説明

発光素子

【課題】輝点および輝度分布が均一な発光素子であって蛍光体がチャージアップして輝度が変化するのを抑制した発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子20は、電子を放出する電子放出源23と、陰極22とを背面基板21に備え、電磁波を受けて発光する蛍光体26を前面基板24に備える。発光素子20は、電子放出源23と蛍光体26との間に、陰極22に対する陽極であって電子放出源23から放出された電子を受けて電磁波を放出する電磁波源27を備える。発光素子20は、電子放出源23から電子が照射されると、照射された電子を受けた電磁波源27から電磁波が放射状に放射され、この電磁波を受けて蛍光体26が発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発光素子として、カソード電極(陰極)が背面基板に設けられて形成される電子放出部と、蛍光膜とアノード電極(陽極)とが前面基板に設けられて形成される光放出部とを備え、電界電子放出によって電子放出部から電子が放出され、放出された電子により光放出部の蛍光膜が励起されて発光するものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された発光素子では、前面基板の背面に蛍光膜を配設すると共に蛍光膜と隔離して金属反射膜を設けることにより、電子放出源から放出された電子を金属反射膜を透過する際に散乱させ、電子を蛍光膜に均一に照射させて発光素子の輝度分布を一様にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−98158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の発光素子では、発光素子の輝点や輝度分布を一様にしているものの、時間の経過と共に蛍光体に電荷が溜まって(チャージアップして)、発光素子の輝度が変化してしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、輝点および輝度分布が均一であると共に蛍光体がチャージアップして輝度が変化するのを抑制した発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の発光素子は、
電子を放出する電子放出源が配設された第1の基板と、蛍光体が配設された第2の基板とが間隙を有して対面するように配置されて形成される発光素子であって、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に設けられ、前記電子放出源から放出される電子を受けて電磁波を放出する電磁波源を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、輝点および輝度分布が均一であると共に蛍光体がチャージアップして輝度が変化するのを抑制した発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態としての発光素子の構成の概略を示す模式図である。
【図2】電磁波源に電子が照射されたときの電磁波源周辺の様子の一例を示す模式図である。
【図3】変形例の発光素子の構成の概略を示す模式図である。
【図4】変形例の発光素子の構成の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る発光素子を図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態としての発光素子20の構成の概略を示す模式図である。実施形態の発光素子20は、例えば、液晶表示装置の構成要素としてのバックライトや、ファクシミリ等の読み取り、複写機のイレーサーなどに用いられる発光素子として、図示するように、背面基板21と、背面基板21上に設けられた陰極22と、陰極22上に設けられた電子放出源23と、背面基板21と間隙を有して対抗するように配置された前面基板24と、前面基板24の背面基板21側(背面側)に設けられた蛍光体26と、背面基板21と前面基板24との間に設けられた電磁波源27と、陰極21と電磁波源27とに接続された直流電源回路29とを備える。発光素子20は、陰極22や蛍光体26が内側となるように背面基板21と前面基板24とが対抗して配置され、スペーサとしての役割や封止枠としての役割を果たす枠28を介在させた状態で内部が真空にされて一体に形成される。
【0011】
背面基板21は、発光素子20の背面板として、例えばガラスなどにより形成される。背面基板21の前面基板24側(前面側)には、例えばニッケルなどにより形成される陰極22が設けられ、この陰極22上に、例えばカーボンナノチューブなどにより形成される電子放出源23が設けられる。
【0012】
前面基板24は、発光素子20の前面板として、例えばガラスなどにより透明に形成される。前面基板24の背面側には、蛍光体26が設けられると共にこの蛍光体26と若干の隙間を空けて電磁波源27が設けられる。蛍光体26は、電磁波源27から放出される電磁波を受けて発光する発光体として、例えば、タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))や、タリウム活性化ヨウ化セシウム(CsI(Tl))、ナトリウム活性化ヨウ化セシウム(CsI(Na))、ユーロピウム活性化フッ化カルシウム(CaF(Eu))、ゲルマン酸ビスマス(BiGe12)、タングステン酸カドミウム(CdWO)、タングステン酸カルシウム(CaWO)、硫化亜鉛(ZnS)などを含む材料により形成される。
【0013】
電磁波源27は、電子放出源23から放出された電子により励起されて蛍光X線や紫外線などの電磁波を放射状に放出する電磁波源であると共に陰極22に対する陽極として、発光素子20の発光効率が高くなるように蛍光体26の材料などに基づいて選択された導電性の材料により形成される。例えば、蛍光体26として硫化亜鉛(ZnS)を含む材料が用いられる場合にはゲルマニウム(Ge)を含む材料によって電磁波源27を形成することが好ましく、また、蛍光体26としてタングステン酸カルシウム(CaWO)が用いられる場合にはチタン(Ti)を含有する材料(例えば、酸化チタン(TiO))によって電磁波源27を形成することが好ましい。電磁波源27は、蛍光体26との間に図示しないスペーサを介在させて蛍光体26と若干の隙間を空けて設けられるものとしたり、発光素子20の枠28に嵌め込まれて蛍光体26と若干の隙間を空けて設けられるものとすることができる。
【0014】
こうして構成された実施形態の発光素子20では、直流電源回路29によって電磁波源27と陰極22とに電圧を印加すると、電子放出源23から電界電子放出によって放出された電子が電磁波源27側に引き寄せられて電磁波源27に照射される。このときに直流電源回路29によって印加する電圧としては、電子放出源23や蛍光体26,電磁波源27などによって予め実験などにより適宜定めることができ、例えば、蛍光体26として硫化亜鉛(ZnS)を含む材料、電磁波源27としてゲルマニウム(Ge)を含む材料を用いるときには直流電源回路29によって約11.2kV以上の電圧を印加し、蛍光体26としてタングステン酸カルシウム(CaWO)、電磁波源27としてチタン(Ti)を含む材料を用いるときには直流電源回路29によって約5kV以上の電圧を印加するものとすることができる。
【0015】
図2は、電磁波源27に電子が照射されたときの電磁波源27周辺の様子の一例を示す模式図である。電磁波源27に電子が照射されると、図示するように、電磁波源27から放射状に電磁波が放出され(図中、破線矢印)、この放射状に放出された電磁波が蛍光体26に衝突し、この電磁波が衝突した部位の蛍光体26が励起されて可視光が発光される。このように放射状に放出された電磁波を受けて蛍光体26が発光することにより、輝点や輝度分布のバラツキを抑制して発光素子20を均一に発光させることができる。また、これにより、電子や電磁波が局所的に照射されて蛍光体26が局所的に疲労したり損傷したりするのを抑制することができる。さらに、蛍光体26は、電磁波を受けて発光するから、電子放出源23から放出された電子が直接蛍光体26に作用するものに比して蛍光体26に電荷が溜まって(チャージアップして)時間と共に輝度が変化してしまうのを抑制することができる。しかも、実施形態の発光素子20では、電磁波源27を導電性の材料で形成して電磁波源27が陰極22に対する陽極を兼ねるものとしたから、蛍光体26より前面側に陽極が設けられるもの(陰極と陽極とによって蛍光体26が挟まれるもの)に比して、蛍光体26がチャージアップするのを抑制することができ、発光素子20の輝度が時間と共に変化するのを抑制することができる。また、陽極を別途設ける必要がないから発光素子20の構成部品を減らすことができ、発光素子20の省スペース化や低コスト化を図ることができる。
【0016】
以上説明した実施形態の発光素子20では、電子放出源23と蛍光体26との間に電磁波源27を設け、電子放出源23から電子が照射されると、電子を受けた電磁波源27から電磁波が放射状に放出され、この電磁波を受けて蛍光体26が発光するから、輝点や輝度分布のバラツキを抑制して発光素子20を均一に発光させることができると共に蛍光体26がチャージアップして発光素子20の輝度が変化するのを抑制することができる。
【0017】
実施形態の発光素子20では、電磁波源27は、蛍光体26と隙間を有して設けられるものとしたが、図3の変形例の発光素子120に例示するように、蛍光体26に接して設けられてもよい。この場合、電磁波源127は、蛍光体26に材料を塗布して形成するものしたり、蒸着法を用いて蛍光体26上に成膜したりすることができる。こうすれば、電磁波源127と蛍光体26との距離を近づけることができ、発光素子の輝度を高くすることができる。
【0018】
また、図4の変形例の発光素子220に例示するように、電磁波源227は、蛍光体226に覆われるように蛍光体226内部に設けられてもよい。こうすれば、紛状の材料によって電磁波源227を形成することもできる。また、こうすれば、電磁波源227から放射状に放出される電磁波を効果的に蛍光体226に照射することができる。さらに、電磁波源227は、電磁波源227を形成する材料と、蛍光体226を形成する材料とを混合し、蛍光体226と一体に形成されてもよい。
【0019】
実施形態の発光素子20では、直流電源回路29によって電磁波源27と陰極22とに電圧を印加して電界電子放出により電子放出源23から電子を放出するものとしたが、電子放出源に熱を加えて熱励起させ、熱電子放出により電子放出源から電子を放出しても構わない。この場合においても、実施形態の発光素子20と同様の効果を奏することができる。
【0020】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0021】
(付記1)電子を放出する電子放出源が配設された第1の基板と、蛍光体が配設された第2の基板とが間隙を有して対面するように配置されて形成される発光素子であって、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に設けられ、前記電子放出源から放出される電子を受けて電磁波を放出する電磁波源を備える、
ことを特徴とする発光素子。
【0022】
(付記2)前記第1の基板には、陰極が配設され、
前記電磁波源は、前記陰極に対する陽極として導電性の材料により形成される、
ことを特徴とする付記1に記載の発光素子。
【0023】
(付記3)前記電磁波源は、前記電子放出源から放出される電子を受けて蛍光X線を放出する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の発光素子。
【0024】
(付記4)前記蛍光体は、NaI(Tl),CsI(Tl),CSI(Na),CaF(Eu),BiGe12,CdWO,CaWO,ZnSのうちの少なくとも1つを含む材料により形成される、
ことを特徴とする付記3に記載の発光素子。
【0025】
(付記5)前記蛍光体は、ZnSを含む材料により形成され、
前記電磁波源は、Geを含む材料により形成される、
ことを特徴とする付記3に記載の発光素子。
【0026】
(付記6)前記蛍光体は、CaWOを含む材料により形成され、
前記電磁波源は、Tiを含む材料により形成される、
ことを特徴とする付記3に記載の発光素子。
【0027】
(付記7)前記蛍光体は、前記電子放出源から放出される電子を受けて紫外線を放出する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の発光素子。
【0028】
(付記8)前記電磁波源は、前記第2の基板の蛍光体に接するよう設けられる、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1つに記載の発光素子。
【0029】
(付記9)前記電磁波源は、前記第2の基板の蛍光体内部に設けられる、
ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1つに記載の発光素子。
【0030】
(付記10)前記電子放出源は、電界電子放出によって電子を放出する、
ことを特徴とする付記1乃至9のいずれか1つに記載の発光素子。
【0031】
(付記11)前記電子放出源は、熱電子放出によって電子を放出する、
ことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1つに記載の発光素子。
【符号の説明】
【0032】
20,120,220 発光素子
21 背面基板
22 陰極
23 電子放出源
24 前面基板
26,226 蛍光体
27,127,227 電磁波源
28 枠
29 直流電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出する電子放出源が配設された第1の基板と、蛍光体が配設された第2の基板とが間隙を有して対面するように配置されて形成される発光素子であって、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に設けられ、前記電子放出源から放出される電子を受けて電磁波を放出する電磁波源を備える、
ことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第1の基板には、陰極が配設され、
前記電磁波源は、前記陰極に対する陽極として導電性の材料により形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記電磁波源は、前記電子放出源から放出される電子を受けて蛍光X線を放出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記蛍光体は、NaI(Tl),CsI(Tl),CSI(Na),CaF(Eu),BiGe12,CdWO,CaWO,ZnSのうちの少なくとも1つを含む材料により形成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記蛍光体は、ZnSを含む材料により形成され、
前記電磁波源は、Geを含む材料により形成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
【請求項6】
前記蛍光体は、CaWOを含む材料により形成され、
前記電磁波源は、Tiを含む材料により形成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
【請求項7】
前記蛍光体は、前記電子放出源から放出される電子を受けて紫外線を放出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項8】
前記電磁波源は、前記第2の基板の蛍光体に接するよう設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項9】
前記電磁波源は、前記第2の基板の蛍光体内部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項10】
前記電子放出源は、電界電子放出によって電子を放出する、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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