説明

発振器の周波数変調制御のための方法及び装置

周波数変調指数を制御する電子デバイスが、周波数変調指数制御ループ(14)を有し、制御ループ(14)は、周波数制御可能な発振器(16)の周波数出力(18)に接続されるように適合される入力(22)を有する。発振器(16)は中心周波数(Fc)を有し、制御ループ(14)の出力(34)は、周波数変調ユニット(38)の入力(36)に接続されるように適合され、制御ループ(14)は変調指数を判定するように適合される。更に提供されるのは、一定の変調指数を備えた中心周波数(Fc)を有する変調周波数Fmで制御可能な発振器(16)を周波数変調する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、発振器の周波数変調制御ための方法及び装置に関し、特に、制御可能な発振器を一定の変調指数を備えた中心周波数Fcを有する変調周波数Fmで変調するための方法及び装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
発振器を周波数変調することは周知である。スイッチングされるDC−DCコンバータも周知であり、例えば、発振器により生成されるスイッチング周波数でトランジスタがスイッチングされる。特に、スイッチング周波数が高いとき、これはノイズ及び所望とされない電磁干渉(EMI)につながる。
【0003】
種々の理由により高周波数変換システムは、低周波数のものよりも多くのノイズを生成する。
【0004】
従って、スイッチングされるDC−DCコンバータに用いられる発振器を周波数変調することが最近必要となっている。この場合、コンバータのノイズレベルを低く保つためにスペクトル拡散機能が用いられる。スペクトル拡散アプローチは、DC−DCコンバータを固定周波数でスイッチングせず、拡散される周波数スペクトルを得るためスイッチング周波数は中心周波数周辺で変化する。そのため、エネルギーは単一の周波数に集中しない。
【0005】
周波数変調の1つの既知のパラメータは、変調指数(変調比と呼ぶこともある)であり、これは、変調された周波数の中心周波数からの最大差又は偏移間の比と定義される。変調指数は、変調された周波数が中心周波数周辺でどの程度変化するかを示す。変調指数は式1で表わすことができる。
=ΔF/F (式1)
ここで、Mは0≤M≤1の変調指数であり、ΔFは、変調された周波数と中心周波数との間の最大差であり、Fは中心周波数である。
【0006】
所定の周波数変調では、変調指数が一定に保たれることが重要である。固定周波数発振器を用いる変換システムでは、スペクトル拡散は、所望の変調指数を得るため変調信号として特定の大きさの線形ランプ発生器を用いることによって容易に達成され得る。変調指数を一定に保つため、線形ランプ発生器の最大振幅は、電流又は電圧制御を用いて一定に保たれる。
【0007】
高周波数変換システムでは、ヒステリシス/リング発振調整方法がしばしば用いられる。
【0008】
ヒステレティック/リング発振方法を用いるDC−DCコンバータ又は発振器は、本質的に可変でありそのため予測困難である周波数を有する。こういったコンバータの動作周波数を所定の周波数に固定する方法はいくつかある。しかし、その結果のシステムの周波数利得は、著しく可変であり、非線形であり、外部条件に依存する。例えば、入力及び出力の電圧レベルに依存し、DC−DCコンバータ内の出力コンデンサの等価直列インダクタンス(ESL)に依存する。これらの発振器は非線形の制御挙動を有する。
【0009】
そのため、所定の変調指数を達成するために必要とされる変調信号の大きさは著しく可変であり、変調する電流を特定の値に保つことは、必ずしも変調指数を一定に保たない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の全般的な目的の一つは、周波数変調指数を制御するための電子デバイスを提供することである。周波数変調指数を制御することにより、たとえ制御挙動が非線形であっても、制御可能な発振器を一定の変調指数で周波数変調することが可能となる。
【0011】
本発明の別の目的は、一定の変調指数を備えた中心周波数Fcを有する非線形の制御可能な発振器に対し周波数変調する方法を提供することである。
【0012】
従って、本発明の一つの側面において、電子デバイスが、周波数変調指数制御ループを含んで提供される。制御ループは、中心周波数Fcを備えた周波数制御可能な発振器の周波数出力に接続されるように適合される入力を有する。制御ループは、周波数変調ユニットの入力に接続されるように適合される出力を有し、変調指数制御ループが変調指数を判定するように適合される。
【0013】
本発明の一つの側面において、周波数変調指数制御ループは、制御可能な発振器から出力される変調された周波数を測定するよう適合される。制御可能な発振器は、リング発振器又は任意の他の種類の発振器であり得る。本発明は、自励発振(self-oscillating)DC−DCコンバータにも適用し得る。変調された周波数は種々の手段によって測定され得る。
【0014】
一実施例において、発振器は、ゼロヒステリシスを備えた自励発振DC−DCバック・コンバータであり得る。このコンバータは更に、電源入力を備えたコンパレータ、参照電圧を印加し得る非反転入力、フィードバック信号を印加し得る反転入力、及びフィルタネットワークを結合し得る出力を含み得る。フィードバック信号は、フィルタネットワークから得ることができ、コンバータの出力電圧は参照電圧によって決まり得る。
【0015】
一実施例において、コンパレータは、単一のインバータ擬似リング発振器として用いることができる。コンパレータの高利得は、コンパレータの伝播遅延の2倍の周期での発振を確実にする。コンパレータの出力が反転入力にループされるとき、その結果は、コンパレータの出力の矩形波形となる。コンパレータの非反転入力に印加される電圧は、コンパレータの出力信号に何も影響を与えない。しかし、インダクタ及びコンデンサを備えたフィルタネットワークをコンパレータの出力に接続すること、及びフィルタネットワークからフィードバック信号を得ることは利点となり得る。これは、重畳されたリップルを備えたDC出力であるコンパレータの出力となり得る。DC出力のレベルは、コンパレータの非反転入力に印加される参照電圧、及びコンパレータ出力に接続される負荷回路の等価直列抵抗を流れるインダクタ電流によりつくられるリップル電圧によって制御され得る。このリップルは、従来のDC−DCコンバータのランプ信号とみなすことができる。従って、コンパレータへの電源入力及び参照電圧に従うよう調整されたコンパレータの出力電圧があれば、提案されるトポロジーはDC−DCバック・コンバータと同等となり得る。便宜上、本明細書において定義するようなコンパレータは、低インピーダンス出力を有していてもよいこと、及び実際の実装ではゲート・ドライバ及び一対の相補パワー・トランジスタを従来のように含むパワーステージを必要とすることを理解されたい。
【0016】
一実施例において、フィルタネットワークは、コンパレータの出力に接続される第1の端子と、出力コンデンサに接続される第2の端子とを備えた出力インダクタを含み得る。そのためフィードバック信号は、出力インダクタ及び出力コンデンサの相互接続ノートで取得され得る。
【0017】
発振周波数はその後、コンパレータの伝播遅延、及びフィルタネットワークを介するコンパレータの反転入力へのスイッチノードSW信号(コンパレータの出力)の位相シフト(時間遅延)によって決まり得る。一実施例において、コンバータの伝播遅延は、発振周波数を御するため、コンパレータのバイアス電流を調節することによって制御され得る。発振周波数は、本発明の種々の側面に従って制御ループで有利に御され得る。コンパレータのバイアス電流(そのため変化するコンパレータの伝播遅延)は、動作周波数を調節及び変化させるように変化し得る。
【0018】
説明したようなコンバータは、「自動生成ランプ」を有し得、これは、インダクタ電流リップルを負荷回路内の等価直列抵抗(ESR)で乗算したものである。このランプの大きさが、基板生成された共振に起因するコンバータの出力にフィードバックされる信号の大きさより大きい限り、周波数制御は連続的である。しかし、寄生共振がコンバータの動作周波数の領域にある場合、周波数ロックは安定しない可能性がある。
【0019】
更なる実施例において、安定周波数制御の範囲は、コンパレータが、コンパレータの出力に接続される2つの異なるフィルタ回路の一つに各々接続される一対の相補補助入力を有する点で、拡大され得る。フィルタ回路はその後、各々、コンパレータの出力と参照端子の間にコンデンサを備えて接続される抵抗直列を有し得る。この実施例において、コンパレータは、ランプを内部で生成し、これを標準的な高速フィードバック信号と合計する。
【0020】
変調指数はその後、測定された変調された周波数信号の中心周波数からの偏差の絶対値を時間にわたって積分することにより計算され得る。
【0021】
図1を参照して、変調指数の計算を説明する。図1の線10は、発振器の時間にわたる候補となる変調された周波数出力を示す。破線12は発振器の中心周波数を示す。一例として、変調された周波数出力は三角信号の形式で変化する。しかし、他の変形、例えば正弦波信号も可能である。変調された周波数の中心周波数からの最大差又は偏差はΔFである。変調周波数はFmであり、変調時間期間Tmが示されている。
【0022】
中心周波数からの偏差の絶対値の時間にわたる積分は、例えば、変調時間期間Tmの4分の1の時間セクションにより実現され得る。時間期間Tmの第1の4分の1の間、実際の周波数出力は下記式により得られる。
【数1】

時間にわたる積分により下記が得られる。
【数2】

変調時間期間Tmの第2の4分の1にわたり積分すること、及び第1の4分の1の間の結果にこれを加算することで、変調時間期間の前半に対し下記が得られる。
【数3】

時間期間Tmの後半では結果は下記のようになる。
【数4】

その後、フル変調時間期間Tmにわたる中心周波数からの偏差の絶対値は、下記式により得られる。
【数5】

実際、これは図1の線影を付した領域に対応する。変調指数がΔF/Fcで定義される場合、変調時間期間Tm及び発振器の中心周波数Fcが既知であるとき、計算されたRにより変調指数を表すことが可能である。
【数6】

【0023】
そのため、測定された変調された周波数信号の中心周波数から偏差の絶対値の時間にわたる積分により、実際の変調指数を計算することができる。
【0024】
一実施例において、この電子デバイスは更に周波数変調ユニットを含み、この周波数変調ユニットは、変調時間期間Tmの前半の間、発振器周波数が中心周波数Fcより高く、変調時間期間Tmの後半の間、発振器周波数が中心周波数Fcより低くなるように、変調周波数Fmで発振器中心周波数Fcを周波数変調するための変調信号を制御可能な発振器に出力するように適合される。周波数変調指数制御ループは、制御可能な発振器の出力に接続されるように適合される入力を備え、変調時間期間Tmの前半の間の時間にわたる変調された発振器周波数の積分と、変調時間期間Tmの後半の間の時間にわたる変調された発振器周波数の積分との間の差を計算するよう適合される積分ユニットを更に含む。周波数変調指数制御ループは、積分ユニットの出力に結合され、計算された差を予測値と比較するよう適合され、かつ、計算された差が予測値に合致するように応じて周波数変調ユニットからの変調信号の出力を調節するように適合されるコンパレータユニットを更に含む。
【0025】
本実施例に従った、変調された発振器周波数は、変調時間期間の前半の間中心周波数より高く、変調時間期間の後半の間発振器周波数が中心周波数より低い。これにより積分が促進される。そのため、時間にわたる積分は、上記で数学的に示したように、常に変調時間期間Tmの前半の間の積分と変調時間期間Tmの後半の間の差となる。これら2つの積分結果をそれぞれ変調時間期間の前半及び後半に対し減算することにより、中心周波数からの偏差の絶対値の時間にわたる積分が容易に得られる。
【0026】
本発明の更なる側面において、周波数変調ユニットは、コンパレータ信号により調節され得る制御可能な振幅を備えた三角信号を出力する、三角信号発生器である。振幅が大きくなると、変調された周波数の中心周波数からの最大偏差も増大する。
【0027】
本発明の更なる側面において、積分ユニットは、変調時間期間Tmの前半の間、変調された周波数の周期をカウントアップするように、及び変調時間期間Tmの後半の間、変調された周波数の周期をカウントダウンするように結合されるアップダウンカウンタである。これは、積分ユニットの非常にシンプルな具現化である。変調時間期間の前半の間、変調周波数Fmが中心周波数より高くなり、変調時間期間の後半で発振器周波数が中心周波数より低くなるため、アップダウンカウンタは、常にフル変調時間期間Tmにわたりカウントするときの差となる。好ましくは、この実施例において、アップダウンカウンタは、変調時間期間Tmの開始の度にリセットされ、変調時間期間の各端の実際のカウントをコンパレータユニットに出力する。
【0028】
本発明の一つの側面において、コンパレータユニットは、計算された差が予測値より小さい第1の信号を、計算された差が予測値に等しいとき第2の信号を、及び計算された差が予測値より大きいとき第3の信号を出力するよう適合されるデジタルコンパレータである。これら3つの異なる信号は、周波数変調ユニットの制御可能な振幅の、それぞれ、増加、不変、又は減少につながる。本発明の更なる実施例において、積分ユニットがアナログ積分器であることが可能であり、コンパレータユニットがアナログコンパレータであることが可能である。
【0029】
本発明は更に、一定の変調指数を備えた中心周波数Fcを有する非線形の制御可能な発振器を変調周波数Fmで変調する方法を提供する。この方法は、可変振幅を備えた三角ランプ発生器信号を提供すること、変調時間期間Tmの前半の間、発振器周波数が中心周波数より高く、変調時間期間Tmの後半で発振器周波数が中心周波数より低くなるように、三角ランプ発生器信号を用いて非線形の制御可能な発振器を周波数変調することを含む。この方法は更に、制御可能な発振器から出力される変調された発振器周波数を測定することを含む。更なるステップにおいて、測定された変調された発振器周波数が、変調時間期間の前半の間時間にわたって積分されること、及び変調時間期間の後半の間時間にわたって積分されることを含む。変調時間期間の前半の間得られた結果と、変調時間期間の後半の間得られた結果との間の差が計算される。これは、例えば、アップダウンカウンタを用いることによって容易に達成される。計算された差はその後、予測差と比較される。予測差は、所望の変調指数、変調時間期間、及び中心周波数により定められる。本発明による方法の更なるステップにおいて、周波数変調ユニットから出力される三角ランプ発生器信号の振幅は、計算された差が予測差に合致するように応じて調節される。そのため、変調指数は一定に保たれる。
【0030】
例示の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、変調された周波数の時間にわたる積分を示す周波数時間図である。
【0032】
【図2】図2は、本発明の原理の例示の実施例に従った電子デバイスを含む発振システムを示すブロック図である。
【0033】
【図3】図3は、例示の一実施例に従った発振器を示す簡略化した回路図である。
【0034】
【図4】図4は、変調周期にわたる周波数変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図2は発振システム14を概略的に示す。発振器16が、発振器周波数が出力される周波数出力18を有する。発振器16は、変調信号を受信するよう適合される変調信号入力20を更に含む、制御可能な発振器である。周波数出力18は、カウント結果を出力するよう適合されるカウント出力26を含むデジタルアップダウンカウンタ24の入力22に接続される。カウント出力26は、コンパレータ30のコンパレータ入力28に接続される。
【0036】
コンパレータ30は、ターゲットカウントを入力するよう適合される第2の入力32を含む。コンパレータ30は、カウンタ24からのカウント出力とターゲットカウントとの比較の結果を表す信号を出力するよう適合されるコンパレータ出力34を含む。コンパレータ出力34は、ランプ発生器38の制御入力36に接続される。制御入力36は、ランプ信号の振幅を制御するための制御信号を受信するよう適合される。ランプ発生器38は更に信号出力40を含み、信号出力40からランプ発生器38により生成されたランプ信号が出力される。発生器信号出力40は、発振器16の変調制御入力20に接続される。ランプ発生器により生成されるランプは変調信号である。
【0037】
発振システム14は更に、第1のクロック出力44を備えたクロックユニット42を含み、第1のクロック出力44は、ランプ発生器38のクロック入力46に接続され、第2の出力48は、カウンタ24のクロック入力50に接続される。クロックユニット42は、入力52でシステム・クロックを受信する。
【0038】
発振器16は、中心周波数Fcを備えたヒステレティック/リング発振器型アーキテクチャの発振器であり得る。有利な実施例において、発振器は図3に示すように実装され得る。リング発振器の発振周波数は、そのリング発振器を構築するために用いられるゲートの伝播遅延を変えることによって変えられ得る。入力20で入力される変調信号は、バイアス電流であり得、そのため、リング発振器の伝播遅延は変化する。図3に示す発振器では、信号20もバイアス電流であってよい。これは、図3を参照して更に詳細に説明する。
【0039】
積分ユニットとしてのカウンタ24、及びコンパレータ30は、共に周波数変調指数制御ループを形成し、一方、ランプ発生器38は周波数変調ユニットである。
【0040】
入力52の信号は、数MHz、例えば6MHzの周波数の周期的クロック信号であり得る。出力48及び44で生成される信号は、より低い周波数、例えば100kHzの周期的クロック信号であり得る。ランプ発生器38は、乗算デジタル・アナログ・コンバータであり得る。
【0041】
図3は、図2に示した発振器16として用いることができる自励発振DC−DCコンバータの簡略化した回路図を示す。COMPは、一対の相補入力と出力とを備えた高利得コンパレータである。このコンパレータの非反転入力に参照電源Vrefが接続される。フィルタネットワークが、主として出力インダクタLoutを含み、負荷コンデンサCloadがコンパレータCOMPの出力に接続される。Lout及びCloadは、通常通り、等価直列抵抗Resr及び等価直列インダクタンスLeslと直列に示されている。Lout及びCloadの相互接続ノードは、コンパレータCOMPの反転入力に接続され、同時にこの回路の電圧出力Voutである。コンパレータCOMPは、通常通り電源VDD及びVSSを有する。
【0042】
コンパレータCOMPの高利得に、コンパレータの伝播遅延に、及びフィルタネットワークによって生じる遅延に起因して、図3に示す構成の発振条件は、典型的な実装において数MHzであり得る固定周波数で満たされる。
【0043】
自励発振DC−DCコンバータの発振周波数は、コンパレータCOMPのバイアス電流IBIASで調節され得る。従って、図3の信号20は、バイアス電流IBIASを制御するように結合され得る。コンパレータの出力SWは、本発明に従って、発振周波数及び変動を判定するようにカウンタ24に結合されてもよい。
【0044】
コンパレータCOMPの出力の信号はスイッチノードSWと呼ばれる。ノードSWの信号は矩形波形を有し得る。電圧スイングは、実質的にレールツーレールであり得る。ここに示した例において、参照電圧は例えば、2.80Vであると仮定される。そのため、出力電圧Voutは、重畳されたリップルを備えた参照電圧のレベルであり得る。このリップルは非常に小さいが、コンパレータCOMPの反転入力に印加されることにより、それが、従来のコンバータに類似するランプ信号として機能し、それにより、出力電圧Voutのレベルを調整する。本発明の文脈において、ランプ信号は、これを個別のランプ信号発生器により生成されるランプ信号と区別するため、「自動生成ランプ」と呼ばれる。「自動生成ランプ」の大きさは、リップル電流に等価直列抵抗Resrを乗算したものである。
【0045】
発振周波数が制御される必要がある応用例において、コンパレータの伝播遅延が、コンパレータにより供給されるバイアス電流を調節することにより制御され得るという事実から利点が得られる。
【0046】
発振システム14のオペレーションを図面を参照して下記のように説明する。
【0047】
発振器16は中心周波数Fcで発振する。クロックユニット42は、クロック出力44でクロック信号を出力し、このクロック信号を図4において線54で表す。クロック入力46でクロック信号54を受信するランプ発生器38は、クロック信号54でクロックされる。そのため、図4に示すランプ信号56は、クロック信号に従う、即ち、クロック信号54が正である間増加するランプがあり、クロック信号54が負である間減少するランプがある、ランプ発生器出力40で出力される。このランプ信号は三角ランプ信号である。もちろん、この関係は、クロック信号が高であるとき減少するランプ、及びクロック信号が低であるとき増加するランプで入れ替わってもよい。
【0048】
クロックユニット42は更に、クロック信号54に関連して90度位相がずれているクロック信号58をクロック出力48で出力する。図4は、クロック信号58及びクロック信号54の関係を示す。クロック信号58は、カウンタ24のクロック入力50へ供給される。例示の実施例において、カウンタ24は、クロック信号58が高である間カウントアップし、クロック信号58が低である間カウントダウンする。クロック信号54又は58の1つの時間期間は、1つの変調時間期間に対応する。ランプ信号56が、信号出力40で出力され、発振器16の変調信号入力20へ供給される。
【0049】
発振器出力18で時間にわたって出力される変調された周波数Fmを、図1で線10として示す。周波数変動は変調制御ランプ信号56に従う。線10は無論理想化されており、発振器の非線形挙動のため、振幅、即ち、最大周波数偏差は変化し、ランプ信号に線形的には従わない。
【0050】
発振器16の周波数出力に接続される、カウント入力22を備えたカウンタ24は、発振器時間期間毎にカウントし、そのため変調された周波数を測定する。クロック信号58はクロック信号54に関連して位相シフトされているため、カウントアップ期間は、変調された発振器周波数が中心周波数に等しい、増加するランプの中間の時間T1で開始する。全カウントアップ期間の間、変調された発振器周波数は中心周波数より大きい。変調時間期間の4分の1後である時間T2で、クロック信号54は高から低に変わり、変調信号56は、減少するランプを開始する。変調された発振器周波数は、中心周波数よりまだ高く、カウンタ24は、クロック信号58がまだ高であるとしてまだカウントアップする。
【0051】
カウントダウン期間は、カウンタ24をクロックするクロック信号58が高から低へ変わる時間T3で開始する。これは、変調された発振器周波数が再び中心周波数に等しくなる、減少するランプの中間である。時間T3ではクロック信号54がまだ低であるため、変調信号のランプはまだ減少する。変調時間期間の4分の3後である時間T4で、クロック信号54は低から高に変わり、ランプ発生器のランプは再び増加し始める。しかし、カウンタ24はクロック信号58がまだ低であるとしてまだカウントダウンする。時間T5でフル変調周期が終了し、クロック信号58が高になりカウントダウン期間が止まる。全カウントダウン期間の間、変調された発振器周波数は中心周波数より低い。
【0052】
時間T5で、即ち、フル変調周期の後、カウンタ24はリセットされ、カウント出力26でカウント結果をコンパレータ30に出力する。カウントアップ位相の間、変調された発振器周波数は常に中心周波数より高く、カウントダウン位相の間、変調された発振器周波数は常に中心周波数より小さいため、常に正の結果となり得る。カウントアップすることは、変調時間期間Tmの前半の間の時間にわたる変調された発振器周波数の積分に対応し、カウントダウン位相の間変調された発振器周波数は、変調時間期間Tmの後半の間、時間にわたって積分される。そのためカウント結果は、変調時間期間Tmの前半の間の時間にわたる変調された発振器周波数の積分と、変調時間期間Tmの後半の積分の間時間にわたる変調された発振器周波数の積分の間の差である。
【0053】
カウンタ出力26で出力される差Rは、変調指数Mに及び発振器中心周波数と変調周波数の比に依存する。Rに対して式10を解くことにより、下記式が得られる。
【数7】

発振器の中心周波数Fcと変調周波数Fmの差の比Nが64であると仮定すると、N=Fc/Fm=64となり、Tm=1/Fm、及び変調指数M=0.1の場合、その結果又はカウンタ出力の予測差は、R=(64×0.1)/2=3.2となり得る。
【0054】
この予測差は、入力32でコンパレータ30に入力される。この差は、所望の変調指数に及び中心周波数と変調周波数の比に依存する。これは整数であり得、或いはカウントすることが幾つかの時間期間にわたって実現され得、その結果がコンパレータ32に入力される前に平均化されてもよい。
【0055】
コンパレータは、出力34で3つの異なる信号を出力するよう適合される。 好ましい実施例において、コンパレータ30はデジタルコンパレータである。第1の信号は、計算された差が予測値より小さいことを示し、第2の信号は、計算された差が予測値に等しいことを示し、第3の信号は、計算された差が予測値より大きいことを示す。コンパレータ出力信号は、ランプ発生器38の制御入力36に入力される。計算された差が予測値より小さいことを示す第1のコンパレータ信号は、図4に点線60で示すようなランプ信号の振幅の増加につながる。第2の信号は不変につながり、第3のコンパレータ信号はランプ信号の振幅の低減につながる。
【0056】
変化したランプ信号は、発振器周波数の変化に、及びそのため変調指数の変化につながり得る。このように、発振システム14は周波数変調指数制御を実現する。
【0057】
本発明をデジタル実装に対して説明してきたが、アナログ実装も可能である。
【0058】
当業者であれば、他の多くの実施例及び変形が特許請求の範囲に包含されること、及び簡潔さ或いは平易さのため、特徴又は工程は、例示の実施例の文脈で説明したような特徴又は工程のすべて又はその幾つかを有する例示の実施例の文脈で説明したが、説明した一つ又は複数の特徴又は工程の異なる組み合わせを有する実施例も、本明細書に包含されることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の変調指数を備えた中心周波数Fcを有する変調周波数Fmで発振器を変調する方法であって、この方法は、
可変振幅を備えた三角ランプ発生器信号を提供すること、
変調時間期間(Tm)の前半の間、前記発振器の周波数が前記中心周波数(Fc)より高く、前記変調時間期間(Tm)の後半で前記発振器周波数が前記中心周波数(Fc)より低くなるように、前記三角ランプ発生器信号を用いて非線形の制御可能な発振器(16)を周波数変調すること、
前記制御可能な発振器から出力される変調された発振器周波数を測定すること、
前記変調時間期間(Tm)の前半の間、時間にわたって前記測定された変調された発振器周波数を積分すること、及び前記変調時間期間(Tm)の後半の間、時間にわたって前記変調された発振器周波数を積分すること、
前記変調時間期間(Tm)の前半の間得られた結果と、前記変調時間期間(Tm)の後半の間得られた結果との間の差を計算すること、
前記計算された差を予測差と比較すること、及び、
前記計算された差が前記予測値に合致するように周波数変調ユニットからの前記三角ランプ発生器信号の出力の振幅を調節すること、
を含む、方法。
【請求項2】
周波数変調指数を制御するための電子デバイスであって、前記デバイスが、
中心周波数(Fc)を有する周波数制御可能な発振器(16)の周波数出力(18)に接続されるように適合される入力(22)と、
周波数変調ユニット(38)の入力(36)に接続されるように適合される出力(36)と、
を有する周波数変調指数制御ループ(14)を含み、前記変調指数制御ループが前記変調指数を判定するように適合される、電子デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の電子デバイスであって、前記周波数変調指数制御ループ(14)が、前記制御可能な発振器(16)から出力される変調された周波数を測定するよう適合され、前記変調指数が、前記測定された変調された周波数信号の前記中心周波数(Fc)からの偏差の絶対値の時間にわたる積分により計算される、電子デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の電子デバイスであって、前記周波数変調ユニット(38)が、変調時間期間(Tm)の前半の間、前記発振器周波数が前記中心周波数(Fc)より高く、前記変調時間期間(Tm)の後半の間、前記発振器周波数が前記中心周波数(Fc)より低くなるように、変調周波数(Fm)で前記発振器中心周波数(Fc)を周波数変調するための変調信号を前記制御可能な発振器(16)に出力するように更に適合される、電子デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の電子デバイスであって、前記周波数変調指数制御ループが、
前記制御可能な発振器(16)の周波数出力(18)に接続されるように適合される入力(22)を有し、変調時間期間(Tm)の前半の間の時間にわたる前記変調された発振器周波数の積分と、前記変調時間期間(Tm)の後半の間の時間にわたる前記変調された発振器周波数の積分との間の差を計算するよう適合される、積分ユニット(24)、及び、
前記積分ユニット(24)の出力(26)に結合され、前記計算された差を予測値と比較するよう適合され、かつ、前記計算された差が前記予測値に合致するように前記周波数変調ユニット(38)からの前記変調信号の出力を調節するために、コンパレータ信号を前記周波数変調ユニット(38)の入力(36)に出力するように結合されるコンパレータユニット(30)、
を含む、電子デバイス。
【請求項6】
請求項4に記載の電子デバイスであって、前記周波数変調ユニット(38)が、前記コンパレータ信号により調節可能である制御可能な振幅を備えた三角信号を作動する三角信号発生器である、電子デバイス。
【請求項7】
請求項5に記載の電子デバイスであって、前記積分ユニット(24)が、前記変調時間期間(Tm)の前半の間、前記変調された周波数の周期をカウントアップするように、及び前記変調時間期間(Tm)の後半の間、前記変調された周波数の周期をカウントダウンするように結合される、アップダウンカウンタである、電子デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の電子デバイスであって、前記アップダウンカウンタが、変調時間期間(Tm)の開始の度にリセットされ、前記コンパレータユニット(30)に変調時間期間(Tm)の終了の度に実際のカウントを出力する、電子デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の電子デバイスであって、前記コンパレータユニット(30)が、前記計算された差が前記予測差より小さいとき第1の信号を、前記計算された差が前記予測差に等しいとき第2の信号を、及び前記計算された差が前記予測差より大きいとき第3の信号を出力するよう適合される、デジタルコンパレータである、電子デバイス。
【請求項10】
請求項5に記載の電子デバイスであって、前記積分ユニット(24)がアナログ積分器である、電子デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の電子デバイスであって、前記コンパレータユニット(30)がアナログコンパレータである、電子デバイス。
【請求項12】
請求項2に記載の電子デバイスであって、前記変調周波数に対しクロック信号を提供するクロックユニット(42)を更に含み、前記クロックユニット(42)が前記周波数変調ユニット(38)に及び前記積分ユニット(24)に結合され、前記周波数変調ユニット(38)に供給されるクロック信号が、前記積分ユニット(24)に供給されるクロック信号に対し90度位相シフトされる、電子デバイス。
【請求項13】
請求項2に記載の電子デバイスを含む発振システムであって、前記制御可能な発振器(16)を更に含み、前記制御可能な発振器が自励発振DC−DCコンバータであり、前記変調信号が自励発振DC−DCコンバータの伝播遅延を変えるよう適合される、発振システム。
【請求項14】
請求項2に記載の電子デバイスを含む発振システムであって、前記制御可能な発振器(16)を更に含み、前記制御可能な発振器がリング発振器であり、前記変調信号が前記リング発振器の伝播遅延を変えるよう適合される、発振システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−519252(P2013−519252A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550155(P2012−550155)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022069
【国際公開番号】WO2011/091261
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【出願人】(507107291)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】