説明

発振装置及び電子機器

【課題】ハンズフリーであるか否かを自動で切り替えることができ、かつ大型化することを抑制する。
【解決手段】。発振素子30の各々は、振動部材10及び圧電素子20を有している。圧電素子20は、振動部材10上に設けられている。枠体40は、複数の発振素子30を保持している。複数の発振素子30はアレイ状に配置されている。そして近接センサ32は、発振素子30と同一のアレイを構成しており、物体、例えば人体が近接したことを検出する。そして制御部50は、近接センサ32の検出結果に基づいて、複数の発振素子30への入力の大きさを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を発振源として有する発振装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカの一つに、圧電素子を振動部材上に固定した発振源として利用するものがある。このタイプのスピーカは、ボイスコイル及び磁石を用いた動電型のスピーカと比較して、小型化しやすい、という特徴がある。圧電素子を利用したスピーカは、圧電素子を振動板上に搭載することにより、振動板を屈曲振動させるものである。
【0003】
一方、特許文献1には、携帯電話端末において、通話中に通話者が受話用スピーカから所定距離以上離れた場合において、音声データを受信した場合に所定の報知動作を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−245919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、音声出力機能を有する電子機器において、ハンズフリーで出力された音声を聴く機会が増えると考えた。このような場合、ハンズフリーであるか否かをユーザが逐一切り替えるのでは、ユーザに負荷がかかってしまう。一方、電子機器には、小型化が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、ハンズフリーであるか否かを自動で切り替えることができ、かつ大型化することを抑制できる発振装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、振動部材、及び振動部材上に設けられた圧電素子を複数有し、アレイ状に配置された複数の発振素子と、
前記複数の発振素子を保持する枠体と、
前記枠体に保持され、前記発振素子と同一のアレイを構成しており、物体が近接したことを検出する近接センサと、
前記近接センサの検出結果に基づいて、前記複数の発振素子への入力の大きさを制御する制御手段と、を備える発振装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、上記した発振装置を有する電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハンズフリーであるか否かを自動で切り替えることができ、かつ大型化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図2】発振素子の構成を示す断面図である。
【図3】図1に示した発振装置を有する電子機器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。図2は、発振素子30の構成を示す断面図である。この発振装置は、複数の発振素子30、枠体40、近接センサ32、及び制御部50を備えている。発振素子30の各々は、振動部材10及び圧電素子20を有している。圧電素子20は、振動部材10上に設けられている。枠体40は、複数の発振素子30を保持している。複数の発振素子30はアレイ状に配置されている。そして近接センサ32は、発振素子30と同一のアレイを構成しており、物体(例えば人体:以下の説明では物体が人体であるとする)が近接したことを検出する。そして制御部50は、近接センサ32の検出結果に基づいて、複数の発振素子30への入力の大きさを制御する。
【0013】
すなわち制御部50は、人体が近接したことを近接センサ32が検出した場合、発振素子30への入力を小さくする。また制御部50は、人体が離れたことを近接センサ32が検出した場合、発振素子30への入力を大きくする。例えば制御部50は、人体までの距離が閾値以下の場合、ハンズフリーではないと判断して出力を小さくする。また制御部50は、人体までの距離が閾値超の場合、ハンズフリーであると判断して出力を大きくする。このため、ハンズフリーであるか否かを自動で切り替えることができる。また近接センサ32は、発振素子30と同一のアレイを構成しているため、発振装置が大型化することを抑制できる。以下、詳細に説明する。
【0014】
振動部材10はシート状であり、端部は拘束されていない。また振動部材10は、圧電素子20の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。コンプライアンスは振動子の機械剛性であるため、振動部材10の剛性を制御することで、圧電素子20の基本共振周波数を制御できる。なお、振動部材10の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、振動部材10は、剛性を示す指標である縦弾性係数が1GPa以上500GPa以下であることが好ましい。振動部材10の剛性が低すぎる場合や、高すぎる場合は、機械振動子としての特性や信頼性を損なう可能性が出てくる。なお、振動部材10を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である圧電素子20に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0015】
圧電素子20は、PZTなどの圧電セラミックスにより形成されている。ただし、圧電素子20は、圧電特性を示す高分子材料、例えばポリフッ化ビニリデンにより形成されていてもよい。
【0016】
本実施形態において、発振素子30はマトリクス状に配置されている。そして枠体40は、各発振素子30の振動部材10の縁の全周を保持している。
【0017】
また本実施形態において、近接センサ32は発振素子30と同一の構造を有している。すなわち本実施形態では、マトリクス状に配置された発振素子30の少なくとも一つを、近接センサ32として使用している。
【0018】
制御部50は、外部から入力された音声信号に基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を各圧電素子20に入力する。発振装置を、可聴音を直接出力するスピーカとして機能させる場合、制御部50は音声信号を増幅することにより駆動信号を生成する。また発振装置をパラメトリックスピーカとして機能させる場合、制御部50は、外部から入力された音声データ(原信号)を変調してパラメトリックスピーカ用の変調データを生成し、このデータに基づいて駆動信号を生成する。この駆動信号の周波数は、圧電素子20のn次の共振周波数である。
【0019】
制御部50が発振装置をパラメトリックスピーカとして使用する場合、近接センサ32は、発振素子30が発振した音波と同一周波数の音波を検出し、当該検出値の大きさに基づいて人体が近接したことを検出する。すなわち人が近接した場合、発振素子30が発振した音波は人によって反射される。近接センサ32は、この反射された音波の強弱を検出することにより、人が近接したか否かを検出する。
【0020】
図3は、図1に示した発振装置を有する電子機器100の構成を示す図である。電子機器100は、携帯通信端末、携帯型のゲーム機器、携帯型の音楽再生装置、又は携帯型の映像再生装置などの携帯型の電子機器である。図3に示す例では、電子機器100は、2つの筐体を有する折りたたみ式の携帯通信端末である。そして発振素子30及び近接センサ32は、電子機器100が有する2つの筐体のうち、ディスプレイ102が設けられている筐体に内蔵されている。制御部50は、発振素子30及び近接センサ32と同一の筐体内に設けられていても良いし、これとは逆側の筐体内に設けられても良い。
【0021】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、制御部50は、人体が近接したことを近接センサ32が検出した場合、発振素子30への入力を小さくする。また制御部50は、人体が離れたことを近接センサ32が検出した場合、発振素子30への入力を大きくする。このため、ハンズフリーであるか否かを自動で切り替えることができる。また近接センサ32は、発振素子30と同一のアレイを構成しているため、発振装置が大型化することを抑制できる。
【0022】
また上記したように、近接センサ32は、発振素子30から発振され、かつ人体によって反射された音波を検出し、検出した音波の強弱を検出することにより、人が近接したか否かを検出する。発振素子30がパラメトリックスピーカとして機能する場合、発振素子30は、圧電素子20の共振周波数を搬送波としている。また近接センサ32は発振素子30と同一の構造を有しているため、近接センサ32の共振周波数は発振素子30の共振周波数と同一である。従って、近接センサ32の検出感度は高くなる。
【0023】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0024】
10 振動部材
20 圧電素子
30 発振素子
32 近接センサ
40 枠体
50 制御部
100 電子機器
102 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部材、及び振動部材上に設けられた圧電素子を複数有し、アレイ状に配置された複数の発振素子と、
前記複数の発振素子を保持する枠体と、
前記枠体に保持され、前記発振素子と同一のアレイを構成しており、物体が近接したことを検出する近接センサと、
前記近接センサの検出結果に基づいて、前記複数の発振素子への入力の大きさを制御する制御手段と、
を備える発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記制御手段は、前記複数の発振素子に、パラメトリックスピーカとしての変調信号を入力する発振装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発振装置において、
前記近接センサは、前記発振素子と同一の構造を有しており、前記発振素子が発振した音波と同一周波数の音波を検出し、当該検出値の大きさに基づいて物体が近接したことを検出する発振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発振装置を有する電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate