説明

発光素子

【課題】高効率を有し、且つ、照明として用いる場合であっても充分な寿命を備えた改良型の発光素子を提供する。
【解決手段】発光層EM1と、さらに増設された発光層EM2とを含む発光有機領域4は、電極1と対極2へ電圧をかけることによって、発光層EM1が主に青色、または青緑色スペクトル範囲において発光する蛍光性発光体を含み、可視スペクトル域の範囲内、任意で白色まで複数の色の発する発光様式に配置される。増設された発光層EM2には、主に青色以外のスペクトル範囲において発光する、1つまたは複数の燐光性発光体を含む。蛍光性発光体における三重項エネルギーは、燐光性発光体における三重項状態のエネルギーレベルより大きい。また、発光有機領域4において生み出された光の少なくとも5%の割合は、発光層EM1の蛍光性発光体の一重項状態から、蛍光性の可視スペクトルを放つように構成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔本発明の分野〕
本発明は、電極および対極、ならびに電極と対極との間に配置される有機領域を有した発光素子に関するものであり、とりわけ有機発光ダイオード(OLED)に関するものである。具体的には、前記有機領域は、電極と対極へ電圧をかけることによって、可視スペクトル域の範囲内、任意で白色まで、の複数の色の光を発する或る発光層と、これとは異なる別の発光層とを有する発光有機領域を備えている。
【0002】
〔背景技術〕
近年、白色に至るまでの複数の色の範囲の光を発する有機発光ダイオードに、さらなる注目が注がれている。主に、この技術は、照明技術の分野で活用できる大きな可能性を有すると認められる。白色有機発光ダイオードは、今日、従来の電気白熱灯の分野にある電力効率に及んでいる(Forrest他Adv. Mater.7,624(2004)を参照する)。そして、さらなる改良が期待されている。したがって、白色OLEDは、現在の業界の中心となる照明技術に、大幅な代替案となる可能性がある。たとえば白熱灯、ハロゲンランプ、低電圧蛍光灯、および同等のものである。
【0003】
主に、低分子量物質(“小分子”)に基づくOLEDにとって、たとえば燐光性の発光体が用いられるなら、より高い効率性が得られる。一重項励起子の割合の25%のみを利用する蛍光発光体に対して、後者は、100%の内部量子効率に相当する、発生する励起子の100%まで利用可能である(cf.Baldo st al., Nature 395 151 (1998);Baldo et al ., Appl.phys.Lett. 75,4(1999))。燐光性の発光体という表現は、燐光を発光することができる物質を意味する。同様に、蛍光性の発光体という表現は、蛍光を発することができる物質を意味する。
【0004】
現在の最先端の技術によると、最も高い既知の効率を有する白色OLEDは、燐光性の発光体に基づいている(cf.D'Andrade et al ., Adv.Mater.16,624(2004))。
【0005】
しかしながら、照明業界での白色OLEDの飛躍的な進歩は、いまだ大幅な技術的改良を必要とする。1つの難問は、現在のところ、白色OLEDが長期寿命を有する高い効率性を実現することを、まだ満足に解決されていないことにある。最先端の技術に相当する白色光源は、白熱電球の場合で約750時間、蛍光灯の場合で10,000時間までの寿命を有している。白色OLEDにおいて、青色、または少なくとも青緑色の発光体の寄与が、主に必要とされる。しかしながら、青色燐光性発光体の長期間の持続性は極めて限られたものである。数千から数万時間におよぶ青色OLED発光体の長期寿命は、蛍光灯において知られるのみであるが、大量の光のために生じている励起子の最大25%までを利用できるだけである。同様に、緑色および赤色燐光性の発光体の数万から数十万時間におよぶ寿命であることが知られている。
【0006】
実際これまで、上述の問題に対して満足のいく解決手段が存在しなかった。青色三重項発光体に基づく白色OLEDの寿命は、適用しようとする製品にとって短すぎるものであった。それゆえ、白色OLEDを製品にするすべての方法は、青色蛍光発光体の利用にこれまでのところ向けられている。これら方法においては効率性が低いけれども、寿命が、数100cd/mで数万時間の範囲では、産業規格と一致する。三重項発光体の寿命が、すでに赤色、緑色、およびオレンジの色で十分に高いので、燐光性および蛍光性の発光体の双方が上記の色の発光体として使用されている。白色光を生み出すためには幾多の方法がある。たとえば、青緑とオレンジの混合、または、たとえば赤と緑と青との混合を用いる。同様に上記混合は、さまざまな方法で成し得る。例として以下の方法を用いる。
【0007】
上下に多彩な色を発光するOLEDを積み重ねること、
互いに平行して多彩な色を発光するOLEDを配置すること、
同じ発光層に多彩な色の発光体を取り入れること、
薄い中間層の補助をともなって、お互い離れることのできる異なる発光層に、多彩な色の発光体を取り入れること。
【0008】
US2003/0042848 A1文献は、赤、緑、青の複数個の絵素領域を備える基板を有した電子発光表示装置を開示している。絵素領域はそれぞれ、2つの電極間の発光素材からなる層を有している。複数個の絵素領域の少なくとも1つの発光素材は、燐光の発光素材を含む。
【0009】
〔本発明の概要〕
本発明は、改良型の発光素子を提供することを目的としている。改良型の発光素子とは、上述した内容を備えたタイプのもので、高効率を有し、且つ、照明として用いる場合であっても充分な寿命を備えた発光素子である。
【0010】
上記した目的は、本願の独立請求項1に記載の発光素子によって達成することができる。また、本発明の更なる利点を、従属請求項として記載している。
【0011】
本発明に係る発光素子は、電極と対極とを有しており、且つ、発光有機領域(EM)を有する有機領域を該電極と該対極との間に有している発光素子、特に有機発光ダイオードであって、上記発光有機領域(EM)は、第1の発光層(EML1)と第2の発光層(EML2)とを備えており、且つ、上記電極と上記対極とに電界をかけることによって、可視スペクトル域の範囲内において複数の色の光、任意で白色光までの光、を発するように構成されており、上記第1の発光層(EML1)には、青色または青緑色の可視スペクトル域の範囲内の光を主に発する蛍光発光体が設けられており、上記第2の発光層(EML2)には、青色帯域以外の可視スペクトル域の範囲内の光を主に発する1つまたは複数の燐光発光体が設けられており、上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体における、三重項状態のエネルギー準位に相当する三重項エネルギーは、上記第2の発光層(EML2)の上記燐光発光体における、三重項状態のエネルギー準位に相当する三重項エネルギーよりも大きく、上記発光有機領域は、可視スペクトル域の範囲内で生成された光の少なくとも5%を、上記第1の発光層(EML1)に設けられた一重項状態の上記蛍光発光体からの蛍光として、放つように構成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、白色に至るまでの複数の色の範囲の光を発する、高効率で、長い寿命の発光素子を提供することができる。青色蛍光発光体の場合、寿命は明らかに長い一方で、効率性にかけているという問題があったが、この問題は三重項励起子を発光に用いることで解決できる。三重項励起子は、主に青色または青緑色の可視スペクトル範囲内の光を発する発光体に電気エネルギーが供給されると現れ、通常、無放射で分解する。とりわけ、第1の発光層の蛍光発光体における、三重項状態のエネルギー準位に相当する三重項エネルギーと、上記第1の発光層とは異なる第2の発光層の燐光発光体における、三重項状態のエネルギー準位に相当する三重項エネルギーとの構成に関係する。このようにすることによって、第1の発光層の蛍光発光体における三重項状態からのエネルギーを、第2の発光層の燐光発光体における三重項状態に移行させることが可能となる。同時に、第1の発光層の蛍光発光体の一重項状態の分解において、青色または青緑色の可視スペクトル域の範囲内の光を発する。このような発光素子の有機発光領域において、次のような過程を経る。
a) 発光素子に電気エネルギーが供給されると、有機発光領域内に形成された上記励起子の大部分が、一重項励起子及び三重項励起子の形態で第1の発光層内の蛍光発光体上に形成される。
b) 上記一重項励起子の一部は、青色または青緑色の可視スペクトル域の範囲内の光を発しながら、分解する。
c) 上記三重項励起子は、第1の発光層から、励起エネルギーを用いて、燐光発光体を含む第2の発光層へ移行する。
d) 上記燐光発光体内の上記三重項励起子が、非青色の燐光を発して分解する。
【0013】
このように、該電極と該対極との間にある発光有機領域に与えられたエネルギーによって、異なる波長を有する可視スペクトル域の光が効率的な生成されることになる。
【0014】
従って、本発明の特徴の1つは、寿命の長い発光材料と、高効率な発光材料との組み合わせにある。上述したように、通常、白色OLEDは、青色または青緑色の光を発する1つまたは複数の発光体を用いることが前提となっている。そして、青色または青緑色の燐光を発する発光体は、実際考え得る全ての適用例にとって、寿命が非常に短いという理由から、発光体として蛍光発光体材料を用いる。今日、青色蛍光発光体の場合、1000cd/mの輝きで20,000時間以上の寿命を実現することができる。赤色および緑色の発光体の場合は状況が異なる。すなわち、赤色OLEDの場合、一例として500cd/mの輝きで30,000時間という長い寿命をもった燐光発光体が既に実現されている。本発明は、青色蛍光発光体を用いているにもかかわらず、青色の光を発する発光体内で生成された三重項励起子の大部分(例えば約80%から90%)を活用でき、且つ、発光素子の電流効率を1.5から2倍高めることを実現する。
【0015】
また、本発明は、発光有機領域が、可視スペクトル域の範囲内で生成された光の少なくとも10%を、第1の発光層に設けられた一重項状態の蛍光発光体の蛍光として放つように構成されていることが好ましい。
【0016】
さらに、発光有機領域で生成された光は、可視スペクトル域の範囲内の少なくとも15%が、第1の発光層に設けられた一重項状態の蛍光発光体の蛍光として放つように構成されていることが好ましい。
【0017】
さらに、発光有機領域で生成された光は、可視スペクトル域の範囲内の少なくとも20%が、第1の発光層に設けられた一重項状態の上記蛍光発光体の蛍光として放つように構成されていることが好ましい。
【0018】
さらに、発光有機領域で生成された光は、可視スペクトル域の範囲内の少なくとも25%が、第1の発光層に設けられた一重項状態の蛍光発光体の蛍光として放つように構成されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、第1の発光層と陰極との間に、正孔遮断層が設けられており、正孔遮断層は、電子を移動させるように構成されており、該正孔遮断層の有機材料は、上記第1の発光層の蛍光発光体の最高被占軌道レベルよりも少なくとも約0.3eV低い最高被占軌道レベルを有していることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、第1の発光層と陽極との間に、電子遮断層が設けられており、電子遮断層は、正孔を移動させるように構成されており、該電子遮断層の有機材料は、第1の発光層の上記蛍光発光体の最低空軌道レベルよりも少なくとも約0.3eV高い最低空軌道レベルを有していることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、第1の発光層、第2の発光層、第3の発光層の少なくとも1つが多層構造を形成していることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明は、第1の発光層は、約5nm〜約50nmの厚さを有していることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明は、発光有機領域が白色光を発するように構成されており、第2の発光層の1つまたは複数の燐光発光体は、赤色、橙色または黄色のスペクトル域の範囲内の光を発するように構成されていることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明は、発光有機領域が白色光を発するように構成されており、第2の発光層の1つまたは複数の燐光発光体は、赤色、橙色または緑色のスペクトル域の範囲内の光を発するように構成されていることが好ましい。
【0025】
さらに、本発明は、発光有機領域が白色光を発するように構成されており、第3の発光層の1つまたは複数の燐光発光体は、赤色、橙色または黄色のスペクトル域の範囲内の光を発するように構成されていることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明は、発光有機領域が白色光を発するように構成されており、第3の発光層の1つまたは複数の燐光発光体は、赤色、橙色または緑色のスペクトル域の範囲内の光を発するように構成されていることが好ましい。
【0027】
また、本発明は、第1の発光層の蛍光発光体が、40未満の序数の金属元素を有する有機金属化合物または複合化合物であることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明は、第1の発光層の蛍光発光体は、下記のa)〜e)のクラスのうちのいずれか1つのクラスの電子求引性置換基を有していることが好ましい;
a) フッ素、塩素、ヨウ素、臭素といったハロゲン族元素
b) CN
c) アルカンまたはアルケンのハロゲン化物またはシアン化物(特に、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、シアノビニル、ジシアノビニル、トリシアノビニル)
d) ハロゲン化アリールラジカルまたはシアン化アリールラジカル(特に、ペンタフルオロフェニル)
e) ボリルラジカル(特に、ジアルキルボリル、アルキル基上に置換基を有しているジアルキルボリル、ジアリールボリルまたはアリール基上に置換基を有しているジアリールボリル)
さらに、本発明は、第1の発光層の蛍光発光体は、下記のa)〜d)のクラスのうちのいずれか1つのクラスの電子供与性置換基を有していることが好ましい;
a) メチル、エチル、tert-ブチル、イソプロピル
b) アルコキシラジカル
c) アリール基が置換されている、もしくは置換されていないアリールラジカル(特に、トリル、メシチル)
d) アミノ基(特に、NH2、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、アリール基上に置換基を有しているジアリールアミン)
さらに、本発明は、第1の発光層の蛍光発光体は、下記のa)〜q)のクラスのうちのいずれか1つのクラスの電子受容特性を有する官能基を有していることが好ましい;
a) オキサジアゾール
b) トリアゾール
c) ベンゾチアジアゾール
d) ベンゾイミダゾール及びN−アリール−ベンゾイミダゾール
e) ビピリミジン
f) シアノビニル
g) キノリン
h) キノキサリン
i) トリアリールボリル
j) シロールユニット(特に、シラシクロペンタジエン誘導基)
k) シクロオクタテトラエン
l) キノイドチオフェン誘導体を含む、キノイド体及びケトン
m) ピラゾリン
n) ペンタアリールシクロペンタジエン
o) ベンゾチアジアゾール
p) 電子求引性置換基を有するオリゴ−パラ−フェニル
q) フルオレン、及び、電子求引性置換基を有するスピロビフルオレン
さらに、本発明は、第1の発光層の蛍光発光体は、下記のa)〜j)のクラスのうちのいずれか1つのクラスの電子受容特性を有する官能基を有していることが好ましい;
a) トリアリールアミン
b) オリゴ−パラ−フェニルまたはオリゴ−メタ−フェニル
c) カルバゾール
d) フルオレンまたはスピロビフルオレン
e) フェニレン−ビニレンユニット
f) ナフタレン
g) アントラセン
h) ペリレン
i) ピレン
j) チオフェン
〔発明を実施するための最良の形態〕
本発明に係る一実施形態ついて、図に基づいてさらに詳細に説明すると以下の通りである。
【0029】
図1は、有機発光ダイオードの層構造を示す概略図である。
【0030】
図2は、別の有機発光ダイオードの層構造を示す概略図である。
【0031】
図3は、第1の実施形態による標的方法によって形成された主な再結合領域の有機発光ダイオードの層構造を示す概略図である。
【0032】
図4は、第2の実施形態による標的方法によって形成された主な再結合領域の有機発光ダイオードからなる層の配列を示す概略図である。
【0033】
図5は、第3の実施形態による標的方法によって形成された主な再結合領域の有機発光ダイオードからなる層の配列を示す概略図である。
【0034】
図6は、CIE色度図である。
【0035】
図7は、青色スペクトル範囲において光を発する発光素材のモデルスペクトルを示す図である。
【0036】
図8は、緑および赤色スペクトル範囲において異なる光の放射から白色光を生み出すときに必要な青色放射光の比較に関する図である。
【0037】
図9は、有機基準発光ダイオードに関するエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図である。
【0038】
図10は、本発明に係る第1の有機発光ダイオードのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図である。
【0039】
図11は、本発明に係る第2の有機発光ダイオードのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図である。
【0040】
図12は、発光素材の分子の構造式を示す図である。
【0041】
図1は、有機発光ダイオード(OLED)の層構造を示す概略図である。有機発光ダイオード(OLED)は、陽極(アノード)1および陰極(カソード)2と名づけられた2つの電極と、これらの電極間に、正孔輸送層3を備える有機領域を有している。該有機領域は、アクセプタ素材をドープした有機物質と、発光層EML1及び別の発光層EML2を有する有機発光領域4と、さらにドナー素材をドープした有機物質でできている電子輸送層5とから構成されている。発光層EML1は、主に青色または青緑色スペクトル範囲において光を発する蛍光性の発光体を有している。異なる実施形態として、発光層EML1は、主に青色または青緑色スペクトル範囲において発光する、複数の蛍光性の発光体を有していても良い。さらに発光層EML2は、主に青色以外のスペクトル範囲において発光する、1つまたは複数の燐光性の発光体を有している。
【0042】
図2は、さらに別のOLEDの層構造を示す概略図である。図2において、図1と同一の構成については、同じ符号を用いている。図2のOLEDでは、有機領域に、正孔遮断層6および電子遮断層7が設けられている。
【0043】
OLED内では、動作中に下記の工程が進行する。すなわち、
− 正孔の電荷担体が、陽極1を通って正孔輸送層3へ注入され、さらに正孔輸送層3を通って移動し、適切な場合は電子遮断層7を通って、発光有機領域4に達し;
− 電子の電荷担体が、陰極2を通って電子輸送層5へ注入され、さらに電子輸送層5を通って移動し、適切な場合は正孔遮断層6を通って、発光有機領域4に達し;および、
− 有機発光領域4において、正孔と電子が互いに接触し、三重項および一重項状態を形成する、励起子と呼ばれる励起された状態を形成するために再結合する;
という工程が進行する。
【0044】
これら輸送および伝導特性に関して、使用された有機素材が電子伝導/電子輸送が可能な素材であるなら、正孔伝導/正孔輸送も可能である。また、正孔伝導/正孔輸送が可能な有機素材であるなら、電子伝導/電子輸送も可能である。これは、前記2つの性質がお互い排他的でないからである。
【0045】
更なる構成として、たとえば、発光層EML1内における、青色または青緑色スペクトル範囲の光を発する発光体に関して、その発光体の一重項状態と三重項状態との間のエネルギー的隔たりが可能な限り小さいならば、発熱エネルギーを、別の発光層EML2における、青色以外のスペクトル範囲の光を発する発光体の三重項状態に移行することができる。下記の設計原理は、青色または青緑色スペクトル範囲の光を発する発光体を採用した場合に好ましいものである。すなわち、
1) 発光素材は、有機金属化合物もしくは複合化合物であり、励起の場合には、電子が金属上に主に局在している軌道から、有機リガンド上に主に局在している軌道へ移行されることを意味する“金属―リガンド−電荷−移送”性質(MLCT)を示す最も低い励起状態である。
2) 発光素材は、プッシュプル置換体である。プッシュプル置換体とは、電子供与性の特性を有する少なくとも1つの置換基と、電子求引性の特性を有する少なくとももう1つの置換基とが、HOMOおよびLUMO波動関数(HOMOは“分子軌道を最も占める”;LUMOは“分子軌道を最も低い非占有の”)のπ電子が非局在化した基本骨格に付随していることを意味する。そのため、HOMO波動関数の中心軌跡が電子供与性置換基に移され、LUMO波動関数の中心軌跡が電子求引性置換基に移され、HOMOとLUMO波動関数の空間的重複が、上記のように、置換基のない分子や、電子求引性のみの置換基または電子供与性のみの置換基を伴う分子と比べると減少する。
3) 発光素材のπ電子システムは、大部分が電子受容体特性を示してLUMO波動関数が同様に凝縮される官能基、および、電子供与特性を示してHOMO波動関数がその結果凝縮される他の官能基におよぶ。
【0046】
図12は、上述の設計基準が考慮に入れられる、青色または青緑色スペクトル範囲の光を発する発光体の分子の構造式を示す図である。
【0047】
図1および図2のOLEDは、三重項励起子と一重項励起子の双方がEML1発光層内に形成されることを受けて、電荷担体の再結合が主に発光層EML1に影響するという事実に特徴付けられる。主な再結合領域の位置は、目標とする方法に影響される。主な再結合領域とは、陽極1と陰極2間の有機層領域内の、少なくとも約50%の電荷担体が再結合している空間領域を指す。
【0048】
目標とされた方法の主な再結合領域に影響を与える一実施形態は、以下の図3〜図5を参考にして記載される。尚、図3〜図5では、図1および図2に示した部材と同一の部材には同一の符号を用いている。
【0049】
図3によるOLEDにおいては、主な再結合領域の位置が、別の発光層EML2が正孔を好ましくは電荷担体として輸送するという事実に影響を受ける。すなわち、別の発光層EML2は、正孔を伝導/輸送するように形成され、且つ、電子遮断層7に直接隣接するように配置される。なお、もし電子遮断層7が別の実施形態(図示しない)に存在しないならば、正孔輸送層3に直接隣接するように配置される。
【0050】
この場合、蛍光性の発光体を有する発光層EML1は、正孔遮断層6に直接近接して設けられるか、もし正孔遮断層6が存在しないなら電子輸送層5に直接近接して設けられる。本実施形態では、発光層EML1もまた、正孔を輸送することが好ましい。すなわち発光層EML1は、正孔を伝導/輸送するように構成されていることが好ましい。このように構成することにより、発光層EML1と正孔遮断層6との界面近傍において、正孔が電子と接触して励起子を形成するための再結合が起こる。尚、もし正孔遮断層6が設けられていない構成であれば、発光層EML1と電子輸送層5との界面近傍において、正孔が電子と接触して励起子を形成するための再結合が起こる。
【0051】
尚、主な再結合領域が上記界面近傍に位置づけられるけれども、再結合はほぼ例外なく発光層EML1の中で起こっており、隣接している層では起こっていない。このような構造は、発光層EML1 、EML2内の深部に電子が輸送されることを防ぐことができる。発光層EML1 、EML2内の深部に電子が輸送されると、発光領域の拡大を引き起こしたり、あるいは、最悪の場合、別の発光層EML2内において電子と正孔との再結合を招いて最適な白色光の発生を妨げることになるため好ましくない。
【0052】
正孔遮断層6を有する本実施形態のとりわけ有利な点は、正孔遮断層6内における一重項励起子および三重項励起子の最小エネルギーが、発光層EML1における一重項励起子および三重項励起子の最小エネルギーよりも大きい正孔遮断層6を備えている点にある。それによって実現されるのは、発光層EML1に発生する三重項励起子が、別の発光層EML2の方向にのみ拡散できるということである。それによって、OLEDの効率は高まる。尚、もし正孔遮断層が備えられていないのなら、本発明に係る有利な点のために、この必要条件は励起子エネルギーから成り、電子輸送層に同じように適用される。
【0053】
主な再結合領域の位置を制御するための別の構成としては、図4に示すOLEDがあり、ここでは、燐光性発光体を有した別の発光層EML2が電荷担体として電子を輸送するしている。すなわち、別の発光層EML2が、電子を伝導/輸送するように構成されており、正孔遮断層6に直接隣接して配置されている。尚、もし、正孔遮断層6が存在しない場合は、別の発光層EML2が、電子輸送層5に直接隣接して配置される。
【0054】
上述の場合、蛍光性発光体を有する発光層EML1は、電子遮断層7と直接接近している。もし、電子遮断層7が存在しないなら、正孔輸送層3と直接接近している。本形態において、発光層EML1は、電荷担体のような電子を輸送することが好ましい。すなわち、発光層EML1は、電子を伝導/輸送するように構成されていることが好ましい。このように構成することにより、発光層EML1と電子遮断層7との界面近傍において、正孔が電子と接触して励起子を形成するための再結合が起こる。尚、もし電子遮断層7が設けられていない構成であれば、発光層EML1と正孔輸送層3との界面近傍において、電子が正孔と接触して励起子を形成するための再結合が起こる。主な再結合領域が上記界面近傍に位置づけられるけれども、再結合はほぼ例外なく、発光層EML1で起こり、隣接している層では起こらない。このような構造は、発光層EML1 、EML2内の深部に正孔が輸送されることを防ぐことができる。発光層EML1 、EML2内の深部に正孔が輸送されると、発光領域の拡大を引き起こしたり、あるいは、最悪の場合、別の発光層EML2内において電子と正孔との再結合を招いて最適な白色光の発生を妨げることになるため好ましくない。
【0055】
電子遮断層7を有する本実施形態に係る有利な点は、電子遮断層7内における一重項励起子および三重項励起子の最小エネルギーが、発光層EML1における一重項励起子および三重項励起子の最小エネルギーよりも大きい電子遮断層7を備えている点にある。それによって実現されるのは、発光層EML1において発生する三重項励起子が別の発光層EML2の方向にのみ拡散できることである。それによって、OLEDの効率は高まる。尚、もし電子遮断層が備えられていないのなら、本発明に係る有利な点のため、この必要条件は、正孔輸送層に同じように適用する励起子エネルギーから成る。
【0056】
模範的な実施形態を説明するために、蛍光性発光体を有する発光層EML1の厚さは、たとえば、Alqの約20nmの領域にある一重項励起子の拡散距離よりも長くなるように選択されるが、たとえばAlq(cf.A.Hunze,Organische Leuchtdioden auf Basis von dotierten Emissionsschichten[Organic light-emitting diodes based on doped emission layers],Shaker Verlag,2003)の約140nmの領域にある三重項励起子の拡散距離よりも、短くなるように選択される。これら拡散距離は当然その他の素材によって異なる。一般的に、一重項の拡散距離は約5nm〜約30nmの間と仮定できる。それゆえ、本実施形態に係る有利な点は、使用される蛍光性の発光体層に基づいて、約7nm〜約35nm間の発光層EML1の厚さを備える。
【0057】
一方、この発光層EML1は、抵抗損失が大きくなってさらには三重項励起子のなかには燐光性の発光体を有する別の発光体層EML2に広がるものも増えてくるので、厚すぎないようにしなくてはならない。それゆえ、蛍光性の発光体を有する発光層EML1は、好ましくは約100nmより薄く、さらに好ましくは約60nmより薄いものがよい。
【0058】
図5は、主な再結合領域の位置についてさらに影響を与える可能性のあるOLEDを示す図である。この構成によれば、燐光性の発光体を有する別の発光層EML2と、1つまたは複数の燐光性の発光体を有する更に別の発光層EML3との間に、発光層EML1が、配置されている。ここで、発光層EML2は好ましくは電子を輸送し、また更に別の発光層EML3は好ましくは正孔を輸送する。適切な場合、2つの発光層EML2とEML3は異なる波長の範囲で光を発することができる。この場合、発光層EML1は、同時二極性の輸送作用を有することが必要である。すなわち、主な再結合領域が、発光層EML2およびEML3の2つのうち1つと、発光層EML1との界面に形成されず、むしろ発光層EML1において形成されるように、発光層EML1が電子輸送および正孔輸送の双方の特性を有することである。本実施形態において、発光層EML1の厚さは、一重項励起子の約2倍の拡散距離より大きくなるように選択されるが、三重項励起子の拡散距離の約2倍よりも小さくなるようにする。有利な実施形態では、発光層EML1の厚さが約15nm〜約100nmになるよう設けられている。
【0059】
本実施形態に係るカラースペクトルに関する効率を最適化するための算定は、下記に説明される。
【0060】
複数の色の発光体によって白色発光を得るために、異なる色の成分の割合が好ましいバランスになる必要がある。それは、互いに準じた個々の成分の比率が、適応する関係にある固有のものでなければならないという意味である。白色光の特性の説明は、1931のCIE色度図に表されるCIE色座標xおよびyによって与えられる。上述の場合、白の色調の最適条件は、色座標x=0.33およびy=0.33によって与えられる。白色OLEDは、色座標が、図6において図示したように、CIE色度図の白色領域内にある発光するOLEDであると、ここでは理解される。“Colour Rendering Index”(CRI)は、自然光スペクトルのうち、いくつの成分が、白色光源に含まれるかという目安を与える。CRIの値が65以上であるということは、白色がすでに非常に“濃い”白であることを意味する。
【0061】
0.33/0.33の最適色座標の高い効率性を得るためには、理論上、上述の場合において内部量子効率が最大限得られるので、青/青緑光の割合が、OLEDによる全発光のできるだけ25%になるように、個々の発光素材を用いることが好ましい。これらの考察に基づいて、算定は、本発明によって得られる量子効率を考慮して実施された。
【0062】
算定は、基礎として、赤色、緑色、および青色の異なる発光体スペクトルを用いる。最先端の技術(SOA)に相当する既知の、燐光を発する発光体のエレクトロルミネッセンススペクトルは、緑色および赤色に用いられるのに対し、最先端の技術に相当する蛍光性の発光体のエレクトロルミネッセンススペクトルをさらに人工的に発生させたモデルスペクトルに加える。すなわちそれは、図7において示され、青/青緑スペクトル範囲において発光する蛍光性の発光体にも用いられたモデルスペクトルである。
【0063】
これらスペクトルおよび、それらから直ちに導き出すことが可能な光度放射当量は、個々の発光体がCIE色座標0.33/0.33を有する基準点において、安定した白色発光体を得ることが要求されるのに基づいて、どれほどの割合の光を発生するのかを算定する基礎として用いられた。上述の算定は、RGB表示素子のシミュレーションソフトウェアによって実施された。前記ソフトウェアは、1931CIE色度図内の規定のポイントになるように混ぜる色を得るために、個々のピクセルによって、必要とされる光の割合を測定することを可能にする。算定は、青色、緑色、および赤色発光体によって、白色光を発生するために実施された。これらの検討は、2つの発光体を有する発光体システムでの使用に適用可能となる。たとえば、他の色が混ざっていない発光体の色座標と、またその電流効率が識別されているなら、使用されたソフトウェアは、色の個々のピクセルに必要とされる、電流の算定を可能にする。以下の仮説は算定プログラムを使用することによって作られた。たとえば、同一の発光メカニズムが、たとえば2つの燐光性三重項発光体からなるものを基礎として用いるなら、すべての発光体の量子効率は、同一のものとみなされる。さらに、蛍光性の一重項発光体の量子効率は、三重項発光体の量子効率の25%であると仮定された。
【0064】
使用されたソフトウェアに、発光体の電流効率の値を入力するために、個々の発光体の光度放射当量に比例した値が用いられた。一重項発光体の場合、光度放射当量の25%に比例する値は、三重項発光体と比べて減少した量子効率を考慮するために使用された。
【0065】
しかしながら本発明の場合、青色スペクトル範囲の光を発する一重項発光体の場合において、対応する光度放射当量の100%が算定に用いられたので、前記位置は、上述した仮説から逸れる。すべての励起子が蛍光性発光体の発光層EML1で形成され、一重項励起子が光としてそこで発光する場合を示すので、この仮説は立てられる。対照的に、三重項励起子は、光を放って分解する場所である三重項発光体を有する発光層EML2/EML3内に拡散する。上述の事象によって、たとえば白色発光の発生に必要とされる光の発光の25%が、蛍光を発する青色発光体によって発光され、75%が三重項発光体によって発光されるなら、上述のメカニズムを利用する、有機発光ダイオードにおける白色発光システムは、理論上、量子効率の最大100%を達成できる。
【0066】
算定の第一の目的は、たとえば実際の青色発光スペクトルが基礎として用いられるなら、どのように、優れた均衡および、白色を発光する高い効率は、本発明に基づいて実現されるのかを示すことにあった。これらの算定は、青色モデルスペクトルおよび、最先端の技術に相当する、青色蛍光性発光体のエレクトロルミネッセンススペクトルによって実施された。(cf.図8)
青色モデルスペクトルに基づく白色発光の場合、ここでは蛍光性の青色発光体による発光の28%が必要であるのに対し、既知の青色エレクトロルミネッセンススペクトルを利用する場合、蛍光性の青色発光体によって、全発光量の37%が生み出されることになる。三重項発光体のみに基づく完全白色光の発光の場合における、100%の効率性と比較して、検討されたモデルの理想的な効率性がモデルスペクトルの場合において89%であることを上述より明らかにする一方、前記値は、既知の青色エレクトロルミネッセンスの場合において、68%に減少する。
【0067】
これらの値は、主に蛍光性の一重項発光体、または青色一重項発光体と赤色ならびに緑色三重項発光体に基づく、白色光OLEDのその他の手法と比較することが、今や可能である。上述した比較を、表1に示す。
【0068】
【表1】

表1の値では、本発明に係る白色光発生の理論上の限界が、少なくとも90%であることを証明する。まして、より好ましい青色スペクトルの場合において、適切な場合、三重項発光体において他の色の混ざっていない光を発生する場合において実現される、100%の限界まで迫って拡大してもよい。
【0069】
その結果、65%以上また、90%以上まで改善された実施形態の蛍光性の青色発光体を用いる場合、本発明は、エレクトロルミネッセンスによって白色光発生の内部量子効率を上げることを可能にする。蛍光性の青色発光体と、燐光性の緑および赤色発光体における従来のOLEDを比較し、また、他の色の混ざっていない蛍光性の白色OLEDとも比較し、利用できる励起子の大幅な上昇を意味する。
【0070】
本発明を更に説明するために、OLEDの具体的な実施形態について以下に説明する。
【0071】
まずは、下記の層構造を備えた比較構成としての標準OLEDが作られた。
1) 陽極:インジウムスズ酸化物(ITO)
2) p-ドープ正孔輸送層:80nm, テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4-TCNQ)でドープされた4,4´,4´´-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(星型TDATA)
3) 正孔側の仲介層:10nm N,N'-ビス(3−メチルフェニル)N,N'-ビス(フェニル)ベンジジン(TPD)
4) 青色発光層:20nmα-NPD
5) 電子側の仲介層:10nm バソフェナントレン(Bphen)
6) n-ドープ電子輸送層:30nm CsでドープされたBphen
7) 陰極:100nmアルミニウム
このpin-OLEDは、図9によれば、最大時440nmを有する青色発光を示す。サンプルは、1.8cd/Aの電力効率および10,000cd/m2の輝度で1.5%の量子効率を有する。
【0072】
本発明に係るOLEDの第一の実施形態は、以下の層構造を備える。
【0073】
1)陽極:インジウムスズ酸化物(ITO)
2)p-ドープ正孔輸送層:80nm, テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4-TCNQ)でドープされた4,4´,4´´-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(星型TDATA)
3)正孔側の仲介層:10nm N,N'-ビス(3−メチルフェニル)N,N'-ビス(フェニル)ベンジジン(TPD)
4)オレンジ−赤色光発光層:10nm イリジウム(III)ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)(RE076、ADS)でドープされた、ビス[N-(1ナフチル)-N-フェニル]ベンジジン(α−NPD)
5)青色光発光層:20nm α-NPD
6)電子面輸送層:10nm バソフェナントレン(Bphen)
7)n-doped 電子輸送層:30nm CsでドープされたBphen
8)陰極:100nmアルミニウム
このOLEDは、6Vの電圧につき10,000cd/m2以上の輝度を示す白色pin-OLEDである。エレクトロルミネッセンススペクトルは、図10に示すように、450nmおよび610nmの2つのピークがある。CIE色座標はx=0.33とy=0.22である。サンプルは5.7cd/Aの電流効率と、10,000cd/mの輝度において、4.2%の量子効率を有する。前記OLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルの検討上、α−NPDの発光および、オレンジ−赤色発光体RE076の発光は全く明らかである。図9はα−NPDの他の色の混ざっていない発光スペクトルを示す。
【0074】
Bphen(HOMO〜−6.4eV.LUMO -3.0eV,HE et al.,Appl.Phys.Lett.85(17),3911(2004))および、α-NPD (HOMO〜−5.7eV.LUMO-2.6eV,Baldo et al.,Appl.Phys.Lett.75(1), 4(1999))の縮小範囲での活動的な場所によって、正孔および電子の前記再結合構造は前記縮小範囲において必然的に影響される。
【0075】
それゆえ、当初はα-NPDの青色一重項発光のみが予測される。しかしながら、実際は、多数の赤色発光がさらに同様に明らかにされる。その上さらに、サンプルは、燐光性の発光体を有する発光層のないサンプルより、著しく高い電流および量子効率を示し、それは、赤色三重項発光体によるBphen/α-NPD界面で形成される三重項励起子の利用効率による前記範囲のみについて説明されることができる。
【0076】
本発明に係るOLEDの第二の実施形態は以下の層構造を備える。
【0077】
1)陽極:インジウムスズ酸化物(ITO)
2)p-ドープ正孔輸送層:60nm, テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4-TCNQ)でドープされた4,4´,4´´-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(星型TDATA)
3)正孔側仲介層:10nm 2,2´,7,7´テトラキス(N,N-ジフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(spiro-TAD)
4)オレンジ−赤色光発光層:10nmイリジウム(III)ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)(RE076、ADS)でドープされた、ビス[N-(1ナフチル)-N-フェニル]ベンジジン(α−NPD)
5)青色光発光層:30nm α-NPD
6)緑色光発光層:fac-トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)でドープされた1,3,5-トリ(フェニル−2−ベンゾミダゾール)ベンジン(TPBI)
7)電子側仲介層:10nm バソフェナントレン(Bphen)
8)n-doped 電子輸送層:30nm CsでドープされたBphen
9)陰極:100nmアルミニウム
このOLEDは、図11によれば、白色pin-OLEDであり、0.42/0.44の色座標に発光を示す。サンプルは4.3Vの作用電圧、および2000cd/mの輝度で11cd/Aの電流効率を有する。前記構造においてもまた、α-NPDが正孔輸送体(cf.Kido et al.,App.Phys.Lett.73(20),2866(1998))なので、緑色光の発光体を有する発光層においても部分的におもにα-NPD層おける電子と励起子の再結合する。α-NPDが青色を放射するために分解される間、そこで生み出された三重項励起子は、より長い波長を有する光の発光とともに部分的に放射し分解する場所である、隣接した発光層(オレンジ−赤および緑)に拡散する。
【0078】
上述の解説、請求項、および図によって開示される本発明に係る機構は、あらゆる実施形態における本発明の実現化のため、個別に、またはいかなる望ましい組み合わせの双方ともに重要となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】有機発光ダイオードの層構造を示す概略図である。
【図2】別の有機発光ダイオードの層構造を示す概略図である。
【図3】第1の実施形態による標的方法によって形成された主な再結合領域の有機発光ダイオードの層構造を示す概略図である。
【図4】第2の実施形態による標的方法によって形成された主な再結合領域の有機発光ダイオードからなる層の配列を示す概略図である。
【図5】第3の実施形態による標的方法によって形成された主な再結合領域の有機発光ダイオードからなる層の配列を示す概略図である。
【図6】CIE色度図である。
【図7】青色スペクトル範囲において光を発する発光素材のモデルスペクトルを示す図である。
【図8】緑および赤色スペクトル範囲において異なる光の放射から白色光を生み出すときに必要な青色放射光の比較に関する図である。
【図9】有機基準発光ダイオードに関するエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図10】本発明に係る第1の有機発光ダイオードのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図11】本発明に係る第2の有機発光ダイオードのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図12】発光素材の分子の構造式を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と対極とを有しており、且つ、発光有機領域(EM)を有する有機領域を該電極と該対極との間に有している発光素子であって、
上記発光有機領域(EM)は、第1の発光層(EML1)と第2の発光層(EML2)とを備えており、且つ、上記電極と上記対極とに電界をかけることによって、可視スペクトル域の範囲内、任意で白色まで、の複数の色の光を発するように構成されており、
上記第1の発光層(EML1)には、青色または青緑色のスペクトル域の光を主に発する蛍光発光体が設けられており、
上記第2の発光層(EML2)には、非青色のスペクトル域の光を主に発する1つまたは複数の燐光発光体が設けられており、
上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体における、三重項状態のエネルギー準位に相当する三重項エネルギーは、上記第2の発光層(EML2)の上記燐光発光体における、三重項状態のエネルギー準位に相当する三重項エネルギーよりも大きく、
上記発光有機領域は、可視スペクトル域の範囲内で生成された光の少なくとも5%を、上記第1の発光層(EML1)に設けられた一重項状態の上記蛍光発光体からの蛍光として、放つように構成されており、
上記第1の発光層(EML1)と上記第2の発光層(EML2)とは、互いに隣接して配置されており、
上記第1の発光層(EML1)の厚さは、一重項励起子の拡散距離よりも長い厚さであって、且つ、三重項励起子の拡散距離よりも短い厚さであることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
上記発光有機領域は、可視スペクトル域の範囲内で生成された光の少なくとも10%を、上記第1の発光層(EML1)に設けられた一重項状態の上記蛍光発光体の蛍光として放つように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
上記発光有機領域で生成された光は、可視スペクトル域の範囲内の少なくとも15%が、上記第1の発光層(EML1)に設けられた一重項状態の上記蛍光発光体の蛍光として放つように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
上記発光有機領域で生成された光は、可視スペクトル域の範囲内の少なくとも20%が、上記第1の発光層(EML1)に設けられた一重項状態の上記蛍光発光体の蛍光として放つように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
上記発光有機領域で生成された光は、可視スペクトル域の範囲内の少なくとも25%が、上記第1の発光層(EML1)に設けられた一重項状態の上記蛍光発光体の蛍光として放つように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
上記第1の発光層(EML1)及び上記第2の発光層(EML2)は、正孔を移動させ、
陰極である上記電極に対向する上記第1の発光層(EML1)の表面と、上記第1の発光層(EML1)に対向する該陰極の表面との間の距離が、上記陰極に対向する上記第2の発光層(EML2)の表面と、上記第2の発光層(EML2)に対向する該陰極の表面との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項7】
上記第1の発光層(EML1)及び上記第2の発光層(EML2)は、電子を移動させ、
陽極である上記対極に対向する上記第1の発光層(EML1)の表面と、上記第1の発光層(EML1)に対向する該陽極の表面との間の距離が、上記陽極に対向する上記第2の発光層(EML2)の表面と、上記第2の発光層(EML2)に対向する上記陽極の表面との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項8】
上記発光有機領域(EM)は、青色帯域以外の可視スペクトル域の範囲内の光を主に発する1つまたは複数の燐光発光体が設けられた第3の発光層(EML3)を、更に有しており、
上記第1の発光層(EML1)は、上記第2の発光層(EML2)と上記第3の発光層(EML3)との間に配置されており、
上記第2の発光層(EML2)は、電子を移動させ、上記陰極に対向する上記第2の発光層(EML2)の表面と、上記第2の発光層(EML2)に対向する該陰極の表面との間の距離は、上記陰極に対向する上記第1の発光層(EML1)の表面と、上記第1の発光層(EML1)に対向する該陰極の表面との間の距離よりも短くなるように、且つ、上記陰極に対向する上記第3の発光層(EML3)の表面と、上記第3の発光層(EML3)に対向する該陰極の表面との間の距離よりも短くなるよう構成されており、
上記第3の発光層(EML3)は、正孔を移動させ、上記陽極に対向する上記第3の発光層(EML3)の表面と、上記第3の発光層(EML3)に対向する該陽極の表面との間の距離は、上記陽極に対向する上記第1の発光層(EML1)の表面と、上記第1の発光層(EML1)に対向する該陽極の表面との間の距離よりも短くなるように、且つ、上記陽極に対向する上記第2の発光層(EML2)の表面と、上記第2の発光層(EML2)に対向する該陽極の表面との間の距離よりも短くなるように構成されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項9】
上記第1の発光層(EML1)と上記陰極との間に、正孔遮断層が設けられており、
上記正孔遮断層は、電子を移動させるように構成されており、該正孔遮断層の有機材料は、上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体の最高被占軌道レベルよりも少なくとも約0.3eV低い最高被占軌道レベルを有していることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項10】
上記第1の発光層(EML1)と上記陽極との間に、電子遮断層が設けられており、
上記電子遮断層は、正孔を移動させるように構成されており、該電子遮断層の有機材料は、上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体の最低空軌道レベルよりも少なくとも約0.3eV高い最低空軌道レベルを有していることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,7の何れか1項に記載の発光素子。
【請求項11】
上記正孔遮断層または上記電子遮断層の、一重項励起子または三重項励起子の最小エネルギーは、上記第1の発光層(EML1)の一重項励起子または三重項励起子の最小エネルギーよりも大きいことを特徴とする請求項9または10に記載の発光素子。
【請求項12】
上記第1の発光層(EML1)、上記第2の発光層(EML2)、上記第3の発光層(EML3)の少なくとも1つは、多層構造を形成していることを特徴とする請求項1から11までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項13】
上記第1の発光層(EML1)は、約5nm〜約50nmの厚さを有していることを特徴とする請求項1から12までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項14】
上記発光有機領域(EM)は白色光を発するように構成されており、
上記第2の発光層(EML2)の上記1つまたは複数の燐光発光体は、赤色、橙色または黄色のスペクトル域の範囲内の光を発するように構成されていることを特徴とする請求項1から13までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項15】
上記発光有機領域(EM)は白色光を発するように構成されており、
上記第2の発光層(EML2)の上記1つまたは複数の燐光発光体は、赤色、橙色または緑色のスペクトル域の範囲内の光を発するように構成されていることを特徴とする請求項1から13までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項16】
上記発光有機領域(EM)は白色光を発するように構成されており、
上記第3の発光層(EML3)の上記1つまたは複数の燐光発光体は、赤色、橙色または黄色のスペクトル域の範囲内の光を発するように構成されていることを特徴とする請求項1から15までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項17】
上記発光有機領域(EM)は白色光を発するように構成されており、
上記第3の発光層(EML3)の上記1つまたは複数の燐光発光体は、赤色、橙色または緑色のスペクトル域の範囲内の光を発するように構成されていることを特徴とする請求項1から15までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項18】
上記発光有機領域(EM)と上記電極との間、及び/または上記発光有機領域(EM)と上記対極との間に、ドープ有機層を設けていることを特徴とする請求項1から17までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項19】
上記ドープ有機層は、アセプター材料でpドープされた層か、ドナー材料でnドープされた層であることを特徴とする請求項18に記載の発光素子。
【請求項20】
上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体は、40未満の序数の金属元素を有する有機金属化合物または複合化合物であることを特徴とする請求項1から19までの何れか1項に記載の発光素子。
【請求項21】
上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体は、下記のa)〜e)のクラスのうちのいずれか1つのクラスの電子求引性置換基を有していることを特徴とする請求項1から19までの何れか1項に記載の発光素子。
a) フッ素、塩素、ヨウ素、臭素といったハロゲン族元素
b) CN
c) アルカンまたはアルケンのハロゲン化物またはシアン化物(特に、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、シアノビニル、ジシアノビニル、トリシアノビニル)
d) ハロゲン化アリールラジカルまたはシアン化アリールラジカル(特に、ペンタフルオロフェニル)
e) ボリルラジカル(特に、ジアルキルボリル、アルキル基上に置換基を有しているジアルキルボリル、ジアリールボリルまたはアリール基上に置換基を有しているジアリールボリル)
【請求項22】
上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体は、下記のa)〜d)のクラスのうちのいずれか1つのクラスの電子供与性置換基を有していることを特徴とする請求項1から19までの何れか1項に記載の発光素子。
a) メチル、エチル、tert-ブチル、イソプロピル
b) アルコキシラジカル
c) アリール基が置換されている、もしくは置換されていないアリールラジカル(特に、トリル、メシチル)
d) アミノ基(特に、NH2、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、アリール基上に置換基を有しているジアリールアミン)
【請求項23】
上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体は、下記のa)〜q)のクラスのうちのいずれか1つのクラスの電子受容特性を有する官能基を有していることを特徴とする請求項1から19までの何れか1項に記載の発光素子。
a) オキサジアゾール
b) トリアゾール
c) ベンゾチアジアゾール
d) ベンゾイミダゾール及びN−アリール−ベンゾイミダゾール
e) ビピリミジン
f) シアノビニル
g) キノリン
h) キノキサリン
i) トリアリールボリル
j) シロールユニット(特に、シラシクロペンタジエン誘導基)
k) シクロオクタテトラエン
l) キノイドチオフェン誘導体を含む、キノイド体及びケトン
m) ピラゾリン
n) ペンタアリールシクロペンタジエン
o) ベンゾチアジアゾール
p) 電子求引性置換基を有するオリゴ−パラ−フェニル
q) フルオレン、及び、電子求引性置換基を有するスピロビフルオレン
【請求項24】
上記第1の発光層(EML1)の上記蛍光発光体は、下記のa)〜j)のクラスのうちのいずれか1つのクラスの電子供与性を有する官能基を有していることを特徴とする請求項1から19までの何れか1項に記載の発光素子。
a) トリアリールアミン
b) オリゴ−パラ−フェニルまたはオリゴ−メタ−フェニル
c) カルバゾール
d) フルオレンまたはスピロビフルオレン
e) フェニレン−ビニレンユニット
f) ナフタレン
g) アントラセン
h) ペリレン
i) ピレン
j) チオフェン

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−89513(P2012−89513A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279035(P2011−279035)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【分割の表示】特願2008−501148(P2008−501148)の分割
【原出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(503180100)ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフト (47)
【Fターム(参考)】