説明

発光装置

【課題】光取り出し効率を向上でき、且つ、信頼性を向上できる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、透光性基板10と、透光性基板10の一表面側に形成され陽極22と陰極24との間に介在する発光層が備えられた有機EL層23を有する有機EL素子20と、透光性基板10の他表面側に設けられ有機EL素子20から放射された光の反射を抑制する凹凸構造部30と、透光性基板10の上記他表面側に配置されたパッケージ用基板40と、有機EL素子20への水分の到達を阻止する保護部50とを備える。パッケージ用基板40は、ガラス基板である。透光性基板10は、プラスチック基板である。保護部50は、無機材料の薄膜あるいは、薄膜の積層膜で構成され、陽極22、陰極24それぞれは、発光層と重ならない部位まで延長して形成してあり、これらの延長された部位の一部が保護部50により覆われずに露出し、露出した部位がパッドを構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)を利用した発光装置が各所で研究開発されている。
【0003】
有機EL素子としては、例えば、透光性基板(透明基板)の一表面側に形成され、陽極となる透明電極、ホール輸送層、発光層(有機発光層)、電子注入層、陰極となる電極の積層構造を備えたものが知られている。この種の有機EL素子では、陽極と陰極との間に電圧を印加することによって発光層で発光した光が、透明電極および透光性基板を通して取り出される。
【0004】
有機EL素子は、自発光型の発光素子であること、比較的高効率の発光特性を示すこと、各種の色調で発光可能であること、などの特徴を有するものであり、表示装置(例えば、フラットパネルディスプレイなどの発光体など)や、光源(例えば、液晶表示機器のバックライトや照明光源など)としての適用が期待されており、一部では既に実用化されている。
【0005】
しかしながら、これらの用途に有機EL素子を応用展開するために、より高効率・長寿命・高輝度の有機EL素子の開発が望まれている。
【0006】
有機EL素子の効率を支配する要因は、主として、電気−光変換効率、駆動電圧、光取り出し効率の3つである。
【0007】
電気−光変換効率については、発光層の材料として燐光発光材料を用いることにより、外部量子効率が20%を超えるものが報告されている。この外部量子効率が20%という値は、内部量子効率に換算すると略100%であると考えられ、電気−光変換効率の観点では、いわゆる限界値に到達した例が実験的に確認されたといえる。また、駆動電圧についても、発光層のエネルギーギャップに相当する電圧の10〜20%増し程度の電圧で比較的高輝度の発光を示す有機EL素子が得られるようになってきている。したがって、これら2つの要因(電気−光変換効率、駆動電圧)の改善による有機EL素子の効率向上は、あまり期待できない。
【0008】
一方、有機EL素子の光取り出し効率は、一般的に20〜30%程度と言われている(この値は、発光パターンや、陽極と陰極との間の層構造によって多少変化する)。光取り出し効率は、光を発生する部位およびその周辺部を構成する材料が、高屈折率、吸光性、などの特性を有するため、屈折率の異なる材料どうしの界面での全反射、材料による光の吸収などによって、発光を観測する側の外界へ光を有効に伝搬できないために、上述のような低い値になるものと考えられる。すなわち、光取り出し効率が20〜30%ということは、いわゆる発光として有効に活用できない光が全発光量の70〜80%を占める、ということであり、光取り出し効率の向上による有機EL素子の効率の向上の期待値は非常に大きい。
【0009】
ところで、一表面側に有機EL素子が形成されたガラス基板からなる透光性基板の他表面側(光取り出し面側)にレンズシートからなる光散乱部を設けた有機EL装置が提案されている(特許文献1)。この特許文献1には、空気に接する光散乱部が光取り出し面において生じる反射または全反射を緩和し、かつ、当該光散乱部が本質的に光を吸収しない性質を有することにより、光取り出し効率を向上できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2931211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に開示された有機EL装置のように透光性基板の上記他表面に光散乱部を設けた発光装置では、光取り出し効率の向上を図ることができるが、光散乱部の凹凸面に傷が付きやすく、光学特性が変わってしまう懸念があり、信頼性に問題がある。
【0012】
また、上記特許文献1には、透光性基板の上記他表面側に設けた光散乱部の凹凸面側にガラス板をエポキシ系接着剤により貼り合わせた構造を有する発光装置も開示されている。
【0013】
しかしながら、光散乱部とガラス板とをエポキシ系接着剤により貼り合わせた構造を有する有機EL装置では、当該ガラス板を貼り合わせていないものに比べて、光取り出し効率が低下してしまう。
【0014】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、光取り出し効率を向上でき、且つ、信頼性を向上できる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発光装置は、透光性基板と、前記透光性基板の一表面側に形成され陽極と陰極との間に介在する発光層が備えられた有機EL層を有する有機EL素子と、前記透光性基板の他表面側に設けられ前記有機EL素子から放射された光の前記他表面での反射を抑制する凹凸構造部とを備えた発光装置であって、前記透光性基板の前記他表面側に配置され少なくとも一部が透光性材料により形成されたパッケージ用基板と、前記有機EL素子における前記透光性基板側とは反対側を覆い前記有機EL素子への水分の到達を阻止する保護部とを有し、前記パッケージ用基板は、ガラス基板からなり、前記透光性基板は、プラスチック基板からなり、前記保護部は、無機材料の薄膜あるいは、無機材料の薄膜の積層膜で構成されており、前記陽極、前記陰極それぞれは、前記発光層と重ならない部位まで延長して形成してあり、これらの延長された部位の一部が前記保護部により覆われずに露出しており、露出した部位がパッドを構成していることを特徴とする。
【0016】
この発光装置において、前記保護部は、前記透光性基板の側縁および前記透光性基板と前記パッケージ用基板とを接合する接合部の側縁を覆うように形成してあるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、光取り出し効率を向上でき、且つ、信頼性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の発光装置の概略断面図である。
【図2】同上の要部概略平面図である。
【図3】同上の凹凸構造部の構成例の説明図である。
【図4】同上の他の構成例の要部概略平面図である。
【図5】同上の凹凸構造部の他の構成例の概略斜視図である。
【図6】同上の凹凸構造部の別の構成例の概略斜視図である。
【図7】実施形態2の発光装置の概略断面図である。
【図8】実施形態3の発光装置の概略断面図である。
【図9】実施形態4の発光装置の概略断面図である。
【図10】実施形態5の発光装置の概略断面図である。
【図11】同上の発光装置の要部概略平面図である。
【図12】実施形態6の発光装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
以下、本実施形態の発光装置について、図1に基づいて説明する。
【0020】
本実施形態の発光装置は、透光性基板10と、透光性基板10の一表面側に形成された有機EL素子20と、透光性基板10の他表面側に設けられ有機EL素子20から放射された光の上記他表面での反射を抑制する凹凸構造部30とを備えている。また、本実施形態の発光装置は、透光性基板10の上記他表面側に配置されたパッケージ用基板40と、有機EL素子20における透光性基板10側とは反対側を覆い有機EL素子20への水分の到達を阻止する保護部50とを備えている。さらに、本実施形態の発光装置は、透光性基板10とパッケージ用基板40との間に介在し透光性基板10とパッケージ用基板40との間の距離を所定距離に保つスペーサ60とを有し、凹凸構造部30とパッケージ用基板40との間に空間70が存在している。
【0021】
透光性基板10としては、無アルカリガラス基板やソーダライムガラス基板などの安価なガラス基板に比べて更に安価であり、且つ、当該ガラス基板よりも屈折率が大きなプラスチック基板の一種であるポリエチレンテレフタラート(PET)基板を用いている。プラスチック基板のプラスチック材料としては、PETに限らず、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)などを採用してもよく、所望の用途や、屈折率、耐熱温度などに応じて適宜選択すればよい。また、透光性基板10は、プラスチック基板に限らず、上述の無アルカリガラス基板やソーダライムガラス基板、高屈折率ガラス基板などのガラス基板を用いてもよい。
【0022】
ただし、透光性基板10としてガラス基板を用いる場合には、透光性基板10の上記一表面の凹凸が有機EL素子20のリーク電流などの発生原因となることがある(有機EL素子20の劣化原因となることがある)。このため、透光性基板10としてガラス基板を用いる場合には、上記一表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意する必要があり、コストが高くなってしまう。なお、透光性基板10の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。
【0023】
これに対して、透光性基板10としてプラスチック基板を用いれば、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることができるという利点がある。
【0024】
また、透光性基板10は、少なくとも一部(有機EL素子20の発光領域に重なる部位)が透光性材料(例えば、上述のプラスチック材料や、無アルカリガラス、ソーダライムガラスなどのガラス材料)により形成されていればよい。
【0025】
また、透光性基板10の平面視形状は、矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。
【0026】
有機EL素子20は、陽極22と陰極24との間に介在する有機EL層23が、陽極22側から順に、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を備えている。ここにおいて、有機EL素子20は、陽極22を透光性基板10の上記一表面側に積層してあり、陽極22における透光性基板10側とは反対側で、陰極24が陽極22に対向している。
【0027】
有機EL素子20は、陽極22を透明電極により構成するとともに陰極24を発光層からの光を反射する電極により構成してあるが、陰極24を透明電極により構成するとともに陽極24を発光層からの光を反射する電極により構成し、陰極24と陽極22との位置関係を逆にしてもよい。要するに、有機EL素子20は、陽極22と陰極24との2つの電極のうちの一方の電極からなる第1の電極が透光性基板10上に形成され、他方の電極からなる第2の電極が第1に電極に対向していればよい。
【0028】
上述の有機EL層23の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、陽極とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよく、例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。
【0029】
陽極22は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。陽極22の電極材料としては、例えば、ITO、IZO、酸化スズ、酸化亜鉛など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、陽極22は、透光性基板10の上記一表面側に、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0030】
なお、陽極22のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、陽極22の膜厚は、陽極22の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0031】
また、陰極24は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極24の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウムなど、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属の導電材料、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。また、陰極24側から光を取り出す場合には、例えば、ITO、IZOなどを採用すればよい。
【0032】
発光層の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0033】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、陽極22との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0034】
また、ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0035】
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0036】
また、電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、Siなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiOやSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0037】
パッケージ用基板40としては、高屈折率ガラス基板に比べて安価なガラス基板である無アルカリガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、ソーダライムガラス基板を用いてもよい。また、パッケージ用基板40で用いるガラス基板については、有機EL素子20を形成するためのものではないので、算術平均粗さRaが数100nm以上のガラス基板を用いることができる。
【0038】
上述の有機EL素子20が形成された透光性基板10は、当該透光性基板10の周部を全周に亘ってパッケージ用基板40と接合してある。ここにおいて、透光性基板10とパッケージ用基板40とを接合する接合部29は、例えば、接着用フィルム、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、接着剤(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂など)などにより構成すればよい。
【0039】
また、保護部50は、SiN膜により構成してある。保護部50の材料としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの有機材料を用いてもよいが、耐湿性を高めるために、無機材料を用いることが好ましい。そこで、保護部50は、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などの薄膜、あるいは、これら薄膜の積層膜などにより構成することが好ましい。
【0040】
ただし、有機EL素子20は、透光性基板10の上記一表面で発光層と重ならない部位まで陽極22、陰極24それぞれを延長して形成してあり、これらの延長された部位の一部が保護部50により覆われずに露出しており、露出した部位がパッド122,124を構成している。なお、パッド122と陽極22、パッド124と陰極24とは、それぞれ同じ材料に限らず、互いに異なる材料により形成してもよい。
【0041】
ところで、本実施形態の発光装置は、上述のように透光性基板10の上記他表面側に設けられた凹凸構造部30とパッケージ用基板40との間に空間70が存在している。
【0042】
ところで、有機EL素子20の発光層および透光性基板10それぞれの屈折率は、光が取り出される外部雰囲気である空気の屈折率に比べて大きい。したがって、上述の凹凸構造部30が設けられずに透光性基板10とパッケージ用基板40との間の空間が空気雰囲気となっている場合には、透光性基板10からなる第1の媒質と空気からなる第2の媒質との界面で全反射が生じ、全反射角以上の角度で当該界面に入射する光は反射される。そして、第1の媒質と第2の媒質との界面で反射された光が有機EL層23または透光性基板10内部において多重反射し、外部に取り出されずに減衰するので、光取出し効率が低下する。また、第1の媒質と第2の媒質との界面に全反射角未満の角度で入射した光についても、フレネル反射が発生するため、さらに光取り出し効率が低下する。
【0043】
これに対して、本実施形態では、有機EL素子20を上記一表面側に形成する透光性基板10の上記他表面側に上述の凹凸構造部30を設けてあるので、有機EL素子20と透光性基板10とで構成される有機EL装置の外部への光取り出し効率を向上させることができる。
【0044】
上述の凹凸構造部30は、図1および図2に示すように、多数の突起31が透光性基板10の上記一表面に平行な2次元面内で周期的に配列された2次元周期構造を有している。
【0045】
図2に示した例では、突起31を四角錐状の形状としてあるが、突起31の形状は、図2および図3(a)に示すような四角錐状に限らず、図3(b)に示すような三角錐状でもよいし、図3(c)に示すような六角錐状でもよいし、図3(d)に示すような円錐状でもよい(図3(d)では、隣り合う突起31同士が繋がって平面視における突起31同士の境界が直線となっている)。要するに、突起31は、四角錐状以外の錐状でもよい。また、突起31は、半球状でもよい。
【0046】
また、当該2次元周期構造の周期Pは、発光層で発光する光の波長が300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。
【0047】
周期Pを例えば5λ〜10λの範囲で設定した場合には、幾何光学的な効果、つまり、入射角が全反射角未満となる表面の広面積化により、光取り出し効率が向上する。また、周期Pを例えばλ〜5λの範囲で設定した場合には、回折光による全反射角以上の光を取り出す作用により、光の取り出し効率が向上する。また、周期Pをλ/4〜λの範囲で設定した場合には、凹凸構造部30付近の有効屈折率が透光性基板10の上記一表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に低下することとなり、透光性基板10と空間70との間に、凹凸構造部30の媒質の屈折率と空間70の媒質の屈折率との中間の屈折率を有する薄膜層を介在させるのと同等となり、フレネル反射を低減させることが可能となる。要するに、周期Pをλ/4〜10λの範囲で設定すれば、反射(全反射あるいはフレネル反射)を抑制することができ、光取り出し効率が向上する。ただし、幾何光学的な効果による光取り出し効率の向上を図る際の周期Pの上限としては、1000λまで適用可能である。また、凹凸構造部30は、必ずしも2次元周期構造などの周期構造を有している必要はなく、凹凸のサイズがランダムな凹凸構造や周期性のない凹凸構造でも光取り出し効率の向上を図れる。なお、異なるサイズの凹凸構造が混在する場合(例えば、周期Pが1λの凹凸構造と5λ以上の凹凸構造とが混在する場合)には、その中で最も凹凸構造部30における占有率の大きい凹凸構造の光取り出し効果が支配的になる。また、多数の突起31の形状についても、複数も種類の形状が混在していてもよく、例えば、図4に示すように、六角錐状の突起31(31a)と円錐状の突起31(31b)とが混在してもよい。
【0048】
凹凸構造部30は、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成してあるが、これに限るものではない。例えば、透光性基板10の上記他表面に凹凸構造部30をインプリント法(ナノインプリント法)により形成してもよいし、透光性基板10を射出成形により形成するようにし、適宜の金型を用いて透光性基板10に凹凸構造部30を直接形成してもよい。
【0049】
ここで、インプリント法により、凹凸構造部30を形成する方法の一例について簡単に説明する。
【0050】
まず、PET基板からなる透光性基板10の上記他表面上に、凹凸構造部30の基礎となる高屈折率の透明材料(例えば、酸化チタンのナノ粒子を混入させた熱硬化性樹脂)からなる転写層をスピンコート法により形成する。次に、凹凸構造部30の形状に応じてパターン設計した凹凸パターンを形成したモールドを、転写層に押し付けて当該転写層を変形させ硬化させる(例えば、熱硬化させる)ことにより凹凸構造部30を形成し、モールドを凹凸構造部30から離す。ここにおいて、モールドとしては、例えば、周期が2μm、高さが2μmの錐状(例えば、四角錐状、円錐状など)の微細突起が2次元アレイ状にパターニングされたNiモールドを用いればよい。
【0051】
なお、インプリント法としては、上述のように熱硬化性樹脂を転写層の透明材料として用いる熱インプリント法(熱ナノインプリント法)に限らず、転写層の材料として光硬化性樹脂を用いる光インプリント法(光ナノインプリント法)を採用してもよい。この場合には、粘度の低い光硬化性樹脂層からなる転写層をモールドにより変形させて、その後に紫外線を照射して光硬化性樹脂を硬化させ、モールドを転写層から離すようにすればよい。インプリント法では、モールド用の金型さえ1度作れば、凹凸構造部30を再現性良く形成することができ、低コスト化を図れる。
【0052】
本実施形態の発光装置は、凹凸構造部30の表面(凹凸面)とパッケージ用基板40との間に空間70が存在することが重要である。仮に、凹凸構造部30の表面が、当該凹凸構造部30とパッケージ用基板40との界面であるとすると、パッケージ用基板40と外部の空気との屈折率界面が存在するため、当該屈折率界面で再び全反射が生じる。これに対して、有機EL素子20の光を一旦、空間70へ取り出すことができるので、空間70の媒質である空気とパッケージ用基板40との界面、パッケージ用基板40と外部の空気との界面で全反射ロスが生じなくなる。
【0053】
ところで、本実施形態の発光装置では、凹凸構造部30の各突起31それぞれが、透光性基板10とパッケージ用基板40との間に介在し透光性基板10とパッケージ用基板40との間の距離を所定距離に保つスペーサ60を兼ねている。
【0054】
以上説明した本実施形態の発光装置では、透光性基板10の上記他表面側に配置され少なくとも一部が透光性材料により形成されたパッケージ用基板40と、有機EL素子20における透光性基板10側とは反対側を覆い有機EL素子20への水分の到達を阻止する保護部50とを備えているので、透光性基板10として高屈折率ガラス基板やバリア層が設けられたプラスチック基板を用いることなく、防水性および耐湿性を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態の発光装置では、透光性基板10とパッケージ用基板40との間に介在し透光性基板10とパッケージ用基板40との間の距離を所定距離に保つスペーサ60とを有し、凹凸構造部30とパッケージ用基板40との間に空間70が存在しているので、有機EL素子20から放射されパッケージ用基板40まで到達した光の全反射ロスを低減でき、凹凸構造部30とパッケージ用基板40との間に空間70が存在しない場合に比べて光取り出し効率の向上を図れる。しかも、本実施形態の発光装置では、透光性基板10とパッケージ用基板40との間に介在し透光性基板10とパッケージ用基板40との間の距離を所定距離に保つスペーサ60を有することにより、凹凸構造部30に傷が付くのを防ぐことができるとともに、透光性基板10とパッケージ用基板40との距離を所定距離に保つことができるので、透光性基板10が撓むのを防止でき、光学特性の安定化を図れ、信頼性の向上を図れる。ここで、凹凸構造部30において突起31が周期的に配列されていれば、透光性基板10とパッケージ用基板40との距離を、より安定して所定距離に保つことができる。また、凹凸構造部30の突起31を錐状もしくは半球状に形成して、スペーサ60としても利用する突起31とパッケージ用基板40との接触面積を小さくすることにより、光取り出し効率の向上を図れる。その一方で、凹凸構造部30について、図5に示すように凹凸構造部30を構成する多数の凹部32が錐状(図示例では、四角錐状であるが、これに限らず、例えば、円錐状、三角錐状、六角錐状などでもよい)の凹部32により形成された場合、図6に示すように凹凸構造部30を構成する多数の凹部31が半球状の凹部32に形成された場合、のいずれも、隣り合う凹部32間の部位33がスペーサ60を構成し、当該部位33がパッケージ用基板40に面接触させることにより、透光性基板10とパッケージ用基板40との距離を、より安定して所定距離に保つことができる。ここで、当該部位33とパッケージ用基板40とを接着剤などにより固定するようにしてもよい。ただし、図5や図6の凹凸構造部30の構造では、光取り出し効率の低下を抑制するために、隣り合う凹部32間の部位33の面積が大きくなりすぎないようにすることが好ましい。
【0056】
また、本実施形態の発光装置では、多数のスペーサ60を備え、各スペーサ60が、スペーサ60と凹凸構造部30とが別体である場合に比べて、光取出し効率の向上を図れるとともに、製造が容易になる。
【0057】
また、本実施形態の発光装置では、透光性基板10としてプラスチック基板を採用すれば、透光性基板10としてソーダライムガラス基板や無アルカリガラス基板のような一般的なガラス基板に比べて屈折率が高いものを用いることができるので、有機EL素子20と透光性基板10との界面での全反射ロスを低減できる。また、透光性基板10としてガラス基板を用いる場合に比べて低コスト化を図れる。
【0058】
また、本実施形態の発光装置では、上述の空間70の雰囲気を空気雰囲気としてあるが、当該空間70を、真空、不活性ガス(例えば、アルゴンガスなど)、窒素ガス、ドライエアーの群から選択される1つの雰囲気とすれば、空気雰囲気である場合に比べて、有機EL素子20への水分の到達をより確実に抑制でき、信頼性が向上する。
【0059】
また、本実施形態の発光装置では、透光性基板10として、バリア層なしのプラスチック基板を用い、パッケージ用基板40として、ソーダライムガラス基板や無アルカリガラス基板のようなガラス基板を用いているので、低コスト化を図れるとともに、外部からの紫外線による有機EL素子20の長期信頼性の低下を防止することができる。
【0060】
なお、本実施形態の発光装置においては、パッケージ用基板40を光が透過する際にフレネル反射による損失(フレネルロス)が生じるので、パッケージ用基板40を透過する際のフレネルロスを低減することが望ましい。フレネルロスを抑制する手段としては、例えば、パッケージ用基板40の厚み方向の少なくとも一面に、単層もしくは多層の誘電体膜からなるアンチリフレクションコート(anti-reflection coat:以下、AR膜と略称する)を設けることが考えられる。ここにおいて、AR膜を例えば屈折率nが1.38のフッ化マグネシウム膜により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.38)=99.6nmとすればよい。同様に、AR膜を例えば屈折率nが1.58の酸化アルミニウム膜により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.58)=87.0nmとすればよい。また、AR膜は、厚さが99.6nmのフッ化マグネシウム膜と厚さが87.0nmの酸化アルミニウム膜との積層膜(2層AR膜)としてもよい。なお、誘電体膜の材料は、フッ化マグネシウムや酸化アルミニウム以外の材料を採用してもよい。
【0061】
本実施形態の発光装置では、パッケージ用基板40の厚み方向の少なくとも一面、好ましくは両面にAR膜を設けることにより、フレネルロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0062】
(実施形態2)
本実施形態の発光装置の基本構成は実施形態1と略同じであって、図7に示すように、パッケージ用基板40において透光性基板10に対向する一面側に、有機EL素子20の各パッド122,124それぞれとボンディングワイヤ(例えば、金線、アルミニウム線などの金属線)からなる接続部132,134を介して電気的に接続される外部接続電極42,44が形成されている点など相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付してある。
【0063】
本実施形態では、有機EL素子20のパッド122,124と外部接続電極42,44とを電気的に接続する接続部132,134がボンディングワイヤにより構成されているが、ボンディングワイヤに限らず、導電性ペースト(例えば、銀ペーストなど)や、金属膜などにより構成してもよい。
【0064】
ところで、本実施形態の発光装置は、実施形態1で説明した有機EL素子20への水分の到達を阻止する保護部50を、透光性基板10および接合部29の側縁も覆うように形成してある。しかして、透光性基板10の側縁や接合部29の側縁から水分が侵入するのを防止することができ、信頼性が更に向上する。
【0065】
(実施形態3)
本実施形態の発光装置の基本構成は実施形態2と略同じであって、図8に示すように、保護部50を第2のガラス基板により構成し、当該ガラス基板からなる保護部50が、パッケージ用基板40を構成するガラス基板に対してフリットガラスからなる接合部80を介して封着されている点などが相違する。なお、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
本実施形態の発光装置では、パッケージ用基板40が第1のガラス基板からなるとともに、保護部50が第2のガラス基板からなり、第2のガラス基板における第1のガラス基板との対向面の周部の全周が、フリットガラスからなる接合部80により第1のガラス基板側に封着されているので、接合部80がエポキシ樹脂などの有機材料からなる接着剤により構成されている場合に比べて、耐湿性を向上できる。
【0067】
また、保護部50を構成する第2のガラス基板として、パッケージ用基板40の第1のガラス基板と同じガラス材料のガラス基板(例えば、無アルカリガラス基板、ソーダライムガラス基板など)を用いて、第2のガラス基板と第1のガラス基板との線膨張係数を同じにすれば、パッケージ用基板40と保護部50との線膨張係数差に起因したパッケージ用基板40の反りを防止することができて、パッケージ用基板40の反りに起因した光学特性のばらつきを低減できるとともに、接合部80の信頼性を高めることができる。
【0068】
また、本実施形態の発光装置では、パッケージ用基板40と保護部50と接合部80とで囲まれる気密空間に、封止用の媒体(例えば、シリコーンオイル、パラフィンオイルなどの液体、あるいは、シリコーン、パラフィン、ワックスなどの樹脂)90を封入してある。しかして、外部からの有機EL素子20への水分の到達をより確実に防止することができ、信頼性が向上する。また、有機EL素子20で発生した熱を、媒体90を介して効率よく放熱させることが可能となるから、有機EL素子20の温度上昇を抑制することができて長寿命化を図れ、しかも、有機EL素子20へ流す電流を大きくできて高輝度化を図れる。
【0069】
ここにおいて、本実施形態の発光装置では、媒体90が液体の場合には、接続部132,134を構成するボンディングワイヤや当該ボンディングワイヤとパッド122,124や外部接続電極42,44との結線部から金属などの不純物が媒体90中へ溶出して信頼性が低下する懸念がある。そこで、本実施形態では、接続部132,134を封止材料(例えば、シリコーン樹脂など)からなる被覆部150により覆ってある。しかして、接続部132,134を被覆部150により覆ってあることにより、信頼性が向上する。また、本実施形態では、被覆部150が透光性基板10の周部を全周に亘って覆うように形成してある(つまり、被覆部150の平面視形状は枠状である)ので、凹凸構造部50とパッケージ用基板40との間の空間70へ媒体90が漏れるのをより確実に防止することが可能となる。
【0070】
ただし、上述の気密空間は、必ずしも媒体90を封入する必要はなく、不活性ガス雰囲気や真空雰囲気としてもよく、これらの場合は、保護部50における有機EL素子20との対向面に、水分を吸着する吸水材を設けることが好ましい。なお、この種の吸水材としては、例えば、酸化カルシウム系の乾燥剤(酸化カルシウムを練り込んだゲッタ)などを用いればよい。
【0071】
(実施形態4)
本実施形態の発光装置の基本構成は実施形態3と略同じであって、図9に示すように、多数の突起31のうちの一部の突起31がスペーサ60を構成している点が相違するだけである。図9では、高さの異なる2種類の突起31が混在しており、高さ寸法の大きい突起31がスペーサ60を構成している。なお、実施形態3と同様の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0072】
要するに、実施形態3では、凹凸構造部30を構成する多数の突起31の全てがスペーサ60を構成しているのに対して、本実施形態の発光装置では、凹凸構造部30を構成する多数の突起31のうちの一部がスペーサ60を構成している。
【0073】
しかして、本実施形態の発光装置では、スペーサ60と凹凸構造部30とが別体である場合に比べて、光取出し効率の向上を図れるだけでなく、光取り出し効率の向上を図りつつスペーサ60の高さ寸法の設計の自由度が高くなる。
【0074】
ただし、本実施形態では、スペーサ60となる突起31を一定間隔で設けることが好ましく、一定間隔で設けることにより、透光性基板10が部分的に撓むのを防止することができる。
【0075】
(実施形態5)
本実施形態の発光装置の基本構成は実施形態4と略同じであって、図10および図11に示すように、スペーサ60が凹凸構造部30の突起31とは別の壁状のリブにより構成されている点が相違する。なお、実施形態4と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
しかして、本実施形態の発光装置では、凹凸構造部30の突起31に傷が付くのを、より確実に防止することができるとともに、凹凸構造部30の突起31の設計自由度が高くなる。ここで、透光性基板10を射出成形により形成するようにすれば、凹凸構造部30とスペーサ60とを容易に且つ同時に形成することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、壁状のリブからなるスペーサ60を平面視でストライプ状に設けてあるが、ストライプ状に限らず、例えば、格子状に設けてもよい。
【0078】
(実施形態6)
図12に示す本実施形態の発光装置の基本構成は実施形態4と略同じであり、有機EL素子20の陽極22と陰極24との両方が透明電極からなり、透光性基板10から遠い第2の電極(図示例では、陰極24)における透光性基板10側とは反対の表面側に、発光層からの光を反射する光反射性部材25を配置してある点が相違する。なお、実施形態4と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
光反射性部材25は、第2の電極と直接接触していてもよいし、図12に示すように、光反射部材25と第2の電極との間に発光層で発生した光が干渉を起こさない程度の厚みを有する光透過性の層26(以下、光透過性層26と称する)が介在していてもよい。
【0080】
光反射性部材25は、いわゆる鏡面反射性を有する部材であってもよいし、光散乱性・拡散反射性を有する部材であってもよい。鏡面反射性を有する部材としては、例えばAl、Agなどの金属膜、誘電体多層膜からなる反射膜など、実質的に鏡面反射を示す任意の反射体を用いることができる。また、光散乱性・拡散反射性を有する光反射性部材25は、例えば、酸化バリウム、酸化チタンなどの粒子の層からなる反射面や、凹凸形状を有する面の上に形成した金属膜や誘電体多層膜からなる反射膜や、鏡面反射性を有する層の上に光散乱性、光拡散性、回折性を有する光透過性の層を設けたものなどで形成される。
【0081】
また、光反射性部材25と第2の電極との間に介在する光透過性層26は、光透過性の絶縁層であることが好ましい。この絶縁層の材質は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されないが、この絶縁層としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムなどの光透過性材料を、蒸着法、スパッタ法、CVD法など成膜方法で成膜して形成される層、無機系樹脂や有機系樹脂などをスピンコート法、ディップコート法、塗布法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの適宜のコート法や印刷法で塗布成膜して形成される層、有機材料や無機材料からなるシート、フィルム、ゲル、シール、板などが貼付や配置されることで形成される層などが挙げられる。また、この絶縁層の屈折率は、第2の電極と同等であることが好ましい。
【0082】
また、発光層で発生した光が干渉を起こさない程度の厚みとは、当該光の波長の数倍以上のオーダーであれば特に限定されないが、例えば1μm〜3mm程度の厚みである。光透過性の絶縁層の厚みがこのような範囲であれば、発光スペクトルの角度依存性がより低減されるようになる。
【0083】
また、光反射性部材25と第2の電極との間に介在する光透過性の絶縁層が、光散乱性を有してもよく、この場合も、発光スペクトルの角度依存性がより低減されるようになる。このような絶縁層としては、例えば、上述の光透過性の絶縁層中に光散乱成分(例えば、絶縁層を形成する周辺材料とは屈折率の異なる粒子、箔など)を含有するものや、屈折率界面を内部に備える材料の組み合わせで例えば一方の材料により形成され凹凸を有する層の上に他方の材料からなる層を積層したもの、周辺の材料と層分離を起こすことによって散乱性を発現する材料の組み合わせからなるものや、層中に反射性を有する粒子、箔、面などを含むものなどで形成することができる。
【0084】
なお、他の実施形態においても、有機EL素子20の陽極22と陰極24との両方を透明電極により構成してもよく、この場合には、透光性基板10から遠い第2の電極(図示例では、陰極24)における透光性基板10側とは反対の表面側に、光反射性部材25を設けることが好ましく、光反射性部材25と第2の電極との間に光透過性層26を介在させてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 透光性基板
20 有機EL素子
30 凹凸構造部
31 突起
32 凹部
40 パッケージ用基板
50 保護部
60 スペーサ
70 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、前記透光性基板の一表面側に形成され陽極と陰極との間に介在する発光層が備えられた有機EL層を有する有機EL素子と、前記透光性基板の他表面側に設けられ前記有機EL素子から放射された光の前記他表面での反射を抑制する凹凸構造部とを備えた発光装置であって、前記透光性基板の前記他表面側に配置され少なくとも一部が透光性材料により形成されたパッケージ用基板と、前記有機EL素子における前記透光性基板側とは反対側を覆い前記有機EL素子への水分の到達を阻止する保護部とを有し、前記パッケージ用基板は、ガラス基板からなり、前記透光性基板は、プラスチック基板からなり、前記保護部は、無機材料の薄膜あるいは、無機材料の薄膜の積層膜で構成されており、前記陽極、前記陰極それぞれは、前記発光層と重ならない部位まで延長して形成してあり、これらの延長された部位の一部が前記保護部により覆われずに露出しており、露出した部位がパッドを構成していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記保護部は、前記透光性基板の側縁および前記透光性基板と前記パッケージ用基板とを接合する接合部の側縁を覆うように形成してあることを特徴とする請求項1記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−12500(P2013−12500A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227686(P2012−227686)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【分割の表示】特願2010−25926(P2010−25926)の分割
【原出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】