説明

発光装置

【課題】有機EL素子の発光層などの材料の選択の自由度が高く、且つ、長寿命化を図れる発光装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子11および有機EL素子11の一対の電極(陽極12、陰極14)それぞれに電気的に接続された外部接続電極16,18が透明なプラスチックフィルム10の一表面側に形成された有機EL素子モジュール1と、有機EL素子モジュール1をプラスチックフィルム10の厚み方向の両側から挟み有機EL素子11およびプラスチックフィルム10において有機EL素子11が形成された領域を囲む一対の封止部材20,30とを備えている。各封止部材20,30と有機EL素子モジュール1との接合部40,50の周辺を被覆して水分およびガス(酸素など)の外部からの侵入を阻止する気密シール部61,62を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)を利用した発光装置が各所で研究開発されている。
【0003】
有機EL素子としては、例えば、透光性基板(透明基板)の一表面側に、陽極となる透明電極、ホール輸送層、発光層(有機発光層)、電子注入層、陰極となる電極の積層構造を備えたものが知られている。この種の有機EL素子では、陽極と陰極との間に電圧を印加することによって発光層で発光した光が、透明電極および透光性基板を通して取り出される。
【0004】
有機EL素子は、自発光型の発光素子であること、比較的高効率の発光特性を示すこと、各種の色調で発光可能であること、などの特徴を有するものであり、表示装置(例えば、フラットパネルディスプレイなどの発光体など)や、光源(例えば、液晶表示機器のバックライトや照明光源など)としての適用が期待されており、一部では既に実用化されている。
【0005】
しかしながら、これらの用途に有機EL素子を応用展開するために、より高効率・長寿命・高輝度の有機EL素子の開発が望まれている。
【0006】
ここで、有機EL素子の長寿命化を目的として、図8に示すように、ITO層からなる陽極層112と有機正孔輸送層113との積層膜を一表面側に形成した第1の透明ポリエステルフィルム111aと、陰極層116と樹脂分散型発光層114との積層膜を一表面側に形成した第2の透明ポリエステルフィルム111bとを用意し、互いの積層膜どうしを対向させ、ポリスチレン樹脂の軟化点である90℃で加圧して貼り合わせ、周辺部は外部リード118とともに、電熱シーラーにて融着封止することで有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−7763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された有機EL素子では、光取り出し面となる第1の透明ポリエステルフィルム111aの他表面に傷が付きやすい。また、ポリエステルフィルム111a,111bそれぞれが防湿フィルムを構成しているが、結局は有機材料により形成されたものであるから、水分やガス(酸素など)を阻止する性能が不十分であり、長期的にも防湿性が不十分である。
【0009】
また、積層膜どうしを貼り合わせる必要があるので、発光層などの材料や成膜方法などの制約が大きく、高効率化が制限されてしまう。また、発光層として樹脂分散型発光層114を採用する必要があるとともに、積層膜どうしの貼り合わせ界面が存在し、有機EL素子の発光特性の向上が制限されてしまう。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、有機EL素子の発光層などの材料の選択の自由度が高く、且つ、長寿命化を図れる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、厚み方向に離間した一対の電極間に発光層を有する有機EL素子および前記有機EL素子の前記各電極それぞれに電気的に接続された外部接続電極が透明なプラスチックフィルムの一表面側に形成された有機EL素子モジュールと、前記有機ELモジュールを前記プラスチックフィルムの厚み方向の両側から挟み前記有機EL素子および前記プラスチックフィルムにおいて前記有機EL素子が形成された領域を囲む一対の封止部材とを備え、前記各封止部材のうち少なくとも、前記有機EL素子からの光を取り出す側の前記封止部材が透光性材料により形成され、前記各封止部材と前記有機EL素子モジュールとの接合部の周辺を被覆して水分およびガスの外部からの侵入を阻止する気密シール部を設けてなることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記各封止部材は、それぞれガラス基板からなることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記気密シール部は、無機材料により形成されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記気密シール部は、樹脂により形成されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記気密シール部が、前記光を取り出す側の前記封止部材の光取り出し面上まで延設されており、前記気密シール部のうち前記光取り出し面上に形成された部位が、アンチリフレクションコートとして機能するように前記気密シール部の材料および厚みを設定してあることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5の発明において、前記光を取り出す側の前記封止部材が、前記プラスチックフィルムの他表面側に配置されるものであり、且つ、前記プラスチックフィルムよりも屈折率が低く、前記有機EL素子モジュールが、前記プラスチックフィルムの前記他表面側に設けられ前記発光層から放射された光の前記他表面での反射を抑制する凹凸構造部を備え、前記凹凸構造部の表面と前記光を取り出す側の前記封止部材との間に空間が存在することを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記光を取り出す側の前記封止部材が前記プラスチックフィルムの他表面側に配置されるものであり、前記有機EL素子モジュールと前記プラスチックフィルムの前記一表面側の前記封止部材とで囲まれた空間に封止用の液体が封入されてなることを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記光を取り出す側の前記封止部材が、前記プラスチックフィルムの他表面側に配置されるものであり、前記有機EL素子の前記各電極のうち前記プラスチックフィルムの前記一表面から遠い側の前記電極と前記プラスチックフィルムの前記一表面側の前記封止部材とが面接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明では、有機EL素子の発光層などの材料の選択の自由度が高く、且つ、長寿命化を図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態の発光装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図、(c)は(a)の要部概略平面図である。
【図2】同上の発光装置の概略分解斜視図である。
【図3】同上の発光装置の他の構成例を示す概略断面図である。
【図4】同上の発光装置の他の構成例を示す概略断面図である。
【図5】同上の発光装置の他の構成例を示す概略断面図である。
【図6】同上の発光装置の他の構成例を示す概略断面図である。
【図7】同上の発光装置における有機EL素子モジュールの他の構成例を示す概略平面図である。
【図8】従来例の有機EL素子の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態の発光装置について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態の発光装置は、有機EL素子11および有機EL素子11の陽極12、陰極14それぞれに電気的に接続された外部接続電極16,18が透明なプラスチックフィルム10の一表面側に形成された有機EL素子モジュール1を備えている。なお、本実施形態では、陽極12と陰極14とが、厚み方向に離間した一対の電極を構成している。
【0023】
また、発光装置は、有機EL素子モジュール1をプラスチックフィルム10の厚み方向の両側から挟み有機EL素子11およびプラスチックフィルム10において有機EL素子11が形成された領域を囲む一対の封止部材20,30を備えている。
【0024】
また、発光装置は、各封止部材20,30と有機EL素子モジュール1との接合部40,50の周辺を被覆して水分およびガス(酸素など)の外部からの侵入を阻止する気密シール部61,62を設けてある。
【0025】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0026】
有機EL素子11は、陽極12と陰極14との間に介在する有機EL層13が、陽極12側から順に、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を備えている。ここにおいて、有機EL素子11は、陽極12をプラスチックフィルム10の上記一表面側に積層してあり、陽極12におけるプラスチックフィルム10側とは反対側で、陰極14が陽極12に対向している。なお、陽極12と陰極14との位置関係は逆でもよい。
【0027】
本実施形態における有機EL素子モジュール1では、有機EL素子11の陽極12を透明電極により構成するとともに陰極14を発光層からの光を反射する電極により構成してあり、プラスチックフィルム10の他表面側から光を取り出すようになっている。
【0028】
上述の有機EL層13の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、陽極とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよく、例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。
【0029】
陽極12は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。陽極12の電極材料としては、例えば、ITO、IZO、酸化スズ、酸化亜鉛など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、陽極12は、プラスチックフィルム10の上記一表面側に、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0030】
なお、陽極12のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、陽極12の膜厚は、陽極12の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0031】
また、陰極14は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極14の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウムなど、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属の導電材料、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。また、陰極14側から光を取り出す場合には、例えば、ITO、IZOなどを採用すればよい。
【0032】
発光層の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0033】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、陽極12との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0034】
また、ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0035】
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0036】
また、電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、Siなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiOやSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0037】
プラスチックフィルム10のプラスチック材料としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)を採用しているが、PETに限らず、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)などを採用してもよく、所望の用途や、屈折率、耐熱温度などに応じて適宜選択すればよい。なお、PETは、非常に安価で安全性の高いプラスチック材料である。また、PENは、PETと比べて、屈折率が高く耐熱性も良好であるが、高価である。
【0038】
上述のプラスチックフィルム10は、無アルカリガラス基板やソーダライムガラス基板などの安価なガラス基板に比べて安価であり、且つ、当該ガラス基板よりも屈折率が大きく、有機EL素子11の発光層および陽極12との屈折率差を小さくすることができる。
【0039】
また、有機EL素子11をプラスチックフィルム10ではなく、ガラス基板に形成することも考えられるが、ガラス基板に有機EL素子11を形成する場合には、当該ガラス基板において有機EL素子11を形成する表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意する必要があり、コストが高くなる。なお、プラスチックフィルム10の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。ここにおいて、プラスチックフィルム10は、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることができる。
【0040】
プラスチックフィルム10は、有機EL素子11を形成する素子形成部10aの平面視形状が矩形状であり、素子形成部10aの長手方向の両側縁それぞれの中央部から側方に突出する突出片10b,10bが延設されている。そして、有機EL素子モジュール1は、プラスチックフィルム10の上記一表面側において、各突出片10b,10bそれぞれに、2つの外部接続電極(以下、第1の外部接続電極と称する)16と1つの外部接続電極(以下、第2の外部接続電極と称する)18が形成され、素子形成部10aに、陽極12と第1の外部接続電極16とを電気的に接続する接続配線15、および、陰極14と第2の外部接続電極18とを電気的に接続する接続配線17が形成されている。なお、プラスチックフィルム10の平面視形状は、矩形状としてあるが、これに限らず、例えば、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。また、プラスチックフィルム10は、全体として矩形状に形成してもよいし、これに限らず、例えば、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などに形成してもよい。
【0041】
有機EL素子モジュール1は、第1の外部接続電極16、第2の外部接続電極18、および各接続配線15,17の材料を陰極14と同じ材料としてあり、第1の外部接続電極16、第2の外部接続電極18、および各接続配線15,17を陰極14と同時に形成してある。しかして、異種材料により別々に形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化、材料コストの低減などによる低コスト化を図れる。ただし、これらの材料は特に限定するものではなく、各外部接続電極16,18と各接続配線15,17と陰極14とを異なる材料により形成してもよい。また、第1の外部接続電極16および第2の外部接続電極18は、単層構造に限らず、多層構造でもよい。
【0042】
また、有機EL素子モジュール1は、透明導電膜(例えば、ITO膜、IZO膜など)からなる陽極(透明電極)12に電気的に接続される2つの接続配線15を平面視矩形状の陽極12の1辺の全長と当該1辺に隣り合う2辺に沿った平面視コ字状の形状として、陽極12の周部の大部分に接続配線15,15の一部が重なるように接続配線15,15を配置してある。しかして、透明導電膜からなる陽極12の電位勾配に起因した輝度むらを低減できる。
【0043】
また、有機EL素子モジュール1は、第1の外部接続電極16と第2の外部接続電極18とが同一材料により同一厚さで形成されるとともに、接続配線15と接続配線17とが同一材料により同一厚さで形成されている。また、各突出片10b,10bでは、2個の第1の外部接続電極16が、1個の第2の外部接続電極18を挟むように配置されている。ここで、各突出片10b,10bにおいて、2個の第1の外部接続電極16と1個の第2の外部接続電極18とは、幅方向(図1(c)における上下方向)が一致するように互いに離間して配置されている。そして、有機EL素子モジュール1は、複数個(図示例では、4個)の第1の外部接続電極16の幅の合計寸法と、複数個(図示例では、2個)の第2の外部接続電極18の幅の合計寸法とが、同じ値に設定されている。しかして、第1の外部接続電極16の幅の合計寸法と第2の外部接続電極18の幅の合計寸法とが異なる場合に比べて、有機EL素子11へ流す電流を大きくできるとともに、発光効率の向上を図れる。なお、第1の外部接続電極16および第2の外部接続電極18それぞれの数は特に限定するものではない。
【0044】
封止部材20,30としては、平板状のガラス基板を用いている。要するに、一対の封止部材20,30のうち、有機EL素子11からの光を取り出す側の封止部材20(以下、説明の便宜上、第1の封止部材20とも称する)が透光性材料であるガラスにより形成されており、有機EL素子11からの光を取り出す側とは反対側の封止部材30(以下、説明の便宜上、第2の封止部材30とも称する)も透光性材料であるガラスにより形成されている。
【0045】
各封止部材20,30のガラス基板としては、無アルカリガラス基板を用いているが、無アルカリガラス基板に限らず、例えば、ソーダライムガラス基板などを用いてもよい。また、各封止部材20,30で用いるガラス基板については、有機EL素子11を形成するためのものではないので、算術平均粗さRaが数100nm以上のガラス基板を用いることができる。
【0046】
また、各封止部材20,30の平面視形状はプラスチックフィルム10の素子形成部10aと略同じ矩形状に形成してある。そして、各封止部材20,30は、有機EL素子モジュール1側の表面の周部を全周に亘って有機EL素子モジュール1と接合してある。ここにおいて、各封止部材20,30と有機EL素子モジュール1とを接合する接合部40,50は、接着剤(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂など)により構成してあるが、これに限らず、例えば、接着用フィルム、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、などにより構成してもよい。なお、有機EL素子11は、平面視において陽極12、有機EL層13、陰極14の3つが重複する領域が発光部となる。
【0047】
気密シール部61,62は、無機材料(例えば、SiO、Si、Alなど)により形成されている。しかして、気密シール部61,62が無機材料により形成されていることにより、気密シール部61,62が樹脂により形成されている場合に比べて、気密シール部61,62の非透湿性(バリア性)を高めることができる。また、気密シール部61と気密シール部62とで、各突出片10b,10bだけでなく各封止部材20,30の全体も覆っており、気密シール部61と気密シール部62とがプラスチックフィルム10の突出片10b,10bの側縁で繋がっている。したがって、水分やガスの侵入経路の沿面距離を長くすることができ、発光装置の気密性をより高めることができる。
また、プラスチックフィルム10の上記一表面側において、気密シール部62のうち突出片10bを覆うように延設された部位には、各外部接続電極16,18を露出させる開口部62bが形成されている。
【0048】
気密シール部61,62の材料である無機材料として、SiO、Si、Alなどを採用する場合には、気密シール部61,62は、例えば、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法により形成すればよい。このようなLPCVD法やALD法によれば、有機EL素子モジュール1の耐熱温度よりも低い成膜温度(例えば、100℃程度)で気密シール部61,62を同時に形成することができる。LPCVD法やALD法などにより気密シール部61,62を形成する場合、有機EL素子モジュール1および各封止部材20,30において、気密シール部61,62を形成したくない部位(図1の例では、開口部62bに対応する部位)に、着脱自在な保護シールを貼付しておき、気密シール部61,62の成膜後に保護シールを剥がすようにすれば、開口部62bを簡単に形成することができる。LPCVD法とALD法との比較では、LPCVD法の方がALD法に比べて、成膜速度が速いので、製造コストの低コスト化の点で有利であり、また、ALD法の方がLPCVD法に比べて、より緻密な膜の成膜が可能なので、耐湿性を高めるという点で有利である。また、ALD法の方がLPCVD法に比べて成膜温度の低温化を図れる。
【0049】
ところで、本実施形態の発光装置では、有機EL素子11から放射された光が第1の封止部材20を透過する際にフレネル反射による損失(フレネルロス)が生じる。
【0050】
したがって、本実施形態の発光装置では、第1の封止部材20を透過する際のフレネルロスを低減することが望ましい。
【0051】
ここで、図1に示した例では、気密シール部61が、第1の封止部材20の光取り出し面上まで延設されているので、気密シール部61のうち第1の封止部材20の光取り出し面上に形成された部位が、アンチリフレクションコート(anti-reflection coat:以下、AR膜と略称する)として機能するように気密シール部61の材料および厚みを設定すれば、フレネルロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。一例として、AR膜を例えば屈折率nが1.58のAl膜により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.58)=87.0nmとすればよい。また、気密シール部61,62は、単層膜に限らず、多層膜でもよく、AR膜も単層膜に限らず、多層膜でもよい。
【0052】
また、フレネルロスを抑制する他の手段としては、第1の封止部材20の光取り出し面側に、モスアイ(蛾の目)構造を設けることが考えられる。モスアイ構造は、先細り状の微細突起が2次元アレイ状に配列されて2次元周期構造を有しており、多数の微細突起と隣り合う微細突起間に入り込んだ媒質とで反射防止部が構成されることとなる。ここにおいて、モスアイ構造では、フレネルロスの原因となる屈折率界面がなくなった状態が擬似的に得られる。したがって、モスアイ構造では、AR膜に比べて、波長や入射角に対する依存性を小さくでき、かつ、反射率も小さくすることができる。
【0053】
上述のモスアイ構造は、例えば、ナノインプリント法により形成することができるが、ナノプリント法以外の方法(例えば、レーザ加工技術)で形成してもよい。また、モスアイ構造は、例えば、三菱レイヨン株式会社製のモスアイ型無反射フィルムにより構成してもよい。
【0054】
また、本実施形態の発光装置は、光を取り出す側の第1の封止部材20が、プラスチックフィルム10の上記他表面側に配置されるものであり、且つ、プラスチックフィルム10よりも屈折率が低く、有機EL素子モジュール1が、プラスチックフィルム10の上記他表面側に設けられ発光層から放射された光の上記他表面での反射を抑制する凹凸構造部19を備えており、凹凸構造部19の表面と第1の封止部材20との間に空間70が存在している。
【0055】
しかして、本実施形態の発光装置では、有機EL素子11の発光層から放射され第1の封止部材20まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0056】
ところで、有機EL素子11の発光層およびプラスチックフィルム10それぞれの屈折率は、光が取り出される外部雰囲気である空気の屈折率に比べて大きい。したがって、上述の凹凸構造部19が設けられずにプラスチックフィルム10と第1の封止部材20との間の空間が空気雰囲気となっている場合には、プラスチックフィルム10からなる第1の媒質と空気からなる第2の媒質との界面で全反射が生じ、全反射角以上の角度で当該界面に入射する光は反射される。そして、第1の媒質と第2の媒質との界面で反射された光が有機EL層13またはプラスチックフィルム10内部において多重反射し、外部に取り出されずに減衰するので、光取出し効率が低下する。また、第1の媒質と第2の媒質との界面に全反射角未満の角度で入射した光についても、フレネル反射が発生するため、さらに光取り出し効率が低下する。
【0057】
これに対して、本実施形態では、上述の凹凸構造部19を設けてあるので、有機EL素子モジュール1の外部への光取り出し効率を向上させることができる。
【0058】
凹凸構造部19は、2次元周期構造を有している。ここで、当該2次元周期構造の周期は、発光層で発光する光の波長が300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。
【0059】
周期を例えば5λ〜10λの範囲で設定した場合には、幾何光学的な効果、つまり、入射角が全反射角未満となる表面の広面積化により、光取り出し効率が向上する。また、周期を例えばλ〜5λの範囲で設定した場合には、回折光による全反射角以上の光を取り出す作用により、光の取り出し効率が向上する。また、周期をλ/4〜λの範囲で設定した場合には、凹凸構造部19付近の有効屈折率がプラスチックフィルム10の上記一表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に低下することとなり、プラスチックフィルム10と空間70との間に、凹凸構造部19の媒質の屈折率と空間70の媒質の屈折率との中間の屈折率を有する薄膜層を介在させるのと同等となり、フレネル反射を低減させることが可能となる。要するに、周期をλ/4〜10λの範囲で設定すれば、反射(全反射あるいはフレネル反射)を抑制することができ、有機EL素子モジュール1の光取り出し効率が向上する。ただし、幾何光学的な効果による光取り出し効率の向上を図る際の周期の上限としては、1000λまで適用可能である。また、凹凸構造部19は、必ずしも2次元周期構造などの周期構造を有している必要はなく、凹凸のサイズがランダムな凹凸構造や周期性のない凹凸構造でも光取り出し効率の向上を図れる。なお、異なるサイズの凹凸構造が混在する場合(例えば、周期が1λの凹凸構造と5λ以上の凹凸構造とが混在する場合)には、その中で最も凹凸構造部19における占有率の大きい凹凸構造の光取り出し効果が支配的になる。
【0060】
凹凸構造部19は、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成してあるが、これに限るものではない。例えば、プラスチックフィルム10の上記他表面に凹凸構造部19をインプリント法(ナノインプリント法)により形成してもよい。
【0061】
本実施形態では、有機EL素子モジュール1と第1の封止部材20とを接合する接合部40の厚み寸法を適宜設定することにより、凹凸構造部19の表面と第1の封止部材20との間に空間70を確保することも可能である。ただし、この場合には、凹凸構造部19の表面に傷が付くのを防止するためのハードコートを施すか、あるいは、硬度が十分に高いプリズムシートを用いるか、あるいは、硬化後の硬度が十分に高い透明材料を用いることが望ましい。ハードコートを施すためのハードコート剤としては、例えば、東洋インキ製のTYZシリーズ(〔平成21年12月22日検索〕、インターネット<URL:http://www.toyoink.co.jp/products/lioduras/index.html>)などの高屈折率タイプ(屈折率が1.63〜1.74程度)のハードコート剤を採用することができる。なお、TYZシリーズは、エポキシ樹脂などにフィラーとしてジルコニアを混入させた紫外線硬化型のハードコート剤である。また、たとえ第1の封止部材20と凹凸構造部19とが接触したとしても、第1の封止部材20と凹凸構造部19との間に空間70があれば、光取り出し効率の向上を図れる。
【0062】
ところで、発光装置は、凹凸構造部19の表面と第1の封止部材20との間に空間70が存在することが重要である。仮に、凹凸構造部19の表面が、当該凹凸構造部19と第1の封止部材20との界面であるとすると、第1の封止部材20と外部の空気との屈折率界面が存在するため、当該屈折率界面で再び全反射が生じる。これに対して、有機EL素子11からの光を一旦、空間70へ取り出すことができるので、空間70の空気と第1の封止部材20との界面、第1の封止部材20と外部の空気との界面で全反射ロスが生じなくなる。なお、空間70には、ドライ窒素などの不活性ガスを封入することが好ましい。
【0063】
以上説明した本実施形態の発光装置では、有機EL素子モジュールをプラスチックフィルムの厚み方向の両側から挟み有機EL素子およびプラスチックフィルムにおいて有機EL素子が形成された領域を囲む一対の封止部材20,30を備え、各封止部材20,30のうち少なくとも、有機EL素子11からの光を取り出す側の封止部材20が透光性材料により形成されているので、有機EL素子11の発光層などの材料や成膜方法の選択の自由度が高く、発光効率の向上を図れる。
【0064】
また、本実施形態の発光装置では、各封止部材20,30と有機EL素子モジュール1との接合部40,50の周辺を被覆して水分およびガスの外部からの侵入を阻止する気密シール部61,62を設けてあるので、耐湿性を向上でき、長寿命化を図れる。
【0065】
また、本実施形態の発光装置では、各封止部材20,30が、それぞれガラス基板により構成されているので、少なくとも一方が有機材料により形成されている場合に比べて、耐湿性および耐候性を高めることができ、長寿命化を図れる。
【0066】
また、本実施形態の発光装置では、気密シール部61,62が、無機材料により形成されているので、有機材料により形成されている場合に比べて、気密シール部61,62の非透湿性(バリア性)を高めることができ、長寿命化を図れる。
【0067】
また、本実施形態の発光装置は、有機EL素子11の陽極12および陰極14のうちプラスチックフィルム10から遠い側の陰極14とプラスチックフィルム10の上記一表面側の第2の封止部材30とが面接触している。しかして、有機EL素子11で発生した熱を第2の封止部材30を通して効率よく放熱させることが可能となるから、有機EL素子11の温度上昇を抑制することができて長寿命化を図れ、しかも、有機EL素子11へ流す電流を大きくできて高輝度化を図れる。ここにおいて、本実施形態の発光装置では、第2の封止部材30をガラス基板により構成しているので、第2の封止部材30が樹脂の場合に比べて、放熱性を向上させることができる。
【0068】
ところで、第2の封止部材30は、図3に示すように、有機EL素子11を封止するエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの封止樹脂により形成してもよい。封止部材30を封止樹脂により形成する場合には、プラスチックフィルム10の上記一表面側から封止樹脂を塗布して第2の封止部材30を形成すればよい。また、第2の封止部材30は、封止樹脂からなる樹脂部と、当該樹脂部の表面を覆う金属膜とで構成してもよく、この場合は耐湿性および放熱性の向上を図れる。要するに、各封止部材20,30のうち少なくとも、有機EL素子11からの光を取り出す側の第1の封止部材20が透光性材料により形成されていればよい。
【0069】
また、発光装置の構造は、図1や図3の例に限らず、例えば、図4〜6に示す構造でもよい。
【0070】
図4の発光装置の基本構成は図1の構成と略同じであり、第1の封止部材20の形状が相違するだけである。図4における第1の封止部材20は、有機EL素子モジュール1との対向面に凹凸構造部19が収納される凹部21を設けることで、凹凸構造部19の表面と第1の封止部材20との間に空間70を確保している。したがって、図1の構成に比べて、凹凸構造部19に傷が付く可能性を低減できて、ハードコートなどを不要として低コスト化を図れるだけでなく、第1の封止部材20と有機EL素子モジュール1との接合部40の厚み寸法を小さくすることができ、気密性の向上を図れる。
【0071】
また、図5の発光装置の基本構成は図4の構成と略同じであり、第2の封止部材30の形状が相違するだけである。図5における第2の封止部材30は、有機EL素子モジュール1との対向面に有機EL素子11が収納される凹部31を設けてあり、有機EL素子11の陰極14と第2の封止部材30とが離間している。したがって、図1や図4の構成に比べて、有機EL素子モジュール1と第2の封止部材30との接合時に、有機EL素子11がダメージを受ける可能性を低減できるとともに、第2の封止部材30と有機EL素子モジュール1との接合部50の厚み寸法を小さくすることができ、気密性の向上を図れる。
【0072】
また、図6の発光装置の基本構成は図5の構成と略同じであり、気密シール部61,62を無機材料ではなく、樹脂により形成している点が相違する。この発明によれば、前記気密シール部を容易に且つ低コストで形成することができる。このような樹脂としては、非透湿性の高い樹脂(例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂、紫外線硬化性のエポキシ樹脂、アミン系エポキシ樹脂など)を用いる。また、気密シール部61,62を樹脂により形成する場合には、水分やガスの侵入経路の沿面距離を長くすることが好ましい。
【0073】
また、図5や図6の構成において、有機EL素子モジュール1とプラスチックフィルムの上記一表面側の第2の封止部材30とで囲まれた空間に封止用の液体(例えば、シリコーンオイル、パラフィンオイルなど)を封入してもよい。この場合、有機EL素子11で発生した熱を、液体を介して効率よく放熱させることが可能となるから、有機EL素子11の温度上昇を抑制することができて長寿命化を図れ、しかも、有機EL素子11へ流す電流を大きくできて高輝度化を図れる。ただし、図1や図4の構成の方が、有機EL素子11で発生した熱を直接、第2の封止部材30に伝熱させることができるので、放熱性の点では優れている。また、液体により封止する場合に比べて、製造が容易で且つ低コスト化を図れる。
【0074】
なお、液体を封入する場合には、例えば、あらかじめ第2の封止部材30に、液体の注入孔(図示せず)と、空気抜き孔(図示せず)とを形成しておき、有機EL素子モジュール1に接合した後で、注入孔を通して液体を注入し、その後、注入孔および空気抜き孔を接着剤などにより封止し、さらに気密シール部62を形成すればよい。
【0075】
ただし、有機EL素子モジュール1とプラスチックフィルムの上記一表面側の第2の封止部材30とで囲まれた空間に、必ずしも液体を封入する必要はなく、不活性ガス雰囲気や真空雰囲気としてもよい。この場合、上述の注入孔および空気抜き孔が不要であることは勿論である。
【0076】
なお、図5の構成に限らず、図1〜図4や図6の構成においても、気密シール部61,62を図5と同様に樹脂により形成してもよい。
【0077】
また、図5や図6のように、有機EL素子11と第2の封止部材30とが離間している場合には、例えば、第2の封止部材30の凹部31の内底面などに、水分を吸着する吸水材を貼り付けておいてもよい。吸水材としては、例えば、酸化カルシウム系の乾燥剤(酸化カルシウムを練り込んだゲッタ)などを用いればよい。
【0078】
また、有機EL素子モジュール1における各外部接続電極16,18および各接続配線15,17などのレイアウトは図1の例に限らず、例えば、図7に示すように、陽極12に電気的に接続される第1の外部接続電極16の配置および幅と、陰極14に電気的に接続される第2の外部接続電極18の配置および幅との関係を図1の場合とは逆にしてもよい。ただし、各接続配線15については、矩形状の陽極12の互いに対向する2辺それぞれの全長に亘って陽極12に重なるように配置することが好ましい。このような配置とすることで、図7のレイアウトの場合にも、透明導電膜からなる陽極12の電位勾配に起因した輝度むらを低減できる。
【符号の説明】
【0079】
1 有機EL素子モジュール
10 透光性基板
11 有機EL素子
12 陽極(電極)
13 有機EL層
14 陰極(電極)
16 外部接続電極
18 外部接続電極
19 凹凸構造部
20 封止部材
30 封止部材
40 接合部
50 接合部
61 気密シール部
61c アンチリフレクションコート
62 気密シール部
70 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に離間した一対の電極間に発光層を有する有機EL素子および前記有機EL素子の前記各電極それぞれに電気的に接続された外部接続電極が透明なプラスチックフィルムの一表面側に形成された有機EL素子モジュールと、前記有機ELモジュールを前記プラスチックフィルムの厚み方向の両側から挟み前記有機EL素子および前記プラスチックフィルムにおいて前記有機EL素子が形成された領域を囲む一対の封止部材とを備え、前記各封止部材のうち少なくとも、前記有機EL素子からの光を取り出す側の前記封止部材が透光性材料により形成され、前記各封止部材と前記有機EL素子モジュールとの接合部の周辺を被覆して水分およびガスの外部からの侵入を阻止する気密シール部を設けてなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記各封止部材は、それぞれガラス基板からなることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記気密シール部は、無機材料により形成されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記気密シール部は、樹脂により形成されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項5】
前記気密シール部が、前記光を取り出す側の前記封止部材の光取り出し面上まで延設されており、前記気密シール部のうち前記光取り出し面上に形成された部位が、アンチリフレクションコートとして機能するように前記気密シール部の材料および厚みを設定してあることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記光を取り出す側の前記封止部材が、前記プラスチックフィルムの他表面側に配置されるものであり、且つ、前記プラスチックフィルムよりも屈折率が低く、前記有機EL素子モジュールが、前記プラスチックフィルムの前記他表面側に設けられ前記発光層から放射された光の前記他表面での反射を抑制する凹凸構造部を備え、前記凹凸構造部の表面と前記光を取り出す側の前記封止部材との間に空間が存在することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記光を取り出す側の前記封止部材が前記プラスチックフィルムの他表面側に配置されるものであり、前記有機EL素子モジュールと前記プラスチックフィルムの前記一表面側の前記封止部材とで囲まれた空間に封止用の液体が封入されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記光を取り出す側の前記封止部材が、前記プラスチックフィルムの他表面側に配置されるものであり、前記有機EL素子の前記各電極のうち前記プラスチックフィルムの前記一表面から遠い側の前記電極と前記プラスチックフィルムの前記一表面側の前記封止部材とが面接触していることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−165445(P2011−165445A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25927(P2010−25927)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】