説明

発光装置、及びその作製方法

【課題】エレクトロルミネッセンスを用いた発光装置を作製するにおいて、その寿命はいまだ数千時間から数万時間程度の寿命に止まっており、更なる長寿命化が望まれている。寿命を短くする要因として、水分や酸素への露呈および自身の発熱による劣化などが大きい。
【解決手段】基板上に第1の電極を形成し、第1の電極上に有機EL層を形成し、有機EL層上に第2の電極を形成する発光装置の作製方法において、基板と蓋体とを接着させることにより、基板と蓋体の間に閉空間を形成し、閉空間には不活性気体を満たし、蓋体の閉空間と接する面には不活性元素を添加する。閉空間には乾燥剤や酸素吸蔵物質を配置可能であるため水分や酸素の除去も効果的に行える。これにより不活性気体が微量に流出しても添加された不活性元素が補填されるため、長期にわたり特性の落ちない発光装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間に有機化合物を含む膜(以下、「有機化合物層」と記す)を設けた素子に電界を加えることで、蛍光又は燐光が得られる発光素子を用いた発光装置及びその作製方法に関する。なお、発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型の発光素子としてエレクトロルミネッセンスを利用したEL素子を有した発光装置の研究が活発化している。当該発光装置は、有機EL(Electro Luminescence、以下ELと称す。)ディスプレイや有機EL照明などに利用されている。このような発光装置は有機発光ダイオードとも呼ばれている。EL素子の設けられた発光装置は、動画表示に適した速い応答速度、低電圧、低消費電力駆動などの特徴を有しているため、新世代の携帯電話や携帯情報端末(PDA)をはじめ、次世代ディスプレイとして大きく注目されている。
【0003】
EL素子をマトリクス状に配置して形成された発光装置には、パッシブマトリクス駆動(単純マトリクス型)とアクティブマトリクス駆動(アクティブマトリクス型)といった駆動方法を用いることが可能である。画素密度が増えた場合には、画素(又は1ドット)毎にスイッチが設けられているアクティブマトリクス型の方が低電圧駆動できるので有利であると考えられている。EL素子は、無機化合物を利用した無機EL素子と、有機化合物を利用した有機EL素子とに大別される。
【0004】
また、有機化合物を含む層は「正孔輸送層、発光層、電子輸送層」に代表される積層構造を有している。また、これらの層の材料は低分子系(モノマー系)材料と高分子系(ポリマー系)材料に大別され、低分子系材料は例えば蒸着法を用いて成膜される。
【0005】
なお、有機EL素子は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence)が得られる有機化合物を含む層と、陽極と、陰極とを有する。本明細書中では、陽極と陰極とで挟まれた積層構造を有する発光に関わる層をまとめて有機EL層と呼称する。有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とがあることが知られている。
【0006】
有機EL素子を有する有機ELディスプレイは、バックライトを必要とする液晶表示装置と異なり自発光型であるため、高いコントラストを実現し易く、視野特性も広いことから視認性に優れている。即ち、屋外で用いられるディスプレイとしては、液晶ディスプレイよりも適しており、携帯電話、デジタルカメラの表示装置等をはじめとして、様々な形での使用が提案されている。
【0007】
また、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子、つまりEL素子を用いれば、大面積な面状の発光装置を形成することも容易にできる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色である。加えて、当該発光素子の発光効率が白熱電球や蛍光灯よりも高いという試算から、次世代の照明器具に好適であるとして注目されている。
【0008】
有機EL素子の欠点として、有機EL層やそれを両側から挟んでいる電極が、水分や酸素に曝されると急速にその性能を低下させることが挙げられる。これに関しては、有機EL層や両電極を大気に曝さないよう、例えば、特許文献1乃至5のような先行技術に記された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】昭61−188889号公報
【特許文献2】特開2001−167877号公報
【特許文献3】特開平8−302340号公報
【特許文献4】特開平4−249092号公報
【特許文献5】特開2001−85156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
有機ELとよく対比される技術としてLEDが挙げられる。近年では、飛躍的な寿命の向上により急速にそのシェアを伸ばしつつある。とくにLED照明の寿命は10万時間を超えるものも出てきており、長期間の使用に耐える特徴を生かし、信号機や街灯などに採用されている。これにより交換の頻度が著しく低下するため、大幅な経費節減、資源の節約などにつながる。最近は液晶ディスプレイなどにも採用されはじめており、ディスプレイの長寿命化にも大きく寄与するものである。他方、有機EL素子の場合、その寿命はいまだ数千時間乃至数万時間程度に止まっており、更なる長寿命化が望まれている。
【0011】
有機EL素子の寿命を短くする要因として、先に挙げた水分や酸素のほかに、有機EL素子自身の発熱による劣化なども大きい。これに環境の温度変化が加わると著しく素子特性に影響する。これについては有機EL層を挟む電極を直接熱伝導性の高い固体に接して配置することで、熱を逃げやすくするなどの工夫がなされている。しかしながら、これを行うと水分や酸素などを除去するための機能性材料(乾燥剤や酸素吸蔵物質など)を入れる余地が無くなり、装置設計上問題となる。従って、有機EL素子の周辺に閉空間を設け、当該機能性材料を配置する余地を残しつつ、かつ熱の逃げやすい構成とするため、当該閉空間を熱伝導性の高い不活性気体で充填する方法が考えられている。しかしながら、封入された気体成分は長い時間をかけて当該閉空間より抜けていくため、とくに10万時間の寿命を必要とする照明装置などにはこのような方式は適していない。
【0012】
本発明は、上記問題を鑑み、有機EL素子を用いた、劣化の少ない発光装置を提供することを課題の一とする。また、当該発光装置を作製する方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る発光装置は、不活性気体が充填された気密性容器と、気密性容器の内側に配設され、発光材料として有機エレクトロルミネセンス材料を含む発光素子とを有し、気密性容器は、その内壁の全部又は少なくとも一部の領域に、不活性気体と同種又は異種の不活性元素を含んでいることを特徴とする。
【0014】
また、上述の不活性元素は、1×1015atoms/cm以上1×1018atoms/cm以下の範囲で気密性容器の内壁に含まれていると、気密性容器内に充填された不活性気体が当該気密性容器の容積の1%以上1000%以下の範囲で流出しても、気密性容器内の内壁に添加された不活性元素が気化して補填され、当該気密性容器内の不活性気体の濃度が保たれるため好ましい。ここで流出する気体の量の範囲が100%を超えているのは、気体の流出に伴い補填できる気体の量が気密性容器の容積を超えているからである。
【0015】
不活性元素の濃度ピークは、気密性容器の内側から1nm以上500nm以下の範囲に位置すると、気密性容器内の不活性気体の流出に合わせて、添加された不活性元素が徐々に気密性容器内に気化するため好ましい。
【0016】
また、上述の不活性気体はとくに熱伝導性の高いヘリウム(He)とすると、本発明に係る発光装置の発熱を効果的に抑えることができるため好ましい。ヘリウムは地球上に潤沢に存在するため、コスト面や製造の容易性に優れている。
【0017】
また、上述の不活性気体はヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、または窒素(N)のいずれか一であるか、それらの混合気体であってもよい。これらの気体は不活性であるため、当該発光装置の長寿命化に寄与する。
【0018】
また、上述の不活性元素はとくに熱伝導性の高いヘリウム(He)とすると、本発明に係る発光装置の発熱を効果的に抑えることができるため好ましい。ヘリウムは地球上に潤沢に存在するため、コスト面や製造の容易性に優れている。
【0019】
また、上述の不活性元素はヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、または窒素(N)のいずれか一であるか、それらの混合気体であってもよい。これらの気体は不活性であるため、当該発光装置の長寿命化に寄与する。
【0020】
また、基板と蓋体とに挟まれた閉空間には乾燥剤を配置すると、発光装置の電極や有機EL層を水分から保護できるため好ましい。これは発光装置の更なる長寿命化に寄与する。また、酸素を吸蔵できる酸素吸蔵物質を配置すると、有機EL素子に有害な酸素を除外できるため好ましい。
【0021】
本発明は、上述した発光装置に加え、当該発光装置の作製方法も包含している。すなわち、本発明は、基板上に第1の電極を形成し、第1の電極上に有機EL層を形成し、有機EL層上に第2の電極を形成し、蓋体の表面に不活性元素を添加し、不活性元素を内側にして蓋体と当該基板を対向させ、不活性気体中にて貼り合わせることで閉空間を形成することを特徴とする発光装置の作製方法である。
【0022】
不活性元素の添加方法としてドーピング法を適用すると、当該不活性元素にかかる加速電圧は、0.5kV以上250kV以下であると好ましい。これにより深さ1nm以上500nm以下の範囲内に、ドーズの濃度ピークが形成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る有機EL素子は、劣化の原因となる発熱、および、水分、酸素などの有害物質への暴露を同時に抑制できるため、非常に長寿命で高い信頼性を有するものである。とくに本発明は、熱伝導性の高いHeなどの不活性気体を蓋体で有機EL素子に接して封入することにより気密性容器を形成し、さらに当該気密性容器の内壁に不活性元素を高濃度で添加することで、気密性容器から長時間かけて微量に漏れ出す不活性気体の補填とすることが可能であるため、より長期にわたり不活性気体による封入を維持できる。したがって、より長期にわたり熱伝導性の高い気体による封止状態を維持できるため、有機EL素子の発熱をより長期にわたり抑制することが可能である。
【0024】
加えて、本発明では有機EL素子を気体で封止できるため、酸素や水分を除去する機能性材料(例えば酸素吸蔵物質、乾燥剤など)を気密性容器内部に設置することが可能となり、より劣化の少ない高信頼性の有機EL素子を提供できる。このように、本発明に係る有機EL素子は自身の発熱および水分、酸素などの有害物質への暴露を同時に抑制し、長期に渡たり維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】有機EL素子の例を示す断面図。
【図2】本発明に係る接着工程を示す模式図。
【図3】発光装置の作製工程を示す断面図。
【図4】発光素子の例を示す図。
【図5】発光素子の例を示す図。
【図6】パッシブマトリクス型発光装置の平面図および断面図の例。
【図7】パッシブマトリクス型発光装置の斜視図の一例。
【図8】パッシブマトリクス型発光装置の平面図の一例。
【図9】アクティブマトリクス型発光装置の平面図および断面図の一例。
【図10】電子機器の例を示す図。
【図11】電子機器の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の主旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更しうることは、当業者であれば容易に可能である。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる場合がある。なお、本明細書中において序数は順番を示すものではない。
【0027】
(実施の形態1)
本発明に係る発光装置の構造および作製方法を、図1、図2を用いて説明する。図1は、本発明に係る有機EL素子の基本的な構成を示す断面図である。以下に、図示した当該有機EL素子の作製方法の例を示す。
【0028】
まず、基板100を準備する。ボトムエミッション構造の有機EL素子を作製する場合、基板100は可視光に対して透光性を有する必要がある。そのような基板の例として、石英基板、ガラス基板、プラスチック基板などがある。一般に、プラスチック基板は水分や空気を通しやすいといわれているが、特に本発明においては外気の遮断が重要となるため、プラスチック基板に代表される樹脂系の基板には、高い遮断機能を有する層を基板上に形成するとよい。そのようなものの例として、厚さ100μm以下の極薄ガラス基板や、酸化アルミ膜や窒化珪素膜に代表される、金属窒化膜や金属酸化膜などが挙げられる。これらのものを積層させ、より高い遮断機能を持たせると好ましい。他方、トップエミッション構造の有機EL素子を作製する場合は、基板100に対する自由度は飛躍的にあがるが、液晶パネルの基板に採用されているガラスのものに近い、熱膨張係数の低いものを採用しなくてはならない。なぜならば、熱膨張により有機EL素子を構成する発光層またはその周囲に亀裂の入る恐れがあるからである。従って、このことはボトムエミッション構造の素子を作製する場合にもあてはまる。
【0029】
つぎに、基板100上に薄膜状の第1の電極101を形成する。実施の形態1ではボトムエミッション構造の有機EL素子の作製方法について説明するため、第1の電極101は可視光線に対し透光性を有する必要がある。そのような電極材料の例として、インジウム錫酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などがある。本明細書中において、ITOとはインジウム錫酸化物を指すものとする。これらの電極はスパッタリング法やスピンコート法などにより形成できる。続いて、有機EL層102を形成する。有機EL層は水分や酸素などで劣化するため、第1の電極を形成した基板を洗浄し、さらに水分などを飛ばすための熱処理やプラズマ処理などを施すとよい。その後、有機EL層を形成する。有機EL層は通常積層構造を有し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などからなる。これらの層は蒸着法や塗布法などにより形成できるが、材料やそれらの組み合わせなどにより実施者が適宜選択する。また、劣化抑制の観点から、蒸着処理は、真空装置の中で大気に暴露することなく、連続的に行うことが好ましい。最後に第2の電極103を形成する。当該電極の形成においても、真空装置から出すことなく行うことが、劣化の抑制には有効である。当該第2の電極103は、有機EL層の発光波長に対し、反射率の高い材料から形成すると好ましい。具体的には、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、若しくはパラジウム(Pd)等の金属材料を用いることができる。また、透光性材料であるインジウム錫酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2%以上20%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウムを積層した構造を用いてもよい。なお、第2の電極材料は、これらに限定されない。これらの膜は、材料に応じて蒸着法やスパッタリング法などの方法で形成する。
【0030】
以上の工程を経て発光素子は発光可能な状態となるが、このまま外気に曝されると急速に劣化するため、第2の電極103形成の後、真空装置から外気に曝すことなく、不活性気体で充填されたチャンバー200に移し、蓋体104を接着する。
【0031】
接着工程を図2に沿って説明する。外気と遮断されたチャンバー200は大気圧に近い不活性気体で満たされており、基板100に有機EL素子の積層構造を形成する他のチャンバーと、ゲートバルブ203を介し接続されている。当該積層構造は、真空チャンバー内で形成されるため、ゲートバルブ203は図示しないベントのためのチャンバーにつながっている。これにより圧力差を調整し、不活性気体の流出を抑える。チャンバー200に導入された基板100はディスペンサー201により接着剤202を塗布され、さらに蓋体104を接着剤202に押し付け、接着剤に応じて所望の処理を施し、接着を完了する。接着剤には紫外線を当てて硬化させるものや、熱により硬化するものなどがあり、用途により使い分けるとよい。また、先に示した例では、接着剤202を基板100側に塗布したが、蓋体104のほうに塗ってから貼り合わせてもよいし、両者を併用してもよい。その他の接着の手段として、レーザ溶接などが挙げられる。レーザ溶接を行うと接着剤が不要になるほか、接着剤より気化する有機EL素子に有害な成分が発生しないなどの利点がある。
【0032】
蓋体104には、その内壁にあらかじめ不活性元素が添加されている。添加方法として、たとえばドーピング法を適用すると、当該不活性元素の濃度は1×1014atoms/cm以上1×1019atoms/cm以下までの範囲、好ましくは1×1015atoms/cm以上1×1018atoms/cm以下までの範囲である。イオン注入の際の加速電圧は20kVとしたが、0.5kV以上250kV以下の間で実施者が適宜選ぶ。これにより、深さ1nm以上500nm以下の位置に、ドーズの濃度ピークができる。蓋体104の極表面にドーズの濃度ピークを設けることにより、不活性気体の放出を容易にできる。先に述べたように、接着は、蓋体104の内壁を内側として、たとえば接着剤107やレーザ溶接などにて行う。これにより、蓋体104と基板100で囲まれた気密性容器105が形成される。気密性容器105を形成する蓋体104と基板100の間隔を100μmとしたとき、先に示したドーズの範囲(1×1015atoms/cm以上1×1018atoms/cm以下)は、気密性容器105の容積を、1気圧のもと、1%以上1000%以下で充填できる量の範囲を示している。従って、気密性容器105内の不活性気体が長時間をかけて抜け続けても、気密性容器の内壁に注入された不活性元素が気化して補充されるため、高い気密性を維持できる。ここで流出する気体の量の範囲が100%を超えているのは、気体の流出に伴い補填できる気体の量が気密性容器105の容積を超えているからである。蓋体104は外気を遮断する機能を有している。なお、この例では不活性元素の添加方法として、ドーピング法を採用したが、その他の方法、例えば蓋体104の内壁に不活性元素を多量に含む膜をスパッタリング法などにより形成してもよい。この場合、有機EL素子に影響のないよう酸化金属膜や窒化金属膜などの無機膜を形成すると好ましい。また、蓋体104以外の気密性容器105の内壁に不活性元素を添加してもよい。実施の形態1では、ボトムエミッション構造の素子を作製するため、蓋体104に可視光線に対する透光性を付与する必要はないが、トップエミッション構造のものを作製する場合は、ガラス基板や石英基板、プラスチック基板などの中から適宜選択する。プラスチック基板を用いる場合には、水分や酸素を遮断する能力が十分でない可能性があるので、たとえば極薄ガラス基板や窒化金属膜や酸化金属膜をプラスチック基板上に形成し、酸素や水分の遮断能力を高めると好ましい。
【0033】
なお、蓋体104の内側には水分や酸素などを吸収させるための機能性材料106を設置する。乾燥剤としてたとえばゼオライト、五酸化二リン(P)、酸化カルシウム、塩化カルシウムなどを用いるとよい。酸素を吸蔵できる酸素吸蔵物質には、セリア系物質(CeO、CeO−ZrOなど)や希土類オキシ硫化物(LnS)などがあり、これらを併せて用いてもよい。
【0034】
本発明を適用することで、発熱を抑えかつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な発光装置を提供できる。この効果は、例えば、公共施設の照明やディスプレイなどの交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。もちろん個人用の各種発光装置にも同様のことが当てはまる。
【0035】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0036】
(実施の形態2)
本発明に係る他の発光装置の構造および作製方法を、図3を用いて説明する。図3は、本発明に係る有機EL素子の作製過程において、レーザ溶接により蓋体104を基板100に接着する工程を断面図で示している。以下に、図示した当該有機EL素子の作製方法の例を示す。
【0037】
まず、基板100を準備する。ボトムエミッション構造の有機EL素子を作製する場合、基板100は可視光に対して透光性を有する必要がある。そのような基板の例として、石英基板、ガラス基板、プラスチック基板などがある。一般に、プラスチック基板は水分や空気を通しやすいといわれているが、特に本発明においては外気の遮断が重要となるため、プラスチック基板に代表される樹脂系の基板には、高い遮断機能を有する層を基板上に形成するとよい。そのようなものの例として、厚さ100μm以下の極薄ガラス基板や、酸化アルミ膜や窒化珪素膜に代表される、金属窒化膜や金属酸化膜などが挙げられる。これらのものを積層させ、より高い遮断機能を持たせると好ましい。他方、トップエミッション構造の有機EL素子を作製する場合は、基板100に対する自由度は飛躍的にあがるが、液晶パネルの基板に採用されているガラスのものに近い、熱膨張係数の低いものを採用しなくてはならない。なぜならば、熱膨張により有機EL素子を構成する発光層またはその周囲に亀裂の入る恐れがあるからである。従って、このことはボトムエミッション構造の素子を作製する場合にもあてはまる。
【0038】
つぎに、基板100上に薄膜状の第1の電極101を形成する。実施の形態2ではボトムエミッション構造の有機EL素子の作製方法について説明するため、第1の電極101は可視光線に対し透光性を有する必要がある。そのような電極材料の例として、インジウム錫酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などがある。これらの電極はスパッタリング法やスピンコート法などにより形成できる。続いて、有機EL層102を形成する。有機EL層は水分や酸素などで劣化するため、第1の電極を形成した基板を洗浄し、さらに水分などを飛ばすための熱処理やプラズマ処理などを施すとよい。その後、有機EL層102を形成する。有機EL層は通常積層構造を有し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などからなる。これらの層は蒸着法や塗布法などにより形成できるが、材料やそれらの組み合わせなどにより実施者が適宜選択する。また、劣化抑制の観点から、蒸着処理は、真空装置の中で大気に暴露することなく、連続的に行うことが好ましい。最後に第2の電極103を形成する。当該電極の形成においても、真空装置から出すことなく行うことが、劣化の抑制には有効である。当該第2の電極103は、有機EL層の発光波長に対し、反射率の高い材料から形成すると好ましい。具体的には、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、若しくはパラジウム(Pd)等の金属材料を用いることができる。また、透光性材料であるインジウム錫酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、2%以上20%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウムを積層した構造を用いてもよい。なお、第2の電極材料は、これらに限定されない。これらの膜は、材料に応じて蒸着法やスパッタリング法などの方法で形成する。
【0039】
以上の工程を経て発光素子は発光可能な状態となるが、このまま外気に曝されると急速に劣化するため、第2の電極103形成の後、真空装置から外気に曝すことなく、不活性気体で充填されたチャンバー113に移し、蓋体104を接着する。
【0040】
接着工程を図3に沿って説明する。外気と遮断されたチャンバー113は大気圧に近い不活性気体で満たされており、基板100に有機EL素子の積層構造を形成する他のチャンバーと、図示しないゲートバルブを介し接続されている。当該積層構造は、真空チャンバー内で形成されるため、ゲートバルブは図示しないベントのためのチャンバーにつながっている。これにより圧力差を調整し、不活性気体の流出を抑える。つづいて、基板100を窓112に対向させた状態で、蓋体104の一部を基板100に密着させる。基板100と蓋体104との密着部108には、窓112を介しレーザビーム109を照射する。レーザビーム109はレーザ111から射出され、集光レンズ110により、密着部108にて最小径となる。レーザビーム109は、低エネルギー密度では窓112と基板100を透過し、高エネルギー密度では基板100に吸収される性質をもつ。そのようなレーザビーム109を発生させるレーザ111には、たとえば極短パルスレーザがある。パルス幅はサブナノ秒以下であり、数十ピコ秒以下、たとえば30ピコ秒以下であるとそのような性質が顕著になる。あまりにもパルス幅が短いと、熱を十分に与えることが難しいため、パルス幅は1フェムト秒以上であると好ましい。また、熱的な効果を出すために、パルスの繰り返し周波数は10kHz以上であると好ましい。量産に適した工程とするためには100kHz以上、好ましくは1MHzの繰り返し周波数を有しているとよい。レーザの出力は0.1W以上100W以下、レーザビーム109の波長は400nm以上2000nm以下の範囲が好ましい。この波長領域であれば、可視光線に対して透明な物質に対して透光性を有し、かつ高エネルギー密度領域を形成したときに当該透明な物質に吸収される特性をレーザビーム109に付与できる。このような現象は多光子吸収として知られている。
【0041】
気密性容器105を形成するため、密着部108に沿ってレーザビーム109を走査させる必要がある。これについては、たとえばレーザ111と集光レンズ110をユニット化してXYステージに載せ、XY平面内で動かせるようにしておけばよい。レーザ溶接を行うと接着剤が不要になるほか、接着剤より気化する有機EL素子に有害な成分が発生しないなどの利点がある。極短パルスレーザによるレーザ溶接では、溶融池と呼ばれる溶けた液状のものが瞬間的に形成されるが、その大きさは直径数μm程度と非常に小さなものであるため、たとえ気化して拡散しても、有機EL素子にはほとんど影響しない。
【0042】
蓋体104には、その内壁にあらかじめ不活性元素が注入されている。注入方法として、たとえばドーピング法を適用すると、ドーズは1×1014atoms/cm以上1×1019atoms/cm以下までの範囲、好ましくは1×1015atoms/cm以上1×1018atoms/cm以下までの範囲である。注入の際の加速電圧は20kVとしたが、0.5kV以上250kV以下の間で実施者が適宜選ぶ。これにより、深さ1nm以上500nm以下の位置に、ドーズの濃度ピークができる。蓋体104の極表面にドーズの濃度ピークを設けることにより、不活性気体の放出を容易にできる。接着は、蓋体104の内壁を内側としてレーザ溶接にて行う。これにより、蓋体104と基板100で囲まれた気密性容器105が形成される。気密性容器105を形成する蓋体104と基板100の間隔を100μmとしたとき、先に示したドーズの範囲(1×1015atoms/cm以上1×1018atoms/cm以下)は、気密性容器105内の体積を、1気圧下、1%以上1000%以下で充填できる量の範囲を示している。従って、気密性容器105内の不活性気体が長時間をかけて抜け続けても、気密性容器の内壁に添加された不活性元素が気化して補充されるため、高い気密性を維持できる。ここで流出する気体の量の範囲が100%を超えているのは、気体の流出に伴い補填できる気体の量が気密性容器105の容積を超えているからである。蓋体104は外気を遮断する機能を有している。なお、この例では不活性元素の添加方法として、ドーピング法を採用したが、その他の方法、例えば蓋体104の内壁に不活性元素を多量に含む膜をスパッタリング法などにより形成してもよい。この場合、有機EL素子に影響のないよう酸化金属膜や窒化金属膜などの無機膜を形成すると好ましい。また、蓋体104以外の気密性容器105の内壁に不活性元素を添加してもよい。実施の形態2では、ボトムエミッション構造の素子を作製するため、蓋体104に可視光線に対する透光性を付与する必要はないが、トップエミッション構造のものを作製する場合は、ガラス基板や石英基板、プラスチック基板などの中から適宜選択する。プラスチック基板を用いる場合には、水分や酸素を遮断する能力が十分でない可能性があるので、たとえば極薄ガラス基板や窒化金属膜や酸化金属膜をプラスチック基板上に形成し、酸素や水分の遮断能力を高めると好ましい。この場合、蓋体104の側からレーザビーム109を照射し溶接する。
【0043】
なお、蓋体104の内側には水分や酸素などを吸収させるための機能性材料106を設置する。乾燥剤としてたとえばゼオライト、五酸化二リン(P)、酸化カルシウム、塩化カルシウムなどを用いるとよい。酸素を吸蔵できる酸素吸蔵物質には、セリア系物質(CeO、CeO−ZrOなど)や希土類オキシ硫化物(LnS)などがあり、これらを併せて用いてもよい。
【0044】
本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な発光装置を提供できる。この効果は、例えば、公共施設の照明やディスプレイなどの交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。もちろん個人用の各種発光装置にも同様のことが当てはまる。
【0045】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0046】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明を適用して、発光素子および発光装置を作製する方法について説明する。
【0047】
例えば、図4(A)、(B)に示す発光素子を作製することができる。図4(A)に示す発光素子は、基板300上に第1の電極層302、発光層304として機能する有機EL層308、第2の電極層306が順に積層して設けられている。第1の電極層302及び第2の電極層306のいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極から注入される正孔及び陰極から注入される電子が発光層304で再結合して、発光を得ることができる。本実施の形態において、第1の電極層302は陽極として機能する電極であり、第2の電極層306は陰極として機能する電極であるとする。
【0048】
また、図4(B)に示す発光素子は、上述の図4(A)に示す構成に加えて、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層が設けられている。正孔輸送層は、陽極と発光層の間に設けられる。また、正孔注入層は陽極と発光層との間、或いは陽極と正孔輸送層との間に設けられる。一方、電子輸送層は、陰極と発光層との間に設けられ、電子注入層は陰極と発光層との間、或いは陰極と電子輸送層との間に設けられる。なお、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層は全ての層を設ける必要はなく、適宜求める機能等に応じて選択して設ければよい。図4(B)では、基板300上に、陽極として機能する第1の電極層302、正孔注入層322、正孔輸送層324、発光層304、電子輸送層326、電子注入層328、及び陰極として機能する第2の電極層306が順に積層して設けられているものとする。
【0049】
基板300は、絶縁表面を有する基板または絶縁基板を適用する。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板又はサファイヤ基板等を用いることができる。
【0050】
第1の電極層302又は第2の電極層306は、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、インジウム錫酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5wt%以上5wt%以下、酸化亜鉛を0.1wt%以上1wt%以下含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。また、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金(例えばAlSi)等を用いることができる。また、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えばアルミニウム、マグネシウムと銀との合金、アルミニウムとリチウムの合金)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。また、第1の電極層302および第2の電極層306は、単層膜に限らず、積層膜で形成することもできる。
【0051】
なお、発光層304で発光する光を外部に取り出すため、第1の電極層302又は第2の電極層306のいずれか一方或いは両方を、発光層における発光を通過させるように形成する。例えば、インジウム錫酸化物等の透光性を有する導電材料を用いて形成するか、或いは、銀、アルミニウム等を数nm乃至数十nmの厚さとなるように形成する。また、膜厚を薄くした銀、アルミニウムなどの金属薄膜と、ITO膜等の透光性を有する導電材料を用いた薄膜との積層構造とすることもできる。なお、第1の電極層302又は第2の電極層306は、種々の方法を用いて形成すればよい。
【0052】
本実施の形態において、発光層304、正孔注入層322、正孔輸送層324、電子輸送層326又は電子注入層328は、上記実施の形態1で示した成膜方法を適用して形成することができる。
【0053】
例えば、図4(A)に示す発光素子を形成する場合、減圧下にて蒸着法やスパッタリング法などで各層を形成する。あるいは塗布法を用いてもよく、この場合は、大気圧にて行うことができる。ボトムエミッション構造の素子を作製する場合、可視光線に対して透光性を有する基板300に、可視光線に対して透光性を有する第一の電極層302を形成し、その後水分や酸素などの有害物質を除去するために熱処理やプラズマ処理などを行う。さらに、発光層304を形成し、最後に可視光線に対して高い反射率を有する第二の電極層306を形成する。
【0054】
発光層304としては種々の材料を用いることができる。例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0055】
発光層に用いることのできる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナート)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナート)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0056】
発光層に用いることのできる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0057】
また、発光層304として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いることもできる。発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いることにより、発光層の結晶化を抑制することができる。また、発光性の高い物質の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0058】
発光性の高い物質を分散させる物質としては、発光性の高い物質が蛍光性化合物の場合には、蛍光性化合物よりも一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。また、発光性の高い物質が燐光性化合物の場合には、燐光性化合物よりも三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)が大きい物質を用いることが好ましい。
【0059】
発光層に用いるホスト材料としては、例えば4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)などの他、4,4’−ジ(9−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9−[4−(9−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)などが挙げられる。
【0060】
また、ドーパント材料としては、上述した燐光性化合物や蛍光性化合物を用いることができる。
【0061】
発光層として、発光性の高い物質(ドーパント材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成を用いる場合には、材料層として、ホスト材料とゲスト材料とを混合した層を形成すればよい。または、材料層として、ホスト材料を含む層とドーパント材料を含む層とが積層した構成としてもよい。このような構成の材料層を利用して発光層を形成することにより、発光層304は発光材料を分散させる物質(ホスト材料)と発光性の高い物質(ドーパント材料)とを含み、発光材料を分散させる物質(ホスト材料)に発光性の高い物質(ドーパント材料)が分散された構成となる。なお、発光層として、2種類以上のホスト材料と1種類のドーパント材料を用いてもよいし、2種類以上のドーパント材料と1種類のホスト材料を用いてもよい。また、2種類以上のホスト材料及び2種類以上のドーパント材料を用いてもよい。
【0062】
また、図4(B)に示す各種機能層が積層した発光素子を形成する場合は、被成膜基板上に機能層を形成する手順を繰り返せばよい。ただし、積層膜の一部を塗布法にて形成する場合は、塗布される液体の溶媒が既設の層を溶かす可能性があるため、実施者が適宜、最適な成膜法を選択する必要がある。
【0063】
正孔注入層322、正孔輸送層324、電子輸送層326又は電子注入層328の各層を形成する材料は1種類としてもよいし、複数種類の複合材料としてもよい。また、正孔注入層322、正孔輸送層324、電子輸送層326又は電子注入層328は、それぞれ単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。例えば、正孔輸送層324を、第1の正孔輸送層及び第2の正孔輸送層からなる積層構造としてもよい。
【0064】
例えば、正孔注入層322としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0065】
また、正孔注入層322として、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質を含む層を用いることができる。正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、キャリア密度が高く、正孔注入性に優れている。また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層を、陽極として機能する電極に接する正孔注入層として用いることにより、陽極として機能する電極材料の仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0066】
正孔輸送性の高い物質を含む層と電子受容性を示す物質を含む層は、例えば、積層したものを用いてもよい。
【0067】
正孔注入層に用いる電子受容性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0068】
正孔注入層に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、正孔注入層に用いる正孔輸送性の高い物質としては、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、正孔注入層に用いることのできる正孔の輸送性の高い物質を具体的に列挙する。
【0069】
例えば、正孔注入層に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等を用いることができる。また、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0070】
正孔注入層に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0071】
また、正孔注入層に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0072】
また、正孔注入層に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14以上炭素数42以下である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0073】
なお、正孔注入層に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0074】
また、正孔輸送性の高い物質と電子受容性を示す物質とを含む層は、正孔注入性だけでなく、正孔輸送性も優れているため、上述した正孔注入層を正孔輸送層として用いてもよい。
【0075】
また、正孔輸送層324は、正孔輸送性の高い物質を含む層であり、正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0076】
電子輸送層326は、電子輸送性の高い物質を含む層であり、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ01)バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0077】
また、電子注入層328としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を用いることができる。さらに、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属が組み合わされた層も使用できる。例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属を組み合わせた層を用いることは、第2の電極層306からの電子注入が効率良く起こるためより好ましい。
【0078】
なお、有機EL層308は、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等を含む層と、発光層とを適宜組み合わせて構成すればよい。
【0079】
発光は、第1の電極層302または第2の電極層306のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極層302または第2の電極層306のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極である。第1の電極層302のみが透光性を有する電極である場合、光は第1の電極層302を通って基板300側から取り出される。また、第2の電極層306のみが透光性を有する電極である場合、光は第2の電極層306を通って基板300と逆側から取り出される。第1の電極層302および第2の電極層306がいずれも透光性を有する電極である場合、光は第1の電極層302および第2の電極層306を通って、基板300側および基板300側と逆側の両方から取り出される。
【0080】
なお、図4では、陽極として機能する第1の電極層302を基板300側に設けた構成について示したが、図5(A)に示すように、基板300上に、陰極として機能する第2の電極層306、有機EL層308、陽極として機能する第1の電極層302とが順に積層された構成としてもよい。また、図5(B)に示すように、基板300上に、陰極として機能する第2の電極層306、電子注入層328、電子輸送層326、発光層304、正孔輸送層324、正孔注入層322、陽極として機能する第1の電極層302とが順に積層された構成としても良い。
【0081】
また、有機EL層の形成方法としては、実施の形態1で示した成膜方法を用いていればよく、他の成膜方法と組み合わせてもよい。フルカラーディスプレイを作製したい場合は、画素の色に合わせて異なる材料で形成する。あるいは構造を変えることにより色を調整してもよい。色の塗り分けには各種既存の技術を適用できる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。乾式法としては、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。また、湿式法としては、インクジェット法またはスピンコート法などが挙げられる。
【0082】
以上で、発光素子を作製することができる。本実施の形態に係る発光素子は、本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な発光装置を提供できる。この効果は、例えば、公共施設の照明やディスプレイなどの交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。もちろん個人用の各種発光装置にも同様のことが当てはまる。つづいて、本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置の例を図6、図7、及び図8を用いて説明する。
【0083】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)発光装置は、ストライプ状(帯状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交するように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯することになる。
【0084】
図6(A)は、封止前における画素部の平面図を示す図であり、図6(A)中の鎖線A−A’で切断した断面図が図6(B)であり、鎖線B−B’で切断した断面図が図6(C)である。
【0085】
基板1501上には、下地絶縁層として絶縁層1504を形成する。なお、下地絶縁層が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層1504上には、ストライプ状に複数の第1の電極層1513が等間隔で配置されている。また、第1の電極層1513上には、各画素に対応する開口部を有する隔壁1514が設けられ、開口部を有する隔壁1514は絶縁材料(感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、またはSOG膜(例えば、アルキル基を含む酸化珪素膜))で構成されている。なお、各画素に対応する開口部が発光領域1521となる。
【0086】
開口部を有する隔壁1514上に、第1の電極層1513と交差する互いに平行な複数の逆テーパ状の隔壁1522が設けられる。逆テーパ状の隔壁1522はフォトリソグラフィ法に従い、未露光部分がパターンとして残るポジ型感光性樹脂を用い、パターンの下部がより多くエッチングされるように露光量または現像時間を調節することによって形成する。
【0087】
また、平行な複数の逆テーパ状の隔壁1522を形成した直後における斜視図を図7に示す。なお、図6と同一の部分には同一の符号を用いている。
【0088】
開口部を有する隔壁1514及び逆テーパ状の隔壁1522を合わせた高さは、発光層を含む有機EL層及び第2の電極層となる導電層の膜厚より大きくなるように設定する。図7に示す構成を有する基板に対して発光層を含む有機EL層と、導電層とを積層形成すると、図6に示すように複数の領域に分離された、発光層を含む有機EL層1515R、有機EL層1515G、有機EL層1515Bと、第2の電極層1516とが形成される。なお、複数に分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。第2の電極層1516は、第1の電極層1513と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の隔壁1522上にも発光層を含む有機EL層及び導電層が形成されるが、発光層を含む有機EL層1515R、1515G、1515B及び第2の電極層1516とは分断されている。なお、本実施の形態において、有機EL層とは少なくとも発光層を含む層であって、該発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、又は電子注入層等を含んでいてもよい。
【0089】
ここでは、発光層を含む有機EL層1515R、1515G、1515Bを選択的に形成し、3種類(R、G、B)の発光が得られるフルカラー表示可能な発光装置を形成する例を示している。発光層を含む有機EL層1515R、1515G、1515Bはそれぞれ互いに平行なストライプパターンで形成されている。これらの有機EL層を形成するには、たとえば、メタルマスク法を適用するとよい。具体的には、第一のメタルマスクにて画素の一部を覆った状態で第一の発光層を蒸着法により形成し、第二のメタルマスクにて第二の発光層を同様に形成すると、異なる色を発光する画素を同一ディスプレイ内に形成できる。あるいは、レーザ転写法などを用いてもよい。具体的には、発光層を形成した他の基板を基板1501に対向させ、当該発光層の所望の場所にレーザビームを照射することで発光層の一部を基板1501に転写することができるため、異なる発光層を有する画素を同一ディスプレイ内に形成できる。
【0090】
つづいて封止のために蓋体を用いて封止する。これについては、たとえば、実施の形態1または実施の形態2に示した方法にて行う。ここでは、蓋体にガラス基板を用い、接着剤を用いて基板1501と蓋体とを貼り合わせ、接着剤と基板1501と蓋体とで囲まれた空間を密閉なものとしている。なお、当該蓋体の片側には、不活性元素が添加されており、そちら側を内側として貼り合わせを行う。密閉された空間には乾燥した不活性気体を充填する。また、発光装置の信頼性を向上させるために、基板1501と蓋体との間に機能性材料を封入する。たとえば、乾燥剤によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。また、乾燥剤には、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることが可能である。なお、他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等の物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。また、塩化カルシウム、五酸化二リン(P)などを用いるとよい。その他、劣化の原因となる酸素を吸蔵できる酸素吸蔵物質には、セリア系物質(CeO、CeO−ZrOなど)や希土類オキシ硫化物(LnS)などがあり、これをさらに基板1501と蓋体との間に封入してもよい。
【0091】
次いで、FPCなどを実装した発光モジュールの平面図を図8に示す。
【0092】
なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0093】
図8に示すように画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0094】
図6における第1の電極層1513が図8の走査線1603に相当し、第2の電極層1516がデータ線1602に相当し、逆テーパ状の隔壁1522が隔壁1604に相当し、基板1501が基板1601に相当する。データ線1602と走査線1603の間には発光層を含む有機EL層が挟まれており、領域1605で示される交差部が画素1つ分となる。
【0095】
なお、走査線1603は配線端で接続配線1608と電気的に接続され、接続配線1608が入力端子1607を介してFPC1609bに接続される。また、データ線は入力端子1606を介してFPC1609aに接続される。
【0096】
また、必要であれば、射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0097】
以上でパッシブマトリクス型の発光装置を作製できる。本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な発光装置を提供できる。この効果は、例えば、公共施設の照明やディスプレイなどの交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。もちろん個人用の各種発光装置にも同様のことが当てはまる。
【0098】
また、図8では、駆動回路を基板上に設けていない例を示したが、本発明は特に限定されず、基板に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0099】
ICチップを実装させる場合、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG方式によりそれぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装してもよい。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側ICは、シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。また、片側に一つのICを設けた例を説明しているが、片側に複数個に分割して設けても構わない。
【0100】
次に、本発明を適用して作製したアクティブマトリクス型の発光装置の例について、図9を用いて説明する。なお、図9(A)は発光装置を示す平面図であり、図9(B)は図9(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、有機EL素子の形成された素子基板1710上に設けられた画素部1702と、駆動回路部(ソース側駆動回路)1701と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)1703と、を有する。画素部1702、駆動回路部1701、及び駆動回路部1703は、柱1705を介して、素子基板1710と封止基板1704との間に封止されている。本明細書でいう蓋体は、柱1705と封止基板1704で構成される。
【0101】
また、素子基板1710上には、駆動回路部1701、及び駆動回路部1703に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線1708が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)1709を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0102】
次に、断面構造について図9(B)を用いて説明する。素子基板1710上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース側駆動回路である駆動回路部1701と、画素部1702が示されている。
【0103】
駆動回路部1701はnチャネル型TFT1723とpチャネル型TFT1724とを組み合わせたCMOS回路が形成される例を示している。なお、駆動回路部を形成する回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0104】
また、画素部1702はスイッチング用TFT1711と、電流制御用TFT1712と当該電流制御用TFT1712の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された第1の電極層1713とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極層1713の端部を覆って絶縁物1714が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。
【0105】
また、上層に積層形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物1714の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物1714の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物1714の上端部に曲率半径(0.2μm以上3μm以下)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物1714として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができ、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化珪素、酸化窒化珪素等、の両者を使用することができる。
【0106】
第1の電極層1713上には、発光層を含む有機EL層1700及び第2の電極層1716が積層形成されている。第1の電極層1713は上述の第1の電極層302に相当し、第2の電極層1716は第2の電極層306に相当する。なお、第1の電極層1713をITO膜とし、第1の電極層1713と接続する電流制御用TFT1712の配線として窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層膜、或いは窒化チタン膜、アルミニウムを主成分とする膜、窒化チタン膜との積層膜を適用すると、配線としての抵抗も低く、ITO膜との良好なオーミックコンタクトがとれる。なお、ここでは図示しないが、第2の電極層1716は外部入力端子であるFPC1709に電気的に接続されている。
【0107】
有機EL層1700は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とする。第1の電極層1713、有機EL層1700及び第2の電極層1716との積層構造で、発光素子1715が形成されている。
【0108】
また、図9(B)に示す断面図では発光素子1715を1つのみ図示しているが、画素部1702において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部1702には、たとえば3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。その他の色の組み合わせでフルカラー表示を実現してもよい。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0109】
さらに柱1705を介して封止基板1704を素子基板1710と貼り合わせることにより、素子基板1710、封止基板1704、および柱1705で囲まれた閉空間1707に発光素子1715が備えられた構造となる。なお、閉空間1707には、不活性気体(ヘリウム、窒素、アルゴン等)が充填され、封止基板1704の内壁には、不活性元素が注入されている。これらの不活性元素は、単独で用いてもよいし、複数混ぜた状態で用いてもよい。注入方法としてドーピング法を適用し、当該不活性元素の注入時の加速電圧は20kVとしたが、0.5kV以上250kV以下の間で実施者が適宜選ぶ。これにより、ドーズの濃度ピークが深さ1nm以上500nm以下の位置に形成される。封止基板1704の極表面にドーズの濃度ピークを設けることにより、不活性気体の放出を容易にできる。また、閉空間1707には乾燥剤1725を配置し、水分を除去する。さらに、酸素を吸蔵できる酸素吸蔵物質を配置してもよい。このようなものには、セリア系物質(CeO、CeO−ZrOなど)や希土類オキシ硫化物(LnS)などがある。
【0110】
なお、柱1705には接着剤として利用できるエポキシ系樹脂を用いてもよい。また、当該エポキシ系樹脂はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板1704に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0111】
以上のようにして、本発明を適用して発光装置を得ることができる。
【0112】
本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な発光装置を提供できる。この効果は、例えば、公共施設の照明やディスプレイなどの交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。もちろん個人用の各種発光装置にも同様のことが当てはまる。
【0113】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0114】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明を適用して作製した発光装置を用いて完成させた様々な電子機器について、図10、図11を用いて説明する。
【0115】
本発明に係る発光装置を適用した電子機器として、テレビジョン、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)、照明器具などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図10、図11に示す。
【0116】
図10(A)は表示装置であり、筐体8001、支持台8002、表示部8003、スピーカー部8004、ビデオ入力端子8005等を含む。当該表示装置は、本発明を用いて形成される発光装置をその表示部8003に用いることにより作製される。なお、表示装置は、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な発光装置を提供できる。この効果は、例えば、表示装置の交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。もちろん個人用の表示装置にも同様のことが当てはまる。これにより長期にわたり画質の落ちない表示装置を得ることができる。
【0117】
図10(B)はコンピュータであり、本体8101、筐体8102、表示部8103、キーボード8104、外部接続ポート8105、ポインティングデバイス8106等を含む。当該コンピュータは、本発明を用いて形成された発光素子を有する発光装置をその表示部8103に用いることにより作製される。本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定なコンピュータの表示部を提供できる。この効果は、例えば、当該表示部の交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。もちろん個人用の表示部にも同様のことが当てはまる。これにより長期にわたり画質の落ちないコンピュータの表示部を得ることができる。
【0118】
図10(C)はビデオカメラであり、本体8201、表示部8202、筐体8203、外部接続ポート8204、リモコン受信部8205、受像部8206、バッテリー8207、音声入力部8208、操作キー8209、接眼部8210等を含む。当該ビデオカメラは、本発明を用いて形成された発光素子を有する発光装置をその表示部8202に用いることにより作製される。本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定なビデオカメラの表示部を提供できる。この効果は、例えば、当該表示部の劣化を大幅に抑えることによる省資源化などである。これにより長期にわたり画質の落ちないビデオカメラの表示部を得ることができる。
【0119】
図10(D)は卓上照明器具であり、照明部8301、傘8302、可変アーム8303、支柱8304、台8305、電源8306を含む。当該卓上照明器具は、本発明を用いて形成された発光素子を有する発光装置を照明部8301に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な照明装置を提供できる。この効果は、例えば、照明装置の交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。もちろん個人用の照明装置にも同様のことが当てはまる。これにより長期にわたり明るく安定な照明装置を得ることができる。
【0120】
ここで、図10(E)は携帯電話であり、本体8401、筐体8402、表示部8403、音声入力部8404、音声出力部8405、操作キー8406、外部接続ポート8407、アンテナ8408等を含む。当該携帯電話は、本発明を用いて形成された発光素子を有する発光装置をその表示部8403に用いることにより作製される。本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な携帯電話の表示部を提供できる。この効果は、例えば、当該表示部の劣化による携帯電話の交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。これにより長期にわたり画質の落ちない携帯電話の表示部を得ることができる。
【0121】
また、図11は本発明を適用した携帯電話8500の構成の別の一例であり、図11(A)が正面図、図11(B)が背面図、図11(C)が展開図である。携帯電話8500は、電話と携帯情報端末の双方の機能を備えており、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な所謂スマートフォンである。
【0122】
携帯電話8500は、筐体8501及び筐体8502で構成されている。筐体8501には、表示部8511、スピーカー8512、マイクロフォン8513、操作キー8514、ポインティングデバイス8515、カメラ用レンズ8516、外部接続端子8517等を備え、筐体8502には、キーボード8521、外部メモリスロット8522、カメラ用レンズ8523、ライト8524、イヤホン端子8518等を備えている。また、アンテナは筐体8501内部に内蔵されている。携帯電話8500は、本発明を用いて形成された発光素子を有する発光装置を表示部8511に用いている。
【0123】
また、上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
【0124】
表示部8511は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する機能を有している。表示部8511と同一面上にカメラ用レンズ8516を備えているため、テレビ電話が可能である。また、表示部8511をファインダーとしカメラ用レンズ8523及びライト8524で静止画及び動画の撮影が可能である。スピーカー8512及びマイクロフォン8513は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生等が可能である。操作キー8514では、電話の発着信、電子メール等の情報入力、画面のスクロール、カーソル移動等が可能である。更に、重なり合った筐体8501と筐体8502(図11(A))はスライド機構を有するため、図11(C)のように展開して携帯情報端末として使用できる。この場合、キーボード8521、ポインティングデバイス8515を用い円滑な操作が可能である。外部接続端子8517はACアダプタ及びUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータ等とのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット8522には記録媒体を挿入できる。
【0125】
また、上記機能に加えて、無線通信機能、テレビ受信機能等を備えたものであってもよい。
【0126】
携帯電話8500に、本発明を適用することで、発熱を抑え、かつ気密性の高い有機EL素子を得ることができる。これにより、極めて特性変動の少ない安定な携帯電話の表示部を提供できる。この効果は、例えば、表示部の劣化による携帯電話の交換頻度を大幅に抑えることによる、人件費の節約や省資源化などである。これにより長期にわたり画質の落ちない携帯電話の表示部を得ることができる。
【0127】
以上のようにして、本発明に係る発光装置を適用して電子機器や照明器具を得ることができる。本発明に係る発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0128】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0129】
100 基板
101 第一の電極
102 有機EL層
103 第二の電極
104 蓋体
105 気密性容器
106 機能性材料
107 接着剤
108 密着部
109 レーザビーム
110 集光レンズ
111 レーザ
112 窓
113 チャンバー
200 チャンバー
201 ディスペンサー
202 接着剤
203 ゲートバルブ
300 基板
302 電極層
304 発光層
306 電極層
308 有機EL層
322 正孔注入層
324 正孔輸送層
326 電子輸送層
328 電子注入層
1501 基板
1504 絶縁層
1513 電極層
1514 隔壁
1516 電極層
1521 発光領域
1522 隔壁
1601 基板
1602 データ線
1603 走査線
1604 隔壁
1605 領域
1606 入力端子
1607 入力端子
1608 接続配線
1700 有機EL層
1701 駆動回路部(ソース側駆動回路)
1702 画素部
1703 駆動回路部(ゲート側駆動回路)
1704 封止基板
1705 柱
1707 閉空間
1708 配線
1709 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
1710 素子基板
1711 スイッチング用TFT
1712 電流制御用TFT
1713 電極層
1714 絶縁物
1715 発光素子
1716 電極層
1723 nチャネル型TFT
1724 pチャネル型TFT
1725 機能性材料
8001 筐体
8002 支持台
8003 表示部
8004 スピーカー部
8005 ビデオ入力端子
8101 本体
8102 筐体
8103 表示部
8104 キーボード
8105 外部接続ポート
8106 ポインティングデバイス
8201 本体
8202 表示部
8203 筐体
8204 外部接続ポート
8205 リモコン受信部
8206 受像部
8207 バッテリー
8208 音声入力部
8209 操作キー
8210 接眼部
8301 照明部
8302 傘
8303 可変アーム
8304 支柱
8305 台
8306 電源
8401 本体
8402 筐体
8403 表示部
8404 音声入力部
8405 音声出力部
8406 操作キー
8407 外部接続ポート
8408 アンテナ
8500 携帯電話
8501 筐体
8502 筐体
8511 表示部
8512 スピーカー
8513 マイクロフォン
8514 操作キー
8515 ポインティングデバイス
8516 カメラ用レンズ
8517 外部接続端子
8518 イヤホン端子
8521 キーボード
8522 外部メモリスロット
8523 カメラ用レンズ
8524 ライト
1515B 有機EL層
1515G 有機EL層
1515R 有機EL層
1609a FPC
1609b FPC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性気体が充填された気密性容器と、
前記気密性容器の内側に配設され、発光材料として有機エレクトロルミネセンス材料を含む発光素子と
を有し、
前記気密性容器は、その内壁の全部又は少なくとも一部の領域に、前記不活性気体と同種又は異種の不活性元素を含んでいることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1において、前記不活性元素は、1×1014atoms/cm以上1×1019atoms/cm以下含まれることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記不活性元素の濃度ピークは、前記気密性容器の内側から1nm以上500nm以下の範囲に位置することを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、前記不活性気体は、ヘリウム(He)であることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一において、前記不活性気体は、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、または窒素(N)のいずれか一であるか、それらの混合気体であることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、前記不活性元素は、ヘリウム(He)であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一において、前記不活性元素は、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、または窒素(N)のいずれか一であるか、それらの混合物であることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、前記気密性容器内に乾燥剤または酸素吸蔵物質を有することを特徴とする発光装置。
【請求項9】
基板上に第1の電極を形成し、
前記第1の電極上に有機EL層を形成し、
前記有機EL層上に第2の電極を形成する工程と、
蓋体の表面に不活性元素を添加する工程と、
前記不活性元素を内側にして前記蓋体と前記基板を対向させ、不活性気体中にて貼り合わせることで閉空間を形成することを特徴とする発光素子の作製方法。
【請求項10】
請求項9において、前記不活性元素は、加速電圧0.5kV以上250kV以下でドーピング法により添加されることを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−216210(P2011−216210A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80589(P2010−80589)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】