発光装置
【課題】発光素子を構成する電極の膜抵抗を低下させる構造を持つ発光装置を提供する。
【解決手段】第1の電極11、第2の電極20、及び第1の電極11と第2の電極20とに挟まれた有機化合物層17でなる発光領域と、発光領域でない領域において、第1の電極11上の絶縁物24と、絶縁物上の第2の電極20と、第2の電極の下面と接する補助電極21とを有する発光装置の構成により、第2の電極20の低抵抗化および薄膜化を可能とする。また、第2の電極は、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続され、第2の電極の引き出しを可能とする。
【解決手段】第1の電極11、第2の電極20、及び第1の電極11と第2の電極20とに挟まれた有機化合物層17でなる発光領域と、発光領域でない領域において、第1の電極11上の絶縁物24と、絶縁物上の第2の電極20と、第2の電極の下面と接する補助電極21とを有する発光装置の構成により、第2の電極20の低抵抗化および薄膜化を可能とする。また、第2の電極は、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続され、第2の電極の引き出しを可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に、絶縁表面を有する基板上に形成された発光素子を有する発光装置およびその作製方法に関する。また、該発光素子を有するパネルにコントローラを含むIC等を実装したモジュールに関する。なお本明細書において、発光素子を有するパネル及び発光素子を有するモジュールを共に発光装置と総称する。本発明はさらに、該発光装置を製造する装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、発光装置、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、基板上にTFT(薄膜トランジスタ)を形成する技術が大幅に進歩し、アクティブマトリクス型表示装置への応用開発が進められている。特に、ポリシリコン膜を用いたTFTは、従来のアモルファスシリコン膜を用いたTFTよりも電界効果移動度(モビリティともいう)が高いので、高速動作が可能である。
そのため、ポリシリコン膜を用いたTFTからなる駆動回路を画素と同一の基板上に設け、各画素の制御を行うための開発が盛んに行われている。同一基板上に画素と駆動回路とを組み込んだアクティブマトリクス型表示装置は、製造コストの低減、表示装置の小型化、歩留まりの上昇、スループットの低減など、様々な利点が得られると予想される。
【0004】
また、自発光型素子としてEL素子を有したアクティブマトリクス型発光装置(以下、単に発光装置とも呼ぶ)の研究が活発化している。発光装置は有機発光装置(OELD:Organic EL Display)又は有機ライトエミッティングダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)とも呼ばれている。
【0005】
アクティブマトリクス型発光装置は、各画素のそれぞれにTFTでなるスイッチング素子(以下、スイッチング素子という)を設け、そのスイッチング用TFTによって電流制御を行う駆動素子(以下、電流制御用TFTという)を動作させてEL層(厳密には発光層)を発光させる。例えば特許文献1に記載された発光装置が公知である。
【0006】
EL素子は自ら発光するため視認性が高く、液晶表示装置(LCD)で必要なバックライトが要らず薄型化に最適であると共に、視野角にも制限が無い。そのため、EL素子を用いた発光装置は、CRTやLCDに代わる表示装置として注目されている。
【0007】
なお、EL素子は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence)が得られる有機化合物を含む層(以下、EL層と記す)と、陽極と、陰極とを有する。有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とがあるが、本発明の製造装置および成膜方法により作製される発光装置は、どちらの発光を用いた場合にも適用可能である。
【0008】
EL素子は一対の電極間にEL層が挟まれた構造となっているが、EL層は通常、積層構造となっている。代表的には、「正孔輸送層/発光層/電子輸送層」という積層構造が挙げられる。この構造は非常に発光効率が高く、現在、研究開発が進められている発光装置は殆どこの構造を採用している。
【0009】
また、他にも陽極上に正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、または正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に積層する構造も良い。発光層に対して蛍光性色素等をドーピングしても良い。また、これらの層は、全て低分子系の材料を用いて形成しても良いし、全て高分子系の材料を用いて形成しても良い。
【0010】
また、これまでアクティブマトリクス型の発光装置において、基板上のTFTと電気的に接続された電極が陽極として形成され、陽極上に有機化合物層が形成され、有機化合物層上に陰極が形成される発光素子を有し、有機化合物層において生じた光を透明電極である陽極からTFTの方へ取り出すという構造であった。
【0011】
しかし、この構造においては、解像度を向上させようとすると画素部におけるTFT及び配線等の配置により開口率が制限されるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−189252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明では、基板上のTFTと電気的に接続されたTFT側の電極を陰極として形成し、陰極上に有機化合物層を形成し、有機化合物層上に透明電極である陽極を形成するという構造(以下、上面出射構造とよぶ)の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を作製する。或いは、基板上のTFTと電気的に接続されたTFT側の電極を陽極として形成し、陽極上に有機化合物層を形成し、有機化合物層上に半透明電極である陰極を形成するという構造(この構造も、上面出射構造とよぶ)の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を作製する。
【0014】
これらの上記各構造において、透明電極の膜抵抗が高くなるという問題が生じる。特に、透明電極の膜厚を薄くした場合、さらに膜抵抗が高くなってしまう。陽極または陰極となる透明電極の膜抵抗が高くなると電圧降下により面内電位分布が不均一になり、発光素子の輝度にバラツキを生じるといった不具合が生じる。そこで、本発明は、発光素子における透明電極の膜抵抗を低下させる構造の発光装置およびその作製方法を提供することを課題とする。そして、そのような発光装置を表示部として用いる電気器具を提供することを課題とする。
【0015】
加えて、発光素子および発光装置の信頼性を高めることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、基板上に形成された発光素子の作製において、有機化合物層の形成前に導電性の膜を各画素電極間に配置する絶縁物上に形成し、透明電極の膜抵抗の低抵抗化を図るというものである。
【0017】
さらに上記導電性の膜を用いて引き出し配線を形成し、下層に存在する他の配線と接続を行うことも本発明の特徴としている。
【0018】
本明細書で開示する発明の構成は、 第1の電極と、該第1の電極上に接する有機化合物層と、該有機化合物層上に接する第2の電極とを有する発光素子を複数有する画素部と、駆動回路と、端子部とを有する発光装置であって、 前記画素部には、薄膜トランジスタに接続する前記第1の電極の端部が絶縁物で覆われており、且つ、該絶縁物上に導電性を有する材料からなる第3の電極と、前記絶縁物及び前記第1の電極上に有機化合物層と、前記有機化合物層及び前記第3の電極に接する第2の電極とが設けられており、前記端子部と画素部との間には、第3の電極と同一材料からなる配線または第2の電極と同一材料からなる配線が端子から延びている配線と接続する箇所を有することを特徴とする発光装置である。
【0019】
また、上記構成において、前記第3の電極は、前記絶縁物と同一のパターン形状を有していてもよい。その場合、前記絶縁物と同一のマスクを用いて形成される。
【0020】
或いは、上記構成において、前記第3の電極は、前記絶縁物と異なるパターン形状を有していてもよい。その場合、前記絶縁物をパターニングした後、導電性を有する材料からなる膜を形成して前記絶縁物のパターニングとは異なるマスクを用いて形成される。
【0021】
また、本発明の他の構成は、基板上に形成された発光素子の作製において、有機化合物層の形成前に導電性の膜を各画素電極間に配置する絶縁物上に形成し、有機化合物層と、透明電極を形成した後、該透明電極上に導電性の高い材料からなる電極を形成し、透明電極の膜抵抗の低抵抗化を図るというものである。なお、透明電極上に形成する電極は、発光領域となる場所には設けない。さらに上記導電性の膜を用いて引き出し配線を形成し、下層に存在する他の配線と接続を行うことも本発明の特徴としている。
【0022】
本明細書で開示する発明の他の構成は、 第1の電極と、該第1の電極上に接する有機化合物層と、該有機化合物層上に接する第2の電極とを有する発光素子を複数有する画素部と、駆動回路と、端子部とを有する発光装置であって、 前記画素部には、薄膜トランジスタに接続する前記第1の電極の端部が絶縁物で覆われており、且つ、該絶縁物の一部および第1の電極上に有機化合物層と、該有機化合物層上に接する第2の電極と、該第2の電極において前記第1の電極と重ならない領域上に接して導電性を有する材料からなる第3の電極とが設けられており、前記端子部と画素部との間には、第3の電極と同一材料からなる配線または第2の電極と同一材料からなる配線が端子から延びている配線と接続する箇所を有することを特徴とする発光装置である。
【0023】
また、上記各構成において、前記第2の電極は、前記発光素子の陰極、或いは陽極であることを特徴としている。
【0024】
また、上記各構成において、前記第3の電極は、前記第2の電極を構成する材料よりも電気抵抗が小さい材料からなっており、導電型を付与する不純物元素がドープされたpoly−Si、W、WSiX、Al、Ti、Mo、Cu、Ta、Cr、またはMoから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を主成分とする膜またはそれらの積層膜からなることを特徴としている。例えば、前記第3の電極は、窒化物層またはフッ化物層を最上層とする積層からなる電極とすることが好ましい。
【0025】
また、上記各構成において、前記第1の電極は、前記発光素子の陰極、或いは陽極であることを特徴としている。例えば、第2の電極が陰極である場合、第1の電極は陽極であり、第2の電極が陽極である場合、第1の電極は陰極である。
【0026】
また、上記各構成において、前記絶縁物は、無機絶縁膜で覆われた有機樹脂からなる障壁(バンクとも呼ばれる)、或いは、前記絶縁物は、無機絶縁膜であることを特徴としている。なお、前記無機絶縁膜は膜厚10〜100nmの窒化珪素を主成分とする絶縁膜であることを特徴としている。
【0027】
また、発光装置において、発光していない画素では入射した外光(発光装置の外部の光)が陰極の裏面(発光層に接する側の面)で反射され、陰極の裏面が鏡のように作用して外部の景色が観測面(観測者側に向かう面)に映るといった問題があった。また、この問題を回避するために、発光装置の観測面に円偏光フィルムを貼り付け、観測面に外部の景色が映らないようにする工夫がなされているが、円偏光フィルムが非常に高価であるため、製造コストの増加を招くという問題があった。
【0028】
本発明は、円偏光フィルムを用いずに発光装置の鏡面化を防ぐことを目的とし、それにより発光装置の製造コストを低減して安価な発光装置を提供することも課題としている。そこで、本発明では、円偏光フィルムに代えて安価なカラーフィルタを用いることを特徴としている。上記構成において、色純度を向上させるため、前記発光装置には各画素に対応するカラーフィルタを備えることが好ましい。また、カラーフィルタの黒色の部分(黒色の有機樹脂)が各発光領域の間と重なるようにすればよい。さらに、カラーフィルタの黒色の部分(黒の着色層)が、異なる有機化合物層が一部重なる部分と重なるようにしてもよい。
【0029】
ただし、発光の出射方向、即ち、前記発光素子と観察者の間にカラーフィルタを設ける。例えば、発光素子が設けられている基板を通過させない場合においては、封止基板にカラーフィルタを貼り付ければよい。或いは、発光素子が設けられている基板を通過させる場合においては、発光素子が設けられている基板にカラーフィルタを貼り付ければよい。こうすることによって、円偏光フィルムを必要としなくなる。
【0030】
加えて、有機化合物を含む層上の陽極として、透明導電膜(代表的にはITO、ZnO)を用い、その上に無機絶縁膜からなる保護膜を形成することは極めて有用である。また、有機化合物を含む層上の陰極として、Al、Ag、Mg、またはこれらの合金(代表的にはAlLi)からなる金属薄膜(光が通過する膜厚)を用い、その上に無機絶縁膜からなる保護膜を形成することも有効である。
【0031】
さらに、無機絶縁膜からなる保護膜を形成する前に、プラズマCVD法またはスパッタ法で水素を含む膜、代表的には炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜を形成することが好ましい。また、水素を含む膜は、炭素を主成分とする薄膜と窒化珪素膜との積層膜としてもよい。
【0032】
また、本発明の他の構成は、絶縁表面を有する基板上に発光素子を有し、該発光素子は、陽極、陰極、並びに前記陽極と前記陰極との間に挟まれた有機化合物層とを有し、前記発光素子は、水素を含む膜で覆われていることを特徴とする発光装置である。
【0033】
有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む膜から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。また、上記水素を含む膜の成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させることもできる。また、水素を含む膜を覆って形成する保護膜は、保護膜側に拡散する水素をブロックして効率よく、水素を有機化合物層に拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させる役目も果たす。なお、上記水素を含む膜は、発光素子の保護膜としても機能させることができる。
【0034】
さらに、上記水素を含む膜をバッファ層として機能させることもでき、スパッタ法によって透明導電膜に接して窒化珪素膜を形成する場合、透明導電膜に含まれる不純物(In、Sn、Zn等)が窒化珪素膜に混入する恐れがあるが、バッファ層となる上記水素を含む膜を間に形成することによって窒化珪素膜への不純物混入を防止することもできる。上記構成によりバッファ層を形成することで、透明導電膜からの不純物(In、Snなど)の混入を防止し、不純物のない優れた保護膜を形成することができる。
【0035】
また、本発明の他の構成は、絶縁表面を有する基板上に発光素子を有し、該発光素子は、陽極、陰極、並びに前記陽極と前記陰極との間に挟まれた有機化合物層とを有し、前記発光素子は、水素を含む膜で覆われ、さらに該水素を含む膜は無機絶縁膜からなる保護膜で覆われていることを特徴とする発光装置である。
【0036】
また、上記構成を実現する作製方法も本発明の一つであり、本発明の作製方法に関する構成は、絶縁表面上にTFTを形成し、前記TFTと電気的に接続された陰極を形成し、前記陰極上に有機化合物層を形成し、前記前記有機化合物層上に陽極を形成した後、前記陽極上に水素を含む膜を形成することを特徴とする発光装置の作製方法である。
【0037】
また、本発明の作製方法に関する他の構成は、絶縁表面上にTFTを形成し、前記TFTと電気的に接続された陽極を形成し、前記陽極上に有機化合物層を形成し、前記前記有機化合物層上に陰極を形成した後、前記陰極上に水素を含む膜を形成することを特徴とする発光装置の作製方法である。
【0038】
また、本発明の作製方法に関する上記各構成において、前記水素を含む膜は、前記有機化合物層の耐えうる温度範囲、例えば室温〜100℃以下でプラズマCVD法、またはスパッタ法により形成することを特徴とし、前記水素を含む膜は、炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜であることを特徴としている。
【0039】
また、本発明の作製方法に関する上記各構成において、前記有機化合物層を形成する工程は蒸着法、塗布法、イオンプレーティング法もしくはインクジェット法により行われることを特徴としている。
【0040】
また、本発明の作製方法に関する上記各構成において、前記水素を含む膜上に無機絶縁膜からなる保護膜を形成することを特徴としている。
【0041】
また、本発明の作製方法に関する上記各構成において、前記水素を含む膜を形成する際、前記有機化合物層における欠陥を水素で終端させることを特徴としている。
【0042】
また、水分や酸素による劣化を防ぐため、封止缶や封止基板で発光素子を封止する際、密閉される空間に水素ガスを充填、或いは水素及び不活性気体(希ガスまたは窒素)を充填させてもよい。
【0043】
本発明の他の構成は、絶縁表面を有する基板上に発光素子を有し、該発光素子は、陽極、陰極、並びに前記陽極と前記陰極との間に挟まれた有機化合物層とを有し、前記発光素子は、透光性を有する基板とシール材とで密閉され、且つ、密閉された空間には、水素が含まれていることを特徴とする発光装置である。
【0044】
上記構成において、前記発光素子は、水素を含む膜(炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜)で覆われていることを特徴としている。
【0045】
また、上記構成により、有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む空間から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。
【0046】
なお、本明細書において、陰極と陽極との間に設けられる全ての層を総称してEL層という。したがって、上述した正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、全てEL層に含まれる。
【0047】
本発明において、前記炭素を主成分とする薄膜は膜厚3〜50nmのDLC膜(Diamond like Carbon)であることを特徴としている。DLC膜は短距離秩序的には炭素間の結合として、SP3結合をもっているが、マクロ的にはアモルファス状の構造となっている。DLC膜の組成は炭素が70〜95原子%、水素が5〜30原子%であり、非常に硬く絶縁性に優れている。また、このようなDLC膜は、水蒸気や酸素などのガス透過率が低いという特徴がある。また、微少硬度計による測定で、15〜25GPaの硬度を有することが知られている。
【0048】
DLC膜はプラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法など)、スパッタ法などで形成することができる。いずれの成膜方法を用いても、密着性良くDLC膜を形成することができる。DLC膜は基板をカソードに設置して成膜する。または、負のバイアスを印加して、イオン衝撃をある程度利用して緻密で硬質な膜を形成できる。
【0049】
成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH4、C2H2、C6H6など)とを用い、グロー放電によりイオン化し、負の自己バイアスがかかったカソードにイオンを加速衝突させて成膜する。こうすることにより、緻密で平滑なDLC膜を得ることができる。
【0050】
また、このDLC膜は、可視光に対して透明もしくは半透明な絶縁膜からなることを特徴としている。
【0051】
また、本明細書において、可視光に対して透明とは可視光の透過率が80〜100%であることを指し、可視光に対して半透明とは可視光の透過率が50〜80%であることを指す。
【発明の効果】
【0052】
本発明により、有機化合物層における欠陥を水素で終端させることができるため、発光装置としての信頼性が向上する。
【0053】
また、本発明により、非常に高価な円偏光フィルムを不必要とすることができるため、製造コストの削減をすることができる。
【0054】
また、本発明により、赤、緑、青の発光色を用いるフルカラーのフラットパネルディスプレイとして、高精細化や高開口率化や高信頼性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】断面図を示す図である。(実施の形態1)
【図2】上面図を示す図である。(実施の形態1)
【図3】端子部を示す図である。(実施の形態1)
【図4】本発明の積層構造を示す図である。(実施の形態2)
【図5】上面図を示す図である。(実施の形態3)
【図6】断面図を示す図である。(実施の形態3)
【図7】上面図を示す図である。(実施の形態3)
【図8】マスクを示す図である。(実施の形態3)
【図9】断面図を示す図である。(実施の形態4)
【図10】断面図を示す図である。(実施の形態5)
【図11】製造装置の一例を示す図。(実施例2)
【図12】製造装置の一例を示す図。(実施例2)
【図13】電子機器の一例を示す図。
【図14】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0057】
(実施の形態1)
図2は、ELモジュールの上面図である。無数のTFTが設けられた基板(TFT基板とも呼ぶ)には、表示が行われる画素部40と、画素部の各画素を駆動させる駆動回路41a、41bと、EL層上に設けられる電極と引き出し配線とを接続する接続部と、外部回路と接続するためにFPCを貼り付ける端子部42とが設けられている。また、EL素子を封止するための基板と、シール材33とによって密閉する。また、図1(A)は、図2中における鎖線A−A’で切断した場合の断面図である。
【0058】
鎖線A−A’の方向には規則的に画素が配置されており、ここではX方向にR、G、Bの順で配置されている例を示す。
【0059】
図1(A)中、発光領域(R)は赤色の発光領域を示しており、発光領域(G)は緑色の発光領域を示しており、発光領域(B)は青色の発光領域を示しており、これらの3色の発光領域によりフルカラー化された発光表示装置を実現している。
【0060】
また、図1(A)中、TFT1は、赤色を発光するEL層17に流れる電流を制御する素子であり、4、7はソース電極またはドレイン電極である。また、TFT2は、緑色を発光するEL層18に流れる電流を制御する素子であり、5、8はソース電極またはドレイン電極である。TFT3は、青色を発光するEL層19に流れる電流を制御する素子であり、6、9はソース電極またはドレイン電極である。15、16は有機絶縁材料または無機絶縁膜材料からなる層間絶縁膜である。
【0061】
また、11〜13は、EL素子の陽極(或いは陰極)であり、20は、EL素子の陰極(或いは陽極)である。ここでは、20として薄い金属層(代表的にはMgAg、MgIn、AlLiなどの合金)と透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層膜からなる陰極とし、各発光素子からの光を通過させている。ただし、上記透明導電膜は陰極としては機能せず、電気抵抗を下げる為に設けている。また、陽極としては、仕事関数の大きい、具体的には白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、もしくはニッケル(Ni)といった材料、または透明導電膜(ITO、ZnOなど)、またはこれらの積層を用いればよい。
【0062】
また、11〜13の両端部およびそれらの間は有機絶縁物24(障壁またはバンクとも呼ばれる)で覆われている。さらに、有機絶縁物24は無機絶縁膜14で覆われている。また、有機絶縁物24上の一部にまで有機化合物層が形成されている。
【0063】
また、無機絶縁膜14で覆われた有機絶縁物24(障壁またはバンクとも呼ばれる)上には、補助電極21を有している。この補助電極21は、陰極(或いは陽極)の電気抵抗値を下げる機能を有する。上記に示した透明導電膜の抵抗値は、比較的に高いため、大画面化することが困難であるが、補助電極21を設けることによって、陰極(或いは陽極)の電極全体として低抵抗化することができる。加えて、透明導電膜の薄膜化も可能とすることができる。
【0064】
さらに、この補助電極21で下層の配線または電極と接続させる。この補助電極21はEL層を形成する前に成膜及びパターニングを行えばよい。補助電極21は、スパッタ法や蒸着法などを用い、導電型を付与する不純物元素がドープされたpoly−Si、W、WSiX、Al、Ti、Mo、Cu、Ta、Cr、またはMoから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を主成分とする膜またはそれらの積層膜で形成すればよい。こうして、下層の電極とコンタクトさせた補助電極21上に接して透明導電膜を形成すれば陰極の引き出しが可能となる。なお、図1(C)は、図2中に示した鎖線C−C’で切断した場合の断面図である。また、図1(C)中、点線で示した電極同士は電気的に接続していることを示している。また、端子部において、端子の電極を陰極10と同じ材料で形成している。
【0065】
また、約10μmの間隔が保たれるようにシール材33によって封止基板30が貼りつけられており、全ての発光素子は密閉されている。なお、シール材33は、駆動回路の一部と重なるようにして狭額縁化させることが好ましい。シール材33によって封止基板30を貼りつける直前には真空でアニールを行って脱気を行うことが好ましい。また、封止基板30を貼りつける際には、水素および不活性気体(希ガスまたは窒素)を含む雰囲気下で行って、保護膜32と、シール材33と、封止基板30によって密閉された空間には水素を含ませることが好ましい。発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む空間から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。
【0066】
さらに、色純度を高めるため、封止基板30には各画素に対応するカラーフィルタが設けられている。カラーフィルタのうち、赤色の着色層31bは赤色の発光領域(R)に対向して設けられ、緑色の着色層31cは緑色の発光領域(G)に対向して設けられ、青色の着色層31dは青色の発光領域(B)に対向して設けられる。また、発光領域以外の領域は、カラーフィルタの黒色部分、即ち遮光部31aによって遮光されている。なお、遮光部31aは、金属膜(クロム等)または黒色顔料を含有した有機膜で構成されている。
【0067】
本発明においては、カラーフィルタを設けることによって円偏光板を不必要としている。
【0068】
また、図1(B)は、図2中に示した鎖線B−B’で切断した場合の断面図である。図1(B)においても11a〜11cの両端部およびそれらの間は無機絶縁膜14で覆われている。ここでは赤色を発光するEL層17が共通となっている例を示したが、特に限定されず、同じ色を発光する画素毎にEL層を形成してもよい。
【0069】
また、図1において、発光装置の信頼性を高めるために保護膜32を形成している。この保護膜32はスパッタ法により得られる窒化珪素または窒化酸化珪素を主成分とする絶縁膜である。また、図1においては、保護膜に発光を通過させるため、保護膜の膜厚は、可能な限り薄くすることが好ましい。
【0070】
さらに、発光装置の信頼性を高めるために保護膜32を形成する前に水素を含む膜を形成する。保護膜32を形成する前に水素を含む膜を形成することによって、有機化合物層17〜19の欠陥を終端させる。前記水素を含む膜は、炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜とすればよい。この水素を含む膜を形成する方法としては、前記有機化合物層の耐えうる温度範囲、例えば室温〜100℃以下でプラズマCVD法、またはスパッタ法により形成する。なお、図1では、水素を含む膜は、保護膜の一部と見なしているため、図示していない。また、上記水素を含む膜は、保護膜32の膜応力を緩和させるバッファ層とすることもできる。
【0071】
また、本発明は、図1(C)に示した構成に限定されないことは言うまでもない。図1(C)と構成が一部異なる例を図3(A)〜(D)に示す。なお、簡略化のため、図3(A)〜(D)において、図1と同一である部分は、同一の符号を用いる。
【0072】
図1(C)では、端子部に陰極と同一材料(透明電極)からなる電極が設けられた例であったが、図3(A)は、TFTのゲート電極と同一材料からなる電極(上層がW膜、下層がTaN膜)でFPCと接続する例である。
【0073】
また、図3(B)は、画素電極(陽極)と同一材料からなる電極10でFPCと接続する例である。なお、この電極10は、TFTのゲート電極と同一材料からなる電極(上層がW膜、下層がTaN膜)上に接して設けられている。
【0074】
また、図3(C)は、TFTの引き出し配線(TiN膜、Al膜、TiN膜の順で積層された配線)上に設けられた画素電極(陽極)と同一材料からなる電極10上に形成された陰極20と同一材料(透明電極)からなる電極でFPCと接続する例である。
【0075】
また、図3(D)は、TFTの引き出し配線(TiN膜、Al膜、TiN膜の順で積層された配線)上に形成された陰極20と同一材料(透明電極)からなる電極でFPCと接続する例である。
【0076】
(実施の形態2)
ここでは、水素を含む膜および保護膜について、図4を用いて説明する。
【0077】
図4(A)は、EL素子の積層構造の一例を示した模式図である。図4(A)中、200は陰極(或いは陽極)、201はEL層、202は陽極(或いは陰極)、203は水素を含むDLC膜、204は保護膜である。また、陽極202に発光を通過させる場合、陽極202として、透光性を有する導電膜(ITOやZnOなど)を用いることが好ましい。また、陰極200としては金属膜(MgAg、MgIn、AlLiなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜)、あるいはそれらの積層を用いることが好ましい。
【0078】
保護膜204は、スパッタ法(DC方式やRF方式)により得られる窒化珪素または窒化酸化珪素を主成分とする絶縁膜を用いればよい。シリコンターゲットを用い、窒素とアルゴンを含む雰囲気で形成すれば、窒化珪素膜が得られる。また、窒化シリコンターゲットを用いてもよい。また、保護膜204は、リモートプラズマを用いた成膜装置を用いて形成してもよい。また、保護膜に発光を通過させる場合、保護膜の膜厚は、可能な限り薄くすることが好ましい。
【0079】
また、水素を含むDLC膜203は、炭素が70〜95原子%、水素が5〜30原子%であり、非常に硬く絶縁性に優れている。水素を含むDLC膜はプラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法など)、スパッタ法などで形成することができる。
【0080】
この水素を含むDLC膜203を形成する方法としては、前記有機化合物層の耐えうる温度範囲、例えば室温〜100℃以下で形成する。
【0081】
プラズマを発生させる場合の成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH4、C2H2、C6H6など)とを用いればよい。
【0082】
有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含むDLC膜から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。また、上記水素を含むDLC膜の成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させることもできる。また、水素を含むDLC膜を覆って形成する保護膜は、保護膜側に拡散する水素をブロックして効率よく、水素を有機化合物層に拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させる役目も果たす。なお、上記水素を含むDLC膜は、発光素子の保護膜としても機能させることができる。
【0083】
さらに、上記水素を含むDLC膜をバッファ層として機能させることもでき、スパッタ法により透明導電膜からなる膜に接して窒化珪素膜を形成する場合、透明導電膜に含まれる不純物(In、Sn、Zn等)が窒化珪素膜に混入する恐れがあるが、バッファ層となる上記水素を含むDLC膜を間に形成することによって窒化珪素膜への不純物混入を防止することもできる。上記構成によりバッファ層を形成することで、透明導電膜からの不純物(In、Snなど)の混入を防止し、不純物のない優れた保護膜を形成することができる。
【0084】
このような構成とすることで、発光素子を保護するとともに、信頼性を向上させることができる。
【0085】
また、図4(B)は、EL素子の積層構造の他の一例を示した模式図である。図4(B)中、300は陰極(或いは陽極)、301はEL層、302は陽極(或いは陰極)、303は水素を含む窒化珪素膜、304は保護膜である。また、陽極302に発光を通過させる場合、302として、透光性を有する導電性材料または非常に薄い金属膜(MgAg)、あるいはそれらの積層を用いることが好ましい。また、陽極302に発光を通過させる場合、陽極302として、透光性を有する導電膜(ITOやZnOなど)を用いることが好ましい。また、陰極300としては金属膜(MgAg、MgIn、AlLiなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜)、あるいはそれらの積層を用いることが好ましい。
【0086】
保護膜304は、スパッタ法(DC方式やRF方式)により得られる窒化珪素または窒化酸化珪素を主成分とする絶縁膜を用いればよい。シリコンターゲットを用い、窒素とアルゴンを含む雰囲気で形成すれば、窒化珪素膜が得られる。また、窒化シリコンターゲットを用いてもよい。また、保護膜304は、リモートプラズマを用いた成膜装置を用いて形成してもよい。また、保護膜に発光を通過させる場合、保護膜の膜厚は、可能な限り薄くすることが好ましい。
【0087】
また、水素を含む窒化珪素膜303は、プラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法など)、RFスパッタ法、DCスパッタ法などで形成することができる。
【0088】
この水素を含む窒化珪素膜303を形成する方法としては、前記有機化合物層の耐えうる温度範囲、例えば室温〜100℃以下で形成する。
【0089】
水素を含む窒化珪素膜303を形成する方法として、プラズマCVD法を用いる場合、反応ガスは、窒素を含むガス(N2、NH3NOxで表記される窒素酸化物系ガスなど)と、珪化水素系のガス(例えばシラン(SiH4)やジシランやトリシランなど)とを用いればよい。
【0090】
水素を含む窒化珪素膜303を形成する方法として、スパッタ法を用いる場合、シリコンターゲットを用い、水素と窒素とアルゴンとを含む雰囲気で形成すれば、水素を含む窒化珪素膜が得られる。また、窒化シリコンターゲットを用いてもよい。
【0091】
有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む窒化珪素膜から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。また、上記水素を含む窒化珪素膜の成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させることもできる。また、水素を含む窒化珪素膜を覆って形成する保護膜は、保護膜側に拡散する水素をブロックして効率よく、水素を有機化合物層に拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させる役目も果たす。なお、上記水素を含む窒化珪素膜は、発光素子の保護膜としても機能させることができる。
【0092】
さらに、上記水素を含む窒化珪素膜をバッファ層として機能させることもでき、スパッタ法により透明導電膜からなる膜に接して窒化珪素膜を形成する場合、透明導電膜に含まれる不純物(In、Sn、Zn等)が窒化珪素膜に混入する恐れがあるが、バッファ層となる上記水素を含む窒化珪素膜を間に形成することによって窒化珪素膜への不純物混入を防止することもできる。上記構成によりバッファ層を形成することで、透明導電膜からの不純物(In、Snなど)の混入を防止し、不純物のない優れた保護膜を形成することができる。
【0093】
このような構成とすることで、発光素子を保護するとともに、信頼性を向上させることができる。
【0094】
また、図4(A)及び図4(B)では水素を含む膜として単層とした例を示したが、水素を含む窒化珪素膜と水素を含むDLC膜との積層、もしくはこれらの3層以上の積層としてもよい。
【0095】
また、本実施の形態は、アクティブマトリクス型表示装置だけでなく、パッシブ型表示装置に適用することもできる。
【0096】
また、本実施の形態は、実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0097】
(実施の形態3)
ここでは、図1と構成が一部異なる例を図6に示す。ここでは、画素部に規則的に配置される多数の画素のうち、3×3の画素を例に本発明を以下に説明する。なお、断面構造において、TFTは図1とほぼ同一であり、簡略化のため、図6において、図1と同一である部分は、同一の符号を用いる。
【0098】
図6(A)は、図5(A)中鎖線A−A’で切断した場合の断面図である。発光領域50Rは赤色の発光領域を示しており、発光領域50Gは緑色の発光領域を示しており、発光領域50Bは青色の発光領域を示しており、これらの3色の発光領域によりフルカラー化された発光表示装置を実現している。
【0099】
本実施の形態においては、図6(A)に示したように、同一のマスクでパターンニングを行った例であり、補助電極621と有機絶縁物624との上面から見た形状がほぼ同一である。この場合、図6(C)に示したように、補助電極621は、陰極20でソース配線と同一材料からなる配線と電気的に接続させている。
【0100】
また、画素電極612は、層間絶縁膜15上に形成されており、画素電極612の形成後にTFTのコンタクトホールが形成され、その後に形成される電極607、608でTFTと画素電極612とを電気的に接続している。また、画素電極の両端部およびそれらの間は無機絶縁物14で覆われている。また、図1と同様に有機絶縁物624上の一部にまで有機化合物層が形成されている。
【0101】
また、図5(B)は、画素電極の形成直後の上面図であり、図5(A)と対応している。図5(A)及び図5(B)においては、画素一列(Y方向)毎に帯状の有機化合物層を設けている。各発色の異なる有機化合物層の間には帯状に有機絶縁物624が設けられている。また、図5(A)においては、画素一列(Y方向)毎に有機絶縁物624および補助配線621を設ける構成としている。
【0102】
また、図7(A)は、図5、図6に対応する上面図である。図7(A)中、左側に示した図における接続部の一部断面図を右側に示し、図6(C)と同一箇所である。また、図7(A)に示した補助配線621及び有機絶縁物をパターニングする場合、用いるメタルマスクの例を図8(A)に示した。
【0103】
また、有機絶縁物と補助電極とのトータルの膜厚が比較的厚くなった場合、段差が大きくなるため、透明導電膜で電気的に接続することが困難になる可能性がある。特に、透明導電膜の薄膜化を行った場合にカバレッジ不良により線欠陥が生じる恐れがある。そこで、補助電極621と下層の電極との接続をより確実にするため、図7(B)に示すように、マスク数を増やして622で示す電極を形成してもよい。また、メタルマスクを用いて蒸着法により電極622を形成してもよい。
【0104】
また、図7(C)に示すように、予め画素部の周りにソース配線と同一材料からなる配線623を設けておき、さらに補助電極621と直交するように第2の補助電極625を形成してもよい。こうすることによって、第2の補助電極625は、補助電極621に直接接して設けられ、且つ、配線623とも直接接することができる。なお、補助電極621と第2の補助電極625との間が発光領域となるように適宜設計する。また、図7(A)に示した第2の補助電極625をパターニングする場合、用いるメタルマスクの例を図8(B)に示した。
【0105】
また、図7(C)では2回のパターニングによって第1の補助電極621と第2の補助電極625とを形成した例を示したが、図8(C)に示したメタルマスクを用いて格子状に補助電極を形成してもよい。図8(C)の右側図で示すように各開口部は細い線で区切られているが、蒸着では回り込みがあるため、一部膜厚が薄くなるものの格子状に補助電極を形成することができる。
【0106】
また、本実施の形態は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【0107】
(実施の形態4)
ここでは、図1と構成が一部異なる例を図9に示す。ここでは、画素部に規則的に配置される多数の画素のうち、3×3の画素を例に本発明を以下に説明する。なお、断面構造において、有機絶縁物24が存在しない点と、全面に高分子からなる有機化合物層60が存在する点以外は図1とほぼ同一であり、簡略化のため、図9において、図1と同一である部分は、同一の符号を用いる。また、図9(A)は、図2中における鎖線A−A’で切断した場合の断面図である。
【0108】
図1に示した有機絶縁物24が図9に示す構造には存在せず、その代わりに無機絶縁膜14と補助電極721とで各有機化合物17、18、19の間隔を保っている。
【0109】
また、高分子からなる有機化合物層60(代表的にはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(以下、「PEDOT/PSS」と記す)、ちなみに、このPEDOT/PSSは、正孔注入層として作用する。)は、スピンコート法やスプレー法などの塗布法で形成するため、全面に形成される。また、高分子からなる有機化合物層60は導電性を有しており、陰極20と補助電極721は電気的に接続される。補助電極721を設けることによって、陰極(或いは陽極)全体として低抵抗化することができる。加えて、透明導電膜の薄膜化も可能とすることができる。さらに、この補助電極721で下層の配線または電極と接続させる。この補助電極721はEL層を形成する前に成膜及びパターニングを行えばよい。下層の電極とコンタクトさせた補助電極721上に透明導電膜を形成すれば陰極の引き出しが可能となる。なお、図9(C)は、図2中に示した鎖線C−C’で切断した場合の断面図である。また、図9(C)中、点線で示した電極同士は電気的に接続していることを示している。また、端子部において、端子の電極を陰極20と同じ材料で形成している。
【0110】
また、図9(B)は、図2中に示した鎖線B−B’で切断した場合の断面図である。図9(B)においても11a〜11cの両端部およびそれらの間は無機絶縁物14で覆われている。ここでは赤色を発光するEL層17が共通となっている例を示したが、特に限定されず、同じ色を発光する画素毎にEL層を形成してもよい。
【0111】
また、本実施の形態は、実施の形態1、実施の形態2、または実施の形態3と自由に組み合わせることができる。
【0112】
(実施の形態5)
ここでは、図1と構成が一部異なる例を図10に示す。ここでは、画素部に規則的に配置される多数の画素のうち、3×3の画素を例に本発明を以下に説明する。なお、断面構造において、陰極20上に補助配線821が存在する点以外は図1とほぼ同一であり、簡略化のため、図10において、図1と同一である部分は、同一の符号を用いる。また、図10(A)は、図2中における鎖線A−A’で切断した場合の断面図である。
【0113】
また、補助電極821は、陰極上に形成するため、メタルマスクを用いた蒸着法で行う。ここでは格子状に補助電極821を形成した例を示す。補助電極821を設けることによって、陰極(或いは陽極)全体として低抵抗化することができる。加えて、透明導電膜の薄膜化も可能とすることができる。さらに、この補助電極821で下層の配線または電極と接続させる。下層の電極とコンタクトさせた補助電極821上に透明導電膜を形成すれば陰極の引き出しが可能となる。なお、図10(C)は、図2中に示した鎖線C−C’で切断した場合の断面図である。また、図10(C)中、点線で示した電極同士は電気的に接続していることを示している。また、端子部において、端子の電極を陰極20と同じ材料で形成している。
【0114】
また、本実施の形態は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、または実施の形態4と自由に組み合わせることができる。
【0115】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
【実施例1】
【0116】
本実施例では、絶縁表面上に作製したアクティブマトリクス型発光装置について説明する。なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いているが、MOSトランジスタを用いてもよい。
【0117】
また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0118】
本実施例では、基板としてバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラスからなる基板、石英基板やシリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いればよい。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性が有するプラスチック基板を用いてもよいし、可撓性基板を用いても良い。
【0119】
まず、厚さ0.7mmの耐熱性ガラス基板上にプラズマCVD法により下地絶縁膜の下層として、プラズマCVD法で成膜温度400℃、原料ガスSiH4、NH3、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)を50nm(好ましくは10〜200nm)形成する。次いで、表面をオゾン水で洗浄した後、表面の酸化膜を希フッ酸(1/100希釈)で除去する。次いで、下地絶縁膜の上層として、プラズマCVD法で成膜温度400℃、原料ガスSiH4、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を100nm(好ましくは50〜200nm)の厚さに積層形成し、さらに大気解放せずにプラズマCVD法で成膜温度300℃、成膜ガスSiH4で非晶質構造を有する半導体膜(ここではアモルファスシリコン膜)を54nmの厚さ(好ましくは25〜200nm)で形成する。
【0120】
本実施例では下地絶縁膜を2層構造として示したが、珪素を主成分とする絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造として形成しても良い。また、半導体膜の材料に限定はないが、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム(SiXGe1-X(X=0.0001〜0.02))合金などを用い、公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により形成すればよい。また、プラズマCVD装置は、枚葉式の装置でもよいし、バッチ式の装置でもよい。また、同一の成膜室で大気に触れることなく下地絶縁膜と半導体膜とを連続成膜してもよい。
【0121】
次いで、非晶質構造を有する半導体膜の表面を洗浄した後、オゾン水で表面に約2nmの極薄い酸化膜を形成する。次いで、TFTのしきい値を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを行う。ここでは、ジボラン(B2H6)を質量分離しないでプラズマ励起したイオンドープ法を用い、ドーピング条件を加速電圧15kV、ジボランを水素で1%に希釈したガスを流量30sccmとし、ドーズ量2×1012/cm2で非晶質シリコン膜にボロンを添加する。
【0122】
次いで、重量換算で10ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布した。塗布に代えてスパッタ法でニッケル元素を全面に散布する方法を用いてもよい。
【0123】
次いで、加熱処理を行い結晶化させて結晶構造を有する半導体膜を形成する。この加熱処理は、電気炉の熱処理または強光の照射を用いればよい。電気炉の熱処理で行う場合は、500℃〜650℃で4〜24時間で行えばよい。ここでは脱水素化のための熱処理(500℃、1時間)の後、結晶化のための熱処理(550℃、4時間)を行って結晶構造を有するシリコン膜を得た。なお、ここでは炉を用いた熱処理を用いて結晶化を行ったが、短時間での結晶化が可能なランプアニール装置で結晶化を行ってもよい。
【0124】
次いで、結晶構造を有するシリコン膜表面の酸化膜を希フッ酸等で除去した後、大粒径な結晶を得るため、連続発振が可能な固体レーザを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を半導体膜に照射する。レーザ光の照射は大気中、または酸素雰囲気中で行う。なお、大気中、または酸素雰囲気中で行うため、レーザー光の照射により表面に酸化膜が形成される。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を適用すればよい。出力10Wの連続発振のYVO4レーザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換する。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光に成形して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000cm/s程度の速度でレーザ光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射すればよい。
【0125】
もちろん、連続発振のYVO4レーザーの第2高調波を照射する前の結晶構造を有するシリコン膜を用いてTFTを作製することもできるが、レーザ光照射後の結晶構造を有するシリコン膜のほうが結晶性が向上しているため、TFTの電気的特性が向上するので望ましい。例えば、上記レーザ光照射前の結晶構造を有するシリコン膜を用いてTFTを作製すると、移動度は300cm2/Vs程度であるが、上記レーザ光照射後の結晶構造を有するシリコン膜を用いてTFTを作製すると、移動度は500〜600cm2/Vs程度と著しく向上する。
【0126】
なお、ここではシリコンの結晶化を助長する金属元素としてニッケルを用いて結晶化させた後、さらに連続発振のYVO4レーザーの第2高調波を照射したが、特に限定されず、非晶質構造を有するシリコン膜を成膜し、脱水素化のための熱処理を行った後、上記連続発振のYVO4レーザーの第2高調波を照射して結晶構造を有するシリコン膜を得てもよい。
【0127】
また、連続発振のレーザに代えてパルス発振のレーザを用いることもでき、パルス発振のエキシマレーザを用いる場合には、周波数300Hzとし、レーザーエネルギー密度を100〜1000mJ/cm2(代表的には200〜800mJ/cm2)とするのが望ましい。このとき、レーザ光を50〜98%オーバーラップさせても良い。
【0128】
次いで、上記レーザー光の照射により形成された酸化膜に加え、オゾン水で表面を120秒処理して合計1〜5nmの酸化膜からなるバリア層を形成する。本実施例ではオゾン水を用いてバリア層を形成したが、酸素雰囲気下の紫外線の照射で結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する方法や酸素プラズマ処理により結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する方法やプラズマCVD法やスパッタ法や蒸着法などで1〜10nm程度の酸化膜を堆積してバリア層を形成してもよい。また、バリア層を形成する前にレーザー光の照射により形成された酸化膜を除去してもよい。
【0129】
次いで、上記バリア層上にプラズマCVD法またはスパッタ法でゲッタリングサイトとなるアルゴン元素を含む非晶質シリコン膜を50nm〜400nm、ここでは膜厚150nmで形成する。本実施例では、スパッタ法でシリコンターゲットを用い、アルゴン雰囲気下、圧力0.3Paで成膜する。
【0130】
その後、650℃に加熱された炉に入れて3分の熱処理を行いゲッタリングして、結晶構造を有する半導体膜中のニッケル濃度を低減する。炉に代えてランプアニール装置を用いてもよい。
【0131】
次いで、バリア層をエッチングストッパーとして、ゲッタリングサイトであるアルゴン元素を含む非晶質シリコン膜を選択的に除去した後、バリア層を希フッ酸で選択的に除去する。なお、ゲッタリングの際、ニッケルは酸素濃度の高い領域に移動しやすい傾向があるため、酸化膜からなるバリア層をゲッタリング後に除去することが望ましい。
【0132】
次いで、得られた結晶構造を有するシリコン膜(ポリシリコン膜とも呼ばれる)の表面にオゾン水で薄い酸化膜を形成した後、レジストからなるマスクを形成し、所望の形状にエッチング処理して島状に分離された半導体層を形成する。半導体層を形成した後、レジストからなるマスクを除去する。
【0133】
次いで、フッ酸を含むエッチャントで酸化膜を除去すると同時にシリコン膜の表面を洗浄した後、ゲート絶縁膜となる珪素を主成分とする絶縁膜を形成する。ここでは、プラズマCVD法により115nmの厚さで酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)で形成した。
【0134】
次いで、ゲート絶縁膜上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜と、膜厚100〜400nmの第2の導電膜とを積層形成する。本実施例では、ゲート絶縁膜上に膜厚50nmの窒化タンタル膜、膜厚370nmのタングステン膜を順次積層し、以下に示す手順でパターニングを行って各ゲート電極及び各配線を形成する。
【0135】
第1の導電膜及び第2の導電膜を形成する導電性材料としてはTa、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成する。また、第1の導電膜及び第2の導電膜としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜や、、AgPdCu合金を用いてもよい。また、2層構造に限定されず、例えば、膜厚50nmのタングステン膜、膜厚500nmのアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜、膜厚30nmの窒化チタン膜を順次積層した3層構造としてもよい。また、3層構造とする場合、第1の導電膜のタングステンに代えて窒化タングステンを用いてもよいし、第2の導電膜のアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜に代えてアルミニウムとチタンの合金膜(Al−Ti)を用いてもよいし、第3の導電膜の窒化チタン膜に代えてチタン膜を用いてもよい。また、単層構造であってもよい。
【0136】
上記第1の導電膜及び第2の導電膜のエッチング(第1のエッチング処理および第2のエッチング処理)にはICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いると良い。ICPエッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することによって所望のテーパー形状に膜をエッチングすることができる。ここでは、レジストからなるマスクを形成した後、第1のエッチング条件として1Paの圧力でコイル型の電極に700WのRF(13.56MHz)電力を投入し、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25/25/10(sccm)とし、基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。なお、基板側の電極面積サイズは、12.5cm×12.5cmであり、コイル型の電極面積サイズ(ここではコイルの設けられた石英円板)は、直径25cmの円板である。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして端部をテーパー形状とする。この後、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2を混合した第2のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチングされる。なお、ここでは、第1のエッチング条件及び第2のエッチング条件を第1のエッチング処理と呼ぶこととする。
【0137】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング処理を行う。ここでは、第3のエッチング条件としてエッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを60秒行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この後、レジストからなるマスクを除去せずに第4のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を20/20/20(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約20秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。なお、ここでは、第3のエッチング条件及び第4のエッチング条件を第2のエッチング処理と呼ぶこととする。この段階で第1の導電層を下層とし、第2の導電層を上層とするゲート電極および各電極が形成される。
【0138】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、ゲート電極をマスクとして全面にドーピングする第1のドーピング処理を行う。第1のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1.5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を60〜100keVとして行う。n型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。自己整合的に第1の不純物領域(n--領域)が形成される。
【0139】
次いで、新たにレジストからなるマスクを形成するが、この際、スイッチングTFTのオフ電流値を下げるため、マスクは、画素部のスイッチングTFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその一部を覆って形成する。また、マスクは駆動回路のpチャネル型TFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域を保護するためにも設けられる。加えて、マスクは、画素部の電流制御用TFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域を覆って形成される。
【0140】
次いで、上記レジストからなるマスクを用い、選択的に第2のドーピング処理を行って、ゲート電極の一部と重なる不純物領域(n-領域)を形成する。第2のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。ここでは、イオンドープ法を用い、フォスフィン(PH3)を水素で5%に希釈したガスを流量30sccmとし、ドーズ量を1.5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を90keVとして行う。この場合、レジストからなるマスクと第2の導電層とがn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、第2の不純物領域が形成される。第2の不純物領域には1×1016〜1×1017/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素が添加される。ここでは、第2の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をn-領域とも呼ぶ。
【0141】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第3のドーピング処理を行う。第3のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。n型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。ここでは、イオンドープ法を用い、フォスフィン(PH3)を水素で5%に希釈したガスを流量40sccmとし、ドーズ量を2×1015atoms/cm2とし、加速電圧を80keVとして行う。この場合、レジストからなるマスクと第1の導電層及び第2の導電層がn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、第3の不純物領域が形成される。第3の不純物領域には1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加される。ここでは、第3の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をn+領域とも呼ぶ。
【0142】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスクを形成して第4のドーピング処理を行う。第4のドーピング処理により、pチャネル型TFTを形成する半導体層を形成する半導体層にp型の導電型を付与する不純物元素が添加された第4の不純物領域及び第5の不純物領域を形成する。
【0143】
また、第4の不純物領域には1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲でp型を付与する不純物元素が添加されるようにする。尚、第4の不純物領域には先の工程でリン(P)が添加された領域(n--領域)であるが、p型を付与する不純物元素の濃度がその1.5〜3倍添加されていて導電型はp型となっている。ここでは、第4の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をp+領域とも呼ぶ。
【0144】
また、第5の不純物領域は第2の導電層のテーパー部と重なる領域に形成されるものであり、1×1018〜1×1020/cm3の濃度範囲でp型を付与する不純物元素が添加されるようにする。ここでは、第5の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をp-領域とも呼ぶ。
【0145】
以上までの工程でそれぞれの半導体層にn型またはp型の導電型を有する不純物領域が形成される。第1の導電層及び第2の導電層からなる電極はTFTのゲート電極となる。
【0146】
次いで、ほぼ全面を覆う絶縁膜(図示しない)を形成する。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚50nmの酸化シリコン膜を形成した。勿論、この絶縁膜は酸化シリコン膜に限定されるものでなく、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0147】
次いで、それぞれの半導体層に添加された不純物元素を活性化処理する工程を行う。この活性化工程は、ランプ光源を用いたラピッドサーマルアニール法(RTA法)、或いはレーザーを照射する方法、或いは炉を用いた熱処理、或いはこれらの方法のうち、いずれかと組み合わせた方法によって行う。
【0148】
また、本実施例では、上記活性化の前に絶縁膜を形成した例を示したが、上記活性化を行った後、絶縁膜を形成する工程としてもよい。
【0149】
次いで、窒化シリコン膜からなる第1の層間絶縁膜を形成して熱処理(300〜550℃で1〜12時間の熱処理)を行い、半導体層を水素化する工程を行う。この工程は第1の層間絶縁膜に含まれる水素により半導体層のダングリングボンドを終端する工程である。酸化シリコン膜からなる絶縁膜(図示しない)の存在に関係なく半導体層を水素化することができる。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。
【0150】
次いで、第1の層間絶縁膜上に有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜を形成する。本実施例では塗布法により膜厚1.6μmのアクリル樹脂膜を形成する。
【0151】
次いで、ゲート電極またはゲート配線となる導電層に達するコンタクトホールと、各不純物領域に達するコンタクトホールを形成する。本実施例では複数のエッチング処理を順次行う。本実施例では第1の層間絶縁膜をエッチングストッパーとして第2の層間絶縁膜をエッチングしてから第1の層間絶縁膜をエッチングする。
【0152】
その後、Al、Ti、Mo、Wなどを用いて電極、具体的にはソース配線、電源供給線、引き出し電極及び接続電極などを形成する。ここでは、これらの電極及び配線の材料は、Ti膜(膜厚100nm)とシリコンを含むAl膜(膜厚350nm)とTi膜(膜厚50nm)との積層膜を用い、パターニングを行った。こうして、ソース電極及びソース配線、接続電極、引き出し電極、電源供給線などが適宜、形成される。なお、層間絶縁膜に覆われたゲート配線とコンタクトを取るための引き出し電極は、ゲート配線の端部に設けられ、他の各配線の端部にも、外部回路や外部電源と接続するための電極が複数設けられた入出力端子部を形成する。
【0153】
以上の様にして、nチャネル型TFT、pチャネル型TFT、およびこれらを相補的に組み合わせたCMOS回路を有する駆動回路と、1つの画素内にnチャネル型TFTまたはpチャネル型TFTを複数備えた画素部を形成することができる。
【0154】
次いで、第2の層間絶縁膜上に無機絶縁物材料から成る第3の層間絶縁膜を形成する。ここでは、スパッタ法により200nmの窒化シリコン膜を成膜する。
【0155】
次いで、pチャネル型TFTからなる電流制御用TFTのドレイン領域に接して形成された接続電極に達するコンタクトホールを形成する。次いで、接続電極に接して重なるよう画素電極を形成する。本実施例では、画素電極はEL素子の陽極として機能させるため、仕事関数の大きい、具体的には白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、もしくはニッケル(Ni)といった材料を用いることができる。
【0156】
次いで、画素電極の端部を覆うように両端に無機絶縁物を形成する。画素電極の端部を覆う無機絶縁物はスパッタ法により珪素を含む絶縁膜で形成し、パターニングすれば良い。また、無機絶縁物に代えて、有機絶縁物からなるバンクを形成してもよい。
【0157】
次いで、実施の形態1に示すように無機絶縁物上に補助電極を形成する。
【0158】
次いで、両端が無機絶縁物で覆われている画素電極上にEL層およびEL素子の陰極を形成する。EL層の成膜方法としては、インクジェット法や、蒸着法や、スピンコーティング法などにより形成すればよい。
【0159】
EL層としては、発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせてEL層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。例えば、低分子系有機EL材料や高分子系有機EL材料を用いればよい。また、EL層として一重項励起により発光(蛍光)する発光材料(シングレット化合物)からなる薄膜、または三重項励起により発光(リン光)する発光材料(トリプレット化合物)からなる薄膜を用いることができる。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機EL材料や無機材料は公知の材料を用いることができる。
【0160】
また、陰極に用いる材料としては仕事関数の小さい金属(代表的には周期表の1族もしくは2族に属する金属元素)や、これらを含む合金を用いることが好ましいとされている。仕事関数が小さければ小さいほど発光効率が向上するため、中でも、陰極に用いる材料としては、MgAg、MgIn、AlLiなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜などを薄く成膜した後、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)を形成した積層構造とすることが望ましい。
【0161】
次いで、陰極を覆う保護膜を形成する。保護膜としては、スパッタ法により窒化珪素または酸化窒化珪素を主成分とする絶縁膜を形成すればよく、実施の形態2に示したように、EL層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させるため、陰極上に水素を含む膜を設けることが好ましい。
【0162】
水素を含む膜としては、PCVD法により炭素または窒化珪素を主成分とする絶縁膜を形成すればよく、成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させることもできる。また、有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む膜から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させることができる。
【0163】
また、水素を含む膜および保護膜によって外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐ。ただし、後でFPCと接続する必要のある入出力端子部には保護膜および水素を含む膜などは設けなくともよい。
【0164】
また、画素部に配置するTFTのゲート電極の先には複数のTFTなどからなる様々な回路を設けてもよく、特に限定されないことは言うまでもない。
【0165】
次いで、陰極と、有機化合物層と、陽極とを少なくとも有するEL素子を封止基板、或いは封止缶で封入することにより、EL素子を外部から完全に遮断し、外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐことが好ましい。封止基板、或いは封止缶で封入する直前には真空でアニールを行って脱気を行うことが好ましい。また、封止基板を貼りつける際には、水素および不活性気体(希ガスまたは窒素)を含む雰囲気下で行って、封止によって密閉された空間には水素を含ませることが好ましい。発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む空間から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。
【0166】
次いで、異方性導電材で入出力端子部の各電極にFPC(フレキシブルプリントサーキット)を貼りつける。異方性導電材は、樹脂と、表面にAuなどがメッキされた数十〜数百μm径の導電性粒子とから成り、導電性粒子により入出力端子部の各電極とFPCに形成された配線とが電気的に接続する。
【0167】
また、基板400には各画素に対応するカラーフィルタを設ける。カラーフィルタを設けることによって円偏光板は必要となくなる。さらに、必要があれば、他の光学フィルムを設けてもよい。また、ICチップなどを実装させてもよい。
【0168】
以上の工程でFPCが接続されたモジュール型の発光装置が完成する。
【0169】
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4、または実施の形態5と自由に組み合わせることができる。
【実施例2】
【0170】
本実施例では、図11に製造装置を示す。
【0171】
図11において、100a〜100k、100m〜100vはゲート、101、119は受渡室、102、104a、107、108、111、114は搬送室、105、106R、106B、106G、106H、109、110、112、113は成膜室、103は前処理室、117a、117bは封止基板ロード室、115はディスペンサ室、116は封止室、118aは紫外線照射室、120は基板反転室である。
【0172】
以下、予めTFTが設けられた基板を図11に示す製造装置に搬入し、図4(A)に示す積層構造を形成する手順を示す。
【0173】
まず、受渡室101にTFT及び陰極(或いは陽極)200が設けられた基板をセットする。次いで受渡室101に連結された搬送室102に搬送する。予め、搬送室内には極力水分や酸素が存在しないよう、真空排気した後、不活性ガスを導入して大気圧にしておくことが好ましい。
【0174】
また、搬送室102には、搬送室内を真空にする真空排気処理室と連結されている。真空排気処理室としては、磁気浮上型のターボ分子ポンプ、クライオポンプ、またはドライポンプが備えられている。これにより搬送室の到達真空度を10-5〜10-6Paにすることが可能であり、さらにポンプ側および排気系からの不純物の逆拡散を制御することができる。装置内部に不純物が導入されるのを防ぐため、導入するガスとしては、窒素や希ガス等の不活性ガスを用いる。装置内部に導入されるこれらのガスは、装置内に導入される前にガス精製機により高純度化されたものを用いる。従って、ガスが高純度化された後に成膜装置に導入されるようにガス精製機を備えておく必要がある。これにより、ガス中に含まれる酸素や水、その他の不純物を予め除去することができるため、装置内部にこれらの不純物が導入されるのを防ぐことができる。
【0175】
また、基板に含まれる水分やその他のガスを除去するために、脱気のためのアニールを真空中で行うことが好ましく、搬送室102に連結された前処理室103に搬送し、そこでアニールを行えばよい。さらに、陰極の表面をクリーニングする必要があれば、搬送室102に連結された前処理室103に搬送し、そこでクリーニングを行えばよい。
【0176】
また、必要があれば、陽極上に正孔注入層として作用するポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)を全面に形成してもよい。図11の製造装置には、高分子からなる有機化合物層を形成するための成膜室105が設けられている。スピンコート法やインクジェット法やスプレー法で形成する場合には、大気圧下で基板の被成膜面を上向きにしてセットする。成膜室105と搬送室102との間に設けられた基板反転室120で基板を適宜反転させる。また、水溶液を用いた成膜を行った後は、前処理室103に搬送し、そこで真空中での加熱処理を行って水分を気化させることが好ましい。
【0177】
次いで、大気にふれさせることなく、搬送室102から搬送室104に基板104cを搬送した後、搬送機構104bによって、成膜室106Rに搬送し、陰極200上に赤色発光するEL層を適宜形成する。ここでは蒸着によって形成する例を示す。成膜室106Rには、基板反転室120で基板の被成膜面を下向きにしてセットする。なお、基板を搬入する前に成膜室内は真空排気しておくことが好ましい。
【0178】
例えば、真空度が5×10-3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10-4〜10-6Paまで真空排気された成膜室106Rで蒸着を行う。蒸着の際、予め、抵抗加熱により有機化合物は気化されており、蒸着時にシャッター(図示しない)が開くことにより基板の方向へ飛散する。気化された有機化合物は、上方に飛散し、メタルマスク(図示しない)に設けられた開口部(図示しない)を通って基板に蒸着される。なお、蒸着の際、基板を加熱する手段により基板の温度(T1)は、50〜200℃、好ましくは65〜150℃とする。
【0179】
フルカラーとするために、3種類のEL層を形成する場合には、成膜室106Rで成膜した後、順次、各成膜室106G、106Bで成膜を行って形成すればよい。
【0180】
陰極(或いは陽極)200上に所望のEL層201を得たら、次いで、大気にふれさせることなく、搬送室104から搬送室107に基板を搬送した後、さらに、大気にふれさせることなく、搬送室107から搬送室108に基板を搬送する。
【0181】
次いで、搬送室108内に設置されている搬送機構によって、成膜室109に搬送し、EL層201上に透明導電膜(ITOなど)からなる陽極202を適宜形成する。陰極を形成する場合は、成膜室110で陰極となる薄い金属層を形成した後、成膜室109に搬送して透明導電膜を形成し、薄い金属層(陰極)と透明導電膜との積層を適宜形成する。ここでは、成膜室110は、陰極となるMgやAgやAlを蒸着源に備えた蒸着装置とし、成膜室109は、陽極となる透明導電材料からなるターゲットを少なくとも有しているスパッタ装置とする。
【0182】
次いで、搬送室108内に設置されている搬送機構によって、成膜室112に搬送し、有機化合物層が耐えうる温度範囲で水素を含む膜203を形成する。ここでは成膜室112にプラズマCVD装置を備え、成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH4、C2H2、C6H6など)とを用いて水素を含むDLC膜を形成する。なお、水素ラジカルが発生する手段を備えていれば特に限定されず、上記水素を含むDLC膜の成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させる。
【0183】
次いで、大気に触れることなく、搬送室108から成膜室113に搬送して水素を含む膜203上に保護膜204を形成する。ここでは、成膜室113内に、珪素からなるターゲットまたは窒化珪素からなるターゲットを備えたスパッタ装置とする。成膜室雰囲気を窒素雰囲気または窒素とアルゴンを含む雰囲気とすることによって窒化珪素膜を形成することができる。
【0184】
以上の工程で図4(A)に示す積層構造、即ち、基板上に保護膜および水素を含む膜で覆われた発光素子が形成される。
【0185】
次いで、発光素子が形成された基板を大気に触れることなく、搬送室108から搬送室111に搬送し、さらに搬送室111から搬送室114に搬送する。
【0186】
次いで、発光素子が形成された基板を搬送室114から封止室116に搬送する。なお、封止室116には、シール材が設けられた封止基板を用意しておくことが好ましい。
【0187】
封止基板は、封止基板ロード室117a、117bに外部からセットされる。なお、水分などの不純物を除去するために予め真空中でアニール、例えば、封止基板ロード室117a、117b内でアニールを行うことが好ましい。そして、封止基板にシール材を形成する場合には、搬送室108を大気圧とした後、封止基板を封止基板ロード室からディスペンサ室115に搬送して、発光素子が設けられた基板と貼り合わせるためのシール材を形成し、シール材を形成した封止基板を封止室116に搬送する。
【0188】
次いで、発光素子が設けられた基板を脱気するため、真空または不活性雰囲気中でアニールを行った後、シール材が設けられた封止基板と、発光素子が形成された基板とを貼り合わせる。また、密閉された空間には水素または不活性気体を充填させる。なお、ここでは、封止基板にシール材を形成した例を示したが、特に限定されず、発光素子が形成された基板にシール材を形成してもよい。
【0189】
次いで、貼り合わせた一対の基板を搬送室114から紫外線照射室118に搬送する。次いで、紫外線照射室118でUV光を照射してシール材を硬化させる。なお、ここではシール材として紫外線硬化樹脂を用いたが、接着材であれば、特に限定されない。
【0190】
次いで、搬送室114から受渡室119に搬送して取り出す。
【0191】
以上のように、図11に示した製造装置を用いることで完全に発光素子を密閉空間に封入するまで外気に晒さずに済むため、信頼性の高い発光装置を作製することが可能となる。なお、搬送室102、114においては、真空と大気圧とを繰り返すが、搬送室104a、108は常時、真空が保たれる。
【0192】
なお、インライン方式の成膜装置とすることも可能である。
【0193】
また、図11と一部異なる製造装置を図12に示す。
【0194】
図11では、スピンコート法やインクジェット法やスプレー法で形成する成膜室が一つしか設けられていない例であったが、図12の製造装置は、スピンコート法やインクジェット法やスプレー法で形成する成膜室が3つ備えた例である。例えば、フルカラーとするために、3種類のEL層をスピンコート法やインクジェット法やスプレー法で形成する場合には、成膜室121aで成膜した後、順次、各成膜室121b、121cで成膜を行って形成すればよい。
【0195】
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4、または実施の形態5、または実施例1と自由に組み合わせることができる。
【実施例3】
【0196】
本発明を実施してELモジュール(アクティブマトリクス型ELモジュール、パッシブ型ELモジュール)を完成することができる。即ち、本発明を実施することによって、それらを組み込んだ全ての電子機器が完成される。
【0197】
その様な電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル型ディスプレイ)、カーナビゲーション、カーステレオ、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書籍等)などが挙げられる。それらの一例を図13、図14に示す。
【0198】
図13(A)はパーソナルコンピュータであり、本体2001、画像入力部2002、表示部2003、キーボード2004等を含む。
【0199】
図13(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。
【0200】
図13(C)はモバイルコンピュータ(モービルコンピュータ)であり、本体2201、カメラ部2202、受像部2203、操作スイッチ2204、表示部2205等を含む。
【0201】
図13(D)はゴーグル型ディスプレイであり、本体2301、表示部2302、アーム部2303等を含む。
【0202】
図13(E)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレーヤーであり、本体2401、表示部2402、スピーカ部2403、記録媒体2404、操作スイッチ2405等を含む。なお、このプレーヤーは記録媒体としてDVD(Digtial Versatile Disc)、CD等を用い、音楽鑑賞や映画鑑賞やゲームやインターネットを行うことができる。
【0203】
図13(F)はデジタルカメラであり、本体2501、表示部2502、接眼部2503、操作スイッチ2504、受像部(図示しない)等を含む。
【0204】
図14(A)は携帯電話であり、本体2901、音声出力部2902、音声入力部2903、表示部2904、操作スイッチ2905、アンテナ2906、画像入力部(CCD、イメージセンサ等)2907等を含む。
【0205】
図14(B)は携帯書籍(電子書籍)であり、本体3001、表示部3002、3003、記憶媒体3004、操作スイッチ3005、アンテナ3006等を含む。
【0206】
図14(C)はディスプレイであり、本体3101、支持台3102、表示部3103等を含む。
【0207】
ちなみに図14(C)に示すディスプレイは中小型または大型のもの、例えば5〜20インチの画面サイズのものである。また、このようなサイズの表示部を形成するためには、基板の一辺が1mのものを用い、多面取りを行って量産することが好ましい。
【0208】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器の作製方法に適用することが可能である。また、本実施例の電子機器は、実施の形態1乃至5、実施例1、または実施例2のどのような組み合わせからなる構成を用いても実現することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に、絶縁表面を有する基板上に形成された発光素子を有する発光装置およびその作製方法に関する。また、該発光素子を有するパネルにコントローラを含むIC等を実装したモジュールに関する。なお本明細書において、発光素子を有するパネル及び発光素子を有するモジュールを共に発光装置と総称する。本発明はさらに、該発光装置を製造する装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、発光装置、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、基板上にTFT(薄膜トランジスタ)を形成する技術が大幅に進歩し、アクティブマトリクス型表示装置への応用開発が進められている。特に、ポリシリコン膜を用いたTFTは、従来のアモルファスシリコン膜を用いたTFTよりも電界効果移動度(モビリティともいう)が高いので、高速動作が可能である。
そのため、ポリシリコン膜を用いたTFTからなる駆動回路を画素と同一の基板上に設け、各画素の制御を行うための開発が盛んに行われている。同一基板上に画素と駆動回路とを組み込んだアクティブマトリクス型表示装置は、製造コストの低減、表示装置の小型化、歩留まりの上昇、スループットの低減など、様々な利点が得られると予想される。
【0004】
また、自発光型素子としてEL素子を有したアクティブマトリクス型発光装置(以下、単に発光装置とも呼ぶ)の研究が活発化している。発光装置は有機発光装置(OELD:Organic EL Display)又は有機ライトエミッティングダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)とも呼ばれている。
【0005】
アクティブマトリクス型発光装置は、各画素のそれぞれにTFTでなるスイッチング素子(以下、スイッチング素子という)を設け、そのスイッチング用TFTによって電流制御を行う駆動素子(以下、電流制御用TFTという)を動作させてEL層(厳密には発光層)を発光させる。例えば特許文献1に記載された発光装置が公知である。
【0006】
EL素子は自ら発光するため視認性が高く、液晶表示装置(LCD)で必要なバックライトが要らず薄型化に最適であると共に、視野角にも制限が無い。そのため、EL素子を用いた発光装置は、CRTやLCDに代わる表示装置として注目されている。
【0007】
なお、EL素子は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence)が得られる有機化合物を含む層(以下、EL層と記す)と、陽極と、陰極とを有する。有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とがあるが、本発明の製造装置および成膜方法により作製される発光装置は、どちらの発光を用いた場合にも適用可能である。
【0008】
EL素子は一対の電極間にEL層が挟まれた構造となっているが、EL層は通常、積層構造となっている。代表的には、「正孔輸送層/発光層/電子輸送層」という積層構造が挙げられる。この構造は非常に発光効率が高く、現在、研究開発が進められている発光装置は殆どこの構造を採用している。
【0009】
また、他にも陽極上に正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、または正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に積層する構造も良い。発光層に対して蛍光性色素等をドーピングしても良い。また、これらの層は、全て低分子系の材料を用いて形成しても良いし、全て高分子系の材料を用いて形成しても良い。
【0010】
また、これまでアクティブマトリクス型の発光装置において、基板上のTFTと電気的に接続された電極が陽極として形成され、陽極上に有機化合物層が形成され、有機化合物層上に陰極が形成される発光素子を有し、有機化合物層において生じた光を透明電極である陽極からTFTの方へ取り出すという構造であった。
【0011】
しかし、この構造においては、解像度を向上させようとすると画素部におけるTFT及び配線等の配置により開口率が制限されるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−189252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明では、基板上のTFTと電気的に接続されたTFT側の電極を陰極として形成し、陰極上に有機化合物層を形成し、有機化合物層上に透明電極である陽極を形成するという構造(以下、上面出射構造とよぶ)の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を作製する。或いは、基板上のTFTと電気的に接続されたTFT側の電極を陽極として形成し、陽極上に有機化合物層を形成し、有機化合物層上に半透明電極である陰極を形成するという構造(この構造も、上面出射構造とよぶ)の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を作製する。
【0014】
これらの上記各構造において、透明電極の膜抵抗が高くなるという問題が生じる。特に、透明電極の膜厚を薄くした場合、さらに膜抵抗が高くなってしまう。陽極または陰極となる透明電極の膜抵抗が高くなると電圧降下により面内電位分布が不均一になり、発光素子の輝度にバラツキを生じるといった不具合が生じる。そこで、本発明は、発光素子における透明電極の膜抵抗を低下させる構造の発光装置およびその作製方法を提供することを課題とする。そして、そのような発光装置を表示部として用いる電気器具を提供することを課題とする。
【0015】
加えて、発光素子および発光装置の信頼性を高めることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、基板上に形成された発光素子の作製において、有機化合物層の形成前に導電性の膜を各画素電極間に配置する絶縁物上に形成し、透明電極の膜抵抗の低抵抗化を図るというものである。
【0017】
さらに上記導電性の膜を用いて引き出し配線を形成し、下層に存在する他の配線と接続を行うことも本発明の特徴としている。
【0018】
本明細書で開示する発明の構成は、 第1の電極と、該第1の電極上に接する有機化合物層と、該有機化合物層上に接する第2の電極とを有する発光素子を複数有する画素部と、駆動回路と、端子部とを有する発光装置であって、 前記画素部には、薄膜トランジスタに接続する前記第1の電極の端部が絶縁物で覆われており、且つ、該絶縁物上に導電性を有する材料からなる第3の電極と、前記絶縁物及び前記第1の電極上に有機化合物層と、前記有機化合物層及び前記第3の電極に接する第2の電極とが設けられており、前記端子部と画素部との間には、第3の電極と同一材料からなる配線または第2の電極と同一材料からなる配線が端子から延びている配線と接続する箇所を有することを特徴とする発光装置である。
【0019】
また、上記構成において、前記第3の電極は、前記絶縁物と同一のパターン形状を有していてもよい。その場合、前記絶縁物と同一のマスクを用いて形成される。
【0020】
或いは、上記構成において、前記第3の電極は、前記絶縁物と異なるパターン形状を有していてもよい。その場合、前記絶縁物をパターニングした後、導電性を有する材料からなる膜を形成して前記絶縁物のパターニングとは異なるマスクを用いて形成される。
【0021】
また、本発明の他の構成は、基板上に形成された発光素子の作製において、有機化合物層の形成前に導電性の膜を各画素電極間に配置する絶縁物上に形成し、有機化合物層と、透明電極を形成した後、該透明電極上に導電性の高い材料からなる電極を形成し、透明電極の膜抵抗の低抵抗化を図るというものである。なお、透明電極上に形成する電極は、発光領域となる場所には設けない。さらに上記導電性の膜を用いて引き出し配線を形成し、下層に存在する他の配線と接続を行うことも本発明の特徴としている。
【0022】
本明細書で開示する発明の他の構成は、 第1の電極と、該第1の電極上に接する有機化合物層と、該有機化合物層上に接する第2の電極とを有する発光素子を複数有する画素部と、駆動回路と、端子部とを有する発光装置であって、 前記画素部には、薄膜トランジスタに接続する前記第1の電極の端部が絶縁物で覆われており、且つ、該絶縁物の一部および第1の電極上に有機化合物層と、該有機化合物層上に接する第2の電極と、該第2の電極において前記第1の電極と重ならない領域上に接して導電性を有する材料からなる第3の電極とが設けられており、前記端子部と画素部との間には、第3の電極と同一材料からなる配線または第2の電極と同一材料からなる配線が端子から延びている配線と接続する箇所を有することを特徴とする発光装置である。
【0023】
また、上記各構成において、前記第2の電極は、前記発光素子の陰極、或いは陽極であることを特徴としている。
【0024】
また、上記各構成において、前記第3の電極は、前記第2の電極を構成する材料よりも電気抵抗が小さい材料からなっており、導電型を付与する不純物元素がドープされたpoly−Si、W、WSiX、Al、Ti、Mo、Cu、Ta、Cr、またはMoから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を主成分とする膜またはそれらの積層膜からなることを特徴としている。例えば、前記第3の電極は、窒化物層またはフッ化物層を最上層とする積層からなる電極とすることが好ましい。
【0025】
また、上記各構成において、前記第1の電極は、前記発光素子の陰極、或いは陽極であることを特徴としている。例えば、第2の電極が陰極である場合、第1の電極は陽極であり、第2の電極が陽極である場合、第1の電極は陰極である。
【0026】
また、上記各構成において、前記絶縁物は、無機絶縁膜で覆われた有機樹脂からなる障壁(バンクとも呼ばれる)、或いは、前記絶縁物は、無機絶縁膜であることを特徴としている。なお、前記無機絶縁膜は膜厚10〜100nmの窒化珪素を主成分とする絶縁膜であることを特徴としている。
【0027】
また、発光装置において、発光していない画素では入射した外光(発光装置の外部の光)が陰極の裏面(発光層に接する側の面)で反射され、陰極の裏面が鏡のように作用して外部の景色が観測面(観測者側に向かう面)に映るといった問題があった。また、この問題を回避するために、発光装置の観測面に円偏光フィルムを貼り付け、観測面に外部の景色が映らないようにする工夫がなされているが、円偏光フィルムが非常に高価であるため、製造コストの増加を招くという問題があった。
【0028】
本発明は、円偏光フィルムを用いずに発光装置の鏡面化を防ぐことを目的とし、それにより発光装置の製造コストを低減して安価な発光装置を提供することも課題としている。そこで、本発明では、円偏光フィルムに代えて安価なカラーフィルタを用いることを特徴としている。上記構成において、色純度を向上させるため、前記発光装置には各画素に対応するカラーフィルタを備えることが好ましい。また、カラーフィルタの黒色の部分(黒色の有機樹脂)が各発光領域の間と重なるようにすればよい。さらに、カラーフィルタの黒色の部分(黒の着色層)が、異なる有機化合物層が一部重なる部分と重なるようにしてもよい。
【0029】
ただし、発光の出射方向、即ち、前記発光素子と観察者の間にカラーフィルタを設ける。例えば、発光素子が設けられている基板を通過させない場合においては、封止基板にカラーフィルタを貼り付ければよい。或いは、発光素子が設けられている基板を通過させる場合においては、発光素子が設けられている基板にカラーフィルタを貼り付ければよい。こうすることによって、円偏光フィルムを必要としなくなる。
【0030】
加えて、有機化合物を含む層上の陽極として、透明導電膜(代表的にはITO、ZnO)を用い、その上に無機絶縁膜からなる保護膜を形成することは極めて有用である。また、有機化合物を含む層上の陰極として、Al、Ag、Mg、またはこれらの合金(代表的にはAlLi)からなる金属薄膜(光が通過する膜厚)を用い、その上に無機絶縁膜からなる保護膜を形成することも有効である。
【0031】
さらに、無機絶縁膜からなる保護膜を形成する前に、プラズマCVD法またはスパッタ法で水素を含む膜、代表的には炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜を形成することが好ましい。また、水素を含む膜は、炭素を主成分とする薄膜と窒化珪素膜との積層膜としてもよい。
【0032】
また、本発明の他の構成は、絶縁表面を有する基板上に発光素子を有し、該発光素子は、陽極、陰極、並びに前記陽極と前記陰極との間に挟まれた有機化合物層とを有し、前記発光素子は、水素を含む膜で覆われていることを特徴とする発光装置である。
【0033】
有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む膜から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。また、上記水素を含む膜の成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させることもできる。また、水素を含む膜を覆って形成する保護膜は、保護膜側に拡散する水素をブロックして効率よく、水素を有機化合物層に拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させる役目も果たす。なお、上記水素を含む膜は、発光素子の保護膜としても機能させることができる。
【0034】
さらに、上記水素を含む膜をバッファ層として機能させることもでき、スパッタ法によって透明導電膜に接して窒化珪素膜を形成する場合、透明導電膜に含まれる不純物(In、Sn、Zn等)が窒化珪素膜に混入する恐れがあるが、バッファ層となる上記水素を含む膜を間に形成することによって窒化珪素膜への不純物混入を防止することもできる。上記構成によりバッファ層を形成することで、透明導電膜からの不純物(In、Snなど)の混入を防止し、不純物のない優れた保護膜を形成することができる。
【0035】
また、本発明の他の構成は、絶縁表面を有する基板上に発光素子を有し、該発光素子は、陽極、陰極、並びに前記陽極と前記陰極との間に挟まれた有機化合物層とを有し、前記発光素子は、水素を含む膜で覆われ、さらに該水素を含む膜は無機絶縁膜からなる保護膜で覆われていることを特徴とする発光装置である。
【0036】
また、上記構成を実現する作製方法も本発明の一つであり、本発明の作製方法に関する構成は、絶縁表面上にTFTを形成し、前記TFTと電気的に接続された陰極を形成し、前記陰極上に有機化合物層を形成し、前記前記有機化合物層上に陽極を形成した後、前記陽極上に水素を含む膜を形成することを特徴とする発光装置の作製方法である。
【0037】
また、本発明の作製方法に関する他の構成は、絶縁表面上にTFTを形成し、前記TFTと電気的に接続された陽極を形成し、前記陽極上に有機化合物層を形成し、前記前記有機化合物層上に陰極を形成した後、前記陰極上に水素を含む膜を形成することを特徴とする発光装置の作製方法である。
【0038】
また、本発明の作製方法に関する上記各構成において、前記水素を含む膜は、前記有機化合物層の耐えうる温度範囲、例えば室温〜100℃以下でプラズマCVD法、またはスパッタ法により形成することを特徴とし、前記水素を含む膜は、炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜であることを特徴としている。
【0039】
また、本発明の作製方法に関する上記各構成において、前記有機化合物層を形成する工程は蒸着法、塗布法、イオンプレーティング法もしくはインクジェット法により行われることを特徴としている。
【0040】
また、本発明の作製方法に関する上記各構成において、前記水素を含む膜上に無機絶縁膜からなる保護膜を形成することを特徴としている。
【0041】
また、本発明の作製方法に関する上記各構成において、前記水素を含む膜を形成する際、前記有機化合物層における欠陥を水素で終端させることを特徴としている。
【0042】
また、水分や酸素による劣化を防ぐため、封止缶や封止基板で発光素子を封止する際、密閉される空間に水素ガスを充填、或いは水素及び不活性気体(希ガスまたは窒素)を充填させてもよい。
【0043】
本発明の他の構成は、絶縁表面を有する基板上に発光素子を有し、該発光素子は、陽極、陰極、並びに前記陽極と前記陰極との間に挟まれた有機化合物層とを有し、前記発光素子は、透光性を有する基板とシール材とで密閉され、且つ、密閉された空間には、水素が含まれていることを特徴とする発光装置である。
【0044】
上記構成において、前記発光素子は、水素を含む膜(炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜)で覆われていることを特徴としている。
【0045】
また、上記構成により、有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む空間から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。
【0046】
なお、本明細書において、陰極と陽極との間に設けられる全ての層を総称してEL層という。したがって、上述した正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、全てEL層に含まれる。
【0047】
本発明において、前記炭素を主成分とする薄膜は膜厚3〜50nmのDLC膜(Diamond like Carbon)であることを特徴としている。DLC膜は短距離秩序的には炭素間の結合として、SP3結合をもっているが、マクロ的にはアモルファス状の構造となっている。DLC膜の組成は炭素が70〜95原子%、水素が5〜30原子%であり、非常に硬く絶縁性に優れている。また、このようなDLC膜は、水蒸気や酸素などのガス透過率が低いという特徴がある。また、微少硬度計による測定で、15〜25GPaの硬度を有することが知られている。
【0048】
DLC膜はプラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法など)、スパッタ法などで形成することができる。いずれの成膜方法を用いても、密着性良くDLC膜を形成することができる。DLC膜は基板をカソードに設置して成膜する。または、負のバイアスを印加して、イオン衝撃をある程度利用して緻密で硬質な膜を形成できる。
【0049】
成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH4、C2H2、C6H6など)とを用い、グロー放電によりイオン化し、負の自己バイアスがかかったカソードにイオンを加速衝突させて成膜する。こうすることにより、緻密で平滑なDLC膜を得ることができる。
【0050】
また、このDLC膜は、可視光に対して透明もしくは半透明な絶縁膜からなることを特徴としている。
【0051】
また、本明細書において、可視光に対して透明とは可視光の透過率が80〜100%であることを指し、可視光に対して半透明とは可視光の透過率が50〜80%であることを指す。
【発明の効果】
【0052】
本発明により、有機化合物層における欠陥を水素で終端させることができるため、発光装置としての信頼性が向上する。
【0053】
また、本発明により、非常に高価な円偏光フィルムを不必要とすることができるため、製造コストの削減をすることができる。
【0054】
また、本発明により、赤、緑、青の発光色を用いるフルカラーのフラットパネルディスプレイとして、高精細化や高開口率化や高信頼性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】断面図を示す図である。(実施の形態1)
【図2】上面図を示す図である。(実施の形態1)
【図3】端子部を示す図である。(実施の形態1)
【図4】本発明の積層構造を示す図である。(実施の形態2)
【図5】上面図を示す図である。(実施の形態3)
【図6】断面図を示す図である。(実施の形態3)
【図7】上面図を示す図である。(実施の形態3)
【図8】マスクを示す図である。(実施の形態3)
【図9】断面図を示す図である。(実施の形態4)
【図10】断面図を示す図である。(実施の形態5)
【図11】製造装置の一例を示す図。(実施例2)
【図12】製造装置の一例を示す図。(実施例2)
【図13】電子機器の一例を示す図。
【図14】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0057】
(実施の形態1)
図2は、ELモジュールの上面図である。無数のTFTが設けられた基板(TFT基板とも呼ぶ)には、表示が行われる画素部40と、画素部の各画素を駆動させる駆動回路41a、41bと、EL層上に設けられる電極と引き出し配線とを接続する接続部と、外部回路と接続するためにFPCを貼り付ける端子部42とが設けられている。また、EL素子を封止するための基板と、シール材33とによって密閉する。また、図1(A)は、図2中における鎖線A−A’で切断した場合の断面図である。
【0058】
鎖線A−A’の方向には規則的に画素が配置されており、ここではX方向にR、G、Bの順で配置されている例を示す。
【0059】
図1(A)中、発光領域(R)は赤色の発光領域を示しており、発光領域(G)は緑色の発光領域を示しており、発光領域(B)は青色の発光領域を示しており、これらの3色の発光領域によりフルカラー化された発光表示装置を実現している。
【0060】
また、図1(A)中、TFT1は、赤色を発光するEL層17に流れる電流を制御する素子であり、4、7はソース電極またはドレイン電極である。また、TFT2は、緑色を発光するEL層18に流れる電流を制御する素子であり、5、8はソース電極またはドレイン電極である。TFT3は、青色を発光するEL層19に流れる電流を制御する素子であり、6、9はソース電極またはドレイン電極である。15、16は有機絶縁材料または無機絶縁膜材料からなる層間絶縁膜である。
【0061】
また、11〜13は、EL素子の陽極(或いは陰極)であり、20は、EL素子の陰極(或いは陽極)である。ここでは、20として薄い金属層(代表的にはMgAg、MgIn、AlLiなどの合金)と透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層膜からなる陰極とし、各発光素子からの光を通過させている。ただし、上記透明導電膜は陰極としては機能せず、電気抵抗を下げる為に設けている。また、陽極としては、仕事関数の大きい、具体的には白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、もしくはニッケル(Ni)といった材料、または透明導電膜(ITO、ZnOなど)、またはこれらの積層を用いればよい。
【0062】
また、11〜13の両端部およびそれらの間は有機絶縁物24(障壁またはバンクとも呼ばれる)で覆われている。さらに、有機絶縁物24は無機絶縁膜14で覆われている。また、有機絶縁物24上の一部にまで有機化合物層が形成されている。
【0063】
また、無機絶縁膜14で覆われた有機絶縁物24(障壁またはバンクとも呼ばれる)上には、補助電極21を有している。この補助電極21は、陰極(或いは陽極)の電気抵抗値を下げる機能を有する。上記に示した透明導電膜の抵抗値は、比較的に高いため、大画面化することが困難であるが、補助電極21を設けることによって、陰極(或いは陽極)の電極全体として低抵抗化することができる。加えて、透明導電膜の薄膜化も可能とすることができる。
【0064】
さらに、この補助電極21で下層の配線または電極と接続させる。この補助電極21はEL層を形成する前に成膜及びパターニングを行えばよい。補助電極21は、スパッタ法や蒸着法などを用い、導電型を付与する不純物元素がドープされたpoly−Si、W、WSiX、Al、Ti、Mo、Cu、Ta、Cr、またはMoから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を主成分とする膜またはそれらの積層膜で形成すればよい。こうして、下層の電極とコンタクトさせた補助電極21上に接して透明導電膜を形成すれば陰極の引き出しが可能となる。なお、図1(C)は、図2中に示した鎖線C−C’で切断した場合の断面図である。また、図1(C)中、点線で示した電極同士は電気的に接続していることを示している。また、端子部において、端子の電極を陰極10と同じ材料で形成している。
【0065】
また、約10μmの間隔が保たれるようにシール材33によって封止基板30が貼りつけられており、全ての発光素子は密閉されている。なお、シール材33は、駆動回路の一部と重なるようにして狭額縁化させることが好ましい。シール材33によって封止基板30を貼りつける直前には真空でアニールを行って脱気を行うことが好ましい。また、封止基板30を貼りつける際には、水素および不活性気体(希ガスまたは窒素)を含む雰囲気下で行って、保護膜32と、シール材33と、封止基板30によって密閉された空間には水素を含ませることが好ましい。発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む空間から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。
【0066】
さらに、色純度を高めるため、封止基板30には各画素に対応するカラーフィルタが設けられている。カラーフィルタのうち、赤色の着色層31bは赤色の発光領域(R)に対向して設けられ、緑色の着色層31cは緑色の発光領域(G)に対向して設けられ、青色の着色層31dは青色の発光領域(B)に対向して設けられる。また、発光領域以外の領域は、カラーフィルタの黒色部分、即ち遮光部31aによって遮光されている。なお、遮光部31aは、金属膜(クロム等)または黒色顔料を含有した有機膜で構成されている。
【0067】
本発明においては、カラーフィルタを設けることによって円偏光板を不必要としている。
【0068】
また、図1(B)は、図2中に示した鎖線B−B’で切断した場合の断面図である。図1(B)においても11a〜11cの両端部およびそれらの間は無機絶縁膜14で覆われている。ここでは赤色を発光するEL層17が共通となっている例を示したが、特に限定されず、同じ色を発光する画素毎にEL層を形成してもよい。
【0069】
また、図1において、発光装置の信頼性を高めるために保護膜32を形成している。この保護膜32はスパッタ法により得られる窒化珪素または窒化酸化珪素を主成分とする絶縁膜である。また、図1においては、保護膜に発光を通過させるため、保護膜の膜厚は、可能な限り薄くすることが好ましい。
【0070】
さらに、発光装置の信頼性を高めるために保護膜32を形成する前に水素を含む膜を形成する。保護膜32を形成する前に水素を含む膜を形成することによって、有機化合物層17〜19の欠陥を終端させる。前記水素を含む膜は、炭素を主成分とする薄膜、または窒化珪素膜とすればよい。この水素を含む膜を形成する方法としては、前記有機化合物層の耐えうる温度範囲、例えば室温〜100℃以下でプラズマCVD法、またはスパッタ法により形成する。なお、図1では、水素を含む膜は、保護膜の一部と見なしているため、図示していない。また、上記水素を含む膜は、保護膜32の膜応力を緩和させるバッファ層とすることもできる。
【0071】
また、本発明は、図1(C)に示した構成に限定されないことは言うまでもない。図1(C)と構成が一部異なる例を図3(A)〜(D)に示す。なお、簡略化のため、図3(A)〜(D)において、図1と同一である部分は、同一の符号を用いる。
【0072】
図1(C)では、端子部に陰極と同一材料(透明電極)からなる電極が設けられた例であったが、図3(A)は、TFTのゲート電極と同一材料からなる電極(上層がW膜、下層がTaN膜)でFPCと接続する例である。
【0073】
また、図3(B)は、画素電極(陽極)と同一材料からなる電極10でFPCと接続する例である。なお、この電極10は、TFTのゲート電極と同一材料からなる電極(上層がW膜、下層がTaN膜)上に接して設けられている。
【0074】
また、図3(C)は、TFTの引き出し配線(TiN膜、Al膜、TiN膜の順で積層された配線)上に設けられた画素電極(陽極)と同一材料からなる電極10上に形成された陰極20と同一材料(透明電極)からなる電極でFPCと接続する例である。
【0075】
また、図3(D)は、TFTの引き出し配線(TiN膜、Al膜、TiN膜の順で積層された配線)上に形成された陰極20と同一材料(透明電極)からなる電極でFPCと接続する例である。
【0076】
(実施の形態2)
ここでは、水素を含む膜および保護膜について、図4を用いて説明する。
【0077】
図4(A)は、EL素子の積層構造の一例を示した模式図である。図4(A)中、200は陰極(或いは陽極)、201はEL層、202は陽極(或いは陰極)、203は水素を含むDLC膜、204は保護膜である。また、陽極202に発光を通過させる場合、陽極202として、透光性を有する導電膜(ITOやZnOなど)を用いることが好ましい。また、陰極200としては金属膜(MgAg、MgIn、AlLiなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜)、あるいはそれらの積層を用いることが好ましい。
【0078】
保護膜204は、スパッタ法(DC方式やRF方式)により得られる窒化珪素または窒化酸化珪素を主成分とする絶縁膜を用いればよい。シリコンターゲットを用い、窒素とアルゴンを含む雰囲気で形成すれば、窒化珪素膜が得られる。また、窒化シリコンターゲットを用いてもよい。また、保護膜204は、リモートプラズマを用いた成膜装置を用いて形成してもよい。また、保護膜に発光を通過させる場合、保護膜の膜厚は、可能な限り薄くすることが好ましい。
【0079】
また、水素を含むDLC膜203は、炭素が70〜95原子%、水素が5〜30原子%であり、非常に硬く絶縁性に優れている。水素を含むDLC膜はプラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法など)、スパッタ法などで形成することができる。
【0080】
この水素を含むDLC膜203を形成する方法としては、前記有機化合物層の耐えうる温度範囲、例えば室温〜100℃以下で形成する。
【0081】
プラズマを発生させる場合の成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH4、C2H2、C6H6など)とを用いればよい。
【0082】
有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含むDLC膜から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。また、上記水素を含むDLC膜の成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させることもできる。また、水素を含むDLC膜を覆って形成する保護膜は、保護膜側に拡散する水素をブロックして効率よく、水素を有機化合物層に拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させる役目も果たす。なお、上記水素を含むDLC膜は、発光素子の保護膜としても機能させることができる。
【0083】
さらに、上記水素を含むDLC膜をバッファ層として機能させることもでき、スパッタ法により透明導電膜からなる膜に接して窒化珪素膜を形成する場合、透明導電膜に含まれる不純物(In、Sn、Zn等)が窒化珪素膜に混入する恐れがあるが、バッファ層となる上記水素を含むDLC膜を間に形成することによって窒化珪素膜への不純物混入を防止することもできる。上記構成によりバッファ層を形成することで、透明導電膜からの不純物(In、Snなど)の混入を防止し、不純物のない優れた保護膜を形成することができる。
【0084】
このような構成とすることで、発光素子を保護するとともに、信頼性を向上させることができる。
【0085】
また、図4(B)は、EL素子の積層構造の他の一例を示した模式図である。図4(B)中、300は陰極(或いは陽極)、301はEL層、302は陽極(或いは陰極)、303は水素を含む窒化珪素膜、304は保護膜である。また、陽極302に発光を通過させる場合、302として、透光性を有する導電性材料または非常に薄い金属膜(MgAg)、あるいはそれらの積層を用いることが好ましい。また、陽極302に発光を通過させる場合、陽極302として、透光性を有する導電膜(ITOやZnOなど)を用いることが好ましい。また、陰極300としては金属膜(MgAg、MgIn、AlLiなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜)、あるいはそれらの積層を用いることが好ましい。
【0086】
保護膜304は、スパッタ法(DC方式やRF方式)により得られる窒化珪素または窒化酸化珪素を主成分とする絶縁膜を用いればよい。シリコンターゲットを用い、窒素とアルゴンを含む雰囲気で形成すれば、窒化珪素膜が得られる。また、窒化シリコンターゲットを用いてもよい。また、保護膜304は、リモートプラズマを用いた成膜装置を用いて形成してもよい。また、保護膜に発光を通過させる場合、保護膜の膜厚は、可能な限り薄くすることが好ましい。
【0087】
また、水素を含む窒化珪素膜303は、プラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法など)、RFスパッタ法、DCスパッタ法などで形成することができる。
【0088】
この水素を含む窒化珪素膜303を形成する方法としては、前記有機化合物層の耐えうる温度範囲、例えば室温〜100℃以下で形成する。
【0089】
水素を含む窒化珪素膜303を形成する方法として、プラズマCVD法を用いる場合、反応ガスは、窒素を含むガス(N2、NH3NOxで表記される窒素酸化物系ガスなど)と、珪化水素系のガス(例えばシラン(SiH4)やジシランやトリシランなど)とを用いればよい。
【0090】
水素を含む窒化珪素膜303を形成する方法として、スパッタ法を用いる場合、シリコンターゲットを用い、水素と窒素とアルゴンとを含む雰囲気で形成すれば、水素を含む窒化珪素膜が得られる。また、窒化シリコンターゲットを用いてもよい。
【0091】
有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む窒化珪素膜から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。また、上記水素を含む窒化珪素膜の成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させることもできる。また、水素を含む窒化珪素膜を覆って形成する保護膜は、保護膜側に拡散する水素をブロックして効率よく、水素を有機化合物層に拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させる役目も果たす。なお、上記水素を含む窒化珪素膜は、発光素子の保護膜としても機能させることができる。
【0092】
さらに、上記水素を含む窒化珪素膜をバッファ層として機能させることもでき、スパッタ法により透明導電膜からなる膜に接して窒化珪素膜を形成する場合、透明導電膜に含まれる不純物(In、Sn、Zn等)が窒化珪素膜に混入する恐れがあるが、バッファ層となる上記水素を含む窒化珪素膜を間に形成することによって窒化珪素膜への不純物混入を防止することもできる。上記構成によりバッファ層を形成することで、透明導電膜からの不純物(In、Snなど)の混入を防止し、不純物のない優れた保護膜を形成することができる。
【0093】
このような構成とすることで、発光素子を保護するとともに、信頼性を向上させることができる。
【0094】
また、図4(A)及び図4(B)では水素を含む膜として単層とした例を示したが、水素を含む窒化珪素膜と水素を含むDLC膜との積層、もしくはこれらの3層以上の積層としてもよい。
【0095】
また、本実施の形態は、アクティブマトリクス型表示装置だけでなく、パッシブ型表示装置に適用することもできる。
【0096】
また、本実施の形態は、実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0097】
(実施の形態3)
ここでは、図1と構成が一部異なる例を図6に示す。ここでは、画素部に規則的に配置される多数の画素のうち、3×3の画素を例に本発明を以下に説明する。なお、断面構造において、TFTは図1とほぼ同一であり、簡略化のため、図6において、図1と同一である部分は、同一の符号を用いる。
【0098】
図6(A)は、図5(A)中鎖線A−A’で切断した場合の断面図である。発光領域50Rは赤色の発光領域を示しており、発光領域50Gは緑色の発光領域を示しており、発光領域50Bは青色の発光領域を示しており、これらの3色の発光領域によりフルカラー化された発光表示装置を実現している。
【0099】
本実施の形態においては、図6(A)に示したように、同一のマスクでパターンニングを行った例であり、補助電極621と有機絶縁物624との上面から見た形状がほぼ同一である。この場合、図6(C)に示したように、補助電極621は、陰極20でソース配線と同一材料からなる配線と電気的に接続させている。
【0100】
また、画素電極612は、層間絶縁膜15上に形成されており、画素電極612の形成後にTFTのコンタクトホールが形成され、その後に形成される電極607、608でTFTと画素電極612とを電気的に接続している。また、画素電極の両端部およびそれらの間は無機絶縁物14で覆われている。また、図1と同様に有機絶縁物624上の一部にまで有機化合物層が形成されている。
【0101】
また、図5(B)は、画素電極の形成直後の上面図であり、図5(A)と対応している。図5(A)及び図5(B)においては、画素一列(Y方向)毎に帯状の有機化合物層を設けている。各発色の異なる有機化合物層の間には帯状に有機絶縁物624が設けられている。また、図5(A)においては、画素一列(Y方向)毎に有機絶縁物624および補助配線621を設ける構成としている。
【0102】
また、図7(A)は、図5、図6に対応する上面図である。図7(A)中、左側に示した図における接続部の一部断面図を右側に示し、図6(C)と同一箇所である。また、図7(A)に示した補助配線621及び有機絶縁物をパターニングする場合、用いるメタルマスクの例を図8(A)に示した。
【0103】
また、有機絶縁物と補助電極とのトータルの膜厚が比較的厚くなった場合、段差が大きくなるため、透明導電膜で電気的に接続することが困難になる可能性がある。特に、透明導電膜の薄膜化を行った場合にカバレッジ不良により線欠陥が生じる恐れがある。そこで、補助電極621と下層の電極との接続をより確実にするため、図7(B)に示すように、マスク数を増やして622で示す電極を形成してもよい。また、メタルマスクを用いて蒸着法により電極622を形成してもよい。
【0104】
また、図7(C)に示すように、予め画素部の周りにソース配線と同一材料からなる配線623を設けておき、さらに補助電極621と直交するように第2の補助電極625を形成してもよい。こうすることによって、第2の補助電極625は、補助電極621に直接接して設けられ、且つ、配線623とも直接接することができる。なお、補助電極621と第2の補助電極625との間が発光領域となるように適宜設計する。また、図7(A)に示した第2の補助電極625をパターニングする場合、用いるメタルマスクの例を図8(B)に示した。
【0105】
また、図7(C)では2回のパターニングによって第1の補助電極621と第2の補助電極625とを形成した例を示したが、図8(C)に示したメタルマスクを用いて格子状に補助電極を形成してもよい。図8(C)の右側図で示すように各開口部は細い線で区切られているが、蒸着では回り込みがあるため、一部膜厚が薄くなるものの格子状に補助電極を形成することができる。
【0106】
また、本実施の形態は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【0107】
(実施の形態4)
ここでは、図1と構成が一部異なる例を図9に示す。ここでは、画素部に規則的に配置される多数の画素のうち、3×3の画素を例に本発明を以下に説明する。なお、断面構造において、有機絶縁物24が存在しない点と、全面に高分子からなる有機化合物層60が存在する点以外は図1とほぼ同一であり、簡略化のため、図9において、図1と同一である部分は、同一の符号を用いる。また、図9(A)は、図2中における鎖線A−A’で切断した場合の断面図である。
【0108】
図1に示した有機絶縁物24が図9に示す構造には存在せず、その代わりに無機絶縁膜14と補助電極721とで各有機化合物17、18、19の間隔を保っている。
【0109】
また、高分子からなる有機化合物層60(代表的にはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(以下、「PEDOT/PSS」と記す)、ちなみに、このPEDOT/PSSは、正孔注入層として作用する。)は、スピンコート法やスプレー法などの塗布法で形成するため、全面に形成される。また、高分子からなる有機化合物層60は導電性を有しており、陰極20と補助電極721は電気的に接続される。補助電極721を設けることによって、陰極(或いは陽極)全体として低抵抗化することができる。加えて、透明導電膜の薄膜化も可能とすることができる。さらに、この補助電極721で下層の配線または電極と接続させる。この補助電極721はEL層を形成する前に成膜及びパターニングを行えばよい。下層の電極とコンタクトさせた補助電極721上に透明導電膜を形成すれば陰極の引き出しが可能となる。なお、図9(C)は、図2中に示した鎖線C−C’で切断した場合の断面図である。また、図9(C)中、点線で示した電極同士は電気的に接続していることを示している。また、端子部において、端子の電極を陰極20と同じ材料で形成している。
【0110】
また、図9(B)は、図2中に示した鎖線B−B’で切断した場合の断面図である。図9(B)においても11a〜11cの両端部およびそれらの間は無機絶縁物14で覆われている。ここでは赤色を発光するEL層17が共通となっている例を示したが、特に限定されず、同じ色を発光する画素毎にEL層を形成してもよい。
【0111】
また、本実施の形態は、実施の形態1、実施の形態2、または実施の形態3と自由に組み合わせることができる。
【0112】
(実施の形態5)
ここでは、図1と構成が一部異なる例を図10に示す。ここでは、画素部に規則的に配置される多数の画素のうち、3×3の画素を例に本発明を以下に説明する。なお、断面構造において、陰極20上に補助配線821が存在する点以外は図1とほぼ同一であり、簡略化のため、図10において、図1と同一である部分は、同一の符号を用いる。また、図10(A)は、図2中における鎖線A−A’で切断した場合の断面図である。
【0113】
また、補助電極821は、陰極上に形成するため、メタルマスクを用いた蒸着法で行う。ここでは格子状に補助電極821を形成した例を示す。補助電極821を設けることによって、陰極(或いは陽極)全体として低抵抗化することができる。加えて、透明導電膜の薄膜化も可能とすることができる。さらに、この補助電極821で下層の配線または電極と接続させる。下層の電極とコンタクトさせた補助電極821上に透明導電膜を形成すれば陰極の引き出しが可能となる。なお、図10(C)は、図2中に示した鎖線C−C’で切断した場合の断面図である。また、図10(C)中、点線で示した電極同士は電気的に接続していることを示している。また、端子部において、端子の電極を陰極20と同じ材料で形成している。
【0114】
また、本実施の形態は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、または実施の形態4と自由に組み合わせることができる。
【0115】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
【実施例1】
【0116】
本実施例では、絶縁表面上に作製したアクティブマトリクス型発光装置について説明する。なお、能動素子としてここでは薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)を用いているが、MOSトランジスタを用いてもよい。
【0117】
また、TFTとしてトップゲート型TFT(具体的にはプレーナ型TFT)を例示するが、ボトムゲート型TFT(典型的には逆スタガ型TFT)を用いることもできる。
【0118】
本実施例では、基板としてバリウムホウケイ酸ガラス、またはアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラスからなる基板、石英基板やシリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いればよい。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性が有するプラスチック基板を用いてもよいし、可撓性基板を用いても良い。
【0119】
まず、厚さ0.7mmの耐熱性ガラス基板上にプラズマCVD法により下地絶縁膜の下層として、プラズマCVD法で成膜温度400℃、原料ガスSiH4、NH3、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)を50nm(好ましくは10〜200nm)形成する。次いで、表面をオゾン水で洗浄した後、表面の酸化膜を希フッ酸(1/100希釈)で除去する。次いで、下地絶縁膜の上層として、プラズマCVD法で成膜温度400℃、原料ガスSiH4、N2Oから作製される酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を100nm(好ましくは50〜200nm)の厚さに積層形成し、さらに大気解放せずにプラズマCVD法で成膜温度300℃、成膜ガスSiH4で非晶質構造を有する半導体膜(ここではアモルファスシリコン膜)を54nmの厚さ(好ましくは25〜200nm)で形成する。
【0120】
本実施例では下地絶縁膜を2層構造として示したが、珪素を主成分とする絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造として形成しても良い。また、半導体膜の材料に限定はないが、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム(SiXGe1-X(X=0.0001〜0.02))合金などを用い、公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により形成すればよい。また、プラズマCVD装置は、枚葉式の装置でもよいし、バッチ式の装置でもよい。また、同一の成膜室で大気に触れることなく下地絶縁膜と半導体膜とを連続成膜してもよい。
【0121】
次いで、非晶質構造を有する半導体膜の表面を洗浄した後、オゾン水で表面に約2nmの極薄い酸化膜を形成する。次いで、TFTのしきい値を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを行う。ここでは、ジボラン(B2H6)を質量分離しないでプラズマ励起したイオンドープ法を用い、ドーピング条件を加速電圧15kV、ジボランを水素で1%に希釈したガスを流量30sccmとし、ドーズ量2×1012/cm2で非晶質シリコン膜にボロンを添加する。
【0122】
次いで、重量換算で10ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布した。塗布に代えてスパッタ法でニッケル元素を全面に散布する方法を用いてもよい。
【0123】
次いで、加熱処理を行い結晶化させて結晶構造を有する半導体膜を形成する。この加熱処理は、電気炉の熱処理または強光の照射を用いればよい。電気炉の熱処理で行う場合は、500℃〜650℃で4〜24時間で行えばよい。ここでは脱水素化のための熱処理(500℃、1時間)の後、結晶化のための熱処理(550℃、4時間)を行って結晶構造を有するシリコン膜を得た。なお、ここでは炉を用いた熱処理を用いて結晶化を行ったが、短時間での結晶化が可能なランプアニール装置で結晶化を行ってもよい。
【0124】
次いで、結晶構造を有するシリコン膜表面の酸化膜を希フッ酸等で除去した後、大粒径な結晶を得るため、連続発振が可能な固体レーザを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を半導体膜に照射する。レーザ光の照射は大気中、または酸素雰囲気中で行う。なお、大気中、または酸素雰囲気中で行うため、レーザー光の照射により表面に酸化膜が形成される。代表的には、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を適用すればよい。出力10Wの連続発振のYVO4レーザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換する。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光に成形して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、10〜2000cm/s程度の速度でレーザ光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射すればよい。
【0125】
もちろん、連続発振のYVO4レーザーの第2高調波を照射する前の結晶構造を有するシリコン膜を用いてTFTを作製することもできるが、レーザ光照射後の結晶構造を有するシリコン膜のほうが結晶性が向上しているため、TFTの電気的特性が向上するので望ましい。例えば、上記レーザ光照射前の結晶構造を有するシリコン膜を用いてTFTを作製すると、移動度は300cm2/Vs程度であるが、上記レーザ光照射後の結晶構造を有するシリコン膜を用いてTFTを作製すると、移動度は500〜600cm2/Vs程度と著しく向上する。
【0126】
なお、ここではシリコンの結晶化を助長する金属元素としてニッケルを用いて結晶化させた後、さらに連続発振のYVO4レーザーの第2高調波を照射したが、特に限定されず、非晶質構造を有するシリコン膜を成膜し、脱水素化のための熱処理を行った後、上記連続発振のYVO4レーザーの第2高調波を照射して結晶構造を有するシリコン膜を得てもよい。
【0127】
また、連続発振のレーザに代えてパルス発振のレーザを用いることもでき、パルス発振のエキシマレーザを用いる場合には、周波数300Hzとし、レーザーエネルギー密度を100〜1000mJ/cm2(代表的には200〜800mJ/cm2)とするのが望ましい。このとき、レーザ光を50〜98%オーバーラップさせても良い。
【0128】
次いで、上記レーザー光の照射により形成された酸化膜に加え、オゾン水で表面を120秒処理して合計1〜5nmの酸化膜からなるバリア層を形成する。本実施例ではオゾン水を用いてバリア層を形成したが、酸素雰囲気下の紫外線の照射で結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する方法や酸素プラズマ処理により結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化する方法やプラズマCVD法やスパッタ法や蒸着法などで1〜10nm程度の酸化膜を堆積してバリア層を形成してもよい。また、バリア層を形成する前にレーザー光の照射により形成された酸化膜を除去してもよい。
【0129】
次いで、上記バリア層上にプラズマCVD法またはスパッタ法でゲッタリングサイトとなるアルゴン元素を含む非晶質シリコン膜を50nm〜400nm、ここでは膜厚150nmで形成する。本実施例では、スパッタ法でシリコンターゲットを用い、アルゴン雰囲気下、圧力0.3Paで成膜する。
【0130】
その後、650℃に加熱された炉に入れて3分の熱処理を行いゲッタリングして、結晶構造を有する半導体膜中のニッケル濃度を低減する。炉に代えてランプアニール装置を用いてもよい。
【0131】
次いで、バリア層をエッチングストッパーとして、ゲッタリングサイトであるアルゴン元素を含む非晶質シリコン膜を選択的に除去した後、バリア層を希フッ酸で選択的に除去する。なお、ゲッタリングの際、ニッケルは酸素濃度の高い領域に移動しやすい傾向があるため、酸化膜からなるバリア層をゲッタリング後に除去することが望ましい。
【0132】
次いで、得られた結晶構造を有するシリコン膜(ポリシリコン膜とも呼ばれる)の表面にオゾン水で薄い酸化膜を形成した後、レジストからなるマスクを形成し、所望の形状にエッチング処理して島状に分離された半導体層を形成する。半導体層を形成した後、レジストからなるマスクを除去する。
【0133】
次いで、フッ酸を含むエッチャントで酸化膜を除去すると同時にシリコン膜の表面を洗浄した後、ゲート絶縁膜となる珪素を主成分とする絶縁膜を形成する。ここでは、プラズマCVD法により115nmの厚さで酸化窒化シリコン膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)で形成した。
【0134】
次いで、ゲート絶縁膜上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜と、膜厚100〜400nmの第2の導電膜とを積層形成する。本実施例では、ゲート絶縁膜上に膜厚50nmの窒化タンタル膜、膜厚370nmのタングステン膜を順次積層し、以下に示す手順でパターニングを行って各ゲート電極及び各配線を形成する。
【0135】
第1の導電膜及び第2の導電膜を形成する導電性材料としてはTa、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成する。また、第1の導電膜及び第2の導電膜としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜や、、AgPdCu合金を用いてもよい。また、2層構造に限定されず、例えば、膜厚50nmのタングステン膜、膜厚500nmのアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜、膜厚30nmの窒化チタン膜を順次積層した3層構造としてもよい。また、3層構造とする場合、第1の導電膜のタングステンに代えて窒化タングステンを用いてもよいし、第2の導電膜のアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜に代えてアルミニウムとチタンの合金膜(Al−Ti)を用いてもよいし、第3の導電膜の窒化チタン膜に代えてチタン膜を用いてもよい。また、単層構造であってもよい。
【0136】
上記第1の導電膜及び第2の導電膜のエッチング(第1のエッチング処理および第2のエッチング処理)にはICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いると良い。ICPエッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することによって所望のテーパー形状に膜をエッチングすることができる。ここでは、レジストからなるマスクを形成した後、第1のエッチング条件として1Paの圧力でコイル型の電極に700WのRF(13.56MHz)電力を投入し、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を25/25/10(sccm)とし、基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。なお、基板側の電極面積サイズは、12.5cm×12.5cmであり、コイル型の電極面積サイズ(ここではコイルの設けられた石英円板)は、直径25cmの円板である。この第1のエッチング条件によりW膜をエッチングして端部をテーパー形状とする。この後、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2を混合した第2のエッチング条件ではW膜及びTaN膜とも同程度にエッチングされる。なお、ここでは、第1のエッチング条件及び第2のエッチング条件を第1のエッチング処理と呼ぶこととする。
【0137】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第2のエッチング処理を行う。ここでは、第3のエッチング条件としてエッチング用ガスにCF4とCl2とを用い、それぞれのガス流量比を30/30(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを60秒行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この後、レジストからなるマスクを除去せずに第4のエッチング条件に変え、エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を20/20/20(sccm)とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約20秒程度のエッチングを行った。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。なお、ここでは、第3のエッチング条件及び第4のエッチング条件を第2のエッチング処理と呼ぶこととする。この段階で第1の導電層を下層とし、第2の導電層を上層とするゲート電極および各電極が形成される。
【0138】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、ゲート電極をマスクとして全面にドーピングする第1のドーピング処理を行う。第1のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1.5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を60〜100keVとして行う。n型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。自己整合的に第1の不純物領域(n--領域)が形成される。
【0139】
次いで、新たにレジストからなるマスクを形成するが、この際、スイッチングTFTのオフ電流値を下げるため、マスクは、画素部のスイッチングTFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその一部を覆って形成する。また、マスクは駆動回路のpチャネル型TFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域を保護するためにも設けられる。加えて、マスクは、画素部の電流制御用TFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域を覆って形成される。
【0140】
次いで、上記レジストからなるマスクを用い、選択的に第2のドーピング処理を行って、ゲート電極の一部と重なる不純物領域(n-領域)を形成する。第2のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。ここでは、イオンドープ法を用い、フォスフィン(PH3)を水素で5%に希釈したガスを流量30sccmとし、ドーズ量を1.5×1014atoms/cm2とし、加速電圧を90keVとして行う。この場合、レジストからなるマスクと第2の導電層とがn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、第2の不純物領域が形成される。第2の不純物領域には1×1016〜1×1017/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素が添加される。ここでは、第2の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をn-領域とも呼ぶ。
【0141】
次いで、レジストからなるマスクを除去せずに第3のドーピング処理を行う。第3のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。n型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。ここでは、イオンドープ法を用い、フォスフィン(PH3)を水素で5%に希釈したガスを流量40sccmとし、ドーズ量を2×1015atoms/cm2とし、加速電圧を80keVとして行う。この場合、レジストからなるマスクと第1の導電層及び第2の導電層がn型を付与する不純物元素に対するマスクとなり、第3の不純物領域が形成される。第3の不純物領域には1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲でn型を付与する不純物元素を添加される。ここでは、第3の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をn+領域とも呼ぶ。
【0142】
次いで、レジストからなるマスクを除去した後、新たにレジストからなるマスクを形成して第4のドーピング処理を行う。第4のドーピング処理により、pチャネル型TFTを形成する半導体層を形成する半導体層にp型の導電型を付与する不純物元素が添加された第4の不純物領域及び第5の不純物領域を形成する。
【0143】
また、第4の不純物領域には1×1020〜1×1021/cm3の濃度範囲でp型を付与する不純物元素が添加されるようにする。尚、第4の不純物領域には先の工程でリン(P)が添加された領域(n--領域)であるが、p型を付与する不純物元素の濃度がその1.5〜3倍添加されていて導電型はp型となっている。ここでは、第4の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をp+領域とも呼ぶ。
【0144】
また、第5の不純物領域は第2の導電層のテーパー部と重なる領域に形成されるものであり、1×1018〜1×1020/cm3の濃度範囲でp型を付与する不純物元素が添加されるようにする。ここでは、第5の不純物領域と同じ濃度範囲の領域をp-領域とも呼ぶ。
【0145】
以上までの工程でそれぞれの半導体層にn型またはp型の導電型を有する不純物領域が形成される。第1の導電層及び第2の導電層からなる電極はTFTのゲート電極となる。
【0146】
次いで、ほぼ全面を覆う絶縁膜(図示しない)を形成する。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚50nmの酸化シリコン膜を形成した。勿論、この絶縁膜は酸化シリコン膜に限定されるものでなく、他のシリコンを含む絶縁膜を単層または積層構造として用いても良い。
【0147】
次いで、それぞれの半導体層に添加された不純物元素を活性化処理する工程を行う。この活性化工程は、ランプ光源を用いたラピッドサーマルアニール法(RTA法)、或いはレーザーを照射する方法、或いは炉を用いた熱処理、或いはこれらの方法のうち、いずれかと組み合わせた方法によって行う。
【0148】
また、本実施例では、上記活性化の前に絶縁膜を形成した例を示したが、上記活性化を行った後、絶縁膜を形成する工程としてもよい。
【0149】
次いで、窒化シリコン膜からなる第1の層間絶縁膜を形成して熱処理(300〜550℃で1〜12時間の熱処理)を行い、半導体層を水素化する工程を行う。この工程は第1の層間絶縁膜に含まれる水素により半導体層のダングリングボンドを終端する工程である。酸化シリコン膜からなる絶縁膜(図示しない)の存在に関係なく半導体層を水素化することができる。水素化の他の手段として、プラズマ水素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。
【0150】
次いで、第1の層間絶縁膜上に有機絶縁物材料から成る第2の層間絶縁膜を形成する。本実施例では塗布法により膜厚1.6μmのアクリル樹脂膜を形成する。
【0151】
次いで、ゲート電極またはゲート配線となる導電層に達するコンタクトホールと、各不純物領域に達するコンタクトホールを形成する。本実施例では複数のエッチング処理を順次行う。本実施例では第1の層間絶縁膜をエッチングストッパーとして第2の層間絶縁膜をエッチングしてから第1の層間絶縁膜をエッチングする。
【0152】
その後、Al、Ti、Mo、Wなどを用いて電極、具体的にはソース配線、電源供給線、引き出し電極及び接続電極などを形成する。ここでは、これらの電極及び配線の材料は、Ti膜(膜厚100nm)とシリコンを含むAl膜(膜厚350nm)とTi膜(膜厚50nm)との積層膜を用い、パターニングを行った。こうして、ソース電極及びソース配線、接続電極、引き出し電極、電源供給線などが適宜、形成される。なお、層間絶縁膜に覆われたゲート配線とコンタクトを取るための引き出し電極は、ゲート配線の端部に設けられ、他の各配線の端部にも、外部回路や外部電源と接続するための電極が複数設けられた入出力端子部を形成する。
【0153】
以上の様にして、nチャネル型TFT、pチャネル型TFT、およびこれらを相補的に組み合わせたCMOS回路を有する駆動回路と、1つの画素内にnチャネル型TFTまたはpチャネル型TFTを複数備えた画素部を形成することができる。
【0154】
次いで、第2の層間絶縁膜上に無機絶縁物材料から成る第3の層間絶縁膜を形成する。ここでは、スパッタ法により200nmの窒化シリコン膜を成膜する。
【0155】
次いで、pチャネル型TFTからなる電流制御用TFTのドレイン領域に接して形成された接続電極に達するコンタクトホールを形成する。次いで、接続電極に接して重なるよう画素電極を形成する。本実施例では、画素電極はEL素子の陽極として機能させるため、仕事関数の大きい、具体的には白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、もしくはニッケル(Ni)といった材料を用いることができる。
【0156】
次いで、画素電極の端部を覆うように両端に無機絶縁物を形成する。画素電極の端部を覆う無機絶縁物はスパッタ法により珪素を含む絶縁膜で形成し、パターニングすれば良い。また、無機絶縁物に代えて、有機絶縁物からなるバンクを形成してもよい。
【0157】
次いで、実施の形態1に示すように無機絶縁物上に補助電極を形成する。
【0158】
次いで、両端が無機絶縁物で覆われている画素電極上にEL層およびEL素子の陰極を形成する。EL層の成膜方法としては、インクジェット法や、蒸着法や、スピンコーティング法などにより形成すればよい。
【0159】
EL層としては、発光層、電荷輸送層または電荷注入層を自由に組み合わせてEL層(発光及びそのためのキャリアの移動を行わせるための層)を形成すれば良い。例えば、低分子系有機EL材料や高分子系有機EL材料を用いればよい。また、EL層として一重項励起により発光(蛍光)する発光材料(シングレット化合物)からなる薄膜、または三重項励起により発光(リン光)する発光材料(トリプレット化合物)からなる薄膜を用いることができる。また、電荷輸送層や電荷注入層として炭化珪素等の無機材料を用いることも可能である。これらの有機EL材料や無機材料は公知の材料を用いることができる。
【0160】
また、陰極に用いる材料としては仕事関数の小さい金属(代表的には周期表の1族もしくは2族に属する金属元素)や、これらを含む合金を用いることが好ましいとされている。仕事関数が小さければ小さいほど発光効率が向上するため、中でも、陰極に用いる材料としては、MgAg、MgIn、AlLiなどの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜などを薄く成膜した後、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)を形成した積層構造とすることが望ましい。
【0161】
次いで、陰極を覆う保護膜を形成する。保護膜としては、スパッタ法により窒化珪素または酸化窒化珪素を主成分とする絶縁膜を形成すればよく、実施の形態2に示したように、EL層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させるため、陰極上に水素を含む膜を設けることが好ましい。
【0162】
水素を含む膜としては、PCVD法により炭素または窒化珪素を主成分とする絶縁膜を形成すればよく、成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させることもできる。また、有機化合物層が耐えうる温度範囲で加熱処理を行ったり、発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む膜から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端(ターミネーション)させることができる。
【0163】
また、水素を含む膜および保護膜によって外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐ。ただし、後でFPCと接続する必要のある入出力端子部には保護膜および水素を含む膜などは設けなくともよい。
【0164】
また、画素部に配置するTFTのゲート電極の先には複数のTFTなどからなる様々な回路を設けてもよく、特に限定されないことは言うまでもない。
【0165】
次いで、陰極と、有機化合物層と、陽極とを少なくとも有するEL素子を封止基板、或いは封止缶で封入することにより、EL素子を外部から完全に遮断し、外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐことが好ましい。封止基板、或いは封止缶で封入する直前には真空でアニールを行って脱気を行うことが好ましい。また、封止基板を貼りつける際には、水素および不活性気体(希ガスまたは窒素)を含む雰囲気下で行って、封止によって密閉された空間には水素を含ませることが好ましい。発光素子を発光させた際に生じる発熱を利用することによって、上記水素を含む空間から水素を拡散させて、有機化合物層における欠陥を水素で終端させることができる。有機化合物層における欠陥を水素で終端させると発光装置としての信頼性が向上する。
【0166】
次いで、異方性導電材で入出力端子部の各電極にFPC(フレキシブルプリントサーキット)を貼りつける。異方性導電材は、樹脂と、表面にAuなどがメッキされた数十〜数百μm径の導電性粒子とから成り、導電性粒子により入出力端子部の各電極とFPCに形成された配線とが電気的に接続する。
【0167】
また、基板400には各画素に対応するカラーフィルタを設ける。カラーフィルタを設けることによって円偏光板は必要となくなる。さらに、必要があれば、他の光学フィルムを設けてもよい。また、ICチップなどを実装させてもよい。
【0168】
以上の工程でFPCが接続されたモジュール型の発光装置が完成する。
【0169】
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4、または実施の形態5と自由に組み合わせることができる。
【実施例2】
【0170】
本実施例では、図11に製造装置を示す。
【0171】
図11において、100a〜100k、100m〜100vはゲート、101、119は受渡室、102、104a、107、108、111、114は搬送室、105、106R、106B、106G、106H、109、110、112、113は成膜室、103は前処理室、117a、117bは封止基板ロード室、115はディスペンサ室、116は封止室、118aは紫外線照射室、120は基板反転室である。
【0172】
以下、予めTFTが設けられた基板を図11に示す製造装置に搬入し、図4(A)に示す積層構造を形成する手順を示す。
【0173】
まず、受渡室101にTFT及び陰極(或いは陽極)200が設けられた基板をセットする。次いで受渡室101に連結された搬送室102に搬送する。予め、搬送室内には極力水分や酸素が存在しないよう、真空排気した後、不活性ガスを導入して大気圧にしておくことが好ましい。
【0174】
また、搬送室102には、搬送室内を真空にする真空排気処理室と連結されている。真空排気処理室としては、磁気浮上型のターボ分子ポンプ、クライオポンプ、またはドライポンプが備えられている。これにより搬送室の到達真空度を10-5〜10-6Paにすることが可能であり、さらにポンプ側および排気系からの不純物の逆拡散を制御することができる。装置内部に不純物が導入されるのを防ぐため、導入するガスとしては、窒素や希ガス等の不活性ガスを用いる。装置内部に導入されるこれらのガスは、装置内に導入される前にガス精製機により高純度化されたものを用いる。従って、ガスが高純度化された後に成膜装置に導入されるようにガス精製機を備えておく必要がある。これにより、ガス中に含まれる酸素や水、その他の不純物を予め除去することができるため、装置内部にこれらの不純物が導入されるのを防ぐことができる。
【0175】
また、基板に含まれる水分やその他のガスを除去するために、脱気のためのアニールを真空中で行うことが好ましく、搬送室102に連結された前処理室103に搬送し、そこでアニールを行えばよい。さらに、陰極の表面をクリーニングする必要があれば、搬送室102に連結された前処理室103に搬送し、そこでクリーニングを行えばよい。
【0176】
また、必要があれば、陽極上に正孔注入層として作用するポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)を全面に形成してもよい。図11の製造装置には、高分子からなる有機化合物層を形成するための成膜室105が設けられている。スピンコート法やインクジェット法やスプレー法で形成する場合には、大気圧下で基板の被成膜面を上向きにしてセットする。成膜室105と搬送室102との間に設けられた基板反転室120で基板を適宜反転させる。また、水溶液を用いた成膜を行った後は、前処理室103に搬送し、そこで真空中での加熱処理を行って水分を気化させることが好ましい。
【0177】
次いで、大気にふれさせることなく、搬送室102から搬送室104に基板104cを搬送した後、搬送機構104bによって、成膜室106Rに搬送し、陰極200上に赤色発光するEL層を適宜形成する。ここでは蒸着によって形成する例を示す。成膜室106Rには、基板反転室120で基板の被成膜面を下向きにしてセットする。なお、基板を搬入する前に成膜室内は真空排気しておくことが好ましい。
【0178】
例えば、真空度が5×10-3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10-4〜10-6Paまで真空排気された成膜室106Rで蒸着を行う。蒸着の際、予め、抵抗加熱により有機化合物は気化されており、蒸着時にシャッター(図示しない)が開くことにより基板の方向へ飛散する。気化された有機化合物は、上方に飛散し、メタルマスク(図示しない)に設けられた開口部(図示しない)を通って基板に蒸着される。なお、蒸着の際、基板を加熱する手段により基板の温度(T1)は、50〜200℃、好ましくは65〜150℃とする。
【0179】
フルカラーとするために、3種類のEL層を形成する場合には、成膜室106Rで成膜した後、順次、各成膜室106G、106Bで成膜を行って形成すればよい。
【0180】
陰極(或いは陽極)200上に所望のEL層201を得たら、次いで、大気にふれさせることなく、搬送室104から搬送室107に基板を搬送した後、さらに、大気にふれさせることなく、搬送室107から搬送室108に基板を搬送する。
【0181】
次いで、搬送室108内に設置されている搬送機構によって、成膜室109に搬送し、EL層201上に透明導電膜(ITOなど)からなる陽極202を適宜形成する。陰極を形成する場合は、成膜室110で陰極となる薄い金属層を形成した後、成膜室109に搬送して透明導電膜を形成し、薄い金属層(陰極)と透明導電膜との積層を適宜形成する。ここでは、成膜室110は、陰極となるMgやAgやAlを蒸着源に備えた蒸着装置とし、成膜室109は、陽極となる透明導電材料からなるターゲットを少なくとも有しているスパッタ装置とする。
【0182】
次いで、搬送室108内に設置されている搬送機構によって、成膜室112に搬送し、有機化合物層が耐えうる温度範囲で水素を含む膜203を形成する。ここでは成膜室112にプラズマCVD装置を備え、成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH4、C2H2、C6H6など)とを用いて水素を含むDLC膜を形成する。なお、水素ラジカルが発生する手段を備えていれば特に限定されず、上記水素を含むDLC膜の成膜の際、プラズマ化された水素によって有機化合物層における欠陥を水素で終端させる。
【0183】
次いで、大気に触れることなく、搬送室108から成膜室113に搬送して水素を含む膜203上に保護膜204を形成する。ここでは、成膜室113内に、珪素からなるターゲットまたは窒化珪素からなるターゲットを備えたスパッタ装置とする。成膜室雰囲気を窒素雰囲気または窒素とアルゴンを含む雰囲気とすることによって窒化珪素膜を形成することができる。
【0184】
以上の工程で図4(A)に示す積層構造、即ち、基板上に保護膜および水素を含む膜で覆われた発光素子が形成される。
【0185】
次いで、発光素子が形成された基板を大気に触れることなく、搬送室108から搬送室111に搬送し、さらに搬送室111から搬送室114に搬送する。
【0186】
次いで、発光素子が形成された基板を搬送室114から封止室116に搬送する。なお、封止室116には、シール材が設けられた封止基板を用意しておくことが好ましい。
【0187】
封止基板は、封止基板ロード室117a、117bに外部からセットされる。なお、水分などの不純物を除去するために予め真空中でアニール、例えば、封止基板ロード室117a、117b内でアニールを行うことが好ましい。そして、封止基板にシール材を形成する場合には、搬送室108を大気圧とした後、封止基板を封止基板ロード室からディスペンサ室115に搬送して、発光素子が設けられた基板と貼り合わせるためのシール材を形成し、シール材を形成した封止基板を封止室116に搬送する。
【0188】
次いで、発光素子が設けられた基板を脱気するため、真空または不活性雰囲気中でアニールを行った後、シール材が設けられた封止基板と、発光素子が形成された基板とを貼り合わせる。また、密閉された空間には水素または不活性気体を充填させる。なお、ここでは、封止基板にシール材を形成した例を示したが、特に限定されず、発光素子が形成された基板にシール材を形成してもよい。
【0189】
次いで、貼り合わせた一対の基板を搬送室114から紫外線照射室118に搬送する。次いで、紫外線照射室118でUV光を照射してシール材を硬化させる。なお、ここではシール材として紫外線硬化樹脂を用いたが、接着材であれば、特に限定されない。
【0190】
次いで、搬送室114から受渡室119に搬送して取り出す。
【0191】
以上のように、図11に示した製造装置を用いることで完全に発光素子を密閉空間に封入するまで外気に晒さずに済むため、信頼性の高い発光装置を作製することが可能となる。なお、搬送室102、114においては、真空と大気圧とを繰り返すが、搬送室104a、108は常時、真空が保たれる。
【0192】
なお、インライン方式の成膜装置とすることも可能である。
【0193】
また、図11と一部異なる製造装置を図12に示す。
【0194】
図11では、スピンコート法やインクジェット法やスプレー法で形成する成膜室が一つしか設けられていない例であったが、図12の製造装置は、スピンコート法やインクジェット法やスプレー法で形成する成膜室が3つ備えた例である。例えば、フルカラーとするために、3種類のEL層をスピンコート法やインクジェット法やスプレー法で形成する場合には、成膜室121aで成膜した後、順次、各成膜室121b、121cで成膜を行って形成すればよい。
【0195】
また、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4、または実施の形態5、または実施例1と自由に組み合わせることができる。
【実施例3】
【0196】
本発明を実施してELモジュール(アクティブマトリクス型ELモジュール、パッシブ型ELモジュール)を完成することができる。即ち、本発明を実施することによって、それらを組み込んだ全ての電子機器が完成される。
【0197】
その様な電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル型ディスプレイ)、カーナビゲーション、カーステレオ、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書籍等)などが挙げられる。それらの一例を図13、図14に示す。
【0198】
図13(A)はパーソナルコンピュータであり、本体2001、画像入力部2002、表示部2003、キーボード2004等を含む。
【0199】
図13(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。
【0200】
図13(C)はモバイルコンピュータ(モービルコンピュータ)であり、本体2201、カメラ部2202、受像部2203、操作スイッチ2204、表示部2205等を含む。
【0201】
図13(D)はゴーグル型ディスプレイであり、本体2301、表示部2302、アーム部2303等を含む。
【0202】
図13(E)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレーヤーであり、本体2401、表示部2402、スピーカ部2403、記録媒体2404、操作スイッチ2405等を含む。なお、このプレーヤーは記録媒体としてDVD(Digtial Versatile Disc)、CD等を用い、音楽鑑賞や映画鑑賞やゲームやインターネットを行うことができる。
【0203】
図13(F)はデジタルカメラであり、本体2501、表示部2502、接眼部2503、操作スイッチ2504、受像部(図示しない)等を含む。
【0204】
図14(A)は携帯電話であり、本体2901、音声出力部2902、音声入力部2903、表示部2904、操作スイッチ2905、アンテナ2906、画像入力部(CCD、イメージセンサ等)2907等を含む。
【0205】
図14(B)は携帯書籍(電子書籍)であり、本体3001、表示部3002、3003、記憶媒体3004、操作スイッチ3005、アンテナ3006等を含む。
【0206】
図14(C)はディスプレイであり、本体3101、支持台3102、表示部3103等を含む。
【0207】
ちなみに図14(C)に示すディスプレイは中小型または大型のもの、例えば5〜20インチの画面サイズのものである。また、このようなサイズの表示部を形成するためには、基板の一辺が1mのものを用い、多面取りを行って量産することが好ましい。
【0208】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器の作製方法に適用することが可能である。また、本実施例の電子機器は、実施の形態1乃至5、実施例1、または実施例2のどのような組み合わせからなる構成を用いても実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた有機化合物層でなる発光領域と、
前記発光領域でない領域において、前記第1の電極上の絶縁物と、前記絶縁物上の前記第2の電極と、前記第2の電極の上面または下面と接する補助電極とを有し、
前記補助電極は前記絶縁物と重なるように設けられ、
前記第2の電極は、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた有機化合物層でなる発光領域と、
前記発光領域でない領域において、前記第1の電極上の絶縁物と、前記絶縁物上の前記第2の電極と、前記第2の電極の上面または下面と接する格子状の補助電極とを有し、
前記補助電極は前記絶縁物と重なるように設けられ、
前記第2の電極は、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた有機化合物層でなる発光領域と、
規則的に配置された複数の前記発光領域の周りに設けられた配線と、
前記発光領域でない領域において、前記第1の電極上の絶縁物と、前記絶縁物上の前記第2の電極と、前記第2の電極の上面または下面と接する補助電極とを有し、
前記補助電極は前記絶縁物と重なるように設けられ、
前記補助電極と前記配線とは電気的に接続され、
前記第2の電極は、前記補助電極及び前記配線を介して、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた有機化合物層でなる発光領域と、
規則的に配置された複数の前記発光領域の周りに設けられた配線と、
前記発光領域でない領域において、前記第1の電極上の絶縁物と、前記絶縁物上の前記第2の電極と、前記第2の電極の上面または下面と接する格子状の補助電極とを有し、
前記補助電極は前記絶縁物と重なるように設けられ、
前記補助電極と前記配線とは電気的に接続され、
前記第2の電極は、前記補助電極及び前記配線を介して、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、前記補助電極は、W、WSix、Al、Ti、Mo、Cu、Ta、若しくはCrの元素、前記元素を主成分とする合金材料、又は前記元素を主成分とする化合物材料を主成分とする膜又はそれらの積層膜であることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、前記補助電極は、前記絶縁物と同一のパターン形状であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、前記第2の電極は透明導電膜であることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、前記第2の電極は、酸化インジウム酸化スズ合金または酸化亜鉛でなることを特徴とする発光装置。
【請求項1】
第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた有機化合物層でなる発光領域と、
前記発光領域でない領域において、前記第1の電極上の絶縁物と、前記絶縁物上の前記第2の電極と、前記第2の電極の上面または下面と接する補助電極とを有し、
前記補助電極は前記絶縁物と重なるように設けられ、
前記第2の電極は、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた有機化合物層でなる発光領域と、
前記発光領域でない領域において、前記第1の電極上の絶縁物と、前記絶縁物上の前記第2の電極と、前記第2の電極の上面または下面と接する格子状の補助電極とを有し、
前記補助電極は前記絶縁物と重なるように設けられ、
前記第2の電極は、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた有機化合物層でなる発光領域と、
規則的に配置された複数の前記発光領域の周りに設けられた配線と、
前記発光領域でない領域において、前記第1の電極上の絶縁物と、前記絶縁物上の前記第2の電極と、前記第2の電極の上面または下面と接する補助電極とを有し、
前記補助電極は前記絶縁物と重なるように設けられ、
前記補助電極と前記配線とは電気的に接続され、
前記第2の電極は、前記補助電極及び前記配線を介して、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
第1の電極、第2の電極、及び前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた有機化合物層でなる発光領域と、
規則的に配置された複数の前記発光領域の周りに設けられた配線と、
前記発光領域でない領域において、前記第1の電極上の絶縁物と、前記絶縁物上の前記第2の電極と、前記第2の電極の上面または下面と接する格子状の補助電極とを有し、
前記補助電極は前記絶縁物と重なるように設けられ、
前記補助電極と前記配線とは電気的に接続され、
前記第2の電極は、前記補助電極及び前記配線を介して、フレキシブルプリントサーキットに接続される端子部の電極と電気的に接続されることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、前記補助電極は、W、WSix、Al、Ti、Mo、Cu、Ta、若しくはCrの元素、前記元素を主成分とする合金材料、又は前記元素を主成分とする化合物材料を主成分とする膜又はそれらの積層膜であることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、前記補助電極は、前記絶縁物と同一のパターン形状であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、前記第2の電極は透明導電膜であることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、前記第2の電極は、酸化インジウム酸化スズ合金または酸化亜鉛でなることを特徴とする発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−153397(P2010−153397A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76615(P2010−76615)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【分割の表示】特願2003−16244(P2003−16244)の分割
【原出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【分割の表示】特願2003−16244(P2003−16244)の分割
【原出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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