説明

発光素子、発光装置及び電気器具

【課題】積層構造を有する有機化合物層において、その界面に生じるエネルギー障壁を緩和する構造を有する発光装置を提供する。
【解決手段】有機化合物層(1)102と有機化合物層(2)103との界面に有機化合物層(1)102を構成する材料及び有機化合物層(2)103を構成する材料からなる混合層105を形成することにより、有機化合物層(1)102と有機化合物層(2)103との間に生じるエネルギー障壁を緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界を加えることで発光が得られる有機化合物を含む膜(以下、「有機化合物層」と記す)と、陽極と、陰極と、を有する有機発光素子を用いた発光装置に関する。本発明では特に、従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ素子の寿命が長い有機発光素子を用いた発光装置に関する。なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子として有機発光素子を用いた画像表示デバイスもしくは発光デバイスを指す。また、有機発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルム((FPC:flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または有機発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、電界を加えることにより発光する素子である。その発光機構は、電極間に有機化合物層を挟んで電圧を印加することにより、陰極から注入された電子および陽極から注入された正孔が有機化合物層中の発光中心で再結合して分子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光すると言われている。
【0003】
なお、有機化合物が形成する分子励起子の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であるが、本明細書中ではどちらの励起状態が発光に寄与する場合も含むこととする。
【0004】
このような有機発光素子において、通常、有機化合物層は1μmを下回るほどの薄膜で形成される。また、有機発光素子は、有機化合物層そのものが光を放出する自発光型の素子であるため、従来の液晶ディスプレイに用いられているようなバックライトも必要ない。したがって、有機発光素子は極めて薄型軽量に作製できることが大きな利点である。
【0005】
また、例えば100〜200nm程度の有機化合物層において、キャリアを注入してから再結合に至るまでの時間は、有機化合物層のキャリア移動度を考えると数十ナノ秒程度であり、キャリアの再結合から発光までの過程を含めてもマイクロ秒以内のオーダーで発光に至る。したがって、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。
【0006】
さらに、有機発光素子はキャリア注入型の有機発光素子であるため、直流電圧での駆動が可能であり、ノイズが生じにくい。駆動電圧に関しては、まず有機化合物層の厚みを100nm程度の均一な超薄膜とし、また、有機化合物層に対するキャリア注入障壁を小さくするような電極材料を選択し、さらにはヘテロ構造(積層構造)を導入することによって、5.5Vで100cd/m2の十分な輝度が達成されたという報告がある(文献1:C. W. Tang and S. A. VanSlyke, "Organic electroluminescent diodes", Applied Physics Letters, vol. 51, No.12, 913-915 (1987))。
【0007】
こういった薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性から、有機発光素子は次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、自発光型であり視野角が広いことから、視認性も比較的良好であり、電気器具の表示画面に用いる素子として有効と考えられている。
【0008】
ところで、文献1において示された有機発光素子の構成であるが、まず、キャリア注入障壁を小さくする方法として、仕事関数が低い上に比較的安定なMg:Ag合金を陰極に用い、電子の注入性を高めている。このことにより、有機化合物層に大量のキャリアを注入することを可能としている。
【0009】
さらに有機化合物層として、ジアミン化合物からなる正孔輸送層とトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(以下、「Alq3」と記す)からなる電子輸送性発光層とを積層するという、シングルヘテロ構造を適用することにより、キャリアの再結合効率を飛躍的に向上させている。このことは、以下のように説明される。
【0010】
例えば、Alq3単層のみを有する有機発光素子の場合では、Alq3が電子輸送性であるため、陰極から注入された電子のほとんどは正孔と再結合せずに陽極に達してしまい、発光の効率は極めて悪い。すなわち、単層の有機発光素子を効率よく発光させる(低電圧で駆動する)ためには、電子および正孔の両方をバランスよく輸送できる材料(以下、「バイポーラー材料」と記す)を用いる必要があり、Alq3はその条件を満たしていない。
【0011】
しかし、文献1のようなシングルへテロ構造(二層構造)を適用すれば、陰極から注入された電子は正孔輸送層と電子輸送性発光層との界面でブロックされ、電子輸送性発光層中へ閉じこめられる。したがって、キャリアの再結合が効率よく電子輸送性発光層で行われ、効率のよい発光に至るのである。
【0012】
このようなキャリアのブロッキング機能の概念を発展させると、キャリアの再結合領域を制御することも可能となる。その例として、正孔をブロックできる層(正孔阻止層)を正孔輸送層と電子輸送層との間に挿入することにより、正孔を正孔輸送層内に閉じこめ、正孔輸送層の方を発光させることに成功した報告がある。(文献2:Yasunori KIJIMA, Nobutoshi ASAI and Shin-ichiro TAMURA, "A Blue Organic Light Emitting Diode", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 38, 5274-5277(1999))。なお、文献2で示されたような材料からなる正孔阻止層は、発光層よりも高い励起エネルギーを有するため、分子励起子の拡散を防止する役割も果たしている。
【0013】
また、文献1における有機発光素子は、正孔の輸送は正孔輸送層が行い、電子の輸送および発光は電子輸送性発光層が行うという、機能分離が特徴であるとも言える。この機能分離の概念はさらに発展し、正孔輸送、電子輸送、および発光の三種類の機能を、それぞれ異なる材料が担う手法が提案されるようになった。
この手法により、キャリア輸送性は乏しくとも発光効率は高い材料を発光材料として使用することができ、それに伴って有機発光素子の発光効率も向上するためである。
【0014】
その代表的な手法は、色素のドーピングである(文献3:C. W. Tang, S. A. VanSlyke, and C. H. Chen, "Electroluminescence of doped organic thin films", Journal of Applied Physics, vol. 65, No.9, 3610-3616 (1989))。すなわち、図13(a)に示すように、正孔輸送層1101および電子輸送層1102(発光層でもある)を設けたシングルへテロ構造において、電子輸送層1102に色素1103をドープすることにより、色素1103の発光色を得るものである。色素1103は、正孔輸送層1101側にドープする場合も考えられる。
【0015】
これに対し、図13(b)に示すように、正孔輸送層と電子輸送層の間に発光層を挟むというダブルへテロ構造(三層構造)の手法もある(文献4:Chihaya ADACHI, Shizuo TOKITO, Tetsuo TSUTSUI and Shogo SAITO, "Electroluminescence in Organic Films with Three-Layered Structure", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 27, No. 2, L269-L271(1988))。この手法の場合、正孔輸送層1101から発光層1104に正孔が、電子輸送層1102から発光層1104に電子が、それぞれ注入されるため、発光層1104においてキャリアの再結合が起こり、発光層1104として用いた材料の発光色にて発光に至るのである。
【0016】
こういった機能分離の利点としては、機能分離することによって一種類の有機材料に様々な機能(発光性、キャリア輸送性、電極からのキャリア注入性など)
を同時に持たせる必要がなくなり、分子設計等に幅広い自由度を持たせることができる点にある(例えば、無理にバイポーラー材料を探索する必要がなくなる)
。つまり、発光特性のいい材料、キャリア輸送性が優れる材料などを、各々組み合わせることで、容易に高発光効率が達成できるということである。
【0017】
これらの利点から、文献1〜4で述べられた積層構造の概念(キャリアブロッキング機能あるいは機能分離)自体は、現在にいたるまで広く利用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、以上で述べたような積層構造は異種物質間の接合であるため、その界面には必ずエネルギー障壁が生じることになる。エネルギー障壁が存在すれば、その界面においてキャリアの移動は妨げられるため、以下に述べるような二つの問題点が提起される。
【0019】
まず一つは、駆動電圧のさらなる低減へ向けての障害になるという点である。
実際、現在の有機発光素子において、駆動電圧に関しては積層構造の素子に比べて、共役ポリマーを用いた単層構造の素子の方が優れており、パワー効率(単位:[lm/W])でのトップデータ(ただし、一重項励起状態からの発光を比較しており、三重項励起状態からの発光は除いている)を保持していると報告されている(文献5:筒井哲夫、「応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会会誌」、Vol. 11、No. 1、P.8(2000))。
【0020】
なお、文献5で述べられている共役ポリマーはバイポーラー材料であり、キャリアの再結合効率に関しては積層構造と同等なレベルが達成できる。したがって、バイポーラー材料を用いるなどの方法で、積層構造を用いることなくキャリアの再結合効率さえ同等にできるのであれば、界面の少ない単層構造の方が実際は駆動電圧が低くなることを示している。
【0021】
例えば電極との界面においては、エネルギー障壁を緩和するような材料を挿入し、キャリアの注入性を高めて駆動電圧を低減する方法がある(文献6:Takeo Wakimoto, Yoshinori Fukuda, Kenichi Nagayama, Akira Yokoi, Hitoshi Nakada, and Masami Tsuchida, "Organic EL Cells Using Alkaline Metal Compounds as Electron Injection Materials", IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 44, NO. 8, 1245-1248(1997))。文献6では、電子注入層としてLi2Oを用いることにより、駆動電圧の低減に成功している。
【0022】
しかしながら、有機材料間(例えば正孔輸送層と発光層との間のことであり、以下、「有機層間」と記す)のキャリア移動性に関してはいまだ未解決の分野であり、単層構造の低駆動電圧に追いつくための重要なポイントであると考えられる。
【0023】
さらに、エネルギー障壁に起因するもう一つの問題点として、有機発光素子の素子寿命に対する影響が考えられる。すなわち、キャリアの注入が妨げられ、チャージが蓄積することによる輝度の低下である。
【0024】
この劣化機構に関してははっきりした理論は確立されていないが、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を挿入し、さらにdc駆動ではなく矩形波のac駆動にすることによって、輝度の低下を抑えることができるという報告がある(文献7:S. A. VanSlyke, C. H. Chen, and C. W. Tang, "Organic electroluminescent devices with improved stability", Applied Physics Letters, Vol. 69, No. 15, 2160-2162(1996))。これは、正孔注入層を挿入し、ac駆動することによってチャージの蓄積を排除し、輝度の低下を抑えることができるという実験的な裏付けと言える。
【0025】
以上のことから、積層構造は容易にキャリアの再結合効率を高めることができ、なおかつ機能分離の観点から材料の選択幅を広くできるというメリットを持つ一方で、有機層間を多数作り出すことによってキャリアの移動を妨げ、駆動電圧や輝度の低下に影響を及ぼしていると言える。
【0026】
そこで本発明では、従来用いられている積層構造の利点(キャリアブロッキング機能あるいは機能分離)を活かしつつ、なおかつ有機層間のエネルギー障壁を緩和することによって、従来よりも駆動電圧が低い上に素子の寿命が長い有機発光素子を提供することを課題とする。
【0027】
また、このような有機発光素子を用いることにより、従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ寿命の長い発光装置を提供することを課題とする。さらに、前記発光装置を用いて電気器具を作製することにより、従来よりも低消費電力で、なおかつ長保ちする電気器具を提供することを課題とする。
【0028】
ところで、図13(a)のような色素1103のドーピングという手法は、固体の状態では発光を示さず、溶液中に低濃度で分散した場合にのみ発光が観測されるような材料(例;キナクリドン)であっても、有機発光素子に適用できるというメリットがある。すなわち、濃度消光を起こしやすい発光材料に対して有効な手法と言える。
【0029】
しかしながら、色素をドープする量は通常極微量(1wt%を切る場合もある)であり、一般に広く用いられている真空蒸着法にて有機発光素子を作製する場合、蒸着量の制御が困難であるというデメリットがある。特に発光効率は、添加する色素の量に対して敏感であり、作製した素子ごとのばらつきが生じてしまうことが考えられる。
【0030】
また、色素のドーピングという手法の場合、色素はゲストとなる。この場合、ホスト材料の最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)とのエネルギー差(以下、「励起エネルギーレベル」と記す)が、ゲストのそれよりも大きい必要がある。加えて、ホストはキャリア輸送性も併せ持つ必要もある。さらに、より好ましくは、ホストの極大発光波長とゲストの極大吸収波長がマッチしていることが発光効率を高める。
【0031】
ところが、例えば青色のゲストに対するホストは、青色のような短波長の可視光よりもさらに大きな励起エネルギーレベルを必要とするため、ホスト材料の選択は大きく限定されてくる。赤色のゲストに対するホストに至っては、上記要求を全て満たした材料は報告されていない。したがって、ドープする色素に対する最適なホスト材料を選択しなければならないことも、色素のドーピングという手法のデメリットの一つである。
【0032】
以上のことを考えると、図13(b)のようなダブルへテロ構造(正孔輸送層+発光層+電子輸送層)の方が好ましいと考えられる。発光層に用いる材料としては、固体状態でも発光するものを選ばなければならない(すなわち、濃度消光する材料は使用できない)という制約はあるものの、必ずしも大きなキャリア輸送性は必要ないため、比較的材料の選択幅は広い。
【0033】
しかしながら、図13(b)のようなダブルへテロ構造は、三種類の異種物質間の接合であるため、各層間(正孔輸送層1101と発光層1104との間、および電子輸送層1102と発光層1104との間)に界面(以下、「有機界面」と記す)を生じることになる。したがって、有機界面を形成することに起因する問題点として、上で述べた二つの問題点が提起される。
【0034】
すなわち、図13(b)のようなダブルへテロ構造は、色素のドーピングという手法を用いることなく機能分離が可能になるという大きなメリットを持つ一方で、発光層の両端に有機界面を作り出しているため、発光層へのキャリアの移動が妨げられ、駆動電圧や素子寿命に大きな影響を及ぼしていると考えられる。
【0035】
そこで本発明では、特に従来用いられているダブルへテロ構造における有機界面を排除してキャリアの移動性を高めると同時に、ダブルへテロ構造の機能分離の思想は活かし、各機能は発現させる(以下、「機能発現」と記す)ことを課題とする。それにより、従来よりも駆動電圧が低い上に素子の寿命が長い有機発光素子を提供することを課題とする。
【0036】
また、このような有機発光素子を用いることにより、従来よりも駆動電圧が低く、なおかつ寿命の長い発光装置を提供することを課題とする。さらに、前記発光装置を用いて電気器具を作製することにより、従来よりも低消費電力で、なおかつ長保ちする電気器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
有機界面の形成によりキャリアの移動が妨げられるモデルとして、本発明者は以下に述べるような二つの機構を考えた。
【0038】
まず一つの機構として、有機界面のモルフォロジーから生じるものが考えられる。有機発光素子における有機化合物膜は通常、アモルファス状態の膜であり、これは有機化合物の分子同士が、双極子相互作用を主とした分子間力で凝集することにより形成されている。ところが、このような分子の凝集体を用いてヘテロ構造を形成すると、分子のサイズや形状の違いが積層構造の界面(すなわち有機界面)に大きな影響を及ぼす可能性がある。
【0039】
特に、分子のサイズが大きく異なる材料を用いて積層構造を形成した場合、その有機界面における接合の整合性が悪くなると考えられる。その概念図を図14に示す。図14では、小さい分子1401からなる第一の層1411と、大きい分子1402からなる第二の層1412を積層している。この場合、形成される有機界面1413において、整合性の悪い領域1414が発生してしまう。
【0040】
図14で示した整合性の悪い領域1414は、キャリアの移動を妨げるバリア(あるいはエネルギー障壁)となる可能性があるため、駆動電圧のさらなる低減へ向けての障害になることが示唆される。また、エネルギー障壁を越えられないキャリアはチャージとして蓄積してしまい、先に述べたような輝度の低下を誘起してしまう可能性がある。
【0041】
もう一つの機構として、積層構造を形成する(すなわち有機界面を形成する)
工程から生じるものが考えられる。積層構造の有機発光素子は、各層を形成する際のコンタミネーションを避けるため、通常、図15に示すようなマルチチャンバー方式(インライン方式)の蒸着装置を用いて作製する。
【0042】
図15に示した例は、正孔輸送層・発光層・電子輸送層のダブルへテロ構造を形成するための蒸着装置の概念図である。まず、搬入室に陽極(インジウム錫酸化物(以下、「ITO」と記す)など)を有する基板を搬入し、まず紫外線照射室において真空雰囲気中で紫外線を照射することにより、陽極表面をクリーニングする。特に陽極がITOのような酸化物である場合、前処理室にて酸化処理を行う。さらに、積層構造の各層を形成するため、蒸着室1501で正孔輸送層を、蒸着室1502〜1504で発光層(図15では、赤、緑、青の三色とした)を、蒸着室1505で電子輸送層を成膜し、蒸着室1506で陰極を蒸着する。最後に、封止室にて封止を行い、搬出室から取り出して有機発光素子を得る。1511〜1516は各蒸着源である。
【0043】
このようなインライン方式の蒸着装置の特色としては、各層の蒸着を、それぞれ異なる蒸着室1501〜1505において蒸着していることである。つまり、各層の材料がほとんど互いに混入しないような装置構成となっている。
【0044】
ところで、蒸着装置の内部は通常10-4〜10-5パスカル程度に減圧されているものの、極微量の気体成分(酸素や水など)は存在している。そして、この程度の真空度の場合、それら極微量の気体成分でも、数秒もあれば容易に単分子レイヤー程度の吸着層を形成してしまうと言われている。
【0045】
したがって、図15のような装置を用いて積層構造の有機発光素子を作製する場合、各層を形成する間に大きなインターバルが生じてしまうことが問題なのである。つまり、各層を形成する間のインターバル、特に第二搬送室を経由して搬送する際などに、極微量の気体成分による吸着層(以下、「不純物層」と記す)
を形成してしまう懸念がある。
【0046】
その概念図を図16に示す。図16は、第一の有機化合物1601からなる第一の層1611と、第二の有機化合物1602からなる第二の層1612とを積層する際に、その層間に微量の不純物1603(水や酸素など)からなる不純物層1613が形成されている様子である。
【0047】
このようにして各層間(すなわち有機界面)に形成されてしまう不純物層は、有機発光素子の完成後、キャリアをトラップする不純物領域となってキャリアの移動を妨げるため、やはり駆動電圧を上昇させてしまう。さらに、キャリアをトラップする不純物領域が存在すると、そこにはチャージが蓄積することになるため、先に述べたような輝度の低下を誘起してしまう可能性がある。
【0048】
このような構造を考慮し、前記課題を解決する手法として、本発明者は図1に示すような手法を考案した。すなわち、図1のように有機発光素子の陽極101と陰極104の間に有機化合物層(1)102および有機化合物層(2)103が積層される場合、従来の明確な界面が存在する積層構造(図1(A))ではなく、有機化合物層(1)102と有機化合物層(2)103との間に、有機化合物層(1)102を構成する材料および有機化合物層(2)103を構成する材料の両方からなる混合層105を形成する構造(図1(B))である。なお、ここでいう混合層には、有機化合物層(1)102や有機化合物層(2)103との界面が明確でなくとも、有機化合物層(1)102を構成する材料および有機化合物層(2)103を構成する材料の両方が含まれている領域を含むものとする。
【0049】
このような素子であれば、先に述べた従来の積層構造における有機界面は、実質上存在しない。したがって、上述の有機界面で生じる問題点(有機界面のモルフォロジー悪化および不純物層の形成)を解決することができる。
【0050】
まず、有機界面のモルフォロジー悪化の解決について、図20を用いて説明する。図20は、小さい分子1801からなる領域1811と、大きい分子1802からなる領域1812と、小さい分子1801および大きい分子1802の両方を含む混合領域1813と、からなる有機化合物膜の断面である。図20から明らかなように、図14で存在していたような有機界面1413は存在せず、整合性の悪い領域1414も存在しない。
【0051】
また、不純物層の形成の解決であるが、これは単純明快である。図17のような有機発光素子を作製する場合、陽極上に正孔輸送材料を蒸着し、途中からそれに加えて発光材料を共蒸着の形で蒸着することで第一の混合領域を形成し、第一の混合領域を形成後は正孔輸送材料の蒸着を止めることで発光材料のみを蒸着する。以下同様にして、電子輸送領域を形成し終わるまで、有機界面を形成することなく常に材料を蒸着している状態になる。したがって、図15のような蒸着装置を用いて有機発光素子を作製する際に生じる、インターバルが存在しない。つまり、不純物層を形成する隙を与えることがないのである。
【0052】
したがって、図1(B)に示されるような構造を適用することで、有機層間に存在するエネルギー障壁は図1(A)に示される従来の構造に比較して低減され、キャリアの注入性が向上すると考えられる。具体的には、図1(A)の構造におけるエネルギーバンド図は図1(C)に示すとおりであるが、図1(B)に示すような有機層間に混合層を設ける構造を形成した場合には、エネルギーバンド図は、図1(D)のようになる。すなわち有機層間におけるエネルギー障壁は、連続接合構造を形成することにより緩和され、連続的なエネルギー変化が形成される。したがって、駆動電圧の低減、および輝度低下の防止が可能となる。
【0053】
以上のことから、本発明では、有機化合物からなる第一の層と、前記第一の層を構成する物質とは異なる有機化合物からなる第二の層と、を少なくとも含む有機発光素子を有する発光装置において、前記第一の層と前記第二の層との間に、前記第一の層を構成する有機化合物、および前記第二の層を構成する有機化合物、の両方を含む混合層を設けたことを特徴とする。
【0054】
上で述べた第一の層および第二の層の組み合わせを、表1に示す。組み合わせA〜Eは、単独で導入してもよい(例えばAのみ)し、複合して導入してもよい(例えばAとBの両方)。
【0055】
【表1】

【0056】
また、組み合わせCとDを複合して導入する場合(すなわち、発光層の両界面に混合層を導入する場合)、発光層で形成された分子励起子の拡散を防ぐことで、さらに発光効率を高めることができる。したがって、発光層の励起エネルギーは、正孔輸送層の励起エネルギーおよび電子輸送層の励起エネルギーよりも低いことが好ましい。この場合、キャリア輸送性に乏しい発光材料も発光層として利用できるため、材料の選択幅が広がる利点がある。なお、本明細書中でいう励起エネルギーとは、分子における最高被占分子軌道(HOMO:hight occupied molecular orbital)と最低空分子軌道(LUMO:lowest unoccupied molecular orbital)とのエネルギー差のことをいう。
【0057】
さらに好ましくは、発光層を、ホスト材料と、ホスト材料よりも励起エネルギーが低い発光材料(ドーパント)とで構成し、ドーパントの励起エネルギーが、正孔輸送層の励起エネルギーおよび電子輸送層の励起エネルギーよりも低くなるように設計することである。このことにより、ドーパントの分子励起子の拡散を防ぎ、効果的にドーパントを発光させることができる。また、ドーパントがキャリアトラップ型の材料であれば、キャリアの再結合効率も高めることができる。
【0058】
また、以上で述べた本発明において、混合層を連続的に接合することは、キャリアの移動性をさらに高める手段として極めて有効であると考えられる。なお、混合層の形成においては、混合層に濃度勾配をもたせる手法が好ましい。したがって本発明では、混合層に濃度勾配が形成されていることを特徴とする。
【0059】
さらに、本発明者は、ダブルへテロ構造における有機界面を排除すると同時に、なおかつ機能発現が可能な有機発光素子を実現する手法を考案した。その概念図を図17に示す。なお、ここでは基板1701上に陽極1702を設けてあるが、陰極1704の方を基板上に設ける逆の構造をとってもよい。
【0060】
図17の素子では、正孔輸送材料、発光材料、および電子輸送材料を含む有機化合物膜1703において、正孔輸送材料からなる正孔輸送領域1705、発光材料からなる発光領域1706、電子輸送材料からなる電子輸送領域1707が設けられている。さらに、本発明の特徴として、正孔輸送材料および発光材料が混合された第一の混合領域1708と、電子輸送材料および発光材料が混合された第二の混合領域1709と、を設けている。
【0061】
図17の素子における、膜厚方向の濃度プロファイルの例を図18および図19に示す。第一の混合領域1708における正孔輸送材料と発光材料との組成比がx:z1で一定であり、第二の混合領域1709における電子輸送材料と発光材料との組成比がy:z2で一定である場合は、図18のようになる。また、第一の混合領域1708や第二の混合領域1709に濃度勾配が形成されている場合は、図19のようになる。
【0062】
図17の素子も上述したように、有機界面を形成することがないためキャリアの移動が潤滑であり、駆動電圧および素子の寿命に悪影響を及ぼすことがなくなる。さらに、従来のダブルへテロ構造と同様に機能分離されているため、発光効率の点でも問題はない。
【0063】
また、従来のヘテロ構造(積層構造)が異種物質間の単なる接合(hetero-junction)であるのに対し、本発明の構造はいわば混合接合(mixed-junction)であり、新しい概念に基づく有機発光素子であると言える。
【0064】
したがって本発明では、陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、および発光材料を含む有機化合物膜を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記発光材料の両方を含む第一の混合領域と、前記発光材料からなる発光領域と、前記電子輸送材料および前記発光材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする。
【0065】
また、図21(a)のように、陽極1702と有機化合物膜1703との間に、正孔の注入性を高める材料(以下、「正孔注入材料」と記す)からなる正孔注入領域1710を挿入してもよい。あるいは図21(b)のように、陰極1704と有機化合物膜1703との間に、電子の注入性を高める材料(以下、「電子注入材料」と記す)からなる電子注入領域1711を挿入してもよい。さらに、正孔注入領域と電子注入領域の両方を組み込んでもよい。
【0066】
この場合、正孔注入材料または電子注入材料は、電極から有機化合物膜へのキャリア注入障壁を小さくするための材料であるため、電極から有機化合物膜へのキャリアの移動を潤滑にし、チャージの蓄積を排除できる効果がある。ただし、先に述べたような不純物層の形成を避ける観点から、各注入材料と有機化合物膜との間は、インターバルをおかずに成膜することが好ましい。
【0067】
また、これまで述べたような本発明の有機発光素子の発光領域として、ホスト材料に発光材料をドープした素子を用いてもよい。すなわち、図22に示すように、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、および前記発光材料に対するホスト材料を含む有機化合物膜11003において、正孔輸送材料からなる正孔輸送領域11005、ホスト材料に発光材料11012が添加された発光領域11006、電子輸送材料からなる電子輸送領域11007が設けられ、さらに、本発明の特徴として、正孔輸送材料およびホスト材料が混合された第一の混合領域11008と、電子輸送材料およびホスト材料が混合された第二の混合領域11009と、を設けている。
【0068】
このような素子では、図13(a)で説明したように、発光材料11012をドープする量の制御が困難であるというデメリットはある。しかしながら、ホスト材料に関しては、図13(a)の構造に比べて大きなキャリア輸送性が必要ないため、ホスト材料の選択幅が広いというメリットは存在する。また、駆動電圧を下げるために発光領域11006の厚さを減らすと、通常はキャリアが発光領域を素通りしてしまう可能性があるが、発光材料11012をドープすることである程度防ぐことができるため有効である。
【0069】
さらに、図22の素子に対し、陽極11002と有機化合物膜11003との間に、正孔注入材料からなる正孔注入領域11010を挿入してもよい。あるいは、陰極11004と有機化合物膜11003との間に、電子注入材料からなる電子注入領域11011を挿入してもよい。さらに、正孔注入領域と電子注入領域の両方を組み込んでもよい。なお、図22では、正孔注入領域11010と電子注入領域11011の両方を形成した例を示した。
【0070】
以上で述べられた有機発光素子に対して、正孔注入領域を設ける場合、特にp型の導電性材料を用いることが好ましい。その例として、π電子共役系の有機化合物に対し、ルイス酸を添加し、導電性を向上させる手法が考えられる。また、成膜法の観点から、湿式塗布にて成膜可能な高分子化合物を用いることが好ましい。さらに、ルイス酸としては、ヨウ素などのハロゲン元素を含む化合物が好ましい。
【0071】
また、以上で述べられた有機発光素子に対して、電子注入領域を設ける場合、特にn型の導電性材料を用いることが好ましい。その例として、π電子共役系の有機化合物に対し、ルイス塩基を添加し、導電性を向上させる手法が考えられる。ルイス塩基としては、セシウムなどのアルカリ金属元素を含む化合物が好ましい。
【0072】
ところで近年、発光効率の観点から、三重項励起状態から基底状態に戻る際に放出されるエネルギー(以下、「三重項励起エネルギー」と記す)を発光に変換できる有機発光素子が、その高い発光効率ゆえに注目されている(文献8:D. F. O'Brien, M. A. Baldo, M. E. Thompson and S. R. Forrest, "Improved energy transfer in electrophosphorescent devices", Applied Physics Letters, vol. 74, No. 3, 442-444 (1999))(文献9:Tetsuo TSUTSUI, Moon-Jae YANG, Masayuki YAHIRO, Kenji NAKAMURA, Teruichi WATANABE, Taishi TSUJI, Yoshinori FUKUDA, Takeo WAKIMOTO and Satoshi MIYAGUCHI, "High Quantum Efficiency in Organic Light-Emitting Devices with Iridium-Complex as a Triplet Emissive Center", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 38, L1502-L1504 (1999))。
【0073】
文献8では白金を中心金属とする金属錯体を、文献9ではイリジウムを中心金属とする金属錯体を用いている。これらの三重項励起エネルギーを発光に変換できる有機発光素子(以下、「三重項発光素子」と記す)は、従来よりも高輝度発光・高発光効率を達成することができる。
【0074】
しかしながら、文献9の報告例によると、初期輝度を500cd/m2に設定した場合の輝度の半減期は170時間程度であり、素子寿命に問題がある。三重項発光素子は、発光材料に対する適切なホスト材料、および分子励起子の拡散を防ぐブロッキング材料が必要であるため、多層構造になっており、有機界面が多数生じてしまうことが素子寿命の短い原因と考えられる。
【0075】
そこで、有機層間に混合層を導入するという本発明の概念を三重項発光素子に適用することにより、三重項励起状態からの発光による高輝度発光・高発光効率に加え、素子の寿命も長いという非常に高機能な発光素子が可能となる。
【0076】
なお、三重項の分子励起子は、拡散長が一重項の分子励起子に比べて大きいため、ブロッキング材料(一般には、発光種の分子励起子よりも大きな励起エネルギーレベルを有していればよい)と同様の役割を果たす材料が必要となる。素子構成から考えると、電子輸送材料にその役割を担わせることが好ましい。
【0077】
また、以上で述べたような本発明の有機発光素子に適用されている第一の混合領域および第二の混合領域のいずれかは、図19に示すような濃度勾配が形成されていてもよい。このような場合、発光領域の両端において、キャリアに対するエネルギー障壁をほぼ解消できると予想されるため、さらに好ましい。
【発明の効果】
【0078】
以上のように、本発明により積層構造を有する有機化合物層の界面において、それぞれの有機化合物層を形成する有機化合物からなる混合層を形成することにより、界面における有機層間のエネルギー障壁を緩和することができる。これにより有機層間におけるキャリアの注入性を向上させることができるので、駆動電圧の低減や素子寿命の長い有機発光素子を形成することが可能となる。
さらに本発明を実施することで、消費電力が少ない上に、寿命も優れた発光装置を得ることができる。さらに、そのような発光装置を光源もしくは表示部に用いることで、明るく消費電力が少ない上に、長保ちする電気器具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
本発明の有機発光素子を作製する方法について図2及び図3を用いて説明する。
【0080】
はじめに、基板200上にスパッタリング法または蒸着法により陽極201を形成し、陽極201上に有機化合物層(1)202を形成する。なお、有機化合物層(1)202には、有機化合物1を材料として用い、真空蒸着法により形成する。
【0081】
次に、混合層205を形成する。なお、混合層205には、有機化合物層(1)202を形成する材料(有機化合物1)と後で形成する有機化合物層(2)203を形成する材料(有機化合物2)とを材料として用い、真空下で共蒸着法により形成する。なお、共蒸着法とは、同時に蒸着セルを加熱し、成膜段階で異なる物質を混合する蒸着法をいう。
【0082】
なお、共蒸着法により複数の有機化合物を用いて混合層を形成する場合には、混合層中に含まれる有機化合物濃度を制御することもできる。図2(B)には、混合層205に含まれる有機化合物1と有機化合物2の濃度に勾配を付けた場合の一例を示す。
【0083】
図2(B)では、混合層において、混合層を形成する複数の有機化合物が含まれる割合(濃度:%)と、混合層とそれに接して形成される有機化合物層との距離の関係を示す。なお、図2(B)では、混合層205に含まれる有機化合物の濃度(%)を横軸に示し、混合層205とこれに接して形成される有機化合物層(1)202、有機化合物層(2)203との距離を示す。
【0084】
つまり、図2(B)に示す混合層205において、有機化合物層(1)202を形成する有機化合物1は、混合層205と有機化合物層(1)202との界面付近において、ほぼ100%の濃度を占めているが、有機化合物層(1)202との距離が離れるにつれて、その濃度は減少し、有機化合物層(2)203との界面付近において、ほぼ0%となる。これに対して、有機化合物層(2)203を形成する有機化合物2は、その逆であり、有機化合物層(1)202との距離が離れるにつれて、その濃度は増加し、有機化合物層(2)203との界面付近においては、ほぼ100%の濃度を占める。
【0085】
以上のように、混合層205を形成する材料の濃度に勾配を付けて形成することにより、有機層間におけるエネルギー障壁を混合層205で低減させることが可能になるので、キャリアの移動性の向上に効果的である。
【0086】
混合層205の上に、有機化合物層(2)203が形成される。有機化合物層(2)203を形成する材料としては、有機化合物2を用い、真空下で蒸着法により形成する。
【0087】
以上により、有機化合物からなる積層構造を形成した後、陰極を蒸着法やスパッタリング法を用いて形成することにより、有機発光素子を完成させる。
【0088】
ここで、有機化合物層(有機化合物層(1)202、有機化合物層(2)203)および混合層が形成される方法について、図3を用いて詳細に説明する。なお、図3においては、図2と同じものに関しては共通の番号を用いて説明する。
【0089】
図3(A)において、基板200上に陽極201が形成されており、陽極201上に有機化合物1を用いて有機化合物層(1)202が形成されている。なお、有機化合物層(1)202は、図3(D)に示すような成膜室において、蒸着法により形成される。なお、成膜室310において、成膜される基板を固定台311上に載せ、固定または回転させて、蒸着を行う。
【0090】
図3(D)において、成膜室310には、複数の試料室が設けられており、試料室には、有機化合物層を形成する有機化合物が備えられている。なお、図3(D)においては、試料室が2つ設けられている場合について示しているが、3つ以上であっても良い。
【0091】
図3(D)において、試料室(a)312には、有機化合物1(316)が備えられている。つまり、試料室(a)312に設けられているシャッター(a)
314を開くことにより、有機化合物1(316)を蒸着源として、有機化合物層(1)202を形成することができる。
【0092】
次に、図3(B)に示すように混合層205が形成される。混合層205は、試料室(a)312に備えられている有機化合物1(316)と試料室(b)313に備えられている有機化合物2(317)を蒸着源として用いるため、試料室(a)312に設けられているシャッター(a)314と試料室(b)313に設けられているシャッター(b)315を開き、有機化合物1(316)と有機化合物2(317)を蒸着源として共蒸着法により形成される。
【0093】
なお、上述したように混合層における有機化合物の濃度を制御する場合には、シャッター(a)314およびシャッター(b)315の開き具合を調節することにより、図2(B)で示した混合層のような濃度勾配をつけることが可能になる。
【0094】
次に、試料室(a)312のシャッター(a)314を閉じ、試料室(b)313のシャッター(b)315を開くことにより、有機化合物2を蒸着源として、有機化合物層(2)203を形成することができる(図3(C))。
【0095】
有機発光素子が有する有機化合物層は、その機能が異なることから正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層および電子注入層といった複数の有機化合物層を積層することにより形成されている。なお、有機発光素子の設計において、その積層構成が異なることから、有機化合物層の界面に混合層を形成する場合、混合層を形成する位置は素子構成上重要となる。そこで、特定の素子構成を有する有機発光素子について以下に詳細に説明する。
【0096】
〔実施の形態1〕 本実施の形態1においては、図4に示すように陽極401と陰極402の間に有機化合物層403を有する有機発光素子において、混合層を発光層と有機化合物層との界面に形成する場合について説明する。
【0097】
本実施の形態において、有機化合物層403は複数の有機化合物層が積層される構造を有する。具体的には、陽極401上に陽極からの正孔の注入性を高めるための正孔注入層404が形成され、正孔注入層404の上には注入された正孔の輸送性を高めるために正孔輸送層405が形成される。
【0098】
そして、正孔輸送層405を形成する材料と発光層406を形成する材料を用いて共蒸着法により混合層(1)407が形成される。なお、共蒸着法については、上記に述べた方法で行えばよい。なお、この時、混合層(1)407に濃度勾配を持たせても良い。
【0099】
ここで、混合層(1)407を設けることにより、正孔輸送層405と発光層406のエネルギー障壁を緩和することができるので、正孔輸送層405から発光層406への正孔の注入性を高めることができる。
【0100】
そして、混合層(1)407の上には、発光層406が形成される。なお、本実施の形態1に示す有機化合物層の積層構成の場合には、発光層を形成する有機化合物は、正孔輸送層405及び電子輸送層408を形成する材料よりも励起エネルギーの低い材料を用いて形成することが好ましい。これは、発光層と有機化合物層との界面に混合層を設けて発光層への注入性を高めているために、逆に注入されたキャリアが発光層を通過しやすくなっている点を考慮してのことである。なお、発光層を形成する有機化合物に励起エネルギーの低い物を用いるだけでなく、励起エネルギーの低いドーパントを用いてもよい。
【0101】
さらに発光層406の上には、発光層406を形成する材料と電子輸送層408を形成する材料を用いて共蒸着法により、混合層(2)409を形成する。混合層(2)409においても、混合層(1)407と同様に濃度勾配を持たせるのが好ましい。
【0102】
そして、混合層(2)409の上に、電子輸送層408を蒸着により形成した後、蒸着法またはスパッタ法により陰極402を形成し、有機発光素子を完成させることができる。
【0103】
以上に示した有機発光素子は、発光層と有機化合物層との界面(具体的には、発光層と正孔輸送層の界面、及び発光層と電子輸送層の界面)において、混合層が設けられる構造を有している。このような構造の有機発光素子を形成することにより、正孔輸送層403から発光層への正孔の注入性および電子輸送層から発光層への電子の注入性を良くすることができるため、発光層におけるキャリアの再結合性を高めることができる。
【0104】
〔実施の形態2〕 次に実施の形態2では、実施の形態1で示したのとは異なる素子構造を有する有機発光素子を作製する場合について説明する。
【0105】
本実施の形態2においては、有機発光素子が三重項発光素子である場合に、積層構造を有する有機化合物層の界面に混合層を形成する場合について説明する。
【0106】
本実施の形態2において、図5に示すように陽極501と陰極502の間に複数の有機化合物層が積層される有機化合物層503が形成されている。具体的には、陽極501上に陽極501からの正孔の注入性を高めるための正孔注入層504が形成され、正孔注入層504の上には注入された正孔の輸送性を高めるために正孔輸送層505が形成される。
【0107】
そして、正孔輸送層505を形成する材料と発光層506を形成する材料を用いて共蒸着法により混合層(1)507が形成される。なお、共蒸着法については、上記に述べた方法で行えばよい。なお、この時、混合層(1)507に濃度勾配を持たせても良い。
【0108】
ここで、混合層(1)507を設けることにより、正孔輸送層505と発光層506との間のエネルギー障壁を緩和することができるので、正孔輸送層505から発光層506への正孔の注入性を高めることができる。
【0109】
そして、混合層(1)507の上には、発光層506が形成される。なお、本実施の形態2に示す有機化合物層の積層構成の場合には、発光層を形成する有機化合物は、三重項励起状態から基底状態に戻る際に放出されるエネルギーを発光に利用できる材料を用いて形成されるため、ホスト材料とホスト材料よりも励起エネルギーが低い三重項発光材料(ドーパント)を共蒸着法により形成する。
【0110】
さらに、発光層506の上には正孔阻止層508を形成する。なお、正孔阻止層508は、正孔輸送層505から発光層506に注入された正孔が発光層を通過するのを防ぎ、さらに発光層506において正孔と電子が再結合して生じた分子励起子が、発光層506から拡散するのを防ぐ機能を有する。
【0111】
さらに正孔阻止層508の上には、正孔阻止層508を形成する材料と電子輸送層509を形成する材料を用いて共蒸着法により、混合層(2)510を形成する。混合層(2)510においても、混合層(1)507と同様に濃度勾配を持たせるのが好ましい。
【0112】
そして、混合層(2)510の上に、電子輸送層509を蒸着法により形成した後、蒸着法またはスパッタ法により陰極502を形成し、有機発光素子を完成することができる。
【0113】
以上に示した有機発光素子は、有機化合物層における界面(具体的には、発光層506と正孔輸送層505の界面、及び正孔阻止層508と電子輸送層509の界面)において、混合層が設けられる構造を有している。このような構造の有機発光素子を形成することにより、正孔輸送層505から発光層への正孔の注入性および電子輸送層から正孔阻止層への電子の注入性を良くすることができるため、発光層におけるキャリアの再結合性を高めることができる。
【0114】
なお、本実施の形態2に示した構造を用いる有機発光素子としては、発光層において、三重項発光材料を用いる場合に適しているが、これに限られることはなく、一重項励起エネルギーを発光に利用する有機化合物を用いる場合にも用いることができる。なお、三重項発光材料としては、文献7で紹介される白金を中心金属とする金属錯体や文献8で紹介されるイリジウムを中心金属とする金属錯体などを用いるとよい。
【0115】
〔実施の形態3〕 本実施の形態3では、実施の形態1または実施の形態2で示したものと異なる構造を有する有機発光素子について図6を用いて説明する。
【0116】
本実施の形態3においては、陽極601と陰極602の間に有機化合物層603を有する有機発光素子において、混合層を有機化合物層中の注入層と輸送層との界面に形成する場合について説明する。
【0117】
本実施の形態3において、有機化合物層603は複数の有機化合物層が積層される構造を有する。具体的には、陽極601上に陽極601からの正孔の注入性を高めるための正孔注入層604が形成される。
【0118】
ここで、本実施の形態に於いて、正孔注入層604を形成する材料と正孔輸送層605を形成する材料を共蒸着法により、混合層(1)606を形成する。さらに、混合層(1)606の上には正孔輸送層605が形成される。
【0119】
また、混合層(1)606を設けることにより、正孔注入層604と正孔輸送層605とのエネルギー障壁を緩和することができるので、正孔輸送層605から発光層607への正孔の注入性を高めることができる。この時、混合層(1)
606には、濃度勾配を持たせても良い。
【0120】
そして、正孔輸送層605の上には発光層607が形成され、さらに電子輸送層608が形成される。
【0121】
ここで、電子輸送層608を形成する材料と電子注入層609を形成する材料を共蒸着法により、混合層(2)610を形成する。なお、混合層(2)610においても、混合層(1)606と同様に濃度勾配を持たせるのが好ましい。さらに、混合層(2)610の上には電子注入層609が形成される。
【0122】
そして、電子注入層609を蒸着により形成した後、蒸着法またはスパッタ法により陰極602を形成し、有機発光素子を完成させることができる。
【0123】
以上に示した有機発光素子は、注入層と輸送層の界面(具体的には、正孔注入層と正孔輸送層の界面、及び電子輸送層と電子注入層の界面)において、混合層を設ける構造を有している。このような構造の有機発光素子を形成することにより、注入されたキャリアの有機化合物層における移動性を向上させる一方で、混合層によるエネルギー障壁の緩和により界面を実質的に減らすことができるために、キャリアの再結合性を高めるという利点を有している。
【0124】
さらに、本発明を実施する上で必要となる形態について以下に述べる。なお、有機発光素子は、発光を取り出すために少なくとも陽極または陰極の一方が透明であればよいが、本実施の形態では、基板上に透明な陽極を形成し、陽極から光を取り出す素子構造で記述する。実際は、陰極から光を取り出す構造や、基板とは逆側から光を取り出す構造も本発明に適用可能である。
【0125】
本発明を実施するに当たり、不純物層の形成を防ぐため、有機発光素子を作製する製造工程が重要になる。そこでまず、本発明で開示する有機発光素子の製造方法について述べる。
【0126】
図23(a)は、蒸着装置の上面図であるが、蒸着室として一つの真空槽11110を設置し、その真空槽内に複数の蒸着源を設けてある、シングルチャンバー方式である。そして、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料、ブロッキング材料、発光材料、陰極の構成材料など、各種機能の異なる材料が、それぞれ前記複数の蒸着源に別々に収納されている。
【0127】
このような蒸着室を有する蒸着装置においては、まず、搬入室に陽極(ITOなど)を有する基板を搬入し、陽極がITOのような酸化物である場合、前処理室にて酸化処理を行う(なお、図23(a)では図示していないが、陽極表面をクリーニングするために紫外線照射室を設置することも可能である)。さらに、有機発光素子を形成する全ての材料は、真空槽11110内において蒸着される。ただし陰極は、この真空槽11110内で形成してもよいし、別に蒸着室を設けてそこで陰極を形成してもよい。要は、陰極を形成するまでの間を、一つの真空槽11110内で蒸着すればよい。最後に、封止室にて封止を行い、搬出室から取り出して有機発光素子を得る。
【0128】
このようなシングルチャンバー方式の蒸着装置を用いて本発明の有機発光素子を作製する手順を、図23(b)(真空槽11110の断面図)を用いて説明する。図23(b)では、最も簡単な例として、三つの蒸着源(有機化合物蒸着源a11116、有機化合物蒸着源b11117および有機化合物蒸着源c11118)を有する真空槽11110を用い、正孔輸送材料11121、電子輸送材料11122および発光材料11123を含む有機化合物膜を形成する過程を示す。
【0129】
まず、真空槽11110内に、陽極11102を有する基板11101を搬入し、固定台11111にて固定する(蒸着時には通常、基板は回転させる)。次に、真空槽11110内を減圧(10-4パスカル以下が好ましい)した後、容器a11112を加熱し、正孔輸送材料11121を蒸発させ、所定の蒸着レート(単位:[Å/s])に達してからシャッターa11114を開け、蒸着を開始する。
【0130】
正孔輸送領域11103が所定の厚さに達したあと、正孔輸送材料11121を蒸発させたまま発光材料11123の蒸着も開始し、第一の混合領域11105を形成する(図23(b)で示した状態)。第一の混合領域11105に濃度勾配を形成する場合は、シャッターa11114を徐々に閉じて正孔輸送材料の蒸着レートを減らしていけばよい。
【0131】
次に、シャッターa11114を完全に閉じて正孔輸送材料11121の蒸着を終了し、発光材料11123からなる発光領域を形成する。この時、シャッターb11115を閉じたまま、容器b11113も加熱しておく。
【0132】
発光領域が所定の厚さに達したあと、シャッターb11115を開いて電子輸送材料11122の蒸着を開始し、第二の混合領域を形成する。第二の混合領域に濃度勾配を形成する場合は、発光材料11123の蒸着レートを徐々に減らしていけばよい。
【0133】
最後に、発光材料11123の蒸着を終了し、電子輸送材料11122からなる電子輸送領域を形成する。以上の操作は、全てインターバルをおかずに行っているため、いずれの領域においても不純物層が形成されない。
【0134】
この方法を応用すれば、課題を解決するための手段で述べた有機発光素子は、全て作製可能である。例えば、発光材料をゲストとし、その発光材料に対するホスト材料を用いる図22のような素子の場合は、図23(b)に加え、ホスト材料を蒸着するための蒸着源を設置すればよい。そして、ホスト材料は混合領域および発光領域の形成に用い、発光材料はホスト材料の蒸着中(発光領域の形成中)
に、微量蒸発させて添加させればよいのである。
【0135】
また、正孔注入領域または電子注入領域を形成する場合でも、各注入材料の蒸着源を同一の真空槽11110内に設置すればよい。例えば図23(b)において、陽極11102と正孔輸送領域11103との間に、正孔注入領域を蒸着にて設ける場合は、陽極11102上に正孔注入材料を蒸着した後、インターバルをおかずにすぐ正孔輸送材料11121を蒸発させることで、不純物層の形成を避けることができる。
【0136】
次に、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料などに好適な材料を以下に列挙する。ただし、本発明の有機発光素子に用いる材料は、これらに限定されない。
【0137】
正孔注入材料としては、有機化合物であればポルフィリン系の化合物が有効であり、フタロシアニン(以下、「H2Pc」と記す)、銅フタロシアニン(以下、「CuPc」と記す)がよく用いられる。高分子化合物では、ポリビニルカルバゾール(以下、「PVK」と記す)などがあるが、先に述べたように、共役系の導電性高分子化合物に化学ドーピングを施した材料もあり、ポリスチレンスルホン酸(以下、「PSS」と記す)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(以下、「PEDOT」と記す)や、ヨウ素などのルイス酸をドープしたポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられる。また、絶縁体の高分子化合物も陽極の平坦化の点で有効であり、ポリイミド(以下、「PI」と記す)がよく用いられる。さらに、無機化合物も用いられ、金や白金などの金属薄膜の他、酸化アルミニウム(以下、「アルミナ」と記す)の超薄膜などがある。
【0138】
正孔輸送材料として最も広く用いられているのは、芳香族アミン系(すなわち、ベンゼン環−窒素の結合を有するもの)の化合物である。広く用いられている材料として、4,4'−ビス(ジフェニルアミノ)−ビフェニル(以下、「TAD」と記す)や、その誘導体である4,4'−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、「TPD」と記す)、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、「α−NPD」と記す)がある。4,4',4''−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)
−トリフェニルアミン(以下、「TDATA」と記す)、4,4',4''−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(以下、「MTDATA」と記す)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0139】
電子輸送材料としては、金属錯体がよく用いられ、先に述べたAlq、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(以下、「Almq」と記す)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(以下、「Bebq」と記す)などのキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体や、混合配位子錯体であるビス(2−メチル−8−キノリノラト)−(4−ヒドロキシ−ビフェニリル)−アルミニウム(以下、「BAlq」と記す)などがある。また、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(以下、「Zn(BOX)2」と記す)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(以下、「Zn(BTZ)2」と記す)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(以下、「PBD」と記す)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(以下、「OXD−7」と記す)などのオキサジアゾール誘導体、5−(4−ビフェニリル)−3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−1,2,4−トリアゾール(以下、「TAZ」と記す)、5−(4−ビフェニリル)−3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(以下、「p-EtTAZ」と記す)などのトリアゾール誘導体、バソフェナントロリン(以下、「BPhen」と記す)、バソキュプロイン(以下、「BCP」と記す)などのフェナントロリン誘導体が電子輸送性を有する。
【0140】
電子注入材料としては、上で述べた電子輸送材料を用いることができる。その他に、フッ化リチウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物や、酸化リチウムなどのアルカリ金属酸化物のような絶縁体の、超薄膜がよく用いられる。また、リチウムアセチルアセトネート(以下、「Li(acac)」と記す)や8−キノリノラト−リチウム(以下、「Liq」と記す)などのアルカリ金属錯体も有効である。
【0141】
発光材料としては、先に述べたAlq、Almq、BeBq、BAlq、Zn(BOX)2、Zn(BTZ)2などの金属錯体の他、各種蛍光色素が有効である。蛍光色素としては、青色の4,4'−ビス(2,2−ジフェニル−ビニル)−ビフェニル(以下、「DPVBi」と記す)や、赤橙色の4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(以下、「DCM」と記す)などがある。また、三重項発光材料も可能であり、白金ないしはイリジウムを中心金属とする錯体が主体である。三重項発光材料として、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(以下、「Ir(ppy)3」と記す)、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン−白金(以下、「PtOEP」と記す)などが知られている。
【0142】
以上で述べたような各機能を有する材料を、各々組み合わせ、本発明の有機発光素子に適用することにより、従来よりも駆動電圧が低い上に素子の寿命が長い有機発光素子を作製することができる。
【実施例1】
【0143】
本実施例では、実施の形態1で示した構造を有する有機発光素子を形成する場合について説明する。なお、本実施例では、図4を用いて説明する。
【0144】
有機発光素子を形成する陽極401には、酸化インジウム・スズ(ITO)膜や酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いる。なお、本実施例においては、陽極401の膜厚を80〜200nmとするのが好ましい。
【0145】
そして、陽極401上には、正孔注入層404が形成されるが、正孔注入層404としては、銅フタロシアニン(CuPc)や無金属フタロシアニン(H2Pc)等のフタロシアニン系の材料を用いる。なお、本実施例に於いては、銅フタロシアニンを用いて正孔注入層404を形成する。正孔注入層404の膜厚としては、10〜30nmとするのが好ましい。
【0146】
次に正孔注入層404を形成した後で正孔輸送層405が形成される。本実施例における正孔輸送層405には芳香族アミン系の4,4'-ヒ゛ス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ヒ゛フェニル(α−NPD)、1,1-ヒ゛ス[4-ヒ゛ス(4-メチルフェニル)-アミノ-フェニル]シクロヘキサン(TPAC)、4,4',4''-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニル-アミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)といった材料を用いることができる。なお、本実施例に於いては、α−NPDを用いて30〜60nmの膜厚で正孔輸送層405を形成する。
【0147】
次に、混合層(1)407を形成する。なお、混合層(1)407は、正孔輸送層405を形成するα−NPDと発光層406を形成するAlq3を共蒸着法により形成する。なお、この時の混合層(1)407の膜厚は、1〜10nmとするのが好ましい。
【0148】
次に、発光層406を形成する。なお、発光層406は、Alq3を蒸着法により形成する。なお、この時の発光層406の膜厚は、30〜60nmとするのが好ましい。
【0149】
本実施例における有機発光素子の構造では、発光層を正孔輸送層405および電子輸送層408を形成する材料よりも励起エネルギーの低い材料で形成するか、励起エネルギーの低いドーパントをドーピングして形成する必要がある。
【0150】
本実施例の発光層406を形成する材料としては、Alq3の他、これにフェニル基が導入された構造のAlpq3が適している。発光層にドーピングを行う際に用いるドーパントとしては、ペリレン、ルブレン、クマリン、4-(シ゛シアノメチレン)-2-メチル-6-(p-シ゛メチルアミノスチリル)-4H-ヒ゜ラン(DCM)およびキナクリドンといった公知の材料を用いることができる。
【0151】
次に、混合層(2)409を形成する。なお、混合層(2)409は、発光層406を形成するAlq3もしくはAlpq3と電子輸送層408を形成する材料を共蒸着法により形成する。なお、この時の混合層(2)409の膜厚は、1〜10nmとするのが好ましい。
【0152】
次に、電子輸送層408を形成する。ここでは、1,3,4-オキサジアゾール誘導体や1,2,4-トリアゾール誘導体といった材料を用いることができる。具体的には、2-(4-ヒ゛フェニリル)-5-(4-tert-フ゛チルフェニル)-1,3,4-オキサシ゛アソ゛ール(PBD)、2,5-(1,1'-シ゛ナフチル)-1,3,4-オキサシ゛アソ゛ール(BND)、1,3-ヒ゛ス[5-(p-tert-フ゛チルフェニル)-1,3,4-オキサシ゛アソ゛ール-2-イル]ヘ゛ンセ゛ン(OXD−7)、3-(4-tert-フ゛チルフェニル)-4-フェニル-5-(4-ヒ゛フェニリル)-1,2,4-トリアソ゛ール(TAZ)といった材料を用いることができる。なお、電子輸送層408としては、30〜60nmの膜厚で形成されるのが好ましい。
【0153】
ここまで形成した後で、蒸着法により有機発光素子の陰極を形成する。本実施例では有機発光素子の陰極となる導電膜としてMgAgを用いているが、AlやYbの他、Al−Li合金膜(アルミニウムとリチウムとの合金膜)や、周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成された膜を用いることも可能である。
【実施例2】
【0154】
本実施例では、実施の形態2で示した構造を有する有機発光素子を形成する場合について説明する。なお、本実施例では、図5を用いて説明する。
【0155】
有機発光素子を形成する陽極501には、酸化インジウム・スズ(ITO)膜や酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いる。なお、本実施例に於いては、陽極501の膜厚を80〜200nmとする。
【0156】
そして、陽極501上には、正孔注入層504が形成されるが、正孔注入層504としては、銅フタロシアニン(CuPc)や無金属フタロシアニン(H2Pc)等のフタロシアニン系の材料を用いる。なお、本実施例に於いては、銅フタロシアニンを用いて正孔注入層504を形成する。正孔注入層504の膜厚としては、10〜30nmとする。
【0157】
次に正孔注入層504を形成した後で正孔輸送層505が形成される。本実施例における正孔輸送層505には芳香族アミン系のα−NPD、TPAC、MTDATAといった材料を用いることができる。なお、本実施例に於いては、MTDATAとα−NPDを積層させて30〜60nmの膜厚で正孔輸送層505を形成する。なお、本実施例に於いては、正孔輸送層505の上にMTDATA(下層)を10〜20nmの膜厚で形成した後、α−NPD(上層)を5〜20nmの膜厚で形成する。
【0158】
次に、混合層(1)507を形成する。なお、混合層(1)507は、正孔輸送層505の上層を形成するα−NPDと発光層506を形成する4,4'-N,N'-シ゛カルハ゛ソ゛ール-ヒ゛フェニル(CBP)及びトリス(2-フェニルヒ゜リシ゛ン)イリシ゛ウム(Ir(ppy)3
を共蒸着法により形成する。なお、この時の混合層(1)507の膜厚は、1〜10nmとするのが好ましい。
【0159】
次に、発光層506を形成する。なお、発光層506は、ドーパントであるCBPとホスト材料であるイリジウム錯体(Ir(ppy)3)を共蒸着法により形成する。ホスト材料としては、イリジウム錯体の他に白金錯体を用いても良い。なお、この時の発光層506の膜厚は、10〜30nmとする。
【0160】
次に、発光層506の上には、正孔阻止層508を形成する。なお、本実施例では、正孔阻止層508にBCPを用い、10〜30nmの膜厚で形成する。
【0161】
次に、混合層(2)510を形成する。なお、混合層(2)510は、正孔阻止層508を形成するBCPと電子輸送層509を形成するAlq3を共蒸着法により形成する。なお、この時の混合層(2)510の膜厚は、1〜10nmとするのが好ましい。
【0162】
次に、電子輸送層509を形成する。ここでは、Alq3もしくはAlpq3といった材料を用いることができる。なお、本実施例では電子注入層609の材料としてAlq3を用い、30〜60nmの膜厚で形成する。
【0163】
ここまで形成した後で、蒸着法により有機発光素子の陰極502を形成する。
本実施例では有機発光素子の陰極502となる導電膜としてMgAgを用いているが、AlやYbの他、Al−Li合金膜(アルミニウムとリチウムとの合金膜)や、周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成された膜を用いることも可能である。なお、本実施例における陰極502は100〜500nmの膜厚で形成する。
【0164】
なお、本実施例における素子構造の場合には、特に発光層に三重発光材料を用いることが好ましい。
【実施例3】
【0165】
本実施例では、実施の形態3で示した構造を有する有機発光素子を形成する場合について説明する。なお、本実施例では、図6を用いて説明する。
【0166】
有機発光素子を形成する陽極601には、酸化インジウム・スズ(ITO)膜や酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いる。なお、本実施例に於いては、陽極601の膜厚を80〜200nmとする。
【0167】
そして、陽極601上には、正孔注入層604が形成されるが、正孔注入層604としては、銅フタロシアニン(CuPc)や無金属フタロシアニン(H2Pc)等のフタロシアニン系の材料を用いる。なお、本実施例に於いては、銅フタロシアニンを用いて正孔注入層604を形成する。本実施例においては、正孔注入層604の膜厚を10〜30nmとする。
【0168】
次に、混合層(1)606を形成する。なお、混合層(1)606は、正孔注入層604を形成する銅フタロシアニン(CuPc)と正孔輸送層605を形成するα−NPDとを共蒸着法により形成する。なお、この時の混合層(1)606の膜厚は、1〜10nmとするのが好ましい。
【0169】
次に混合層(1)606を形成した後で正孔輸送層605が形成される。本実施例における正孔輸送層605には芳香族アミン系のα−NPD、TPAC、MTDATAといった材料を用いることができる。なお、本実施例に於いては、α−NPDを用いて30〜60nmの膜厚で正孔輸送層605を形成する。
【0170】
次に、発光層607を形成する。なお、発光層607は、Alq3を蒸着法により形成する。なお、ここでは発光層607の膜厚を30〜60nmとする。
【0171】
次に、電子輸送層608を形成する。ここでは、1,3,4-オキサジアゾール誘導体や1,2,4-トリアゾール誘導体といった材料を用いることができる。具体的には、PBD、BND、OXD−7、TAZといった材料を用いることができる。なお、電子輸送層608としては、30〜60nmの膜厚で形成する。
【0172】
次に、混合層(2)610を形成する。なお、混合層(2)610は、電子輸送層608を形成するTAZと電子注入層609を形成する材料を共蒸着法により形成する。なお、この時の混合層(2)610の膜厚は、1〜10nmとするのが好ましい。
【0173】
混合層(2)610の上には、電子注入層609を形成する。ここでは、Alq3もしくはAlpq3といった材料を用いることができる。なお、電子輸送層509としては、30〜60nmの膜厚で形成する。
【0174】
ここまで形成した後で、蒸着法により有機発光素子の陰極を形成する。本実施例では有機発光素子の陰極となる導電膜としてMgAgを用いているが、AlやYbの他、Al−Li合金膜(アルミニウムとリチウムとの合金膜)や、周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成された膜を用いることも可能である。
【実施例4】
【0175】
次に、同一基板上に本発明の有機発光素子を有する画素部と、画素部の周辺に設ける駆動回路のTFT(nチャネル型TFT及びpチャネル型TFT)を同時に作製する方法の一例について図7〜図9を用いて説明する。
【0176】
まず、本実施例ではコーニング社の#7059ガラスや#1737ガラスなどに代表されるバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラスからなる基板900を用いる。なお、基板900としては、透光性を有する基板であれば限定されず、石英基板を用いても良い。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0177】
次いで、図7(A)に示すように、基板900上に酸化珪素膜、窒化珪素膜または酸化窒化珪素膜などの絶縁膜から成る下地膜901を形成する。本実施例では下地膜901として2層構造を用いるが、前記絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造を用いても良い。下地膜901の一層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、NH3、及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素膜901aを10〜200nm(好ましくは50〜100nm)形成する。
本実施例では、膜厚50nmの酸化窒化珪素膜901a(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)を形成した。次いで、下地膜901のニ層目としては、プラズマCVD法を用い、SiH4、及びN2Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素膜901bを50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の厚さに積層形成する。本実施例では、膜厚100nmの酸化窒化珪素膜901b(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を形成した。
【0178】
次いで、下地膜901上に半導体層902〜905を形成する。半導体層902〜905は、非晶質構造を有する半導体膜を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により成膜した後、公知の結晶化処理(レーザー結晶化法、熱結晶化法、またはニッケルなどの触媒を用いた熱結晶化法等)を行って得られた結晶質半導体膜を所望の形状にパターニングして形成する。
この半導体層902〜905の厚さは25〜80nm(好ましくは30〜60nm)の厚さで形成する。結晶質半導体膜の材料に限定はないが、好ましくは珪素(シリコン)またはシリコンゲルマニウム(SiXGe1-X(X=0.0001〜0.02))合金などで形成すると良い。本実施例では、プラズマCVD法を用い、55nmの非晶質珪素膜を成膜した後、ニッケルを含む溶液を非晶質珪素膜上に保持させた。この非晶質珪素膜に脱水素化(500℃、1時間)を行った後、熱結晶化(550℃、4時間)を行い、さらに結晶化を改善するためのレーザーアニ―ル処理を行って結晶質珪素膜を形成した。そして、この結晶質珪素膜をフォトリソグラフィー法を用いたパターニング処理によって、半導体層902〜905を形成した。
【0179】
また、半導体層902〜905を形成した後、TFTのしきい値を制御するために、半導体層902〜905に微量な不純物元素(ボロンまたはリン)をドーピングしてもよい。
【0180】
また、レーザー結晶化法で結晶質半導体膜を作製する場合には、パルス発振型または連続発光型のエキシマレーザーやYAGレーザー、YVO4レーザーを用いることができる。これらのレーザーを用いる場合には、レーザー発振器から放射されたレーザー光を光学系で線状に集光し半導体膜に照射する方法を用いると良い。結晶化の条件は実施者が適宣選択するものであるが、エキシマレーザーを用いる場合はパルス発振周波数300Hzとし、レーザーエネルギー密度を100〜400mJ/cm2(代表的には200〜300mJ/cm2)とする。また、YAGレーザーを用いる場合にはその第2高調波を用いパルス発振周波数30〜300kHzとし、レーザーエネルギー密度を300〜600mJ/cm2(代表的には350〜500mJ/cm2)とすると良い。そして幅100〜1000μm、例えば400μmで線状に集光したレーザー光を基板全面に渡って照射し、この時の線状レーザー光の重ね合わせ率(オーバーラップ率)を50〜90%として行えばよい。
【0181】
次いで、半導体層902〜905を覆うゲート絶縁膜906を形成する。ゲート絶縁膜906はプラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを40〜150nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。本実施例では、プラズマCVD法により110nmの厚さで酸化窒化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)で形成した。勿論、ゲート絶縁膜は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0182】
また、酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)とO2とを混合し、反応圧力40Pa、基板温度300〜400℃とし、高周波(13.56MHz)電力密度0.5〜0.8W/cm2で放電させて形成することができる。このようにして作製される酸化珪素膜は、その後400〜500℃の熱アニールによりゲート絶縁膜として良好な特性を得ることができる。
【0183】
そして、ゲート絶縁膜906上にゲート電極を形成するための耐熱性導電層907を200〜400nm(好ましくは250〜350nm)の厚さで形成する。耐熱性導電層907は単層で形成しても良いし、必要に応じて二層あるいは三層といった複数の層から成る積層構造としても良い。耐熱性導電層にはTa、Ti、Wから選ばれた元素、または前記元素を成分とする合金か、前記元素を組み合わせた合金膜が含まれる。これらの耐熱性導電層はスパッタ法やCVD法で形成されるものであり、低抵抗化を図るために含有する不純物濃度を低減させることが好ましく、特に酸素濃度に関しては30ppm以下とすると良い。本実施例ではW膜を300nmの厚さで形成する。W膜はWをターゲットとしてスパッタ法で形成しても良いし、6フッ化タングステン(WF6)を用いて熱CVD法で形成することもできる。いずれにしてもゲート電極として使用するためには低抵抗化を図る必要があり、W膜の抵抗率は20μΩcm以下にすることが好ましい。W膜は結晶粒を大きくすることで低抵抗率化を図ることができるが、W中に酸素などの不純物元素が多い場合には結晶化が阻害され高抵抗化する。このことより、スパッタ法による場合、純度99.9999%のWターゲットを用い、さらに成膜時に気相中からの不純物の混入がないように十分配慮してW膜を形成することにより、抵抗率9〜20μΩcmを実現することができる。
【0184】
一方、耐熱性導電層907にTa膜を用いる場合には、同様にスパッタ法で形成することが可能である。Ta膜はスパッタガスにArを用いる。また、スパッタ時のガス中に適量のXeやKrを加えておくと、形成する膜の内部応力を緩和して膜の剥離を防止することができる。α相のTa膜の抵抗率は20μΩcm程度でありゲート電極に使用することができるが、β相のTa膜の抵抗率は180μΩcm程度でありゲート電極とするには不向きであった。TaN膜はα相に近い結晶構造を持つので、Ta膜の下地にTaN膜を形成すればα相のTa膜が容易に得られる。また、図示しないが、耐熱性導電層907の下に2〜20nm程度の厚さでリン(P)をドープしたシリコン膜を形成しておくことは有効である。これにより、その上に形成される導電膜の密着性向上と酸化防止を図ると同時に、耐熱性導電層907が微量に含有するアルカリ金属元素が第1の形状のゲート絶縁膜906に拡散するのを防ぐことができる。いずれにしても、耐熱性導電層907は抵抗率を10〜50μΩcmの範囲ですることが好ましい。
【0185】
次に、フォトリソグラフィーの技術を使用してレジストによるマスク908を形成する。そして、第1のエッチング処理を行う。本実施例ではICPエッチング装置を用い、エッチング用ガスにCl2とCF4を用い、1Paの圧力で3.2W/cm2のRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを形成して行う。
基板側(試料ステージ)にも224mW/cm2のRF(13.56MHz)電力を投入し、これにより実質的に負の自己バイアス電圧が印加される。この条件でW膜のエッチング速度は約100nm/minである。第1のエッチング処理はこのエッチング速度を基にW膜がちょうどエッチングされる時間を推定し、それよりもエッチング時間を20%増加させた時間をエッチング時間とした。
【0186】
第1のエッチング処理により第1のテーパー形状を有する導電層909〜912が形成される。導電層909〜912のテーパー部の角度は15〜30°となるように形成される。残渣を残すことなくエッチングするためには、10〜20%程度の割合でエッチング時間を増加させるオーバーエッチングを施すものとする。W膜に対する酸化窒化シリコン膜(ゲート絶縁膜906)の選択比は2〜4(代表的には3)であるので、オーバーエッチング処理により、酸化窒化シリコン膜が露出した面は20〜50nm程度エッチングされる(図7(B))。
【0187】
そして、第1のドーピング処理を行い一導電型の不純物元素を半導体層に添加する。ここでは、n型を付与する不純物元素添加の工程を行う。第1の形状の導電層を形成したマスク908をそのまま残し、第1のテーパー形状を有する導電層909〜912をマスクとして自己整合的にn型を付与する不純物元素をイオンドープ法で添加する。n型を付与する不純物元素をゲート電極の端部におけるテーパー部とゲート絶縁膜906とを通して、その下に位置する半導体層に達するように添加するためにドーズ量を1×1013〜5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を80〜160keVとして行う。n型を付与する不純物元素として15族に属する元素、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いるが、ここではリン(P)を用いた。このようなイオンドープ法により第1の不純物領域914〜917には1×1020〜1×1021atoms/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素が添加される(図7(C))。
【0188】
この工程において、ドーピングの条件によっては、不純物が第1の形状の導電層909〜912の下に回りこみ、第1の不純物領域914〜917が第1の形状の導電層909〜912と重なることも起こりうる。
【0189】
次に、図7(D)に示すように第2のエッチング処理を行う。エッチング処理も同様にICPエッチング装置により行い、エッチングガスにCF4とCl2の混合ガスを用い、RF電力3.2W/cm2(13.56MHz)、バイアス電力45mW/cm2(13.56MHz)、圧力1.0Paでエッチングを行う。この条件で形成される第2の形状を有する導電層918〜921が形成される。その端部にはテーパー部が形成され、該端部から内側にむかって徐々に厚さが増加するテーパー形状となる。第1のエッチング処理と比較して基板側に印加するバイアス電力を低くした分等方性エッチングの割合が多くなり、テーパー部の角度は30〜60°となる。マスク908はエッチングされて端部が削れ、マスク922となる。また、図7(D)の工程において、ゲート絶縁膜906の表面が40nm程度エッチングされる。
【0190】
そして、第1のドーピング処理よりもドーズ量を下げ高加速電圧の条件でn型を付与する不純物元素をドーピングする。例えば、加速電圧を70〜120keVとし、1×1013/cm2のドーズ量で行い、不純物濃度が大きくなった第1の不純物領域924〜927と、前記第1の不純物領域924〜927に接する第2の不純物領域928〜931とを形成する。この工程において、ドーピングの条件によっては、不純物が第2の形状の導電層918〜921の下に回りこみ、第2の不純物領域928〜931が第2の形状の導電層918〜921と重なることも起こりうる。第2の不純物領域における不純物濃度は、1×1016〜1×1018atoms/cm3となるようにする(図8(A))。
【0191】
そして、(図8(B))に示すように、pチャネル型TFTを形成する半導体層902、905に一導電型とは逆の導電型の不純物領域933(933a、933b)及び934(934a、934b)を形成する。この場合も第2の形状の導電層918、921をマスクとしてp型を付与する不純物元素を添加し、自己整合的に不純物領域を形成する。このとき、nチャネル型TFTを形成する半導体層903、904は、レジストのマスク932を形成し全面を被覆しておく。ここで形成される不純物領域933、934はジボラン(B26)を用いたイオンドープ法で形成する。不純物領域933、934のp型を付与する不純物元素の濃度は、2×1020〜2×1021atoms/cm3となるようにする。
【0192】
しかしながら、この不純物領域933、934は詳細にはn型を付与する不純物元素を含有する2つの領域に分けて見ることができる。第3の不純物領域933a、934aは1×1020〜1×1021atoms/cm3の濃度でn型を付与する不純物元素を含み、第4の不純物領域933b、934bは1×1017〜1×1020atoms/cm3の濃度でn型を付与する不純物元素を含んでいる。しかし、これらの不純物領域933b、934bのp型を付与する不純物元素の濃度を1×1019atoms/cm3以上となるようにし、第3の不純物領域933a、934aにおいては、p型を付与する不純物元素の濃度をn型を付与する不純物元素の濃度の1.5から3倍となるようにすることにより、第3の不純物領域でpチャネル型TFTのソース領域およびドレイン領域として機能するために何ら問題は生じない。
【0193】
その後、図8(C)に示すように、第2の形状を有する導電層918〜921およびゲート絶縁膜906上に第1の層間絶縁膜937を形成する。第1の層間絶縁膜937は酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、またはこれらを組み合わせた積層膜で形成すれば良い。いずれにしても第1の層間絶縁膜937は無機絶縁物材料から形成する。第1の層間絶縁膜937の膜厚は100〜200nmとする。第1の層間絶縁膜937として酸化シリコン膜を用いる場合には、プラズマCVD法でTEOSとO2とを混合し、反応圧力40Pa、基板温度300〜400℃とし、高周波(13.56MHz)電力密度0.5〜0.8W/cm2で放電させて形成することができる。また、第1の層間絶縁膜937として酸化窒化シリコン膜を用いる場合には、プラズマCVD法でSiH4、N2O、NH3から作製される酸化窒化シリコン膜、またはSiH4、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜で形成すれば良い。この場合の作製条件は反応圧力20〜200Pa、基板温度300〜400℃とし、高周波(60MHz)電力密度0.1〜1.0W/cm2で形成することができる。また、第1の層間絶縁膜937としてSiH4、N2O、H2から作製される酸化窒化水素化シリコン膜を適用しても良い。窒化シリコン膜も同様にプラズマCVD法でSiH4、NH3から作製することが可能である。
【0194】
そして、それぞれの濃度で添加されたn型またはp型を付与する不純物元素を活性化する工程を行う。この工程はファーネスアニール炉を用いる熱アニール法で行う。その他に、レーザーアニール法、またはラピッドサーマルアニール法(RTA法)を適用することができる。熱アニール法では酸素濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下の窒素雰囲気中で400〜700℃、代表的には500〜600℃で行うものであり、本実施例では550℃で4時間の熱処理を行った。また、基板900に耐熱温度が低いプラスチック基板を用いる場合にはレーザーアニール法を適用することが好ましい。
【0195】
活性化の工程に続いて、雰囲気ガスを変化させ、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処理を行い、半導体層を水素化する工程を行う。この工程は熱的に励起された水素により半導体層にある1016〜1018/cm3のダングリングボンドを終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。いずれにしても、半導体層902〜905中の欠陥密度を1016/cm3以下とすることが望ましく、そのために水素を0.01〜0.1atomic%程度付与すれば良い。
【0196】
そして、有機絶縁物材料からなる第2の層間絶縁膜939を1.0〜2.0μmの平均膜厚で形成する。有機樹脂材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)等を使用することができる。例えば、基板に塗布後、熱重合するタイプのポリイミドを用いる場合には、クリーンオーブンで300℃で焼成して形成する。また、アクリルを用いる場合には、2液性のものを用い、主材と硬化剤を混合した後、スピナーを用いて基板全面に塗布した後、ホットプレートで80℃で60秒の予備加熱を行い、さらにクリーンオーブンで250℃で60分焼成して形成することができる。
【0197】
このように、第2の層間絶縁膜939を有機絶縁物材料で形成することにより、表面を良好に平坦化させることができる。また、有機樹脂材料は一般に誘電率が低いので、寄生容量を低減できる。しかし、吸湿性があり保護膜としては適さないので、本実施例のように、第1の層間絶縁膜937として形成した酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜などと組み合わせて用いると良い。
【0198】
その後、所定のパターンのレジストマスクを形成し、それぞれの半導体層に形成されソース領域またはドレイン領域とする不純物領域に達するコンタクトホールを形成する。コンタクトホールはドライエッチング法で形成する。この場合、エッチングガスにCF4、O2、Heの混合ガスを用い有機樹脂材料から成る第2の層間絶縁膜939をまずエッチングし、その後、続いてエッチングガスをCF4、O2として第1の層間絶縁膜937をエッチングする。さらに、半導体層との選択比を高めるために、エッチングガスをCHF3に切り替えてゲート絶縁膜906をエッチングすることによりコンタクトホールを形成することができる。
【0199】
そして、導電性の金属膜からなる配線層940がスパッタ法や真空蒸着法により形成される。さらに、配線層940の上にはエッチングの際に配線層とエッチング液に対する選択比が大きくなる材料からなる分離層941が形成される。なお、分離層941は、窒化膜や酸化膜といった無機材料で形成されていても良いし、ボリイミド、ポリアミドまたはBCB(ベンゾシクロブテン)といった有機樹脂等で形成されていても良い。さらに金属材料で形成されていても良い。
【0200】
ここで、分離層941をマスクでパターニングし、その後エッチングすることで、ソース配線942〜945とドレイン配線946〜948及び分離部942b〜948bを形成する。なお、本明細書中では、分離層と配線とで形成される構造を隔壁と呼ぶ。また、図示していないが、本実施例ではこの配線を、そして、膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)
との積層膜で形成した。
【0201】
次いで、その上に透明導電膜を80〜120nmの厚さで形成し、パターニングすることによって画素電極949を形成する(図9(B))。なお、本実施例では、透明電極として酸化インジウム・スズ(ITO)膜や酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いる。
【0202】
また、画素電極949は、ドレイン配線946aと電気的に接続されたコンタクト配線923と接して重ねて形成することによって電流制御用TFT963のドレイン領域と電気的な接続が形成される。
【0203】
次に、図9(B)に示すように、有機化合物層950、陰極951およびパッシベーション膜952が蒸着法により形成される。このとき有機化合物層950を形成する前に画素電極947に対して熱処理を施し、水分を完全に除去しておくことが好ましい。なお、本実施例では有機発光素子の陰極としてMgAg電極を用いるが、公知の他の材料であっても良い。
【0204】
なお、有機化合物層950は、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及びバッファー層といった複数の層を組み合わせて積層することにより形成されている。本実施例において用いた有機化合物層の構造について以下に詳細に説明する。
【0205】
本実施例では、正孔注入層として、銅フタロシアニンを用い、正孔輸送層としては、α−NPDを用いてそれぞれ蒸着法により形成する。なお、正孔注入層と正孔輸送層の界面には、銅フタロシアニンとα−NPDを用いて共蒸着法により混合層を形成する。なお、ここで形成される混合層には濃度勾配が形成されていることが望ましい。
【0206】
次に、発光層が形成されるが、本実施例では発光層に異なる材料を用いることで異なる発光を示す有機化合物層の形成を行う。なお、本実施例では、赤、緑、青色の発光を示す有機化合物層を形成する。
【0207】
赤色に発色する発光層は、Alq3にDCMをドーピングしたものを用いて形成する。その他にもN,N'-シ゛サリチリテ゛ン-1,6-ヘキサンシ゛アミナト)シ゛ンク(II)(Zn(salhn))にEu錯体である(1,10-フェナントロリン)-トリス(1,3-シ゛フェニル-フ゜ロハ゜ン-1,3-シ゛オナト)ユーロヒ゜ウム(III)(Eu(DBM)3(Phen)をドーピングしたもの等を用いることができるが、その他公知の材料を用いることもできる。
【0208】
また、緑色に発色する発光層は、CBPとIr(ppy)3を共蒸着法により形成させることができる。なお、この時には、BCPを用いて正孔阻止層を積層しておくことが好ましい。また、この他にもアルミキノリラト錯体(Alq3
、ベンゾキノリノラトベリリウム錯体(BeBq)を用いることができる。さらには、キノリラトアルミニウム錯体(Alq3)にクマリン6やキナクリドンといった材料をドーパントとして用いたものも可能であるが、その他公知の材料を用いることもできる。
【0209】
さらに、青色に発色する発光層は、ジスチリル誘導体であるDPVBiや、アゾメチン化合物を配位子に持つ亜鉛錯体であるN,N'-シ゛サリチリテ゛ン-1,6-ヘキサンシ゛アミナト)シ゛ンク(II)(Zn(salhn))及び4,4'-ヒ゛ス(2,2-シ゛フェニル-ヒ゛ニル)-ヒ゛フェニル(DPVBi)にペリレンをドーピングしたものを用いることもできるが、その他の公知の材料を用いても良い。
【0210】
なお、本実施例では、先に形成した正孔輸送層を形成する材料であるα−NPDと上述した発光層を形成する材料とを用いて共蒸着法により正孔輸送層と発光層の界面に混合層を形成する。なお、ここで形成される混合層には濃度勾配が形成されていることが望ましい。
【0211】
混合層形成後に電子輸送層を形成する。なお、電子輸送層としては、1,3,4−オキサジアゾール誘導体や1,2,4−トリアゾール誘導体(TAZ)といった材料を用いることができるが、本実施例では、1,2,4−トリアゾール誘導体(TAZ)を用いて蒸着法により30〜60nmの膜厚で形成する。
【0212】
さらに、発光層と電子輸送層の界面に上述した発光層を形成する材料と1,2,4−トリアゾール誘導体(TAZ)を用いて共蒸着法により混合層を形成する。
なお、ここで形成される混合層には濃度勾配が形成されていることが望ましい。
【0213】
以上により、界面に混合層を有する積層構造からなる有機化合物層が形成される。なお、本実施例における有機化合物層950(積層された有機化合物層と混合層を含む)の膜厚は10〜400[nm](典型的には60〜150[nm])、陰極951の厚さは80〜200[nm](典型的には100〜150[nm])とすれば良い。
【0214】
有機化合物層を形成した後で、蒸着法により有機発光素子の陰極が形成される。本実施例では有機発光素子の陰極となる導電膜としてMgAgを用いているが、Al−Li合金膜(アルミニウムとリチウムとの合金膜)や、周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成された膜を用いることも可能である。
【0215】
また、陰極951形成後、パッシベーション膜952が形成される。なお、パッシベーション膜952を設けることで有機化合物層950や陰極951を水分や酸素から保護することは可能である。なお、本実施例ではパッシベーション膜952として300nm厚の窒化珪素膜を設ける。このパッシベーション膜952は陰極951を形成した後に大気解放しないで連続的に形成しても構わない。
【0216】
こうして図9(C)に示すような構造の発光装置が完成する。なお、画素電極949、有機化合物層950、陰極951の重なっている部分954が有機発光素子に相当する。
【0217】
pチャネル型TFT960及びnチャネル型TFT961は駆動回路が有するTFTであり、CMOSを形成している。スイッチング用TFT962及び電流制御用TFT963は画素部が有するTFTであり、駆動回路のTFTと画素部のTFTとは同一基板上に形成することができる。
【0218】
なお、有機発光素子を用いた発光装置の場合、駆動回路の電源の電圧が5〜6V程度、最大でも10V程度で十分なので、TFTにおいてホットエレクトロンによる劣化があまり問題にならない。また駆動回路を高速で動作させる必要があるので、TFTのゲート容量は小さいほうが好ましい。よって、本実施例のように、有機発光素子を用いた発光装置の駆動回路では、TFTの半導体層が有する第2の不純物領域929と、第4の不純物領域933bとが、それぞれゲート電極918、919と重ならない構成にするのが好ましい。
【0219】
こうして図9(C)に示すように基板上に有機発光素子を形成した発光パネルを形成することができる。
【0220】
なお、発光パネルを形成した後で、これを封止しFPCにより外部電源と電気的に接続することにより本発明の発光装置を完成させることができる。
【0221】
なお、本実施例における構成は、実施例1〜実施例3におけるいずれの素子構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例5】
【0222】
本実施例では、実施例4において図9(C)まで作成した発光パネルを発光装置として完成させる方法について図10を用いて詳細に説明する。
【0223】
図10(A)は、有機発光素子の封止までを行った状態を示す上面図、図10(B)は図10(A)をA−A’で切断した断面図である。点線で示された1001はソース側駆動回路、1002は画素部、1003はゲート側駆動回路である。また、1004はカバー材、1005はシール剤であり、シール剤1005で囲まれた内側には空間1007が設けられる。
【0224】
なお、1008はソース側駆動回路1001及びゲート側駆動回路1003に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)1010からビデオ信号やクロック信号を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光パネルにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態の発光モジュールだけではなく、ICを実装した発光モジュールをも含むものとする。
【0225】
次に、断面構造について図10(B)を用いて説明する。基板1000の上方には画素部1002、ゲート側駆動回路1003が形成されており、画素部1002は電流制御用TFT1011とそのドレインに電気的に接続された透明電極1012を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路1003はnチャネル型TFT1013とpチャネル型TFT1014とを組み合わせたCMOS回路(図9参照)を用いて形成される。
【0226】
透明電極1012は有機発光素子の陽極として機能する。また、透明電極1012の両端には層間絶縁膜1006が形成され、透明電極1012上には有機化合物層1016および有機発光素子の陰極1017が形成される。
【0227】
陰極1017は複数の画素に共通の配線としても機能し、接続配線1009を経由してFPC1010に電気的に接続されている。さらに、画素部1002及びゲート側駆動回路1003に含まれる素子は全てパッシベーション膜1018で覆われている。
【0228】
また、シール剤1005によりカバー材1004が貼り合わされている。なお、カバー材1004と有機発光素子との間隔を確保するために樹脂膜からなるスペーサを設けても良い。そして、シール剤1005の内側は密閉された空間になっており、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが充填されている。なおこの密閉空間の中に酸化バリウムに代表される吸湿材を設けることも有効である。
【0229】
また、カバー材としては、ガラス、セラミックス、プラスチックもしくは金属を用いることができるが、カバー材側に光を放射させる場合は透光性でなければならない。なお、プラスチックとしては、FRP(Fiberglass-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリルを用いることができる
【0230】
以上のようにして発光パネルをカバー材及びシール剤を用いて封入することにより、有機発光素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等の有機化合物層の酸化による劣化を促す物質が侵入するのを防ぐことができる。従って、信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0231】
なお、本実施例における構成は、実施例1〜実施例4におけるいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例6】
【0232】
本実施例では、図17で示した有機発光素子において、第一の混合領域1708および第二の混合領域1709に濃度勾配を形成した素子を、具体的に例示する。
【0233】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極1702を形成したガラス基板1701を用意する。この陽極1702を有するガラス基板1701を、図23において示したような真空槽内に搬入する。本実施例では、4種類の材料(3種類は有機化合物であり、1種類は陰極となる金属)を蒸着するため、4つの蒸着源が必要となる。
【0234】
まず、TADのスピロ2量体(以下、「S−TAD」と記す)のみからなる正孔輸送領域1705を、3Å/sの蒸着レートにて 30nm形成したあと、発光材料であるDPVBiのスピロ2量体(以下、「S−DPVBi」と記す)の蒸着を開始し、徐々に蒸着レートを上げていく。
【0235】
S−DPVBi の蒸着開始直後から、S−TADの蒸着レートを徐々に減少させていくことにより、濃度勾配を有する第一の混合領域1708を形成する。第一の混合領域1708は10nm形成するので、その形成終了時には、S−TADの蒸着は終了し、S−DPVBiの蒸着レートが3Å/sになっているように、それぞれ蒸着レートの変化量を調節する。
【0236】
次に、S−DPVBiからなる発光領域1706を20nm形成したあと、電子輸送材料であるAlqの蒸着を開始し、徐々に蒸着レートを上げていく。この時、Alq の蒸着開始直後から、S−DPVBiの蒸着レートを徐々に減少させていくことにより、濃度勾配を有する第二の混合領域1709を形成する。第二の混合領域1709は10nm形成するので、その形成終了時には、S−DPVBiの蒸着は終了し、Alqの蒸着レートが3Å/sになっているように、それぞれ蒸着レートの変化量を調節する。
【0237】
さらに、Alqのみ引き続き蒸着し続けることで、電子輸送領域1707を形成する。厚さは30nmとする。最後に、陰極としてAl:Li合金を150nm程度蒸着することにより、S−DPVBiに由来する青色発光の有機発光素子を得る。
【実施例7】
【0238】
本実施例では、図21(b)で示した有機発光素子を、具体的に例示する。
【0239】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極1702を形成したガラス基板1701を用意する。この陽極1702を有するガラス基板1701を、図23において示したような真空槽内に搬入する。本実施例では、5種類の材料(3種類は有機化合物であり、2種類は金属)を蒸着するため、5つの蒸着源が必要となる。
【0240】
まず、α−NPDのみからなる正孔輸送領域1705を、3Å/s の蒸着レートにて30nm形成したあと、その蒸着レートは固定したまま、発光材料であるAlqの蒸着も3Å/sにて開始する。すなわち、α−NPDと Alqの比率が1:1となるような第一の混合領域1708を、共蒸着にて形成することになる。厚さは10nmとする。
【0241】
第一の混合領域1708を形成後、α−NPDの蒸着は終了し、引き続きAlqの蒸着を続けることによって発光領域1706を形成する。厚さは20nmとする。さらに、引き続きAlqの蒸着を続けたまま、電子輸送材料であるBPhenの蒸着を3Å/sの蒸着レートで開始する。すなわち、AlqとBPhenの比率が1:1となるような第二の混合領域1709を、共蒸着にて形成することになる。厚さは10nmとする。
【0242】
第二の混合領域1709を形成後、Alqの蒸着は終了し、引き続きBPhenの蒸着を続けることによって、30nmの電子輸送領域1707を形成する。さらに、BPhenの蒸着を続けたまま、Liを1wt%程度添加することにより、電子注入領域1711とする。厚さは10nmとする。
【0243】
最後に、陰極としてAl:Li合金を150nm程度蒸着することにより、Alqに由来する緑色発光の有機発光素子を得る。
【実施例8】
【0244】
本実施例では、図22で示した有機発光素子を、具体的に例示する。
【0245】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、陽極11002を形成したガラス基板11001を用意する。この陽極11002を有するガラス基板11001を、図23において示したような真空槽内に搬入する。本実施例では、7種類の材料(5種類は有機化合物であり、2種類は金属)を蒸着するため、7つの蒸着源が必要となる。
【0246】
まず、正孔注入材料としてCuPcを20nm蒸着し、正孔注入領域11010を形成するが、20nmに達してCuPcの蒸着を終えると同時に、インターバルをおかずに、正孔輸送材料であるα−NPDの蒸着を3Å/sの蒸着レートで開始する。インターバルをおかない理由は、先に述べたように、不純物層の形成を防ぐためである。
【0247】
次に、α−NPDのみからなる正孔輸送領域11005を20nm形成した後、α−NPDの蒸着レートは3Å/sに固定したまま、発光材料に対するホスト材料として、Alqの蒸着も3Å/sにて開始する。すなわち、α−NPDと Alqの比率が1:1となるような第一の混合領域11008を、共蒸着にて形成することになる。厚さは10nmとする。
【0248】
第一の混合領域11008を形成後、α−NPDの蒸着は終了し、引き続きAlqの蒸着を続けることによって発光領域11006を形成する。厚さは20nmとする。
この時、発光領域11006に対し、発光材料11012として蛍光色素であるDCMを1wt%添加しておく。
【0249】
発光領域11006を形成後、DCMの蒸着は終了するが、引き続きAlqの蒸着は続けたまま、電子輸送材料であるBPhenの蒸着を3Å/sの蒸着レートで開始する。すなわち、AlqとBPhenの比率が1:1となるような第二の混合領域11009を、共蒸着にて形成することになる。厚さは10nmとする。
【0250】
第二の混合領域11009を形成後、Alqの蒸着は終了し、引き続きBPhenの蒸着を続けることによって、30nmの電子輸送領域11007を形成する。さらに、BPhenの蒸着を続けたまま、Liを1wt%程度添加することにより、電子注入領域11011とする。厚さは10nmとする。
【0251】
最後に、陰極としてAl:Li合金を150nm程度蒸着することにより、DCMに由来する赤色発光の有機発光素子を得る。
【実施例9】
【0252】
本実施例では、図22で示した有機発光素子において、発光材料11012として三重項発光材料を適用した有機発光素子の例を、具体的に例示する。
【0253】
まず、ITOをスパッタリングによって100nm程度成膜し、ITO(陽極)を形成したガラス基板を用意する。このガラス基板上に、正孔注入領域11010として、ヨウ素をドープしたポリ(3−ヘキシル)チオフェンを、スピンコーティングにより20nm成膜する。溶媒としてはベンゼンを用い、ヨウ素は同一の溶媒に溶解することによりドープしたものを用いればよい。なお、成膜後は、加熱により溶媒であるベンゼンを除去する。
【0254】
このようにして、導電性高分子材料をITO上に塗布したガラス基板を、図23において示したような真空槽内に搬入する。本実施例では、6種類の材料(5種類は有機化合物であり、1種類は陰極となる金属)を蒸着するため、6つの蒸着源が必要となる。
【0255】
まず、α−NPDのみからなる正孔輸送領域11005を、3Å/s の蒸着レートにて40nm形成した後、その蒸着レートは固定したまま、発光材料に対するホスト材料として、BAlqの蒸着も3Å/sにて開始する。すなわち、α−NPDと BAlqの比率が1:1となるような第一の混合領域11008を、共蒸着にて形成することになる。厚さは10nmとする。
【0256】
第一の混合領域11008を形成後、α−NPDの蒸着は終了し、引き続きBAlqの蒸着を続けることによって発光領域11006を形成する。厚さは20nmとする。この時、発光領域11006に対し、発光材料11012として三重項発光材料であるIr(ppy)3を5wt%添加しておく。
【0257】
発光領域11006を形成後、Ir(ppy)3の蒸着は終了するが、引き続きBAlqの蒸着は続けたまま、電子輸送材料であるAlqの蒸着を3Å/sの蒸着レートで開始する。すなわち、BAlqとAlqの比率が1:1となるような第二の混合領域11009を、共蒸着にて形成することになる。厚さは10nmとする。
【0258】
第二の混合領域11009を形成後、BAlqの蒸着は終了し、引き続きAlqの蒸着を続けることによって、30nmの電子輸送領域11007を形成する。さらに、電子注入領域として、Li(acac)を2nm蒸着する。
【0259】
最後に、陰極としてAlを150nm程度蒸着することにより、Ir(ppy)3に由来する緑色発光の三重項発光素子を得る。
【実施例10】
【0260】
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置について説明する。図24は、本発明の有機発光素子を用いたアクティブマトリクス型発光装置の断面図である。
【0261】
なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いているが、MOSトランジスタを用いてもよい。また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0262】
図24(a)において、11201は基板であり、ここでは基板側から光を取り出すため、可視光を透過する基板を用いる。具体的には、ガラス基板、石英基板、結晶化ガラス基板もしくはプラスチック基板(プラスチックフィルムを含む)
を用いればよい。なお、基板11201とは、表面に設けた絶縁膜も含めるものとする。
【0263】
基板11201の上には画素部11211および駆動回路11212が設けられている。まず、画素部11211について説明する。
【0264】
画素部11211は画像表示を行う領域である。基板上には複数の画素が存在し、各画素には有機発光素子に流れる電流を制御するためのTFT(以下、「電流制御TFT」と記す)11202、画素電極(陽極)11203、有機化合物膜11204および陰極11205が設けられている。なお、図24(a)では電流制御TFTしか図示していないが、電流制御TFTのゲートに加わる電圧を制御するためのTFT(以下、「スイッチングTFT」と記す)を設けている。
【0265】
電流制御TFT11202は、ここではpチャネル型TFTを用いることが好ましい。nチャネル型TFTとすることも可能であるが、図24のように有機発光素子の陽極に電流制御TFTを接続する場合は、pチャネル型TFTの方が消費電力を押さえることができる。ただし、スイッチングTFTはnチャネル型TFTでもpチャネル型TFTでもよい。
【0266】
また、電流制御TFT11202のドレインには画素電極11203が電気的に接続されている。本実施例では、画素電極11203の材料として仕事関数が4.5〜5.5eVの導電性材料を用いるため、画素電極11203は有機発光素子の陽極として機能する。画素電極11203として代表的には、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛もしくはこれらの化合物(ITOなど)のような、光透過性の材料を用いればよい。画素電極11203の上には有機化合物膜11204が設けられている。
【0267】
さらに、有機化合物膜11204の上には陰極11205が設けられている。
陰極11205の材料としては、仕事関数が2.5〜3.5eVの導電性材料を用いることが望ましい。陰極11205として代表的には、アルカリ金属元素もしくはアルカリ度類金属元素を含む導電膜、アルミニウムを含む導電膜、あるいはその導電膜にアルミニウムや銀などを積層したもの、を用いればよい。
【0268】
また、画素電極11203、有機化合物膜11204、および陰極11205からなる層は、保護膜11206で覆われている。保護膜11206は、有機発光素子を酸素および水から保護するために設けられている。保護膜11206の材料としては、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、もしくは炭素(具体的にはダイヤモンドライクカーボン)を用いる。
【0269】
次に、駆動回路11212について説明する。駆動回路11212は画素部11211に伝送される信号(ゲート信号およびデータ信号)のタイミングを制御する領域であり、シフトレジスタ、バッファ、ラッチ、アナログスイッチ(トランスファゲート)もしくはレベルシフタが設けられている。図24(a)では、これらの回路の基本単位としてnチャネル型TFT11207およびpチャネル型TFT11208からなるCMOS回路を示している。
【0270】
なお、シフトレジスタ、バッファ、ラッチ、アナログスイッチ(トランスファゲート)もしくはレベルシフタの回路構成は、公知のものでよい。また図24では、同一の基板上に画素部11211および駆動回路11212を設けているが、駆動回路11212を設けずにICやLSIを電気的に接続することもできる。
【0271】
また、図24では電流制御TFT11202に画素電極(陽極)11203が電気的に接続されているが、陰極が電流制御TFTに接続された構造をとることもできる。その場合、画素電極を陰極11205と同様の材料で形成し、陰極を画素電極(陽極)11203と同様の材料で形成すればよい。その場合、電流制御TFTはnチャネル型TFTとすることが好ましい。
【0272】
ところで、図24(a)に示した発光装置は、画素電極11203を形成した後に配線11209を形成する工程で作製されたものを示してあるが、この場合、画素電極11203が表面荒れを起こす可能性がある。有機発光素子は電流駆動型の素子であるため、画素電極11203の表面荒れにより、特性が悪くなることも考えられる。
【0273】
そこで、図24(b)に示すように、配線11209を形成した後に画素電極1203を形成する発光装置も考えられる。この場合、図24(a)の構造に比べて、画素電極11203からの電流の注入性が向上すると考えられる。
【0274】
また、図24においては、正テーパー型の土手状構造11210によって、画素部11211に設置されている各画素を分離している。この土手状構造を、例えば逆テーパー型のような構造にすることにより、土手状構造が画素電極に接しない構造をとることもできる。その一例を図25に示す。
【0275】
図25では、配線を利用して分離部を兼ねた、配線および分離部11310を設けた。図25で示されるような配線および分離部11310の形状(ひさしのある構造)は、配線を構成する金属と、前記金属よりもエッチレートの低い材料(例えば金属窒化物)とを積層し、エッチングすることにより形成することができる。この形状により、画素電極11303や配線と、陰極11305とが、ショートすることを防ぐことができる。なお、図25においては、通常のアクティブマトリクス型の発光装置と異なり、画素上の陰極11305をストライプ状(パッシブマトリクスの陰極と同様)にする構造になる。
【0276】
また、図26(a)は、導電性高分子材料を正孔注入領域として用いる場合に有効な電極構造を、アクティブマトリクス型の発光装置に導入した例である。断面図を図26(a)に、各画素の電極構造の上面図を図26(b)にそれぞれ示す。すなわち、各画素11413において、陽極が全面に成膜されているのではなく、ストライプ状になっており、そのストライプ状電極11403の間にスリットが形成されている構造である。
【0277】
このような構造に直接有機化合物膜を成膜してしまうと、電極の存在しないスリットの部分は発光しない。しかしながら、導電性高分子11414を図26(a)のようにコーティングすることにより、画素の全面が発光する。つまり、導電性高分子11414は、正孔注入領域であると同時に、電極の役割も果たしているとも言える。
【0278】
図26のような発光装置のメリットとしては、陽極11403として、透明なものを使用する必要がないことである。スリットの開口率が8〜9割程度あれば、十分な発光が取り出せる。また、平らな面を形成する導電性高分子11414によって、有機化合物膜に対する電界の加わり方は均一となり、絶縁破壊等も起こりにくくなる。
【0279】
次に、図24(b)に示したアクティブマトリクス型発光装置の外観を図27に示す。なお、図27(a)には上面図を示し、図27(b)には図27(a)をP−P'で切断した時の断面図を示す。また、図24の符号を引用する。
【0280】
図27(a)において、11501は画素部、11502はゲート信号側駆動回路、11503はデータ信号側駆動回路である。また、ゲート信号側駆動回路11502およびデータ信号側駆動回路11503に伝送される信号は、入力配線11504を介してTAB(Tape Automated Bonding)テープ11505から入力される。なお、図示しないが、TABテープ11505の代わりに、TABテープにIC(集積回路)を設けたTCP(Tape Carrier Package)を接続してもよい。
【0281】
このとき、11506は図24(b)に示した発光装置の上方に設けられるカバー材であり、樹脂からなるシール剤11507により接着されている。カバー材11506は酸素および水を透過しない材質であれば、いかなるものを用いてもよい。本実施例では、カバー材11506は図27(b)に示すように、プラスチック材11506aと、前記プラスチック材11506aの表面および裏面に設けられた炭素膜(具体的にはダイヤモンドライクカーボン膜)11506b、11506cからなる。
【0282】
さらに、図27(b)に示すように、シール剤11507は樹脂からなる封止材11508で覆われ、有機発光素子を完全に密閉空間11509に封入するようになっている。密閉空間11509は不活性ガス(代表的には窒素ガスや希ガス)、樹脂または不活性液体(例えばパーフルオロアルカンに代表される液状のフッ素化炭素)を充填しておけばよい。さらに、吸湿剤や脱酸素剤を設けることも有効である。
【0283】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけてもよい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むことを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物膜から発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0284】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【実施例11】
【0285】
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置の例として、アクティブマトリクス型発光装置を例示するが、実施例5とは異なり、能動素子が形成されている基板とは反対側から光を取り出す構造(以下、「上方出射」と記す)の発光装置を示す。図28にその断面図を示す。
【0286】
なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いているが、MOSトランジスタを用いてもよい。また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0287】
本実施例において、基板11601、画素部に形成された電流制御TFT11602、および駆動回路11612に関しては、実施例5と同様の構成でよい。
【0288】
電流制御TFT11602のドレインに接続されている第一電極11603であるが、本実施例では陽極として用いるため、仕事関数がより大きい導電性材料を用いることが好ましい。その代表例として、ニッケル、パラジウム、タングステン、金、銀などの金属が挙げられる。本実施例では、第一電極11603は光を透過しないことが好ましいが、それに加えて、光の反射性の高い材料を用いることがさらに好ましい。
【0289】
第一電極11603の上には有機化合物膜11604が設けられている。さらに、有機化合物膜11604の上には第二電極11605が設けられており、本実施例では陰極とする。その場合、第二電極11605の材料としては、仕事関数が2.5〜3.5eVの導電性材料を用いることが望ましい。代表的には、アルカリ金属元素もしくはアルカリ度類金属元素を含む導電膜、アルミニウムを含む導電膜、あるいはその導電膜にアルミニウムや銀などを積層したもの、を用いればよい。ただし、本実施例は上方出射であるため、第二電極11605が光透過性であることが大前提である。したがって、これらの金属を用いる場合は、20nm程度の超薄膜であることが好ましい。
【0290】
また、第一電極11603、有機化合物膜11604、および第二電極1605からなる層は、保護膜11606で覆われている。保護膜11606は、有機発光素子を酸素および水から保護するために設けられている。本実施例では、光を透過するものであればいかなるものを用いてもよい。
【0291】
なお、図28では電流制御TFT11602に第一電極(陽極)11603が電気的に接続されているが、陰極が電流制御TFTに接続された構造をとることもできる。その場合、第一電極を陰極の材料で形成し、第二電極を陽極の材料で形成すればよい。このとき、電流制御TFTはnチャネル型TFTとすることが好ましい。
【0292】
さらに、11607はカバー材であり、樹脂からなるシール剤11608により接着されている。カバー材11607は酸素および水を透過しない材質で、かつ、光を透過する材質であればいかなるものを用いてもよい。本実施例ではガラスを用いる。密閉空間11609は不活性ガス(代表的には窒素ガスや希ガス)
、樹脂または不活性液体(例えばパーフルオロアルカンに代表される液状のフッ素化炭素)を充填しておけばよい。さらに、吸湿剤や脱酸素剤を設けることも有効である。
【0293】
なお、ゲート信号側駆動回路およびデータ信号側駆動回路に伝送される信号は、入力配線11613を介してTAB(Tape Automated Bonding)テープ11614から入力される。なお、図示しないが、TABテープ11614の代わりに、TABテープにIC(集積回路)を設けたTCP(Tape Carrier Package)を接続してもよい。
【0294】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけてもよい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むことを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物膜から発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0295】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【実施例12】
【0296】
本実施例では本発明をパッシブ型(単純マトリクス型)の発光装置に用いた場合について説明する。説明には図11を用いる。図11において、1301はガラス基板、1302は透明導電膜からなる陽極である。本実施例では、透明導電膜として酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物を蒸着法により形成する。なお、図11では図示されていないが、複数本の陽極が紙面に垂直な方向へストライプ状に配列されている。
【0297】
また、ストライプ状に配列された陽極1302の間を埋めるようにバンク(1303a、1303b)が形成される。バンク(1303a、1303b)は陽極1302に沿って紙面に垂直な方向に形成されている。
【0298】
次に、積層構造を有する有機化合物層が形成される。本実施例においては、まず、第1の有機化合物層1304として、銅フタロシアニンが蒸着法により、30〜50nmの膜厚で形成される。
【0299】
次に第2の有機化合物層1305として、α−NPDが蒸着法により30〜60nmの膜厚で形成される。
【0300】
さらに第3の有機化合物1306が形成されるが、本実施例においては、赤色に発光する画素1306aと、緑色に発光する画素1306bと、青色に発光する画素1306cとを別々に形成する。
【0301】
はじめに、赤色に発光する画素1306aを形成するが、赤色に発光する画素1306aは、メタルマスクを用いてAlq3とDCMを共蒸着法により、30〜60nmの膜厚で形成する。
【0302】
次に、緑色に発光する画素1306bを形成するが、緑色に発光する画素1306bは、メタルマスクを用いてAlq3のみを蒸着法により30〜60nmの膜厚で形成する。
【0303】
次に、青色に発光する画素1306cを形成するが、青色に発光する画素1306cは、メタルマスクを用いてBCPのみを蒸着法により30〜60nmの膜厚で形成する。なお、この時、BCPにAlq3を積層させてもよい。
【0304】
なお、本実施例においても、有機層間には混合層を形成する。具体的には、第1の有機化合物層と第2の有機化合物層の界面において、第1の混合層を形成し、第2の有機化合物層と第3の有機化合物層との界面に第2の混合層を設ける。
なお、混合層の作製については、実施の形態において示した方法を用いればよい。
【0305】
以上により、複数の発光を示す有機発光素子が得られる。また、これらの有機化合物層はバンク(1303a、1303b)によって形成された溝に沿って形成されるため、紙面に垂直な方向にストライプ状に配列される。
【0306】
その後、図11では図示されていないが、複数本の陰極1307が紙面に平行な方向が長手方向となり、且つ、陽極1302と直交するようにストライプ状に配列されている。なお、本実施例では、陰極1307は、MgAgからなり、それぞれ蒸着法により形成される。また、図示されないが陰極1307は所定の電圧が加えられるように、後にFPCが取り付けられる部分まで配線が引き出されている。
【0307】
また、ここでは図示していないが陰極1307を形成したら、パッシベーション膜として窒化珪素膜を設けても良い。
【0308】
以上のようにして基板1301上に有機発光素子を形成する。なお、本実施例では下側の電極が透光性の陽極となっているため、有機化合物層で発生した光は下面(基板1301)に放射される。しかしながら、有機発光素子の構造を反対にし、下側の電極を遮光性の陰極とすることもできる。その場合、有機化合物層で発生した光は上面(基板1301とは反対側)に放射されることになる。
【0309】
次に、カバー材1308としてセラミックス基板を用意する。本実施例の構造では遮光性で良いのでセラミックス基板を用いたが、勿論、前述のように有機発光素子の構造を反対にした場合、カバー材は透光性のほうが良いので、プラスチックやガラスからなる基板を用いるとよい。
【0310】
こうして用意したカバー材1308は、紫外線硬化樹脂でなるシール剤1310により貼り合わされる。なお、シール剤1310の内側1309は密閉された空間になっており、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが充填されている。また、この密閉された空間1309の中に酸化バリウムに代表される吸湿材を設けることも有効である。最後に異方導電性フィルム(FPC)1311を取り付けてパッシブ型の発光装置が完成する。
なお、本実施例は、本発明で開示した有機発光素子のいずれの素子構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例13】
【0311】
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子を含む発光装置の例として、パッシブマトリクス型発光装置を例示する。図29(a)にはその上面図を示し、図29(b)には図29(a)をP−P'で切断した時の断面図を示す。
【0312】
図29(a)において、11701は基板であり、ここではプラスチック材を用いる。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、PES(ポリエチレンサルファイル)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)もしくはPEN(ポリエチレンナフタレート)を板状、もしくはフィルム上にしたものが使用できる。
【0313】
11702は酸化導電膜からなる走査線(陽極)であり、本実施例では酸化亜鉛に酸化ガリウムを添加した酸化物導電膜を用いる。また、11703は金属膜からなるデータ線(陰極)であり、本実施例ではビスマス膜を用いる。また、11704はアクリル樹脂からなるバンクであり、データ線11703を分断するための隔壁として機能する。走査線11702とデータ線11703は両方とも、ストライプ状に複数形成されており、互いに直交するように設けられている。
なお、図29(a)では図示していないが、走査線11702とデータ線11703の間には有機化合物膜が挟まれており、交差部11705が画素となる。
【0314】
そして、走査線11702およびデータ線11703はTABテープ11707を介して外部の駆動回路に接続される。なお、11708は走査線11702が集合してなる配線群を表しており、11709はデータ線11703に接続された接続配線11706の集合からなる配線群を表す。また、図示していないが、TABテープ11707の代わりに、TABテープにICを設けたTCPを接続してもよい。
【0315】
また、図29(b)において、11710はシール剤、11711はシール剤11710によりプラスチック材11701に貼り合わされたカバー材である。シール剤11710としては光硬化樹脂を用いていればよく、脱ガスが少なく、吸湿性の低い材料が望ましい。カバー材としては基板11701と同一の材料が好ましく、ガラス(石英ガラスを含む)もしくはプラスチックを用いることができる。ここではプラスチック材を用いる。
【0316】
次に、画素領域11712の構造の拡大図を図29(c)に示す。11713は有機化合物膜である。なお、図29(c)に示すように、バンク11704は下層の幅が上層の幅よりも狭い形状になっており、データ線11703を物理的に分断できる。また、シール剤11710で囲まれた画素部11714は、樹脂からなる封止材11715により外気から遮断され、有機化合物膜の劣化を防ぐ構造となっている。
【0317】
以上のような構成からなる本発明の発光装置は、画素部11714が走査線11702、データ線11703、バンク11704および有機化合物膜11713で形成されるため、非常に簡単なプロセスで作製することができる。
【0318】
また、本実施例に示した発光装置の表示面(画像を観測する面)に偏光板をもうけてもよい。この偏光板は、外部から入射した光の反射を押さえ、観測者が表示面に映り込むことを防ぐ効果がある。一般的には、円偏光板が用いられている。ただし、有機化合物膜から発した光が偏光板により反射されて内部に戻ることを防ぐため、屈折率を調節して内部反射の少ない構造とすることが好ましい。
【0319】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【実施例14】
【0320】
本実施例では、フルカラーの発光装置について例示する。本実施例におけるフルカラーの発光装置とは、赤、緑、青の光の三原色を用いて、様々な色を表現できる装置のことを指す。
【0321】
まず、最も代表的な例としては、赤、緑、青の発光色を呈する有機発光素子を、従来のシャドウマスクの技術を用いて、それぞれ塗り分ける手法である。すなわち、実施例6〜実施例8で述べたような、赤、緑、および青色の有機発光素子を、実施例10、実施例11、および実施例13で述べたような発光装置の基板上に設ければよい。
【0322】
他の方法として、カラーフィルターを用いたフルカラー化が可能である。すなわち、図30(a)に示すように、白色発光の有機発光素子を、カラーフィルターを有する基板上に設ける手法である。基板としては、カラーフィルターがパターニングされた基板に、実施例10、実施例11、および実施例13で示したような回路が描かれているものを用いればよい。本発明による白色発光素子の例は、図30(b)に示した。
【0323】
また、色変換方式を用いたフルカラー化も可能である。すなわち、図31(a)に示すように、青色発光の有機発光素子を、色変換層を有する基板上に設ける手法である。色変換層とは、可視光を吸収し、吸収した可視光の波長よりも長い波長の光を放出する、蛍光塗料類などである。基板としては、色変換層がパターニングされた基板に、実施例10、実施例11、および実施例13で示したような回路が描かれているものを用いればよい。本発明による青色発光素子の例は、図31(b)に示した。
【0324】
これらの代表的な手法の他、フォトブリーチングによる色変換方式なども、材料の選択によっては本発明に適用可能である。
【実施例15】
【0325】
本実施例では、実施例13で示した発光装置にプリント配線板を設けてモジュール化した例を示す。
【0326】
図32(a)に示すモジュールは、基板12001(ここでは、画素部12002、配線12003a、12003bを含む)にTABテープ12004が取り付けられ、前記TABテープ12004を介してプリント配線板12005が取り付けられている。
【0327】
ここで、プリント配線板12005の機能ブロック図を図32(b)に示す。プリント配線板12005の内部には少なくともI/Oポート(入力もしくは出力部)12006、12009、データ信号側駆動回路12007およびゲート信号側回路12008として機能するICが設けられている。
【0328】
このように、基板面に画素部が形成された基板にTABテープが取り付けられ、そのTABテープを介して駆動回路としての機能を有するプリント配線版が取り付けられた構成のモジュールを、本明細書では特に駆動回路外付け型モジュールと呼ぶことにする。
【0329】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【実施例16】
【0330】
本実施例では、実施例10、実施例11、もしくは実施例13に示した発光装置にプリント配線板を設けてモジュール化した例を示す。
【0331】
図33(a)に示すモジュールは、基板12101(ここでは、画素部12102、データ信号側駆動回路12103、ゲート信号側駆動回路12104、配線12103a、12104aを含む)にTABテープ12105が取り付けられ、そのTABテープ12105を介してプリント配線板12106が取り付けられている。プリント配線板12106の機能ブロック図を図33(b)に示す。
【0332】
図33(b)に示すように、プリント配線板12106の内部には少なくともI/Oポート12107、12110、コントロール部12108として機能するICが設けられている。なお、ここではメモリ部12109を設けてあるが、必ずしも必要ではない。またコントロール部12108は、駆動回路の制御、映像データの補正などをコントロールするための機能を有した部位である。
【0333】
このように、有機発光素子の形成された基板にコントローラーとしての機能を有するプリント配線板が取り付けられた構成のモジュールを、本明細書では特にコントローラー外付け型モジュールと呼ぶことにする。
【0334】
なお、本実施例の発光装置に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した有機発光素子のいずれを用いてもよい。
【実施例17】
【0335】
本実施例では、有機発光素子を、デジタル時間階調表示により駆動する発光装置の例を示す。本実施例の発光装置は、デジタル時間階調表示により均一な像を得ることができ、非常に有用である。
【0336】
有機発光素子を用いた画素の、回路構成を図34(a)に示す。Trはトランジスタ、Csはストレージキャパシタを表す。この回路においては、ゲート線が選択されると、電流がソース線からTr1に流れ、その信号に対応する電圧がCsに蓄積される。そして、Tr2のゲートおよびソース間の電圧(Vgs)により制御される電流が、Tr2および有機発光素子に流れることになる。
【0337】
Tr1が選択されたあとは、Tr1はオフ状態となり、Csの電圧(Vgs)が保持される。したがって、Vgsに依存するだけの電流を流し続けることができる。
【0338】
このような回路を、デジタル時間階調表示により駆動するチャートを図34(b)に示す。すなわち、1フレームを複数のサブフレームに分割するわけだが、図34(b)では、1フレームを6つのサブフレームに分割する6ビット階調とした。この場合、それぞれのサブフレーム発光期間の割合は、32:16:8:4:2:1となる。
【0339】
本実施例におけるTFT基板の駆動回路の概要を図34(c)に示す。ゲートドライバおよびソースドライバは同じ基板上に設けられている。本実施例では、画素回路およびドライバは、デジタル駆動するように設計されているため、TFT特性のばらつきの影響を受けることなく、均一な像を得ることができる。
【実施例18】
【0340】
有機発光素子を用いた発光装置は自発光型であるため、液晶表示装置に比べ、明るい場所での視認性に優れ、視野角が広い。従って、様々な電気器具の表示部に用いることができる。
【0341】
本発明により作製した発光装置を用いた電気器具として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。特に、斜め方向から画面を見る機会が多い携帯情報端末は、視野角の広さが重要視されるため、有機発光素子を有する発光装置を用いることが好ましい。それら電気器具の具体例を図12に示す。
【0342】
図12(A)は表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明により作製した発光装置は、表示部2003に用いることができる。有機発光素子を有する発光装置は自発光型であるためバックライトが必要なく、液晶表示装置よりも薄い表示部とすることができる。なお、表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0343】
図12(B)はデジタルスチルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2102に用いることができる。
【0344】
図12(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2203に用いることができる。
【0345】
図12(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2302に用いることができる。
【0346】
図12(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示するが、本発明により作製した発光装置はこれら表示部A、B2403、2404に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0347】
図12(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2502に用いることができる。
【0348】
図12(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609等を含む。本発明により作製した発光装置は表示部2602に用いることができる。
【0349】
ここで図12(H)は携帯電話であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。本発明により作製した発光装置は、表示部2703に用いることができる。なお、表示部2703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0350】
なお、将来的に有機材料の発光輝度が高くなれば、出力した画像情報を含む光をレンズ等で拡大投影してフロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
【0351】
また、上記電気器具はインターネットやCATV(ケーブルテレビ)などの電子通信回線を通じて配信された情報を表示することが多くなり、特に動画情報を表示する機会が増してきている。有機材料の応答速度は非常に高いため、発光装置は動画表示に好ましい。
【0352】
また、発光装置は発光している部分が電力を消費するため、発光部分が極力少なくなるように情報を表示することが好ましい。従って、携帯情報端末、特に携帯電話や音響再生装置のような文字情報を主とする表示部に発光装置を用いる場合には、非発光部分を背景として文字情報を発光部分で形成するように駆動することが好ましい。
【0353】
以上の様に、本発明を用いて作製された発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電気器具に用いることが可能である。また、本実施例の電気器具は本発明で開示した有機発光素子を有する発光装置のいずれをその表示部に用いることができる。
【実施例19】
【0354】
上記実施例で述べた本発明の発光装置は、低消費電力で寿命が長いという利点を有する。したがって、前記発光装置が表示部等として含まれる電気器具は、従来よりも低い消費電力で動作可能であり、なおかつ長保ちする電気器具となる。
特に電源としてバッテリーを使用する携帯機器のような電気器具に関しては、低消費電力化が便利さに直結する(電池切れが起こりにくい)ため、極めて有用である。
【0355】
また、前記発光装置は、自発光型であることから液晶表示装置のようなバックライトは必要なく、有機化合物膜の厚みも1μmに満たないため、薄型軽量化が可能である。したがって、前記発光装置が表示部等として含まれる電気器具は、従来よりも薄型軽量な電気器具となる。このことも、特に携帯機器のような電気器具に関して、便利さ(持ち運びの際の軽さやコンパクトさ)に直結するため、極めて有用である。さらに、電気器具全般においても、薄型である(かさばらない)ことは運送面(大量輸送が可能)、設置面(部屋などのスペース確保)からみても有用であることは疑いない。
【0356】
なお、前記発光装置は自発光型であるために、液晶表示装置に比べて明るい場所での視認性に優れ、しかも視野角が広いという特徴を持つ。したがって、前記発光装置を表示部として有する電気器具は、表示の見やすさの点でも大きなメリットがある。
【0357】
すなわち、本発明の発光装置を用いた電気器具は、薄型軽量・高視認性といった従来の有機発光素子の長所に加え、低消費電力・長寿命という特長も保有しており、極めて有用である。
【0358】
本実施例では、本発明の発光装置を表示部として含む電気器具を例示する。その具体例を図35および図36に示す。なお、本実施例の電気器具に含まれる有機発光素子には、本発明で開示した素子のいずれを用いてもよい。また、本実施例の電気器具に含まれる発光装置の形態は、図24〜図34のいずれの形態を用いても良い。
【0359】
図35(a)は有機発光素子を用いたディスプレイであり、筐体12301a、支持台12302a、表示部12303aを含む。本発明の発光装置を表示部12303aとして用いたディスプレイを作製することにより、薄く軽量で、長保ちするディスプレイを実現できる。よって、輸送が簡便になり、設置の際の省スペースが可能となる上に、寿命も長い。
【0360】
図35(b)はビデオカメラであり、本体12301b、表示部12302b、音声入力部12303b、操作スイッチ12304b、バッテリー12305b、受像部12306bを含む。本発明の発光装置を表示部2302bとして用いたビデオカメラを作製することにより、消費電力が少なく、軽量なビデオカメラを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。
【0361】
図35(c)はデジタルカメラであり、本体12301c、表示部12302c、接眼部12303c、操作スイッチ12304cを含む。本発明の発光装置を表示部12302cとして用いたデジタルカメラを作製することにより、消費電力が少なく、軽量なデジタルカメラを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。
【0362】
図35(d)は記録媒体を備えた画像再生装置であり、本体12301d、記録媒体(CD、LD、またはDVDなど)12302d、操作スイッチ12303d、表示部(A)12304d、表示部(B)12305dを含む。表示部(A)12304dは主として画像情報を表示し、表示部(B)12305dは主として文字情報を表示する。本発明の発光装置をこれら表示部(A)12304dや表示部(B)12305dとして用いた前記画像再生装置を作製することにより、消費電力が少なく軽量な上に、長保ちする前記画像再生装置を実現できる。なお、この記録媒体を備えた画像再生装置には、CD再生装置、ゲーム機器なども含む。
【0363】
図35(e)は携帯型(モバイル)コンピュータであり、本体12301e、表示部12302e、受像部12303e、操作スイッチ12304e、メモリスロット12305eを含む。本発明の発光装置を表示部12302eとして用いた携帯型コンピュータを作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量な携帯型コンピュータを実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも簡便になる。なお、この携帯型コンピュータはフラッシュメモリや不揮発性メモリを集積化した記録媒体に情報を記録したり、それを再生したりすることができる。
【0364】
図35(f)はパーソナルコンピュータであり、本体12301f、筐体12302f、表示部12303f、キーボード12304fを含む。本発明の発光装置を表示部12303fとして用いたパーソナルコンピュータを作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量なパーソナルコンピュータを実現できる。特に、ノートパソコンのように持ち歩く用途が必要な場合、電池の消費量や軽さの点で大きなメリットとなる。
【0365】
なお、上記電気器具はインターネットなどの電子通信回線や電波などの無線通信を通じて配信される情報を表示することが多くなってきており、特に動画情報を表示する機会が増えている。有機発光素子の応答速度は非常に速く、そのような動画表示に好適である。
【0366】
次に、図36(a)は携帯電話であり、本体12401a、音声出力部12402a、音声入力部12403a、表示部12404a、操作スイッチ12405a、アンテナ12406aを含む。本発明の発光装置を表示部12404aとして用いた携帯電話を作製することにより、消費電力が少なく、薄型軽量な携帯電話を実現できる。よって、電池の消費量が少なくなり、持ち運びも楽になる上にコンパクトな本体にできる。
【0367】
図36(b)は音響機器(具体的には車載用オーディオ)であり、本体12401b、表示部12402b、操作スイッチ12403b、12404bを含む。
本発明の発光装置を表示部12402bとして用いた音響機器を作製することにより、消費電力が少なく、軽量な音響機器を実現できる。また、本実施例では車載用オーディオを例として示すが、家庭用オーディオに用いても良い。
【0368】
なお、図35、図36で示したような電気器具において、さらに光センサを内蔵させ、使用環境の明るさを検知する手段を設けることで、使用環境の明るさに応じて発光輝度を変調させるような機能を持たせることは有効である。使用者は、使用環境の明るさに比べてコントラスト比で100〜150の明るさを確保できれば、問題なく画像もしくは文字情報を認識できる。すなわち、使用環境が明るい場合は画像の輝度を上げて見やすくし、使用環境が暗い場合は画像の輝度を抑えて消費電力を抑えるといったことが可能となる。
【0369】
また、本発明の発光装置を光源として用いた様々な電気器具も、低消費電力での動作や薄型軽量化が可能であるため、非常に有用と言える。代表的には、液晶表示装置のバックライトもしくはフロントライトといった光源、または照明機器の光源として本発明の発光装置を含む電気器具は、低消費電力の実現や薄型軽量化が可能である。
【0370】
したがって、本実施例に示した図35、図36の電気器具の表示部を、全て液晶ディスプレイにする場合においても、その液晶ディスプレイのバックライトもしくはフロントライトとして本発明の発光装置を用いた電気器具を作製することにより、消費電力が少なく、薄くて軽量な電気器具が達成できる。
【実施例20】
【0371】
本実施例では、本発明で開示した有機発光素子に一定の電流を流すことにより駆動する、アクティブマトリクス型の定電流駆動回路の例を示す。その回路構成を図37に示す。
【0372】
図37に示す画素12810は、信号線Si、第1走査線Gj、第2走査線Pj及び電源線Viを有している。また画素12810は、Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、混合接合型の有機発光素子12811及び保持容量12812を有している。
【0373】
Tr3とTr4のゲートは、共に第1走査線Gjに接続されている。Tr3のソースとドレインは、一方は信号線Siに、もう一方はTr2のソースに接続されている。またTr4のソースとドレインは、一方はTr2のソースに、もう一方はTr1のゲートに接続されている。つまり、Tr3のソースとドレインのいずれか一方と、Tr4のソースとドレインのいずれか一方とは、接続されている。
【0374】
Tr1のソースは電源線Viに、ドレインはTr2のソースに接続されている。Tr2のゲートは第2走査線Pjに接続されている。そしてTr2のドレインは有機発光素子12811が有する画素電極に接続されている。有機発光素子12811は、画素電極と、対向電極と、画素電極と対向電極の間に設けられた有機発光層とを有している。有機発光素子12811の対向電極は発光パネルの外部に設けられた電源によって一定の電圧が与えられている。
【0375】
なお、Tr3とTr4は、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTのどちらでも良い。ただし、Tr3とTr4の極性は同じである。また、Tr1はnチャネル型TFTとpチャネル型TFTのどちらでも良い。Tr2は、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTのどちらでも良い。発光素子の画素電極と対向電極は、一方が陽極であり、他方が陰極である。Tr2がpチャネル型TFTの場合、陽極を画素電極として用い、陰極を対向電極として用いるのが望ましい。逆に、Tr2がnチャネル型TFTの場合、陰極を画素電極として用い、陽極を対向電極として用いるのが望ましい。
【0376】
保持容量12812はTr1のゲートとソースとの間に形成されている。保持容量12812はTr1のゲートとソースの間の電圧(VGS)をより確実に維持するために設けられているが、必ずしも設ける必要はない。
【0377】
図37に示した画素では、信号線Siに供給される電流を信号線駆動回路が有する電流源において制御されている。
【0378】
以上のような回路構成を適用することにより、有機発光素子に一定の電流を流して輝度を一定に保とうとする定電流駆動が可能となる。本発明で開示した混合領域を有する有機発光素子は従来の有機発光素子に比べて寿命が長いが、上記のような定電流駆動を実施することでさらに長寿命化を図ることができるため、有効である。
【図面の簡単な説明】
【0379】
【図1】本発明における混合層を説明する図。
【図2】混合層における濃度勾配について説明する図。
【図3】混合層の作製について説明する図。
【図4】本発明の有機発光素子における素子構成を説明する図。
【図5】本発明の有機発光素子における素子構成を説明する図。
【図6】本発明の有機発光素子における素子構成を説明する図。
【図7】作製行程を説明する図。
【図8】作製行程を説明する図。
【図9】作製行程を説明する図。
【図10】発光装置の封止構造を説明する図。
【図11】発光装置を説明する断面図。
【図12】電気器具の一例を示す図。
【図13】従来の有機発光素子を表す図。
【図14】有機界面の状態を表す図。
【図15】蒸着装置を示す図。
【図16】不純物層の形成を示す図。
【図17】有機発光素子の構造を示す図。
【図18】濃度プロファイルを示す図。
【図19】濃度プロファイルを示す図。
【図20】混合領域の状態を表す図。
【図21】有機発光素子の構造を示す図。
【図22】有機発光素子の構造を示す図。
【図23】蒸着装置を示す図。
【図24】発光装置の断面構造を示す図。
【図25】発光装置の断面構造を示す図。
【図26】発光装置の断面構造を示す図。
【図27】発光装置の上面構造および断面構造を示す図。
【図28】発光装置の上面構造および断面構造を示す図。
【図29】発光装置の上面構造および断面構造を示す図。
【図30】カラーフィルターを用いた発光装置の概略を示す図。
【図31】色変換層を用いた発光装置の概略を示す図。
【図32】発光装置の構成を示す図。
【図33】発光装置の構成を示す図。
【図34】発光装置の構成を示す図。
【図35】電気器具の具体例を示す図。
【図36】電気器具の具体例を示す図。
【図37】発光装置の回路構成を説明する図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物からなる第一の層と、前記第一の層を構成する物質とは異なる有機化合物からなる第二の層と、を少なくとも含む有機発光素子を有する発光装置において、前記第一の層と前記第二の層との間に、前記第一の層を構成する有機化合物、および前記第二の層を構成する有機化合物、の両方を含む領域を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の前記領域において、前記第一の層を構成する有機化合物の濃度は、前記第1の層から前記第2の層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項3】
有機化合物からなる第一の層と、前記第一の層を構成する物質とは異なる有機化合物からなる第二の層と、を少なくとも含む有機発光素子を有する発光装置において、前記第一の層と前記第二の層との間に、前記第一の層を構成する有機化合物、および前記第二の層を構成する有機化合物、の両方を含む混合層を設けたことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の前記混合層において、前記第一の層を構成する有機化合物の濃度は、前記第1の層から前記第2の層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項5】
陽極に接する正孔注入層と、正孔輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記正孔注入層と前記正孔輸送層との間に、前記正孔注入層を構成する有機化合物、および前記正孔輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む領域を有することを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の前記領域において、前記正孔注入層を構成する有機化合物の濃度は、前記正孔注入層から前記正孔輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項7】
陽極に接する正孔注入層と、正孔輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記正孔注入層と前記正孔輸送層との間に、前記正孔注入層を構成する有機化合物、および前記正孔輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む混合層を設けたことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の前記混合層において、前記正孔注入層を構成する有機化合物の濃度は、前記正孔注入層から前記正孔輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項9】
陰極に接する電子注入層と、電子輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記電子注入層と前記電子輸送層との間に、前記電子注入層を構成する有機化合物、および前記電子輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む領域を有することを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の前記領域において、前記電子注入層を構成する有機化合物の濃度は、前記電子注入層から前記電子輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項11】
陰極に接する電子注入層と、電子輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記電子注入層と前記電子輸送層との間に、前記電子注入層を構成する有機化合物、および前記電子輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む混合層を設けたことを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項11に記載の前記混合層において、前記電子注入層を構成する有機化合物の濃度は、前記電子注入層から前記電子輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項13】
発光層と、正孔輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記発光層と前記正孔輸送層との間に、前記発光層を構成する有機化合物、および前記正孔輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む領域を有することを特徴とする発光装置。
【請求項14】
請求項13に記載の前記領域において、前記発光層を構成する有機化合物の濃度は、前記発光層から前記正孔輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項15】
発光層と、正孔輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記発光層と前記正孔輸送層との間に、前記発光層を構成する有機化合物、および前記正孔輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む混合層を設けたことを特徴とする発光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の前記混合層において、前記発光層を構成する有機化合物の濃度は、前記発光層から前記正孔輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項17】
発光層と、電子輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記発光層と前記電子輸送層との間に、前記発光層を構成する有機化合物、および前記電子輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む領域を有することを特徴とする発光装置。
【請求項18】
請求項17に記載の前記領域において、前記発光層を構成する有機化合物の濃度は、前記発光層から前記電子輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項19】
発光層と、電子輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記発光層と前記電子輸送層との間に、前記発光層を構成する有機化合物、および前記電子輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む混合層を設けたことを特徴とする発光装置。
【請求項20】
請求項19に記載の前記混合層において、前記発光層を構成する有機化合物の濃度は、前記発光層から前記電子輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項21】
発光層と、正孔輸送層と、電子輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記発光層と前記正孔輸送層との間に、前記発光層を構成する有機化合物、および前記正孔輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む第一の領域を有し、かつ、前記発光層と前記電子輸送層との間に、前記発光層を構成する有機化合物、および前記電子輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む第二の領域を有することを特徴とする発光装置。
【請求項22】
請求項21に記載の発光装置において、前記第1の領域に含まれる前記発光層を構成する有機化合物の濃度は、前記発光層から前記正孔輸送層の方向に向かって減少し、前記第2の領域に含まれる前記発光層を構成する有機化合物の濃度は、前記発光層から前記電子輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項23】
発光層と、正孔輸送層と、電子輸送層と、を含む有機発光素子を有する発光装置において、前記発光層と前記正孔輸送層との間に、前記発光層を構成する有機化合物、および前記正孔輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む第一混合層を設け、かつ、前記発光層と前記電子輸送層との間に、前記発光層を構成する有機化合物、および前記電子輸送層を構成する有機化合物、の両方を含む第二混合層を設けたことを特徴とする発光装置。
【請求項24】
請求項23に記載の発光装置において、前記第1の混合層に含まれる前記発光層を構成する有機化合物の濃度は、前記発光層から前記正孔輸送層の方向に向かって減少し、前記第2の混合層に含まれる前記発光層を構成する有機化合物の濃度は、前記発光層から前記電子輸送層の方向に向かって減少することを特徴とする発光装置。
【請求項25】
請求項21乃至請求項24のいずれか一に記載の発光装置において、前記発光層を構成する物質の最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差が、前記正孔輸送層を構成する物質の最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差よりも低く、かつ、前記電子輸送層を構成する物質の最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差よりも低いことを特徴とする発光装置。
【請求項26】
請求項21乃至請求項25のいずれか一に記載の発光装置において、前記発光層は、ホスト材料と、前記ホスト材料よりも最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差が低い発光材料と、からなり、前記発光材料の最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差が、前記正孔輸送層を構成する物質の最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差よりも低く、かつ、前記電子輸送層を構成する物質の最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差よりも低いことを特徴とする発光装置。
【請求項27】
請求項1乃至請求項26のいずれか一に記載の発光装置において、前記有機発光素子は、三重項励起状態からの発光を特徴とする発光装置。
【請求項28】
請求項1乃至請求項27のいずれか一に記載の発光装置を用いたことを特徴とする電気器具。
【請求項29】
陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、および発光材料を含む有機化合物膜を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記発光材料の両方を含む第一の混合領域と、前記発光材料からなる発光領域と、前記電子輸送材料および前記発光材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項30】
陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、および発光材料を含む有機化合物膜と、前記陽極に接する正孔注入領域と、を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記発光材料の両方を含む第一の混合領域と、前記発光材料からなる発光領域と、前記電子輸送材料および前記発光材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項31】
陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、および発光材料を含む有機化合物膜と、前記陰極に接する電子注入領域と、を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記発光材料の両方を含む第一の混合領域と、前記発光材料からなる発光領域と、前記電子輸送材料および前記発光材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項32】
陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、および発光材料を含む有機化合物膜と、前記陽極に接する正孔注入領域と、前記陰極に接する電子注入領域と、を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記発光材料の両方を含む第一の混合領域と、前記発光材料からなる発光領域と、前記電子輸送材料および前記発光材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項33】
陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、および前記発光材料に対するホスト材料を含む有機化合物膜を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記ホスト材料の両方を含む第一の混合領域と、前記ホスト材料に前記発光材料が添加された発光領域と、前記電子輸送材料および前記ホスト材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項34】
陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、および前記発光材料に対するホスト材料を含む有機化合物膜と、前記陽極に接する正孔注入領域と、を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記ホスト材料の両方を含む第一の混合領域と、前記ホスト材料に前記発光材料が添加された発光領域と、前記電子輸送材料および前記ホスト材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項35】
陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、および前記発光材料に対するホスト材料を含む有機化合物膜と、前記陰極に接する電子注入領域と、を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記ホスト材料の両方を含む第一の混合領域と、前記ホスト材料に前記発光材料が添加された発光領域と、前記電子輸送材料および前記ホスト材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項36】
陽極と陰極との間に、正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、および前記発光材料に対するホスト材料を含む有機化合物膜と、前記陽極に接する正孔注入領域と、前記陰極に接する電子注入領域と、を設けた有機発光素子、を有する発光装置において、前記有機化合物膜は、前記陽極から前記陰極への方向に関して順次、前記正孔輸送材料からなる正孔輸送領域と、前記正孔輸送材料および前記ホスト材料の両方を含む第一の混合領域と、前記ホスト材料に前記発光材料が添加された発光領域と、前記電子輸送材料および前記ホスト材料の両方を含む第二の混合領域と、前記電子輸送材料からなる電子輸送領域と、が接続された構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項37】
請求項30、請求項32、請求項34、または請求項36のいずれか一項に記載の発光装置において、前記正孔注入領域は、共役系の有機化合物にルイス酸を添加してなることを特徴とする発光装置。
【請求項38】
請求項37に記載の発光装置おいて、前記共役系の有機化合物は、高分子化合物であることを特徴とする発光装置。
【請求項39】
請求項37に記載の発光装置おいて、前記ルイス酸は、ハロゲン元素を含む化合物であることを特徴とする発光装置。
【請求項40】
請求項31、請求項32、請求項35、または請求項36のいずれか一項に記載の発光装置において、前記電子注入領域は、共役系の有機化合物にルイス塩基を添加してなることを特徴とする発光装置。
【請求項41】
請求項40に記載の発光装置において、前記ルイス塩基は、アルカリ金属元素を含む化合物であることを特徴とする発光装置。
【請求項42】
請求項29乃至請求項41のいずれか一項に記載の発光装置において、前記有機発光素子は、三重項励起状態からの発光を呈することを特徴とする発光装置。
【請求項43】
請求項29乃至請求項42のいずれか一項に記載の発光装置において、前記第一の混合領域、または前記第二の混合領域の少なくとも一方は、濃度勾配が形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項44】
請求項29乃至請求項43のいずれか一項に記載の発光装置を用いたことを特徴とする電気器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2007−300137(P2007−300137A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190445(P2007−190445)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【分割の表示】特願2001−395213(P2001−395213)の分割
【原出願日】平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】