説明

発振装置および電子機器

【課題】充分なアスペクト比の細長形状でありながら充分な音量の音波を出力することができる発振装置を提供する。
【解決手段】発振装置である電気音響変換器100は、平面形状のアスペクト比が三以下の四個以上の圧電振動子110が一列に配置されている。このため、複数の圧電振動子110は、いわゆるパラメトリックスピーカとして、可聴音に復調される変調された超音波を各々充分な音量で出力することができる。複数の小型の圧電振動子110が一列に配置されているので、その全体形状を充分なアスペクト比の細長形状とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を利用した発振装置、この発振装置を利用した電子機器、に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子機器である携帯電話機においては、音楽再生、ハンズフリーなどの音響機能を商品価値とした薄型スタイリッシュ携帯の開発が活発化している。また、携帯電話機においては、動画再生など映像と音を利用したAV(Audio/Visual)機能を重視した商品訴求が必要とされ、画面と同一方向に電気音響変換器を配置することが要求されている。
【0003】
電気音響変換器は、図4および図5に示すように、圧電素子111と弾性部材112とを有して空気中の疎密現象により可聴音に復調される変調された超音波を出力する圧電振動子と、この圧電振動子を支持する支持体120と、を有する。
【0004】
現在、上述のような電気音響変換器として各種の提案がある(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−201399号公報
【特許文献2】特開2003−159566号公報
【特許文献3】特開2006−081998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画面サイズが拡大する中、電気音響変換器を実装できるスペースは制約が大きく、本発明者は、図3に示すように、細長形状のスピーカを液晶画面などの額縁に配置することが必要と考えた。
【0007】
しかし、図3および図4に示すように、電気音響変換器を細長形状に形成した場合、放射面積や振動膜への駆動力の伝達効率の観点から、著しく音圧レベルが減少する。例えば、伝達効率の観点から、充分な音圧レベルを確保するには、図6に示すように、アスペクト比が五以上では困難であるとされてきた。このため、細長形状の電気音響変換器を開発するには、従来の概念から逸脱した画期的な技術が不可欠であった。
【0008】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、充分なアスペクト比の細長形状でありながらも充分な音圧レベルを実現できる発振装置、このような発振装置を利用した電子機器、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発振装置は、圧電素子と弾性部材とを有して空気中の疎密現象により可聴音に復調される変調された超音波を出力する平面形状のアスペクト比が三以下の圧電振動子と、四個以上の複数の圧電振動子を一列に配置する支持体と、を有する。
【0010】
本発明の第一の電子機器は、本発明の発振装置と、発振装置に可聴域の音波を出力させる発振駆動部と、を有する。
【0011】
本発明の第二の電子機器は、本発明の発振装置と、発振装置に超音波を出力させる発振駆動部と、発振装置から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知部と、検知された超音波から測定対象物までの距離を算出する測距部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発振装置は、平面形状のアスペクト比が三以下の四個以上の圧電振動子が一列に配置されている。このため、複数の圧電振動子は、いわゆるパラメトリックスピーカとして、可聴音に復調される変調された超音波を各々充分な音量で出力することができる。複数の小型の圧電振動子が一列に配置されているので、その全体形状を充分なアスペクト比の細長形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の発振装置である電気音響変換器の構造を示す模式的な平面図である。
【図2】電気音響変換器の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図3】本発明者が想定した電子機器であるパーソナルコンピュータの外観を示す模式的な斜視図である。
【図4】本発明者が想定した発振装置である電気音響変換器の構造を示す模式的な平面図である。
【図5】本発明者が想定した電気音響変換器の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図6】本発明者が想定した電気音響変換器のアスペクト比を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態の発振装置である電気音響変換器100は、図1および図2に示すように、圧電素子111と弾性部材112とを有して空気中の疎密現象により可聴音に復調される変調された超音波を出力する平面形状のアスペクト比が三以下の圧電振動子110と、四個以上の複数の圧電振動子110を一列に配置する支持体120と、を有する。
【0015】
圧電振動子110は、一辺が5mm以下の矩形である正方形状に形成されている。圧電振動子110は、圧電素子111の片側主面が弾性部材112に拘束されており、弾性部材112は、支持体120に直接接合されている。圧電素子111は、主面の平面形状が略正方形であり、発振駆動部であるドライバ回路130が個々に接続されている。このドライバ回路130は、複数の圧電振動子110を同一強度の同一信号で駆動する。このため、圧電振動子110は、20kHz以上の周波数の超音波を出力し、結果的に可聴域の音波を出力する。
【0016】
音波発生のメカニズムは、圧電素子111への電界の印加により発生する伸縮運動を利用する。また、超音波の周波数は20kHz以上に限定する。圧電素子111は機械品質係数Qが高いため、基本共振近傍にエネルギが集中するため、基本共振周波数では高い音圧レベルを得ることができるが、その他の周波数帯域では、音圧が減衰してしまう。
【0017】
本構成では、特定周波数に限定した超音波を発振させるため、むしろ、圧電素子111の機械品質係数Qが高いことが特性として優位となる。また、圧電振動子の基本共振周波数は圧電素子111の形状に影響を受けるため、高い周波数帯域、例えば、超音波帯域に共振周波数を調整する場合、小型化に優位となる。
【0018】
なお、本構成では、FM(Frequency Modulation)やAM(Amplitude Modulation)変調させた超音波を発振させ、空気の非線形状態(疎密状態)を利用して、変調波を復調させ可聴音を再生する、いわゆるパラメトリックスピーカの原理に基づいて音響再生を行う。本実施の形態の電気音響変換器100では、圧電素子111は、高周波数帯域の発振に限定した構成になるため、小型化が可能となる。
【0019】
本実施の形態の電気音響変換器100では、上述のように平面形状のアスペクト比が三以下の四個以上の圧電振動子110が一列に配置されている。このため、複数の圧電振動子110は、いわゆるパラメトリックスピーカとして、可聴音に復調される変調された超音波を各々充分な音量で出力することができる。複数の小型の圧電振動子110が一列に配置されているので、その全体形状を充分なアスペクト比の細長形状とすることができる。
【0020】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では一列に配置されている圧電振動子110の平面形状が矩形である正方形状であることを例示した。しかし、このような圧電振動子110の平面形状が略正円形や六角形などでもよい(図示せず)。その場合、正円形の圧電振動子110の直径や六角形の圧電振動子110の内接円の直径が5mm以下でもよい。
【0021】
さらに、上記形態では一個の圧電素子111で弾性部材112の上面のみ拘束するユニモルフ構造の電気音響変換器100を例示した。しかし、二個の圧電素子111で弾性部材112の上面と下面とを拘束したバイモルフ構造の発振装置なども実施可能である(図示せず)。
【0022】
また、上記形態では圧電素子111が一個の圧電層からなることを想定した。しかし、圧電素子が、圧電層と電極層とが交互に積層された積層構造からなってもよい(図示せず)。
【0023】
さらに、上記形態では電気音響変換器100に発振駆動部であるドライバ回路が接続されている電子機器を想定した。しかし、このような電気音響変換器100と、電気音響変換器100に超音波を出力させる発振駆動部と、電気音響変換器100から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知部と、検知された超音波から測定対象物までの距離を算出する測距部と、を有するソナーなどの電子機器(図示せず)も実施可能である。
【0024】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0025】
100 電気音響変換器
110 圧電振動子
111 圧電素子
112 弾性部材
120 支持体
130 ドライバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と弾性部材とを有して空気中の疎密現象により可聴音に復調される変調された超音波を出力する平面形状のアスペクト比が三以下の圧電振動子と、
四個以上の複数の前記圧電振動子を一列に配置する支持体と、
を有する発振装置。
【請求項2】
前記圧電素子は、主面の平面形状が矩形である請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記圧電素子は、主面の平面形状が略正方形である請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記圧電素子は、主面の平面形状が略正円形である請求項1に記載の発振装置。
【請求項5】
前記圧電振動子は、主面の一辺が5mm以下の略正方形に形成されている請求項1または3に記載の発振装置。
【請求項6】
前記圧電振動子は、主面の直径が5mm以下の略正円形に形成されている請求項1または4に記載の発振装置。
【請求項7】
前記圧電振動子は、20kHz以上の周波数の前記超音波を出力する請求項1ないし6の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置に可聴域の音波を出力させる発振駆動部と、
を有する電子機器。
【請求項9】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置に前記超音波を出力させる発振駆動部と、
前記発振装置から発振されて測定対象物で反射した前記超音波を検知する超音波検知部と、
検知された前記超音波から前記測定対象物までの距離を算出する測距部と、
を有する電子機器。
【請求項10】
前記発振駆動部は、複数の前記圧電振動子を同一強度の同一信号で駆動する請求項8または9に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−100053(P2012−100053A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245682(P2010−245682)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】