説明

発光表示パネルの駆動装置

【課題】 モニタ用の素子と表示パネルを構成するEL素子との経時変化の進行度合いを、ほぼ一致させるような制御形態を備えることで、より電力の利用効率を向上させることができる発光表示パネルの駆動装置を提供すること。
【解決手段】 発光表示パネル10には、発光表示用画素10aがマトリクス状に多数配列されており、表示パネル上のEL素子E1 の順方向電圧に相当する電圧を取り出すことができるモニタ素子Exが具備されている。発光表示パネル10における消費電流を検出する消費電流検出部14からの信号により、駆動率制御部15はモニタ素子Exに直列接続されたトランジスタTr3をオン・オフ制御し、定電流回路からの電流を制御する。これにより、モニタ素子Exと表示パネルに配列されたEL素子E1 との経時変化の進行度合いを、ほぼ一致させるように制御することができ、各画素10aにおける発光駆動用トランジスタTr2において発生する電力損失を極力抑えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の自発光素子を表示画素としてマトリクス状に配列した発光表示パネルの駆動装置に関し、特に電源部における電力の利用効率を向上させることで、表示用画素を効率良く点灯駆動することができるようにした発光表示パネルの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯型情報端末機(PDA)などの普及によって、高精細な画像表示機能を有し、薄型かつ低消費電力を実現することができる表示パネルの需要が増大しており、従来より液晶表示パネルがその要求を満たす表示パネルとして多くの製品に採用されてきた。一方、昨今においては自発光型表示素子であるという特質を生かした有機EL素子を用いた表示パネルが実用化され、これが従来の液晶表示パネルに代わる次世代の表示パネルとして注目されている。これは素子の発光層に、良好な発光特性を期待することができる有機化合物を使用することによって、実用に耐え得る高効率化および長寿命化が進んだことも背景にある。
【0003】
前記した有機EL素子は、基本的にはガラス等の透明基板上に、例えばITOによる透明電極と有機物質からなる発光機能層と金属電極とが順次積層されることで構成されている。そして、前記発光機能層は、有機発光層の単一層、あるいは有機正孔輸送層と有機発光層からなる二層構造、または有機正孔輸送層と有機発光層および有機電子輸送層からなる三層構造、さらにこれらの適切な層間に電子もしくは正孔の注入層を挿入した多層構造になされる場合もある。
【0004】
前記した有機EL素子は、電気的には図1のような等価回路で表すことができる。すなわち、有機EL素子は、発光エレメントとしてのダイオード成分Eと、このダイオード成分Eに並列に結合する寄生容量成分Cp とによる構成に置き換えることができ、有機EL素子は容量性の発光素子であると考えられている。この有機EL素子は、発光駆動電圧が印加されると、先ず、当該素子の電気容量に相当する電荷が電極に変位電流として流れ込み蓄積される。続いて当該素子固有の一定の電圧(発光閾値電圧=Vth)を越えると、電極(ダイオード成分Eのアノード側)から発光層を構成する有機層に電流が流れ初め、この電流に比例した強度で発光すると考えることができる。
【0005】
図2は、このような有機EL素子の発光静特性を示したものである。これによれば、有機EL素子は図2(a)に示すように、駆動電流Iにほぼ比例した輝度Lで発光し、図2(b)に実線で示すように駆動電圧Vが発光閾値電圧Vth以上の場合において急激に電流Iが流れて発光する。
【0006】
換言すれば、駆動電圧が発光閾値電圧Vth以下の場合には、EL素子には電流は殆ど流れず発光しない。したがって、EL素子の輝度特性は図2(c)に実線で示すように前記閾値電圧Vthより大なる発光可能領域においては、それに印加される電圧Vの値が大きくなるほど、その発光輝度Lが大きくなる特性を有している。
【0007】
一方、前記した有機EL素子は、長期の使用によって素子の物性が変化し、順方向電圧Vf が大きくなることが知られている。このために、有機EL素子は図2(b)に示したように実使用時間によって、V−I特性が矢印に示した方向(破線で示した特性)に変化し、したがって、輝度特性も低下することになる。また、前記した有機EL素子は、素子の成膜時における例えば蒸着のばらつきによっても初期輝度にばらつきが発生するという問題も抱えており、これにより、入力映像信号に忠実な輝度階調を表現することが困難になる。
【0008】
さらに、有機EL素子の輝度特性は、温度によって概ね図2(c)に破線で示すように変化することも知られている。すなわちEL素子は、前記した発光閾値電圧より大なる発光可能領域においては、それに印加される電圧Vの値が大きくなるほどその発光輝度Lが大きくなる特性を有するが、高温になるほど発光閾値電圧が小さくなる。したがってEL素子は、高温になるほど小さい印加電圧で発光可能な状態となり、同じ発光可能な印加電圧を与えても、高温時は明るく低温時は暗いといった輝度の温度依存性を有している。
【0009】
一方、前記した有機EL素子は、電流・輝度特性が温度変化に対して安定しているのに対して、電圧・輝度特性が温度変化に対して不安定であること、また過電流により素子を劣化させるのを防止することなどの理由により、一般的には定電流駆動がなされる。この場合、定電流回路に供給されるたとえばDC/DCコンバータ等による電源部からもたらされる駆動電圧(出力電圧ともいう)VO としては、次のような各要素を考慮して設定せざるを得ない。
【0010】
すなわち、前記要素としては、EL素子の順方向電圧Vf 、EL素子の前記Vf のばらつき分VB 、前記Vf の経時変化分VL 、前記Vf の温度変化分VT 、定電流回路が定電流動作をするのに必要なドロップ電圧VD 等を挙げることができる。そして、これらの各要素が相乗的に作用した場合においても、前記定電流回路の定電流特性が十部に確保できるようにするために、駆動電圧VO としては、前記各要素として示した各電圧の最大値を加算した値に設定せざるを得ない。
【0011】
しかしながら、定電流回路に供給される駆動電圧VO として、前記のように各電圧の最大値を加算した電圧値が必要となるケースは、滅多に生ずるものではなく、通常状態においては定電流回路における電圧降下分として大きな電力損失を招来させている。したがって、これが発熱の要因になり有機EL素子および周辺回路部品等に対してストレスを与える結果となっている。
【0012】
そこで、表示パネルに配列されて発光表示を行なうEL素子とは別に、その順方向電圧Vf を測定するモニタ用のEL素子を具備し、モニタ用のEL素子より得られる順方向電圧Vf を利用して、前記電源部からもたらされる駆動電圧を制御することが特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された構成によると、EL素子の経時変化や環境温度の変化に対応して電源部からもたらされる駆動電圧が制御され、電源の利用効率を向上させることが期待できる。
【特許文献1】特開2003−162255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、前記した有機EL素子に代表される自発光素子を用いた表示パネルにおいては、表示内容(画像信号)によって表示パネルに配列された自発光素子の点灯率または輝度(駆動電流)が決定され、これにより前記した自発光素子の経時変化の進行度合いが概ね決定される。すなわち、明るい(輝度が高い)画像を平均的に再生する場合には、素子の平均的な経時変化の進行度合いは早くなり、また暗い(輝度が低い)画像を平均的に再生する場合には、素子の平均的な経時変化の進行度合いは遅くなる。
【0014】
しかしながら、前記した特許文献1に開示された構成によると、その順方向電圧Vf を測定するモニタ用の素子には、いわば常に一定の電流を印加するように制御され、その順方向電圧に基づいて電源部からもたらされる駆動電圧を制御するようにしている。したがって、モニタ用の素子と表示パネルを構成する自発光素子とは、使用時間の経過と共に経時変化の進行度合いが徐々に異なる状態に至る。それ故、特許文献1に開示された構成のようにモニタ用の素子により得られる順方向電圧を利用して、電源部からもたらされる駆動電圧を制御しても、電源部における電力の利用効率を最適な状態に保つことは不可能になる。
【0015】
すなわち、モニタ用の素子により得られる順方向電圧と、表示パネルを構成する自発光素子の平均的な順方向電圧とは、経時変化の進行度合いが異なるために徐々に乖離し、表示パネルを構成する自発光素子の経時変化の進行に沿った最適な駆動電圧を常に電源部から供給することは不可能になる。換言すれば、前記電源部はモニタ用の素子により得られる順方向電圧と、表示パネルを構成する自発光素子の平均的な順方向電圧との乖離を見越して、より高い電源電圧となるように初期設定せざるを得ない。このために初期段階もしくは標準状態においては、無駄な電力消費が発生するという問題を抱えることになる。
【0016】
この発明は、前記した技術的な観点に基づいてなされたものであり、前記したモニタ用の素子と表示パネルを構成する自発光素子との経時変化の進行度合いを、ほぼ一致させるような制御形態を備えることで、電源部より常に適切な駆動電圧を表示パネル側に供給することを可能にし、より電力の利用効率を向上させることができる発光表示パネルの駆動装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる発光表示パネルの駆動装置は、請求項1に記載のとおり、多数の自発光素子を表示画素としてマトリクス状に配列してなる発光表示パネルの駆動装置であって、前記発光表示パネルに配列された自発光素子の順方向電圧に対応する電圧値を取り出すことができるモニタ素子と、前記モニタ素子より得られる前記順方向電圧に対応する電圧値に基づいて、前記発光表示パネルに与える駆動電圧が制御される電源部と、前記電源部からの電源電圧により駆動される前記表示パネルにおける消費電流値を検出する消費電流検出部と、前記消費電流検出部によって検出された消費電流値に応じて、前記モニタ素子に加える電流を制御することで、前記モニタ素子における経時変化の進行度合いを調整する駆動率制御部とを具備したことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明にかかる発光表示パネルの駆動装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図3はその第1の実施の形態を示したものであり、アクティブマトリクス型表示画素を備えた表示パネルの一部の構成と、これを発光駆動する駆動回路のブロック構成を示したものである。
【0019】
図3おいて符号10で示す発光表示パネルには、表示画素10aがマトリクス状に配列されている。なお、図3においては紙面の都合により、行方向に2つの画素10aのみが配列されている様子を示している。
【0020】
前記発光表示パネル10には、図示せぬデータドライバからのデータ信号が供給されるデータ線m1 ,m2 ,……が縦方向(列方向)に配列され、また、図示せぬ走査ドライバからの走査選択信号が供給される走査選択線n1 ,……が横方向(行方向)に配列されている。さらに、表示パネル10には、前記各データ線に対応して縦方向に電源供給線p1 ,p2 ,……が配列されている。
【0021】
前記表示画素10aは、その一例としてコンダクタンスコントロール駆動方式による画素構成が示されている。すなわち、図3に示す表示パネル10における左側の画素10aを構成する各素子に符号を付けて示したとおり、Nチャンネル型TFT(Thin Film Transistor)で構成された制御用トランジスタTr1のゲートは、走査選択線n1 に接続され、そのソースはデータ線m1 に接続されている。また、制御用トランジスタTr1のドレインは、Pチャンネル型TFTで構成された発光駆動用トランジスタTr2のゲートに接続されると共に、電荷保持用のコンデンサC1 の一方の端子に接続されている。
【0022】
そして、発光駆動用トランジスタTr2のソースは前記コンデンサC1 の他方の端子に接続されると共に、電源供給線p1 に接続されている。また、発光駆動用トランジスタのドレインには、自発光素子としての有機EL素子E1 のアノードが接続されると共に、当該EL素子E1 のカソードは共通カソードラインK1 に接続され、後述する消費電流検出部14を介してカソード側電源ラインVcに接続されている。斯くして前記した構成と同一構成の表示画素10aが、前記したとおり表示パネル10において、縦横方向にマトリクス状に多数配列されている。
【0023】
前記した画素構成において、制御用トランジスタTr1のゲートに、走査選択線n1 を介して図示せぬ走査ドライバよりオン電圧が供給されると、制御用トランジスタTr1はソースに供給されるデータ線m1 からのデータ電圧に対応した電流を、ソースからドレインに流す。したがって、制御用トランジスタTr1のゲートがオン電圧の期間に、前記コンデンサC1 が充電され、その電圧が発光駆動用トランジスタTr2のゲートに供給される。
【0024】
それ故、発光駆動用トランジスタTr2は、そのゲート電圧とソース電圧に基づいた電流をEL素子E1 に流し、EL素子を発光駆動させる。すなわち、この実施の形態においてはTFTで構成された発光駆動用トランジスタTr2は飽和領域で動作し、EL素子E1 を定電流駆動することで、EL素子E1 を発光駆動させるように作用する。
【0025】
また、制御用トランジスタTr1のゲートがオフ電圧になると、当該トランジスタはいわゆるカットオフとなり、制御用トランジスタTr1のドレインは開放状態となるものの、発光駆動用トランジスタTr2はコンデンサC1 に蓄積された電荷によりゲート電圧が保持され、次の走査選択時まで前記した駆動電流を維持し、これによりEL素子E1 の発光も維持される。
【0026】
この実施の形態においては、モニタ素子Exが具備されており、これにより表示パネル10に配列された自発光素子としてのEL素子E1 の順方向電圧に対応する電圧値Vf を取り出すことができるように構成されている。このモニタ素子Exのカソード側は前記したカソード側電源ラインVcに接続されており、またアノード側には能動素子としてのNチャンネル型TFTによるトランジスタTr3が直列に接続されている。さらに、前記トランジスタTr3は、モニタ素子Exに対して所定の(一定の)電流を供給することができる電流源、すなわち定電流回路11が接続されている。なお、Vaは定電流回路11に駆動電圧を供給するアノード側電源ラインである。
【0027】
前記トランジスタTr3は、後述する駆動率制御部14によってスイッチング動作するようになされ、このトランジスタTr3のオン動作に伴い、前記モニタ素子Exには前記定電流回路11からの定電流が供給されるように作用する。
【0028】
なお、前記モニタ素子Exは、表示画素10aを構成する有機EL素子E1 と同一の電気的特性(同一の仕様)を有する素子が使用されていることが望ましい。好ましくは、表示画素10aを構成する有機EL素子E1 とモニタ素子Exとは、表示パネル10上に同一の製造プロセスによって同時に成膜されて形成される。したがって、モニタ素子Exに対して定電流回路11より駆動電流を流した場合には、発光動作を伴うことになるので、モニタ素子Exは、これより発する光を遮断する図示せぬ遮光マスクで覆った構成とすることが望ましい。
【0029】
前記モニタ素子Exのアノード端子からは、順方向電圧Vf が取り出され、これはVf 検出部12に供給される。前記Vf 検出部12は例えばバッファアンプにより構成されるものであり、このVf 検出部12による出力は表示パネル10に配列された発光表示用EL素子E1 の順方向電圧に対応するものとして利用することができる。このVf 検出部12による出力は、電源部としての電源回路13に供給される。
【0030】
電源回路13は、図示せぬバッテリーから供給される1次側電圧を昇圧させて表示パネル10の駆動電圧を得るDC/DCコンバータ等により構成されている。そして、電源回路13内における電圧制御部13aは、前記Vf 検出部12からの出力に基づいて、DC/DCコンバータにおける昇圧レベルを制御して表示パネル10に与える駆動電圧として出力する。
【0031】
前記電源回路13からの駆動電圧により発光駆動される前記表示パネル10における各EL素子E1 のカソード側の各電流は、前記したとおり共通カソードラインK1 ,……をそれぞれ介してまとめられ、さらに消費電流検出部14を介してカソード側電源ラインVcに流れる。前記消費電流検出部14には、ドロッパー抵抗R1 が電流路に介在されており、このドロッパー抵抗R1 の両端電圧を抽出する差動増幅器14aが具備されている。したがって、消費電流検出部14からは前記ドロッパー抵抗R1 両端電圧に比例する制御電圧を得ることができる。
【0032】
前記消費電流検出部14によって得られる制御電圧は、表示パネル10における各EL素子E1 の平均の点灯率もしくは平均の駆動電流値に比例するものであり、したがってこれは、経時変化に基づく表示用EL素子E1 の平均的な劣化の度合いを示す指標となる。要するに消費電流検出部14によって得られる制御電圧の値が大きい場合には、各表示用EL素子E1 の平均的な劣化の度合いの進行が速く、また消費電流検出部14によって得られる制御電圧の値が小さい場合には、各表示用EL素子E1 の平均的な劣化の度合いの進行は遅いということがいえる。
【0033】
前記消費電流検出部14によって得られる制御電圧は、図3に示すように駆動率制御部15に供給され、駆動率制御部15により前記したトランジスタTr3をスイッチング動作させることで、前記定電流回路11からモニタ素子Exに供給される電流の時間供給率を制御するように動作する。この実施の形態においては、その1つの手段として前記駆動率制御部15は、トランジスタTr3のスイッチングデューティを変更するように作用する。
【0034】
すなわち、前記駆動率制御部15は消費電流検出部14からの制御電圧に基づいたパルス幅変調(PWM=Pulse Width Modulation)信号を生成し、トランジスタTr3のゲートに供給するようになされる。これにより、消費電流検出部14によって得られる制御電圧のレベルが大なるときには、PWM信号のデューティ(パルス幅)が大きくなるように制御され、また、消費電流検出部14によって得られる制御電圧のレベルが小なるときには、PWM信号のデューティが小さくなるように制御される。
【0035】
前記した作用により、モニタ素子Exには、表示パネル10における各EL素子E1 の平均の点灯率もしくは平均の駆動電流値にほぼ比例したパルス幅の駆動電流が定電流回路11より供給されることになる。これにより、モニタ素子Exは表示パネル10における各EL素子E1 の平均的な経時変化の進行度合いにほぼ一致する状態に調整されることになる。したがって、モニタ素子Exによって得られる順方向電圧の経時変化と、表示パネル10における各EL素子E1 の平均した順方向電圧の経時変化とを概ね一致させることが可能となる。
【0036】
それ故、前記したようにVf 検出部12からの出力に基づいて、電源回路13における例えばDC/DCコンバータの昇圧レベルを制御する構成を採用することで、表示パネル10に配列された発光表示用EL素子E1 における順方向電圧Vf の経時変化分VL が効果的に補償されることになり、加えて前記Vf の温度変化分VT 等も補償された状態で各画素10aに印加される駆動電圧が制御される。
【0037】
これにより、表示パネル10に配列された各表示用画素10aの発光駆動用トランジスタTr2は、定電流特性が維持できる程度のドロップ電圧VD を確保した状態で、各EL素子E1 を駆動することができる。したがって、各画素10aにおける発光駆動用トランジスタTr2において発生する電力損失を極力抑えることができる。
【0038】
なお、図3に示した実施の形態においては、消費電流検出部14は発光表示パネル10に配列された各表示用EL素子E1 のカソード側に直列に挿入された構成になされている。しかしながらが、この消費電流検出部14は表示用EL素子E1 のアノード側、すなわち、電源回路13と各電源供給線p1 ,p2 ,……との間に直列に挿入した構成としても、同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
また、図3に示した実施の形態においては、各表示用画素10aを構成するTFTによる発光駆動用トランジスタTr2は、飽和領域で動作させることで定電流特性を持たせるように説明しているが、この発光駆動用トランジスタTr2は、線形領域で動作させることで定電圧動作(スイッチング動作)を行なわせることもできる。この様に発光駆動用トランジスタTr2を定電圧動作させるようにしても、定電圧駆動される各画素10aに対して、適切な点灯駆動電圧を与えることができる。
【0040】
ここで、有機EL素子に代表されるこの種の自発光素子を用いて、例えばフルカラー画像を再生しようとする場合には、光の三原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)を個別に発光する素子を備えた各サブ画素を組として1つの画素を構成するようになされる。この場合、前記R,G,Bの各サブ画素を構成するEL素子は、それぞれ発光効率が異なり、また再生画像に応じて点灯時間も異なることから、経時変化の度合いに相違が発生することになる。さらに各サブ画素は温度特性もそれぞれ異なる。
【0041】
したがって、前記したように例えばフルカラー画像を再生する表示パネルの駆動装置においては、前記モニタ素子Ex、能動素子としての前記トランジスタTr3、電流源としての前記定電流回路11、Vf 検出部12、電源回路13、消費電流検出部14、および駆動率制御部15の組み合わせを、R,G,Bの各サブ画素に対応させてそれぞれ具備した構成を採用することが望ましい。
【0042】
図4は、前記モニタ素子Exに対して電流源としての定電流回路11より供給される電流の時間供給率を制御する他の例を示したものである。すなわち、図4に示した例においては、電源ラインVaとVc間に定電流回路11とモニタ素子Exが直列に接続され、モニタ素子Exのアノードと電源ラインVcとの間に能動素子としてのPチャンネル型トランジスタTr3が接続されている。
【0043】
すなわち、図4に示す構成においては、トランジスタTr3がオン動作されることにより、定電流回路11からの電流はトランジスタTr3をバイパスし、モニタ素子Exに対する電流の供給は停止される。一方、トランジスタTr3がオフ動作されることで、定電流回路11からの電流がモニタ素子Exに供給されるように動作する。そして、駆動率制御部15からは図3に基づいてすでに説明したとおり、消費電流検出部14からの制御電圧に基づいたパルス幅変調(PWM)信号が供給される。
【0044】
図4に示す構成においては、トランジスタTr3はPチャンネル型TFTにより構成されており、したがって、駆動率制御部15からのPWM信号のデューティ(パルス幅)が大きくなる場合には、定電流回路11からの電流がトランジスタTr3をバイパスする時間率は小さくなる。換言すれば、定電流回路11からモニタ素子Exに供給される電流の時間供給率は大きくなる。
【0045】
また、前記とは逆に駆動率制御部15からのPWM信号のデューティ(パルス幅)が小さくなる場合には、定電流回路11からの電流がトランジスタTr3をバイパスする時間率は大きくなり、定電流回路11からモニタ素子Exに供給される電流の時間供給率は小さくなる。したがって、図4に示した構成においても図3に示した構成と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
図5は、前記モニタ素子Exに対して電流源としての定電流回路11より供給される電流の時間供給率を制御するさらに他の例を示したものである。すなわち、図5に示した例においては、電源ラインVaとVc間に直列接続されるトランジスタTr3、定電流回路11、モニタ素子Exの順序が、図3に示した例とは入れ替わっている。したがって、この構成においても図3に示した構成と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
図6は、この発明にかかる発光表示パネルの駆動装置における第2の実施の形態を示したものであり、同じくアクティブマトリクス型表示画素を備えた表示パネルの一部の構成と、これを発光駆動する駆動回路のブロック構成を示したものである。なお、図6においてはすでに説明した図3に示す各部と同一の機能を果たす部分を同一の符号で示している。したがって、その詳細な説明は省略する。
【0048】
図6に示す実施の形態においては、表示パネル10に配列された各EL素子E1 のカソードは、それぞれカソード側電源ラインVcに接続されている。また、図6に示す実施の形態においては消費電流検出部14による検出値は、後で詳細に説明するように電源回路を構成するDC/DCコンバータにおけるスイッチング素子に加えるパルス信号に対応して得るよう構成されている。
【0049】
そして、消費電流検出部14による検出値に基づいて駆動率制御部15が動作し、電流源としての定電流回路11からモニタ素子Exに供給される電流の値が制御される。これにより、前記モニタ素子Exにおける経時変化の進行度合いが調整されるように構成されている。すなわち、この図6に示す構成においては、駆動率制御部15が定電流回路11よりモニタ素子Exに供給する直流の電流値を制御することで、モニタ素子Exの経時変化の進行度合いを、表示パネル10における各EL素子E1 の平均的な経時変化の進行度合いにほぼ一致させるように制御するようになされる。
【0050】
図7は、図6に示す前記した電源回路13と消費電流検出部14の構成を示すものであり、この図6に示す構成はPWM駆動方式のDC/DCコンバータの例を示している。前記したVf 検出部12からの出力は電源回路13を構成する誤差増幅器21における一方の入力端(反転入力端)に供給されるように構成されている。また、前記誤差増幅器21における他方の入力端(非反転入力端)には、基準電圧Vref が供給されており、したがって、誤差増幅器21からはVf 検出部12からの出力と、基準電圧Vref との比較出力(誤差出力)が生成される。
【0051】
そして、誤差増幅器21による出力は、誤差増幅器22における一方の入力端(非反転入力端)に供給されるように構成されている。また、誤差増幅器22における他方の入力端(反転入力端)には、電源回路13における出力電圧VO を分圧する抵抗素子R11およびR12による分圧出力が供給されるように構成されている。したがって、誤差増幅器22における出力電圧値は、前記したVf 検出部12からの出力および電源回路13における出力電圧VO の双方の出力情報を含んだものとなる。
【0052】
図7に示す構成においては、電源回路13に昇圧型のDC−DCコンバータが利用されており、前記誤差増幅器22における出力は、DC−DCコンバータを構成するスイッチング信号生成回路23に供給されるように構成されている。このスイッチング信号生成回路23には、基準三角波発振器24およびPWM回路25が備えられている。前記PWM回路25は図示せぬコンパレータが具備されており、このコンパレータに対して前記誤差増幅器22からの出力および基準三角波発振器24からの三角波が供給されることで、PWM回路25からはPWM信号が生成される。
【0053】
前記PWM回路25からのPWMによるパルス信号はパワーFETQ1 ゲートに供給され、FETQ1 をスイッチング動作するように構成されている。すなわち、前記FETQ1 のオン動作によって、直流電圧源(バッテリー)Baからの電力エネルギーがインダクタL1 に蓄積され、一方、FETQ1 のオフ動作に伴い、前記インダクタに蓄積された電力エネルギーは、ダイオードD1 を介してコンデンサC3 に蓄積される。
【0054】
そして、前記FETQ1 のオン・オフ動作の繰り返しにより、昇圧されたDC出力をコンデンサC3 の端子電圧として得ることができ、これが電源回路13からの出力電圧VO となる。この出力電圧VO は前記したとおり抵抗R11およびR12により分圧されて誤差増幅器21に帰還され、所定の出力電圧VO を維持するようになされる。
【0055】
図7に示した構成においては、パワーFETQ1 のゲートに供給されるPWM信号、すなわち端子Out1 の出力を図6に示す消費電流検出部14の出力として利用することができる。すなわち、図6に示す実施の形態においては、PWM信号は例えば積分回路を内蔵する駆動率制御部15において電圧値に変換され、これにより定電流回路11よりモニタ素子Exに供給される電流値が制御される。
【0056】
この場合、前記PWM信号のデューティ値(パルス幅)が大になるにしたがって、定電流回路11よりモニタ用の素子Exに供給される直流電流値が大になるように制御されるので、モニタ用の素子Exと表示パネルに配列されるEL素子E1 との経時変化の進行度合いを、ほぼ一致させるように制御することができる。
【0057】
また、図7に示した構成においては誤差増幅器22の出力信号、すなわち端子Out2 の出力を図6に示す消費電流検出部14の出力として利用することができる。この場合においては、図6に示す駆動率制御部15は例えばバッファアンプにより構成され、駆動率制御部15より得られる制御電圧に基づいて前記定電流回路11よりモニタ素子Exに供給される電流値が制御される。この構成においても、モニタ素子Exと表示パネルに配列されるEL素子E1 との経時変化の進行度合いを、ほぼ一致させるように制御することができる。
【0058】
斯くして図6および図7に示す組み合わせの構成により、表示パネル10に配列された発光表示用EL素子E1 における順方向電圧Vf の経時変化分VL が効果的に補償されることになり、加えて前記Vf の温度変化分VT 等も補償された状態で各画素10aに印加される駆動電圧が制御される。したがって、各画素10aにおける発光駆動用トランジスタTr2において発生する電力損失を極力抑えることが可能となる。
【0059】
なお、図6に示した実施の形態において、各表示用画素10aを構成するTFTによる発光駆動用トランジスタTr2は、飽和領域で動作させるようにしても線形領域で動作させるようにしてもよく、いずれにおいても図3に基づいて説明した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
また、図6に示した実施の形態において、これをフルカラー表示パネルの駆動装置に利用しようとする場合においては、前記モニタ素子Ex、前記定電流回路11、Vf 検出部12、電源回路13、消費電流検出部14、および駆動率制御部15の組み合わせを、R,G,Bの各サブ画素に対応させてそれぞれ具備した構成を採用することが望ましい。
【0061】
さらに、図7に示す構成については、PWM方式を採用した場合を例にして説明しているが、これはパルス周波数変調(PFM=Pulse Frequency Modulation)方式、もしくはパルスステップ変調(PSM=Pulse Step Modulation )方式を採用することもできる。
【0062】
この場合においては、端子Out1 の出力を図6に示す駆動率制御部15において、F/V(周波数/電圧)変換し、定電流回路11よりモニタ素子Exに供給する電流値を制御するように構成することが望ましい。また、たとえ前記したPFMもしくはPSM駆動方式を採用した場合であっても、図5に示す端子Out2 の出力を、すでに説明した例と同様に利用することができる。
【0063】
また、図3〜図5に示した定電流回路11、トランジスタTr3およびモニタ素子Exの組み合わせ構成を、図6に示す定電流回路11およびモニタ素子Exの構成に変えて採用することができ、また逆に、図6に示した定電流回路11およびモニタ素子Exの組み合わせ構成を、図3に示す定電流回路11、トランジスタTr3およびモニタ素子Exの構成に変えて採用することもできる。
【0064】
さらに、以上説明した図3および図6に示す実施の形態においては、発光表示用画素10aとしてコンダクタンスコントロール方式の構成を採用した場合に基づいて説明したが、この発明はこの様な特定な画素構成のものに採用し得るだけでなく、例えば、電圧書き込み方式、電流書き込み方式、デジタル階調を実現させる3TFT方式の駆動方式、すなわちSES(Simultaneous-Erasing-Scan )方式、さらにはスレッショルド電圧補正方式、カレントミラー方式などの画素構成を用いた発光表示パネルにも同様に採用することができる。
【0065】
さらにまた、以上説明した実施の形態においては、すべてアクティブ駆動方式の発光表示パネルを例示したが、この発明はパッブマトリクス駆動方式の発光表示パネルにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】有機EL素子の等価回路を示す図である。
【図2】有機EL素子の諸特性を示す図である。
【図3】この発明にかかる発光表示パネルの駆動装置における第1の実施の形態を示した回路構成図である。
【図4】図3に示す構成において採用され得るモニタ素子を含む一部の構成例を示した回路構成図である。
【図5】同じくモニタ素子を含む他の構成例を示した回路構成図である。
【図6】この発明にかかる発光表示パネルの駆動装置における第2の実施の形態を示した回路構成図である。
【図7】図6に示す実施の形態において好適に採用し得るDC/DCコンバータの例を示した回路構成図である。
【符号の説明】
【0067】
10 発光表示パネル
10a 表示用画素
11 電流源(定電流回路)
12 Vf 検出部
13 電源回路
13a 電圧制御部
14 消費電流検出部
14a 差動増幅器
C1 コンデンサ
E1 自発光素子(有機EL素子)
Ex モニタ素子
K1 走査線(陰極線)
Q1 パワーFET
R1 ドロッパー抵抗
Tr1 制御用トランジスタ
Tr2 発光駆動用トランジスタ
Tr3 スイッチングトランジスタ(能動素子)
m1 ,m2 データ線
n1 走査線
p1 ,p2 電源供給線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の自発光素子を表示画素としてマトリクス状に配列してなる発光表示パネルの駆動装置であって、
前記発光表示パネルに配列された自発光素子の順方向電圧に対応する電圧値を取り出すことができるモニタ素子と、
前記モニタ素子より得られる前記順方向電圧に対応する電圧値に基づいて、前記発光表示パネルに与える駆動電圧が制御される電源部と、
前記電源部からの電源電圧により駆動される前記表示パネルにおける消費電流値を検出する消費電流検出部と、
前記消費電流検出部によって検出された消費電流値に応じて、前記モニタ素子に加える電流を制御することで、前記モニタ素子における経時変化の進行度合いを調整する駆動率制御部と、
を具備したことを特徴とする発光表示パネルの駆動装置。
【請求項2】
前記駆動率制御部は、前記消費電流検出部によって検出された消費電流値に応じて能動素子のスイッチング動作を実行し、当該能動素子のスイッチング動作により電流源から前記モニタ素子に供給される電流の時間供給率を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光表示パネルの駆動装置。
【請求項3】
前記モニタ素子、前記電源部、前記消費電流検出部、前記駆動率制御部、前記能動素子および前記電流源の組み合わせは、前記発光表示パネルに含まれる自発光素子の発光色に対応して、それぞれ独立して備えられていることを特徴とする請求項2に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項4】
前記駆動率制御部は、前記消費電流検出部によって検出された消費電流値に応じて、電流源から前記モニタ素子に供給される電流の値を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光表示パネルの駆動装置。
【請求項5】
前記モニタ素子、前記電源部、前記消費電流検出部、前記駆動率制御部および前記電流源の組み合わせは、前記発光表示パネルに含まれる自発光素子の発光色に対応して、それぞれ独立して備えられていることを特徴とする請求項4に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項6】
前記消費電流検出部は、発光表示パネルに配列された自発光素子のアノード側、もしくはカソード側に直列に挿入されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項7】
前記電源部はPWM駆動方式のDC/DCコンバータにより構成され、前記消費電流検出部によって検出される消費電流値が、前記DC/DCコンバータにおけるスイッチング素子に加えるパルス信号のデューティ値に対応して得るよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項8】
前記電源部はPFM駆動方式もしくはPSM駆動方式のDC/DCコンバータにより構成され、前記消費電流検出部によって検出される消費電流値が、前記DC/DCコンバータにおけるスイッチング素子に加えるパルス信号の周波数に対応して得るよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項9】
前記モニタ素子は、前記発光表示パネルに配列された自発光素子と同一仕様の自発光素子で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項10】
前記自発光素子は、有機物質からなる発光機能層を少なくとも一層含む有機EL素子であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載された発光表示パネルの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−71686(P2006−71686A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251536(P2004−251536)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】