説明

発光表示装置の製造方法、発光表示装置、及び発光ディスプレイ

【課題】製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイを提供すること。
【解決手段】本発明の発光表示装置の製造方法は、複数の色に対応する複数の有効画素領域に反射部材及び半透明部材を配設可能な基板に対して、個々の有効画素領域を含むように画成される被加工領域上に、光透過性材料を塗布する光透過性材料塗布工程と、前記塗布された光透過性材料を硬化させ、該光透過性材料からなる光路長調整層を形成する光路長調整工程と、を含み、前記光透過性材料塗布工程における、一の被加工領域に対する前記光透過性材料の塗布を、該一の被加工領域に隣接する他の被加工領域と独立して行うこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に替わって薄型で軽量なフラットパネルディスプレイが広い分野で用いられ、その用途を延ばしてきている。これは、インターネットを核としたサービス網に対する情報機器及びインフラの発展により、パーソナル・コンピュータ並びにネットワークアクセス対応型携帯電話などの個人情報端末が加速的に普及したためである。さらに、従来CRTの独壇場であった家庭用テレビへフラットパネルディスプレイの市場が拡大してきている。
【0003】
その中で、近年特に注目を浴びているデバイスに、有機電界発光素子(有機EL素子)がある。有機EL素子は、電気信号に応じて発光し、かつ、発光物質として有機化合物を用いて構成される素子である。有機EL素子は、生来的に広視野角及び高コントラスト並びに高速応答などの優れた表示特性を有している。また、薄型軽量かつ高画質な小型から大型までの表示装置を実現する可能性があることから、CRTやLCDに代わる素子として注目されている。
【0004】
有機電界発光素子を用いたフルカラー表示装置が種々提案されているが、例えば、フルカラー表現のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3基本色を得る手段として白色有機ELにカラーフィルターを組みあわせる方法があり、この種のフルカラー表示装置においては、更に、上部電極に半透明の陰極を採用し、光反射膜との間での多重干渉効果によって、特定の波長の光のみを有機EL素子の外部に取り出し、高い色再現性を実現するトップエミッション構成のものと、下部電極に半透過又は透明下部電極の下に誘電体多層膜ミラーを用いたボトムエミッションの構成とが検討されている。
【0005】
例えば、光反射材料からなる第1の電極、有機発光層を備えた有機層、光半透明反射層及び透明材料からなる第2の電極が順次積層され、有機層が共振部となるように構成された有機EL素子において、取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、以下の式を満たすように構成した有機EL素子が知られている。
(2L)/λ+Φ/(2π)=m
(Lは光学的距離(光路長)、λは取り出したい光の波長を示し、mは、整数を示し、Φは、位相シフトを示し、光学的距離Lが正の最小値となるように構成する)
この種の白色有機ELにカラーフィルターを組み合わせるフルカラー表示装置においては、ITO(Indium Tin Oxide)などの無機材料からなる陽極の厚さを変えることにより、各画素毎の光路長Lの長さを調整し、各色の光を取り出すようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
しかしながら、光路長調整層として、ITOなどの無機材料を用いる場合、発光表示装置の製造プロセスが複雑となり、生産コストが嵩むことに加え、生産性が低下するという問題がある。
【0007】
例えば、以下に従来技術による光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを説明する。
先ず、基板1上に、赤、緑、青に対応する複数の画素に対応して、反射金属2を配する(図14参照)。
次いで、スパッタ法、蒸着法等により、反射金属2が配された基板上に対して、ITO膜10を一様に成膜する(図15参照)。
次いで、ITO膜10上に硬化性樹脂からなるレジスト組成物を一様に塗布し、レジスト層20を成膜する(図16参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、光Lを照射して、一つの画素上のレジスト層20を選択的に露光し、樹脂を硬化させる(図17参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図18参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図19参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離して、一つの画素上に、反射金属2とITO膜10とが配された状態とする(図20参照)。
【0008】
次に、多段の光路長を形成するために、スパッタ法、蒸着法等により、ITO膜10を再度蒸着させる(図21参照)。この状態において、先の工程で、反射金属2とITO膜10とが配された画素領域においては、ITO膜10が重ねて蒸着され、他の画素上でのITO膜10との間で、光路長差が形成される。
次いで、ITO膜10上に、再度、硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を形成する(図22参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、ITO膜10が重ねて蒸着された画素領域と、該画素領域に隣接する画素領域とに対して、光を照射して露光し、樹脂を硬化させる(図23参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図24参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図25参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離して、基板1上に、反射金属2と重ねて配されたITO膜10とを有する画素領域、及び、反射金属2とITO膜10とを有する画素領域を形成する(図26参照)。
【0009】
次に、他の光路長を形成するために、スパッタ法、蒸着法等により、ITO膜10を再度蒸着させる(図27参照)。この状態において、先の工程で、反射金属2とITO膜10とが配された2つの画素領域においては、異なる光路長差を有するように、ITO膜10が重ねて蒸着され、それぞれの画素上において、ITO膜10層の厚みによる光路長差が形成される。
次いで、ITO膜10上に、再度、硬化性樹脂からなるレジスト組成物を塗布し、レジスト層20を形成する(図28参照)。
こうして基板1上に、反射金属2とITO膜10とレジスト層20とが配された状態で、ITO膜10部分的に遮光可能とするマスク4で覆い、各画素上のレジスト層20に光を照射して露光し、樹脂を硬化させる(図29参照)。
これを現像して、レジスト層20から露光した部分以外の箇所を取り除く(図30参照)。
この状態で、露光されたレジスト層20をマスクとしたエッチング処理を行い、レジスト層20に対向するITO膜10以外のITO膜10を取り除く(図31参照)。
次いで、残されたITO膜10上のレジスト層20を剥離する。こうして、基板1上の各画素領域において、反射金属2上に、厚みの異なるITO膜10で形成された光路長調整層が形成されることとなる(図32参照)。
【0010】
次に、厚みの異なるITO膜10で形成された光路長調整層を有する状態で、各光路長調整層上に、有機発光層7と、半透過金属8とをこの順で積層し、発光表示装置400を製造する(図33参照)。
このような発光表示装置400においては、有機発光層7から出射された光が、異なる厚みで形成されたITO膜10の光路長d、d、dに対応して、それぞれ青、緑、赤に対応する波長の光として半透過金属8から取り出される。
即ち、有機発光層7から出射された光は、光路長がd、d、dからなる半透過金属8と反射金属2との間で共振され、各光路長に応じた青、緑、赤の波長の光が強められることにより、青、緑、赤の光として発光表示装置400から取り出すことを可能とされる。
【0011】
このように、光路長調整層を有する発光表示装置においては、青、緑、赤の3原色による高精細なカラー表示が可能となるが、前記光路長調整層の形成材料として、ITO層などの無機材料を用いる場合には、光路長差の形成に、レジスト層の形成、レジスト層をマスクとしたエッチング処理、レジスト層の剥離といった工程が必要であり、また、これらの工程を、光路長差を形成するごとに行わなければならないため、製造プロセスが複雑となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−503093号公報
【特許文献2】特開2006−269329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、以下の知見を得た。
先ず、光路長調整層を有する発光表示装置の製造プロセスを簡易化するため、基板上の画素領域に対して光透過性材料を全面的に塗布するのではなく、個々の画素領域に対して光透過性材料を部分的に塗布することの検討を行った。この様子を図1に示す。図1に示す製造プロセスにおいては、各画素領域に反射金属2a、2b、2cが形成された基板1に対して、反射金属2a上に光透過性材料3aを塗布し、反射金属2b上に光透過性材料3bを塗布し、塗布量を調整することで、光透過性材料3aと、光透過性材料3bとの塗布厚みを調整することとしている。
この場合、従来行われていた以下の製造プロセスを省略することができ、極めて製造プロセスを簡易なプロセスとすることが可能となる。
即ち、反射金属が配された基板上に光路長調整層を構成する無機材料を一様に形成する工程、無機材料の層上にレジスト層を一様に形成する工程、画素領域に対応したフォトマスクを用いてレジスト層を露光する工程、露光後のレジスト層をマスクとして余分な無機材料のエッチングを行う工程、レジスト層を剥離して無機材料の層からなる光路長調整層を形成する工程、更に、異なる光路長を有する光路長調整層を形成するために前記各工程を繰り返すことを省略することができる。
【0015】
本発明は、前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 複数の色に対応する複数の有効画素領域に反射部材及び半透明部材を配設可能な基板に対して、個々の有効画素領域を含むように画成される被加工領域上に、光透過性材料を塗布する光透過性材料塗布工程と、前記塗布された光透過性材料を硬化させ、該光透過性材料からなる光路長調整層を形成する光路長調整工程と、を含み、前記光透過性材料塗布工程における、一の被加工領域に対する前記光透過性材料の塗布を、該一の被加工領域に隣接する他の被加工領域と独立して行うことを特徴とする発光表示装置の製造方法である。
<2> 被加工領域を囲繞するバンク部を形成するバンク部形成工程を含む前記<1>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<3> バンク部形成工程が、個々の有効画素領域及び該有効画素領域の周囲に配される非有効画素領域から画成される被加工領域を囲繞するバンク部を形成する工程であり、
光透過性材料塗布工程が、前記有効画素領域及び前記非有効画素領域の全部又は一部を含む領域に光透過性材料を塗布する工程である前記<2>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<4> バンク部形成工程において、バンク部の形成材料が反射部材の材料と同一の材料である前記<2>から<3>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<5> バンク部形成工程において、バンク部の形成材料が半透明部材の材料と同一の材料である前記<2>から<3>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<6> バンク部形成工程において、バンク部の形成材料が光透過性材料と同一の材料である前記<2>から<3>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<7> 光透過性材料塗布工程において、光透過性材料がインクジェット法により塗布される前記<1>から<6>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<8> 光透過性材料が、光硬化性樹脂である前記<1>から<7>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<9> 光硬化性樹脂が、ラジカル重合性モノマーである前記<8>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<10> ラジカル重合性モノマーが、ラジカル重合性官能基を2つ以上有する前記<9>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<11> ラジカル重合性モノマーが、エチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーである前記<10>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<12> エチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーが、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのいずれかである前記<11>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<13> 光透過性層形成工程における硬化を、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行う前記<9>から<12>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<14> 光路長調整層におけるラジカル重合性モノマーの残存量が1×10−2g/m以下である前記<9>から<13>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法である。
<15> 光路長調整層が平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜が前記光路長調整層の光透過性材料と同一の光透過性材料で形成される前記<1>から<14>に記載の発光表示装置の製造方法である。
<16> 複数の色に対応する複数の有効画素領域のうち、少なくとも1つの有効画素領域に反射部材及び半透明部材が配される基板と、前記基板上に、光透過性材料で形成された光路長調整層とを有することを特徴とする発光表示装置である。
<17> 個々の有効画素領域を含むように画成される被加工領域を囲繞するバンク部を有する前記<16>に記載の発光表示装置である。
<18> 前記<1>から<15>のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法により製造される前記<16>から<17>のいずれかに記載の発光表示装置である。
<19> 前記<16>から<18>のいずれかに記載の発光表示装置を有することを特徴とする発光ディスプレイである。
<20> フレキシブルディスプレイとして用いられる前記<19>に記載の発光ディスプレイである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決でき、前記目的を達成することができ、製造プロセスを簡易化する発光表示装置の製造方法、製造プロセスが簡易な発光表示装置、及び発光ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、反射部材上に光透過性材料を塗布した状態を示す概略図1である。
【図2】図2は、反射部材上に光透過性材料を塗布した状態を示す概略図2である。
【図3】図3は、反射部材上に光透過性材料を塗布した状態を示す概略図3である。
【図4】図4は、反射部材上に光透過性材料を塗布した状態を示す概略図4である。
【図5】図5は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(1)である。
【図6】図6は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(2)である。
【図7】図7は、本発明の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(3)である。
【図8】図8は、本発明の発光表示装置の一の構成例を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の発光表示装置の製造プロセスの他の例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の発光表示装置の製造プロセスの更に他の例を示す概略図である。
【図11】図11は、図6に示す製造プロセスにより製造される発光表示装置の製造例を示す概略図である。
【図12】図12は、本発明の発光表示装置の他の構成例を示す概略図である。
【図13】図13は、本発明の発光表示装置の更に他の構成例を示す概略図である。
【図14】図14は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(1)である。
【図15】図15は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(2)である。
【図16】図16は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(3)である。
【図17】図17は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(4)である。
【図18】図18は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(5)である。
【図19】図19は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(6)である。
【図20】図20は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(7)である。
【図21】図21は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(8)である。
【図22】図22は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(9)である。
【図23】図23は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(10)である。
【図24】図24は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(11)である。
【図25】図25は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(12)である。
【図26】図26は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(13)である。
【図27】図27は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(14)である。
【図28】図28は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(15)である。
【図29】図29は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(16)である。
【図30】図30は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(17)である。
【図31】図31は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(18)である。
【図32】図32は、従来例の発光表示装置の製造プロセスを示す概略図(19)である。
【図33】図33は、従来例の発光表示装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発光表示装置の製造方法)
本発明の発光表示装置の製造方法は、光透過性材料塗布工程と、光路長調整層形成工程とを含み、更に、バンク部形成工程、発光表示装置を製造するために必要なその他の工程を含んでなる。
【0019】
<光透過性材料塗布工程>
前記光透過性材料塗布工程は、複数の色に対応する複数の有効画素領域に反射部材及び半透明部材を配設可能な基板に対して、個々の有効画素領域を含むように画成される被加工領域上に、光透過性材料を塗布する工程としてなり、一の被加工領域に対する前記光透過性材料の塗布を、該一の被加工領域に隣接する他の被加工領域と独立して行うこととしてなる。
【0020】
前記被加工領域としては、個々の有効画素領域を含む領域であれば、特に制限はなく、目的に応じて任意に画成することができ、例えば、前記有効画素領域そのものの領域、前記有効画素領域及び該有効領域の周囲に配される非有効画素領域からなる領域が挙げられる。
本明細書において、有効画素領域とは、前記基板上の面内方向の領域のうち前記反射部材及び前記半透明部材のいずれかが配される領域を示し、非有効画素領域とは、前記有効画素領域の周囲に配され、前記基板上の面内方向の領域のうち前記反射部材及び前記半透明部材のいずれも配されない領域を示す。
前記被加工領域が、前記有効画素領域及び前記非有効画素領域からなる場合、前記有効画素領域、及び前記非有効画素領域の全部又は一部を含む領域に前記光透過性材料が塗布される。
【0021】
−基板−
前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、耐熱性、ガスバリア性を有するガラス材料やバリアフィルムなどが好ましい。
具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、及び/又は線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。
このような基板の樹脂材料としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0022】
前記基板の光線透過率としては、通常80%以上であり、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
前記光線透過率としては、JIS−K7105に記載された方法、即ち、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
前記ガラス材料やバリアフィルムの厚みとしては、特に制限がないが、典型的には1μm〜800μmであり、10μm〜200μmが好ましい。
【0023】
−−反射部材及び半透明部材−−
前記反射部材は、有機発光層から出射される光を反射する作用を有する。
前記半透明部材は、有機発光層から出射される光を反射乃至透過させる作用を有する。
これら前記反射部材及び半透明部材は、有機発光層を間に有する状態で対向配置され、有機発光層から出射される光を共振する作用を有する。
前記半透明部材としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、半透明金属、半透明性の誘電体多層膜ミラー、及びこれらの組み合わせが好ましい。
前記半透明金属としては、特に制限はなく、後述する陽極を用いて構成することができる。
前記半透明性の誘電体多層膜ミラーとしては、特に制限はなく、例えば、SiO、SiNの積層等で構成される誘電体多層膜からなるミラー、などが挙げられる。
前記反射部材としては、特に制限はなく、例えば、後述する陰極を用いて構成することができる。
前記基板に対して、前記反射部材を配する場合、有機発光層を介して前記基板と対向する表面から、該有機発光層から発光される光を出射するトップエミッション型の発光表示装置を形成することができる。
また、前記基板に対して、前記半透明部材を配する場合、前記有機発光層から発光される光を前記基板を通じて出射するボトムエミッション型の表示装置を形成することができる。
【0024】
−光透過性材料−
前記光透過性材料としては、光透過性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、光透過性材料層における硬化反応を生ずるものが挙げられる。
前記光透過性材料層における硬化反応を生ずるものとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂(本明細書では、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を併せてアクリレート重合物ということがある)、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物、ポリシロキサン、その他有機珪素化合物等の樹脂材料、ITO等の無機微粒子を分散したインク材料等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
−−光硬化性樹脂(ラジカル重合性モノマー)−−
前記光透過性材料としては、前記例示の化合物の中でも、光硬化性樹脂が好ましい。
前記光硬化性材料としては、特に制限はないが、少なくとも1つの下記一般式(1)及び下記一般式(2)のいずれかで表されるラジカル重合性モノマーがより好ましい。
これらのラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性官能基を2つ以上有することが好ましい。重合性官能基が2つ以上あると3次元的に架橋することができ、機械強度が向上する点で好ましい。
【0026】
一般式(1)
【化1】

(ただし、前記一般式(1)において、Rは、水素又はメチル基を表し、Rは、水素原子を表し、Lは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及び、これらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基のいずれかを表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR及びRは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0027】
一般式(2)
【化2】

(ただし、前記一般式(2)において、Rは、水素又はメチル基を表し、R10は、水素原子を表し、Lは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及び、これらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基のいずれかを表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR及びR10は、同一であっても異なっていてもよい。)
【0028】
前記光硬化性樹脂としては、前記一般式(2)で表されるエチレン不飽和二重結合を有するラジカル重合性モノマーからなるアクリレート重合体を主成分とするのが特に好ましい。ここで主成分とは、後述する光透過性材料層を構成する重合性モノマーのうち、含量が最も多いことをいい、80質量%以上であることをいう。
また、前記アクリレート重合体としては、下記一般式(3)で表される構造単位を有するポリマーが挙げられる。
【0029】
一般式(3)
【化3】

(ただし、前記一般式(3)において、Zは、下記一般式(a)、又は、二重結合性基を有する一般式(b)で表され、該下記一般式(a)又は(b)におけるR11及びR12は、各々独立に水素原子又はメチル基を表し、*は一般式(3)のカルボニル基と結合する位置を表し、Lは、n価の連結基を表す。nは、1〜6の整数を示す。nが2以上の場合において、各繰り返し単位におけるZは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つのZは、下記一般式(a)で表される。
【0030】
【化4】

【0031】
前記一般式(3)において、Lの炭素数は、3〜18が好ましく、4〜17がより好ましく、5〜16が更により好ましく、6〜15が特に好ましい。
nが2の場合、Lは、2価の連結基を表すが、そのような2価の連結基の例としては、アルキレン基(例えば、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、及びこれらの2価基が複数個直列に結合した2価残基(例えばポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、プロピオニルオキシエチレン基、ブチロイルオキシプロピレン基、カプロイルオキシエチレン基、カプロイルオキシブチレン基等)を挙げることができる。これらの中でも、前記アルキレン基が好ましい。
【0032】
また、前記一般式(3)において、Lは、置換基を有してもよく、Lを置換することのできる置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基などが挙げられる。
これらの中でも、前記置換基としては、含酸素官能基を持たない基が好ましく、このような基としては、前記アルキル基が挙げられる。即ち、nが2の場合、Lは、含酸素官能基を持たないアルキレン基が最も好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0033】
前記一般式(3)において、nが3の場合、Lは、3価の連結基を表すが、そのような3価の連結基の例として、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除いて得られる3価残基、又は、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除き、ここにアルキレン基、エーテル基、カルボニル基、及びこれらを直列に結合した2価基を置換した3価残基を挙げることができる。このうち、アルキレン基から任意の水素原子を1個除いて得られる、含酸素官能基を含まない3価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0034】
前記一般式(3)において、nが4以上の場合、Lは、4価以上の連結基を表すが、そのような4価以上の連結基の例も、同様に挙げられる。好ましい例も同様に挙げられる。特に、アルキレン基から任意の水素原子を2個除いて得られる、含酸素官能基を含まない4価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0035】
また、前記ポリマーは、前記一般式(3)で表されない構造単位を有していても構わない。例えば、アクリレートモノマーやメタクリレートモノマーを共重合したときに形成される構造単位を有していてもよい。
前記ポリマーにおいて、前記一般式(3)で表されない構造単位は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
前記一般式(3)で表される構造単位を有さないポリマーとして、例えば、ポリエステル、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が挙げられる。
【0036】
以下において、前記一般式(2)で表されるラジカル重合性モノマーの具体例を示すが、本発明における前記光透過性材料は、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
−−酸性モノマー−−
前記光透過性材料としては、更に、酸性モノマーが含むものであってもよい。
前記酸性モノマーを含めることにより、層間密着性が向上する。
前記酸性モノマーとは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーをいう。
前記酸性モノマーは、カルボン酸基又はリン酸基を含有するモノマーが好ましく、カルボン酸基又はリン酸基を含有する(メタ)アクリレートがより好ましく、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0043】
−−−リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート)−−−
前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(P)で表される化合物を含んでいることがより好ましい。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、無機層との密着がよくなる。
【0044】
一般式(P)
【化10】

ただし、前記一般式(P)において、Zは、Ac−O−X−、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、ZはAc−O−X−、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、Ac、Ac及びAcは、それぞれアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、X、X及びXは、それぞれ2価の連結基を表す。
前記一般式(P)で表される化合物としては、以下の一般式(P−1)で表される単官能モノマー、以下の一般式(P−2)で表される2官能モノマー、及び以下の一般式(P−3)で表される3官能モノマーが好ましい。
【0045】
一般式(P−1)
【化11】

【0046】
一般式(P-2)
【化12】

【0047】
一般式(P−3)
【化13】

【0048】
前記一般式(P−1)〜(P−3)において、Ac、Ac、Ac、X、X及びXの定義は、前記一般式(P)における定義と同じである。前記一般式(P−1)及び(P−2)において、Rは、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表し、Rは、重合性基を有しない置換基又は水素原子を表す。
前記一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、X、X及びXは、一般式(2)におけるLと同様の基である。X、X及びXとしては、アルキレン基、アルキレンオキシカルボニルアルキレン基が好ましい。
前記一般式(P)、(P−1)〜(P−3)において、重合性基を有しない置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、又はこれらを組み合わせた基などを挙げることができ、アルキル基が好ましい。
【0049】
前記アルキル基の炭素数としては、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
前記アルキル基は、直鎖状であっても分枝状であっても環状であっても構わないが、直鎖アルキル基が好ましい。前記アルキル基は、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
【0050】
前記アリール基の炭素数としては、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などで置換されていてもよい。
本発明では、前記一般式(P)で表されるモノマーを1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、組み合わせて用いる場合は、前記一般式(P−1)で表される単官能モノマー、前記一般式(P−2)で表される2官能モノマー、及び前記一般式(P−3)で表される3官能モノマーのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、前記リン酸エステル基を有する重合性モノマー類として、日本化薬(株)製のKAYAMERシリーズ、ユニケミカル(株)製のPhosmerシリーズ等、市販されている化合物をそのまま用いてもよく、新たに合成された化合物を用いてもよい。
【0051】
以下に、酸性モノマーの具体例を示すが、本発明は、これらに限定されない。
【0052】
【化14】

【0053】
−−光重合開始剤−−
前記光重合開始剤としては、光を照射したときにラジカルを発生する化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて公知の光重合開始剤を適用することができる。
前記光重合開始剤の分子量としては、170以上であることが好ましく、190以上であることがより好ましい。このように分子量であると、前記光重合開始剤が揮発しにくくなり、さらに、安定に硬化した光透過性材料層が得られやすくなる。なお、前記光重合開始剤の分子量の上限としては、特に定めるものではないが、通常、1,000以下である。
【0054】
前記光重合開始剤の添加量としては、前記光透過性樹脂層を形成する組成物としての前記光透過性材料において、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更により好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0055】
前記光重合開始剤としては、特に制限はないが、下記一般式(4)で表される化合物、及び下記一般式(5)で表される化合物のいずれかを含む化合物が好ましい。
【0056】
一般式(4)
【化17】

ただし、前記一般式(4)において、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、カルボニル基、及びこれらの基が複数個結合した置換基のいずれかを表し、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は、0〜5の整数を表し、n1が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるR2は、同一であっても異なっていてもよい。
ここで、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、及び炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基のいずれかが好ましく、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。Rが炭素数1〜18の置換アルキル基の場合は、カルボニル基に連結する炭素が、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基で置換されていることが好ましい。n1は、0〜3が好ましい。
このような化合物として例えば、ダロキュア1173(製造元:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)等の市販品を採用できる。
【0057】
一般式(5)
【化18】

ただし、前記一般式(5)において、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基のいずれかを表し、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換又は無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2及びn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2及びn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上の場合において、各繰り返し単位におけるRは、同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、各繰り返し単位におけるRは、同一でも異なっていてもよい。
は、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基であることが好ましく、Rは、炭素数1〜18の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。n2は、0〜3であることが好ましく、n3は、0〜3であることが好ましい。
このような化合物として、2−メチルベンゾフェノン等が挙げられ、例えば、エザキュアTZT(製造元:ランベルティ)等の市販品を採用できる。
【0058】
−−溶媒−−
前記光透過性材料としては、液状の樹脂材料として塗布に供してもよいが、溶媒を用いて希釈して塗布に供してもよい。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ベンジンアルコール、プロピレングリコールモノメチルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
【0059】
前記塗布に供される塗布組成液の粘度としては、特に制限はないが、1cps〜40cpsが好ましく、1cps〜20cpsがより好ましく、1cps〜10cpsが特に好ましい。
前記粘度が、1cps未満であると、塗布が困難なことがあり、40cpsを超えると、流動性が悪く膜厚にムラが生じることがある。
【0060】
また、前記塗布組成液の表面張力としては、特に制限はないが、20mN/m〜50mN/mが好ましく、25mN/m〜40mN/mがより好ましく、25mN/m〜30mN/mが特に好ましい。
前記表面張力が、20mN/m未満であると、気泡の発生が起こることがあり、50mN/mを超えると、濡れ広がりが悪くなり、欠陥を生じることがある。
【0061】
−塗布−
前記光透過性材料の塗布方法としては、特に制限はないが、製造プロセスの簡易化の観点から、インクジェット法、ディスペンサ法が好ましい。特に塗布量制御の観点からインクジェット法がより好ましい。
【0062】
前記インクジェット法により塗布を行う場合、打滴する液適の量としては、特に制限はないが、1pL〜30pLが好ましく、1pL〜10pLがより好ましく、1pL〜2pLが特に好ましい。
前記液滴の量が、1pL未満であると、吐出不安定や液滴体積がばらつくなどの問題が生じることがあり、30pLを超えると、1滴の吐出量が多すぎるため、多量の溶媒で希釈しなければならないため、画素から溢れたり、乾燥むらを引き起こすことがある。
【0063】
前記インクジェット法に塗布を行う場合の吐出周波数としては、特に制限はないが、0.1kHz〜40kHzが好ましく、1kHz〜20kHzがより好ましく、5kHz〜10kHzが特に好ましい。
前記吐出周波数が、0.1kHz未満であると、生産性が低下することがあり、40kHzを超えると、吐出が不安定になることがある。
【0064】
また、吐出速度としては、特に制限はないが、1m/s〜15m/sが好ましく、3m/s〜10m/sがより好ましく、5m/s〜8m/sが特に好ましい。
前記吐出速度が、1m/s未満であると、着弾位置がばらつくことがあり、15m/sを超えると、尾引きが長くなり、吐出不安定や液滴体積がばらつくなどの問題が生じることがある。
【0065】
前記塗布液として、前記光透過性材料を前記溶媒を用いて希釈する場合、後述する光路長調整層形成工程における硬化処理を行う前に、塗工層をプリベークすることが好ましい。
前記プリベークとしては、特に制限はないが、50℃〜100℃で、1分間〜5分間の条件で行うことが好ましい。
【0066】
具体的な塗布の態様を図を用いて説明する。
図1は、光透過性材料の塗布態様の一例を示す概略図である。該図1に示すように、基板1の有効画素領域上に配される反射部材2(2a、2b、2c)に対して、光透過性材料3(3a、3b)を塗布する。ここで、反射部材2a、2b上に、塗布量を代えて塗布を行うことにより、各反射部材上に厚みの異なる光透過性材料3a、3bの層を形成することができる。なお、本例では、反射部材2a、2bと異なる光路長が得られるため、反射部材2c上に光透過性材料3を塗布していないが、反射部材2c上に厚みの異なる光透過性材料3の層を形成してもよい。
この図1に示す例では、反射部材2で画成される有効画素領域を被加工領域とした塗布の態様を示したが、本発明の塗布態様は、これに限られない。
図2に示すように、反射部材2で画成される有効画素領域と、反射部材2周囲の非有効画素領域を被加工領域として、光透過性材料3を塗布するようにしてもよい。この場合、反射部材2上に、曲率の小さい光透過性材料3の層を形成することができる。
また、光透過性材料3を溶媒で希釈して用いて、図1、図2に示す態様と、同様に塗布を行ってもよい(図3、図4参照)。
【0067】
<光路層調整工程>
前記光路長調整工程は、前記塗布された光透過性材料を硬化させ、該光透過性材料からなる光路長調整層を形成する工程としてなる。
【0068】
−硬化−
前記光透過性樹脂を硬化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせを挙げることができる。
中でも、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行うことが好ましい。
【0069】
前記光重合において、照射する光としては、通常、高圧水銀灯若しくは低圧水銀灯による紫外線である。
前記照射エネルギーとしては、0.5J/cm以上が好ましく、2J/cm以上がより好ましい。
前記ラジカル重合性モノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを用いる場合、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。
このような方法としては不活性ガス置換法(窒素置換法、アルゴン置換法など)、減圧法が挙げられる。このうち、減圧硬化法はモノマー中の溶存酸素濃度を低下させる効果を有するため、より好ましい。
前記窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1,000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。
また、100Pa以下の減圧条件下で、2J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0070】
前記ラジカル重合性モノマーの重合率としては、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更により好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは、モノマーの混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基及びメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。前記重合率は、赤外線吸収法によって定量することができる。
【0071】
−光路長調整層−
本発明の発光表示装置においては、複数の色、例えば、赤、緑、青の少なくとも一つの有効画素領域に前記光路長調整層が配される。
前記光路長調整層の厚みとしては、複数の色の発色を示す各副画素が所定の波長の光が効率良く共振し得る光学的距離(光路長)となるように調整される。
従って、共振する光学的距離は、光反射膜と光半透過反射膜との間に挟持される材料の屈折率とその組成、厚みによって決定されるので、光路長調整層によって決定される訳ではない。
一般に用いられる有機EL発光層の構成を斟酌すると、前記赤の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、30nm〜1,000nmが好ましく、150nm〜350nmがより好ましく、200nm〜250nmが特に好ましい。
前記緑の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、5nm〜800nmが好ましく、100nm〜250nmがより好ましく、150nm〜200nmが特に好ましい。
前記青の画素領域における光路長調整層の厚みとしては、物理的厚みで、0nm〜600nmが好ましく、50nm〜200nmがより好ましく、100nm〜150nmが特に好ましい。
【0072】
前記光路長調整層は、前記基板上に配される前記反射金属又は前記半透明部材の上面に直接配されてよいが、光路長調整層を平坦に配する観点からは、前記反射金属又は前記半透明部材の上面に、該上面形状を平坦化させる平坦化膜を配し、該平坦化膜上に配されることしてもよい。
該平坦化膜としては、特に制限はないが、前記光透過性材料と同じ光透過性材料で形成されることが好ましい。
【0073】
<バンク部形成工程>
前記バンク部形成工程は、前記被加工領域を囲繞するバンク部を形成することとしてなる。
【0074】
前述した光透過性樹脂の塗布方法に関し、個々の画素領域に対して光透過性材料を部分的に塗布する場合(図1参照)、塗布液の表面張力の影響で曲率を有するため、塗布厚みにムラが生じ、平坦な膜が得られにくいという新たな課題が生ずる。
このような課題を解決する手段としては、一つに、反射部材の位置により画成される画素領域をはみ出すように光透過性材料を塗布することで、該画素領域上の塗布厚みのムラを基板の面内方向で吸収することが挙げられる(図2参照)。しかしながら、高精細な発光表示装置を得るため各画素間のピッチを狭くすると、隣接する各画素領域に塗布された塗布液が合一してしまい、隣接する各画素領域に異なる光路長を有する光路長調整層を形成することが困難となることがある。
また、光透過性材料を溶媒で希釈した塗布液を用いることにより、塗布液の表面張力の影響を低減させることも考えられる。しかしながら、このような塗布液を用いた場合、塗工された塗布液の端部側の乾燥が速いことを原因として、コーヒーステイン現象と呼ばれる端部膜厚の上昇が起こり、反射部材上に平坦な膜が得られないことがある(図3参照)。
また、光透過性材料を溶媒で希釈した塗布液を用いて、画素領域をはみ出すように塗布する場合においても、前述の通り、隣接する各画素領域に塗布された塗布液が合一することがある(図4参照)。
そのため、このような新たな課題に対して、前記被加工領域を囲繞するバンク部を形成し、このバンク部で囲繞された被加工領域に光透過性材料を塗布することで、製造プロセスを極めて簡易化に加え、厚みムラのない平坦な光路長調整層を得ることができる。
【0075】
前記バンク部としては、前記基板上に形成され、個々の有効画素領域を含む被加工領域を囲繞する環状部材からなり、その断面形状としては、隣接する有効画素領域に塗布される各光透過性材料の合一を抑制することができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて半円状、四角形状、三角形状等の任意の形状とすることができる。
【0076】
前記バンク部の高さとしては、前記光路長調整層の基板上の高さと同程度の高さであることが好ましい。
ただし、前記バンク部を前記反射部材又は前記半透明部材と同一プロセスで形成することが製造効率上好ましく、この場合、前記バンクをフォトリソグラフィー法により前記反射部材又は前記半透明部材と同時に形成され、前記バンク部を前記反射部材又は前記半透明部材の基板上の高さと同一の高さに形成してもよい。
【0077】
前記バンク部の形成材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に配される前記反射部材又は前記半透明部材の形成材料と同一の材料であるか、前記光透過性材料と同一の材料であることが好ましい。
前記バンク部の形成材料が前記基板上に配される前記反射部材又は前記半透明部材の形成材料と同一の材料である場合、前記基板上に前記反射部材又は前記半透明部材を配する際に、併せて前記バンク部を形成することができ、プロセス数を増やすことなく、前記バンクを形成することができる。なお、前記反射部材又は前記半透明部材が導電性材料である場合、前記反射部材又は前記半透明部材と前記バンク部との間の通電を避けるため、前記被加工領域に前記非有効画素領域を含むこととして、前記バンク部と前記反射部材又は前記半透明部材とが非接触で形成される。
また、前記バンク部の形成材料が前記光透過性材料と同一の材料である場合、前記バンク部形成工程後、塗布を行う前記光透過性材料を変更することなく、引き続き光透過性材料塗布工程を実施することができるため、製造プロセスの効率を向上させることができる。
【0078】
前記バンク部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記バンク部の形成材料が前記基板上に配される前記反射部材又は前記半透明部材の形成材料と同一の材料である場合、前記反射部材又は前記半透明部材の形成方法と同様の形成方法とすることができ、また、前記バンク部の形成材料が前記光透過性材料と同一の材料である場合、前記光透過性材料の形成方法と同様の形成方法とすることができる。
【0079】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、発光表示装置として必要な有機電界発光素子を形成する工程が挙げられる、以下では、本発明における有機電界発光素子について説明する。
【0080】
−有機電界発光素子−
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち、陽極と陰極とを有し、両電極の間に発光層を有する。両電極間に配置されうる、発光層以外の機能層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0081】
前記有機電界発光素子は、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有することが好ましく、陰極と発光層との間に電子輸送層を有することが好ましい。さらに、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層を設けてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層を設けてもよい。
また、前記発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層(電子ブロック層)を設けてもよく、発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層(正孔ブロック層)を設けてもよい。各機能層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0082】
前記発光層を含むこれらの機能層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等のいずれによっても好適に形成することができる。
【0083】
−−発光層−−
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記発光層は、発光材料を含む。発光層は発光材料のみで構成されていてもよいし、ホスト材料と発光材料の混合層でも良い(後者の場合、発光材料を「発光性ドーパント」もしくは「ドーパント」と称する場合がある)。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、2種以上が混合されていても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよい。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
【0084】
前記発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常2nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが特に好ましい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0085】
−−−発光材料−−−
本発明における発光材料は、燐光発光材料、蛍光発光材料等いずれも好適に用いることができる。本発明における発光性ドーパントは、ホスト化合物との間で、イオン化ポテンシャルの差(ΔIp)と電子親和力の差(ΔEa)が、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが、駆動耐久性の観点で好ましい。
発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0086】
<燐光発光材料>
前記燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
例えば、該遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、さらに好ましくはイリジウム、白金である。
【0087】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0088】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0089】
これらの中でも、燐光発光材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、WO2004/108857A1、WO2005/042444A2、WO2005/042550A1、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−93542、特開2006−261623、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、さらに好ましい発光材料としては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。さらに、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0090】
本発明に用いうる燐光発光材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
【化19】

【0092】
【化20】

【0093】
【化21】

【0094】
<蛍光発光材料>
前記蛍光発光材料としては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0095】
−−−ホスト材料−−−
前記発光層に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0096】
<正孔輸送性ホスト>
前記発光層に用いられる正孔輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。すなわち、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
好ましくは、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体であり、より好ましくは、分子内にカルバゾール基を有するものが好ましい。特に、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物が好ましい。
【0097】
<電子輸送性ホスト>
前記発光層に用いられる電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。すなわち、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、及びそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。中でも、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましく、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
【0098】
本発明に用いうる正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
【化22】

【0100】
【化23】

【0101】
【化24】

【0102】
−−正孔注入層、正孔輸送層−−
前記正孔注入層、前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側の層から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いられる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
【0103】
前記正孔注入層、前記正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、及び三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0104】
前記正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0105】
−−電子注入層、電子輸送層−−
前記電子注入層、前記電子輸送層は、陰極又は陰極側の層から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0106】
前記電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、及びYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることがさらに好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0107】
前記電子注入層、前記電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0108】
−−正孔ブロック層、電子ブロック層−−
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
一方、前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚さは、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0109】
−−電極−−
前記有機電界発光素子は、一対の電極すなわち陽極と陰極とを含む。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。
通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0110】
前記電極としては、特に制限はないが、その陽極、陰極において、前記反射金属、前記半透明部材としての半透明金属を構成することが好ましい。
【0111】
前記陽極を構成する材料の具体例としては、例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0112】
前記陰極を構成する材料の具体例としては、例えば、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0113】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0114】
なお、前記電極を形成する際にパターニングをおこなう場合は、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0115】
−−保護層−−
本発明において、有機電界発光素子全体は保護層によって保護されていてもよい。保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0116】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0117】
−−封止−−
さらに、前記有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。さらに、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、及び酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、及びシリコーンオイル類が挙げられる。
【0118】
また、下記に示す樹脂封止層にて封止する方法も好適に用いられる。
【0119】
−−−樹脂封止層−−−
前記有機電界発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により抑制することが好ましい。
樹脂封止層の樹脂素材としては特に限定されることはなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、又はエステル系樹脂等を用いることができるが、中でも水分防止機能の点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
樹脂封止層の作製方法は特に限定されることはなく、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法が挙げられる。
【0120】
−−−封止接着剤−−−
前記封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、中でも光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が好ましい。
また、上記材料にフィラーを添加することも好ましい。封止剤に添加されているフィラーとしては、SiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)又はSiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。フィラーの添加により、封止剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
封止接着剤は乾燥剤を含有しても良い。乾燥剤としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、又は酸化ストロンチウムが好ましい。封止接着剤に対する乾燥剤の添加量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05質量%以上15質量%以下である。これよりも少ないと、乾燥剤の添加効果が薄れることになる。またこれよりも多い場合には封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になり好ましくない。
本発明においては、上記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
【0121】
<製造プロセス例(1)>
本発明の発光表示装置の製造方法の製造プロセス例(1)を図面を用いて説明する。
先ず、基板101上に一様に反射材料を蒸着した後、フォトリソグラフィー法により、該反射部材をパターニングして、赤、緑、青の各色に対応する画素領域に層状の反射部材102(102a、102b、102c)と、反射部材102が配される領域で画成される有効画素領域E及び該有効画素領域の周囲に配される非有効画素領域Nとからなる被加工領域150(150a、150b)を囲繞し、反射部材102と同一の反射材料から形成されるバンク部103とを、同時に形成する(バンク部形成工程、図5参照)。
【0122】
次いで、バンク部103で囲繞された被加工領域150aの有効画素領域E及び非有効画素領域Nと、バンク部103で囲繞された被加工領域150bの有効画素領域E及び非有効画素領域Nとに対し、インクジェット法により、光透過性材料104(104a、104b)を、塗布厚みを調整して選択的に塗布する(光透過性材料塗布工程、図6参照)。
【0123】
次いで、被加工領域150に光透過性材料104が塗布された状態で、紫外光による露光を行い、光透過性材料104を硬化させ、光透過性材料からなる光路長調整層105(105a、105b)を形成する(光路長調整層形成工程、図7参照)。
【0124】
異なる厚みにより光路長が調整された光路長調整層105a、105b、及び反射部材102cのそれぞれの面上に、透明導電膜106(106a、106b、106c)を形成する。
次いで、各透明導電膜106上に、有機発光層107(107a、107b、107c)と半透明部材108(108a、108b、108c)とをこの順で積層し、発光表示装置100を製造する(図8参照)。
このようにして製造される発光表示装置100においては、有機発光層107から出射された光が、光路長調整層105a、105bにより調整された光路長d、d、及び光路長dに対応して、それぞれ青、緑、赤に対応する波長の光として半透明部材108側から取り出される。
即ち、有機発光層107から出射された光は、光路長がd、d、dからなる半透明部材108と反射部材102と、これらの間に配される有機発光層107を含む各層とで構成される共振器構造により共振され、各光路長に応じた青、緑、赤の波長の光が強められることにより、青、緑、赤の光として発光表示装置100から取り出すことが可能とされる。
【0125】
製造プロセス例(1)によれば、光路長差の形成に、レジスト層の形成、レジスト層をマスクとしたエッチング処理、レジスト層の剥離といった工程が不要であることから、従来の製造プロセスに比べて、製造プロセスを大幅に簡易化することができ、更に、バンク部103で囲繞された被加工領域105に光透過性材料を塗布することで、塗布ムラのない平坦な光路長調整層を得ることができる。
【0126】
<製造プロセス例(2)>
次に、本発明の発光表示装置の製造方法の製造プロセス例(2)を説明する。製造プロセス例(2)においては、赤、緑、青の各色に対応する画素領域に層状の反射部材112(112a、112b、112c)が形成された基板111上に、光透過性材料114と同一の材料の形成材料をインクジェット法により塗布し露光することで、有効画素領域からなる被加工領域150にバンク部113を形成する(バンク部形成工程)。
引き続き、光透過性材料114を用いて、被加工領域160(160a、160b)に対して、インクジェット法により塗布厚みを調整して、光透過性材料114(114a、114b)を選択的に塗布する(光透過性材料塗布工程)。
次いで、被加工領域160に光透過性材料114が塗布された状態で、紫外光による露光を行い、光透過性材料114を硬化させ、光透過性材料からなる光路長調整層115(115a、115b)を形成する(光路長調整層形成工程、以上の各工程につき、図9参照)。
これ以外は、製造プロセス例(1)と同様であるため、説明を省略する。
【0127】
<製造プロセス例(3)>
次に、本発明の発光表示装置の製造方法の製造プロセス例(3)を説明する。製造プロセス例(3)では、光透過性材料塗布工程において、溶媒で希釈された光透過性材料124を用いる。
ここでは、反射部材122(122a、122b、122c)が配された基板121上に、反射部材122で画成される有効画素領域Eと、有効画素領域Eの周囲に配される非有効画素領域Nとからなる被加工領域170を囲繞するバンク部123を形成し、このバンク部123に対して、インクジェット法により塗布厚みを調製して、光透過性材料124(124a、124b)を選択的に塗布し、これを露光することにより、光透過性材料124からなる光路長調整層125(125a、125b)を形成する(図10参照)。
これ以外は、製造プロセス例(1)と同様であるため、説明を省略する。
なお、製造プロセス例(3)においては、図11に示すように、光路長調整層125a、125b、及び反射部材122cに対して、透明導電膜126(126a、126b、126c)と、有機発光層127(127a、127b、127c)と、半透明部材128(128a、128b、128c)とが積層される。
なお、前記製造プロセス例(1)〜(3)では、バンク部形成工程を含めて説明を行ったが、本発明は、これらのプロセスに限られることはなく、バンク部形成工程を実施せずに、光透過性材料塗布工程を実施してもよい。
【0128】
(発光表示装置)
本発明の発光表示装置は、複数の色に対応する複数の画素のうち、少なくとも一の画素に反射金属が配される基板と、前記基板上に、光透過性材料で形成された光路長調整層とを有してなり、他の構成として、発光表示装置を構成するために必要な発光表示素子を有してなる。前記複数の色としては、例えば、赤、緑、青が該当する。
【0129】
前記発光表示装置は、前記構成からなるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の前記発光表示装置の製造方法により製造されるのが好ましく、本発明の前記発光表示装置の製造方法について説明した事項のすべての事項を適用することができる。
【0130】
前記発光表示装置においては、有機発光層から出射された光が、異なる厚みで形成される前記光路長調整層の光路長に対応して、青、緑、赤に対応する波長の光を取り出すことが可能であるが、前記発光表示装置の観察者側における青、緑、赤の各画素領域において、それぞれの色に対応するカラーフィルターを更に配し、より高精細なフルカラー表示を可能としてもよい。
【0131】
−第1の実施形態−
本発明の第1の実施形態に係る発光表示装置100を図8を用いて説明する。発光表示装置100は、トップエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置100は、基板101上に、赤、緑、青に対応する画素領域において、有効画素領域を画成する反射部材102a、102b、102cが配されている。
赤の画素領域においては、反射部材102を被覆するように光路長調整層105(105a、105b)が配され、透明導電膜(陽極)106(106a、106b、106c)と、有機発光層107(107a、107b、107c)と介して、反射材料102に対向する半透明部材(陰極)108(108a、108b、108c)が配されている。該赤の画素領域においては、光路長が光路長調整層105aにより調整され、反射部材102aと半透明部材108aとの間に光路長調整層105aと透明導電膜106aと有機発光層107aとを有する光路長dが形成される。
緑の画素領域においては、反射部材102bを被覆するように光路長調整層103bが配され、透明導電膜106bと有機発光層107bとを介して、反射部材102bに対向する半透明部材108bが配されている。該緑の画素領域においては、光路が光路長調整層105bにより調整され、反射部材102bと半透明部材108bとの間に光路長調整層103bと透明導電膜106bと有機発光層107bとを有する光路長dが形成される。
青の画素領域においては、透明導電膜106cと有機発光層107cとを介して、反射部材102cに対向する半透明部材108cが配されている。該青の画素領域においては、反射部材102cと半透明部材108cとの間に透明導電膜106cと有機発光層107cとを有する光路長dが形成される。
【0132】
このようにして形成される発光表示装置100は、有機発光層107から出射される光が、反射部材102と半透明部材108との間で共振し、光路長d、d、dに応じて特定の発光波長の光が強められ、それぞれ青、緑、赤の光として半透明部材108側から取り出される。
【0133】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態に係る発光表示装置200を図12を用いて説明する。発光表示装置200は、トップエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置200では、青の画素領域において、反射部材102cを被覆するように光路長調整層105cが配され、透明導電膜106cと有機発光層107cとを介して、反射部材102cに対向する半透明部材108cが配されている。該青の画素領域においては、光路が光路長調整層105cにより調整され、反射部材102cと半透明部材108cとの間に光路長調整層105cと透明導電膜106cと有機発光層107cとを有する光路長dが形成される。
その他の点については、第1の実施形態と共通するため、説明を省略する。
【0134】
−第3の実施形態−
本発明の第3の実施形態に係る発光表示装置300を図13を用いて説明する。発光表示装置300は、ボトムエミッション方式の発光表示装置である。
該発光表示装置300では、赤、緑、青に対応する画素領域において、有効画素領域を画成する半透明部材(陰極)108(108a、108b、108c)が配されている。
また、有機発光層107(107a、107b、107c)上に、半透明部材108に対向して反射部材(陽極)102(102a、102b、102c)が配される。
その他の点については、第1の実施形態と共通するため、説明を省略する。
【0135】
(発光ディスプレイ)
本発明の発光ディスプレイは、本発明の前記発光表示装置を有してなり、必要に応じて、その他の構成を適用することができる。
前記発光ディスプレイとしては、光路長調整層が光透過性材料により形成され、発光表示部がフレキシブル性を有するため、応力による割れなどが生じず、フレキシブルディスプレイとして用いることができる。
また、前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ディスプレイに必要な事項として、公知の手段すべてを適用することができる。
【実施例】
【0136】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0137】
(実施例1)
基板上に真空蒸着法によりアルミニウムを100nm成膜し、次いで、フォトリソグラフィープロセスによるパターニングを行って、赤、緑、青に対応する3つの有効画素領域に、アルミニウムからなる、反射電極(反射部材)と有効画素領域からなる被加工領域を囲繞するバンク部とを同時形成した(バンク部形成工程)。
次いで、光路長の調整対象となる赤、緑に対応する各有効画素領域を含むそれぞれの被加工領域に、インクジェット法にて光透過性材料(ラジカル重合性モノマー、製品名:1,10デカンジオールジアクリレート、製造元:新中村化学工業)を選択的に塗布した(光透過性材料塗布工程)。
インクジェット装置としては、Fujifilm Dimatix社製DMP2831を用い、吐出周波数1kHz、吐出速度6m/sの条件で塗布を行った。
このとき赤用の有効画素領域においては95nmの厚み、緑用の有効画素領域においては45nmの厚みになるように打滴数を調整して塗布し、青用の画素には塗布をせず、赤、緑、青の各有効画素領域において、それぞれの有効画素領域が異なる光路長を有するように調整を行った。
【0138】
前記光透過性材料塗布工程の後、UV露光装置を用いて2,800mJ/cmの照度で露光し、塗布した光透過性材料を硬化させ、光路調整層を作成した(光路調整層形成工程)。
【0139】
赤、緑に対応する有効画素領域における各光路長調整層の上面と、青に対する有効画素領域における反射部材の上面に、ITO透明電極を形成した。透明電極のパターニング成膜は、シャドウマスクを用いて、各有効画素領域ごとに行った。なお、該パターニング成膜は、全面成膜した後、フォトリソグラフィー法により個々にパターニングして行ってもよい。
【0140】
前記透明電極の上面に、真空成膜装置(製品名:CM457、製造元:トッキ株式会社)によって、白色有機電界発光層(白色OLED)を形成した。
前記白色OLEDの上面に、光半反射電極として金属電極(アルミニウム)を真空成膜製装置(製品名:CM457、製造元:トッキ株式会社)で形成した。
【0141】
OLED形成領域をガラス缶により封止し、各電極を外部の信号制御装置に接続し、実施例1における発光表示装置を製造した。
【0142】
前記発光表示装置を複数配置することで、実施例1における発光ディスプレイを製造した。
こうして製造された発光ディスプレイの発光状態を確認したところ、高精細にRGBの発色を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の発光表示装置の製造方法は、簡易な製造プロセスを有する発光表示装置の製造方法として、広く利用可能であり、また、該製造方法により製造される発光表示装置は、高精細なフルカラー表示が可能であるため、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い分野で応用される。
【符号の説明】
【0144】
1、101、111、121 基板
2、2a、2b、2c 反射金属
3a、3b 光透過性材料
4 マスク
6、106、116、126 透明導電膜(陽極)
7、107、117、127 有機発光層
8、108、118、128 半透明部材(陰極)
10 ITO膜(光路長調整層)
20 レジスト層
100、200、300、400 発光表示装置
102、112、122 反射部材
103、113、123 バンク部
104、114、124 光透過性材料
105、115、125 光路長調整層
150、160、170 被加工領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色に対応する複数の有効画素領域に反射部材及び半透明部材を配設可能な基板に対して、個々の有効画素領域を含むように画成される被加工領域上に、光透過性材料を塗布する光透過性材料塗布工程と、
前記塗布された光透過性材料を硬化させ、該光透過性材料からなる光路長調整層を形成する光路長調整工程と、を含み、
前記光透過性材料塗布工程における、一の被加工領域に対する前記光透過性材料の塗布を、該一の被加工領域に隣接する他の被加工領域と独立して行うことを特徴とする発光表示装置の製造方法。
【請求項2】
被加工領域を囲繞するバンク部を形成するバンク部形成工程を含む請求項1に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項3】
バンク部形成工程が、個々の有効画素領域及び該有効画素領域の周囲に配される非有効画素領域から画成される被加工領域を囲繞するバンク部を形成する工程であり、
光透過性材料塗布工程が、前記有効画素領域及び前記非有効画素領域の全部又は一部を含む領域に光透過性材料を塗布する工程である請求項2に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項4】
バンク部形成工程において、バンク部の形成材料が反射部材の材料と同一の材料である請求項2から3のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項5】
バンク部形成工程において、バンク部の形成材料が半透明部材の材料と同一の材料である請求項2から3のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項6】
バンク部形成工程において、バンク部の形成材料が光透過性材料と同一の材料である請求項2から3のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項7】
光透過性材料塗布工程において、光透過性材料がインクジェット法により塗布される請求項1から6のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項8】
光透過性材料が、光硬化性樹脂である請求項1から7のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項9】
光硬化性樹脂が、ラジカル重合性モノマーである請求項8に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
ラジカル重合性モノマーが、ラジカル重合性官能基を2つ以上有する請求項9に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
ラジカル重合性モノマーが、エチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーである請求項10に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
エチレン不飽和二重結合性基を有するモノマーが、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのいずれかである請求項11に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
光透過性層形成工程における硬化を、光重合開始剤の存在下で露光して、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて行う請求項9から12のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
光路長調整層におけるラジカル重合性モノマーの残存量が1×10−2g/m以下である請求項9から13のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
光路長調整層が平坦化膜上に形成され、前記平坦化膜が前記光路長調整層の光透過性材料と同一の光透過性材料で形成される請求項1から14に記載の発光表示装置の製造方法。
【請求項16】
複数の色に対応する複数の有効画素領域のうち、少なくとも1つの有効画素領域に反射部材及び半透明部材が配される基板と、前記基板上に、光透過性材料で形成された光路長調整層とを有することを特徴とする発光表示装置。
【請求項17】
個々の有効画素領域を含むように画成される被加工領域を囲繞するバンク部を有する請求項16に記載の発光表示装置。
【請求項18】
請求項1から15のいずれかに記載の発光表示装置の製造方法により製造される請求項16から17のいずれかに記載の発光表示装置。
【請求項19】
請求項16から18のいずれかに記載の発光表示装置を有することを特徴とする発光ディスプレイ。
【請求項20】
フレキシブルディスプレイとして用いられる請求項19に記載の発光ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−165621(P2011−165621A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30426(P2010−30426)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】