説明

発光装置および電子機器

【課題】画素回路だけでなく周辺回路もガスバリア層で保護するとともに、ガスバリア層
の一部に応力が集中するのを抑制することができる発光装置を提供する。
【解決手段】基板30上の発光領域AにOLED素子70を有する画素回路が設けられ、
発光領域Aの外側には複数の画素回路の駆動または検査に関係する信号を生成する周辺回
路が配置される。電極保護膜80は、発光領域Aおよび周辺回路Bを覆ってOLED素子
70の各々および周辺回路を封止する。電極保護膜80には発光素子段差平坦化膜82が
重ねられ、ガスバリア層84が発光素子段差平坦化膜82を覆っており、OLED素子7
0の各々をさらに外気から遮断する。発光素子段差平坦化膜82およびガスバリア層84
は周辺回路の領域を覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜封止構造により保護された有機EL素子を有する発光装置およびこれを
有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の一種として、電界により励起して発光する有機エレクトロルミネッセント(
EL)素子が知られている。有機EL素子を備える装置の製造工程では、酸素や水分など
により有機EL素子が劣化するのを防ぐために封止が行われる。この封止の技術として、
極めて薄い無機膜をガスバリア層として用いて、これで有機EL素子を覆う薄膜封止技術
が知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−185994号公報
【特許文献2】特開2001−284041号公報
【特許文献3】特開2000−223264号公報
【特許文献4】特開2003−17244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL素子を配置する基板には、有機EL素子の各々に対応する画素回路だけでなく
、画素回路の駆動または検査に関係する信号を生成する周辺回路が配置されることが多い
。このような装置では、基板の小型化のために、画素回路が設けられた発光領域と周辺回
路の間隔は小さい方が望ましい。また、基板上の周辺回路も通常はトランジスタであり、
トランジスタから例えば水素などの成分の離脱によって性能が劣化することを防止できる
と好ましい。そこで、封止に寄与するガスバリア層を発光領域だけでなく周辺回路の領域
にも拡張することが考えられる。
【0005】
しかし、薄膜封止に使用されるガスバリア層は、小さな分子の水蒸気または空気を遮断
するため緻密であるため、段差または急激な形状変化により応力集中が起こりやすい。周
辺回路の領域をガスバリア層で覆った場合には、周辺回路に起因して生ずることがある段
差または凹凸により、ガスバリア層が屈曲した形状になり、屈曲部分に応力が集中して破
損しやすくなる。
【0006】
そこで、本発明は、画素回路だけでなく周辺回路もガスバリア層で保護するとともに、
ガスバリア層の一部に応力が集中するのを抑制することができる発光装置およびこれを有
する電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置は、基板上の発光領域に設けられた複数の画素回路を備え、前記
複数の画素回路の各々は有機EL素子を有し、前記有機EL素子は第1電極、第2電極お
よび前記第1電極と前記第2電極の間に挟まれた発光層を有する発光装置であって、前記
基板上における前記発光領域の外側に配置され、前記複数の画素回路の駆動または検査に
関係する信号を生成する周辺回路と、前記発光領域および前記周辺回路を覆って前記有機
EL素子の各々および前記周辺回路を封止する電極保護膜と、前記電極保護膜を挟んで前
記有機EL素子および前記周辺回路とは反対側に配置されており、前記電極保護膜に対向
する第1の面と、前記第1の面と反対側にある第2の面とを有しており、前記第1の面の
凹凸よりも前記第2の面の凹凸が小さくなるように形成された平坦化膜と、前記平坦化膜
を覆っており、前記有機EL素子の各々をさらに外気から遮断するガスバリア層とを備え
、前記平坦化膜および前記ガスバリア層は前記周辺回路の領域の少なくとも一部を覆って
いる。
【0008】
本発明によれば、平坦化膜が周辺回路の領域の少なくとも一部を覆っているため、周辺
回路によって生ずることがある段差または凹凸を平坦化膜が緩和し、平坦化膜を覆うガス
バリア層の屈曲角度も緩和されることにより、ガスバリア層の一部に応力が集中するのを
抑制できる。また、電極保護膜に加えてガスバリア層を有する封止構造により周辺回路を
保護することができる。例えば、平坦化膜を有機化合物で製造した場合に、製造後の平坦
化膜により発生するガスまたは不純物により周辺回路が劣化するのを電極保護膜で抑制す
ることができる。本明細書でいう周辺回路は、例えば、発光素子を駆動するための駆動回
路、あるいは、発光素子や配線を検査するための検査回路等が含まれ得る。
【0009】
前記基板上における前記周辺回路の外側で前記ガスバリア層が前記電極保護膜に直接接
触していると好ましい。この態様によれば、周辺回路の外側でガスバリア層が電極保護膜
に直接接触しているので、ガスバリア層と電極保護膜で挟まれた平坦化層へ外側からの空
気または水分が伝わって入るのを防止できる。また、電極保護膜に欠陥が生じたとしても
、ガスバリア層が電極保護膜に直接接触している部分では、電極保護膜の欠陥により封止
性能が害されることをガスバリア層が防止できる。
【0010】
この態様において、前記第2電極は複数の前記発光素子に共通に設けられた共通電極で
あって、前記第2電極に電位を供給するための第2電極用電源線が、前記基板上における
前記周辺回路の外側に配置されており、前記第2電極用電源線における前記第2電極が前
記第2電極用電源線に直接接触する部分に重なる位置で、前記ガスバリア層が前記電極保
護膜に直接接触していると好ましい。
【0011】
ガスバリア層と電極保護膜で挟まれた平坦化層へ外側から空気が流入するのを防止する
ためには、ガスバリア層が電極保護膜に直接接触する部分の長さは大きいほど好ましい。
しかし、これらの直接接触する部分を大きくすると、基板を大きくせざるをえないおそれ
がある。この態様では、第2電極用電源線に重なる位置で、前記ガスバリア層が前記電極
保護膜に直接接触しているので、幅が広い第2電極用電源線よりも外側のみの位置で、前
記ガスバリア層が前記電極保護膜に直接接触する場合に比べて、基板の面積を狭小化する
ことが可能である。また、仮に、幅が広い第2電極用電源線が周辺回路と発光領域の間に
配置されていると、発光領域と周辺回路の間隔が広いために、基板を大きくせざるをえな
いおそれがある。しかし、この態様では、第2電極用電源線が周辺回路の外側に配置され
て、第2電極用電源線に重なる位置で、ガスバリア層が電極保護膜に直接接触しているの
で、基板をあまり大きくしなくてもよい。さらに、第2電極用電源線は第2電極とは異な
る高さに形成されることが多いため、第2電極用電源線と第2電極を電気的に接続する部
分には他の部分との段差が生じがちであり、これに伴い電極保護膜に段差による欠陥が生
ずることがある。しかし、電極保護膜においてこのような段差による欠陥が生じたとして
も、第2電極用電源線に重なる位置で、ガスバリア層が電極保護膜に直接接触しているた
めに、電極保護膜の欠陥により封止性能が害されることをガスバリア層が防止できる。
【0012】
前記周辺回路を覆って前記周辺回路を封止する回路保護膜と、前記回路保護膜を挟んで
前記周辺回路とは反対側に配置されており、前記回路保護膜に対向する面と、前記回路保
護膜とは反対の面とを有しており、前記回路保護膜に対向する面の凹凸よりも前記回路保
護膜とは反対の面の凹凸が小さい回路段差平坦化膜とを備え、前記回路段差平坦化膜は前
記周辺回路に部分的に重なっており、前記有機EL素子は前記回路段差平坦化膜と前記電
極保護膜の間に配置されており、前記周辺回路に重なる領域で、前記電極保護膜が前記回
路保護膜と直接接触しているとともに、前記周辺回路に重なる領域で、前記ガスバリア層
が前記電極保護膜または前記回路保護膜と直接接触して終端していると好ましい。
【0013】
この態様では、電極保護膜が回路保護膜と直接接触し、ガスバリア層が電極保護膜また
は回路保護膜と直接接触していることにより、回路段差平坦化膜と電極保護膜の間に配置
された有機EL素子が封止される。また、周辺回路に重なる領域で、ガスバリア層が電極
保護膜または回路保護膜と直接接触して終端するので、周辺回路の外側でガスバリア層が
終端する場合に比べて、基板の面積を狭小化することが可能である。
【0014】
前記平坦化膜は、前記第1の面と前記第2の面とをつなぎ前記基板に対して傾斜した傾
斜面を有しており、前記傾斜面は前記周辺回路に重なっていると好ましい。
【0015】
この態様の平坦化膜の傾斜面は、基板に対して垂直な面で第1の面と第2の面をつなぐ
場合よりも、平坦化膜を覆うガスバリア層の屈曲角度を緩和してガスバリア層における応
力集中を緩和することができる。平坦化膜の傾斜面が周辺回路に重なるということは、平
坦化膜が周辺回路またはその近辺にて終端するということである。この場合には、平坦化
膜の傾斜面が周辺回路の完全に外側にある場合に比べて、平坦化膜の占有面積を小さくす
ることができるので、基板の面積を狭小化することが可能である。
【0016】
この態様において、前記周辺回路を覆って前記周辺回路を封止する回路保護膜と、前記
回路保護膜を挟んで前記周辺回路とは反対側に配置されており、前記回路保護膜に対向す
る面と、前記回路保護膜とは反対の面とを有しており、前記回路保護膜に対向する面の凹
凸よりも前記回路保護膜とは反対の面の凹凸が小さい回路段差平坦化膜と、前記回路段差
平坦化膜を挟んで前記回路保護膜とは反対側に配置されており、前記有機EL素子の各々
の前記発光層を画定する隔壁とを備え、前記有機EL素子は前記回路段差平坦化膜と前記
電極保護膜の間に配置されており、前記基板上における内側には前記隔壁と前記回路段差
平坦化膜が重なって形成されている第1の領域があり、その外側には前記隔壁と前記回路
段差平坦化膜の一方が形成されている第2の領域があり、さらにその外側には前記隔壁も
前記回路段差平坦化膜も形成されていない第3の領域があり、前記平坦化膜の前記傾斜面
は前記第1の領域、前記第2の領域および前記第3の領域に重なり前記第3の領域で終端
すると好ましい。
この態様では、基板上における内側には大きい高さの第1の領域があり、その外側には
やや高さが低い第2の領域があり、さらにその外側にはかなり高さが低い第3の領域があ
ることにより、基板上における電極保護膜の高さを内側から外側に向けて漸減させること
ができる。この状態で、平坦化膜の傾斜面が第1の領域、第2の領域および第3の領域に
重なり第3の領域で終端することにより、緩やかな曲線を描くように平坦化膜の傾斜面を
形成しやすい。このため、平坦化膜を覆うガスバリア層の屈曲角度も緩和されるので、ガ
スバリア層の一部に応力が集中するのを抑制できる。
【0017】
さらに、前記発光領域に配置され、前記第2電極に電気的に接続されているとともに前
記第2電極用電源線に電気的に接続されている補助配線を備え、前記第2電極および前記
補助配線は、前記周辺回路を覆っており、前記周辺回路を覆う位置で積層されていると好
ましい。第2電極および補助配線が周辺回路を覆う位置で積層されることにより、第2電
極と補助配線が広い面積で面接触し、これらを低抵抗で接続できる。
【0018】
本発明に係る電子機器は、上述した発光装置を備える。このような電子機器として、発
光装置を表示装置に適用したパーソナルコンピュータ、携帯電話機、および携帯情報端末
などが該当し、また、電子写真方式を利用した画像印刷装置における像担持体に光を照射
して潜像を形成するプリンタヘッドとして、発光装置を用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。これらの
図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0020】
<第1実施形態>
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る発光装置1の構成の一部を示す概略平面図
であり、図1(B)は図1(A)の状態の後に補助配線150および画素電極76をさら
に形成した状態を示す平面図である。図1(A)に示すように、この発光装置1は、パネ
ル10とフレキシブル基板20とを備える。パネル10の端部には接続端子が形成され、
この接続端子とフレキシブル基板20に形成された接続端子とが、ACF(anisotropic
conductive film:異方性導電膜)と呼ばれる導電粒子を含有したフィルム状の接着剤
を介して圧着固定される。また、フレキシブル基板20には、データ線駆動回路200が
設けられており、さらに、フレキシブル基板20を介して各種の電源電圧がパネル10に
供給される。
【0021】
パネル10には、発光領域Aと、その外側(つまり基板もしくはパネル10の外周と発
光領域Aの間)の回路領域Bが設けられている。回路領域Bには走査線駆動回路100A
および100B、ならびにプリチャージ回路120が形成されている。プリチャージ回路
120は書き込み動作に先立って、データ線112の電位を所定の電位に設定するための
回路である。走査線駆動回路100Aおよび100B、ならびにプリチャージ回路120
は、発光領域Aの周辺にある周辺回路である。但し、周辺回路は、単位回路Pや配線の良
否を検査する検査回路(図示せず)を含んでもよいし、データ線駆動回路200が回路領
域Bに設けられた周辺回路であってもよい。
【0022】
発光領域Aには、複数の走査線111と複数のデータ線112が形成され、それらの交
差点の各々の近傍には複数の単位回路(画素回路)Pが設けられている。単位回路PはO
LED(organic light emitting diode)素子を含み、電流供給線113から給電を
受ける。複数の電流供給線113は第1電極用電源線130に接続されている。
【0023】
図2は、発光装置1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。各単位回路Pは、nチャ
ネル型のトランジスタ68、pチャネル型のトランジスタ60、容量素子69、およびO
LED素子70を含む。pチャネル型のトランジスタ60のソース電極は電流供給線11
3に接続される一方、そのドレイン電極はOLED素子70の陽極に接続される。また、
トランジスタ60のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている
。nチャネル型のトランジスタ68のゲート電極は走査線111に接続され、そのソース
電極は、データ線112に接続され、そのドレイン電極はトランジスタ60のゲート電極
と接続される。
【0024】
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線111を走査線駆動回路100Aおよ
び100Bが選択すると、トランジスタ68がオンされて、データ線112を介して供給
されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、トランジスタ60が、デー
タ信号のレベルに応じた電流をOLED素子70に供給する。これにより、OLED素子
70は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0025】
また、図1(A)に示すように、回路領域Bの外周部側(つまり基板もしくはパネル1
0の外周と回路領域Bの間)には、コの字状の第2電極用電源線140が形成されている
。第2電極用電源線140は、後述するようにOLED素子の陰極(第2電極)に電源電
圧(この例では、Vss:グランドレベル)を供給するための配線である。OLED素子
は、画素電極76(陽極)と共通電極72(陰極)との間に挟まれた発光機能層(発光層
を含む)74を有する(図4参照)。共通電極72は、図1(B)に示すように発光領域
Aおよび回路領域Bにわたって形成される。また、共通電極72と第2電極用電源線14
0とを接続する補助配線150が、回路領域Bにおいて周辺回路を覆うように形成される
。補助配線150は、発光領域Aに設けられる補助配線の第1部分150aと、回路領域
Bに設けられる補助配線の第2部分150bとを含んでいる。発光領域Aでは補助配線1
50の第1部分150aと画素電極76とが接触しないように、補助配線150の第1部
分150aが格子状に形成されている。つまりOLED素子70の間に補助配線150の
第1部分150aとが配置されている。本明細書でいう補助配線とは、共通電極72に重
ねて電気的に接続され、共通電極72の抵抗を下げる導体のことである。明確化のため、
図3に、図1(B)の一部を拡大して示す。
【0026】
この実施形態の発光装置1は、トップエミッションの形式で構成されており、発光機能
層74からの光が共通電極72を通過して射出される。共通電極72は、透明材料から形
成されている。このため、回路領域Bを共通電極72によって遮光することはできない。
一方、上述した補助配線150には、導電性および遮光性を有する金属が用いられるため
、補助配線150によって遮光が可能である。これにより、周辺回路に光が入射して光電
流が発生することを抑制できる。また、補助配線150は、発光領域Aの画素電極76と
同一の工程で形成される。したがって、回路領域Bに遮光性を付加するために特別な工程
は不要である。
【0027】
図4に発光装置1の部分断面図を示す。同図において、発光領域AにはOLED素子7
0が形成される一方、回路領域Bには周辺回路たる走査線駆動回路100Aが形成される
。同図において発光装置1の上面が光を射出する射出面となる。同図に示すように、基板
30の上に下地保護層31が形成され、その上にトランジスタ40、50、および60が
形成される。トランジスタ40はnチャネル型、トランジスタ50および60はpチャネ
ル型である。トランジスタ40,50は走査線駆動回路100Aの一部であり、トランジ
スタ60とOLED素子70は単位回路Pの一部である。
【0028】
トランジスタ40、50、および60は、基板30の表面に形成された酸化珪素を主体
とする下地保護層31の上に設けられている。下地保護層31の上層にはシリコン層40
1、501および601が形成される。シリコン層401、501および601を覆うよ
うに、ゲート絶縁層32が下地保護層31の上層に設けられる。ゲート絶縁層32は、例
えば酸化珪素から形成される。ゲート絶縁層32の上面のうちシリコン層401、501
および601に対向する部分にゲート電極42、52および62が設けられる。トランジ
スタ40においてゲート電極42を介してシリコン層401にはV族元素がドーピングさ
れ、ドレイン領域40cおよびソース領域40aが形成される。ここで、V族元素がドー
ピングされていない領域がチャネル領域40bとなる。
【0029】
トランジスタ50および60においてゲート電極52および62を介してシリコン層5
01および601にはゲート電極52および62を介してIII族元素がドーピングされ、
ドレイン領域50aおよび60a、ならびにソース領域50cおよび60cが形成される
。ここで、III族元素がドーピングされていない領域がチャネル領域50bおよび60b
となる。なお、トランジスタ40、50、および60のゲート電極42、52、および6
2を形成するのと同時に走査線111が形成される。
【0030】
第1層間絶縁層33が、ゲート電極42、52および62を覆うようにゲート絶縁層3
2の上層に形成される。第1層間絶縁層33の材料には酸化珪素等が用いられる。さらに
、ソース電極41、51、および63、ドレイン・ソース電極43、ならびにドレイン電
極61が、ゲート絶縁層32および第1層間絶縁層33にわたって開孔するコンタクトホ
ールを介してシリコン層401、501、および601と接続される。また、これらの電
極と同一の工程で第2電極用電源線140、データ線112および電流供給線113が形
成される。これらの電極および第2電極用電源線140などは導電性を有するアルミニウ
ム等の材料で形成される。
【0031】
回路保護膜34が、ソース電極41、51、および63、ドレイン・ソース電極43、
ドレイン電極61、ならびに第2電極用電源線140を覆うように第1層間絶縁層33の
上層に設けられる。回路保護膜34は、例えば、窒化珪素や酸窒化珪素などのガス透過率
が低い材料から形成されている。また、これらの窒化珪素や酸窒化珪素は、非晶質材料で
あってもよいし、水素を含んでいても良い。回路保護膜34により、トランジスタ40、
50、および60からの水素の離脱を防止できる。なお、回路保護膜34をソース電極や
ドレイン電極の下に形成してもよい。
【0032】
回路段差平坦化膜35が回路保護膜34の上層に設けられる。回路段差平坦化膜35は
、回路保護膜34に対向する下面の凹凸よりも回路保護膜34とは反対の上面の凹凸が小
さい。つまり、トランジスタ40,50,60、走査線111、データ線112、電流供
給線113などにより生ずる凹凸を平坦化するために、回路段差平坦化膜35は用いられ
る。回路段差平坦化膜35の材料には、例えば、アクリル系、ポリイミド系の有機高分子
材料が用いられる。この場合、有機樹脂にパターニングのための感光性材料を混合して、
フォトレジストと同様に露光でパターニングしても良い。あるいは、酸化珪素、酸窒化珪
素等の無機材料から化学気相成長法(chemical vapor deposition: CVD)により回路段差
平坦化膜35を形成し、エッチング等によりその上面を平坦化してもよい。無機材料は化
学気相成長法によって膜を形成した場合、その膜厚は1μm以下であり、しかもほぼ一様
であるから、上面が下層の凹凸の影響を受けやすいのに対し、有機樹脂はコーティングに
よって形成するのでその膜厚を2〜3μm程度に大きくでき、しかもその上面は下層の凹
凸の影響を受け難いので回路段差平坦化膜35の材料に適している。尤も、ある程度の凹
凸を許容するのであれば、酸化珪素、酸窒化珪素等の無機材料を回路段差平坦化膜35に
用いることもできる。
【0033】
回路段差平坦化膜35上には、発光領域Aで画素電極76(第1電極)および補助配線
の第1部分150aを形成すると同時に、回路領域Bに補助配線の第2部分150bを形
成する。即ち、画素電極76と補助配線150とは同一の層において、同一の材料を用い
て同時に形成される。この実施形態における画素電極76はOLED素子70の陽極であ
り、回路段差平坦化膜35および回路保護膜34を貫通するコンタクトホールを介してト
ランジスタ60のドレイン電極61と接続される。また、陽極である画素電極76の材料
としては、仕事関数が大きい材料が望ましく、例えば、ニッケル、金、白金等またはそれ
らの合金が好適である。これらの材料は反射性を持つので、発光機能層74で発光した光
を共通電極72に向けて反射する。補助配線150は、回路領域Bにおいて、回路保護膜
34に形成されたコンタクトホールを介して第2電極用電源線140と接続される。
【0034】
次に、隔壁37を形成する。隔壁37は、画素電極76とその後に形成される共通電極
72(第2電極)との間、もしくは複数の画素電極76同士の間を絶縁するものである。
隔壁37を設けることによりそれぞれの画素電極76を独立して制御することができ、複
数の発光素子をそれぞれ所定の輝度で発光させることができる。例えば、アクリルもしく
はポリイミド等が隔壁37の材料である。この場合、パターニングのため感光性材料を混
合して、フォトレジストと同様に露光でパターニングしても良い。隔壁37にはコンタク
トホールCHが同時に形成される。発光領域37において、このコンタクトホールCHを
介して補助配線150の第1部分150aと後述する共通電極72が接続される。また、
回路領域Bにおける補助配線150の第2部分150bの上には、隔壁37と同一の層が
設けられていない。
【0035】
次に、画素電極76の上に、少なくとも発光層を含む発光機能層74を形成する。発光
層には有機EL物質が用いられる。有機EL物質は、低分子材料であっても良いし、高分
子材料であっても良い。発光機能層74を構成する他の層として、正孔注入層、正孔輸送
層、電子輸送層、電子注入層、正孔ブロック層、および電子ブロック層の一部又は全部を
備えていてもよい。
【0036】
次に、発光領域Aおよび回路領域Bにわたって補助配線150および発光機能層74を
覆うように、共通電極72(第2電極)が形成される。共通電極72は透明であり、OL
ED素子70からの光は、共通電極74を透過して図中上側の方向に射出される。この実
施形態の共通電極72をすべてのOLED素子70の陰極として機能させるため、共通電
極72は電子を注入しやすいように、仕事関数が低い材料によって形成される。例えば、
アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、またはリチウム等やそれらの合金である。ま
た、この合金は仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料を用いることが望まし
い。例えば、マグネシウムと銀の合金が好適である。これらの金属または合金を共通電極
72に使用する場合には、透光性を得るために厚さを小さくすればよい。
【0037】
また、共通電極72(第2電極)は、上記の仕事関数が低い材料、もしくは、仕事関数
が低い材料とその材料を安定化される材料からある第1層と、ITO(indium tin oxi
de)、IZO(indium zinc oxide)、またはZnOのような酸化導電材料からなる
光透過性、導電性を備えた第2層とを含み、発光機能層側に第1層が設けられる構成であ
ってもよい。ITO、IZO、またはZnOのような酸化導電材料は緻密な素材であり
、ガス透過率が低い。このような材料で共通電極72を形成すれば、共通電極72が発光
領域Aおよび回路領域Bにわたって形成されているため、発光領域Aの単位回路Pおよび
回路領域Bの周辺回路が、後述する発光素子段差平坦化膜82で発生するガスまたは外気
から保護され、これらの劣化が抑制される。このように、共通電極72(第2電極)が上
記の第2層を含む構成であれば、第1層を構成する材料と比して光透過性、導電性が優れ
ているため、共通電極72の電源インピーダンスを大幅に低減することができるとともに
、発光機能層からの光取り出し効率を向上させることができる。また、共通電極72(第
2電極)が、仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料からある第1層と、上記
の酸化導電材料からなる第2層とを含んで構成することにより、第1層と第2層が反応し
、電子注入効率が劣化するのを防止することができる。
【0038】
また、共通電極72を形成するに先立って、隔壁37にはコンタクトホールCHが形成
される。このコンタクトホールCHを介して発光領域37において補助配線の第1部分1
50aと共通電極72が接続される。発光領域Aにおいて格子状に形成される補助配線の
第1部分150a(図1(B)参照)に共通電極72が接続されることにより、共通電極
72の電源インピーダンスを大幅に低減することができる。これに加えて、補助配線の第
2部分150bは、回路領域Bにおいて隔壁37により覆われていないため共通電極72
と広い面積で面接触するので、接続抵抗を下げることができる。したがって、電源インピ
ーダンスを大幅に低減することが可能となる。
【0039】
次に、共通電極72を覆うように電極保護膜80が形成される。電極保護膜80は、回
路保護膜34と同様に、例えば、窒化珪素や酸窒化珪素などのガス透過率が低い無機材料
から形成されている。また、これらの窒化珪素や酸窒化珪素は、非晶質材料であってもよ
いし、水素を含んでいても良い。さらに、電極保護膜80を覆うように発光素子段差平坦
化膜82が形成される。発光素子段差平坦化膜82は、電極保護膜80に対向する面の凹
凸よりも、電極保護膜80と反対側にある面の凹凸が小さくなるように形成された層、つ
まりコンタクトホールCH、隔壁37およびOLED素子70で生じた段差を平坦化する
膜である。回路段差平坦化膜35と同様に、酸化珪素等の無機材料から蒸着により発光素
子段差平坦化膜82を形成し、エッチング等によりその上面を平坦化してもよいが、回路
段差平坦化膜35に関して述べたのと同じ理由から、例えばウレタン、アクリル、エポキ
シ、またはシアノアクリレート等の有機化合物で発光素子段差平坦化膜82を形成するこ
とが好ましい。また、隔壁37が温度により伸縮しても、後述するガスバリア層84が割
れないように、隔壁37と類似の熱膨張係数を有する有機化合物で発光素子段差平坦化膜
82を形成することが好ましい。発光素子段差平坦化膜82として有機化合物を用いる場
合には、硬化する際や硬化後において発光素子段差平坦化膜82により発生するガスまた
は不純物が下層に浸透する可能性があるが、電極保護膜80によってこれを防止し、OL
ED素子70の寿命を低下させないようにすることができる。
【0040】
くわえて、発光素子段差平坦化膜82を覆うようにガスバリア層84を形成する。ガス
バリア層84の材料には、例えば窒化珪素や酸窒化珪素などのガス透過率が低い無機材料
から形成されている。また、これらの窒化珪素や酸窒化珪素は、非晶質材料であってもよ
いし、水素を含んでいても良い。ガスバリア層84は、高密度プラズマ気相成長法によっ
て、高密度で硬度の大きい薄膜として形成される。ガスバリア層84によって、外気や水
分が発光装置1の内部に浸入することが防がれる。つまり、ガスバリア層84は、発光素
子段差平坦化膜82と電極保護膜80で囲まれたOLED素子70の各々をさらに外気か
ら遮断する。発光素子段差平坦化膜82およびガスバリア層84は、周辺回路(トランジ
スタ40,50を有する走査線駆動回路100A、100Bおよびプリチャージ回路12
0)の領域全体を覆っている。
【0041】
図4に示すように、周辺回路のトランジスタ40,50がある部分とない部分とでは、
回路保護膜34の上面上に高さの段差または凹凸が生ずることがある。またトランジスタ
40,50内においても、要素の高さがばらつくために、回路保護膜34の上面上に高さ
の段差または凹凸が生ずることがある。この実施形態では、回路段差平坦化膜35が周辺
回路の領域を覆っているため、周辺回路によって生ずることがある段差または凹凸を回路
段差平坦化膜35が緩和するが、回路段差平坦化膜35は薄いので、このような段差また
は凹凸をあまり平坦化できないこともありうる。回路段差平坦化膜35上の補助配線15
0、共通電極72および電極保護膜80は蒸着でほぼ一様な厚さに形成されるため、この
ような段差または凹凸を平滑化することが難しい。
【0042】
しかし、この実施の形態では、発光素子段差平坦化膜82が周辺回路の領域全体を覆っ
ているため、周辺回路によって生ずることがある段差または凹凸を発光素子段差平坦化膜
82が緩和し、発光素子段差平坦化膜82を覆うガスバリア層84の屈曲角度も緩和され
ることにより、ガスバリア層84の一部に応力が集中するのを抑制できる。また、電極保
護膜80に加えてガスバリア層84を有する封止構造により周辺回路を保護することがで
きる。例えば、発光素子段差平坦化膜82を有機化合物で製造した場合に、硬化する際や
硬化後において発光素子段差平坦化膜82により発生するガスまたは不純物により周辺回
路が劣化するのを電極保護膜80で抑制することができる。
【0043】
図4に示すように、基板30上における周辺回路の外側でガスバリア層84が電極保護
膜80に直接接触している。従って、ガスバリア層84と電極保護膜80で挟まれた発光
素子段差平坦化膜82へ外側からの空気または水分が伝わって入るのを防止できる。また
、電極保護膜80に欠陥が生じたとしても、ガスバリア層84が電極保護膜80に直接接
触している部分では、電極保護膜80の欠陥により封止性能が害されることをガスバリア
層84が防止できる。
【0044】
ガスバリア層84と電極保護膜80で挟まれた発光素子段差平坦化膜82へ外側から空
気が流入するのを防止するためには、ガスバリア層84が電極保護膜80に直接接触する
部分の長さは大きいほど好ましい。しかし、これらの直接接触する部分を大きくすると、
基板30を大きくせざるをえないおそれがある。この実施形態では、図4に示すように、
第2電極用電源線140における共通電極72が第2電極用電源線140に直接接触する
部分に重なる位置で、ガスバリア層84が電極保護膜80に直接接触しているので、幅が
広い第2電極用電源線140よりも外側のみの位置で、ガスバリア層84が電極保護膜8
0に直接接触する場合に比べて、基板30の面積を狭小化することが可能である。また、
仮に、幅が広い第2電極用電源線140が周辺回路と発光領域Aの間に配置されていると
、発光領域Aと周辺回路の間隔が広いために、基板30を大きくせざるをえないおそれが
ある。しかし、この実施形態では、第2電極用電源線140が周辺回路の外側に配置され
て、第2電極用電源線140に重なる位置で、ガスバリア層84が電極保護膜80に直接
接触しているので、基板30をあまり大きくしなくてもよい。さらに、第2電極用電源線
140は共通電極72とは異なる高さに形成されているため、第2電極用電源線140と
共通電極72を電気的に接続する部分には他の部分との段差が生じて、これに伴い電極保
護膜80に段差による欠陥が生ずることがある。しかし、電極保護膜80においてこのよ
うな段差による欠陥が生じたとしても、第2電極用電源線140に重なる位置で、ガスバ
リア層84が電極保護膜80に直接接触しているために、電極保護膜80の欠陥により封
止性能が害されることをガスバリア層84が防止できる。
【0045】
発光素子段差平坦化膜82は、電極保護膜80に対向する凹凸の大きい面(図中の下面
)と、電極保護膜80と反対側にある平坦な面(図中の上面)をつなぐ傾斜面82aを有
する。発光素子段差平坦化膜82において基板30に対して垂直な面で図中の下面と図中
の上面をつなぐ場合よりも、傾斜面82aでつなぐことにより、発光素子段差平坦化膜8
2を覆うガスバリア層84の屈曲角度を緩和してガスバリア層84における応力集中を緩
和することができる。この傾斜面82aが周辺回路に重なるということは、発光素子段差
平坦化膜82が周辺回路またはその近辺にて終端するということである。この場合には、
傾斜面82aが周辺回路の完全に外側にある場合に比べて、発光素子段差平坦化膜82の
占有面積を小さくすることができるので、基板30の面積を狭小化することが可能である

【0046】
図4に示すように、基板30上の回路領域Bにおける内側には隔壁37と回路段差平坦
化膜35が重なって形成されている第1の領域B1があり、その外側には隔壁37がなく
回路段差平坦化膜35が形成されている第2の領域B2があり、さらにその外側には隔壁
37も回路段差平坦化膜35も形成されていない第3の領域B3がある。従って、基板上
回路領域Bにおける内側には大きい高さの第1の領域B1があり、その外側にはやや高さ
が低い第2の領域B2があり、さらにその外側にはかなり高さが低い第3の領域B3があ
ることにより、基板上における電極保護膜80の高さを内側から外側に向けて漸減させる
ことができる。
【0047】
発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82aは第1の領域B1、第2の領域B2および第
3の領域B3に重なり第3の領域B3で終端する。発光素子段差平坦化膜82の傾斜面8
2aが第1の領域B1、第2の領域B2および第3の領域B3に重なり第3の領域B3で
終端することにより、緩やかな曲線を描くように発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82
aを形成しやすい。このため、発光素子段差平坦化膜82を覆うガスバリア層84の屈曲
角度も緩和されるので、ガスバリア層84の屈曲部分に応力が集中するのを抑制できる。
特に、発光素子段差平坦化膜82を粘性の高い液体状の有機化合物をコーティングして固
化させることにより形成する場合には、電極保護膜80の表面に沿って有機化合物が伸び
るため、急激な屈曲のない傾斜面82aを形成しやすいので、ガスバリア層84の破壊を
抑制できる。
【0048】
図5は、本発明の第1実施形態の変形例に係る発光装置1Aの構成の一部を示す概略平
面図であって、図1(A)と同様の状態を示す図である。この変形例では、第2電極用電
源線140は図1(A)と異なり、コの字状ではなく、短い矩形に形成されている。上述
と同様に、図5の状態の後に、補助配線150および画素電極76がさらに形成されて、
図1(B)と全く同一の状態になる。補助配線150は回路領域Bを広く覆っており、回
路領域Bにおいて第2電極用電源線140に接続される。従って、第2電極用電源線14
0は図1(A)のようにコの字状に長く形成する必要はなく、この変形例のように短い矩
形に形成しても問題はない。この変形例では、第2電極用電源線140を形成する面積を
節約することができる。
【0049】
図6は図5の変形例の発光装置1Aの部分断面図を示す。同図は、発光領域Aおよび周
辺回路たる走査線駆動回路100A,100Bを横切るが第2電極用電源線140を横切
らない断面を示す。周辺回路を構成するトランジスタ40,50の少なくとも一部には回
路段差平坦化膜35が重なっており、回路段差平坦化膜35は補助配線150の第1部分
150aで覆われている。周辺回路上において、電極保護膜80の端部は回路保護膜34
に直接接触しており、回路段差平坦化膜35の端部を通じて水分またはガスが入ることを
抑制している。
【0050】
この変形例では、発光素子段差平坦化膜82が周辺回路の一部を覆っているため、周辺
回路によって生ずることがある段差または凹凸を発光素子段差平坦化膜82が緩和し、発
光素子段差平坦化膜82を覆うガスバリア層84の屈曲角度も緩和されることにより、ガ
スバリア層84の一部に応力が集中するのを抑制できる。また、周辺回路に重なる領域で
、ガスバリア層84が回路保護膜34と直接接触して終端している。従って、周辺回路の
外側でガスバリア層84が終端する場合に比べて、基板30の面積を狭小化することが可
能である。ガスバリア層84が回路保護膜34と直接接触し、電極保護膜80の端部が回
路保護膜34と直接接触していることにより、回路段差平坦化膜35と電極保護膜80の
間に配置されたOLED素子70が封止される。
【0051】
図6では、ガスバリア層84が回路保護膜34と直接接触して終端しているが、ガスバ
リア層84が電極保護膜80の端部に直接接触して終端していてもよい。この場合にも、
周辺回路の外側でガスバリア層84が終端する場合に比べて、基板30の面積を狭小化す
ることが可能であり、回路段差平坦化膜35と電極保護膜80の間に配置されたOLED
素子70が封止される。
【0052】
この変形例でも、基板30上の回路領域Bにおける内側には隔壁37と回路段差平坦化
膜35が重なって形成されている第1の領域B1があり、その外側には隔壁37がなく回
路段差平坦化膜35が形成されている第2の領域B2があり、さらにその外側には隔壁3
7も回路段差平坦化膜35も形成されていない第3の領域B3がある。従って、基板上回
路領域Bにおける内側には大きい高さの第1の領域B1があり、その外側にはやや高さが
低い第2の領域B2があり、さらにその外側にはかなり高さが低い第3の領域B3がある
ことにより、基板上における電極保護膜80の高さを内側から外側に向けて漸減させるこ
とができる。
【0053】
発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82aは第1の領域B1、第2の領域B2および第
3の領域B3に重なり第3の領域B3で終端する。発光素子段差平坦化膜82の傾斜面8
2aが第1の領域B1、第2の領域B2および第3の領域B3に重なり第3の領域B3で
終端することにより、緩やかな曲線を描くように発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82
aを形成しやすい。このため、発光素子段差平坦化膜82を覆うガスバリア層84の屈曲
角度も緩和されるので、ガスバリア層84の屈曲部分に応力が集中するのを抑制できる。
特に、発光素子段差平坦化膜82を粘性の高い液体状の有機化合物をコーティングして固
化させることにより形成する場合には、電極保護膜80の表面に沿って有機化合物が伸び
るため、急激な屈曲のない傾斜面82aを形成しやすいので、ガスバリア層84の破壊を
抑制できる。
【0054】
<第2実施形態>
上述した第1実施形態においては、補助配線150を発光領域Aに形成されるOLED
素子70の構成要素である画素電極76と同時に形成した。これに対して、第2実施形態
は、OLED素子70の形成とは、独立して補助配線150を形成する。
【0055】
図7に第2実施形態に係る発光装置2の断面図を示す。この図に示すように、補助配線
150は共通電極72の上に面接触するように形成され、補助配線150および共通電極
72を覆うように電極保護膜80が形成される。逆に、補助配線150を共通電極72の
下に面接触するように形成してもよい。
補助配線150は共通電極72の上に面接触するように形成されるのであれば、共通電
極72を形成する際に、補助配線150の段差や補助配線150の応力により共通電極7
2が断線する虞がない。一方、補助配線150を共通電極72の下に面接触するように形
成する場合には、発光機能層74を形成する前に、隔壁37上に形成することができる。
この場合には、発光機能層74が形成されていないため、フォトリソグラフィなどにより
補助配線150のパターンを形成することができ、トランジスタ40、50、60や走査
線111などの配線と同様の精度で補助配線150を形成することができる。
【0056】
補助配線150の材料は、第1実施形態と同様であり、遮光性と導電性を有する。そし
て、補助配線150は、回路領域Bにおいて共通電極72と面で接触するので、接続抵抗
を下げることができる。したがって、電源インピーダンスを大幅に低減することが可能と
なる。また、補助配線150は発光領域AにおいてOLED素子70が形成されない領域
に配置される。例えば、補助配線150は隔壁37の上に形成される。したがって、第1
実施形態のように発光領域Aにおいて、コンタクトホールCHを形成して共通電極72と
補助配線150とを接続する必要がない。コンタクトホールCHを形成する場合には、コ
ンタクトホールCHの内面に共通電極72および電極保護膜80を形成する必要があるの
で、構造が複雑となり信頼性が低下する。これに対して、第2実施形態では、補助配線1
50を隔壁37の上に形成したので、構造を簡素化し信頼性を向上させることができる。
【0057】
また、この実施形態においては、共通電極72の端部において補助配線150が共通電
極72の外に突出しており、さらに外側を電極保護膜80が覆っている。このように形成
することによって、パネル10の端部から入り込む水分や空気が共通電極72の面に沿っ
て発光機能層74に到達することを抑制することができる。この実施の形態では、画素電
極76は不透明な反射性のものであるが、画素電極76を透明導電材料から形成して、デ
ュアルエミッションを実現してもよい。
【0058】
この実施の形態でも、発光素子段差平坦化膜82が周辺回路の領域全体を覆っているた
め、周辺回路によって生ずることがある段差または凹凸を発光素子段差平坦化膜82が緩
和し、発光素子段差平坦化膜82を覆うガスバリア層84の屈曲角度も緩和されることに
より、ガスバリア層84の一部に応力が集中するのを抑制できる。また、電極保護膜80
に加えてガスバリア層84を有する封止構造により周辺回路を保護することができる。例
えば、発光素子段差平坦化膜82を有機化合物で製造した場合に、硬化する際や硬化後に
おいて発光素子段差平坦化膜82により発生するガスまたは不純物により周辺回路が劣化
するのを電極保護膜80で抑制することができる。
【0059】
図7に示すように、基板30上における周辺回路の外側でガスバリア層84が電極保護
膜80に直接接触している。従って、ガスバリア層84と電極保護膜80で挟まれた発光
素子段差平坦化膜82へ外側からの空気または水分が伝わって入るのを防止できる。また
、電極保護膜80に欠陥が生じたとしても、ガスバリア層84が電極保護膜80に直接接
触している部分では、電極保護膜80の欠陥により封止性能が害されることをガスバリア
層84が防止できる。
【0060】
また、第2電極用電源線140における共通電極72が第2電極用電源線140に直接
接触する部分に重なる位置で、ガスバリア層84が電極保護膜80に直接接触しているの
で、幅が広い第2電極用電源線140よりも外側のみの位置で、ガスバリア層84が電極
保護膜80に直接接触する場合に比べて、基板30の面積を狭小化することが可能である
。また、仮に、幅が広い第2電極用電源線140が周辺回路と発光領域Aの間に配置され
ていると、発光領域Aと周辺回路の間隔が広いために、基板30を大きくせざるをえない
おそれがある。しかし、この実施形態では、第2電極用電源線140が周辺回路の外側に
配置されて、第2電極用電源線140に重なる位置で、ガスバリア層84が電極保護膜8
0に直接接触しているので、基板30をあまり大きくしなくてもよい。さらに、第2電極
用電源線140は共通電極72とは異なる高さに形成されているため、第2電極用電源線
140と共通電極72を電気的に接続する部分には他の部分との段差が生じて、これに伴
い電極保護膜80に段差による欠陥が生ずることがある。しかし、電極保護膜80におい
てこのような段差による欠陥が生じたとしても、第2電極用電源線140に重なる位置で
、ガスバリア層84が電極保護膜80に直接接触しているために、電極保護膜80の欠陥
により封止性能が害されることをガスバリア層84が防止できる。
【0061】
発光素子段差平坦化膜82は、電極保護膜80に対向する凹凸の大きい面(図中の下面
)と、電極保護膜80と反対側にある平坦な面(図中の上面)をつなぐ傾斜面82aを有
する。発光素子段差平坦化膜82において基板30に対して垂直な面で図中の下面と図中
の上面をつなぐ場合よりも、傾斜面82aでつなぐことにより、発光素子段差平坦化膜8
2を覆うガスバリア層84の屈曲角度を緩和してガスバリア層84における応力集中を緩
和することができる。この傾斜面82aが周辺回路に重なるということは、発光素子段差
平坦化膜82が周辺回路またはその近辺にて終端するということである。この場合には、
傾斜面82aが周辺回路の完全に外側にある場合に比べて、発光素子段差平坦化膜82の
占有面積を小さくすることができるので、基板30の面積を狭小化することが可能である

【0062】
図7に示すように、基板30上の回路領域Bにおける内側には隔壁37と回路段差平坦
化膜35が重なって形成されている第1の領域B1があり、その外側には隔壁37がなく
回路段差平坦化膜35が形成されている第2の領域B2があり、さらにその外側には隔壁
37も回路段差平坦化膜35も形成されていない第3の領域B3がある。従って、基板上
回路領域Bにおける内側には大きい高さの第1の領域B1があり、その外側にはやや高さ
が低い第2の領域B2があり、さらにその外側にはかなり高さが低い第3の領域B3があ
ることにより、基板上における電極保護膜80の高さを内側から外側に向けて漸減させる
ことができる。
【0063】
発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82aは第1の領域B1、第2の領域B2および第
3の領域B3に重なり第3の領域B3で終端する。発光素子段差平坦化膜82の傾斜面8
2aが第1の領域B1、第2の領域B2および第3の領域B3に重なり第3の領域B3で
終端することにより、緩やかな曲線を描くように発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82
aを形成しやすい。このため、発光素子段差平坦化膜82を覆うガスバリア層84の屈曲
角度も緩和されるので、ガスバリア層84の屈曲部分に応力が集中するのを抑制できる。
特に、発光素子段差平坦化膜82を粘性の高い液体状の有機化合物をコーティングして固
化させることにより形成する場合には、電極保護膜80の表面に沿って有機化合物が伸び
るため、急激な屈曲のない傾斜面82aを形成しやすいので、ガスバリア層84の破壊を
抑制できる。
【0064】
<第3実施形態>
図8(A)は、本発明の第3実施形態に係る発光装置3の構成の一部を示す概略平面図
であり、図8(B)は図8(A)の状態の後に共通電極72をさらに形成した状態を示す
平面図であり、図9は、図8(B)の状態の後に補助配線150をさらに形成した状態を
示す平面図である。図10は発光装置3の部分断面図である。図11は発光装置3の図1
0とは別の部分断面図である。
【0065】
上述した第1実施形態では、図1に示すように回路領域Bにおいて周辺回路(走査線駆
動回路100A、100B、プリチャージ回路120)の外側に第2電極用電源線140
を設けたが、第3実施形態では、第2電極用電源線140を周辺回路と発光領域Aとの間
に設けている。第2電極用電源線140と共通電極72は、図8(B)に示すようにコン
タクトホールCHで接続されている。
【0066】
図10に示すように、回路領域Bから発光領域Aに延びる走査線111の少なくとも第
2電極用電源線140と重なる部分は、第2電極用電源線140とは異なる高さに配置さ
れており、両者の間は第1層間絶縁層33で絶縁されている。図示しないが、データ線1
12の少なくとも第2電極用電源線140と重なる部分や電流給電線113の少なくとも
第2電極用電源線140と重なる部分も同様である。走査線111、データ線112、あ
るいは電流給電線113の少なくとも第2電極用電源線140と重なる部分は、ゲート絶
縁層32の上にゲート電極42、52、および62と同一の材料から同時に形成される(
図示しないが、他の実施形態でも同様である)。そして、第1層間絶縁層33の上に第2
電極用電源線140が形成される。
【0067】
この実施形態では、周辺回路(走査線駆動回路100A、100Bおよびプリチャージ
回路120)には共通電極72も補助配線150も重なっていないため、周辺回路と共通
電極72または補助配線150の隙間に寄生容量が発生することがない。従って、周辺回
路から伝送される信号(例えば走査線駆動回路100A,100B内のシフトレジスタが
上記のように走査線111を選択するために発生するシフトパルス)の劣化を抑制するこ
とができる。
【0068】
この実施形態では、回路段差平坦化膜35および回路保護膜34が周辺回路(トランジ
スタ40,50を持つ走査線駆動回路100A、100Bおよびプリチャージ回路120
)に重なっていることにより、発光装置の製造プロセスにおいて、周辺回路が回路段差平
坦化膜35および回路保護膜34により機械的に保護される。特に補助配線150または
共通電極72を蒸着により形成するのであれば、蒸着の際に補助配線150または共通電
極72をパターニングするマスクが周辺回路と接触して周辺回路を破損することを防止で
きる。このようなマスクは回路段差平坦化膜35および最も外側の隔壁37に配置される
。また、例えば蒸着後の洗浄工程などで発生した静電気が周辺回路に流れて破損するのを
防止することができる。緻密で脆弱な材料から形成されて薄い回路保護膜34は衝撃に弱
いが、それよりも厚くて緩衝性のある回路段差平坦化膜35が回路保護膜34および周辺
回路に重なっていることにより、周辺回路への機械的な保護、および静電気からの保護は
より確実になる。
【0069】
図11に示すように、基板30の外周縁と発光領域Aの間の回路領域Bには、データ線
112(図1(A)参照)の端子112Aが形成されている。端子112Aは、フレキシ
ブル基板20にACFで接着されてデータ線駆動回路200に電気的に接続され、データ
線112を介して単位回路Pに信号を供給する。データ線112の端子112A以外の部
分は回路保護膜34で覆われており、さらに部分的に回路段差平坦化膜35で覆われてい
る。データ線112が回路段差平坦化膜35および回路保護膜34に覆われている部分を
有することにより、発光装置の製造プロセスにおいて、データ線112が回路段差平坦化
膜35および回路保護膜34により機械的に保護される。特に補助配線150または共通
電極72を蒸着により形成するのであれば、蒸着の際に補助配線150または共通電極7
2をパターニングするマスクがデータ線112と接触して断線させることを防止できる。
このようなマスクは回路段差平坦化膜35および最も外側の隔壁37に配置される。また
、例えば蒸着後の洗浄工程などで発生した静電気が単位回路Pに流れて破損するのを防止
することができる。緻密で脆弱な材料から形成されて薄い回路保護膜34は衝撃に弱いが
、それよりも厚くて緩衝性のある回路段差平坦化膜35が回路保護膜34および周辺回路
に重なっていることにより、データ線112への機械的な保護、および単位回路Pの静電
気からの保護はより確実になる。また、データ線112と補助配線150または共通電極
72との間には隔壁37と回路段差平坦化膜35が介在しているため、これらの間に寄生
容量が発生しにくい。
【0070】
図11の断面図ではデータ線112が回路保護膜34および回路段差平坦化膜35が保
護されていることが示されているが、図8(A)に示されるように、単位回路Pに電流を
供給する第1電極用電源線130および第2電極用電源線140には、データ線112に
平行に延びる部分があり、これらのデータ線112に平行に延びる部分には、フレキシブ
ル基板20にACFで接着されて電源に電気的に接続される端子が設けられている。これ
らの第1電極用電源線130および第2電極用電源線140も回路段差平坦化膜35およ
び回路保護膜34に覆われている部分を有することにより、発光装置の製造プロセスにお
いて機械的に保護され、静電気が流れることから保護される。
【0071】
この実施の形態でも、発光素子段差平坦化膜82が周辺回路の領域全体を覆っているた
め、周辺回路によって生ずることがある段差または凹凸を発光素子段差平坦化膜82が緩
和し、発光素子段差平坦化膜82を覆うガスバリア層84の屈曲角度も緩和されることに
より、ガスバリア層84の一部に応力が集中するのを抑制できる。また、電極保護膜80
に加えてガスバリア層84を有する封止構造により周辺回路を保護することができる。例
えば、発光素子段差平坦化膜82を有機化合物で製造した場合に、硬化する際や硬化後に
おいて発光素子段差平坦化膜82により発生するガスまたは不純物により周辺回路が劣化
するのを電極保護膜80で抑制することができる。
【0072】
図10に示すように、基板30上における周辺回路の外側でガスバリア層84が電極保
護膜80に直接接触している。従って、ガスバリア層84と電極保護膜80で挟まれた発
光素子段差平坦化膜82へ外側からの空気または水分が伝わって入るのを防止できる。ま
た、電極保護膜80に欠陥が生じたとしても、ガスバリア層84が電極保護膜80に直接
接触している部分では、電極保護膜80の欠陥により封止性能が害されることをガスバリ
ア層84が防止できる。
【0073】
発光素子段差平坦化膜82は、電極保護膜80に対向する凹凸の大きい面(図中の下面
)と、電極保護膜80と反対側にある平坦な面(図中の上面)をつなぐ傾斜面82aを有
する。発光素子段差平坦化膜82において基板30に対して垂直な面で図中の下面と図中
の上面をつなぐ場合よりも、傾斜面82aでつなぐことにより、発光素子段差平坦化膜8
2を覆うガスバリア層84の屈曲角度を緩和してガスバリア層84における応力集中を緩
和することができる。この傾斜面82aが周辺回路に重なるということは、発光素子段差
平坦化膜82が周辺回路またはその近辺にて終端するということである。この場合には、
傾斜面82aが周辺回路の完全に外側にある場合に比べて、発光素子段差平坦化膜82の
占有面積を小さくすることができるので、基板30の面積を狭小化することが可能である

【0074】
図10および図11に示すように、基板30上の回路領域Bにおける内側には隔壁37
と回路段差平坦化膜35が重なって形成されている第1の領域B1があり、その外側には
隔壁37がなく回路段差平坦化膜35が形成されている第2の領域B2があり、さらにそ
の外側には隔壁37も回路段差平坦化膜35も形成されていない第3の領域B3がある。
従って、基板上回路領域Bにおける内側には大きい高さの第1の領域B1があり、その外
側にはやや高さが低い第2の領域B2があり、さらにその外側にはかなり高さが低い第3
の領域B3があることにより、基板上における電極保護膜80の高さを内側から外側に向
けて漸減させることができる。
【0075】
発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82aは第1の領域B1、第2の領域B2および第
3の領域B3に重なり第3の領域B3で終端する。発光素子段差平坦化膜82の傾斜面8
2aが第1の領域B1、第2の領域B2および第3の領域B3に重なり第3の領域B3で
終端することにより、緩やかな曲線を描くように発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82
aを形成しやすい。このため、発光素子段差平坦化膜82を覆うガスバリア層84の屈曲
角度も緩和されるので、ガスバリア層84の屈曲部分に応力が集中するのを抑制できる。
特に、発光素子段差平坦化膜82を粘性の高い液体状の有機化合物をコーティングして固
化させることにより形成する場合には、電極保護膜80の表面に沿って有機化合物が伸び
るため、急激な屈曲のない傾斜面82aを形成しやすいので、ガスバリア層84の破壊を
抑制できる。
【0076】
<変形例>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に述べる変形が
可能である。
また、上述した各実施形態においては、共通電極72はOLED素子70の陰極であっ
たが、陽極であってもよい。
さらに、上述した各実施形態において、補助配線150および画素電極76を、遮光性
を有する金属材料、例えばアルミニウムの層と、透明酸化物導電材料、例えばITO、I
ZO、またはZnO等の層の2層で構成してもよい。このような透明酸化物導電材料は
ガス透過率が低いため、例えば、外気や硬化後の発光素子段差平坦化膜82で発生するガ
スや不純物から、周辺回路を保護することができる。
くわえて、上述した各実施形態において発光領域Aに補助配線150を格子状に配置し
たが、これを設けなくてもよい。
上述した各実施形態においては、すべてのOLED素子70の陰極として単一の共通電
極72が設けられているが、複数の共通電極を設けて、それぞれの共通電極が異なるOL
ED素子70の陰極となるように配置してもよい。
図11は、第3実施形態の発光装置3の図10とは別の部分断面図であるが、第2実施
形態に係る発光装置2の図7とは別の断面を図11のようにしてもよい。
【0077】
上述した実施の形態においては、第1の領域B1では隔壁37と回路段差平坦化膜35
が重なって形成され、第2の領域B2では隔壁37がなく回路段差平坦化膜35が形成さ
れ、第3の領域B3では隔壁37も回路段差平坦化膜35も形成されていない。但し、第
1の領域B1では隔壁37と回路段差平坦化膜35が重なって形成され、第2の領域B2で
は回路段差平坦化膜35がなく隔壁37が形成され、第3の領域B3では隔壁37も回路
段差平坦化膜35も形成されていないような変形も可能である。特に、第2および第3実
施形態をこのように変形してもよい。このように変形すると、第1の領域B1と第2の領
域B2の境界における発光素子段差平坦化膜82の傾斜面82aひいてはこれを覆うガス
バリア層84の屈曲角度が緩和され、この部分への応力集中が抑制される。
【0078】
上述した実施の形態においては、第2電極用電源線140に共通電極72が重なってお
り、この重なり部分にて補助配線150が共通電極72に重なっているが、第2電極用電
源線140に共通電極72が重ならず、これらの間を補助配線150で接続してもよい。
共通電極72を陰極として用いる場合には、その材料は一般に仕事関数が低く反応性が高
いので、できる限り封止部分(ガスバリア層84と基体(電極保護膜84)の接触する部
分)から遠ざけることが好ましい。第2電極用電源線140に共通電極72が重ならない
ようにすれば、共通電極は基板上の内側の部分で終端させることができ、封止部分から共
通電極72を遠い位置に配置することが容易である。
この場合には、周辺回路は、共通電極72により覆われていなくてもよいが、上述した
第1および第2実施形態と同様に、周辺回路を覆うように共通電極72と補助配線150
が配置され、周辺回路上において共通電極72と補助配線150が積層されていれば、共
通電極72と補助配線150が広い面積で面接触し、これらを低抵抗で接続できる。
【0079】
<応用例>
次に、本発明に係る発光装置を適用した電子機器について説明する。図12は、上記実
施形態に係る発光装置1を表示装置に適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構
成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置
1と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキー
ボード2002が設けられている。この発光装置1(1A,2,3)はOLED素子70
を用いるので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0080】
図13に、上記実施形態に係る発光装置1を適用した携帯電話機を示す。携帯電話機3
000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装
置としての発光装置1(1A,2,3)を備える。スクロールボタン3002を操作する
ことによって、発光装置1(1A,2,3)に表示される画面がスクロールされる。
【0081】
図14に、上記実施形態に係る発光装置1を適用した情報携帯端末(PDA:Personal
Digital Assistant)を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001お
よび電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置1(1A,2,3)を備
える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報
が発光装置1に表示される。
【0082】
本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図12から図14に示したもの
のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ペー
ジャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ
電話、POS端末、電子写真方式を利用した画像印刷装置における像担持体に光を照射し
て潜像を形成するプリンタヘッドのような発光源、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオ
プレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成の一部を示す概略平面図であり、(B)は(A)の状態の後に補助配線および画素電極をさらに形成した状態を示す平面図である。
【図2】同装置の画素回路の詳細を示す回路図である。
【図3】図1(B)の一部の拡大図である。
【図4】同装置の部分断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例に係る発光装置の構成の一部を示す概略平面図であって、図1(A)と同様の状態を示す図である。
【図6】図5の装置の部分断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る発光装置の部分断面図である。
【図8】(A)は本発明の第3実施形態に係る発光装置の構成の一部を示す概略平面図であり、(B)は(A)の状態の後に共通電極をさらに形成した状態を示す平面図である。
【図9】図8(B)の状態の後に補助配線をさらに形成した状態を示す平面図である。
【図10】同装置の部分断面図である。
【図11】同装置の図10とは別の部分断面図である。
【図12】本発明に係る発光装置を有するパーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る発光装置を有する携帯電話機の外観を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る発光装置を有する携帯情報端末の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1A,2,3…発光装置、30…基板、70…OLED素子(発光素子、有機EL
素子)、34…回路保護膜、35…回路段差平坦化膜、37…隔壁、72…共通電極(第
2電極)、74…発光機能層、76…画素電極(第1電極)、80…電極保護膜、82…
発光素子段差平坦化膜、82a…傾斜面、84…ガスバリア層、100A,100B…走
査線駆動回路(周辺回路)、111…走査線、112…データ線、112A…端子、11
3…電源供給線、120…プリチャージ回路(周辺回路)、140…第2電極用電源線、
150…補助配線、A…発光領域、B…回路領域、B1…第1の領域、B2…第2の領域
、B3…第3の領域、P…単位回路(画素回路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の発光領域に設けられた複数の画素回路を備え、前記複数の画素回路の各々は有
機EL素子を有し、前記有機EL素子は第1電極、第2電極および前記第1電極と前記第
2電極の間に挟まれた発光層を有する発光装置であって、
前記基板上における前記発光領域の外側に配置され、前記複数の画素回路の駆動または
検査に関係する信号を生成する周辺回路と、
前記発光領域および前記周辺回路を覆って前記有機EL素子の各々および前記周辺回路
を封止する電極保護膜と、
前記電極保護膜を挟んで前記有機EL素子および前記周辺回路とは反対側に配置されて
おり、前記電極保護膜に対向する第1の面と、前記第1の面と反対側にある第2の面とを
有しており、前記第1の面の凹凸よりも前記第2の面の凹凸が小さくなるように形成され
た平坦化膜と、
前記平坦化膜を覆っており、前記有機EL素子の各々をさらに外気から遮断するガスバ
リア層とを備え、
前記平坦化膜および前記ガスバリア層は前記周辺回路の領域の少なくとも一部を覆って
いることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記基板上における前記周辺回路の外側で前記ガスバリア層が前記電極保護膜に直接接
触していることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2電極は複数の前記発光素子に共通に設けられた共通電極であって、
前記第2電極に電位を供給するための第2電極用電源線が、前記基板上における前記周
辺回路の外側に配置されており、
前記第2電極用電源線における前記第2電極が前記第2電極用電源線に直接接触する部
分に重なる位置で、前記ガスバリア層が前記電極保護膜に直接接触していることを特徴と
する請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記周辺回路を覆って前記周辺回路を封止する回路保護膜と、
前記回路保護膜を挟んで前記周辺回路とは反対側に配置されており、前記回路保護膜に
対向する面と、前記回路保護膜とは反対の面とを有しており、前記回路保護膜に対向する
面の凹凸よりも前記回路保護膜とは反対の面の凹凸が小さい回路段差平坦化膜とを備え、
前記回路段差平坦化膜は前記周辺回路に部分的に重なっており、
前記有機EL素子は前記回路段差平坦化膜と前記電極保護膜の間に配置されており、
前記周辺回路に重なる領域で、前記電極保護膜が前記回路保護膜と直接接触していると
ともに、
前記周辺回路に重なる領域で、前記ガスバリア層が前記電極保護膜または前記回路保護
膜と直接接触して終端していることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記平坦化膜は、前記第1の面と前記第2の面とをつなぎ前記基板に対して傾斜した傾
斜面を有しており、前記傾斜面は前記周辺回路に重なっていることを特徴とする請求項1
から請求項4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記周辺回路を覆って前記周辺回路を封止する回路保護膜と、
前記回路保護膜を挟んで前記周辺回路とは反対側に配置されており、前記回路保護膜に
対向する面と、前記回路保護膜とは反対の面とを有しており、前記回路保護膜に対向する
面の凹凸よりも前記回路保護膜とは反対の面の凹凸が小さい回路段差平坦化膜と、
前記回路段差平坦化膜を挟んで前記回路保護膜とは反対側に配置されており、前記有機
EL素子の各々の前記発光層を画定する隔壁とを備え、
前記有機EL素子は前記回路段差平坦化膜と前記電極保護膜の間に配置されており、
前記基板上における内側には前記隔壁と前記回路段差平坦化膜が重なって形成されてい
る第1の領域があり、その外側には前記隔壁と前記回路段差平坦化膜の一方が形成されて
いる第2の領域があり、さらにその外側には前記隔壁も前記回路段差平坦化膜も形成され
ていない第3の領域があり、前記平坦化膜の前記傾斜面は前記第1の領域、前記第2の領
域および前記第3の領域に重なり前記第3の領域で終端することを特徴とする請求項5に
記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光領域に配置され、前記第2電極に電気的に接続されているとともに前記第2電
極用電源線に電気的に接続されている補助配線を備え、
前記第2電極および前記補助配線は、前記周辺回路を覆っており、前記周辺回路を覆う
位置で積層されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発
光装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の発光装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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