発光装置
【課題】発光装置の額縁領域を縮小するとともに、発光素子の輝度ムラを抑制する。
【解決手段】発光装置1においては、素子層30の上に、第2層間絶縁膜35と、補助電極150と、共通電極72が順に積層される。補助電極150の端E4は、共通電極72の端E1よりも基板10の面内において外側に位置するよう形成され、共通電極72の端E1は、第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に位置するよう形成される。補助電極150は、共通電極72に電位を供給する第2電極用電源線と重なって電気的に接続される部分を有する。
【解決手段】発光装置1においては、素子層30の上に、第2層間絶縁膜35と、補助電極150と、共通電極72が順に積層される。補助電極150の端E4は、共通電極72の端E1よりも基板10の面内において外側に位置するよう形成され、共通電極72の端E1は、第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に位置するよう形成される。補助電極150は、共通電極72に電位を供給する第2電極用電源線と重なって電気的に接続される部分を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence)素子などの発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上の有効領域に複数の発光素子が配列され、有効領域を囲む周辺領域に各種配線等が配置された発光装置が知られている。各発光素子は、第1電極と第2電極の間に挟まれ有機EL材料などの発光材料で形成される発光層を有する。多くの場合、この第2電極は複数の発光素子に共通して設けられた共通電極であり、上記有効領域全体にわたって設けられる。しかしながら、電極自体が有する抵抗により電極の面内において電圧降下が発生し、基板における位置によって発光素子に供給される電位がばらついて発光素子の輝度が位置によってばらつくおそれがある。そこで、従来から、共通電極よりも低抵抗の材料で形成され共通電極と電気的に接続された補助電極を設け、共通電極の抵抗を下げることが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−352963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、補助電極は、例えば、アルミニウムなどの遮光性の部材で形成される場合が多い。このため、発光素子からの出射光を遮ることがないように発光素子の間隙の領域を通るように形成されるのが望ましく、高精度な位置合わせ機構を用いて形成されるのが望ましい。これに対し、共通電極は光透過性の材料で形成されて、有効領域全体を覆う領域に一様に形成される。よって、補助電極と比較して、位置合わせにおける誤差が許容され得る。よって、補助電極よりも共通陰極の位置合わせの誤差が問題となる。したがって、共通電極の誤差を吸収可能なように基板上において周辺領域の幅(いわゆる、「額縁領域」)を十分に確保することが望ましく、装置の小型化の妨げとなっていた。
【0005】
また、発光素子の発光を制御するためのトランジスタなどの回路素子は、共通電極や補助電極の下層に配置される。このため、共通電極および補助電極との間に絶縁層を設けて、共通電極および補助電極を回路素子から絶縁する。ところが、絶縁層が段差を含む場合には、その段差と重なる上層部分で電極に断線や亀裂が生じるおそれがある。断線や亀裂が生じた箇所では電極の抵抗値が増加するので、発光素子の輝度ムラが顕著となる。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、発光装置の額縁領域を縮小するとともに、発光素子の輝度ムラを抑制するこが可能な発光装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発光装置は、基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有し、前記各発光素子は第1電極と第2電極と両者の間にある発光層とを有し、前記第2電極は前記複数の発光素子に共通に設けられ、前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層を有する発光装置であって、前記第2電極と電気的に接続した補助電極と、前記素子層の上層に配置されるとともに、前記第2電極および前記補助電極よりも下層に配置される部分を有し、前記第2電極および前記補助電極を前記回路素子から絶縁するための絶縁層とを有し、前記第2電極は、前記有効領域を覆い、前記周辺領域にはみだして一様に形成され、前記補助電極は、前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通り、前記周辺領域の一部に形成され、前記周辺領域において、前記第2電極の端は、前記基板の面内において前記補助電極の端および前記絶縁層の端の各々よりも内側に位置する。
【0007】
本発明の発光装置においては、補助電極の端は共通電極の端よりも外側に配置される。また、補助電極は、有効領域においては、発光素子の間隙の領域を通るように形成される。このため、高精度な位置合わせ機構を用いて形成されるのが望ましい。これに対し、共通電極は有効領域全体を覆う領域に一様に形成されるから、共通電極の形成に際しては、位置合わせ精度が補助電極ほど要求されない。すなわち、補助電極は共通電極よりも小さな誤差で形成される場合が多い。よって、本発明によれば、共通電極の端を補助陰極の端よりも外側に配置する構成と比較して、補助電極の誤差に応じて額縁領域を縮小することができ、装置の小型化が可能となる。そして、補助電極は、第2電極よりも抵抗が低くなるように構成される。特に、補助電極は、第2電極よりも低抵抗の材料で形成されることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明の発光装置では、共通電極の端は絶縁層の端よりも内側に配置される。絶縁層は、例えば、回路段差平坦化膜であり、下層の凸凹を平坦化するために厚く形成されることが多い。よって、絶縁層の端は大きな段差となる。これに対し、共通電極は、脆い材料で形成されたり、あるいは薄く形成されることが多いので、絶縁層の端の段差の影響で共通電極に断線または亀裂が生じることがある。しかしながら、本発明においては、共通電極の端は絶縁層の端よりも内側に配置されるから、共通電極における断線や亀裂が防止される。よって、断線や亀裂による抵抗値の増加を未然に防ぐことができる。したがって、発光素子の輝度ムラを抑制することが可能である。本発明の好適な態様において、前記第2電極は、前記補助電極の下層に配置されるのが好ましい。この態様によれば、第2電極を外気から保護することができる。
【0009】
加えて、本発明の第2の発光装置は、基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有する発光装置であって、前記複数の発光素子の各々に対応して設けられた複数の第1電極と、前記複数の発光素子に共通に設けられた第2電極と、前記複数の第1電極と前記第2電極との間に介在する発光層と、前記第2電極と電気的に接続した補助電極と、前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層と、前記第2電極または前記補助配線と前記素子層との間を絶縁する絶縁層とを備え、前記第2電極は、前記有効領域全体と前記周辺領域の少なくとも一部とを含む第1の領域に設けられており、前記絶縁層は、前記有効領域全体において前記第1の領域と重なり、前記周辺領域において前記第1の領域よりも第1の方向にはり出した第2の領域に設けられており、前記補助電極は、前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通るように設けられており、且つ、前記周辺領域において、前記第1の領域の内側と前記第1の領域の外側であって且つ前記第2の領域の内側である領域とを通り前記第2の領域の外側に至るように設けられている。
【0010】
上記第2の発光装置においては、補助電極は、共通電極が設けられた第1の領域よりも外側の領域にも設けられる。よって、補助電極の端は共通電極の端よりも外側に配置される。また、補助電極は、有効領域においては、発光素子の間隙の領域を通るように形成されるから、補助電極の形成には高精度な位置合わせ機構を用いられる。これに対し、共通電極は有効領域全体を覆う領域に一様に形成されるから、共通電極の形成に際しては位置合わせ精度が補助電極ほど要求されない。よって、補助電極の誤差は共通電極よりも小さいので、本発明によれば、共通電極の端を補助陰極の端よりも外側に配置する構成と比較して、補助電極の誤差に応じて額縁領域を縮小することができ、装置の小型化が可能となる。
【0011】
さらに、上記第2の発光装置では、共通電極が設けられた第1の領域は、絶縁層が設けられる第2の領域よりも内側に配置される。よって、絶縁層の端と共通電極とが重なる部分において、共通電極における断線や亀裂による抵抗値の増加を未然に防ぐことができる。したがって、発光素子の輝度ムラを抑制することが可能である。
【0012】
上記第2の発光装置の好適な態様において、前記複数の発光素子は、マトリクス状に配列しており、前記補助電極は、前記複数の発光素子の間隙を通り、且つ、前記有効領域の内側から外側に至るように、第1の方向に沿ってストライプ状に設けられた複数の個別電極を有する。好ましくは、前記補助電極は、前記周辺領域において前記複数の個別電極を互いに接続する接続電極をさらに有するようにしてもよい。この場合、前記絶縁層の前記第1の方向における端が、前記接続電極と重なるように前記接続電極を配置するようにしてもよい。
【0013】
上記第2の発光装置の別の好適な態様において、前記複数の発光素子は、マトリクス状に配列しており、前記補助電極は、前記複数の発光素子の間隙を通り、且つ、前記有効領域の内側から前記第2の領域の外側に至るように前記第1の方向に沿ってストライプ状に設けられた複数の個別電極である。
【0014】
また、上記第2の発光装置について上述したいずれかの態様において、前記第2電極に電位を供給するための第2電極用電源線が、前記第1の方向と交差するように前記周辺領域に設けられており、前記第2電極用電源線は、前記補助電極と電気的に接続される。この場合、好ましくは、前記第2電極用電源線は、前記第1の領域の外側に設けるようにしてもよい。
さらに、本発明は、上記いずれかの態様の第1または第2の発光装置を有する電子機器としても把握される。この電子機器によれば、上述のいずれかの効果を達成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成の一部を示す概略平面図であり、(B)は(A)の状態の後に補助電極および画素電極をさらに形成した状態を示す平面図である。
【図2】同装置の画素回路の詳細を示す回路図である。
【図3】図1(B)の一部の拡大図である。
【図4】同装置の部分断面図である。
【図5】同装置の部分簡略断面図である。
【図6】比較例において、共通電極に亀裂が生じた様子を示す図である。
【図7】第1実施形態の変形例に係る発光装置の部分断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る発光装置の部分断面図である。
【図9】同装置の部分簡略断面図である。
【図10】本発明の変形例に係る発光装置の部分簡略断面図である。
【図11】本発明の変形例に係る発光装置の部分簡略断面図である。
【図12】本発明の変形例に係る発光装置のレイアウトの概略である。
【図13】本発明の変形例に係る発光装置のレイアウトの概略である。
【図14】発光装置を採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図15】発光装置を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【図16】発光装置を適用した携帯情報端末の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
<A−1:第1実施形態>
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る発光装置1の構成の一部を示す概略平面図であり、図1(B)は図1(A)の状態の後に補助電極150および画素電極76をさらに形成した状態を示す平面図である。図1(A)に示すように、この発光装置1は、基板10とフレキシブル基板20とを備える。基板10の端部には接続端子が形成され、この接続端子とフレキシブル基板20に形成された接続端子とが、ACF(anisotropic conductive film:異方性導電膜)と呼ばれる導電粒子を含有したフィルム状の接着剤を介して圧着固定される。また、フレキシブル基板20には、データ線駆動回路200が設けられており、さらに、フレキシブル基板20を介して各種の電源電圧が基板10に供給される。
【0017】
基板10には、有効領域Aと、その外側(つまり基板もしくは基板10の外周と有効領域Aの間)の周辺領域Bが設けられている。周辺領域Bには走査線駆動回路100Aおよび100B、ならびにプリチャージ回路120が形成されている。プリチャージ回路120は書き込み動作に先立って、データ線112の電位を所定の電位に設定するための回路である。走査線駆動回路100Aおよび100B、ならびにプリチャージ回路120は、有効領域Aの周辺にある周辺回路である。但し、周辺回路は、単位回路Pや配線の良否を検査する検査回路(図示せず)を含んでもよいし、データ線駆動回路200が周辺領域Bに設けられた周辺回路であってもよい。
【0018】
有効領域Aには、複数の走査線111と複数のデータ線112が形成され、それらの交差点の各々の近傍には複数の単位回路(画素回路)Pが設けられている。単位回路PはOLED(organic light emitting diode)素子を含み、電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は第1電極用電源線130に接続されている。
【0019】
図2は、発光装置1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。各単位回路Pは、nチャネル型のトランジスタ68、pチャネル型のトランジスタ60、容量素子69、および発光素子(OLED素子)70を含む。pチャネル型のトランジスタ60のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極は発光素子70の陽極に接続される。また、トランジスタ60のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。nチャネル型のトランジスタ68のゲート電極は走査線111に接続され、そのソース電極は、データ線112に接続され、そのドレイン電極はトランジスタ60のゲート電極と接続される。
【0020】
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線111を走査線駆動回路100Aおよび100Bが選択すると、トランジスタ68がオンされて、データ線112を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、トランジスタ60が、データ信号のレベルに応じた電流を発光素子70に供給する。これにより、発光素子70は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0021】
また、図1(A)に示すように、周辺領域Bの外周部側(つまり基板もしくは基板10の外周と周辺領域Bの間)には、コの字状の第2電極用電源線140が形成されている。第2電極用電源線140は、後述するように発光素子の陰極(第2電極)に電源電圧(この例では、Vss:グランドレベル)を供給するための配線である。なお、第2電極用電源線140をコの字状に(つまり、基板10の3辺に沿って)配設する替わりに、基板10の対向する2辺に沿って設ける態様としてもよい。すなわち、図示の例では、各走査線駆動回路100Aおよび100Bに沿って配設されてもよい。
【0022】
発光素子70は、画素電極76(陽極)と共通電極72(陰極)との間に挟まれた発光機能層(発光層を含む)74を有する(図4参照)。共通電極72は、図1(B)に示すように有効領域A全体と周辺領域Bの一部にわたる領域(第1の領域)に形成される。また、共通電極72と第2電極用電源線140とを接続する補助電極150が、周辺領域Bにおいて周辺回路を覆うように形成される。補助電極150は、有効領域Aに設けられる補助電極の第1部分150aと、周辺領域Bに設けられる補助電極の第2部分150bとを含んでいる。有効領域Aでは補助電極150の第1部分150aと画素電極76とが接触しないように、補助電極150の第1部分150aが格子状に形成されている。つまり発光素子70の間隙に補助電極150の第1部分150aが配置されている。本明細書でいう補助電極とは、共通電極72に重ねて電気的に接続され、共通電極72の抵抗を下げる導体のことである。明確化のため、図3に、図1(B)の一部を拡大して示す。
【0023】
この実施形態の発光装置1は、トップエミッションの形式で構成されており、発光機能層74からの光が共通電極72を通過して射出される。共通電極72は、透明材料から形成されている。このため、周辺領域Bを共通電極72によって遮光することはできない。一方、上述した補助電極150には、導電性および遮光性を有する金属が用いられるため、補助電極150によって遮光が可能である。これにより、周辺回路に光が入射して光電流が発生することを抑制できる。また、補助電極150は、有効領域Aの画素電極76と同一の工程で形成され得る。したがって、周辺領域Bに遮光性を付加するために特別な工程は不要である。
【0024】
図4に発光装置1の部分断面図を示す。同図において、有効領域Aには発光素子70が形成される一方、周辺領域Bには周辺回路たる走査線駆動回路100Aが形成される。同図において発光装置1の上面が光を射出する射出面となる。同図に示すように、基板10の上に下地保護層31が形成され、その上にトランジスタ40、50、および60が形成される。トランジスタ40はnチャネル型、トランジスタ50および60はpチャネル型である。トランジスタ40,50は走査線駆動回路100Aの一部であり、トランジスタ60と発光素子70は単位回路Pの一部である。
【0025】
トランジスタ40、50、および60は、基板10の表面に形成された酸化珪素を主体とする下地保護層31の上に設けられている。下地保護層31の上層にはシリコン層401、501および601が形成される。シリコン層401、501および601を覆うように、ゲート絶縁層32が下地保護層31の上層に設けられる。ゲート絶縁層32は、例えば酸化珪素から形成される。ゲート絶縁層32の上面のうちシリコン層401、501および601に対向する部分にゲート電極42、52および62が設けられる。トランジスタ40においてゲート電極42を介してシリコン層401にはV族元素がドーピングされ、ドレイン領域40cおよびソース領域40aが形成される。ここで、V族元素がドーピングされていない領域がチャネル領域40bとなる。
【0026】
トランジスタ50および60においてゲート電極52および62を介してシリコン層501および601にはゲート電極52および62を介してIII族元素がドーピングされ、ドレイン領域50aおよび60a、ならびにソース領域50cおよび60cが形成される。ここで、III族元素がドーピングされていない領域がチャネル領域50bおよび60bとなる。なお、トランジスタ40、50、および60のゲート電極42、52、および62を形成するのと同時に走査線111が形成される。
【0027】
第1層間絶縁層33が、ゲート電極42、52および62を覆うようにゲート絶縁層32の上層に形成される。第1層間絶縁層33の材料には酸化珪素等が用いられる。さらに、ソース電極41、51、および63、ドレイン・ソース電極43、ならびにドレイン電極61が、ゲート絶縁層32および第1層間絶縁層33にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層401、501、および601と接続される。また、これらの電極と同一の工程で第2電極用電源線140、データ線112および電流供給線113が形成される。これらの電極および第2電極用電源線140などは導電性を有するアルミニウム等の材料で形成される。
【0028】
回路保護膜34が、ソース電極41、51、および63、ドレイン・ソース電極43、ドレイン電極61、ならびに第2電極用電源線140を覆うように第1層間絶縁層33の上層に設けられる。回路保護膜34は、例えば、窒化珪素や酸窒化珪素などのガス透過率が低い材料から形成されている。また、これらの窒化珪素や酸窒化珪素は、非晶質材料であってもよいし、水素を含んでいても良い。回路保護膜34により、トランジスタ40、50、および60からの水素の離脱を防止できる。なお、回路保護膜34をソース電極やドレイン電極の下に形成してもよい。
【0029】
第2層間絶縁膜35が回路保護膜34の上層に設けられる。ここで、第2層間絶縁膜は、ソース電極41、51、および63、ドレイン・ソース電極43、ドレイン電極61、ならびに第2電極用電源線140と、後述の画素電極76、補助電極150、あるいは共通電極72との間に設けられ、これらを絶縁する役目を果たす。この際に、走査線や信号線に供給される信号が遅延しないように、膜厚が設定される。なお、第2層間絶縁膜35は、回路保護膜34に対向する下面の凹凸よりも回路保護膜34とは反対の上面の凹凸が小さくすることが好ましい。つまり、トランジスタ40,50,60、走査線111、データ線112、電流供給線113などにより生ずる凹凸を平坦化するために、第2層間絶縁膜35は用いられる。この第2層間絶縁膜35は、有効領域A全体において上述の第1の領域(共通電極72が形成される領域)と重なり、周辺領域Bにおいて第1の領域よりも第1の方向にはり出した第2の領域に設けられる。詳細には、本実施形態においては、基板10の4辺のうち第2電極用電源線140が配設された左右両辺および上辺の少なくとも3辺側においては、第2の領域は第1の領域よりも基板10の面内における外側方向に突出している。
【0030】
第2層間絶縁膜35の材料には、例えば、アクリル系、ポリイミド系の有機高分子材料が用いられる。この場合、有機樹脂にパターニングのための感光性材料を混合して、フォトレジストと同様に露光でパターニングしても良い。あるいは、酸化珪素、酸窒化珪素等の無機材料から化学気相成長法(chemical vapor deposition: CVD)により第2層間絶縁膜35を形成し、エッチング等によりその上面を平坦化してもよい。無機材料は化学気相成長法によって膜を形成した場合、その膜厚は1μm以下であり、しかもほぼ一様であるから、上面が下層の凹凸の影響を受けやすいのに対し、有機樹脂はコーティングによって形成するのでその膜厚を2〜3μm程度に大きくでき、しかもその上面は下層の凹凸の影響を受け難いので第2層間絶縁膜35の材料に適している。尤も、ある程度の凹凸を許容するのであれば、酸化珪素、酸窒化珪素等の無機材料を第2層間絶縁膜35に用いることもできる。以上のように、第2層間絶縁膜はこのように所定の膜厚が必要であるため、周辺領域に段差を発生させることがある。
【0031】
第2層間絶縁膜35上には、有効領域Aで画素電極76(第1電極)および補助電極の第1部分150aを形成すると同時に、周辺領域Bに補助電極の第2部分150bを形成する。即ち、画素電極76と補助電極150とは同一の層において、同一の材料を用いて同時に形成される。この実施形態における画素電極76は発光素子70の陽極であり、発光素子70ごとに相互に離間して形成されて、第2層間絶縁膜35および回路保護膜34を貫通するコンタクトホールを介してトランジスタ60のドレイン電極61と接続される。また、陽極である画素電極76の材料としては、仕事関数が大きい材料が望ましく、例えば、ニッケル、金、白金等またはそれらの合金が好適である。これらの材料は反射性を持つので、発光機能層74で発光した光を共通電極72に向けて反射する。この場合には、補助電極150もこれらの材料から形成される。
【0032】
また、画素電極76としては、仕事関数が高いITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、またはZnO2のような酸化導電材料からなる光透過性、導電性を備えた第1層と、反射性の金属、例えばアルミニウムからなる第2層とを含み、発光機能層側に第1層が設けられる構成であってもよい。この場合には、補助電極150は、第1層と第2層の両方を有してもよいし、これらのうちいずれかの層を有していてもよい。
【0033】
補助電極150は、有効領域Aにおいて複数の発光素子70の間隙を通るように格子状に形成され(第1部分150a)、周辺領域においては第2層間絶縁膜35が形成された第2の領域が、共通電極72が形成された第1の領域よりもはみ出した側(本実施形態では基板10の左右両辺および上辺側)において、第1の領域の内側と第1の領域の外側であって且つ第2の領域の内側である領域とを通り第2の領域の外側に至るように形成される(第2部分150b)。補助電極150は、周辺領域Bにおいて、回路保護膜34に形成されたコンタクトホールを介して第2電極用電源線140と接続される。図示のように、第2電極用電源線140上には、第2層間絶縁膜35が形成されず、回路保護膜34にコンタクトホールを形成するだけで、補助電極150の第2部分150bを第2電極用電源線140に直接接触させることができる。
【0034】
次に、隔壁37を形成する。隔壁37は、各画素電極76の外形縁を隔壁37により覆うように形成されることにより、開口部37aを有する。よって、開口部37aの各々の全体は、画素電極76に重なり、発光機能層74が形成される前の段階では、開口部37aを通して画素電極76が露出している。隔壁37は、画素電極76とその後に形成される共通電極72(第2電極)との間、もしくは複数の画素電極76同士の間を絶縁するものである。隔壁37を設けることによりそれぞれの画素電極76を独立して制御することができ、複数の発光素子をそれぞれ所定の輝度で発光させることができる。つまり隔壁37は複数の発光素子を区分する。例えば、アクリルもしくはポリイミド等が隔壁37の絶縁性材料である。この場合、パターニングのため感光性材料を混合して、フォトレジストと同様に露光でパターニングしても良い。隔壁37にはコンタクトホールCHが同時に形成される。有効領域Aにおいて、このコンタクトホールCHを介して補助電極150の第1部分150aと後述する共通電極72が接続される。また、周辺領域Bにおける補助電極150の第2部分150bの上には、隔壁37と同一の層が設けられていない。
【0035】
次に、画素電極76の上に、少なくとも発光層を含む発光機能層74を形成する。発光層には有機EL物質が用いられる。有機EL物質は、低分子材料であっても良いし、高分子材料であっても良い。発光機能層74を構成する他の層として、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔ブロック層、および電子ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
【0036】
次に、有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって補助電極150および発光機能層74を覆うように、共通電極72(第2電極)が形成される。共通電極72は透光性であり、発光素子70からの光は、共通電極72を透過して図中上側の方向に射出される。この実施形態の共通電極72をすべての発光素子70の陰極として機能させるため、共通電極72は電子を注入しやすいように、仕事関数が低い材料によって形成される。例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、またはリチウム等やそれらの合金である。また、この合金は仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料を用いることが望ましい。例えば、マグネシウムと銀の合金が好適である。これらの金属または合金を共通電極72に使用する場合には、透光性を得るために厚さを小さくすればよい。
【0037】
また、共通電極72(第2電極)は、上記の仕事関数が低い材料、もしくは、仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料からある第1層と、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、またはZnO2のような酸化導電材料からなる光透過性、導電性を備えた第2層とを含み、発光機能層側に第1層が設けられる構成であってもよい。ITO、IZO、またはZnO2のような酸化導電材料は緻密な素材であり、ガス透過率が低い。このような材料で共通電極72を形成すれば、共通電極72が有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって形成されているため、有効領域Aの単位回路Pおよび周辺領域Bの周辺回路が外気から保護され、これらの劣化が抑制される。このように、共通電極72(第2電極)が上記の第2層を含む構成であれば、第1層を構成する材料と比して光透過性、導電性が優れているため、共通電極72の電源インピーダンスを大幅に低減することができるとともに、発光機能層からの光取り出し効率を向上させることができる。また、共通電極72(第2電極)が、仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料からある第1層と、上記の酸化導電材料からなる第2層とを含んで構成することにより、第1層と第2層が反応し、電子注入効率が劣化するのを防止することができる。
【0038】
また、共通電極72を形成するに先立って、隔壁37にはコンタクトホールCHが形成される。このコンタクトホールCHを介して有効領域Aにおいて補助電極の第1部分150aと共通電極72が接続される。有効領域Aにおいて格子状に形成される補助電極の第1部分150a(図1(B)参照)に共通電極72が接続されることにより、共通電極72の電源インピーダンスを大幅に低減することができる。これに加えて、補助電極の第2部分150bは、周辺領域Bにおいて隔壁37により覆われていないため共通電極72と広い面積で面接触するので、接続抵抗を下げることができる。したがって、電源インピーダンスを大幅に低減することが可能となる。
【0039】
次に、共通電極72および補助電極150を覆うように封止膜80が形成される。封止膜80には、例えば、透明度が高く防湿性が良好な酸窒化珪素、酸化珪素などのガス透過率が低い無機材料が用いられる。この封止膜80は、周辺回路(トランジスタ40,50を有する走査線駆動回路100A、100Bおよびプリチャージ回路120)の領域全体を覆っている。但し、基板10の外端縁には封止膜80が形成されず、この外端縁においては、回路保護膜34の上にシール90が接合され、その上部に透明封止基板(対向基板)110が接合される。シール90は、例えば、接着剤でもよいし、対向基板110を保持するためのスペーサを接着剤で接合してもよい。
【0040】
図5は、図4における領域Cの簡略断面図である。すなわち、周辺領域Bのうち、走査線駆動回路100の一部であるトランジスタ40,50より外側の端部の断面図である。説明の簡易のため、図4に示した下地保護層31、ゲート絶縁層32、第1層間絶縁層33、回路保護膜34およびこれらの各層に挟まれたトランジスタ40、50および60の各電極を、図5においては素子層30として纏めて示す。この素子層30内の上層部には、第2電極用電源線140が形成されており、上述したように、第2電極用電源線140の上面は上層の電極とのコンタクト領域として機能する。図4には、素子層30および第2電極用電源線140の他に、第2層間絶縁膜35、補助電極150、共通電極72、封止膜80、シール90および対向基板110が示されている。以下、この図を参照して、各層の相対的な位置関係について詳細に説明する。
なお、上述したように、第2層間絶縁膜35は下層に配置されたトランジスタや配線などにより生ずる凹凸を平坦化するために用いられる。加えて、第2層間絶縁膜35は、アクリル系、ポリイミド系の絶縁性の有機高分子材料などで形成され、素子層30内に配置されたトランジスタ40、50、60などの回路素子から陽極76、共通電極72、補助電極150等の電極を絶縁する機能も有する。すなわち、発光素子の発光を制御するための回路素子から各電極を絶縁する絶縁層として機能する。
【0041】
図5に示されるように、第2電極用電源線140を含む素子層30の上層には第2層間絶縁膜35が形成され、第2層間絶縁膜35の端E2は、第2電極用電源線140のコンタクト領域の内側の端E3よりもさらに内側である。第2層間絶縁膜35の上面と、素子層30の上面のうち第2層間絶縁膜35の端E2と端E3とに挟まれる領域およびコンタクト領域とには、補助電極150の第2部分150b(以下、単に「補助電極150」という)が形成される。これより、補助電極150は、第2電極用電源線140と接して重なり、第2電極用電源線140と電気的に接続される。図示の例においては、補助電極150の端E4はコンタクト領域の外側の端と一致しているが、一致している必要はなく、補助電極150がコンタクト領域を覆うように形成されていればよい。すなわち補助電極の端E4はコンタクト領域の外側の端よりもさらに外側に位置する構成としてもよい。
なお、本明細書において、「内側」「外側」とは基板10の端E5を基準とした場合の基板面内における相対位置を示す。よって、例えば、「端E1は、(略)端E2よりも内側である」とは、端E1と基板10の端E5との距離は、端E2と端E5との距離よりも長いことを示す。
【0042】
補助電極150の上には、共通電極72が形成される。共通電極72の端E1は第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に位置するよう形成される。また、補助電極150の端E4は、共通電極72の端E1よりも外側に位置するよう形成される。なお、上述したように、補助電極150は画素電極76と同時に形成され、次いで、隔壁37、発光機能層74を順に形成した後に、隔壁37および発光機能層74を覆うように、共通電極72が形成される。
【0043】
上述したように、補助電極150には導電性および遮光性を有する金属が用いられる。このため、有効領域Aにおいて補助電極150と画素電極76とが重ならないように、補助電極150の第1部分150aは格子状に形成されている。つまり、有効領域Aにおいては、発光素子70からの出射光を遮断しないように、発光素子70の間隙のみに補助電極150の第1部分150aが配置される。発光素子70は互いに微小な間隔で配置されているから、補助電極150は高精度なアライメント機構を用いて形成されることが望ましい。これに対し、共通電極72は、透明材料から形成されるため、有効領域Aにおいて発光素子70を覆うように有効領域A内において一様に形成されている。このため、共通電極72は、補助電極150の形成に用いるアライメント機構よりも精度が低いものを用いても形成することが可能である。ところが、精度の低いアライメント機構を用いて共通電極72が形成された場合、共通電極72の端E1の位置が変動するおそれがある。
【0044】
いまここで、共通電極72の端E1の位置の誤差の範囲をt1とし、補助電極150の端E4の位置の誤差の範囲をt2とする。補助電極150に対して精度がより高いアライメント機構を用いた場合、t1>t2となる。また、補助電極150の形成に必要とされる程度の精度を有する単一のアライメント機構を補助電極と共通電極72の両方に対して用いた場合には、おおよそt1=t2となる。よって、補助電極150の誤差t2が共通電極72の誤差よりも大きくなる可能性は低く、仮に、後者の場合においてt1<t2となったとしても、高精度のアライメント機構を用いているので、t1の誤差はさほど問題とならない。そこで、本実施形態においては、補助電極150の端E4が共通電極72の端E1よりも外側に位置するように構成する。この構成によれば、補助電極150の誤差が基板10の端E5側で最大となる位置E4max(端E4が基板10の端E5側に最も近づいた場合の位置)から端E5までの距離を考慮して、周辺領域Bの幅(すなわち、「額縁領域」)を決定することができる。よって、より大きな誤差が許容される共通電極72の端E1を補助電極150の端E4よりも外側に配置する場合と比較して、額縁領域を縮小することが可能となる。すなわち、共通電極72の形成に用いられるアライメント機構の精度が額縁領域の幅に与える影響を低減することが可能となる。なお、共通電極72の誤差が基板10の端E5側で最大となる位置E1maxが、補助電極150の誤差が基板10の端E5側で最大となる位置E4maxよりも内側となるように、端E2および端E4の基準位置(誤差がない場合の位置)を定めることが望ましい。
【0045】
図6に、比較例として、共通電極72が第2層間絶縁膜35の端E2に重なって形成された場合を示す。図6に示されるように、この比較例においては、共通電極72の端E1は、第2層間絶縁膜35の端E2よりも外側に配置されている。上述したように、第2層間絶縁膜35は、下層の凸凹を平坦化するために厚く形成されることが多い。よって、第2層間絶縁膜35の端E2は大きな段差となる。これに対し、共通電極72は、例えば、ITOなどの薄膜材料で形成される。このため、比較例に示す構成においては、第2層間絶縁膜35の端E2の段差の影響で共通電極72に図6に示すような亀裂Iが生じることがある。亀裂Iが生じると、亀裂部分で抵抗値が増加するため、亀裂Iが生じた部分と亀裂Iが生じていない部分で流れる電流値が異なり電圧降下量が異なってしまう。しかしながら、本実施形態においては、共通電極72の端E1は第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に配置されるから、共通電極72における断線や亀裂が防止される。よって、断線や亀裂による抵抗値の増加を未然に防ぐことができる。したがって、発光素子70の輝度ムラを抑制することが可能である。
【0046】
<A−2:第1実施形態の変形例>
上述した実施形態では、補助電極150と画素電極76とが同時に形成された場合の構成について説明したが、画素電極76と同時ではなく隔壁37が形成された後の工程で補助電極150を形成するようにしてもよい。
【0047】
図7は、本変形例に係る発光装置1Aの部分断面図である。図7に示されるように、発光装置1Aにおいては、第2層間絶縁膜35および隔壁37を覆うように補助電極150(150a,150b)が形成されている。上述した実施形態では、図4に示されるように、補助電極150は第2層間絶縁層35と隔壁37との上に形成された部分を有していた。これに対して、この変形例では、隔壁37がある部分では、隔壁37の上に補助電極150が形成される。ここで、隔壁37は、第2層間絶縁層35と同様に、共通電極72や補助電極150をトランジスタ40,50,60から分離する絶縁層として機能する。また、上述した第1実施形態と同様に、補助電極150の端E4は第2電極用電源線140と重なり、共通電極72の端E1は補助電極150の端E4よりも内側であり、さらに、第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に形成される。
【0048】
発光装置1Aの製造工程の概略は、以下の通りである。第2層間絶縁膜35を形成した後、第2層間絶縁膜35の上層に画素電極76を形成する。この後、画素電極76の上層に隔壁37を形成し、第2層間絶縁膜35および隔壁37の上の開口部37aを除く表面に補助電極150を形成する。次に、隔壁37で画定された画素電極76上の空間(すなわち、開口部37a)に発光機能層74を形成する。なお、逆に、発光機能層74を形成した後に補助電極150を形成してもよい。さらに、透光性を有する共通電極72を有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって形成する。この後、共通電極72の上に封止膜80が形成される。但し、基板10の外端縁には封止膜80は形成されず、この外端縁においては、回路保護膜34の上にシール90が接合され、その上部に透明封止基板110が接合される。
【0049】
補助電極150を形成した後に発光機能層74を形成するのであれば、補助電極150を形成する時点で発光機能層74が未だ形成されていないため、補助電極150の形成にフォトリソグラフィを用いても発光機能層74を劣化させる虞がない。よって、フォトリソグラフィにより補助電極150のパターンを形成することができ、トランジスタ40、50、60や走査線111などの配線と同様の精度で補助電極150を形成することができる。一方、発光機能層74を形成した後に補助電極150を形成するのであれば、補助電極150が発光材料で汚染されることなく、補助電極150と共通電極72とを接続できるという利点がある。
【0050】
さらに、本変形例では、補助電極150の上層に共通電極72が形成されるので、共通電極72よりも厚い補助電極150を形成しても共通電極72に応力がかからない。よって、上層からの応力による共通電極72の変形が抑制される。
【0051】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る発光装置について説明する。図8は、本実施形態に係る発光装置2Aの部分断面図である。図98に示すように、補助電極150は共通電極72の上に面接触するように形成され、補助電極150および共通電極72を覆うように封止膜80が形成される。発光装置2Aは、共通電極72が補助電極150の下層に形成される点を除いて第1実施形態の発光装置1A(図7)と同様である。よって、その説明を適宜省略する。
【0052】
上記発光装置1Aと同様に、本実施形態では、隔壁37がある部分では、隔壁37より上層に補助電極150が形成される。よって、隔壁37は、第2層間絶縁層35と同様に、共通電極72や補助電極150をトランジスタ40,50,60から分離する絶縁層として機能する。
【0053】
発光装置2Aの製造工程の概略は、以下の通りである。第2層間絶縁膜35を形成した後、第2層間絶縁膜35の上層に画素電極76を形成する。この後、画素電極76の上層に隔壁37を形成し、隔壁37で画定された画素電極76上の空間(すなわち、開口部37a)に発光機能層74を形成する。さらに、透明な共通電極72を有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって形成する。この後、共通電極72の上の開口部37aの上層を除く領域に補助電極150を形成し、封止膜80が形成される。但し、基板10の外端縁には封止膜80は形成されず、この外端縁においては、回路保護膜34の上にシール90が接合され、その上部に透明封止基板110が接合される。
【0054】
図9に、図8における領域Fの部分簡略断面図を示す。図8および図9に示されるように、発光装置2Aにおいては、走査線駆動回路100の一部であるトランジスタ40,50より基板10の面内の外側において、共通電極72の端E1は、第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に形成され、補助電極150の端E4よりも内側に形成される。よって、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
<C:変形例>
(1)上記第1および第2実施形態においては、共通電極72または補助電極150の上層を封止膜80で覆うことにより、素子層30、第2電極用電源線、第2層間絶縁膜35、共通電極72、補助電極150を含む層構造を外気から保護する構成としていたが、封止膜80を省く構成としてもよい。
図10に本変形例に係る発光装置1Cの簡略断面図を示す。図10に示されるように、発光装置1Cにおいては、封止膜80が設けられておらず、シール90と対向基板110により、基板10上に形成された層構造を保護している。なお、対向基板110の内側に、水分を吸着するための乾燥剤(図示略)を配置したり、あるいは、対向基板110自体に乾燥剤を埋め込んだものを用いる構成としてもよい。また、対向基板110とシール90の替わりに封止缶を用いてもよい。
図11に本変形例に係る別の発光装置1Dの簡略断面図を示す。図11に示されるように、発光装置1Dにおいては、対向基板110と基板10の上に形成された層構造との間に防湿性充填材65を充填することにより、層構造を外気から保護している。防湿性充填材65としては光透過性で低吸湿のものが望ましく、エポキシ系、またはウレタン系接着剤等を用いることができる。
【0056】
(2)上記第1〜第4実施形態においては、第2電極用電源線140が周辺領域Bにコの字状に形成された態様について説明したが、これに限られず適宜変形が可能である。
各図12および図13は、本変形例に係る各発光装置のレイアウトの概略を説明するための図である。これらの図において、上述した実施形態と共通する部分については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0057】
図12の(A)に示すように、発光装置3Aにおいては、基板10の対向する2辺の各辺縁部に沿って第2電極用電源線140が配設される。さらに、残る2辺の一方の辺に沿う領域に信号入力端子Gが配設され、当該信号入力端子Gの基板10の面内における内側には第1電極用電源線130が配設される。第2電極用電源線140の内側には有効領域Aに沿って走査線駆動回路100Aおよび100Bが各々有効領域Aに沿って配置され、電源線140によって給電されるとともに、信号入力端子Gを介して外部からの制御信号が与えられる。また、第1電極用電源線130の内側にはデータ線駆動回路200が有効領域Aに沿って配置される。データ線駆動回路200は、第1電極用電源線130から給電されつつ信号入力端子Gを介して外部からの制御信号を受け取り、各データ線に与える。
【0058】
この例において、第2層間絶縁膜35は、有効領域A、走査線駆動回路100A,100B、およびデータ線駆動回路200の全部、ならびに第1電極用電源線130の一部(図示の例では、信号入力端子Gが配設された辺を長手方向としたとき、長手方向に延在する部分全部と長手方向と直交する方向に基板10の下辺に向かって延びる部分の一部)を覆うように形成される。また、共通電極72は、有効領域Aおよび走査線駆動回路100A,100Bの全部を覆い、第2電極用電源線140が配設される側のその左右の端は、第2層間絶縁膜35の端よりも内側となるように形成される。また、共通電極72の端のうち、下辺側(信号入力端子G側)の端は、有効領域Aの外側且つデータ線駆動回路200の内側に位置し、上辺側の端は第2層間絶縁膜35の端よりも内側に位置する。すなわち、共通電極72の四辺の各端は、第2層間絶縁膜35の対応する各辺の端よりも内側に位置する。換言すれば、第2層間絶縁膜35の端はすべての辺において共通電極72の端よりも外側に突出している。すなわち、第2の領域は第1の領域全体を覆い、且つ、すべての辺側において第1の領域よりも外側にはみ出している。
【0059】
補助電極は、信号入力端子Gが配設される辺と同じ方向を長手とするストライプ状の個別電極150cとして形成される。詳細には、個別電極150cは有効領域Aにおいては発光素子Pの間隙を通り、周辺領域Bにおいては第1の領域の内側と第1の領域の外側であって且つ第2の領域の内側である領域とを通り、第2の領域の外側に至り、第2電極用電源線140と重なる領域まで延びて第2電極用電源線140と電気的に接続する。すなわち、その端は、第2層間絶縁膜35の端よりも外側であり、且つ、共通電極72の端よりも外側に位置する。本変形例によっても、上述した各実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
次に、図12の(B)に示されるように、発光装置3Bは、走査線駆動回路とデータ線駆動回路の位置が逆転している点を除いて、発光装置3Aと同様の構成をしている。すなわち、発光装置3Bにおいては、走査線駆動回路100が基板10の下辺側の周辺領域Bにおいて有効領域Aに沿って配置され、データ線駆動回路200A,200Bが基板10の各左辺および右辺側の周辺領域Bに配置される。第2電極用電源線140は、各データ線駆動回路200A,200Bの外側に、基板10の対向する2辺(左右両辺)に沿って配置され、補助電極150は、第2電極用電源線140と直交する方向(すなわち、信号入力端子Gが配設される辺と同じ方向)を長手としたストライプ状に形成される。発光装置3Aと同様に、補助電極150の左右の各端は、共通電極72の端よりも外側であり、さらに、第2層間絶縁膜35の端よりも外側に位置し、第2電極用電源線140と重なり接するように形成される。よって、発光装置3Bによっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
なお、発光装置3Aおよび3Bのいずれにおいても、図12の(A)の右側に示されるように、補助電極150がストライプ状の複数の個別電極150cと周辺領域Bに形成されて複数の個別電極150cを接続する接続電極150dとを有するようにしてもよい。この場合、接続電極150dは、第1の領域の内側に重なる部分と、第1の領域の外側であり且つ第2の領域の内側である領域とを通り第2の領域の外側に至る部分とを有し、さらに第2電極用電源線140と重なるように形成される。すなわち、接続電極150dは、第2電極用電源線140と重なるだけでなく、第2層間絶縁膜35の端および共通電極72の端が接続電極150dと重なるように配置されている。
【0062】
図13の(A)および(B)に、発光装置の他のレイアウト例を示す。図13の(A)に示されるように、発光装置4Aにおいては、基板10の下辺縁に沿って信号入力端子Gが配設され、その内側に第2電極用電源線140がコの字状に配設される。さらに、第2電極用電源線140の内側には第1電極用電源線130がコの字状に配設され、この電源線130と有効領域Aとの間にデータ線駆動回路200が配設される。走査線駆動回路100A,100Bは有効領域Aの左右各辺に沿う領域に各々配設される。
【0063】
図示のように、第2層間絶縁膜35は、有効領域A全体と、走査線駆動回路100A,100B、およびデータ線駆動回路200の全部と、第1電極用電源線130の一部(図示の例では、信号入力端子Gが配設された辺を長手方向としたとき、長手方向に延在する部分)を覆うように形成される。共通電極72は、第2層間絶縁膜35とほぼ同じ部分を覆い、且つ、共通電極72の四辺の各端において第2層間絶縁膜35の対応する端よりも内側となるように形成される。よって、本変形例においては、基板10のすべての辺側において、第2層間絶縁膜35が形成される第2の領域は、基板10の面内における外側方向に共通電極72が形成される第1の領域よりもはみ出している。
【0064】
図示のように、補助電極は、走査線駆動回路100A,100Bと平行な方向を長手として延在するストライプ状の個別電極150eとして形成される。基板10の下端側における個別電極150eの端は、第2電極用電源線140と重なって接するように形成される。なお、この例において、個別電極150eは第1電極用電源線130と交差しているが、第1電極用電源線130と第2電極用電源線140とを別々の層で形成することにより、個別電極150eが第1電極用電源線130と接することなく第2電極用電源線140とのみ接するように形成する。同様に、共通電極72と第1電極用電源線130とは重なるが、第1電極用電源線130と第2電極用電源線140とを別々の層で形成することで、共通電極72と第1電極用電源線130とが電気的に接触しない構成とすることができる。一方、基板10の上端側における個別電極150eの端は、共通電極72の端個別電極150eよりも外側であり、さらに、第2層間絶縁膜35の端(第2の領域)よりも外側に位置するように形成される。よって、発光装置4Aによっても、上述した各実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
次に、図13の(B)に示されるように、発光装置4Bは、走査線駆動回路とデータ線駆動回路の位置が逆転している点を除いて、発光装置4Aと同様の構成をしている。すなわち、発光装置4Bにおいては、走査線駆動回路100が基板10の下辺側の周辺領域Bにおいて有効領域Aに沿って配置され、データ線駆動回路200A,200Bが基板10の各左辺および右辺側の周辺領域Bに配置される。第2電極用電源線140は、基板10下端側において信号入力端子Gよりも内側にコの字状に配置され、補助電極150は、データ線駆動回路200A,200Bと平行な方向を長手としたストライプ状に形成される。発光装置4Aと同様に、補助電極150の上下の各端は、共通電極72の端よりも外側にであり、且つ、第2層間絶縁膜35の端よりも外側に位置するとともに、下端は、第2電極用電源線140と重なり接するように形成される。よって、発光装置4Bによっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0066】
図12(A)、図12(B)、図13(A)及び図13(B)に示すように、周辺領域Bにおいて、補助配線150は、第2電極用電源線140の延在方向に対し交差する方向に、ストライプ状に延在している。即ち、図1乃至図3では、補助配線150bは第2電極用電源線140の延在方向にも延在しているが、第2電極用電源線140の延在方向に対して交差する方向にのみ延在させてもよい。換言すれば、補助配線150は、第2電極用電源線140の延在方向と平行に形成される必要は必ずしもなく、第2電極用電源140と交差するように形成されていればよい。
【0067】
<D:電子機器>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図14ないし図16には、以上の何れかの形態に係る発光装置を表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0068】
図14は、発光装置を採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する発光装置1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bと、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。発光装置1、1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bは有機発光ダイオード素子を発光素子70として使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0069】
図15は、発光装置を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する発光装置1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bとを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bに表示される画面がスクロールされる。
【0070】
図16は、発光装置を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す斜視図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する発光装置1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bとを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が発光装置1、1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bに表示される。
【0071】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図14から図16に示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する光ヘッド(書込ヘッド)が使用されるが、この種の光ヘッドとしても本発明の発光装置は利用される。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4B…発光装置、10…基板、70…発光素子、34…回路保護膜、35…第2層間絶縁膜(絶縁層)、37…隔壁、37a…開口部、65…防湿性充填材、72…共通電極(第2電極)、74…発光機能層、76…画素電極(第1電極)、80…封止膜、90…シール、100A,100B…走査線駆動回路、110…対向基板、111…走査線、112…データ線、113…電源供給線、120…プリチャージ回路、140…第2電極用電源線、150…補助電極、150c,150e…個別電極、150d…接続電極、200,200A,200B…データ線駆動回路、A…有効領域、B…周辺領域、C,F…領域、E1〜E5…端、G…信号入力端子、P…単位回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence)素子などの発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上の有効領域に複数の発光素子が配列され、有効領域を囲む周辺領域に各種配線等が配置された発光装置が知られている。各発光素子は、第1電極と第2電極の間に挟まれ有機EL材料などの発光材料で形成される発光層を有する。多くの場合、この第2電極は複数の発光素子に共通して設けられた共通電極であり、上記有効領域全体にわたって設けられる。しかしながら、電極自体が有する抵抗により電極の面内において電圧降下が発生し、基板における位置によって発光素子に供給される電位がばらついて発光素子の輝度が位置によってばらつくおそれがある。そこで、従来から、共通電極よりも低抵抗の材料で形成され共通電極と電気的に接続された補助電極を設け、共通電極の抵抗を下げることが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−352963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、補助電極は、例えば、アルミニウムなどの遮光性の部材で形成される場合が多い。このため、発光素子からの出射光を遮ることがないように発光素子の間隙の領域を通るように形成されるのが望ましく、高精度な位置合わせ機構を用いて形成されるのが望ましい。これに対し、共通電極は光透過性の材料で形成されて、有効領域全体を覆う領域に一様に形成される。よって、補助電極と比較して、位置合わせにおける誤差が許容され得る。よって、補助電極よりも共通陰極の位置合わせの誤差が問題となる。したがって、共通電極の誤差を吸収可能なように基板上において周辺領域の幅(いわゆる、「額縁領域」)を十分に確保することが望ましく、装置の小型化の妨げとなっていた。
【0005】
また、発光素子の発光を制御するためのトランジスタなどの回路素子は、共通電極や補助電極の下層に配置される。このため、共通電極および補助電極との間に絶縁層を設けて、共通電極および補助電極を回路素子から絶縁する。ところが、絶縁層が段差を含む場合には、その段差と重なる上層部分で電極に断線や亀裂が生じるおそれがある。断線や亀裂が生じた箇所では電極の抵抗値が増加するので、発光素子の輝度ムラが顕著となる。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、発光装置の額縁領域を縮小するとともに、発光素子の輝度ムラを抑制するこが可能な発光装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発光装置は、基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有し、前記各発光素子は第1電極と第2電極と両者の間にある発光層とを有し、前記第2電極は前記複数の発光素子に共通に設けられ、前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層を有する発光装置であって、前記第2電極と電気的に接続した補助電極と、前記素子層の上層に配置されるとともに、前記第2電極および前記補助電極よりも下層に配置される部分を有し、前記第2電極および前記補助電極を前記回路素子から絶縁するための絶縁層とを有し、前記第2電極は、前記有効領域を覆い、前記周辺領域にはみだして一様に形成され、前記補助電極は、前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通り、前記周辺領域の一部に形成され、前記周辺領域において、前記第2電極の端は、前記基板の面内において前記補助電極の端および前記絶縁層の端の各々よりも内側に位置する。
【0007】
本発明の発光装置においては、補助電極の端は共通電極の端よりも外側に配置される。また、補助電極は、有効領域においては、発光素子の間隙の領域を通るように形成される。このため、高精度な位置合わせ機構を用いて形成されるのが望ましい。これに対し、共通電極は有効領域全体を覆う領域に一様に形成されるから、共通電極の形成に際しては、位置合わせ精度が補助電極ほど要求されない。すなわち、補助電極は共通電極よりも小さな誤差で形成される場合が多い。よって、本発明によれば、共通電極の端を補助陰極の端よりも外側に配置する構成と比較して、補助電極の誤差に応じて額縁領域を縮小することができ、装置の小型化が可能となる。そして、補助電極は、第2電極よりも抵抗が低くなるように構成される。特に、補助電極は、第2電極よりも低抵抗の材料で形成されることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明の発光装置では、共通電極の端は絶縁層の端よりも内側に配置される。絶縁層は、例えば、回路段差平坦化膜であり、下層の凸凹を平坦化するために厚く形成されることが多い。よって、絶縁層の端は大きな段差となる。これに対し、共通電極は、脆い材料で形成されたり、あるいは薄く形成されることが多いので、絶縁層の端の段差の影響で共通電極に断線または亀裂が生じることがある。しかしながら、本発明においては、共通電極の端は絶縁層の端よりも内側に配置されるから、共通電極における断線や亀裂が防止される。よって、断線や亀裂による抵抗値の増加を未然に防ぐことができる。したがって、発光素子の輝度ムラを抑制することが可能である。本発明の好適な態様において、前記第2電極は、前記補助電極の下層に配置されるのが好ましい。この態様によれば、第2電極を外気から保護することができる。
【0009】
加えて、本発明の第2の発光装置は、基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有する発光装置であって、前記複数の発光素子の各々に対応して設けられた複数の第1電極と、前記複数の発光素子に共通に設けられた第2電極と、前記複数の第1電極と前記第2電極との間に介在する発光層と、前記第2電極と電気的に接続した補助電極と、前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層と、前記第2電極または前記補助配線と前記素子層との間を絶縁する絶縁層とを備え、前記第2電極は、前記有効領域全体と前記周辺領域の少なくとも一部とを含む第1の領域に設けられており、前記絶縁層は、前記有効領域全体において前記第1の領域と重なり、前記周辺領域において前記第1の領域よりも第1の方向にはり出した第2の領域に設けられており、前記補助電極は、前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通るように設けられており、且つ、前記周辺領域において、前記第1の領域の内側と前記第1の領域の外側であって且つ前記第2の領域の内側である領域とを通り前記第2の領域の外側に至るように設けられている。
【0010】
上記第2の発光装置においては、補助電極は、共通電極が設けられた第1の領域よりも外側の領域にも設けられる。よって、補助電極の端は共通電極の端よりも外側に配置される。また、補助電極は、有効領域においては、発光素子の間隙の領域を通るように形成されるから、補助電極の形成には高精度な位置合わせ機構を用いられる。これに対し、共通電極は有効領域全体を覆う領域に一様に形成されるから、共通電極の形成に際しては位置合わせ精度が補助電極ほど要求されない。よって、補助電極の誤差は共通電極よりも小さいので、本発明によれば、共通電極の端を補助陰極の端よりも外側に配置する構成と比較して、補助電極の誤差に応じて額縁領域を縮小することができ、装置の小型化が可能となる。
【0011】
さらに、上記第2の発光装置では、共通電極が設けられた第1の領域は、絶縁層が設けられる第2の領域よりも内側に配置される。よって、絶縁層の端と共通電極とが重なる部分において、共通電極における断線や亀裂による抵抗値の増加を未然に防ぐことができる。したがって、発光素子の輝度ムラを抑制することが可能である。
【0012】
上記第2の発光装置の好適な態様において、前記複数の発光素子は、マトリクス状に配列しており、前記補助電極は、前記複数の発光素子の間隙を通り、且つ、前記有効領域の内側から外側に至るように、第1の方向に沿ってストライプ状に設けられた複数の個別電極を有する。好ましくは、前記補助電極は、前記周辺領域において前記複数の個別電極を互いに接続する接続電極をさらに有するようにしてもよい。この場合、前記絶縁層の前記第1の方向における端が、前記接続電極と重なるように前記接続電極を配置するようにしてもよい。
【0013】
上記第2の発光装置の別の好適な態様において、前記複数の発光素子は、マトリクス状に配列しており、前記補助電極は、前記複数の発光素子の間隙を通り、且つ、前記有効領域の内側から前記第2の領域の外側に至るように前記第1の方向に沿ってストライプ状に設けられた複数の個別電極である。
【0014】
また、上記第2の発光装置について上述したいずれかの態様において、前記第2電極に電位を供給するための第2電極用電源線が、前記第1の方向と交差するように前記周辺領域に設けられており、前記第2電極用電源線は、前記補助電極と電気的に接続される。この場合、好ましくは、前記第2電極用電源線は、前記第1の領域の外側に設けるようにしてもよい。
さらに、本発明は、上記いずれかの態様の第1または第2の発光装置を有する電子機器としても把握される。この電子機器によれば、上述のいずれかの効果を達成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成の一部を示す概略平面図であり、(B)は(A)の状態の後に補助電極および画素電極をさらに形成した状態を示す平面図である。
【図2】同装置の画素回路の詳細を示す回路図である。
【図3】図1(B)の一部の拡大図である。
【図4】同装置の部分断面図である。
【図5】同装置の部分簡略断面図である。
【図6】比較例において、共通電極に亀裂が生じた様子を示す図である。
【図7】第1実施形態の変形例に係る発光装置の部分断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る発光装置の部分断面図である。
【図9】同装置の部分簡略断面図である。
【図10】本発明の変形例に係る発光装置の部分簡略断面図である。
【図11】本発明の変形例に係る発光装置の部分簡略断面図である。
【図12】本発明の変形例に係る発光装置のレイアウトの概略である。
【図13】本発明の変形例に係る発光装置のレイアウトの概略である。
【図14】発光装置を採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図15】発光装置を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【図16】発光装置を適用した携帯情報端末の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
<A−1:第1実施形態>
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る発光装置1の構成の一部を示す概略平面図であり、図1(B)は図1(A)の状態の後に補助電極150および画素電極76をさらに形成した状態を示す平面図である。図1(A)に示すように、この発光装置1は、基板10とフレキシブル基板20とを備える。基板10の端部には接続端子が形成され、この接続端子とフレキシブル基板20に形成された接続端子とが、ACF(anisotropic conductive film:異方性導電膜)と呼ばれる導電粒子を含有したフィルム状の接着剤を介して圧着固定される。また、フレキシブル基板20には、データ線駆動回路200が設けられており、さらに、フレキシブル基板20を介して各種の電源電圧が基板10に供給される。
【0017】
基板10には、有効領域Aと、その外側(つまり基板もしくは基板10の外周と有効領域Aの間)の周辺領域Bが設けられている。周辺領域Bには走査線駆動回路100Aおよび100B、ならびにプリチャージ回路120が形成されている。プリチャージ回路120は書き込み動作に先立って、データ線112の電位を所定の電位に設定するための回路である。走査線駆動回路100Aおよび100B、ならびにプリチャージ回路120は、有効領域Aの周辺にある周辺回路である。但し、周辺回路は、単位回路Pや配線の良否を検査する検査回路(図示せず)を含んでもよいし、データ線駆動回路200が周辺領域Bに設けられた周辺回路であってもよい。
【0018】
有効領域Aには、複数の走査線111と複数のデータ線112が形成され、それらの交差点の各々の近傍には複数の単位回路(画素回路)Pが設けられている。単位回路PはOLED(organic light emitting diode)素子を含み、電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は第1電極用電源線130に接続されている。
【0019】
図2は、発光装置1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。各単位回路Pは、nチャネル型のトランジスタ68、pチャネル型のトランジスタ60、容量素子69、および発光素子(OLED素子)70を含む。pチャネル型のトランジスタ60のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極は発光素子70の陽極に接続される。また、トランジスタ60のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。nチャネル型のトランジスタ68のゲート電極は走査線111に接続され、そのソース電極は、データ線112に接続され、そのドレイン電極はトランジスタ60のゲート電極と接続される。
【0020】
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線111を走査線駆動回路100Aおよび100Bが選択すると、トランジスタ68がオンされて、データ線112を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、トランジスタ60が、データ信号のレベルに応じた電流を発光素子70に供給する。これにより、発光素子70は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0021】
また、図1(A)に示すように、周辺領域Bの外周部側(つまり基板もしくは基板10の外周と周辺領域Bの間)には、コの字状の第2電極用電源線140が形成されている。第2電極用電源線140は、後述するように発光素子の陰極(第2電極)に電源電圧(この例では、Vss:グランドレベル)を供給するための配線である。なお、第2電極用電源線140をコの字状に(つまり、基板10の3辺に沿って)配設する替わりに、基板10の対向する2辺に沿って設ける態様としてもよい。すなわち、図示の例では、各走査線駆動回路100Aおよび100Bに沿って配設されてもよい。
【0022】
発光素子70は、画素電極76(陽極)と共通電極72(陰極)との間に挟まれた発光機能層(発光層を含む)74を有する(図4参照)。共通電極72は、図1(B)に示すように有効領域A全体と周辺領域Bの一部にわたる領域(第1の領域)に形成される。また、共通電極72と第2電極用電源線140とを接続する補助電極150が、周辺領域Bにおいて周辺回路を覆うように形成される。補助電極150は、有効領域Aに設けられる補助電極の第1部分150aと、周辺領域Bに設けられる補助電極の第2部分150bとを含んでいる。有効領域Aでは補助電極150の第1部分150aと画素電極76とが接触しないように、補助電極150の第1部分150aが格子状に形成されている。つまり発光素子70の間隙に補助電極150の第1部分150aが配置されている。本明細書でいう補助電極とは、共通電極72に重ねて電気的に接続され、共通電極72の抵抗を下げる導体のことである。明確化のため、図3に、図1(B)の一部を拡大して示す。
【0023】
この実施形態の発光装置1は、トップエミッションの形式で構成されており、発光機能層74からの光が共通電極72を通過して射出される。共通電極72は、透明材料から形成されている。このため、周辺領域Bを共通電極72によって遮光することはできない。一方、上述した補助電極150には、導電性および遮光性を有する金属が用いられるため、補助電極150によって遮光が可能である。これにより、周辺回路に光が入射して光電流が発生することを抑制できる。また、補助電極150は、有効領域Aの画素電極76と同一の工程で形成され得る。したがって、周辺領域Bに遮光性を付加するために特別な工程は不要である。
【0024】
図4に発光装置1の部分断面図を示す。同図において、有効領域Aには発光素子70が形成される一方、周辺領域Bには周辺回路たる走査線駆動回路100Aが形成される。同図において発光装置1の上面が光を射出する射出面となる。同図に示すように、基板10の上に下地保護層31が形成され、その上にトランジスタ40、50、および60が形成される。トランジスタ40はnチャネル型、トランジスタ50および60はpチャネル型である。トランジスタ40,50は走査線駆動回路100Aの一部であり、トランジスタ60と発光素子70は単位回路Pの一部である。
【0025】
トランジスタ40、50、および60は、基板10の表面に形成された酸化珪素を主体とする下地保護層31の上に設けられている。下地保護層31の上層にはシリコン層401、501および601が形成される。シリコン層401、501および601を覆うように、ゲート絶縁層32が下地保護層31の上層に設けられる。ゲート絶縁層32は、例えば酸化珪素から形成される。ゲート絶縁層32の上面のうちシリコン層401、501および601に対向する部分にゲート電極42、52および62が設けられる。トランジスタ40においてゲート電極42を介してシリコン層401にはV族元素がドーピングされ、ドレイン領域40cおよびソース領域40aが形成される。ここで、V族元素がドーピングされていない領域がチャネル領域40bとなる。
【0026】
トランジスタ50および60においてゲート電極52および62を介してシリコン層501および601にはゲート電極52および62を介してIII族元素がドーピングされ、ドレイン領域50aおよび60a、ならびにソース領域50cおよび60cが形成される。ここで、III族元素がドーピングされていない領域がチャネル領域50bおよび60bとなる。なお、トランジスタ40、50、および60のゲート電極42、52、および62を形成するのと同時に走査線111が形成される。
【0027】
第1層間絶縁層33が、ゲート電極42、52および62を覆うようにゲート絶縁層32の上層に形成される。第1層間絶縁層33の材料には酸化珪素等が用いられる。さらに、ソース電極41、51、および63、ドレイン・ソース電極43、ならびにドレイン電極61が、ゲート絶縁層32および第1層間絶縁層33にわたって開孔するコンタクトホールを介してシリコン層401、501、および601と接続される。また、これらの電極と同一の工程で第2電極用電源線140、データ線112および電流供給線113が形成される。これらの電極および第2電極用電源線140などは導電性を有するアルミニウム等の材料で形成される。
【0028】
回路保護膜34が、ソース電極41、51、および63、ドレイン・ソース電極43、ドレイン電極61、ならびに第2電極用電源線140を覆うように第1層間絶縁層33の上層に設けられる。回路保護膜34は、例えば、窒化珪素や酸窒化珪素などのガス透過率が低い材料から形成されている。また、これらの窒化珪素や酸窒化珪素は、非晶質材料であってもよいし、水素を含んでいても良い。回路保護膜34により、トランジスタ40、50、および60からの水素の離脱を防止できる。なお、回路保護膜34をソース電極やドレイン電極の下に形成してもよい。
【0029】
第2層間絶縁膜35が回路保護膜34の上層に設けられる。ここで、第2層間絶縁膜は、ソース電極41、51、および63、ドレイン・ソース電極43、ドレイン電極61、ならびに第2電極用電源線140と、後述の画素電極76、補助電極150、あるいは共通電極72との間に設けられ、これらを絶縁する役目を果たす。この際に、走査線や信号線に供給される信号が遅延しないように、膜厚が設定される。なお、第2層間絶縁膜35は、回路保護膜34に対向する下面の凹凸よりも回路保護膜34とは反対の上面の凹凸が小さくすることが好ましい。つまり、トランジスタ40,50,60、走査線111、データ線112、電流供給線113などにより生ずる凹凸を平坦化するために、第2層間絶縁膜35は用いられる。この第2層間絶縁膜35は、有効領域A全体において上述の第1の領域(共通電極72が形成される領域)と重なり、周辺領域Bにおいて第1の領域よりも第1の方向にはり出した第2の領域に設けられる。詳細には、本実施形態においては、基板10の4辺のうち第2電極用電源線140が配設された左右両辺および上辺の少なくとも3辺側においては、第2の領域は第1の領域よりも基板10の面内における外側方向に突出している。
【0030】
第2層間絶縁膜35の材料には、例えば、アクリル系、ポリイミド系の有機高分子材料が用いられる。この場合、有機樹脂にパターニングのための感光性材料を混合して、フォトレジストと同様に露光でパターニングしても良い。あるいは、酸化珪素、酸窒化珪素等の無機材料から化学気相成長法(chemical vapor deposition: CVD)により第2層間絶縁膜35を形成し、エッチング等によりその上面を平坦化してもよい。無機材料は化学気相成長法によって膜を形成した場合、その膜厚は1μm以下であり、しかもほぼ一様であるから、上面が下層の凹凸の影響を受けやすいのに対し、有機樹脂はコーティングによって形成するのでその膜厚を2〜3μm程度に大きくでき、しかもその上面は下層の凹凸の影響を受け難いので第2層間絶縁膜35の材料に適している。尤も、ある程度の凹凸を許容するのであれば、酸化珪素、酸窒化珪素等の無機材料を第2層間絶縁膜35に用いることもできる。以上のように、第2層間絶縁膜はこのように所定の膜厚が必要であるため、周辺領域に段差を発生させることがある。
【0031】
第2層間絶縁膜35上には、有効領域Aで画素電極76(第1電極)および補助電極の第1部分150aを形成すると同時に、周辺領域Bに補助電極の第2部分150bを形成する。即ち、画素電極76と補助電極150とは同一の層において、同一の材料を用いて同時に形成される。この実施形態における画素電極76は発光素子70の陽極であり、発光素子70ごとに相互に離間して形成されて、第2層間絶縁膜35および回路保護膜34を貫通するコンタクトホールを介してトランジスタ60のドレイン電極61と接続される。また、陽極である画素電極76の材料としては、仕事関数が大きい材料が望ましく、例えば、ニッケル、金、白金等またはそれらの合金が好適である。これらの材料は反射性を持つので、発光機能層74で発光した光を共通電極72に向けて反射する。この場合には、補助電極150もこれらの材料から形成される。
【0032】
また、画素電極76としては、仕事関数が高いITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、またはZnO2のような酸化導電材料からなる光透過性、導電性を備えた第1層と、反射性の金属、例えばアルミニウムからなる第2層とを含み、発光機能層側に第1層が設けられる構成であってもよい。この場合には、補助電極150は、第1層と第2層の両方を有してもよいし、これらのうちいずれかの層を有していてもよい。
【0033】
補助電極150は、有効領域Aにおいて複数の発光素子70の間隙を通るように格子状に形成され(第1部分150a)、周辺領域においては第2層間絶縁膜35が形成された第2の領域が、共通電極72が形成された第1の領域よりもはみ出した側(本実施形態では基板10の左右両辺および上辺側)において、第1の領域の内側と第1の領域の外側であって且つ第2の領域の内側である領域とを通り第2の領域の外側に至るように形成される(第2部分150b)。補助電極150は、周辺領域Bにおいて、回路保護膜34に形成されたコンタクトホールを介して第2電極用電源線140と接続される。図示のように、第2電極用電源線140上には、第2層間絶縁膜35が形成されず、回路保護膜34にコンタクトホールを形成するだけで、補助電極150の第2部分150bを第2電極用電源線140に直接接触させることができる。
【0034】
次に、隔壁37を形成する。隔壁37は、各画素電極76の外形縁を隔壁37により覆うように形成されることにより、開口部37aを有する。よって、開口部37aの各々の全体は、画素電極76に重なり、発光機能層74が形成される前の段階では、開口部37aを通して画素電極76が露出している。隔壁37は、画素電極76とその後に形成される共通電極72(第2電極)との間、もしくは複数の画素電極76同士の間を絶縁するものである。隔壁37を設けることによりそれぞれの画素電極76を独立して制御することができ、複数の発光素子をそれぞれ所定の輝度で発光させることができる。つまり隔壁37は複数の発光素子を区分する。例えば、アクリルもしくはポリイミド等が隔壁37の絶縁性材料である。この場合、パターニングのため感光性材料を混合して、フォトレジストと同様に露光でパターニングしても良い。隔壁37にはコンタクトホールCHが同時に形成される。有効領域Aにおいて、このコンタクトホールCHを介して補助電極150の第1部分150aと後述する共通電極72が接続される。また、周辺領域Bにおける補助電極150の第2部分150bの上には、隔壁37と同一の層が設けられていない。
【0035】
次に、画素電極76の上に、少なくとも発光層を含む発光機能層74を形成する。発光層には有機EL物質が用いられる。有機EL物質は、低分子材料であっても良いし、高分子材料であっても良い。発光機能層74を構成する他の層として、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔ブロック層、および電子ブロック層の一部又は全部を備えていてもよい。
【0036】
次に、有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって補助電極150および発光機能層74を覆うように、共通電極72(第2電極)が形成される。共通電極72は透光性であり、発光素子70からの光は、共通電極72を透過して図中上側の方向に射出される。この実施形態の共通電極72をすべての発光素子70の陰極として機能させるため、共通電極72は電子を注入しやすいように、仕事関数が低い材料によって形成される。例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、またはリチウム等やそれらの合金である。また、この合金は仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料を用いることが望ましい。例えば、マグネシウムと銀の合金が好適である。これらの金属または合金を共通電極72に使用する場合には、透光性を得るために厚さを小さくすればよい。
【0037】
また、共通電極72(第2電極)は、上記の仕事関数が低い材料、もしくは、仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料からある第1層と、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、またはZnO2のような酸化導電材料からなる光透過性、導電性を備えた第2層とを含み、発光機能層側に第1層が設けられる構成であってもよい。ITO、IZO、またはZnO2のような酸化導電材料は緻密な素材であり、ガス透過率が低い。このような材料で共通電極72を形成すれば、共通電極72が有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって形成されているため、有効領域Aの単位回路Pおよび周辺領域Bの周辺回路が外気から保護され、これらの劣化が抑制される。このように、共通電極72(第2電極)が上記の第2層を含む構成であれば、第1層を構成する材料と比して光透過性、導電性が優れているため、共通電極72の電源インピーダンスを大幅に低減することができるとともに、発光機能層からの光取り出し効率を向上させることができる。また、共通電極72(第2電極)が、仕事関数が低い材料とその材料を安定化される材料からある第1層と、上記の酸化導電材料からなる第2層とを含んで構成することにより、第1層と第2層が反応し、電子注入効率が劣化するのを防止することができる。
【0038】
また、共通電極72を形成するに先立って、隔壁37にはコンタクトホールCHが形成される。このコンタクトホールCHを介して有効領域Aにおいて補助電極の第1部分150aと共通電極72が接続される。有効領域Aにおいて格子状に形成される補助電極の第1部分150a(図1(B)参照)に共通電極72が接続されることにより、共通電極72の電源インピーダンスを大幅に低減することができる。これに加えて、補助電極の第2部分150bは、周辺領域Bにおいて隔壁37により覆われていないため共通電極72と広い面積で面接触するので、接続抵抗を下げることができる。したがって、電源インピーダンスを大幅に低減することが可能となる。
【0039】
次に、共通電極72および補助電極150を覆うように封止膜80が形成される。封止膜80には、例えば、透明度が高く防湿性が良好な酸窒化珪素、酸化珪素などのガス透過率が低い無機材料が用いられる。この封止膜80は、周辺回路(トランジスタ40,50を有する走査線駆動回路100A、100Bおよびプリチャージ回路120)の領域全体を覆っている。但し、基板10の外端縁には封止膜80が形成されず、この外端縁においては、回路保護膜34の上にシール90が接合され、その上部に透明封止基板(対向基板)110が接合される。シール90は、例えば、接着剤でもよいし、対向基板110を保持するためのスペーサを接着剤で接合してもよい。
【0040】
図5は、図4における領域Cの簡略断面図である。すなわち、周辺領域Bのうち、走査線駆動回路100の一部であるトランジスタ40,50より外側の端部の断面図である。説明の簡易のため、図4に示した下地保護層31、ゲート絶縁層32、第1層間絶縁層33、回路保護膜34およびこれらの各層に挟まれたトランジスタ40、50および60の各電極を、図5においては素子層30として纏めて示す。この素子層30内の上層部には、第2電極用電源線140が形成されており、上述したように、第2電極用電源線140の上面は上層の電極とのコンタクト領域として機能する。図4には、素子層30および第2電極用電源線140の他に、第2層間絶縁膜35、補助電極150、共通電極72、封止膜80、シール90および対向基板110が示されている。以下、この図を参照して、各層の相対的な位置関係について詳細に説明する。
なお、上述したように、第2層間絶縁膜35は下層に配置されたトランジスタや配線などにより生ずる凹凸を平坦化するために用いられる。加えて、第2層間絶縁膜35は、アクリル系、ポリイミド系の絶縁性の有機高分子材料などで形成され、素子層30内に配置されたトランジスタ40、50、60などの回路素子から陽極76、共通電極72、補助電極150等の電極を絶縁する機能も有する。すなわち、発光素子の発光を制御するための回路素子から各電極を絶縁する絶縁層として機能する。
【0041】
図5に示されるように、第2電極用電源線140を含む素子層30の上層には第2層間絶縁膜35が形成され、第2層間絶縁膜35の端E2は、第2電極用電源線140のコンタクト領域の内側の端E3よりもさらに内側である。第2層間絶縁膜35の上面と、素子層30の上面のうち第2層間絶縁膜35の端E2と端E3とに挟まれる領域およびコンタクト領域とには、補助電極150の第2部分150b(以下、単に「補助電極150」という)が形成される。これより、補助電極150は、第2電極用電源線140と接して重なり、第2電極用電源線140と電気的に接続される。図示の例においては、補助電極150の端E4はコンタクト領域の外側の端と一致しているが、一致している必要はなく、補助電極150がコンタクト領域を覆うように形成されていればよい。すなわち補助電極の端E4はコンタクト領域の外側の端よりもさらに外側に位置する構成としてもよい。
なお、本明細書において、「内側」「外側」とは基板10の端E5を基準とした場合の基板面内における相対位置を示す。よって、例えば、「端E1は、(略)端E2よりも内側である」とは、端E1と基板10の端E5との距離は、端E2と端E5との距離よりも長いことを示す。
【0042】
補助電極150の上には、共通電極72が形成される。共通電極72の端E1は第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に位置するよう形成される。また、補助電極150の端E4は、共通電極72の端E1よりも外側に位置するよう形成される。なお、上述したように、補助電極150は画素電極76と同時に形成され、次いで、隔壁37、発光機能層74を順に形成した後に、隔壁37および発光機能層74を覆うように、共通電極72が形成される。
【0043】
上述したように、補助電極150には導電性および遮光性を有する金属が用いられる。このため、有効領域Aにおいて補助電極150と画素電極76とが重ならないように、補助電極150の第1部分150aは格子状に形成されている。つまり、有効領域Aにおいては、発光素子70からの出射光を遮断しないように、発光素子70の間隙のみに補助電極150の第1部分150aが配置される。発光素子70は互いに微小な間隔で配置されているから、補助電極150は高精度なアライメント機構を用いて形成されることが望ましい。これに対し、共通電極72は、透明材料から形成されるため、有効領域Aにおいて発光素子70を覆うように有効領域A内において一様に形成されている。このため、共通電極72は、補助電極150の形成に用いるアライメント機構よりも精度が低いものを用いても形成することが可能である。ところが、精度の低いアライメント機構を用いて共通電極72が形成された場合、共通電極72の端E1の位置が変動するおそれがある。
【0044】
いまここで、共通電極72の端E1の位置の誤差の範囲をt1とし、補助電極150の端E4の位置の誤差の範囲をt2とする。補助電極150に対して精度がより高いアライメント機構を用いた場合、t1>t2となる。また、補助電極150の形成に必要とされる程度の精度を有する単一のアライメント機構を補助電極と共通電極72の両方に対して用いた場合には、おおよそt1=t2となる。よって、補助電極150の誤差t2が共通電極72の誤差よりも大きくなる可能性は低く、仮に、後者の場合においてt1<t2となったとしても、高精度のアライメント機構を用いているので、t1の誤差はさほど問題とならない。そこで、本実施形態においては、補助電極150の端E4が共通電極72の端E1よりも外側に位置するように構成する。この構成によれば、補助電極150の誤差が基板10の端E5側で最大となる位置E4max(端E4が基板10の端E5側に最も近づいた場合の位置)から端E5までの距離を考慮して、周辺領域Bの幅(すなわち、「額縁領域」)を決定することができる。よって、より大きな誤差が許容される共通電極72の端E1を補助電極150の端E4よりも外側に配置する場合と比較して、額縁領域を縮小することが可能となる。すなわち、共通電極72の形成に用いられるアライメント機構の精度が額縁領域の幅に与える影響を低減することが可能となる。なお、共通電極72の誤差が基板10の端E5側で最大となる位置E1maxが、補助電極150の誤差が基板10の端E5側で最大となる位置E4maxよりも内側となるように、端E2および端E4の基準位置(誤差がない場合の位置)を定めることが望ましい。
【0045】
図6に、比較例として、共通電極72が第2層間絶縁膜35の端E2に重なって形成された場合を示す。図6に示されるように、この比較例においては、共通電極72の端E1は、第2層間絶縁膜35の端E2よりも外側に配置されている。上述したように、第2層間絶縁膜35は、下層の凸凹を平坦化するために厚く形成されることが多い。よって、第2層間絶縁膜35の端E2は大きな段差となる。これに対し、共通電極72は、例えば、ITOなどの薄膜材料で形成される。このため、比較例に示す構成においては、第2層間絶縁膜35の端E2の段差の影響で共通電極72に図6に示すような亀裂Iが生じることがある。亀裂Iが生じると、亀裂部分で抵抗値が増加するため、亀裂Iが生じた部分と亀裂Iが生じていない部分で流れる電流値が異なり電圧降下量が異なってしまう。しかしながら、本実施形態においては、共通電極72の端E1は第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に配置されるから、共通電極72における断線や亀裂が防止される。よって、断線や亀裂による抵抗値の増加を未然に防ぐことができる。したがって、発光素子70の輝度ムラを抑制することが可能である。
【0046】
<A−2:第1実施形態の変形例>
上述した実施形態では、補助電極150と画素電極76とが同時に形成された場合の構成について説明したが、画素電極76と同時ではなく隔壁37が形成された後の工程で補助電極150を形成するようにしてもよい。
【0047】
図7は、本変形例に係る発光装置1Aの部分断面図である。図7に示されるように、発光装置1Aにおいては、第2層間絶縁膜35および隔壁37を覆うように補助電極150(150a,150b)が形成されている。上述した実施形態では、図4に示されるように、補助電極150は第2層間絶縁層35と隔壁37との上に形成された部分を有していた。これに対して、この変形例では、隔壁37がある部分では、隔壁37の上に補助電極150が形成される。ここで、隔壁37は、第2層間絶縁層35と同様に、共通電極72や補助電極150をトランジスタ40,50,60から分離する絶縁層として機能する。また、上述した第1実施形態と同様に、補助電極150の端E4は第2電極用電源線140と重なり、共通電極72の端E1は補助電極150の端E4よりも内側であり、さらに、第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に形成される。
【0048】
発光装置1Aの製造工程の概略は、以下の通りである。第2層間絶縁膜35を形成した後、第2層間絶縁膜35の上層に画素電極76を形成する。この後、画素電極76の上層に隔壁37を形成し、第2層間絶縁膜35および隔壁37の上の開口部37aを除く表面に補助電極150を形成する。次に、隔壁37で画定された画素電極76上の空間(すなわち、開口部37a)に発光機能層74を形成する。なお、逆に、発光機能層74を形成した後に補助電極150を形成してもよい。さらに、透光性を有する共通電極72を有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって形成する。この後、共通電極72の上に封止膜80が形成される。但し、基板10の外端縁には封止膜80は形成されず、この外端縁においては、回路保護膜34の上にシール90が接合され、その上部に透明封止基板110が接合される。
【0049】
補助電極150を形成した後に発光機能層74を形成するのであれば、補助電極150を形成する時点で発光機能層74が未だ形成されていないため、補助電極150の形成にフォトリソグラフィを用いても発光機能層74を劣化させる虞がない。よって、フォトリソグラフィにより補助電極150のパターンを形成することができ、トランジスタ40、50、60や走査線111などの配線と同様の精度で補助電極150を形成することができる。一方、発光機能層74を形成した後に補助電極150を形成するのであれば、補助電極150が発光材料で汚染されることなく、補助電極150と共通電極72とを接続できるという利点がある。
【0050】
さらに、本変形例では、補助電極150の上層に共通電極72が形成されるので、共通電極72よりも厚い補助電極150を形成しても共通電極72に応力がかからない。よって、上層からの応力による共通電極72の変形が抑制される。
【0051】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る発光装置について説明する。図8は、本実施形態に係る発光装置2Aの部分断面図である。図98に示すように、補助電極150は共通電極72の上に面接触するように形成され、補助電極150および共通電極72を覆うように封止膜80が形成される。発光装置2Aは、共通電極72が補助電極150の下層に形成される点を除いて第1実施形態の発光装置1A(図7)と同様である。よって、その説明を適宜省略する。
【0052】
上記発光装置1Aと同様に、本実施形態では、隔壁37がある部分では、隔壁37より上層に補助電極150が形成される。よって、隔壁37は、第2層間絶縁層35と同様に、共通電極72や補助電極150をトランジスタ40,50,60から分離する絶縁層として機能する。
【0053】
発光装置2Aの製造工程の概略は、以下の通りである。第2層間絶縁膜35を形成した後、第2層間絶縁膜35の上層に画素電極76を形成する。この後、画素電極76の上層に隔壁37を形成し、隔壁37で画定された画素電極76上の空間(すなわち、開口部37a)に発光機能層74を形成する。さらに、透明な共通電極72を有効領域Aおよび周辺領域Bにわたって形成する。この後、共通電極72の上の開口部37aの上層を除く領域に補助電極150を形成し、封止膜80が形成される。但し、基板10の外端縁には封止膜80は形成されず、この外端縁においては、回路保護膜34の上にシール90が接合され、その上部に透明封止基板110が接合される。
【0054】
図9に、図8における領域Fの部分簡略断面図を示す。図8および図9に示されるように、発光装置2Aにおいては、走査線駆動回路100の一部であるトランジスタ40,50より基板10の面内の外側において、共通電極72の端E1は、第2層間絶縁膜35の端E2よりも内側に形成され、補助電極150の端E4よりも内側に形成される。よって、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
<C:変形例>
(1)上記第1および第2実施形態においては、共通電極72または補助電極150の上層を封止膜80で覆うことにより、素子層30、第2電極用電源線、第2層間絶縁膜35、共通電極72、補助電極150を含む層構造を外気から保護する構成としていたが、封止膜80を省く構成としてもよい。
図10に本変形例に係る発光装置1Cの簡略断面図を示す。図10に示されるように、発光装置1Cにおいては、封止膜80が設けられておらず、シール90と対向基板110により、基板10上に形成された層構造を保護している。なお、対向基板110の内側に、水分を吸着するための乾燥剤(図示略)を配置したり、あるいは、対向基板110自体に乾燥剤を埋め込んだものを用いる構成としてもよい。また、対向基板110とシール90の替わりに封止缶を用いてもよい。
図11に本変形例に係る別の発光装置1Dの簡略断面図を示す。図11に示されるように、発光装置1Dにおいては、対向基板110と基板10の上に形成された層構造との間に防湿性充填材65を充填することにより、層構造を外気から保護している。防湿性充填材65としては光透過性で低吸湿のものが望ましく、エポキシ系、またはウレタン系接着剤等を用いることができる。
【0056】
(2)上記第1〜第4実施形態においては、第2電極用電源線140が周辺領域Bにコの字状に形成された態様について説明したが、これに限られず適宜変形が可能である。
各図12および図13は、本変形例に係る各発光装置のレイアウトの概略を説明するための図である。これらの図において、上述した実施形態と共通する部分については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0057】
図12の(A)に示すように、発光装置3Aにおいては、基板10の対向する2辺の各辺縁部に沿って第2電極用電源線140が配設される。さらに、残る2辺の一方の辺に沿う領域に信号入力端子Gが配設され、当該信号入力端子Gの基板10の面内における内側には第1電極用電源線130が配設される。第2電極用電源線140の内側には有効領域Aに沿って走査線駆動回路100Aおよび100Bが各々有効領域Aに沿って配置され、電源線140によって給電されるとともに、信号入力端子Gを介して外部からの制御信号が与えられる。また、第1電極用電源線130の内側にはデータ線駆動回路200が有効領域Aに沿って配置される。データ線駆動回路200は、第1電極用電源線130から給電されつつ信号入力端子Gを介して外部からの制御信号を受け取り、各データ線に与える。
【0058】
この例において、第2層間絶縁膜35は、有効領域A、走査線駆動回路100A,100B、およびデータ線駆動回路200の全部、ならびに第1電極用電源線130の一部(図示の例では、信号入力端子Gが配設された辺を長手方向としたとき、長手方向に延在する部分全部と長手方向と直交する方向に基板10の下辺に向かって延びる部分の一部)を覆うように形成される。また、共通電極72は、有効領域Aおよび走査線駆動回路100A,100Bの全部を覆い、第2電極用電源線140が配設される側のその左右の端は、第2層間絶縁膜35の端よりも内側となるように形成される。また、共通電極72の端のうち、下辺側(信号入力端子G側)の端は、有効領域Aの外側且つデータ線駆動回路200の内側に位置し、上辺側の端は第2層間絶縁膜35の端よりも内側に位置する。すなわち、共通電極72の四辺の各端は、第2層間絶縁膜35の対応する各辺の端よりも内側に位置する。換言すれば、第2層間絶縁膜35の端はすべての辺において共通電極72の端よりも外側に突出している。すなわち、第2の領域は第1の領域全体を覆い、且つ、すべての辺側において第1の領域よりも外側にはみ出している。
【0059】
補助電極は、信号入力端子Gが配設される辺と同じ方向を長手とするストライプ状の個別電極150cとして形成される。詳細には、個別電極150cは有効領域Aにおいては発光素子Pの間隙を通り、周辺領域Bにおいては第1の領域の内側と第1の領域の外側であって且つ第2の領域の内側である領域とを通り、第2の領域の外側に至り、第2電極用電源線140と重なる領域まで延びて第2電極用電源線140と電気的に接続する。すなわち、その端は、第2層間絶縁膜35の端よりも外側であり、且つ、共通電極72の端よりも外側に位置する。本変形例によっても、上述した各実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
次に、図12の(B)に示されるように、発光装置3Bは、走査線駆動回路とデータ線駆動回路の位置が逆転している点を除いて、発光装置3Aと同様の構成をしている。すなわち、発光装置3Bにおいては、走査線駆動回路100が基板10の下辺側の周辺領域Bにおいて有効領域Aに沿って配置され、データ線駆動回路200A,200Bが基板10の各左辺および右辺側の周辺領域Bに配置される。第2電極用電源線140は、各データ線駆動回路200A,200Bの外側に、基板10の対向する2辺(左右両辺)に沿って配置され、補助電極150は、第2電極用電源線140と直交する方向(すなわち、信号入力端子Gが配設される辺と同じ方向)を長手としたストライプ状に形成される。発光装置3Aと同様に、補助電極150の左右の各端は、共通電極72の端よりも外側であり、さらに、第2層間絶縁膜35の端よりも外側に位置し、第2電極用電源線140と重なり接するように形成される。よって、発光装置3Bによっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
なお、発光装置3Aおよび3Bのいずれにおいても、図12の(A)の右側に示されるように、補助電極150がストライプ状の複数の個別電極150cと周辺領域Bに形成されて複数の個別電極150cを接続する接続電極150dとを有するようにしてもよい。この場合、接続電極150dは、第1の領域の内側に重なる部分と、第1の領域の外側であり且つ第2の領域の内側である領域とを通り第2の領域の外側に至る部分とを有し、さらに第2電極用電源線140と重なるように形成される。すなわち、接続電極150dは、第2電極用電源線140と重なるだけでなく、第2層間絶縁膜35の端および共通電極72の端が接続電極150dと重なるように配置されている。
【0062】
図13の(A)および(B)に、発光装置の他のレイアウト例を示す。図13の(A)に示されるように、発光装置4Aにおいては、基板10の下辺縁に沿って信号入力端子Gが配設され、その内側に第2電極用電源線140がコの字状に配設される。さらに、第2電極用電源線140の内側には第1電極用電源線130がコの字状に配設され、この電源線130と有効領域Aとの間にデータ線駆動回路200が配設される。走査線駆動回路100A,100Bは有効領域Aの左右各辺に沿う領域に各々配設される。
【0063】
図示のように、第2層間絶縁膜35は、有効領域A全体と、走査線駆動回路100A,100B、およびデータ線駆動回路200の全部と、第1電極用電源線130の一部(図示の例では、信号入力端子Gが配設された辺を長手方向としたとき、長手方向に延在する部分)を覆うように形成される。共通電極72は、第2層間絶縁膜35とほぼ同じ部分を覆い、且つ、共通電極72の四辺の各端において第2層間絶縁膜35の対応する端よりも内側となるように形成される。よって、本変形例においては、基板10のすべての辺側において、第2層間絶縁膜35が形成される第2の領域は、基板10の面内における外側方向に共通電極72が形成される第1の領域よりもはみ出している。
【0064】
図示のように、補助電極は、走査線駆動回路100A,100Bと平行な方向を長手として延在するストライプ状の個別電極150eとして形成される。基板10の下端側における個別電極150eの端は、第2電極用電源線140と重なって接するように形成される。なお、この例において、個別電極150eは第1電極用電源線130と交差しているが、第1電極用電源線130と第2電極用電源線140とを別々の層で形成することにより、個別電極150eが第1電極用電源線130と接することなく第2電極用電源線140とのみ接するように形成する。同様に、共通電極72と第1電極用電源線130とは重なるが、第1電極用電源線130と第2電極用電源線140とを別々の層で形成することで、共通電極72と第1電極用電源線130とが電気的に接触しない構成とすることができる。一方、基板10の上端側における個別電極150eの端は、共通電極72の端個別電極150eよりも外側であり、さらに、第2層間絶縁膜35の端(第2の領域)よりも外側に位置するように形成される。よって、発光装置4Aによっても、上述した各実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
次に、図13の(B)に示されるように、発光装置4Bは、走査線駆動回路とデータ線駆動回路の位置が逆転している点を除いて、発光装置4Aと同様の構成をしている。すなわち、発光装置4Bにおいては、走査線駆動回路100が基板10の下辺側の周辺領域Bにおいて有効領域Aに沿って配置され、データ線駆動回路200A,200Bが基板10の各左辺および右辺側の周辺領域Bに配置される。第2電極用電源線140は、基板10下端側において信号入力端子Gよりも内側にコの字状に配置され、補助電極150は、データ線駆動回路200A,200Bと平行な方向を長手としたストライプ状に形成される。発光装置4Aと同様に、補助電極150の上下の各端は、共通電極72の端よりも外側にであり、且つ、第2層間絶縁膜35の端よりも外側に位置するとともに、下端は、第2電極用電源線140と重なり接するように形成される。よって、発光装置4Bによっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0066】
図12(A)、図12(B)、図13(A)及び図13(B)に示すように、周辺領域Bにおいて、補助配線150は、第2電極用電源線140の延在方向に対し交差する方向に、ストライプ状に延在している。即ち、図1乃至図3では、補助配線150bは第2電極用電源線140の延在方向にも延在しているが、第2電極用電源線140の延在方向に対して交差する方向にのみ延在させてもよい。換言すれば、補助配線150は、第2電極用電源線140の延在方向と平行に形成される必要は必ずしもなく、第2電極用電源140と交差するように形成されていればよい。
【0067】
<D:電子機器>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図14ないし図16には、以上の何れかの形態に係る発光装置を表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0068】
図14は、発光装置を採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する発光装置1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bと、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。発光装置1、1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bは有機発光ダイオード素子を発光素子70として使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0069】
図15は、発光装置を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する発光装置1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bとを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bに表示される画面がスクロールされる。
【0070】
図16は、発光装置を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す斜視図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する発光装置1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bとを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が発光装置1、1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4Bに表示される。
【0071】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図14から図16に示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する光ヘッド(書込ヘッド)が使用されるが、この種の光ヘッドとしても本発明の発光装置は利用される。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1C,1D,2A,3A,3B,4A,4B…発光装置、10…基板、70…発光素子、34…回路保護膜、35…第2層間絶縁膜(絶縁層)、37…隔壁、37a…開口部、65…防湿性充填材、72…共通電極(第2電極)、74…発光機能層、76…画素電極(第1電極)、80…封止膜、90…シール、100A,100B…走査線駆動回路、110…対向基板、111…走査線、112…データ線、113…電源供給線、120…プリチャージ回路、140…第2電極用電源線、150…補助電極、150c,150e…個別電極、150d…接続電極、200,200A,200B…データ線駆動回路、A…有効領域、B…周辺領域、C,F…領域、E1〜E5…端、G…信号入力端子、P…単位回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有し、前記各発光素子は第1電極と第2電極と両者の間にある発光層とを有し、前記第2電極は前記複数の発光素子に共通に設けられ、前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層を有する発光装置であって、
前記第2電極と電気的に接続した補助電極と、
前記素子層の上層に配置されるとともに、前記第2電極および前記補助電極よりも下層に配置される部分を有し、前記第2電極および前記補助電極を前記回路素子から絶縁するための絶縁層と、
を有し、
前記第2電極は、前記有効領域を覆い、前記周辺領域にはみだして一様に形成され、
前記補助電極は、前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通り、前記周辺領域の一部に形成され、
前記周辺領域において、前記第2電極の端は、前記基板の面内において前記補助電極の端および前記絶縁層の端の各々よりも内側に位置する、
発光装置。
【請求項2】
前記第2電極は、前記補助電極の下層に配置される、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有する発光装置であって、
前記複数の発光素子の各々に対応して設けられた複数の第1電極と、
前記複数の発光素子に共通に設けられた第2電極と、
前記複数の第1電極と前記第2電極との間に介在する発光層と、
前記第2電極と電気的に接続した補助電極と、
前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層と、
前記第2電極または前記補助配線と前記素子層との間を絶縁する絶縁層と、を備え、
前記第2電極は、前記有効領域全体と前記周辺領域の少なくとも一部とを含む第1の領域に設けられており、
前記絶縁層は、前記有効領域全体において前記第1の領域と重なり、前記周辺領域において前記第1の領域よりも第1の方向にはり出した第2の領域に設けられており、
前記補助電極は、前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通るように設けられており、且つ、前記周辺領域において、前記第1の領域の内側と前記第1の領域の外側であって且つ前記第2の領域の内側である領域とを通り前記第2の領域の外側に至るように設けられている、
発光装置。
【請求項4】
前記複数の発光素子は、マトリクス状に配列しており、
前記補助電極は、前記複数の発光素子の間隙を通り、且つ、前記有効領域の内側から外側に至るように、第1の方向に沿ってストライプ状に設けられた複数の個別電極を有することを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記補助電極は、前記周辺領域において前記複数の個別電極を互いに接続する接続電極をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記絶縁層の前記第1の方向における端が、前記接続電極と重なるように前記接続電極を配置したことを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記複数の発光素子は、マトリクス状に配列しており、
前記補助電極は、前記複数の発光素子の間隙を通り、且つ、前記有効領域の内側から前記第2の領域の外側に至るように前記第1の方向に沿ってストライプ状に設けられた複数の個別電極である、
請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2電極に電位を供給するための第2電極用電源線が、前記第1の方向と交差するように前記周辺領域に設けられており、
前記第2電極用電源線は、前記補助電極と電気的に接続されることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2電極用電源線は、前記第1の領域の外側に設けられたことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発光装置を有する電子機器。
【請求項1】
基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有し、前記各発光素子は第1電極と第2電極と両者の間にある発光層とを有し、前記第2電極は前記複数の発光素子に共通に設けられ、前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層を有する発光装置であって、
前記第2電極と電気的に接続した補助電極と、
前記素子層の上層に配置されるとともに、前記第2電極および前記補助電極よりも下層に配置される部分を有し、前記第2電極および前記補助電極を前記回路素子から絶縁するための絶縁層と、
を有し、
前記第2電極は、前記有効領域を覆い、前記周辺領域にはみだして一様に形成され、
前記補助電極は、前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通り、前記周辺領域の一部に形成され、
前記周辺領域において、前記第2電極の端は、前記基板の面内において前記補助電極の端および前記絶縁層の端の各々よりも内側に位置する、
発光装置。
【請求項2】
前記第2電極は、前記補助電極の下層に配置される、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
基板上に複数の発光素子が配列された有効領域と当該有効領域を囲む周辺領域とを有する発光装置であって、
前記複数の発光素子の各々に対応して設けられた複数の第1電極と、
前記複数の発光素子に共通に設けられた第2電極と、
前記複数の第1電極と前記第2電極との間に介在する発光層と、
前記第2電極と電気的に接続した補助電極と、
前記発光素子の発光を制御するための回路素子が配置された素子層と、
前記第2電極または前記補助配線と前記素子層との間を絶縁する絶縁層と、を備え、
前記第2電極は、前記有効領域全体と前記周辺領域の少なくとも一部とを含む第1の領域に設けられており、
前記絶縁層は、前記有効領域全体において前記第1の領域と重なり、前記周辺領域において前記第1の領域よりも第1の方向にはり出した第2の領域に設けられており、
前記補助電極は、前記有効領域において前記複数の発光素子の間隙を通るように設けられており、且つ、前記周辺領域において、前記第1の領域の内側と前記第1の領域の外側であって且つ前記第2の領域の内側である領域とを通り前記第2の領域の外側に至るように設けられている、
発光装置。
【請求項4】
前記複数の発光素子は、マトリクス状に配列しており、
前記補助電極は、前記複数の発光素子の間隙を通り、且つ、前記有効領域の内側から外側に至るように、第1の方向に沿ってストライプ状に設けられた複数の個別電極を有することを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記補助電極は、前記周辺領域において前記複数の個別電極を互いに接続する接続電極をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記絶縁層の前記第1の方向における端が、前記接続電極と重なるように前記接続電極を配置したことを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記複数の発光素子は、マトリクス状に配列しており、
前記補助電極は、前記複数の発光素子の間隙を通り、且つ、前記有効領域の内側から前記第2の領域の外側に至るように前記第1の方向に沿ってストライプ状に設けられた複数の個別電極である、
請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2電極に電位を供給するための第2電極用電源線が、前記第1の方向と交差するように前記周辺領域に設けられており、
前記第2電極用電源線は、前記補助電極と電気的に接続されることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2電極用電源線は、前記第1の領域の外側に設けられたことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発光装置を有する電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−142315(P2012−142315A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102294(P2012−102294)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2007−319270(P2007−319270)の分割
【原出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2007−319270(P2007−319270)の分割
【原出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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