得た。
【0050】
上述の実施例において、金属微細構造を有する金属層14が発光性基材13の表面上に形成され、陰極線が照射されることにより、表面プラズモンが金属層14と発光性基材13との間に生じうる。表面プラズモン効果に起因して、発光性基材13の内部量子効率が極めて増大し、発光性基材の自然放出が極めて増加し、その結果、発光性基材の発光効率が改善され、発光体の低い発光効率の問題が克服される。発光素子の発光方法において、ひとたび金属層14に陰極線を放出すると、金属層14と発光性基材13との間に表面プラズモンが生じ、こうして発光効率および信頼性が改善される。発光素子10は、発光性基材13および金属層14を含む単純な二層構造を有する。加えて、発光性基材13と金属層14との間に均一な界面が形成され、その結果、優れた発光の均一性および安定性が達成される。発光素子の発光方法において、ひとたび陰極線を金属層14に放射すると、金属層14と発光性基材13との間に表面プラズモンが生じ、こうして、発光効率および発光性基材13の信頼性が改善される。
【0051】
発光素子の製造方法の実施形態において、発光素子は、発光性基材上に金属層を形成し、発光性基材および金属層をアニールすることにより得られうる。したがって、製造方法は単純かつ廉価である。発光素子は、電界放出ディスプレーといった、超高輝度および高速動作を伴う発光装置に広く応用されうる。
【0052】
構造上の特徴および/または方法論的行為に特定的な表現で本発明を記載してきたが、添付の特許請求の範囲に定義された発明は、記載された特定的特徴や行為に必ずしも限定されないことが理解される。むしろ、特定的特徴や行為は、特許請求の範囲に記載された発明を実装する形態の例として開示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光性基材と;
該発光性基材の表面上に形成された金属微細構造を有する金属層と;を含み、
前記発光性基材は、Y3AlxGa5-xO12:Tbかつ0≦x≦5の化学組成を有する発光体を含む、発光素子。
【請求項2】
前記発光性基材は、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体がドープされた発光ガラスであり、
該ガラスは、20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有する、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記発光性基材中、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体の質量百分率は、5%〜35%である、請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記発光性基材は、
透明または半透明の基材と、
該基材上に形成されたY3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光性フィルムと、を含み、
前記金属層は、前記発光性フィルム上に形成されている、請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記金属層は、Au,Ag,Al,Cu,Ti,Fe,Ni,Co,Cr,Pt,Pd,Mg,およびZnからなる群から選択される少なくとも1つの金属により形成される、請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記金属層は、0.5〜200nmの範囲の厚みを有する、請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
Y3AlxGa5-xO12:Tbかつ0≦x≦5の化学組成を有する発光体を含む発光性基材を作製し;
前記発光性基材の表面上に金属層を形成し;
前記発光性基材および前記金属層を真空中でアニールして前記金属層の金属微細構造を形成し、続いて、前記発光性基材および前記金属層を冷却して発光素子を形成することを含む、発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記発光性基材の作製は、
Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体および20Na2O-20BaO-30B2O3-30SiO2の化学組成を有するガラス粉末を混合し;
1000〜1300℃の温度範囲で溶融させ;
室温まで冷却し、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光体を添加した発光ガラスを得ることを含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記発光性基材の作製は、透明または半透明の基材の表面上に、Y3AlxGa5-xO12:Tbの化学組成を有する発光性フィルムを形成することを含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法により発光素子を得て;
陰極線を前記金属層に放射し、前記陰極線の放射により前記金属層と前記発光性基材との間に表面プラズモンを生じさせ、続いて、前記発光性基材を発光させることを含む、発光素子の発光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−502499(P2013−502499A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525838(P2012−525838)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073518
【国際公開番号】WO2011/022879
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512016928)海洋王照明科技股▲ふん▼有限公司 (14)
【Fターム(参考)】