説明

発光装置及び電子機器

【課題】開口率を向上する。
【解決手段】発光領域には共通電極(陰極)72と陽極76との間に発光機能層74を有する発光素子70を備えた複数の画素回路Pが格子状に配置される。発光領域の対向する2辺にそって、第1接続電極300と第2接続電極400とが設けられる。複数の第1補助電極30aと複数の第2補助電極40aとが全ての行間に設ける。但し、第1補助電極30aと第2補助電極40aとは分離部によって分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機EL(ElectroLuminescent)素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED素子」という)素子が注目されている。OLED素子は陰極と陽極と、それらの間に形成された発光機能層を備える。
複数のOLED素子を格子状に配置して、各OLED素子の階調を制御することによって画像を表示ずる発光装置が知られている。この発光装置では、複数のOLED素子の陰極を共通陰極として形成し、OLED素子で発光する光を共通陰極側から取り出すトップエミション構造が知られている。共通陰極は透明である必要があることから、その厚さはごく薄くするのが一般的である。このため、共通陰極が高抵抗となり、パネル面内で電圧降下が発生してしまうといった不都合があった。
そこで、画素間の隔壁上に補助陰極を形成する技術が知られている(特許文献1)。補助陰極は低抵抗のアルミ等で形成されている。この場合、補助陰極は画素間に精密に配置する必要があることから、マスク蒸着で形成するのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−123988号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マスク蒸着に用いるマスクは、スリットの間隔が狭くなる程、剛性が低下してしまう。従来の技術では、画素間に配線を形成するため、スリットの密度が高くなり、剛性が著しく低下してしまうといった問題があった。
これを解決するために、補助陰極を複数のパターンに分割し、パターン毎に異なるマスクを用いて蒸着させることによって、マスクの剛性を高めるといった技術も知られているが(例えば、特開2003-203769号)、製造工程が複雑になり、多数のマスクを使用するため、コスト高を招くといった問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡易な工程で、剛性が高いマスクを使用することが可能な発光装置及びその製造方法を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、第1電極と第2電極との間に発光層を有する発光素子を備えた画素回路が複数、第1方向と前記第1方向に直交する第2方向とに沿って格子状に配置された発光領域と、前記発光素子の第2電極は、前記複数の画素回路に共通に設けられ、前記発光層からの光を透過可能な共通電極として形成され、 前記発光領域の第1の辺の外側に前記第1の辺に沿って設けられた第1接続電極と、前記共通電極及び前記第1接続電極と電気的に接続され、前記第2方向に隣接する画素回路の間を通って、前記第1方向と平行に前記発光領域に延存する複数の第1補助電極と、前記第1の辺と対向する前記発光領域の第2の辺の外側に前記第2の辺に沿って設けられた第2接続電極と、前記共通電極及び前記第2接続電極と電気的に接続され、前記第2方向に隣接する画素回路の間を通って、前記第1方向と平行に前記発光領域に延存する複数の第2補助電極とを備え、前記複数の第1補助電極の端部と、前記複数の第2補助電極の端部とは、前記発光領域の内部で分離部を介して向かい合うように形成されることを特徴とする。
この発明によれば、第1補助電極と第2補助電極とは分離されている。よって、マスクの剛性を高めることができ、パネルが大きくなった場合でも1回の成膜で形成できる領域が広くなる。また、パネルを作製する上でも工程の難易度を下げることが可能となる。この結果、製造工程を簡素化でき、コストを削減することが可能となる。
なお、第1方向は行方向で第2方向は列方向であってもよいし、あるいは、第1方向は列方向で第2方向は行方向であってもよい。
【0006】
また、本発明に係る他の発光装置は、第1電極と第2電極との間に発光層を有する発光素子を備えた画素回路が複数、第1方向と前記第1方向に直交する第2方向とに沿って格子状に配置された発光領域と、前記発光素子の第2電極は、前記複数の画素回路に共通に設けられ、前記発光層からの光を透過可能な共通電極として形成され、前記発光領域の第1の辺の外側に前記第1の辺に沿って設けられた第1接続電極と、前記共通電極及び前記第1接続電極と電気的に接続され、前記発光領域に延存する複数の第1補助電極と、前記第1の辺と対向する前記発光領域の第2の辺の外側に前記第2の辺に沿って設けられた第2接続電極と、前記共通電極及び前記第2接続電極と電気的に接続され、前記発光領域に延存する複数の第2補助電極とを備え、前記複数の第1補助電極と前記複数の第2補助電極とは、前記第1方向と平行かつ、前隣接する前記画素回路の間を通って記第2方向に交互に並ぶように配置されることを特徴とする。
この発明によれば、第1補助電極と第2補助電極とが交互に配置される。よって、補助電極のピッチを1/2にして、マスクの剛性をより高めることができ、パネルが大きくなった場合でも1回の成膜で形成できる領域が広くなる。また、パネルを作製する上でも工程の難易度を下げることが可能となる。この結果、製造工程を簡素化でき、コストを削減することが可能となる。
【0007】
また、上述した発光装置において、前記複数の画素回路の一部は、前記第1補助電極及び前記第2補助電極の両方と隣接することが好ましい。両方の補助電極と接する画素回路では、共通電極のインピーダンスを等価的により低減することができる。この場合、両方の補助電極と隣接する画素回路は、発光領域Hの中心から所定範囲内にあることが好ましい。発光領域Hの中心部分は第1接続電極及び第2接続電極からの距離が長くなるので、共通電極のインピーダンスが等価的に大きくなる。そのような箇所に第1補助電極及び第2補助電極の双方から給電することにより、共通電極のインピーダンスを大幅に低減することが可能となる。
【0008】
ここで、前記第1補助電極及び前記第2補助電極の単位面積当たりの抵抗値は、前記共通電極の単位面積当たりの抵抗値よりも小さいことが好ましい。
また、前記複数の第1補助電極及び前記複数の第2補助電極は、前記共通電極の上又は下に接するように形成されることが好ましい。
【0009】
次に、本発明に係る電子機器は、上述した発光装置を備えたことを特徴とする。このような電子機器としては、例えば、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、あるいはディスプレイなどが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】画素回路の構成を示す回路図である。
【図3】同実施形態における補助電極と画素回路の関係を模式的に示す平面図である。
【図4】Z−Z’で発光装置を切断した一例を示す部分断面図である。
【図5】Z−Z’で発光装置を切断した他の例を示す部分断面図である。
【図6】第2実施形態における補助電極と画素回路の関係を模式的に示す平面図である。
【図7】同実施形態における補助電極と画素回路の他の関係を模式的に示す平面図である。
【図8】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。また、本発明は、以下に述べる各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を変形して得られる各種の変形例や、各実施形態またはその変形例を応用して得られる形態をも技術的範囲に含みうる。なお、各図において共通する部分には同一の符号が付されている。
【0012】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置1の構成の一部を示す回路図である。発光装置1は、発光領域Hと、走査線駆動回路100Aおよび100B、ならびにデータ線駆動回路200を備える。発光領域Hには、複数の走査線111と複数のデータ線112が形成され、それらの交差点の各々の近傍には複数の単位回路(画素回路)Pが設けられている。単位回路PはOLED(organic light emitting diode)素子を含む。
【0013】
図2は、発光装置1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。各単位回路Pは、nチャネル型のトランジスタ68、pチャネル型のトランジスタ60、容量素子69、およびOLED素子70を含む。pチャネル型のトランジスタ60のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極はOLED素子70の陽極に接続される。また、トランジスタ60のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。nチャネル型のトランジスタ68のゲート電極は走査線111に接続され、そのソース電極は、データ線112に接続され、そのドレイン電極はトランジスタ60のゲート電極と接続される。
【0014】
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線111を走査線駆動回路100Aおよび100Bが選択すると、トランジスタ68がオンされて、データ線112を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、トランジスタ60が、データ信号のレベルに応じた電流をOLED素子70に供給する。これにより、OLED素子70は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。OLED素子70は、画素電極76(陽極)と共通電極72(陰極)との間に挟まれた発光機能層(発光層を含む)74を有する(図4参照)。OLED素子70は、トップエミション構造を採用し、観察面に向けて発光する。この場合、共通電極72はITOなどの比較的、抵抗値の高い材料で構成される。一方、後述する補助電極は、アルミなどで形成され、単位面積当たりの抵抗値が共通電極72と比較して小さい。
【0015】
図3に補助電極と画素回路の関係を模式的に示す。上述したように共通電極72の抵抗値が高いことから、本実施形態では補助電極を用いてインピーダンスを低下させる。図3に示すように、発光領域Hの一辺Aに沿って発光領域Hの外側に第1接続電極300が形成されている。また、辺Aに対向する辺Bに沿って発光領域Hの外側に第2接続電極400が形成されている。
【0016】
そして、第1接続電極300と電気的に接続された複数の第1補助電極30aが辺Aと交差して発光領域Hに延存するように形成される。また、第2接続電極400と電気的に接続された複数の第2補助電極40aが辺Bと交差して発光領域Hに延存するように形成される。
画素回路Pは行方向と列方向に格子状に配列されている。そして、全ての行間に、第1補助電極30aと第2補助電極40aとが形成される。つまり、列方向に隣接する画素回路Pの間を通るように第1補助電極30aと第2補助電極40aとが設けられている。但し、第1補助電極30aと第2補助電極40aとは幅Wの分離部34によって分離されており、第1補助電極30aの端部と第2補助電極40aの端部とは向かい合うように形成されている。
【0017】
図4にZ−Z’の部分断面図を示す。同図に示すように、基板30の上に下地保護層31が形成され、その上にpチャネル型のトランジスタ60が形成される。トランジスタ60とOLED素子70は単位回路Pの一部である。下地保護層31の上層にはシリコン層601が形成される。シリコン層601を覆うように、ゲート絶縁層32が下地保護層31の上層に設けられる。ゲート絶縁層32は、例えば酸化珪素から形成される。ゲート絶縁層32の上面のうちシリコン層601に対向する部分にゲート電極62が設けられる。 トランジスタ60においてゲート電極62を介してシリコン層601にはゲート電極62を介してIII族元素がドーピングされ、ドレイン領域60aおよびソース領域60cが形成される。ここで、III族元素がドーピングされていない領域がチャネル領域60bとなる。なお、トランジスタ60のゲート電極62を形成するのと同時に走査線111が形成される。
【0018】
第1層間絶縁層33が、ゲート電極62を覆うようにゲート絶縁層32の上層に形成される。第1層間絶縁層33の材料には酸化珪素等が用いられる。さらに、ソース電極63およびドレイン電極61が、ゲート絶縁層32および第1層間絶縁層33にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層601と接続される。また、これらの電極と同一の工程でデータ線112が形成される。
【0019】
回路保護膜34が、ソース電極63およびドレイン電極61を覆うように第1層間絶縁層33の上層に設けられる。回路保護膜34は、例えば、窒化珪素や酸窒化珪素などのガス透過率が低い材料から形成されている。また、これらの窒化珪素や酸窒化珪素は、非晶質材料であってもよいし、水素を含んでいても良い。これにより、トランジスタ60からの水素の離脱を防止できる。なお、回路保護膜34をソース電極やドレイン電極の下に形成してもよい。
【0020】
回路段差平坦化膜35が回路保護膜34の上層に設けられる。回路段差平坦化膜35は、回路保護膜34に対向する下面の凹凸よりも回路保護膜34とは反対の上面の凹凸が小さい。つまり、トランジスタ60、走査線111、データ線112などにより生ずる凹凸を平坦化するために、回路段差平坦化膜35は用いられる。回路段差平坦化膜35の材料には、例えば、アクリル系、ポリイミド系の有機高分子材料が用いられる。この場合、有機樹脂にパターニングのための感光性材料を混合して、フォトレジストと同様に露光でパターニングしても良い。あるいは、酸化珪素、酸窒化珪素等の無機材料から蒸着により回路段差平坦化膜35を形成し、エッチング等によりその上面を平坦化してもよい。無機材料は一般に蒸着によって膜を形成するため、その膜厚は1μm以下であり、しかもほぼ一様であるから、上面が下層の凹凸の影響を受けやすいのに対し、有機樹脂はコーティングによって形成するのでその膜厚を2〜3μm程度に大きくでき、しかもその上面は下層の凹凸の影響を受け難いので回路段差平坦化膜35の材料に適している。尤も、ある程度の凹凸を許容するのであれば、酸化珪素、酸窒化珪素等の無機材料を回路段差平坦化膜35に用いることもできる。
【0021】
回路段差平坦化膜35上には、発光領域Hで画素電極76(第1電極)を形成する。この実施形態における画素電極76はOLED素子70の陽極であり、回路段差平坦化膜35および回路保護膜34を貫通するコンタクトホールを介してトランジスタ60のドレイン電極61と接続される。また、陽極である画素電極76の材料としては、仕事関数が大きい材料が望ましく、例えば、ニッケル、金、白金等またはそれらの合金が好適である。これらの材料は反射性を持つので、発光機能層74で発光した光を共通電極72に向けて反射する。
【0022】
次に、隔壁37を形成する。隔壁37は、画素電極76とその後に形成される共通電極72(第2電極)との間、もしくは複数の画素電極76同士の間を絶縁するものである。隔壁37を設けることによりそれぞれの画素電極76を独立して制御することができ、複数の発光素子をそれぞれ所定の輝度で発光させることができる。例えば、アクリルもしくはポリイミド等が隔壁37の材料である。この場合、パターニングのため感光性材料を混合して、フォトレジストと同様に露光でパターニングしても良い。
【0023】
次に、画素電極76の上に、少なくとも発光層を含む発光機能層74を形成する。発光層には有機EL物質が用いられる。有機EL物質は、低分子材料であっても良いし、高分子材料であっても良い。発光機能層74を構成する他の層として、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔ブロック層、および電子ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
【0024】
次に、隔壁37の上に第1補助電極30aと第2補助電極40aとをマスクを用いて同時に形成する。この場合、蒸着法で電極を形成してもよいし、あるいはスパッタ法で電極を形成してもよい。第1補助電極30aおよび第2補助電極40aの材料としては、アルミなどの導電金属が好適である。
【0025】
次に、第1補助電極30a、第2補助電極40aおよび発光機能層74を覆うように、共通電極72(第2電極)が形成される。共通電極72は透明であり、OLED素子70からの光は、図中上側の方向に射出される。この実施形態の共通電極72をすべてのOLED素子70の陰極として機能させるため、共通電極72は電子を注入しやすいように、仕事関数が低い材料によって形成される。例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、またはリチウム等やそれらの合金である。また、この合金は仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料を用いることが望ましい。例えば、マグネシウムと銀の合金が好適である。これらの金属または合金を共通電極72に使用する場合には、透光性を得るために厚さを小さくすればよい。なお、共通電極72を覆うように電極保護膜を形成してもよい。電極保護膜は、回路保護膜34と同様に、例えば、窒化珪素や酸窒化珪素などのガス透過率が低い無機材料が好適である。
【0026】
仮に、第1補助電極30aと第2補助電極40aとが繋がっていると、マスクに細長いスリット状の開口部を少なくとも発光領域Hの幅だけは形成する必要があるので、マスクの剛性が低下してしまう。
【0027】
これに対して、本実施形態では、第1補助電極30aと第2補助電極40aとを、発光領域Hの外側から左右の辺A及びBをそれぞれ交差して内側に至るように形成したので、マスクの剛性を高めることができる。
ここで、分離部34の幅Wは、狭いほどインピーダンスを低下させることができるので、電源電圧降下による輝度のばらつきを抑制できる。一方、分離部34の幅Wが狭くなると、マスクの剛性が低下する。そこで、本実施形態では、必要とされるマスクの剛性が得られるように分離部34の幅Wを定めている。
よって、本実施形態では、パネルが大きくなった場合でも1回の成膜で形成できる領域が広くなる。またマスクの剛性を高めることが可能であるため、パネルを作製する上でも工程の難易度を下げることが可能となる。この結果、製造工程を簡素化でき、コストを削減することが可能となる。
【0028】
なお、上述した第1実施形態では、共通電極72の下に第1補助電極30a及び第2補助電極40aを形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図5に示すように共通電極72の上に第1補助電極30a及び第2補助電極40aを形成してもよい。
【0029】
<2.第2実施形態>
第2実施形態に係る発光装置1は、第1補助電極30aと第2補助電極40aの配置を除いて、第1実施形態の発光装置1と同様に構成されている。
図6に補助電極と画素回路の関係を模式的に示す。第2実施形態の複数の第1補助電極30aは、1行おきに(2行に1本の割合)設けられている。この点は、複数の第2補助電極40aについても同様である。そして、ある行において第1補助電極30aを配置した場合には、次の行では第2補助電極40bを配置するといったように、第1補助電極30aと第2補助電極30bとを交互に配置している。すなわち、複数の第1補助電極30aと複数の第2補助電極40aとは、行方向と平行かつ、隣接する画素回路Pの間を通って列方向に交互に並ぶように配置される。
【0030】
このように形成することで、第1補助電極30a及び第1接続電極300によってくし歯状の電極が形成され、また、第2補助電極40a及び第2接続電極400によってくし歯状の電極が形成される。そして、第1実施形態では、第1補助電極30aの端部と第2補助電極40aの端部とが分離部34を介し向かい合うように形成されたのに対し、第2実施形態では、くし歯状の第1補助電極30aとくし歯状の第2補助電極40aとがかみ合うように形成される。
【0031】
これによって、第1補助電極30aのピッチ及び第2補助電極40aのピッチが画素回路Pのピッチの半分となる。この結果、マスクの剛性を高めることができる。特に、画素回路のピッチを狭くなる高精細な発光装置に好適である。これにより、パネルが大きくなった場合でも1回の成膜で形成できる領域が広くなる。またマスクの剛性を高めることが可能であるため、パネルを作製する上でも工程の難易度を下げることが可能となる。
【0032】
さらに、本実施形態では、列方向にみた場合、画素回路Pの上側又は下側に必ず第1補助電極30a又は第2補助電極40aが設けられている。このため、電圧降下を抑制し、輝度のばらつきを改善することができる。
特に、発光領域Hの中心付近では、画素回路Pの上側に第1補助電極30aが設けられ、且つ、画素回路Pの下側に第2補助電極40aが設けられる領域がある。換言すれば、複数の画素回路Pの一部は、第1補助電極30a及び第2補助電極40aの両方と隣接する。この例では、幅Qに渡って、画素回路Pは第1補助電極30a及び第2補助電極40aの双方から給電を受けることができ、電圧降下を抑制することができる。
【0033】
第1接続電極300に比較して第1補助電極30aは幅が狭く抵抗値も大きい。同様に第2接続電極400に比較して第2補助電極40aは幅が狭く抵抗値も大きい。したがって、第1接続電極300及び第2接続電極400から距離に比例してインピーダンスは増加するので、発光領域Hの中心部分のインピーダンスが最も大きくなる。上述したように本実施形態においては、発光領域Hの中心部分において、画素回路Pは第1補助電極30a及び第2補助電極40aの双方から給電を受けることができるので、電圧降下を抑制することが可能となり、表示画像の品質を向上させることができる。
【0034】
なお、上述した第2実施形態は、第1実施形態と同様に、共通電極72の下に第1補助電極30a及び第2補助電極40aを共通電極72の下に形成してもよいし、あるいは、共通電極72の上に形成してもよいことは勿論である。
また、図7に示すように幅Q=0であってもよい。但し、全ての画素回路Pが第1補助電極30a又は第2補助電極40aの少なくとも一方から給電されるように、第1補助電極30a及び第2補助電極40aが配置されることが、電圧降下を抑制する観点から好ましい。
【0035】
また、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、第1接続電極300を発光領域Hの右辺、第2接続電極400を発光領域Hの左辺に設けた。そして、第1補助電極30a及び第2補助電極40aを行方向と平行に配置した。本発明はこれに限定されるものではなく、第1接続電極300を発光領域Hの上辺、第2接続電極400を発光領域Hの下辺に設けてもよい。この場合、第1補助電極30a及び第2補助電極40aを列方向と平行に配置すればよい。
【0036】
より具体的には、複数の第1補助電極30aは行方向に隣接する画素回路Pの間を通って、列方向と平行に発光領域Hに延存し、複数の第2補助電極40aは行方向に隣接する画素回路Pの間を通って、列方向と平行に発光領域Hに延存する。そして、複数の第1補助電極30aの端部と、複数の第2補助電極40aの端部とは、発光領域Hの内部で分離部を介して向かい合うように形成すればよい。
複数の第1補助電極30aと複数の第2補助電極40aとは、列方向と平行かつ、隣接する画素回路Pの間を通って行方向に交互に並ぶように配置してもよい。
【0037】
<3.応用例>
次に、本発明に係る発光装置を適用した電子機器について説明する。図8は、上記実施形態に係る発光装置1を表示装置に適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置1と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置1はOLED素子70を用いるので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0038】
図9に、上記実施形態に係る発光装置1を適用した携帯電話機を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置1に表示される画面がスクロールされる。
【0039】
図10に、上記実施形態に係る発光装置1を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置1に表示される。
【0040】
本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図8から図10に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、電子写真方式を利用した画像印刷装置における像担持体に光を照射して潜像を形成するプリンタヘッドのような発光源、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
1……発光装置、30a……第1補助電極、40a……第2補助電極、70……発光素子、72……共通電極、74……発光機能層、76……陽極、300……第1接続電極、400……第2接続電極、34……分離部、P……画素回路、H……発光領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極との間に発光層を有する発光素子を備えた画素回路が複数、第1方向と前記第1方向に直交する第2方向とに沿って格子状に配置された発光領域と、
前記発光素子の第2電極は、前記複数の画素回路に共通に設けられ、前記発光層からの光を透過可能な共通電極として形成され、
前記発光領域の第1の辺の外側に前記第1の辺に沿って設けられた第1接続電極と、
前記共通電極及び前記第1接続電極と電気的に接続され、前記第2方向に隣接する画素回路の間を通って、前記第1方向と平行に前記発光領域に延存する複数の第1補助電極と、
前記第1の辺と対向する前記発光領域の第2の辺の外側に前記第2の辺に沿って設けられた第2接続電極と、
前記共通電極及び前記第2接続電極と電気的に接続され、前記第2方向に隣接する画素回路の間を通って、前記第1方向と平行に前記発光領域に延存する複数の第2補助電極とを備え、
前記複数の第1補助電極の端部と、前記複数の第2補助電極の端部とは、前記発光領域の内部で分離部を介して向かい合うように形成される、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1電極と第2電極との間に発光層を有する発光素子を備えた画素回路が複数、第1方向と前記第1方向に直交する第2方向とに沿って格子状に配置された発光領域と、
前記発光素子の第2電極は、前記複数の画素回路に共通に設けられ、前記発光層からの光を透過可能な共通電極として形成され、
前記発光領域の第1の辺の外側に前記第1の辺に沿って設けられた第1接続電極と、
前記共通電極及び前記第1接続電極と電気的に接続され、前記発光領域に延存する複数の第1補助電極と、
前記第1の辺と対向する前記発光領域の第2の辺の外側に前記第2の辺に沿って設けられた第2接続電極と、
前記共通電極及び前記第2接続電極と電気的に接続され、前記発光領域に延存する複数の第2補助電極とを備え、
前記複数の第1補助電極と前記複数の第2補助電極とは、前記第1方向と平行かつ、前隣接する前記画素回路の間を通って記第2方向に交互に並ぶように配置される、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記複数の画素回路の一部は、前記第1補助電極及び前記第2補助電極の両方と隣接することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1補助電極及び前記第2補助電極の単位面積当たりの抵抗値は、前記共通電極の単位面積当たりの抵抗値よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記複数の第1補助電極及び前記複数の第2補助電極は、前記共通電極の上又は下に接するように形成されることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−244829(P2010−244829A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91843(P2009−91843)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】