説明

発光装置の製造方法、発光装置及びこれを備える電子機器

【課題】生産性が改善された発光装置の製造方法、発光装置及びこれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】発光装置の製造方法は、基板100上に発光素子を形成し、封止用基板105上に封止樹脂膜134と、封止樹脂膜134を取り囲むループ状の接着膜144と、を形成し、基板100と封止用基板105とを第1の圧力の下で貼り合わせた後、両基板周辺の圧力を第1の圧力よりも高い第2の圧力へと変化させる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法、発光装置及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)に続く次世代の表示デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する。)等の自発光素子が2次元配列された自発光型の素子基板を備える発光装置又は表示装置の研究開発が行われている。
【0003】
有機EL素子は、アノード電極と、カソード電極と、これらの一対の電極間に形成された発光機能層と、を備える。発光機能層は、例えば有機EL層、正孔注入層及びインターレイヤからなる。有機EL層は蛍光あるいは燐光を発光することが可能な材料、例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む発光材料から構成されている。有機EL素子は、有機EL層において正孔と電子とが再結合する際に発生するエネルギーによって発光する。
【0004】
有機EL素子に用いられる発光材料や電極材料の中には、水分や酸素と接触することにより劣化しやすいものがある。水分や酸素の浸入を防ぐため、有機EL素子が形成された領域を封止する必要がある。封止にはいくつかの方法があるが、特許文献1には、有機EL素子の積層構造体の外表面に、電気絶縁性無機化合物からなる厚さ10μm以下の保護層を設ける方法が開示されている。この保護層は、真空蒸着法やスパッタ法により形成される。
【0005】
他の方法として、有機EL素子が形成された領域を樹脂で被覆する方法も知られている。特許文献2には、光硬化性樹脂層を光透過性を有するフィルム上に形成した封止材により、ガラス基板上に形成された有機EL素子をラミネート加工して封止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−089959号公報
【特許文献2】特開2004−139977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている方法では、凹凸を有する有機EL素子の表面に真空蒸着法やスパッタ法により保護層を形成するため、水分や酸素を遮断するのに十分な厚さの保護層を得るのに時間がかかるという問題がある。
【0008】
特許文献2に開示されている方法では、光硬化性樹脂層を凹凸を有する有機EL素子の表面に十分に密着させ、かつ貼り合わせ面や樹脂層に含まれる気泡を追い出すため、有機EL素子と封止材とをラミネート加工した後、加熱ローラ等により加熱圧着する工程を経る必要がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、生産性が改善された発光装置の製造方法、発光装置及びこれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る発光装置の製造方法は、第1の基板に、第1の電極と、前記第1の電極と対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に備えられた発光機能層と、を有する発光素子を形成し、第2の基板上の、前記第1の基板の前記発光素子が形成されている領域と対応する領域に樹脂膜を形成し、前記樹脂膜を取り囲みかつ前記樹脂膜との間に空間が形成されるようにループ状の第一接着膜を形成し、第1の圧力の下で、前記第1の基板と前記第2の基板とを前記発光素子と前記樹脂膜とが対向するように前記第一接着膜を介して貼り合わせ、貼り合わせられた前記第1の基板及び前記第2の基板の周辺の圧力を、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力へと変化させることを特徴とする。
【0011】
前記発光装置の製造方法において、前記第1の基板上に前記発光素子が複数形成され、前記複数の発光素子が形成されている領域と対応する前記第2の基板上の領域に前記樹脂膜が複数形成され、前記第一接着膜は前記複数の樹脂膜を取り囲むように形成されてもよい。
【0012】
前記第2の基板上の、前記第一接着膜よりも内側の領域に前記樹脂膜を取り囲む第二接着膜を形成する工程をさらに含み、前記空間は前記第一接着膜と前記第二接着膜との間に形成されていてもよい。
【0013】
貼り合わせられた前記第1の基板の端部、前記第2の基板の端部及び前記第一接着膜を除去する工程をさらに備えてもよい。
【0014】
本発明の第2の観点に係る発光装置は、本発明の第1の観点に係る方法により製造された発光装置を備える。
【0015】
本発明の第3の観点に係る発光装置は、第1の電極と、前記第1の電極と対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に備えられた発光機能層と、を有する発光素子を備えた第1の基板と、前記発光素子と対応する位置に形成された樹脂層と、前記樹脂層を取り囲み、且つ前記樹脂層との間に空間が設けられるように形成されたループ状の接着部と、を有し、前記樹脂層及び前記接着部を介して前記第1の基板と貼り合わせられている第2の基板と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の観点に係る電子機器は、本発明の第3の観点に係る発光装置を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生産性が改善された発光装置の製造方法、発光装置及びこれを備える電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a),(b)は本発明に係る発光装置を有するデジタルカメラを示した図である。
【図2】本発明に係る発光装置を有するパーソナルコンピュータを示した図である。
【図3】本発明に係る発光装置を有する携帯電話機を示した図である。
【図4】本発明に係る発光装置を有するテレビを示した図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る発光装置の製造方法により得られた発光装置の一部を切り欠いて示した図である。
【図6】図5に示した発光装置のA−A’線断面図である。
【図7】本発明に係る発光装置に備えられている画素の等価回路図である。
【図8】本発明に係る発光装置の一部を拡大して示した部分平面模式図である。
【図9】本発明に係る発光装置に備えられている画素の1つの拡大平面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】図9のXI−XI線断面図である。
【図12】(a),(b)は本発明の第1実施形態に係る発光装置の製造方法における有機EL素子基板の形成過程を説明するための図である。
【図13】(c),(d)は本発明の第1実施形態に係る発光装置の製造方法における有機EL素子基板の形成過程を説明するための図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る発光装置の製造方法において用いられるラミネート基板の平面図である。
【図15】図14に示すラミネート基板のB−B’線断面図である。
【図16】(a),(b)は本発明の第1実施形態に係る発光装置の製造方法において有機EL素子基板とラミネート基板とを減圧下で貼り合わせる工程を説明するための図である。
【図17】本発明の第1実施形態に係る発光装置の製造方法において、貼り合わせた有機EL素子基板とラミネート基板とを大気圧下に置いた後の状態を示す図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る発光装置の製造方法において用いられるラミネート基板の平面図である。
【図19】図18に示すラミネート基板のC−C’線断面図である。
【図20】本発明の第2実施形態に係る発光装置の製造方法により得られた発光装置の断面図である。
【図21】本発明の第2実施形態の変形例に用いられる有機EL素子基板の平面図である。
【図22】本発明の第2実施形態の変形例に用いられるラミネート基板の平面図である。
【図23】(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態の変形例に係る発光装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法、発光装置及びこれを備える電子機器について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
本発明に係る発光装置は、有機EL表示装置、有機EL発光装置、LCD等に用いられる。これらの発光装置は、例えばデジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、テレビ等の電子機器の表示部(ディスプレイ)に用いられる。具体例について図1〜4を参照しながら説明する。カメラ1200は図1(a)及び(b)に示すように、レンズ部1201と、操作部1202と、表示部1203と、ファインダー1204と、を備える。表示部1203は、本発明に係る発光装置を有する。同様に、パーソナルコンピュータ1210は図2に示すように、表示部1211と操作部1212とを備える。表示部1211は、本発明に係る発光装置を有する。更に、図3に示すように、携帯電話機1220は表示部1221と、操作部1222と、受話部1223と、送話部1224と、を備える。表示部1221は、本発明に係る発光装置を有する。更に、図4に示すように、テレビ1230は表示部1231を備える。表示部1231は、本発明に係る発光装置を有する。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る発光装置の製造方法を、発光装置800の製造工程を例に図面を参照しながら説明する。発光装置800は基板側に光を放出する、ボトムエミッション型の発光装置である。図5及び図6に示すように、発光装置800はガラス基板100と、封止用基板105と、封止樹脂層135を備える。ガラス基板100上には、複数の画素120が形成されている。画素120は有機EL素子であり、ガラス基板100上に二次元配列されている。画素120の間は隔壁130によって仕切られている。画素120が形成されている領域は封止樹脂層135によって封止されている。
【0022】
発光装置800の構造を、図7乃至図9を参照しながらさらに詳細に説明する。図7は画素120の構成を説明するための等価回路図である。図8は発光装置800の部分拡大平面図であり、図9は発光装置800に備えられている画素120のうちの1つを拡大して示した平面図である。
【0023】
図7に示すように、各画素120はキャパシタCs、アノード線La、信号線Ld、走査線Ls、有機EL素子OEL、選択トランジスタTr11、駆動トランジスタTr12、を備える。平面視すると、アノード線La、信号線Ld及び走査線Lsは図8に示すように画素120の開口部の間に縦横に交差して配置されている。図9は、画素120の構造をより具体的に示した平面図である。なお、図8、図9においては構造の理解を容易にするため、対向電極46、無機膜47、封止樹脂層135及び封止用基板105は省略されている。
【0024】
キャパシタCsは、駆動トランジスタTr12のゲート−ソース間電圧を保持するためのものであり、図7及び図9に示すように、駆動トランジスタTr12のゲート−ソース間に接続されている。
【0025】
選択トランジスタTr11は、有機EL素子OELを選択するスイッチとして機能するトランジスタである。図9及び図11に示すように、そのドレイン電極は信号線Ldに接続されている。ソース電極は駆動トランジスタTr12のゲート電極に接続されている。ゲート電極は走査線Lsに接続されている。
【0026】
図10に示すように、画素120は有機EL層45を備える。有機EL層45は電流を供給されることにより発光する。有機EL層45に電流を供給するため、画素120は駆動トランジスタTr12と、アノード電極42と、対向電極46と、を備える。駆動トランジスタTr12は、例えば薄膜トランジスタである。アノード電極42は例えばITO等の透明電極材料で形成されている。対向電極46は、ボトムエミッション型の発光装置800の場合、例えばLi、Mg、Ca、Ba等の仕事関数の低い材料からなる電子注入性の下層と、Al等の光反射性導電金属からなる上層と、から構成されている。
【0027】
有機EL層45を形成する有機EL材料の中には、酸素や水分と接触すると劣化するものがある。また、対向電極46を構成する材料、特にBa等からなる低仕事関数材料層は酸素と触れると容易に酸化され、発光装置800の性能を低下させる。これを防ぐため、画素120は図6に示すように、封止樹脂層135及び無機膜47によって封止されている。封止樹脂層135は例えばエポキシ系UV硬化性樹脂で形成されている。無機膜47は例えばAl、SiN等で形成されている。
【0028】
発光装置800の製造方法の実施形態について図12〜図17を参照しながら説明する。なお、ここでは理解を容易にするために発光装置800の製造方法を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
まず、図12(a)に示すように、ガラス基板100上にCr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNb合金膜等からなる駆動トランジスタTr12のゲート電極Tr12gを形成し、窒化ケイ素、酸化ケイ素等からなるゲート絶縁膜106で被覆する。ゲート絶縁膜106は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成される。なお、図12(a)では省略されているが、他の金属配線や電極、例えば信号線、スイッチトランジスタのゲート電極等もこの工程で形成することができる。
【0030】
次に図12(b)に示すように、アノード電極42、駆動トランジスタTr12を構成するソース電極、ドレイン電極等が、ゲート絶縁膜106上に公知の工程により形成される。
【0031】
発光装置800がボトムエミッション型の場合、アノード電極42はITO(Indium Tin Oxide)、ZnO等で形成される透明導電膜である。その厚みは、例えば50〜300nmである。ソース電極及びドレイン電極は、例えばCr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNb合金膜等からなる。アノード電極42は、駆動トランジスタTr12を経由して供給される電流を、次の工程で形成される有機EL層へと供給する。
【0032】
次に図13(c)に示すように、隔壁130と有機EL層45が形成される。隔壁130はポリイミド等からなり、各駆動トランジスタTr12及び各アノード電極42を互いに絶縁する役割を果たす。さらに後述するように、有機EL層45が形成される際の仕切りの役割も果たす。
【0033】
有機EL層45は電圧を印加することにより光を発生する機能を有する。有機EL層45は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料、例えばポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む発光材料から構成される。
【0034】
有機EL層45は、上記の発光材料を適した溶媒、例えば水系溶媒あるいはテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒に溶解(又は分散)した溶液(分散液)をノズルコート法やインクジェット法等により塗布し、溶媒を揮発させることによって形成される。この際、隔壁130で仕切られた各領域に溶液を塗布することで、有機EL層45を所望の位置に所望の厚みで形成することができる。
【0035】
溶液を塗布する前に、酸素プラズマ処理若しくはUVオゾン処理によりアノード電極42表面の親液化を行ってもよい。アノード電極42を親液化することで、塗布された溶液(分散液)がアノード電極42の表面に均一に広がる。この結果、膜厚が均一な有機EL層45を形成することができる。
【0036】
さらに、隔壁130の表面にあらかじめ撥液処理を施しておいてもよい。ここで撥液とは、水系の溶媒、有機系溶媒のいずれもを弾く性質を示す。隔壁130の表面にあらかじめ撥液処理を施しておくことで、塗布された溶液(分散液)が隔壁130上に広がるのを防ぎ、有機EL層45を所望の位置に所望の厚みで形成することが容易となる。
【0037】
本実施形態においては発明の理解を容易にするために有機EL層45として単一の層からなるものを例示したが、有機EL層45はさらに、正孔注入層若しくはインターレイヤ又はその両方を備えていてもよい。正孔注入層が形成される場合、正孔注入層は、アノード電極42と有機EL層45との間に形成される。正孔注入層は有機EL層45に正孔を供給する機能を有する。正孔注入層は正孔(ホール)注入・輸送が可能な有機高分子系の材料、例えば導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とドーパントであるポリスチレンスルホン酸(PSS)から構成される。
【0038】
更に、インターレイヤが形成される場合、インターレイヤは正孔注入層と有機EL層45との間に形成される。インターレイヤは正孔注入層の正孔注入性を抑制して有機EL層45内において電子と正孔とを再結合させやすくする機能を有し、有機EL層45の発光効率を高める。
【0039】
次に図13(d)に示すように、隔壁130及び有機EL層45を覆うように対向電極46が形成される。発光装置800がボトムエミッション型の場合、対向電極46は、例えばLi、Mg、Ca、Ba等の仕事関数の低い材料からなる電子注入性の下層と、Al等の光反射性導電金属からなる上層を有する積層構造を備える。一方、発光装置800がトップエミッション型の場合、対向電極46は、例えばLi、Mg、Ca、Ba等の仕事関数の低い材料からなる厚さ10nm程度の膜厚の極薄い光透過性低仕事関数層と、100nm〜200nm程度の膜厚のITO等の光反射性導体層を有する透明積層構造を備える。
【0040】
対向電極46の上には無機膜47が形成される。図13(d)に示すように、無機膜47は対向電極46を覆うように形成される。無機膜47は、例えばAl、SiN等をスパッタ法やプラズマCVD法で堆積させることにより形成される。このようにして、ガラス基板100上に、有機EL素子が二次元配列された素子形成領域400が形成される。
【0041】
次の工程では、素子形成領域400が封止される。ここでは、封止は図14及び図15に示すラミネート基板110を用いて行われる。ラミネート基板110は封止樹脂膜134と、それを取り囲むようにループ状に形成された接着膜144とを有する。封止樹脂膜134と接着膜144との間には、図14及び図15に示すように空間が形成されている。封止樹脂膜134及び接着膜144は、例えばUV硬化型エポキシ樹脂からなる。両者は同一の樹脂から形成されていてもよいが、接着膜144の方が封止樹脂膜134よりも接着性が高いことが好ましい。
【0042】
封止工程を、図16及び図17を参照しながら説明する。貼り合わせは減圧下で行われる。まず準備段階として、有機EL素子が形成されたガラス基板100とラミネート基板110とを、例えば耐圧容器(図示せず)内に置く。耐圧容器内の空気を抜き、減圧する。この際圧力は特に限定されない。両者を減圧下に置くことで、素子や樹脂の表面又は内部に存在している微量の水分や空気を除去して減少させることができる。この結果、得られる発光装置800の信頼性や耐久性が向上する。この際、水分や空気をより少なくするために、必要に応じて加熱を行ったり、減圧下に置く時間を長くしたりしてもよい。
【0043】
次に図16(a)に示すように、素子形成領域400と、封止樹脂膜134及び接着膜144とが対向するようにガラス基板100とラミネート基板110とを配置する。ラミネート基板110を、図16(b)に示すようにガラス基板110へと押しつけ、密着させる。この際、ループ状の接着膜144と封止樹脂膜134との間には、図16(b)に示すように空間Sが形成されている。空間Sは、ループ状の接着膜144によって外気から遮断されている。この状態では、空間S内の圧力は耐圧容器内の圧力と実質的に等しい。
【0044】
次に、貼り合わせられたガラス基板100とラミネート基板110の周辺の圧力を上昇させる。最も簡便な方法としては、耐圧容器を開放して、内部の圧力を大気圧に戻す。すると空間Sと外部との圧力差により、封止樹脂膜134及び接着膜144は図17に示すように押しつぶされ、ガラス基板100とラミネート基板110とはさらに強く密着する。
【0045】
ガラス基板100とラミネート基板110とを十分に密着させた後、紫外線照射により光硬化性エポキシ樹脂からなる封止樹脂膜134及び接着膜144を硬化させ、それぞれ封止樹脂層135及び接着部145とする。その後、ガラス基板100と、ラミネート基板105と、接着部145とを含む領域を切断し除去することによって、図5及び図6に示す発光装置800が得られる。
【0046】
本実施形態では発光装置800を構成する2種類の基板を減圧下で貼り合わせた後、内外の圧力差を利用して密着させる。2種類の基板を減圧下に置くことで、素子や樹脂の表面又は内部に存在する微量の水分や空気を除去することができる。このため、得られる発光装置800は従来よりも高い耐久性を有する。また、圧力差を利用して両者を密着させるため、従来技術では必須であった大型の加熱ローラー等による圧着工程が不要である。さらに、加熱ローラー等を用いて一端部から他端部へと順番に圧力をかける場合に比べ、基板全体に均一に圧力をかけることができる。このため、歪みや接着ムラが生じにくく、より高い信頼性を有する発光装置800が得られる。
【0047】
なお、本実施形態では耐圧容器を開放することにより貼り合わせられたガラス基板100とラミネート基板110の周辺の圧力を上昇させたが、耐圧容器内に空気又は不活性ガス等を導入することにより内部の圧力を上昇させてもよい。上昇後の圧力は、完成後の発光装置の厚み、求められる接着力、各基板の強度など、各種要因を考慮した上で任意に選択することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る発光装置の製造方法を図18〜図20を参照しながら説明する。第1実施形態との違いは、ラミネート基板110の代わりに図18及び図19に示すラミネート基板115を使用する点である。その他の構成や製造工程は、第1実施形態と同様である。
【0049】
ラミネート基板115は、図18及び図19に示すように、封止樹脂膜134の周囲に接着膜139を有する。接着膜139は、封止樹脂膜134よりも接着性が高い樹脂で形成されている。ラミネート基板115の外周部には、ループ状の接着膜144が形成されている。これがガラス基板100と貼り合わせられると、2つの接着膜139と144との間に空間Sが形成される。
【0050】
貼り合わせ工程を経た後、第1実施形態と同様に、紫外線照射により光硬化性エポキシ樹脂からなる封止樹脂膜134及び接着膜139,144を硬化させ、それぞれ封止樹脂層135、接着部140,145とする。ガラス基板100と、ラミネート基板115と、接着部145とを含む領域を切断し除去すると、図20に示す発光装置810が得られる。
【0051】
図20に示すように、発光装置810は第1実施形態で得られた発光装置800と異なり、封止樹脂層135の周囲に接着部140を有する。接着部140は封止樹脂層135よりも接着性が高い樹脂であり、ガラス基板100とラミネート基板115とをより強固に結合させる。このため、発光装置810は機械的強度が高く、より耐久性に優れる。
【0052】
(変形例)
第1実施形態及び第2実施形態では発明の理解を容易にするために1枚のガラス基板100上に1つの素子形成領域400を形成する例を示したが、本発明の範囲はこれに限られない。例えば、1枚のガラス基板100上に複数の素子形成領域400を形成することもできる。第2実施形態の変形例として、1枚のガラス基板100上に複数の素子形成領域400を形成し複数の発光装置810を得る方法について、図21〜図23を参照しながら説明する。
【0053】
本変形例では、図21に示すように、ガラス基板100上に複数の素子形成領域400が形成され、これが図22に示すラミネート基板116と貼り合わせられる。ラミネート基板116は、素子形成領域400と対応する位置に封止樹脂膜134を有する。各封止樹脂膜134の周囲には接着膜139が形成されている。そして封止用基板105の外周部には、複数の封止樹脂膜134及び接着膜139を取り囲むように、ループ状の接着膜139が形成されている。
【0054】
貼り合わせ工程ではまず、複数の素子形成領域400を有するガラス基板100とラミネート基板116とが例えば耐圧容器(図示せず)内に導入される。耐圧容器内を所定の温度及び大気圧より低い所定の圧力に調整した後、各素子形成領域400と各封止樹脂膜134とが対向するよう両者が貼り合わせられる。図23(a)は、減圧下で両者を貼り合わせた状態を、図21及び図22に示したD−D’線における断面図で示したものである。この状態では、空間S内の圧力は耐圧容器内の圧力と実質的に等しい。
【0055】
次に、例えば耐圧容器の弁を開放して貼り合わせられた両基板の周辺の圧力を上昇させる。すると図23(b)に示すように、空間Sと外部との圧力差により封止樹脂膜134及び接着膜139,144は押しつぶされ、ガラス基板100とラミネート基板116とはさらに強く密着する。
【0056】
第1実施形態及び第2実施形態と同様に封止樹脂膜134、接着膜139,144を紫外線照射により硬化させてそれぞれ封止樹脂層135、接着部140,145とした後、図23(b)に破線で示されたスクライブ・ブレイクラインに沿って、ガラス基板100及びラミネート基板116を切断する。このスクライブ・ブレイクラインは、平面視では図21及び図22に示すように配置されている。このため、スクライブ・ブレイクラインに沿ってガラス基板100及びラミネート基板116を切断すると、接着部145も合わせて除去される。このようにして、図23(c)に示すように複数の発光装置810が得られる。本変形例では6つの素子形成領域400が形成されており、一度の工程で6枚の発光装置810を得ることが出来るため、生産性が特に高い。さらに、気圧差を利用することで基板全体に均一に圧力をかけることができるため、部位による品質のバラつきが少なく、安定した品質の発光装置810が得られる。
【0057】
以上、本発明について実施形態を示しながら詳しく述べたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る発光装置及びその製造方法は、有機EL素子を有する発光装置以外にも、有機EL表示装置、液晶表示パネル等に適用することができる。その他、本技術分野の通常の知識に基づいて様々な変形例が可能であり、それらの変形例は本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
Cs…キャパシタ、La…アノード線、Ld…信号線、Ls…走査線、OEL…有機EL素子、S…空間、Tr11…選択トランジスタ、Tr12…駆動トランジスタ、Tr12g…ゲート電極、42…アノード電極、45…有機EL層、46…対向電極、47…無機膜、100…ガラス基板、105…封止用基板、110,115,116…ラミネート基板、106…ゲート絶縁膜、120…画素、125…層間絶縁膜、130…隔壁、134…封止樹脂膜、135…封止樹脂層、139,144…接着膜、140,145…接着部、400…素子形成領域、800,810…発光装置、1200…デジタルカメラ、1201…レンズ部、1202…操作部、1203…表示部、1204…ファインダー、1210…パーソナルコンピュータ、1211…表示部、1212…操作部、1220…携帯電話機、1221…表示部、1222…操作部、1223…受話部、1224…送話部、1230…テレビ、1231…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に、第1の電極と、前記第1の電極と対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に備えられた発光機能層と、を有する発光素子を形成し、
第2の基板上の、前記第1の基板の前記発光素子が形成されている領域と対応する領域に樹脂膜を形成し、前記樹脂膜を取り囲みかつ前記樹脂膜との間に空間が形成されるようにループ状の第一接着膜を形成し、
第1の圧力の下で、前記第1の基板と前記第2の基板とを前記発光素子と前記樹脂膜とが対向するように前記第一接着膜を介して貼り合わせ、
貼り合わせられた前記第1の基板及び前記第2の基板の周辺の圧力を、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力へと変化させることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の基板上に前記発光素子が複数形成され、
前記複数の発光素子が形成されている領域と対応する前記第2の基板上の領域に前記樹脂膜が複数形成され、
前記第一接着膜は前記複数の樹脂膜を取り囲むように形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の基板上の、前記第一接着膜よりも内側の領域に前記樹脂膜を取り囲む第二接着膜を形成する工程をさらに含み、
前記空間は前記第一接着膜と前記第二接着膜との間に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
貼り合わせられた前記第1の基板の端部、前記第2の基板の端部及び前記第一接着膜を除去する工程をさらに備える、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法により製造されることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
第1の電極と、前記第1の電極と対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に備えられた発光機能層と、を有する発光素子を備えた第1の基板と、
前記発光素子と対応する位置に形成された樹脂層と、前記樹脂層を取り囲み、且つ前記樹脂層との間に空間が設けられるように形成されたループ状の接着部と、を有し、前記樹脂層及び前記接着部を介して前記第1の基板と貼り合わせられている第2の基板と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発光装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−74274(P2012−74274A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218569(P2010−218569)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】