説明

発光装置及び、その製造方法

【課題】蛍光体を分散する材料として樹脂を用いると紫外線による劣化の問題があり、ガラス自体の成分として発光中心となる希土類元素を加えた場合、良好な波長変換効率が得られにくく、発光色が製造条件によって変化するため再現性が十分でなかった。本発明はかかる問題を解決する。
【解決手段】半導体レーザと波長変換部材を有し、小型で長寿命な発光装置に関する。波長変換部材は、軟化点が700℃以上のガラス中に、分散された酸窒化物蛍光体の粒子または窒化物蛍光体の粒子の少なくともいずれかを含み、前記ガラスはオキシナイトガラスである。波長変換部材の製造工程において、蛍光体の粒子をガラス中に分散させる際に蛍光体中の希土類がガラスに溶けてしまうことがなく粒子状態を保つとともに、波長変換効率が向上し、紫色から紫外の励起光によっても劣化しない。また蛍光体からの光取り出し効率が高く、水分などの雰囲気の影響を受けない安定した波長変換部材となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光素子と波長変換部材を有し、波長変換部材に蛍光体を用いた発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子の光を蛍光体によって波長変換する発光装置は、小型であり、消費電力が白熱電球よりも少ないという特徴を有しており、各種表示装置あるいは照明装置の光源として実用化を進めるために、さらなる効率・信頼性の向上に向けた開発が行われている。特許文献1には、青色発光ダイオード(LED)と、青色発光ダイオードの光によって励起され黄色の光を発する蛍光体とを組み合わせて擬似白色の光を得る発光装置が開示されている。蛍光体の粒子を分散する材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、水ガラスの3種類が開示されている。特許文献2には、青色LEDと、青色LEDからの光によって励起され黄色の蛍光を発するYAl12系(ガーネット系)蛍光体を軟化点が500℃以上のガラスに分散した発光色変換部材とを組み合わせた白色照明光源が開示されている。
【0003】
今後、発光ダイオードや半導体レーザといった半導体発光素子と蛍光体を組み合わせた発光装置について、高効率化および色度の安定化を図るために、青色発光ダイオードよりも短波長の励起光源を用いることが考えられている。この際、蛍光体を分散する材料である樹脂が紫色から紫外の波長の光によって劣化することが大きな問題となっている。この問題を解決するために蛍光体を分散させる材料としてガラスを用いる技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、CaCO、Al、SiO、AlN、及び希土類酸化物若しくは遷移金属酸化物の各成分よりなるオキシ窒化物ガラス(オキシナイトライドガラス)蛍光体が開示されている。発光中心として働く希土類元素であるEu2+、Eu3+、Ce3+、Tb3+など、又は発光中心として働く遷移金属元素であるCr3+、Mn2+などを前記ガラス中にドープして、強い発光強度を有するオキシ窒化物ガラスが得られたとされている。その製造方法は、CaCO、Al、SiO、AlN、Euを24.0:3.3:33.4:33.3:6.0の比率で混合し、高周波炉を用いて、窒素雰囲気下で、1700℃において2時間、加熱溶融し、さらに急冷して蛍光ガラスを得るとされており、この蛍光ガラスは、波長500nm程度の励起波長で、赤色の蛍光を発したとされている。
【0005】
この例では、オキシナイトライドガラス自体が蛍光体としての働きを有するが、ガラスは非晶質であって、一定の原子配置を有さない。従って、原料比率や処理温度などの製造条件の変化によって、発光中心である希土類原子の周囲のガラス成分の原子配置が変化するため、一定の波長変換効率が得られにくい。また発光色が製造条件によって変化するため再現性が悪く、希土類元素発光強度及び発光色の色度(発光スペクトル)が変化するという問題点がある。また、後述する酸窒化物蛍光体と比較すると、波長変換効率が低い。
【0006】
特許文献4には、波長変換効率が高く、耐熱性に優れている酸窒化物蛍光体であるαサイアロンを、融点が500℃の低融点ガラスに分散して評価した例が開示されている。発光ピーク波長が350〜380nmの紫外LEDを用い、αサイアロンを含有する低融点ガラス成形体に紫外LEDから発した光を入射して、蛍光体で波長変換を行う発光装置を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−163535号公報
【特許文献2】特開2003−258308号公報
【特許文献3】特開2001−214162号公報
【特許文献4】特開2004−238506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3のように非結晶体であるガラス自体の成分として、発光中心として働く希土類元素を加えた場合、希土類原子の周囲の原子配置が結晶構造の場合と異なり一定でない。そのため、良好な波長変換効率が得られにくく、また発光色が製造条件によって変化するため、発光装置の色度の再現性が十分でないという問題点があった。
【0009】
一方、特許文献4のように酸窒化物蛍光体の粒子を低融点ガラスに分散する場合、低融点ガラス中の融点を低下させるための成分(例えば鉛ガラスなど)によって、紫色から紫外の光の透過率が十分でないという問題を有していた。
【0010】
本発明は、酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体とそれらを分散させる材料の組み合わせによって、従来よりも高効率の蛍光が得られる波長変換部材を用いた発光装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、軟化点が700℃以上のガラス中に、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子が分散されている波長変換部材を用いた発光装置である。
【0012】
本発明者は、課題を解決するために蛍光体とガラスの組み合わせを種々検討した結果、単に酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子をシリコーン樹脂又は低融点ガラスに分散させた場合に比べ、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を軟化点が700℃以上のガラスに分散させることにより、波長変換効率が増大することを見出した。この理由として、これらの蛍光体が耐熱性に優れているため、ガラスを軟化点以上で溶融させてその中に分散させる工程においても、蛍光体の粒子がガラスと混じりあうことがなく粒子状態を保つことが考えられる。また、これらの蛍光体は窒化物又は窒化物ベースの酸窒化物であって酸化物でないため、特に結晶体についてはガラスとの反応が少ないと想定している。一方、その粒子の表面に存在する非結晶体については、溶融した高融点ガラス中に拡散し、除去されることがあると推定している。さらに、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子の組成比によっては、結晶構造を安定化させるアニール効果によって波長変換効率が増大する場合もある。
【0013】
(2)本発明の発光装置は、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子について、SiとNとを合わせた成分をモル比で50%以上含むことを特徴とする波長変換部材を用いている。酸化ケイ素(SiO)の融点が1710℃であるのに対し、窒化ケイ素の融点が1900℃と高温であるとともに、窒化ケイ素は酸化ケイ素のように軟化しない。従って、SiとNとを合わせた成分をモル比で50%以上含む蛍光体の粒子は、高温の溶融工程においても蛍光体が粒子状態を保つことができるため、軟化点の高いガラスと組み合わせるのに適している。
【0014】
(3)本発明において、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子について、その50%以上が結晶体であることを特徴とする波長変換部材である。蛍光体粒子の原子配列構造としては、結晶体の場合とアモルファス体の場合があるが、波長変換効率は結晶体の方が一般に1桁以上大きい。従って、結晶体を多く含むことにより、より波長変換効率の高い波長変換部材が得られる。
【0015】
(4)本発明において、酸窒化物蛍光体の粒子が、SiとAlとOとNと一種又は二種以上のランタノイド系希土類元素からなる蛍光体の粒子であることを特徴とする波長変換部材である。SiとAlとOとNからなる材料系はサイアロン(Sialon)と呼ばれることもあり、耐熱性に優れた材料であるため、ガラスの軟化点以上の温度でガラス中に分散しても、蛍光体の粒子として存在し、溶融しない。この材料は、発光中心となるランタノイド系希土類(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb)のうち一種又は二種以上を混ぜることによって、波長変換効率に優れ、安定な波長変換部材となる。
【0016】
(5)本発明において、窒化物蛍光体の粒子が、CaとSiとAlとNと一種又は二種以上のランタノイド系希土類元素からなる蛍光体の粒子であることを特徴とする波長変換部材である。CaとSiとAlとNからなる材料系は耐熱性に優れた材料であるため、ガラスの軟化点以上の温度でガラス中に分散しても、蛍光体粒子として存在し、溶融しない。この材料は、発光中心となるランタノイド系希土類(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb)のうち一種又は二種以上を混ぜることによって波長変換効率に優れ、安定な波長変換部材となる。
【0017】
(6)本発明は、軟化点が700℃以上のガラスが、オキシナイトライドガラスであることを特徴とする波長変換部材を用いている。
【0018】
本発明者は、課題を解決するために蛍光体とガラスの組み合わせを種々検討した結果、酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体とオキシナイトライドガラスの組み合わせが特に適していることを見出した。これらの蛍光体は耐熱性に優れているため、オキシナイトライドガラス中に分散させる工程においても蛍光体成分がオキシナイトライドガラスと混じりあうことがなく粒子状態を保つ。従って、製造条件によらず安定な色度及び波長変換効率が得られる。また、これらの蛍光体およびオキシナイトライドガラスを用いることによって、特に紫色から紫外の励起光の照射によっても劣化しない波長変換部材が得られる。さらに、オキシナイトライドガラスは、後述するように屈折率が酸化物ガラスに比べて高く、酸窒化物蛍光体及び窒化物蛍光体の屈折率に近いため、蛍光体の粒子からの光取り出し効率が向上する。
【0019】
(7)本発明において、発光ピーク波長が460nm以上510nm以下の第1の酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子と、発光ピーク波長が510nm以上550nm以下の第2の酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子と、発光ピーク波長が600nm以上670nm以下の第3の酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を含むことを特徴とする波長変換部材である。これにより、青、緑、赤の3原色を混合した色が得られるため、演色性および色度の再現性に優れた波長変換部材が得られる。
【0020】
(8)本発明の発光装置においては、蛍光体励起光源である半導体発光素子の発光ピーク波長が300nm以上500nm以下である。300nm以上であれば、オキシナイトライドガラスにおいて良好な透過率が得られ、また500nm以下の波長であれば、特に発光層がInGaNからなる窒化物半導体発光素子において高効率の発光が得られる。
【0021】
(9)本発明の発光装置においては、蛍光体励起光源である半導体発光素子の発光ピーク波長が350nm以上420nm以下である。この波長域は、特に発光層がInGaNからなる窒化物半導体発光素子において特に効率の良い発光が得られるとともに、視感度が低いために、半導体発光素子の発光ピーク波長ばらつきによる色度(発光色)の変動がほとんど起こらないという利点を有している。
【0022】
(10)本発明は、発光装置の発光色の色度座標xが0.22以上0.44以下かつ色度座標yが0.22以上0.44以下であるか、又は前記発光装置の発光色の色度座標xが0.36以上0.5以下かつ色度座標yが0.33以上0.46以下であることを特徴とする発光装置である。この色度は、それぞれ白色および電球色(暖色系白色)であるため、照明用などとして広く用いるのに適している。
【0023】
(11)本発明において、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子とガラス又はガラスの原料を、ガラスの軟化点以上1600℃以下に加熱することにより、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子をガラス中に分散させる工程を有することを特徴とする波長変換部材の製造方法を含む。酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子は、1600℃以下であればガラス中に混じりあうことが少なく粒子状態を保つため、この工程の条件に依存せず安定な蛍光を得ることができる。
【0024】
(12)本発明において、酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体の原料を1600℃以上の第1の温度で焼成して酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を作製する第1の工程と、第1の工程によって得られた酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子と、ガラスの原料を混合して、第1の温度より50℃以上低い第2の温度で加熱することにより、前記酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を前記ガラス中に分散させる第2の工程を有することを特徴とする波長変換部材の製造方法を含む。この製造方法では、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子は、その焼成温度より50℃以上低温でガラス中に分散させることができ、その条件ではガラス中に混じりあうことがなく粒子状態を保つため、この工程の条件に依存せず安定な蛍光を得ることができる。
【0025】
(13)本発明は、酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体の原料を1600℃以上の第1の温度で焼成して酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を作製する第1の工程と、ガラスの原料を溶融・混合してガラスを作製する第2の工程と、第1の工程によって得られた酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子と、第2の工程によって得られたガラスを混合して、第1の温度より50℃以上低い第2の温度で加熱することにより、前記酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を前記ガラス中に分散させる第3の工程を有することを特徴とする波長変換部材の製造方法を含む。この製造方法では、ガラス原料からガラスを作る際の温度について、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子への影響を考慮する必要がない。酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子は、その焼成温度より50℃以上低温でガラス中に分散させることができ、その条件ではガラス中に混じりあうことがなく粒子状態を保つため、この工程の条件に依存せず安定な蛍光を得ることができる。
【0026】
(14)本発明において、波長変換部材の製造では、ガラスにオキシナイトライドガラスを用いる。
【0027】
本発明者は、課題を解決するために蛍光体とガラスの組み合わせを種々検討した結果、酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体とオキシナイトライドガラスの組み合わせが、本製造方法においても特に適していることを見出した。これらの蛍光体は耐熱性に優れているため、オキシナイトライドガラス中に分散させる工程においても蛍光体成分がオキシナイトライドガラスと混じりあうことがなく粒子状態を保つ。従って、製造条件によらず安定な色度及び波長変換効率が得られる。また、これらの蛍光体およびオキシナイトライドガラスを用いることによって、特に紫色から紫外の励起光の照射によっても劣化しない波長変換部材が得られる。さらに、オキシナイトライドガラスは、後述するように屈折率が酸化物ガラスに比べて高く、酸窒化物蛍光体及び窒化物蛍光体の屈折率に近いため、蛍光体の粒子からの光取り出し効率が向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明において波長変換部材は、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を軟化点が700℃以上のガラスに分散しているため、紫色から紫外の波長で励起しても励起光が吸収されることがない。また軟化点が700℃以上のガラスの屈折率が酸窒化物蛍光体及び窒化物蛍光体の屈折率に近いために、蛍光体から外部への光取り出し効率が高い。従って、紫色から紫外の波長で励起しても劣化することなく、高い波長変換効率を得ることができる。
【0029】
また、本発明において、波長変換部材の製造方法によれば、酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体をその粒子状態を保ったままガラスに分散できるので、高い波長変換効率を保つことができる。
【0030】
本発明の発光装置は、紫色から紫外の波長で発光する半導体発光素子と上記波長変換部材とを組み合わせることによって、長寿命で高効率の発光装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態1の波長変換部材の構造図である。
【図2】実施の形態1における蛍光体の焼成工程の説明図である。
【図3】実施の形態1における波長変換部材の製造工程の説明図である。
【図4】実施の形態1におけるオキシナイトライドガラスの製造工程の説明図である。
【図5】実施の形態2における波長変換部材の製造工程の説明図である。
【図6】実施の形態3における波長変換部材の製造工程の説明図である。
【図7】実施の形態3における波長変換部材の製造工程の説明図である。
【図8】実施の形態5の発光装置の断面図である。
【図9】実施の形態6の発光装置の断面を示した斜視図である。
【図10】実施の形態7の発光装置の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の発光装置を、その実施の形態に基づき説明する。
なお、ガラスに関しては、転移点、軟化点、融点という温度が定義されているが、本実施の形態ではガラス中に粒子を分散させる際の下限温度となる軟化点を主に用いることにする。軟化点は、ガラスの粘度がlE+7.6 dPa・sに相当する温度として定義される。
【0033】
(実施の形態1:波長変換部材)
本発明の実施の形態1である波長変換部材を図1に示す。波長変換部材21は、オキシナイトライドガラス10に3種類の蛍光体粒子11、12、13を分散させたものである。蛍光体粒子11はCeを賦活したαサイアロン、蛍光体粒子12はEuを賦活したβサイアロン、蛍光体粒子13はEuを賦活したCaAlSiNを用いた。これらの蛍光体粒子はいずれもSiとNとを合わせた成分をモル比で50%以上含む、すなわち窒化ケイ素をベースとした酸窒化物蛍光体及び窒化物蛍光体の結晶体であり、非常に優れた耐熱性および水分など雰囲気ガスに対する安定性を有している。蛍光体粒子11、12、13に波長405nmの光を照射することにより、それぞれ発光ピーク波長480nm、540nmおよび660nmの非常に強い可視光の蛍光を発する。蛍光体粒子11、12、13の混合割合を調整することにより、全体としての発光色が変化するが、本実施の形態では、全体としての発光色が白色光に当たる色度となるように蛍光体粒子11、12、13の混合割合を4:4:2に調整した。
【0034】
実施の形態1における波長変換部材21の製造方法を以下に説明する。
(蛍光体粒子)
蛍光体粒子11は、組成式Ce0.5(Si、Al)12(O、N)16で表されるαサイアロンであり、以下のようにして作製される。原料として、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化セリウム粉末を、上記組成が得られるように秤量し、ボールミルにより粉砕・混合する。得られた混合物を、金型を用いて20MPaの圧力を加えて成形し、直径12mm、厚さ5mmの成形体11Aとした。図2に示すように、成形体11Aを電気炉50にセットする。焼成操作は、まず、ガス導入口53を閉にして排気口54から排気することによって電気炉50内を真空とし、成形体11Aを800℃まで加熱した後、排気口54を閉にしてガス導入口53から純度が99.9体積%の窒素を導入して圧力を30MPaとし、毎時500℃で2200℃まで昇温し、2200℃で2時間保持する。これにより、成形体11Aが焼成され、αサイアロンとなる。焼成された成形体11Aをボールミル中で粉砕することにより、青色に発光するαサイアロン蛍光体粒子11が作製される。蛍光体粒子11について、結晶体の割合が50%以上であることを確認した。
【0035】
蛍光体粒子12は、以下のようにして作製されている。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ユーロピウム粉末を混合させ、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中1MPa、1900℃で反応させて、その後粉砕することにより、緑色に発光するEuを賦活したβサイアロン蛍光体粒子12が作製される。
【0036】
蛍光体粒子13は、以下のようにして作製される。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化カルシウム、窒化ユーロピウム粉末を、水分と空気を遮断したグローブボックス内で混合させ、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中1MPa、1800℃で反応させて、その後粉砕することにより、赤色に発光するEuを賦活したCaAlSiN蛍光体粒子13が作製される。
【0037】
(波長変換部材)
オキシナイトライドガラスの原料であるCaCO、Al、SiO、AlNの微粉末を、各重量比=29:3:34:34で混合した混合粉末55を作製し、混合粉末55、蛍光体粒子11、12、13を混合して、ホットプレス法で成形し、成形体19とする。図3に示すように、成形体19を、電気炉50に入れ、乾燥窒素中・常圧で1500℃に昇温して2時間保持し、急冷することにより、図1に示すような、オキシナイトライドガラス10の中に蛍光体粒子11、12、13がほぼ均一に分散した波長変換部材21が形成された。
【0038】
波長変換部材21を形成する際の温度としては1500℃としたが、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子との反応を抑え溶融を防止する必要もあるため、蛍光体の焼成温度より50℃以上低い温度(この場合、一番低い蛍光体粒子13の焼成温度より50℃低い温度、すなわち1750℃以下)が望ましい。蛍光体の焼成温度より200℃以上低い温度が一層望ましい。
【0039】
なお、オキシナイトライドガラス10に、上記組成を有する、Ca−Si−Al−O−N系オキシナイトライドガラスを使用した。このほかにもCa−Mg−Si−Al−O−N、La−Si−O−N,Mg−Si−O−N,Y−Al−Si−O−N,Mg−Si−Al−O−N,Na−Si−O−N,Na−Ca−Si−O−N,Li−K−Al−Si−O−N,Na−B−Si−O−N,Ba−Al−Si−O−N,Na−B―O−N,Li−P−O−N,Na−P−O−N等の組成よりなるオキシナイトライドガラスを用いることができる。
【0040】
オキシナイトライドガラスの原料として、一般にはSiOなどの金属酸化物、及び窒素供給源として金属窒化物や金属酸窒化物を使用する。
【0041】
ここで、金属酸化物としては、SiOの他に、Al、BaO、Sb、SrO、NaO、Na、CaO、MgO、KO、La、CeO、Y、ZrO、ZnO、As、TiO、B、Cr、PbO、V、SnOなどが挙げられる。また、熱分解によってこれらの金属酸化物となる炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩を原料として配合してもよい。
【0042】
金属窒化物としては、Si、AlN、Al、Mg、LiNなどが挙げられる。
【0043】
金属酸窒化物としては、SiO、SiOなどが挙げられる。
また、オキシナイトライドガラスの軟化点は、組成にもよるが、一般に850〜1000℃程度である。
【0044】
(比較例)
また、本実施の形態と比較するため、以下の比較用波長変換部材21Bも作製した。低融点ガラスの微粉末、蛍光体粒子11、12、13を混合してルツボに入れ、ルツボを電気炉50に入れ、乾燥窒素中・常圧で500℃に昇温して30分保持し、急冷することにより、低融点ガラスの中に蛍光体粒子11、12、13がほぼ均一に分散した波長変換部材21Bを形成した。
【0045】
(特性)
以上のように、本実施の形態の波長変換部材は製造工程において高温プロセスを経るが、耐熱性を有する酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体を用いているため、ガラス溶融工程の後に高い波長変換効率を得ることができた。すなわち、比較例である波長変換部材21Bと比べ、発光スペクトルの強度が全体として増加しており、発光スペクトルを分析したところ、蛍光体粒子11の波長変換効率が1.3倍、蛍光体粒子12の波長変換効率が1.1倍、蛍光体粒子13の波長変換効率が1.15倍に増大していた。波長変換効率が増大した理由として、これらの蛍光体は窒化物又は窒化物ベースの酸窒化物であって酸化物でないため、特に結晶体についてはガラスとの反応が少ない一方、その粒子の表面に存在する発光効率の低い非結晶体については、溶融した高融点ガラス中に拡散し、除去されることがあるためと推定している。さらに、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子の組成比によっては、結晶構造を安定化させるアニール効果によって波長変換効率が増大する場合もある。
【0046】
本実施の形態では、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子の粒子状態を保ったままオキシナイトライドガラス中に分散したことにより、発光中心として働く希土類元素の電子状態が、結晶外部の状態によって影響を受けない。従って、発光中心として働く希土類元素を直接ガラスの成分となるように溶融・分散した場合に比べ、ガラスの分散工程や組成によらず、再現性の良い励起スペクトル(波長変換効率の励起波長依存性)及び発光色の色度(発光スペクトル)が得られる。
【0047】
本実施の形態で用いているオキシナイトライドガラスは、通常の酸化物ガラスに比べ、硬度及び弾性率が高いため、薄層化や軽量化が容易である。また、オキシナイトライドガラスは、酸化物ガラスに比べガラス軟化点が100℃以上高い。このことは、ガラス形成後のプロセスの自由度を広げることに寄与する。また、本実施の形態では、蛍光体粒子として高温安定性に優れた酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体を使用しているため、オキシナイトライドガラス中に分散しても粒子状態を保つことができる。水分遮断性に優れたオキシナイトライドガラスと高温安定性に優れた酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体を組み合わせることにより、発光強度及び発光色が経時変化することのない、安定した波長変換部材が得られる。
【0048】
また、オキシナイトライドガラスの屈折率は1.6〜1.9であって、酸化物ガラスの屈折率(1.5〜1.8)に比べて高く、酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体の屈折率(約2.0)に近いため、蛍光体からの光取り出し効率が高い。
【0049】
(実施の形態2:波長変換部材)
実施の形態2では、一旦オキシナイトライドガラスを作製して、その粉末と酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を混合して溶融することにより、波長変換部材を作製している。
【0050】
オキシナイトライドガラスの原料であるSiO(35モル%)、Al(2モル%)、Al(4モル%)、Si(13モル%)、CaO(43モル%)、MgO(5モル%)の粉末を混合した混合粉末65を、図4に示するつぼ66に入れた。乾燥窒素を満たした電気炉50内で1600℃まで温度を上げて2時間溶融し(ガラス溶融工程)、その後、冷却してオキシナイトライドガラス67を得た。
【0051】
なお、オキシナイトライドガラス原料の溶融は、例えば、1400〜1900℃にて3〜100時間、窒素、アルゴンなどの酸素を含まない不活性ガス雰囲気下にて行うことが好ましい。
【0052】
次に、このオキシナイトライドガラス67を粉砕して微粉末にし、これと実施の形態1に用いたものと同じ蛍光体粒子11、12、13を混合して、ホットプレス法により成形し、成形体68とした。この成形体68を、図5に示す電気炉50で、乾燥大気中・常圧で1200℃に昇温して2時間保持し、急冷することにより、オキシナイトライドガラス67の中に蛍光体粒子11、12、13がほぼ均一に分散した波長変換部材69が形成された。
【0053】
波長変換部材69を形成する際の温度としては1200℃としたが、ガラス軟化点以上の加熱であれば、ガラス中に蛍光体粒子を分散させることができる。ただし軟化点近くの温度で蛍光体粒子を分散させるには、900℃の場合24時間程度の焼成が必要であるので、作業時間を短縮するためには、900℃以上が良く、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子が粒子状態を保つ温度である1600℃以下が望ましい。また、実施の形態1と異なり、一旦オキシナイトライドガラスを形成しているため、波長変換部材製造工程の温度を低くすることができ、蛍光体粒子の溶融やガラスとの著しい反応を抑えるという点からは好都合である。従って、蛍光体粒子11、12、13の一部がオキシナイトライドガラス中に溶融することを抑制できる。
【0054】
(実施の形態3:波長変換部材)
本実施の形態では、ガラスとして、市販されているショット社製無アルカリガラスAF45(主成分はSiO、BaO、Alなど、軟化点883℃)を用いている。このガラスは紫色から紫外の波長の透過率が良好である。
【0055】
購入したAF45をミキサーで粉末状のガラス75にする。粉末状のガラス75と、実施の形態1で用いたのと同じ蛍光体粒子11、12、13を混合して白金るつぼ76に入れ、図6に示す電気炉50に入れて1100℃に昇温して2時間保持することにより溶融する。この溶融原料79を図7に示すようにカーボン板77上に流し出して波長変換部材シート80に成形した。なお、シート状に成形するためには、溶融Sn上にガラスを流し出して成形するフロート法や、細長いスリットから溶融ガラスを下に垂らして成形するフュージョン法を用いてもよい。
【0056】
波長変換部材シート80をダイシング法で切断して、縦・横とも10cm角、厚さ0.5mmの波長変換部材81とした。
【0057】
本実施の形態では、オキシナイトライドガラスを用いる場合に比べてガラス溶融温度を下げたため、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子の溶融やガラスとの著しい反応を抑えるという点からは好都合である。また、オキシナイトライドガラスと異なり、酸素を含む雰囲気で作製することが可能であるため、作製が容易である。
【0058】
(実施の形態4:波長変換部材)
本実施の形態では、ガラスとして、ホウ珪酸ガラスを用いている。ホウ珪酸ガラスは紫色から紫外の波長の透過率が良好である。
【0059】
代表的なホウ珪酸ガラスであるBK7ガラス(推定原料組成:SiO=70重量%、B=10重量%、BaO=3重量%、KO=8重量%、NaO=8重量%、軟化点718℃)を粉末にする。これらのガラス粉末と、実施の形態1で得られた蛍光体粒子11、12、13を混合して、実施の形態3で用いたのと同じ電気炉50を用いて1000℃に昇温して2時間保持することにより溶融する。この原料をフロート法により板ガラスに成形する。この板ガラスをダイシング法で縦・横とも10cm角、厚さ0.5mmに切断して、ガラス体10の中に酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子11・12・13がほぼ均一に分散した波長変換部材82とした。
【0060】
本実施の形態では、オキシナイトライドガラスを用いる場合に比べてガラス溶融温度を下げたため、酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子の溶融やガラスとの著しい反応を抑えるという点からは好都合である。また、オキシナイトライドガラスと異なり、酸素を含む雰囲気で作製することが可能であるため、作製が容易である。
【0061】
(実施の形態5:発光装置)
次に実施の形態1の波長変換部材を利用した発光装置20を、断面図である図8を用いて説明する。基体22の上に、InGaAlN系結晶からなる窒化物LED23が設置されている。窒化物LED23のn型電極23Aは基体22上の電極24と電気的に接続され、窒化物LED23のp型電極23Bは、基体22上の電極25と電気的に接続されている。基体22の一部である支持部22Bの上に、実施の形態1で作製された、蛍光体粒子11、12、13を分散させたオキシナイトライドガラス10よりなる波長変換部材21が接着されている。
【0062】
InGaAlN系結晶よりなる窒化物LED23は、発光層などの構成材料の組成を変化させることによって発光ピーク波長を300nmから500nmまで変化させることができるが、ここでは発光ピーク波長が390nmの励起光27を発する窒化物LED23を用いた。窒化物LED23を発した励起光27は、波長変換部材21に入射し、波長変換部材21内に分散された蛍光体粒子11、12、13を励起して、励起光よりも長波長の蛍光28に変換される。
【0063】
蛍光体粒子11、12、13の混合比を変化させることにより、さまざまな色度の発光装置が作製できる。特に各蛍光体から発する発光色を合成した色が白色の発光装置は、照明用発光装置として好適に使用できる。このような白色の発光装置に用いるために各蛍光体の分散組成を例えば4:4:2に調整して、発光色の色度座標xを0.22以上0.44以下、色度座標yを0.22以上0.44以下とした。また、例えば各蛍光体の分散組成を2:4:6にすることにより、色度座標xを0.36以上0.5以下、色度座標yを0.33以上0.46以下とすることもでき、電球の発光色に近い暖色系の照明用発光装置を作製することも可能である。なお、蛍光体の混合比は、各蛍光体の発光効率が製造ロット等によって変化することがあるため、適宜調整する必要がある。
【0064】
窒化物LED23の発光ピーク波長は、300nm以上500nmであればよいが、350nm以上420nm以下の波長であることがより好ましい。この波長領域は、ほぼ酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体の励起スペクトル(波長変換効率の励起波長依存性)のピークに当たるため高効率が得られるとともに、視感度が低いため、半導体発光素子の発光ピーク波長ばらつきによる発光色の変動がほとんど起こらないからである。
【0065】
従来、このような短波長の励起光を用いた場合、蛍光体自体や蛍光体を分散している樹脂などの紫外線劣化の問題が発生していたが、本実施の形態では、紫色から紫外の波長を吸収せず化学的に安定なオキシナイトライドガラスと、安定性に優れた酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体を用いているため、3000時間以上動作させても光度の変動が3%以内とほとんどない、従来にない長寿命の発光装置が得られた。
【0066】
(実施の形態6:発光装置)
本実施の形態は、平板状の波長変換部材を用いた発光装置である。
【0067】
実施の形態3で得られた波長変換部材81を用いた発光装置90の断面を示した斜視図である図9において、p電極用配線、n電極用配線(いずれも図示せず)が形成された基体92に、複数の窒化物LED93を設置する。その際、窒化物LED93の一方の面に形成されたp電極及びn電極が、それぞれ基体92上のp電極用配線、n電極用配線と接続されるように接続する。基体92には、スペーサ94を形成し、スペーサ94の上に板状の波長変換部材81を接着する。
【0068】
窒化物LED93は、電流を流すことにより発光ピーク波長410nmの励起光97を発し、これが波長変換部材81によって蛍光98に変換される。
【0069】
(実施の形態7:発光装置)
次に実施の形態1の波長変換部材を利用したもう一つの発光装置130を、図10を用いて説明する。蛍光体粒子11、12、13をオキシナイトライドガラス67に分散させた、実施の形態2で作製した直径0.5mm、長さ20mmの波長変換部材69を、基体131の上に固定してある。基体131の上に、サブマウント132を配置し、さらにサブマウント132の上に、InGaAlN系結晶からなる窒化物半導体レーザ133が実装されている。窒化物半導体レーザ133にはリード線136が接続され、電流が供給できるようになっている。窒化物半導体レーザ133は、構成材料の組成を変化させることによって発光ピーク波長を300nmから500nmまで変化させることができるが、ここでは発光ピーク波長が405nmの励起光137を発する窒化物半導体レーザ133を用いた。窒化物半導体レーザ133から発せられた励起光137は、レンズ134によって略平行光にされ、波長変換部材69に入射し、その中に分散している蛍光体粒子11、12、13を励起して、励起光137よりも長波長の蛍光138に変換される。窒化物半導体レーザ133はLEDに比べて電流・光変換効率に優れている。また窒化物半導体レーザ133から発する励起光137の指向性が強いため、励起光137の入射方向と蛍光138の出射方向を別方向とするような構成にすることが容易である。このため人体に対して悪影響を及ぼす短波長の励起光137を蛍光138と分離し遮蔽することが容易である。
【0070】
窒化物半導体レーザ133の発光ピーク波長は、350nm以上420nm以下の波長であることがより好ましい。この波長領域は、ほぼ酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体の励起スペクトル(波長変換効率の励起波長依存性)のピークに当たるため高効率が得られるとともに、視感度が低いため、半導体発光素子の発光ピーク波長ばらつきによる発光色の変動がほとんど起こらないからである。従来、このような短波長の励起光を用いた場合、蛍光体自体や蛍光体を分散している樹脂の紫外線劣化の問題が発生していたが、本実施の形態では、非常に結晶構造が安定な酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子とオキシナイトライドガラスを用いているため、従来にない長寿命の発光装置が得られた。なお、波長変換部材69をロッド形状としたが、オキシナイトライドガラスの強度が非常に高くかつ弾性率も高いという特徴を生かし、波長変換部材69の直径をさらに細く、長さを長くした光ファイバ状とした発光装置とすることも可能である。
【0071】
(その他の実施可能形態)
各実施の形態で用いた波長変換部材として、3種類の蛍光体粒子を分散したものを開示したが、1種類、2種類又は4種類以上の酸窒化物蛍光体又は窒化物蛍光体粒子をガラスに分散したものでもよく、必要に応じて酸化物蛍光体や硫化物蛍光体などを加えてもよい。例えば1種類の蛍光体を用いた波長変換部材を用いることによって単色が得られるほか、それらを組み合わせることにより、白色又は擬似白色を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の波長変換部材を用いた発光装置は、小型で消費電力が少なく高輝度の発光を安定に行なうことができるので、液晶ディスプレイ、携帯電話もしくは携帯情報端末等のバックライト用光源、室内外広告等の表示装置、各種携帯機器のインジケータ、照明スイッチ又はOA(オフィスオートメーション)機器用における各種表示装置、あるいは照明装置の光源として広く用いることができる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
10,67 オキシナイトライドガラス、11,12,13 蛍光体粒子、11A 成形体、19 成形体、20,90,100,130 発光装置、21,21B,69,81 波長変換部材、22,92,131 基体、22B 支持部、23,93 窒化物LED、23A n型電極、23B p型電極、24,25 電極、27,97,137 励起光、28,98,138 蛍光、50 電気炉、53 ガス導入口、54 排気口、55 混合粉末、65 混合粉末、66 るつぼ、68 成形体、75 ガラス、76 白金るつぼ、77 カーボン板、79 溶融原料、80 波長変換部材シート、94 スペーサ、132 サブマウント、133 窒化物半導体レーザ、134 レンズ、136 リード線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと波長変換部材を有する発光装置であり、
前記半導体レーザは、発光ピーク波長が300nm以上500nm以下の励起光を発し、
前記波長変換部材は、前記励起光が入射するように配置された軟化点が700℃以上のガラスと、該ガラス中に分散された酸窒化物蛍光体の粒子または窒化物蛍光体の粒子の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
ガラス中に酸窒化物蛍光体の粒子および窒化物蛍光体の粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子が、SiとNとを合わせた成分をモル比で50%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子は、結晶体を50%以上含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記酸窒化物蛍光体の粒子が、SiとAlとOとNと、一種又は二種以上のランタノイド系希土類元素からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記窒化物蛍光体の粒子が、CaとSiとAlとNと、一種又は二種以上のランタノイド系希土類元素からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
前記ガラスがオキシナイトライドガラスであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の発光装置。
【請求項8】
発光ピーク波長が460nm以上510nm以下の第1の酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子と、発光ピーク波長が510nm以上550nm以下の第2の酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子と、発光ピーク波長が600nm以上670nm以下の第3の酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記発光ピーク波長が350nm以上420nm以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の発光装置。
【請求項10】
前記発光装置の発光色の色度座標xが0.22以上0.44以下かつ色度座標yが0.22以上0.44以下であるか、又は前記発光装置の発光色の色度座標xが0.36以上0.5以下かつ色度座標yが0.33以上0.46以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の発光装置。
【請求項11】
前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子と、前記ガラス又は前記ガラスの原料を、前記ガラスの軟化点以上1600℃以下に加熱することにより、前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子の少なくともいずれかを前記ガラス中に分散させる工程を含む製造方法で得られた波長変換部材を用いる請求項1から10のいずれかに記載の発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記酸窒化物蛍光体の原料又は前記窒化物蛍光体の原料を1600℃以上の第1の温度で焼成して前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子を作製する第1の工程と、
第1の工程によって得られた前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子と、前記ガラスの原料を混合して、第1の温度より50℃以上低い第2の温度で加熱することにより、前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子を前記ガラス中に分散させる第2の工程を含む製造方法で得られた波長変換部材を用いる請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記酸窒化物蛍光体の原料又は前記窒化物蛍光体の原料を1600℃以上の第1の温度で焼成して前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子を作製する第1の工程と、
前記ガラスの原料を溶融・混合して前記ガラスを作製する第2の工程と、
第1の工程によって得られた酸窒化物蛍光体の粒子又は窒化物蛍光体の粒子と、第2の工程によって得られたガラスを混合して、第1の温度より50℃以上低い第2の温度で加熱することにより、前記酸窒化物蛍光体の粒子又は前記窒化物蛍光体の粒子を前記ガラス中に分散させる第3の工程を含む製造方法で得られた波長変換部材を用いる請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ガラスがオキシナイトライドガラスであることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−261048(P2010−261048A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169209(P2010−169209)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【分割の表示】特願2005−200609(P2005−200609)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】