説明

発振器

【課題】 温度センサー電圧出力のばらつきを低減して、IC毎の温度センサー電圧出力の温度傾き及びオフセット電圧の調整作業を不要とし、製造工程における効率を向上させることができる発振器を提供する。
【解決手段】 制御回路が1チップに集積された発振器において、第1の温度センサー11と第2の温度センサー12と減算器17とを備え、減算器17が、第1の温度センサー11から出力される第1の温度センサー電圧(V1)と第2の温度センサー12から出力される第2の温度センサー電圧(V2)との差分(V1−V2)を温度センサー電圧出力として外部に出力する発振器としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサーを備え外部に温度センサー電圧を出力する発振器に係り、特に温度センサー電圧出力のばらつきを低減して個々の発振器の調整作業を不要とし、製造工程における効率を向上させることができる発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
温度センサーを備えた発振器として、温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器がある。温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器には、表面実装型の温度補償型水晶発振器で、制御系の回路をICに集積したものがあり、温度センサーの電圧を温度補償に用いると共に外部に出力可能とするものである。
【0003】
[従来の水晶発振器の構成:図5]
従来の温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器の構成について図5を用いて説明する。図5は、従来の温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器の概略構成ブロック図である。
図5に示すように、従来の温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器は、第1の温度センサー21と、第2の温度センサー22と、温度補償回路23と、水晶振動子24と、発振回路25と、バッファ26とを備えている。
【0004】
水晶振動子24は、電圧を加えることにより特定の周波数を発振する。
発振回路25は、水晶振動子24に接続して所望の発振周波数を出力する。
バッファ(バッファアンプ)26は、発振周波数を増幅して出力周波数とする。
【0005】
第1及び第2の温度センサー21,22は、温度を検出し、検出した温度に応じた電圧を出力する。第1の温度センサー21の出力電圧は、当該発振器自身の温度補償に用いられ、また、第2の温度センサー22の出力電圧(第2の温度センサー電圧)は、独立して外部に出力され、外部の回路において用いられる。
【0006】
温度補償回路23は、第1の温度センサー21からの温度センサー電圧(第1の温度センサー電圧)に基づいて発振回路25を制御して水晶振動子24の温度周波数特性を補償する。
上記構成部分の内、水晶振動子24以外の部分が1チップのICに集積されて構成されている。
【0007】
[温度−温度センサー電圧出力特性の傾き:図6]
そして、従来の温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器では、ICの製造工程におけるロットの違い等により温度センサー電圧出力にばらつきが生じてしまう。
温度−温度センサー電圧出力特性の傾きについて図6を用いて説明する。図6は、温度−温度センサー電圧出力特性の傾きのばらつきを示す説明図である。
(a)の特性が、規格を満たすICの特性であるとすると、(b)の特性は規格より傾きが小さく、また、(c)の特性は規格より傾きが大きい。
【0008】
[温度−温度センサー電圧出力の傾きの調整:図7]
そこで、従来は、個々のICについて、低温から高温までの使用温度範囲において、温度センサー電圧出力を測定して温度−温度センサー電圧出力特性(「温度特性」とする)を確認し、各ICの温度センサー電圧出力が規格を満たすよう、IC毎に、温度特性の傾きを調整するようになっていた。
温度特性の傾き(温度傾き)の調整について図7を用いて説明する。図7は、温度特性の傾きの調整を示す説明図である。
例えば、ICの温度センサー電圧出力が図7の(a)の特性である場合(傾き調整±0%の場合)、規格が(b)の特性であれば温度傾きを特定の割合で(例えば−α%)小さくし、規格が(c)の特性であれば温度傾きを特定の割合で(例えば+α%)大きくするよう調整する。
温度傾きの調整は、例えば、温度センサー回路に接続する可変容量や可変抵抗の値を調整することにより行われる。
【0009】
[温度−温度センサー電圧出力のオフセット電圧の調整:図8]
更に、必要であれば温度センサー電圧出力のオフセット電圧の調整を行う。オフセット電圧の調整について図8を用いて説明する。図8は、オフセット電圧の調整を示す説明図である。
例えば、ICの温度センサー電圧出力が図8の(a)の特性である場合(オフセット調整±0の場合)、規格が(b)の特性であれば、正のオフセット電圧(例えば+β)を加え、規格が(c)の特性であれば負のオフセット電圧(例えば−β)を与えて、オフセット電圧の調整を行う。
オフセット電圧の調整は、例えば、温度センサー回路に接続する可変容量や可変抵抗の値を調整することにより行われる。
【0010】
[関連技術]
尚、温度センサーを備えた発振器に関する技術としては、特開2009−81648号公報「温度補償型水晶発振器」(シチズンホールディングス株式会社、特許文献1)、特開2010−193134号公報「温度補償型圧電発振器」(エプソントヨコム株式会社、特許文献2)がある。
【0011】
特許文献1には、温度補償型水晶発振器において、2つの温度検出回路で検出された温度信号の差分に基づいて温度補償を行うことが記載されている。
また、特許文献2には、温度補償型圧電発振器において、第1及び第2の温度検出器から出力される電圧の差分と、第1の温度検出器からの電圧とを加算して、当該加算された電圧に基づいて温度補償を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−081648号公報
【特許文献2】特開2010−193134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器では、温度センサー電圧出力のばらつきをなくすために、個々のICについて温度傾き及びオフセット電圧の調整を行わなければならず、作業が煩雑であるという問題点があった。
【0014】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、温度センサー電圧出力のばらつきを低減して、IC毎の温度傾き及びオフセット電圧の調整作業を不要とし、製造工程における効率を向上させることができる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、発振器において、電圧印加により発振を行う水晶振動子と、水晶振動子に電圧を印加して特定の発振周波数を出力すると共に、温度補償の制御信号により発振周波数の特性を制御する発振回路と、温度を検出し、検出した温度に応じた電圧を第1の電圧として出力する第1の温度センサーと、温度を検出し、検出した温度に応じた電圧を第2の電圧として出力する第2の温度センサーと、第1の電圧に応じて発振回路における発振周波数特性を補償する制御電圧を出力する温度補償回路と、第1の電圧と第2の電圧とを入力し、第1の電圧と第2の電圧の差分を温度センサー電圧として外部に出力する減算器とを備え、発振回路と、第1及び第2の温度センサーと、温度補償回路と、減算器とが1チップに集積されており、第1の温度センサー又は第2の温度センサーのいずれか一方の温度に対する出力電圧の傾きを他方より大きくしたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記発振器において、温度に対する出力電圧の傾きは、第1の温度センサーより第2の温度センサーのほうが大きいことを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記発振器において、減算器の出力段にインバータ回路を備えたことを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記発振器において、第2の温度センサーは、温度に対する出力電圧の傾きを調整する手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電圧印加により発振を行う水晶振動子と、水晶振動子に電圧を印加して特定の発振周波数を出力すると共に、温度補償の制御信号により発振周波数の特性を制御する発振回路と、温度を検出し、検出した温度に応じた電圧を第1の電圧として出力する第1の温度センサーと、温度を検出し、検出した温度に応じた電圧を第2の電圧として出力する第2の温度センサーと、第1の電圧に応じて発振回路における発振周波数特性を補償する制御電圧を出力する温度補償回路と、第1の電圧と第2の電圧とを入力し、第1の電圧と第2の電圧の差分を温度センサー電圧として外部に出力する減算器とを備え、発振回路と、第1及び第2の温度センサーと、温度補償回路と、減算器とが1チップに集積されており、第1の温度センサー又は第2の温度センサーのいずれか一方の温度に対する出力電圧の傾きを他方より大きくした発振器としているので、同一チップに搭載された2つの温度センサーの特性のずれが同様であることを利用して、差分を取ることにより温度センサー電圧出力のばらつきを抑制することができ、個々の発振器毎に温度センサー電圧出力を調整する作業を不要とし、製造工程における効率を向上でき、また、第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧との差分を精度良く求めることができる効果がある。
【0020】
また、本発明によれば、温度に対する出力電圧の傾きは、第1の温度センサーより第2の温度センサーのほうが大きい上記発振器としているので、第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧との差分を精度良く求めることができる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、減算器の出力段にインバータ回路を備えた上記発振器としているので、温度に対する温度センサー電圧出力の傾きを反対にして、使い勝手を向上させることができる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、第2の温度センサーは、温度に対する出力電圧の傾きを調整する手段を備えている上記発振器としているので、外部からの操作により温度センサー出力の傾きを調整することができ、所望の特性を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る発振器の概略構成ブロック図である。
【図2】本発振器における第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧の例を示す説明図である。
【図3】本発振器の温度センサー電圧出力を示す説明図である。
【図4】本発振器における温度センサー電圧出力の温度傾きの調整を示す説明図である。
【図5】従来の温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器の概略構成ブロック図である。
【図6】温度−温度センサー電圧出力特性の傾きのばらつきを示す説明図である。
【図7】温度特性の傾きの調整を示す説明図である。
【図8】オフセット電圧の調整を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る発振器は、温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器であって、第1の温度センサーと第2の温度センサーとを備え、第1の温度センサーから出力される第1の温度センサー電圧と第2の温度センサーから出力される第2の温度センサー電圧との差分を減算器から温度センサー電圧出力として外部に出力するようにしており、同一IC上の2つの温度センサーはプロセスの影響が同様であり、出力電圧は温度傾きやオフセットが同じようにずれるため、それらの差分はどのICでもほぼ同等となり、IC毎の温度センサー電圧出力のばらつきを抑えることができ、個々の発振器毎の温度傾き調整及びオフセット電圧調整の作業を不要とすることができるものである。
【0025】
[実施の形態に係る発振器の構成:図1]
本発明の実施の形態に係る発振器の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る発振器の概略構成ブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る発振器(本発振器)は、第1の温度センサー11と、第2の温度センサー12と、温度補償回路13と、水晶振動子14と、発振回路15と、バッファ16とを備え、更に、本発振器の特徴として、第1の温度センサー11からの電圧と、第2の温度センサー12からの電圧を入力してその差分を求める減算器17を備え、減算器17からの出力を温度センサー電圧出力として外部に出力するようになっている。
【0026】
従来と同様に、第1及び第2の温度センサー11,12は、温度を検出し、検出した温度に応じた電圧を出力する。
第1の温度センサー11から出力される第1の温度センサー電圧(V1)は、2つに分岐され、分岐された一方は温度補償回路13に入力され、従来と同様に、温度補償回路13における温度補償制御に用いられる。
温度補償回路13は、第1の温度センサー電圧に基づいて発振回路25に温度に応じた補正情報を出力するものであり、温度変化に伴う発振器出力の周波数変動を小さくするものである。
【0027】
分岐された他方の第1の温度センサー電圧(V1)は、減算器17に入力される。
第2の温度センサー12から出力される第2の温度センサー電圧(V2)は、減算器17に入力される。
減算器17は、オペアンプ等で構成され、第1の温度センサー電圧(V1)を入力する(+)端子と、第2の温度センサー電圧(V2)を入力する(−)端子と、減算された差分電圧を出力する出力端子とを備えている。
そして、減算器17は、入力された第1の温度センサー電圧(V1)と第2の温度センサー電圧(V2)との差分(V1−V2)を求め、出力端子から温度センサー電圧出力として外部に出力する。
すなわち、本発振器は、第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧との差分を温度センサー電圧出力とするものである。
【0028】
[本発振器における第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧の例:図2]
次に、本発振器における第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧の例について図2を用いて説明する。図2は、本発振器における第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧の例を示す説明図である。
図2では、3つの発振器A,B,Cのそれぞれについて、第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧の温度特性を示したものであり、同一の発振器の出力は同一の線種で記載されている。具体的には、発振器Aからは、第1の温度センサー出力V1aと第2の温度センサー出力V2aとが出力され(実線)、発振器Bからは、第1の温度センサー出力V1bと第2の温度センサー出力V2bとが出力され(破線)、発振器Cからは、第1の温度センサー出力V1cと第2の温度センサー出力V2cとが出力される(二点鎖線)。
【0029】
同一のICに搭載されている第1の温度センサー11及び第2の温度センサー12は、同一の製造工程において同時に形成されるため、特性の変動要因となるプロセスのばらつきを同じように受けることになる。そのため、同一ICに搭載されている第1の温度センサー11と第2の温度センサー12とは、通常、同じような特性のずれ(温度傾き、及びオフセット)を生じる。
【0030】
そこで、本発振器では、同じような特性のずれを生じる第1の温度センサー11と第2の温度センサー12の出力電圧の差分(V1−V2)を取り出して、温度センサー電圧出力とすることにより、IC毎の個体差を低減し、温度センサー電圧出力のばらつきの抑制を図るものである。
【0031】
第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧との差分を精度よく取り出すため、本発振器では、第2の温度センサー12として、温度特性の傾きが第1の温度センサー11の傾きよりも大きいものを用いている。つまり、図2に示すように、V1の温度傾きより、V2の温度傾きを大きくしている。
尚、図2とは反対に、V1の温度傾きをV2より大きくすることも可能である。
【0032】
また、図2の例では、説明をわかり易くするため、オフセットがない場合を示しており、V1,V2の温度傾きが発振器毎にばらついた場合に、それぞれの特性の交点となる温度がV1とV2とで同じ温度(25℃)となるようにしているが、オフセットを生じても差分を取ることにより、温度センサー電圧出力への影響は無視できるものとなる。
【0033】
図2に示すように、各発振器における第1の温度センサー電圧V1と第2の温度センサー電圧V2の温度特性は、ICの製造プロセス等の影響により、発振器によって異なっている。
具体的には、発振器Aの第1の温度センサー11と第2の温度センサー12からはV1aとV2aが出力されるが、発振器Bではそれよりも温度傾きが小さいV1bとV2bが出力され、発振器では発振器Aよりも温度傾きが大きいV1cとV2cが出力される。
【0034】
しかし、各発振器について第1の温度センサー電圧と第2の温度センサー電圧との差分を求めると、いずれの発振器においてもほぼ同じ値となっている。本発振器では、これにより温度センサー電圧出力のばらつきを小さくするものである。
【0035】
[本発振器の温度センサー電圧出力:図3]
次に、本発振器の温度センサー電圧出力について図3を用いて説明する。図3は、本発振器の温度センサー電圧出力を示す説明図である。
上述したように、本発振器の外部に出力される温度センサー電圧出力は、同一IC上において同様のプロセスの影響を受けた温度センサー11,12の出力の差分電圧である。
そのため、個々のICにおいてV1,V2の温度傾きがずれたりオフセットが発生したとしても、V1とV2が同じように変動するため、V1とV2の差分である温度センサー電圧出力はICやロットにかかわらずどの発振器でもほぼ同じ特性が得られるものである。
つまり、本発振器の温度センサー電圧出力は、発振器毎のばらつきは小さく、いずれの発振器でも図3に示すような右上がりの直線となる。
【0036】
[本発振器の温度傾きの調整:図4]
本発振器において、更に温度センサー電圧出力の温度傾きを調整する場合について図4を用いて説明する。図4は、本発振器における温度センサー電圧出力の温度傾きの調整を示す説明図である。
本発振器では、更に、用途やユーザの希望に基づくスペックに応じて温度センサー電圧出力の傾きを調整することが可能である。
【0037】
具体的には、第2の温度センサー12からの第2の温度センサー電圧出力(V2)の温度特性の傾きを調整することにより、V1−V2を所望の傾きとすることができるものである。
第2の温度センサー12の温度特性の調整は、第2の温度センサー12としてV1−V2を所望の傾きとする温度特性を備えた温度センサーを用いてもよいし、第2の温度センサー12バリキャップダイオードや可変抵抗を設けておき、IC製造後にV1−V2を所望の傾きとするよう、外部からの制御信号で容量や抵抗の値を調整してもよい。
【0038】
[インバータ回路]
図3、図4に示したように、本発振器の温度センサー電圧出力は、温度に対して右肩上がりの線形出力となる。一方、図6,図7,図8に示したように、従来の温度センサー電圧出力は、温度に対して右肩下がりの特性となっている。
そこで、本発振器の温度センサー電圧出力を従来の発振器における温度センサー電圧出力と同様の傾向とするために、減算器17の出力段にインバータ回路を備えた構成とすることも可能である。
これにより、本発振器の温度センサー電圧出力の特性が従来と同じような右肩下がりのグラフで得られることになり、使い勝手を向上させることができるものである。
【0039】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る発振器によれば、温度センサー電圧出力機能付き水晶発振器であって、第1の温度センサー11と第2の温度センサー12と減算器17とを備え、減算器17が、第1の温度センサー11から出力される第1の温度センサー電圧(V1)と第2の温度センサー12から出力される第2の温度センサー電圧(V2)との差分(V1−V2)を温度センサー電圧出力として外部に出力する発振器としているので、同一の製造プロセスの影響で同様の特性変動を生じているV1とV2の差分をとることにより、発振器毎の温度センサー電圧出力のばらつきを十分小さくすることができ、個々の発振器について温度傾き調整やオフセット電圧調整を不要として、製造工程における効率を向上させることができる効果がある。
【0040】
また、本発振器によれば、第2の温度センサー12の温度特性を、所望の温度センサー出力の特性が得られる傾きとするよう調整又は選択することにより、外部に出力される温度センサー電圧出力の温度傾きを任意に調整することができ、用途や規格に応じた温度特性の温度センサー電圧出力を得ることができる効果がある。
【0041】
また、本発振器によれば、減算器17の出力段にインバータ回路を備えた発振器としているので、温度センサー電圧出力の特性を従来の発振器と同様に温度に対して右下がりの特性とすることができ、使い勝手を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、温度センサー電圧出力のばらつきを低減して個々の発振器の調整作業を不要とし、製造工程における効率を向上させることができる発振器に適している。
【符号の説明】
【0043】
11,21...第1の温度センサー、 12,22...第2の温度センサー、 13,23...温度補償回路、 14,24...水晶振動子、 15,25...発振回路、 16,26...バッファ、 17...減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧印加により発振を行う水晶振動子と、
水晶振動子に電圧を印加して特定の発振周波数を出力すると共に、温度補償の制御信号により発振周波数の特性を制御する発振回路と、
温度を検出し、検出した温度に応じた電圧を第1の電圧として出力する第1の温度センサーと、
温度を検出し、検出した温度に応じた電圧を第2の電圧として出力する第2の温度センサーと、
前記第1の電圧に応じて前記発振回路における発振周波数特性を補償する制御電圧を出力する温度補償回路と、
前記第1の電圧と前記第2の電圧とを入力し、前記第1の電圧と前記第2の電圧の差分を温度センサー電圧として外部に出力する減算器とを備え、
前記発振回路と、前記第1及び第2の温度センサーと、前記温度補償回路と、前記減算器とが1チップに集積されており、
第1の温度センサー又は第2の温度センサーのいずれか一方の温度に対する出力電圧の傾きを他方より大きくしたことを特徴とする発振器。
【請求項2】
温度に対する出力電圧の傾きは、第1の温度センサーより第2の温度センサーのほうが大きいことを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項3】
減算器の出力段にインバータ回路を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の発振器。
【請求項4】
第2の温度センサーは、温度に対する出力電圧の傾きを調整する手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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