説明

発光装置及び発光装置の製造方法

【課題】リーク電流の低減を図ること。
【解決手段】ELパネル1におけるEL素子8のキャリア輸送層(8b、8c、8d)の端部Sであって、EL素子8におけるバンク13の側壁13aを被覆するキャリア輸送層の端部Sに紫外線を照射する処理を施すことで、端部Sを高抵抗化する改質を行い、そのキャリア輸送層の発光領域部分Cよりも、キャリア輸送層の端部Sを高抵抗化することによって、キャリア輸送層の端部Sでのリーク電流の低減を図り、キャリア輸送層の発光領域部分Cを電流経路とすることで、発光に寄与する電流をEL素子8に流すことを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EL(Electro Luminescence)パネルに用いられるEL素子の製造プロセスにおいて、キャリア輸送層を成膜する工程として、ガラス基板上に設けられた画素電極(陽極)を囲むように形成された隔壁間の溝に、ノズルを通じて液体状のEL材料液を流し込んで塗布するノズルプリント方式の技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
塗布されたEL材料液を乾燥させて成膜したキャリア輸送層上に対向電極(陰極)を設けることでEL素子が製造され、このEL材料が塗布された塗布領域がELパネルの発光領域となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、隔壁間の画素電極上に塗布されたEL材料液は、表面張力などによって隔壁の斜面を這い上がってしまうことがあり、このような「這い上がり」部分が画素電極上の発光領域のキャリア輸送層よりも薄く成膜されてしまうことがある。
そして、発光領域よりも薄く成膜されたキャリア輸送層部分が低抵抗領域となり、画素電極と対向電極との間のリーク電流の経路になってしまうと、EL素子の発光領域に所定の電流が流れないために、EL素子の発光輝度が低下してしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、リーク電流の低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、
基板の上面側に形成された第一電極と、前記第一電極上に形成されたキャリア輸送層と、前記キャリア輸送層上に形成された第二電極と、隔壁と、を備える発光装置の製造方法において、
前記隔壁は、前記第一電極を露出するように側壁で挟み、
前記隔壁の前記側壁間に、前記キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で塗布された前記液状体が前記第一電極を被覆するように成膜されてなる前記キャリア輸送層部分よりも、前記隔壁の前記側壁を被覆するように成膜されてなる前記キャリア輸送層の端部を高抵抗化する高抵抗化処理工程と、
を備えることを特徴としている。
好ましくは、前記高抵抗化処理工程は、少なくとも前記第一電極を被覆する前記キャリア輸送層をマスク部で覆い、前記側壁を被覆する前記キャリア輸送層の端部に所定の光を照射することで、その端部を高抵抗化させる。
また、好ましくは、前記高抵抗化処理工程は、前記第一電極側から前記隔壁の前記側壁に乗り上がってなる前記キャリア輸送層の端部を高抵抗化させる。
そして、この発光装置の製造方法によって発光装置が製造される。
【0007】
また、本発明の他の態様は、
基板の上面側に形成された第一電極と、前記第一電極上に形成されたキャリア輸送層と、前記キャリア輸送層上に形成された第二電極と、隔壁と、を備える発光装置において、
前記隔壁は、前記第一電極を露出するように挟む側壁を有し、
前記キャリア輸送層は、前記キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体が、前記隔壁の前記側壁間に塗布されて成膜されてなり、
前記第一電極を被覆する前記キャリア輸送層部分よりも、前記隔壁の前記側壁を被覆する前記キャリア輸送層の端部が高抵抗化されていることを特徴としている。
好ましくは、前記第一電極側から前記隔壁の前記側壁に乗り上がり、前記第一電極側より薄く成膜されている前記キャリア輸送層の端部が高抵抗化されている。
また、好ましくは、前記キャリア輸送層の端部は、紫外線が照射されることによって高抵抗化されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リーク電流の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ELパネルの画素の配置構成を示す平面図である。
【図2】ELパネルの概略構成を示す平面図である。
【図3】ELパネルの1画素に相当する回路を示した回路図である。
【図4】ELパネルの1画素を示した平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った面の矢視断面図である。
【図6】ELパネルのバンク間に露出する画素電極を示す断面図である。
【図7】ELパネルのバンク間の画素電極上に成膜されたキャリア輸送層を示す断面図である。
【図8】マスクを用いてキャリア輸送層の端部に所定光を照射して高抵抗化処理する工程を示す断面図である。
【図9】基板上に配されたマスクを示す斜視図である。
【図10】ボックスタイプのマスク(a)と、ストライプタイプのマスクと(b)、ストライプタイプのマスクの変形例(c)と、を示す説明図である。
【図11】テスト用EL素子を示す平面図(a)と、そのb−b線における断面図(b)である。
【図12】テスト用EL素子における検証結果である、電流密度−電圧特性を示すグラフである。
【図13】表示パネルにELパネルが適用された携帯電話機の一例を示す正面図である。
【図14】表示パネルにELパネルが適用されたデジタルカメラの一例を示す正面側斜視図(a)と、後面側斜視図(b)である。
【図15】表示パネルにELパネルが適用されたパーソナルコンピュータの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
図1は、発光装置であるELパネル1における複数の画素Pの配置構成を示す平面図であり、図2は、ELパネル1の概略構成を示す平面図である。
【0012】
図1、図2に示すように、ELパネル1には、R(赤),G(緑),B(青)をそれぞれ発光する複数の画素Pが所定のパターンでマトリクス状に配置されている。
このELパネル1には、複数の走査線2が行方向に沿って互いに略平行となるよう配列され、複数の信号線3が平面視して走査線2と略直交するよう列方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。また、隣り合う走査線2の間において電圧供給線4が走査線2に沿って設けられている。そして、これら各走査線2と隣接する二本の信号線3と各電圧供給線4とによって囲われる範囲が、画素Pに相当する。ここでは、R(赤)を発光する複数の画素P,G(緑)を発光する複数の画素P、B(青)を発光する複数の画素Pが、それぞれ信号線3の配列方向に沿って並んで配列され、且つ走査線2の配列方向に沿ってR(赤)を発光する画素P,G(緑)を発光する画素P,B(青)を発光する画素Pの順に配列されている。
また、ELパネル1には、信号線3に沿う方向に延在する隔壁である複数のバンク13が設けられている。このバンク13によって挟まれた範囲に所定のキャリア輸送層(後述する正孔注入層8b、インターレイヤー8c、発光層8d)が設けられて、画素Pの発光領域となる。つまり、このバンク13が、R(赤),G(緑),B(青)の各色毎に画素Pを仕切っている。なお、キャリア輸送層とは、電圧が印加されることによって正孔又は電子を輸送する層である。
【0013】
図3は、アクティブマトリクス駆動方式で動作するELパネル1の1画素に相当する回路を示した回路図である。
【0014】
図3に示すように、ELパネル1には、走査線2と、走査線2と交差する信号線3と、走査線2に沿う電圧供給線4とが設けられており、このELパネル1の1画素Pにつき、薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ5と、薄膜トランジスタである駆動トランジスタ6と、キャパシタ7と、EL素子8とが設けられている。
【0015】
各画素Pにおいては、スイッチトランジスタ5のゲートが走査線2に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの一方が信号線3に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方がキャパシタ7の一方の電極及び駆動トランジスタ6のゲートに接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうちの一方が電圧供給線4に接続され、駆動トランジスタ6のソースとドレインのうち他方がキャパシタ7の他方の電極及びEL素子8のアノードに接続されている。なお、全ての画素PのEL素子8のカソードは、一定電圧Vcomに保たれている(例えば、接地されている)。
【0016】
また、このELパネル1の周囲において各走査線2が走査ドライバに接続され、各電圧供給線4が一定電圧源又は適宜電圧信号を出力するドライバに接続され、各信号線3がデータドライバに接続され、これらドライバによってELパネル1がアクティブマトリクス駆動方式で駆動される。電圧供給線4には、一定電圧源又はドライバによって所定の電力が供給される。
【0017】
次に、ELパネル1と、その画素Pの回路構造について、図4、図5を用いて説明する。ここで、図4は、ELパネル1の1画素Pに相当する平面図であり、図5は、図4のV−V線に沿った面の矢視断面図である。なお、図4においては、電極及び配線を主に示す。
【0018】
図4に示すように、スイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6は、信号線3に沿うように配列され、スイッチトランジスタ5の近傍にキャパシタ7が配置され、駆動トランジスタ6の近傍にEL素子8が配置されている。また、走査線2と電圧供給線4の間に、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、キャパシタ7及びEL素子8が配置されている。
【0019】
駆動トランジスタ6は、図5に示すように、ゲート電極6a、半導体膜6b、チャネル保護膜6d、不純物半導体膜6f,6g、ドレイン電極6h、ソース電極6i等を有するものである。
また、スイッチトランジスタ5は、以下に詳述する駆動トランジスタ6と同様の薄膜トランジスタであって、ゲート電極5a、半導体膜、チャネル保護膜、不純物半導体膜、ドレイン電極5h、ソース電極5i等を有するものであるので、その詳細については省略する。
なお、図4、図5に示すように、基板10上の一面にゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11が成膜されており、その層間絶縁膜11の上に層間絶縁膜12が成膜されている。信号線3は層間絶縁膜11と基板10との間に形成され、走査線2及び電圧供給線4は層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。
【0020】
ゲート電極6aは、基板10と層間絶縁膜11の間に形成されている。このゲート電極6aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。また、ゲート電極6aの上に絶縁性の層間絶縁膜11が成膜されており、その層間絶縁膜11によってゲート電極6aが被覆されている。
層間絶縁膜11は、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。この層間絶縁膜11上であってゲート電極6aに対応する位置に真性な半導体膜6bが形成されており、半導体膜6bが層間絶縁膜11を挟んでゲート電極6aと相対している。
半導体膜6bは、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンからなり、この半導体膜6bにチャネルが形成される。また、半導体膜6bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜6dが形成されている。このチャネル保護膜6dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜6bの一端部の上には、不純物半導体膜6fが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されており、半導体膜6bの他端部の上には、不純物半導体膜6gが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜6f,6gはそれぞれ半導体膜6bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜6f,6gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜6fの上には、ドレイン電極6hが形成されている。不純物半導体膜6gの上には、ソース電極6iが形成されている。ドレイン電極6h,ソース電極6iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iの上には、保護膜となる絶縁性の層間絶縁膜12が成膜され、チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iが層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、駆動トランジスタ6は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。層間絶縁膜12は、例えば、厚さが100nm〜200nm窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0021】
キャパシタ7は、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間に接続されており、図4に示すように、基板10と層間絶縁膜11との間に一方の電極7aが形成され、層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に他方の電極7bが形成され、電極7aと電極7bが誘電体である層間絶縁膜11を挟んで相対している。
【0022】
なお、信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aは、基板10に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで一括して形成されたものである。
また、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iは、層間絶縁膜11に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで形成されたものである。
【0023】
また、層間絶縁膜11には、ゲート電極5aと走査線2とが重なる領域にコンタクトホール11aが形成され、ドレイン電極5hと信号線3とが重なる領域にコンタクトホール11bが形成され、ゲート電極6aとソース電極5iとが重なる領域にコンタクトホール11cが形成されており、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cがそれぞれ埋め込まれている。コンタクトプラグ20aによってスイッチトランジスタ5のゲート電極5aと走査線2が電気的に導通し、コンタクトプラグ20bによってスイッチトランジスタ5のドレイン電極5hと信号線3が電気的に導通し、コンタクトプラグ20cによってスイッチトランジスタ5のソース電極5iとキャパシタ7の電極7aが電気的に導通するとともにスイッチトランジスタ5のソース電極5iと駆動トランジスタ6のゲート電極6aが電気的に導通する。コンタクトプラグ20a〜20cを介することなく、走査線2が直接ゲート電極5aと接触し、ドレイン電極5hが信号線3と接触し、ソース電極5iがゲート電極6aと接触してもよい。
なお、駆動トランジスタ6のゲート電極6aがキャパシタ7の電極7aに一体に連なっており、駆動トランジスタ6のドレイン電極6hが電圧供給線4に一体に連なっており、駆動トランジスタ6のソース電極6iがキャパシタ7の電極7bに一体に連なっている。
【0024】
画素電極8aは、層間絶縁膜11を介して基板10上に設けられており、画素Pごとに独立して形成されている。この画素電極8aは透明電極であって、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなる。なお、画素電極8aは一部、駆動トランジスタ6のソース電極6iに重なり、画素電極8aとソース電極6iが接続している。
そして、図4、図5に示すように、層間絶縁膜12が、走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、画素電極8aの周縁部、キャパシタ7の電極7b及び層間絶縁膜11を覆うように形成されている。
層間絶縁膜12には、各画素電極8aの中央部が露出するように開口部12aが形成されており、この層間絶縁膜12は、平面視して格子状に形成されている。
【0025】
バンク13は、図4、図5に示すように、信号線3に沿う一の方向に延在し、層間絶縁膜12を介してスイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6を覆う位置に並列されて、平面視して縞状に形成されている。
このバンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に位置し、対向する側壁13a間に画素電極8aの中央側が露出するようになっている。
そして、バンク13は、後述する正孔注入層8bやインターレイヤー8cや発光層8dを湿式法により形成するに際して、正孔注入層8b、インターレイヤー8c、発光層8dとなる材料が溶媒に溶解または分散された液状体が隣接する画素Pに滲み出ないようにする隔壁として機能する。なお、並列するバンク13において対向する側壁13a間が凹部13bとなり、その凹部13bにおける画素電極8a上に液状体が塗布されるようになる。この凹部13bは、バンク13と同様に一の方向に延在する。
【0026】
EL素子8は、図4、図5に示すように、アノードとなる第一電極としての画素電極8aと、画素電極8aの上に形成された化合物膜である正孔注入層8bと、正孔注入層8bの上に形成された化合物膜であるインターレイヤー8cと、インターレイヤー8cの上に形成された化合物膜である発光層8dと、発光層8dの上に形成された第二電極としての対向電極8eとを備えている。対向電極8eは全画素Pに共通の単一電極であって、全画素Pに連続して形成されている。
【0027】
正孔注入層8bは、例えば、導電性高分子であるPEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)及びドーパントであるPSS(polystyrene sulfonate;ポリスチレンスルホン酸)からなるキャリア輸送層であって、画素電極8aから発光層8cに向けて正孔を注入する層である。
なお、この正孔注入層8bは、例えば、PEDOTとPSSを分散させた水を主成分とする液状体が、ノズルプリント方式などの湿式印刷手法にて塗布された後に、乾燥されて成膜された層である。
【0028】
インターレイヤー8cは、例えば、ポリフルオレン系材料からなる電子輸送抑制層であって、順バイアスが印加されたときに電子が発光層8dから正孔注入層8b側へ移動することを抑制する機能を有する層である。
なお、このインターレイヤー8cは、例えば、インターレイヤー材料をテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン等の有機溶剤に溶解してなる液状体が、ノズルプリント方式などの湿式印刷手法にて塗布された後に、乾燥されて成膜された層である。
【0029】
発光層8dは、画素P毎にR(赤),G(緑),B(青)のいずれかを発光する材料を含み、例えば、ポリフルオレン系発光材料やポリフェニレンビニレン系発光材料からなるキャリア輸送層であって、対向電極8eから供給される電子と、正孔注入層8b側から注入される正孔との再結合に伴い発光する層である。このため、R(赤)を発光する画素P、G(緑)を発光する画素P、B(青)を発光する画素Pは互いに発光層8dの発光材料が異なる。画素PのR(赤),G(緑),B(青)のパターンは、縦方向に同色画素が配列されるストライプパターンであってもよく、また、デルタ配列であってもよい。
なお、この発光層8dは、例えば、各色の発光材料をテトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン等の有機溶剤に溶解してなる液状体が、ノズルプリント方式などの湿式印刷手法にて塗布された後に、乾燥されて成膜された層である。
【0030】
対向電極8eは、画素電極8aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。
この対向電極8eは全ての画素Pに共通した電極であり、発光層8dなどの化合物膜とともに後述するバンク13を被覆している。
【0031】
このように、層間絶縁膜12及びバンク13によって発光部位となる発光層8dが画素Pごとに仕切られている。そして、層間絶縁膜12の開口部12a内におけるバンク13の側壁13a間の凹部13bにおいて、キャリア輸送層としての正孔注入層8bとインターレイヤー8cと発光層8dが、画素電極8a上に積層されている(図5参照)。
具体的には、層間絶縁膜12の上に設けられたバンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に形成されている。
そして、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた画素電極8a上に、正孔注入層8bとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、キャリア輸送層である正孔注入層8bとなる。
さらに、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた正孔注入層8b上に、インターレイヤー8cとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、キャリア輸送層であるインターレイヤー8cとなる。
さらに、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれたインターレイヤー8c上に、発光層8dとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、キャリア輸送層である発光層8dとなる。
なお、この発光層8dとバンク13を被覆するように対向電極8eが設けられている(図5参照)。
【0032】
そして、このELパネル1においては、画素電極8a、基板10及び層間絶縁膜11が透明であり、発光層8dから発した光が画素電極8a、層間絶縁膜11及び基板10を透過して出射する。そのため、基板10の裏面が表示面となる。
なお、基板10側ではなく、反対側が表示面となってもよい。この場合、対向電極8eを透明電極とし、画素電極8aを反射電極として、発光層8dから発した光が対向電極8eを透過して出射するようにする。
【0033】
このELパネル1は、次のように駆動されて発光する。
全ての電圧供給線4に所定レベルの電圧が印加された状態で、走査ドライバによって走査線2に順次電圧が印加されることで、これら走査線2が順次選択される。
各走査線2が選択されている時に、データドライバによって階調に応じたレベルの電圧が全ての信号線3に印加されると、その選択されている走査線2に対応するスイッチトランジスタ5がオンになっていることから、その階調に応じたレベルの電圧が駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加される。
この駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧に応じて、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間の電位差が定まって、駆動トランジスタ6におけるドレイン−ソース電流の大きさが定まり、EL素子8がそのドレイン−ソース電流に応じた明るさで発光する。
その後、その走査線2の選択が解除されると、スイッチトランジスタ5がオフとなるので、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧にしたがった電荷がキャパシタ7に蓄えられ、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6i間の電位差は保持される。
このため、駆動トランジスタ6は選択時と同じ電流値のドレイン−ソース電流を流し続け、EL素子8の輝度を維持するようになっている。
【0034】
次に、ELパネル1の製造方法について説明する。
【0035】
基板10上にゲートメタル層をスパッタリングで堆積させ、フォトリソグラフィーによりパターニングして信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aを形成する。次いで、プラズマCVDによって窒化シリコン等のゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11を堆積する。層間絶縁膜11には、ELパネル1の一辺に位置する走査ドライバに接続するための各走査線2の外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)を形成する。
次いで、半導体膜6b(5b)となるアモルファスシリコン等の半導体層、チャネル保護膜6d(5d)となる窒化シリコン等の絶縁層を連続して堆積後、フォトリソグラフィーによってチャネル保護膜6d(5d)をパターン形成し、不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)となる不純物層を堆積した後、フォトリソグラフィーによって不純物層及び半導体層を連続してパターニングして不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)、半導体膜6b(5b)を形成する。
そして、フォトリソグラフィーによってコンタクトホール11a〜11cを形成し、このコンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cを形成する。この工程は省略されてもよい。
次いで、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iとなるソース、ドレインメタル層を堆積して適宜パターニングして、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iを形成する。こうしてスイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6が形成される。その後、ITO膜を堆積してからパターニングして画素電極8aを形成する。
次いで、スイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6等を覆うように、気相成長法により絶縁膜を成膜し、その絶縁膜をフォトリソグラフィーでパターニングすることで画素電極8aの中央部が露出する開口部12aを有する層間絶縁膜12を形成する。この開口部12aとともに、図示しない走査線2の外部接続端子、ELパネル1の一辺に位置するデータドライバに接続するための各信号線3の外部接続端子及び電圧供給線4の外部接続端子をそれぞれ開口する複数のコンタクトホールを形成する。
次いで、ポリイミド等の感光性樹脂を堆積後に露光して、画素電極8a上に側壁13aが位置する縞状のバンク13を形成する。なお、このバンク13は、上記外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)を露出している。
【0036】
そして、図6(図4)に示すように、複数の画素電極8aを画素Pごとに開放する格子状の層間絶縁膜12と、画素電極8aを挟む縞状のバンク13が形成されて、画素電極8aは、格子状の層間絶縁膜12の開口部12a内であって、縞状のバンク13の側壁13a間の凹部13bから露出している。
なお、画素電極8a、層間絶縁膜12、バンク13等が形成された基板10は、純水超音波洗浄を行うことが好ましい。さらに、純水超音波洗浄の後に、Oプラズマ処理もしくはUVオゾン処理によって、基板表面全体の洗浄を行うことが好ましい。
【0037】
次いで、信号線3に沿う一の方向に延在するバンク13間であり、バンク13の側壁13a間の凹部13bに、正孔注入層8bやインターレイヤー8cや発光層8dとなる材料が溶媒に溶解または分散された液状体を塗布し、その液状体を乾燥させることによって、キャリア輸送層である正孔注入層8b、インターレイヤー8c、発光層8dを成膜する。
具体的には、バンク13の側壁13aに挟まれて一の方向に延在する凹部13bに沿って相対的に移動する図示しないノズルから所定の液状体を流し出して塗布するノズルプリント方式による塗布工程を実行し、その液状体を乾燥させて化合物膜を成膜することで、図7に示すように、凹部13b内の画素電極8a上に、正孔注入層8b、インターレイヤー8c、発光層8dを順に形成する。
なお、バンク13の側壁13a間に挟まれている画素電極8a上に正孔注入層8bとなる液状体を塗布し乾燥させた後に、その側壁13a間にさらにインターレイヤー8cとなる液状体を塗布し乾燥させた後に、その側壁13a間にさらに発光層8dとなる液状体を塗布して乾燥することで、図7に示すように、正孔注入層8bとインターレイヤー8cと発光層8dが成膜されてなる3層のキャリア輸送層を形成することができる。
【0038】
この各キャリア輸送層(正孔注入層8b、インターレイヤー8c、発光層8d)は、バンク13の側壁13a間の凹部13bに液状体を塗布する工程を経て成膜された層であるので、凹部13bに塗布された液状体の一部がその表面張力によってバンク13の側壁13bの表面を這い上がることにより、図7に示すように、キャリア輸送層(8b、8c、8d)の端部Sが側壁13aに乗り上がった状態で成膜されてしまうこととなる。
特に、側壁13aに乗り上がって、その側壁13aを被覆するように成膜されたキャリア輸送層の端部Sは、画素電極8aを被覆するように成膜されたキャリア輸送層の発光領域部分Cよりも薄く成膜され、極端に薄い部分も形成される。
【0039】
側壁13aを被覆するように薄く成膜されたキャリア輸送層(8b、8c、8d)の端部Sが、画素電極8aと対向電極8eの間に介装されていると、例えば、電界集中に起因して、画素電極8aからキャリア輸送層の端部Sを通じて対向電極8eへ向かうリーク電流が発生してしまうことがある。このキャリア輸送層の端部Sがリーク電流の経路になってしまうと、キャリア輸送層の中央側の発光領域部分Cに所定の電流が流れなくなってしまうので、EL素子8(発光層8d)の発光輝度が低下し、ELパネル1の画質が低下してしまう不具合が生じることになる。
そのため、キャリア輸送層の成膜工程(塗布工程)の後工程で、キャリア輸送層の端部Sがリーク電流経路になりにくくする処理を施す。キャリア輸送層の端部Sがリーク電流の経路とならなければ、キャリア輸送層の発光領域部分Cが電流経路となって、EL素子8(発光層8d)が好適に発光するようになる。
【0040】
そこで、塗布工程の後、図8、図9に示すように、光透過性のマスク板31に複数のマスク部32が設けられたマスク30を用いて、少なくとも画素電極8aを被覆するキャリア輸送層の発光領域部分Cをマスク部32で覆って遮光した状態で、基板10の上面側から所定の光を照射することで、マスク部32で覆われていないキャリア輸送層の端部Sに所定の光を当てて、その端部Sを高抵抗化する高抵抗化処理工程を実行し、リーク電流の低減を図る。
具体的には、図8、図9に示すように、マスク30は、光透過性のマスク板31と、基板10における層間絶縁膜12の開口部12a内であって、バンク13の側壁13a間から露出する画素電極8aの配置とサイズに応じた複数のマスク部32とを備えている。
この各マスク部32を、各画素電極8aを被覆するキャリア輸送層の発光領域部分Cに対応させるように、マスク30を基板10の上面側に配し、マスク部32でキャリア輸送層の発光領域部分Cを覆う。
そして、マスク部32でキャリア輸送層の発光領域部分Cを覆った状態のマスク30を介して所定の光である紫外線を基板10に向けて照射することで、キャリア輸送層の端部Sに選択的に紫外線を照射してその端部Sを改質し、キャリア輸送層の発光領域部分Cよりも、キャリア輸送層の端部Sを高抵抗化する処理を施す。
【0041】
このように、画素電極8aを被覆するキャリア輸送層の発光領域部分Cをマスク30のマスク部32で覆い、バンク13の側壁13aを被覆するキャリア輸送層の端部Sに紫外線を照射して、キャリア輸送層の端部Sを選択的に高抵抗化させることで、キャリア輸送層の端部Sでのリーク電流の低減を図ることができる。
【0042】
なお、図9、図10(a)に示すマスク30は、基板10における層間絶縁膜12の開口部12a内であってバンク13の側壁13a間から露出して、マトリクス状に配された複数の画素電極8aに対応する複数のマスク部32が設けられたボックスタイプのマスク30であるが、マスクの形状はこれに限らない。
例えば、図10(b)に示すマスク30aのように、バンク13の側壁13a間の凹部13bに対応する形状を有し、その凹部13bにおいて露出している複数の画素電極8aを覆うことが可能な複数のマスク部32aが設けられたストライプタイプのマスク30aであってもよい。このマスク30aであっても、各画素電極8aを被覆するキャリア輸送層の発光領域部分Cをマスク部32aで覆い、バンク13の側壁13aに乗り上がったキャリア輸送層の端部Sに紫外線を当て、その端部Sを選択的に高抵抗化させることが可能である。
また、図10(c)に示すマスク30bのように、遮光性のマスク板に、バンク13の側壁13aに沿い、画素電極8aと側壁13aとの境界部分に対応する複数のスリット33が設けられたマスク30bであってもよい。このマスク30bであっても、遮光性のマスク板をマスク部として、各画素電極8aを被覆するキャリア輸送層の発光領域部分Cを覆い、バンク13の側壁13aに乗り上がったキャリア輸送層の端部Sに紫外線を当て、その端部Sを選択的に高抵抗化させることが可能である。
【0043】
そして、基板10の上面側からマスク30を外した後、バンク13の上及び発光層8dの上に対向電極8eを一面に成膜する。
こうして対向電極8eを成膜して形成することで、図5に示すように、EL素子8、ELパネル1が製造される。
【0044】
次に、紫外線の照射によって、キャリア輸送層が高抵抗化することについての検証を説明する。
【0045】
検証試験に用いたテスト用EL素子80は、図11(a)(b)に示すように、ガラス基板10の上面に画素電極8aが成膜されており、その画素電極8a上に、2mm四方の開口から画素電極8aが露出するバンク13が形成されている。
その画素電極8a及びバンク13の上面に、正孔注入層8b、インターレイヤー8c、発光層8dが順に成膜されたキャリア輸送層が形成されており、さらに、キャリア輸送層上に対向電極8eが成膜されている。
なお、画素電極8a上に開口を有するバンク13を形成した後、そのガラス基板10にOプラズマ処理を施して表面洗浄を行っている。
また、正孔注入層8bは、H.C.Starck社製、「BAYTRON(登録商標)P CH8000」をスピンコート法により成膜した。なお、この正孔注入層8bの抵抗率は、100〜300[kΩ・cm]となる。
また、インターレイヤー8cと発光層8dは、それぞれの材料をキシレンに溶解させた液状体をスピンコート法により塗布して成膜した。なお、発光層8dには赤色の発光材料を使用した。
【0046】
そして、発光層8dを塗布した後にキャリア輸送層に施す紫外線照射処理の処理条件が異なる3種のテスト用EL素子80を用意し、各テスト用EL素子80の発光領域における電流密度−電圧特性を測定し、抵抗値の変化を検証した。
紫外線照射処理を行わない比較例の場合、発光層8dの塗布後、窒素雰囲気中で140℃、40分間の乾燥を行った。
紫外線照射処理を行う実施例1の場合、発光層8dの塗布後、キャリア輸送層に紫外線を10秒間照射し、その後、窒素雰囲気中で140℃、40分間の乾燥を行った。
また、紫外線照射処理を行う実施例2の場合、発光層8dの塗布後、キャリア輸送層に紫外線を60秒間照射し、その後、窒素雰囲気中で140℃、40分間の乾燥を行った。
なお、紫外線照射処理には、アズワン株式会社製「ハンディUVランプ LUV−4」を用いて、基板10の発光領域に対し100mm離れた位置から紫外線(紫外線波長365nm)を照射した。照射した紫外線強度(積算照射照度)を実測したところ、実施例1(10秒間照射)の場合、2.25[mj/cm]であり、実施例2(60秒間照射)の場合、13.47[mj/cm]であった。
【0047】
図12に示す、電流密度−電圧特性のグラフから明らかなように、テスト用EL素子80における電流密度は、紫外線照射処理を行わない比較例よりも、紫外線照射処理を行った実施例1、実施例2の方が小さく、更に、紫外線を照射した時間が長く、照射処理した紫外線強度(積算照射照度)が大きい程小さくなっており、高抵抗化していることがわかる。
つまり、ELパネル1におけるEL素子8のキャリア輸送層の端部Sに紫外線を照射する処理を施すことで、その端部Sを高抵抗化する改質が可能である。そして、そのキャリア輸送層の発光領域部分Cよりも、キャリア輸送層の端部Sを高抵抗化することにより、キャリア輸送層の端部Sでのリーク電流の低減を図り、キャリア輸送層の発光領域部分Cを電流経路とすることで、発光に寄与する電流をEL素子8に流すことができる。
【0048】
以上のように、ELパネル1におけるEL素子8のキャリア輸送層の端部Sであって、EL素子8におけるバンク13に乗り上がるように、そのバンク13の側壁13aを被覆するキャリア輸送層の端部Sに紫外線を照射する処理を施すことで、その端部Sを高抵抗化することができる。
このキャリア輸送層の端部Sを高抵抗化することで、その端部Sに流れる電流を制限して、キャリア輸送層の端部Sでのリーク電流の低減を図ることができる。
そして、キャリア輸送層の端部Sを高抵抗化することで、相対的にキャリア輸送層の発光領域部分Cに電流が流れやすくなるため、キャリア輸送層の端部Sでのリーク電流の低減を図るとともに、キャリア輸送層の発光領域部分Cを電流経路とすることが可能となるので、発光に寄与する電流をEL素子8に流すことができる。
よって、EL素子8の発光輝度を向上させることができ、ELパネル1の画質向上を図ることができる。
【0049】
そして、以上のように形成されて製造されたELパネル1は、各種電子機器の表示パネルとして用いられる。
例えば、図13に示す、携帯電話機200の表示パネル1aや、図14(a)(b)に示す、デジタルカメラ300の表示パネル1bや、図15に示す、パーソナルコンピュータ400の表示パネル1cに、ELパネル1を適用することができる。
【0050】
なお、以上の実施の形態においては、所定の光である紫外線を照射してキャリア輸送層を高抵抗化する改質を行うとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、照射することによってキャリア輸送層を高抵抗化する処理が可能な光であれば、可視光などその他の波長の光であってもよい。
【0051】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 ELパネル(発光装置)
8 EL素子
8a 画素電極(第一電極)
8b 正孔注入層(キャリア輸送層)
8c インターレイヤー(キャリア輸送層)
8d 発光層(キャリア輸送層)
8e 対向電極(第二電極)
10 基板
13 バンク(隔壁)
13a 側壁
13b 凹部
30、30a、30b マスク
31 マスク板
32、32a マスク部
33 スリット
C 発光領域部分
S 端部
P 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面側に形成された第一電極と、前記第一電極上に形成されたキャリア輸送層と、前記キャリア輸送層上に形成された第二電極と、隔壁と、を備える発光装置の製造方法において、
前記隔壁は、前記第一電極を露出するように側壁で挟み、
前記隔壁の前記側壁間に、前記キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で塗布された前記液状体が前記第一電極を被覆するように成膜されてなる前記キャリア輸送層部分よりも、前記隔壁の前記側壁を被覆するように成膜されてなる前記キャリア輸送層の端部を高抵抗化する高抵抗化処理工程と、
を備えることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記高抵抗化処理工程は、少なくとも前記第一電極を被覆する前記キャリア輸送層をマスク部で覆い、前記側壁を被覆する前記キャリア輸送層の端部に所定の光を照射することで、その端部を高抵抗化させることを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記高抵抗化処理工程は、前記第一電極側から前記隔壁の前記側壁に乗り上がってなる前記キャリア輸送層の端部を高抵抗化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の発光装置の製造方法によって製造されることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
基板の上面側に形成された第一電極と、前記第一電極上に形成されたキャリア輸送層と、前記キャリア輸送層上に形成された第二電極と、隔壁と、を備える発光装置において、
前記隔壁は、前記第一電極を露出するように挟む側壁を有し、
前記キャリア輸送層は、前記キャリア輸送層となる材料が溶媒に溶解または分散された液状体が、前記隔壁の前記側壁間に塗布されて成膜されてなり、
前記第一電極を被覆する前記キャリア輸送層部分よりも、前記隔壁の前記側壁を被覆する前記キャリア輸送層の端部が高抵抗化されていることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記第一電極側から前記隔壁の前記側壁に乗り上がり、前記第一電極側より薄く成膜されている前記キャリア輸送層の端部が高抵抗化されていることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記キャリア輸送層の端部は、紫外線が照射されることによって高抵抗化されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−14347(P2011−14347A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156807(P2009−156807)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】